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1. (WO2015146384) フライホイール式回生システム
Document

明 細 書

発明の名称 フライホイール式回生システム

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024  

図面の簡単な説明

0025  

発明を実施するための形態

0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : フライホイール式回生システム

技術分野

[0001]
 本発明は、車両の減速時の運動エネルギをフライホイールの回転エネルギに変換して回生する機械的回生を実行可能なフライホイール式回生システムに関するものである。

背景技術

[0002]
 車両の制動時に駆動軸の回転エネルギを回生して貯留し、その後、この貯留したエネルギを駆動軸の回転エネルギ、即ち車両の走行のための運動エネルギに再利用し、エネルギ効率を高める回生技術が開発されている。この場合のエネルギの回生には、駆動軸の回転エネルギを電気エネルギに変換してバッテリに回生する電気的回生と、駆動軸の回転エネルギをフライホイールの回転エネルギに変換して回生する機械的回生とがある。
[0003]
 電気的回生の場合も機械的回生の場合も、駆動軸の回転エネルギを各エネルギに変換する際にエネルギ損失が生じ、駆動軸の回転エネルギを電気エネルギに変換する際のエネルギ損失よりも、駆動軸の回転エネルギをフライホイールの回転エネルギに変換する際のエネルギ損失の方が小さくなる。また、フライホイールの回転エネルギは、摩擦損失等により時間経過に伴って徐々に減衰するという特性がある。
[0004]
 したがって、駆動軸の回転エネルギをフライホイールの回転エネルギに変換する場合、その後速やかにフライホイールの回転エネルギを車両の運動エネルギに変換すればトータルのエネルギ損失は電気エネルギに変換する場合よりも少ない。しかし、フライホイールの回転エネルギに変換後これを車両の運動エネルギに変換するまでの時間が長くなると、トータルのエネルギ損失は電気エネルギに変換する場合よりも多くなる。
[0005]
 そこで、例えば、特許文献1には、フライホイールの回転エネルギの減衰によるエネルギ減衰損失が許容範囲を越えるか否かを予測し、このエネルギ減衰損失が許容範囲を越えると予測されたときにフライホイールの回転力をモータジェネレータに伝達することでフライホイールの回転エネルギをモータジェネレータで電気エネルギに変換してバッテリに回生するようにした技術が提案されている。
[0006]
 ところで、フライホイールは、回転エネルギ回生時やその後貯留したエネルギの再利用時には、車両の動力伝達系と接続し、これら以外の時には車両の動力伝達系と遮断させておくことが必要である。そこで、フライホイールと車両の動力伝達系との間に、動力を断接するクラッチ(摩擦締結要素)を介装し、このクラッチを、エネルギ回生時やエネルギ再利用時には締結し、その他の時には解放するようにしている。
[0007]
 ここで、クラッチの締結時には、締結される摩擦締結要素に回転速度差があると、締結に至る際に発熱してエネルギ損失を招くので、この点をも考慮してトータルでエネルギ損失の低減を図ることが有効である。このためには、摩擦締結要素の回転速度差を低減させればよいが、この摩擦締結要素の回転速度差をどのようにして低減させるかが重要な課題となる。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2011-038621号公報

発明の概要

[0009]
 本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、フライホイールと車両の動力伝達系との間に設けられた摩擦締結要素を締結する際の摩擦締結要素の回転速度差を低減させることができるようにした、フライホイール式回生システムを提供することを目的としている。
[0010]
 (1)本発明のフライホイール式回生システムは、車両に装備され、入力部が駆動源に接続され出力部が駆動輪に接続された変速機と、フライホイールと、互いに締結及び解放される第1要素及び第2要素を有し、前記第1要素が前記変速機の前記入力部に接続され前記第2要素が前記フライホイールに接続された摩擦締結要素と、前記フライホイールに接続されたモータと、前記車両の制動中に前記摩擦締結要素を締結して前記車両の駆動系の回転エネルギを前記フライホイールの回転エネルギに回生する回生制御を行なう制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記摩擦締結要素を締結する前に、前記モータを制御して、前記摩擦締結要素の前記第1要素と前記第2要素との回転速度差を低減させる回転速度差制御を実施する。
[0011]
 (2)前記回転速度差制御は、前記モータを制御して、前記フライホイールの回転速度の低下に伴う前記摩擦締結要素の前記回転速度差の増大を抑制する回転速度差増大抑制制御であることが好ましい。
[0012]
 (3)この場合、前記制御手段は、前記車両の車速に応じて前記フライホイールの目標回転速度を設定し、前記フライホイールの回転速度が前記目標回転速度を下回ることを含む制御開始条件が成立したら、前記回転速度差増大抑制制御を開始することが好ましい。
[0013]
 (4)また、前記変速機は無段変速機であって、前記制御手段は、アクセルペダル開度に応じた変速線を用いて前記変速機の変速比を制御し、前記目標回転速度は、前記アクセルペダルの全閉時の変速線に従って前記車速に応じて決まる前記入力部の回転速度に対応した回転速度に設定されることが好ましい。
[0014]
 (5)さらに、前記変速機の前記入力部の回転により駆動され、前記変速機を変速させる油圧を生成するオイルポンプを備え、前記変速機を制御するのに必要な前記オイルポンプの吐出流量を確保可能な前記入力部の回転速度の下限値である油量収支確保回転速度に対して、前記アクセルペダル全閉時の変速線に従って前記車速に応じて決まる前記入力部の回転速度に対応した回転速度の方が低い場合は、前記目標回転速度は、前記油量収支確保回転速度に設定されることが好ましい。
[0015]
 (6)前記制御開始条件には、前記車両が前記駆動源の駆動力で走行していること、及び、前記車速が上限車速以下であることが含まれていることが好ましい。
[0016]
 (7)また、前記制御開始条件には、前記フライホイールの回転速度が前記目標回転速度未満であること、及び、前記フライホイールの回転速度が前記車速に応じて設定される下限回転速度以上であることが含まれていることが好ましい。
[0017]
 (8)前記制御手段は、前記車両の減速走行を予測する予測手段を備え、前記制御開始条件には、前記予測手段が減速走行を予測したことが含まれていることが好ましい。
[0018]
 (9)前記回転速度差制御は、前記車両の制動中において、前記フライホイールの回転速度が前記目標回転速度を下回ることを含む制御開始条件が成立したら、前記モータを制御して、前記摩擦締結要素の締結を開始する前に前記摩擦締結要素の前記回転速度差を低減させる締結前制御であることが好ましい。
[0019]
 (10)前記制御手段は、前記摩擦締結要素の前記回転速度差がゼロになるように前記締結前制御を実施することが好ましい。
[0020]
 (11)前記制御手段は、前記締結前制御により前記回転速度差を低減した後、前記摩擦締結要素をスリップさせながら締結することが好ましい。
[0021]
 (12)前記変速機は無段変速機であって、前記制御手段は、アクセルペダル開度に応じた変速線を用いて前記変速機の変速比を制御し、前記回生制御の開始条件には、前記車両が制動状態であることに加えて、前記変速機の前記入力部の回転速度が、アクセルペダル全閉の場合の変速線に従った回転速度になったことが含まれていることが好ましい。
[0022]
 本発明のフライホイール式回生システムによれば、車両の制動時に摩擦締結要素を締結して車両の駆動系の回転エネルギをフライホイールの回転エネルギに回生するので、その後フライホイールに回生した回転エネルギを車両の走行駆動に利用することにより、車両のエネルギ効率を高めることができる。特に、摩擦締結要素を締結する前に、予め摩擦締結要素の第1要素と第2要素との回転速度差が低減するようモータを制御する回転速度差制御を実施するので、第1要素と第2要素との締結時に、両者の回転速度差に起因した発熱によるエネルギ損失を抑制することができ、車両のエネルギ効率を高めることに寄与する。
[0023]
 この回転速度差制御には、回生制御の開始条件である車両の制動が開始される前に、事前に、摩擦締結要素の回転速度差の増大を抑制するようにモータを制御する回転速度差増大抑制制御を利用することができる。この場合、摩擦締結要素の回転速度差が事前に抑えられているので、摩擦締結要素を速やかに締結することができ、大きな回転速度差を一気に減少させる場合よりもエネルギ効率が良い場合もある。
[0024]
 また、回転速度差制御には、回生制御の開始条件である車両の制動が開始されたら、摩擦締結要素を締結する直前に、摩擦締結要素の回転速度差が低減するようにモータを制御する締結前制御を利用することができる。摩擦締結要素の締結条件の成立までに時間がかかる場合など、摩擦締結要素の回転速度差を常時抑制するよりもエネルギ効率が良い場合もある。

