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1. WO2016017736 - 分泌シグナルペプチドならびにそれを利用したタンパク質の分泌および細胞表層提示

Document

明 細 書

発明の名称 分泌シグナルペプチドならびにそれを利用したタンパク質の分泌および細胞表層提示

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

非特許文献

0011  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0012   0013  

課題を解決するための手段

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025  

発明の効果

0026  

図面の簡単な説明

0027  

発明を実施するための形態

0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088  

実施例

0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142  

産業上の利用可能性

0143  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : 分泌シグナルペプチドならびにそれを利用したタンパク質の分泌および細胞表層提示

技術分野

[0001]
 本発明は、分泌シグナルペプチドならびにそれを利用したタンパク質の分泌および細胞表層提示に関する。

背景技術

[0002]
 近年、低炭素循環型社会実現の観点から、再生可能資源であるリグノセルロース系バイオマスからエタノールを製造する技術の導入が望まれている。その普及には、植物原料をエタノールに変換するための多段階の工程を統合し、効率化された、低コスト型同時糖化発酵プロセスの構築が急務である。
[0003]
 この構築にあたり、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を細胞表層に提示することで糖化能力を付与した酵母が作製されている。細胞表層提示技術としては、細胞表層局在タンパク質のGPIアンカータンパク質を利用する方法が挙げられる。このような細胞表層提示技術には、例えば、プロモーター、分泌シグナルペプチド、表層提示するための遺伝子、およびGPIアンカータンパク質の遺伝子を含む発現カセットが用いられる。
[0004]
 GPIアンカータンパク質およびプロモーターについては、種々の報告がある(特許文献1~4および非特許文献1~5)。
[0005]
 分泌シグナルペプチドは、細胞膜、細胞壁に局在する、または細胞外に分泌されるタンパク質のN末端に存在しているペプチドである。タンパク質の分泌発現系においては、目的タンパク質の分泌シグナルペプチドを高効率な分泌シグナルペプチドと置換することで、発現効率及び発現成功率を上げることができることが報告されている。したがって、タンパク質の細胞表層提示系、および分泌生産系の高効率化において、分泌シグナルペプチドの高効率化は重要な要素である。
[0006]
 既存の酵母における高効率な分泌タンパク質発現系で用いられているサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の代表的な分泌シグナルペプチドとしては、例えば、α-因子(非特許文献6)由来の分泌シグナルペプチド(MFα prepro)が挙げられる。また、このα-因子由来の分泌シグナルペプチドを超える分泌能力を有するとされるサッカロマイセス・セレビシエ由来の分泌シグナルペプチドも報告されている(特許文献5)。
[0007]
 一方で、一般的に、分泌シグナルペプチドの分泌能力は、その前後に接続されるプロモーターおよびタンパク質との組み合わせによって大きく変動することが知られている。また、分泌能力の安定性を、分泌シグナルペプチド配列から予測することは現在のところ困難である。従って、ある特定のプロモーターおよびタンパク質との組み合わせでは高い分泌能力を発揮できた分泌シグナル配列であっても、他の組み合わせにおいてはその分泌能力が大きく低下するということが頻繁に起こりうる。
[0008]
 例えば、特許文献5において高効率とされる分泌シグナルペプチドの分泌能力とは、単一のプロモーター(HSP1プロモーター)および単一のタンパク質(ルシフェラーゼ)と組み合わせた場合の活性のみを指標として評価されたものである。
[0009]
 さらに、特許文献5において高効率とされる分泌シグナルペプチドの分泌能力とは、目的タンパク質を細胞外(培養上清)へ分泌させた場合の活性のみを指標として評価されたものである。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 特開2011-160727号公報
特許文献2 : 特開2008-86310号公報
特許文献3 : 特開2007-189909号公報
特許文献4 : 特開2005-245335号公報
特許文献5 : 特開2007-167062号公報
特許文献6 : 特開2011-30563号公報

非特許文献

[0011]
非特許文献1 : Biotechnol. Lett.,2010年,第32巻,第1131-1136頁
非特許文献2 : Mol. Microbiol.,2004年,第52巻,第1413-1425頁
非特許文献3 : Appl. Environmen. Microbiol.,1997年,第63巻,第615-620頁
非特許文献4 : Biotechnol. Lett.,2010年,第32巻,第255-260頁
非特許文献5 : J. Bacteriol.,1997年,第179巻,第1513-1520頁
非特許文献6 : Protein Eng.,1996年,第9巻,第1055-1061頁
非特許文献7 : Appl. Microbiol. Biotechnol.,2006年,第72巻,第1136-1143頁
非特許文献8 : Nature Methods,2009年,第6巻,第343-345頁
非特許文献9 : FEMS Yeast Res.,2014年,第14巻,第399-411頁
非特許文献10 : Biotechnol. Biofuels,2014年,第7巻,第8頁
非特許文献11 : Enzyme Microb. Technol.,2012年,第50巻,第343-347頁
非特許文献12 : J Biochem.,2012年,第145巻,第701-708頁

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0012]
 本発明は、タンパク質の分泌生産および細胞表層提示において、従来用いられてきた分泌シグナルペプチドを上回る分泌能力を有する分泌シグナルペプチドを提供することを目的とする。
[0013]
 本発明はまた、異なる複数のプロモーター、およびタンパク質との組み合わせにおいても、従来用いられてきた分泌シグナルペプチドを上回る分泌能力を安定して有する分泌シグナルペプチドを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0014]
 本発明は、以下の(i)、(ii)および(iii)を含む、発現ベクターを提供する(この発現ベクターを分泌型の発現ベクターともいう):
(i)プロモーターDNA、
(ii)以下:
 (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
 (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、
 (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、
 (d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、および
 (e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、
からなる群より選択されるいずれかのペプチドをコードするDNA;ならびに
(iii)目的タンパク質をコードするDNA、または該目的タンパク質をコードするDNAを挿入するためのクローニング部位。
[0015]
 1つの実施形態では、上記分泌型の発現ベクターにおいて、上記プロモーターは、SED1プロモーターである。
[0016]
 1つの実施形態では、上記分泌型の発現ベクターにおいて、上記(iii)は、目的タンパク質をコードするDNAである。
[0017]
 本発明は、上記分泌型の発現ベクターが導入された形質転換酵母を提供する。
[0018]
 本発明は、タンパク質を分泌生産する酵母の作製方法を提供し、当該方法は、以下:
 プロモーターDNA;(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、(d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、および(e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチドからなる群より選択されるいずれかのペプチドをコードするDNA;ならびに目的タンパク質をコードするDNAを含む発現カセットを酵母に導入し、形質転換酵母を得る工程を含む。
[0019]
 本発明は、酵母においてタンパク質を分泌生産する方法を提供し、この方法は、上記形質転換酵母または上記方法で作製された酵母を培養する工程を含む。
[0020]
 本発明は、以下の(i)、(ii)、(iii)および(iv)を含む、発現ベクターを提供する(この発現ベクターを表層提示型の発現ベクターともいう):
(i)プロモーターDNA、
(ii)以下:
 (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
 (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、
 (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、
 (d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、および
 (e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、
からなる群より選択されるいずれかのペプチドをコードするDNA;
(iii)目的タンパク質をコードするDNA、または該目的タンパク質をコードするDNAを挿入するためのクローニング部位;ならびに、
(iv)アンカードメインをコードするDNA。
[0021]
 1つの実施形態では、上記表層提示型の発現ベクターにおいて、上記プロモーターは、SED1プロモーターである。
[0022]
 1つの実施形態では、上記表層提示型の発現ベクターにおいて、上記アンカードメインがSED1アンカードメインである。
[0023]
 1つの実施形態では、上記表層提示型の発現ベクターにおいて、上記(iii)は、目的タンパク質をコードするDNAである。
[0024]
 本発明は、上記表層提示型の発現ベクターが導入された形質転換酵母を提供する。
[0025]
 本発明は、タンパク質を表層提示する酵母の作製方法を提供し、当該方法は、以下:
 プロモーターDNA;(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、(d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、および(e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチドからなる群より選択されるいずれかのペプチドをコードするDNA;目的タンパク質をコードするDNA;ならびにアンカードメインをコードするDNAを含む発現カセットを酵母に導入し、形質転換酵母を得る工程、
を含む。

発明の効果

[0026]
 本発明によれば、高活性でタンパク質を分泌、または細胞表層に提示することができる。本発明の分泌シグナルペプチドは、タンパク質の分泌および細胞表層提示の両方に好適に使用することができる。さらに、本発明の分泌シグナルペプチドは、様々なプロモーターおよびタンパク質遺伝子との組合せにおいて安定して高い分泌能力を付与し得る。

