明 細 書
技術分野
[0001]
本発明は、移動通信網のカバレッジエリアと無線LANのカバレッジエリアとの間で待ち受け先又は接続先を切り替えるための処理を行う無線端末に関する。
背景技術
[0002]
従来、LTE(Long Term Evolution)に代表される移動通信網において、ソースセル及びターゲットセルから受信する信号の測定結果が一定期間に亘って所定条件を満たす場合に、ソースセルからターゲットセルへの遷移(セル選択又はハンドオーバ)が行われる。このような処理は、受信信号の測定が一定の間隔で行われていることを前提として成り立っている(例えば、非特許文献1)。
[0003]
近年では、無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、移動通信網と無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理(ネットワークセレクション又はトラフィックステアリング)が提案されている。具体的には、切替処理は、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たすか否か及び無線LAN側の第2情報が第2条件を満たすか否かに基づいて行われる。
[0004]
ここで、移動通信網側の第1情報は、例えば、受信信号の信号レベル(RSRP;Reference Signal Received Power)の測定結果(RSRPmeas)及び受信信号の信号品質(RSRP;Reference Signal Received Quality)の測定結果(RSRQmeas)である。無線LAN側の第2情報は、例えば、無線LANのチャネル利用値、無線LANのバックホール値、受信信号の信号レベル(RCPI;Received Channel Power Indicator)、受信信号のノイズレベル(RSNI;Received Signal Noise Indicator)である。
先行技術文献
非特許文献
[0005]
非特許文献1 : TS36.304 V12.1.0
発明の概要
[0006]
一つの実施形態に係る無線端末は、無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う。前記無線端末は、前記移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記所定の処理を実行する制御部を備える。前記制御部は、前記無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了していない場合に、前記無線LAN側の第2情報が前記第2条件を満たしているか否かを判定する。
[0007]
一つの実施形態に係る無線端末は、無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う。前記無線端末は、前記移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記所定の処理を実行する制御部を備える。前記無線LAN側の第2情報を取得する周期として所定取得周期が設定されている。
[0008]
一つの実施形態に係る無線端末は、無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網から前記無線LANに対して待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う。前記無線端末は、前記移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記所定の処理を実行する制御部を備える。前記制御部は、前記移動通信網側の第1情報が前記第1条件を満たすと判定した後に、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たすか否かを判定する。
図面の簡単な説明
[0009]
[図1] 図1は、第1実施形態に係る通信システム1を示す図である。
[図2] 図2は、第1実施形態に係る無線端末10を示すブロック図である。
[図3] 図3は、第1実施形態に係る切替処理の判定(移動通信網側)を説明するための図である。
[図4] 図4は、第1実施形態に係る切替処理の判定(無線LAN側)を説明するための図である。
[図5] 図5は、第1実施形態に係る通信方法を示すシーケンス図である。
[図6] 図6は、変更例1に係る切替処理の判定(移動通信網側)を説明するための図である。
[図7] 図7は、変更例1に係る切替処理の判定(無線LAN側)を説明するための図である。
[図8] 図8は、変更例1に係る通信方法を示すシーケンス図である。
発明を実施するための形態
[0010]
以下において、本発明の実施形態に係る通信方法及び無線端末について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
[0011]
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
[0012]
[実施形態の概要]
第1に、実施形態に係る通信方法は、無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理を行う方法である。通信方法は、前記移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記切替処理を実行するステップAを備える。前記ステップAは、前記無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了していない場合に、前記無線LAN側の第2情報が前記第2条件を満たしているか否かを判定するステップを含む。
[0013]
このように、実施形態では、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了していない場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしているか否かを判定する。言い換えると、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了している場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしていないものと扱う。従って、非常に古い第2情報の参照によって切替処理が実行される事態が抑制され、適切な切替処理を実行することができる。