図面の簡単な説明

[0025]
[図1] 本発明の各実施形態にかかるフライホイール回生システムを備える車両の構成図である。
[図2] 本発明の第1実施形態にかかるフライホイール回生システムによる回転速度差増大抑制制御を説明する変速線図である。
[図3] 本発明の第1実施形態にかかるフライホイール回生システムによる回転速度差増大抑制制御を説明するフローチャートである。
[図4] 本発明の第1実施形態にかかるフライホイール回生システムによる回転速度差増大抑制制御を説明するタイムチャートの第1例である。
[図5] 本発明の第1実施形態にかかるフライホイール回生システムによる回転速度差増大抑制制御を説明するタイムチャートの第2例である。
[図6] 本発明の第2実施形態にかかるフライホイール回生システムによる締結前制御を説明する変速線図である。
[図7] 本発明の第2実施形態にかかるフライホイール回生システムによる締結前制御を説明するフローチャートである。
[図8] 本発明の第2実施形態にかかるフライホイール回生システムによる締結前制御を説明するタイムチャートの第1例である。
[図9] 本発明の第2実施形態にかかるフライホイール回生システムによる締結前制御を説明するタイムチャートの第2例である。

発明を実施するための形態

[0026]
 以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
 本発明では、摩擦締結要素を締結する際に、予め摩擦締結要素の二つの要素間の回転速度差が低減するようモータを制御するが、この制御の手法が相違する二つの実施形態を説明する。これらの実施形態にかかる装置のハード構成は同様であるので、まず、図1を参照して各実施形態にかかる装置のハード構成を説明し、次に、各実施形態にかかる制御について説明する。
[0027]
 [1.各実施形態にかかる車両の構成]
 図1に示すように、車両100は、動力源としてのエンジン1と、エネルギを回生するフライホイール2と、エンジン1の出力回転を無段階に変速する無段変速機構(CVTバリエータ、以下、バリエータとも言う)3及びバリエータ3の出力回転を変速する副変速機構4を有する無段変速機(CVT)3Aと、副変速機構4の出力回転を減速する終減速装置5と、左右の駆動輪6と、油圧回路7と、コントローラ(制御手段)8とを備える。なお、終減速装置5と左右の駆動輪6との間には図示しない差動装置が介装される。
[0028]
 エンジン1とCVT3Aとの間には、エンジンクラッチ(摩擦締結要素)91が設けられる。このエンジンクラッチ91は、供給される油圧によって締結容量を制御可能な油圧式クラッチであり、エンジンクラッチ91を締結状態としたときに、エンジン1の駆動力がCVT3Aへと伝達される。この例では、エンジン1の出力軸(クランク軸)11とCVT3Aの入力軸(入力部)31との間に、入力軸31とギヤ対22により駆動連結される中間軸21が設けられ、エンジンクラッチ91は、エンジン1の出力軸11と中間軸21との間に介装される。なお、ギヤ対22はエンジン回転を逆転してCVT3の入力軸31に伝達しており、互いに同歯数のギヤからなり、入力軸31は中間軸21及びエンジン1の出力軸11と等速回転する。
[0029]
 中間軸21には、中間軸21の回転により駆動され油圧を発生するオイルポンプ10が接続される。オイルポンプ10は、例えばギヤポンプやベーンポンプにより構成される。オイルポンプ10により発生した油圧は後述する油圧回路7を介して、バリエータ3,エンジンクラッチ91,副変速機構4等に供給される。
[0030]
 中間軸21には、さらに、減速ギヤ列23,24を介してフライホイール2が接続される。フライホイール2は、回転可能な円筒体又は円盤形状の金属体が容器内に収装されて構成される。容器内は、金属体が回転するときの空気抵抗等の影響により回転が低下すること(風損とも呼ぶ)を低減するために、真空状態又は減圧状態とされている。
[0031]
 減速ギヤ列23と減速ギヤ列24との間には、後述のフライホイール式回生システムで用いる摩擦締結要素であるフライホイールクラッチ92が設けられる。フライホイールクラッチ92は、供給される油圧によって締結容量を制御可能な油圧式クラッチである。フライホイールクラッチ92は、中間軸21の回転にかかわらず油圧を供給可能な油圧源によって締結容量が制御される。具体的には、オイルポンプ10とは異なり、電動モータにより駆動される電動オイルポンプ10Eにより発生された油圧がフライホイールクラッチ92に供給される。なお、フライホイールクラッチ92は、電動オイルポンプ10Eではなく、電動のアクチュエータによって締結容量が制御されてもよい。
[0032]
 副変速機構4は、バリエータ3の出力軸32に接続された前進2段・後進1段の変速機構である。この副変速機構4については、詳細は図示しないが、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構と、ラビニョウ型遊星歯車機構を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(ローブレーキ,ハイクラッチ,リバースブレーキ)とを備える。各摩擦締結要素への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素の締結・解放状態を変更すると、副変速機構4の変速段が変更される。
[0033]
 また、副変速機構4内の何れの摩擦締結要素も締結しなければCVT3Aと終減速装置5及び駆動輪6とは動力遮断され、副変速機構4の出力軸(変速機3Aの出力部)から動力は出力されない。したがって、発進時に使用するローブレーキ又はハイクラッチは、発進クラッチとしても機能する。
 なお、この例では設けられていないが、エンジン1とCVT3Aとの間の例えば中間軸21に、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータを備えてもよい。
[0034]
 油圧回路7は、後述するコントローラ8からの信号を受けて動作するソレノイド弁等で構成され、オイルポンプ10,バリエータ3,エンジンクラッチ91,副変速機構4,フライホイールクラッチ92と油路を介して接続される。油圧回路7は、オイルポンプ10で発生した油圧を元圧として、バリエータ3の各プーリ,エンジンクラッチ91及び副変速機構4で必要とされる油圧を生成し、生成した油圧をバリエータ3の各プーリ,エンジンクラッチ91及び副変速機構4に供給する。
[0035]
 エンジン1の出力軸11には、補機としてオルタネータ12及びエアコンのコンプレッサ13が、動力伝達部材(ベルト・プーリ機構)14を介して接続されている。オルタネータ12はバッテリ15に電気的に接続され、オルタネータ12による発電電力によりバッテリ15が充電される。また、エンジン1の出力軸11には、ギヤ対17を介してスタータモータ18が接続され、エンジン始動時にはスタータモータ18の出力回転でエンジン1が始動する。
[0036]
 そして、フライホイール2にはモータ(電動モータ)20が接続されている。このモータ20は、インバータ16を介してバッテリ15と接続される。インバータ16は、フライホイール2が設定された回転速度で回転するようにモータ20の作動を制御する。これにより、フライホイール2はフライホイールクラッチ92が接続されていない状態でモータ20によって回転を制御される。ここでは、モータ20に、発電モードも有するモータジェネレータが適用されており、フライホイール2の回転エネルギによって発電し、この発電電力によりバッテリ15を充電できるようにもなっている。なお、各回転速度については、単位時間当たりの回転数であることから回転数とも呼ばれる。
[0037]
 車両100には、駆動輪6及び図示しない従動輪の各車輪を制動するブレーキ装置60が装備されている。ブレーキ装置60は、ブレーキペダル61とマスターシリンダ62とが機構的に独立している電子制御式ブレーキである。運転者がブレーキペダル61を踏み込むと、後述のコントローラ8の制御により作動するブレーキアクチュエータ63がマスターシリンダ62のピストンを変位させ、運転者がブレーキペダル61を踏み込む力、すなわち要求減速度に応じた油圧が各車輪のホイールシリンダ64に供給され、ブレーキキャリパ65がブレーキディスク66を挟圧して制動力が発生する。なお、ブレーキ装置60には、エンジン1の負圧または、エンジン1停止時は電動真空ポンプの負圧を利用したサーボシステムが利用されている。
[0038]
 コントローラ8は、CPU,RAM,入出力インターフェース等で構成される。コントローラ8には、エンジン1の回転速度Neを検出する回転速度センサ81、CVT3Aの入力軸31の回転速度(入力軸回転速度)Ninを検出する回転速度センサ82、フライホイール2の回転速度(フライホイール回転速度)Nfwを検出する回転速度センサ83、車速VSPを検出する車速センサ84、アクセルペダル85の開度APOを検出するアクセル開度センサ86、運転者がブレーキペダル61の踏む力を検出するブレーキセンサ87等からの信号が入力される。
[0039]
 コントローラ8は、入力される信号に基づき各種演算を行ない、バリエータ3,副変速機構4の変速、各クラッチ91,92の締結・解放、ブレーキアクチュエータ63の作動を制御する。特に、運転者がブレーキペダル61を踏み込み、車両100が減速するときは、コントローラ8は、フライホイールクラッチ92を締結し、駆動輪6から入力される回転を減速ギヤ列23,24により増速してフライホイール2を回転させ、車両100が持つ運動エネルギをフライホイール2の運動エネルギに変換することで、車両100の運動エネルギをフライホイール2で回生する回生ブレーキを実施する。
[0040]
 このとき、後述するようにCVTバリエータ3の変速比(以下、CVT変速比と言う)をLow側にダウンシフトすることにより、駆動輪6の回転速度を増速してフライホイール2に入力することができ、フライホイール2の回転速度、すなわち、保存される運動エネルギの大きさを高めることができる。
[0041]