図面の簡単な説明

[0027]
[図1] 発現カセットX1~X4を用いて得られた各種の表層提示形質転換酵母について、培養の際の菌体のβ-グルコシダーゼ活性の経時変化を示すグラフである。
[図2] 発現カセットX5~X8を用いて得られた各種の分泌形質転換酵母について、培養の際の培地中のβ-グルコシダーゼ活性の経時変化を示すグラフである。
[図3] 発現カセットX9~X11を用いて得られた各種の表層提示形質転換酵母について、48時間培養後の菌体のエンドグルカナーゼ活性を示すグラフである。
[図4] 発現カセットX12~X17を用いて得られた各種の表層提示形質転換酵母について、培養の際の菌体のβ-グルコシダーゼ活性の経時変化を示すグラフである。
[図5] 発現カセットX18およびX19を用いて得られた各種の分泌形質転換酵母について、培養の際の培地中のβ-グルコシダーゼ活性の経時変化を示すグラフである。
[図6] 発現カセットX20~X22を用いて得られた各種の分泌形質転換酵母について、24時間培養後の培地中のGFP蛍光強度の相対値を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0028]
 本発明について、以下、詳細に説明する。
[0029]
 (分泌シグナルペプチド)
 分泌シグナルペプチドは、細胞膜、細胞壁に局在する、または細胞膜外に分泌されるタンパク質のN末端に通常結合しているペプチドである。分泌シグナルペプチドは、通常、分泌性タンパク質が細胞内から細胞膜を通過して細胞外へ分泌される過程でシグナルペプチダーゼにより分解されることにより除去される。例えば、分泌シグナルペプチドは、当該分泌シグナルペプチドを本来有するタンパク質(分泌性タンパク質)または異種タンパク質のN末端に、これらのタンパク質が発現されるべき細胞内で連結されることで、その分泌性タンパク質または異種タンパク質を細胞外に分泌させるように機能する。
[0030]
 本明細書においては、酵母において、目的タンパク質の発現に際し、分泌シグナルペプチドとして機能することを「分泌シグナル活性」ともいう。
[0031]
 本発明によれば、以下の(a)~(e)からなる群より選択されるいずれかのペプチドが、分泌シグナルペプチドとして提供される:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド;
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド;
(d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド;および
(e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド。
[0032]
 さらに、本発明によれば、上記(a)~(e)からなる群より選択されるいずれかのペプチド(本明細書においては、単に「本発明の分泌シグナルペプチド」ともいう)をコードするDNAを含むポリヌクレオチドもまた提供される。本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNAの一例は、配列番号1で表される塩基配列であり、これは、配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする。
[0033]
 配列番号2で表されるアミノ酸配列およびそれをコードする塩基配列(配列番号1)は、酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の定常期における主要な細胞表層局在タンパク質であるSED1の分泌シグナルペプチドに由来するが、起源はこれに限定されない。SED1は、ストレスによって誘導され、細胞壁の完全性(integrity)の維持に寄与すると考えられている。SED1の遺伝子(Sed1)は、例えば、GenBankに登録された配列情報に基づき、当業者が通常用いる方法を用いて入手し得る(GenBank accession number NM_001180385;NCBI Gene ID:851649)。
[0034]
 ここで、本明細書において記載されるタンパク質またはペプチドは、開示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、本発明において所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質またはペプチドであってもよく、ポリヌクレオチドは、そのようなタンパク質またはペプチドをコードするものを含んでもよい。開示されるアミノ酸配列に対するアミノ酸の変異(例えば、欠失、置換もしくは付加)は、いずれか1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わされていてもよい。また、これらの変異の総数は、1または数個であるが、その所望の機能または効果を実質的に有する限り特に限定されず、タンパク質またはペプチドの大きさにも依存し得る。変異の総数は、例えば、1個以上10個以下、1個以上5個以下、1個以上4個以下、1個以上3個以下、または1個以上2個以下であるが、これらに限定されない。また、変異の総数は、例えば、以下に説明する配列同一性を満たす範囲内であり得る。アミノ酸置換の例としては、各機能または効果を実質的に保持する限りにおいていずれの置換であってもよい。例えば、保存的置換が挙げられる。保存的置換としては、具体的には以下のグループ内(すなわち、括弧内に示すアミノ酸間)での置換が挙げられる:(グリシン、アラニン)、(バリン、イソロイシン、ロイシン)、(アスパラギン酸、グルタミン酸)、(アスパラギン、グルタミン)、(セリン、トレオニン)、(リジン、アルギニン)、(フェニルアラニン、チロシン)。
[0035]
 他の実施形態としては、本明細書において記載されるタンパク質またはペプチドは、開示されるアミノ酸配列に対して、例えば、70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ本発明において所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質またはペプチドであってもよく、ポリヌクレオチドは、そのようなタンパク質またはペプチドをコードするものであってもよい。アミノ酸配列における配列同一性はまた、74%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上、98%以上、または99%以上であり得る。
[0036]
 本明細書において配列の同一性または類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。配列の「同一性」とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、「類似性」とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸または配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarityと称される。同一性および類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性および類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(例えば、Altschulら, J. Mol. Biol.,1990,215:403-410;Altschylら,Nucleic Acids Res., 1997,25:3389-3402)を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
[0037]
 さらに他の実施形態として、本明細書に記載されるタンパク質またはペプチドは、開示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズしたDNAによりコードされたものであってもよく、そしてポリヌクレオチドは、そのようなハイブリダイズしたDNAを含むものでもよい。開示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとのハイブリダイズについては、好ましくは、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする。
[0038]
 ストリンジェントな条件とは、例えば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち開示される塩基配列と例えば、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が例えば、15mM~750mM、50mM~750mM、または300mM~750mM、温度が例えば、25℃~70℃、50℃~70℃、または55℃~65℃、そしてホルムアミド濃度が例えば、0%~50%、20%~50%、または35%~45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、ナトリウム塩濃度が例えば、15mM~600mM、50mM~600mM、または300mM~600mM、そして温度が例えば50℃~70℃、55℃~70℃、または60℃~65℃である。また、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaClの存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムである)の中、65℃でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAが挙げられる。ハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed,, Cold Spring Harbor Laboratory(2001)に記載されている方法などの周知の方法で行うことができる。温度が高いほど、または塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり、より相同性(配列同一性)の高いポリヌクレオチドを単離できる。
[0039]
 さらなる他の実施形態として、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、開示される塩基配列と例えば、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有する塩基配列を有し、かつその所望の機能または効果を実質的に有するポリヌクレオチドが挙げられる。
[0040]
 所定のアミノ酸配列(例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列)をコードする塩基配列は、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって、タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく、所定のアミノ酸配列をコードする塩基配列の少なくとも1つの塩基を他の塩基に置換することもできる。さらなる他の実施形態として、本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNAは、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって変更された塩基配列を有するDNAも包含する。
[0041]
 本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNAまたは当該DNAを含むポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1で表される塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて、所定の酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ)から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型としてPCRを行うことによって、核酸断片として取得し得る。本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNAまたは当該DNAを含むポリヌクレオチドは、配列番号1で表される塩基配列に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、核酸断片として取得し得る。本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNAまたは当該DNAを含むポリヌクレオチドは、化学合成法等の当技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、核酸断片として合成してもよい。
