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1. (WO2015146807) ガスバリア性フィルムの製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 ガスバリア性フィルムの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

発明の概要

0005   0006   0007   0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079  

実施例

0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : ガスバリア性フィルムの製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、ガスバリア性フィルムの製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物を含む薄膜(ガスバリア層)を形成したガスバリア性フィルムが、食品、医薬品等の分野で物品を包装する用途に用いられている。ガスバリア性フィルムを用いることによって、水蒸気や酸素等のガスによる物品の変質を防止することができる。
[0003]
 近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリア性フィルムについて、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示(LCD)素子等の電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。これらの電子デバイスにおいては、高いガスバリア性、例えば、ガラス基材に匹敵するガスバリア性が要求される。
[0004]
 ガスバリア性フィルムを製造する方法としては、例えば、CVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)が用いられる。例えば国際公開第2012/046767号では、一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させるプラズマ化学気相成長法により形成されたガスバリア層により、ガスバリア性能および屈曲性能が向上したガスバリア性フィルムが得られるとしている。

発明の概要

[0005]
 しかしながら、上記国際公開第2012/046767号に記載されたガスバリア性フィルムにおいては、ガスバリア層の面内方向でのばらつきが発生し、ガスバリア性能が不十分であるという問題があった。
[0006]
 本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ガスバリア性能がより向上したガスバリア層を形成することができるガスバリア性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
[0007]
 本発明者らは、鋭意研究を積み重ねた。その結果、プラズマ化学気相成長法によりガスバリア層を成膜する際、成膜チャンバが備えるガスチャンバ内の温度を特定の範囲とすることにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0008]
 すなわち、本発明は、プラズマ化学気相成長装置の成膜チャンバ内で、磁場発生装置を有する対向ローラー電極に電力を供給しながら、前記対向ローラー電極間に成膜ガスを供給してプラズマ放電を行い、基材上にガスバリア層を成膜することを含む、ガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記成膜チャンバが備えるガスチャンバ内の温度が80~300℃である、ガスバリア性フィルムの製造方法である。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 本発明に係るガスバリア層の形成に用いられる製造装置の一例を示す模式図であり、11はガスバリア性フィルムであり、12は基材であり、13は製造装置であり、14は送り出しローラーであり、15、16、16’、17、17’、および18は搬送ローラーであり、19および20は成膜ローラーであり、21はガス供給管であり、22はプラズマ発生用電源であり、23および24は磁場発生装置であり、25は巻取りローラーであり、26はガスバリア層であり、27および29は搬送系チャンバであり、28は製膜チャンバであり、30は連結部であり、31はガスチャンバである。

発明を実施するための形態

[0010]
 本発明は、プラズマ化学気相成長装置の成膜チャンバ内で、磁場発生装置を有する対向ローラー電極に電力を供給しながら、前記対向ローラー電極間に成膜ガスを供給してプラズマ放電を行い、基材上にガスバリア層を成膜することを含む、ガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記成膜チャンバが備えるガスチャンバ内の温度が80~300℃である、ガスバリア性フィルムの製造方法である。
[0011]
 国際公開第2012/046767号に記載のガスバリア性フィルムは、膜厚方向に炭素、ケイ素および酸素の組成が連続的に変化する、ガスバリア層を有する。しかしながら、かようなガスバリア性フィルムは、ガスバリア性能が十分なものではないという問題があった。これは、特許文献1に記載の製造方法では、プラズマ放電時の電源からの印加電力が低く成膜チャンバが備えるガスチャンバ内の温度が70℃以下と低いことから、ガスバリア層の組成が面内方向でばらつき、ガスバリア層の水蒸気透過率が面内方向でばらつくため、と考えられる。
[0012]
 このような課題に対し、本発明者らは、プラズマ化学気相成長装置の成膜チャンバ内で、磁場発生装置を有する対向ローラー電極に電力を供給しながら、前記対向ローラー電極間に成膜ガスを供給してプラズマ放電を行い、基材上にガスバリア層を成膜する際、成膜チャンバが備えるガスチャンバ内の温度を80~300℃とすることにより課題が解決することを見出した。これにより、基材表面または表面近傍に存在する酸化源(たとえば水分)の脱離が促進され、ガスバリア層が基材上に均一に成膜されやすくなる。したがって、ガスバリア層の組成の面内方向のばらつきが低減され、これによりガスバリア層の水蒸気透過率の面内方向のばらつきが低減される。したがって、ガスバリア性がより向上したガスバリア層を形成することができると考えられる。
[0013]
 なお、上記メカニズムは推定であり、本発明はこれらメカニズムに何ら拘泥されるものではない。
[0014]
 以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%の条件で測定する。
[0015]
 (ガスバリア層の形成方法)
 本発明に係るガスバリア層は、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD、PECVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)、以下、単に「プラズマCVD法」とも称する)により形成することができる。
[0016]
 本発明に係るガスバリア層は、好ましくは有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加する磁場発生装置を有する対向ローラー電極間に放電空間を有する(ロールツーロール方式の)プラズマ化学気相成長法により形成する。上述したように、プラズマ化学気相成長法を用い、成膜チャンバが備えるガスチャンバ内の温度を本発明の範囲とすることにより、ガスバリア層の組成の面内方向のばらつきが低減され、これによりガスバリア層の水蒸気透過率の面内方向のばらつきが低減され、ガスバリア性能がより向上したガスバリア層を有するガスバリア性フィルムを作製することができる。
