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1. (WO2015146396) エンジン油組成物
Document

明 細 書

発明の名称 エンジン油組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006   0007  

発明の効果

0008  

発明を実施するための形態

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097  

実施例

0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : エンジン油組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、省燃費性能に優れ、特に、省燃費性能と耐摩耗性の両者に優れたエンジン油組成物に関する。

背景技術

[0002]
 近年、地球温暖化などの環境問題への対応として、エンジン油に対しても省燃費性能が求められてきている。エンジン油による省燃費性向上技術としては、低粘度化することにより流体潤滑領域での摩擦を低減する技術と、摩擦低減剤を配合することにより境界潤滑領域での摩擦を低減する技術とが挙げられる。
 しかしながら、過度な低粘度化は、油膜強度の不足を招き、エンジン耐久性への悪影響や境界潤滑領域での摩擦増大が問題となる。これは、ガソリン及びディーゼルの両エンジンに共通する問題であるが、特にディーゼルエンジンにおいて、エンジン油の低粘度化の悪影響が大きい。
[0003]
 特許文献1~3は、高温・高剪断下において一定の粘度を有すると共に省燃費性能の良好なエンジン油として、粘度指数が120以上の潤滑油基油に特定の粘度指数向上剤を含有させたエンジン油を開示している。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2010-095662号公報
特許文献2 : 特開2010-095663号公報
特許文献3 : 特開2010-095664号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 特許文献1~3に係るエンジン油は、一定の燃費低減効果を有するものの、いまだ満足のいく性能ではない。
 本発明の課題は、省燃費性能に優れ、かつ耐摩耗性に優れたエンジン油組成物を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明者らは前記課題について鋭意研究した結果、特定の性状を有する潤滑油基油に、粘度指数向上剤としてスターポリマー及び窒素含有基を有するポリマー、並びに摩擦調整剤としてアミド化合物、イミド化合物、又は両化合物の混合物を含有させることにより、優れた耐摩耗性と省燃費効果を同時に発現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0007]
 本発明によれば、飽和分が70質量%以上、及び粘度指数が90以上、160以下の潤滑油基油と、(A)スターポリマーA-1及び重量平均分子量が200,000以上、400,000以下の窒素含有基を有するポリマーA-2と、(B)アミド化合物及びイミド化合物の少なくとも1種と、を含むエンジン油組成物が提供される。
 前記スターポリマーは、ポリアルケニル化合物であるコア、及び該コアに結合する4~15のアームを有するポリマーであることが好ましい。
 また本発明によれば、飽和分が70質量%以上、及び粘度指数が90以上、160以下の潤滑油基油と、(A)スターポリマーA-1及び重量平均分子量が200,000以上、400,000以下の窒素含有基を有するポリマーA-2と、(B)アミド化合物及びイミド化合物の少なくとも1種と、を含む組成物の、エンジン油製造における使用が提供される。
 更に本発明によれば、飽和分が70質量%以上、及び粘度指数が90以上、160以下の潤滑油基油と、(A)スターポリマーA-1及び重量平均分子量が200,000以上、400,000以下の窒素含有基を有するポリマーA-2と、(B)アミド化合物及びイミド化合物の少なくとも1種と、を含む組成物を、エンジン油としてエンジン機関内に循環させることを特徴とする、ディーゼルエンジン等のエンジンの燃費抑制方法が提供される。

発明の効果

[0008]
 本発明のエンジン油組成物は、特定性状の潤滑油基油中にスターポリマーを含む特定のポリマーと、特定の摩耗調整剤とを組み合わせて含有するので、優れた省燃費性能と極めて良好な耐摩耗性とを同時に発揮することができる。

