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1. (WO2015147018) 炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤
Document

明 細 書

発明の名称 炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

非特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009  

課題を解決するための手段

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054  

実施例

0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075  

産業上の利用可能性

0076   0077   0078  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤

技術分野

[0001]
 本発明は、メトトレキサートを含有する炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤に関する。

背景技術

[0002]
 メトトレキサートは、葉酸代謝拮抗物質で、古くから各種悪性腫瘍の治療に広く使用されてきた。その後、関節リウマチに対する有効性が確認され、抗リウマチ剤として、国内では「リウマトレックス(登録商標)カプセル2mg」(ファイザー(株))、「メトレート(登録商標)錠2mg」(参天(株))などの経口薬が販売されている。
 上記の経口薬は、通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして6mgとし、4~8週間投与しても十分な効果が得られない場合には、2~4mgずつ増量して投与される。国内では、最大投与量は、1週間単位で16mgまでとされている。世界においては、1週間単位で30mgまでが一般的である。リウマチは慢性疾患のため、長期間にわたり服用する必要があり、治療経過中に効果の減弱(エスケープ現象)が起こることがある。その場合は、メトトレキサートを増量することにより再び効果が得られるとされている(非特許文献1)。
[0003]
 メトトレキサートの経口薬は、薬剤が直接的に胃腸粘膜を刺激することに起因する胃腸障害、増量により腸管吸収が飽和し生物学的利用能が低下するという課題が指摘されている(非特許文献2)。
 また、経口薬は、飲みにくさの点から子供や老人などにおいては服用が困難、または拒否される場合がある。したがって、上記課題を解決することができる非経口投与製剤が望まれる。
[0004]
 海外においては、非経口投与製剤が提案されており、代表的な製剤として「Metoject(登録商標)」(Medac社)、がある。投与方法は、皮下注射、筋肉注射、静脈内注射のいずれも可能であるが、静脈を探す必要がなく、筋肉組織の破壊がない皮下注射が主流となっている。非経口投与製剤に関する特表2009-544636(特許文献1)には、炎症性自己免疫疾患を治療するための非経口投与薬剤の製造におけるメトトレキサートの使用であって、メトトレキサートを、薬学的に許容される溶剤中に25mg/mlよりも高い濃度で存在させる該使用が開示されている。そして、特許文献1には、注射用水を溶剤とした水性製剤で、塩化ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含み、そのpHを8.5~8.9に調整することが開示されている。
[0005]
 また、国内におけるメトトレキサートの非経口投与製剤としては、特許文献1のものと同様に塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムを含んだpH8.0~9.0の水性製剤が販売されている。しかし、国内におけるメトトレキサートの非経口投与製剤は、抗がん剤のみで適応が認められており、リウマチにはその適応が認められていない。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特表2009-544636

非特許文献

[0007]
非特許文献1 : 関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX):診療ガイドライン2011年版 日本リウマチ学会
非特許文献2 : Mebio,Vol.29,No.1:22,2012 鈴木康夫

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 非経口投与製剤により、服用における前記課題は解決する。しかし、上記のようなメトトレキサートの非経口投与製剤は、注射時に患者に与える痛みが強いといわれている。注射による痛みには、注射針穿刺による痛みと薬液による痛みがある。穿刺による痛みは、投与薬剤に起因するものではなく、注射針を使用するもの全般に生じるものであり、注射針を細くする、針先の抵抗を減らすなど注射針の選択、改良による改善により解決が求められる。
[0009]
 本願発明者は、注射による薬液による痛みを薬剤の処方の改良により、低減可能であるか鋭意検討した。
 特許文献1および販売されているメトトレキサートの非経口投与製剤では、上述したように、pHがかなり高いものとなっており、この高いpHが薬液による痛みを与えている要因であると、本願発明者は、知見した。しかし、メトトレキサートは水にはほとんど溶けず、水酸化ナトリウム溶液には溶解する。しかし、一旦溶解させてもpHが酸性に傾くと析出する。
 そこで、本発明は、メトトレキサートを含有する炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤であって、注射時における患者に与える薬剤に起因する痛みが少なく、かつ、保存時におけるメトトレキサートの析出もなく、良好に保存可能である炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤を提供するものである。