[0014]
第2に、実施形態に係る通信方法は、無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理を行う方法である。通信方法は、前記移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記切替処理を実行するステップAを備える。前記無線LAN側の第2情報を取得する周期として所定取得周期が設定されている。
[0015]
このように、実施形態では、無線LAN側の第2情報を取得する周期として所定取得周期が設定されている。言い換えると、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続しているか否かを十分な数のサンプル(第2情報)によって判定することができる。従って、第2情報の信頼性が向上し、適切な切替処理を実行することができる。また、結果として非常に古い第2情報の参照によって切替処理が実行される事態が抑制され、適切な切替処理を実行することができる。
[0016]
[第1実施形態]
(通信システム)
以下において、第1実施形態に係る通信システムについて説明する。図1は、第1実施形態に係る通信システム1を示す図である。
[0017]
図1に示すように、通信システム1は、無線基地局100と、アクセスポイント200とを有する。また、通信システム1は、無線基地局100又はアクセスポイント200と接続可能な無線端末10を備える。
[0018]
無線端末10は、携帯電話又はタブレットなどの端末である。無線端末10は、無線基地局100と無線通信を行う機能に加えて、アクセスポイント200と無線通信を行う機能を有する。
[0019]
無線基地局100は、第1カバレッジエリア100Aを有しており、第1カバレッジエリア100Aにおいて、LTE(Long Term Evolution)に代表される移動通サービスを提供する。無線基地局100は、1つ又は複数のセルを管理しており、第1カバレッジエリア100Aは、1つ又は複数のセルによって構成される。無線基地局100は、移動通信網のエンティティである。なお、セルとは、地理的なエリアを示す用語と考えてもよく、無線端末10と無線通信を行う機能と考えてもよい。
[0020]
アクセスポイント200は、第2カバレッジエリア200Aを有しており、第2カバレッジエリア200Aにおいて、無線LANサービスを提供する。アクセスポイント200は、無線LANのエンティティである。第2カバレッジエリア200Aの少なくとも一部は、第1カバレッジエリア100Aと重複する。第2カバレッジエリア200Aの全部が第1カバレッジエリア100Aと重複していてもよい。一般的には、第2カバレッジエリア200Aは、第1カバレッジエリア100Aよりも小さい。
[0021]
(適用シーン)
第1実施形態において、移動通信網と無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理(例えば、ネットワークセレクション又はトラフィックステアリング)を行う方法について説明する。具体的には、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、切替処理(例えば、ネットワークセレクション又はトラフィックステアリング)が実行される。
[0022]
第1実施形態において、切替処理は、移動通信網から無線LANに対して待ち受け先又は接続先を切り替える処理、及び、無線LANから移動通信網に対して待ち受け先又は接続先を切り替える処理の双方を含む。
[0023]
ここで、移動通信網側の第1情報は、例えば、受信信号の信号レベル(RSRP;Reference Signal Received Power)の測定結果(RSRPmeas)及び受信信号の信号品質(RSRP;Reference Signal Received Quality)の測定結果(RSRQmeas)である。
[0024]
無線LAN側の第2情報は、例えば、無線LANのチャネル利用値(ChannelUtilizationWLAN)、無線LANの下りリンクのバックホール値(BackhaulRateDlWLAN)、無線LANの上りリンクのバックホール値(BackhaulRateUlWLAN)、受信信号の信号レベル(RCPI;Received Channel Power Indicator)、受信信号のノイズレベル(RSNI;Received Signal Noise Indicator)である。
[0025]
(移動通信網から無線LANに対する切替処理)
移動通信網から無線LANに対して待ち受け先又は接続先を切り替える第1条件は、例えば、以下の条件(1a)又は(1b)のいずれかが満たされることである。但し、第1条件は、以下の条件(1a)~(1b)の全てが満たされることであってもよい。
[0026]
(1a)RSRPmeas<Thresh
ServingOffloadWLAN,LowP
(1b)RSRQmeas<Thresh
ServingOffloadWLAN,LowQ
[0027]
なお、“Thresh
ServingOffloadWLAN,LowP”及び“Thresh
ServingOffloadWLAN,LowQ”は、上位レイヤから提供される閾値又は予め定められた閾値である。
[0028]
移動通信網から無線LANに対して待ち受け先又は接続先を切り替える第2条件は、例えば、以下の条件(1c)~(1g)の全てが満たされることである。但し、第2条件は、以下の条件(1c)~(1g)のいずれかが満たされることであってもよい。
[0029]
(1c)ChannelUtilizationWLAN<Thresh
ChUtilWLAN,Low
(1d)BackhaulRateDlWLAN>Thresh
BackhRateDLWLAN,High
(1e)BackhaulRateUlWLAN>Thresh
BackhRateULWLAN,High
(1f)RCPI>Thresh
RCPIWLAN,High
(1g)RSNI>Thresh
RSNIWLAN,High
[0030]
なお、“Thresh
ChUtilWLAN,Low”、“Thresh
