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1. WO2017010414 - 細胞構造体及び細胞構造体の製造方法

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明 細 書

発明の名称 細胞構造体及び細胞構造体の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098  

実施例

0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : 細胞構造体及び細胞構造体の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、細胞構造体及び細胞構造体の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 現在、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器の再生を図る再生医療の実用化が進められている。再生医療は、生体が持っている自然治癒能力だけでは回復できなくなった生体組織を、細胞、足場及び成長因子の三因子を使って元の組織と同じような形態や機能を再び作り出す新たな医療技術である。近年では、細胞を使った治療が徐々に実現されつつある。例えば、自家細胞を用いた培養表皮、自家軟骨細胞を用いた軟骨治療、間葉系幹細胞を用いた骨再生治療、筋芽細胞を用いた心筋細胞シート治療、角膜上皮シートによる角膜再生治療、及び神経再生治療などが挙げられる。これら新たな治療は、従来の人工物による代替医療(例えば、人工骨補填剤やヒアルロン酸注射など)とは異なり、生体組織の修復・再生を図るものであり、高い治療効果を得られる。実際、自家細胞を用いた培養表皮や培養軟骨などの製品が市販されてきた。
[0003]
 特許文献1には、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、上記複数個の細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体が記載されている。特許文献1に記載の細胞構造体においては、外部から細胞構造体の内部への栄養送達が可能であり、十分な厚みを有するとともに、構造体中で細胞が均一に存在している。特許文献1の実施例においては、リコンビナントゼラチンや天然ゼラチン素材からなる高分子ブロックを用いて高い細胞生存活性が実証されている。また、特許文献2には、生体親和性を有する高分子ブロックと少なくとも一種類の細胞とを含み、上記複数個の細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞移植用細胞構造体が記載されている。さらに特許文献3には、グルタルアルデヒドを含まない生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種類の細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている、細胞移植用細胞構造体であって、生体親和性高分子ブロックのタップ密度が10mg/cm 3以上500mg/cm 3以下であるか、又は高分子ブロックの二次元断面像における断面積の平方根÷周囲長の値が0.01以上0.13以下である、細胞移植用細胞構造体が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 国際公開WO2011/108517号
特許文献2 : 特開2014-12114号公報
特許文献3 : 国際公開WO2014/133081号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 特許文献1から3に記載の細胞構造体を製造するに際して、使用する細胞の種類によっては、所望の大きさの細胞構造体を構築する時間をより短縮することが望まれる場合や、より大きな立体状の細胞構造体を形成することが望まれる場合があった。本発明は、短時間で製造することができ、かつ所定以上の大きさを有する細胞構造体を提供することを課題とした。更に本発明は、上記細胞構造体の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、生体親和性高分子ブロックと細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体において、上記の細胞として、細胞構造体の形成に比較的時間がかかる第一の細胞と、基材への接着力が強くかつ細胞塊を形成しやすい第二の細胞とを組み合わせて使用することによって、所定以上の大きさを有する細胞構造体を短時間で製造することに成功した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
[0007]
 即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)生体親和性高分子ブロックと、2種類以上の細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記生体親和性高分子ブロックが配置されている、細胞構造体であって、上記2種類以上の細胞が、血管内皮細胞、心筋細胞、膵島細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、角膜上皮細胞及び網膜色素上皮細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第一の細胞と、間葉系細胞、間質細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞及び臍帯由来幹細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第二の細胞とを含む、上記細胞構造体。
(2)上記第一の細胞と上記第二の細胞との細胞数の比率が9:1~1:99である、(1)に記載の細胞構造体。
(3)上記生体親和性高分子ブロックの大きさが10μm以上300μm以下である、(1)又は(2)に記載の細胞構造体。
(4)厚さ又は直径が400μm以上3cm以下である、(1)から(3)の何れか一に記載の細胞構造体。
(5)上記生体親和性高分子ブロックのタップ密度が10mg/cm 3以上500mg/cm 3以下である、(1)から(4)の何れか一に記載の細胞構造体。
[0008]
(6)上記生体親和性高分子ブロックにおいて、生体親和性高分子が架橋されている、(1)から(5)の何れか一に記載の細胞構造体。
(7)上記生体親和性高分子ブロックの架橋度が2以上であり、かつ上記生体親和性高分子ブロックの吸水率が300%以上である、(6)に記載の細胞構造体。
(8)上記生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子を含有する固形物を粉砕することにより得られる生体親和性高分子ブロックである、(1)から(7)の何れか一に記載の細胞構造体。
(9)上記固形物が、生体親和性高分子を含有する水溶液を凍結乾燥して得られた固形物である、(8)に記載の細胞構造体。
(10)細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下の生体親和性高分子ブロックを含む、(1)から(9)の何れか一に記載の細胞構造体。
[0009]
(11)生体親和性高分子が、リコンビナントゼラチンである、(1)から(10)の何れか一に記載の細胞構造体。
(12)リコンビナントゼラチンが、下記式で示される、(11)に記載の細胞構造体。
式:A-[(Gly-X-Y)n]m-B
式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3~100の整数を示し、mは2~10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
(13)リコンビナントゼラチンが、
配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;又は
配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;
の何れかである、(11)又は(12)に記載の細胞構造体。
(14)上記第一の細胞が、血管内皮細胞又は肝細胞であり、上記第二の細胞が、線維芽細胞、平滑筋細胞又は間葉系幹細胞である、(1)から(13)の何れか一に記載の細胞構造体。
[0010]
(15)生体親和性高分子ブロックと、2種類以上の細胞を含有する培養液との混合物をインキュベートすることを含む、(1)から(14)の何れか一に記載の細胞構造体の製造方法であって、上記2種類以上の細胞が、血管内皮細胞、心筋細胞、膵島細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、角膜上皮細胞及び網膜色素上皮細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第一の細胞と、間葉系細胞、間質細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞及び臍帯由来幹細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第二の細胞とを含む、上記製造方法。
(16)上記2種類以上の細胞を含有する培養液における上記第一の細胞と上記第二の細胞との細胞数の比率が9:1~1:99である、(15)に記載の方法。

発明の効果

[0011]
 本発明の細胞構造体は、短時間で製造することができ、かつ所定以上の大きさを有する。また、本発明の細胞構造体の製造方法によれば、所定以上の大きさを有する細胞構造体を短時間で製造することができる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 図1は、実施例の条件Aの液温プロファイルを示す。
[図2] 図2は、実施例の条件Bの液温プロファイルを示す。
[図3] 図3は、実施例の条件Cの液温プロファイルを示す。
[図4] 図4は、HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞)とhMSC(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。
[図5] 図5は、HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞)とhMSC(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。
