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1. (WO2015146477) 積層体、透明導電性積層体およびタッチパネル
Document

明 細 書

発明の名称 積層体、透明導電性積層体およびタッチパネル

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013   0014   0015   0016  

課題を解決するための手段

0017  

発明の効果

0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110  

実施例

0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162  

符号の説明

0163  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 積層体、透明導電性積層体およびタッチパネル

技術分野

[0001]
 本発明は、各種電子機器に使用されるタッチパネル、タッチパネルの透明電極に使用される透明導電性積層体、透明導電性積層体の屈折率調整に用いる積層体に関する。

背景技術

[0002]
 近年、静電容量式のタッチパネルが携帯電話、携帯音楽端末などの各種モバイル機器に搭載されるケースが増えている。このような静電容量式のタッチパネルではパターニングされた導体上に誘電体層を積層した構成を有し、指などでタッチすることにより、人体の静電容量を介して接地される。この際、パターニング電極と接地点との間の抵抗値に変化が生じ、位置入力を認識する。しかしながら従来の透明導電性フィルムを用いた場合、導電層を有する部分と除去された部分での光学特性の差が大きいため、パターニングが強調され、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際に視認性が低下するという問題があった。
[0003]
 透明導電性フィルムの透過率、色目、さらに導電層のパターンが強調されないようにするため、反射防止膜等で用いられている屈折率の異なる層を積層させ光の干渉を利用する方法が提案されている。すなわち、透明導電性薄膜層と基材フィルムの間に屈折率の異なる層(インデックスマッチング層、屈折率調整層、光学機能層、光学調整層、反射防止層ともいう)を設けて光学干渉を利用する方法が提案されている。
[0004]
 特許文献1には「透明プラスチックフィルムからなる基材上に、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電性薄膜層をこの順に積層した構成を有し、高屈折率層の屈折率が1.70~2.50、膜厚が4~20nmの範囲にあり、低屈折率層の屈折率が1.30~1.60、膜厚が20~50nmの範囲であることを特徴とする透明導電性積層フィルム。」が記載されている。
[0005]
 特許文献2には、前記屈折率調整層のうち屈折率が異なる2つの層を1回のウェットコーティングにて形成する例として、基材や樹脂、粒子材料の表面エネルギーに着目した「30mN/m以下の表面自由エネルギーをもつ硬化層を形成可能な第一の樹脂成分、該第一の樹脂成分と硬化可能な第二の樹脂成分、平均粒径2nm以上100nm以下の第一の無機微粒子、及び少なくとも一種の有機溶剤を含有する塗布組成物であって、第一の樹脂成分および/または第二の樹脂成分は電離放射線硬化性官能基を有し、該塗布組成物は、硬化させることにより硬化層を形成可能なものであり、該塗布組成物は、該硬化層において、該第一の無機微粒子が該硬化層の下部に偏在して、屈折率の異なる上層と下層とを形成する、塗布組成物。」が記載されている。
[0006]
 特許文献3には溶媒の相対乾燥速度に着目し、粒子と樹脂成分を分離する「基材と、その上に多層構造を有する積層体の製造方法であって、基材上又は基材上に形成された層の上に、(A)重合性不飽和基を有する有機化合物(Ab)を結合させてなる金属酸化物粒子、(B)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体、(C)速揮発溶剤及び(D)遅揮発溶剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、この1の塗膜から溶媒を蒸発させることにより、2以上の層を形成することを特徴とする積層体の製造方法。」がそれぞれ記載されている。
[0007]
 また、特許文献4には、前記屈折率が異なる2つの層の界面形状に着目した例として、「支持基材の少なくとも片面に、屈折率の異なる第2層及び第1層をこの順に有し、第1層が粒子X(粒子Xは、構成材料として少なくとも無機粒子を含む粒子である)を含有し、第2層が粒子Y(粒子Yは、構成材料として少なくとも無機粒子を含む粒子である)を含有する積層体であって、前記粒子Xの無機粒子の数平均粒子径(以下、D とする)が、5nm以上25nm以下であって、式1及び式2を満たすことを特徴とする積層体。」がそれぞれ記載されている。
[0008]
 一方で、前記光学干渉を利用した透明導電性フィルムの透過率、色目、および導電層のパターンの強調抑制(すなわち、導電層のパターンを見えにくくし、導電層パターンの視認性を抑制する)方法は透明導電性フィルムの法線方向における光路設計を用いるのが一般的であり、斜め方向から覗き込んだ場合には十分な導電層パターン視認性抑制効果が得られない場合があることが知られている。
[0009]
 特許文献5には、斜め方向の光学設計値としてブリュースター角度におけるP波とS波の透過光量に着目した前記屈折率調整層に関する例として、「波長590nmにおける面内レターデーション(Re)が500nm以上のポリマーフィルムと、該ポリマーフィルムの少なくとも一方の表面上に反射防止層とを有する偏光板保護フィルムであって、前記反射防止層の、前記ポリマーフィルムの内部を透過してくる可視光全域の光に対するブリュースター角での反射率が、5%以下であることを特徴とする偏光板保護フィルム、及び該保護フィルムを有する偏光板。」が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 特開2010-15861号公報
特許文献2 : 特開2007-293313号公報
特許文献3 : 特開2007-038199号公報
特許文献4 : 国際公開第2013/183487号パンフレット
特許文献5 : 特開2009-014886号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 以上の従来技術には、下記の課題がある。
[0012]
 特許文献1では、基材上に高屈折率層、低屈折率層及び透明導電層を積層しているが、明細書によると低屈折率層の積層方法はスパッタリング、実施例で記載されている屈折率は1.46程度であり、本発明者らが確認したところ、この屈折率では、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターンを見えにくくする効果が不十分であり、同構成にて単純に屈折率を下げると、着色低減効果や透明導電層のパターンを見えにくくする効果の面内均一性が損なわれる、すなわち、面内ばらつきが大きくなる問題がある。
[0013]
 特許文献2、3は、1回の塗工により2つの層を得る技術であるが、2つの平滑な層を構成することに着目した技術であり、斜め方向から光が入射した際には光路長が設計からずれるため、本発明者らが確認したところ、斜め方向からの視認に対する透明導電層のパターンを見えにくくする効果(すなわち、斜め方向の光学設計)が不十分であった。
[0014]
 特許文献4は、2つの層を同時に形成する技術による界面の構造に着目した技術であるが、本発明者らが確認したところ特許文献4では表面の粗さ低減効果が十分に得られず、従って十分なヘイズ値が得られず、本発明が課題とする透明性を得られていなかった。
[0015]
 また、特許文献5では斜め方向の光学設計に対応するパラメータとしてブリュースター角の記載があるが、ブリュースター角を材質の屈折率が決めるパラメータとして記載しており、層厚みや界面形状によりブリュースター角が調整可能であるという着想に至っていない。
[0016]
 先行技術文献には、以上のようにいくつかの問題があることから、本発明が解決しようとする課題は、平滑性、透明性に優れ、色付きが少なく、かつ正面方向および斜め方向のいずれにおいても優れた導電層パターン視認性抑制効果、すなわち、透明導電層のパターンを見えにくくする効果を有し、かつ光学特性の面内ばらつきが低減された積層体を提供することである。

課題を解決するための手段

[0017]
 上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)支持基材の少なくとも片側に支持基材側から第2層、第1層の順に積層された積層膜を有する積層体であって、該第1層と該第2層の屈折率が異なり、かつ以下の(A)~(D)を満たす積層体。
(A)n2>n1        ・・・(式1)
(B)Ra1≦5nm      ・・・(式2)
(C)Hz≦0.6%      ・・・(式3)
(D)θr1-θi1>1.0° ・・・(式4)
n1:第1層の屈折率、n2:第2層の屈折率
Ra1:第1層-空気層界面の算術平均粗さ
Hz:積層体のヘイズ
θi1:第1層の屈折率n1と空気の屈折率n0から以下の式によって算出される第1層-空気層界面の理論ブリュースター角
tanθi1=n1/n0
θr1:第1層-空気層界面にてp波反射率が極小となる実測ブリュースター角
(2)前記積層膜が以下の(E)~(G)を満たす上記(1)に記載の積層体。
(E)0.2≦n2-n1   ・・・(式5)
(F)Tt≦150nm    ・・・(式6)
(G)55°≦θr1≦60° ・・・(式7)
Tt:積層膜の膜厚
(3)上記(1)または(2)に記載の積層体に透明導電層を積層してなる透明導電性積層体。
(4)上記(3)に記載の透明導電性積層体を用いたタッチパネル。

