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1. (WO2015146674) 光学フィルム及びそれを用いたウインドウフィルム
Document

明 細 書

発明の名称 光学フィルム及びそれを用いたウインドウフィルム

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009  

課題を解決するための手段

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022  

発明の効果

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034  

図面の簡単な説明

0035  

発明を実施するための形態

0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232   0233   0234   0235   0236   0237   0238   0239   0240   0241   0242   0243   0244   0245   0246   0247   0248   0249   0250   0251   0252   0253   0254   0255   0256   0257   0258   0259   0260   0261   0262   0263   0264   0265   0266   0267   0268   0269   0270   0271   0272   0273   0274   0275   0276   0277   0278   0279   0280   0281   0282   0283   0284   0285   0286   0287   0288   0289   0290   0291   0292   0293   0294   0295   0296   0297   0298   0299   0300   0301   0302   0303   0304   0305   0306   0307   0308   0309   0310   0311   0312   0313   0314   0315   0316   0317   0318   0319   0320   0321   0322  

実施例

0323   0324   0325   0326   0327   0328   0329   0330   0331   0332   0333   0334   0335   0336   0337   0338   0339   0340   0341   0342   0343   0344   0345   0346   0347   0348   0349   0350   0351   0352   0353   0354   0355   0356   0357   0358   0359   0360   0361   0362   0363   0364   0365   0366   0367   0368   0369   0370   0371   0372   0373   0374   0375   0376   0377   0378   0379   0380  

産業上の利用可能性

0381  

符号の説明

0382  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1A   1B   1C   1D   1E   1F   1G   2   3  

明 細 書

発明の名称 : 光学フィルム及びそれを用いたウインドウフィルム

技術分野

[0001]
 本発明は光学フィルム及びそれを用いたウインドウフィルムに関する。より詳しくは巻癖回復性と引裂強さに優れた光学フィルム、及びそれを用いた水貼り作業性と仕上がり品質に優れたウインドウフィルムに関する。

背景技術

[0002]
 ウインドウフィルムなどの光学フィルムの支持体は一般的にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが用いられている。その製品形態は細い径にロール状に巻かれていることが多い。PETフィルムは、長時間巻いた状態に保存されると巻いた型がついてしまい(巻癖がつくともいう。)、シート状に広げても巻いた状態にもどってしまう。そのため、巻癖がついた光学フィルムは窓に貼るなど、その製品を対象物に加工する際の取り扱い性が非常に悪くなってしまう。特に、ウインドウフィルムを窓に貼る作業において、この巻癖は取り扱い性を大きく低下させた。
[0003]
 ウインドウフィルムを窓に貼る際は、霧吹き等でウインドウフィルムを濡らし、水の表面張力を利用して窓に仮固定し、スクレーパーでスクイーズして気泡を抜く。その後、乾燥させることで窓に貼りつけられている(水貼りともいう。)。この際、PETフィルムに巻癖がついていると水で仮固定できなくなり、テープで仮止めしようとしても水のためにテープの接着力が落ちるために、うまく固定できないという問題があった。あるいは、はがれないようにするためにスクレーパーで気泡を抜く際に強い力でこするために傷が入りやすくなったり、また、癖がついたフィルムをスクイーズするとスティックスリップが起こりやすくなり、乾燥後のフィルムにステッィクスリップ状のムラが見えたりするなどの問題があった。
[0004]
 一方で、セルロース系の支持体として、例えば写真感光材料の支持体として使われているセルローストリアセテート(TAC)フィルムは、現像などの水の処理で巻癖が回復することが知られている。
[0005]
 しかしながら、写真材料の現像処理ではフィルムが現像液に浸漬されるのに対し、ウインドウフィルムの水貼りの場合は霧吹き等で水を吹き付けられ、その際の挙動については良くわかっていなかった。さらに、セルロース系支持体をウインドウフィルムの支持体に適用すると、水貼りの際、スキージがひっかかってフィルムが裂けるトラブルが起こりやすいことがわかってきた。
[0006]
 写真感光材料の分野では、ポリエステルに吸水成分を共重合した支持体を用いて巻癖回復性を付与することは知られている(特許文献1参照。)。しかしながら、写真感光材料の現像処理は、40℃前後の処理液にフィルムが浸漬されるのに対して、ウインドウフィルムの水貼りの場合は室温の水が吹き付けられるだけであり、これでは十分な巻癖回復性は得られなかった。
[0007]
 一方、電気・電子筐体への使用を目的としてカーボンオフセットに有利なセルロース誘導体と高分子量の脂肪族ポリエステルを混合して機械物性を向上する技術が開示されている(特許文献2参照。)。しかし、特許文献2には、セルロース誘導体に熱可塑性と耐衝撃性を付与することは記載されているが、ウインドウフィルムの保存時の巻癖による水貼り加工時の問題の改善については、全く記載されていないし示唆もない。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2001-290243号公報
特許文献2 : 特開2011-148976号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、巻癖回復性と引裂強さに優れた光学フィルムを提供することである。また、それを用いた水貼り作業性と仕上がり品質に優れたウインドウフィルムを提供することである。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、セルロース誘導体と高度に相溶する高分子のポリエステル又はポリアルキレンオキシドを光学フィルムに含有させることにより、引裂強さが大幅に向上したセルロース誘導体を含有する支持体を見いだし本発明に至った。
[0011]
 すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
[0012]
 1.フィルム状の支持体上に少なくとも光学機能層と接着層とを有する光学フィルムであって、前記支持体が、セルロース誘導体を30質量%以上含有し、かつ巻癖回復率が20%以上で、引裂強さが150mN以上となるように調整されていることを特徴とする光学フィルム。
[0013]
 2.前記支持体が、前記セルロース誘導体に加えて、脂肪族ポリエステル又はポリアルキレンオキシドを第2のポリマー成分として含有することを特徴とする第1項に記載の光学フィルム。
[0014]
 3.前記支持体が、重量平均分子量が4000~500000の範囲内である前記第2のポリマー成分を前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することを特徴とする第2項に記載の光学フィルム。
[0015]
 4.前記支持体が、重量平均分子量が30000~400000の範囲内である前記第2のポリマー成分を前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することを特徴とする第2項に記載の光学フィルム。
[0016]
 5.前記セルロース誘導体が、セルロースエステルであることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
[0017]
 6.前記セルロースエステルのアセチル基置換度Xと、プロピオニル基及びブチリル基の合計置換度Yとが、下記式(I)及び式(II)を満たすことを特徴とする第5項に記載の光学フィルム。
[0018]
 式(I) : 2.5≦X+Y≦2.95
 式(II) : 0.0≦Y≦1.5
 7.前記第2のポリマー成分が、下記一般式(1)で表される構造を有する脂肪族ポリエステルであることを特徴とする第2項から第6項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
[0019]
[化1]


[0020]
 (式中、R ~R は、それぞれ、水素原子又は置換基を表す。iは0~2の整数を表す。jは0~10の整数を表す。kは3~10の整数を表す。a、b及びcは構成割合(モル分率)を表し、a、b及びcの総和が1である。)
 8.前記光学機能層が、特定の波長の光を選択的に透過あるいは遮蔽することを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
[0021]
 9.前記光学機能層が、第1の水溶性バインダー樹脂と第1の金属酸化物粒子とを含む高屈折率層、及び第2の水溶性バインダー樹脂と第2の金属酸化物粒子とを含む低屈折率層を交互に積層した特定の波長の光を選択的に反射する層であることを特徴とする第8項に記載の光学フィルム。
[0022]
 10.第1項から第9項までのいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とするウインドウフィルム。

発明の効果

[0023]
 本発明の上記手段により、巻癖回復性と引裂強さに優れた光学フィルムを提供することができる。また、それを用いた水貼り作業性と仕上がり品質(ムラが少なく裂けにくい)に優れたウインドウフィルムを提供することができる。
[0024]
 本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のような経緯を踏まえて推察している。
[0025]
 太陽光曝露下で使用されるウインドウフィルムには光透過性、耐UV性、耐熱性、耐傷性、加工性、巻癖回復性を持たせる必要がある。しかしこのような性能を満足する透明フィルムは今まで報告されていなかった。
[0026]
 上記性能を満足するためには、透明であること、使用するポリマー(樹脂)が非芳香族ポリマーであること(耐UV性)、剛直な主鎖構造を有すること(耐熱性)、フィルムが適度な柔軟性と靭性(じん性)を有すること(耐傷性、加工性)が必要であると考えられる。しかし、一般的に剛直な主鎖構造を有する樹脂は、巻癖が一旦付くととれにくく、更に柔軟性が低く、靭性も低いポリマー(樹脂)が多く、これらの性能をすべて満足させることは困難であった。
[0027]
 本発明において我々は求められる機能を分離、融合することで解決できると考えた。つまり、一つ目の機能としては、芳香族基を含まない剛直な主鎖構造をポリマー成分として有することで紫外線による分解が抑制され、かつ耐熱性を付与することである。もう一つの機能はそのポリマーに柔軟性と靭性を付与することである。さらに、もう一つの機能はそのポリマーに巻癖回復性を付与することである。これら3つの機能をポリマー主鎖構造、側鎖構造、別々のポリマーに持たせ、それらを高度に相溶することで耐UV性、耐熱性、透明性、耐傷性、加工性及び巻癖回復性が向上できると考えた。
[0028]
 巻癖回復性を付与するためには、ポリマーの側鎖構造などに適度な親水性を持たせることで、吸水により剛直なポリマー主鎖についた巻癖をほぐす効果がでるものと考えている。
[0029]
 ポリマーに柔軟性と靭性を付与するためには、分子鎖自身が柔軟な構造を持つことに加えて破壊の原因となるポリマー(樹脂)鎖間のひずみを少なくする必要がある。これらを両立するためは高分子量のポリマーを用い、かつそれらを高度に相溶することで異種高分子鎖同士の絡み合いを多くすることができ、その結果高分子鎖間のひずみを小さくできるという思想に至った。ここで2種のポリマーを高度に相溶させて絡み合いを多くすることが大きな課題となる。
[0030]
 異種ポリマーを高度に相溶するためには、各ポリマー種同士が相互作用した際の安定化エネルギーよりも異種ポリマー間で相互作用した際の安定化エネルギーが大きくなる必要がある。
[0031]
 そこで、安定化エネルギーの調整手段として分子量と相互作用点数の関係に着目した。一般的に高分子量化するにつれてポリマー鎖当たりの分子間力は増大するため同種のポリマー同士の相互作用が強くなり、異種ポリマーと相溶することが困難となる。
[0032]
 しかし、逆に考えれば高分子量のポリマーを異種ポリマー間で相互作用させることができれば大きな安定化が得られることになる。
[0033]
 そこで、我々は分子鎖にソフトセグメントを導入して相互作用に柔軟性を持たせて異種ポリマーとの相互作用点数を多くすることで熱力学的な安定化(エントロピーの効果)により異種ポリマー同士の安定化が得られ、高度に相溶すると考え検討した。
[0034]
 具体的には、芳香族基を含まない剛直な主鎖構造として天然高分子変性ポリマーであるセルロース誘導体と、ソフトセグメントを持ち、天然高分子と相互作用できる高分子量の脂肪族ポリエステルやポリエチレンオキシドを高度に相溶することで、セルロース誘導体含有フィルムの靭性と柔軟性を大幅に向上することが可能になり、耐UV性、耐熱性、透明性、耐傷性、加工性及び巻癖回復性を満たす支持体を得ることができた。このため、この支持体を用いて従来セルロース誘導体フィルムの良好な巻癖回復性と、PETフィルムに匹敵する高い強度を兼ね備えた支持体が実現でき、ウインドウフィルムとして好適な光学フィルムを得ることができたと推察される。

図面の簡単な説明

[0035]
[図1A] 本発明の光学フィルムの層構成の一例
[図1B] 本発明の光学フィルムの層構成の一例
[図1C] 本発明の光学フィルムの層構成の一例
[図1D] 本発明の光学フィルムの層構成の一例
[図1E] 本発明の光学フィルムの層構成の一例
[図1F] 本発明の光学フィルムの層構成の一例
[図1G] 本発明の光学フィルムの層構成の一例
[図2] 多層膜による光学反射層を有する本発明の光学フィルムの一例
[図3] 多層膜による光学反射層を有する本発明の光学フィルムの別の構成