 フライホイール2による回生中には、コントローラ8は、運転者の減速度要求に応じた制動力(回生ブレーキ)が得られるようフライホイールクラッチ92の締結容量を制御する。フライホイールクラッチ92を締結する前で回生ブレーキを発生させられない場合や回生ブレーキのみでは運転者の減速度要求を満たせない場合は、コントローラ8は、ブレーキアクチュエータ63を動作させてブレーキ60の制動力を増大させ、運転者の減速度要求に応じた制動力が得られるようにする。
[0042]
 フライホイール2で回生した運動エネルギは、フライホイールクラッチ92を解放することによってフライホイール2の回転として保存できる。フライホイール2に運動エネルギが保存されている状態でフライホイールクラッチ92を締結することで、フライホイール2に保存されている運動エネルギが中間軸21から入力軸31に伝達され、車両100の発進又は加速のエネルギに利用することができる。
[0043]
 特に、フライホイール2の質量や減速ギヤ列23,24の減速比を適切に選定することにより、フライホイール2が十分に回転している状態で、重量物である車両100を発進させるのに十分なエネルギを保存することができる。
 このように、車両100が減速する時に、コントローラ8がフライホイールクラッチ92を締結し、車両100の運動エネルギがフライホイール2の運動エネルギに回生される。
[0044]
 ところで、フライホイールクラッチ92の締結開始時に、フライホイールクラッチ92の2つの締結要素92a,92bに回転速度差があると、締結時に締結要素92a,92b間で発熱が生じ、エネルギの熱損失を招く。そこで、コントローラ8は、後述のフライホイール式回生システムでは、フライホイールクラッチ92を締結する際に、予め2つの締結要素92a,92b間の回転速度差が低減するようモータ20を制御する回転速度差制御を実施する。ここで、「回転速度差が低減する」の「低減する」とは、この制御を実施しない場合に比べて低減することを意味し、単に回転速度差が小さくなることのみを意味するのではない。
[0045]
 [2.各実施形態にかかるフライホイール式回生システム]
 各実施形態にかかるフライホイール式回生システムは、CVT3Aと、フライホイールクラッチ92と、フライホイール2と、モータ20と、コントローラ8とを備えて構成される。コントローラ8は、上述のように、車両の制動中、即ち、ブレーキペダル61が踏み込み操作されているときに、フライホイールクラッチ92を締結して車両の駆動系の回転エネルギをフライホイール2の回転エネルギに回生する回生制御を実施し、その後、フライホイールに回生した回転エネルギを車両の走行駆動に利用する回生制御を行なう。
[0046]
 このように回生制御には、フライホイール2に回転エネルギを回収する段階の回生制御と、フライホイール2に回収した回転エネルギを車両の走行駆動のために放出する段階の回生制御とがあるが、本発明はエネルギ回収段階の回生制御に関し、各実施形態で説明する回生制御も、このエネルギ回収段階の回生制御である。
[0047]
 また、本フライホイール式回生システムにおいては、モータ20には発電機能は必須ではなく、エンジンクラッチ91も必須ではない。ただし、エンジンクラッチ91を設けることにより、回生制御時にはエンジンクラッチ91を解放することにより、エンジンブレーキとして失われるエネルギの分もフライホイールクラッチ92の回転エネルギに回生でき回生効率を向上させることができる。
[0048]
 フライホイールクラッチ92は、CVT3A側に接続される第1要素92aとフライホイール92側に接続される第2要素92bとを結合または解放するが、本回生システムの特徴は、コントローラ8による回生制御において、フライホイールクラッチ92を締結する際に、第1要素92aと第2要素92bとの回転速度差を予め低減するようモータ20を制御する点にある。回転速度差を予め低減する制御手法は様々あるが、以下、第1実施形態及び第2実施形態として回転速度差を予め低減する回転速度差制御を説明する。
[0049]
 [3.第1実施形態]
 [3-1.構成(回転制御の構成)]
 本実施形態にかかるフライホイール式回生システムは、上述のようなハード構成を備えており、コントローラ8による回生制御では、フライホイール2の回転速度の低下に伴ってフライホイールクラッチ92の二つの要素92a,92b間の回転速度差が増大する場合にこの増大を抑制するようにモータ20を制御する。
[0050]
 ここで、「増大を抑制する」とは、例えば回転速度差を一定に保つなど、回転速度差自体が増大しないようにする形態に限られるものではなく、回転速度差が増大する場合の増大の量を小さくする形態も含まれるものとする。これにより、エネルギ効率アップや電力消費の抑制を促進することができる。もちろん、回転速度差の大きさを低減させる形態であってもよく、この場合、上記効果をより一層得やすくなる。
 以下、この回転速度差制御を回転速度差増大抑制制御と呼び、この制御を中心に本実施形態を説明する。
[0051]
 フライホイール2が回転しているときには、回転トルクを加えない限り、回転エネルギの減衰によりフライホイール2の回転速度は低下し、フライホイール2側に接続されるフライホイールクラッチ92の第2要素92bの回転速度は低下する。一方、CVT3A側に接続されるフライホイールクラッチ92の第1要素92aは、中間軸21の回転速度、即ち、CVT3Aの入力軸31の回転速度に対応して変動する。したがって、CVT3Aの入力軸31の回転速度がフライホイール2の回転速度と同様に低下しない限り、二つの要素92a,92b間の回転速度差は増大しうる。
[0052]
 そこで、コントローラ8は、以下の制御開始条件が成立すると、フライホイールクラッチ92の二つの要素92a,92b間の回転速度差の増大を抑制する回転速度差増大抑制制御を実施する。
[0053]
 (1)車両がエンジン1の駆動力で走行するエンジン走行状態であること。
 (2)車速VSPが上限車速Vs以下であること。
 (3)フライホイールクラッチ92が解放状態(OFF)であること。
 (4)バッテリ15の残存容量SOCが適正範囲内であること。
 (5)フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが制御に用いる目標回転速度Na未満であること。
 (6)フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが下限回転速度Nlimit以上であること。
[0054]
 本実施形態にかかる回転速度差増大抑制制御では、上記の制御開始条件が何れも成立すると、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Naと一致するようにモータ20の回転を制御する。本回転制御は、目標回転速度Naの設定、及び、上記の各制御開始条件に特徴があり、以下、この回転速度差増大抑制制御の具体的な手法を、各制御開始条件と共に説明する。
[0055]
 なお、本回転速度差増大抑制制御は、フライホイールクラッチ92の締結前に行なう制御なので、上記の条件(3)は前提条件であり、また、本制御は、バッテリ15の電力を用いてモータ20を作動させるので、バッテリ15を保護する観点から上記の条件(4)も前提条件である。以下、上記の条件については、条件(1),(2),(5),(6)について説明する。
[0056]
 まず、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinとは、回転速度センサ83により検出されるフライホイール回転速度NfwをCVT3Aの入力軸31の回転速度(入力軸回転速度)Ninに換算した値である。車両100の駆動系では、入力軸回転速度Ninが各制御の中心になるが、フライホイール2とCVT3Aの入力軸31との間には、減速ギヤ列23,24が介在し、フライホイールクラッチ92が締結されると、フライホイール2の回転は減速ギヤ列23,24で減速されて入力軸31に伝達される。したがって、フライホイールクラッチ92の回転速度差を見る場合に、フライホイール回転速度Nfwと入力軸回転速度Ninとを直に比較することはできない。
[0057]
 減速ギヤ列23,24により減速されるフライホイール2側の回転速度は、フライホイール回転速度Nfwを減速ギヤ列23,24のギヤ比を用いて補正すれば求めることができ、この回転速度がフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinとなる。このフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが入力軸回転速度Ninと一致すれば、フライホイールクラッチ92の第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差は解消される。
[0058]
 次に、目標回転速度Naを説明する。この目標回転速度Naは、車両のアクセルオフ時(即ち、コースト走行時)における変速線(コースト線とも呼ぶ)Lcと、ポンプ10の油量収支を確保する回転速度(油量収支確保回転速度)Npと、上限車速Vsとで規定される制御目標線Laに応じて決められる。
[0059]
 コースト線Lcに着目するのは、次の理由による。
 回生のためにフライホイールクラッチ92を締結する条件は、車速VSPが下限車速Vs0以上の場合において、ブレーキペダル61が踏込操作(ブレーキオン)されることであるが、アクセルオンからアクセルオフへの切替後、直ぐに、ブレーキオフからブレーキオンへと操作される場合や、アクセルオンから、アクセルオフ且つブレーキオフの惰性走行状態(いわゆる、コースト走行状態)を経てブレーキオンへと操作される場合がある。アクセルオフであれば、コースト走行状態でも、ブレーキオンの制動時でも、変速制御にはアクセル開度が0の場合の変速線(コースト線)を用いる。なお、車速VSPが下限車速Vs0以上であることをフライホイールクラッチ92の締結条件とするのは、車速VSPが低すぎるとフライホイール2に回収する回転エネルギ量に比べてエネルギロスが大きくなってしまうためである。
[0060]
