国際・国内特許データベース検索
このアプリケーションの一部のコンテンツは現在ご利用になれません。
この状況が続く場合は、次のお問い合わせ先までご連絡ください。フィードバック & お問い合わせ
1. (WO2015147117) 紫外線吸収化粧品素材およびこれを含有する化粧品、紫外線遮断方法
Document

明 細 書

発明の名称 紫外線吸収化粧品素材およびこれを含有する化粧品、紫外線遮断方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010   0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030  

発明の効果

0031  

図面の簡単な説明

0032  

発明を実施するための形態

0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096  

実施例

0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34  

明 細 書

発明の名称 : 紫外線吸収化粧品素材およびこれを含有する化粧品、紫外線遮断方法

技術分野

[0001]
 本発明は、紫外線吸収化粧品素材および該紫外線吸収化粧品素材を含有する化粧品、紫外線遮断方法に関し、特に、紫外線遮蔽および可視光増強効果を有し、低刺激で、さらに化粧品に使用した際の安定性の良好な紫外線吸収化粧品素材および該紫外線吸収化粧品素材を含有する化粧品、紫外線遮断方法に関する。

背景技術

[0002]
 近年、紫外線による肌への悪影響が多数報告されている。そのため、日焼け止め化粧品は、夏場のレジャーだけでなく日常生活の中でも必需品となり、さらに女性だけでなく男性や幼児まで幅広く使用されている。また、かかる日焼け止め化粧品では、より高い紫外線防御効果が求められ、その結果、高いSPFの日焼け止め化粧品が求められ、より多くの紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が配合されるようになった。
[0003]
 上記の紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等の有機系紫外線吸収剤が使用されていた。しかしながら、有機系紫外線吸収剤は、肌に接触した際に、炎症を引き起こすなど皮膚トラブルの原因となっていた。また、有機系紫外線吸収剤では、極性が強く難溶性であるため、化粧品等に使用した場合に結晶などを生成し、安定性が悪いという問題点があった。
[0004]
 そこで、特許文献1~4には、有機系紫外線吸収剤をカプセルに内包することで有機系紫外線吸収剤による肌トラブルを防止する技術が開示されている。また、特許文献5には、有機系紫外線吸収剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を配合することで、有機系紫外線吸収剤の結晶化を防止する技術が開示されている。
[0005]
 一方、無機系の紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が使用されていた。これら無機系紫外線散乱剤では、凝集して十分な紫外線防止効果が得られなかったり、日焼け止め化粧品の塗布時の感触がべたついたりする問題があった。
[0006]
 そこで、特許文献6および特許文献7には、無機系紫外線散乱剤の分散状態を改良して凝集を防止する技術が開示されている。また、特許文献8および特許文献9には、特定の成分を配合することで無機系紫外線散乱剤のベタツキ感を改良する技術が開示されている。
[0007]
 更に、特許文献10乃至12には、クマリン色素を原材料とした紫外線~可視光の波長範囲に光吸収帯を有する蛍光性化合物が開示されており、このような化合物の利用も考慮される。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2012-136453号公報
特許文献2 : 特開2009-167168号公報
特許文献3 : 特開2009-23955号公報
特許文献4 : 特開2001-106612号公報
特許文献5 : 特開2013-47206号公報
特許文献6 : 特開2013-221148号公報
特許文献7 : 特開2013-203708号公報
特許文献8 : 特開2013-224276号公報
特許文献9 : 特開2013-203716号公報
特許文献10 : 特開2008-195677号公報
特許文献11 : 特開2009-179623号公報
特許文献12 : 特開2012-25870号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 ところで、有機系紫外線吸収剤は、紫外線を熱エネルギーに変換するものであるため、肌にほてり等を与えて肌トラブルを生じさせるおそれを有するという問題点もある。また、上記特許文献1~4記載の技術は、カプセルの中に有機系紫外線吸収剤を内包するものであるため、化粧品を塗布する際に肌に化粧品を擦りつけてカプセルの中の有機系紫外線吸収剤が排出されると、やはり肌トラブルを生じさせるおそれがある。また、肌に化粧品を擦りつけてもカプセルが壊れないようにカプセルの被膜を強固にすると、使用時の感触が悪くなり、化粧品の使用感の悪化の一因となるおそれがある。さらに、上記特許文献5記載の技術は、有機系紫外線吸収剤の結晶化は防止できるものの肌トラブルを完全に防止できるものではない。
[0010]
 また、上記特許文献6および7記載の技術は、無機系紫外線散乱剤の分散状態を改良して凝集を防止する一定の効果はあるものの十分ではなく、さらに無機系紫外線散乱剤を配合することによるベタツキ感等を完全に改良できるものではない。また、上記特許文献8および9記載の技術は、無機系紫外線散乱剤を配合することによるベタツキ感等を完全に改良できるものではなく、さらに特定の成分を配合することが必須であるため化粧品への配合に制限があり、十分な感触改良の効果が得られていない。
[0011]
 以上のように、従来の有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線散乱剤に置き換わり得る、低刺激で、化粧品に使用した際の安定性の良好な紫外線吸収化粧品素材の開発が望まれている。
[0012]
 そこで本発明の目的は、前記の従来技術の問題を解決し、紫外線遮蔽および可視光増強効果を有し、低刺激で、さらに化粧品に使用した際の安定性の良好な紫外線吸収化粧品素材および該紫外線吸収化粧品素材を含有する化粧品を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の波長の励起帯を有し、かつ他の特定の波長の発光帯を有する紫外線吸収化合物を含有することによって、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0014]
 すなわち、本発明の紫外線遮断方法は、少なくとも250~300nmに光吸収を有する紫外線吸収化粧品素材を含む化粧品をヒトの肌に塗布することで該肌を紫外線から遮断する方法であって、前記紫外線吸収化粧品素材はクマリン色素及びアルギニンから合成されクマリン由来のとは異なる1つ以上の環式構造を有する環状構造化合物からなる紫外線吸収化合物とともに30~70pmのイオン半径を有する金属イオンを含むことで250~430nmに励起帯かつ320~600nmに発光帯を有することを特徴とするものである。
[0015]
 また、前記環状構造化合物はクマリン骨格を含まないことが好ましく、前記クマリン色素は4-ヒドロキシクマリンであることが好ましく、前記金属イオンはAl 3+またはMg 2+であることが好ましい。
[0016]
 さらに、前記紫外線吸収化粧品素材は250~300nm及び330~430nmの励起帯かつ400~600nmの発光帯を有することを特徴としてもよい。
[0017]
 また、前記紫外線吸収化粧品素材は260~350nmの励起帯かつ320~550nmの発光帯を有することを特徴としてもよい。
[0018]
 また、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、クマリン色素及びアルギニンから合成されながらクマリン由来のとは異なる1つ以上の環式構造を有し少なくとも250~300nmに光吸収を有する環状構造化合物を含む紫外線吸収化粧品素材であって、30~70pmのイオン半径を有する金属イオンを与えられ250~430nmに励起帯かつ320~600nmに発光帯を有することを特徴とするものである。
[0019]
 また、前記環状構造化合物はクマリン骨格を含まないことが好ましく、前記クマリン色素は4-ヒドロキシクマリンであることが好ましく、前記金属イオンはAl 3+またはMg 2+であることが好ましい。
[0020]
 さらに、250~300nm及び330~430nmの励起帯かつ400~600nmの発光帯を有することを特徴としてもよい。
[0021]
 また、260~350nmの励起帯かつ320~550nmの発光帯を有することを特徴としてもよい。
[0022]
 また、本発明による化粧品は、上記した紫外線吸収化粧品素材を含有することを特徴とする。
[0023]
 また、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、250~300nmに光吸収を有する紫外線吸収化合物Iと、金属原子とを含有し、250~300nmおよび330~430nmに励起帯を有し、かつ400~600nmに発光帯を有することを特徴とするものである。
[0024]
 また、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記金属原子が、金属イオンで存在し、前記金属イオンのイオン半径が、30~90pmであることが好ましく、前記金属イオンが、Al 3+またはMg 2+であることが好ましい。
[0025]
 さらに、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記紫外線吸収化合物Iが、クマリン由来の複数の環状構造から構成された構造を有しない化合物であることが好ましい。
[0026]
 また、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、260~330nmに励起帯を有し、かつ320~550nmに発光帯を有する紫外線吸収化合物IIを含有することを特徴とするものである。
[0027]
 さらに、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記紫外線吸収化合物IIと、金属原子とを含有することが好ましい。
[0028]
 さらにまた、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記金属原子が、金属イオンで存在し、前記金属イオンのイオン半径が、30~90pmであることが好ましく、前記金属イオンが、Al 3+またはMg 2+であることが好ましい。
[0029]
 さらに、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記紫外線吸収化合物Iと前記金属原子に加えて、前記紫外線吸収化合物IIを含有することが好ましい。
[0030]
 また、本発明の化粧品は、前記紫外線吸収化粧品素材を含有することを特徴とするものである。