[0017]
 さらに、該プラズマ化学気相成長法を用いることにより、ガスバリア層が緻密化し、高温高湿条件下でのダメージを補修する効果が発揮されやすい。
[0018]
 以下、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場発生装置により磁場を印加した対向ローラー電極間に放電空間を有するプラズマ化学気相成長法によりガスバリア層を形成する方法について説明する。
[0019]
 プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに基材(ここでいう、基材には、基材が処理された、または基材上に中間層を有する形態も含む)を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できる。加えて、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
[0020]
 また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。
[0021]
 また、本発明に係るガスバリア性フィルムは、生産性の観点から、ロールツーロール方式で基材の表面上にガスバリア層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマCVD法によりガスバリア層を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図1に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。
[0022]
 以下、図1を参照しながら、本発明に係るガスバリア層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図1は、本発明に係るガスバリア層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置(プラズマ化学気相成長装置)の一例を示す模式図である。また、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、当該ガスバリア層は、1層のみを備えていてもよいし2層以上を備えていてもよい。さらに、このようなガスバリア層を2層以上備える場合には、複数のガスバリア層の材質は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
[0023]
 図1に示す製造装置13は、送り出しローラー14と、搬送ローラー15、16、17、18と、成膜ローラー19、20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、成膜ローラー19および20の内部に設置された磁場発生装置23、24と、巻取りローラー25とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ローラー19、20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、磁場発生装置23、24と、ガスチャンバ31とが成膜(真空)チャンバ28内に配置されている。さらに、このような製造装置13において前記真空チャンバは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。図1において、送り出しローラー14および搬送ローラー15は、搬送系チャンバ27内に配置され、巻取りローラー25および搬送ローラー18は搬送系チャンバ29内に配置されている。搬送系チャンバ27および29と、成膜チャンバ28とは、連結部30を介して接続している。例えば、連結部30に真空ゲートバルブを設けて成膜チャンバと搬送系チャンバとを物理的に隔離してもよい。真空ゲートバルブを用いることによって、例えば、成膜チャンバ内のみを真空系とし、搬送系チャンバ内は大気下とすることができる。また、成膜チャンバと搬送系チャンバとを物理的に隔離することによって、成膜チャンバ内で発生したパーティクルによって搬送系チャンバが汚染することが抑制される。
[0024]
 このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19および成膜ローラー20)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源22に接続されている。そのため、このような製造装置13においては、プラズマ発生用電源22により電力を供給することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間にプラズマを発生させることができる。本発明においては、成膜ローラー19と成膜ローラー20とを電極として、すなわち対向ローラー電極として利用する。また、このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19および20)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19および20)を配置することにより、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。そして、このような製造装置によれば、プラズマCVD法により基材12(ここでいう、基材には、基材が処理された、または基材上に中間層を有する形態も含む)の表面上にガスバリア層26を形成することが可能であり、成膜ローラー19上において基材12の表面上にガスバリア層成分を堆積させつつ、さらに成膜ローラー20上においても基材12の表面上にガスバリア層成分を堆積させることもできるため、基材12の表面上にガスバリア層を効率よく形成することができる。
[0025]
 成膜ローラー19および成膜ローラー20の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置23および24がそれぞれ設けられている。
[0026]
 成膜ローラー19および成膜ローラー20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23および24は、一方の成膜ローラー19に設けられた磁場発生装置23と他方の成膜ローラー20に設けられた磁場発生装置24との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置23、24がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23、24を設けることにより、各成膜ローラー19、20の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束され易くなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
[0027]
 また、成膜ローラー19および成膜ローラー20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23および24は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置23と他方の磁場発生装置24とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23、24を設けることにより、それぞれの磁場発生装置23、24について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材12を用いて効率的に蒸着膜であるガスバリア層26を形成することができる点で優れている。
[0028]