発明を実施するための形態

[0009]
 以下、本発明について詳述する。
 本発明のエンジン油組成物の基油は、飽和分が70質量%以上、粘度指数が90以上、160以下の潤滑油基油(以後、単に基油と称する場合もある)である。
[0010]
 当該基油の飽和分は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。特に、ほぼ全てが飽和分、具体的には飽和分が99質量%以上であることが最も好ましい。その上限値は100質量%である。飽和分が70質量%未満では、高温高剪断の潤滑条件で使用されるには、酸化安定性が十分でなく、また粘度-温度特性が悪く本発明の性能を実現できない。
 上記基油の飽和分の含有量は、ASTM D2007-11に準拠して測定される質量%の値を意味する。
[0011]
 上記基油の粘度指数は110以上が好ましく、より好ましくは120以上、さらに好ましくは125以上であり、その上限は160以下である。粘度指数が90未満であると、粘度-温度特性、熱酸化安定性、揮発防止性が悪化するだけでなく、摩擦係数が上昇する傾向にあり、また、摩耗防止性が低下する傾向にある。粘度指数が160を超えると、低温粘度特性が低下する傾向にある。
 上記粘度指数は、JIS K 2283-1993に準拠して測定される粘度指数を意味する。
[0012]
 上記基油の%Cpは60以上が好ましく、70以上がより好ましい。また、100以下が好ましく、95以下がより好ましい。上記%Cpは、基油中のパラフィンを構成する炭素の全炭素数に対する百分率(%)を意味し、ASTM D3238に準拠して測定される。
 上記基油の%C Nは40以下が好ましく、30以下がより好ましい。また、1以上が好ましく、3以上がより好ましい。上記%C Nは、基油中のナフテン環を構成する炭素の全炭素数に対する百分率(%)を意味し、ASTM D3238に準拠して測定される。
 上記基油の%C Aは10以下が好ましく、2以下がより好ましい。また、0以上が好ましい。上記%C Aは、基油中の芳香環を構成する炭素の全炭素数に対する百分率(%)を意味し、ASTM D3238に準拠して測定される。
[0013]
 本発明に用いる基油としては、鉱油系基油又は合成油系基油が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても良い。
[0014]
 鉱油系基油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化異性化、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて精製して得られるパラフィン系鉱油、あるいはノルマルパラフィン系鉱油、イソパラフィン系鉱油が挙げられる。
 特に、常圧蒸留ボトム油や減圧蒸留装置から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または当該脱ろう処理後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油が特に好ましい。なかでも、接触脱ろう処理をしたものがより好ましい。
[0015]
 前記鉱油系基油の流動点は-12.5℃以下が好ましく、-15℃以下がより好ましい。また-35℃より高いことが好ましく、-30℃以上がより好ましく、-25℃以上がさらに好ましく、-20℃以上が特に好ましい。これは流動点が-12.5℃よりも高いと低温時の特性が悪化し、-35℃以下では十分な粘度指数が得られないためである。上記流動点とは、JIS K 2269-1987に準拠して測定される流動点を意味する。
[0016]
 鉱油系基油におけるNOACK値(NOACK蒸発量)は15質量%以下が好ましい。なお、NOACK値とは、ASTM D 5800-95に準拠して測定された蒸発損失量(質量%)を意味する。
[0017]
 鉱油系基油の硫黄分含有量については特に制限はないが、熱・酸化安定性の更なる向上及び低硫黄化の点から、基油中の硫黄分の含有量は100質量ppm以下が好ましく、50質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下が更に好ましく、5質量ppm以下が特に好ましい。この硫黄分はJIS 5S-38-2003に準拠して測定される値である。
[0018]
 鉱油系基油の芳香族分の含有量は特に制限はないが、熱・酸化安定性の更なる向上及び低硫黄化の点から、基油中の芳香族分の含有量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。30質量%を超すと、高温高剪断の潤滑条件での使用時に、酸化安定性が十分でなく、また粘度-温度特性が悪化し易く本発明の効果を発揮できないおそれがある。
[0019]
 合成油系基油としては、例えば、ポリα-オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のジエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテルが挙げられ、中でも、ポリα-オレフィンが好ましい。ポリα-オレフィンとしては、典型的には、炭素数2~32、好ましくは6~16の1-オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン-プロピレンコオリゴマー等のα-オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー及びそれらの水素化物が挙げられる。
[0020]
 鉱油系、合成油系いずれも、基油の100℃における動粘度は1mm 2/s以上が好ましく、2mm 2/s以上がより好ましく、3mm 2/s以上がさらに好ましく、3.5mm 2/s以上が特に好ましい。一方、10mm 2/s以下が好ましく、5mm 2/s以下がさらに好ましく、4.5mm 2/s以下が特に好ましい。100℃動粘度が10mm 2/sを超える場合には、低温粘度特性が悪化し、また十分な省燃費性が得られないおそれがあり、1mm 2/s未満の場合は潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、またエンジン油組成物の蒸発損失が大きくなるおそれがある。
 上記100℃における動粘度は、ASTM D-445に規定される100℃での動粘度を示す。
[0021]
 鉱油系、合成油系いずれも、基油の40℃における動粘度は8mm 2/s以上が好ましく、10mm 2/s以上がより好ましく、12mm 2/s以上がさらに好ましい。一方、45mm 2/s以下が好ましく、40mm 2/s以下がより好ましく、36mm 2/s以下がさらに好ましい。40℃における動粘度が8mm 2/s未満だと潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、またエンジン油組成物の蒸発損失が大きくなる恐れがあり、45mm 2/sを超えると低温粘度特性が悪化し、十分な省燃費性が得られない恐れがある。
 上記40℃における動粘度は、ASTM D-445に規定される40℃での動粘度を示す。
[0022]
 本発明のエンジン油組成物は、粘度指数向上剤のうちの必須成分(A)として、スターポリマーA-1と重量平均分子量が200,000以上、400,000以下の窒素含有基を有するポリマーA-2とを含有する。
[0023]
 スターポリマーA-1は、コアと称される分子中心部から星形を形成するように複数のアームが外方に伸びている形状のポリマーを意味する。
 該スターポリマーは、ポリアルケニル化合物であるコア、及び該コアに結合する4以上のアームを有するポリマーであることが好ましい。コアに結合するアームの数は、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上である。またアーム数は20以下が好ましく、15以下がより好ましい。
 アーム数が4未満では剪断安定性が十分でなく、使用時間の経過に伴い粘度が低下し、本来必要な粘度を確保できないおそれがある。またアーム数が20を超えると、高剪断下における粘度低下が十分ではなく、本発明の目的である省燃費性を確保できなくなるおそれがある。
[0024]
 前記好ましいコアであるポリアルケニル化合物を構成するコア形成モノマーとしては、ジビニルベンゼンやポリビニル脂肪族化合物など、2重結合を2つ以上持つモノマーが好ましく、特に、ジビニルベンゼンが好ましい。前記アームは、アーム形成モノマーの重合体である。アーム形成モノマーとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン等、2重結合を2つ持つ脂肪族ジエンが挙げられる。アームは、コア形成モノマーの重合体であるポリアルケニル化合物中の2重結合部を起点として、共重合反応により重合鎖が伸びており、当該共重合反応後に残存する2重結合は通常水添(水素添加)される。
[0025]
 アームの構造としては、水添された重合鎖の末端に、スチレンやアルケン等の芳香族モノマー又は脂肪族モノマーがブロック重合により結合しているものが好ましい。より好ましくは、上記末端にポリスチレンが存在する構造が好ましい。さらには、スターポリマー中の全てのアームの末端にポリスチレンが存在する構造であることが好ましい。
 アームの2重結合部分はほぼ全てが水添されていることが好ましい。このような水添されたアームを、末端のポリスチレン等も含めて水添ポリジエンと称することもある。
[0026]
 上記ポリスチレンを有する場合、その含有量は、スターポリマー全量基準で2mol%以上が好ましく、3mol%以上がより好ましい。また、10mol%以下が好ましく、さらには7mol%以下がより好ましい。ポリスチレンの含有量が2mol%未満では十分な高温剪断粘度の低下が得られない恐れがあり、10mol%より多い場合は、基油に対して十分な溶解性を得ることが困難になる恐れがある。
[0027]
 スターポリマー中のアームの重量平均分子量は、通常5,000~600,000、より好ましくは10,000~500,000、さらに好ましくは10,000~300,000である。剪断安定性が良好で、耐摩耗性に優れるからである。
[0028]
 スターポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10,000~1,000,000、より好ましくは100,000~800,000、さらに好ましくは300,000~600,000である。剪断安定性が良好だからである。
 重量平均分子量は、スターポリマーA-1及び後述するポリマーA-2ともに、次の条件で測定できる。
 測定装置: Waters社製 Alliance 2695
 カラム: 東ソーGMH6×2(本)
 溶媒: テトラヒドロフラン
 検出器: RI
 標準物質: ポリスチレン
 測定条件: 流速1mL/min、サンプル濃度2.0質量%、打込量 100μL
[0029]
 スターポリマーのPSSI(Permanent Shear Stability Index)は45以下が好ましく、より好ましくは40以下である。PSSIが45を超える場合は剪断安定性が悪化するため、初期の動粘度を高める必要が生じ、省燃費性を悪化させるおそれがある。また、PSSIが1未満の場合には潤滑油基油に溶解させた場合の粘度指数向上効果が小さく、省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがある。
 上記「PSSI」は、ASTM D 6022-01(Standard Practice for Calculation of Permanent Shear Stability Index)に準拠し、ASTM D 6278-02(Test Method for Shear Stability of Polymer Containing Fluids Using a European Diesel Injector Apparatus)により測定されたデータに基づいて計算された、ポリマーの永久剪断安定性指数を意味する。
[0030]
 上記スターポリマーの製造方法は、特に制限されず、例えば、コア形成モノマーであるジビニルベンゼン等をラジカル重合した後、形成された該コア中に存在する2重結合を起点としてジエンを同様にラジカル重合させ、次いで水添及び末端のポリスチレンの形成を行うことにより製造することができる。なお、アーム末端のポリスチレン形成と水添は、どちらを先に行ってもよい。
 あるいは、末端に反応起点を有するアームのポリマーを形成後、コア形成モノマーと反応させ、コアの形成とアームの結合とを同時に行う方法、又は、コアとアームのポリマーをそれぞれ形成後、その反応起点同士を反応させる方法を採用することができる。
 より具体的には、例えば、米国特許第4116917号明細書、同第4141847号明細書、同第4346193号明細書、同第4409120号明細書、あるいは特表2002-504589号公報、特開2013-129835号公報に示される方法を適用することができる。
 また、上記スターポリマーA-1として、各種市販品を用いることもできる。
[0031]
 本発明のエンジン油組成物における、スターポリマーA-1の含有割合は、エンジン油組成物全量基準で、少なくとも4質量%以上が好ましく、さらに好ましくは5質量%以上である。一方、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。含有量が4質量%より少ない場合には、省燃費効果の源泉である、100℃、1×10 6-1における高い高温高剪断粘度(HTHS粘度)を保ちながら、100℃、1×10 7-1における高温高剪断粘度を低くすることができず、また含有量が20質量%を超える場合には剪断安定性が悪化するおそれがある。
[0032]
 前記粘度指数向上剤のうちの必須成分である、特定の重量平均分子を有する窒素含有基を有するポリマーA-2(以下、ポリマーA-2と略すことがある)は、後述する窒素を含む化合物と他の化合物とを共重合させたポリマーである。
[0033]
 上記ポリマーA-2の重量平均分子量(M W)は、200,000以上、好ましくは250,000以上である。また、400,000以下、好ましくは380,000以下であり、より好ましくは360,000以下である。重量平均分子量が200,000未満の場合には十分な摩耗防止性能を得ることができないおそれがある。また、重量平均分子量が400,000を超える場合には、粘度増加効果が大きくなりすぎ、省燃費性や低温粘度特性に劣るおそれがあり、さらに、剪断安定性や潤滑油基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
[0034]
 上記ポリマーA-2中の窒素含有量は、ポリマーA-2全量基準で0.01~1.0質量%が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。また、0.5質量%以下が特に好ましい。0.01質量%未満では、本発明の目的である耐摩耗性を達成することができず、また1.0質量%を超えると、酸化安定性に懸念が生ずる恐れがある。
 上記ポリマーA-2のPSSIは60以下が好ましく、より好ましくは55以下、さらに好ましくは50以下である。PSSIが60以下であれば、剪断安定性がより良好で省燃費性がより向上する。
 また、PSSIは1以上が好ましい。その理由は、潤滑油基油に溶解させた場合の粘度指数向上効果が十分に発揮され、省燃費性や低温粘度特性が向上するからである。
[0035]
 ポリマーA-2は、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、スチレン-ジエンコポリマーの水素化物、エチレン-α-オレフィンコポリマー又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン-無水マレイン酸エステルコポリマー、ポリアルキルスチレン、及び(メタ)アクリレート-オレフィンコポリマー等の窒素を含有しない重合性化合物と、窒素含有化合物とを共重合させることにより得ることができる。
[0036]
 上記ポリマーA-2の製造に用いる窒素を含有しない重合性化合物の例として、ポリ(メタ)アクリレートについて以下に説明する。ここで、ポリ(メタ)アクリレートとは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリレートとメタクリレートとのコポリマー、及びこれらの混合物からなる群より選択されるものの総称を意味し、これらのいずれであってもよい。
 このポリ(メタ)クリレートを用いた場合のポリマーA-2として、次のような構成を例示することができる。すなわち、式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマー(以下、「化合物M-1」という。)と、式(2)及び(3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、それぞれ「化合物M-2」、「化合物M-3」という。)を共重合させた、窒素含有基を分子内に有するポリ(メタ)アクリレートを例示できる。
[0037]
[化1]