発明の効果

[0031]
 本発明によると、紫外線遮蔽および可視光増強効果を有し、低刺激で、さらに化粧品に使用した際の安定性の良好な紫外線吸収化粧品素材および該紫外線吸収化粧品素材を含有する化粧品を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0032]
[図1] 4-ヒドロキシクマリン(a)および7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン(b)の光吸収スペクトルである。
[図2] 7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン水溶液の光吸収スペクトルのpH依存性を示すグラフである。
[図3] 7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン水溶液における、pHに対する320nm(●)および360nm(▲)における吸収強度を示すグラフである。
[図4] 7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン水溶液を360nmの光で励起した場合における蛍光スペクトルを示したグラフである。
[図5] 4-ヒドロキシクマリンおよびアルギニン混合物へのマイクロ波照射前後の光吸収スペクトルである。
[図6] マイクロ波印加装置の概略図である。
[図7] 4-ヒドロキシクマリンおよびアルギニン混合物へのマイクロ波照射前後の光吸収スペクトル(差スペクトル)である。
[図8] 4-ヒドロキシクマリンとアルギニルクマリンの励起発光スペクトルである。
[図9] アルギニルクマリンとAlCl の混合溶液の蛍光スペクトル(Series1~9で、AlCl の添加量を変化させている)を示したグラフである。
[図10] Series1からSeries2を引いた差スペクトルを示したグラフである。
[図11] アルギニルクマリンの475nmでの蛍光強度vsAlCl 添加量(280nm励起)を示したグラフである。
[図12] 蛍光スペクトル(アルギニルクマリン+AlCl )の励起波長依存性(340~400nm)を示したグラフである。
[図13] アルギニルクマリンの発光強度(475nm)の励起波長依存性(340~400nm)を示したグラフである。
[図14] 4-ヒドロキシクマリンにAlCl を添加した場合の発光スペクトルを示したグラフである。
[図15] アルギニルクマリンの光透過スペクトルである。
[図16] アルギニルクマリンとAlCl の混合溶液の光透過スペクトルである。
[図17] 高速液体クロマトグラフによる紫外線吸収化合物Iの分画を示した図である。
[図18] 紫外線吸収化合物Iの紫外線吸収スペクトルを示したグラフである。
[図19] 紫外線吸収化合物IにAlCl 添加前後の光吸収スペクトル(差スペクトル)を示したグラフである。
[図20] 紫外線吸収化合物Iの250nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルを示したグラフである。
[図21] 紫外線吸収化合物Iの325nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルを示したグラフである。
[図22] 紫外線吸収化合物Iの375nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルを示したグラフである。
[図23] 紫外線吸収化合物IにAlCl 添加後に368nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを示したグラフである。
[図24] 高速液体クロマトグラフによる紫外線吸収化合物IIの分画を示した図である。
[図25] 紫外線吸収化合物IIを含有する溶液、および紫外線吸収化合物IとAlCl を含有する溶液の光吸収スペクトルを示したグラフである。
[図26] 紫外線吸収化合物IIにAlCl 添加前後における吸収スペクトルの差を示す差吸収スペクトルを示したグラフである。
[図27] 紫外線吸収化合物IIの300nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを示したグラフである。
[図28] 紫外線吸収化合物IIにAlCl 添加後の300nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを示したグラフである。
[図29] 高速液体クロマトグラフによる紫外線吸収化合物IIIの分画を示した図である。
[図30] 紫外線吸収化合物IIIを含有する溶液、および紫外線吸収化合物IIIとAlCl を含有する溶液の光吸収スペクトルを示したグラフである。
[図31] 紫外線吸収化合物IIIの蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを示したグラフである。
[図32] アルギニルクマリンの金属イオン添加による蛍光スペクトルへの影響を示したグラフである。
[図33] アルギニルクマリンのMgイオン、Cuイオン添加濃度変化による蛍光スペクトルへの影響を示したグラフである。
[図34] 正常ヒト表皮細胞に対するUVBによる炎症抑制作用(IL-1α、IL-6およびIL-8に関する作用)を示す図である。

発明を実施するための形態

[0033]
 以下、本発明の紫外線吸収化粧品素材および該紫外線吸収化粧品素材を含有する化粧品について具体的に説明する。
 本発明の紫外線吸収化粧品素材は、250~300nmに光吸収を有する紫外線吸収化合物Iと、金属原子とを含有し、250~300nmおよび330~430nmに励起帯を有し、かつ400~600nmに発光帯を有することを特徴とするものである。これにより、紫外線遮蔽および可視光増強効果を有し、低刺激で、さらに化粧品に使用した際の安定性の良好なものとすることができる。ここで、「励起帯」とは、物質がエネルギー的に取りうる状態のうち、エネルギー的に最低の状態を基底状態、それよりも高い状態を励起状態としたときに、物質が光吸収によって基底状態から励起状態へと上がることができる光波長帯のことであり、「発光帯」とは、励起状態から光を外部に放出してエネルギー的により低い状態へと移行することができる光波長帯のことである。
[0034]
 また、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、紫外線吸収化合物Iとともに含有される前記金属原子が、金属イオンで存在し、前記金属イオンのイオン半径が、30~90pm(ピコメートル)であることが好ましく、35~70pmであることがより好ましく、50~65pmであることがさらにより好ましい。金属原子が金属イオンとして存在することで、電荷を有するため、より励起帯や発光帯での光の強度を大きくすることができる。さらに、前記イオン半径の金属イオンを含有することで、励起帯や発光帯での光の強度をより大きくすることができる。
[0035]
 前記紫外線吸収化合物Iとともに含有される前記金属イオンとしては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、Al 3+またはMg 2+であることが好ましく、Al 3+であることがより好ましい。Al 3+は、50pmのイオン半径を取ることができ、Mg 2+は65pmのイオン半径をとることができる。これにより、励起帯や発光帯での光の強度をさらに大きくすることができる。
[0036]
 また、前記金属イオンは水溶性であることが好ましく、さらに、前記紫外線吸収化合物Iに配位する金属であることが好ましい。これにより、励起帯や発光帯での光の強度をさらにより大きくすることができる。
[0037]
 さらにまた、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記紫外線吸収化合物Iが、クマリン由来の複数の環状構造から構成された構造を有しない化合物であることが好ましい。ここで、クマリン由来の複数の環状構造から構成された構造と一般に定義されている複素環構造とを区別するために明記すると、一般に複素環構造とは、環構造中に炭素以外の原子を有する構造であり、例えば、窒素、酸素、イオウ等の原子を有する環構造である。然るにクマリン由来の複数の環状構造から構成された構造としては、例えば、クマリン骨格を有する複数の環状構造から構成された化合物等を挙げることができる。クマリン骨格を有する化合物は、「単純クマリン類の感作性及び交差反応性(YAKUGAKU ZASSHI 121(1)97-103(2001))」にも記載されているように感作性等を有し肌に刺激を与えるおそれがある。本発明において、前記紫外線吸収化合物Iがクマリン由来の複数の環状構造から構成された構造を有しない化合物であるため、刺激の発生を抑えて低刺激の紫外線吸収化粧品素材を提供することができる。ただし、上記複数の環状構造から構成された構造でなければ、単環の環状構造から構成された複素環構造の物質としての紫外線吸収化粧品素材は存在しうることを峻別しておくとする。
[0038]
 さらに、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、260~330nmに励起帯を有し、かつ320~550nmに発光帯を有する紫外線吸収化合物IIを含有することを特徴とするものである。かかる紫外線吸収化合物IIを含有することで、励起帯や発光帯での光の強度を大きくすることができ、紫外線遮蔽および可視光増強効果をさらに大きくし、低刺激で、さらに化粧品に使用した際の安定性の良好なものとすることができる。
[0039]
 さらに、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記紫外線吸収化合物IIと、金属原子とを含有することが好ましい。金属原子を含有することで、励起帯や発光帯での光の強度をより大きくすることができる。
[0040]
 さらにまた、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記紫外線吸収化合物IIとともに含有される前記金属原子が、金属イオンで存在し、前記金属イオンのイオン半径が、30~90pmであることが好ましく、35~70pmであることがより好ましく、50~65pmであることがさらにより好ましい。金属原子が金属イオンとして存在することで、電荷を有するため、より励起帯や発光帯での光の強度を大きくすることができる。さらに、前記のイオン半径の金属イオンを含有することで、励起帯や発光帯での光の強度をより大きくすることができる。
[0041]
 前記紫外線吸収化合物IIとともに含有される前記金属イオンとしては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、Al 3+またはMg 2+であることが好ましく、Al 3+であることがより好ましい。Al 3+は、50pmのイオン半径を取ることができ、Mg 2+は65pmのイオン半径をとることができる。これにより、励起帯や発光帯での光の強度をさらに大きくすることができる。
[0042]
 また、本発明の紫外線吸収化粧品素材は、前記紫外線吸収化合物Iと前記金属原子に加えて、前記紫外線吸収化合物IIを含有することが好ましい。これにより、前記紫外線吸収化合物Iと前記紫外線吸収化合物IIの相乗効果で、より広い範囲の励起帯やより広い範囲の発光帯で光の強度を大きくすることができ、紫外線遮蔽および可視光増強効果をより大きくすることができる。
[0043]
 前記紫外線吸収化粧品素材としては、前記特徴を有するものであれば、特に限定されない。前記紫外線吸収化粧品素材の具体例については、以下に説明する。
[0044]
<紫外線吸収化粧品素材>
 前記紫外線吸収化粧品素材は、例えば、アルギニンおよびクマリン色素から合成した化合物と、塩化アルミニウムとの錯体または混合物から得ることができる。以下、この前記紫外線吸収化粧品素材について説明する。
[0045]
(クマリン色素)
 4-ヒドロキシクマリン(以下、4Cと略記する場合あり)とは、下記(1)の構造を有する単純クマリン化合物の一種である。
[0046]
[化1]


