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1. (WO2015146482) 遷移金属含有ゼオライトの製造方法、及び該方法により得られる遷移金属ゼオライト、並びに該ゼオライトを用いた排ガス浄化処理用触媒
Document

明 細 書

発明の名称 遷移金属含有ゼオライトの製造方法、及び該方法により得られる遷移金属ゼオライト、並びに該ゼオライトを用いた排ガス浄化処理用触媒

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

発明の概要

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029  

発明の効果

0030   0031  

発明を実施するための形態

0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144  

実施例

0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15  

明 細 書

発明の名称 : 遷移金属含有ゼオライトの製造方法、及び該方法により得られる遷移金属ゼオライト、並びに該ゼオライトを用いた排ガス浄化処理用触媒

技術分野

[0001]
 本発明は、自動車等の排ガス等に含まれるNOxの選択的還元反応(SCR)に使用される触媒、或いは水蒸気等の吸着材として有用な遷移金属含有シリコアルミノフォスフェートの製造方法に関する。本発明はまたこのゼオライトと、このゼオライトを用いた排ガス浄化処理用触媒に関する。

背景技術

[0002]
 少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトは、遷移金属による触媒活性の向上効果などの利点を有することから、化学工業や自動車排ガス浄化など、様々な分野において用途が見出されている。中でも、クリーンディーゼル用のSCR触媒の需要が高まっており、該用途への検討が行われている。
[0003]
 遷移金属含有ゼオライトにあっては、その低温水没耐性と高温水蒸気耐性の改善が課題となっている。
[0004]
 特許文献1では、Ca添加によって低温水没耐性を改善することを記載している。本発明者らによる検討の結果、特許文献1のゼオライトは、高温水蒸気耐性については、3時間程度の処理で劣化することが明らかとなった。
[0005]
 特許文献2には、遷移金属原料及びポリアミンを含む水性ゲルから水熱合成することで、高い高温水熱耐久性を示す遷移金属含有シリコアルミノフォスフェートを製造することが記載されている。遷移金属を含有するものは耐水性が極端に低下することが知られている。
[0006]
 また、本発明者らによる特願2012-279807にも、高温水熱耐久性や、水没時の耐久性に優れた遷移金属含有ゼオライトが記載されているが、特に100℃以下の比較的低温での水没耐久性については更なる改善が求められている。
[0007]
特許文献1 : 国際公開WO2013/082550号パンフレット
特許文献2 : 特開2013-32268号公報
特許文献3 : 特願2012-279807

発明の概要

[0008]
 本発明は、触媒や吸着材としての性能に優れており、高温水熱耐久性だけでなく、耐水性、即ち、水没時の耐久性(耐水没性)にも優れた遷移金属含有シリコアルミノフォスフェートを、簡便にかつ効率よく製造することができる方法を提供することを課題とする。
[0009]
 本発明者は、低温水没耐性と高温水蒸気耐性の両立を目的として鋭意検討を行った結果、遷移金属含有ゼオライトを水蒸気存在下において所定の温度に攪拌しながら加熱処理するスチーム処理を行うことによって、高温水蒸気耐性を損なうことなく、ゼオライト構造を劣化ないし破壊させることなく、低温水没耐性を改善することが可能であることを見出した。
[0010]
 特許文献2では、実施例で製造した遷移金属含有ゼオライトの高温水蒸気耐性を調べるために、水熱耐久試験を行っている。この水熱耐久試験は、ゼオライトを800℃、10体積%の水蒸気に空間速度SV=3000/hの雰囲気下5時間通じるものであり、その水蒸気濃度、処理温度においては、本発明におけるスチーム処理と条件が類似している。特許文献2では、ゼオライトの高温水蒸気耐性の評価のために、ゼオライト構造を破壊しやすい条件での処理としてこの処理を行っており、この処理が低温水没耐性を改善することは全く意図されていない。特許文献2の水熱耐久試験は、空間速度の記載があることからも明らかなように、固定床で行われるため、処理効果が不均一となり、処理が弱かった部位では低温水没耐性が十分に改善せず、処理が強かった部位ではゼオライト構造の破壊が生じてしまう。
[0011]
 遷移金属含有ゼオライトを水蒸気存在下で単に加熱しても、低温水没耐性を改善することはできない。処理温度を710℃~890℃の間に収めながら水蒸気の存在下で攪拌を行うことによって初めて、ゼオライト構造の劣化を生じさせずに低温水没耐性の改善効果を十分に得ることができる。
[0012]
 本発明の方法はCaなどのアルカリ土類金属を用いていないため、高温水蒸気耐性を損なうこともない。
[0013]
 スチーム処理された遷移金属含有ゼオライトは最表面に存在する遷移金属の割合がスチーム処理前よりも増加しており、これが低温水没耐性の改善に寄与しているものと考えられる。
[0014]
 本発明は、以下を要旨とする。
[0015]
[1] 少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを、水蒸気の存在下に、710℃以上890℃以下の温度範囲で攪拌するスチーム処理工程を有することを特徴とする遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0016]
[2] 前記スチーム処理の処理温度範囲が750℃以上850℃以下である[1]に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0017]
[3] 前記遷移金属が銅である[1]または[2]に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0018]
[4] 前記スチーム処理における雰囲気中の水蒸気濃度が1体積%以上である[1]ないし[3]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0019]
[5] 前記スチーム処理の処理時間が0.1時間以上72時間以下である[1]ないし[4]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0020]
[6] 前記攪拌が、有軸攪拌子、無軸攪拌子、槽側に結合された攪拌子、及び流体のいずれか1つ以上を用いて行われる[1]ないし[5]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0021]
[7] 前記遷移金属含有ゼオライト中の遷移金属含有量が0.1重量%以上30重量%以下である[1]ないし[6]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0022]
[8] 前記遷移金属含有ゼオライト中のSi含有量が下記式(I)を満たす[1]ないし[7]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
  0.01≦x≦0.5        ・・・(I)
(式中、xは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するケイ素原子のモル比を示す)
[0023]
[9] 前記遷移金属含有ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてフレームワーク密度が10.0T/1000Å 以上16.0T/1000Å 以下である[1]ないし[8]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0024]
[10] 前記遷移金属含有ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてCHAである[1]ないし[9]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0025]
[11] 前記スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトが、遷移金属原料の存在下に水熱合成して得られる遷移金属含有ゼオライトである[1]ないし[10]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0026]
[12] 前記スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトが、前記遷移金属原料と、一般式H N-(C 2nNH) -H(式中、nは2~6の整数、xは2~10の整数)で表されるポリアミンの存在下に水熱合成して得られる遷移金属ゼオライトである[11]に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[0027]
[13] [1]ないし[12]のいずれかに記載の製造方法で得られたことを特徴とする遷移金属含有ゼオライト。
[0028]
[14] スチーム処理された、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトであって、XPSで測定した遷移金属含有量とXRFで測定した遷移金属含有量の比で求められる、遷移金属含有ゼオライト全体の遷移金属含有濃度に対する遷移金属含有ゼオライトの最表面における遷移金属含有濃度の割合が1.05~3.00であることを特徴とする遷移金属含有ゼオライト。
[0029]
[15] [13]または[14]に記載の遷移金属含有ゼオライトを含む排ガス浄化処理用触媒。