発明の効果

[0018]
 本発明の積層体は、平滑性、透明性に優れ、色付きが少なく、かつ、本発明の積層体の積層膜側の最表面に透明導電層を形成するとき、またはさらに透明導電層をエッチングしてパターニングした際、正面方向および斜め方向からの視認に対して、優れた導電層パターン視認性抑制効果、および光学特性の面内ばらつき低減効果を与える。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 本発明の積層体の好ましい1つの態様の概略断面図である。
[図2] 従来技術の積層体の1つの態様の概略断面図である。
[図3] 従来技術の積層体の1つの態様の概略断面図である。
[図4] 断面図から算出される面内構成比率の概略図である。

発明を実施するための形態

[0020]
 本発明の積層体は、支持基材の少なくとも片側に支持基材側から第2層、第1層の順に積層された積層膜を有する積層体であって、前記第1層と前記第2層の屈折率が異なる。なお、本明細書において、「積層体」とは、支持基材の少なくとも片側に少なくとも2層以上からなる積層膜を有する部材を指す。
[0021]
 支持基材がプラスチックフィルムの場合には、屈折率調整フィルム、インデックスマッチングフィルム、反射防止フィルムと呼ばれる。また、支持基材上に形成された積層膜はその機能からインデックスマッチング層、反射率調整層、光学機能層、光学調整層、または反射防止層とも呼ばれる。
[0022]
 図1に本発明の積層体の好ましい1つの態様を示す。本態様の積層体(1)は、支持基材(2)の少なくとも片側に積層膜(3)が積層されている。積層膜(3)は、屈折率の異なる第1層(4)と第2層(5)とからなる。ここで、積層膜(3)は、第1層と第2層との屈折率が異なり、第1層(4)が第2層(5)よりも低い屈折率である。なお、相対的に低い屈折率を有する第1層を低屈折率層といい、相対的に高い屈折率を有する第2層を高屈折率層という。
[0023]
 そして、本態様の積層体は、支持基材(2)の少なくとも片側に支持基材側から第2層(5)、第1層(4)をこの順に有し、第1層(4)は粒子成分a(6)を含有し、第2層(5)は粒子成分b(7)を含有する。ここで、粒子成分aは、構成材料として少なくとも無機粒子を含む粒子であり、さらに、後述する特定の条件を満たす粒子である。また、粒子成分bは、構成材料として少なくとも無機粒子を含む粒子である。本態様において用いられる支持基材、粒子成分a、および粒子成分bについては後述する。
[0024]
 また、本発明の積層体の好ましい製造方法としては、支持基材の少なくとも片側に、下記成分を含む塗料組成物を1回塗布することで前記第1層および第2層を同時に形成する方法が挙げられる。
A)前記第1層を構成する成分であって、その表面をフッ素化合物Aによって修飾されている粒子A
B)前記第2層を構成する成分であって、粒子Aよりも屈折率が高い粒子B
C)バインダー原料C
 なお粒子A、フッ素化合物A、粒子Bおよびバインダー原料Cについては後述する。
[0025]
 次に本発明の積層体が有する好ましい物理特性について詳細を説明する。
[0026]
 本発明の積層体は、以下の(A)~(D)をすべて満たす積層体である。
[0027]
  (A)n2>n1        ・・・(式1)
  (B)Ra1≦5nm      ・・・(式2)
  (C)Hz≦0.6%      ・・・(式3)
  (D)θr1-θi1>1.0° ・・・(式4)
   n1:第1層の屈折率、n2:第2層の屈折率
   Ra1:第1層-空気層界面の算術平均粗さ
   Hz:積層体のヘイズ
   θi1:第1層の屈折率n1と空気の屈折率n0から以下の式によって算出される第1層-空気層界面の理論ブリュースター角
   tanθi1=n1/n0
   θr1:第1層-空気層界面にてp波反射率が極小となる実測ブリュースター角
 また、本発明の積層体は、以下の(E)~(G)をすべて満たすことが好ましい。
[0028]
  (E)0.2≦n2-n1   ・・・(式5)
  (F)Tt≦150nm    ・・・(式6)
  (G)55°≦θr1≦60° ・・・(式7)
   Tt:積層膜の膜厚
 前記(A)~(D)および前記(E)~(G)で表される特定の物理特性を制御する因子としては「第1層と第2層の膜厚」、「第1層の屈折率n1」および「第2層の屈折率n2」、および厚み方向の屈折率変化に起因する「第1層と第2層の界面の形態」が挙げられ、これらを調整することによりその効果を一層高めることができる。
[0029]
 本発明の積層体は前記(A)を満たす。すなわち、本発明の積層体の第1層の屈折率をn1、第2層の屈折率をn2とすると、n2>n1である。
[0030]
 また、本発明の積層体は前記(E)の要件を満たすことが好ましい。すなわち、第1層および第2層の屈折率の差には好ましい範囲が存在し、具体的には(n2-n1)が0.2以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましい。(n2-n1)が0.2未満の場合には積層体の各層での反射光量が減少して、十分な光学干渉効果が得られにくくなり、結果として前述の正面方向からの視認に対する透明導電層のパターンを見えにくくする効果が十分に得られにくい場合がある。各層の屈折率の測定方法については後述する。一方で(n2-n1)の上限については特に限定されないが、本発明の積層体の光学設計においては概ね0.7以下になると推定される。
[0031]
 [表面粗さ]
 本発明の積層体は前記要件(B)を満たす。すなわち、第1層-空気層界面の算術平均粗さをRa1とすると、Ra1≦5nmである。本発明の積層体は後述のとおり、透明性が高いことが望ましく、透明性に関わる因子として第1層-空気層の界面および後述の第1層-第2層界面の形状が挙げられる。第1層-空気層の界面の形状については平坦であることが好ましく、具体的にはJIS R 1683(2007)に基づく算術平均粗さRa1が5nm以下である。前記算術平均粗さRa1は2nm以下がより好ましい。Ra1の値が5nmを超えると透明性が損なわれ、さらに30nmを超えると、本発明の積層体の積層膜側の最表面に透明導電層を形成する際に、その密着性の低下や抵抗値の増加が起こる場合がある。またRa1の値の下限には特に限定はないが、完全に平滑な面を得ることは困難であり、0.1nm程度が現実的な下限となる。算術平均粗さRa1の測定方法については後述する。
[0032]
 [透明性]
 本発明の積層体は、前記(C)を満たす。すなわち、積層体のヘイズをHzとすると、Hz≦0.6%である。積層体として良好な性質を示すには透明性が高いことが望ましい。透明性が低いと画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じる場合がある。本発明の積層体の透明性の評価にはヘイズ、および全光線透過率を用いることができる。なお、ヘイズ、および全光線透過率に影響を及ぼす因子としては、「第1層と空気層の界面の形態」および「第1層と第2層の界面の形態」が挙げられる。
[0033]
 ヘイズはJIS-K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。一方でヘイズが大きいということは積層体の表面、もしくは界面の形状が粗く、光を散乱しやすい形状が形成されていることを示唆している。本発明の積層体のヘイズ(Hz)は、0.6%以下であり、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である。ヘイズの値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度となる。ヘイズが0.6%より大きいと、画像視認性の低下が生じる可能性が高くなる他、本発明の積層体のように理想的な屈折率変化を与える界面形状が得られず、斜め方向からの視認に対して、優れた透過光の着色低減効果や透明導電層のパターンを見えにくくする効果が得られなくなる。
[0034]
 全光線透過率は、JIS-K 7361-1(1997)に規定された透明性材料の光透過性の指標であり、高いほど透明性が高いことを示す。積層体の全光線透過率としては、好ましくは85%以上であり、より好ましくは89%以上、更に好ましくは91%以上である。現実的な上限値は94%程度と思われる。全光線透過率が85%より小さいと、画像が暗くなる場合がある。
[0035]
 [ブリュースター角]
 本発明の積層体は前記(D)を満たす。すなわち、理論ブリュースター角をθi1、実測ブリュースター角をθr1とすると、θr1-θi1>1.0°である。
[0036]
 ブリュースター角とはJIS Z 8120(2001)に記載の偏光角に相当する値であり、屈折率に差のある二つの物質の界面において生じる反射光のうち、入射面に平行方向(すなわち、反射面である本発明の積層体の表面とは垂直方向)に電界成分を有する電磁波、P偏光の反射率が0になる入射角のことをいう。この角度において非偏光が入射した場合、P偏光成分は界面で反射することなく全て透過し、一方で反射光にはS偏光のみを含む完全偏光が生じる。このような反射率の依存性はフレネルの式によって記述され、ブリュースター角は界面を形成する二つの物質の屈折率差を用いて、以下の式で記述される。
tanθi=nk/nl
nk:透過光が通過する物質の屈折率
nl:入射光および反射光が通過する物質の屈折率
特に入射光が、空気中から積層体の最表面、すなわち第1層に入射する場合のブリュースター角は以下の式を満たす。
tanθi1=n1/n0
θi1:第1層の屈折率n1と空気の屈折率n0から上記の式によって算出される第1層-空気層界面の理論ブリュースター角
 本発明においてはこれらフレネルの式を基に算出される理論的なブリュースター角を理論ブリュースター角θiと記載し、特に第1層-空気層の界面における理論ブリュースター角をθi1と記載する。
[0037]
 一方、本発明者らが本発明の課題である斜め方向からの視認に対する透明導電層のエッチングパターンの強調について分析を実施したところ、前述の透明導電層部分とエッチングにより前述の屈折率調整層が剥き出しになった部分の前記理論ブリュースター角に近い角度において、パターンの強調の効果が顕著に表れることを見出した。すなわち、ブリュースター角において一方の部分のp偏光の反射強度が弱まることで、他方の部分の反射が相対的に強調され、これが斜め方向から視認に対するパターンの強調につながるっていると考えられる。
[0038]
 更に本発明者らは本発明の積層体のように、屈折率差のある界面を構成する物質の面直方向の厚み(すなわち、本発明の積層体の層厚み)が電磁波の波長よりも十分に小さい場合には、前述の理論ブリュースター角の値と実際の測定結果の間にズレが生じることを見出した。本発明において、このような理論ブリュースター角とのズレをもつ現実のブリュースター角の値を実測ブリュースター角θrと記載し、特に空気-第1層の界面における実測ブリュースター角をθr1と記載する。なお、実測ブリュースター角θr1の測定方法については後述する。
[0039]
 本発明の積層体の特徴は実測ブリュースター角を調整することにある。また、理論ブリュースター角と実測ブリュースター角の間には好ましい関係が存在し、具体的には実測ブリュースター角が理論ブリュースター角よりも高い角度となる。すなわち、θr1>θi1である。また、(θr1-θi1)の値は1.0°より大きい。前記(θr1-θi1)の値は1.5°以上となることがより好ましく、3.0°以上となることが特に好ましい。実測ブリュースター角の値と理論ブリュースター角の値の差が1.0°以下となる場合には、本発明の積層体の積層膜側の最表面に透明導電層を形成するとき、またはさらに透明導電層をエッチングしてパターニングした際に、斜め方向からの視認に対する、透明導電層のパターンを見えにくくする効果が十分に得られない。一方で、実測ブリュースター角と理論ブリュースター角の差の値の上限については特に限定されないが、本発明の積層体の光学設計においては概ね10°以下となる。
[0040]
 さらに、本発明の積層体は前記(G)の要件を満たすことが好ましい。すなわち、実測ブリュースター角の値にも好ましい範囲が存在し、具体的には55°以上60°以下が好ましい。50°に満たない場合、もしくは60°を超える場合には、目標の光学設計からの乖離が生じ、結果として本発明の積層体の積層膜側の最表面に透明導電層を形成するとき、またはさらに透明導電層をエッチングしてパターニングした際に、正面方向もしくは斜め方向から視認に対する、透明導電層のパターンを見えにくくする効果が十分に得られにくい場合がある。
[0041]