[0047]
 4-ヒドロキシルクマリンは、常温では淡黄色もしくは淡茶色の結晶性粉末である。今日では、天然物また合成物として1,000種類以上のクマリン化合物が見出されている。中でも4-ヒドロキシクマリンは、現在、誘導体のワーファリンが血液の抗凝固剤や殺鼠剤として用いられているように、構造が単純なため、多様な物質合成の可能性を持っている。単純クマリンにはまた、下記(2)に示すような、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン(以下、7Cと略記場合あり)なども存在する。
[0048]
[化2]


[0049]
 クマリンは、従来から香料などに応用されたり医学目的に使用されたりしてきたが、最近ではクマリンの光吸収と発光特性を利用した有機色素レーザー材料などへの応用も多く試みられるようになってきた。また、近年、太陽エネルギー利用の新形態として注目されている色素増感太陽電池の増感剤となる効果的な物質がクマリンの誘導体として実現された例も出てきているなど光エネルギー利用材料物質として工業的利用の可能性が広がりつつある。
[0050]
 4-ヒドロキシクマリンは、図1の曲線(a)に示すような光吸収スペクトルを有する。この光吸収特性は紫外部における光吸収が大きく太陽エネルギーの紫外線領域の光吸収には向いているが、可視領域における光吸収帯は少ない。主要な吸収ピークは二つ有りその波長帯は接近している。7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンの場合は、図1の曲線(b)に示すような光吸収スペクトルを有する。この光吸収特性は紫外線領域の光吸収には向いていて、4-ヒドロキシクマリンよりも少し長波長側に光吸収帯があるが、可視領域における光吸収帯はやはり少ない。主要な吸収ピークは密集している。上記式(1)および(2)を比較して分かるように、ヒドロキシル基(-OH)の位置の違いが、スペクトルにおいて大きな違いとなって現れている。図1により7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンは波長290nmと322nmに主要な吸収帯があることがわかる。よくみると、322nmの吸収は4-ヒドロキシクマリンにもある。これは基本的な分子構造由来である。
[0051]
 紫外線を効果的に防御するための紫外線吸収化粧品素材とするには、光吸収帯が紫外の領域にあることが必要である。また、蛍光スペクトルにおける励起発光ピークの制御が重要となる。
[0052]
 図2に、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン水溶液の光吸収スペクトルのpH依存性を示した。また、図3には、pHに対する320nm(●)または360nm(▲)における吸収強度を示した。これによると、pH7未満では320nm付近に吸収ピークが現れ、pH7以上では360nm付近に吸収ピークが現れることが分かる。また、pHが大きくなるにつれ、320nmでの吸収が小さくなり、逆に、360nmでの吸収が大きくなることが分かる。
[0053]
 図4に、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン水溶液を360nmの光で励起した場合における蛍光スペクトルを示した。蛍光ピーク波長は450nmであり、pHが大きくなるに従って、蛍光強度が大きくなることが分かった。
[0054]
(アルギニン)
 アルギニンは、下記(3)の構造を有する塩基性アミノ酸の一種である。
[0055]
[化3]