発明の効果

[0030]
 本発明によれば、触媒や吸着材としての性能に優れており、高温水熱耐久性だけでなく、耐水性、即ち、水没時の耐久性(耐水没性)にも優れた遷移金属含有ゼオライトを、簡便にかつ効率よく製造することができる。
[0031]
 本発明では、製造条件を組み合わせることにより、触媒性能がより一層向上し、耐水性もより一層向上した遷移金属含有ゼオライトを得ることができる。

発明を実施するための形態

[0032]
 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
[0033]
[スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライト]
 本発明において、スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトは、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトである。遷移金属含有ゼオライトは、アルミニウム原子、リン原子、及びケイ素原子を含むシリコアルミノフォスフェートを合成した後、イオン交換法や含浸法等の常法により、遷移金属を担持させる方法で得られたものでも良いし、ゼオライトを水熱合成する際に遷移金属原料を添加して合成したゼオライトでも良いが、後者のものが好ましい。
[0034]
 以下において、スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトを「遷移金属含有ゼオライトA」と称し、遷移金属含有ゼオライトAにスチーム処理を施して得られる遷移金属含有ゼオライトを「遷移金属含有ゼオライトB」と称す場合がある。
[0035]
 スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトAは、後述のテンプレートを用いた水熱合成で製造されたものである場合、テンプレートを含むものであってもよく、テンプレートを除去したものであってもよい。以下において、遷移金属含有量は、テンプレートを含まない遷移金属含有ゼオライトAとしての含有量である。
[0036]
 遷移金属含有ゼオライトBは、スチーム処理を施したことにより、遷移金属含有ゼオライトAよりも最表面に存在する遷移金属の割合が増加したものである。遷移金属含有ゼオライトAと遷移金属含有ゼオライトBは、骨格構造を構成するアルミニウム原子、リン原子及びケイ素原子の存在割合、遷移金属含有ゼオライト全体の遷移金属含有量、ゼオライト構造、フレームワーク密度、粒子径等においては同等とみなすことができる。
[0037]
 本発明の遷移金属含有ゼオライト(遷移金属含有ゼオライトA)の骨格構造に含まれるアルミニウム原子、リン原子及びケイ素原子の存在割合は、下記式(I)、(II)及び(III)を満たすことが好ましい。
   0.01≦x≦0.5        ・・・(I)
 式中、xは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するケイ素原子のモル比を示す。
    0.3≦y≦0.6        ・・・(II)
 式中、yは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比を示す。
    0.3≦z≦0.6        ・・・(III)
 式中、zは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するリン原子のモル比を示す。
[0038]
 xの値としては、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.07以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.12以下である。xの値が上記下限値より小さいと、ゼオライト結晶化しにくい場合がある。xの値が上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
[0039]
 yは通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下である。yの値が上記下限値より小さい又は上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
[0040]
 zは通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下である。zの値が上記下限値より小さいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向があり、zの値が上記上限値より大きいと、ゼオライト結晶化しにくい場合がある。
[0041]
 上記の遷移金属含有ゼオライトのゼオライト骨格構造の各原子の含有量は、試料を塩酸等の酸の水溶液で加熱溶解させ、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下ICP)発光分光分析により求めることができる。
[0042]
 遷移金属としては、特に限定されるものではないが、吸着材用途や触媒用途での特性の点から、通常、鉄、コバルト、マグネシウム、亜鉛、銅、パラジウム、イリジウム、白金、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等の周期表第3-12族の遷移金属が挙げられる。遷移金属は、好ましくは鉄、コバルト、銅などの周期表第8、9、11族、より好ましくは8、11族の遷移金属である。ゼオライトに含有させる遷移金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の遷移金属を組み合わせてゼオライトに含有させてもよい。これらの遷移金属のうち、特に好ましくは、鉄及び/又は銅であり、とりわけ好ましくは銅である。
[0043]
 本発明の遷移金属含有ゼオライト(遷移金属含有ゼオライトA)の遷移金属の含有量は、無水状態下での遷移金属含有ゼオライトの重量に対する遷移金属の重量割合として、通常0.1%以上、30%以下であり、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上であり、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。遷移金属含有ゼオライト中の遷移金属の含有量が上記下限値より小さいと、高分散遷移金属活性点が不十分であり、遷移金属の含有量が上記上限値より大きいと、高温水熱下での耐久性が不十分となる。
[0044]
 遷移金属含有ゼオライトAの遷移金属の含有量は、前述の如く、スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトAがテンプレートを含有する場合は、テンプレートを含まない遷移金属含有ゼオライトとしての遷移金属の含有量である。
[0045]
 上記の遷移金属含有ゼオライトの遷移金属の含有量(W1(重量%))は、蛍光X線分析法(XRF)を用い、下記の方法で検量線を作成し、その検量線より求めることができる。
[検量線の作成]
 遷移金属原子としてMを含有する、含有量の異なる3点以上の遷移金属M含有ゼオライトを標準試料とし、該標準試料を塩酸等の酸の水溶液で加熱溶解させた後、ICP発光分光分析により遷移金属M原子の含有量(重量%)を求める。XRFを用い同じ標準試料の遷移金属の蛍光X線強度を求め、遷移金属M原子の含有量と蛍光X線強度の検量線を作成する。
[0046]
 XRFを用い遷移金属M含有ゼオライト試料の遷移金属蛍光X線強度を測定し、上記の検量線を用い、遷移金属M原子のW1(重量%)含有量を求める。一方、熱重量分析(TG)により試料中の水分W H2O(重量%)を求め、下記式(V)で、無水状態下での遷移金属M原子の含有量W(重量%)を算出する。
  W=W1/(1-W H2O)       ・・・(V)
[0047]
 本発明の遷移金属含有ゼオライト、即ち、遷移金属含有ゼオライトBを排ガス浄化用触媒や水蒸気吸着材として用いる場合には、本発明の遷移金属含有ゼオライトのなかでも、以下の構造及びフレームワーク密度を有するものが好ましい。
[0048]
 ゼオライトの構造は、XRD(X線回折法:X-ray diffraction)により決定するが、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで示すと、AEI、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、VFIであり、AEI、AFX、GIS、CHA、VFI、AFS、LTA、FAU、AFYが好ましく、CHA構造を有するゼオライトが最も好ましい。
[0049]
 フレームワーク密度は結晶構造を反映したパラメータであるが、IZAがATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2001において示してある数値で、好ましくは10.0T/1000Å 以上で、通常16.0T/1000Å 以下、好ましくは15.0T/1000Å 以下である。
[0050]
 フレームワーク密度(T/1000Å )は、ゼオライトの単位体積1000Å あたりに存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
[0051]
 ゼオライトのフレームワーク密度が上記下限値未満では、構造が不安定となる場合があり、耐久性が低下する傾向がある。ゼオライトのフレームワーク密度が上記上限値を超過すると吸着量、触媒活性が小さくなる場合があったり、触媒としての使用に適さない場合がある。
[0052]
 本発明の遷移金属含有ゼオライト(遷移金属含有ゼオライトA及び遷移金属含有ゼオライトB)の粒子径について特に限定はないが、通常0.1μm以上、さらに好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
[0053]
 本発明における遷移金属含有ゼオライトの粒子径とは、電子顕微鏡で遷移金属含有ゼオライトを観察した際の、任意の10~30点のゼオライト粒子の一次粒子径の平均値をいう。
[0054]
 スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトAの製造方法には特に制限はないが、好ましくは、以下に説明する遷移金属含有ゼオライトAの製造方法によりゼオライト粉体として製造される。
[0055]
[遷移金属含有ゼオライトAの製造方法]
 以下、遷移金属含有ゼオライトAの製造方法の一例として、ゼオライトを水熱合成する際に遷移金属原料を添加して遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを合成する方法について説明する。
[0056]
 この方法は、以下に説明する原料から調製された水性ゲルからゼオライトを水熱合成する工程を経る方法である。
[0057]
{原料}
 本発明に係る水性ゲルの調製に用いられる各原料について説明する。
[0058]
<アルミニウム原子原料>
 本発明におけるゼオライトのアルミニウム原子原料は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。取り扱いが容易な点及び反応性が高い点で、アルミニウム原子原料としては擬ベーマイトが好ましい。
[0059]
<ケイ素原子原料>
 本発明におけるゼオライトのケイ素原子原料は特に限定されず、通常、fumed(ヒュームド)シリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。高純度で、反応性が高い点で、ケイ素原子原料としてはfumedシリカが好ましい。