発明を実施するための形態

[0036]
 本発明の光学フィルムは、フィルム状の支持体上に少なくとも光学機能層と粘着層とを有する光学フィルムであって、前記支持体が、セルロース誘導体を30質量%以上含有し、かつ巻癖回復率が20%以上で、引裂強さが150mN以上となるように調整されていることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項10までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
[0037]
 本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、支持体が、前記セルロース誘導体(第1のポリマー成分ともいう。)に加えて、脂肪族ポリエステル又はポリアルキレンオキシドを第2のポリマー成分として含有することが好ましい。また、支持体が、重量平均分子量が4000~500000の範囲内である前記第2のポリマー成分を前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することが好ましい。支持体が、重量平均分子量が30000~400000の範囲内である前記第2のポリマー成分を前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することが、支持体により高い靱性を付与できることから好ましい。さらに、セルロース誘導体が、セルロースエステルであることが好ましい。
[0038]
 また、本発明においては、セルロースエステルのアセチル基置換度Xと、プロピオニル基及びブチリル基の合計置換度Yとが、前記式(I)及び式(II)を満たすことが好ましい。これにより、支持体により高い靱性を付与できる。
[0039]
 靱性と柔軟の性両立の観点から、第2のポリマー成分が、前記一般式(1)で表される構造を有する脂肪族ポリエステルであることが好ましい。また、光学機能層が、特定の波長の光を選択的に透過あるいは遮蔽する層を有する場合、水貼りの際、スティックスリップ状のムラやスクイーズ作業のダメージを受けやすいことから好ましく適用できる。
[0040]
 さらに、本発明においては、光学機能層が、第1の水溶性バインダー樹脂と第1の金属酸化物粒子とを含む高屈折率層、及び第2の水溶性バインダー樹脂と第2の金属酸化物粒子とを含む低屈折率層を交互に積層した特定の波長の光を選択的に反射する層であることが好ましい。これにより、可視光線透過率が高く、遮熱性能に優れ、巻癖回復性のより優れたウインドウフィルムを提供できる。
[0041]
 本発明の光学フィルムは、ウインドウフィルムに好適に具備され得る。
[0042]
 以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[0043]
 ≪本発明の光学フィルムの概要≫
 本発明の光学フィルムは、フィルム状の支持体上に少なくとも光学機能層と粘着層とを有する光学フィルムであって、前記支持体が、セルロース誘導体を30質量%以上含有し、かつ巻癖回復率が20%以上で、引裂強さが150mN以上となるように調整されていることを特徴とする。本発明においては好ましい態様として、本発明に係る支持体が、セルロース誘導体に加えて、重量平均分子量が4000~500000の範囲内であるポリエステル又はポリアルキレンオキシドを第2のポリマー成分として前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することである。
[0044]
 かかる構成によって支持体としてセルロース誘導体の優れた特長を活かし、かつウインドウフィルムとしての十分な強度を備えた光学フィルムを提供することができる。
[0045]
 図1A~1Gは本発明の光学フィルムの層構成の一例である。図1Aは本発明に係る支持体4の片側に光学機能層3と粘着層2及びセパレーター1を備え、支持体の反対側にはハードコート層7を備えている。この光学フィルムは、セパレーター1を剥がして粘着層2を窓ガラスに張り付けることでウインドウフィルムとして用いることができる。
[0046]
 図1Bは、光学機能層3を支持体4の反対側に備えた例であり、さらに接着層5を介して追加の支持体6を設けた例である。図1Cは、図1Bで示した例に対して追加の支持体の代わりに本発明に係る支持体4を用い、光学機能層3を本発明に係る支持体6で挟んだ構成の例である。図1Dは、図1Bで示した例に対して本発明に係る支持体4と追加の支持体6を入れ替えた例である。図1E~1Gは、図1Aに対して、本発明に係る支持体4又は追加の支持体6をさらに用いた例である。
[0047]
 以上のように、光学機能層と粘着層は支持体の片側にともに設けられていてもよく、又は支持体を介して支持体の反対側に別々に設けられていてもよい。
[0048]
 ≪本発明の光学フィルムの構成要素≫
 本発明の光学フィルムは、フィルム状の支持体上に少なくとも光学機能層と粘着層とを有する光学フィルムであって、前記支持体が、セルロース誘導体を30質量%以上含有し、かつ巻癖回復率が20%以上で、引裂強さが150mN以上となるように調整されていることを特徴とする。
[0049]
 <支持体>
 本発明に係る支持体は、セルロース誘導体を30質量%以上含有し、かつ巻癖回復率が20%以上で、引裂強さが150mN以上となるように調整されている。
[0050]
 このような特性を得るためには、前記セルロース誘導体に加えて、脂肪族ポリエステル又はポリアルキレンオキシドを第2のポリマー成分として含有することが好ましい。また、支持体が、重量平均分子量が4000~500000の範囲内である前記第2のポリマー成分を前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することが好ましい。
[0051]
 支持体中のセルロース誘導体の含有量が30質量%より低い場合には、第2のポリマー成分との相互作用が弱くなり、また、セルロース誘導体の優れた特徴である透湿性を利用した水貼り作業性や、水貼り後のウインドウフィルムのムラの発生の観点から好ましくない。好ましくは、セルロース誘導体の支持体中の含有量は、50~90質量%であり、より好ましくは50~70質量%の範囲内である。また第2のポリマー成分の支持体中の含有量は、前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することが好ましい。好ましくは10~50質量%の範囲内である。
[0052]
 第1のポリマー成分と第2のポリマー成分をこのような含有比率とすることで、ポリマー成分の相互作用を好ましく発揮させることができる。
[0053]
 支持体の厚さは20~200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは25~100μmの範囲内であり、更に好ましくは35~70μmでの範囲内である。20μm以上の厚さであれば、取扱い中にシワ等が発生しにくくなり水貼り時のスクイーズに対して十分な強度があり、水貼り後のムラの発生がない。また、厚さが、200μm以下であれば、透明性や巻癖回復性に優れ、かつ水貼り作業性が向上する。
[0054]
 本発明においては、図1B、1D、1E及び1Gで示したように、追加の支持体を設けることができる。追加の支持体は、本発明の効果を損なわなければ、特に制限はない。この場合、追加の支持体の厚さは5~200の範囲内であることが好ましい。例えば、追加の支持体として、25μm程度の厚さのPETフィルムを用いることで、PETフィルムの巻癖を軽減した複合支持体とすることができる。
[0055]
 (巻癖回復率)
 巻癖回復率とは、ロール状に巻かれ、巻癖のついた光学フィルムの巻癖回復性を示す尺度であり、以下のようにして求めることができる。
[0056]
 支持体を幅35mm(製造時の搬送方向と直交する方向:TD方向)×長さ120mm(製造時の搬送方向:MD方向)の帯状に切断し、温度23℃、相対湿度55%の条件下で1日放置した後に直径が50mmであるコアにこれを巻き付ける。
[0057]
 その後、温度55℃、相対湿度20%の条件下で24時間熱処理を行う。熱処理後、温度23℃、相対湿度55%の条件下で30分かけて放冷した後にコアから解放し、1分経過後に支持体の巻癖カール度を測定する。カール度は1/rで表し、rはカールした支持体の曲率半径を表し、単位はmである。
[0058]
 さらに、支持体のカールした内側から霧吹きで水を吹きかけ、5分後のカール度を測定し、巻癖回復率を下記の式で定義する。
[0059]
 巻癖回復率=(吹きかけ前のカール度-吹きかけ後のカール度)/吹きかけ前のカール度×100(%)
 本発明に係る支持体の巻癖回復率は20%以上であり、より好ましくは50%以上である。
[0060]
 (引裂強さ)
 本発明で規定する引裂強さは、下記の方法により求めることができる。
[0061]
 本発明に係る支持体を、JIS K 7128-2:1998(プラスチック-フィルム及びシートの引裂強さ試験方法-第2部:エルメンドルフ引裂法)に準拠して、(株)東洋精機製作所製の軽荷重引裂試験機により、エルメンドルフ引裂法により、搬送方向と直交する方向(TD方向)又は搬送方向(MD方向)での支持体の引き裂き荷重を測定することによって求められる。引裂強さの測定は、一定の温度・湿度条件下(本発明では、温度23℃、相対湿度55%の条件下)で行う。
[0062]
 本発明においては、特に断りがない限り、試料の引裂長さ及び厚さを、それぞれ同一の条件で、搬送方向と直交する方向(TD方向)及び搬送方向(MD方向)の平均値を引裂強さとした。
[0063]
 本発明に係る支持体の引裂強さは150mN以上であり、より好ましくは190mN以上であり、最も好ましくは230mN以上である。引裂強さの上限は特にはないが、強すぎると支持体の切断性が悪くなることから、好ましくは3000mN以下である。
[0064]
 <セルロース誘導体>
 本発明の光学フィルムは、フィルム状の支持体上に少なくとも光学機能層と粘着層とを有する光学フィルムであって、前記支持体が、セルロース誘導体を30質量%以上含有している。
[0065]
 本発明に係るセルロース誘導体としては、セルロースエステル又はセルロースエーテル等が挙げられる。前記セルロース誘導体は、セルロースに含まれるβ-グルコース環の2位、3位、及び6位のヒドロキシ基の水素原子の少なくとも一部が、脂肪族アシル基又はアルキル基の少なくともいずれかで置換されたものである。
[0066]
 セルロース誘導体が、セルロースエステルであることが好ましい。セルロースエステルとしては、具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリプロピオネート等が挙げられる。
[0067]
 本発明における第1のポリマー成分に置換できる置換基としては、非芳香族基であることが太陽光に曝露されたときの耐久性の観点から好ましい。例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4-n-ドデシルシクロヘキシル基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-メトキシエトキシ基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイル基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基等)、スルファモイル基(N-エチルスルファモイル基、N-(3-ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N-アセチルスルファモイル基等)、スルホ基、カルバモイル基(カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジ-n-オクチルカルバモイル基、N-(メチルスルホニル)カルバモイル基等)などが含まれる。これらの基は、さらに同様の基で置換されていてもよい。
[0068]
 セルロースエステルの総アシル基置換度は、透明性の観点から、1.5以上3.0以下であることが好ましく、2.5以上2.95以下であることがより好ましい。アシル基の置換度の測定方法はASTM-D817-96に準じて測定することができる。
[0069]
 セルロースエステルのアセチル基置換度Xと、プロピオニル基及びブチリル基の合計置換度Yとが、下記式(I)及び式(II)を満たすことが好ましい。
[0070]
 式(I) : 2.5≦X+Y≦2.95
 式(II) : 0≦Y≦1.5
 本発明の光学フィルムに含まれるセルロースエステルは、所望の特性を得るために、置換度の異なる複数のセルロースエステルを含んでもよい。例えば置換度の異なるセルロースエステルを2種類含む場合、それらの混合比は、質量比で10:90~90:10の範囲としうる。
[0071]
 セルロースエステルの数平均分子量は、得られるフィルムの機械的強度が高いことから、6×10 ~3×10 の範囲であることが好ましく、7×10 ~2×10 の範囲であることがより好ましい。
[0072]
 セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されうる。測定条件の一例を以下に示すが、これに限らず、同等の測定方法を用いることも可能である。
[0073]
 溶媒:   メチレンクロライド
 カラム:  Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する。)
 カラム温度:25℃
 試料濃度: 0.1質量%
 検出器:  RI Model 504(GLサイエンス社製)
 ポンプ:  L6000(日立製作所(株)製)
 流量:   1.0ml/min
 校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500~1000000の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
[0074]
 (第2のポリマー成分)
 本発明における第2のポリマー成分は第1のポリマー成分と複数相互作用することにより相溶し、重量平均分子量が4000~500000であり、ソフトセグメントを有することが好ましい。
[0075]
 本発明における相溶とは分子レベルで混ざり合い、透明であることをいう。本発明における相互作用とは、水素結合、双極子-双極子相互作用、分子間力、CH-π相互作用などが挙げられる。これらのような相互作用をしうる部位を相互作用点といい、相互作用点は主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよく、後述するソフトセグメントに含まれていてもよい。
[0076]
 本発明においては、高分子量の第2のポリマー成分が主鎖1本当たりの相互作用点を多く持ち、第1のポリマー成分と複数相互作用することが重要である。複数相互作用できることにより、とりうる状態数が指数関数的に増大してエントロピーが大きくなることでギプスの自由エネルギーが負に大きくなるため、第1のポリマー成分と第2のポリマー成分が相互作用する系が大きく安定化された結果、高度に相溶することが可能となる。
[0077]
 第1のポリマー成分と第2のポリマー成分とが相溶しているかどうかは、例えばガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。
[0078]
 例えば、両者のポリマーのガラス転移温度が異なる場合、両者のポリマーを単に混合したときは、それぞれのポリマーのガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は2つ以上存在するが、両者のポリマーが相溶したときは、それぞれのポリマー固有のガラス転移温度が消失し、一つのガラス転移温度となって相溶したポリマーのガラス転移温度となる。
[0079]
 なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(例えば、Perkin Elmer社製DSC-7型、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計DSC220)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)にしたがい求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)とする。
[0080]
 本発明におけるソフトセグメントとは、主鎖に伸縮性、回転性を付与できる連結基のことを言い、それらを満たす構造であれば特に制限はないが、具体的には主鎖中に-O-、-COO-、OCOO-、-S-のような結合を含む部位のことを言う。
[0081]
 また、第2のポリマー成分の重量平均分子量は、4000~500000の範囲内であり、好ましくは、30000~400000の範囲内であり、50000~300000の範囲内であることが特に好ましい。
[0082]
 第2のポリマー成分の分子量が4000~500000の範囲内であれば、第1のポリマー成分と相互作用した際の安定化エネルギーが、第2のポリマー成分の自己凝集力よりも大きくなり、透明性、破断伸度、及び引裂強さが向上する。
[0083]
 本発明における第2のポリマー成分として、好ましくはポリアルキレンオキシド、ポリエステルであり、脂肪族ポリエステルとポリアルキレンオキシドがさらに好ましく、脂肪族ポリエステルが特に好ましい。
[0084]
 本発明における第2のポリマー成分として使用できるポリアルキレンオキシドとしては特に制限はないが、例えば、エチレンオキシドを1成分として含むものを挙げることができ、エチレンオキシド単独重合体であるポリエチレンオキシド;エチレンオキシドと他のアルキレンオキシドとの共重合体等が挙げられる。前記他のアルキレンオキシドとしては、例えば、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、トリフルオロメチルエチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシドール、グリシジルアクリレート、ブタジエンモノオキシド、ブタジエンジオキシド等が挙げられる。中でも好ましくはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドが好ましく、ポリエチレンオキシドがさらに好ましい。
[0085]
 本発明における第2のポリマー成分として使用できる脂肪族ポリエステルについて説明する。
[0086]
 本発明でいう脂肪族ポリエステルは、重量平均分子量が4000以上の脂肪族ポリエステルであることが好ましい。
[0087]
 本発明における脂肪族ポリエステルは、脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸との縮合反応により得られるポリエステル、又は環状エステルの開環重合により得られる脂肪族ポリエステルであることが好ましい。
[0088]
 更に好ましくは下記一般式(1)で表される構造を有する脂肪族ポリエステルである。
[0089]
[化2]