[0056]
 アルギニンは側鎖RがCH CH CH NH(C=NH)NH であるα-アミノ酸で、荷電極性側鎖アミノ酸であり、塩基性アミノ酸である(蛋白質を構成するアミノ酸としては塩基性の高い部類の一つである)。側鎖Rの構造は通常のポリペプチドとは異なる高分子化合物を形成する材料となることを意味している。すなわち主鎖ではなく、側鎖のアミノ基を介して高分子化するポリアルギニン等の高分子材料となることを意味している。ポリアミノ酸にはまた、側鎖のカルボキシル基を介して高分子化するグルタミン酸など多様に存在し、食品、医薬品以外の材料系の応用例としては、生分解性プラスチックスや酵素硬化ハイドロゲル、インジェクション可能な生体材料として、細胞足場材料、DDSマトリックス、生医学用止血剤・接着剤等様々である。
[0057]
(アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物)
 本発明者は、クマリン分子本体のいずれかの原子団が脱離し、そこにアルギニンが結合すると電子密度分布が大きく変化し、光吸収過程におけるエネルギー値に大きな変化が現れるのではないかと予測した。あるいは、クマリン分子構造の解裂とアルギニン分子構造の解裂による部分構造の再編成によって生じる分子種の生成により、光吸収されたのではないかと予測した。また、クマリンとアミン類の化学合成に効果があるマイクロ波合成の方法は、アルギニンと4-ヒドロキシクマリンとの反応にも有効に働くのではないかと予測した。これは、アミノ酸はアミン類と機能は異なるが、構造上アミノ基を有していることがその理由である。
[0058]
 本発明においては、一例として、アルギニンとクマリン色素との反応を、マイクロ波を照射することにより行った。本発明で化学合成に用いるマイクロ波とは、波長0.3mm~30cm、周波数1GHz~1THzの電磁波を指し、マイクロ波の振動電場および振動磁場が物質中の永久・誘起双極子あるいは電荷と相互作用することにより、分子レベルで熱を発生し、物質を直接加熱する。化学反応系に利用した場合、迅速に、熱伝導および対流によらない均一な直接加熱、マイクロ波と相互作用をする物質のみの選択的加熱、パルス、連続照射による加熱モードの精密制御、といったことが可能である。また、反応器壁や物質移動の影響のない、また熱伝導の良否にかかわらない加熱が可能であり、外部熱源からの加熱では得られない精密な反応制御プロセスが構成できるものである。
[0059]
 以下、アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。反応に用いたアミノ酸のアルギニンだけを含む水溶液の紫外可視光吸収は、207nm近傍の紫外部に吸収波長帯があるだけである。
[0060]
 アルギニンと4-ヒドロキシクマリンを1:1のモル比で混合した場合、両者は反応するかどうかを確かめる実験を行った。アルギニンと4-ヒドロキシクマリンを1:1のモル比で混合したサンプル(それぞれの濃度は、0.2mM)の光吸収スペクトルは図5の1のような結果となった。205nm,286nm,299nmに吸収極大が見られただけであり、これは、4-ヒドロキシクマリンの極大波長206nm,286nm,300nmとほぼ一致しており、4-ヒドロキシクマリンの存在が確認されただけである。アルギニンの光吸収帯と4-ヒドロキシクマリンの205nmピークをもつ光吸収帯はほぼ重なっている。この実験結果からは、単に両者を混合しただけでは反応しないことが分かった。
[0061]
 次に、三段階の濃度の混合溶液をそれぞれ、容積15mL、最大耐圧1400kPaの高耐圧ガラスチューブ(Ace社製)に5mL入れ、それぞれ別々にマイクロ波を4分間印加した場合について説明する。図6はマイクロ波印加装置の概略図である。1は電子レンジ本体、2は被照射物質を設置する部分、3はマイクロ波を発生させるマグネトロン、4は高耐圧ガラスチューブ、および5はビーカーである。マイクロ波印加装置には一般家庭用電子レンジ(2.45GHz約900W)を使用した。ビーカー5に入れた高耐圧ガラスチューブ4を電子レンジ1の被照射物質を設置する部分2に設置し、マイクロ波を照射した。マイクロ波照射前後の光吸収スペクトルを図5に示す。線分1は上記したように照射前のスペクトルであり、線分2は2分間照射後、線分3は4分照射後のそれぞれのスペクトルである。可視波長域には吸収は見られず、208nm,287nm,300nmに吸収極大が見られた。これは、4-ヒドロキシクマリンの極大波長207nm,286nm,299nmとほぼ一致しており、4-ヒドロキシクマリンの存在が確認された。マイクロ波を印加させるに伴い、4-ヒドロキシクマリンに特有の吸収領域の吸光度が減少し、253nmと331nm近傍の吸光度が増加した。これは、アルギニンと4-ヒドロキシクマリンが、何らかの反応を起こして吸収極大がシフトしたためと考えられる。
[0062]
 このマイクロ波印加時間を2分で行なった場合、図5の線分2に示したように、吸収スペクトルの変化が観察されたが吸収値の変化量は少なく、この変化を詳しく観るため差吸収スペクトルとして図7のように三段階の濃度と三段階の反応時間で比較してみると、0.05mMのサンプル(図7の1)において、286nmで吸光度は0.125下がった。4-ヒドロキシクマリン水溶液の検量線を別途実験的に求め、0.01mM~0.04mMの濃度においては、吸光度をy、濃度をxとすると、関数y=54.44x+0.055で近似されることが分かっている。
よって、Δy=-0.125として、
Δy=-0.125=54.44Δx、
Δx=-2.30×10 -3mM
[0063]
 つまり、0.05mMのサンプルでは、4-ヒドロキシクマリンは、2.30×10 -3mM減少したことになり、全体の(2.30×10 -3/0.05)×100=4.6%が反応したと考えられる。同様にして、0.1mMのサンプル(図7の線分3)では4.2%、0.2mMのサンプル(図7の線分5)では3.1%(吸光度が0.25~0.7を大きく越えているため誤差が大きい。)となり、2分間のマイクロ波照射により、4-ヒドロキシクマリンは、約4%近く反応したと考えられる。なお、4分間のマイクロ波照射となると、図5の線分3、および図7の線分6に示したような劇的な変化が生じ、90%以上が反応したものと考えられる。
[0064]
 この反応の前後における光吸収スペクトルデータから差スペクトルを計算し、グラフ化したものが図7である。図7はマイクロ波2分間及び4分間照射前後における、アルギニンと4-ヒドロキシクマリンを含む水溶液の紫外可視光吸収差スペクトルを示すグラフ図である。線分1,2は濃度0.05mMの場合、線分3,4は濃度0.1mMの場合、線分5,6は濃度0.2mMの場合である。可視波長域には吸収は見られず、208nm,253nm,330nm近傍に吸収極大が見られた。これは、4-ヒドロキシクマリンの極大波長207nm,286nm,299nmと比べると短波長の208nmのみほぼ一致し、それ以外は一致せず、吸収極大のシフトが見られた。
[0065]
 また、2分間照射の場合、約4%が反応したと考えられるが、4分間照射の場合、4-ヒドロキシクマリンの吸収領域である286nm,300nm付近の吸収帯がほとんどシフトしているので、前述のようにほとんどが反応したと考えられ、照射時間2分間と4分間の間で大幅に反応割合が増加している。このことから、ある一定の高温高圧の条件でこの反応過程が急速に進むと考えられる。
[0066]
 この反応をさらに続けて4分超行なうと、高耐圧ガラスチューブ4といえども耐え切れない圧力となり、破壊現象が起きることも確かめることができた。様々な条件で実験を試みたところ、以下の事象が確認できた。
[0067]
 ビーカー5に高耐圧ガラスチューブ4をそのまま入れた場合は4分の照射でほぼ反応物は全て生成物となり、その後は化学反応にエネルギーが消費されることがないために高耐圧ガラスチューブ4内のエネルギーの充満によって圧力が一気に上昇し破壊現象が起きる。
[0068]
 ビーカー5内に酸化アルミニウムの粉末を敷き詰めて同様の反応を行なった場合、約半分の2分間の照射で反応生成物が飽和し、破壊現象が始まる。これはマイクロ波のエネルギーの反応物への効率的な伝達が起きるためであると考えられる。
[0069]
 反応生成物は10ヶ月以上の長期間保存しておいても安定しており、元のアルギニンと4-ヒドロキシクマリンに戻ることはなかった。
[0070]
 この化学合成で得られる合成物の大きな特徴は、吸収スペクトル上ふたつある。ひとつは4-ヒドロキシクマリン特有の波長286nm,300nm近傍の吸収極大が消失し、324nmへと長波長側へシフトしている点、もうひとつは253へ短波長シフトしている点である。これは、分子の鎖の長さが長くなると、電気的対称性の変化によって光吸収過程に大きな変化が生じ、吸収極大波長が長波長側へシフトするという特徴がある、という考察から、4-ヒドロキシクマリンとアルギニンが反応し、生成物の鎖の長さが長くなったためであると考えられる。
[0071]
 上記化学合成で得られる合成物の光吸収スペクトル特性は、原物質であるアルギニンと4-ヒドロキシクマリンとは大きく異なることから、上記化学合成で得られる合成物の光吸収スペクトル特性を有する物質全体をアルギニンと4-ヒドロキシクマリンとは明確に区別して、アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成された化合物群(仮称 アルギニルクマリンと略称する)と呼ぶことができる。
[0072]
 次に得られた生成物アルギニルクマリンの励起発光スペクトルを測定したところ、図8のようになった。線分1はマイクロ波照射前のアルギニンと4-ヒドロキシクマリンの混合物の励起発光スペクトルである。線分2は生成物の励起発光スペクトルである。反応前は374nm近傍に発光強度の極大があるが、生成物アルギニルクマリンの発光強度極大点は348nmに26nmも短波長シフトしていることが分かった。よって生成物アルギニルクマリンには元の4-ヒドロキシクマリンよりも高エネルギーの光量子が放出される性質が備わっていることが明らかになった。
[0073]
(アルギニルクマリンとAlCl との錯体)
 次に、蒸留水2995μLに0.22mMのアルギニルクマリン5μLを添加し3000μLとし、0.05MのAlCl を10μLずつ添加して、280nm励起による発光スペクトルを測定した。結果を図9に示す。AlCl を添加しない場合(Series1)では、348nmに発光極大のある発光スペクトルが得られたが、AlCl を添加すると、このスペクトルは強度低下して長波長シフトした363nmおよび475nmに発光極大のある発光スペクトルが得られた。348nmから363nmへの長波長シフトと強度低下は塩素イオンの増大によって起きるpH変化が原因である。一方475nmの発光の増大は、280nmの光により励起された錯体が、363nmに発光極大のある光を発光し、この光が励起光となって錯体を励起させ、励起した錯体が475nmに発光極大のある光(水色)を発光していることを示している。また、図9より、AlCl をさらに加えていくと、475nmピークの発光強度が大きくなることが分かる。