 つまり、変速制御は、図2の変速線図に二点鎖線等で示すように、アクセル開度に対応して設けられた変速線(即ち、車速VSPとCVT3A(バリエータ3)の入力軸回転速度Nin(本実施形態では、エンジン回転速度Neと一致する)との対応関係(変速比)を規定する線)に従って行なう。アクセルペダル85の踏込を解除したコースト走行状態では、アクセル開度が0の場合の変速線である、コースト線Lcを用いる。このコースト線Lcは、各アクセル開度に対応した変速線の中で最も最ハイ線(最オーバードライブ線)Lhの側に位置する。ただし、低車速時にはエンジン作動に支障がない最低限のエンジン回転速度を確保するため、コースト線Lcは最ハイ線Lhよりも低変速比側(入力軸回転速度Ninが高い側)に位置する。これは、図2において車速VSPが所定車速Vs1未満の場合である。
[0061]
 アクセルオフ時には、入力軸回転速度Ninがこのようにコースト線Lcにしたがって車速VSPに対応させた回転速度(コースト線対応回転速度)Ncとなるように変速制御が行われる。このため、コースト走行状態になった時にフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがこのコースト線対応回転速度Ncと一致していれば、フライホイールクラッチ92の第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差は発生しない。
[0062]
 そこで、目標回転速度Naをコースト線対応回転速度Ncに設定し、コースト走行状態となる前のエンジン走行時であることを条件に(上記条件(1))、予め、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを、コースト線対応回転速度Ncと一致するように制御する。これによりその後にコースト走行状態となったら、入力軸回転速度Ninがコースト線対応回転速度Ncに制御されるため、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがコースト線対応回転速度Ncと一致していれば、フライホイールクラッチ92の回転速度差は解消される。
[0063]
 ただし、図2に示すように、さらに低車速の領域(図2において車速VSPが所定車速Vs2未満の場合)には、コースト線Lcよりも回転速度が高い油量収支確保回転速度Npが設定されている。車速VSPがこの低車速領域に入ると目標回転速度Naを油量収支確保回転速度Npに設定し、フライホイール2の入力軸換算回転速度Nfwinを油量収支確保回転速度Np以上に保持する。この油量収支確保回転速度Npは入力軸回転速度Ninが低下してポンプ10の吐出油量が低下して油量収支が不足する状況に備えたものである。
[0064]
 つまり、回生のためフライホイールクラッチ92の締結後、CVT変速比をLow側にダウンシフトさせるには、このダウンシフトに作動油が用いられるため、バリエータ3や副変速機構4において滑りが生じないために必要な油量に対して、システム全体の必要油量が増加する。ポンプ10は入力軸31によって回転駆動されるため、入力軸回転速度Ninが低くなるとポンプ10の吐出油量も低下する。低車速領域のコースト線Lcでは、ポンプ10の吐出油量を、バリエータ3を所望の変速速度で変速させるのに必要な分だけ確保できなくなってCVT変速比の変更に支障をきたす。
[0065]
 そこで、バリエータ3を所望の変速速度で変速させるのに必要な吐出流量が確保される回転速度の下限値を油量収支確保回転速度Npとし、入力軸31の回転速度を上げて必要油量を確保できるように備えている。したがって、フライホイールクラッチ92の回転速度差が生じるが、この状況下では、回転速度差に起因する熱損失を解消する以上に、ポンプ10の吐出油量を確保することを重視するのである。これにより、フライホイールクラッチ92の締結後、CVT変速比の変更を支障なく行なえる。
[0066]
 また、図2に下限回転速度線Llimitで示すように、回転速度差増大抑制制御を実施する条件である下限回転速度Nlimitが車速に対応して設定されており、回転速度差増大抑制制御の開始時に、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがこの下限回転速度Nlimit以上にある場合のみ回転速度差増大抑制制御を実施する(上記条件(6))。これは、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがこの下限回転数Nlimitに達しない場合には、2つの締結要素92a、92b間の回転速度差が大きく、コストや搭載性の点から小型のモータ20を用いた場合、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwを目標回転速度Naまで上昇させることができず、制御を確実に達成できないおそれがあるためである。
[0067]
 また、仮に大型のモータを搭載した場合であっても、2つの締結要素92a、92b間の回転速度差が大きいと、完全締結状態となるまでの発熱量が大きく、フライホイールクラッチ92の耐久性が低下するおそれがあるためである。このような点から、下限回転速度Nlimitは、搭載されるモータの出力に応じて、フライホイール回転速度Nfwを目標回転速度Naまで上昇可能な回転速度分、目標回転速度Naから低減した値に設定される。但し、設定された下限回転速度Nlimitと目標回転速度Naとの回転速度差が、締結に際してフライホイールクラッチ92の耐久性が低下する恐れがある場合は、耐久性が低下しない範囲となるよう下限回転速度Nlimitを大きく設定する。さらに、フライホイール回転速度Nfwが下限回転速度Nlimitに達しない場合に回転速度差増大抑制制御を実施しない理由として、2つの締結要素92a,92b間の回転速度差が大きいと、モータ20による電力消費が大きくなることと、低車速域であるためドライバによる発進、加速が要求されることが多く、フライホイール回転エネルギを回生する機会が失われる可能性が高いためである。
[0068]
 フライホイール2の慣性モーメントをIfwvとし、フライホイール2の回転速度に対応する角速度ωを、下限回転速度Nlimitに対応する下限角速度ωlimitからコースト線Lcに応じた回転速度に対応する角速度ωcまで上昇させるのに、時間tだけかけるものとし、フライホイール2の角速度上昇(回転速度上昇)に要するモータ20の出力をP 1として、モータ20の消費エネルギとフライホイール2の運動エネルギの増加に着目すると、以下の式(1´)が成り立つ。
[0069]
   P 1・t=Ifwv/(ωc 2-ωlimit 2)・・・(1´)
よって、式(1)が導かれる。
   P 1=(Ifwv/t)・(ωc 2-ωlimit 2)・・・(1)
 式(1´),(1)からわかるように、角速度ωcと下限角速度ωlimitとの差が大きいほど、回転速度上昇に要するモータ20の出力P 1や時間tが要求されるため、下限角速度ωlimitが設定される。
[0070]
 また、モータの出力Pのうちフライホイール2のフリクショントルクTfricにより消費される出力P 2は、以下の式(2)のように、フライホイール2のフリクショントルクTfricと角速度ωcとの積となる。
   P 2=Tfric・ωc         ・・・(2)
[0071]
 この消費出力P 2は、角速度ωcが増大するほど、即ち、車速VSPが増大するほど、大きくなり、フライホイール2の角速度上昇(回転速度上昇)に利用される出力P 1は、モータの出力Pからこの消費出力P 2を減算した値(P-P 2)となるので、角速度ωcが増大するほど、即ち、車速VSPが増大するほど、フライホイール2の回転速度上昇に利用される出力P 1は小さくなる。
[0072]
 このようにして、車速VSPが増大するほど、モータ20によって所定時間t内にフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを制御目標線Laに上昇できる下限回転速度Nlimitは制御目標線Laに近づき、車速VSPが上限車速Vsに達すると、モータ20の出力Pが全てフリクショントルクTfricに消費されてしまう。そこで、車速VSPが上限車速Vs以下であることを条件に(上記条件(2))フライホイール2の回転制御(回転速度差増大抑制制御)を実施する。
[0073]
 また、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Na以上であれば、モータ20によってフライホイール2の回転速度上昇を行なう必要はなく、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Na未満であることを条件に(上記条件(5))、回転速度差増大抑制制御を実施する。
[0074]
 [3-2.作用及び効果]
 [3-2-1.フローチャート]
 次に、コントローラ8によるモータ20を通じたフライホイール2の回転制御(回転速度差増大抑制制御)を図3のフローチャートを用いて説明する。
 図3に示すように、コントローラ8は、はじめに、回転速度差増大抑制制御の開始条件を判定する。
[0075]
 つまり、車速VSPが上限車速Vs以下(条件(2))であり且つエンジン走行状態である(条件(1))か否かを判定する(ステップA10)。ここで、車速VSPが上限車速Vs以下で且つエンジン走行状態であれば、フライホイールクラッチ92がオフ(解放状態)である(条件(3))か否かを判定する(ステップA20)。フライホイールクラッチ92がオフであれば、バッテリ15の残存容量SOCが適正範囲内である(条件(4))か否かを判定する(ステップA30)。バッテリ15の残存容量SOCが適正範囲内であれば、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Na未満である(条件(5))か否かを判定する(ステップA40)。フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Na未満であれば、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが下限回転速度Nlimit以上である(条件(6))か否かを判定する(ステップA50)。