[0042]
 また、上記でポリヌクレオチドについて説明した各種実施形態について、本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNAは、例えば、配列番号1で表される塩基配列からなるDNAを、慣用の突然変異誘発法、部位特異的変異法、エラープローンPCRを用いた分子進化的手法等によって改変することによって取得することができる。このような手法としては、Kunkel法、Gapped duplex法などの公知手法またはこれに準ずる方法が挙げられる。例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えば、Mutant-K(TAKARA社製)、Mutant-G(TAKARA社製)など)などを用いて、またはTAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキットを用いて変異が導入される。
[0043]
 以下に詳述するように、本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNAまたは当該DNAを含むポリヌクレオチドを用いて、目的タンパク質を分泌生産させるための分泌カセットおよび目的タンパク質を細胞表層に提示させる表層提示カセットのような発現カセットを作製することができる。
[0044]
 (アンカードメインをコードするDNA)
 表層提示カセットは、アンカードメインをコードするDNAを含む。
[0045]
 アンカードメインとしては、細胞表層局在タンパク質またはその細胞膜結合領域が用いられ得る。「細胞表層局在タンパク質」は、細胞表層に固定化または付着もしくは接着し、そこに局在するタンパク質をいう。細胞表層局在タンパク質としては、脂質で修飾されたタンパク質が知られており、この脂質が膜成分と共有結合することにより細胞膜に固定される。
[0046]
 細胞表層局在タンパク質の代表例として、GPI(glycosyl phosphatidyl inositol:エタノールアミンリン酸-6マンノースα-1,2マンノースα-1,6マンノースα-1,4グルコサミンα-1,6イノシトールリン脂質を基本構造とする糖脂質)アンカータンパク質を挙げることができる。GPIアンカータンパク質は、そのC末端に糖脂質であるGPIを有しており、このGPIが細胞膜中のPI(phosphatidyl inositol)と共有結合することによって細胞膜表面に結合する。
[0047]
 GPIアンカータンパク質のC末端へのGPIの結合は、以下のようにして行われる。GPIアンカータンパク質は、転写および翻訳の後、N末端側に存在する分泌シグナルの作用により小胞体内腔に分泌される。GPIアンカータンパク質のC末端またはその近傍の領域に、GPIアンカーがGPIアンカータンパク質と結合する際に認識されるGPIアンカー付着シグナルと呼ばれる領域が存在する。小胞体内腔およびゴルジ体において、このGPIアンカー付着シグナル領域が切断され、新たに生じるC末端にGPIが結合する。
[0048]
 GPIが結合したタンパク質は、分泌小胞により細胞膜まで運ばれ、GPIが細胞膜のPIに共有結合することにより、細胞膜に固定される。さらに、ホスファチジルイノシトール依存性ホスホリパーゼC(PI-PLC)によりGPIアンカーが切断され、細胞壁に組み込まれることにより細胞壁に固定された状態で、細胞表面に提示される。
[0049]
 本発明では、細胞表層局在タンパク質であるGPIアンカータンパク質の全体、またはその細胞膜結合領域であるGPIアンカー付着シグナル領域を含む領域をコードするポリヌクレオチドを用いることができる。細胞膜結合領域(GPIアンカー付着シグナル領域)は、通常、細胞表層局在タンパク質のC末端側の領域である。細胞膜結合領域は、GPIアンカー付着シグナル領域を含んでいればよく、融合タンパク質の酵素活性を阻害しない限り、GPIアンカータンパク質のその他の任意の部分を含んでいてもよい。
[0050]
 GPIアンカータンパク質は、酵母細胞で機能するタンパク質であればよい。このようなGPIアンカータンパク質としては、例えば、α-またはa-アグルチニン(AGα1、AGA1)、TIP1、FLO1、SED1、CWP1およびCWP2が挙げられる。好ましくは、SED1またはその細胞膜結合領域(GPIアンカー付着シグナル領域)が用いられる。Sed1のアンカータンパク質コーディング領域の塩基配列を配列番号4に示し、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号5に示す(但し、配列番号4および5はそれぞれ、開始コドンおよびそれによりコードされるメチオニンを含まない)。また、SED1の細胞膜結合領域(GPIアンカー付着シグナル領域)は、例えば、配列番号5の109位から337位を含む領域である。SED1アンカードメインとしては、配列番号5のアミノ酸配列の全長であっても、またはアンカー機能を損なわない限り、その一部の配列(例えば、配列番号5の109位から337位のアミノ酸配列を含む配列)であってもよい。
[0051]
 アンカードメインおよびそのコードDNAについて、上記で説明した配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
[0052]
 アンカードメイン(例えば、細胞表層局在タンパク質またはその細胞膜結合領域)をコードするDNAは、これらを有する微生物から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型として、既知の配列情報に基づいて設計したプライマーを用いてPCRによって核酸断片として取得し得る。このようなポリヌクレオチドは、既知の配列情報に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、核酸断片として取得し得る。上記ポリヌクレオチドを含む既存のベクターから、核酸断片として切り出して利用することもできる。ポリヌクレオチドは、化学合成法等の当技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、核酸断片として合成してもよい。
[0053]
 (プロモーターDNA)
 プロモーターDNAは、プロモーター活性を有していればよく、「プロモーター活性」とは、プロモーター領域に転写因子が結合し、転写を惹起する活性をいう。プロモーターDNAは、所望のプロモーター領域を保有する菌体、ファージなどから、制限酵素を用いて切り出し得る。必要に応じて制限酵素認識部位またはクローニングベクターとの重複部位を設けたプライマーを用い、PCRで所望のプロモーター領域を増幅することによりプロモーター領域のDNA断片を得ることができる。また、既に判明しているプロモーター領域の塩基配列情報をもとにして、所望のプロモーターDNAを化学合成してもよい。
[0054]
 本発明のポリヌクレオチドに含まれるプロモーターDNAは、酵母においてプロモーター活性を有する限り、任意のプロモーターであり得る。プロモーターDNAは、発現を目的とする遺伝子自身のものであっても、他の遺伝子由来のものを利用してもよい。また、アンカードメインとして用いられる細胞表層局在タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターであってもよい。例えば、SED1プロモーター、TDH3プロモーター、PGK1プロモーター、CWP2プロモーター、およびTDH1プロモーターが挙げられる。これらのプロモーターの塩基配列はそれぞれ、配列番号3、12、13、18、および21で表される塩基配列である。目的の機能を果たすものであれば、上記のように、それらの塩基配列において、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異された塩基配列であってもよい。
[0055]
 (目的タンパク質)
 目的タンパク質の種類、もしくはその起源は特に限定されない。目的タンパク質の種類として、例えば、酵素、抗体、リガンド、蛍光タンパク質などが挙げられる。酵素としては、例えば、セルロース分解酵素、デンプン分解酵素、グリコーゲン分解酵素、キシラン分解酵素、キチン分解酵素、脂質分解酵素などが挙げられ、より具体的には、例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ-グルコシダーゼ、アミラーゼ(例えば、グルコアミラーゼおよびα-アミラーゼ)、リパーゼなどが挙げられる。
[0056]
 目的タンパク質をコードするDNAは、イントロンを除いたcDNA配列が好ましい。
[0057]
 目的タンパク質をコードするDNAは、その全長をコードする配列であってもよく、目的タンパク質の活性を示すものであれば目的タンパク質の一部領域をコードする配列であってもよい。また、上記のように、目的タンパク質の活性を示す限り、天然型タンパク質をコードする塩基配列において、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異を含む塩基配列であってもよく、あるいは1または2以上(例えば数個)アミノ酸が欠失、付加または置換などの変異を含むアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列であってもよい。
[0058]
 目的タンパク質をコードするDNA(遺伝子)は、そのタンパク質を有するまたは産生する微生物から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型として、既知の配列情報に基づいて設計したプライマーを用いてPCRによって核酸断片として取得し得る。このようなポリヌクレオチドは、既知の配列情報に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、核酸断片として取得し得る。また、目的タンパク質をコードするDNAを含む既存のベクターから、核酸断片(発現カセットの形態であってもよい)として切り出して利用することもできる。このような遺伝子は、必要に応じて宿主のコドン頻度を考慮して最適化した配列に基づいて、人工的に合成して得ることもできる。
[0059]
 目的タンパク質の一例として、以下、セルロース分解酵素を例に挙げて説明する。
[0060]
 セルロース分解酵素は、β1,4-グリコシド結合を切断し得る任意の酵素をいう。セルロース分解酵素は、任意のセルロース加水分解酵素生産菌に由来し得る。セルロース加水分解酵素生産菌としては、代表的には、アスペルギルス属(例えば、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、およびアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae))、トリコデルマ属(例えば、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei))、クロストリディウム属(例えば、クロストリディウム・テルモセラム(Clostridium thermocellum)、セルロモナス属(例えば、セルロモナス・フィミ(Cellulomonas fimi)およびセルロモナス・ウダ(Cellulomonas uda))、シュードモナス属(例えば、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescence))などに属する微生物が挙げられる。
[0061]
 以下、代表的なセルロース分解酵素として、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ-グルコシダーゼについて説明するが、セルロース分解酵素はこれらに限定されない。
[0062]
 エンドグルカナーゼは、通常、セルラーゼと称される酵素であり、セルロースを分子内部から切断し、グルコース、セロビオース、およびセロオリゴ糖を生じる(「セルロース分子内切断」)。エンドグルカナーゼには5種類あり、それぞれエンドグルカナーゼI、エンドグルカナーゼII、エンドグルカナーゼIII、エンドグルカナーゼIV、およびエンドグルカナーゼVと称される。これらの区別は、アミノ酸配列の差異であるが、セルロース分子内切断作用を有する点では共通する。例えば、トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼ(特に、エンドグルカナーゼII:EGII(例えば、特許文献6))が用いられ得るが、これに限定されない。