[0060]
<リン原子原料>
 本発明におけるゼオライトのリン原子原料は、通常、リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。リン原子原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[0061]
<遷移金属原料>
 本発明において、ゼオライトに含有させる遷移金属原料は特に限定されず、通常、遷移金属の硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、あるいは微粉末状の酸化物を用いても良い。
[0062]
 遷移金属としては、特に限定されるものではないが、吸着材用途や触媒用途での特性の点から、通常、鉄、コバルト、マグネシウム、亜鉛、銅、パラジウム、イリジウム、白金、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等の周期表3-12族の遷移金属が挙げられ、好ましくは鉄、コバルト、銅などの周期表8、9、11族、より好ましくは周期表8、11族の遷移金属である。ゼオライトに含有させる遷移金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の遷移金属を組み合わせてゼオライトに含有させてもよい。これらの遷移金属のうち、特に好ましくは、鉄及び/又は銅であり、とりわけ好ましくは銅である。
[0063]
 本発明において、遷移金属原料は好ましくは酸化銅(II)又は酢酸銅(II)であり、より好ましくは酸化銅(II)である。
[0064]
 遷移金属原料としては、遷移金属種、或いは化合物種の異なるものの2種以上を併用してもよい。
[0065]
<テンプレート>
 本発明に係る水性ゲルには、ゼオライト製造の際に、テンプレートとして一般に使用される、アミン、イミン、四級アンモニウム塩等を更に含んでいてもよい。
[0066]
 テンプレートとしては、以下の(1)~(5)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。これらは入手しやすく安価であり、さらに、製造されたシリコアルミノホスフェートゼオライトの取り扱いが容易で構造破壊も起きにくいという点において好適である。
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
(2)アルキル基を有するアミン(アルキルアミン)
(3)シクロアルキル基を有するアミン(シクロアルキルアミン)
(4)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド
(5)ポリアミン
[0067]
 中でも(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、(2)アルキルアミン、及び(3)シクロアルキルアミンが好ましく、これら3つの群のうち、2つ以上の群から各群につき1種以上の化合物を選択して用いることがより好ましい。
[0068]
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
 ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5~7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素原子以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素原子に加えて酸素原子を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が隣り合わないものが好ましい。
[0069]
 ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下であり、また通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
[0070]
 ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物として、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、キヌクリジン、ピロリジン、N-メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。
[0071]
(2)アルキルアミン
 アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基であって、アルキルアミンの1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。
 アルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。
 アルキルアミンのアルキル基の炭素数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素数の合計は5以上30以下がより好ましい。
 アルキルアミンの分子量は通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
[0072]
 アルキルアミンとしては、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジ-n-ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t-ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ-イソプロピル-エチルアミン、N-メチル-n-ブチルアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、t-ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ-イソプロピル-エチルアミン、N-メチル-n-ブチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
[0073]
(3)シクロアルキルアミン
 シクロアルキルアミンとしては、アルキル基の炭素数が4以上10以下であるものが好ましく、中でもシクロヘキシルアミンが好ましい。シクロアルキルアミンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[0074]
(4)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド
 テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、4個のアルキル基が炭素数4以下のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[0075]
(5)ポリアミン
 ポリアミンとしては、一般式H N-(C 2nNH) -H(式中、nは2~6の整数、xは2~10の整数)で表されるポリアミンが好ましい。
[0076]
 上記式において、nは2~5の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、2又は3がさらに好ましく、2が特に好ましい。xは2~6の整数が好ましく、2~5の整数がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、4が特に好ましい。
[0077]
 ポリアミンとしては、中でもエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが安価であり、好ましく、中でもトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらのポリアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、分岐状のポリアミンを含んでいても良い。
[0078]
 テンプレートとして2種以上のものを組み合わせて用いる場合、その組み合わせは任意であるが、(1)~(4)から少なくとも1種と(5)から少なくとも一種の組み合わせが好ましく、中でも、(5)から少なくとも1種以上に(1)~(4)から2種以上の組み合わせが好ましく、特に(5)から少なくとも1種以上に(1),(2)のそれぞれから1種以上の組み合わせが好ましい。具体的には、モルホリン、トリエチルアミン、テトラエチレンペンタミン及びシクロヘキシルアミンのうちの2種以上、中でもモルホリンとトリエチルアミンとテトラエチレンペンタミンを併用することが好ましい。
[0079]
 本発明においては、必ずしも、上記のように、(5)ポリアミンに、(1)~(4)のいずれかのテンプレートを組み合わせて使用する必要はないが、これらの組合せとする方が、高温水熱耐久性が優れたアルミノホスフェートゼオライトを製造することができ、好ましい。
[0080]
 水性ゲル中に遷移金属原料と共にポリアミンを含むと、ゼオライトを合成する際に、水性ゲル中の遷移金属がポリアミンと強く相互作用して安定化すると共に、ゼオライト骨格元素と反応しにくくなる。このため、遷移金属がゼオライトの骨格に入りにくく(ゼオライト骨格元素が遷移金属によって置換されにくく)、ゼオライトの骨格外、主としてゼオライトの細孔に遷移金属を分散させて存在させることができる。このようなことから、ポリアミンを用いることにより、高い触媒性能と吸着性能、並びに高い高温水熱耐久性を有する遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを合成できることが考えられる。
[0081]
 これらのテンプレート各群の混合比率は、条件に応じて選択する必要がある。2種のテンプレートを混合させるときは、通常、混合させる2種のテンプレートのモル比が1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。3種のテンプレートを混合させるときは、通常、3種目のテンプレートのモル比は、上記のモル比で混合された2種のテンプレートに対して1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
[0082]
{水性ゲルの調製}
 本発明において好ましい態様であるテンプレートとして(5)ポリアミンを用い、必要に応じて更にその他のテンプレートを用いて水性ゲルを調製する場合、水性ゲルは、上述のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料、及びポリアミン、必要に応じて用いられるその他のテンプレートを水と混合して調製される。
[0083]
 本発明で用いる水性ゲルの組成は、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、及び遷移金属原料を酸化物として表したときのモル比で、以下のような組成となることが好ましい。
[0084]
 SiO /Al の値は、通常0より大きく、好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である。
[0085]
 P /Al の値は、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
[0086]
 M /Al (ただし、Mは遷移金属原子を表し、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)の値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