 一方で、本発明の積層体は前記(F)を満たすことが好ましい。すなわち、積層膜の膜厚(Tt、第1層と第2層の膜厚の和)には好ましい範囲が存在し、具体的には150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。第1層と第2層の膜厚の和が150nmを超える場合には、上述の実測ブリュースター角の値を決定する因子として、第1層が支配的となるため、本発明の積層体の積層膜側の最表面に透明導電層を形成するとき、またはさらに透明導電層をエッチングしてパターニングした際に、斜め方向からの視認に対する、透明導電層のパターンを見えにくくする効果を抑制する効果が十分に得られにくい場合がある。一方で、積層膜の膜厚(すなわち、第1層と第2層の膜厚の和)の下限については、実測ブリュースター角の調整の観点からは特に限定されないが、本発明の積層体の光学設計においては概ね30nm以上となると推定される。
[0042]
 [界面粗さ]
 本発明の積層体の第1層-第2層界面の形状については平滑であるよりも、互いの成分が相互に浸入した粗い状態のほうが、前述の実測ブリュースター角と理論ブリュースター角の値の差を大きくすることができる。これは、第1層および第2層の成分が相互に浸入することにより、積層体の界面近傍で屈折率勾配が形成されることに起因しており、具体的には第1層中に、第2層成分が侵入した部分が存在することにより局所的な屈折率増加が起こり、実測ブリュースター角の値に変化が生じると考えられる。
[0043]
 前述のような屈折率勾配を有する積層体の形成方法は、特に限定されないが、生産性の観点から塗料組成物を1回塗布することで前記第1層および第2層を同時に形成する方法により形成されることが好ましい。上記の方法で作成された積層体における屈折率勾配は、下地基材の表面に平行な面により切り出した積層体界面の、相互に浸入した第1層と第2層が占める領域の比率を意味する「面内構成比率」の変化として見積られる。「面内構成比率」の算出方法の詳細については後述する。
[0044]
 また、この時、第1層もしくは第2層の面内構成比率がいずれも90%に満たない「第1層と第2層が相互に侵入した領域」には好ましい厚み範囲が存在する。具体的には、第1層と第2層が相互に侵入した領域の厚み(Tm)が10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることが特に好ましい。前述の第1層と第2層が相互に侵入した領域の厚みが10nm未満であると、前述の実測ブリュースター角と理論ブリュースター角の値に十分な差が生じず、斜め方向からの視認に対する、透明導電層のパターンを見えにくくする効果が十分に得られにくい場合がある。また、第1層と第2層が相互に侵入した領域の厚みの上限については積層膜の膜厚(すなわち、第1層と第2層の膜厚の和)と相関があり、具体的には、以下の式9の値を外れる、すなわち積層膜の膜厚の90%よりも大きくなる場合には、光学設計のズレから、正面方向からの視認に対して透過光の着色低減効果や透明導電層のパターンを見えにくくする効果が低減する場合がある。
10nm≦Tm   ・・・(式8) 第1層と第2層が相互に侵入した領域の厚み下限
Tm≦0.9×Tt ・・・(式9) 第1層と第2層が相互に侵入した領域の厚み上限。
[0045]
 また、界面の粗さについては、前述したとおり、その形状を規定するパラメータとしてヘイズに好ましい範囲が存在する。ヘイズの上昇は、屈折率差のある表面および界面において光が散乱されることに起因して生じる。具体的には、その凹凸形状が光の波長、すなわち、数100nmオーダーの間隔で揺らいでいることが原因となる。本発明において、第1層と第2層の界面は、前述の通り、互いの成分が相互に浸入した粗い状態の方が好ましいが、この相互に侵入した構造が光散乱を起こさない、すなわち、ヘイズの増加を起こさない程度に、微細な混合状態を形成していることが好ましい。
[0046]
 さらに、第1層-空気層の界面および第1層-第2層界面の形状については、前述の表面の算術平均粗さRaや実測ブリュースター角と理論ブリュースター角の値を、同時に満たす構造である。通常、界面形状が粗くなりすぎると、前述の表面の算術平均粗さRaが大きくなり十分な透明性を得られない場合がある。このとき、支持基材上に塗料組成物を1回塗布することにより前記第1層および第2層を同時に形成することで、界面形状の粗さに対して表面形状の粗さを低く抑えることができる。すなわち、図2に示されるように、第2層(12)と第1層(11)とをこの順に塗布し積層膜を作成した場合、第2層(12)の表面形状を反映する形で第1層(11)の表面にも同程度の荒れが発生するが、図1の、本発明の積層体の好ましい構成では、第1層(4)の表面形状の粗さが、第2層(5)の界面形状の粗さに対して低くなっている。
[0047]
 一方で、図3に示されるように、第1層(18)と第2層(19)の間の界面形状が平滑であると、前述の実測ブリュースター角と理論ブリュースター角の値に十分な差が生じず、斜め方向からの視認に対する、透明導電層のパターンを見えにくくする効果が十分に得られにくい場合がある。なお、第1層-第2層界面の形状の測定方法については後述する。
[0048]
 次に、本発明の積層体の好ましい構成材料について説明する。
[0049]
 [粒子]
 前記無機粒子の「種類」とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO )と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO 2-x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる無機粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の無機粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
[0050]
 [粒子A、粒子成分a]
 本発明の積層体の好ましい製造方法において、第1層に含有される粒子成分aは、塗料組成物中の粒子Aに起因する成分である。すなわち、塗料組成物中の粒子Aが、塗布・乾燥過程において、バインダー原料や、フッ素ポリマーa、および粒子A同士で反応して形態が変わるなどして、粒子成分aとなる。一方、粒子Aとして、バインダー原料やフッ素ポリマーaと反応する部分を有さない粒子を用いた場合や、粒子Aが塗布・乾燥課程においてバインダー原料やフッ素ポリマーaと反応しなかった場合には、粒子Aと粒子成分aとは完全に同一となる。なお粒子Aはフッ素ポリマーaに起因する部分を有するため、支持基材上で乾燥する際に、バインダー原料と反応することが通常である。
[0051]
 粒子Aは、無機粒子とフッ素ポリマーaに起因する部分とを有する粒子である。そして粒子Aの無機粒子としては、Si,Na,K,Ca,MgおよびAlから選択される半金属元素または金属元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物、フッ素化物、炭酸塩、硫酸塩が好ましく、シリカ粒子(SiO )、アルカリ金属フッ化物類(NaF,KF,NaAlF など)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF 、MgF など)がより好ましく、耐久性、屈折率、コストなどの点からシリカ粒子が特に好ましい。
[0052]
 このシリカ粒子とは、ケイ素化合物、又は無機、有機ケイ素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含む粒子を指し、一般例としてSiO などのケイ素酸化物から導出される粒子の総称である。このシリカ粒子の表面は、水や有機溶媒への分散安定性の観点から、前述のフッ素ポリマーaに起因する部分とは別に、部分的に表面処理が施されていてもよい。この部分的な表面処理については特に限定されないが、シリカ粒子の表面の状態としては、水もしくはアルコールといった極性溶媒中に、安定的に分散できる程度の親水部位を含むことがより好ましい。また、粒子Aを構成する無機粒子に好適な形状は、特に限定されないが、第1層での充填状態が積層体の表面形状に影響するため、球に近い形状であることが本発明の積層体の表面形状を形成するにはより好ましい。
[0053]
 次に、本発明の積層体の好ましい製造方法において用いられる塗料組成物中の粒子Aとフッ素ポリマーaについて説明する。粒子Aは、無機粒子だけでなく、フッ素ポリマーaに起因する部分を有することが好ましい。そのため粒子Aは、前述の無機粒子、特にシリカなどの無機粒子に、フッ素ポリマーaを反応させる等して、フッ素ポリマーaに起因する成分を導入することで、得ることができる。
[0054]
 ここで、導入とは、フッ素ポリマーaに起因する部分が無機粒子に化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)している状態を指し、特に共有結合していることが好ましい。
[0055]
 なお、フッ素ポリマーaは、先に述べたように少なくとも後述するフッ素化合物Aに起因する部分と化合物Dに起因する部分とを含む重合体である。つまり、フッ素ポリマーaは、フッ素化合物Aと化合物Dとを反応させることで得られる重合体である。
[0056]
 次に、フッ素化合物Aについて説明する。フッ素化合物Aは、次の一般式(1)で表される化合物である。
[0057]
 フッ素化合物A: R -R -R f1             ・・・一般式(1)
 一般式(1)において、R f1はフルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基を表す。フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基とは、アルキル基、オキシアルキル基、アルケニル基、アルカンジイル基、オキシアルカンジイル基が持つ水素の一部、あるいは全てがフッ素に置き換わった置換基であり、いずれも主にフッ素原子と炭素原子から構成される置換基であり、構造中に分岐があってもよく、これらの部分が複数連結したダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー構造を形成していてもよい。
[0058]
 一般式(1)において、R は反応性部分を表す。反応性部分とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部分をさす。反応性部分として、反応性の観点から、アルコキシシリル基、及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基などが挙げられる、反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基が好ましい。
[0059]
 一般式(1)において、R は単結合、または1つ以上の水酸基もしくは1つ以上のRC(=O)O-基(Rは炭素数1~6の炭化水素基)で置換されていてもよく、分岐していてもよい、前記RC(=O)O-基以外の炭素数が1~8の2価または3価の炭化水素基を表す。ただし、R f1がフルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基の場合、R は2価であり、R f1がフルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基の場合、R は3価である。
[0060]
 フッ素化合物Aの具体例としては、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリイソシアネートシラン、2-パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、2-パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、2-パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、2-パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、2-パーフルオロオクチルイソシアネートシラン、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアクリレート、2-パーフルオロブチルエチルアクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロデシルエチルアクリレート、2-パーフルオロ-3-メチルブチルエチルアクリレート、3-パーフルオロ-3-メトキシブチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロ-5-メチルヘキシルエチルアクリレート、3-パーフルオロ-5-メチルヘキシル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロ-7-メチルオクチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2-パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2-パーフルオロ-3-メチルブチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-3-メチルブチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロ-5-メチルヘキシルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-5-メチルヘキシル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロ-7-メチルオクチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-7-メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1-トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリアクリロイル-ヘプタデカフルオロノネニル-ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