[図6] 図6は、HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞)とNHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。
[図7] 図7は、HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞)とNHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。
[図8] 図8は、HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)とhMSC(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。
[図9] 図9は、HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)とhMSC(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。
[図10] 図10は、HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)とNHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。
[図11] 図11は、HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)とNHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。
[図12] 図12は、HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)とBdSMC(正常ヒト膀胱平滑筋細胞)のモザイク細胞塊の形成を示す。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
 本発明は、生体親和性高分子ブロックと、2種類以上の細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている、細胞構造体であって、2種類以上の細胞が、血管内皮細胞、心筋細胞、膵島細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、角膜上皮細胞及び網膜色素上皮細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第一の細胞と、間葉系細胞、間質細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞及び臍帯由来幹細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第二の細胞とを含む、細胞構造体に関する。なお、本発明の細胞構造体は、本明細書中において、モザイク細胞塊(モザイク状になっている細胞塊)と称する場合もある。
[0014]
 本発明において、第一の細胞は、細胞構造体の形成に比較的時間がかかる細胞であり、第二の細胞は、基材への接着力が強くかつ細胞塊を形成しやすい細胞である。本発明においては、第一の細胞に対して第二の細胞を組み合わせて使用することによって、第一の細胞のみを使用して細胞構造体を製造した場合と比較して、所定以上の大きさを有する細胞構造体を短時間で製造できるようになった。
[0015]
 「所定以上の大きさを有する細胞構造体を短時間で製造できる」とは、第一の細胞に対して第二の細胞を組み合わせて使用することによって、第一の細胞のみを使用して細胞構造体を製造した場合と比較して、所定以上の大きさを有する細胞構造体を短時間で製造できることを意味し、「所定以上の大きさ」及び「短時間」については具体的には限定されるものではない。「所定以上の大きさを有する細胞構造体を短時間で製造できる」ことの一例としては、2×10 4個の細胞と0.02mgの生体親和性高分子ブロックを用いて直径1mm程度の球体を細胞非接着性U字底96ウエルプレートの1ウエル内で製造する際に、1日(24時間)以内に上部から見て直径1.5mm以内の大きさの細胞構造体を形成できる程度を意味するが、上記の実験条件は一例であり、本発明の範囲は、この条件に限定されるものではない。
[0016]
 上記した通りの第一の細胞と第二の細胞とを組み合わせて使用することによって、第一の細胞のみを使用して細胞構造体を製造した場合と比較して、所定以上の大きさを有する細胞構造体を短時間で製造することが可能になることは本発明により初めて見出された知見であり、従来からは全く予想できない意外なことである。
 本発明の結果から考察するに、細胞-細胞間の相互作用の強さと、細胞-基材間の相互作用の強さ、加えて、細胞-細胞間の相互作用においても積層化しやすい細胞であるか、等の要因によって、この第一の細胞と第二の細胞は分類され得ると考えられた。おそらく第二の細胞として分類される細胞群は、上記3つの観点において、全てに優れていることから、第一の細胞が細胞構造体を形成する上で、第一の細胞同士の間、また第一の細胞と基材の間、における接着剤の役割を果たしていると考えられた。即ち、第二の細胞が強い糊の役割を果たし、細胞構造体形成に必要な接着力を増強することで、集合体としての細胞構造体形成を加速させることに成功しているのだと考えられる。
[0017]
(1)生体親和性高分子ブロック
(1-1)生体性親和性高分子
 生体性親和性とは、生体に接触した際に、長期的かつ慢性的な炎症反応などのような顕著な有害反応を惹起しないことを意味する。本発明で用いる生体親和性高分子は、生体に親和性を有するものであれば、生体内で分解されるか否かは特に限定されないが、生分解性高分子であることが好ましい。非生分解性材料として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル、ステンレス、チタン、シリコーン、及びMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)などが挙げられる。生分解性材料としては、具体的にはリコンビナントペプチド又は化学合成ペプチドなどのポリペプチド(例えば、以下に説明するゼラチン等)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸コポリマー(PLGA)、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンなどが挙げられる。上記の中でも、リコンビナントペプチドが特に好ましい。これら生体親和性高分子には細胞接着性を高める工夫がなされていてもよい。具体的には、1.「基材表面に対する細胞接着基質(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン)や細胞接着配列(アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列)ペプチドによるコーティング」、「基材表面のアミノ化、カチオン化」、又は「基材表面のプラズマ処理、コロナ放電による親水性処理」といった方法を使用できる。
[0018]
 リコンビナントペプチド又は化学合成ペプチドを含むポリペプチドの種類は生体親和性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、レトロネクチンが好ましく、最も好ましくはゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲンである。本発明で用いるためのゼラチンとしては、好ましくは、天然ゼラチン、リコンビナントゼラチン又は化学合成セラチンであり、さらに好ましくはリコンビナントゼラチンである。ここでいう天然ゼラチンとは天然由来のコラーゲンより作られたゼラチンを意味する。
[0019]
 化学合成ペプチド又は化学合成ゼラチンとは、人工的に合成したペプチド又はゼラチンを意味する。ゼラチン等のペプチドの合成は、固相合成でも液相合成でもよいが、好ましくは固相合成である。ペプチドの固相合成は当業者に公知であり、例えば、アミノ基の保護としてFmoc基(Fluorenyl-Methoxy-Carbonyl基)を使用するFmoc基合成法、並びにアミノ基の保護としてBoc基(tert-Butyl Oxy Carbonyl基)を使用するBoc基合成法などが挙げられる。なお、化学合成ゼラチンの好ましい態様は、本明細書中後記の(1-3)リコンビナントゼラチンに記載した内容を当てはめることができる。
 リコンビナントゼラチンについては、本明細書中後記する。
[0020]
 本発明で用いる生体親和性高分子の親水性値「1/IOB」値は、0から1.0が好ましい。より好ましくは、0から0.6であり、さらに好ましくは0から0.4である。IOBとは、藤田穆により提案された有機化合物の極性/非極性を表す有機概念図に基づく、親疎水性の指標であり、その詳細は、例えば、"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)、「化学の領域」vol.11, 10, pp.719-725(1957)、「フレグランスジャーナル」, vol.50, pp.79-82(1981)等で説明されている。簡潔に言えば、全ての有機化合物の根源をメタン(CH 4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値(OV)、無機性値(IV)を求め、この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。有機概念図の詳細については、「新版有機概念図-基礎と応用-」(甲田善生等著、三共出版、2008)を参照されたい。本明細書中では、IOBの逆数をとった「1/IOB」値で親疎水性を表している。「1/IOB」値が小さい(0に近づく)程、親水性であることを表す表記である。
[0021]
 本発明で用いる高分子の「1/IOB」値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用する。
[0022]
 本発明で用いる生体親和性高分子がポリペプチドである場合は、Grand average of hydropathicity(GRAVY)値で表される親疎水性指標において、0.3以下、マイナス9.0以上であることが好ましく、0.0以下、マイナス7.0以上であることがさらに好ましい。Grand average of hydropathicity(GRAVY)値は、『Gasteiger E., Hoogland C., Gattiker A., Duvaud S., Wilkins M.R., Appel R.D., Bairoch A.;Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server;(In) John M. Walker (ed): The Proteomics Protocols Handbook, Humana Press (2005). pp. 571-607』及び『Gasteiger E., Gattiker A., Hoogland C., Ivanyi I., Appel R.D., Bairoch A.; ExPASy: the proteomics server for in-depth protein knowledge and analysis.; Nucleic Acids Res. 31:3784-3788(2003).』の方法により得ることができる。