BackhRateDLWLAN,High”、“Thresh
BackhRateULWLAN,High”、“Thresh
RCPIWLAN,High”及び“Thresh
RSNIWLAN,High”は、上位レイヤから提供される閾値又は予め定められた閾値である。
[0031]
(無線LANから移動通信網に対する切替処理)
無線LANから移動通信網に対して待ち受け先又は接続先を切り替える第1条件は、例えば、以下の条件(2a)及び(2b)が満たされることである。但し、第1条件は、以下の条件(2a)又は(2b)のいずれかが満たされることであってもよい。
[0032]
(2a)RSRPmeas>Thresh
ServingOffloadWLAN,HighP
(2b)RSRQmeas>Thresh
ServingOffloadWLAN,HighQ
[0033]
なお、“Thresh
ServingOffloadWLAN,HighP”及び“Thresh
ServingOffloadWLAN,HighQ”は、上位レイヤから提供される閾値又は予め定められた閾値である。
[0034]
無線LANから移動通信網に対して待ち受け先又は接続先を切り替える第2条件は、例えば、以下の条件(2c)~(2g)のいずれかが満たされることである。但し、第2条件は、以下の条件(2c)~(2g)の全てが満たされることであってもよい。
[0035]
(2c)ChannelUtilizationWLAN>Thresh
ChUtilWLAN,High
(2d)BackhaulRateDlWLAN<Thresh
BackhRateDLWLAN,Low
(2e)BackhaulRateUlWLAN<Thresh
BackhRateULWLAN,Low
(2f)RCPI<Thresh
RCPIWLAN,Low
(2g)RSNI<Thresh
RSNIWLAN,Low
[0036]
なお、“Thresh
ChUtilWLAN,High”、“Thresh
BackhRateDLWLAN,Low”、“Thresh
BackhRateULWLAN,Low”、“Thresh
RCPIWLAN,Low”及び“Thresh
RSNIWLAN,Low”は、上位レイヤから提供される閾値又は予め定められた閾値である。
[0037]
なお、上述した閾値が提供されていない場合には、無線端末10は、閾値が提供されていない情報の取得(すなわち、受信又は測定)を省略してもよい。
[0038]
(無線端末)
以下において、第1実施形態に係る無線端末について説明する。図2は、第1実施形態に係る無線端末10を示すブロック図である。
[0039]
図2に示すように、無線端末10は、LTE無線通信部11と、WLAN無線通信部12と、制御部13とを有する。
[0040]
LTE無線通信部11は、無線基地局100と無線通信を行う機能を有する。例えば、LTE無線通信部11は、無線基地局100から参照信号を定期的に受信する。LTE無線通信部11は、参照信号の信号レベル(RSRP)及び参照信号の信号品質(RSRP)を定期的に測定する。
[0041]
第1実施形態において、LTE無線通信部11は、第2情報に設定されるべき有効期間を無線基地局100から受信する。第2情報に設定されるべき有効期間は、無線基地局100から送信されるRRC Connection Reconfiguration等のメッセージに含まれてもよい。或いは、第2情報に設定されるべき有効期間は、無線基地局100から送信されるSIB(WLAN-OffloadConfig-r12)に含まれてもよい。
[0042]
第2情報に設定される有効期間は、第2情報の種類を問わずに1つの値であってもよい。或いは、第2情報に設定される有効期間は、第2情報の種類毎に別々な値であってもよい。第2情報は、上述したように、無線LANのチャネル利用値(ChannelUtilizationWLAN)、無線LANの下りリンクのバックホール値(BackhaulRateDlWLAN)、無線LANの上りリンクのバックホール値(BackhaulRateUlWLAN)、受信信号の信号レベル(RCPI)及び受信信号のノイズレベル(RSNI)である。
[0043]
WLAN無線通信部12は、アクセスポイント200と無線通信を行う機能を有する。例えば、WLAN無線通信部12は、アクセスポイント200からビーコン又はプローブ応答を受信する。ビーコン又はプローブ応答は、BBS Load情報要素を含み、無線LANのチャネル利用値(ChannelUtilizationWLAN)は、BBS Load情報要素から取得することができる。
[0044]
WLAN無線通信部12は、アクセスポイント200に対する要求(GAS(Generic Advertisement Service) Request)に応じてアクセスポイント200から返信される応答(GAS Response)を受信する。応答(GAS Response)は、無線LANの下りリンクのバックホール値(BackhaulRateDlWLAN)及び無線LANの上りリンクのバックホール値(BackhaulRateUlWLAN)を含む。このような問合せ手順は、WFA(Wi-Fi Alliance)のHotspot2.0で規定されるANQP(Access Network Query Protocol)に従って行われる。
[0045]
WLAN無線通信部12は、アクセスポイント200から信号を受信する。WLAN無線通信部12は、受信信号の信号レベル(RCPI)及び受信信号のノイズレベル(RSNI)を測定する。受信信号の信号レベル(RCPI)は、受信フレームの総チャネル電力(信号電力、ノイズ電力及び干渉電力)を示すインディケータである。ノイズレベル(RSNI)は、受信フレームのノイズ電力及び干渉電力の合計値に対する受信フレームの信号電力の比率を示すインディケータである。
[0046]
制御部13は、無線端末10を制御する。具体的には、制御部13は、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、移動通信網と無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理を実行する。
[0047]