[0061]
 さらに、フッ素化合物Aは、好ましくは後述のPFOAを環境中での分解、または代謝により生じうる可能性がないなどの環境影響の面から、一般式(1)で表される化合物であり、かつ一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
f2-X-OCOCH=CH   ・・・一般式(2)
 ここで、R f2は、炭素数4~6のいずれかの直鎖状のパーフルオロアルキル基を意味する。Xは、炭素数4~8のいずれかのアルキレン基を意味する。一般式(2)で表されるフッ素化合物Aは、より好ましくはR f2が炭素数6の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xが炭素数6の直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
[0062]
 この、PFOAとは、PerFluoroOctanoic Acidの略で、この物質は、最近の研究結果最近の研究結果(EPAレポート“PRELIMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTANOIC ACID AND ITS SALTS” (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoara.pdf))などから、環境への負荷の懸念が明らかとなってきており、2003年4月14日EPA(米国環境保護庁)が科学的調査を強化すると発表している。
[0063]
 一方、Federal Register(FR Vol.68,No.73/April 16,2003[FRL-2303-8])(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)やEPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003 EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf)やEPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)は、PerFluoroOctanoic部分を有する「テロマー」が分解または代謝することにより、PFOAを形成する可能性があると公表していることからも、PerFluoroOctanoic部分を有する「テロマー」を含まないことが、フッ素化合物の使用において求められているものである。
[0064]
 一般式(1)と一般式(2)を両方満たすフッ素化合物Aの具体例は、4-パーフルオロブチル-ブチルアクリレート、4-パーフルオロヘキシル-ブチルアクリレート、6-パーフルオロブチル-ヘキシルアクリレート、6-パーフルオロヘキシル-ヘキシルアクリレート、8-パーフルオロブチル-オクチルアクリレート、8-パーフルオロヘキシル-オクチルアクリレートなどがある。
[0065]
 次に、化合物Dについて説明する。化合物Dは前述の一般式(3)で表される化合物である。
-R -SiR n1(OR 3-n1  ・・・一般式(3)
 ここでR は、反応性部分を意味し、その定義はR と同様である。R は、炭素数1から6のいずれかのアルキレン基、または、炭素数1から6のいずれかのアルキレンエーテル基を意味する。R 、R は、水素、又は、炭素数1から4のいずれかのアルキル基を示す。n1は0から2の整数を意味する
 この化合物Dの具体例は、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
[0066]
 次に、フッ素ポリマーaの製造方法、およびフッ素ポリマーaを無機粒子と反応させることによる粒子Aの製造方法について説明する。
[0067]
 フッ素ポリマーaの製造方法、および粒子Aの製造方法は、特に限定されないが、次の1)又は2)の方法、または、両者の組み合わせのいずれでもよい。
[0068]
 1)フッ素化合物Aと化合物Dを重合してフッ素ポリマーaを作り、このフッ素ポリマーaを無機粒子と反応させる操作を行い、粒子Aを得る。
[0069]
 2)無機粒子の存在下でフッ素化合物Aと化合物Dを重合してフッ素ポリマーaを得ることで、フッ素ポリマーaを重合しながら、同時にフッ素ポリマーaの一部を無機粒子と反応させることで粒子Aも得る。
[0070]
 1)の場合、フッ素化合物Aの反応性部分と化合物Dの反応性部分を、反応性部分の構造に合わせた方法により重合する。例えば、フッ素化合物Aの反応性部分と化合物Dの反応性部分が共に(メタ)アクリレートである場合には、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル付加重合を行い、フッ素化合物Aの反応性部分と化合物Dの反応性部分が共にアルコキシシリル基である場合には、酸またはアルカリ触媒を用いてシラノール縮合反応を行う。
[0071]
 次いで、フッ素ポリマーaを無機粒子に導入する。具体的にはフッ素ポリマーa中の化合物Dに起因する部分が有する、粒子と反応可能な部分(すなわち、一般式(3)中の「Si-OR 」を意味する。)を用い、適宜必要に応じて触媒を添加したり、必要に応じて機械的な分散などのプロセスを用いたりして粒子の表面に導入する。
[0072]
 2)の場合、無機粒子の存在下でフッ素化合物Aと化合物Dを重合する必要があるが、それぞれの添加順序については特に限定されない。つまり、無機粒子と化合物Dを反応させてから、フッ素化合物Aを添加して反応させてもよいし、フッ素化合物Aと化合物Dを反応させながら、同時に無機粒子と反応させてもよい。
[0073]
 [粒子B、粒子成分b]
 本発明の積層体中の第2層に含有される粒子成分bは、塗料組成物中の粒子Bに起因する成分である。すなわち、塗料組成物中の粒子Bが、塗布・乾燥過程において、バインダー原料や粒子B同士で反応して形態が変わるなどして、粒子成分bとなる。また、粒子Bとして、その表面に反応性部分を有さない粒子を用いた場合や、粒子Bがバインダー原料と反応しなかった場合には、粒子Bと粒子成分bとは完全に同一となる。
[0074]
 粒子Bを構成する無機粒子は、粒子Aを構成する無機粒子とは異なる種類の無機粒子であることが好ましい。また、粒子Bを構成する無機粒子は、粒子Aを構成する無機粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが好ましい。粒子Bを構成する無機粒子は特に限定されないが、金属元素、半金属元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、Ga、Zr、Ti、Al、In、Zn、Sb、Sn、およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子であることがさらに好ましい。
[0075]
 粒子Bを構成する無機粒子は、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO )、酸化チタン(TiO )、酸化アルミニウム(Al )、酸化インジウム(In )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO )、酸化アンチモン(Sb )、およびインジウムスズ酸化物から選ばれる少なくとも一つ、あるいはこれらの間の固溶体、および一部元素を置換、または一部元素が格子間に侵入、一部元素が欠損した固溶体、または種類の異なる無機粒子が接合した無機粒子である。粒子Bは、特に好ましくはリン含有酸化スズ(PTO)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)や酸化チタン(TiO )、酸化ジルコニウム(ZrO )である。
[0076]
 粒子Bを構成する無機粒子の屈折率は、好ましくは1.55~2.80、より好ましくは1.58~2.50である。粒子Bを構成する無機粒子の屈折率が1.55よりも小さくなると、得られる積層体の粒子成分bを含む第2層の屈折率が低下し、粒子成分aを含む第1層との屈折率差が小さくなるため、透過光の着色抑制効果や、透明導電層のパターンを見えにくくする効果が不十分になる場合があり、粒子Bを構成する無機粒子の屈折率が2.80よりも大きくなると、第1層上に形成される透明導電層との屈折率差、及び第2層と支持基材との屈折率差が上昇するため、同様に透過光の着色抑制効果や、透明導電層のパターンを見えにくくする効果が不十分になる場合がある。
[0077]
 さらに、本発明の積層体の好ましい製造方法において、粒子Aを構成する無機粒子がシリカ粒子の場合は、粒子Bを構成する無機粒子は該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが特に好ましく、このような屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が50nm以下で、かつ屈折率が1.55~2.80の無機化合物が好ましく用いられる。そのような無機化合物の具体例としては、アンチモン酸化物、アンチモン含有酸化亜鉛、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)、酸化ジルコニウム(ZrO )、及び/または酸化チタン(TiO )が挙げられ、特に屈折率が高い酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。
[0078]
 [バインダー原料C、バインダー成分c]
 本発明の積層体の好ましい製造方法における積層膜は、バインダー成分cを含むことが好ましい。また、本発明の積層体の好ましい製造方法に用いられる塗料組成物は、バインダー原料Cを含むことが好ましい。ここで本発明の積層体の好ましい製造方法において、塗料組成物中に含まれるバインダーを「バインダー原料C」、積層体の積層膜中に含まれるバインダーを「バインダー成分c」と表すが、バインダー原料Cがそのままバインダー成分cとして存在する場合もある(つまり、塗料組成物のバインダー原料Cが、そのままの形で積層膜中のバインダー成分cとして存在する態様も含む)。
[0079]
 バインダー原料Cとしては特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー原料Cであることが好ましく、バインダー原料Cは一種類であってもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。また粒子を膜中に保持する観点より、前述の反応性部位、つまり分子中にアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基を有しているバインダー原料Cであることが好ましい。さらにバインダー原料Cの前述の反応性部位には好ましい範囲が存在する。具体的には単位構成あたり平均2以上15以下の反応性部位を有することが好ましく、平均6以上15以下の反応性部位を有することがより好ましい。また複数種のバインダー原料Cを混合する場合には、その反応性部位数の質量換算平均値が上記の範囲にあることが好ましく、特に好ましい形態として単位構成あたり平均2以上8以下の反応性部位を有するバインダー原料C1と単位構成あたり平均9以上15以下の反応性部位を有するバインダー原料C2の混合が挙げられる。バインダー原料Cの単位構成あたりの反応性部位数の平均値が2未満もしくは15を超える場合には、理想的な表面、界面の構造が得られず、十分な透明性や斜め方向からの視認に対する、透明導電層のパターンを見えにくくする効果が得られない場合がある。この要因は明らかではないが、反応性部位が分極した部位を有するため、塗剤中で各粒子成分の相溶性を調整する働きをしていると推測される。
[0080]