[0087]
 SiO /Al が上記上限よりも大きいと、結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりする。
[0088]
 P /Al が上記下限よりも小さいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりし、上記上限よりも大きいと同様に結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
[0089]
 水熱合成によって得られるゼオライトの組成は、水性ゲルの組成と相関があり、従って、所望の組成のゼオライトを得るためには、水性ゲルの組成を上記の範囲において適宜設定すればよい。
[0090]
 M /Al が上記下限よりも小さいとゼオライトへの遷移金属の導入量が不十分であり、上記上限よりも大きいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
[0091]
 水性ゲル中のポリアミンの量は、その他のテンプレートを使用する場合には、遷移金属原料を安定化させるに足りる量にすれば良い。その他のテンプレートを使用しない場合は、ポリアミンがテンプレートとして機能するための量にする必要がある。
[0092]
 具体的には、以下のような使用量とすることが好ましい。
[0093]
<その他のテンプレートを使用する場合>
 その他のテンプレートを使用する場合は、水性ゲル中のポリアミンとその他のテンプレートの総量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料の酸化物換算のAl に対するポリアミン及びその他のテンプレートの合計のモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。
[0094]
 ポリアミンとその他のテンプレートの総量が上記下限より少ないと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分でありあったりし、上記上限より多いとゼオライトの収率が不十分である。
[0095]
 ポリアミンは、遷移金属原料の酸化物換算のM に対するポリアミンのモル比で、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であって、通常10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下となる量で用いることが好ましい。
[0096]
 水性ゲル中のポリアミンの量が上記下限よりも少ないとポリアミンを用いることによる上述の効果を十分に得ることができず、上記上限よりも多いとゼオライトの収率が不十分である。
[0097]
<その他のテンプレートを使用しない場合>
 ポリアミン以外のその他のテンプレートを使用しない場合は、上記と同様の理由から、水性ゲル中のポリアミンの量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料の酸化物換算のAl に対するポリアミンのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下であって、遷移金属原料の酸化物換算のM に対するポリアミンのモル比で、通常1以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上で、通常50以下、好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下となる量で用いることが好ましい。
[0098]
 前述の如く、テンプレートは条件に応じて適宜選ぶ必要がある。例えば、テンプレートとしてモルホリンとトリエチルアミンを併用する場合、モルホリン/トリエチルアミンのモル比は0.05~20、特に0.1~10、とりわけ0.2~9となるように用いることが好ましい。
[0099]
 前記2つ以上の群から各群につき1種以上選択されたテンプレートを混合する順番は特に限定されず、テンプレート同士を混合した後その他の物質と混合してもよいし、各テンプレートをそれぞれ他の物質と混合してもよい。
[0100]
 水性ゲル中の水の割合は、合成のし易さ及び生産性の高さの観点から、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Al に対する水のモル比で、通常3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上で、通常200以下、好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下である。
[0101]
 水性ゲルのpHは通常5以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは6.5以上で、通常11以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。
[0102]
 水性ゲル中には、所望により、上記以外の成分を含有していてもよい。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒が挙げられる。水性ゲル中のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩の含有量は、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Al に対するモル比で、通常0.2以下、好ましくは0.1以下である。水性ゲル中のアルコール等の親水性有機溶媒の含有量は、水性ゲル中の水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
[0103]
 水性ゲルの調製の際の各原料の混合順序は制限がなく、用いる条件により適宜選択すればよい。通常は、まず水にリン原子原料、アルミニウム原子原料を混合し、これにケイ素原子原料、及びテンプレートを混合する。遷移金属原料、ポリアミンは、これらを混合する際の何れのタイミングで添加しても良いが、遷移金属原料とポリアミンを予め混合すると、ポリアミンによる遷移金属原料の錯体化による安定化の効果が有効に発揮されるので、好ましい。
[0104]
 少量の水及びリン酸等のリン原子原料に、遷移金属原料を溶解させた後、他の原料を加える方法も採用することができる。この方法は、水の量を減らすことにより、収率を挙げることができ、遷移金属量を増やすことができるので、遷移金属量を遷移金属含有ゼオライトの4重量%以上とする場合の製造方法として好ましい。この方法は、得られる遷移金属含有ゼオライトを触媒や吸着材として使用した場合の性能にも優れるものとなるので好ましい。ここで「少量の水」とは、Al 換算のアルミニウム原子原料に対する水のモル比で、50以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下である。
[0105]
{水熱合成}
 水熱合成は、上記のようにして調製された水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、攪拌又は静置状態で所定温度を保持することにより行われる。
[0106]
 水熱合成の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上で、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。反応時間は通常2時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上で、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
[0107]
{テンプレート等を含有したゼオライト}
 上記の水熱合成後、生成物であるポリアミン及び必要に応じて用いられたその他のテンプレート(以下、ポリアミン又はポリアミンとその他のテンプレートとを「テンプレート等」と称す場合がある。)を含有したゼオライト(以下、「テンプレート等含有ゼオライト」と称す場合がある。)を、水熱合成反応液より分離する。水熱合成反応液からのテンプレート等含有ゼオライトの分離方法は特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。乾燥は室温から150℃以下の温度で行うことが好ましい。
[0108]
 この水熱合成反応液から分離回収したテンプレート等含有ゼオライトを水洗しても良い。テンプレート等含有ゼオライトを水洗する場合は、水洗後のテンプレート等含有ゼオライトを、当該ゼオライトの重量の6倍の水に浸漬したときの浸漬水の導電率(以下、「浸漬水導電率」と称す場合がある。)が0.1mS/cm以上、好ましくは0.5mS/cm以上、更に好ましくは1mS/cm以上であるような程度に水洗する。テンプレート等含有ゼオライトの水洗の程度が上記導電率の下限未満となるような程度であると、耐水性に優れた遷移金属含有ゼオライトを得ることができない場合がある。
[0109]
 テンプレート等含有ゼオライトを水洗した場合は、洗浄工程を経た懸濁液を、濾過した後乾燥してもよいし、直接乾燥、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)してテンプレート等含有ゼオライト粉体としてもよい。この乾燥は室温から150℃以下の温度で行うことが好ましい。
[0110]
 水熱合成反応液から分離回収したテンプレート等含有ゼオライトは、水洗することなく、次のスチーム処理工程又はテンプレート除去後スチーム処理工程に供してもよい。
[0111]
{テンプレート等の除去}
 上記乾燥後のテンプレート等含有ゼオライトは、次いでスチーム処理に供する。このスチーム処理に先立ち、テンプレート等含有ゼオライト粉体から、テンプレート等を除去してもよい。テンプレート等の除去方法は特に限定されない。通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガス雰囲気下に300℃から1000℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出溶剤によって抽出したりする等の方法により、含有される有機物(テンプレート等)を除去することができる。
[0112]
 製造性の面から、焼成によるテンプレート等の除去が好ましい。この場合、水蒸気を実質的に含まない(即ち、水蒸気含有率0.5体積%以下の)気体流通下で、好ましくは400℃~900℃、より好ましくは450℃~850℃、さらに好ましくは500℃~800℃で、好ましくは0.1時間~72時間、より好ましくは0.3時間~60時間、さらに好ましくは0.5~48時間焼成が行われる。
[0113]
{スチーム処理}
 前述の乾燥後のテンプレート等含有ゼオライトから、必要に応じてテンプレート等の除去を行った遷移金属含有ゼオライトAを、次いでスチーム処理に供する。
[0114]
 本発明においては、このスチーム処理は、710℃~890℃、好ましくは750℃~850℃において、遷移金属含有ゼオライトAを撹拌しながら行われる。
[0115]
 本発明において「撹拌」とは、「かき回す」「かき混ぜる」という操作のみならず、「流動させる」「揺り動かす」「まぜ返す」といった広義の撹拌を意味し、スチーム処理中に、遷移金属含有ゼオライトAの集合体の表面を更新させるような操作をすべて含むものである。
[0116]