 式(1)中、R 1は水素原子又はメチル基を、R 2は炭素数1~18の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を示す。
[化2]


 式(2)中、R 3は水素原子又はメチル基を、R 4は炭素数1~18のアルキレン基を示し、E 1は窒素を1~2個、酸素を0~2個含有するアミン残基又は複素環残基を示す。aは0又は1である。
[化3]


 式(3)中、R 5は水素原子又はメチル基を、E 2は窒素を1~2個、酸素を0~2個含有するアミン残基又は複素環残基を示す。
[0038]
 式(2)又は式(3)において、E 1及びE 2で表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジノ基等が例示できる。
[0039]
 化合物M-2若しくはM-3の好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2-メチル-5-ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が例示できる。
[0040]
 化合物M-2若しくはM-3、又はこの両者(以下、M-2+M-3と表す)と化合物M-1との共重合体の共重合モル比については特に制限はないが、共重合体中のモル比として、M-1:M-2+M-3=99:1~80:20程度が好ましく、より好ましくは98:2~85:15、さらに好ましくは95:5~90:10である。
[0041]
 ポリマーA-2を得るための窒素を含有しない重合性化合物の他の例としては、スチレン-ジエンコポリマーの水素化物を挙げることができる。当該コポリマーも、コモノマーとしてスチレン及びジエンに加えて上記M-2+M-3を用いて、共重合されたものである。ジエンとしては、具体的には、ブタジエン、イソプレン等が好ましく、特にイソプレンが好ましい。なお、水素化は共重合後に行う。
[0042]
 ポリマーA-2を得るための窒素を含有しない重合性化合物の別の例としては、エチレン-α-オレフィンコポリマーを挙げることができる。当該コポリマーも、コモノマーとしてエチレン及びα-オレフィンに加えて上記M-2+M-3を用いて、共重合されたものである。α-オレフィンとしては、具体的にプロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、又は1-ドデセンが例示される。
[0043]
 本発明のエンジン油組成物中の粘度指数向上剤は、上述した(A)成分であるスターポリマーA-1及びポリマーA-2の2種のポリマーを必須として含むものであるが、本発明の効果を損なわない限りにおいて他の粘度指数向上剤を含有してもよい。
 当該他の粘度指数向上剤としては、例えば、エステル基含有粘度指数向上剤、及び上記例示したポリマーA-2に対応する化合物であって、窒素含有化合物を共重合させないものを例示できる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリレートである。本発明の効果を最大限に発揮する点において粘度指数向上剤は、(A)成分のみが好ましい。
[0044]
 (A)成分中のスターポリマーA-1の重量平均分子量(M w)と数平均分子量(M n)との比(M w/M n:多分散度)、並びにポリマーA-2のMw/Mn(多分散度)は、いずれも、5.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。また、M w/M nはいずれも1.0以上が好ましく、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上、特に好ましくは2.6以上である。M w/M nが5.0を超え、若しくは1.0未満になると、溶解性と粘度-温度特性の向上効果が低下する懸念があり、十分な貯蔵安定性や、省燃費性が維持できなくなるおそれがある。
[0045]
 (A)成分(スターポリマーA-1+ポリマーA-2)の含有量は、エンジン油組成物全量基準で、0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは1.0~15質量%、特に好ましくは1.5~12質量%である。含有量が0.1質量%より少ない場合には低温特性が不十分となるおそれがあり、また50質量%を超える場合には組成物の剪断安定性が悪化するおそれがある。
[0046]
 本発明のエンジン油組成物が、(A)成分以外の他の粘度指数向上剤を含むときは、当該他の粘度指数向上剤の含有量は、エンジン油組成物全量基準で、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
[0047]
 本発明のエンジン油組成物は、必須成分として(B)成分を含有し、この(B)成分は、具体的にはアミド化合物、イミド化合物及びこれら混合物からなる群より選択される摩擦調整剤である。アミド化合物としては、脂肪酸アミドが好ましく、イミド化合物としては、脂肪酸イミドが好ましく、特に、直鎖脂肪酸由来のものが好ましい。
[0048]
 脂肪酸アミドの具体例としては、窒素原子を一つと、炭素数10~30のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1つ有する脂肪酸アミドが挙げられる。当該脂肪酸アミドは、例えば、炭素数10~30のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸やその酸塩化物を、アンモニアや、炭素数1~30の炭化水素基又は水酸基含有炭化水素基のみを分子中に含有するアミン化合物等と反応させることによって得られる。アンモニアと炭素数12~24のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸とを反応させた、分子末端がアミド基である脂肪酸アミドが特に好ましい。
[0049]
 脂肪酸アミドの具体的化合物例として、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ヤシ油脂肪酸アミド、炭素数12~13の合成混合脂肪酸アミド、及びこれらの混合物等を挙げることができる。これらの脂肪酸アミドは摩擦低減効果に加え、摩耗防止効果に優れるので特に好ましい。
[0050]
 その他のアミド化合物としては、国際公開第2005037967号に例示される、オレイン酸ヒドラジド、ドデカン酸ヒドラジド、トリデカン酸ヒドラジド、テトラデカン酸ヒドラジド、ペンタデカン酸ヒドラジド、ヘキサデカン酸ヒドラジド、ヘプタデカン酸ヒドラジド、オクタデカン酸ヒドラジド、オレイン酸ヒドラジド(C 1733-C(=O)-NH-NH 2)、エルカ酸ヒドラジド(C 2141-C(=O)-NH-NH 2)等の炭素数12~24のアルキル基又はアルケニル基を有するヒドラジド化合物、及びそれらのホウ酸変性誘導体等の酸変性誘導体ヒドラジド、オレイルセミカルバジド等のセミカルバジド、オレイルウレア、ドデシルウレア、トリデシルウレア、テトラデシルウレア、ペンタデシルウレア、ヘキサデシルウレア、ヘプタデシルウレア、オクタデシルウレア、オレイルウレア(C 1835-NH-C(=O)-NH 2)等の炭素数12~24のアルキル基又はアルケニル基を有するウレア、及びそれらのホウ酸変性誘導体等の酸変性誘導体、オレイルウレイド等のウレイド、オレイルアロファン酸アミド等のアロファン酸アミド及びこれらの誘導体等が挙げられる。
[0051]
 アミド化合物の他の形態として、水酸基、カルボン酸基、又はこの両官能基を、同一分子内に有するアミド化合物を挙げることができる。例えば、炭素数10~30のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸やその酸塩化物と、水酸基を有する炭素数1~30のアミン化合物とを反応させて得られる水酸基含有脂肪酸アミド等が挙げられる。
 これらの中で、式(4)で表される化合物が好ましい。
[0052]
[化4]