 このようなバインダー原料Cとして、成分中に多官能(メタ)アクリレートを用いるのが好ましく、代表的なものを以下に例示する。1分子中に、2個以上の(メタ)アクリロキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、オリゴマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(“アロニックス”シリーズなど)、日油株式会社;(“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
[0081]
 [有機溶媒]
 本発明の積層体の好ましい製造方法に用いられる塗料組成物は、前述のフッ素ポリマーa、粒子A、粒子B、バインダー原料Cに加えて、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒を含むことにより、塗布時に適度な流動性を与えることで塗膜の膜厚を均一にすることができ、また粒子の運動性を確保できるため表面移行性が良化し、良好な特性を発現できるため好ましい。
[0082]
 有機溶媒は、フッ素ポリマーa、粒子A、粒子B、バインダー原料Cが均一に溶解、もしくは分散していれば特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が250℃以下の有機溶媒が好ましい。具体的には、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類、含フッ素化合物類等が用いられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0083]
 アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。芳香族類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を挙げることができる。
[0084]
 [塗料組成物中のその他成分]
 本発明の積層体の好ましい製造方法に用いられる塗料組成物は、更に重合開始剤や硬化剤を含むことが好ましい。重合開始剤及び硬化剤は、粒子とバインダー原料との反応を促進したり、バインダー原料間の反応を促進したりするために用いられる。
[0085]
 該重合開始剤及び硬化剤は、塗料組成物に含まれるバインダー原料の反応性部位に応じて種々のものを使用できる。また、複数の重合開始剤を同時に用いてもよいし、単独で用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヒキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、などが挙げられる。
[0086]
 なお、該重合開始剤、硬化剤、触媒の含有割合は、塗料組成物中のバインダー原料100質量部に対して0.001~30質量部が好ましく、より好ましくは0.05~20質量部であり更に好ましくは0.1~10質量部である。
[0087]
 その他として、本発明の積層体の好ましい製造方法に用いられる塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、pH調整剤、安定化剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させてもよい。
[0088]
 [塗料組成物中の各成分の含有量]
 本発明の積層体の好ましい製造方法に用いられる塗料組成物は、[積層体の製造方法]の項で後述する「塗料組成物を1回塗布して、次いで乾燥、硬化することにより、屈折率の異なる2層からなる積層膜を形成する方法」を用いる場合には、粒子A/粒子B(質量比率)が、1/20~5/1であることが好ましい。粒子A/粒子B=1/20~5/1とすることで、得られる積層体の第1層の厚みと第2層の厚みの比を一定にすることができる。このため1回の塗布で第1層と第2層の厚みを同時に必要な厚みとすることが容易であるため好ましい。
[0089]
 粒子A/粒子B(質量比率)として、さらに好ましくは1/18~3/1、特に好ましくは1/15~2/1である。
[0090]
 また、好ましくは、塗料組成物100質量%において、粒子Aの含有量が0.03~26.3質量%、粒子Bの含有量が0.06~57.5質量%、フッ素ポリマーaの含有量が0.003~27.2質量%、バインダー原料の含有量が0.02~43.2質量%、有機溶媒の含有量が40~98質量%、開始剤、硬化剤、及び触媒などのその他の成分の含有量が0.1~20質量%含む態様である。
[0091]
 [支持基材]
 本発明の積層体、および本発明の透明導電性積層体は支持基材を有する。支持基材としてはガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも特にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
[0092]
 支持基材の光透過率は、80~100%であることが好ましく、86~100%であることがさらに好ましい。ここで光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361-1(1997)に従い測定することができる透明材料の透明性の指標である。透明導電性積層体としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇して、画像劣化が生じる場合がある。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。
[0093]
 支持基材のヘイズは0.01~2.0%であることが好ましく、0.01~1.0%であることがより好ましい。
[0094]
 支持基材の屈折率は1.4~1.7であることが好ましい。また、支持基材の屈折率は前記第2層の屈折率に近づくことがより好ましい。支持基材の屈折率と前記第2層の屈折率が近い場合には反射率スペクトルの揺らぎ(リップル)の発生を抑制することが出来る。なお、ここでいう屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。
[0095]
 支持基材は、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を含有してもよい。赤外線吸収剤の含有量は、支持基材の全成分100質量%において0.01~20質量%であることが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に含有してもよい。不活性無機化合物の例にはSiO 、TiO 、BaSO 、CaCO 、タルクおよびカオリンが含まれる。更に、支持基材に表面処理を実施してもよい。
[0096]
 支持基材の表面には、各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理、コロナ放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[0097]
 支持基材は、易接着層、ハードコート層、アンチブロッキング層、帯電防止層、紫外線吸収層、オリゴマーブロック層などの層(これらを機能性層と称する)を有してもよい。
[0098]
 さらに、本発明の積層体の好ましい製造方法では、支持基材の塗料組成物を塗布する側の面のJIS R 1683(2007)に基づく算術平均粗さRaは40nm以下であることが好ましい。算術平均粗さは35nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。算術平均粗さRaが40nmよりも大きくなったりすると、粒子aの表面移行性が不十分になって、膜中で凝集したり、第2層が第1層に浸入が過剰になるなどして、正面方向からの視認に対する、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターンを見えにくくする効果が得られなくなったりする場合がある。また、積層膜上に透明導電層を面内均一に形成できなくなって表面抵抗値が上昇したり、塗膜の透明性が低下したりする場合がある。
[0099]
 [積層体の製造方法]
 本発明の積層体の製造方法は、前述の支持基材の少なくとも片側に、前述の塗料組成物を塗布し、次いで乾燥、硬化することにより、積層膜の各層を形成する方法であることが好ましく、前述の塗料組成物を1回塗布して、次いで乾燥、硬化することにより、屈折率の異なる2層からなる積層膜を形成する方法であることが特に好ましい。
[0100]
 まず、本発明の積層体の好ましい製造方法では、塗料組成物を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許2681294号明細書参照)などにより支持基材上に塗布する。
[0101]
 次いで、支持基材上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体の積層膜中から完全に有機溶媒を除去することに加え、液膜中での粒子の運動を促進して表面移行性を向上させるという観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥初期においては0.1g/(m .s)以上1.4g/(m .s)以下の範囲の乾燥速度が得られるならば、特に特定の風速、温度に限定されない。
[0102]
 さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の積層膜に対して、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。この硬化工程は、前述の塗料組成物中のバインダー原料等の有する反応性部位間の反応を促進する工程を指す。硬化工程において、熱で硬化する場合には、支持基材の種類にもよるが、支持基材がプラスチックフィルムである場合には室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100~200℃、さらに好ましくは130~200℃である。
[0103]
 また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素分圧ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。また硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時に行ってもよい。
[0104]
 [透明導電性積層体]
 積層体の第1層上に透明導電層を形成することにより、本発明の透明導電性積層体を得ることができる。この透明導電性積層体とは、少なくとも支持基材側から第2層、第1層、及び透明導電層をこの順に積層した構成、すなわち、前記積層体の第1層の上に透明導電層を積層した構成である。
[0105]
 この透明導電層は、透明導電性酸化物を含む層とすることができる。本発明における透明導電性酸化物は、酸化インジウムまたは酸化亜鉛を主成分とするものであって、酸化インジウムを主成分とするものは、酸化インジウム単独でも使用することができるが、導電性を付与する目的でドーピングをすることもできる。ドーピングには例えば、錫、亜鉛、ニオブ、タングステン、チタン、ジルコニウム、モリブデンなどがあるが、中でも錫がドーピングされたもの(ITO)は、広く用いられている。酸化亜鉛を主成分とするものは、酸化亜鉛を単独で使用することもできるが、導電性を付与する目的でドーピングすることもできる。ドーピングには例えばインジウム、錫、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、ケイ素などがある。これらの透明導電性酸化物層は公知の手法、例えば、スパッタリング法、有機金属化学気相堆積法(MOCVD)、熱CVD法、プラズマCVD法、分子線ビームエピタキシー法(MBE)、またはパルスレーザー堆積法(PLD)などが挙げられるが、大面積に均一に製膜できるという観点からスパッタリング法が好ましい。
[0106]
 透明導電層が形成された透明導電性積層体は、導電性と光線透過率を上げるためにアニール処理をすることが好ましい。アニール雰囲気は真空または不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、酸素雰囲気でアニールすると透明導電性酸化物が熱酸化され、導電率が低下(表面抵抗値の上昇)することがある。アニール温度は結晶性が向上する温度以上が好ましいが、一方で支持基材の観点からすれば低い温度である方が、熱収縮、シワ、カール、オリゴマーの析出、密着性の低下、着色などの観点から低いほど好ましいため、導電性、光線透過率が得られる範囲でできるだけ低い温度で行うことが好ましい。
[0107]
 透明導電性積層体の表面抵抗値は用いられる用途により異なるが、特にパターニングを必要とする静電容量型タッチパネル用であれば、好ましくは50~500Ω/□、より好ましくは100~300Ω/□とすることによって使用できる。表面抵抗値が50Ω/□未満であったり、500Ω/□を超えたりする場合、タッチパネルの認識精度が低下する場合がある。