 撹拌方式は、スチーム処理する遷移金属含有ゼオライトAが均一に撹拌されるものであればよく、特に限定されない。本発明において、スチーム処理は、具体的には、遷移金属含有ゼオライトAを投入したスチーム処理槽(スチーム処理容器)内において、遷移金属含有ゼオライトAを、有軸攪拌子、無軸攪拌子、槽側に結合された攪拌子、及び流体のいずれか1つ以上を用いて撹拌しつつ、水蒸気含有量が好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%~40体積%、さらに好ましくは5~30体積%の雰囲気下で上記の温度で処理することにより行われる。
[0117]
 スチーム処理時間は、0.1時間以上72時間以下が好ましく、より好ましくは0.3時間~24時間、さらに好ましくは0.5時間~12時間、最も好ましくは1時間~6時間である。
[0118]
 スチーム処理温度、スチーム処理時間、雰囲気中の水蒸気含有量が上記下限より低いと、スチーム処理による耐水性の向上効果を十分に得ることができない。スチーム処理温度が上記上限より高いとゼオライト構造を劣化ないしは破壊するおそれがある。スチーム処理時間が上記上限より長くても耐水性の向上効果に差異はなく、生産性の面で好ましくない。水蒸気含有量が上記上限よりも多いとゼオライト構造を劣化ないしは破壊するおそれがある。
[0119]
 スチーム処理における水蒸気含有気体の供給方式は、流通式であってもよく、バッチ式であってもよい。水蒸気含有気体は、通常、水蒸気含有空気であるが、不活性ガスに水蒸気を同伴させてもよい。
[0120]
 遷移金属含有ゼオライトAを投入してスチーム処理するスチーム処理槽(スチーム処理容器)は、上記の撹拌手段により遷移金属含有ゼオライトAが十分に撹拌されて、槽内の遷移金属含有ゼオライトAが均一にスチーム処理されるように、投入する遷移金属含有ゼオライトAに対して、ある程度の容量を有することが好ましい。具体的には、投入する遷移金属含有ゼオライトAの体積(遷移金属含有ゼオライトAを単に容器に投入しスタンピング等を行うことなく表面をならしたときの見掛け体積)に対して、用いるスチーム処理槽(スチーム処理容器)の有効容積が1.2~20倍、特に1.5~10倍となることが好ましい。この有効容積が上記下限よりも小さいと、スチーム処理槽内で遷移金属含有ゼオライトAを十分に撹拌して均一なスチーム処理を行えないおそれがある。この有効容積が上記上限を超えて大きくてもスチーム処理効果に差異はなく、スチーム処理槽が過大となり、好ましくない。
[0121]
 適当な容積を有するスチーム処理槽(スチーム処理容器)に遷移金属含有ゼオライトAを投入した場合は、水蒸気含有気体を適当な流速で流通させることにより、遷移金属含有ゼオライトAを流動させて撹拌(即ち、流体による撹拌)することができる。撹拌棒、撹拌翼を用いることなく、スチーム処理槽(スチーム処理容器)自体を撹拌子として回転ないし振動を付与することによっても遷移金属含有ゼオライトAを撹拌することができる。
[0122]
 スチーム処理は、撹拌槽に遷移金属含有ゼオライトAを投入してバッチ方式で行うこともできるし、連続式ロータリーキルン等を用いて連続方式で行うこともできる。
[0123]
 粉体の処理の均一性と量産性を考慮すると、連続式またはバッチ式ロータリーキルンを用いることが好ましく、特に連続式ロータリーキルンが好ましい。
[0124]
 連続式ロータリーキルンの加熱方法としては、電熱加熱、ガス燃焼加熱等が用いられるが、温度の均一性が高いことから電熱加熱が好ましい。
[0125]
 ロータリーキルンを回転させることにより、遷移金属含有ゼオライトAの撹拌を行い、スチーム処理を均一に行うことが可能となる。ロータリーキルンの回転数としては、0.1~10rpmが好ましい。
[0126]
 より撹拌力を増大させるために、キルン内にリフター(かき上げ板)を設置したり、回転物を入れてもよい。
[0127]
 スチームは、遷移金属含有ゼオライトA投入側から導入しても、排出側から導入してもよい。
[0128]
 ロータリーキルン内では通常温度分布があるため、キルン内に設置した熱電対によりキルン内のゼオライトの温度を数か所測定し、その内の最高温度をスチーム処理温度とすることが好ましい。
[0129]
[スチーム処理された遷移金属含有ゼオライト]
 本発明の遷移金属含有ゼオライトは、上記のスチーム処理工程を経て製造された遷移金属含有ゼオライトBである。
[0130]
 遷移金属含有ゼオライトBは、遷移金属含有ゼオライトAをスチーム処理することにより、最表面に存在する遷移金属の割合が遷移金属含有ゼオライトAのそれよりも大きいという特徴を有し、X線光電子分光法(XPS)で測定した遷移金属含有量とXRFで測定した遷移金属含有量との比(XPSで測定した遷移金属含有量/XRFで測定した遷移金属含有量)で求められる、遷移金属含有ゼオライト全体の遷移金属含有濃度に対する最表面に存在する遷移金属の含有濃度の割合(以下、この割合を「最表面/内部遷移金属比」と称す場合がある。)が好ましくは1.05~3.00、より好ましくは1.08~2.80である。
[0131]
 最表面/内部遷移金属比が上記下限よりも小さいものではスチーム処理による耐水性の向上効果が十分でない傾向がある。最表面/内部遷移金属比が上記上限よりも大きいとゼオライト表面の細孔が遷移金属により閉塞するおそれがある。
[0132]
 通常、スチーム処理前の遷移金属含有ゼオライトAは、上記の最表面/内部遷移金属比が0.96~1.04で通常1に近いものである。
[0133]
 XRFによる遷移金属含有量の測定方法は前述の通りである。
[0134]
 XPSは、粒子のごく表層部分(厚さ数nm)に存在する原子分布を定量するものであり、遷移金属含有ゼオライトの表層の遷移金属含有量を分析することができる。
[0135]
 具体的には、XPSは、X線源として、単色化AlKα線(1486.7eV)を使用する。また、取り出し角は、試料表面より45°とし、中和銃を使用する。XPSにより、表面の遷移金属、Al、P、Si、Oの各原子のモル比を求め、重量比に換算することにより遷移金属の含有量(重量%)を求める。
[0136]
[遷移金属含有ゼオライトの用途]
 本発明の遷移金属含有ゼオライト、即ち遷移金属含有ゼオライトBの用途としては特に制限はないが、耐水性及び高温水熱耐久性が高く、触媒活性にも優れることから、自動車等の排ガス浄化用触媒或いは水蒸気吸着材として特に好適に用いられる。
[0137]
<排ガス処理用触媒>
 本発明の遷移金属含有ゼオライトを自動車排気浄化触媒等の排ガス処理用触媒として用いる場合、本発明の遷移金属含有ゼオライトはそのまま粉末状で用いてもよく、また、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等のバインダーと混合し、造粒や成形を行って使用することもできる。本発明の遷移金属含有ゼオライトは、塗布法や、成形法を用いて所定の形状に成形して用いることもでき、好ましくはハニカム状に成形して用いることができる。
[0138]
 本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒の成形体を塗布法によって得る場合、通常、遷移金属含有ゼオライトとシリカ、アルミナ等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された成形体の表面に塗布し、焼成することにより作成され、好ましくはこの際にハニカム形状の成形体に塗布することによりハニカム状の触媒を得ることができる。
[0139]
 本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒の成形体を成形する場合、通常、遷移金属含有ゼオライトをシリカ、アルミナ等の無機バインダーやアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混練し、押出法や圧縮法等の成形を行い、引き続き焼成を行うことにより作成され、好ましくはこの際にハニカム形状に成形することによりハニカム状の触媒を得ることができる。
[0140]
 本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する自動車排気浄化触媒等のNOxの選択的還元触媒として有効である。該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、炭化水素、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等の公知の還元剤を使用しても良い。具体的には、本発明の排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
[0141]
 本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒を使用する際の、触媒と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではないが、排ガスの空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上で、通常500000/h以下、好ましくは100000/h以下であり、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、通常700℃以下、好ましくは500℃以下で用いられる。
[0142]
<水蒸気吸着材>
 本発明の遷移金属含有ゼオライトは、優れた水蒸気の吸・脱着特性を示す。
 その吸・脱着特性の程度は、条件により異なるが、一般的に、低温から、通常水蒸気の吸着が困難な高温領域まで吸着可能であり、また高湿度状態から、通常水蒸気の吸着が困難な低湿度領域まで吸着可能であり、かつ比較的低温の100℃以下で脱着が可能である。
[0143]
 このような水蒸気吸着材の用途としては、吸着ヒートポンプ、熱交換器、デシカント空調機等が挙げられる。
[0144]
 本発明の遷移金属含有ゼオライトは、特に水蒸気吸着材として優れた性能を示す。本発明の遷移金属含有ゼオライトを水蒸気吸着材として用いる場合、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物や粘土等のバインダー成分や、熱伝導性の高い成分と共に使用することができる。本発明の遷移金属含有ゼオライトをこれらの他の成分と共に用いる場合、水蒸気吸着材中の本発明の遷移金属含有ゼオライトの含有量が、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
実施例
[0145]
 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
[0146]
 以下の実施例及び比較例において得られた遷移金属含有ゼオライト(以下、単に「ゼオライト」と記載する。)の分析及び性能評価は以下の方法により行った。
[0147]
[200℃における触媒活性の評価]
 調製したゼオライト試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6~1mmに整粒した。整粒したゼオライト試料1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。ゼオライト層に下記表1の組成のガスを空間速度SV=100000/hで流通させながら、ゼオライト層を加熱した。200℃において、出口NO濃度が一定となったとき、
 NO浄化率(%)
 ={(入口NO濃度)―(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)×100
の値によって、ゼオライト試料の浄化性能(窒素酸化物除去活性)を評価した。
[0148]
[表1]