[0074]
 図10に、アルギニルクマリンのみのスペクトル(Series1)から、アルギニルクマリンにAlCl を10μL加えたもののスペクトル(Series2)を引いて得られた差スペクトルを示した。これによると、AlCl の添加により、アルギニルクマリン固有の348nmピークの発光が消失していることが、はっきりと分かる。
[0075]
 図11に、上記図9で示したアルギニルクマリンとAlCl との錯体水溶液に対し、280nmの光をあて励起させて得られた475nmの発光強度を、AlCl の添加量に対してプロットしたグラフを示す。これより、AlCl の添加量が増加するにつれて、錯体の発光強度が増加することが示された。また、AlCl の添加量が多くなると、蛍光強度の増大が頭打ちとなる傾向が見られた。これより、アルギニルクマリンとAlCl との錯体では、アルギニルクマリンに対しAlCl をモル比で、5000倍以上加えることが好ましく、1万倍以上加えることがより好ましく、2万倍以上加えることがさらに好ましい。また、発光強度の増加が頭打ちとなることから、上限としては、6万倍以下とすることが好ましく、5万倍以下とすることがより好ましい。
[0076]
 図12に、アルギニルクマリンとAlCl との錯体水溶液に対して、340nm~400nmの光を当て、錯体を励起させて得られた発光強度を示した。いずれも、475に発光ピークを有する発光であった。また、図13には、該励起させた340~400nmの励起波長に対する、475nmでの発光強度をプロットした励起スペクトルである。これによると、370nmにおける励起で、最も発光強度(475nm)が強いことが示された。
[0077]
 以上の結果をまとめると、上記アルギニルクマリンとAlCl との錯体においては、280nmの外部光による励起により、363nmに発光極大を有する内部光を発光する。該内部光が錯体を励起して、励起した錯体が475nmに発光極大を有する可視光を発光する。この際、錯体は、図13で示したように励起波長が370nmとなるときに、可視光の発光強度が最大となる。つまり、励起波長が370nmに近ければ近いほど、可視光の発光が強く、言い換えれば、紫外線を可視光へ効率的に変換できることになる。上記アルギニルクマリンとAlCl との錯体では、363nmに発光極大を有する内部光を発光する。これは、上記370nmに近い。このため、効率的に紫外線を可視光に変換でき、非常に強い475nmの青水色発光が得られたのだと考えられる。
[0078]
 図14には、4CにAlCl を添加した場合の発光スペクトルを示したが、この場合、280nmの光の照射により錯体(4C-AlCl 錯体)は、363nmに発光極大を有する内部光を発光する。しかしながら、該錯体は、励起波長が320nmとなるときに可視光(450nm)の発光が最大とする。このため、発光した内部光(363nm)を十分に利用することができず、効率的に紫外線を可視光に変換できない。結果として、強い発光は得られない。
[0079]
<可視光透過性>
 図15にアルギニルクマリン(Arg-C)の紫外光~可視光領域の透過率の波長依存性を、濃度別で表す。線分1は、0.002mM、線分2は0.04mM、線分3は0.02mMの場合の測定結果である。いずれも400nm以上の可視光領域では透明であることがわかる。紫外線領域では濃度が高くなるにつれて330nm以下の領域で吸収があるため透過率は低下する。
[0080]
 図16にArg-C+AlCl の紫外光~可視光領域の透過率の波長依存性を、濃度別で表す。線分1は、0.02mMのArg-Cに0.0005MのAlCl 、の場合の測定結果であり、このような低濃度の場合は400nm以上の可視光領域では100%透明であることがわかる。線分2は、その100倍という極めて高い濃度の2.00mMのArg-Cに0.05MのAlCl の場合の測定結果である。この場合であっても、波長400nmで透過率約70%、波長450nmで透過率約90%、波長500nmで透過率約95%と可視光領域での透過性は高い。
[0081]
(紫外線吸収化合物Iの作製)
 L-アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物(アルギニルクマリン)とAlCl との錯体から、紫外線吸収化合物Iを作製した。その詳細について以下説明する。
 まず、L-アルギニン0.00025mol量と4-ヒドロキシクマリン0.00025mol量および水5mLを用意し、容積15mL、最大耐圧1400kPaの高耐圧ガラスチューブ(Ace社製)に5mL入れ、マイクロ波(2.45GHz、約900W)を60秒間印加した。得られた溶液は5μL採取し、200倍希釈の上、光吸収スペクトルを測定したところ、図5の曲線3のアルギニルクマリン特有の光吸収スペクトルを有していることを確認することができた。
[0082]
 次に、得られた溶液を、フィルター(日本ポール社製、GHPアクロディスク、25mm、0.2μ)でろ過後、2mLを高速液体クロマトグラフ(株式会社島津製作所製、SHIMADZU・LC-20APシステム)で成分を分析した。このときのクロマトグラフ条件は、アセトニトリル80%、10mMギ酸水20%の溶媒であった。図17は、高速液体クロマトグラフによる紫外線吸収化合物Iの分画を示した図である。大きく分けて4つの分画が得られたが、これらを分画後にAlCl を添加した上で375nmの紫外線を照射すると、第4の分画すなわち図中矢印の分画(*)が最も強く可視発光した。このことから、この成分は紫外線を吸収し可視発光したと考えられ、紫外線吸収化合物Iとした。図中横軸はリテンションタイム(min)、縦方向の値は検出電圧値(a.u.)である。
[0083]
 また、この得られた溶液を、別途、ガラス容器に移し小孔をあけた樹脂フィルム(パラフィルム)で覆った後、真空検体乾燥機(東京理化器械株式会社製、VOM1000A)に入れ、真空ホース(東京硝子器機株式会社製(TGK)、6×15mm、2m)で、冷却トラップ(東京理化器械株式会社製、UT-1000)に接続した。冷却トラップにはガラスコンデンサ(東京理化器械株式会社製、500mL)をセットし、トラップ内にはメタノールを満たした。さらに、真空ホース(東京硝子器機株式会社製(TGK)、6×15mm、1m)で、真空ポンプ(東京理化器械株式会社製、EVP-1000)に接続して、減圧を行った。十分な時間減圧を実施したところ、ガラス容器中には着色した固体粉末が残留し、ガラスコンデンサ内には氷結した無色の固体(氷のような状態)が残留した。このうち、氷結した無色の固体を昇温させて融解させた後、次に、フィルター(日本ポール社製、GHPアクロディスク、25mm、0.2μ)でろ過後、高速液体クロマトグラフ(株式会社島津製作所製、SHIMADZU・LC-20APシステム)で成分を上記と同様の条件で分析したところ、上記の第4の分画のみが検出された。すなわち第1~3の分画は検出されず、図中矢印の分画(*)のみが検出された。この成分にAlCl を添加した上で375nmの紫外線を照射すると同様に強く可視発光したことから、この成分は前述の紫外線吸収化合物Iと同一のものであると確認できた。また、この結果から、前述の図17の(*)以外の分画の成分は減圧の過程を経た場合、ガラス容器中に残留した着色した固体粉末として得られた。
[0084]
<紫外線吸収化合物Iのスペクトル特性>
 図18は、紫外線吸収化合物Iの紫外線吸収スペクトルを示したグラフである。紫外線吸収化合物Iは、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、SHIMADZU・UV1240)による紫外可視光吸収スペクトル測定分析を行ったところ、図18のような紫外可視光吸収スペクトル特性を示した。210nm、250nm、325nm各近傍に吸収が観測された。これは、図5のスペクトル曲線3に近い特性であった。AlCl を添加した後の紫外可視光吸収スペクトル特性は図18ではわずかに長波長シフトしていることが観測され、これを詳しく検出するために、AlCl 添加前後の差吸収スペクトルデータ解析を行ったところ、図19のようになった。図19は、紫外線吸収化合物IにAlCl 添加前後の光吸収スペクトル(差スペクトル)を示したグラフである。194.5nmの吸収の生成はAlによると考えられた。その他の特異的な、225.5nm、269nm、371nmにおける吸収は紫外線吸収化合物IとAlの形成する錯体に特有のものであると考えられた。
[0085]
 次に、紫外線吸収極大波長250nm、325nmおよび、差吸収極大波長371nmを目安に、蛍光スペクトロメーター(株式会社島津製作所製、SHIMADZU・RF5300)を用いて250nm、325nm、375nmにおける励起を行い、蛍光スペクトル測定を行ったところ、図20~図22のような結果を得た。図20は、紫外線吸収化合物Iの250nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルを示したグラフであり、図21は、紫外線吸収化合物Iの325nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルを示したグラフであり、図22は、紫外線吸収化合物Iの375nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルを示したグラフである。これらから、紫外線吸収化合物Iは、それ自体では、紫外線吸収はするが、励起されず発光しないことがわかった。
[0086]
 次に、AlCl を添加した後、蛍光スペクトル測定を行ったところ、図23のように470.6nmに極大のある可視発光が観測された。図23は、紫外線吸収化合物IにAlCl 添加後に368nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを示したグラフである。さらに、この極大波長でスキャンして励起スペクトル測定を行ったところ、224nm、267.4nm、368.2nmにおける励起極大を有することが明確になった。しかも267.4nmで励起する場合、368.2nm近傍の発光強度がわずかに観測されるも、ほとんどが470.6nmに極大のある可視発光が観測されたことから、この紫外線吸収化合物IはAlCl を添加することによって、267.4nmを極大とする250~320nmの中波長紫外線(UVB波)を吸収し、368.2nmを極大とする320~400nmの長波長紫外線(UVA波)を発光した上で再吸収し、470.6nmを極大とする400~600nmの可視光線(Visible Light)を発光するという特性があることが明確になった。