[0076]
 このようにして、制御条件(1)~(6)が何れも成立したら、回転速度差増大抑制制御(ステップA60~A90)を実施するが、制御条件(1)~(6)の何れかが成立しなければ、回転速度差増大抑制制御(ステップA60~A90)は実施しない。
 回転速度差増大抑制制御では、まず、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinの目標回転速度Naを、このときの車速VSP及びコースト線Lcに基づいたコースト線対応回転速度Ncに設定する(ステップA60)。
[0077]
 次に、このコースト線対応回転速度Ncがポンプ油量収支確保回転速度Np未満であるか否かを判定する(ステップA70)。コースト線対応回転速度Ncがポンプ油量収支確保回転速度Np未満であれば、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinの目標回転速度Naを、このポンプ油量収支確保回転速度Npに設定する(ステップA80)。
 そして、モータ20を最大出力状態としてフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Naとなるように制御する(ステップA90)。
[0078]
 このような制御の後、アクセルオンの状態からアクセルオフのコースト走行状態となると、入力軸回転速度Ninがコースト線対応回転速度Ncとなるように変速制御が行われる。コースト線対応回転速度Ncがポンプ油量収支確保回転速度Np以上で目標回転速度Naがコースト線対応回転速度Ncに設定されれば、上記のように、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinはコースト線対応回転速度Ncに制御されているので、フライホイールクラッチ92の第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差は発生していない。
[0079]
 この後、運転者によりブレーキペダル61が踏み込まれると、コントローラ8はブレーキスイッチ87の情報からこれを判断して、フライホイールクラッチ92を締結し、駆動輪6から入力される回転を減速ギヤ列23,24により増速してフライホイール2を回転させ、車両100が持つ運動エネルギをフライホイール2の運動エネルギに変換することで、車両100の運動エネルギをフライホイール2で回収し、回生ブレーキを実施する。
[0080]
 このフライホイールクラッチ92の締結時には、フライホイールクラッチ92の第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差は発生していないので、両者の回転速度差に起因した発熱によるエネルギ損失を抑制することができ、車両のエネルギ効率を高めることができる。
[0081]
 また、コースト線対応回転速度Ncがポンプ油量収支確保回転速度Np未満であれば、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinの目標回転速度Naを、このポンプ油量収支確保回転速度Npに設定して、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Naとなるように制御するので、その後のフライホイールクラッチ92の締結時に、入力軸31の回転速度が上げられてポンプ10の吐出油量が確保される。
[0082]
 これにより、油量収支不足を招くことがなく、CVTバリエータ3における駆動力伝達や変速比の変更を支障なく行なうことができ、ドライバからの発進,加速意図に基づき直ちにドライバが意図した変速比へ所望の変速速度で変速ができ、ドライバからの発進,加速意図に対して駆動力発生までのタイムラグを短くし、車両の走行駆動力を確保することができる。さらに、バリエータ3や副変速機構4において油量収支不足となることがなく、フライホイール2に回転エネルギを回生する回生制御中、回生制御による減速度をバリエータ3と副変速機構4とをスリップすることなく伝達することができるため、ドライバが意図した減速要求度を達成することができる。
[0083]
 [3-2-1.タイムチャート]
 つぎに、図4,図5のタイムチャートを参照して、本実施形態にかかる制御の具体例を説明する。図4はコースト線対応回転速度Ncがポンプ油量収支確保回転速度Np以上であって、目標回転速度Naがコースト線対応回転速度Ncに設定されている場合を示し、図5はコースト線対応回転速度Ncがポンプ油量収支確保回転速度Np未満であって、目標回転速度Naがポンプ油量収支確保回転速度Npに設定されている場合を示す。フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Naを下回った時点で回転速度差増大抑制制御を行わなかった場合のNfwinを二点鎖線で示す。
[0084]
 図4に示すように、アクセルペダルを踏み込んでいるアクセルオン時に、車速VSPが上昇しつつCVT変速比が緩やかにハイ側にシフトし、エンジン回転速度Ne及び入力軸回転速度Ninが上昇して、目標回転速度Naがコースト線対応回転数Ncに設定されている場合、フライホイール入力軸換算回転数Nfwinが目標回転速度Na(コースト線対応回転速度Nc)を下回った時点t 11でモータ20が作動して回転速度差増大抑制制御が開始される。その後の時点t 12で、アクセルがオンからオフに、ブレーキがオフからオンに切り替えられて、コースト走行状態となると、入力軸回転速度Ninがコースト線対応回転速度Ncとなるように変速制御が行われる。
[0085]
 変速制御により、その後の時点t 13で、入力軸回転速度Ninがコースト線対応回転速度Ncとなると、このとき、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinはコースト線対応回転速度Ncに制御されているので、フライホイールクラッチ92の第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差は発生していない状態となる。
[0086]
 したがって、この時点t 13で、エンジンクラッチ91を解放し、フライホイールクラッチ92を締結することにより、フライホイールクラッチ92の二要素92a,92bの回転速度差に起因した発熱によるエネルギ損失を抑制することができ、フライホイール2の回転エネルギの回生効率を高めることに寄与する。また、ここでは、時点t 13のフライホイールクラッチ92を締結するタイミングでエンジンクラッチ91を締結から解放に切り替えるので、エンジンブレーキで消費されるエネルギ分までフライホイールクラッチ92の運動エネルギに回生できる。
[0087]
 図5に示すように、アクセルオンで、車速VSPが上昇しつつCVT変速比が緩やかにハイ側にシフトし、エンジン回転速度Ne及び入力軸回転速度Ninが上昇している状態から、時点t 21でアクセルオフとされコースト走行状態となると、CVT変速比はコースト線に沿って制御される。このため、その後の時点t 22から入力軸回転速度Ninはコースト線対応回転速度Ncに制御される。また、車速の低下と共にCVT変速比はロー側にシフトしていく。
[0088]
 そして、CVT変速比が最ロー付近になると、コースト線対応回転速度Ncは低下していくため、入力軸回転速度Ninも低下していく。このため、やがて入力軸回転速度Ninはポンプ油量収支確保回転速度Npを下回ることになる(時点t 23)。一方、時点t 23からは、目標回転速度Naがポンプ油量収支確保回転速度Npに設定されるので、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinはポンプ油量収支確保回転速度Npに維持される。フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが油量収支確保回転速度Npを下回った時点で回転速度差増大抑制制御を行わなかった場合のNfwinを点線で示す。
[0089]
 したがって、その後の時点t 24でブレーキがオフからオンに切り替えられて、回生制御が開始されフライホイールクラッチ92が締結されると、入力軸回転速度Ninは、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがポンプ油量収支確保回転速度Npに維持されているフライホイール2の回転によって引き上げられる。このように、ポンプ10を駆動する入力軸31の回転速度が引き上げられてポンプ10の吐出油量が確保される。
[0090]
 これにより、フライホイールクラッチ92の締結時に、油量収支不足を招くことがなく、CVTバリエータ3における駆動力伝達や変速比の変更を支障なく行なうことができ、ドライバからの発進、加速意図に基づき直ちにドライバが意図した変速比へ所望の変速速度で変速ができ、ドライバからの発進,加速要求に対して駆動力発生までのタイムラグを短くし、車両の走行駆動力を確保することができる。さらに、フライホイールクラッチ92が解放している間、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが油量収支確保回転速度Npに維持されているため、オイルポンプ10の吐出油量が確保された状態で、その後のフライホイール2による回生制御を開始することができる。
[0091]
 [3-3.その他]
 なお、本実施形態において、コントローラ8に、車両100がその後に減速走行することを予測する機能(予測手段)を備えるようにして、制御開始条件に、予測手段が減速走行を予測したことを含めるようにしてもよい。この場合の減速走行の予測は、車両100に搭載されているナビゲーションシステムの情報(ナビ情報)に基づき行なうことができる。具体的には、ナビ情報から、前方が渋滞していること、前方に赤信号があること、前方にコーナーがあること、などの情報を得たら、その後車両100が減速走行することを予測することができる。
[0092]