第1実施形態において、制御部13は、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了していない場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしているか否かを判定する。言い換えると、制御部13は、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了している場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしていないものと扱う。第2情報に設定されるべき有効期間は、上述したように、無線基地局100から通知される。
[0048]
具体的には、制御部13は、有効期間を測定するためのタイマ(Validity timer)を有する。タイマは、カウントアップによって時間を計測するタイマであってもよく、カウントダウンによって時間を計測するタイマであってもよい。制御部13は、第2情報の取得(すなわち、受信又は測定)に応じてタイマをリセットする。或いは、制御部13は、所定回数の第2情報の取得(すなわち、受信又は測定)に応じてタイマをリセットしてもよい。
[0049]
制御部13は、第2情報に設定される有効期間が第2情報の種類毎に別々な値である場合には、第2情報の種類毎に別々なタイマを有していてもよい。このような場合には、制御部13は、第2情報の取得に応じて、取得された第2情報に該当するタイマをリセットする。
[0050]
制御部13は、第2情報に設定される有効期間が第2情報の種類を問わずに1つの値である場合には、単数のタイマを有していてもよい。このような場合には、制御部13は、複数種類の第2情報の全ての取得に応じてタイマをリセットすることが好ましい。但し、制御部13は、複数種類の第2情報のいずれかの取得に応じてタイマをリセットしてもよい。
[0051]
制御部13は、第2情報に設定される有効期間が第2情報の種類を問わずに1つの値である場合であっても、第2情報の種類毎に別々なタイマを有していてもよい。このような場合には、制御部13は、第2情報の取得に応じて、取得された第2情報に該当するタイマをリセットする。
[0052]
(切替処理の判定)
以下において、切替処理の判定について、移動通信網から無線LANに対する切替処理を例に挙げて説明する。
[0053]
第1に、第1情報が第1条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続するか否かを判定する方法について説明する。第1情報は、参照信号の信号レベル(RSRP)の測定結果(RSRPmeas)又は参照信号の信号品質(RSRP)の測定結果(RSRQmeas)であり、参照信号は短い周期で定期的に受信され、RSRPmeas又はRSRQmeasが比較的に短い周期で測定される。すなわち、図3に示すように、RSRPmeas又はRSRQmeasは、時間軸方向において連続的に取得される。従って、第1情報が第1条件を満たしている状態が所定期間(Tsteering
WLAN)に亘って継続するか否かを高い信頼性で判定することができる。
[0054]
第2に、第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続するか否かを判定する方法について説明する。第2情報を取得する周期について取り決めがない。すなわち、図4に示すように、第2情報(例えば、BackhaulRateDlWLAN又はBackhaulRateUlWLAN)は、時間軸方向において離散的に取得される。従って、第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間(Tsteering
WLAN)に亘って継続するか否かを高い信頼性で判定することができない。
[0055]
そこで、第1実施形態では、第2情報に設定される有効期間という概念を導入して、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了していない場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしているか否かを判定する。言い換えると、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了している場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしていないものと扱う。
[0056]
図4に示すように、第2情報が第2条件を満たしているか否かを判定する際に参照する第2情報として複数のサンプルが存在する場合には、最も古い第2情報に設定される有効期間が満了していない場合に、第2情報が第2条件を満たしているか否かを判定してもよい。
[0057]
特に限定されるものではないが、BackhaulRateDlWLAN及びBackhaulRateUlWLANは、無線端末10が能動的に取得するパラメータであるため、時間軸方向において離散的に取得される可能性が高いことに留意すべきである。
[0058]
(通信方法)
以下において、第1実施形態に係る通信方法について説明する。図5は、第1実施形態に係る通信方法を示すシーケンス図である。ここでは、移動通信網から無線LANに対する切替処理を例に挙げて説明する。
[0059]
図5に示すように、ステップS11において、無線端末10は、無線基地局100に在圏している。「在圏」とは、無線基地局100が管理するセルに対する待ち受け状態(RRCアイドル状態)であってもよく、無線基地局100が管理するセルに接続された接続状態(RRCコネクティッド状態)であってもよい。
[0060]
ステップS12において、無線基地局100は、第2情報に設定されるべき有効期間を無線端末10に通知する。第2情報に設定されるべき有効期間は、無線基地局100から送信されるRRC Connection Reconfiguration等のメッセージに含まれてもよい。或いは、第2情報に設定されるべき有効期間は、無線基地局100から送信されるSIB(WLAN-OffloadConfig-r12)に含まれてもよい。
[0061]
ステップS13において、無線端末10は、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続するか否かを判定する。
[0062]