課題を解決するための手段

[0010]
 上記目的を達成するものは、以下のものである。
 メトトレキサートまたはメトトレキサートの薬学的に許容される塩をメトトレキサートとして濃度が25mg/mL~100mg/mLとなるように含有し、さらに緩衝剤および等張化剤を含有する炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤であって、前記注射用水性製剤は、pHが7.0~8.0であり、かつ、生理食塩水に対する前記注射用水性製剤の浸透圧比が0.9~1.1である炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 図1は、本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤をプレフィルドシリンジに応用した実施例の正面図である。
[図2] 図2は、図1に示すプレフィルドシリンジの断面図である。
[図3] 図3は、図1に示すプレフィルドシリンジの先端部分の拡大断面図である。
[図4] 図4は、プレフィルドシリンジを収納し包装された状態の注射用水性製剤の正面図である。
[図5] 図5は、図4に示した包装された注射用水性製剤の平面図である。
[図6] 図6は、本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤を針付きタイプのプレフィルドシリンジに応用した他の実施例の正面図である。
[図7] 図7は、図6のA-A線断面図である。
[図8] 図8は、実験結果を示すグラフである。
[図9] 図9は、実験結果を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0012]
 本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤を針付きタイプのプレフィルドシリンジに応用した実施例を用いて説明する。
 本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤は、メトトレキサートまたはメトトレキサートの薬学的に許容される塩をメトトレキサートとして濃度が25mg/mL~100mg/mLとなるように含有し、さらに緩衝剤および等張化剤を含有する。そして、注射用水性製剤は、pHが7.0~8.0であり、かつ、生理食塩水に対する注射用水性製剤の浸透圧比が0.9~1.1となっている。
[0013]
 本発明の注射用水性製剤は、既に販売されている経口薬の有効成分であるメトトレキサートを非経口投与するのに適した状態に製剤化し、炎症性自己免疫疾患治療用に適するように調整した注射用水性製剤である。
[0014]
 本発明では、メトトレキサートまたはメトトレキサートの薬学的に許容される塩が使用される。
 メトトレキサート(Methotrexat:N-{4-[(2,4-ジアミノプテリジン-6-イルメチル)(メチル)アミノ]-ベンゾイル}-L-グルタミン酸)は、葉酸代謝拮抗剤に分類される薬剤である。そして、本発明では、メトトレキサートそのものを用いることが好ましいが、メトトレキサートの薬学的に許容される塩を用いてもよい。
[0015]
 メトトレキサートの薬学的に許容される塩としては、塩基付加塩、酸付加塩がある。メトトレキサートの薬学的に許容される塩基付加塩には、ナトリウムカチオン(Na )、カリウムカチオン(K )、マグネシウムカチオン(Mg 2+)、カルシウムカチオン(Ca 2+)及び同様の塩そしてN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、クロリン、ジエタンエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン及びプロカインといった適切なアミンとの塩が含まれる。
[0016]
 また、メトトレキサートの薬学的に許容される酸付加塩としては塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸などといった無機酸から誘導された塩、並びに脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカンニ酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの有機酸から誘導された塩が含まれる。
 なお、メトトレキサートの薬学的に許容される塩としては、メトトレキサートナトリウムが好ましい。
[0017]
 そして、本発明の注射用水性製剤は、水(例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水など)をベースとする水性製剤であり、メトトレキサートまたはメトトレキサートの薬学的に許容される塩を、メトトレキサートとして濃度が25mg/mL~100mg/mLとなるように含有している。なお、非経口投与である注射用の水性製剤として、痛みを軽減する観点および注射に使用するシリンジや針への残液を考慮して正確な量を投与するという観点から上記の濃度としている。なお、含有濃度としては、25mg/mL~65mg/mLであることが好ましい。
[0018]
 また、本発明の注射用水性製剤は、緩衝剤を含有し、pHが7.0~8.0に調整されている。緩衝剤としては、リン酸水素二ナトリウムやリン酸二水素ナトリウムなどのリン酸系緩衝剤、クエン酸系緩衝剤、トリス系緩衝剤など一般的な緩衝剤を用いることができる。また、注射用水性製剤は、pH調節剤を含有してもよい。pH調節剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸などを用いることができる。そして、本発明の水性製剤のpHは7.0~8.0に調整されている。
[0019]
 さらに、本発明の注射用水性製剤は、等張化剤を含有し、生理食塩水に対する注射用水性製剤の浸透圧比が0.9~1.1に調整されている。なお、浸透圧比は、たとえば、第十六改正日本薬局方の浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)の項に記載の方法に従い測定することができる。