 このように、回転速度差増大抑制制御の制御開始条件に、減速走行を予測したことを含めることにより、回転速度差増大抑制制御を有効に利用することができる。つまり、回転速度差増大抑制制御では、バッテリ15の電力を用いてモータ20を作動させるため、回転速度差増大抑制制御を長く行なえばそれだけバッテリ15の電気エネルギが失われる。しかし、予測手段により減速走行が予測された場合のみ回転速度差増大抑制制御を行うことにより、ブレーキオンによる減速走行が開始される直前の僅かな期間だけ回転速度差増大抑制制御が行われることになり、回転速度差制御の効果を得ることができ、バッテリ15の電気エネルギの消費を抑えることができエネルギ効率が良くなる。
[0093]
 [4.第2実施形態]
 [4-1.構成(回転制御の構成)]
 本実施形態にかかるフライホイール式回生システムは、第1実施形態と同様に上述のようなハード構成を備えており、コントローラ8による回生制御では、車両100の制動時にフライホイールクラッチ92を締結する直前において、フライホイールの回転速度(ここでは、第1実施形態で説明したフライホイール入力軸換算回転速度Nfwin)が目標回転速度Naを下回ることを含む制御開始条件が成立したらフライホイールクラッチ92の二つの要素92a,92b間の回転速度差が低減するようにモータ20を制御する。以下、この回転速度差制御を締結前制御と呼び、この制御を中心に本実施形態を説明する。
[0094]
 本実施形態にかかるコントローラ8は、以下の制御開始条件が成立すると、車両100の制動時にフライホイールクラッチ92を締結する指令があった場合に、フライホイールクラッチ92の締結前において、フライホイールクラッチ92の二つの要素92a,92b間の回転速度差を低減する締結前制御を実施する。
 (1)ブレーキがオン操作されたこと。
 (2)フライホイールクラッチ92が解放状態である又は完全締結されていないこと。
 (3)フライホイールクラッチ92が締結指令されていること。
 (4)バッテリ15の残存容量SOCが適正範囲内であること。
[0095]
 本実施形態にかかる締結前制御では、上記の制御開始条件が何れも成立すると、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Naに接近するようにモータ20の回転を制御する。本回転制御は、ブレーキペダル61が踏み込まれた車両100の制動時に、フライホイールクラッチ92を締結してフライホイール2に回転エネルギを回収する回生制御を開始する直前に、この回生制御を微小時間だけ遅らせて実施するので、ブレーキ装置60による制動と回生制御による制動とを協調させることも必要になる。以下、この締結前制御の具体的な手法を説明する。
[0096]
 なお、本締結前制御は、フライホイールクラッチ92の締結指令があった時に行なう制御なので、上記の条件(3)は前提条件である。フライホイールクラッチ92の締結指令は、ブレーキオンと車速VSPが下限車速Vs0以上であることを条件とするので、条件(3)は「車速VSPが下限車速Vs0以上であること」と置き換えることもできる。また、本制御は、バッテリ15の電力を用いてモータ20を作動させるので、バッテリ15を保護する観点から上記の条件(4)も前提条件である。条件(2)については以下に説明する。
[0097]
 まず、目標回転速度Naを説明する。この目標回転速度Naは、第1実施形態で説明したように、車両のアクセルオフ時(即ち、コースト走行時)における変速線(コースト線)Lcで規定される制御目標線Laに応じて決められる。
 コースト線Lcに着目する理由は、第1実施形態と同様である。
[0098]
 つまり、回生のためにフライホイールクラッチ92を締結する条件は、車速VSPが下限車速Vs0以上であって、ブレーキペダル61を踏込操作したブレーキオンの場合であるが、このときには、アクセルオフが前提となる。アクセルオフ時には、コースト走行状態であってもブレーキオンの制動時であっても、変速制御にはアクセル開度が0の場合の変速線(コースト線)を用いる。
[0099]
 フライホイールクラッチ92を締結する際に、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがこのコースト線Lcにしたがった回転速度(コースト線対応回転速度)Ncと一致していれば、フライホイールクラッチ92の第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差は発生しない。また、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがコースト線対応回転速度Ncと一致しなくても接近すれば第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差の影響は軽減される。
[0100]
 そこで、図6に示すように、目標回転速度Naをコースト線対応回転速度Ncに設定し、フライホイールクラッチ92の締結前に、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを、コースト線対応回転速度Ncに接近するように制御する。この「接近するように制御する」とは、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinをコースト線対応回転速度Ncと必ずしも一致させなくても良いことを意味する。これは、締結前制御においてモータ20で消費される電力が過剰にならないように考慮したためである。
[0101]
 つまり、締結前制御では、モータ20を作動させてフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを上昇させて目標回転速度Na(コースト線対応回転速度Nc)に近づけるが、モータ20を作動させる際にはバッテリ15の電力を消費する。フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを上昇させるのは、第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差を抑止し、フライホイールクラッチ92の締結時の熱損エネルギを低減するためであるが、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを上昇させるのに電力エネルギを使い過ぎると、熱損エネルギの低減分を上回ってしまう。
[0102]
 そこで、エネルギ収支をプラスにするように、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを上昇させる際に用いるバッテリ15の電力消費を抑えるようにしている。この結果、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがコースト線対応回転速度Ncに近づくが一致しない場合も生じるのである。なお、本実施形態では、バッテリ15の電力消費を抑える手段として、締結前制御を規定時間内に限定して実施するようにしている。
[0103]
 また、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを上昇させる際には、短時間に回転速度を上昇させるために、基本的には、モータ20の出力トルクを最大出力状態又はこれに近い状態で作動させる。ただし、この場合のモータ20の最大出力トルクは、バッテリ15の残存容量SOCによって規制される。つまり、残存容量SOCが適正範囲内であっても、残存容量SOCが低ければモータ20の最大出力トルクを抑えるようにする。また、締結前制御中に、残存容量SOCが適正範囲から外れた場合にはその時点で締結前制御は終了させることになる。このような場合には、モータ20の最大出力トルク自体が低下するので、規定時間内にフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを目標回転速度Naに到達させることができないことがある。
[0104]
 一方、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Naに近ければ、残存容量SOCが低い場合も含めてモータ20の出力トルクを抑えることができる。そこで、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinと目標回転速度Naとの偏差に基づいて締結前制御におけるモータ20の出力トルクを調整するようにしても良い。また、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Na以上であれば、締結前制御は不要である。
[0105]
 また、上述のように、残存容量SOCが低い場合や、車速が高くフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Naから大きく離隔している場合などには、締結前制御によって、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinがコースト線対応回転速度Ncに近づくが一致しない場合が生じるが、このときには、締結前制御の後、フライホイールクラッチ92をスリップさせながら完全締結する。
[0106]
 また、締結前制御において、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを目標回転速度Naに近づける際や、締結前制御の後、フライホイールクラッチ92をスリップさせながら完全締結する際には、短時間だけCVT変速比(プーリ比)をフライホイール回生開始車速時点のものに固定する。従って、車速VSPの低下に伴って入力軸回転速度Ninは図6中の破線に沿って低下してフライホイール回生開始時点の入力軸回転速度Ncより低い回転速度Ncoとなる。これにより、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが目標回転速度Naに速やかに到達する。
[0107]
 [4-2.作用及び効果]
 [4-2-1.フローチャート]
 次に、コントローラ8によるモータ20を通じたフライホイール2の回転制御(回転速度差増大抑制制御)を図7のフローチャートを用いて説明する。