[0063]
 セロビオヒドロラーゼは、セルロースの還元末端または非還元末端のいずれかから分解してセロビオースを遊離する(「セルロース分子末端切断」)。セロビオヒドロラーゼには2種類あり、それぞれセロビオヒドロラーゼIおよびセロビオヒドロラーゼIIと称される。これらの区別は、アミノ酸配列の差異であるが、セルロース分子末端切断作用を有する点では共通する。例えば、トリコデルマ・リーセイ由来セロビオヒドロラーゼ(特に、セロビオヒドロラーゼII:CBHII(例えば、特許文献6))が用いられ得るが、これに限定されない。
[0064]
 β-グルコシダーゼは、セルロースの非還元末端からグルコース単位を切り離していくエキソ型の加水分解酵素である(「グルコース単位切断」)。β-グルコシダーゼは、アグリコンまたは糖鎖とβ-D-グルコースとのβ1,4-グリコシド結合を切断し得、セロビオースまたはセロオリゴ糖を加水分解してグルコースを生成し得る。β-グルコシダーゼは、セロビオースまたはセロオリゴ糖を加水分解し得る酵素の代表例である。β-グルコシダーゼは現在、1種類知られており、β-グルコシダーゼ1と称される。例えば、アスペルギルス・アクレアタス由来β-グルコシダーゼ(特に、β-グルコシダーゼ1:BGL1(例えば、非特許文献7))が用いられ得るが、これに限定されない。
[0065]
 セルロースの良好な加水分解のために、セルロース加水分解様式の異なる酵素を組み合わせてもよい。セルロース分子内切断、セルロース分子末端切断、およびグルコース単位切断などの種々の異なるセルロース加水分解様式で作用する酵素が適宜、組み合わされ得る。それぞれの加水分解様式を有する酵素の例として、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ-グルコシダーゼが挙げられるがこれらに限定されない。セルロース加水分解様式の異なる酵素の組合せは、例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ-グルコシダーゼからなる群から選択され得る。セルロースの構成糖であるグルコースを最終的に生産できることが望ましいので、グルコースを生成し得る酵素を少なくとも1つ含むことが好ましい。グルコースを生成し得る酵素としては、グルコース単位切断酵素(例えば、β-グルコシダーゼ)に加え、エンドグルカナーゼもグルコースを生成し得る。例えば、酵母において、β-グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ、およびセロビオヒドロラーゼを分泌または表層提示させ得る。
[0066]
 (ターミネーターDNA)
 分泌カセットまたは表層提示カセットを含むポリヌクレオチドは、さらにターミネーターDNAを含むことができる。
[0067]
 ターミネーターDNAは、ターミネーター活性を有していればよく、「ターミネーター活性」とは、ターミネーター領域において転写を終結させる活性をいう。ターミネーターは、ターミネーター活性を有しさえすればよく、所望のターミネーター領域を保有する菌体、ファージなどから、制限酵素を用いて切り出し得る。必要に応じて制限酵素認識部位またはクローニングベクターの挿入部位を設けたプライマーを用い、PCRで所望のターミネーター領域を増幅することによりターミネーター領域のDNA断片を得ることができる。また、既に判明しているターミネーター領域の塩基配列情報をもとにして、所望のターミネーターDNAを化学合成してもよい。
[0068]
 ターミネーターDNAとしては、α-アグルチニンターミネーター、ADH1(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)ターミネーター、TDH3(グリセルアルデヒド-3’-リン酸デヒドロゲナーゼ)ターミネーター、DIT1ターミネーターなどが挙げられる。
[0069]
 (発現カセットの構築)
 本明細書において、「発現カセット」とは、目的タンパク質が発現し得るように、該目的タンパク質をコードするDNAと、その発現を調節するための種々の調節エレメントとが、宿主の微生物または細胞中で機能し得る状態で連結されているDNA配列またはポリヌクレオチドをいう。ここで「機能し得る状態で連結されている」とは、目的タンパク質をコードするDNAが、プロモーターの制御下で、そして場合により他の調節エレメントの制御下で、発現されるように、発現カセットまたは発現ベクターに含まれる各構成要素が連結されていることを意味する。各構成要素は、目的タンパク質が発現し得る限りにおいて、それらの要素間にリンカーなどの配列をさらに含んで連結されていてもよい。
[0070]
 発現カセットとしては、以下に説明するような分泌型の発現カセットおよび表層提示型の発現カセットが挙げられる。
[0071]
 分泌型の発現カセットは、プロモーターDNA、本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNA、および目的タンパク質をコードするDNAを含む(この発現カセットを、分泌カセットともいう)。
[0072]
 表層提示型の発現カセットは、プロモーターDNA、本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNA、目的タンパク質をコードするDNA、およびアンカードメインをコードするDNAを含む(この発現カセットを、表層提示カセットともいう)。
[0073]
 分泌カセットでは、プロモーターDNA、分泌シグナルペプチドをコードするDNA、および目的タンパク質をコードするDNAが、宿主微生物または宿主細胞中で機能し得る状態で連結され得る。分泌カセットは、例えば、5’から3’に向かって、プロモーターDNA、本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNA、および目的タンパク質をコードするDNAを記載の順に含むように構築される。分泌カセットは、目的タンパク質をコードするDNAの下流にターミネーターDNAをさらに含み得る。
[0074]
 表層提示カセットでは、プロモーターDNA、分泌シグナルペプチドをコードするDNA、目的タンパク質をコードするDNA、およびアンカードメインをコードするDNAが、宿主微生物または宿主細胞中で機能し得る状態で連結され得る。表層提示カセットは、例えば、5’から3’に向かって、プロモーターDNA、本発明の分泌シグナルペプチドをコードするDNA、目的タンパク質をコードするDNA、およびアンカードメインをコードするDNAを記載の順に含むように構築される。表層提示カセットは、アンカードメインをコードするDNAの下流にターミネーターDNAをさらに含み得る。
[0075]
 各種配列を含むDNAの合成および結合は、当業者が通常用い得る技術で行われ得る。各構成要素の結合については、例えば、PCR法により適当な制限酵素の認識配列を付与された各構成要素のDNAをその制限酵素で切断し、リガーゼなどを用いて連結すること、あるいはOne-step isothermal assembly(非特許文献8)を用いて行うことができる。これらの方法を用いることにより、正確な分泌シグナルペプチドの切断および活性な酵素の発現が可能である。
[0076]
 目的タンパク質(例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β-グルコシダーゼなどの酵素、蛍光タンパク質、または各種抗体)をコードする領域(構造遺伝子)、およびプロモーターおよびターミネーターなどの発現調節配列を含むプラスミドから、適宜、ベクターの調製に適した形態で切り出して、インサートを調製することによって利用することもできる。
[0077]
 あるいは、本発明の発現カセット(分泌カセットおよび表層提示カセット)は、目的タンパク質をコードするDNAを含む代わりに、目的タンパク質をコードするDNAを挿入するためのクローニング部位を含有するものであってもよい。そのようなクローニング部位は当技術分野で公知であり、例えば、様々な制限酵素により認識される部位を含むマルチクローニング部位を利用することができる。このようなクローニング部位を含有する発現カセットの場合、目的タンパク質をコードするDNAを、そのクローニング部位を介して発現カセットに挿入することが容易となる。
[0078]
 (発現ベクター)
 本発明は、上記発現カセットを含む発現ベクターを提供する。本発明の分泌型の発現ベクターは、上記分泌型の発現カセットを含み、そして本発明の表層提示型の発現ベクターは、上記表層提示型の発現カセットを含む。本明細書において「発現ベクター」とは、目的タンパク質をコードするDNAの発現のためのユニット(発現カセット)が挿入されたベクターをいい、目的タンパク質をコードするDNAが挿入されたものを含む。発現ベクターは、プラスミドベクターであってもよく、あるいは人工染色体であってもよい。酵母を宿主とする場合、ベクターの調製が容易であり、また酵母細胞の形質転換が容易である点で、プラスミドの形態が好ましい。DNAの取得の簡易化の点からは、酵母と大腸菌とのシャトルベクターであることが好ましい。必要に応じて、ベクターは、調節配列(オペレーター、エンハンサーなど)を含み得る。このようなベクターは、例えば、酵母の2μmプラスミドの複製開始点(Ori)とColE1の複製開始点とを有しており、酵母選択マーカー(以下に説明)および大腸菌の選択マーカー(薬剤耐性遺伝子など)を有する。
[0079]
 酵母選択マーカーとしては、公知の任意のマーカーが利用され得る。例えば、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性マーカー遺伝子(例えば、イミダゾールグリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ(HIS3)をコードする遺伝子、リンゴ酸ベータ-イソプロピルデヒドロゲナーゼ(LEU2)をコードする遺伝子、O-アセチルホモセリンO-アセチルセリンスルフィドリラーゼ(MET15)をコードする遺伝子、トリプトファンシンターゼ(TRP5)をコードする遺伝子、アルギニノコハク酸リアーゼ(ARG4)をコードする遺伝子、N-(5'-ホスホリボシル)アントラニル酸イソメラーゼ(TRP1)をコードする遺伝子、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(HIS4)をコードする遺伝子、オロチジン-5-リン酸デカルボキシラーゼ(URA3)をコードする遺伝子、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(URA1)をコードする遺伝子、ガラクトキナーゼ(GAL1)をコードする遺伝子、およびアルファ-アミノアジピン酸レダクターゼ(LYS2)をコードする遺伝子など)が挙げられる。例えば、栄養要求性マーカー遺伝子(例えば、HIS3、LEU2、URA3、MET15欠損マーカーなど)が好ましく用いられ得る。
[0080]
 (形質転換酵母の調製)
 宿主として用いる酵母は、子のう菌酵母(Ascomycetous yeast)に属するものであればよく、特に限定されない。例えば、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、スキゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ハンセヌラ属(Hancenula)、クロッケラ属(Kloeckera)、シュワニオマイセス属(Schwanniomyces)、コマガタエラ属(Komagataella)およびヤロウィア属(Yarrowia)などの酵母が挙げられる。
[0081]
 本発明の酵母は、上記発現カセットまたは発現ベクターを宿主となる酵母に導入することにより得られる。「導入」とは、発現カセットまたは発現ベクター中の発現を目的とする遺伝子(目的タンパク質をコードするDNA)が宿主細胞に導入されるだけでなく、宿主細胞で発現されることも含む。導入方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。代表的には、上記説明した本発明の発現ベクターを用いて酵母を形質転換する方法が挙げられる。形質転換方法は、特に限定されず、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、酢酸リチウム法、プロトプラスト法などのトランスフェクション法やマイクロインジェクション法のような公知の方法を制限なく使用できる。導入された遺伝子は、プラスミドの形態で存在してもよく、または酵母の染色体に挿入された形態あるいは酵母の染色体に相同組換えにより組み込まれた形態で存在してもよい。