[0087]
(紫外線吸収化合物IIの作製)
 まず、上記のように、物質群アルギニルクマリンの光吸収特性(図5)の主要な特性を紫外線吸収化合物Iの光吸収特性(図18)でほぼ代表することが明らかになったが、その他の成分に紫外可視光変換に大きな役割を果たす成分があるかについて次のように考察した。紫外線吸収化合物Iは図18をみると、300nm近傍の吸収はゼロではないが低く、図23の励起スペクトル特性では300nm近傍の励起レベルが極小に近いという点から考えて、紫外線吸収化合物Iは本発明の中心的な物質であるものの、これだけでは物質群アルギニルクマリンの紫外可視光変換機能全てを包含できてはいないのではないか、と考察した。そこで、AlCl を添加によって300nm近傍の吸収と励起の特性が大きく変化することを目安として光活性の高い物質を探索することとした。以下、第二の紫外線吸収化合物IIを見出し、作製するに至った過程を詳述する。
[0088]
 まず、第一に、上記と同様にしてL-アルギニン0.00025mol量と4-ヒドロキシクマリン0.00025mol量および水5mLを用意し、容積15mL、最大耐圧1400kPaの高耐圧ガラスチューブ(Ace社製)に5mL入れ、マイクロ波(2.45GHz、約900W)を60秒間印加して得られた溶液を、上記方法と同様の方法で減圧を行った。ガラス容器中に得た着色した固体粉末をアセトニトリル20%、10mMギ酸水80%の溶媒で溶解させた後、次に、フィルター(日本ポール社製、GHPアクロディスク、25mm、0.2μ)でろ過後、高速液体クロマトグラフ(株式会社島津製作所製、SHIMADZU・LC-20APシステム)で、アセトニトリル20%、10mMギ酸水80%からアセトニトリル80%、10mMギ酸水20%までの時間に比例して変化させる濃度勾配のある溶出条件によって分析した。モニターした分画状況を、図24に示す。図24は、高速液体クロマトグラフによる紫外線吸収化合物IIの分画を示した図である。図24中、およそ12の分画を区別して表示した。
[0089]
 これらを分画後に、全ての成分について紫外可視光吸収スペクトル測定および蛍光スペクトル測定と励起スペクトル測定分析を行ったところ、図24の(**)の成分が、AlCl を添加によって蛍光強度が増大するという特性があることがわかった。その詳細を説明する。図25は、紫外線吸収化合物IIを含有する溶液、および紫外線吸収化合物IとAlCl を含有する溶液の光吸収スペクトルを示したグラフである。この成分の光吸収スペクトルは図25のようになり、すなわち目安となる300nm近傍の吸収が極大となること、AlCl の添加によって極大波長が変化していた。これを詳しく検出するために、AlCl 添加前後の差吸収スペクトルデータ解析を行ったところ、図26のようになった。図26は、紫外線吸収化合物IIにAlCl 添加前後における吸収スペクトルの差を示す差吸収スペクトルを示したグラフである。213nm、245nm、317nmにおける吸収は紫外線吸収化合物IIとAlの形成する錯体に特有のものであると考えられた。
[0090]
 次に、それ自体の蛍光スペクトル測定を行った。図27は、紫外線吸収化合物IIの300nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを示したグラフである。図27の曲線2のように、406.6nmに極大のある可視発光が観測された。さらに、この極大波長でスキャンして励起スペクトル測定を行ったところ、228.6nm、294.8nmにおける励起極大を有する曲線1のようになることが明確になった。
[0091]
 次に、AlCl 添加後の蛍光スペクトル測定を行った。図28は、紫外線吸収化合物IIにAlCl 添加後の300nmにおける励起よって測定した蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを示したグラフである。図28のように意外なことが明らかになった。それは、図中曲線2のように、AlCl 添加前に406.6nmに極大のあった可視発光が377.2nmに短波長シフトするかのごとくに観測されたということである。次に、この極大波長でスキャンして励起スペクトル測定を行ったところ、235.8nm、309.6nmにおける励起極大を有する曲線1のようになることが明確になった。このような特性を有する図24の(**)の成分はこうして第二の紫外線吸収化合物IIと呼ぶことができ、物質群アルギニルクマリンの紫外可視光変換機能をさらに網羅的に理解できる物質であるということ見出したのである。
[0092]
 この紫外線吸収化合物IIは、紫外線吸収化合物Iの吸収と励起のレベルが低い300nm近傍の波長域の紫外可視光変換機能を理想的に強化するものである。なぜならば、紫外線吸収化合物IIは、309.6nmを極大とする260~350nmの中波長紫外線(UVB波)をよく吸収し、377.2nmを極大とする320~500nmの長波長紫外線(UVB波)と可視光線(Visible Light)を発光するという特性があり、最もよく放出する377.2nm近傍の紫外線は、紫外線吸収化合物Iの吸収と励起の極大にほぼ重なっており、最大の紫外可視光変換機能を強化することになるのである。これらの結果は全く予想できないものであった。このようにして、紫外線吸収化合物IIを作製した。
[0093]
(紫外線吸収化合物IIIの作製)
 前記までの紫外線吸収化合物Iと紫外線吸収化合物IIは、特に機能性の高い紫外可視光変換物質である。これらに比して光活性は劣るが中波長紫外線(UVB波)吸収能と長波長紫外線(UVA)発光特性のある物質は、物質群アルギニルクマリン中に他に見出すことができた。図29は、高速液体クロマトグラフによる紫外線吸収化合物IIIの分画を示した図である。図29に示すように、紫外線吸収化合物IIと同様のHPLCによる分画過程で、図中(***)で示す成分として得ることができた。また、図30は、紫外線吸収化合物IIIを含有する溶液、および紫外線吸収化合物IIIとAlCl を含有する溶液の光吸収スペクトルを示したグラフである。この成分の物質は図30のように、300nmに極大のある中波長紫外線(UVB波)吸収スペクトル特性を有していた。紫外線吸収化合物IIと酷似しているようではあったが、相違点があり、AlCl 添加によって発光特性が変化することがなかった。この成分自体の蛍光スペクトル測定を行った。図31は、紫外線吸収化合物IIIの蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを示したグラフである。図31の曲線2のように、378nmに極大のある可視発光が観測された。次に、この極大波長でスキャンして励起スペクトル測定を行ったところ、230.8nm、289.6nm、303.4nmにおける励起極大を有する曲線1のようになることが明確になった。このようにして、紫外線吸収化合物IIIを作製した。
[0094]
 また、本発明の化粧品は、前記紫外線吸収化粧品素材を含有することを特徴とするものである。これにより、紫外線遮蔽および可視光増強効果を有し、低刺激で、さらに化粧品に使用した際の安定性の良好な化粧品を提供することができる。ここで、紫外線吸収化粧品素材とは、上記の紫外線吸収化合物I、金属原子および紫外線吸収化合物II等を含有するものであり、化粧品とは、化粧品、医薬部外品、医薬品等を含めた広い概念である。また、基礎化粧品だけでなく、メイクアップ、毛髪化粧品、洗浄料等を含むものである。
[0095]
 また、本発明の化粧品において、本発明の効果が損なわれない範囲で、適宜他の成分等を添加することもできる。質的、量的範囲で上記以外の任意の成分を配合することができ、化粧品に通常配合される成分、例えば、油性成分、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、各種ビタミン剤、キレート剤、pH調整剤、着色剤、他の紫外線吸収剤、薬効成分、他の無機塩類等を配合することができる。
[0096]
 以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例
[0097]
(実施例1)
 アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物を含有する水溶液を、上記(紫外線吸収化合物Iの作製)に記載した手順に従って処理して、紫外線吸収化合物1を作製した。
[0098]
(実施例2)
 アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物を含有する水溶液を、上記(紫外線吸収化合物IIの作製)に記載した手順に従って処理して、紫外線吸収化合物2を作製した。
[0099]
(実施例3)
 アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物を含有する水溶液を、上記(紫外線吸収化合物IIIの作製)に記載した手順に従って処理して、紫外線吸収化合物3を作製した。
[0100]
(SPFアナライザーによるSPF測定試験)
 SPF測定用サンプル2.0mg/cm をトランスポア サージカールテープ(住友3M社製)に塗布し、SPFアナライザー UV-1000S (Labsphere社製)を用いて、9箇所測定を行ってSPF値及びUVA/UVB Ratioを求めた。この操作を3回繰り返して平均値をSPF値及びUVA/UVB Ratioとした。
[0101]
(実施例4)
 エタノール50質量%水溶液を調整し、これに紫外線吸収化合物1を2.75g、紫外線吸収化合物2を0.00275g、AlCl ・6H Oを0.49g添加して、紫外線吸収化合物1および紫外線吸収化合物2が5質量%となるように実施例4のサンプルを作製した。SPFアナライザーによる測定結果を下記表1に記す。
[0102]
(実施例5)
 エタノール50質量%水溶液を調整し、これに紫外線吸収化合物1を3.036g、紫外線吸収化合物2を0.00275g、紫外線吸収化合物3を0.00275g、AlCl ・6H Oを5.88g添加して、紫外線吸収化合物1、紫外線吸収化合物2および紫外線吸収化合物3が5質量%となるように実施例5のサンプルを作製した。SPFアナライザーによる測定結果を下記表1に記す。
[0103]
(比較試験例)
 メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルを5質量%、界面活性剤(EMALEX ML-158、日本エマルション社製)5質量%、エタノール35質量%、精製水50質量%となるように混合溶解して、比較試験例のサンプルを作製した。SPFアナライザーによる測定結果を下記表1に記す。
[0104]
[表1]