 図7に示すように、コントローラ8は、はじめに、締結前制御の開始条件を判定する。
[0108]
 つまり、ブレーキオンである(条件(1))か否か(ステップB10)、フライホールクラッチ92が完全締結されていない状態である(つまり、条件(2)のフライホイールクラッチ92が解放状態である又は完全締結されていない)か否か(ステップB20)、フライホイールクラッチ92が締結指令されている(条件(3))か否か(ステップB30)、バッテリ15の残存容量SOCが適正範囲内である(条件(4))か否かを判定する(ステップB40)。
[0109]
 これらの条件が何れも成立すれば、タイマを起動してタイマカウントを開始し(ステップB50)、タイマカウント値Tを規定時間に対応する閾値T0と比較する(ステップB60)。タイマカウント値Tが閾値T0未満であれば、モータ20を作動させてフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを引き上げ目標回転速度Naに近づける締結前制御を実施する(ステップB70)。
[0110]
 その後、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが固定回転速度Nco(≒目標回転速度Na)と一致したかを判定し(ステップB80)、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが固定回転速度Ncoと一致したら、フライホイールクラッチ92を完全締結させ(ステップB90)、タイマを停止してタイマカウント値Tを0にリセットし(ステップB100)、制御は終了する。フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが固定回転速度Ncoと一致したら、フライホイールクラッチ92の第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差は発生していない状態となり、回転速度差に起因した発熱によるエネルギ損失を抑制することができる。
[0111]
 一方、条件(1),(2),(3)は何れかも成立するが条件(4)が成立しなければ、モータ20を作動させることはできない。また、タイマカウント値Tが閾値T0以上になった場合も、電力消費抑制の観点からモータ20を作動させない。このため、フライホイールクラッチ92をスリップ締結させてフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを固定回転速度Ncoに近づけていく(ステップB72)。この場合、要求減速度に応じてスリップさせながら締結する。この後、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが固定回転速度Ncoと一致したかを判定し(ステップB80)、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが固定回転速度Ncoと一致したら、フライホイールクラッチ92を完全締結させ(ステップB90)、タイマを停止してタイマカウント値Tを0にリセットし(ステップB100)、制御は終了する。
[0112]
 フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが固定回転速度Ncoと一致しない場合でも、締結前制御(ステップB70)が少しでも実施されたら、フライホイールクラッチ92の第1要素92aと第2要素92bとの間の回転速度差は減少しているので、ステップB72によるスリップ締結時の回転速度差に起因した発熱によるエネルギ損失を抑制することができる。
[0113]
 [4-2-1.タイムチャート]
 つぎに、図8,図9のタイムチャートを参照して、本実施形態にかかる制御の具体例を説明する。図8は締結前制御によりフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが固定回転速度Nco(≒目標回転速度Na)と一致する場合を示し、図9は締結前制御によりフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinが固定回転速度Nco(≒目標回転速度Na)と一致しない場合を示す。
[0114]
 図8に示すように、下限車速Vs0以上の場合において、アクセルペダルが踏み込まれていて(アクセルオン)、車速VSPが上昇しつつCVT変速比が緩やかにハイ側にシフトし、エンジン回転速度Ne及び入力軸回転速度Ninが上昇して、目標回転速度Naがコースト線対応回転速度Ncに設定されている状態において、時点t 31で、アクセルがオンからオフに、ブレーキがオフからオンに切り替えられる。これにより回生制御の開始条件が成立する。この時点から、CVT変速比はコースト線に向けて制御される。
[0115]
 ここで、バッテリ15の残存容量SOCが適正領域であれば、エンジンクラッチ91がオフにされ、このエンジンクラッチ91がオフ(解放)にされるタイミングt 32で、モータ20が起動されてフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを引き上げ目標回転速度Naに近づける締結前制御を実施する。締結前制御は所定時間に制限され、この間、CVT変速比は固定される。
[0116]
 時点t 33では、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinは固定回転速度Nco(≒目標回転速度Na)と一致しているため、モータ20が停止されて、フライホイールクラッチ92がオン(締結)される。これにより、フライホイールクラッチ92の締結時に発熱によるエネルギ損失が生じない。車両100の運動エネルギをフライホイール2で回転エネルギとして回収し、回生ブレーキを実施することで、その後、回収したエネルギ車両の発進や加速に有効に利用できる。なお、ブレーキオンから回生ブレーキが作動されるまでは、ブレーキ装置60のサービスブレーキが作動する。
[0117]
 図9に示す例でも、下限車速Vs0以上の場合において、アクセルペダルが踏み込まれていて(アクセルオン)、車速VSPが上昇しつつCVT変速比が緩やかにハイ側にシフトし、エンジン回転速度Ne及び入力軸回転速度Ninが上昇して、目標回転速度Naがコースト線対応回転速度Ncに設定されている状態において、時点t 41で、アクセルがオンからオフに、ブレーキがオフからオンに切り替えられる。これにより回生制御の開始条件が成立する。この時点から、CVT変速比はコースト線に向けて制御される。
[0118]
 ここでは、バッテリ15の残存容量SOCが適正領域であるが少ない状況にあるものとする。エンジンクラッチ91がオフにされ、このエンジンクラッチ91がオフ(解放)にされるタイミングt 42で、モータ20が起動されてフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを引き上げ目標回転速度Naに近づける締結前制御を実施する。締結前制御は所定時間に制限され、この間、CVT変速比は固定される。
[0119]
 モータ20が起動されてから所定時間後の時点t 43でモータ20が停止されるが、残存容量SOCが少ないためモータ20の最大出力トルクが規制され、時点t 43ではフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinは目標回転速度Naには到達していない。この場合、時点t 43以降フライホイールクラッチ92をスリップ締結させてフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinを固定回転速度Ncoに近づけていく。
[0120]
 時点t 44で、フライホイール入力軸換算回転速度Nfwinは固定回転速度Nco(≒目標回転速度Na)と一致したら、フライホイールクラッチ92がオン(締結)される。締結前制御を所定時間行った分だけフライホイール入力軸換算回転速度Nfwinと固定回転速度Ncoとの回転速度差が低減されるため、フライホイールクラッチ92の締結時に発熱によるエネルギ損失が低減される。そして、車両100の運動エネルギをフライホイール2で回転エネルギとして回収し、回生ブレーキを実施することで、その後、回収したエネルギ車両の発進や加速に有効に利用できる。なお、ブレーキオンから回生ブレーキが作動されるまでは、ブレーキ装置60のサービスブレーキが作動する。特に、フライホイールクラッチ92をスリップ締結させる際に、フライホイールクラッチ92をスリップ締結させることにより、ドライバの意図する制動操作量を実現できない場合は、フライホイールクラッチ92をスリップ締結させる回生制動力とサービスブレーキの制動力とを協調させる。
[0121]
 [4-3.その他]
 なお、本実施形態において、タイマ等を利用した時間制限により、締結前制御によるエネルギ消費を制限しているが、時間制限ではなく、電力消費量などエネルギ消費量で制限することも考えられる。
[0122]
 [5.その他]
 以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、各実施の形態を適宜変更したり、一部を採用したりして実施することができる。
 上記の各実施形態では、発電機能も有するモータ20はフライホイール2(締結要素92a)の回転速度を制御しているが、運転状態に応じては、このモータ20の発電機能を利用して、フライホイール2に蓄積された回転エネルギを電気エネルギとして回生して、フライホイール2の回転速度を制御することもできる。
[0123]
 また、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることも考えられる。例えば、第1実施形態にかかる回転速度差増大抑制制御に、制御開始条件として予測手段が減速走行を予測したことを含めるようにし、回転速度差増大抑制制が可能であればこれを実施し、回転速度差増大抑制制御ができなかった場合には、第2実施形態にかかる締結前制御を実施することも考えられる。
 また、変速機としては、CVT(無段変速機)のみならず有段変速機も適用することも可能である。