 等張化剤としては、イオン性等張化剤、非イオン性等張化剤などが挙げられる。イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。非イオン性等張化剤としては、スクロース、グルコースなどの糖類、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール類、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。
 また、本発明の注射用水性製剤の分解生成物量は、国際医薬品規制ガイドライン(ICH-Q3B(R2))で1日最大投与量から算出される安全性の確認が必要とされる闘値の0.5%を超えない量であることが好ましい。
[0020]
 そして、本発明の注射用水性製剤は、以下のようにして調製することができる。
 注射用水を準備し、これに、リン酸水素二ナトリウムを添加した水溶液と、同じM(モル)濃度の、注射用水にリン酸二水素ナトリウムを添加した水溶液を作成し、両者を混合し、さらに、注射用水で希釈することにより、リン酸緩衝液を準備する。なお、上記リン酸緩衝液における、リン酸水素二ナトリウム溶液:リン酸二水素ナトリウム溶液=61:39~95:5であることが好ましい。また、リン酸緩衝液としては、1~100mMリン酸緩衝液であることが好ましい。
[0021]
 そして、上記のリン酸緩衝液にメトトレキサート、等張化剤として、塩化ナトリウムを添加する。さらに、pH調整剤として、水酸化ナトリウム適量にてpHを調整することにより、本発明の注射用水性製剤を作成することができる。また、作成された注射用水性製剤は、メンブランフィルターを用いて濾過することが好ましい。
[0022]
 そして、上記のように作成された注射用水性製剤は、容器体に収納される。容器体としては、容器本体と、容器本体に装着されたゴム状弾性体(栓体)を備えるものが好適に使用される。また、容器本体としては、合成樹脂製のものが好ましい。ゴム状弾性体(栓体)としては、ブチルゴムにて形成されたものが好適である。
 上記のような容器体としては、バイアル、シリンジが考えられる。
[0023]
 図1ないし図3に示す実施例は、本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤をプレフィルドシリンジに応用したものである。
 この実施例では、注射用水性製剤は、プレフィルドシリンジ1となっている。そして、プレフィルドシリンジ1に用いられているシリンジ2は、外筒21と、外筒21内に摺動可能に収納され、かつ外筒の後端側を封止するガスケット22と、シリンジ2の先端側を封止する封止部材23とを備える。
[0024]
 そして、外筒21としては、合成樹脂製のものが好ましい。ガスケット22としては、ブチルゴムにて形成されたものが好適である。また、プレフィルドシリンジ1に用いられる外筒としては、その先端部に取り付けられた注射針を備えるもの(注射針一体型外筒)であってもよい。この場合、注射針は、外径が、0.42mm以下であることが好ましい。
 そして、シリンジ2は、外筒21の内面に対するガスケット22の摺動性を向上させるための摺動性向上処理がされているものであることが好ましい。摺動性向上処理は、外筒21の内面もしくはガスケット22の外面に、摺動性向上物質の塗布物もしくは被膜を付与することにより行われたものが好ましい。
[0025]
 図1ないし図3に示す実施例のプレフィルドシリンジ1は、図2に示すように、シリンジ2と、シリンジ2内に充填された注射液3とからなる。注射液3には、上述した注射用水性製剤が用いられている。
 そして、シリンジ2は、図1に示すように、外筒21と、外筒内に摺動可能に収納されたガスケット22と、外筒21の注射針取付部31に取り付けられ液密に密封するためのシールキャップ(封止部材)23と、ガスケット22に取り付けられたプランジャー24とからなる。
 そして、注射液3は、外筒21とガスケット22とシールキャップ23内に収納されたシール部材32により形成される空間内に収納されている。
[0026]
 外筒21は、外筒本体部30と、外筒本体部30の先端部に設けられた注射針取付部31と、外筒本体部30の後端部に設けられたフランジ部34を備える。外筒21は、透明もしくは半透明である。外筒本体部30は、ガスケット22を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分である。また、外筒本体部30の先端部(肩部)は、注射針取付部31に向かってテーパー状に縮径している。
[0027]
 注射針取付部31は、図2および図3に示すようにノズル部35と、カラー部36とを備える。ノズル部35は、図2に示すように、先端に向かって縮径する注射針装着用チップ部となっている。ノズル部35は、外筒21の先端に設けられており、先端に外筒内の薬液等を排出するための開口を備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。カラー部内周面には、シールキャップ23のノズル部収納部の外周面に形成された螺旋状突出部53と螺合可能な螺旋状溝部37が形成されている。フランジ部34は、図1および図2に示すように、外筒21の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ部34は、図1、図2に示すように向かい合う幅広となった2つの把持部34a、34bを備える。
[0028]
 外筒21の形成材料としては、透明もしくは半透明材料により、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成されている。外筒21の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
[0029]