[0149]
[BET比表面積の測定]
 調製したゼオライト試料、及び以下の各種試験後のゼオライトの比表面積は、大倉理研社製、全自動粉体比表面積測定装置(AMS1000)を用いて、流通式一点法によりBET比表面積を測定することにより求めた。
[0150]
[低温水没耐性試験後比表面積維持率の評価]
 調製したゼオライト試料2gを水8gに分散させ、得られたゼオライトスラリーをフッ素樹脂内筒の入ったステンレス製オートクレーブに入れ、100℃で24時間静置した後、濾過によってゼオライトを回収し、100℃で12時間乾燥する低温水没耐性試験を行い、低温水没耐性試験前後のゼオライトのBET比表面積から下記式で維持率を算出した。
  低温水没耐性試験後比表面積維持率=(試験後比表面積/試験前比表面積)×100
[0151]
[高温水蒸気耐性試験後比表面積維持率の評価]
 調製したゼオライト試料を800℃、10体積%の水蒸気に、空間速度SV=3000/hの雰囲気下、5時間通じて高温水蒸気処理する高温水蒸気耐性試験を行い、高温水蒸気耐性試験前後のゼオライトのBET比表面積から下記式で維持率を算出した。
 高温水蒸気耐性試験後比表面積維持率=(試験後比表面積/試験前比表面積)×100
[0152]
[XRFによる試料全体の銅含有量の測定]
 調製したゼオライト試料について蛍光X線分析法(XRF、下記条件)により、銅の含有量を測定した。
  測定装置:EDX-700 (SHIMADZU)
  X線源:Rhターゲット、15kV、100μA
[0153]
[XPSによる試料表面の銅含有量の測定]
 調製したゼオライト試料についてX線光電子分光法(XPS、下記条件)により、試料表面の銅含有量を測定した。
 測定装置:Quantum2000 (ULVAC-PHI)
 X線源:単色化AlKα線(1486.7eV)、16kV-34W
 取り出し角:試料表面より45°
 中和銃使用
[0154]
[XRDの測定]
 以下の方法で調製した試料を用いて、以下の条件で測定した。
<試料の調製>
 めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
<測定条件>
  X線源:Cu-Kα線
  出力設定:40kV・30mA
  測定時光学条件:
   発散スリット=1°
   散乱スリット=1°
   受光スリット=0.2mm
   回折ピークの位置:2θ(回折角)
   測定範囲:2θ=3~50度
   スキャン速度:3.0°(2θ/sec)、連続スキャン
[0155]
 以下の実施例及び比較例において、スチーム処理は以下の通り行った。
[スチーム処理]
 SUS316製の直径6cm×長さ30cmの連続式ロータリーキルンを使用し、以下の条件でスチーム処理を実施した。
<スチーム処理の条件>
 ロータリーキルンの回転数:1rpm
 ゼオライトの供給量:1g/分
 スチーム供給:水蒸気含有率10体積%のスチームを6L/分の流量で供給
 スチーム処理温度の設定:熱電対でロータリーキルン内のゼオライトの温度を数か所測定し、その最高温度がスチーム処理温度となるよう設定
 スチーム処理温度・時間:各例毎に表2に示す条件
[0156]
[実施例1]
 水100gに85重量%リン酸81g及び擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)54gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)6g及び水100gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン34g、トリエチルアミン40gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。これをA液とした。
[0157]
 A液とは別に、CuSO ・5H O(キシダ化学社製)10gを水134gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)8gを添加、混合してB液を調製した。B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
[0158]
<水性ゲル組成(モル比)>
  SiO :0.25
  Al :1
  P :0.875
  CuO:0.1
  テトラエチレンペンタミン:1
  モルホリン:1
  トリエチルアミン:1
  水:50
[0159]
 得られた水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1000mlのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌しながら190℃で24時間反応させた(水熱合成)。水熱合成後冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、100℃で乾燥した。その後550℃で空気(水蒸気含有率0.5体積%以下)流通下6時間焼成を行い、テンプレートを除去し、銅含有量3.8重量%のCu含有ゼオライトA-1を得た。
[0160]
 得られたCu含有ゼオライトA-1を連続式ロータリーキルン(Cu含有ゼオライトA-1の見掛け体積に対して、ロータリーキルンの有効容積は3倍)に充填して、水蒸気含有率10体積%の空気雰囲気中、750℃で3時間撹拌下にスチーム処理することによってCu含有ゼオライトB-1を得た。
 Cu含有ゼオライトB-1について、前述の各種評価を行い、結果を表2に示した。
[0161]
[実施例2]
 スチーム処理の処理温度を800℃にしたほかは実施例1と同様にしてCu含有ゼオライトB-2を得た。
 Cu含有ゼオライトB-2について、前述の各種評価を行い、結果を表2に示した。
[0162]
[実施例3]
 スチーム処理の処理温度を850℃にしたほかは実施例1と同様にしてCu含有ゼオライトB-3を得た。
 Cu含有ゼオライトB-3について、前述の各種評価を行い、結果を表2に示した。
[0163]
[比較例1]
 実施例1と同様にして製造した銅含有量3.8重量%のCu含有ゼオライトA-1を比較例1のCu含有ゼオライトX-1とし、その評価結果を表2に示した。
[0164]
[比較例2]
 比較例1で作製したCu含有ゼオライトA-1をアルミナ製の皿に厚さ20mmとなるように敷設し、水蒸気濃度10体積%の空気雰囲気下、800℃で3時間焼成することによって比較例2のCu含有ゼオライトX-2を得、その評価結果を表2に示した。
[0165]
[比較例3]
 比較例1で作製したCu含有ゼオライトA-1の100重量部に純水300重量部と酢酸カルシウム一水和物(キシダ化学社製)0.2重量部を加えて攪拌し、スラリーとした。このスラリーを150℃の金属板上で混ぜながら乾燥させた後、空気(水蒸気含有率0.5体積%以下)流通下、500℃で3時間焼成し、カルシウムが0.2重量%担持されたCu含有ゼオライトX-3を得た。Cu含有ゼオライトX-3の評価結果を表2に示した。
[0166]
[比較例4]
 スチーム処理の処理温度を700℃にしたほかは実施例1と同様にしてCu含有ゼオライトX-4を得た。Cu含有ゼオライトX-4の評価結果を表2に示した。
[0167]
[比較例5]
 スチーム処理の処理温度を900℃にしたほかは実施例1と同様にしてCu含有ゼオライトX-5を得た。Cu含有ゼオライトX-5の評価結果を表2に示した。
[0168]
[表2]