[0108]
 透明導電性積層体の透明導電層の膜厚は、4~50nmの範囲が好ましく、より好ましくは10~40nmである。透明導電層の膜厚が4nm未満の場合、連続した薄膜になりにくく、良好な導電性が得られにくくなる場合がある。一方、透明導電層の膜厚が50nmよりも厚い場合、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となる場合がある。
[0109]
 [透明導電性積層体の製造方法]
 本発明の透明導電性積層体は、本発明の積層体の第1層上に、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などを、必要とする膜厚に応じて、適宜用いて得ることができる。例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。さらに、導電性、光透過性の向上のためアニール処理を行うことが好ましい。
[0110]
 [用途]
 本発明の積層体や透明導電性積層体は光散乱を低減したり、パターン見えを抑制したりすることができるため、各種電子機器に使用されるタッチパネル、およびタッチパネルの透明電極に使用される透明導電性積層体、透明導電性積層体の屈折率調整に用いる積層体として好適に用いることができる。本発明の積層体に透明導電層を積層してなる透明導電性積層体は、透明導電層にパターンを形成することにより、タッチパネルの透明電極として特に好ましく用いることができる。
実施例
[0111]
 次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[0112]
 [粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液の調製]
 [粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液(A-1)の調製]
 イソプロパノール分散コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製コロイダルシリカゾル:固形分を20質量%に希釈、数平均粒子径12nm)10gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.8gと10質量%蟻酸水溶液0.26g、水0.46gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、C 13-(CH -OCO-CH=CH 2 2.5g及び2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.17gを加えた後、60分間80℃にて加熱撹拌した。その後、メチルエチルケトンを加え希釈し、固形分3.5質量%の「粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液(A-1)」とした。
[0113]
 [粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液(A-2)~(A-7)の調製]
表1に記載の処方で無機粒子材料および添加量とすること以外は、粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液(A-1)と同様の方法で調製した。
[0114]
 [粒子Bの選定]
 下記材料をそれぞれ粒子Bとした。
[0115]
 [粒子B(1)]
 酸化ジルコニウム粒子分散物(日産化学工業株式会社製:固形分30質量%、数平均粒子径 10nm)。
[0116]
 [粒子B(2)]
 二酸化チタン粒子分散物(ELCOM 日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%、数平均粒子径 8nm)。
[0117]
 [塗料組成物の調製]
 [塗料組成物1の調製]
 下記材料を混合し、塗料組成物1を得た。
[0118]
 粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液(A-1)  53.0 質量部
 粒子B(1)  7.8 質量部
 バインダー原料C1(ペンタエリスリトールトリアクリレート:PETA) 0.46 質量部
 バインダー原料C2(ダイセル・オルネクス株式会社製ウレタンアクリレート:KRM8452)  1.09 質量部
 光重合開始剤 (イルガキュア127:Irg127 チバスペシャリティケミカルズ社製)  0.26質量部
 有機溶媒
 メチルイソブチルケトン(MIBK)  26.4 質量部
 エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(EGMBA)  11.0 質量部。
[0119]
 [塗料組成物2の調製]
 バインダー原料C1として(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:DPHA)を用いること以外は塗料組成物1の調製と同様の方法で調製した。
[0120]
 [塗料組成物3の調製]
 下記材料を混合し、塗料組成物3を得た。
[0121]
 粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液(A-2)  53.0 質量部
 粒子B(1)  7.8 質量部
 バインダー原料C1(大阪有機化学工業トリペンタエリスリトールアクリレート:ビスコート#802)  1.55 質量部
 光重合開始剤 (イルガキュア127:Irg127 チバスペシャリティケミカルズ社製)  0.25質量部
 有機溶媒
 メチルイソブチルケトン(MIBK)  26.4 質量部
 エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(EGMBA)  11.0 質量部。
[0122]
 [塗料組成物4~7および11の調製]
 表2に記載の粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液、粒子B、バインダー原料C1および有機溶媒を組み合わせて使用すること以外は塗料組成物3の調製と同様の方法で調製した。
[0123]
 [塗料組成物8の調製]
 下記材料を混合し、塗料組成物8を得た。
[0124]
 粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液(A-2)  53.0 質量部
 粒子B(1)  6.5 質量部
 バインダー原料C1(大阪有機化学工業トリペンタエリスリトールアクリレート:ビスコート#802)  1.95 質量部
 光重合開始剤 (イルガキュア127:Irg127 チバスペシャリティケミカルズ社製)  0.25質量部
 有機溶媒
 メチルイソブチルケトン(MIBK)  27.3 質量部
 エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(EGMBA)  11.0 質量部。
[0125]
 [塗料組成物9の調製]
 下記材料を混合し塗料組成物9を得た。
[0126]
 粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液(A-4)  53.8 質量部
 バインダー原料(ペンタエリスリトールトリアクリレート:PETA)  0.31質量部
 光重合開始剤 (イルガキュア127:Irg127 チバスペシャリティケミカルズ社製)  0.05質量部
 有機溶媒
 メチルイソブチルケトン(MEK)  34.84 質量部
 エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(EGMBA)  11.0 質量部。
[0127]
 [塗料組成物10の調製]
 下記材料を混合し塗料組成物10を得た。
[0128]
 粒子B(2)  7.7 質量部
 バインダー原料(ペンタエリスリトールトリアクリレート:PETA)  1.23質量部
 光重合開始剤 (イルガキュア127:Irg127 チバスペシャリティケミカルズ社製)   0.20質量部
 有機溶媒
 メチルイソブチルケトン(MEK)  79.87 質量部
 エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(EGMBA)  11.0 質量部。
[0129]
 [塗料組成物12、13および18の調整]
 表2に記載に従って、粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液として(A-5)、(A-6)、(A-7)を、バインダー原料C2としてダイセル・オルネクス株式会社製ウレタンアクリレート:KRM7804を、それぞれ使用した以外は、塗料組成物3の調製と同様の方法で調製した。
[0130]
 [塗料組成物14~17および19、20の調整]
 表2に記載に従って、バインダー原料C1としてダイセル・オルネクス株式会社製ウレタンアクリレート:KRM4858、ペンタエリスリトールトリアクリレート:PETA、大阪有機化学工業トリペンタエリスリトールアクリレート:ビスコート#802、大阪有機化学工業フェノール変性アクリレート:HQMAを、バインダー原料C2としてダイセル・オルネクス株式会社製ウレタンアクリレート:KRM8655、大阪有機化学工業多分岐デンドリマー型アクリレート:STAR-501、ダイセル・オルネクス株式会社製ウレタンアクリレート:KRM7804を、それぞれ使用した以外は、塗料組成物1の調製と同様の方法で調製した。
[0131]
 [ハードコート層の作成]
 下記材料を混合しハードコート塗料組成物を得た。
[0132]
 ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)  30.0質量部
 イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製)  1.5質量部
 メチルイソブチルケトン(MIBK)  73.5質量部。
[0133]
 次いで、前述のハードコート塗料組成物を、バーコーターを用いて、固形分塗工膜厚が2μmになるようにバーコーターの番手を調整して塗工した。支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗工されている“ルミラー”(登録商標)U48(東レ(株)製)を用いた。
[0134]
 [積層体の製造方法]
 以下、積層体の作成方法を示す。各積層体の構成を表3に示す。
[0135]
 ハードコート層上に、前述の塗料組成物をバーコーター(#3)で塗布後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
第一段階
 熱風温度 50℃
 熱風風速 1.5m/s
 風向 塗布面に対して平行
 乾燥時間 0.5分間
第二段階
 熱風温度 100℃
 熱風風速 5m/s
 風向 塗布面に対して垂直
 乾燥時間 1分間
なお、熱風の風速は吹き出し部の動圧測定値から風速に換算した値である。
[0136]
 乾燥後、160W/cm の高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm 、積算光量800mJ/cm の紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させた。
[0137]
 表4に示す組み合わせで、実施例1~6、比較例1~6の積層体を作成した。なお実施例6についてはバーコーター(#5)を、比較例6についてはバーコーター(#7)を用いる以外は上記の方法と同様に、塗料組成物(1)を塗布、乾燥させることで作成した。また比較例4については前述の塗料組成物11、および10をこの順番に上記の条件にて塗布し、積層体を作成した。
[0138]
 [第1層および第2層の屈折率]
 第1層、第2層の個々の屈折率は、積層体の積層膜に対して反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名[FE-3000])により、300~800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE-Analysis]を用い、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、各層の550nmにおける屈折率を求めた。
[0139]
 屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(数式1)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C 、C 、C )を計算し、550nmにおける屈折率を算出、第1層の屈折率をn1、第2層の屈折率をn2とした。
[0140]
[数1]