 各ローラーにおける基材への張力は、全て同じであってもよいが、成膜ローラー19または成膜ローラー20における張力のみ高くして成膜してもよい。成膜ローラーにおける基材への張力を高くすることによって、基材とローラーとの密着性が向上し、熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
[0029]
 成膜ローラー19および成膜ローラー20としては適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー19および20としては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー19および20の直径としては、放電条件、チャンバのスペース等の観点から、直径が100~1000mmφの範囲が好ましく、特に140~700mmφの範囲が好ましい。成膜ローラーの直径が100mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材12にかかることを回避できることから、基材12へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。各成膜ローラーはニップロールを備えていてもよく、ニップロールを備えることで、基材のローラーへの密着性が向上する。このため、基材とローラーとの間で熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
[0030]
 このような製造装置13においては、基材12の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19と成膜ローラー20)上に、基材12が配置されている。このようにして基材12を配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー間に存在する基材12のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー19上にて基材12の表面上にガスバリア層成分を堆積させ、さらに成膜ローラー20上にてガスバリア層成分を堆積させることができるため、基材12の表面上にガスバリア層を効率よく形成することが可能となる。
[0031]
 本発明において、成膜チャンバ28が備えるガスチャンバ31内の温度は、80~300℃である。該温度が80℃未満の場合、基材表面もしくは表面の酸化源の脱離が不十分となる、一方、該温度が300℃を超えると、輻射熱により基材ダメージが発生する。該ガスチャンバ31内の温度は、好ましくは100~250℃である。
[0032]
 このようなガスチャンバ31内の温度は、プラズマ放電の際に発生する熱(以下、単にプラズマ熱とも称する)による制御手段;熱媒体油、水などの熱媒を循環させて制御する手段;セラミックヒーター等のヒーター等により加熱する手段;赤外線ランプによる輻射熱により加熱する手段等の、温度を制御する手段により制御することができる。これらの温度を制御する手段は、1種のみならず2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0033]
 例えば、プラズマ熱のみでガスチャンバ31内の温度を制御する場合、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間に放電するためのプラズマ発生用電源22に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー19および20に設置されている)に印加する電力(印加電力)は、基材の単位幅あたり25~160W/cmとすることが好ましい。なお、基材の単位幅あたりの印加電力は、電源の印加電力を基材幅で除することにより、算出できる。
[0034]
 ガスチャンバ31内の温度は、サーモグラフィー(成膜チャンバ外から赤外線を透過する窓材を介して測定)、熱電対(成膜チャンバを直接測定)、サーモラベル(成膜チャンバを直接測定)などを用いることにより測定することができる。好ましくは、これら測定器は、ガスチャンバ31の側面に設置して測定する。この温度測定の結果を、上記の温度を制御する手段にフィードバックさせ、ガスチャンバ31内の温度を所望の範囲に制御することができる。
[0035]
 基材12の幅(基材幅)は、成膜ローラー幅より広くてもよいし、狭くてもよいし、同一であってもよい。基材幅を成膜ローラー幅より広くすることによって、成膜ローラーが露出しないため、成膜ローラーがパーティクルによって汚染されることを抑制でき、メンテナンス性が向上し、性能が安定化するという利点がある。また、基材幅が成膜ローラー幅より狭いことによって、成膜される膜の有効幅が広がるという利点がある。同様に、膜形成の有効幅を考慮し、成膜ローラー上の放電幅(成膜空間)と、基材端部との位置は基材幅を適宜選択することによって適宜調整することができる。
[0036]
 また、基材12は、成膜チャンバ28に搬送される前に加熱されてもよい。加熱温度としては、基材のガラス転移温度以上であることが好ましい。基材を加熱して、予め基材を収縮させることによって、製膜中の基材収縮を抑制することができる。
[0037]
 ガスバリア層成膜時の基材12の温度は、特に限定されるものではないが、-20~60℃であることが好ましい。かような基材12の温度は、成膜チャンバ内(放電空間)の温度および成膜ローラーの温度に依存する。成膜ローラー(対向ローラー電極)の温度としては、-20~60℃であることが好ましい。この範囲であれば、たとえガスチャンバ内の温度が本発明のような高い条件であっても、基材12へのダメージを抑制することができ、より高品質のガスバリア性フィルムを製造することができる。かような成膜ローラー温度に調整するためには、成膜ローラー(対向ローラー電極)を、熱媒もしくは冷媒の循環などの手段で適宜加熱、冷却すればよい。なお、基材の温度は、サーモグラフィー(成膜チャンバ外から赤外線を透過する窓材を介して測定)や熱電対、サーモラベルにより測定できる。
[0038]
 このような製造装置に用いる送り出しローラー14および搬送ローラー15、16、17、18としては適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー25としても、基材12上にガスバリア層26を形成したガスバリア性フィルム11を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。搬送ローラーとしては、段付きロールを用いてもよい。段付きロールとは、ロールの両端部のみが基材と接触する搬送ロールであり、例えば、特開2009-256709号公報の図2に記載の段付きロールなどを用いることができる。段付きロールを使用することによって、ガスバリア層表面に非接触で搬送することができ、接触によるフィルムの劣化を抑制することができる。また、送り出しローラーや巻き取りローラーはターレット式であってもよい。ターレットは2軸以上の多軸であってもよく、そのうち一部の軸のみを大気開放できる構造であってもよい。
[0039]
 また、ガス供給管21および真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給または排出することが可能なものを適宜用いることができる。
[0040]
 ガス供給手段であるガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管21と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に効率よく成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
[0041]