[0090]
 前記一般式(1)におけるR ~R は、それぞれ、水素原子又は置換基を表し、置換基は後述する第2のポリマー成分に置換してもよい置換基である。本発明における一般式(1)にはソフトセグメントである-CO-や-O-の連結基が多数入っているためR ~R の置換基は本発明が目的とする効果を損なわない限りはどのような置換基を導入してもよい。
[0091]
 前記一般式(1)におけるiは0~2の整数を表し、jは0~10の整数を表し、kは3~10の整数を表す。
前記一般式(1)におけるiは0~1が好ましく、1がさらに好ましい。
前記一般式(1)におけるjは0~5が好ましく、1~4が好ましく3が特に好ましい。前記一般式(1)におけるkは3~8が好ましく、3~5がさらに好ましく、3が特に好ましい。
[0092]
 前記一般式(1)におけるR ~R で表される基は、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
[0093]
 a、b及びcは構成割合(モル分率)を表し、a、b及びcの総和は1である。透明性、破断伸度、引裂強さの観点から好ましい構成割合としては、a/b/c=0.10~0.5/0.30~0.60/0.00~0.40が好ましく、a/b/c=0.25~0.40/0.35~0.60/0.05~0.30がさらに好ましく、a/b/c=0.20~0.35/0.45~0.55/0.15~0.25が特に好ましい。ジアルコール成分が0.5に近づくほど高分子量のポリマーが得られることに加えて、a>cであると相互作用のバランスが優れ、透明性が向上する。特にセルロースエステルと組み合わせた際には透明性、破断伸度、引裂強さが向上する。
[0094]
 本発明における一般式(1)で表される脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートなどが挙げられる。好ましくはポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートである。
[0095]
 脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸(あるいはそのエステル)との縮合反応で用いられる脂肪族多塩基酸としては、例えばコハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、及びこれらの無水物、あるいはこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4ーブタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレングリコール1,4-シクロヘキサンジメタノール、及び等が挙げられる。また、脂肪族多価アルコールの一部としてポリオキシアルキレングリコールを使用することも可能であり、例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール及びこれらの共重合体が例示される。
[0096]
 脂肪族ポリエステルは、単独ないし2種以上を用いることができる。また、これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、又は水溶液のいずれであってもよい。
[0097]
 これらのうちで、前記脂肪族多価アルコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール1,4-シクロヘキサンジメタノール、から選ばれる少なくとも一種であり、前記脂肪族多塩基酸が、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、及びこれらの無水物から選ばれる少なくとも一種の脂肪族多塩基酸であることが好ましい。
[0098]
 また、前記脂肪族多価アルコールが、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、及びから選ばれる少なくとも一種であり、前記脂肪族多塩基酸が、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びこれらの無水物から選ばれる少なくとも一種の脂肪族多塩基酸であることがより好ましい。
[0099]
 脂肪族ポリエステルの製造に際しては脂肪族多塩基酸(あるいはそのエステル)成分及び脂肪族多価アルコール成分の全量を初期混合し反応させてもよく、又は反応の進行にともなって分割して添加してもさしつかえない。重縮合反応としては通常のエステル交換法又はエステル化法更には両方の併用によっても可能であり、また必要により反応容器内を加圧又は減圧にすることにより重合度を上げることができる。
[0100]
 環状エステルを開環重合する方法で用いられる環状エステルとしては、例えばβ-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、などが挙げられる。これらのうち、ε-カプロラクトンが特に好ましい。開環重合は公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
[0101]
 縮合反応、及び重合反応はいずれも縦型反応器、回分式反応器、横型反応器、二軸押出し機などが用いられ、バルク状、あるいは溶液中での反応が実施されることが好ましい。
[0102]
 縮合反応、及び重合反応におけるエステル化触媒、開環重合触媒及び脱グリコール触媒としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、カドミウム、マンガン、鉄、ジルコニウム、バナジウム、イリジウム、ランタン、セレンなどの金属、及びこれらの有機金属化合物、有機酸の塩、金属アルコキシド、金属酸化物などが挙げられ、必要に応じてリン酸等の助触媒と併用することも可能である。これらの触媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができ、添加量は全ジカルボン酸100モルに対して0.1モル以下が好ましく、より好ましくは0.8モル以下、更に好ましくは0.6モル以下である。
[0103]
 更に必要に応じて鎖延長剤を用いて高分子量化することもできる。鎖延長剤としては、2官能以上のイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、及び多価金属化合物、多官能酸無水物、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられ、1種、又は2種以上を組み合わせてもよい。
[0104]
 本発明における脂肪族ポリエステルの弾性率は、0.01GPa以上1GPa以下であることが好ましく、0.1GPa以上0.5GPa以下であることがより好ましい。
[0105]
 本発明における脂肪族ポリエステルは重量平均分子量が4000以上であることが好ましい。ここで、重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量である。より詳細には、N-メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求められる。GPC装置は、HLC-8220GPC(東ソー社製)を使用できる。
[0106]
 脂肪族ポリエステルは重量平均分子量が4000以上の場合、ブリードアウトの懸念がなく、また、混合する樹脂に対して可塑剤として作用せず、樹脂の剛性と耐熱性を著しく損なうことがない。
[0107]
 本発明における脂肪族ポリエステルは市販品を用いてもよく、ポリブチレンサクシネートとして、ビオノーレ1001(Mn=70000)、ビオノーレ1050MD(Mw:100000)、(昭和電工(株)社製)、GSPla AD92W(Mn=40000)(三菱化学(株)社製)、ポリブチレンサクシネートアジペートとしてビオノーレ#3001(Mn=34000)ビオノーレ3001MD(Mw:200000)(昭和電工(株)社製)、ポリカプロラクトンとしてPH7(Mn=45000)、(ダイセル(株)社製)などが挙げられる。
[0108]
 本発明における第2のポリマー成分に置換できる置換基としては特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4-n-ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2-シクロペンテン-1-イル、2-シクロヘキセン-1-イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(フェニル基、p-トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2-ピロール基、2-フリル基、2-チエニル基、ピロール基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、2-ベンゾチアゾリル基、ピラゾリノン基、ピリジル基、ピリジノン基、2-ピリミジニル基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-tert-ブチルフェノキシ基、3-ニトロフェノキシ基、2-テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5-トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p-メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p-クロロフェニルチオ基、m-メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N-エチルスルファモイル基、N-(3-ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N-アセチルスルファモイル基、N-ベンゾイルスルファモイル基、N-(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、カルバモイル基(カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジ-n-オクチルカルバモイル基、N-(メチルスルホニル)カルバモイル基等)などが含まれる。これらの基は、さらに同様の基で置換されていてもよい。
[0109]
 本発明における第2のポリマー成分は第1のポリマー成分と同様に非芳香族成分で構成されることが好ましい。ただし、第1のポリマー成分とは異なり、芳香族基及び複素芳香族基を有してもよい。これは第1のポリマー成分がフィルムとしての耐熱性、耐UV性を付与しており、第2の成分は柔軟性及び靭性を付与するものであるため、紫外線により第2のポリマー成分が若干破壊されたとしてもフィルム性能に大きな影響を与えないためである。
[0110]
 本発明における第1のポリマー成分と第2のポリマー成分とは共有結合で架橋していても架橋していなくてもよい。また、第1のポリマー成分同士、第2のポリマー成分同士もそれぞれ共有結合で架橋していてもよく、架橋していなくてもよい。
(添加剤)
 本発明における光学フィルムには目的とする機能を低下させない程度であれば各種添加材を支持体に添加することができる。
[0111]
 (糖エステル)
 本発明における太陽光に耐久性を有する高透明フィルムの可塑性を向上させる観点から、糖エステルをさらに含有することができる。
[0112]
 糖エステルは、フラノース構造若しくはピラノース構造を1~12個有する化合物であって、該化合物中のヒドロキシ基の全部又は一部がエステル化された化合物でありうる。そのような糖エステルの好ましい例には、下記一般式(FA)で表されるスクロースエステルが含まれる。
[0113]
[化3]


[0114]
 一般式(FA)のR ~R は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表す。R ~R は、互いに同じであっても、異なってもよい。
[0115]
 置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基は、炭素原子数2以上の置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル基(アセチル基)が含まれる。アルキル基が有する置換基の例には、フェニル基等のアリール基が含まれる。
[0116]
 置換若しくは無置換のアリールカルボニル基は、炭素原子数7以上の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基であることが好ましい。アリールカルボニル基の例には、フェニルカルボニル基が含まれる。アリール基が有する置換基の例には、メチル基等のアルキル基や、メトキシ基等のアルコキシル基等が含まれる。
[0117]
 スクロースエステルのアシル基の平均置換度は、3.0~7.5の範囲内であることが好ましい。アシル基の平均置換度がこの範囲内であると、十分な相溶性が得られやすい。特にセルロースエステルを第1のポリマー成分として用いた際には相溶性が高くなる。
[0118]
 一般式(FA)で表されるスクロースエステルの具体例には、下記例示化合物(FA-1)~(FA-24)が含まれる。下記表は、例示化合物(FA-1)~(FA-24)の一般式(FA)におけるR ~R と、アシル基の平均置換度を示している。
[0119]
[化4]


[0120]
[化5]


[0121]
[化6]