[0082]
 分泌カセットを含む発現ベクターを酵母に導入し、形質転換酵母を得ることにより、タンパク質を分泌する酵母を作製し得る。表層提示カセットを含む発現ベクターを酵母に導入し、形質転換酵母を得ることにより、タンパク質を細胞表層に提示する酵母を作製し得る。
[0083]
 上記発現カセットまたは発現ベクターが導入された酵母は、常法に従い、酵母選択マーカーによる形質、菌体の目的タンパク質の活性(表層提示型)または菌体外の目的タンパク質の活性(分泌型)などを指標として選択することができる。
[0084]
 また、表層提示カセットを含む発現ベクターを酵母に導入して得られた形質転換酵母の細胞表層に目的タンパク質が固定(細胞表層提示)されていることは、常法により確認することができる。例えば、被験酵母に、このタンパク質に対する抗体と、FITCのような蛍光標識2次抗体またはアルカリフォスファターゼのような酵素標識2次抗体などとを作用させる方法、このタンパク質に対する抗体とビオチン標識2次抗体とを反応させた後さらに蛍光標識ストレプトアビジンを作用させる方法などが挙げられる。
[0085]
 複数種のタンパク質を分泌または細胞表層提示発現するように、酵母を形質転換することもできる。この場合、複数種のタンパク質のそれぞれをコードする配列の遺伝子発現カセットを含むそれぞれの発現ベクターを構築してもよく、複数の遺伝子発現カセットを1つの発現ベクターに入れることもできる。例えば、3遺伝子同時発現用ベクターpATP403を利用することができる(非特許文献9)。
[0086]
 本発明の形質転換酵母は、一般的に酵母に適用可能な培養条件下で培養し得る。形質転換酵母の培養は、当業者に周知の方法により適宜実施できる。培地組成、培養pHおよび培養温度は、その酵母の性質および目的タンパク質に応じて、適宜設定し得る。培養の際の菌体密度および培養時間もまた、その酵母の性質および目的タンパク質に応じて適宜設定し得る。
[0087]
 さらに、本発明によれば、タンパク質を分泌生産する方法もまた提供される。本方法は、分泌型の形質転換酵母を上述した培養工程を用いて実施することができる。例えば、当該方法により、抗体や酵素等のタンパク質を分泌生産し得る。必要に応じて、培養液から生産含有画分を回収する工程、さらにこれを精製または濃縮する工程を実施することもできる。これらの工程およびそれらに要する手段は、当業者によって適宜選択される。
[0088]
 本発明の形質転換酵母を発酵培養に供する場合、酵母に一般的に適用される培養条件を適宜選択して用いることができる。典型的には、発酵のための培養のために、静置培養、振とう培養または通気攪拌培養等を用いることができる。通気条件は、嫌気条件下、微好気条件下、および好気条件などから適宜選択することができる。培地組成、培地pH、培養温度、培養の際の菌体密度および培養時間、その後の回収、精製、濃縮については、適宜設定され得る。
実施例
[0089]
 以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[0090]
 SED1分泌シグナル(配列番号2)およびCWP2分泌シグナル(配列番号20)のアミノ酸配列は、GenBankに登録されたそれぞれの遺伝子にコードされるアミノ酸配列から、シグナルペプチド予測プログラムPSORT(http://psort.nibb.ac.jp/)(WoLF PSORT(http://www.genscript.com/psort/wolf_psort.html)として利用可能)による予測に基づき、抽出した。
[0091]
 本実施例で用いた酵母サッカロマイセス・セレビシエのBY4741株(非特許文献8)は、Invitrogen社より入手した。
[0092]
 本実施例に示す全てのPCR法には、KOD-Plus-Neo-DNAポリメラーゼ(東洋紡績株式会社製)を用いて実施した。
[0093]
 本実施例に示す全ての酵母への遺伝子導入は、酢酸リチウム法によって実施した。
[0094]
 (調製例1:各種発現カセットを含有するベクタープラスミドの調製)
 下記発現カセットX1~X19をそれぞれ含むプラスミドを調製した:
X1:SED1プロモーター+グルコアミラーゼ分泌シグナル+BGL1+SED1アンカードメイン
X2:SED1プロモーター+SED1分泌シグナル+BGL1+SED1アンカードメイン
X3:SED1プロモーター+MFα prepro+BGL1+SED1アンカードメイン
X4:SED1プロモーター+HKR1分泌シグナル+BGL1+SED1アンカードメイン
X5:SED1プロモーター+グルコアミラーゼ分泌シグナル+BGL1
X6:SED1プロモーター+SED1分泌シグナル+BGL1
X7:SED1プロモーター+MFα prepro+BGL1
X8:SED1プロモーター+HKR1分泌シグナル+BGL1
X9:SED1プロモーター+グルコアミラーゼ分泌シグナル+EGII+SED1アンカードメイン
X10:SED1プロモーター+SED1分泌シグナル+EGII+SED1アンカードメイン
X11:SED1プロモーター+MFα prepro+EGII+SED1アンカードメイン
X12:TDH3プロモーター+グルコアミラーゼ分泌シグナル+BGL1+SED1アンカードメイン
X13:TDH3プロモーター+SED1分泌シグナル+BGL1+SED1アンカードメイン
X14:TDH3プロモーター+MFα prepro+BGL1+SED1アンカードメイン
X15:PGK1プロモーター+グルコアミラーゼ分泌シグナル+BGL1+SED1アンカードメイン
X16:PGK1プロモーター+SED1分泌シグナル+BGL1+SED1アンカードメイン
X17:PGK1プロモーター+MFα prepro+BGL1+SED1アンカードメイン
X18:CWP2プロモーター+SED1分泌シグナル+BGL1
X19:CWP2プロモーター+CWP2分泌シグナル+BGL1
X20:ピキア・パストリス由来TDH1プロモーター+MFα prepro+GFP
X21:ピキア・パストリス由来TDH1プロモーター+グルコアミラーゼ分泌シグナル+GFP
X22:ピキア・パストリス由来TDH1プロモーター+SED1分泌シグナル+GFP
[0095]
 上記発現カセットに含まれる各構成要素の塩基配列およびアミノ酸配列は、以下に示されるとおりである:
配列番号1:サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1の分泌シグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列
配列番号2:サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1の分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号3:サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1のプロモーターの塩基配列
配列番号4:本発明の実施例においてSED1アンカードメインとして用いた、サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1アンカータンパク質のコーディング領域から開始コドンを除いた領域のDNAの塩基配列
配列番号5:本発明の実施例においてSED1アンカードメインとして用いた、サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1アンカータンパク質(但し開始メチオニンを含まない)のアミノ酸配列
配列番号6:リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)由来のグルコアミラーゼ分泌シグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列
配列番号7:リゾプス・オリゼ由来のグルコアミラーゼ分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号8:サッカロマイセス・セレビシエ由来のMFα preproをコードするDNAの塩基配列
配列番号9:サッカロマイセス・セレビシエ由来のMFα preproのアミノ酸配列
配列番号10:サッカロマイセス・セレビシエ由来の分泌タンパク質HKR1の分泌シグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列
配列番号11:サッカロマイセス・セレビシエ由来の分泌タンパク質HKR1の分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号12:サッカロマイセス・セレビシエ由来のTDH3プロモーターの塩基配列
配列番号13:サッカロマイセス・セレビシエ由来のPGK1プロモーターの塩基配列
配列番号14:アスペルギルス・アクレアタス由来β-グルコシダーゼ1(BGL1)をコードするDNAの塩基配列
配列番号15:アスペルギルス・アクレアタス由来β-グルコシダーゼ1(BGL1)のアミノ酸配列
配列番号16:トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(EGII)をコードするDNAの塩基配列
配列番号17:トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(EGII)のアミノ酸配列
配列番号18:サッカロマイセス・セレビシエ由来のCWP2プロモーターの塩基配列
配列番号19:サッカロマイセス・セレビシエ由来のCWP2分泌シグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列
配列番号20:サッカロマイセス・セレビシエ由来のCWP2分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号21:ピキア・パストリス由来のTDH1プロモーターの塩基配列
配列番号22:ピキア・パストリスのコドンに最適化したウミキノコグリーン1(mUkG1)をコードするDNAの塩基配列
配列番号23:ウミキノコグリーン1(mUkG1)のアミノ酸配列
[0096]
 以下、本実施例で用いる形質転換酵母株を得るために使用した各種プラスミドの調製手順について説明する。
[0097]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の細胞表層局在タンパク質遺伝子Sed1について、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノムを鋳型とし、プライマー対Sed1p-F(配列番号24)およびSed1ss-R(配列番号25)を用いて増幅し、プロモーター領域および分泌シグナル配列を含むDNA断片を調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SGS(栄養要求性マーカー遺伝子HIS3、およびBGL1発現カセット(すなわち、SED1プロモーター、リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド配列、アスペルギルス・アクレアタス由来β-グルコシダーゼ1(BGL1)遺伝子のコーディング領域、SED1遺伝子のコーディング領域、およびα-アグルチニン遺伝子のコーディング領域下流445bpのターミネーター領域がこの順に配置されているカセット:発現カセットX1)を有する表層発現用ベクター:非特許文献10のpIBG-SSに相当)を鋳型とし、プライマー対BGL1-F(配列番号26)およびPRS-R(配列番号27)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX2を含むプラスミドをpIBG-SSSと命名した。
[0098]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来のMFα prepro leader配列を含む断片を、PCR法により、pIUPGSBAAG(MFα prepro配列およびα-アグルチニン遺伝子の3’側の半分の領域を有するα-アミラーゼの表層発現用ベクター:非特許文献11)を鋳型とし、プライマー対MFa-F(配列番号28)およびMFa-R(配列番号29)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SGSを鋳型とし、プライマー対BGL1-F2(配列番号30)およびSed1p-R(配列番号31)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX3を含むプラスミドをpIBG-SMSと命名した。