 本発明で用いる高分子のGRAVY値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用する。
[0023]
(1-2)架橋
 本発明で用いる生体親和性高分子は、架橋されているものでもよいし、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。架橋されている生体親和性高分子を使用することにより、培地中で培養する際及び生体に移植した際に瞬時に分解してしまうことを防ぐという効果が得られる。一般的な架橋方法としては、熱架橋、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)による架橋、縮合剤(カルボジイミド、シアナミドなど)による架橋、酵素架橋、光架橋、紫外線架橋、疎水性相互作用、水素結合、イオン性相互作用などが知られており、本発明においても上記の架橋方法を使用することができる。本発明で使用する架橋方法としては、さらに好ましくは熱架橋、紫外線架橋、又は酵素架橋であり、特に好ましくは熱架橋である。
[0024]
 酵素による架橋を行う場合、酵素としては、高分子材料間の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼ及びラッカーゼ、最も好ましくはトランスグルタミナーゼを用いて架橋を行うことができる。トランスグルタミナーゼで酵素架橋するタンパク質の具体例としては、リジン残基及びグルタミン残基を有するタンパク質であれば特に制限されない。トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなど、ヒト由来の血液凝固因子(Factor XIIIa、Haematologic Technologies, Inc.社)などが挙げられる。
[0025]
 架橋(例えば、熱架橋)を行う際の反応温度は、架橋ができる限り特に限定されないが、好ましくは、-100℃~500℃であり、より好ましくは0℃~300℃であり、更に好ましくは50℃~300℃であり、更に好ましくは100℃~250℃であり、更に好ましくは120℃~200℃である。
[0026]
(1-3)リコンビナントゼラチン
 本発明で言うリコンビナントゼラチンとは、遺伝子組み換え技術により作られたゼラチン類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくは蛋白様物質を意味する。本発明で用いることができるリコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有するものが好ましい。ここで、複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくは、細胞接着シグナルが一分子中に2配列以上含まれている。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するリコンビナントゼラチンを用いることができる。例えばEP1014176、US特許6992172号、国際公開WO2004/85473、国際公開WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとして好ましいものは、以下の態様のリコンビナントゼラチンである。
[0027]
 リコンビナントゼラチンは、天然のゼラチン本来の性能から、生体親和性に優れ、且つ天然由来ではないことで牛海綿状脳症(BSE)などの懸念がなく、非感染性に優れている。また、リコンビナントゼラチンは天然セラチンと比べて均一であり、配列が決定されているので、強度及び分解性においても架橋等によってブレを少なく精密に設計することが可能である。
[0028]
 リコンビナントゼラチンの分子量は、特に限定されないが、好ましくは2000以上100000以下(2kDa以上100kDa以下)であり、より好ましくは2500以上95000以下(2.5kDa以上95kDa以下)であり、さらに好ましくは5000以上90000以下(5kDa以上90kDa以下)であり、最も好ましくは10000以上90000以下(10kDa以上90kDa以下)である。
[0029]
 リコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列の繰り返しを有することが好ましい。ここで、複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Gly-X-Y において、Glyはグリシンを表し、X及びYは、任意のアミノ酸(好ましくは、グリシン以外の任意のアミノ酸)を表す。コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成及び配列における、他のタンパク質と比較して非常に特異的な部分構造である。この部分においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X及びYで表されるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、全体の10%~45%を占めることが好ましい。好ましくは、リコンビナントゼラチンの配列の80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸が、Gly-X-Yの繰り返し構造である。
[0030]
 一般的なゼラチンは、極性アミノ酸のうち電荷を持つものと無電荷のものが1:1で存在する。ここで、極性アミノ酸とは具体的にシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン及びアルギニンを指し、このうち極性無電荷アミノ酸とはシステイン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン及びチロシンを指す。本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおいては、構成する全アミノ酸のうち、極性アミノ酸の割合が10~40%であり、好ましくは20~30%である。且つ上記極性アミノ酸中の無電荷アミノ酸の割合が5%以上20%未満、好ましくは10%未満であることが好ましい。さらに、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインのうちいずれか1アミノ酸、好ましくは2以上のアミノ酸を配列上に含まないことが好ましい。
[0031]
 一般にポリペプチドにおいて、細胞接着シグナルとして働く最小アミノ酸配列が知られている(例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990年)527頁)。本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、これらの細胞接着シグナルを一分子中に2以上有することが好ましい。具体的な配列としては、接着する細胞の種類が多いという点で、アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の配列が好ましい。さらに好ましくはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列、特に好ましくはRGD配列である。RGD配列のうち、好ましくはERGD配列である。細胞接着シグナルを有するリコンビナントゼラチンを用いることにより、細胞の基質産生量を向上させることができる。例えば、細胞として、間葉系幹細胞を用いた軟骨分化の場合には、グリコサミノグリカン(GAG)の産生を向上させることができる。
[0032]
 本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおけるRGD配列の配置としては、RGD間のアミノ酸数が0~100の間、好ましくは25~60の間で均一でないことが好ましい。
 この最小アミノ酸配列の含有量は、細胞接着・増殖性の観点から、タンパク質1分子中3~50個が好ましく、さらに好ましくは4~30個、特に好ましくは5~20個である。最も好ましくは12個である。
[0033]
 本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおいて、アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は少なくとも0.4%であることが好ましい。リコンビナントゼラチンが350以上のアミノ酸を含む場合、350のアミノ酸の各ストレッチが少なくとも1つのRGDモチーフを含むことが好ましい。アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は、更に好ましくは少なくとも0.6%であり、更に好ましくは少なくとも0.8%であり、更に好ましくは少なくとも1.0%であり、更に好ましくは少なくとも1.2%であり、最も好ましくは少なくとも1.5%である。リコンビナントペプチド内のRGDモチーフの数は、250のアミノ酸あたり、好ましくは少なくとも4、更に好ましくは6、更に好ましくは8、更に好ましくは12以上16以下である。RGDモチーフの0.4%という割合は、250のアミノ酸あたり、少なくとも1つのRGD配列に対応する。RGDモチーフの数は整数であるので、0.4%の特徴を満たすには、251のアミノ酸からなるゼラチンは、少なくとも2つのRGD配列を含まなければならない。好ましくは、本発明のリコンビナントゼラチンは、250のアミノ酸あたり、少なくとも2つのRGD配列を含み、より好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも3つのRGD配列を含み、さらに好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも4つのRGD配列を含む。本発明のリコンビナントゼラチンのさらなる態様としては、少なくとも4つのRGDモチーフ、好ましくは6つ、より好ましくは8つ、さらに好ましくは12以上16以下のRGDモチーフを含む。
[0034]