[0122]
 その他の糖エステルの例には、特開昭62-42996号公報及び特開平10-237084号公報に記載の化合物が含まれる。
[0123]
 糖エステルの含有量は、第1のポリマー成分と第2のポリマー成分の総量に対して0.5~35.0質量%であることが好ましく、5.0~30.0質量%であることがより好ましい。
[0124]
 フィルム製造時の組成物の流動性や、フィルムの柔軟性を向上するために、重量平均分子量が4000未満の可塑剤をさらに含有していていもよい。可塑剤の例には、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤を含む)、グリコレート系可塑剤、エステル系可塑剤(クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤などを含む)などが含まれる。なかでも、ポリエステル系可塑剤やリン酸エステル系可塑剤が好ましい。これらは、単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[0125]
 (その他の添加剤)
 本発明に係る支持体は、取り扱いを容易にするために、透明性を損なわない範囲内で粒子を含有させてもよい。本発明で用いる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また粒子を添加する方法としては、原料とするポリエステル中に粒子を含有させて添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、二つの方法を併用してもよい。本発明では必要に応じて上記粒子の他にも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、糖エステル以外の可塑剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などが挙げられる。
[0126]
 ≪セルロース誘導体を含有する支持体の製造方法≫
 本発明に係るセルロース誘導体を含有する支持体(以下、簡単に支持体ともいう。)の製造方法としては、通常のインフレーション法、T-ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から製膜方法は、溶液流延製膜法と溶融流延製膜法が選択でき、特に溶液流延製膜法であることが、均一で平滑な表面を得ることができる観点から好ましい。
[0127]
 以下、本発明に係る支持体を溶液流延製膜法で製造する製造例について説明する。
[0128]
 本発明に係る支持体の製造は、少なくともセルロース誘導体、又はセルロース誘導体及び第2のポリマー成分、さらに必要であれば添加剤等を溶媒に溶解させてドープを調製し、濾過する工程、調製したドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延しウェブを形成する工程、形成したウェブを金属支持体から剥離してフィルム状の支持体とする工程、前記支持体を延伸、乾燥する工程、及び乾燥させた支持体を冷却後ロール状に巻き取る工程により行われる。本発明に係る支持体は固形分中に好ましくはセルロース誘導体を60~95質量%の範囲で含有するものであることが好ましい。
[0129]
 以下、各工程について説明する。
[0130]
 (1)溶解工程
 セルロース誘導体に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で当該セルロース誘導体、又はセルロース誘導体及び第2のポリマー成分、さらに必要であれば添加剤等を撹拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいは当該セルロース誘導体溶液に、前記第2のポリマー成分、さらに必要であれば添加剤等の化合物溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
[0131]
 本発明に係る支持体を溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロース誘導体、又はセルロース誘導体及び第2のポリマー成分、さらにその他の添加剤等を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
[0132]
 例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロパノール、1,3-ジフルオロ-2-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メチル-2-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、例えば主たる溶媒として、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することができ、塩化メチレン又は酢酸エチルであることが特に好ましい。
[0133]
 ドープには、上記有機溶媒の他に、1~40質量%の範囲の炭素原子数1~4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ないときは非塩素系有機溶媒系でのセルロース誘導体及びその他の化合物の溶解を促進する役割もある。本発明に係る支持体の製膜においては、得られる支持体の平面性を高める点から、アルコール濃度が0.5~15.0質量%の範囲内にあるドープを用いて製膜する方法を適用することができる。
[0134]
 特に、メチレンクロライド、及び炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、セルロース誘導体及びその他の化合物を、計15~45質量%の範囲で溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
[0135]
 炭素原子数1~4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からメタノール及びエタノールが好ましい。
[0136]
 セルロース誘導体、第2のポリマー成分又はその他の化合物の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9-95544号公報、特開平9-95557号公報、又は特開平9-95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11-21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
[0137]
 ドープ中のセルロース誘導体の濃度は、10~40質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに化合物を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
[0138]
 (2)流延工程
 (2-1)ドープの流延
 ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属支持体、例えば、ステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
[0139]
 流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1~4mの範囲、好ましくは1.5~3mの範囲、さらに好ましくは2~2.8mの範囲とすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は-50℃~溶剤が沸騰して発泡しない温度以下、さらに好ましくは-30~0℃の範囲に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0~100℃で適宜決定され、5~30℃の範囲が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
[0140]
 ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層してもよい。
[0141]
 (3)溶媒蒸発工程
 ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブという。)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
[0142]
 溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が、乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40~100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40~100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
[0143]
 面品質、透湿性、剥離性の観点から、30~120秒以内で当該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
[0144]
 (4)剥離工程
 金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブはフィルム状支持体として次工程に送られる。
[0145]
 金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10~40℃の範囲であり、さらに好ましくは11~30℃の範囲である。
[0146]
 なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50~120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生しやすいため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
[0147]
 ウェブの残留溶媒量は下記式(Z)で定義される。
[0148]
 式(Z)
   残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量-ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
 なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
[0149]
 (5)乾燥及び延伸工程
 乾燥工程は予備乾燥工程、本乾燥工程に分けて行うこともできる。
[0150]
 〈予備乾燥工程〉
 金属支持体から剥離して得られたウェブを乾燥させる。ウェブの乾燥は、ウェブを、上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし、テンター乾燥機のようにウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
[0151]
 ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
[0152]
 ウェブの乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点-5℃以下であって、100℃以上の温度で10分以上60分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100~200℃の範囲内、更に好ましくは110~160℃の範囲内で乾燥が行われる。
[0153]
 〈延伸工程〉
 本発明に係る支持体は、延伸処理することでフィルム内の分子の配向を制御することができ、平面性が向上する。
[0154]
 本発明に係る支持体は、流延方向(MD方向)又は幅手方向(TD方向)の少なくともいずれかに延伸することが好ましく、少なくともテンター延伸装置によって、幅手方向に延伸して製造することが好ましい。
[0155]
  延伸操作は多段階に分割して実施してもよい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
[0156]
 すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である:
 ・流延方向に延伸→幅手方向に延伸→流延方向に延伸→流延方向に延伸
 ・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→流延方向に延伸→流延方向に延伸
 また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。延伸開始時の残留溶媒量は2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
[0157]
 当該残留溶媒量は、2質量%以上であれば、膜厚偏差が小さくなり、平面性の観点から好ましく、10質量%以内であれば、表面の凹凸が減り、平面性が向上し好ましい。
[0158]
 本発明に係る支持体は、ガラス転移温度をTgとしたときに、(Tg+15)~(Tg+50)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れた支持体が得られる。延伸温度は、(Tg+20)~(Tg+40)℃の範囲で行うことが好ましい。
[0159]
 なお、ここでいうガラス転移温度Tgとは、市販の示差走査熱量測定器を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K 7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。具体的な支持体のガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS K 7121(1987)に従って、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計DSC220を用いて測定することができる。
[0160]
 本発明に係る支持体は、ウェブを少なくともTD方向に1.1倍以上延伸することが好ましい。延伸の範囲は、元幅に対して1.1~1.5倍であることが好ましく、1.2~1.4倍であることがより好ましい。上記範囲内であれば、フィルム中の分子の移動が大きく、フィルムを薄膜化でき、平面性を向上することができる。
[0161]
 TD方向に延伸するには、例えば、特開昭62-46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップ又はピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
[0162]
 (6)巻取り工程
 ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってから支持体を巻取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なセルロース誘導体を含有する支持体を得ることができる。
[0163]
 巻取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
[0164]
 <支持体の物性>
 本発明に係る支持体は、長尺であることが好ましく、具体的には、100~10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、当該支持体の幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4~4mであることが好ましい。
[0165]
 本発明に係る支持体の光学特性として、JIS R 3106(1998)で測定される可視光透過率としては、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
[0166]
 ヘイズは、1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。ヘイズを1%未満とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学用途のフィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。
[0167]
 本発明に係る支持体は、25℃、相対湿度60%における平衡含水率が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。平衡含水率を4%以下とすることにより、温湿度が変化しても、寸法がより変化しにくい。
[0168]
 <光学機能層>
 本発明に係る光学機能層は、光学的な特性を制御する機能を有する層であれば、特に限定されないが、例えば、反射率や透過率を制御する層、マイクロレンズやマイクロプリズム、散乱層など光の方向を変える、あるいは集光する層、などをあげることができるが、中でも、特定の波長の光を選択的に透過あるいは遮蔽する層として好ましく用いることができる。
[0169]
 特定の波長の光を選択的に透過あるいは遮蔽する層としては、染料や顔料によって特定の波長を吸収する層、金属薄膜を設けて赤外光を反射する層、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層してその膜厚に応じた波長の光のみを反射する層(多層膜による光学反射層)などを挙げることができる。
[0170]
 特に、第1の水溶性バインダー樹脂と第1の金属酸化物粒子とを含む高屈折率層、及び第2の水溶性バインダー樹脂と第2の金属酸化物粒子とを含む低屈折率層を交互に積層した特定の波長の光を選択的に反射する層に好ましく適用できる。この方法においては、低屈折率層と高屈折率層の界面混合が少ないほど界面反射が増加してより高い反射率が得られるが、セルロース誘導体を支持体とすると塗布時の溶媒をセルロース誘導体が吸収するため、また、塗布層の上面(空気側)だけでなく、支持体側からも溶媒が揮発できるために、塗布層がすばやく固化され、低屈折率層と高屈折率層の界面混合が少なくなり、高い反射率が得られることからセルロース誘導体を支持体に適用することが好ましく、一方で、層構成が複雑で、保存時の劣化の影響が出やすいことから、本発明に係る支持体を適用することは非常に好ましい。
[0171]
 (1)多層膜による光学反射層
 多層膜による光学反射層は、太陽光線、例えば赤外線成分を反射して遮断する機能を発現するもので、屈折率の異なる複数の屈折率層で構成されている。具体的には、高屈折率層及び低屈折率層を積層して構成される。本発明に用いられる光学反射層は、高屈折率層と低屈折率層とから構成される積層体(ユニット)を少なくとも一つ含む構成を有するものであればよいが、高屈折率層及び低屈折率層とから構成される上記積層体が二つ以上複数で積層された構成を有することが好ましい。この場合、光学反射層の最上層及び最下層は高屈折率層及び低屈折率層のいずれであってもよいが、最上層及び最下層の両者が低屈折率層であることが好ましい。最上層が低屈折率層であると塗布性が良くなり、最下層が低屈折率層であると密着性が良くなる観点から好ましい。
[0172]
 ここで、光学反射層の任意の屈折率層が高屈折率層であるか低屈折率層であるかは、隣接する屈折率層との屈折率の対比によって判断される。具体的には、ある屈折率層を基準層としたとき、当該基準層に隣接する屈折率層が基準層より屈折率が低ければ、基準層は高屈折率層である(隣接層は低屈折率層である。)と判断される。一方、基準層より隣接層の屈折率が高ければ、基準層は低屈折率層である(隣接層は高屈折率層である。)と判断される。したがって、屈折率層が高屈折率層であるか低屈折率層であるかは、隣接層が有する屈折率との関係で定まる相対的なものであり、ある屈折率層は、隣接層との関係によって高屈折率層にも低屈折率層にもなりうる。
[0173]
 ここで、高屈折率層を構成する成分(以下、「高屈折率層成分」とも称する。)と低屈折率層を構成する成分(以下、「低屈折率層成分」とも称する。)が二つの層の界面で混合され、高屈折率層成分と低屈折率層成分とを含む層(混合層)が形成される場合がある。この場合、混合層において、高屈折率層成分が50質量%以上である部位の集合を高屈折率層とし、低屈折率層成分が50質量%を超える部位の集合を低屈折率層とする。具体的には、例えば、低屈折率層及び高屈折率層がそれぞれ異なる金属酸化物粒子を含む場合、これらの積層膜における層厚方向での金属酸化物粒子の濃度プロファイルを測定し、その組成によって、形成されうる混合層が、高屈折率層であるか低屈折率層であるかを決定することができる。積層膜の金属酸化物粒子の濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで観測することができる。また、低屈折率成分又は高屈折率成分に金属酸化物粒子が含有されておらず、水溶性樹脂のみから形成されている場合においても、同様にして、水溶性樹脂の濃度プロファイルにて、例えば、層厚方向での炭素濃度を測定することにより混合領域が存在していることを確認し、さらにその組成をEDX(エネルギー分散型X線分光法)より測定することで、スパッタでエッチングされた各層が、高屈折率層又は低屈折率層とみなすことができる。
[0174]
 XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB-200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定することができる。
[0175]
 一般に、光学反射層においては、低屈折率層と高屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で、例えば赤外線反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本形態では、低屈折率層及び高屈折率層から構成される積層体(ユニット)の少なくとも一つにおいて、隣接する低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.35以上であることがさらに好ましく、0.4超であることが特に好ましい。光学反射層が高屈折率層及び低屈折率層の積層体(ユニット)を2以上の複数有する場合には、全ての積層体(ユニット)における高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、この場合でも光学反射層の最上層や最下層を構成する屈折率層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。
[0176]
 光学反射層の屈折率層の層数(高屈折率層及び低屈折率層のユニット)としては、上記の観点から、100層以下、すなわち50ユニット以下であることが好ましく、40層(20ユニット)以下であることがより好ましく、20層(10ユニット)以下であることがさらに好ましい。
[0177]
 上記隣接した層界面での反射は、層間の屈折率比に依存するのでこの屈折率比が大きいほど、反射率が高まる。また、単層膜でみたとき層表面における反射光と、層底部における反射光の光路差を、n・d=波長/2、で表される関係にすると位相差により反射光を強めあうよう制御でき、反射率を上げることができる。ここで、nは屈折率、dは層の物理膜厚、n・dは光学膜厚である。この光路差を利用することで、反射を制御できる。この関係を利用して、各層の屈折率と膜厚を制御して、可視光や、近赤外光の反射を制御する。
[0178]
 すなわち、各層の屈折率、各層の膜厚、各層の積層のさせ方で、特定波長領域の反射率を高めることができる。
[0179]
 本発明に用いられる光学反射層は反射率を高める特定波長領域を変えることにより、紫外線反射フィルム、可視光反射フィルム、近赤外線反射フィルムとすることができる。すなわち、反射率を高める特定波長領域を紫外線領域に設定すれば紫外線反射フィルムとなり、可視光領域に設定すれば可視光反射フィルムとなり、近赤外領域に設定すれば近赤外線反射フィルムとなる。
[0180]
 本発明に用いられる光学反射層を具備する光学フィルムを遮熱フィルムに用いる場合は、近赤外線反射フィルムとすればよい。高分子フィルムに互いに屈折率が異なる膜を積層させた多層膜を形成し、JIS R 3106(1998)で示される可視光領域の透過率が50%以上で、かつ、波長900~1400nmの領域に反射率40%を超える領域を有するように光学膜厚とユニットを設計することが好ましい。
[0181]
 〈屈折率層:高屈折率層及び低屈折率層〉
 〔高屈折率層〕
 高屈折率層は、第1の水溶性バインダー樹脂及び第1の金属酸化物粒子を含有し、必要に応じて、硬化剤、その他のバインダー樹脂、界面活性剤、及び各種添加剤等を含んでもよい。
[0182]
 本発明に係る高屈折率層の屈折率は、好ましくは1.80~2.50であり、より好ましくは1.90~2.20である。
[0183]
 (第1の水溶性バインダー樹脂)
 本発明に係る第1の水溶性バインダー樹脂は、該水溶性バインダー樹脂が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40~50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性バインダー樹脂の50質量%以内であるものをいう。
[0184]
 本発明に係る第1の水溶性バインダー樹脂の重量平均分子量は、1000~200000の範囲内であることが好ましい。更には、3000~40000の範囲内がより好ましい。
[0185]
 本発明でいう重量平均分子量は、公知の方法によって測定することができ、例えば、静的光散乱、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)、飛行時間型質量分析法(TOF-MASS)などによって測定することができ、本発明では一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定する。
[0186]
 高屈折率層における第1の水溶性バインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、5~50質量%の範囲内であることが好ましく、10~40質量%の範囲内であることがより好ましい。
[0187]
 高屈折率層に適用する第1の水溶性バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコールであることが好ましい。また、後述する低屈折率層に存在する水溶性バインダー樹脂も、ポリビニルアルコールであることが好ましい。従って、以下においては、高屈折率層及び低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールを併せて説明する。
[0188]
 〈ポリビニルアルコール〉
 本発明において、高屈折率層と低屈折率層とは、ケン化度の異なる2種以上のポリビニルアルコールを含むことが好ましい。ここで、区別するために、高屈折率層で用いる水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(A)とし、低屈折率層で用いる水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(B)という。なお、各屈折率層が、ケン化度や重合度が異なる複数のポリビニルアルコールを含む場合には、各屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコールをそれぞれ高屈折率層におけるポリビニルアルコール(A)、及び低屈折率層におけるポリビニルアルコール(B)と称する。
[0189]
 本発明でいう「ケン化度」とは、ポリビニルアルコール中のアセチルオキシ基(原料の酢酸ビニル由来のもの)とヒドロキシ基との合計数に対するヒドロキシ基の割合のことである。
[0190]
 また、ここでいう「屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコール」という際には、ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールであるとし、重合度を算出する。ただし、重合度1000以下の低重合度ポリビニルアルコールは、異なるポリビニルアルコールとする(仮にケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールがあったとしても同一のポリビニルアルコールとはしない)。具体的には、ケン化度が90mol%、ケン化度が91mol%、ケン化度が93mol%のポリビニルアルコールが同一層内にそれぞれ10質量%、40質量%、50質量%含まれる場合には、これら三つのポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールとし、これら三つの混合物をポリビニルアルコール(A)又は(B)とする。また、上記「ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール」とは、いずれかのポリビニルアルコールに着目した場合に3mol%以内であれば足り、例えば、90mol%、91mol%、92mol%、94mol%のポリビニルアルコールを含む場合には、91mol%のポリビニルアルコールに着目した場合に、いずれのポリビニルアルコールのケン化度の差も3mol%以内なので、同一のポリビニルアルコールとなる。
[0191]
 同一層内にケン化度が3mol%以上異なるポリビニルアルコールが含まれる場合、異なるポリビニルアルコールの混合物とみなし、それぞれに重合度とケン化度を算出する。例えば、PVA203:5質量%、PVA117:25質量%、PVA217:10質量%、PVA220:10質量%、PVA224:10質量%、PVA235:20質量%、PVA245:20質量%が含まれる場合、最も含有量の多いPVA(ポリビニルアルコール)は、PVA217~245の混合物であり(PVA217~245のケン化度の差は3mol%以内なので同一のポリビニルアルコールである)、この混合物がポリビニルアルコール(A)又は(B)となる。そうして、PVA217~245の混合物(ポリビニルアルコール(A)又は(B))において、重合度が、(1700×0.1+2000×0.1+2400×0.1+3500×0.2+4500×0.7)/0.7=3200であり、ケン化度は、88mol%となる。
[0192]
 ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の絶対値の差は、3mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましい。このような範囲であれば、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態が好ましいレベルになるため好ましい。また、ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の差は、離れていれば離れているほど好ましいが、ポリビニルアルコールの水への溶解性の観点から、20mol%以下であることが好ましい。
[0193]
 また、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のケン化度は、水への溶解性の観点で、75mol%以上であることが好ましい。さらに、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のうち一方がケン化度90mol%以上であり、他方が90mol%以下であることが、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態を好ましいレベルにするために好ましい。ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のうち一方が、ケン化度95mol%以上であり、他方が90mol%以下であることがより好ましい。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
[0194]
 また、ケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールの重合度は、1000以上のものが好ましく用いられ、特に、重合度が1500~5000の範囲内のものがより好ましく、2000~5000の範囲内のものがさらに好ましく用いられる。ポリビニルアルコールの重合度が、1000以上であると塗布膜のひび割れがなく、5000以下であると塗布液が安定するからである。なお、本明細書において、「塗布液が安定する」とは、塗布液が経時的に安定することを意味する。ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の少なくとも一方の重合度が2000~5000の範囲内であると、塗膜のひび割れが減少し、特定の波長の反射率が向上するため好ましい。ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の双方が、2000~5000であると上記効果はより顕著に発揮できるため好ましい。
[0195]
 本明細書でいう「重合度P」とは、粘度平均重合度を指し、JIS K 6726(1994)に準じて測定され、PVAを完全に再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から、下式(1)により求められるものである。
[0196]
 式(1)
   P=(〔η〕×10 /8.29) (1/0.62)
 低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(B)は、ケン化度が75~90mol%の範囲内で、かつ重合度が2000~5000の範囲内であることが好ましい。このような特性を備えたポリビニルアルコールを低屈折率層に含有させると、界面混合がより抑制される点で好ましい。これは塗膜のひび割れが少なく、かつセット性が向上するためであると考えられる。
[0197]
 本発明で用いられるポリビニルアルコール(A)及び(B)は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。ポリビニルアルコール(A)及び(B)として用いられる市販品の例としては、例えば、PVA-102、PVA-103、PVA-105、PVA-110、PVA-117、PVA-120、PVA-124、PVA-203、PVA-205、PVA-210、PVA-217、PVA-220、PVA-224、PVA-235(以上、株式会社クラレ製)、JC-25、JC-33、JF-03、JF-04、JF-05、JP-03、JP-04JP-05、JP-45(以上、日本酢ビ・ポバール株式会社製)等が挙げられる。
[0198]
 本発明に係る第1の水溶性バインダー樹脂は、本発明の効果を損なわない限りでは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、一部が変性された変性ポリビニルアルコールを含んでもよい。このような変性ポリビニルアルコールを含むと、膜の密着性や耐水性、柔軟性が改良される場合がある。このような変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