 式(4)において、R 6は炭素数1~30の炭化水素基、好ましくは炭素数10~30の炭化水素基、より好ましくは炭素数12~24のアルキル基又はアルケニル基、特に好ましくは炭素数12~20のアルケニル基である。R 7は、炭素数1~30の炭化水素基又は水素原子であり、炭化水素基の場合は、好ましくは炭素数1~10の炭化水素基、より好ましくは炭素数1~4の炭化水素基であるが、特に好ましくは水素原子である。R 8は炭素数1~10の炭化水素基、より好ましくは炭素数1~4の炭化水素基、さらに好ましくは炭素数1~2の炭化水素基、最も好ましくは炭素数1の炭化水素基である。
[0053]
 式(4)で表される化合物は、例えば、ヒドロキシ酸と脂肪族アミンとの反応により合成することができる。ヒロドキシ酸のうち脂肪族ヒドロキシ酸が好ましく、さらに直鎖状脂肪族α-ヒドロキシ酸が好ましい。特に、α-ヒドロキシ酸の中でもグリコール酸が好ましい。その他、好ましい具体例として、N-オレオイルサルコシン等が挙げられる。
[0054]
 (B)成分としてのイミド化合物としては、直鎖状、又は分岐状、好ましくは分岐状の炭化水素基を1つ又は2つ有するモノ及び/又はビスコハク酸イミド、当該コハク酸イミドに、ホウ酸、リン酸、炭素数1~20のカルボン酸あるいは硫黄含有化合物から選ばれる1種又は2種以上を反応させたコハク酸イミド変性化合物等が例示できる。
[0055]
 上記コハク酸イミドの具体例としては、式(5)及び(6)で表される化合物を挙げることができる。
[化5]