[0099]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の分泌タンパク質遺伝子Hkr1について、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノムを鋳型とし、プライマー対Hkr1ss-F(配列番号32)およびHkr1ss-R(配列番号33)を用いて増幅し、分泌シグナル配列を含むDNA断片を調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SGSを鋳型とし、プライマー対BGL1-F3(配列番号34)およびSed1p-R2(配列番号35)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX4を含むプラスミドをpIBG-SHSと命名した。
[0100]
 pIBG-SGS、pIBG-SSS、pIBG-SMS、およびpIBG-SHSのSED1遺伝子のコーディング領域を除いた配列を、それぞれのプラスミドを鋳型とし、プライマー対PRS-BsrGI-F(配列番号36)およびBGL1-BsrGI-R(配列番号37)を用いて増幅することにより調製した。これらの断片をそれぞれBsrGIで処理し、セルフライゲーション法により環状化させた。得られた発現カセットX5、X6、X7、またはX8を含むプラスミドをそれぞれpIBG-SGsec、pIBG-SSsec、pIBG-SMsec、およびpIBG-SHsecと命名した。
[0101]
 トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(EGII)遺伝子のコーディング領域を、PCR法により、pIEG-SGS(栄養要求性マーカー遺伝子HIS3、およびEGII発現カセット(すなわち、SED1プロモーター、リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド配列、EGII遺伝子のコーディング領域、SED1遺伝子のコーディング領域、およびα-アグルチニン遺伝子のコーディング領域下流445bpのターミネーター領域がこの順に配置されているカセット:発現カセットX9)を有する表層発現用ベクター:非特許文献10のpIEG-SSに相当)を鋳型とし、プライマー対EGII-F(配列番号38)およびEGII-R(配列番号39)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SSSを鋳型とし、プライマー対Sed1a-F(配列番号40)およびSed1ss-R2(配列番号41)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX10を含むプラスミドをpIEG-SSSと命名した。
[0102]
 EGII遺伝子のコーディング領域を、PCR法により、pIEG-SGSを鋳型とし、プライマー対EGII-F2(配列番号42)およびEGII-R(配列番号39)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SMSを鋳型とし、プライマー対Sed1a-F(配列番号40)およびMFa-R2(配列番号43)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX11を含むプラスミドをpIEG-SMSと命名した。
[0103]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子TDH3のプロモーター領域を、PCR法により、pIBG-TGS(栄養要求性マーカー遺伝子HIS3、およびBGL1発現カセット(すなわち、TDH3プロモーター、リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド配列、BGL1遺伝子のコーディング領域、SED1遺伝子のコーディング領域、およびα-アグルチニン遺伝子のコーディング領域下流445bpのターミネーター領域がこの順に配置されているカセット:発現カセットX12)を有する表層発現用ベクター:非特許文献10のpIBG-TSに相当)を鋳型とし、プライマー対TDH3p-F(配列番号44)およびTDH3p-R(配列番号45)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SSSを鋳型とし、プライマー対Sed1ss-F(配列番号46)およびPRS-R2(配列番号47)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX13を含むプラスミドをpIBG-TSSと命名した。
[0104]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子TDH3のプロモーター領域を、PCR法により、pIBG-TGSを鋳型とし、プライマー対TDH3p-F(配列番号44)およびTDH3p-R2(配列番号48)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SMSを鋳型とし、プライマー対MFa-F2(配列番号49)およびPRS-R2(配列番号47)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX14を含むプラスミドをpIBG-TMSと命名した。
[0105]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子PGK1のプロモーター領域を、PCR法により、pGK403(PGK1のプロモーター領域およびターミネーター領域を有するタンパク質発現用ベクター:非特許文献12)を鋳型とし、プライマー対PGK1p-F(配列番号50)およびPGK1p-R(配列番号51)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SGSを鋳型とし、プライマー対GAss-F(配列番号52)およびPRS-R3(配列番号53)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX15を含むプラスミドをpIBG-PGSと命名した。
[0106]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子PGK1のプロモーター領域を、PCR法により、pGK403を鋳型とし、プライマー対PGK1p-F(配列番号50)およびPGK1p-R2(配列番号54)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SSSを鋳型とし、プライマー対Sed1ss-F2(配列番号55)およびPRS-R3(配列番号53)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX16を含むプラスミドをpIBG-PSSと命名した。
[0107]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子PGK1のプロモーター領域を、PCR法により、pGK403を鋳型とし、プライマー対PGK1p-F(配列番号50)およびPGK1p-R3(配列番号56)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SMSを鋳型とし、プライマー対MFa-F3(配列番号57)およびPRS-R3(配列番号53)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX17を含むプラスミドをpIBG-PMSと命名した。
[0108]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の細胞表層局在タンパク質遺伝子CWP2のプロモーター領域を、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノムを鋳型とし、プライマー対Cwp2p-F(配列番号58)およびCwp2p-R(配列番号59)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SSsecを鋳型とし、プライマー対Sed1ss-F3(配列番号60)およびPRS-R4(配列番号61)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX18を含むプラスミドをpIBG-CSsecと命名した。
[0109]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来の細胞表層局在タンパク質遺伝子CWP2のプロモーター領域および分泌シグナル配列を、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノムを鋳型とし、プライマー対Cwp2p-F(配列番号58)およびCwp2ss-R(配列番号62)を用いて増幅することにより調製した。この断片を、ベクタープラスミドpIBG-SSsecを鋳型とし、プライマー対BGL1-F4(配列番号63)およびPRS-R4(配列番号61)を用いて増幅した断片と、One-step isothermal assemblyにより連結した。得られた発現カセットX19を含むプラスミドをpIBG-CCsecと命名した。
[0110]
 ピキア・パストリス由来のTDH1遺伝子のプロモーター領域、SpeIサイト、サッカロマイセス・セレビシエ由来のMFα prepro leader配列、XhoIサイト、緑色蛍光タンパク質(GFP)コーディング領域、およびピキア・パストリス由来のAOX1遺伝子のターミネーター領域がこの順に配置されている断片を、両端に制限酵素HindIIIおよびBamHIのサイトを付与したうえで遺伝子合成した。なお、GFP遺伝子には、ピキア・パストリスのコドンに最適化したウミキノコグリーン1(mUkG1)遺伝子を用いた。この断片をHindIIIおよびBamHIで処理し、同様に処理したプラスミドpUC19に連結した。得られたプラスミドをpmUkG1_MFαと命名した。続いて、G418耐性遺伝子配列を、PCR法により、Life technology社製プラスミドpPIC9Kを鋳型とし、プライマー対G418r-BamHI-F(配列番号64)およびG418r-EcoRI-R(配列番号65)を用いて増幅することにより調製した。この断片をBamHIおよびEcoRIで処理し、同様に処理したプラスミドpmUkG1_MFαに連結した。得られた発現カセットX20を含むプラスミドをpGmUkG1_MFαと命名した。
[0111]
 リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド配列を、PCR法により、pIBG-SGSを鋳型とし、プライマー対MFa-SpeI-F(配列番号66)およびMFa-XhoI-R(配列番号67)を用いて増幅することにより調製した。この断片をSpeIおよびXhoIで処理し、同様に処理してMFα prepro leader配列を除いたプラスミドpGmUkG1_MFαに連結した。得られた発現カセットX21を含むプラスミドをpGmUkG1_GAと命名した。
[0112]
 サッカロマイセス・セレビシエ由来SED1の分泌シグナルペプチド配列を、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノムを鋳型とし、プライマー対Sed1ss-SpeI-F(配列番号68)およびSed1ss-XhoI-R(配列番号69)を用いて増幅することにより調製した。この断片をSpeIおよびXhoIで処理し、同様に処理してMFα prepro leader配列を除いたプラスミドpGmUkG1_MFαに連結した。得られた発現カセットX22を含むプラスミドをpGmUkG1_SED1と命名した。
[0113]
 (調製例2:各種形質転換酵母の調製)
 調製例1に記載の以下のプラスミド(pIBG-SGS、pIBG-SSS、pIBG-SMS、pIBG-SHS、pIBG-SGsec、pIBG-SSsec、pIBG-SMsec、pIBG-SHsec、pIEG-SGS、pIEG-SSS、pIEG-SMS、pIBG-TGS、pIBG-TSS、pIBG-TMS、pIBG-PGS、pIBG-PSS、pIBG-PMS、pIBG-CSsec、およびpIBG-CCsec)をNdeIで処理し、それぞれ酵母サッカロマイセス・セレビシエBY4741株(MATα his3 leu2 met15 ura3株)に供し、酢酸リチウム法により形質転換した。これらの形質転換株をそれぞれBY-BG-SGS株、BY-BG-SSS株、BY-BG-SMS株、BY-BG-SHS株、BY-BG-SGsec株、BY-BG-SSsec株、BY-BG-SMsec株、BY-BG-SHsec株、BY-EG-SGS株、BY-EG-SSS株、BY-EG-SMS株、BY-BG-TGS株、BY-BG-TSS株、BY-BG-TMS株、BY-BG-PGS株、BY-BG-PSS株、BY-BG-PMS株、BY-BG-CSsec株、およびBY-BG-CCsec株と称する。