[0105]
 表1の結果から、実施例4および実施例5は比較試験例と同等以上のSPF値を示した。このことから、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルと同等の紫外線防止効果があることがわかった。
[0106]
(皮膚刺激性試験)
 Finn Chambers on Scanpor Tape(株式会社スマートプラクティスジャパン製)を使用して、年齢20歳以上60歳未満の健康状態が良好な日本人20名(男性6名、女性14名)の背部に、各サンプルをチャンバーに30mg塗布してパッチテストを行った。サンプルとしては、紫外線吸収化合物I~IIIを含んでいる、L-アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物(アルギニルクマリン)とAlCl との錯体水溶液(以下、「本発明サンプル」と称す)を使用し、比較サンプルとして、白色ワセリン(日興リカ株式会社製)、生理食塩水(大塚製薬株式会社製)、注射用蒸留水(大塚製薬株式会社製)を使用した。24時間後と48時間後の肌状態を下記<パッチテスト判定基準>に従って評価し、さらに下記<皮膚刺激評点>および下記皮膚刺激指数計算式(S1)に従って、評価した。
[0107]
<パッチテスト判定基準>
反応なし                     -
かるい紅班                    +-
紅班                       +
紅班+浮腫+丘疹                 ++
紅班+浮腫+丘疹、しょう液性丘疹、小水疱     +++
大水疱                      ++++
[0108]
<皮膚刺激評点>
反応なし                     0
かるい紅班                    0.5
紅班                       1.0
紅班+浮腫+丘疹                 2.0
紅班+浮腫+丘疹、しょう液性丘疹、小水疱     3.0
大水疱                      4.0
[0109]
<皮膚刺激指数計算式(S1)>
皮膚刺激指数=(24時間あるいは48時間後の反応の強い方の総評点和/被験者数)×100    (S1)
[0110]
 本発明サンプル、白色ワセリン、生理食塩水、注射用蒸留水のいずれのサンプルも、24時間後および48時間後の<パッチテスト判定基準>による評価は、「反応なし」であった。また、皮膚刺激指数も0であった。その結果、本発明サンプルは、白色ワセリン、生理食塩水、注射用蒸留水等と同様に極めて刺激がないことが判った。
[0111]
 上記より、皮膚刺激性試験の結果は、良好であった。このことから、紫外線吸収化合物1~3は、肌に対し、低刺激であることがわかった。
[0112]
(実施例6)
 下記表2記載の処方に従って、紫外線防止化粧水を作製した。なお、以下、処方中の数値は質量%を示す。
[0113]
[表2]