 ガスケット22は、図1、図2に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ26,27(この実施例では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブ26,27が、外筒21の内面に液密に接触する。また、ガスケット22の先端面は、外筒21の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒21の先端内面形状に対応した形状となっている。
[0030]
 そして、ガスケット22の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン-αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。特に、ブチルゴムにて形成されたものが好適である。
[0031]
 また、ガスケット22としては、注射液3と接触する部分に、低薬剤吸着性被膜を有するものであってもよい。低薬物吸着性皮膜の形成材料としては、従来からラミネートガスケットに使用されている公知のものが使用できる。低薬物吸着被膜材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリパラキシリレンなどが挙げられる。具体的に、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)、環状ポリオレフィン等が好ましく、フッ素系樹脂としては、四フッ化エチレン-パーフルオロエトキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。
[0032]
 また、ガスケト22の外面、少なくとも先端側環状リブ26および後端側環状リブ27の表面に潤滑剤の塗布を行うことが好ましい。また、潤滑剤は、外筒の内面に塗布してもよい。潤滑剤としては、シリコーンオイルが好適である。また、ガスケット本体表面または外筒の内面に、当該面にて固化することにより形成されたシリコーン系樹脂層を設けることにより、シリコーンオイル等の潤滑剤を用いないものであってもよい。
[0033]
 そして、ガスケット22には、その後端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部は、雌ねじ状となっており、プランジャー24の先端部に形成された突出部の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャー24は、ガスケット22より離脱しない。なお、プランジャー24は取り付けられておらず、使用時に取り付けるようにしてもよい。
[0034]
 プランジャー24は、先端の円盤部に筒状に突出する突出部を備え、突出部の外面にはガスケット22の凹部と螺合する雄ねじが形成されている。また、プランジャー24は、断面十字状の軸方向に延びる本体部と、後端部に設けられた押圧用の円盤部を備えている。
[0035]
 シールキャップ23は、キャップ本体50と、キャップ本体内に収納されたシール部材32とからなる。キャップ本体50は、図1、図2、図3に示すように、キャップ状に作製されており、ノズル部収納部51、カラー部収納部52を有する。また、シール部材32は、キャップ本体50のノズル部収納部51内に収納されている。
 ノズル部収納部51は、シールキャップ23の中央部に設けられ、一端が閉塞し、他端が開口した円筒状部である。ノズル部収納部51の内径は、一端から他端までほぼ同一径となっている。また、ノズル部収納部51の閉塞部56の中央部には、閉塞部56の内面より、開口端方向に突出する環状突出部56aが形成されている。
[0036]
 そして、キャップ本体50に収納されるシール部材32は、図3に示すように、この環状突出部56aと外筒21のノズル部35の先端35a間により、挟圧される。言い換えれば、シール部材32は、図5に示すように、キャップ本体50の環状突出部56aにより、外筒21のノズル部35の先端35aに圧接され、ノズル部35の先端35aを液密状態に封止する。
[0037]
 また、ノズル部収納部51の外周面には、外筒21のカラー部36の内周面に形成された螺旋状溝部37と螺合可能な螺旋状突出部53が形成されている。これにより、注射針取付部31とシールキャップ23はノズル部収納部51の外周面と外筒21のカラー部36との間で螺合する。カラー部収納部52は、ノズル部収納部51を取り囲むように形成され、一端が閉塞し、他端が開口した円筒部である。また、図1に示すようにシールキャップ23の外側面(カラー部収納部52の外周面)には、シールキャップを回転させる時指等が滑らないようにするために縦方向に刻み加工が施されている。
[0038]
 シールキャップの形成材料としては、透明もしくは半透明材料により、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成されている。シールキャップの形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
[0039]
 この実施例のプレフィルドシリンジでは、シール部材32は、円板状に形成されている。シール部材32の直径は、ノズル部収納部51の閉塞部の内径とほぼ同じもしくは若干小さいものとなっている。シール部材32としては、先端開口を液密に密封可能なように弾性部材であることが好ましい。
 シール部材32の形成材料としては、ガスケット22にて説明したものが好適に使用できる。また、シール部材32の注射液3と接触する部分にも、上述した低薬剤吸着性被膜を設けてもよい。
 そして、上述したように、シール部材32は、図3に示すように、キャップ本体50の環状突出部56aにより、外筒21のノズル部35の先端35aに圧接され、ノズル部35の先端35aを液密状態に封止する。
[0040]