[0114]
 調製例1に記載の以下のプラスミド(pGmUkG1_MFa、pGmUkG1_GA、およびpGmUkG1_SED1)をBsiWIで処理し、それぞれ酵母ピキア・パストリスCBS7435株(野生株)に供し、酢酸リチウム法により形質転換した。これらの形質転換株をそれぞれPP-GFP-MFα株、PP-GFP-GA株、およびPP-GFP-SED1株と称する。
[0115]
 (試験例1:β-グルコシダーゼ活性(BGL)の検討)
 表層提示株については菌体のBGL活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(U))を、そして分泌株については培地中のBGL活性(培地1L当たりの活性量(U))を測定した。β-グルコシダーゼ(BGL)活性の検討を以下の手順に従って行った。
[0116]
 菌体をSD培地(ロイシン、メチオニン、およびウラシルを補充)5mLに移植し、30℃、180rpmにて18時間培養し(前培養)、次いで1×YPD培地50mLに移植し(初発OD 600=0.05)、30℃、150rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの24時間経過ごとに培養液をそれぞれ回収し、1,000g、5分間の遠心分離にて菌体と培地とを分離した。
[0117]
 菌体のβ-グルコシダーゼ活性の測定は、以下のように行った:
 (1)菌体を蒸留水で2回洗浄;
 (2)反応液500μL(組成:10mM pNPG(p-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド)100μL(最終濃度2mM);500mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0) 50μL(最終濃度50mM);蒸留水250μL;および酵母懸濁液100μL)(最終菌体濃度1~10g湿潤菌体/L))を調製し、500rpm、30℃にて10分間反応;
 (3)反応終了後、3M Na CO  500μLを加え反応を停止;そして
 (4)10,000gで5分間遠心後、上清の400nmにおける吸光度ABS 400を測定。1分間で1μmolのpNP(p-ニトロフェノール)を遊離する酵素量を1Uとする。
[0118]
 培地中のBGL活性を測定する場合は、上記反応液の調製を、酵母懸濁液の代わりに培地100μLを添加して行った以外は、上述のとおりに行った。
[0119]
 (試験例2:エンドグルカナーゼ(EG)活性の検討)
 表層提示株について、菌体のEG活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(U))を以下の手順に従って行った。
[0120]
 菌体をSD培地(ロイシン、メチオニン、およびウラシルを補充)5mLに移植し、30℃、180rpmにて18時間培養し(前培養)、次いで1×YPD培地50mLに移植し(初発OD 600=0.05)、30℃、150rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの48時間後に培養液をそれぞれ回収し、1,000g、5分間の遠心分離にて菌体と培地とを分離した。
[0121]
 菌体のエンドグルカナーゼ活性の測定は、以下のように行った:
 (1)菌体を蒸留水で2回洗浄;
 (2)反応液2500μL(組成:セラザイムCタブレット(Megazyme社製)1錠;500mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0) 250μL(最終濃度50mM);蒸留水2000μL;および酵母懸濁液250μL(最終菌体濃度10g湿潤菌体/L))を調製し、静置、38℃にて4時間反応;
 (3)反応終了後、10,000gで5分間遠心後、上清の590nmの吸光度ABS 590を測定。
[0122]
 (試験例3:ピキア・パストリスにおけるGFP分泌発現の検討)
 キア・パストリスのGFP分泌株については培地中のGFP蛍光強度を以下の手順に従って行った。
[0123]
 菌体を96穴ディープウェルプレートに入れたBMGY培地500μLに移植し、30℃、1800rpmにて18時間培養し(前培養)、次いでそれぞれの前培養液を96穴ディープウェルプレートに入れたフレッシュなBMGY培地500μLに移植し、30℃、1800rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの24時間後に96穴ディープウェルプレートを3,000rpm、5分間遠心し、それぞれの培養上清を得た。
[0124]
 各培養上清100μLを96穴ブラックプレートへ添加し、各ウェルのGFP蛍光強度(励起波長:485nm:蛍光波長:510nm)をEnVison 2104 Multilabel Reader (Perkin Elmer社製) にて測定した。
[0125]
 (実施例1:β-グルコシダーゼ表層提示における各種分泌シグナルの比較)
 本実施例では、X1~X4のそれぞれの発現カセットを含むプラスミドを導入して得られた各種の表層提示形質転換酵母(BY-BG-SGS株、BY-BG-SSS株、BY-BG-SMS株、およびBY-BG-SHS株)について、菌体のBGL活性を測定した。
[0126]
 この結果を図1に示す。図1の横軸は培養時間(「時間(時間)」)を示し、そして縦軸は、β-グルコシダーゼ活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(「U/g乾燥菌体重量」)を示す。図1中の記号は以下の通りである:黒丸、SED1分泌シグナル(SED1);黒菱形、リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼ分泌シグナル(GA);黒三角、MFαprepro(MFα);および黒四角、HKR1分泌シグナル(HKR1)。
[0127]
 図1に示されるように、SED1分泌シグナルを用いたBGL表層提示形質転換株は、従来高効率な分泌タンパク質発現によく用いられているMFαpreproや、表層提示タンパク質発現によく用いられているリゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼ分泌シグナルを用いた形質転換株と比較しても、相当に高い表層BGL活性を示すことが分かった。
[0128]
 (実施例2:β-グルコシダーゼ分泌における各種分泌シグナルの比較)
 本実施例では、X5~X8のそれぞれの発現カセットを含むプラスミドを導入して得られた各種の分泌形質転換酵母(BY-BG-SGsec株、BY-BG-SSsec株、BY-BG-SMsec株、およびBY-BG-SHsec株)について、培地中のBGL活性を測定した。
[0129]
 この結果を図2に示す。図2の横軸は培養時間(「時間(時間)」)を示し、そして縦軸は、β-グルコシダーゼ活性(培地中の活性量(「U/L」)を示す。図2中の記号は以下の通りである:黒丸、SED1分泌シグナル(SED1);黒菱形、グルコアミラーゼ分泌シグナル(GA);黒三角、MFαprepro(MFα);および黒四角、HKR1分泌シグナル(HKR1)。
[0130]
 図2に示されるように、SED1分泌シグナルを用いたBGL分泌形質転換株は、従来高効率な分泌タンパク質発現によく用いられているMFαpreproや、表層提示タンパク質発現によく用いられているリゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼ分泌シグナルを用いた形質転換株と比較しても、相当に高いBGL活性を示すことが分かった。
[0131]
 (実施例3:エンドグルカナーゼ表層提示における各種分泌シグナルの比較)
 本実施例では、X9~X11のそれぞれの発現カセットを含むプラスミドを導入して得られた各種の表層提示転換酵母(BY-EG-SGS株、BY-EG-SSS株、およびBY-EG-SMS株)について、菌体のEG活性を測定した。
[0132]
 この結果を図3に示す。図3の縦軸は、EG活性(吸光度測定値(「ABS590」)を示す。図3の棒グラフは、左から順に:リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼ分泌シグナル(GA)、MFαprepro(MFα)およびSED1分泌シグナル(SED1)を表す。
[0133]
 図3に示されるように、エンドグルカナーゼ活性を指標とした場合でも、SED1分泌シグナルを用いた表層提示形質転換株は、従来よく用いられている分泌シグナルを用いた表層提示形質転換株よりも高い分泌効率を示すことが観察された。
[0134]
 (実施例4:各種プロモーターとの組み合わせの検討)
 本実施例では、X12~X17のそれぞれの発現カセットを含むプラスミドを導入して得られた各種の表層提示転換酵母(BY-BG-TGS株、BY-BG-TSS株、BY-BG-TMS株、BY-BG-PGS株、BY-BG-PSS株、およびBY-BG-PMS株)について、菌体のBGL活性を測定した。
[0135]
 この結果を図4に示す(上のグラフ:TDH3プロモーター;および下のグラフ:PGK1プロモーター)。図4の各グラフの横軸は培養時間(「時間(時間)」)を示し、そして縦軸は、β-グルコシダーゼ活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(「U/g乾燥菌体重量」)を示す。図4中の記号は以下の通りである:黒四角、SED1分泌シグナル(SED1);黒菱形、リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼ分泌シグナル(GA);および黒三角、MFα prepro(MFα)。
[0136]
 図4に示されるように、SED1プロモーター以外のプロモーターと組み合わせた場合も、SED1分泌シグナルを用いた株は、従来よく用いられている分泌シグナルを用いた表層提示形質転換株と同等以上の高い酵素活性を、安定して示すことが観察された。特に、TDH3プロモーターでは、図1に示したSED1プロモーターと組み合わせた場合と同様に、活性上昇率が顕著であった。
[0137]
 (実施例5:各種プロモーターとの組み合わせの検討)
 本実施例では、X18およびX19のそれぞれの発現カセットを含むプラスミドを導入して得られた各種の分泌形質転換酵母(BY-BG-CSsec株、およびBY-BG-CCsec株)について、培地中のBGL活性を測定した。
[0138]
 この結果を図5に示す。図5の横軸は培養時間(「時間(時間)」)を示し、そして縦軸は、β-グルコシダーゼ活性(培地中の活性量(「U/L」)を示す。図5中の記号は以下の通りである:黒菱形、CWP2プロモーター+SED1分泌シグナル;および黒四角、CWP2プロモーター+CWP2分泌シグナル。
[0139]
 図5に示されるように、CWP2プロモーターについて、SED1分泌シグナルと併せて用いた分泌形質転換株は、同じ遺伝子に由来するCWP2分泌シグナルと併せて用いた分泌形質転換株と比較しても、高いBGL活性を示すことが観察された。
[0140]
 (実施例6:異種酵母における分泌能力の検討)
 本実施例では、X20、X21およびX22のそれぞれの発現カセットを含むプラスミドを導入して得られた酵母ピキア・パストリスのGFP分泌形質転換体(PP-GFP-MFα株、PP-GFP-GA株、およびPP-GFP-SED1株と称する。)について、培地中のGFP蛍光強度を測定した。
[0141]
 この結果を図6に示す。図6の縦軸は、PP-GFP-MFα株の培地中のGFP蛍光強度を1とした場合の各株の培地中のGFP蛍光強度の相対値を示す。図6の棒グラフは、左から順に:MFαprepro(MFα)、リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼ分泌シグナル(GA)、およびSED1分泌シグナル(SED1)を表す。
[0142]
 図6に示されるように、ピキア・パストリスを宿主とした場合にも、SED1分泌シグナルを用いた分泌形質転換株は、従来よく用いられている分泌シグナルを用いた分泌形質転換株よりも相当に高いGFP蛍光強度を示すことが観察された。この結果から、SED1分泌シグナルが、サッカロマイセス・セレビシエ以外の酵母種を宿主とした場合でも、タンパク質の分泌量を従来よりも向上させることができることが示された。

