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1. (WO2015146843) 流出油処理剤及び付着した流出油の処理方法
Document

明 細 書

発明の名称 流出油処理剤及び付着した流出油の処理方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007  

課題を解決するための手段

0008  

発明の効果

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027  

実施例

0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : 流出油処理剤及び付着した流出油の処理方法

技術分野

[0001]
 本発明は流出油処理剤及び対象物に付着した油の処理方法に関する。

背景技術

[0002]
 海上において発生したタンカー等の事故により流出した原油や重油等の流出油は、海上を漂流し、海岸、消波ブロック及び船舶等の対象物に付着する。こうして付着した流出油は、経時変化により高粘度化し、除去が困難になる。
[0003]
 従来、流出油の除去作業には、水生生物に対する毒性を低減するためにパラフィン分を多量含有しアニリン点70℃以上の炭化水素系溶剤を主成分とした流出油処理剤(特許文献1)や、安定的に重油を乳化分散させるためにHLB7以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び炭化水素系溶剤を含有する流出油処理剤(特許文献2)が用いられてきた。しかしながら、これらの流出油処理剤は、付着した高粘度の流出油には効果が低い。また、流出油を乳化分散させて自然浄化に頼る処理方法は、水産資源に対して悪影響を及ぼす恐れがある。乳化分散で起こる海水の茶濁も近隣住民の苦情などの大きな問題となる。
[0004]
 油に汚染された海岸線用の洗浄剤として、炭化水素系溶剤に、HLB1~4の第一界面活性剤及びHLB12~15の第二界面活性剤をモル比40:60~75:25で混合した混合物を10~70質量%含有する油浸海岸線化学洗浄剤が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この油浸海岸線化学洗浄剤も高粘度の流出油には効果が低く、流出油を水中で乳化分散させ、海水の茶濁を引き起こす。
[0005]
 薬剤を使用しない付着流出油の除去作業は、高圧水洗除去による作業領域の破壊の問題や作業効率的に限界であると考えられている。高粘度の流出油の容易な除去と除去後の流出油を回収可能にする、環境に与える負荷が少ない流出油処理剤が求められている。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開昭48-89889号公報
特許文献2 : 特開2008-44976号公報
特許文献3 : 特開平3-114521号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 本発明は、海岸や船舶等の対象物に付着した流出油を、環境へ与える負荷を少なく除去・回収が可能な流出油処理剤とその処理方法を提供することを目的の一つとする。

課題を解決するための手段

[0008]
 前記目的を解決するため、本発明者らは、様々な種類の材料を用いて流出油処理剤を調製し、その重油除去性及び流出油と流出油処理剤の混合物の水中での乳化分散性、水面での凝集性を試験した。その結果、HLBが2~6以下のソルビタン脂肪酸エステルとナフテン系溶剤を20重量%以上含む炭化水素系溶剤を組み合わせた場合に、流出油が水洗で除去しやすくなること、また、除去後の流出油が茶濁などの乳化分散に伴う問題を生じずに水面に浮上し、回収が容易なレンズ状に凝集することを見出した。
すなわち、本発明は以下の態様の流出油処理剤および流出した油の処理方法を提供する。
項1 HLBが2~6であるソルビタン脂肪酸エステル(A)と、ナフテン系溶剤を含有する炭化水素系溶剤(B)からなる流出油処理剤において、ナフテン系溶剤が全重量の20重量%以上である流出油処理剤。
項2 ソルビタン脂肪酸エステル(A)が全重量の1~5重量%である項1に記載の流出油処理剤。
項3 炭化水素系溶剤(B)が、パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、スピンドル油、灯油および軽油からなる群より選択される少なくとも一種をナフテン系溶剤とともに含有する項1または2に記載の流出油処理剤。
項4. 炭化水素系溶剤(B)が、炭素数11~15で引火点が60℃以上のパラフィン系溶剤である項3に記載の流出油処理剤。
項5. 項1~4のいずれか一項に記載の流出油処理剤を流出油が付着した対象物表面に塗布したのち、水洗にて流出油を対象物表面から除去し、除去した流出油を回収することを特徴とする、対象物に付着した流出油を処理する方法。
項6. 流出油の重量に対して10重量%~100重量%の流出油処理剤を塗布する、項5に記載の方法。