 本発明のプレフィルドシリンジ1は、図3に示すように、注射液3を収納するとともに、螺旋状溝部37と螺旋状突出部53との螺合により、外筒21のノズル部35にシールキャップ23が装着され、ノズル部35の先端35aがシール部材32に圧接した密封状態となっている。なお、シール部材32を用いない場合等、シールキャップ23が収納された注射液3と直接接触する場合には、シールキャップ23の形成材料として外筒21の形成材料と同じ材料を用いることが好ましい。
[0041]
 また、プレフィルドシリンジとしては、図6および図7に示すような針付きタイプのプレフィルドシリンジ20であってもよい。
 図6および図7に示すように、プレフィルドシリンジ20は、針付き外筒72と、外筒72の先端部(針部)に装着された封止部材(キャップ)76と、外筒72内に収納され、かつ外筒内を摺動可能なガスケット75と、ガスケット75に装着されたプランジャー77と、外筒72内に充填された上述の注射液(本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤)3を備える。
[0042]
 針管73は、外径:φ0.41~0.18mmのものを使用する。針管73は、先端から基端まで貫通する内腔を備える。また、針管73は、先端に、生体に穿刺される針先を備えている。針先は刃面を備えた鋭角に形成されている。針管73は、その針先を含む先端側部分が、外筒72の先端部78の先端から突出し、針管73の基端は、針挿入孔を貫通し、外筒72の内部に到達している。
[0043]
 金属製針管73の材料としては、例えば、ステンレス鋼が好ましい。しかし、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金その他の金属を用いることができる。また、針管73は、上述のようなISOの規格に合致するストレート針だけでなく、一部がテーパー状となっているテーパー針を用いることができる。
[0044]
 外筒72は、薬剤が充填される本体部74と、針挿入孔を有する先端部78を備えている。本体部74は、内部収納部を有する略円筒形に形成されている。本体部74の軸方向の後端側にはフランジ79が形成されている。
[0045]
 先端部78は、先端膨出部と、先端膨出部と本体部74の先端間を繋ぐ筒状部を備えている。また、先端部78は、内部を貫通する針挿入孔を有している。針挿入孔には、針管73の基端が備わっていて、インサート成形等の手段で外筒と一体に形成されている。
 そして、キャップ76は、円筒状に形成され、軸方向の基部側が開口し、軸方向の先端が閉じている。このキャップ76は、例えば、ゴムやエラストマー等の弾性部材から形成される。 キャップ76は、針管73の針先及び外筒72の先端部78を覆うように外筒72の先端部78に取り付けられる。そして、図7に示すように、針管73側及び先端部78は、キャップ76の内腔部82内に挿入される。
[0046]
 なお、キャップ76の内腔部の内径は、先端部の先端膨出部の外径とほぼ等しく形成されているか、または先端膨出部よりも若干小さく形成されている。よって、キャップ76を先端部78に取り付けると、先端膨出部の外周面がキャップ76の内周面に密着する。したがって、外筒72から突出する針管73を覆う空間は、先端膨出部とキャップ76の内周面によって密閉される。このように構成することにより、針先に菌が付着することを防止することができる。
[0047]
 キャップ76の内周面に設けられた環状リブ81は、その弾性力によって先端部78における先端膨出部とテーパー嵌合部との境界におけるくびれ部を締め付ける。このように、キャップ76の内周面と先端部78のくびれ部が係合し、搬送時にキャップ76が先端部78から外れることを防止することができる。
 プランジャー77は、本体部91と本体部91の先端に形成されたガスケット装着部92と、基端部に設けられた押圧部93とを備える。また、ガスケットは、プランジャー77のガスケット装着部92を受入れ、かつ係合するプランジャー装着部を備えている。
[0048]
 そして、この実施例のプレフィルドシリンジは、注射液が充填された状態にて高圧蒸気滅菌されている。高圧蒸気滅菌は、注射液が充填されたプレフィルドシリンジを、例えば、100~122℃、15~30分間程度さらすことにより行われる。
[0049]
 なお、本発明の注射用水性製剤は、図4および図5に示すように、包装容器に収納され、密封されているものであってもよい。
 この実施例の包装された注射用水性製剤10では、上述した注射用水性製剤が注射液3として、充填されたプレフィルドシリンジ1が用いられている。
 この実施例にて用いられる包装体11は、プレフィルドシリンジ1を収納するトレー12と、トレー12の開口を開封可能に封止する封止部材13とを備える。
[0050]
 図4および図5に示す実施例において、包装体11は、プレフィルドシリンジ1を収納するための収納部41を有するトレー12と、トレーの開口を封止するための剥離可能な封止シート(封止部材)13とを備えている。図4および図5に示す実施例の包装体11は、ブリスター包装体である。この実施例の包装体11は、プレフィルドシリンジを収納可能な形状となっている。
 具体的に、トレー12は、収納部41と、収納部41の周囲に形成されたフランジ42とを備える。また、収納部41は、外筒21の注射針取付部付近を実質的に接触することなく収納する外筒先端部収納部と、外筒21の中間部の外周面に接触するとともに外筒21の水平横方向の移動を阻止するように外筒21の中間部を収納する外筒中間部収納保持部と、外筒21のフランジ形成部分を収納する外筒基端部収納部と、プランジャー24部分を収納するプランジャー収納部とを備えている。
[0051]
 トレー12の材質としては、水蒸気難透過性であり、かつ、ある程度の強度と硬度を有することが好ましい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン/ポリプロピレン樹脂などの基材層と、この基材層の上面もしくは下面に、水蒸気難透過性を有する樹脂(例えば、ポリ塩化ビニリデン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート)からなる厚さ30~90μm程度の層を備えるのが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ポリプロピレンの三層からなるものが好適である。