[0199]
 カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61-10483号公報に記載されているような、第一~三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
[0200]
 カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル-(2-アクリルアミド-2,2-ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル-(3-アクリルアミド-3,3-ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N-ビニルイミダゾール、N-ビニル-2-メチルイミダゾール、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル-(2-メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N-(1,1-ジメチル-3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1~10モル%、好ましくは0.2~5モル%である。
[0201]
 アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1-206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61-237681号公報及び同63-307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7-285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
[0202]
 また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7-9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキシド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8-25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシ基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
[0203]
 また、ビニルアルコール系ポリマーとして、エクセバール(登録商標、株式会社クラレ製)やニチゴGポリマー(登録商標、日本合成化学工業株式会社製)などが挙げられる。
[0204]
 変性ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することができる。
[0205]
 変性ポリビニルアルコールの含有量は、特に限定されるものではないが、各屈折率の全質量(固形分)に対し、好ましくは1~30質量%の範囲内である。このような範囲内であれば、上記効果がより発揮される。
[0206]
 本発明においては、屈折率の異なる層間ではケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールがそれぞれ用いられることが好ましい。
[0207]
 例えば、高屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましく、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。また、高屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましく、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量以下がより好ましい。含有量が40質量%以上であると、層間混合が抑制され、界面の乱れが小さくなるという効果が顕著に現れる。一方、含有量が100質量%以下であれば、塗布液の安定性が向上する。
[0208]
 (その他のバインダー樹脂)
 本発明において、高屈折率層では、ポリビニルアルコール以外の第1の水溶性バインダー樹脂としては、第1の金属酸化物粒子を含有した高屈折率層が塗膜を形成することができれば、いかなるものでも制限なく使用可能である。また、後述する低屈折率層においても、ポリビニルアルコール(B)以外の第2の水溶性バインダー樹脂としては、前記と同様に、第2の金属酸化物粒子を含有した低屈折率層が塗膜を形成することができれば、どのようなものでも制限なく使用可能である。ただし、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子(特にゼラチン、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー)が好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
[0209]
 高屈折率層において、水溶性バインダー樹脂として好ましく用いられるポリビニルアルコールとともに、併用する他のバインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、5~50質量%の範囲内で用いることもできる。
[0210]
 本発明においては、有機溶媒を用いる必要がなく、環境保全上好ましいことから、バインダー樹脂は水溶性高分子から構成されることが好ましい。すなわち、本発明ではその効果を損なわない限りにおいて、上記ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールに加えて、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子をバインダー樹脂として用いてもよい。前記水溶性高分子とは、該水溶性高分子が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルター(最大細孔40~50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性高分子の50質量%以内であるものをいう。そのような水溶性高分子の中でも特にゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、又は反応性官能基を有するポリマーが好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
[0211]
 (第1の金属酸化物粒子)
 本発明において、高屈折率層に適用可能な第1の金属酸化物粒子としては、屈折率が2.0以上、3.0以下である金属酸化物粒子が好ましい。さらに具体的には、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第2鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。また複数の金属で構成された複合酸化物粒子やコア・シェル状に金属構成が変化するコア・シェル粒子等を用いることもできる。
[0212]
 透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層には、チタン、ジルコニウム等の高屈折率を有する金属の酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子又は酸化ジルコニア微粒子の少なくともいずれかを含有させることが好ましい。これらの中でも、高屈折率層を形成するための塗布液の安定性の観点から、酸化チタンがより好ましい。また、酸化チタンの中でも、特にアナターゼ型よりルチル型(正方晶形)の方が、触媒活性が低いために、高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高くなることからより好ましい。
[0213]
 また、高屈折率層に、第1の金属酸化物粒子としてコア・シェル粒子を用いた場合では、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と第1の水溶性バインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と隣接層の層間混合が抑制される効果から、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコア・シェル粒子がさらに好ましい。
[0214]
 本発明に用いられるコア・シェル粒子のコアに用いられる酸化チタン粒子を含む水溶液は、25℃で測定したpHが1.0~3.0の範囲内であり、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルの表面を、疎水化して有機溶剤に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
[0215]
 本発明に係る第1の金属酸化物粒子の含有量が高屈折率層の固形分100質量%に対して、15~80質量%の範囲内であると、低屈折率層との屈折率差を付与するという観点で好ましい。さらに、20~77質量%の範囲内であることがより好ましく、30~75質量%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、当該コア・シェル粒子以外の金属酸化物粒子が、高屈折率層に含有される場合の含有量は、本発明の効果を奏することができる範囲であれば特に限定されるものではない。
[0216]
 本発明においては、高屈折率層に適用する第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1~30nmの範囲内であることがより好ましく、5~15nmの範囲内であるのがさらに好ましい。体積平均粒径が1~30nmの範囲内であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
[0217]
 なお、本発明に係る第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する粒子状の金属酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
[0218]
 さらに、本発明に係る第1の金属酸化物粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式(2)で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1~20%の範囲内である。
[0219]
 式(2)
   単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100(%)
 〈コア・シェル粒子〉
 本発明に係る高屈折率層に適用する第1の金属酸化物粒子としては、「含ケイ素の水和酸化物で表面処理された酸化チタン粒子」を用いることが好ましく、このような形態の酸化チタン粒子を「コア・シェル粒子」、あるいは「Si被覆TiO 」と称する場合もある。
[0220]
 本発明に用いられるコア・シェル粒子は、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されており、好ましくはコアの部分である平均粒径が1~30nmの範囲内、より好ましくは平均粒径が4~30nmの範囲内にある酸化チタン粒子の表面を、コアとなる酸化チタンに対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量がSiO として3~30質量%の範囲内となるように含ケイ素の水和酸化物からなるシェルが被覆した構造である。
[0221]
 すなわち、本発明では、コア・シェル粒子を含有させることで、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と第1の水溶性バインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制される効果、及びコアとして酸化チタンを用いる場合の酸化チタンの光触媒活性によるバインダーの劣化やチョーキングなどの問題を防げるという効果を奏する。
[0222]
 本発明において、コア・シェル粒子は、コアとなる酸化チタンに対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量がSiO として3~30質量%の範囲内であること好ましく、より好ましくは3~10質量%の範囲内であり、さらに好ましくは3~8質量%の範囲内である。被覆量が30質量%以下であれば、高屈折率層の高屈折率化を達成することができ、また、被覆量が3質量%以上であれば、コア・シェル粒子の粒子を安定に形成することができる。
[0223]
 さらに、本発明において、コア・シェル粒子の平均粒径は、好ましくは1~30nmの範囲内であり、より好ましくは5~20nmの範囲内であり、さらに好ましくは5~15nmの範囲内である。コア・シェル粒子の平均粒径が1~30nmの範囲内であれば、近赤外線反射率や、透明性、ヘイズといった光学特性がより向上させることができる。
[0224]
 なお、本発明でいう平均粒径とは、一次平均粒径をいい、透過型電子顕微鏡(TEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
[0225]
 また、電子顕微鏡から求める場合、一次粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
[0226]
 本発明に適用可能なコア・シェル粒子の製造方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、特開平10-158015号公報、特開2000-053421号公報、特開2000-063119号公報、特開2000-204301号公報、特許第4550753号公報などを参照することができる。
[0227]
 本発明において、コア・シェル粒子に適用する含ケイ素の水和酸化物とは、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物又は縮合物のいずれでもよく、本発明においては、シラノール基を有する化合物であることが好ましい。
[0228]
 本発明に係る高屈折率層には、コア・シェル粒子以外にも、その他の金属酸化物粒子が含まれていてもよい。その他の金属酸化物粒子を併用する場合には、上記説明したコア・シェル粒子が電荷的に凝集しないよう、各種のイオン性分散剤や保護剤を用いることができる。コア・シェル粒子以外に用いることのできる金属酸化物粒子は、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第2鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。
[0229]
 本発明に用いられるコア・シェル粒子は、コアである酸化チタン粒子の表面全体を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよく、また、コアである酸化チタン粒子の表面の一部を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよい。
[0230]
 (硬化剤)
 本発明においては、高屈折率層に適用する第1の水溶性バインダー樹脂を硬化させるため、硬化剤を使用することもできる。第1の水溶性バインダー樹脂と共に用いることができる硬化剤としては、当該水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば特に制限はない。例えば、第1の水溶性バインダー樹脂として、ポリビニルアルコールを用いる場合では、硬化剤として、ホウ酸及びその塩が好ましい。ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用でき、一般的には、ポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ジグリシジルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4-ジクロロ-4-ヒドロキシ-1,3,5,-s-トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5-トリスアクリロイル-ヘキサヒドロ-s-トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明ばん等が挙げられる。
[0231]
 ホウ酸及びその塩とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。
[0232]
 硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
[0233]
 ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
[0234]
 本発明では、ホウ酸及びその塩、又はホウ砂を用いることが本発明の効果を得るためにはより好ましい。ホウ酸及びその塩、又はホウ砂を用いた場合には、金属酸化物粒子と水溶性バインダー樹脂であるポリビニルアルコールのOH基と水素結合ネットワークがより形成しやすく、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい近赤外遮断特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層及び低屈折率層の多層重層を湿式コーターで塗布後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やした後、膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
[0235]
 高屈折率層における硬化剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、1~10質量%であることが好ましく、2~6質量%であることがより好ましい。
[0236]
 特に、第1の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1~600mgが好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100~600mgがより好ましい。
[0237]
 〔低屈折率層〕
 本発明に係る低屈折率層は、第2の水溶性バインダー樹脂及び第2の金属酸化物粒子を含み、更は、硬化剤、表面被覆成分、粒子表面保護剤、バインダー樹脂、界面活性剤、各種添加剤等を含んでもよい。
[0238]
 本発明に係る低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.10~1.60の範囲内であり、より好ましくは1.30~1.50である。
[0239]
 (第2の水溶性バインダー樹脂)
 本発明に係る低屈折率層に適用する第2の水溶性バインダー樹脂として、ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。さらに、前記高屈折率層に存在するポリビニルアルコール(A)のケン化度とは異なるポリビニルアルコール(B)が、本発明に係る低屈折率層に用いられることがより好ましい。なお、ここでの第2の水溶性バインダー樹脂の好ましい重量平均分子量等、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)についての説明は、上記高屈折率層の水溶性バインダー樹脂にて説明されており、ここでは説明を省略する。
[0240]
 低屈折率層における第2の水溶性バインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、20~99.9質量%の範囲内であることが好ましく、25~80質量%の範囲内であることがより好ましい。
[0241]
 本発明に係る低屈折率層において適用が可能な、ポリビニルアルコール以外の水溶性バインダー樹脂としては、第2の金属酸化物粒子を含有した低屈折率層が塗膜を形成することができればどのようなものでも制限なく使用可能である。ただし、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子(特にゼラチン、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー)が好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
[0242]
 低屈折率層において、第2の水溶性バインダー樹脂として好ましく用いられるポリビニルアルコールとともに、併用する他のバインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0~10質量%の範囲内で用いることもできる。
[0243]
 本発明に係る低屈折率層において、セルロース類、増粘多糖類及び反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子を含有することもできる。これらセルロース類、増粘多糖類及び反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子は、上述した高屈折率層で説明した水溶性高分子と同様のものが用いられるため、ここでは説明を省略する。
[0244]
 (第2の金属酸化物粒子)
 本発明に係る低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子としては、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましく、具体的な例として合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカゾルを用いることがさらに好ましい。また、屈折率をより低減させるためには、低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いることができ、特にシリカ(二酸化ケイ素)の中空微粒子が好ましい。
[0245]
 低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3~100nmの範囲内であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3~50nmの範囲内であることがより好ましく、3~40nmの範囲内であることがさらに好ましく、3~20nmであることが特に好ましく、4~10nmの範囲内であることが最も好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
[0246]
 低屈折率層に適用する金属酸化物粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
[0247]
 本発明で用いられるコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、例えば、特開昭57-14091号公報、特開昭60-219083号公報、特開昭60-219084号公報、特開昭61-20792号公報、特開昭61-188183号公報、特開昭63-17807号公報、特開平4-93284号公報、特開平5-278324号公報、特開平6-92011号公報、特開平6-183134号公報、特開平6-297830号公報、特開平7-81214号公報、特開平7-101142号公報、特開平7-179029号公報、特開平7-137431号公報、及び国際公開第94/26530号などに記載されているものである。
[0248]
 このようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、Mg又はBa等で処理された物であってもよい。
[0249]
 低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子として、中空粒子を用いることもできる。中空粒子を用いる場合には、平均粒子空孔径が、3~70nmの範囲内であるのが好ましく、5~50nmの範囲内がより好ましく、5~45nmの範囲内がさらに好ましい。なお、中空粒子の平均粒子空孔径とは、中空粒子の内径の平均値である。本発明において、中空粒子の平均粒子空孔径は、上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化される。平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形又は実質的に円形は楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、平均粒子空孔径としては、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
[0250]
 本発明に係る第2の金属酸化物粒子は、表面被覆成分により表面コーティングされていてもよい。特に、本発明に係る第1の金属酸化物粒子としてコア・シェル状ではない金属酸化物粒子を用いる際に、第2の金属酸化物粒子の表面をポリ塩化アルミニウムなどの表面被覆成分によりコーティングすると、第1の金属酸化物粒子と凝集しにくくなる。
[0251]
 低屈折率層における第2の金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0.1~70質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、45~65質量%であることがさらに好ましい。
[0252]
 (硬化剤)
 本発明に係る低屈折率層において、前記高屈折率層と同様に、硬化剤をさらに含むことができる。低屈折率層に含まれる第2の水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば、特に制限されない。特に、低屈折率層に適用する第2の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを用いた場合の硬化剤としては、ホウ酸及びその塩、又はホウ砂の少なくともいずれかが好ましい。また、ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用できる。
[0253]
 低屈折率層における硬化剤の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、1~10質量%の範囲内であることが好ましく、2~6質量%の範囲内であることがより好ましい。
[0254]
 特に、第2の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1~600mgの範囲内が好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100~600mgの範囲内がより好ましい。
[0255]
 また、硬化剤の具体例などは、上述した高屈折率層と同様であるため、ここでは説明を省略する。
[0256]
 〔各屈折率層のその他の添加剤〕
 本発明に係る高屈折率層及び低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を用いることができる。また、高屈折率層における添加剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、0~20質量%であることが好ましい。当該添加剤の例を以下に記載する。
[0257]
 (界面活性剤)
 本発明においては、高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、さらに界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、両性イオン系、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれの種類も使用することができる。より好ましくは、ベタイン系両性イオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩系アニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、又はフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
[0258]
 本発明に用いられる界面活性剤の添加量としては、高屈折率層用塗布液又は低屈折率層用塗布液の全質量を100質量%としたとき、0.005~0.30質量%の範囲内であることが好ましく、0.01~0.10質量%の範囲内であることがより好ましい。
[0259]
 (アミノ酸)
 本発明において、高屈折率層又は低屈折率層は、等電点が6.5以下のアミノ酸を含有していてもよい。アミノ酸を含むことにより、高屈折率層又は低屈折率層中の金属酸化物粒子の分散性が向上しうる。
[0260]
 ここで、アミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシ基とを有する化合物であり、α-、β-、γ-などいずれのタイプのアミノ酸でもよい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体でも使用することができる。
[0261]
 アミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁~270頁の記載を参照することができる。
[0262]
 具体的に好ましいアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、等を挙げることができ、特にグリシン、セリンが好ましい。
[0263]
 アミノ酸の等電点とは、アミノ酸は特定のpHにおいて分子内の正・負電荷が釣り合い、全体としての電荷が0となるので、このpH値をいう。各アミノ酸の等電点については、低イオン強度での等電点電気泳動で求めることができる。
[0264]
 (エマルジョン樹脂)
 本発明に係る高屈折率層又は低屈折率層は、エマルジョン樹脂をさらに含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなりガラスへの貼りつけ等の加工性がよくなる。
[0265]
 エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01~2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、ヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。ヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いて乳化重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面にヒドロキシ基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
[0266]
 ヒドロキシ基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖又は末端にヒドロキシ基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2-エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテルなどが挙げられる。
[0267]
 (リチウム化合物)
 本発明においては、高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、さらにリチウム化合物を含有してもよい。該リチウム化合物を含む高屈折率層用塗布液又は低屈折率層用塗布液は粘度の制御がより容易となり、その結果、ガラスに本発明の光学フィルムを加える際の製造安定性がより向上する。
[0268]
 本発明に適用可能なリチウム化合物としては、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF 、LiClO 、LiPF 、LiCF SO 等が挙げられる。これらリチウム化合物は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
[0269]
 これらの中でも、水酸化リチウムが本願発明の効果を十分に発揮できる観点から好ましい。
[0270]
 リチウム化合物の添加量は、屈折率層中に存在する金属酸化物粒子1g当たり、0.005~0.05gの範囲が好ましく、より好ましくは0.01~0.03gである。
[0271]
 (その他の添加剤)
 本発明に係る高屈折率層及び低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57-74193号公報、特開昭57-87988号公報、及び特開昭62-261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57-74192号、特開昭57-87989号公報、特開昭60-72785号公報、特開昭61-146591号公報、特開平1-95091号公報、及び特開平3-13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59-42993号公報、特開昭59-52689号公報、特開昭62-280069号公報、特開昭61-242871号公報、及び特開平4-219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
[0272]
 〔多層膜による光学反射層の形成方法〕
 本発明に用いられる多層膜による光学反射層(光学反射層群ともいう。)の形成方法は、湿式塗布方式を適用して形成することが好ましく、更には、本発明に係る支持体上に、第1の水溶性バインダー樹脂及び第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層用塗布液と、第2の水溶性バインダー樹脂及び第2の金属酸化物粒子を含む低屈折率層用塗布液と、を湿式塗布する工程を含む製造方法が好ましい。
[0273]
 湿式塗布方法は、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、又は米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。また、複数の層を重層塗布する方式としては、逐次重層塗布方式でもよいし、同時重層塗布方式でもよい。
[0274]
 以下、本発明に用いられる好ましい製造方法(塗布方法)であるスライドホッパー塗布法による同時重層塗布について詳細に説明する。
[0275]
 (溶媒)
 高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液を調製するために適用可能な溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、又はその混合溶媒が好ましい。
[0276]