[0056]
 式(5)及び(6)において、R 9及びR 10は、それぞれ個別に、炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24のアルキル基又はアルケニル基を、R 11及びR 12は、それぞれ個別に、炭素数1~4、好ましくは炭素数2~3のアルキレン基を、R 13は水素原子又は炭素数1~30、好ましくは炭素数8~30のアルキル基又はアルケニル基を示す。nは1~7の整数、好ましくは1~3の整数である。
[0057]
 摩擦調整剤である(B)成分の含有量は、エンジン油組成物全量基準で好ましくは0.01~10質量%、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。(B)成分の含有量が0.01質量%未満であると、その添加による摩擦低減効果が不十分となる傾向にあり、また10質量%を超えると、耐摩耗性添加剤などの効果が阻害されやすく、あるいは添加剤の溶解性が悪化する傾向にある。
[0058]
 (B)成分中の窒素原子含有量は、エンジン油組成物全量基準に対する含有量として、0.0005~0.4質量%が好ましく、より好ましくは0.001~0.3質量%、特に好ましくは0.005~0.25質量%である。0.0005質量%未満であると十分な摩耗防止性が得られないおそれがあり、また0.4質量%を超えると、エンジン油組成物中への溶解性が低下し、沈澱や濁りが生じるおそれがある。
[0059]
 本発明のエンジン油組成物は、金属系清浄剤を含有することができる。
 金属系清浄剤としては、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート、及びアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩又は塩基性塩を挙げることができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、マグネシウム又はカルシウムが好ましく、特にカルシウムが好ましい。これら各金属系清浄剤は任意に組み合わせて配合してもよい。
[0060]
 上記アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネートとしては、具体的には、通常分子量100~1500、好ましくは200~700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ金属/アルカリ土類金属塩を挙げることができる。アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。本発明においては、過塩基性のスルホネート及び/又は低塩基性のスルホネートを用いることが好ましい。
[0061]
 過塩基性のスルホネートの塩基価は通常150mgKOH/g以上、好ましくは200mgKOH/g以上、さらに好ましくは250mgKOH/g以上、もっとも好ましくは300mgKOH/g以上であり、また、350mgKOH/g以下が好ましい。
 当該過塩基性のスルホネートを、該エンジン油組成物の塩基価が通常2mgKOH/g以上、好ましくは3mgKOH/g以上、また、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下となるように含有することが好ましい。塩基価を2mgKOH/g以上とすることで、本発明のエンジン油組成物に要求される酸化安定性を向上させることができ、また、10mgKOH/g以下とすることで、灰分量を少なくし、燃焼室デポジットの低減が可能となる。
[0062]
 低塩基性のスルホネートの場合は、その塩基価が通常50mgKOH/g以下、好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下であり、また、好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上である。
 当該低塩基性のスルホネートを、該エンジン油組成物の塩基価が通常0.01mgKOH/g以上、好ましくは0.02mgKOH/g以上、また、好ましくは2mgKOH/g以下、より好ましくは1mgKOH/g以下、さらに好ましくは0.5mgKOH/g以下となるように含有することが好ましい。塩基価を0.01mgKOH/g以上とすることで、エンジン油組成物に要求されるクランクケースの清浄性の向上が期待でき、また、2mgKOH/gを超えても効果が増大せず、2mgKOH/gを超えるように含有させる利点が無い。
 上記塩基価は、JIS K2501「石油製品及び潤滑油-中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
[0063]
 上記アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネートとしては、具体的には、炭素数4~30、好ましくは6~18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと硫黄とを反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド、又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ金属/アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
 当該アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネートは、その塩基価が通常150mgKOH/g以上、好ましくは200mgKOH/g以上、さらに好ましくは250mgKOH/g以上であり、また、350mgKOH/g以下が好ましい。
 該アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネートを、該エンジン油組成物の塩基価が通常0.3mgKOH/g以上、好ましくは0.7mgKOH/g以上、さらに好ましくは1mgKOH/g以上、また、好ましくは5mgKOH/g以下、より好ましくは3mgKOH/g以下、さらに好ましくは2mgKOH/g以下となるように含有することが好ましい。塩基価を0.3mgKOH/g以上とすることで、本発明のエンジン油組成物の酸化安定性が改善され、また、5mgKOH/gを超えても効果が増大せず、5mgKOH/gを超えるように含有させる利点が無い。
[0064]
 上記アルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレートとしては、具体的には、炭素数4~30、好ましくは6~18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸のアルカリ金属/アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
 当該アルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレートの塩基価は通常150mgKOH/g以上、好ましくは200mgKOH/g以上、さらに好ましくは250mgKOH/g以上、特に好ましくは300mgKOH/g以上であり、また、350mgKOH/g以下が好ましい。
 該アルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレートを、該エンジン油組成物の塩基価を通常2mgKOH/g以上、好ましくは3mgKOH/g以上、また、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下となるように含有する塩基価を2mgKOH/g以上とすることで、酸化安定性の向上が期待でき、また、10mgKOH/g以下とすることで、灰分量を抑制し、燃焼室デポジットの減少が期待できる。
[0065]
 上記アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレートは、中性塩(正塩)だけでなく、低塩基性塩、塩基性塩や過塩基性塩(超塩基性塩)であってもよく、これらの混合物でも良い。
 本発明のエンジン油組成物においては、上記の範囲の塩基価を有する過塩基性スルホネート、低塩基性スルホネート、過塩基性フェネート、及び過塩基性サリシレートを組み合わせて用いることが好ましい。最も好ましくは当該三種類の金属系清浄剤を組み合わせたものを、該エンジン油組成物の塩基価が通常2mgKOH/g以上、好ましくは3mgKOH/g以上、また、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下となるように含有する。これにより、エンジン油として要求される清浄性と、省燃費性をバランスよく達成することが可能となる。
[0066]
 本発明のエンジン油組成物において金属系清浄剤を含有する場合、その含有量は、エンジン油組成物全量を基準として、金属元素換算で500質量ppm以上が好ましく、より好ましくは800質量ppm以上、さらに好ましくは1000質量ppm以上である。また好ましくは3500質量ppm以下、より好ましくは3000質量ppm以下、さらに好ましくは2600質量ppm以下である。500質量ppm以上とすることで、十分な塩基価維持性、高温清浄性の発揮が期待でき、一方、3500質量ppm以下とすることで、使用によって生成する硫酸灰分量を抑制し、排ガス浄化触媒のフィルター詰まりを防止することが期待できる。
[0067]
 本発明のエンジン油組成物は、無灰分散剤を含有することができる。
 無灰分散剤としては、炭素数40~400の直鎖若しくは分岐状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体を挙げることができる。具体的にはコハク酸イミド、アルケニルコハク酸イミド、あるいはそれらの変性品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種あるいは2種以上を配合することができる。
[0068]