 リコンビナントゼラチンは部分的に加水分解されていてもよい。
[0035]
 好ましくは、本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、式1:A-[(Gly-X-Y) nm-Bで示されるものである。n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。mは好ましくは2~10の整数を示し、より好ましくは3~5の整数を示す。nは3~100の整数が好ましく、15~70の整数がさらに好ましく、50~65の整数が最も好ましい。Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
[0036]
 より好ましくは、本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、 式:Gly-Ala-Pro-[(Gly-X-Y) 633-Gly(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示されるものである。
[0037]
 繰り返し単位には天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。ここで言う天然に存在するコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれでも構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、又はV型コラーゲンである。より好ましくは、I型、II型、又はIII型コラーゲンである。別の形態によると、上記コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス又はラットであり、より好ましくはヒトである。
[0038]
 本発明で用いるリコンビナントゼラチンの等電点は、好ましくは5~10であり、より好ましくは6~10であり、さらに好ましくは7~9.5である。リコンビナントゼラチンの等電点の測定は、等電点電気泳動法(Maxey,C.R.(1976;Phitogr.Gelatin 2,Editor Cox,P.J.Academic,London,Engl.参照)に記載されたように、1質量%ゼラチン溶液をカチオン及びアニオン交換樹脂の混晶カラムに通したあとのpHを測定することで実施することができる。
[0039]
 好ましくは、リコンビナントゼラチンは脱アミン化されていない。
 好ましくは、リコンビナントゼラチンはテロペプタイドを有さない。
 好ましくは、リコンビナントゼラチンは、アミノ酸配列をコードする核酸により調製された実質的に純粋なポリペプチドである。
[0040]
 本発明で用いるリコンビナントゼラチンとして特に好ましくは、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;又は
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;
の何れかである
[0041]
 「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」における「1若しくは数個」とは、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1~3個を意味する。
[0042]
 本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、当業者に公知の遺伝子組み換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2号公報、米国特許第6992172号公報、国際公開WO2004/85473号、国際公開WO2008/103041号等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定のリコンビナントゼラチンのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、リコンビナントゼラチンが産生されるので、培養物から産生されたリコンビナントゼラチンを回収することにより、本発明で用いるリコンビナントゼラチンを調製することができる。
[0043]
(1-4)生体親和性高分子ブロック
 本発明では、上記した生体親和性高分子からなるブロック(塊)を使用する。
 本発明における生体親和性高分子ブロックの形状は特に限定されるものではない。例えば、不定形、球状、粒子状(顆粒)、粉状、多孔質状、繊維状、紡錘状、扁平状及びシート状であり、好ましくは、不定形、球状、粒子状(顆粒)、粉状及び多孔質状である。不定形とは、表面形状が均一でないもののことを示し、例えば、岩のような凹凸を有する物を示す。なお、上記の形状の例示はそれぞれ別個のものではなく、例えば、粒子状(顆粒)の下位概念の一例として不定形となる場合もある。
[0044]
 本発明における生体親和性高分子ブロックの形状は上記の通り特に限定されるものではないが、タップ密度が、好ましくは10mg/cm 3以上500mg/cm 3以下であり、より好ましくは20mg/cm 3以上400mg/cm 3以下であり、さらに好ましくは40mg/cm 3以上220mg/cm 3以下であり、特に好ましくは50mg/cm 3以上150mg/cm 3以下である。
[0045]
 タップ密度は、ある体積にどれくらいのブロックを密に充填できるかを表す値であり、値が小さいほど、密に充填できない、すなわちブロックの構造が複雑であることが分かる。生体親和性高分子ブロックのタップ密度とは、生体親和性高分子ブロックの表面構造の複雑性、及び生体親和性高分子ブロックを集合体として集めた場合に形成される空隙の量を表していると考えられる。タップ密度が小さい程、高分子ブロック間の空隙が多くなり、細胞の生着領域が多くなる。また、小さ過ぎないことで、細胞同士の間に適度に生体親和性高分子ブロックが存在でき、細胞構造体とした場合に同構造体内部への栄養分送達を可能とすることから、上記の範囲に収まることが好適であると考えられる。
[0046]
 本明細書でいうタップ密度は、以下のように測定できる。測定のために(直径6mm、長さ21.8mmの円筒状:容量0.616cm 3)の容器(以下、キャップと記載する)を用意する。まず、キャップのみの質量を測定する。その後、キャップにロートを付け、ブロックがキャップに溜まるようにロートから流し込む。十分量のブロックを入れた後、キャップ部分を200回机などの硬いところにたたきつけ、ロートをはずし、スパチュラですりきりにする。このキャップにすりきり一杯入った状態で質量を測定する。キャップのみの質量との差からブロックのみの質量を算出し、キャップの体積で割ることで、タップ密度を求めることができる。
[0047]
 本発明における生体親和性高分子ブロックの架橋度は、特に限定されないが、好ましくは2以上であり、さらに好ましくは2以上30以下であり、さらに好ましくは4以上25以下であり、特に好ましくは4以上22以下である。
[0048]
 高分子ブロックの架橋度(1分子当たりの架橋数)の測定方法は、特に限定されないが、例えば、後記実施例に記載のTNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸)法で測定することができる。具体的には、高分子ブロック、NaHCO 3水溶液及びTNBS水溶液を混合して37℃で3時間反応させた後に反応停止したサンプルと、高分子ブロック、NaHCO 3水溶液及びTNBS水溶液を混合した直後に反応停止させたブランクとをそれぞれ調製し、純水で希釈したサンプル及びブランクの吸光度(345nm)を測定し、以下の(式2)、及び(式3)から架橋度(1分子当たりの架橋数)を算出することができる。
[0049]
(式2) (As-Ab)/14600×V/w
(式2)は、高分子ブロック1g当たりのリジン量(モル等量)を示す。
(式中、Asはサンプル吸光度、Abはブランク吸光度、Vは反応液量(g)、wは高分子ブロック質量(mg)を示す。)
[0050]
(式3) 1-(サンプル(式2)/未架橋の高分子(式2))×34
(式3)は、1分子あたりの架橋数を示す。
[0051]
 本発明における生体親和性高分子ブロックの吸水率は、特に限定されないが、好ましくは300%以上、より好ましくは400%以上、さらに好ましくは500%以上、特に好ましくは700%以上、最も好ましくは800%以上である。なお吸水率の上限は特に限定されないが、一般的には4000%以下、又は2000%以下である。
[0052]
 生体親和性高分子ブロックの吸水率の測定方法は、特に限定されないが、例えば、後記実施例に記載の方法により測定することができる。具体的には、25℃において3cm×3cmのナイロンメッシュ製の袋の中に、生体親和性高分子ブロック約15mgを充填し、2時間イオン交換水中で膨潤させた後、10分風乾させ、それぞれの段階において質量を測定し、(式4)に従って吸水率を求めることができる。
[0053]
(式4)
 吸水率=(w2-w1-w0)/w0
(式中、w0は、吸水前の材料の質量、w1は吸水後の空袋の質量、w2は吸水後の材料を含む袋全体の質量を示す。)
[0054]
 本発明における生体親和性高分子ブロック一つの大きさは、特に限定されないが、好ましくは1μm以上700μm以下であり、より好ましくは10μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上150μm以下であり、特に好ましくは53μm以上106μm以下である。生体親和性高分子ブロック一つの大きさを上記の範囲内にすることにより、外部から細胞構造体の内部への栄養送達を良好にすることができる。なお、生体親和性高分子ブロック一つの大きさとは、複数個の生体親和性高分子ブロックの大きさの平均値が上記範囲にあることを意味するものではなく、複数個の生体親和性高分子ブロックを篩にかけて得られる、一つ一つの生体親和性高分子ブロックのサイズを意味するものである。
[0055]
 ブロック一つの大きさは、ブロックを分ける際に用いたふるいの大きさで定義することができる。例えば、180μmのふるいにかけ、通過したブロックを106μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、106~180μmの大きさのブロックとすることができる。次に、106μmのふるいにかけ、通過したブロックを53μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、53~106μmの大きさのブロックとすることができる。次に、53μmのふるいにかけ、通過したブロックを25μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、25~53μmの大きさのブロックとすることができる。