[0052]
 トレー12の上面には、プレフィルドシリンジ収納用凹部を封止するように封止シート(封止部材)13が気密に固着されている。封止シート13は、水蒸気難透過性フィルムと、この水蒸気難透過性フィルムの下面の少なくとも外周部分に固着された接着性樹脂層と、水蒸気難透過性フィルムの上面に設けられた表面保護層から形成されているものが好ましい。酸素難透過性フィルムは、外部からの酸素の透過を抑制する。水蒸気難透過性フィルムとしては、アルミニウム、銀、金などの金属箔またはアルミニウム、銀、金などが表面に蒸着された金属蒸着フィルム、SiOXなどが表面に蒸着された無機物蒸着フィルム、水蒸気難透過性樹脂フィルム、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン-ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン-アクリル酸エステル共重合体、高密度ポリエチレン等のフィルムが好適に使用できる。
[0053]
 封止シート13の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート/接着性樹脂、ポリエチレンテレフタレート/エチレン-ビニルアルコール共重合体/延伸ナイロン/接着性樹脂の4層からなるもの、ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン/接着性樹脂の3層からなるものが考えられる。
 そして、包装体11内には、脱酸素剤14が収納されていてもよい。脱酸素剤としては、公知のものが使用できる。また、脱酸素剤14は、トレーの内底面もしくは封止シート13の下面(内面)に固着してもよい。
[0054]
 本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤をプレフィルドシリンジに応用した場合、投与薬剤量から計算すると、液量が約0.1~約1.2mLと小容量のものとなる。このような、小容量のものにおいて、例えば、有効期間を3年と長期を想定した場合、蒸散を防ぐことが重要となる。
 なお、上述した水蒸気難透過性とは、水蒸気透過度が4g/m ・24h以下であることを言い、水性製剤を収納する容器自体が水蒸気バリア性を有する場合には蒸散防止の目的での包装容器の使用は求められない。
 なお、包装体は、上述したようなトレーを備えるものに限定されない。包装体としては、水蒸気難透過性や酸素難透過性のいずれか又は両方有する袋状のものであってもよい。このような袋状の包装体は、例えば、上述した封止シートを重ね合わせて、周縁部をシールすることにより作成されたものが考えられる。そして、このようなタイプの包装体を用いる場合には、収納する脱酸素剤は、包装体の内面に固定することが好ましい。
実施例
[0055]
 次に、本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤の具体的な実施例を説明する。
(実施例1)
 リン酸水素二ナトリウム(無水)0.71gを注射用水50mLに溶解した。リン酸二水素ナトリウム(無水)0.60gを注射用水50mLに溶解した。リン酸水素二ナトリウム溶液:リン酸二水素ナトリウム溶液=87:13の容量比で混合し、この混合液を注射用水で10倍希釈して10mMリン酸緩衝液とした。メトトレキサート125mg、塩化ナトリウム27mgを10mMリン酸緩衝液5mLに溶解し、水酸化ナトリウム適量にてpHを7.5付近に調整し、メトトレキサート25mg/mL濃度の水溶液を得た。この水溶液を0.2μmの孔径のメンブランフィルターを用いてろ過し、炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤を調製した。
[0056]
 得られた注射用水性製剤を、図8および図9に示すような、環状ポリオレフィン製の外筒の先端部に27G針(外径0.40mm)が固着され、シール部材により封止された針付きシリンジに1mL充填し、ブチルゴム製ガスケットにより封止することにより、炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤充填プレフィルドシリンジを作成した。そして、この注射用水性製剤充填プレフィルドシリンジを水蒸気透過度が4g/m ・24h以下であるアルミ蒸着処理を施したフィルムからなる袋に収納し、ヒートシール機によって密封包装し、包装された注射用水性製剤充填プレフィルドシリンジを作成した。
[0057]
(比較例1)
 メトトレキサート125mg、塩化ナトリウム27mgを注射用水5mLに溶解し、水酸化ナトリウム適量にてpHを7.5付近に調整した、メトトレキサート25mg/mL濃度の水溶液を得た。この水溶液を0.2μmの孔径のメンブランフィルターを用いてろ過し、緩衝剤を含まないメトトレキサート水溶液を調製した。
 得られた緩衝剤を含まないメトトレキサート水溶液を環状ポリオレフィン製の27G針付きシリンジに1mL充填し、ブチルゴム製ガスケットにより施栓した後、緩衝剤を含まないプレフィルドシリンジを作成した。そして、実施例1と同様に、このプレフィルドシリンジを水蒸気透過度が4g/m ・24h以下であるアルミ蒸着処理を施したフィルムからなる袋にヒートシール機によって密封包装し、緩衝剤を含まないメトトレキサート含有水性製剤包装体(比較例1)を得た。
[0058]
(試験例1)
 実施例1および比較例1で得られた包装されたプレフィルドシリンジを60℃の条件下で1週間保存したときのpHの結果は、下記の表1に示すとおりであった。なお、表1の開始時とは、実施例1および比較例1において、注射用水性製剤の調製時点である。
[0059]
[表1]