[0169]
 表2より、ゼオライト構造、浄化性能、低温水没耐性、高温水蒸気耐性のいずれにおいても、実施例1~3の本発明の遷移金属含有ゼオライトは、比較例1~5のゼオライトと比べて優れていることがわかる。
[0170]
 スチーム処理を施していない比較例1のゼオライトは、低温水没耐性が劣り、また、高温水蒸気耐性も十分ではない。スチーム条件に晒しても、撹拌を行っていない比較例2では、均一な処理を行えないために、一部ゼオライト構造が破壊され、比較例1のゼオライトよりも改善されるものの、低温水没耐性は依然として劣り、高温水蒸気耐性も十分ではない。
[0171]
 スチーム処理を行わず、Caを担持した比較例3のゼオライトは、低温水没耐性は改善されるものの、高温水蒸気耐性が著しく劣る結果となる。
[0172]
 撹拌下のスチーム処理を行っても、処理温度が低い比較例4ではスチーム処理を行っていない比較例1と比べて高温水蒸気耐性は若干向上するものの、低温水没耐性は同等である。
[0173]
 スチーム処理温度が高過ぎる比較例5では、ゼオライト構造の破壊で、ゼオライト性能が損なわれた。
[0174]
 本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
 本出願は、2014年3月26日付で出願された日本特許出願2014-064053に基づいており、その全体が引用により援用される。