 無灰分散剤が有するアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは40~400、より好ましくは60~350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数を40以上とすることで、潤滑油基油に対する溶解性の低下を抑制し、一方、400以下とすることで、エンジン油組成物の低温流動性の悪化を抑制することが可能である。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でもよいが、好ましいものとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーや、エチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分岐状アルキル基や分岐状アルケニル基が挙げられる。
[0069]
 好ましいコハク酸イミドとして、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した、いわゆるモノタイプのコハク酸イミド、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドを例示できる。なお、モノタイプ及びビスタイプのコハク酸イミドのいずれか一方を含有してもよく、あるいは双方を含有してもよい。
[0070]
 その他の無灰分散剤として、ベンジルアミンを用いることもできる。好ましいベンジルアミンとしては、具体的には、式(7)で表される化合物が例示できる。
 R 14-Ph-CH 2NH-(CH 2CH 2NH) p-H (7)
 式(7)において、R 14は、炭素数40~400のアルキル基又はアルケニル基、好ましくは炭素数60~350のアルキル基又はアルケニル基を、Phはフェニレン基を示す。pは1~5、好ましくは2~4の整数を示す。
[0071]
 別の無灰分散剤として、ポリアミンを用いることもできる。ポリアミンとしては、具体的には、式(8)で表される化合物が例示できる。
  R 15‐NH-(CH 2CH 2NH) q-H  (8)
 式(8)において、R 15は、炭素数40~400のアルキル基又はアルケニル基、好ましくは60~350のアルキル基又はアルケニル基を示す。qは1~5、好ましくは2~4の整数である。
[0072]
 無灰分散剤として使用できる上記含窒素化合物の誘導体の具体例は、該含窒素化合物に、脂肪酸等の炭素数1~30のモノカルボン酸、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2~30のポリカルボン酸、又はヒドロキシ(ポリ)アルキレンカーボネート等の含酸素化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したもの、アミド化した有機酸等による変性化合物、又は前述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物等が挙げられる。さらに、ホウ素化合物で変性したホウ素化無灰分散剤も挙げられる。
[0073]
 ホウ素化無灰分散剤は、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤をホウ素化したものである。ホウ素化は、一般に、前述の含窒素化合物にホウ酸等を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和することにより行われる。
 例えば、ホウ素化コハク酸イミドの製造方法としては、例えば、特公昭42-8013号公報、特公昭42-8014号公報、特開昭51-52381号公報、及び特開昭51-130408号公報等に開示されている。具体的には例えば、アルコール類、ヘキサン、キシレン等の有機溶媒、軽質潤滑油基油等の存在下、ポリアミンとポリアルケニルコハク酸(無水物)にホウ酸、ホウ酸エステル、又はホウ酸塩等のホウ素化合物を混合し、適当な条件で加熱処理することにより得ることができる。なお、この様にして得られるホウ素化コハク酸イミド中のホウ素含有量は、通常0.1~4.0質量%とすることができる。
[0074]
 本発明のエンジン油組成物が無灰分散剤を含有する場合、無灰分散剤の含有量は、エンジン油組成物全量基準で、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~10質量%である。またさらに好ましくは2.5質量%以上、最も好ましくは5質量%以上である。無灰分散剤の含有量を0.1質量%以上とすることで、摩擦低減性向上効果が十分得られ、一方、20質量%以下とすることで、エンジン油組成物の低温流動性の悪化を大幅に抑制することができる。
[0075]
 上記ホウ素化コハク酸イミド等のホウ素化無灰分散剤を用いる場合、エンジン油組成物中のホウ素含有量は、エンジン油組成物全量基準で、通常0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上であり、また、0.15質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。
 本発明においては、無灰分散剤としてホウ素化コハク酸イミド及び非ホウ素化コハク酸イミドの両者を含有することが好ましい。ホウ素化コハク酸イミドの非ホウ素化コハク酸イミドに対する比率は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、さらに0.3以上が好ましい。また0.6以下が好ましく、0.5以下がさらに好ましく、0.4以下がさらにより好ましい。上記比率を0.1以上とすることで、ホウ素化コハク酸イミドの耐熱性と、耐摩耗性の効果を維持することができ、また0.6以下とすることで、清浄性を維持することができる。
[0076]
 本発明のエンジン油組成物は、酸化防止剤を含有することができる。
 酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等の無灰系酸化防止剤や有機金属系酸化防止剤等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。酸化防止剤の添加により、エンジン油組成物の酸化防止性をより高められ、腐食又は腐食摩耗防止性能を高めるだけでなく、塩基価維持性をより高めることができる。
[0077]
 フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2'-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4(N,N'-ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4'-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2'-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類を好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
[0078]
 アミン系酸化防止剤としては、例えば、芳香族系アミン系酸化防止剤であるフェニル-α-ナフチルアミン、アルキルフェニル-α-ナフチルアミン、及びジアルキルジフェニルアミンを挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
[0079]
 上記フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤を単独で使用することができるが、組み合わせて配合することが好ましい。配合割合としては、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤の合計量に対し、アミン系酸化防止剤が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
[0080]
 本発明のエンジン油組成物においては、その性能をさらに向上させる目的で、必要に応じて、上記添加剤の他に、(B)成分以外の他の摩擦調整剤、さらには摩耗防止剤(極圧剤とも称す)腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、着色剤等の各種添加剤を単独で又は数種類組み合わせて配合しても良い。
[0081]
 他の摩擦調整剤としては、有機モリブデン化合物及び無灰摩擦調整剤から選ばれる摩擦調整剤等が挙げられる。
 有機モリブデン化合物としては、例えば、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート等の硫黄を含有する有機モリブデン化合物、モリブデン化合物と、硫黄含有有機化合物あるいはその他の有機化合物との錯体、あるいは、硫化モリブデン、硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体を挙げることができる。
[0082]
 有機モリブデン化合物を用いる場合、その含有量は特に制限されないが、エンジン油組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で、好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、また、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.08質量%以下である。その含有量を0.005質量%以上とすることで、エンジン油組成物の熱・酸化安定性を維持でき、特に、長期間に渡って優れた清浄性を維持させることが期待できる。一方、含有量が0.2質量%を超える場合、含有量に見合う効果が得られず、また、エンジン油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。
[0083]
 無灰摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能である。例えば、炭素数6~30のアルキル基またはアルケニル基、特に炭素数6~30の直鎖アルキル基または直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤が挙げられる。また窒素含有化合物及びその酸変性誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物や、国際公開第2005/037967号パンフレットに例示される各種無灰摩擦調整剤が挙げられる。