 なお、図1においては、ガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線上にある。しかしながら、ガス供給管21の配置はかような形態に限定されず、例えば、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線から、どちらか一方側にずれていてもよい(左右方向に中心線からずらしてもよく)。ガス供給管21を成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線からずらすことによって、片方の成膜ローラーに近く、もう片方の成膜ローラーからは遠くなるため、原料ガスの供給が成膜ローラー19上で形成される膜組成と成膜ローラー20上で形成させる膜組成とが異なるようになり、膜質を変えたいときなどに適宜ガス供給管位置をずらせばよい。また、ガス供給管21は、適宜中心線上で成膜ローラーから離したり近づけたりしてもよい(上下方向に中心線上で配置位置を動かしてもよい)。ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で遠ざけ、放電空間からガス供給管21を離すことによって、ガス供給管にパーティクルが付着することを抑制できるなどの利点があり、ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で放電空間に近づけることによって成膜レートを向上させることができるなどの利点がある。図1において、ガス供給管21は1つであるが、ガス供給管21は複数あってもよく、各ノズルから異なる供給ガスを放出する形態であってもよい。
[0042]
 さらに、プラズマ発生用電源22としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源22は、これに接続された成膜ローラー19と成膜ローラー20とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、交流の周波数を50Hz~1MHzとすることが好ましい。またプラズマプロセス安定化の点から、高周波電流波および電圧波がどちらも正弦波となるような高周波電源を用いてもよい。
[0043]
 図1においては、1つの発生用電源22で成膜ローラー19および成膜ローラー20の双方に給電している(両成膜ローラー給電)が、かような形態に限定されるものではなく、一方の成膜ローラーに給電し(片側成膜ローラー給電)、他方の成膜ローラーをアースする形態であってもよい。また、成膜ローラーへの給電方法としては、ローラー端の一方のみから給電するローラー片端給電でもよいし、ローラーの両端から給電するローラー両端給電であってもよい。高周波帯を供給する場合には、均一な供給が可能となることから、ローラー両端給電であってもよい。また、給電方法としては、異なる周波数を印加する2周波給電を行ってもよく、一方の成膜ローラーに異なる2周波を印加する形態であっても、一方の成膜ローラーと他方の成膜ローラーとで異なる周波数を印加する形態であってもよい。かような2周波給電により、プラズマ密度が上がり、成膜速度を向上させることができる。
[0044]
 また、図1には図示していないが、放電空間のプラズマ発光強度を外部からモニタリングし、所望の発光強度でない場合には、磁場間距離(対向ローラー間距離)、磁場強度、電源の印加電力、電源周波数、供給ガス量などを調整して所望のプラズマ発光強度とするフィードバック回路を有していてもよい。かようなフィードバック回路を有することによって、成膜/生産を安定にすることができる。
[0045]
 また、磁場発生装置23、24としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
[0046]
 このような図1に示す製造装置13を用いて、例えば、ケイ素、酸素、および炭素を含むガスバリア層を製造することができる。この際、ガスバリア層の酸素原子の含有量の原子比率の最大値を制御する方法は特に限定されるものではないが、用いられる原料の比率(酸素:HMDSOの供給比率)、電力、圧力などを制御することにより、酸素原子の含有量の原子比率の最大値を制御することができる。
[0047]
 成膜(真空)チャンバ内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができ、0.5Pa~50Pa程度であることが好ましく、0.5Pa~10Paとすることがより好ましい。
[0048]
 基材12の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や成膜チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25~100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5~100m/minの範囲とすることがより好ましい。
[0049]
 ガス供給管21から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独または2種以上を混合して用いることができる。ガスバリア層26の形成に用いる成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリア層26の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性および得られるガスバリア層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。中でも、本実施形態の膜組成に容易に調整できることから、原料ガスとして有機ケイ素化合物を含むことが好ましい。
[0050]
 また、成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができ、簡便性の観点から酸素を用いることが好ましい。また、その他、窒化物を形成するための反応ガスを用いてもよく、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
[0051]
 成膜ガスとしては、原料ガスを成膜チャンバ内(ガスチャンバ内)に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電ガスを用いてもよい。このようなキャリアガスおよび放電ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素;窒素を用いることができる。
[0052]
 原料ガスと反応ガスとの好適な比率については、特開2014-218012号公報の段落「0201」~「0204」を適宜参照し、採用することができる。
[0053]
 図1に示す製造装置13を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバ内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19および20)間に放電を発生させることにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー19上の基材12の表面上および成膜ローラー20上の基材12の表面上に、ガスバリア層26がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー19、20のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成して、磁場にプラズマを収束させる。
[0054]
 このため、図1に示す製造装置を用いることによって、膜厚方向に各原子の組成が連続的に変化することにもなる。また、膜内の炭素、および酸素の存在比が均一ではない層が形成されることになり、部分的に炭素原子が多い部分が存在することで、層全体がフレキシブルな構造となり、屈曲性が向上する。すなわち、本発明に係るガスバリア層は、下記条件(i)~(iii)を満たすことが好ましい。
[0055]
 (i)前記ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、前記ガスバリア層の膜厚の90%以上の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い