発明の効果

[0009]
 本発明の流出油処理剤は、海岸や船舶等に付着した原油、重油等の流出油に塗布することで水洗にて容易に対象物表面上の流出油を除去することができる。また、除去後の流出油は水面に浮上させて回収できるため、従来の流出油処理剤や洗浄剤より環境負荷が少ない。

発明を実施するための形態

[0010]
[流出油処理剤]
 本発明の流出油処理剤は、HLBが2~6のソルビタン脂肪酸エステル(A)と、ナフテン系溶剤を含有する炭化水素系溶剤(B)からなる。
-ソルビタン脂肪酸エステル(A)-
 本発明のソルビタン脂肪酸エステルに使用される脂肪酸はエステル形成の際にHLBが上記範囲に入るものであれば特に限定するものではないが、例えば、天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、分離してあるいは分離せずに精製して得られるカルボン酸を官能基として含む物質や、あるいは石油などを原料にして化学的に合成して得られる脂肪酸でよい。あるいはまた、これら脂肪酸を水素添加などして還元したものや、水酸基を含む脂肪酸を縮重合して得られる縮合脂肪酸や、不飽和結合を有する脂肪酸を加熱重合して得られる重合脂肪酸であってもよい。これら脂肪酸の選択に当たっては所望の効果を勘案して適宜決めればよいが、魚類等の水生生物に対する毒性は脂肪酸鎖長が長いほど毒性が低いことから、なかでも長鎖の脂肪酸、例えば、イソステアリン酸等を用いるのが好ましい(「ポリグリセリンエステル」(阪本薬品工業株式会社)参照)。
[0011]
 脂肪酸としては、例えば、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、縮合12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸などが挙げられ、なかでも流出油の乳化性能や製品の液安定性の観点から、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸が好ましい。本発明においてはこれらの脂肪酸を一種単独で用いてもよく、あるいは二種以上を併用してもよい。
[0012]
 ソルビタン脂肪酸エステルとしては、HLBが2~6であればよく、アルキル基が16~22個の炭化水素を有するソルビタン脂肪酸エステルを使用することができる。具体的には、ソルビタンモノベヘネート(HLB=3.9)、ソルビタントリベヘネート(HLB=2.5)、ソルビタンモノエルシネート(HLB=3.9)、ソルビタンモノオレート(HLB=4.3)、ソルビタンセスキオレート(HLB=3.7)、ソルビタンモノステアレート(HLB=4.7)、ソルビタンジステアレート(HLB=4.4)、ソルビタントリステアレート(HLB=3.0)等が挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルは、一種単独で用いてもよいが、二種以上を併用してもよい。
[0013]
 本発明の流出油処理剤において、配合されているソルビタン脂肪酸エステルはアルキレンオキサイドを同一分子中に含まない構造をしているため食品添加物グレードとして使用されており、一般的に使用されているアルキレンオキサイドを含む非イオン系界面活性剤と比較して、環境に対する負荷が少ない。
-炭化水素系溶剤(B)-
 本発明に使用される炭化水素系溶剤は、ナフテン系溶剤を全重量の20重量%以上含有する炭化水素系溶剤であれば特に限定するものではなく、ナフテン系溶剤のみであってもよいし、他の炭化水素系溶剤とナフテン系溶剤を二種以上混合した溶剤であってもよい。ナフテン系溶剤の他の炭化水素系溶剤としては、例えば、パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、スピンドル油、灯油、軽油などが挙げられる。これらのうち、対生物毒性という点からパラフィン系溶剤が好ましい。パラフィン系溶剤は、ノルマルパラフィン系溶剤を包含する。パラフィン系溶剤は、炭素数が少ないほど除去性が高いが、安全という点から引火点60℃以上である炭素数11~15のパラフィン系溶剤が好ましい。
[0014]
 ナフテン系溶剤、パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、スピンドル油、灯油、軽油などは各種の市販品を適宜選択して使用することができる。
[0015]
 本発明の流出油処理剤のソルビタン脂肪酸エステル(A)の含有量は、1~8重量%、好ましくは1~7重量%、より好ましくは1~6重量%、さらに好ましくは1~5重量%、特に好ましくは1~4重量%、最も好ましくは1~3重量%である。
[0016]
 本発明の流出油処理剤の炭化水素系溶剤(B)の含有量は、99~92重量%、好ましくは99~93重量%、より好ましくは99~94重量%、さらに好ましくは99~95重量%、特に好ましくは99~96重量%、最も好ましくは99~97重量%である。
[0017]
 本発明の流出油処理剤は、適時選択したソルビタン脂肪酸エステル(A)および炭化水素系溶剤(B)の各所定量を分取し、混合などすることにより製造することができる。
[0018]
 [流出油の処理方法]
 本発明の流出油の処理方法は、前記流出油処理剤を対象物表面に塗布する工程、水洗にて流出油を対象物表面から除去する工程、除去した流出油を回収する工程からなる。
[0019]
 本発明の流出油処理剤により処理される流出油としては、例えば、原油、A重油、B重油、C重油(燃料油)などが挙げられる。
[0020]