ここで、無線端末10は、上述したように、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了していない場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしているか否かを判定する。言い換えると、無線端末10は、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了している場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしていないものと扱う。
[0063]
ここでは、第1条件及び第2条件が所定期間に亘って満たされているものとして説明を続ける。
[0064]
ステップS14において、無線端末10は、移動通信網から無線LANに対する切替処理を実行する。従って、無線端末10は、アクセスポイント200に在圏する。「在圏」とは、アクセスポイント200に対する待ち受け状態であってもよく、アクセスポイント200に接続された接続状態であってもよい。
[0065]
(作用及び効果)
第1実施形態では、無線端末10は、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了していない場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしているか否かを判定する。言い換えると、無線端末10は、無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了している場合に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしていないものと扱う。従って、非常に古い第2情報の参照によって切替処理が実行される事態が抑制され、適切な切替処理を実行することができる。
[0066]
[変更例1]
以下において、第1実施形態の変更例1について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について主として説明する。
[0067]
具体的には、第1実施形態では、第2情報に有効期間が設定される。これに対して、変更例1では、第2情報を取得する周期として所定取得周期が設定される。
[0068]
第2情報に設定される所定取得周期は、第2情報の種類を問わずに1つの値であってもよい。或いは、第2情報に設定される所定取得周期は、第2情報の種類毎に別々な値であってもよい。第2情報は、上述したように、無線LANのチャネル利用値(ChannelUtilizationWLAN)、無線LANの下りリンクのバックホール値(BackhaulRateDlWLAN)、無線LANの上りリンクのバックホール値(BackhaulRateUlWLAN)、受信信号の信号レベル(RCPI)及び受信信号のノイズレベル(RSNI)である。
[0069]
(切替処理の判定)
以下において、切替処理の判定について、移動通信網から無線LANに対する切替処理を例に挙げて説明する。図6及び図7は、上述した図3及び図4と類似するため、重複部分の説明については省略する。
[0070]
変更例1では、図7に示すように、第2情報に設定される所定取得周期という概念を導入して、所定取得周期で取得される第2情報に基づいて、第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続しているか否かを判定する。
[0071]
特に限定されるものではないが、BackhaulRateDlWLAN及びBackhaulRateUlWLANは、無線端末10が能動的に取得するパラメータであるため、時間軸方向において離散的に取得される可能性が高いことに留意すべきである。
[0072]
(通信方法)
以下において、第1実施形態に係る通信方法について説明する。図8は、第1実施形態に係る通信方法を示すシーケンス図である。ここでは、移動通信網から無線LANに対する切替処理を例に挙げて説明する。図8は、図6と類似するため、重複部分の説明については省略する。
[0073]
ステップS12Aにおいて、無線基地局100は、第2情報に設定されるべき所定取得周期を無線端末10に通知する。第2情報に設定されるべき所定取得周期は、無線基地局100から送信されるRRC Connection Reconfiguration等のメッセージに含まれてもよい。或いは、第2情報に設定されるべき所定取得周期は、無線基地局100から送信されるSIB(WLAN-OffloadConfig-r12)に含まれてもよい。
[0074]
ステップS13において、無線端末10は、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続するか否かを判定する。
[0075]
ここで、無線端末10は、上述したように、所定取得周期で取得される第2情報に基づいて、第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続しているか否かを判定する。
[0076]
(作用及び効果)
変更例1では、無線LAN側の第2情報を取得する周期として所定取得周期が設定されている。言い換えると、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続しているか否かを十分な数のサンプル(第2情報)によって判定することができる。従って、第2情報の信頼性が向上し、適切な切替処理を実行することができる。また、結果として非常に古い第2情報の参照によって切替処理が実行される事態が抑制され、適切な切替処理を実行することができる。
[0077]
[変更例2]
以下において、第1実施形態の変更例2について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について主として説明する。
[0078]
第1実施形態では特に触れていないが、変更例2においては、無線端末10は、移動通信網から無線LANに対して待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理において、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たすと判定した後に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たすか否かを判定する。