 有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
[0277]
 環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、又は水とメタノール、エタノール、若しくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましい。
[0278]
 (塗布液の濃度)
 高屈折率層用塗布液中の水溶性バインダー樹脂の濃度は、1~10質量%の範囲内であることが好ましい。また、高屈折率層用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1~50質量%の範囲内であることが好ましい。
[0279]
 低屈折率層用塗布液中の水溶性バインダー樹脂の濃度は、1~10質量%の範囲内であることが好ましい。また、低屈折率層用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1~50質量%の範囲内であることが好ましい。
[0280]
 (塗布液の調製方法)
 高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、水溶性バインダー樹脂、金属酸化物粒子、及び必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、撹拌混合する方法が挙げられる。この際、水溶性バインダー樹脂、金属酸化物粒子、及び必要に応じて用いられるその他の添加剤の添加順も特に制限されず、撹拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、撹拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調製される。
[0281]
 本発明においては、コア・シェル粒子を添加、分散して調製した水系の高屈折率層塗布液を用いて、高屈折率層を形成することが好ましい。このとき、前記コア・シェル粒子としては、25℃で測定したpHが5.0~7.5の範囲内で、かつ粒子のゼータ電位が負であるゾルとして、高屈折率層塗布液に添加して調製することが好ましい。
[0282]
 (塗布液の粘度)
 スライドホッパー塗布法により同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液の40~45℃における粘度は、5~150mPa・sの範囲内が好ましく、10~100mPa・sの範囲内がより好ましい。また、スライド型カーテン塗布法により同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液の40~45℃における粘度は、5~1200mPa・sの範囲内が好ましく、25~500mPa・s内の範囲内がより好ましい。
[0283]
 また、高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液の15℃における粘度は、100mPa・s以上が好ましく、100~30000mPa・sの範囲内がより好ましく、3000~30000mPa・sの範囲内がさらに好ましく、10000~30000mPa・sの範囲内が特に好ましい。
[0284]
 (塗布及び乾燥方法)
 塗布及び乾燥方法は、特に制限されないが、高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液を30℃以上に加温して、基材上に高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは1~15℃に一旦冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5~50℃、膜面温度10~50℃の範囲の条件である。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
[0285]
 高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液の塗布厚は、上記で示したような好ましい乾燥時の厚さとなるように塗布すればよい。
[0286]
 ここで、前記セットとは、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め各層間及び各層内の物質の流動性を低下させる工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義する。
[0287]
 塗布した後、冷風を当ててからセットが完了するまでの時間(セット時間)は、5分以内であることが好ましく、2分以内であることが好ましい。また、下限の時間は特に制限されないが、45秒以上の時間をとることが好ましい。セット時間が短すぎると、層中の成分の混合が不十分となるところがある。一方、セット時間が長すぎると、金属酸化物粒子の層間拡散が進み、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となるところがある。なお、高屈折率層と低屈折率層との間の熱線遮断フィルムユニットの高弾性化が素早く起こるのであれば、セットさせる工程は設けなくてもよい。
[0288]
 セット時間の調整は、水溶性バインダー樹脂の濃度や金属酸化物粒子の濃度を調整し、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ゲランガム等の各種公知のゲル化剤など、他の成分を添加することにより調整することができる。
[0289]
 冷風の温度は、0~25℃であることが好ましく、5~10℃であることがより好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗膜の搬送速度にもよるが、10~120秒であることが好ましい。
[0290]
 図2は、多層膜による光学反射層を有する本発明の光学フィルムの一例であり、支持体の一方の面側に光学反射層群を有する反射層ユニットを備えた構成を示す概略断面図である。
[0291]
 図2において、本発明の光学フィルム10は、反射層ユニットUを有する。さらに、反射層ユニットUは、支持体11上に、一例として、第1の水溶性バインダー樹脂と第1の金属酸化物粒子を含有する高屈折率の光学反射層と、第2の水溶性バインダー樹脂と第2の金属酸化物粒子を含有する低屈折率の光学反射層とを交互に積層した光学反射層群MLを有している。光学反射層群MLは、光学反射層T ~T のn層で構成され、例えば、T 、T 、T 、(中略)、T n-2、T を屈折率が1.10~1.60の範囲内にある低屈折率層で構成し、T 、T 、T 、(中略)、T n-1を屈折率が1.80~2.50の範囲内にある高屈折率層とする構成が一例として挙げられる。本発明でいう屈折率とは、25℃の環境下で測定した値である。
[0292]
 また、図示していないが、反射層ユニットの最外層上には、耐傷性を向上するためのハードコート層を設けることが好ましく、支持体の反射層ユニットを設けていない面には支持体を他の基材に貼合する粘着層を設けることも好ましい。
[0293]
 図3は、多層膜による光学反射層を有する本発明の光学フィルムの別の構成で、支持体の両面に、光学反射層群を有する反射層ユニットを設けた構成を示す概略断面図である。
[0294]
 (2)染料や顔料によって特定の波長を吸収する光学機能層
 染料や顔料によって特定の波長を吸収する光学機能層として、赤外線吸収層を例にして説明する。
[0295]
 赤外線吸収層に含まれる材料としては、特に制限されないが、例えば、バインダー成分である紫外線硬化樹脂、光重合開始剤、赤外線吸収剤などが挙げられる。赤外線吸収層は、含まれるバインダー成分が硬化していることが好ましい。ここで、硬化とは、紫外線などの活性エネルギー線や熱などにより反応が進み硬化することを指す。
[0296]
 紫外線硬化樹脂は、他の樹脂よりも硬度や平滑性に優れ、さらにはITO、ATOや熱伝導性の金属酸化物の分散性の観点からも有利である。紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な層を形成する物であれば特に制限なく使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂等が挙げられる。より好ましくは、硬度、平滑性、透明性の観点からアクリル樹脂である。
[0297]
 前記アクリル樹脂は、硬度、平滑性、透明性の観点から、国際公開2008/035669号に記載されているような、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むことが好ましい。ここで、光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また、紫外線硬化樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する有機化合物を含むものであってもよい。また重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。ここで、反応性シリカ粒子の平均粒子径は、0.001~0.1μmであることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、透明性、平滑性、硬度をバランスよく満たすことができる。
[0298]
 また、前記アクリル樹脂は、屈折率を調整するという観点から、フッ素を含むことが好ましい。すなわち、赤外線吸収層はフッ素を含むことが好ましい。このようなアクリル樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーに由来する構成単位を含むアクリル樹脂が挙げられる。含フッ素ビニルモノマーとしては、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学工業株式会社製)やR-2020(商品名、ダイキン工業株式会社製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。
[0299]
 光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、単独でも又は2種以上の組み合わせでも使用することができる。
[0300]
 赤外線吸収層に含まれうる無機赤外線吸収剤としては、可視光線透過率、赤外線吸収性、樹脂中への分散適性等の観点から、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモン酸亜鉛、6ホウ化ランタン(LaB )、セシウム含有酸化タングステン(Cs 0.33WO )等が好ましい。これらは単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。無機赤外線吸収剤の平均粒径は、5~100nmが好ましく、10~50nmがより好ましい。5nm未満であると樹脂中の分散性や、赤外線吸収性が低下するところがある。一方、100nmより大きいと、可視光線透過率が低下するところがある。なお、平均粒径の測定は、透過型電子顕微鏡により撮像し、無作為に、例えば50個の粒子を抽出して該粒径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
[0301]
 前記無機赤外線吸収剤の赤外線吸収層における含有量は、赤外線吸収層の全質量に対して1~80質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましい。含有量が1%以上であれば、十分な赤外線吸収効果が現れ、80%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
[0302]
 また、有機物の赤外線吸収材料としては、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物などが挙げられる。金属錯体系化合物、アミニウム系化合物(アミニウム誘導体)、フタロシアニン系化合物(フタロシアニン誘導体)、ナフタロシアニン系化合物(ナフタロシアニン誘導体)、ジイモニウム系化合物(ジイモニウム誘導体)、スクワリウム系化合物(スクワリウム誘導体)等が特に好ましく用いられる。
[0303]
 赤外線吸収層においては、本発明の効果を奏する範囲内で、上記以外の金属酸化物や、有機系赤外線吸収剤、金属錯体等の他の赤外線吸収剤を含んでもよい。このような他の赤外線吸収剤の具体例としては、例えば、ジイモニウム系化合物、アルミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物等が挙げられる。
[0304]
 赤外線吸収層の厚さは0.1~50μmの範囲が好ましく、1~20μmの範囲がより好ましい。0.1μm以上であれば赤外線吸収能力が向上する傾向にあり、一方、50μm以下であれば塗膜の耐クラック性が向上する。
[0305]
 該赤外線吸収層の形成方法は特に制限されず、例えば、上記各成分を含む赤外線吸収層用塗布液を調製した後、ワイヤーバー等を用いて塗布液を塗布し、乾燥することにより形成する方法等が挙げられる。
[0306]
 (3)金属薄膜を設けて赤外光を反射する光学機能層
 次に、本発明に用いられる光学反射層は、金属薄膜を設けて赤外光を反射する方法を採用することも好ましい。
[0307]
 当該金属薄膜は、金属層、又は金属層と金属酸化物層若しくは金属窒化物層の少なくともいずれかとからなることが好ましい。金属を含有する金属層で赤外線反射機能を発現し、さらに、必須ではないが、金属酸化物層又は金属窒化物層の少なくともいずれかを併用することにより、可視光透過率を上昇させることができる。
[0308]
 本発明で用いる金属層については、赤外線反射性能に優れる銀を主成分とし、少なくとも金又はパラジウムの少なくともいずれかを、金原子及びパラジウム原子の合計として2~5質量%含むことが好ましい。これら金属の含有量が上記範囲内であれば、硫化による銀の腐食、亀裂を抑制する効果を発現し、かつコストと当該改善効果のバランスの観点で有利である。さらに、金、パラジウムは、銀と比較して可視光の吸収が大きく、添加量が上がるに従い積層フィルムとしての可視光透過性能が低下するため好ましくない。金とパラジウムの比率については、金のみ、あるいはパラジウムのみを添加しても良いし、2~5質量%の範囲でこれらを併用しても良い。金属層は上述した比率で金、パラジウムを添加した銀合金1層でも良いし、金、パラジウムの比率が異なる銀合金を2層以上積層した多層構成としても良い。金属層の総厚さについては、特に制限はないが、必要とする赤外線反射性能と可視光透過性能を考慮し、5~20nmの範囲で適宜選択することが好ましい。厚さが薄いと透明性に優れるが、赤外線反射性能が低下してしまう。逆に厚すぎると透明性が低下し、金属の使用量が増加し経済的にも好ましくない。
[0309]
 上述した金属層の金属組成は、ICP発光、XPS、XRFなど既知の分析方法を用いて定量することができる。例えば、ICP発光分析を用いれば、金属層の上にハードコート層などの保護層を設けた場合においても、各金属の組成を正確に分析することができ好ましい。
[0310]
 本発明に用いられる光学反射層には、上述した金属層の上に金属酸化物層又は金属窒化物層の少なくともいずれかを積層したり、金属層を金属酸化物層又は金属窒化物層の少なくともいずれかでサンドイッチした構成であっても良い。本構成を採用することで、銀を含む金属層とハードコート層、若しくは、銀を含む金属層と基材の界面反射を抑制することができ、可視光透過率を向上させることが可能となる。つまり、銀単体の屈折率が0.3以下と低く、他の層との間で界面反射がおこり、可視光透過性能が低下するのに対し、屈折率が1.5~3程度の金属酸化物、金属窒化物を積層した構成とすることにより、可視光線の界面反射を低減することができるためである。これら物質としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)などの金属酸化物、窒化ケイ素などの金属窒化物を挙げることができ、適宜選択して用いることができる。層の厚さについては、10~100nmであることが好ましく、さらに好ましくは30~60nmである。厚さが薄い場合、可視光透過性能の大幅な向上は見られない。逆に厚く積層しても可視光透過性能の更なる向上は得られないばかりか、経済的に劣り好ましくない。これら金属酸化物(あるいは金属窒化物)については、金属層と併せて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など公知の技術を用い形成することができる。
[0311]
 〈粘着層〉
 粘着層は本発明の光学フィルムと他の基材等に粘着させるための層である。本発明の光学フィルムをウインドウフィルムとして用いる場合には、窓ガラスに粘着させるための層である。
[0312]
 粘着層に用いる粘着剤はゴム系、アクリル系、シリコン系、ウレタン系等の粘着剤から選ばれる。経時での黄変がないことでアクリル系、シリコン系が好ましく、汎用離型シートが使用できる点でアクリル系がもっとも好ましい。また粘着層の厚さは5μm~30μmの範囲が好ましい。5μm以上あれば粘着性が安定し、30μm以下の場合粘着剤がフィルムのわきからはみ出すことがなく取扱いやすい。
[0313]
 粘着層に貼り合わせるセパレーター(剥離シート)の種類については、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、紙等の基材にシリコンコート、ポリアルキレンコート、フッ素樹脂コートしたものが使用できるが、寸法安定性、平滑性、剥離安定性の点からポリエステルフィルムにシリコンコートしたものが特に好ましい。またセパレーターの厚さは10~100μmの範囲が好ましく、更に好ましくは20~60μmである。10μm以上あれば塗布、乾燥時の熱によりフィルムに搬送じわが生じることがないため好ましい。また、100μm以下であれば経済性の観点から好ましい。
[0314]
 〈接着層〉
 接着層は、層同士の接着性を高める機能があるものであれば特に限定はない。接着であっても粘着であってもよい。好ましくは、アクリル層と樹脂コート層とを接着させる層である。接着層は、透明性や層同士を密着する密着性、使用環境下での温度や湿度において変色や剥離を起こさない耐湿熱性、耐光性が要求される。
[0315]
 接着層は、1層のみからなっていてもよいし、複数層からなっていてもよい。接着層の厚さは、密着性、平滑性、反射材の反射率等の観点から、1~10μmが好ましく、より好ましくは3~8μmである。
[0316]
 接着層が樹脂である場合、樹脂として、上記の透明性、密着性、耐湿熱性、耐光性を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独又はこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂又はポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにアクリル系樹脂にイソシアネートを混合させるような、イソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。接着層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
[0317]
 また、接着層が金属酸化物である場合、例えば酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化ランタン、窒化ランタン等、各種真空製膜法により製膜することができる。例えば、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法などがある。
[0318]
 〈ハードコート層〉
 本発明に係るハードコート層(HC層ともいう。)のハードコート材としては、ポリシロキサンに代表される無機系材料、活性エネルギー線硬化樹脂等を使用することができる。無機系材料は湿気硬化(常温~加温)が必要であり、硬化温度、硬化時間、コストの観点から本発明では活性エネルギー線硬化樹脂を使用することが好ましい。活性エネルギー線樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
[0319]
 紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。
[0320]
 例えば、特開昭59-151110号に記載の、ユニディック17-806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステル末端のヒドロキシ基やカルボキシ基に2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59-151112号公報)。紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂の末端のヒドロキシ基にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
[0321]
 〈他の機能層〉
 本発明の光学フィルムは、支持体上に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層等を設けてもよい。
[0322]
 <用途>
 本発明の光学フィルムは、巻癖回復性と引裂強度に優れた光学フィルムであり、従来セルロースエステルフィルムでは、強度が十分でなく使用が困難であった用途、あるいはPETフィルムでは巻癖が強く使用が困難であった用途に適しており、ウインドウフィルムに好適に使用できる。その他、太陽光反射ミラーなどにおいても、同様に霧吹きをかけることで巻癖がとれて、貼り合わせ加工が容易になり、好適に使用することができる。
実施例
[0323]
 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
[0324]
 <支持体1(PET支持体;比較例)の作製>
 市販のポリエチレンテレフタレート(PET、固有粘度0.65)のペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて280℃でTダイから層状に溶融押出し、冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ3層構成の積層未延伸シートを得た。この未延伸シートを、ロール式縦延伸機を用いて90℃で縦方向に3.5倍延伸した。
[0325]
 得られた1軸延伸フィルムを、テンター式横延伸機を用いて、第1延伸ゾーン100℃で総横延伸倍率の50%延伸し、更に第2延伸ゾーン120℃で総横延伸倍率3.6倍となるように延伸した。次いで100℃で2秒間熱処理し、更に第1熱固定ゾーン170℃で5秒間熱固定し、第2熱固定ゾーン210℃で15秒間熱固定した。次いで横方向に5%弛緩処理しながら室温まで30秒かけて徐冷して厚さ50μmの支持体1(2軸延伸積層ポリエステル(PET:ポリエチレンテレフタレート))を作製した。
[0326]
 <支持体2(積層変性PET支持体;比較例)の作製>
 テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール64質量部に酢酸カルシウム水和物0.1質量部を添加し、常法によりエステル交換を行った。得られた生成物に5-ナトリウムスルホ-ジ(β-ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)29質量部(5.2モル%/全酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)9.8質量部(7.8質量%/ポリマー)、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.13質量部を添加した。次いで徐々に昇温、減圧にし、280℃、0.5mmHgで重合を行い、共重合ポリエステルA(固有粘度0.59)を得た。共重合ポリエステルA/PET=25質量部/75質量部の割合になるようにタンブラー型混合機でブレンドし、ポリエステルBを得た。
[0327]
 得られたポリエステルAとポリエステルBを用いて、各々150℃で8時間真空乾燥した後、3台の押出機を用いて280℃で溶融押出し、Tダイ内で層状に接合し、冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ3層構成の積層未延伸シートを得た。
[0328]
 このときポリエステルAが両外層、ポリエステルBが中間層であり、各層の厚さの比が1:2:1となるように各押出機の押出し量を調整した。この未延伸シートを、ロール式縦延伸機を用いて90℃で縦方向に3.5倍延伸した。
[0329]
 得られた1軸延伸フィルムを、テンター式横延伸機を用いて、第1延伸ゾーン100℃で総横延伸倍率の50%延伸し、更に第2延伸ゾーン120℃で総横延伸倍率3.6倍となるように延伸した。次いで100℃で2秒間熱処理し、更に第1熱固定ゾーン170℃で5秒間熱固定し、第2熱固定ゾーン210℃で15秒間熱固定した。次いで横方向に5%弛緩処理しながら室温まで30秒かけて徐冷して厚さ120μm(各層の膜厚12.5μm/25μm/12.5μm)の支持体2(2軸延伸積層変性PET支持体(表1では変性PETと略記した。))を作製した。
[0330]
 <支持体3(TAC支持体;比較例)の作製>
 下記成分を、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散させて、微粒子分散液を調製した。
[0331]
 (微粒子分散液)
 微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製)
                            11質量部
 エタノール                      89質量部
 下記微粒子添加液の成分のうち、メチレンクロライドを溶解タンクに投入し、調製した微粒子分散液を下記の添加量で、十分撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで、微粒子の二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散させた後、ファインメットNF(日本精線(株)製)で濾過して、微粒子添加液を得た。
[0332]
 (微粒子添加液)
 メチレンクロライド                  99質量部
 微粒子分散液                      5質量部
 下記主ドープの成分のうち、メチレンクロライドとエタノールを加圧溶解タンクに投入した。次いで、セルローストリアセテート、チヌビン928、及び調製した微粒子添加液を撹拌しながら投入し、加熱、撹拌して完全に溶解させた。得られた溶液を、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。
[0333]
 (主ドープの組成)
 メチレンクロライド                 520質量部
 エタノール                      45質量部
 セルローストリアセテート(TAC:リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=150000、Mw=300000)
                           100質量部
 微粒子添加液                      1質量部
 次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.15倍、MD方向(フィルムの長手方向)の延伸倍率は1.01倍で延伸しながら、160℃の乾燥温度で乾燥させた。乾燥を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.33m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻取り、膜厚50μmの比較となる支持体3を作製した。
[0334]
 <支持体4(本発明)の作製>
 支持体3の作製において、ドープ組成物に第2のポリマー成分としてポリメチルメタクリレート(PMMA、Mw;10万)を30質量部添加した以外は支持体3の作製と同様にして本発明となる支持体4を作製した。
[0335]
 <支持体5(本発明)の作製>
 支持体3の作製において、ドープ組成物に第2のポリマー成分としてポリエチレングリコール(PEG、Mw;3000)を30質量部添加した以外は支持体3の作製と同様にして本発明となる支持体5を作製した。
[0336]
 <支持体6~39の作製>
 以下、同様にして、支持体3の作製において、表1のようにセルロース成分(第1のポリマー成分)と第2のポリマー成分と添加量を変更して支持体6~39を作製した。
[0337]
 なお、表中の第1のポリマー成分の欄に記載のDAC、CAP1及びCAP2は、それぞれ以下のセルロースエステルを表し、支持体の作製に当たっては、TACの代わりにそれぞれDAC、CAP1及びCAP2を用いて各支持体を作製した。
[0338]
 DAC:アセチル基置換度2.42、Mn=55000、Mw=165000のセルロースジアセテート
 CAP1:アセチル基置換度1.68、プロピオニル基置換度0.9、総アシル基置換度2.58のセルロースアセテートプロピオネート(重量平均分子量200000)
 CAP2:セルロースアセテートプロピオネート(製品名CAP482-20、イーストマンケミカル社製、アセチル基置換度0.2、プロピオニル基置換度2.56、総アシル基置換度2.76、Mn:70000、Mw:220000)
 また、表中のPBS及びPBSAは、それぞれ、以下のようにして合成した脂肪族ポリエステルを表す。
[0339]
 (脂肪族ポリエステル(PBS)の合成)
 コンデンサー付き水分定量受器、温度計、曲管及びSUS製攪拌羽根を付けたガラス製1Lセパラブルフラスコに、琥珀酸354.3g(3.0mol)及び1,4-ブタンジオール270.4g(3.0mol)を入れ、窒素気流下で180℃まで段階的に反応温度を上げた。180℃で生成水がほとんど認められなくなった時点で、1%2-エチルヘキサン酸スズ(II)トルエン溶液1.32g(2-エチルヘキサン酸スズ(II):0.033mmol、和光純薬工業株式会社製)を加え反応を継続した。さらに、200℃まで反応温度を上げ、反応系内を減圧にした。反応物の重量平均分子量が200000になるまで反応を継続し、反応終了時に溶融物をSUS製バットに排出し、PBSを得た。
[0340]
 (脂肪族ポリエステル(PBSA)の合成)
 コンデンサー付き水分定量受器、温度計、曲管及びSUS製攪拌羽根を付けたガラス製1Lセパラブルフラスコに、琥珀酸236.2g(2.0mol)及びアジピン酸146.1g(1.0mol)、及び1,4-ブタンジオール270.4g(3.0mol)を入れ、窒素気流下で180℃まで段階的に反応温度を上げた。180℃で生成水がほとんど認められなくなった時点で、1%2-エチルヘキサン酸スズ(II)トルエン溶液1.32g(2-エチルヘキサン酸スズ(II):0.033mmol、和光純薬工業株式会社製)を加え反応を継続した。さらに、200℃まで反応温度を上げ、反応系内を減圧にした。反応物の重量平均分子量が200000になるまで反応を継続し、反応終了時に溶融物をSUS製バットに排出し、PBSAを得た。
[0341]
 <支持体の評価>
 上記のようにして作製した支持体1~39について以下のように巻癖回復率と引裂強さを評価した。
[0342]
 (巻癖回復率)
 支持体を35mm(製造時のTD方向)×120mm(製造時のMD方向)の帯状に切断し、温度23℃、相対湿度55%の条件下で1日放置した後に直径が50mmであるコアにこれを巻き付ける。
[0343]
 その後、温度55℃、相対湿度20%の条件下で24時間熱処理を行う。熱処理後、温度23℃、相対湿度55%の条件下で30分かけて放冷した後にコアから解放し、1分経過後に支持体の巻癖カール度を測定する。カール度は1/rで表し、rはカールした支持体の曲率半径を表し、単位はmである。
[0344]
 さらに、支持体のカールした内側から霧吹きで水を吹きかけ、5分後のカール度を測定し、巻癖回復率を下記の式で評価した。
巻癖回復率=(吹きかけ前のカール度-吹きかけ後のカール度)/吹きかけ前のカール度×100(%)
 (引裂強さ)
 JIS K 7128-2(1998)に準拠して、(株)東洋精機製作所製の軽荷重引裂試験機により、エルメンドルフ引裂法により以下の条件で測定した。
[0345]
 サンプルを63mm×75mmの切り出し、温度23℃、相対湿度55%の条件下で1日放置した後に同条件下で測定した。サンプルは搬送方向と直交する方向(TD方向)及び搬送方向(MD方向)それぞれ5枚、合計10枚の引き裂き荷重(mN)を測定し、その平均値(同一の引裂長さ及び厚さとして換算)を引裂強さとして求めた。
[0346]
 (ガラス転移温度)
 第1のポリマー成分と第2のポリマー成分とが相溶しているかどうかを調べるため、本発明に係る支持体4~13、15~22、24~34、36~39、第1のポリマー成分及び第2のポリマー成分のそれぞれに対し、示差走査熱量測定器としてセイコーインスツル(株)製 示差走査熱量計DSC220)を用い、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)にしたがい中間点ガラス転移温度(Tmg)を求めた。
[0347]
 その結果、本発明に係る支持体4~13、15~22、24~34、36~39では、それぞれのポリマー成分の固有のガラス転移温度が消失し、一つのガラス転移温度となっており、相溶していることを確認した。
[0348]
 <光学フィルム1;多層膜赤外線反射フィルムの作製>
 支持体1及び2に対して、それぞれ、以下の下引き加工1を施した。
[0349]
 [下引き加工1]
 支持体の両面に12W・min/m のコロナ放電処理を施し、下引き塗布液1を乾燥膜厚0.4μmになるように塗布し、その上に12W・min/m のコロナ放電処理を施し、下引き塗布液2を乾燥膜厚0.06μmになるように塗布した。各層はそれぞれ塗布後110℃で10秒間乾燥し、引き続いて110℃で2分間熱処理した。
[0350]
 〈下引塗布液1〉
ブチルアクリレート30質量%、t-ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%、2-ヒドロキシエチルアクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)                           50g
化合物(UL-1)                   0.2g
ヘキサメチレン-1,6-ビス(エチレン尿素)     0.05g
水で仕上げる                     1000ml
 〈下引塗布液2〉
ゼラチン                         10g
化合物(UL-1)                   0.4g
シリカ粒子(平均粒径3μm)              0.1g
硬膜剤(UL-2)                     1g
水で仕上げる                     1000ml
[化7]