[0056]
(1-5)生体親和性高分子ブロックの製造方法
 生体親和性高分子ブロックの製造方法は、特に限定されないが、例えば、生体親和性高分子を含有する固形物(生体親和性高分子の多孔質体など)を、粉砕機(ニューパワーミルなど)を用いて粉砕することにより、生体親和性高分子ブロックを得ることができる。生体親和性高分子を含有する固形物(多孔質体など)は、例えば、生体親和性高分子を含有する水溶液を凍結乾燥して得ることができる。
[0057]
 上記の通り、生体親和性高分子を含有する固形物を粉砕することにより、表面形状が均一でない不定形の生体親和性高分子ブロックを製造することができる。
[0058]
 生体親和性高分子の多孔質体の製造方法の一例としては、
(a)溶液内で最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差が2.5℃以下であり、かつ、溶液内で最も液温の高い部分の温度が溶媒の融点以下で、生体親和性高分子の溶液を、未凍結状態に冷却する工程、
(b)工程(a)で得られた生体親和性高分子の溶液を凍結する工程、及び
(c)工程(b)で得られた凍結した生体親和性高分子を凍結乾燥する工程
を含む方法を挙げることができる。
[0059]
 生体親和性高分子の溶液を未凍結状態に冷却する際に、最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差が2.5℃以下(好ましくは2.3℃以下、より好ましくは2.1℃以下)、つまり温度の差を小さくすることによって、得られる多孔質のポアの大きさのばらつきが少なくなる。なお最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差の下限は特に限定されず、0℃以上であればよく、例えば0.1℃以上、0.5℃以上、0.8℃以上、又は0.9℃以上でもよい。
[0060]
 工程(a)の冷却は、例えば、水よりも熱伝導率の低い素材(好ましくは、テフロン(登録商標))を介して冷却することが好ましく、溶液内で最も液温の高い部分は、冷却側から最も遠い部分と擬制することができ、溶液内で最も液温の低い部分は、冷却面の液温と擬制することができる。
[0061]
 好ましくは、工程(a)において、凝固熱発生直前の、溶液内で最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差が2.5℃以下であり、より好ましくは2.3℃以下であり、さらに好ましくは2.1℃以下である。ここで「凝固熱発生直前の温度差」とは、凝固熱発生時の1秒前~10秒前の間で最も温度差が大きくなるときの温度差を意味する。
[0062]
 好ましくは、工程(a)において、溶液内で最も液温の低い部分の温度は、溶媒融点-5℃以下であり、より好ましくは溶媒融点-5℃以下かつ溶媒融点-20℃以上であり、更に好ましくは溶媒融点-6℃以下かつ溶媒融点-16℃以上である。なお、溶媒融点の溶媒とは、生体親和性高分子の溶液の溶媒である。
[0063]
 工程(b)においては、工程(a)で得られた生体親和性高分子の溶液を凍結する。工程(b)にて凍結されるための冷却温度は、特に制限されるものではなく、冷却する機器にもよるが、好ましくは、溶液内で最も液温の低い部分の温度より、3℃から30℃低い温度であり、より好ましくは、5℃から25℃低い温度であり、更に好ましくは、10℃から20℃低い温度である。
[0064]
 工程(c)においては、工程(b)で得られた凍結した生体親和性高分子を凍結乾燥する。凍結乾燥は、常法により行うことができ、例えば、溶媒の融点より低い温度で真空乾燥を行い、さらに室温(20℃)で真空乾燥を行うことにより凍結乾燥を行うことができる。
[0065]
 本発明では好ましくは、上記工程(c)で得られた多孔質体を粉砕することによって、生体親和性高分子ブロックを製造することができる。
[0066]
(2)細胞
 本発明の細胞構造体は、2種類以上の細胞を含む。本発明においては、血管内皮細胞、心筋細胞、膵島細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、角膜上皮細胞及び網膜色素上皮細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第一の細胞と、間葉系細胞、間質細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、間葉系幹(MSC)細胞、脂肪由来幹細胞及び臍帯由来幹細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第二の細胞とを使用する。
[0067]
 第一の細胞として使用する細胞は、1種類でも2種類以上でもよく、好ましくは1~3種類、より好ましくは1又は2種類、さらに好ましくは1種類である・
 第二の細胞として使用する細胞は、1種類でも2種類以上でもよく、好ましくは1~3種類、より好ましくは1又は2種類、さらに好ましくは1種類である・
 好ましくは、第一の細胞は、血管内皮細胞又は肝細胞であり、第二の細胞が、線維芽細胞、平滑筋細胞又は間葉系幹細胞である。また、第一の細胞についての好ましいさらに別の例としては、筋細胞、膵島細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、角膜上皮細胞及び網膜色素上皮細胞からなる群から選択される少なくとも一種の細胞である。
 特に好ましい組み合わせとしては、第一の細胞が、肝細胞であり、第二の細胞が、線維芽細胞、又は間葉系幹細胞である。
[0068]
 上記した各細胞は、各用語の最も広義の範囲を意味するものとし、生体から採取した細胞、生体から採取した細胞に操作(遺伝子導入操作など)を施した細胞、並びに他の細胞からの転換により得られる細胞(例えば、iPS細胞から分化誘導された心筋細胞及び神経細胞など)などのいずれでもよい。
[0069]
 ある細胞(以下、対象細胞と称する)が、上記した所定の細胞であるかどうかの確認は、対象細胞が、各細胞の機能を有するかどうかを確認することにより行うことができ、あるいは対象細胞が、各細胞に特異的なマーカーを発現するかどうかを確認することによっても行うことができるが、特に限定されない。
[0070]
 使用する細胞として、好ましくは、動物細胞であり、より好ましくは脊椎動物由来細胞、特に好ましくはヒト由来細胞である。また、細胞の由来は、自家細胞又は他家細胞の何れでも構わない。
[0071]
 例えば、重症心不全、重度心筋梗塞等の心臓疾患においては、自家及び他家から摘出した心筋細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞などを好適に使用することができる。脳虚血・脳梗塞部位への神経細胞の移植、あるいは、心筋梗塞部位・骨格筋虚血部位への血管内皮細胞の移植が可能である。また、糖尿病性の臓器障害に対する細胞移植に使用される細胞が挙げられる。例えば、腎臓、膵臓、末梢神経、眼、四肢の血行障害などの疾患に対して、種々検討されている細胞移植治療法用の細胞が挙げられる。例えば、インスリン分泌能が低下した膵臓に膵島細胞を移植する試みが検討されており、このような細胞を使用することができる。その他の臓器においても、上記した第一の細胞及び第二の細胞として適宜移植細胞を選択することができる。
[0072]
 本発明において、血管内皮細胞、心筋細胞、膵島細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、角膜上皮細胞及び網膜色素上皮細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第一の細胞は、細胞構造体の形成に時間を要する細胞である。間葉系細胞、間質細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、間葉系幹(MSC)細胞、脂肪由来幹細胞及び臍帯由来幹細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第二の細胞は、細胞構造体を高速度で形成できる細胞である。本発明においては、上記第一の細胞と上記第二の細胞とを組み合わせて使用することによって、所定以上の大きさを有する細胞構造体を短時間で製造することが可能になった。
[0073]
 本発明の細胞構造体における第一の細胞と第二の細胞との細胞数の比率は、特に限定されないが、好ましくは9:1~1:99であり、より好ましくは9:1~2:8であり、さらに好ましくは8:2~2:8である。
[0074]
(3)細胞構造体
 本発明においては、生体親和性高分子ブロックと2種類以上の細胞とを用いて、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックをモザイク状に3次元的に配置させることによって細胞移植のために適した厚みを有することが可能となる。さらに、生体親和性高分子ブロックと細胞とがモザイク状に3次元に配置されることにより、構造体中で細胞が均一に存在する細胞構造体が形成され、外部から細胞構造体の内部への栄養送達が可能となる。
[0075]
 本発明の細胞構造体においては、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されているが、ここで、「細胞間の隙間」とは、構成される細胞により、閉じられた空間である必要はなく、細胞により挟まれていればよい。なお、すべての細胞間に隙間がある必要はなく、細胞同士が接触している箇所があってもよい。生体親和性高分子ブロックを介した細胞間の隙間の距離、即ち、ある細胞とその細胞から最短距離に存在する細胞を選択した際の隙間距離は特に制限されるものではないが、生体親和性高分子ブロックの大きさであることが好ましく、好適な距離も生体親和性高分子ブロックの好適な大きさの範囲である。
[0076]
 また、生体親和性高分子ブロックは、細胞により挟まれた構成となるが、すべての生体親和性高分子ブロック間に細胞がある必要はなく、生体親和性高分子ブロック同士が接触している箇所があってもよい。細胞を介した生体親和性高分子ブロック間の距離、即ち、生体親和性高分子ブロックとその生体親和性高分子ブロックから最短距離に存在する生体親和性高分子ブロックを選択した際の距離は特に制限されるものではないが、使用される細胞が1~数個集まった際の細胞の塊の大きさであることが好ましく、例えば、10μm以上1000μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。
[0077]
 なお、本明細書中、「構造体中で細胞が均一に存在する細胞構造体」等、「均一に存在する」との表現を使用しているが、完全な均一を意味するものではなく、外部から細胞構造体の内部への栄養送達を可能とすることを意味するものである。