 (ii)前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する
 (iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値と最小値との差の絶対値が3at%以上である。
[0056]
 本発明に係るガスバリア層は、(i)ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、前記ガスバリア層の膜厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い(原子比がO>Si>C)ことが好ましい。前記の条件(i)を満たさない場合、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性や屈曲性が不十分となる場合がある。ここで、上記炭素分布曲線において、上記(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)および(炭素の原子比)の関係は、ガスバリア層の膜厚の、少なくとも90%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましく、少なくとも93%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましい。ここで、ガスバリア層の膜厚の少なくとも90%以上とは、ガスバリア層中で連続していなくてもよく、単に90%以上の部分で上記した関係を満たしていればよい。
[0057]
 また、本発明に係るガスバリア層は、(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有することが好ましい。該ガスバリア層は、前記炭素分布曲線が少なくとも3つの極値を有することがより好ましく、少なくとも4つの極値を有することがさらに好ましいが、5つ以上有していてもよい。前記炭素分布曲線の極値が1つ以下である場合、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が不十分となる場合がある。なお、炭素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。極値の数は、ガスバリア層の膜厚にも起因するため、一概に規定することはできない。
[0058]
 ここで、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離(L)の差の絶対値(以下、単に「極値間の距離」とも称する)が、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。このような極値間の距離であれば、ガスバリア層中に炭素原子比が多い部位(極大値)が適度な周期で存在するため、ガスバリア層に適度な屈曲性を付与し、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。なお、本明細書において「極値」とは、前記ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離(L)に対する元素の原子比の極大値または極小値のことをいう。また、本明細書において「極大値」とは、ガスバリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素または炭素)の原子比の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点からガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離をさらに4~20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。すなわち、4~20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上減少していればよい。同様にして、本明細書において「極小値」とは、ガスバリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素または炭素)の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点からガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離をさらに4~20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。すなわち、4~20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上増加していればよい。ここで、少なくとも3つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、極値間の距離が小さいほどガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されないが、ガスバリア層の屈曲性、クラックの抑制/防止効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
[0059]
 さらに、ガスバリア層は、(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「C max-C min差」とも称する)が3at%以上であることが好ましい。前記絶対値が3at%未満では、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合に、ガスバリア性が不十分となる。C max-C min差は5at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましく、10at%以上であることが特に好ましい。上記C max-C min差とすることによって、ガスバリア性をより向上することができる。なお、本明細書において、「最大値」とは、各元素の分布曲線において最大となる各元素の原子比であり、極大値の中で最も高い値である。同様にして、本明細書において、「最小値」とは、各元素の分布曲線において最小となる各元素の原子比であり、極小値の中で最も低い値である。ここで、C max-C min差の上限は、特に制限されないが、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果などを考慮すると、50at%以下であることが好ましく、40at%以下であることがより好ましい。
[0060]
 本発明において、前記ガスバリア層の前記酸素分布曲線が少なくとも1つの極値を有することが好ましく、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することがさらに好ましい。前記酸素分布曲線が極値を少なくとも1つを有する場合、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。なお、酸素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。酸素分布曲線の極値の数においても、ガスバリア層の膜厚に起因する部分があり一概に規定できない。また、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記ガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。このような極値間の距離であれば、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。ここで、少なくとも3つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、特に制限されないが、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