[0351]
 支持体3から39については、それぞれ、以下の下引き加工2を施した。
[0352]
 [下引き加工2]
 下引層塗布液3をエクストルージョンコータで15ml/m となるように塗布し、塗布後50℃の無風ゾーン(1秒)を経た後、120℃で30秒乾燥し、下引層塗布済み支持体を得た。
[0353]
 〈下引層塗布液3〉
脱イオン化ゼラチン              10g
純水                     30ml
酢酸                     20g
下記架橋剤                 0.2モル/gゼラチン
下記ノニオン系フッ素含有界面活性剤     0.2g
メタノール/アセトン=2/8の有機溶媒で1000mlにし、下引層塗布液3とした。
[0354]
 用いた架橋剤とノニオン系フッ素含有界面活性剤(界面活性剤と略記)の構造を以下に示す。
[0355]
[化8]


[0356]
 〈脱イオン化ゼラチンの作製〉
 石灰処理、水洗、中和処理を行い、石灰を除去したオセインを55~60℃の熱水中で抽出処理を行い、オセインゼラチンを得た。得られたオセインゼラチン水溶液を、アニオン交換樹脂(ダイヤイオンPA-31G)とカチオン交換樹脂(ダイヤイオンPK-218)の混合ベッドで両イオン交換を行った。
[0357]
 <光学フィルム1~39の作製>
 〔赤外線反射層の形成〕
 重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置(スライドコーター)を用い、下記低屈折率層用塗布液L1、及び下記高屈折率層用塗布液H1を45℃に保温しながら、45℃に加温した上記の下引層塗布済み支持体1~39のそれぞれに対して、高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれの乾燥時の膜厚が130nmになるように、低屈折率層6層、高屈折率層5層を交互に計11層の同時重層塗布を行った。
[0358]
 塗布直後、5℃の冷風を5分間吹き付けてセットさせた。その後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、11層からなる赤外線反射層を形成した。さらに、赤外線反射層上に下記ハードコート(HC)層を形成し、さらにHC層とは反対側の面発に粘着層を設けて赤外線反射フィルム機能を有する光学フィルム1~39を得た。
[0359]
 〔低屈折率層用塗布液L1の調製〕
 まず、10質量%の第2の金属酸化物粒子としてのコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、スノーテックス(登録商標)OXS)水溶液680部と、4.0質量%のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、PVA-103:重合度300、ケン化度98.5mol%)水溶液30部と、3.0質量%のホウ酸水溶液150部とを混合し、分散した。純水を加え、全体として1000部のコロイダルシリカ分散液L1を調製した。
[0360]
 次いで、得られたコロイダルシリカ分散液L1を45℃に加熱し、その中に4.0質量%のポリビニルアルコール(B)としてのポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-45:重合度4500、ケン化度86.5~89.5mol%)水溶液760部とを順次に、撹拌しながら添加した。その後、1質量%のベタイン系界面活性剤(川研ファインケミカル株式会社製、ソフダゾリン(登録商標)LSB-R)水溶液40部を添加し、低屈折率層用塗布液L1を調製した。
[0361]
 〔高屈折率層用塗布液H1の調製〕
 (コア・シェル粒子のコアとするルチル型酸化チタンの調製)
 水中に、酸化チタン水和物を懸濁させ、TiO に換算した時の濃度が100g/Lになるように、酸化チタンの水性懸濁液を調製した。10L(リットル)の該懸濁液に、30Lの水酸化ナトリウム水溶液(濃度10モル/L)を撹拌しながら加えた後、90℃に加熱し、5時間熟成させた。次いで、塩酸を用いて中和し、濾過後水を用いて洗浄した。
[0362]
 なお、上記反応(処理)において、原料である酸化チタン水和物は、公知の手法に従い、硫酸チタン水溶液を熱加水分解処理によって得られたものである。
[0363]
 純水中に、上記塩基処理したチタン化合物をTiO に換算した時の濃度が20g/Lになるように、懸濁させた。その中に、TiO 量に対し0.4モル%のクエン酸を撹拌しながら加えた。その後、加熱し、混合ゾル液の温度が95℃になるところで、塩酸濃度が30g/Lになるように濃塩酸を加えた、液温を95℃に維持しながら、3時間撹拌させ、酸化チタンゾル液を調製した。
[0364]
 上記のように、得られた酸化チタンゾル液のpH及びゼータ電位を測定したところ、pHは1.4であり、ゼータ電位は+40mVであった。また、マルバーン社製ゼータサイザーナノにより粒径測定を行ったところ、単分散度は16%であった。
[0365]
 さらに、酸化チタンゾル液を105℃で3時間乾燥させ、酸化チタンの粉体微粒子を得た。日本電子データム株式会社製、JDX-3530型を用いて、該粉体微粒子をX線回折測定し、ルチル型の酸化チタン微粒子であることが確認された。また、該微粒子の体積平均粒径は10nmであった。
[0366]
 そして、純水4kgに、得られた体積平均粒径10nmのルチル型の酸化チタン微粒子を含む20.0質量%の酸化チタンゾル水系分散液を添加して、コア粒子となるゾル液を得た。
[0367]
 (シェル被覆によるコア・シェル粒子の調製)
 2kgの純水に、10.0質量%の酸化チタンゾル水系分散液0.5kgを加え、90℃に加熱した。次いで、SiO に換算した時の濃度が2.0質量%であるように調製したケイ酸水溶液1.3kgを徐々に添加し、オートクレーブ中、175℃で18時間加熱処理を行い、さらに濃縮して、コア粒子としてはルチル型構造を有する酸化チタンであり、被覆層としてはSiO であるコア・シェル粒子(平均粒径:10nm)のゾル液(固形分濃度20質量%)を得た。
[0368]
 (高屈折率層用塗布液H1の調製)
 上記で得られた固形分濃度20.0質量%の第1の金属酸化物粒子としてのコア・シェル粒子を含むゾル液28.9部と、1.92質量%のクエン酸水溶液10.5部と、10質量%のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、PVA-103:重合度300、ケン化度98.5mol%)水溶液2.0部と、3質量%のホウ酸水溶液9.0部とを混合して、コア・シェル粒子分散液H1を調製した。
[0369]
 次いで、コア・シェル分散液H1を撹拌しながら、純水16.3部及び5.0質量%のポリビニルアルコール(A)としてのポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、PVA-124:重合度2400、ケン化度98~99mol%)水溶液33.5部を加えた。更に、1質量%のベタイン系界面活性剤(川研ファインケミカル株式会社製、ソフダゾリン(登録商標)LSB-R)水溶液0.5部を添加し、純水を用いて全体として1000部の高屈折率層用塗布液H1を調製した。
[0370]
 <ハードコート層(HC層)の形成>
 紫外線硬化性樹脂として、ビームセット577(荒川化学工業株式会社製)を用い、溶媒としてメチルエチルケトンを添加した。さらに、フッ素系界面活性剤(商品名:フタージェント(登録商標)650A、株式会社ネオス製)を0.08質量%添加し、全固形分が40質量部、となるように調製して、ハードコート層用塗布液Aを作製した。
[0371]
 赤外線反射層を設けた面とは逆の面に、上記調製したハードコート層用塗布液Aを、グラビアコーターにて、乾燥層厚が5μmとなる条件で塗工後、乾燥区間温度90℃で1分間乾燥後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm で、照射量を0.5J/cm としてハードコート層を硬化させ、ハードコート層を形成した。
[0372]
 (粘着液の調製)
 メタクリル酸2-エチルヘキシル78質量%、アクリル酸ブチル12質量%、アクリル酸2-ヒドロキシエチル7質量%及びアクリル酸3質量%をトルエン中でラジカル重合することで、固形分濃度33質量%(重量平均分子量55万)のポリマー溶液を得た。この中に、チタンキレート(オルガチックスTC-401:マツモトファインケミカル(株))0.5質量%とUV吸収剤(Tinuvin477(チバガイギ社製))3重量部を添加し、粘着塗布液を作成した。
[0373]
 ダイコーターを用い、上記で調製した粘着層用塗布液1をセパレータ(NS-23MA:中本パックス社製)に、乾燥後の層厚が10μmとなるように塗布し、80℃で乾燥した後に、上記赤外線反射層面と粘着層面を貼り合わせた。
[0374]
 <光学フィルム40の作製>
 光学フィルム22において、赤外線反射層を下記銀(Ag)薄膜赤外線反射層に変更した以外は同様にして光学フィルム40を作製した。
[0375]
 (Ag薄膜赤外線反射層の形成)
 下引層上に銀中に金を2質量%含有するスパッタリングターゲット材を用いて厚さ15nmの赤外線反射層を形成した。
[0376]
 <光学フィルムの評価>
 得られた光学フィルム1~40をウインドウフィルムとして用い、水貼り作業性及び仕上がり品質としてスキージのムラ(水貼りの際、スクイーズ時のスティックスリップに起因して生じるムラ)及びフィルムの裂けの評価を行った。
[0377]
 (水貼り作業性)
 各ウインドウフィルムについて、幅20cm、長さ100cmに断裁したフィルムを10枚準備した。厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製、「スライドガラス白縁磨」)に水が垂れ始めるまで前面に霧吹きで水を吹き付けた。断裁した光学フィルムのセパレータを剥がし、粘着層側をガラス面に貼り付けた。次に、フィルム面に霧吹きで水を吹き付け、市販のゴム製のフィルム水貼り用スキージでフィルムの中心から上下左右方向に水と泡を抜く。再び水を吹き付けて水を抜く作業を2回繰り返し、計3回の水抜き作業を行った。これを各フィルムについて10枚ずつ作業を行った。
[0378]
 水貼り作業性を以下の指標で評価した。
×;フィルムの剥離が多発し、作業性が非常に悪かった
△;1回目のスキージ作業時にエッジ部が浮き上がることは3枚以上であったが、作業は問題なく行えた。
○△;1回目のスキージ作業時にエッジ部が浮き上がることは1、2枚であったが、作業は問題なく行えた。
○;エッジの浮き上がりなく、問題なく作業できた
 (フィルムのムラ)
 スキージのムラを下記の評価基準で評価した。
×;はっきりと分かるスキージのムラが3枚以上でみられる
△;はっきりと分かるスキージのムラが1、2枚でみられる
○△;スキージのムラはよくないと分からない
○;スキージのムラは見られない
 (フィルムの裂け)
×;致命的なフィルムの裂けが1枚以上で発生
△×;エッジ部に極弱い裂けが5枚以上で発生
△;エッジ部に極弱い裂けが2~4枚で発生
○△;エッジ部に極弱い裂けが1枚で発生
○;フィルムの裂けはなし
 以上の評価結果と試料の構成の概略を表1に示す。
[0379]
[表1]