[0084]
 無灰摩擦調整剤を用いる場合、その含有量は、エンジン油組成物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。無灰摩擦調整剤の含有量を0.01質量%以上とすることで、その添加による摩擦低減効果が得られ、また3質量%以下とすることで、耐摩耗性添加剤などの効果に影響を及ぼさず、あるいは添加剤の溶解性を確保できる。
[0085]
 摩耗防止剤としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄-リン系の極圧剤が使用できる。
 本発明においてはアルキルジチオリン酸亜鉛が有効である。アルキル基は炭素数3から12のものが通常使用される。本発明においては、1級アルキル基と2級アルキル基をもつアルキルジチオリン酸亜鉛を使用することが、極圧性と酸化安定性のバランスを取るために好ましい。1級の2級に対する比率は、0.3以上が好ましく、より好ましくは0.5以上、最も好ましくは0.55以上である。また0.8以下が好ましく0.7以下がより好ましい。0.3未満では酸化安定性が不足する可能性があり、0.8を超えると極圧性が不足する可能性がある。なお、1級と2級のアルキル基の併用は、同一アルキルジチオリン酸亜鉛内であってもよいし、異なるアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物であってもよい。
[0086]
 アルキルジチオリン酸亜鉛を用いる場合、その含有量は、エンジン油組成物全量を基準として、リン元素量で0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%がより好ましく、0.08質量%以上がさらに好ましい。また0.2質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。0.02質量%以上とすることで十分な極圧性が得られ、0.2質量%以下とすることで、排気ガス後処理装置への悪影響を抑制できる。
[0087]
 腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系、エポキシ系化合物が挙げられる。
[0088]
 防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステルが挙げられる。
[0089]
 抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤が挙げられる。
[0090]
 金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4-チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4-チアジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリルが挙げられる。
[0091]
 これらの添加剤を本発明のエンジン油組成物に含有させる場合の含有量は、エンジン油組成物全量基準で、通常それぞれ0.01~10質量%が好ましい。
[0092]
 上記流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマーが使用できる。重量平均分子量としては150,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、80,000以下がさらに好ましい。また20,000以上が好ましく、40,000以上がより好ましい。150,000以下とすることで、目的の製品粘度が確保でき20,000以上とすることで流動点降下剤としての機能を維持できる。本発明の潤滑油組成物に流動点降下剤を含有させる場合、その含有量は、本発明のエンジン油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%の範囲から選ばれる。
[0093]
 消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1,000~100,000mm 2/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレート、o-ヒドロキシベンジルアルコールが挙げられる。
 消泡剤を本発明のエンジン油組成物に含有させる場合の含有量は、エンジン油組成物全量基準で、通常0.0001~0.01質量%が好ましい。
[0094]
 本発明のエンジン油組成物の粘度指数は140以上が好ましく、150以上がより好ましく、160以上がさらに好ましい。粘度指数を140以上とすることで、低温時においても十分な省燃費性の発揮が期待できる。粘度指数の上限については特に制限はない。
[0095]
 本発明のエンジン油組成物の100℃における動粘度は5.6mm 2/s以上が好ましく、9.3mm 2/s以上がより好ましい。また12.5mm 2/s以下が好ましく、11.5mm 2/s以下がより好ましい。100℃における動粘度を12.5mm 2/s以下とすることで、省燃費効果に影響を与えず、5.6mm 2/s以上とすることで、エンジン油圧の低下を抑制し、焼付きの発生を抑えることができる。
[0096]
 エンジン油組成物の、剪断速度1×10 6-1、100℃で測定した高温高剪断粘度(a)に対する、剪断速度1×10 7-1、100℃で測定した高温高剪断粘度(b)の比(b/a)は、好ましくは0.85以下、特に好ましくは0.80未満となるようにすることで、省燃費性の低下を抑制することができる。上記(b/a)の下限値は特に限定されないが、通常0.77程度である。また、剪断速度1×10 6-1での粘度を一定に保ち、1×10 7-1での粘度を低減することにより良好な省燃費性を発揮することができる。具体的には、前者が6.0mPa・s以上、特に6.4mPa・s以上、後者が5.5mPa・s以下、特に5.2mPa・s以下の値を両立することが好ましい。
[0097]
 本発明のエンジン油組成物は、種々のエンジン機関に適用でき、特に限定されないが、ディーゼルエンジン機関に用いることが好ましい。
実施例
[0098]
 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
 省燃費性の指標として高温高剪断粘度、及び耐摩耗性について、以下に示すようにして測定し、評価した。
1.エンジン油組成物の高温高剪断粘度(HTHS粘度)
 省燃費性に影響を及ぼす、剪断速度1×10 6-1及び1×10 7-1での高温高剪断粘度を次のようにして測定した。なお、剪断速度1×10 6-1での高温高剪断粘度はASTM D4683-10に準拠して測定し、剪断速度1×10 7-1での高温高剪断粘度は、PCS Instruments社製のUSV粘度計を用いて測定した。測定温度はいずれも100℃である。
 なお、剪断速度1×10 6-1での粘度を一定に保ち、1×10 7-1での粘度を低減することにより良好な省燃費性を発揮することができる。具体的には、前者が6.0mPa・s以上、後者が5.5mPa・s以下の値を両立することが好ましい。
[0099]
2.エンジン油組成物の耐摩耗性
 シェル四球試験装置を使用してエンジン油組成物の耐摩耗性を評価した。試験法としてはASTM D2266に準拠した。ただし、試験条件は回転速度1800rpm、荷重492N、油温120℃、試験時間1分間である。
[0100]
 実施例1
 以下に示す成分を使用し、表1に示す配合組成(質量部)の実施例1に係るエンジン油組成物を調製した。この実施例1のエンジン油組成物について、上記1.高温高剪断粘度、及び2.耐摩耗性を評価した。評価結果を表1に示す。
(1)潤滑油基油:基油A;水素化分解、接触脱ろう基油。詳細は、表1の欄外に示す。
(2-1)スターポリマーA-1:VM-A;SV261(インフィニアム社製);Mw 430,000、PSSI 25
(2-2)ポリマーA-2:VM-B;窒素含有基を有するポリメタクリレート、Mw260,000、PSSI 50、窒素含有量0.1質量%
(3-1)(B)成分:オレイルアミド
(4)金属系清浄剤及び酸化防止剤:表2に示す成分を有する組成物(以下、パッケージ添加剤と称する)。なお、表2に示す各成分の含有量は、(1)のエンジン油組成物全量を100質量部としたときの質量部である。
[0101]
 実施例2~5
 基油と各添加剤を表1及び表2に示す配合量で配合し、各実施例のエンジン油組成物を調製した。各エンジン油組成物について、実施例1と同様、上記1.高温高剪断粘度、及び2.耐摩耗性を評価した。結果を表1に示す。
 ここで、上記した成分以外の成分は次の通りである。
(1)潤滑油基油:基油B;水素化分解、接触脱ろう基油。詳細は、表1の欄外に示す。
(5)流動点降下剤(PPD):ポリメタクリレート、重量平均分子量55800
[0102]
 比較例1~9
 基油と各添加剤を表1及び表2に示す配合量で配合し、各比較例のエンジン油組成物を調製した。各エンジン油組成物について、実施例1と同様、上記1.高温高剪断粘度、及び2.耐摩耗性を評価した。評価結果を表1に示す。
 なお、比較例1~8は省燃費性を優先させて、高温高剪断粘度を設定したものであり、各実施例とほぼ同等の高温高剪断粘度特性となっている。一方、比較例9は、耐摩耗性を優先して設定したもので、実施例及び他の比較例より高い高温高剪断粘度となっており、特に1×10 7-1での粘度が5.5mPa・sを大きく超えている。
 ここで、上記した成分以外の成分は次の通りである。
(2-3)(A)成分以外の粘度指数向上剤:
 VM-C;窒素含有基を有するポリメタクリレート、Mw100,000、PSSI 5、窒素含有量0.2質量%
 VM-D;ポリメタクリレート、Mw430,000、PSSI 5
 VM-E; ポリメタクリレート、Mw450,000、PSSI 5
 VM-F;ポリメタクリレート、Mw380,000、PSSI 25
(3-2)(B)成分以外の摩擦調整剤:オレイルアミン又はグリセリンモノオレート(旭電化工業株式会社製のアデカキクルーブ FM210)を使用した。
[0103]
[表1]