[0078]
 本発明の細胞構造体の厚さ又は直径は、所望の厚さとすることができるが、下限としては、215μm以上であることが好ましく、400μm以上がさらに好ましく、730μm以上であることが最も好ましい。厚さ又は直径の上限は特に限定されないが、使用上の一般的な範囲としては3cm以下が好ましく、2cm以下がより好ましく、1cm以下であることが更に好ましい。また、細胞構造体の厚さ又は直径の範囲として、好ましくは、400μm以上3cm以下、より好ましくは500μm以上2cm以下、更に好ましくは720μm以上1cm以下である。細胞構造体の厚さ又は直径を上記の範囲内とすることにより、外部から細胞構造体の内部への栄養送達がより良好になる。
[0079]
 本発明の細胞構造体においては、好ましくは、生体親和性高分子ブロックからなる領域と細胞からなる領域とがモザイク状に配置されている。尚、本明細書中における「細胞構造体の厚さ又は直径」とは、以下のことを示すものとする。細胞構造体中のある一点Aを選択した際に、その点Aを通る直線の内で、細胞構造体外界からの距離が最短になるように細胞構造体を分断する線分の長さを線分Aとする。細胞構造体中でその線分Aが最長となる点Aを選択し、その際の線分Aの長さのことを「細胞構造体の厚さ又は直径」とする。
[0080]
 本発明の細胞構造体は、細胞と生体親和性高分子ブロックの比率は特に限定されないが、好ましくは細胞1個当りの生体親和性高分子ブロックの比率が0.0000001μg以上1μg以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.000001μg以上0.1μg以下、より好ましくは0.00001μg以上0.01μg以下、最も好ましくは0.00002μg以上0.006μg以下である。細胞と生体親和性高分子ブロックの比率を上記範囲とすることより、細胞をより均一に存在させることができる。下限を上記範囲とすることにより、所望の用途に使用した際に細胞の効果を発揮することができ、上限を上記範囲とすることにより、任意で存在する生体親和性高分子ブロック中の成分を細胞に供給できる。ここで、生体親和性高分子ブロック中の成分は特に制限されないが、後述する培地に含まれる成分が挙げられる。
[0081]
(4)細胞構造体の製造方法
 本発明の細胞構造体は、生体親和性高分子ブロックと、2種類以上の細胞とを混合することによって製造することができる。より具体的には、本発明の細胞構造体は、生体親和性高分子ブロックと、上記細胞とを交互に配置することにより製造できる。製造方法は特に限定されないが、好ましくは生体親和性高分子ブロックを形成したのち、細胞と生体親和性高分子ブロックとを混合する方法である。具体的には、生体親和性高分子ブロックと、2種類以上の細胞を含有する培養液との混合物をインキュベートすることによって、本発明の細胞構造体を製造することができる。2種類以上の細胞としては、本明細書中上記した細胞を使用することができる。また、上記した2種類以上の細胞を含有する培養液における第一の細胞と第二の細胞との細胞数の比率は特に限定されないが、好ましくは9:1~1:99であり、より好ましくは9:1~2:8であり、さらに好ましくは8:2~2:8である。
[0082]
 本発明においては、例えば、容器中、容器に保持される液体中で、細胞と、予め作製した生体親和性高分子ブロックとをモザイク状に配置することができる。配置の手段としては、自然凝集、自然落下、遠心、攪拌を用いることで、細胞と生体親和性高分子ブロックとからなる細胞構造体の形成を促進又は制御することが好ましい。
[0083]
 用いられる容器としては、細胞低接着性材料又は細胞非接着性材料からなる容器が好ましく、より好ましくはポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートからなる容器である。容器底面の形状は平底型、U字型、V字型であることが好ましい。
[0084]
 上記の方法で得られた細胞構造体(モザイク細胞塊)は、例えば、
(a)別々に調製した細胞構造体(モザイク細胞塊)同士を融合させる、又は
(b)分化培地又は増殖培地下でボリュームアップさせる、
などの方法により所望の大きさの細胞構造体を製造してもよい。融合の方法、ボリュームアップの方法は特に限定されない。
[0085]
 例えば、生体親和性高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程において、培地を分化培地又は増殖培地に交換することによって、細胞構造体をボリュームアップさせることができる。好ましくは、生体親和性高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程において、生体親和性高分子ブロックをさらに添加することによって、所望の大きさの細胞構造体であって、細胞構造体中に細胞が均一に存在する細胞構造体を製造することができる。
[0086]
 別々に調製した細胞構造体同士を融合させる場合には、例えば、複数個の生体親和性高分子ブロックと複数個の細胞とを含み、上記複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部又は全部に、一又は複数個の上記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体を複数個融合させることができる。上記(a)に記載の通り本発明の細胞構造体の複数個を融合させることによって得られる細胞構造体も、本発明の範囲内である。
[0087]
 本発明の細胞構造体の製造方法にかかる「生体親和性高分子ブロック(種類、大きさ等)」、「細胞」、「細胞間の隙間」、「得られる細胞構造体(大きさ等)」、「細胞と生体親和性高分子ブロックの比率」等の好適な範囲は、本明細書中上記と同様である。
[0088]
 上記融合前の各細胞構造体の厚さ又は直径は好ましくは10μm以上1cm以下であり、より好ましくは10μm以上2000μm以下、更に好ましくは15μm以上1500μm以下、最も好ましくは、20μm以上1300μm以下である。融合後の厚さ又は直径は好ましくは400μm以上3cm以下であり、より好ましくは500μm以上2cm以下であり、更に好ましくは720μm以上1cm以下である。
[0089]
 上記した生体親和性高分子ブロックをさらに添加することによって、所望の大きさの細胞構造体を製造する方法としては、具体的には、複数個の第一の生体親和性高分子ブロックと、複数個の細胞とを含み、上記複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部又は全部に、一又は複数個の上記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、更に、第二の生体親和性高分子ブロックを添加しインキュベートする方法を挙げることができる。ここで、「生体親和性高分子ブロック(種類、大きさ等)」、「細胞」、「細胞間の隙間」、「得られる細胞構造体(大きさ等)」、「細胞と生体親和性高分子ブロックの比率」等の好適な範囲は、本明細書中上記と同様である。
[0090]
 融合させたい細胞構造体同士は、0以上50μm以下の距離に設置することが好ましく、より好ましくは、0以上20μm以下、更に好ましくは0以上5μm以下の距離である。細胞構造体同士を融合させる際、細胞の増殖・伸展によって細胞あるいは細胞が産生する基質が接着剤の役割を果たし、接合させることが考えられ、上記範囲とすることにより、細胞構造体同士の接着が容易となる。
[0091]
 本発明の細胞構造体の製造方法により得られる細胞構造体の厚さ又は直径の範囲として、好ましくは、400μm以上3cm以下、より好ましくは500μm以上2cm以下、更に好ましくは720μm以上1cm以下である。
[0092]
 細胞構造体に、更に、第二の生体親和性高分子ブロックを添加しインキュベートする際の、第二の生体親和性高分子ブロックの添加するペースは、使用する細胞の増殖の速度に合わせて、適宜、選択することが好ましい。具体的には、第二の生体親和性高分子ブロックを添加するペースが早いと細胞が細胞構造体の外側へと移動し、細胞の均一性が低くなり、添加のペースが遅いと、細胞の割合が多くなる箇所ができ、細胞の均一性が低くなるため、使用する細胞の増殖速度を考慮し、選択する。
[0093]
(5)細胞構造体の用途
 本発明の細胞構造体は、細胞移植のために使用することができる。具体的には、本発明の細胞構造体は、例えば、重症心不全、重度心筋梗塞等の心臓疾患、脳虚血・脳梗塞といった疾患部位に細胞移植の目的で使用できる。また、糖尿病性の腎臓、膵臓、肝臓、末梢神経、眼、四肢の血行障害などの疾患に対しても用いることができる。
[0094]
 移植方法としては、切開、注射、内視鏡といったものが使用可能である。本発明の細胞構造体は、細胞シートといった細胞移植物とは異なり、構造体のサイズを小さくすることができるため、注射による移植といった低侵襲の移植方法が可能となる。
[0095]
 また、本発明によれば、本発明の細胞構造体を、細胞移植を必要とする患者に移植する工程を含む細胞移植方法が提供される。本発明の細胞移植方法においては、上記した本発明の細胞構造体を用いる。細胞構造体の好適な範囲は上記と同様である。
[0096]
 更に本発明によれば、細胞移植治療剤の製造のための、本発明の細胞構造体の使用が提供される。本発明によれば、好ましくは、細胞構造体の好適な範囲は上記と同様である。
[0097]
 更に本発明によれば、本発明の細胞構造体を含む、細胞移植治療剤が提供される。本発明によれば、細胞構造体の好適な範囲は上記と同様である。
[0098]
 以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例
[0099]
[実施例1]リコンビナントペプチド(リコンビナントゼラチン)
 リコンビナントペプチド(リコンビナントゼラチン)として以下のCBE3を用意した(国際公開WO2008/103041号公報に記載)。
CBE3:
分子量:51.6kD
構造: GAP[(GXY) 633
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34
GRAVY値:-0.682
1/IOB値:0.323
アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(国際公開WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP) 3G
[0100]
[実施例2] リコンビナントペプチド多孔質体の作製
[PTFE厚・円筒形容器]