[0060]
(実施例2)
 実施例1のプレフィルドシリンジを常法により高圧蒸気滅菌を行ったものを作成した。
[0061]
(実施例3)
 実施例1における水酸化ナトリウムの添加量を変化させた以外は、実施例1と同様に行い、pH8.0のメトトレキサートを含有する注射用水性製剤を調製した。
[0062]
(比較例2)
 実施例1における水酸化ナトリウムの添加量を変化させた以外は、実施例1と同様に行い、pH8.5のメトトレキサートを含有する注射用水性製剤を調製した。
[0063]
(試験例2)
 実施例1,実施例3および比較例2の浸透圧比を測定した。その結果は、下記の表2に示すとおりであった。
[0064]
[表2]


[0065]
(試験例3)
 実施例1,3および比較例2のメトトレキサートを含有する注射用水性製剤をラットに投与したときの筋電図(EMG)を測定した。反応個体数とEMG強度の結果は、図8および図9に示すとおりであった。
 なお、ラットへの投与方法は次のとおりである。
 投与量:20μL
 投与速度:10μL/sec
 投与方法:シリンジポンプに1mLシリンジを装てんし、29G針を使用
[0066]
 また、筋電図(EMG)の測定方法は次のとおりである。
 ラットを3%イソフルランで麻酔し、後肢大腿部の筋肉(半腱様筋)を露出した。麻酔を1.5%程度に落とし、足先先端に挟み込みタイプの電極を装着した。電気刺激(40Hz、2ms、10mA)を行い、収縮が認められた位置に記録電極を挿入した。電気刺激強度を5mAに落とし、100μV程度の反応が得られるまで、麻酔濃度を落とした(1~1.4%)。麻酔濃度を変更してから30分以上安定化させ、試験を開始した。
[0067]
(比較例3~7)
 比較例1における水酸化ナトリウムの添加量を変化させた以外は、比較例1と同様に行い、pHを6.5、7.0、7.5、8.0、8.5に調整した緩衝剤を含まないメトトレキサート含有水性製剤包装体を得た。
[0068]
(試験例4)
 比較例3ないし7の緩衝剤を含まないメトトレキサート含有水性製剤包装体を60℃の条件下で3週間保存したときのpHに依存した分解生成物(面積百分率(%))を液体クロマトグラフィーで測定した結果は、下記の表3に示すとおりであった。なお、表3の開始時とは、緩衝剤を含まないメトトレキサート含有水性製剤にした時点のことである。
[0069]
[表3]