[0104]
[表2]


[0105]
 表1から明らかなように、スターポリマーA-1、ポリマーA-2、及び(B)成分を使用した各実施例のエンジン油は、比較例1~9のエンジン油に比して顕著に優れた省燃費性と耐摩耗性の両立を達成している。
 すなわち、各実施例のエンジン油組成物は、比較例1~8と同等の低い高温高剪断粘度特性を有し、省燃費性に優れる性能を発揮しつつ、比較例1~8より顕著に良好な耐摩耗性も有している。この各実施例の耐摩耗性は、省燃費性を期待できない高い高温高剪断粘度特性を持つ比較例9と同等の性能であり、このことから、省燃費性と耐摩耗性が高度に両立されていることが判る。

請求の範囲

[請求項1]
 飽和分が70質量%以上、及び粘度指数が90以上、160以下の潤滑油基油と、
 (A)スターポリマーA-1及び重量平均分子量が200,000以上、400,000以下の窒素含有基を有するポリマーA-2と、
 (B)アミド化合物及びイミド化合物の少なくとも1種と、を含むエンジン油組成物。
[請求項2]
 前記スターポリマーA-1が、ポリアルケニル化合物であるコア、及び該コアに結合する4~15のアームを有するポリマーである、請求項1に記載のエンジン油組成物。
[請求項3]
 前記潤滑油基油の100℃動粘度が1.0~10.0mm 2/sである、請求項1又は2に記載のエンジン油組成物。
[請求項4]
 前記エンジン油組成物の100℃動粘度が5.6mm 2/s以上、12.5mm 2/s以下であり、剪断速度1×10 6-1、100℃で測定した高温高剪断粘度が6.0mPa・s以上である、請求項1~3のいずれかに記載のエンジン油組成物。
[請求項5]
 前記エンジン油組成物の、剪断速度1×10 6-1、100℃で測定した高温高剪断粘度(a)に対する、剪断速度1×10 7-1、100℃で測定した高温高剪断粘度(b)の比(b/a)が0.85以下である、請求項1~4のいずれかに記載のエンジン油組成物。
[請求項6]
 ディーゼルエンジン用であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のエンジン油組成物。