[0079]
(作用及び効果)
変更例2では、無線端末10は、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たすと判定した後に、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たすか否かを判定する。従って、第1情報が第1条件を満たしていないケースにおいてまで、第2情報が第2条件を満たすか否かの判定が並列処理で行われることによって、第2情報が第2条件を満たすか否かの判定が無駄になる事態が抑制される。
[0080]
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
[0081]
実施形態では、第2情報に設定されるべき有効期間又は取得周期は、無線基地局100から通知される。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。第2情報に設定されるべき有効期間又は取得周期は、通信システム1において予め定められていてもよい。
[0082]
第1実施形態及び変更例1では、移動通信網から無線LANに対して待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理について主として説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。第1実施形態及び変更例1は、無線LANから移動通信網に対して待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理にも適用可能である。
[0083]
実施形態では、移動通信網としてLTEを例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。移動通信網は、通信キャリアによって提供されるネットワークであればよい。従って、移動通信網は、Release99であってもよく、GSM(登録商標)であってもよい。
[0084]
実施形態では、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、無線端末10が移動通信網と無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替える切替処理(例えば、ネットワークセレクション又はトラフィックステアリング)を行う一例を説明した。しかしながら、無線端末10は、所定の処理として、このような切替処理(例えば、ネットワークセレクション又はトラフィックステアリング)に代えて、無線基地局100に対する報告処理を行ってもよい。具体的には、無線端末10は、移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、無線LAN(及び/又は移動通信網)に関する測定報告を無線基地局100に送信する。無線基地局100は、無線端末10からの測定報告に基づいて、移動通信網と無線LANとの間の切り替えを指示する切替指示を無線端末10に送信する。無線端末10は、無線基地局100からの切替指示の受信に応じて、移動通信網と無線LANとの間の切り替えを行う。或いは、無線基地局100は、無線端末10からの測定報告に基づいて、移動通信網との通信及び無線LANとの通信を無線端末10が同時に行う同時通信(WLAN Aggregation)を無線端末10に指示してもよい。この場合、無線端末10は、無線基地局100からの切替指示の受信に応じて、一部のデータを移動通信網から無線LANに切り替えて、WLAN Aggregation通信を行う。
[0085]
[相互参照]
日本国特許出願第2014-161776号(2014年8月7日出願)の全内容が参照により本願明細書に組み込まれている。
産業上の利用可能性
[0086]
本発明は、通信分野において有用である。
請求の範囲
[請求項1]
無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う無線端末であって、
前記移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記所定の処理を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記無線LAN側の第2情報に設定された有効期間が満了していない場合に、前記無線LAN側の第2情報が前記第2条件を満たしているか否かを判定することを特徴とする無線端末。
[請求項2]
前記制御部は、前記移動通信網側のエンティティから通知される前記有効期間を受信する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線端末。
[請求項3]
無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う無線端末であって、
前記移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記所定の処理を実行する制御部を備え、
前記無線LAN側の第2情報を取得する周期として所定取得周期が設定されていることを特徴とする無線端末。
[請求項4]
前記制御部は、前記移動通信網側のエンティティから通知される前記所定取得周期を受信する処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の無線端末。
[請求項5]
無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網から前記無線LANに対して待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う無線端末であって、
前記移動通信網側の第1情報が第1条件を満たしており、かつ、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記所定の処理を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記移動通信網側の第1情報が前記第1条件を満たすと判定した後に、前記無線LAN側の第2情報が第2条件を満たすか否かを判定することを特徴とする無線端末。
図面