 流出油が付着した処理対象物としては、特に制限はないが、例えば、砂、土、岩、木、コンクリート、樹脂及び金属などが挙げられる。処理対象の流出油は、通常海水中に流出した重油等が海水表面上を移動して海岸の対象物、例えば砂、土、岩など、コンクリートの岸壁、消波ブロックなど、船舶の船底、海の表面に浮遊し海岸に流れついた木片、樹脂片などに付着している。満潮時と干潮時のいずれの時期に対象物に付着したかによって流出油の高低の位置が異なるが、本発明では流出油が海面よりも上にある状態で処理剤を塗布するのが好ましい。
[0021]
 流出油処理剤を流出油が付着した対象物に塗布する方法として、特に制限はないが、例えば、スプレー法、浸漬法などが挙げられる。対象物がコンクリートブロック、岸壁、船底、大きな岩などの移動が難しい場合にはスプレー法が好ましく、砂や土、木片、樹脂片などの移動可能な対象物の場合には、スプレー法の他に浸漬法でも塗布できる。
[0022]
 流出油処理剤と除去される油の割合は、除去する油の重量に対して流出油処理剤10~100重量%程度、好ましくは20~50重量%程度である。必要な流出油処理剤の量は流出油の風化の程度及び油の温度による。
[0023]
 実際の付着流出油の処理現場では、流出油に汚染されている面積と流出油の厚さを目視で確認し、付着している流出油のおおよその体積を算出する。その体積に対して、流出油処理の使用量目安(付着流出油ではなく、海上で流出油を処理する際の)である20~30%の処理剤を散布することが望ましい使用量である。しかし、夏場などの気温の高い作業条件下では、20%以下(例えば10%)のより少ない処理剤使用量で処理できる場合もあり、冬場などの低温条件下では、1回の作業で流出油を除去しきることは難しく、処理できるまで同じ作業を何度か繰り返す場合もある。これらを勘案して、上記の処理剤の使用量が決定される。
[0024]
 流出油に塗布された流出油処理剤は、通常常温で0.1~3時間、より好ましくは1~2時間、流出油処理剤が油に浸透するまで接触して保持する。処理時間は流出油の風化の程度によって異なるが、薄い油膜の場合には、浸透時間を非常に短く、例えば、数分以内に処理することができる。
[0025]
 流出油及び流出油処理剤は、付着物の表面から洗浄水で洗い流すことにより除去される。前記洗浄水は、特に制限はないが、例えば、新水、海水などが挙げられる。この洗浄水は室温または40~70℃の温度に加温することができる。高い温度は油除去の速さ及び効率の両方を高める点から好ましい。
[0026]
 洗浄水によって水中に洗い流された油及び流出油処理剤は、通常0.1~2時間で水面に浮上し、水面上に油レンズまたは凝着膜の形態で凝集体を形成するため、回収作業が容易である。
[0027]
 凝集した流出油及び流出油処理剤のレンズまたは膜は従来の機械的方法により、例えば、前記レンズまたは膜を水表面からすくいとるブーミング及びスキミング技術により、または親油性固体、例えば、ポリプロピレンロープによる吸着により、水の表面から容易に除去される。
実施例
[0028]
 以下、本発明の流出油処理剤を実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[0029]
 実施例1~7及び比較例1~7
 表1及び表2に示す配合の流出油処理剤を使用し、以下の重油除去性、乳化分散性及び液面凝集性の評価及び評価基準に従って、流出油処理剤の評価を行った。
(1)―重油除去性評価―
キシレン及びアセトンで脱脂した、冷間圧延鋼板(SPCC-SD:0.8×25×50mm)にC重油(共同石油社製1号C重油:170mm /s(50℃))を塗布し、24時間自然乾燥したものを試験用テストピースとした。表1に示した組成で調製した流出油処理剤にテストピースを常温で30秒間浸漬させ、その後、常温の水道水に10秒間浸漬させた。十分に自然乾燥させたテストピースの重油除去性を目視で評価した。評価結果を表1及び表2に示した。
[0030]
 なお、表1,2において、ノルマルパラフィン系溶剤の炭素数は11~15であり、引火点は60℃以上である。
―重油除去性評価基準―
◎:除去した重油の割合が75%以上100%以下
○:除去した重油の割合が50%以上75%未満
△:除去した重油の割合が25%以上50%未満
×:除去した重油の割合が0%以上25%未満
尚、◎及び○を合格品とする。
(2)―乳化分散性評価―
前記流出油処理剤を用いて、流出油処理剤2重量%、C重油8重量%、人工海水90重量%の分散液を調製した。試験管に分散液を50g入れ、10秒間振とう攪拌した。
振とう直後より60分後の分散層の厚さを観察し、配合した分散液の総量に対する分散層の割合をもって分散性の評価を行った。評価結果を表1及び表2に示した。
―乳化分散性評価基準―
◎:分散した重油の割合が0%以上25%未満
○:分散した重油の割合が25%以上50%未満
△:分散した重油の割合が50%以上75%未満
×:分散した重油の割合が75%以上100%以下
尚、◎及び○を合格品とする。
(3)―液面凝集性評価―
前記流出油処理剤を用いて、流出油処理剤30重量%、C重油70重量%の混合液を調製した。容器に人工海水30gを入れ、水面に混合液をマイクロピペットで0.3g滴下した。滴下直後より60分後の人工海水表面の状態を観察し、容器中の人工海水の表面積に対する混合液の面積の割合をもって凝集性の評価を行った。評価結果を表1及び表2に示した。
―液面凝集性評価基準―
◎:凝集した重油の面積が0%以上25%未満
○:凝集した重油の面積が25%以上50%未満
△:凝集した重油の面積が50%以上75%未満
×:凝集した重油の面積が75%以上100%以下
尚、◎及び○を合格品とする。
[0031]
[表1]