[0061]
 前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線、および前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離(L)に概ね相関することから、「ガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリア層の表面からの距離を採用することができる。なお、本発明では、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線および酸素炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成した。
[0062]
 (測定条件)
 エッチングイオン種:アルゴン(Ar );
 エッチング速度(SiO 熱酸化膜換算値):0.05nm/sec;
 エッチング間隔(SiO 換算値):10nm;
 X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名"VG Theta Probe";
 照射X線:単結晶分光AlKα
 X線のスポットおよびそのサイズ:800×400μmの楕円形。
[0063]
 なお、ガスバリア層が2層以上から構成される場合には、各ガスバリア層が上記したような厚みを有することが好ましい。また、ガスバリア層が2層以上から構成される場合のガスバリア層全体の厚みは特に制限されないが、ガスバリア層全体の厚み(乾燥膜厚)が1000~2000nm程度であることが好ましい。このような厚みであれば、ガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性および屈曲時のクラック発生抑制/防止効果を発揮できる。
[0064]
 本発明において、膜面全体において均一でかつ優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成するという観点から、前記ガスバリア層が膜面方向(ガスバリア層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。ここで、ガスバリア層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリア層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線および前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
[0065]
 さらに、本発明においては、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記ガスバリア層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該ガスバリア層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(1)で表される条件を満たすことをいう。
[0066]
[数1]


[0067]
 本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、上記条件(i)~(iii)を全て満たすガスバリア層は、1層のみを備えていてもよいし2層以上を備えていてもよい。さらに、このようなガスバリア層を2層以上備える場合には、複数のガスバリア層の材質は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
[0068]
 前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、および前記炭素分布曲線において、ケイ素の原子比、酸素の原子比、および炭素の原子比が、該ガスバリア層の膜厚の90%以上の領域において前記(i)で表される条件を満たす場合には、前記ガスバリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の含有量の原子比率は、20~45at%であることが好ましく、25~40at%であることがより好ましい。また、前記ガスバリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、45~75at%であることが好ましく、50~70at%であることがより好ましい。さらに、前記ガスバリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、1~25at%であることが好ましく、2~20at%であることがより好ましい。
[0069]
 図1に示す製造装置においては、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線において、基材12が、図1中の成膜ローラー19のA地点および成膜ローラー20のB地点を通過する際に、炭素分布曲線の極大値と酸素分布曲線の極小値とが形成される。これに対して、基材12が、図1中の成膜ローラー19のC1およびC2地点、ならびに成膜ローラー20のC3およびC4地点を通過する際に、ガスバリア層で炭素分布曲線の極小値と酸素分布曲線の極大値が形成される。このため、2つの成膜ローラーに対して、炭素/酸素分布曲線は、通常、5つの極値が生成する。図1の装置において、対向ローラー数(TR数、対極する二つのローラーセット数)がn個の場合には(nは1以上の整数)、理論上の極値の数は、約(5+4×(n-1))個となる。しかしながら、実際の極値数は基材の搬送速度などにより、理論上の極値数となるとは限らず、増減する場合がある。
[0070]
 また、ガスバリア層の極値間の距離(炭素/酸素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値におけるガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、成膜ローラー19、20の回転速度(基材の搬送速度)によって調節できる。なお、このような成膜に際しては、基材12が送り出しローラー14や成膜ローラー19等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材12の表面上にガスバリア層26が形成される。
[0071]
 上記したように、本実施形態は、ガスバリア層を、図1に示す対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜することを特徴とするものである。これは、対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、ガスバリア性能が高く、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性と、ガスバリア性能とが両立するガスバリア層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリア性フィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
[0072]
 [基材]
 本発明に係るガスバリア性フィルムは、通常、基材として、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、ガスバリア層を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸-マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
[0073]