請求の範囲

[請求項1]
 少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを、水蒸気の存在下に、710℃以上890℃以下の温度範囲で攪拌するスチーム処理工程を有することを特徴とする遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項2]
 前記スチーム処理の処理温度範囲が750℃以上850℃以下である請求項1に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項3]
 前記遷移金属が銅である請求項1または2に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項4]
 前記スチーム処理における雰囲気中の水蒸気濃度が1体積%以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項5]
 前記スチーム処理の処理時間が0.1時間以上72時間以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項6]
 前記攪拌が、有軸攪拌子、無軸攪拌子、槽側に結合された攪拌子、及び流体のいずれか1つ以上を用いて行われる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項7]
 前記遷移金属含有ゼオライト中の遷移金属含有量が0.1重量%以上30重量%以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項8]
 前記遷移金属含有ゼオライト中のSi含有量が下記式(I)を満たす請求項1ないし7のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
  0.01≦x≦0.5        ・・・(I)
(式中、xは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するケイ素原子のモル比を示す)
[請求項9]
 前記遷移金属含有ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてフレームワーク密度が10.0T/1000Å 以上16.0T/1000Å 以下である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項10]
 前記遷移金属含有ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてCHAである請求項1ないし9のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項11]
 前記スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトが、遷移金属原料の存在下に水熱合成して得られる遷移金属含有ゼオライトである請求項1ないし10に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項12]
 前記スチーム処理に供する遷移金属含有ゼオライトが、前記遷移金属原料と、一般式H N-(C 2nNH) -H(式中、nは2~6の整数、xは2~10の整数)で表されるポリアミンの存在下に水熱合成して得られる遷移金属ゼオライトである請求項11に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
[請求項13]
 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の製造方法で得られたことを特徴とする遷移金属含有ゼオライト。
[請求項14]
 スチーム処理された、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトであって、XPSで測定した遷移金属含有量とXRFで測定した遷移金属含有量の比で求められる、遷移金属含有ゼオライト全体の遷移金属含有濃度に対する遷移金属含有ゼオライトの最表面における遷移金属含有濃度の割合が1.05~3.00であることを特徴とする遷移金属含有ゼオライト。
[請求項15]
 請求項13または14に記載の遷移金属含有ゼオライトを含む排ガス浄化処理用触媒。