産業上の利用可能性

[0143]
 本発明によれば、酵素等の様々なタンパク質を効率良く細胞外に分泌、または細胞表層に提示できる。これにより、酵母を用いた物質生産の効率化、低コスト化およびその普及の促進に非常に有用である。より具体的な応用分野としては、抗体、酵素等のタンパク質の分泌生産、セルロース分解酵素を細胞表層に提示した酵母によるセルロース系バイオマスからの化学品生産等の効率化、低コスト化が考えられる。

請求の範囲

[請求項1]
  以下の(i)、(ii)および(iii)を含む、発現ベクター:
(i)プロモーターDNA、
(ii)以下:
 (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
 (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、
 (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、
 (d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、および
 (e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、
からなる群より選択されるいずれかのペプチドをコードするDNA;ならびに
(iii)目的タンパク質をコードするDNA、または該目的タンパク質をコードするDNAを挿入するためのクローニング部位。
[請求項2]
 前記プロモーターがSED1プロモーターである、請求項1に記載の発現ベクター。
[請求項3]
 前記(iii)が目的タンパク質をコードするDNAである、請求項1または2に記載の発現ベクター。
[請求項4]
 請求項3に記載の発現ベクターが導入された形質転換酵母。
[請求項5]
 タンパク質を分泌生産する酵母の作製方法であって、
 プロモーターDNA;(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、(d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、および(e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチドからなる群より選択されるいずれかのペプチドをコードするDNA;ならびに目的タンパク質をコードするDNAを含む発現カセットを酵母に導入し、形質転換酵母を得る工程、
を含む、方法。
[請求項6]
 酵母においてタンパク質を分泌生産する方法であって、
 請求項4に記載の形質転換酵母または請求項5に記載の方法により作製された酵母を培養する工程
を含む、方法。
[請求項7]
 以下の(i)、(ii)、(iii)および(iv)を含む、発現ベクター:
(i)プロモーターDNA、
(ii)以下:
 (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
 (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、
 (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、
 (d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、および
 (e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、
からなる群より選択されるいずれかのペプチドをコードするDNA;
(iii)目的タンパク質をコードするDNA、または該目的タンパク質をコードするDNAを挿入するためのクローニング部位;ならびに、
(iv)アンカードメインをコードするDNA。
[請求項8]
 前記プロモーターがSED1プロモーターである、請求項7に記載の発現ベクター。
[請求項9]
 前記アンカードメインがSED1アンカードメインである、請求項7または8に記載の発現ベクター。
[請求項10]
 前記(iii)が目的タンパク質をコードするDNAである、請求項7から9のいずれかに記載の発現ベクター。
[請求項11]
 請求項10に記載の発現ベクターが導入された形質転換酵母。
[請求項12]
 タンパク質を表層提示する酵母の作製方法であって、
 プロモーターDNA;(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して1または数個のアミノ酸残基を置換、欠失または付加して得られるアミノ酸配列を有し、分泌シグナル活性を有するペプチド、(d)配列番号1で表される塩基配列と少なくとも70%の配列同一性を有する塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチド、および(e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAの相補鎖とハイブリダイズする塩基配列によってコードされ、分泌シグナル活性を有するペプチドからなる群より選択されるいずれかのペプチドをコードするDNA;目的タンパク質をコードするDNA;ならびにアンカードメインをコードするDNAを含む発現カセットを酵母に導入し、形質転換酵母を得る工程、
を含む、方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]