 ガスバリア性フィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、好ましくは1~800μmであり、より好ましくは10~200μmである。これらのプラスチックフィルムは、クリアハードコート層、透明導電層、平滑層、易接着層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、特開2006-289627号公報の段落「0036」~「0038」に記載されているものを好ましく採用できる。
[0074]
 基材の表面は、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理等を行っていてもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行っていてもよい。
[0075]
 [中間層]
 上述の基材およびガスバリア層間または表面には、本発明の効果を損なわない範囲で以下のような中間層を設けてもよい。
[0076]
 (アンカーコート層)
 本発明に係る基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。アンカーコート層の構成材料、形成方法等は、特開2013-52561号公報の段落「0229」~「0232」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
[0077]
 (平滑層)
 ガスバリア性フィルムは、基材のガスバリア層を有する面、好ましくは基材とガスバリア層との間に平滑層を有していてもよい。平滑層は突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために、あるいは、基材に存在する突起により、ガスバリア層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。平滑層の構成材料、形成方法、表面粗さ、膜厚等は、特開2013-52561号公報の段落「0233」~「0248」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
[0078]
 (ブリードアウト防止層)
 ガスバリア性フィルムは、ブリードアウト防止層をさらに有することができる。ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。ブリードアウト防止層の構成材料、形成方法、膜厚等は、特開2013-52561号公報の段落「0249」~「0262」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
[0079]
 [電子デバイス]
 上記したような本発明のガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性、透明性、屈曲性等を有する。このため、本発明のガスバリア性フィルムは、電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子(太陽電池素子)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子、液晶表示素子(LCD)、電子ペーパー、薄膜トランジスタ、タッチパネル等の電子素子本体を有する電子デバイスに用いられるガスバリア性フィルムおよびこれを用いた電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子素子本体は、有機EL素子または太陽電池であることが好ましい。これらの電子素子本体の構成についても、特に制限はなく、従来公知の構成を有しうる。
実施例
[0080]
 本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[0081]
 〔実施例1:サンプル1の作製〕
 (基材の準備)
 クリアハードコート層付きのポリエチレンテレフタレートフィルム(略称:PETフィルム、厚さ:125μm、幅:1000mm、きもと株式会社製、商品名:GSABR)を、基材として用いた。
[0082]
 (ガスバリア層の形成)
 図1に記載のプラズマCVD装置を用い、基材のクリアハードコート層を有する面とは反対側の面(裏面)が成膜ローラーと接触するようにして、基材をプラズマCVD装置に装着し、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)によりガスバリア層を150nmの厚さで成膜し、サンプル1を作製した。
[0083]
 〈プラズマCVD条件〉
 原料ガス(ヘキサメチルジシラザン)の供給量:1.5sccm/cm
(sccm:Standard Cubic Centimeter per Minute)
 酸素ガス(O )の供給量:10sccm/cm
 ガスチャンバ内の温度:80℃
 成膜チャンバ内の真空度:1.5Pa
 プラズマ発生用電源からの基材の単位幅あたりの印加電力:23W/cm
 プラズマ発生用電源の周波数:80kHz
 基材の搬送速度:10m/min
 処理回数:6回
 なお、ガスチャンバ内は熱媒循環によりさらに加熱し(熱媒:熱媒体油)、ガスチャンバ内の温度は、ガスチャンバの側面に設けた熱電対により確認した。
[0084]
 また、基材の温度は、サーモグラフィーにより測定した。
[0085]
 〔実施例2:サンプル2の作製〕
 プラズマ熱と熱媒循環とにより、ガスチャンバ内の温度を100℃に加熱し、さらに成膜ロール内を循環させている熱媒の温度を制御して、基材の温度を30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル2を作製した。
[0086]
 〔実施例3:サンプル3の作製〕
 プラズマ発生用電源からの基材の単位幅あたりの印加電力を40W/cmとし、熱媒循環による加熱を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル3を作製した。なお、ガスチャンバ内の温度は、プラズマ放電によって発生する熱により120℃となった。
[0087]
 〔実施例4:サンプル4の作製〕
 プラズマ発生用電源からの基材の単位幅あたりの印加電力を57W/cmとしたこと以外は、実施例3と同様にして、サンプル4を作製した。なお、ガスチャンバ内の温度は、プラズマ放電によって発生する熱により150℃となった。
[0088]
 〔実施例5:サンプル5の作製〕
 プラズマ発生用電源からの基材の単位幅あたりの印加電力を73W/cmとしたこと以外は、実施例3と同様にして、サンプル5を作製した。なお、ガスチャンバ内の温度は、プラズマ放電によって発生する熱により200℃となった。
[0089]
 〔実施例6:サンプル6の作製〕
 プラズマ発生用電源からの基材の単位幅あたりの印加電力を90W/cmとしたこと以外は、実施例3と同様にして、サンプル6を作製した。なお、ガスチャンバ内の温度は、プラズマ放電によって発生する熱により250℃となった。
[0090]
 〔実施例7:サンプル7の作製〕
 ガスチャンバ内をプラズマ熱とセラミックヒーターとにより加熱し、温度を300℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル7を作製した。
[0091]
 〔実施例8:サンプル8の作製〕
 プラズマ発生用電源からの印加電力を100W/cmとし、さらに熱媒循環(熱媒:水)によりガスチャンバの冷却を行ったこと以外は、実施例3と同様にして、サンプル8を作製した。なお、ガスチャンバ内の温度は150℃となった。
[0092]
 〔実施例9:サンプル9の作製〕
 プラズマ熱と熱媒循環とにより、ガスチャンバ内の温度を100℃に加熱し、さらに成膜ロール内を循環させている熱媒の温度を制御して、基材の温度を70℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル9を作製した。
[0093]
 〔実施例10:サンプル10の作製〕