[0070]
(実施例4)
 実施例1において作成したプレフィルドシリンジで用いたアルミ蒸着処理を施したフィルムに代えてエチレン・ビニルアルコール共重合体(エバール(登録商標))フィルムからなる袋にヒートシール機によって密封包装し、メトトレキサート含有水性製剤包装体を得た。
[0071]
(試験例5)
 実施例1のアルミ蒸着処理を施したフィルムにより包装体にされたプレフィルドシリンジと、実施例4のエチレン・ビニルアルコール共重合体(エバール(登録商標))フィルムにより包装体にされたプレフィルドシリンジについて、60℃の条件下で1週間保存したときの重量変化より算出した水分蒸散率(%)の結果は、下記の表4に示すとおりであった。
[0072]
[表4]


[0073]
 図8の結果から、pH7.5、8.0、8.5を比較した場合、pH8.5において痛みの反応を示したラットの数が多かった。
 図9の結果から、pH7.5、8.0、8.5を比較した場合、pHに依存してEMG強度の増加が確認され、pH8.5において一番強い痛みの反応が確認された。
 表3の結果から、pHが酸性に近づくほど分解生成物量は増加し、pH6.5において、60℃の保存条件下で0.5%を超える量が確認された。
 表4の結果から、60℃という苛酷な保存条件下において、包装体であれば蒸散はほとんど確認されなかった。
[0074]
(試験例5)
 実施例1および比較例1で得られた他の包装されたプレフィルドシリンジを60℃の条件下で3週間保存したときのpHの結果は、下記の表5に示すとおりであった。なお、表5の開始時とは、実施例1および比較例1において、注射用水性製剤の調製時点である。
[0075]
[表5]


産業上の利用可能性

[0076]
 本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤は、以下のものである。
 (1) メトトレキサートまたはメトトレキサートの薬学的に許容される塩をメトトレキサートとして濃度が25mg/mL~100mg/mLとなるように含有し、さらに緩衝剤および等張化剤を含有する炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤であって、前記注射用水性製剤は、pHが7.0~8.0であり、かつ、生理食塩水に対する前記注射用水性製剤の浸透圧比が0.9~1.1である炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤。
[0077]
 本発明の炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤は、メトトレキサートまたはメトトレキサートの薬学的に許容される塩を含有する。さらに、本発明の注射用水性製剤は、炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤として、メトトレキサートとして濃度が25mg/mL~100mg/mLとなるように高濃度にて含有し、さらに緩衝剤および等張化剤を含有している。そして、注射用水性製剤は、pHが7.0~8.2であり、かつ、生理食塩水に対する注射用水性製剤の浸透圧比が0.9~1.1に調整したものとなっている。特に、メトトレキサートまたはその塩を含有することにより、炎症性自己免疫疾患、例えば、リウマチの治療用として有効であり、高濃度で含有することにより、注射時の液量に起因する痛みを少なくでき、かつ、緩衝剤によりpHが7.0~8.0に調整されているため、保存時におけるpHが上記範囲内において安定するためメトトレキサートの析出がなく、pHに起因する注射時に与える痛みも少ない。さらに、浸透圧比も0.9~1.1であるため、浸透圧に起因する注射時に与える痛みも少ない。
[0078]
 また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
 (2) 前記注射用水性製剤は、シリンジに収納されており、前記シリンジは、外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納され、かつ前記外筒の後端側を封止するガスケットと、前記シリンジの先端側を封止する封止部材とを備えるプレフィルドシリンジである上記(1)に記載の注射用水性製剤。
 (3) 前記外筒は、先端部に取り付けられた注射針を備え、前記注射針は、外径が、0.42mm以下である上記(2)に記載の注射用水性製剤。
 (4) 前記シリンジは、前記外筒の内面に対する前記ガスケットの摺動性を向上させるための摺動性向上処理がされている上記(2)または(3)に記載の注射用水性製剤。
 (5) 前記摺動性向上処理は、前記外筒の内面もしくは前記ガスケットの外面に、摺動性向上物質の塗布物もしくは被膜を付与することにより行われている上記(4)に記載の注射用水性製剤。
 (6) 前記注射用水性製剤は、包装容器に収納され、密封されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の注射用水性製剤。

請求の範囲

[請求項1]
メトトレキサートまたはメトトレキサートの薬学的に許容される塩をメトトレキサートとして濃度が25mg/mL~100mg/mLとなるように含有し、さらに緩衝剤および等張化剤を含有する炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤であって、前記注射用水性製剤は、pHが7.0~8.0であり、かつ、生理食塩水に対する前記注射用水性製剤の浸透圧比が0.9~1.1であることを特徴とする炎症性自己免疫疾患治療用の注射用水性製剤。
[請求項2]
前記注射用水性製剤は、シリンジに収納されており、前記シリンジは、外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納され、かつ前記外筒の後端側を封止するガスケットと、前記シリンジの先端側を封止する封止部材とを備えるプレフィルドシリンジである請求項1に記載の注射用水性製剤。
[請求項3]
前記外筒は、先端部に取り付けられた注射針を備え、前記注射針は、外径が、0.42mm以下である請求項2に記載の注射用水性製剤。
[請求項4]
前記シリンジは、前記外筒の内面に対する前記ガスケットの摺動性を向上させるための摺動性向上処理がされている請求項2または3に記載の注射用水性製剤。
[請求項5]
前記摺動性向上処理は、前記外筒の内面もしくは前記ガスケットの外面に、摺動性向上物質の塗布物もしくは被膜を付与することにより行われている請求項4に記載の注射用水性製剤。
[請求項6]
前記注射用水性製剤は、包装容器に収納され、密封されている請求項1ないし5のいずれかに記載の注射用水性製剤。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]