[0141]
 [算術平均粗さRa]
 下記の装置と条件にて、表面構造の測定を行い、JIS B0601(2001)で規定する中心線平均粗さRaを求めた。
装置:Nanoscope IIIa (Degital Instruments社製)
測定モード:タッピングモード
走査範囲:5μm×5μm
分解能:512×512 pixel。
[0142]
 [積層体の透明性]
 積層体の透明性はヘイズを測定することにより判定した。ヘイズの測定はJIS-K7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製ヘイズメーターを用いて、積層体サンプルの支持基材とは反対側(積層膜側)から光を透過するように装置に置いて測定を行った。なお、同一サンプルの異なる3箇所で測定し、その平均値を積層体のヘイズ(Hz)とした。
[0143]
 [実測ブリュースター角]
 積層体の第1層-空気層の界面の実測ブリュースター角は、U-4100形分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製)用、微小角度可変絶対反射付属装置を用いて測定した。まず、下記の測定条件の下、入射角50°から60°の0.5°毎の反射率スペクトルを測定し、各々の反射率スペクトルについて、380nm~780nmの範囲での0.5°毎の反射率値の平均値として平均反射率を算出した。次いで、前述の平均反射率を入射角に対してプロットし、平均反射率が最小となる角度を読み取った。同様の測定を積層体の第1層の表面より無作為に選定した5か所にて実施し、その平均値を実測ブリュースター角θr1とした。
<測定条件>
測定範囲     : 340nm~800nm
スリット幅    : 2nm
スキャンスピード : 600nm/min
偏光素子     : P偏光
測定入射角度   : 50°~60°。
[0144]
 [第1層および第2層の断面形状および膜厚]
 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の第1層と第2層の断面形状と層厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。積層膜の断面の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から、ソフトウェア(画像処理ソフトImageJ/開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))にて、各層の厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して求めた平均値を膜厚とした。
[0145]
 [面内構成比率]
 まず、面内構成比率の算出方法の概要を、図4を用いて説明する。面内構成比率は、断面観察像において、下地基材-第2層の界面(22)に平行な任意の直線(23)と、画像処理によって得られる第1層と第2層の境界線(24)から見積もられる値である。任意の直線(23)は、境界線(24)によって、第1層に属する線分(25)と第2層に属する線分(26)に分割される。この線分の長さが線分の全長に占める割合を、面内において各成分が占める面積比率を代表する値として使用する。
[0146]
 具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、任意の面内において相互に浸入した第1層と第2層が占める領域の比率を、下記の方法にて算出した。積層膜の断面の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で画像を撮影した。次いで、画像処理ソフトEasyAccess Ver6.7.1.23 にて、下地基材-第2層の界面(22)が水平となるように回転・トリミング加工を施したのち、画像をグレースケールに変換し、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整、さらに、第1層と第2層の境界線(24)が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。次いで、ソフトウェア(画像処理ソフトImageJ/開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))を用いて、前述の第1層と第2層の境界を境に画素の2値化を行い、Analize Particles(粒子解析)機能により前述の第1層と第2層の境界線(24)の座標情報を抽出した。続いて、面内構成比率を算出する任意の直線(23)と、前述の第1層と第2層の境界線(24)の座標情報を照合し、交点の座標により「面内構成比率を算出する線分」を「第1層に属する線分(25)」と「第2層に属する線分(26)」に分割した。この時、「第1層に属する線分(25)」の長さの合計をL1、「第2層に属する線分(26)」の長さの合計をL2とし、その合計で算出される「面内構成比率を算出する線分」の長さLに対する割合を「面内構成比率」と定義し、算出した。
[0147]
 [第1層と第2層が相互に侵入した領域の厚み]
 上記の方法で算出した面内構成比率が第1層、第2層共に90%に満たない領域を「第1層と第2層が相互に侵入した領域」と定義する。この領域の厚みを下記の手順にて算出した。上記の面内構成比率の算出方法に従って、下地基材-第2層の界面に平行な各線分上における第2層の面内構成比率を算出し、縦軸を面内構成比率、横軸を下地基材-第2層の界面からの距離としたプロットを作成した。このプロットから第2層の面内構成比率が10%より大きく90%より小さい部分の距離を読み取り、第1層と第2層が相互に侵入した領域の厚みとした。
[0148]
 なお、一連の画像処理により算出される長さの測定下限は、「断面観察時の倍率」と「画像に含まれる画素数」から決定される。上述の解析時の断面像の画素数は1,280×1,024であり、得られた断面像の短辺の長さがおよそ500nmであったことから、ここでは概ね0.5nm前後が測定下限となる。すなわち、概ね0.5nm前後の間隔で厚み方向に直線(23)を引き、上述したプロットを作成することになる。
[0149]
 [透明導電層の形成]
 前記積層体の第1層上にインジウム-スズ複合酸化物からなる透明導電層を成膜した。このとき、スパッタリング前の圧力を1×10 -5Paとし、ターゲットとして酸化スズを36質量%含有した酸化インジウム(住友金属鉱山株式会社製、密度6.9g/cm )に用いて、2W/cm のDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、O ガスを表面抵抗値が最小となる流速で流し、0.67Paの雰囲気下でDCマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した。
[0150]
 ただし、通常のDCではなく、アーク放電を防止するために、日本イーエヌアイ製RPG-100を用いて5μs幅のパルスを50kHz周期で印加した。また、センターロール温度は10℃とし、スパッタリングを行った。
[0151]
 このとき、雰囲気の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(LEYBOLD INFICON社製、XPR2)にて常時観測しながら、インジウム-スズ複合酸化物からなる透明導電層中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計及びDC電源にフィートバックした。
[0152]
 スパッタリング後、真空度0.01Pa以下、温度160℃の条件下で10分間アニールを行い厚さ30nm、屈折率1.96のインジウム-スズ複合酸化物からなる透明導電層を堆積させて透明導電性積層体を作成した。
[0153]
 [透明導電性積層体の透明導電層のパターニング]
 前記透明導電層の形成により作成した透明導電性積層体に、エッチングレジストを印刷した後、1N塩酸中に浸漬、次いで、アルカリ浸漬により、1cm×3cmの透明導電層のパターンを形成した(以下、これをパターン形成済み透明導電性積層体とする)。
[0154]
 [透明導電層の密着性]
 透明導電層の形成で形成した透明導電性積層体に対して、常態下(23℃、相対湿度65%)で、透明導電層を有する面の1cm×1cmの領域を10マス×10マスに均等に分割する1mm のクロスカットを100個入れ、ニチバン株式会社製セロハンテープ(型番:CT405AP-12)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、テープ端部を持ち、90度方向に瞬時に剥離し、透明導電層の残存した個数により5段階評価(5:91個~100個、4:81個~90個、3:71個~80個、2:61個~70個、1:0個~60個)を行った。
[0155]
 [透明導電層のパターン視認性(正面方向)]
 パターン形成済み透明導電性積層体の透明導電層とは反対側に黒色のテープを貼り付け、サンプルに対して正面から観察したときの透明導電層パターンの見え方を5段階で評価した。
5: パターンが全く見えない
4: パターンがかすかに見える。
3: パターンがやや見えるが、気にならない。
2: パターンがやや見え、気になる。
1: パターンが明確に見える。
[0156]
 [透明導電層のパターン視認性(斜め方向)]
 パターン形成済み透明導電性積層体の透明導電層とは反対側に黒色のテープを貼り付け、サンプルに対して40~60°方向から蛍光灯光を入射させ、積層体表面における反射光のうちP偏光のみを偏光素子を用いて選択的に観察したときの透明導電層のパターンの見え方を5段階で評価した。
5: パターンが全く見えない
4: パターンがかすかに見える。
3: パターンがやや見えるが、気にならない。
2: パターンがやや見え、気になる。
1: パターンが明確に見える。
[0157]
 [面内ばらつき]
 パターン形成済み透明導電性積層体を20cm×30cmの大きさのシート状に切り出し、透明導電層とは反対側に黒色のテープを貼り付け、サンプルシートの中央に対して正面から観察した時の、シート内での積層体の色味の均一性および透明導電層のパターンの見え方を5段階で評価した。
5: 色味に偏りがなく、透明導電層のパターンはシート全域で正面方向同等に見える。
4: 色味にかすかなムラがあるが、透明導電層のパターンの見え方には影響しない。
3: 色味にややムラがあるが、透明導電層のパターンの見え方には影響しない。
2: 色味にムラがあり、シート内で部分的に透明導電層のパターンがやや目立つ。
1: 色味に明確なムラがあり、シート内で部分的に透明導電層のパターンが目立つ。
[0158]
 表1に粒子Aおよびフッ素ポリマーaを含有する混合液の処方を、表2に塗料組成物の組成を、表3に積層体の構成と評価結果を、表4に積層体のブリュースター角と透明導電性積層体の評価結果をまとめた。
[0159]
[表1]