 プラズマ熱と熱媒循環とにより、ガスチャンバ内の温度を100℃に加熱し、さらに成膜ロール内を循環させている熱媒の温度を制御して、基材の温度を-30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル10を作製した。
[0094]
 〔比較例1:サンプル11の作製〕
 熱媒循環(熱媒:水)によりガスチャンバの冷却を行い、ガスチャンバ内の温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル11を作製した。
[0095]
 〔比較例2:サンプル12の作製〕
 熱媒循環(熱媒:水)によりガスチャンバの冷却を行い、ガスチャンバ内の温度を40℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル12を作製した。
[0096]
 〔比較例3:サンプル13の作製〕
 ガスチャンバ内をプラズマ熱とセラミックヒーターとにより加熱し、温度を350℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル13を作製した。
[0097]
 〔比較例4:サンプル14の作製〕
 熱媒循環による加熱を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル14を作製した。なお、ガスチャンバ内の温度は、プラズマ熱により70℃となった。
[0098]
 〔比較例5:サンプル15の作製〕
 ガスチャンバ内をプラズマ熱とセラミックヒーターとにより加熱し、温度を310℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル15を作製した。
[0099]
 [ガスバリア層の原子組成]
 ガスバリア層の原子組成については、下記測定条件により求めたXPSデプスプロファイルからケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線、および酸素炭素分布曲線を作成し、求めた。
[0100]
 なお、実施例1~10のガスバリア性フィルムについては、ガスバリア層の膜厚の90%以上の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い(原子比がO>Si>C)となっていることを確認した。
[0101]
 (測定条件)
 エッチングイオン種:アルゴン(Ar );
 エッチング速度(SiO 熱酸化膜換算値):0.05nm/sec;
 エッチング間隔(SiO 換算値):10nm;
 X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名"VG Theta Probe";
 照射X線:単結晶分光AlKα
 X線のスポットおよびそのサイズ:800×400μmの楕円形。
[0102]
 [WVTRのばらつき評価]
 (水蒸気バリア性評価用セルの作製)
 各ガスバリア性フィルムについて、50mm×50mmの大きさで、幅手方向に3点×長手方向に9点の計27か所切り出した。
[0103]
 切り出したガスバリア性フィルムの中央のガスバリア層面(最表面)に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、真空蒸着装置 JEE-400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(20mm×20mm)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、カルシウム蒸着面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
[0104]
 得られた両面を封止した試料(評価用セル)を85℃、85%RHの高温高湿下で100時間保存し、特開2005-283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
[0105]
 なお、ガスバリア性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な85℃、85%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
[0106]
 以上により測定された各ガスバリア性フィルム試料の27点について、透過水分量(WVTR)の平均値を算出し、その平均値と最大値とを比較して、下記基準により評価した。
[0107]
 (評価基準)
 ◎:27点の平均値と最大値との比が3倍未満
 ○:27点の平均値と最大値との比が3倍以上5倍未満
 △:27点の平均値と最大値との比が5倍以上10倍未満
 ×:27点の平均値と最大値との比が10倍以上。
[0108]
 〔基材ダメージ〕
 ガスバリア性フィルムの基材を目視観察し、下記基準によって評価した。
[0109]
 ○:基材の変形は見られない
 △:わずかに基材変形が見られる
 ×:基材が変形。
[0110]
 各実施例および比較例の製造条件および評価結果を下記表1に示す。
[0111]
[表1]


[0112]
 上記表1の結果より、実施例1~10の製造方法により得られたガスバリア性フィルムは、比較例の製造方法により得られたガスバリア性フィルムと比較して、ガスバリア層内の水蒸気透過率のばらつきが少ないガスバリア層を有することが分かった。したがって、実施例1~10の製造方法で得られたガスバリア性フィルムは、比較例のガスバリア性フィルムと比べて、ガスバリア性能がより向上していることが分かった。
[0113]
 なお、本出願は、2014年3月26日に出願された日本特許出願第2014-64633号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。

請求の範囲

[請求項1]
 プラズマ化学気相成長装置の成膜チャンバ内で、磁場発生装置を有する対向ローラー電極に電力を供給しながら、前記対向ローラー電極間に成膜ガスを供給してプラズマ放電を行い、基材上にガスバリア層を成膜することを含む、ガスバリア性フィルムの製造方法であって、
 前記成膜チャンバが備えるガスチャンバ内の温度が80~300℃である、ガスバリア性フィルムの製造方法。
[請求項2]
 前記ガスチャンバ内の温度が100~250℃である、請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
[請求項3]
 前記プラズマ化学気相成長装置は、前記ガスチャンバ内の温度を制御する手段を有する、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
[請求項4]
 前記ガスバリア層を成膜する際の前記基材の温度が-20~60℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
[請求項5]
 前記ガスバリア層は、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子を含み、かつ下記(i)~(iii)の条件を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法:
 (i)前記ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、前記ガスバリア層の膜厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い(原子比がO>Si>C);
 (ii)前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する;
 (iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「C max-C min差」とも称する)が3at%以上である。

図面

[ 図 1]