[0380]
 表1から、本発明の光学フィルム4~13、15~22、24~34及び36~40は、比較の光学フィルム1~3、14、23及び35に比べて水貼り作業性に優れ仕上がり品質(フィルムのムラ及びフィルムの裂けが少ない)が良好であることが分かる。

産業上の利用可能性

[0381]
 本発明の光学フィルムは、巻癖回復性と引裂強度に優れた光学フィルムであり、従来セルロースエステルフィルムでは、強度が十分でなく使用が困難であった用途、あるいはPETフィルムでは巻癖が強く使用が困難であった用途に適しており、ウインドウフィルムに好適に使用できる。その他、太陽光反射ミラーなどにおいても、同様に霧吹きをかけることで巻癖がとれて、貼り合わせ加工が容易になり、好適に使用することができる。

符号の説明

[0382]
 1 セパレーター
 2 粘着層
 3 光学機能層
 4 支持体
 5 接着層
 6 追加の支持体
 7 ハードコート層
10 光学フィルム
11 支持体
 ML、MLa、MLb 光学反射層群
 T ~T 、Ta ~Ta 、Tb ~Tb  光学反射層
 U 反射層ユニット

請求の範囲

[請求項1]
 フィルム状の支持体上に少なくとも光学機能層と粘着層とを有する光学フィルムであって、前記支持体が、セルロース誘導体を30質量%以上含有し、かつ巻癖回復率が20%以上で、引裂強さが150mN以上となるように調整されていることを特徴とする光学フィルム。
[請求項2]
 前記支持体が、前記セルロース誘導体に加えて、脂肪族ポリエステル又はポリアルキレンオキシドを第2のポリマー成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
[請求項3]
 前記支持体が、重量平均分子量が4000~500000の範囲内である前記第2のポリマー成分を前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
[請求項4]
 前記支持体が、重量平均分子量が30000~400000の範囲内である前記第2のポリマー成分を前記セルロース誘導体に対して5質量%以上含有することを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
[請求項5]
 前記セルロース誘導体が、セルロースエステルであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
[請求項6]
 前記セルロースエステルのアセチル基置換度Xと、プロピオニル基及びブチリル基の合計置換度Yとが、下記式(I)及び式(II)を満たすことを特徴とする請求項5に記載の光学フィルム。
 式(I) : 2.5≦X+Y≦2.95
 式(II) : 0.0≦Y≦1.5
[請求項7]
 前記第2のポリマー成分が、下記一般式(1)で表される構造を有する脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項2から請求項6までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
[化1]


 (式中、R ~R は、それぞれ、水素原子又は置換基を表す。iは0~2の整数を表す。jは0~10の整数を表す。kは3~10の整数を表す。a、b及びcは構成割合(モル分率)を表し、a、b及びcの総和が1である。)
[請求項8]
 前記光学機能層が、特定の波長の光を選択的に透過あるいは遮蔽することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
[請求項9]
 前記光学機能層が、第1の水溶性バインダー樹脂と第1の金属酸化物粒子とを含む高屈折率層、及び第2の水溶性バインダー樹脂と第2の金属酸化物粒子とを含む低屈折率層を交互に積層した特定の波長の光を選択的に反射する層であることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルム。
[請求項10]
 請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とするウインドウフィルム。

図面

[ 図 1A]

[ 図 1B]

[ 図 1C]

[ 図 1D]

[ 図 1E]

[ 図 1F]

[ 図 1G]

[ 図 2]

[ 図 3]