[0032]
[表2]


[0033]
 比較例1は、液面凝集性が「×」であり、対象物から除去した流出油の回収率が低下し、海面上に残る結果になるので好ましくない。
[0034]
 比較例3は、重油除去性が「△」であり、流出油が十分に除去できないので好ましくない。
[0035]
 比較例5は乳化分散性が「△」であり、乳化した重油が海水を汚染する「茶濁」が生じるので好ましくない。
[0036]
 実施例5ではソルビタン脂肪酸エステルを5重量%使用した結果を示しているが、ソルビタン脂肪酸エステルを6重量%使用し、ナフテン系溶剤とノルマルパラフィン系溶剤を各々47重量%使用した場合にも同様に優れた評価結果が得られたことを本発明者は確認した。
[0037]
 以上より、HLBが2~6であるソルビタン脂肪酸エステルと、ナフテン系溶剤を20重量%以上含む炭化水素系溶剤を使用した本発明の流出油処理剤が優れた重油除去性を有し、流出油を水中で乳化分散させず水面で流出油が凝集するため回収が容易であることは明らかである。

請求の範囲

[請求項1]
HLBが2~6であるソルビタン脂肪酸エステル(A)と、ナフテン系溶剤を含有する炭化水素系溶剤(B)からなる流出油処理剤において、ナフテン系溶剤が全重量の20重量%以上である流出油処理剤。
[請求項2]
ソルビタン脂肪酸エステル(A)が全重量の1~5重量%である請求項1に記載の流出油処理剤。
[請求項3]
炭化水素系溶剤(B)が、パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、スピンドル油、灯油および軽油からなる群より選択される少なくとも一種をナフテン系溶剤とともに含有する請求項1または2に記載の流出油処理剤。
[請求項4]
炭化水素系溶剤(B)が、炭素数11~15で引火点が60℃以上のパラフィン系溶剤である請求項3に記載の流出油処理剤。
[請求項5]
請求項1~4のいずれか一項に記載の流出油処理剤を流出油が付着した対象物表面に塗布したのち、水洗にて流出油を対象物表面から除去し、除去した流出油を回収することを特徴とする、対象物に付着した流出油を処理する方法。
[請求項6]
流出油の重量に対して10重量%~100重量%の流出油処理剤を塗布する、請求項5に記載の方法。