 底面厚さ3mm、直径51mm、側面厚さ8mm、高さ25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製円筒カップ状容器を用意した。円筒カップは曲面を側面としたとき、側面は8mmのPTFEで閉鎖されており、底面(平板の円形状)も3mmのPTFEで閉鎖されている。一方、上面は開放された形をしている。よって、円筒カップの内径は43mmになっている。以後、この容器のことをPTFE厚・円筒形容器と呼称する。
[0101]
[アルミ硝子板・円筒形容器]
 厚さ1mm、直径47mmのアルミ製円筒カップ状容器を用意した。円筒カップは曲面を側面としたとき、側面は1mmのアルミで閉鎖されており、底面(平板の円形状)も1mmのアルミで閉鎖されている。一方、上面は開放された形をしている。また、側面の内部にのみ、肉厚1mmのテフロン(登録商標)を均一に敷き詰め、結果として円筒カップの内径は45mmになっている。また、この容器の底面にはアルミの外に2.2mmの硝子板を接合した状態にしておく。以後、この容器のことをアルミ硝子・円筒形容器と呼称する。
[0102]
[温度差の小さい凍結工程、及び乾燥工程]
 PTFE厚・円筒形容器、アルミ硝子板・円筒形容器、にCBE3水溶液を流し込み、真空凍結乾燥機(TF5-85ATNNN:宝製作所)内で冷却棚板を用いて底面からCBE3水溶液を冷却した。この際の容器、CBE3水溶液の最終濃度、液量、及び棚板温度の設定の組み合わせは、以下に記載の通りで用意した。
[0103]
条件A:
 PTFE厚・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量4mL。 棚板温度の設定は、-10℃になるまで冷却し、-10℃で1時間、その後-20℃で2時間、さらに-40℃で3時間、最後に-50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を-20℃設定に戻してから-20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×10 5Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
[0104]
条件B:
 アルミ・硝子板・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量4mL。 棚板温度の設定は、-10℃になるまで冷却し、-10℃で1時間、その後-20℃で2時間、さらに-40℃で3時間、最後に-50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を-20℃設定に戻してから-20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×10 5Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
[0105]
条件C:
 PTFE厚・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量10mL。 棚板温度の設定は、-10℃になるまで冷却し、-10℃で1時間、その後-20℃で2時間、さらに-40℃で3時間、最後に-50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を-20℃設定に戻してから-20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×10 5Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
[0106]
[各凍結工程での温度測定]
 条件A~条件Cのそれぞれについて、溶液内で冷却側から最も遠い場所の液温(非冷却面液温)として容器内の円中心部の水表面液温を、また、溶液内で冷却側に最も近い液温(冷却面液温)として容器内の底部の液温を測定した。
 その結果、それぞれの温度とその温度差のプロファイルは図1~図3の通りとなった。
[0107]
 図1、図2、図3から条件A、条件B、条件Cでは棚板温度-10℃設定区間(-20℃に下げる前)において液温が融点である0℃を下回り、かつその状態で凍結が起こっていない(未凍結・過冷却)状態であることがわかる。また、この状態で、冷却面液温と非冷却面液温の温度差が2.5℃以下となっていた。なお、本明細書において、「温度差」とは、「非冷却面液温」-「冷却面液温」を意味する。その後、棚板温度を-20℃へ更に下げていくことによって、液温が0℃付近へ急激に上昇するタイミングが確認され、ここで凝固熱が発生し凍結が開始されたことが分かる。また、そのタイミングで実際に氷形成が始まっていることも確認できた。その後、温度は0℃付近を一定時間経過していく。ここでは、水と氷の混合物が存在する状態となっていた。最後0℃から再び温度降下が始まるが、この時、液体部分はなくなり氷となっている。従って、測定している温度は氷内部の固体温度となり、つまり液温ではなくなる。
[0108]
 以下に、条件A、条件B、条件Cについて、非冷却面液温が融点(0℃)になった時の温度差、棚板温度を-10℃から-20℃へ下げる直前の温度差と、凝固熱発生直前の温度差を記載する。なお、本発明で言う「直前の温度差」とは、イベント(凝固熱発生等)の1秒前~20秒前までの間で検知可能な温度差の内、最も高い温度のことを表している。
[0109]
条件A
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の温度差:1.1℃
-10℃から-20℃へ下げる直前の温度差:0.2℃
凝固熱発生直前の温度差:1.1℃
[0110]
条件B
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の温度差:1.0℃
-10℃から-20℃へ下げる直前の温度差:0.1℃
凝固熱発生直前の温度差:0.9℃
[0111]
条件C
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の温度差:1.8℃
-10℃から-20℃へ下げる直前の温度差:1.1℃
凝固熱発生直前の温度差:2.1℃
[0112]
[実施例3] 生体親和性高分子ブロックの作製(多孔質体の粉砕と架橋)
 実施例2で得られた条件A及び条件BのCBE3多孔質体をニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM-2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で1分間×5回、計5分間の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25~53μm、53~106μm、106~180μmの未架橋ブロックを得た。その後、減圧下160℃で熱架橋(架橋時間は8時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間の6種類を実施した)を施して、生体親和性高分子ブロック(CBE3ブロック)を得た。
 以下、48時間架橋を施した条件Aの多孔質体由来ブロックをE、48時間架橋を施した条件Bの多孔質体由来ブロックをFと称する。E及びFは温度差の小さい凍結工程により製造した多孔質体から作られた温度差小ブロックである。なお、架橋時間の違いは本願の評価においては性能に影響が見られなかったため、以後、48時間架橋したものを代表として使用した。また、E及びFでは性能に差が見られなかった。以下、実施例3で得られた生体親和性高分子ブロックを「花弁状ブロック」とも称する。以下の実施例4から7では、条件A、サイズ53~106μm、架橋時間48時間で作製した生体親和性高分子ブロックを使用した。
[0113]
[実施例4] 生体親和性高分子ブロックのタップ密度測定
 タップ密度は、ある体積にどれくらいのブロックを密に充填できるかを表す値であり、値が小さいほど、密に充填できない、すなわちブロックの構造が複雑であると言える。 タップ密度は、以下のように測定した。まず、ロートの先にキャップ(直径6mm、長さ21.8mmの円筒状:容量0.616cm 3)が付いたものを用意し、キャップのみの質量を測定した。その後、ロートにキャップを付け、ブロックがキャップに溜まるようにロートから流し込んだ。十分量のブロックを入れた後、キャップ部分を200回、机などの硬いところにたたきつけ、ロートをはずし、スパチュラですりきりにした。このキャップにすりきり一杯入った状態で質量を測定した。キャップのみの質量との差からブロックのみの質量を算出し、キャップの体積で割ることで、タップ密度を求めた。
 その結果、実施例3の生体親和性高分子ブロックのタップ密度は98mg/cm 3であった。
[0114]
[実施例5] 生体親和性高分子ブロックの架橋度測定
 実施例3で架橋したブロックの架橋度(1分子当たりの架橋数)を算出した。測定はTNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸)法を用いた。
<サンプル調製>
 ガラスバイアルに、サンプル(約10mg)、4%NaHCO 3水溶液(1mL)及び1質量%のTNBS水溶液(2mL)を添加し、混合物を37℃で3時間振とうさせた。その後、37質量%塩酸(10mL)及び純水(5mL)を加えた後、混合物を37℃で16時間以上静置し、サンプルとした。
[0115]
<ブランク調整>
 ガラスバイアルに、サンプル(約10mg)、4質量%NaHCO 3水溶液(1mL)及び1質量%TNBS水溶液(2mL)を添加し、直後に37質量%塩酸(3mL)を加え、混合物を37℃で3時間振とうした。その後、37質量%塩酸(7mL)及び純水(5mL)を加えた後、混合物を37℃で16時間以上静置し、ブランクとした。
 純水で10倍希釈したサンプル、及び、ブランクの吸光度(345nm)を測定し、以下の(式2)、及び(式3)から架橋度(1分子当たりの架橋数)を算出した。
[0116]
(式2) (As-Ab)/14600×V/w
(式2)は、リコンビナントペプチド1g当たりのリジン量(モル等量)を示す。
(式中、Asはサンプル吸光度、Abはブランク吸光度、Vは反応液量(g)、wはリコンビナントペプチド質量(mg)を示す。)
[0117]
(式3) 1-(サンプル(式2)/未架橋リコンビナントペプチド(式2))×34
(式3)は、1分子あたりの架橋数を示す。
[0118]
 その結果、実施例3の生体親和性高分子ブロックの架橋度は、4.2であった。
[0119]
[実施例6] 生体親和性高分子ブロックの吸水率測定
 実施例3で作製した生体親和性高分子ブロックの吸水率を算出した。
 25℃において、3cm×3cmのナイロンメッシュ製の袋の中に、生体親和性高分子ブロック約15mgを充填し、2時間イオン交換水中で膨潤させた後、10分風乾させた。それぞれの段階において質量を測定し、(式4)に従って、吸水率を求めた。
[0120]