[0114]
(実施例7)
 下記表3記載の処方に従って、紫外線防止化粧水を作製した。
[0115]
[表3]


[0116]
(実施例8)
 下記表4記載の処方に従って、紫外線防止クリームを作製した。
[0117]
[表4]


[0118]
(実施例9)
 下記表5記載の処方に従って、紫外線防止クリームを作製した。
[0119]
[表5]


[0120]
(実施例10)
 下記表6記載の処方に従って、紫外線防止美容液を作製した。
[0121]
[表6]


[0122]
(実施例11)
 下記表7記載の処方に従って、紫外線防止美容液を作製した。
[0123]
[表7]


[0124]
(実施例12)
 下記表8記載の処方に従って、紫外線防止クレンジングフォームを作製した。
[0125]
[表8]


[0126]
(比較例6~12)
 表2~表8記載の処方で、実施例4または実施例5を精製水に置き換えた以外は実施例6~実施例12の紫外線防止化粧品と同様にして比較例6~比較例12の化粧品を作製した。
[0127]
 実施例6~12と比較例6~12は、いずれも刺激等が無く、安全性が高かった。また、実施例6~12では紫外線防止効果を有したが、比較例6~12では紫外線防止効果を有しなかった。
[0128]
 (金属イオン種の相違による蛍光スペクトルの比較)
 物質群アルギニルクマリン(Arg-4C)にAlを含めて、他の金属イオンとの蛍光スペクトル特性の比較を行った。図32は、アルギニルクマリンの金属イオン添加による蛍光スペクトルへの影響を示したグラフであり、詳細にはアルギニルクマリンの金属イオン添加による蛍光スペクトルを、金属種を、Mg、Cu、Ca、Co、Al、In、K と置き換えて測定比較した結果である。上記で説明したように、Alは可視発光するという特異性がある。その他の元素では、Mgに420nm近傍に極大がある380~500nmの範囲に弱い発光が観測された。またMgの場合、長波長紫外線(UVA)発光強度はArg-4Cそのものよりも増大するということがわかった。次にCaにおいてさらに微弱な発光が認められたが、その他のCu、Co、In、Kでは可視発光は観測されず、長波長紫外線(UVA)発光強度は減少した。
[0129]
 次に、長紫外線(UVA)発光強度が増大するMgと減少するCuとの比較を、濃度依存性においてどのようになるかを測定した。図33は、アルギニルクマリンのMgイオン、Cuイオン添加濃度変化による蛍光スペクトルへの影響を示したグラフである。図33に示すように、Mgでは、濃度変化しても蛍光強度は増大したままであったが、Cuの場合は減少の一途をたどった。これらの結果から、Alが特にArg-4Cと反応して光活性を与えること、MgがAlほどではないが、明らかに他の金属イオンとは違い、Arg-4Cと反応して若干光活性を与えるということが判明した。
[0130]
 以上の相違点について、発明者は次のような考察を行った。Al 3+のイオン半径は、50pm(ピコメートル)、Mg 2+のイオン半径は、65pmであり、その他の金属イオンは、Cu 2+のイオン半径96pm、Ca 2+のイオン半径99pm、Co 2+のイオン半径72pm、In 3+のイオン半径81pm、K のイオン半径133pm、と大きい値をとる。このことから、上記の長波長紫外線(UVA)発光強度の増大または、可視発光特性の発現は、小さいイオン半径が大きな因子であると示唆された。ただし、Ca 2+のようにMg 2+より1.5倍程度大きいイオン半径でも、Mg 2+ほどではないがスペクトル特性がやや似た変化をもたらすものもあり、一概には規定できない例外因子もあるが、Al 3+、Mg 2+のイオン半径の小さいことが上位にあることから、紫外可視光変換機能を付与する金属イオンとしてAl 3+、Mg 2+の順に好ましいことがわかった。
[0131]
(アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物の固形成分の、正常ヒト表皮細胞に対するUVBによる炎症抑制作用について)
 中波長紫外線(UVB)が皮膚に照射されると、紫外線照射により種々の現象が起きることが知られているが、その中でもケラチノサイトや肥満細胞がサイトカインを産生・抑制することがよく知られている。
[0132]
 ここでサイトカインとは、細胞から放出され、種々の細胞間情報伝達分子となる微量生理活性タンパク質で、通常低分子量(分子量は8万以下、3万以下が多数)で、糖鎖を持つものが多く、体液を通って細胞表面の高親和性受容体などに結合し、多面的な生物活性を発現させることが知られている。その働きは、免疫、炎症に関係したものが多く知られる。サイトカインの中でも炎症性のサイトカインには、インターロイキンIL-1α、IL-6およびIL-8が存在していることが知られている。これらのサイトカインの産生量が増大すると、皮膚組織内でコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼが活性化し、皮膚を形成している重要なタンパク質コラーゲンが分解され、結果として老化現象が促進されることになる。よって、UVBを浴びた皮膚組織内でこれらのサイトカインの産生が抑制されれば、結果として「光による老化」を低減できることになる。
[0133]
 そこで、本発明者は、前記アルギニンと4-ヒドロキシクマリンから合成した化合物の固形成分の、正常ヒト表皮細胞に対するUVBによる細胞傷害緩和作用、および、UVBによる炎症抑制作用について、インターロイキン(以下、ILと称す)のうち、IL-1α、IL-6およびIL-8の産生量の測定による検討を行った。
[0134]
<試験方法>
 正常ヒト表皮細胞をHuMedia KG2培地を用いて、5.0×104 cells/wellの細胞密度にて48穴プレートに播種した。播種48時間後に培地をハンクス緩衝液(Ca 2+、Mg 2+未含有)に交換し、所定の線量のUVBを細胞に照射した。UVB未照射群は、アルミ箔にてカバーしUVBを遮蔽した。照射後、ただちにハンクス緩衝液を、毒性を示さない濃度の試験試料を含有するHuMedia-KB2(KB2)に交換し、さらに24時間培養した。
[0135]
 培養後に培地を回収し、細胞生存率を測定する目的で、33μg/mL neutral red(NR)を含有するKB2に交換し、2時間培養した。その後、PBSにて細胞を洗浄し、細胞内に取り込まれたNRを30%エタノール含有0.1M HCl溶液にて抽出し、550nmにおける吸光度を測定した。UVBによる細胞傷害緩和作用は、各濃度におけるUVB未照射群の吸光度に対するIndex(%)で示した。
[0136]
 回収した培地中のIL-1α、IL-6およびIL-8の測定は、市販のELISAキット(R&D systems)を用い、添付のプロトコールに準じて実施した。統計処理は、Student t検定をもちいた有意差検定を行い、試験試料未処理との差を評価した。
[0137]
<結果>
 結果を表9~12(Table1~4)に示すとともに、図34にまとめて示した。UVB照射直後に処理した試験試料によるUVBによる細胞傷害緩和作用は認められなかった(表9)。一方、UVBによるIL-1α、IL-6およびIL-8の増加に対し、試験試料による有意な増加抑制作用は認められた(表10~12)。
[0138]
[表9]


[0139]
[表10]


[0140]
[表11]


[0141]
[表12]


[0142]
<得られる効果>
 以上より、アルギニンと4ヒドロキシクマリンの反応生成物は、UVBによる細胞傷害緩和作用を示さなかったが、炎症抑制作用(IL-1α、IL-6およびIL-8の増加抑制)を有することが確認された。その効果は、3種の炎症性インターロイキンに対して、重量比で0.1mg/mLの含有量で効果が明確である。この効果は化粧品重量に対して重量百分率で0.01%(w/w)で効果があることを意味している。今日、従来から知られている炎症抑制作用効果を目的とした添加物質の最適配合割合は0.1~0.03%(w/w)程度のものがよく知られていて使用されている。これに比べるとアルギニンと4ヒドロキシクマリンの反応生成物はより少ない含有率の使用で効果が期待できることが明確となった。


請求の範囲

[請求項1]
 少なくとも250~300nmに光吸収を有する紫外線吸収化粧品素材を含む化粧品をヒトの肌に塗布することで該肌を紫外線から遮断する方法であって、
 前記紫外線吸収化粧品素材はクマリン色素及びアルギニンから合成されクマリン由来のとは異なる1つ以上の環式構造を有する環状構造化合物からなる紫外線吸収化合物とともに30~70pmのイオン半径を有する金属イオンを含むことで250~430nmに励起帯かつ320~600nmに発光帯を有することを特徴とする紫外線遮断方法。
[請求項2]
 前記環状構造化合物はクマリン骨格を含まないことを特徴とする請求項1記載の紫外線遮断方法。
[請求項3]
 前記クマリン色素は4-ヒドロキシクマリンであることを特徴とする請求項2記載の紫外線遮断方法。
[請求項4]
 前記金属イオンはAl 3+またはMg 2+であることを特徴とする請求項3記載の紫外線遮断方法。
[請求項5]
 前記紫外線吸収化粧品素材は250~300nm及び330~430nmの励起帯かつ400~600nmの発光帯を有することを特徴とする請求項4記載の紫外線遮断方法。
[請求項6]
 前記紫外線吸収化粧品素材は260~350nmの励起帯かつ320~550nmの発光帯を有することを特徴とする請求項4記載の紫外線遮断方法。
[請求項7]
 クマリン色素及びアルギニンから合成されながらクマリン由来のとは異なる1つ以上の環式構造を有し少なくとも250~300nmに光吸収を有する環状構造化合物を含む紫外線吸収化粧品素材であって、
 30~70pmのイオン半径を有する金属イオンを与えられ250~430nmに励起帯かつ320~600nmに発光帯を有することを特徴とする紫外線吸収化粧品素材。
[請求項8]
 前記環状構造化合物はクマリン骨格を含まないことを特徴とする請求項7記載の紫外線吸収化粧品素材。
[請求項9]
 前記クマリン色素は4-ヒドロキシクマリンであることを特徴とする請求項8記載の紫外線吸収化粧品素材。
[請求項10]
 前記金属イオンはAl 3+またはMg 2+であることを特徴とする請求項9記載の紫外線吸収化粧品素材。
[請求項11]
 250~300nm及び330~430nmの励起帯かつ400~600nmの発光帯を有することを特徴とする請求項10記載の紫外線吸収化粧品素材。
[請求項12]
 260~350nmの励起帯かつ320~550nmの発光帯を有することを特徴とする請求項10記載の紫外線吸収化粧品素材。
[請求項13]
 請求項7~12のうちいずれか1つに記載の紫外線吸収化粧品素材を含有することを特徴とする化粧品。


図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]

[ 図 29]

[ 図 30]

[ 図 31]

[ 図 32]

[ 図 33]

[ 図 34]