[0160]
[表2]


[0161]
[表3]


[0162]
[表4]


符号の説明

[0163]
1、8、15  ・・・積層体
2、9、16  ・・・支持基材
3、10、17 ・・・積層膜
4、11、18 ・・・第1層
5、12、19 ・・・第2層
6、13、20 ・・・粒子成分aを構成する無機粒子
7、14、21 ・・・粒子成分bを構成する無機粒子
22 ・・・下地基材-第2層の界面
23 ・・・面内構成比率を算出する任意の直線
24 ・・・第1層と第2層の境界線
25 ・・・第1層に属する線分
26 ・・・第2層に属する線分

請求の範囲

[請求項1]
 支持基材の少なくとも片側に支持基材側から第2層、第1層の順に積層された積層膜を有する積層体であって、該第1層と該第2層の屈折率が異なり、かつ以下の(A)~(D)をすべて満たす積層体。
(A)n2>n1        ・・・(式1)
(B)Ra1≦5nm      ・・・(式2)
(C)Hz≦0.6%      ・・・(式3)
(D)θr1-θi1>1.0° ・・・(式4)
n1:第1層の屈折率、n2:第2層の屈折率
Ra1:第1層-空気層界面の算術平均粗さ
Hz:積層体のヘイズ
θi1:第1層の屈折率n1と空気の屈折率n0から以下の式によって算出される第1層-空気層界面の理論ブリュースター角
tanθi1=n1/n0
θr1:第1層-空気層界面にてp波反射率が極小となる実測ブリュースター角
[請求項2]
 前記積層膜が以下の(E)~(G)をすべて満たす請求項1に記載の積層体。
(E)0.2≦n2-n1   ・・・(式5)
(F)Tt≦150nm    ・・・(式6)
(G)55°≦θr1≦60° ・・・(式7)
Tt:積層膜の膜厚
[請求項3]
 請求項1または2に記載の積層体に透明導電層を積層してなる透明導電性積層体。
[請求項4]
 請求項3に記載の透明導電性積層体を用いたタッチパネル。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]