(式4)
 吸水率=(w2-w1-w0)/w0
(式中、w0は、吸水前の材料の質量、w1は吸水後の空袋の質量、w2は吸水後の材料を含む袋全体の質量を示す。)
[0121]
 その結果、実施例3のブロックの吸水率は、786%であった。
[0122]
[実施例7] 複数種の細胞からなる細胞構造体(モザイク細胞塊)の作製
 下記の表1に記載のような比率となるように、第一の細胞と第二の細胞とを培地中に混合した細胞懸濁液を、細胞の合計濃度が1×10 5cells/mLとなるように培地で調整した。培地としては、第二の細胞培養用の培地を使用したが、第一の細胞培養の培地で行っても、得られる結論は変わらなかった。MSC用の培地はLonza社のMSCGM BulletKit TM。NHDF用培地はLonza社のFGM TM-2 BulletKit TM。BdSMC用の培地はLonza社のSmGM TM-2 BulletKit TM。HUVEC用培地はLonza社のEGM TM-2 or EGM TM BulletKit TM
 上記の細胞懸濁液に、実施例3で作製した生体親和性高分子ブロック(53-106μm)を0.1mg/mLとなるように加えた。上記で得た混合物200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、29時間静置することで花弁状ブロックと2種類の細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.001μgの生体親和性高分子ブロック)。この29時間の経時変化をU字底ウエルの上から観察した。上から観察しているため、球体状のモザイク細胞塊が形成されていく過程で、上から見た細胞塊の面積が徐々に小さくなっていくことになる(より立体化していく)。この経時変化を上から観察して撮影した写真を、図4、図6、図8、図10及び図12に示す。この細胞塊の面積を計測し、円換算したときの直径を縦軸に、経過時間を横軸にとったグラフを、図5、図7、図9、図11及び図12に示す。
[0123]
 写真の円形状が小さくなるほど、モザイク細胞塊の形成が早く進んだことを示している。グラフでは縦軸の直径が早く小さくなるほど、モザイク細胞塊の形成が早く進んだことを示している。
[0124]
 モザイク細胞塊形成が早く進んだことの指標としては、29時間(hr)以内に上部から見て1.5mm直径に収まるか、あるいは第一の細胞のみで作ったサイズから0.5mm以上小さいサイズに形成できるか、を指標として考えることもできる。
[0125]
 なお、「本実施例で作製したモザイク細胞塊の直径は何れも、1.0mm以上3.0mm以下であった。
[0126]
 なお、本実施例で使用した細胞の増殖速度を考慮すると、1時間から29時間までの培養後におけるモザイク細胞塊における第一の細胞と第二の細胞の細胞数の比率はそれぞれ、細胞懸濁液における第一の細胞と第二の細胞の細胞数の比率(表1に記載した比率)と実質的に同等である。
[0127]
 図4及び図5においては、第一の細胞としてHepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞)を、第二の細胞としてhMSC(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞)を使用してモザイク細胞塊を形成させた場合には、HepG2細胞単独(100%)で形成させるのに比べてhMSCを10%混ぜることによってモザイク細胞塊の形成の加速が観察された。またhMSCの細胞数の比率を20%、30%と増やすことによって、モザイク細胞塊の形成はさらに加速された。一方、hMSCの細胞数の比率を40%、50%程度まで増やしても、上記比率が30%の場合と比較して、モザイク細胞塊の形成が顕著に加速されることは見られず、この細胞の組み合わせでは30%程度のhMSC添加で十分な加速が得られることも分かった。
[0128]
 図6及び図7においては、第一の細胞としてHepG2細胞を、第二の細胞としてNHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞)を使用してモザイク細胞塊を形成させた場合、HepG2細胞単独(100%)で形成させるのに比べて、NHDFを10%混ぜることによってモザイク細胞塊の形成の加速が観察された。また、NHDFの細胞数の比率を10%、20%、30%、40%、50%と増やすことで、モザイク細胞塊の形成の加速が増幅されることも分かった。この細胞の組み合わせではNHDFを加える程、モザイク細胞塊の形成の加速が増幅されることが分かった。
[0129]
 図8及び図9においては、第一の細胞としてHUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を、第二の細胞としてhMSCを使用してモザイク細胞塊を形成させた場合、HUVEC細胞単独(100%)で形成させるのに比べて、hMSCを10%混ぜることによってモザイク細胞塊の形成の加速が観察された。
[0130]
 図10及び図11においては、第一の細胞としてHUVEC細胞を、第二の細胞としてNHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞)を使用してモザイク細胞塊を形成させた場合、HUVEC細胞単独(100%)で形成させるのに比べて、NHDFを10%又は20%以上混ぜることによって、モザイク細胞塊の形成の加速が観察された。
[0131]
 図12においては、第一の細胞としてHUVEC細胞を、第二の細胞としてBdSMC(正常ヒト膀胱平滑筋細胞)を使用してモザイク細胞塊を形成させた場合、HUVEC細胞単独(100%)で形成させるのに比べて、BdSMCを20%混ぜることによってモザイク細胞塊の形成の加速が観察された。
[0132]
 上記の通り、単独でのモザイク細胞塊形成が遅い細胞に対して、ある種の細胞を加えることによって、想定外に、高分子ブロックを含んだ状態でのモザイク細胞塊形成を加速できることが明らかになった。
[0133]
[表1]


請求の範囲

[請求項1]
生体親和性高分子ブロックと、2種類以上の細胞とを含み、複数個の前記細胞間の隙間に複数個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている、細胞構造体であって、前記2種類以上の細胞が、血管内皮細胞、心筋細胞、膵島細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、角膜上皮細胞及び網膜色素上皮細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第一の細胞と、間葉系細胞、間質細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞及び臍帯由来幹細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第二の細胞とを含む、前記細胞構造体。
[請求項2]
前記第一の細胞と前記第二の細胞との細胞数の比率が9:1~1:99である、請求項1に記載の細胞構造体。
[請求項3]
前記生体親和性高分子ブロックの大きさが10μm以上300μm以下である、請求項1又は2に記載の細胞構造体。
[請求項4]
厚さ又は直径が400μm以上3cm以下である、請求項1から3の何れか一項に記載の細胞構造体。
[請求項5]
前記生体親和性高分子ブロックのタップ密度が10mg/cm 3以上500mg/cm 3以下である、請求項1から4の何れか一項に記載の細胞構造体。
[請求項6]
前記生体親和性高分子ブロックにおいて、生体親和性高分子が架橋されている、請求項1から5の何れか一項に記載の細胞構造体。
[請求項7]
前記生体親和性高分子ブロックの架橋度が2以上であり、かつ前記生体親和性高分子ブロックの吸水率が300%以上である、請求項6に記載の細胞構造体。
[請求項8]
前記生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子を含有する固形物を粉砕することにより得られる生体親和性高分子ブロックである、請求項1から7の何れか一項に記載の細胞構造体。
[請求項9]
前記固形物が、生体親和性高分子を含有する水溶液を凍結乾燥して得られた固形物である、請求項8に記載の細胞構造体。
[請求項10]
細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下の生体親和性高分子ブロックを含む、請求項1から9の何れか一項に記載の細胞構造体。
[請求項11]
生体親和性高分子が、リコンビナントゼラチンである、請求項1から10の何れか一項に記載の細胞構造体。
[請求項12]
リコンビナントゼラチンが、下記式で示される、請求項11に記載の細胞構造体。
式:A-[(Gly-X-Y)n]m-B
式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3~100の整数を示し、mは2~10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
[請求項13]
リコンビナントゼラチンが、
配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;又は
配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;
の何れかである、請求項11又は12に記載の細胞構造体。
[請求項14]
前記第一の細胞が、血管内皮細胞又は肝細胞であり、前記第二の細胞が、線維芽細胞、平滑筋細胞又は間葉系幹細胞である、請求項1から13の何れか一項に記載の細胞構造体。
[請求項15]
生体親和性高分子ブロックと、2種類以上の細胞を含有する培養液との混合物をインキュベートすることを含む、請求項1から14の何れか一項に記載の細胞構造体の製造方法であって、前記2種類以上の細胞が、血管内皮細胞、心筋細胞、膵島細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、角膜上皮細胞及び網膜色素上皮細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第一の細胞と、間葉系細胞、間質細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞及び臍帯由来幹細胞からなる群から選択される少なくとも一種の第二の細胞とを含む、前記製造方法。
[請求項16]
前記2種類以上の細胞を含有する培養液における前記第一の細胞と前記第二の細胞との細胞数の比率が9:1~1:99である、請求項15に記載の方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]