請求の範囲

[請求項1]
 車両に装備され、入力部が駆動源に接続され出力部が駆動輪に接続された変速機と、
 フライホイールと、
 互いに締結及び解放される第1要素及び第2要素を有し、前記第1要素が前記変速機の前記入力部に接続され前記第2要素が前記フライホイールに接続された摩擦締結要素と、
 前記フライホイールに接続されたモータと、
 前記車両の制動中に前記摩擦締結要素を締結して前記車両の駆動系の回転エネルギを前記フライホイールの回転エネルギに回生する回生制御を行なう制御手段と、を備え、
 前記制御手段は、前記摩擦締結要素を締結する前に、前記モータを制御して、前記摩擦締結要素の前記第1要素と前記第2要素との回転速度差を低減させる回転速度差制御を実施する、
 フライホイール式回生システム。
[請求項2]
 前記回転速度差制御は、前記モータを制御して、前記フライホイールの回転速度の低下に伴う前記摩擦締結要素の前記回転速度差の増大を抑制する回転速度差増大抑制制御である、請求項1記載のフライホイール式回生システム。
[請求項3]
 前記制御手段は、前記車両の車速に応じて前記フライホイールの目標回転速度を設定し、前記フライホイールの回転速度が前記目標回転速度を下回ることを含む制御開始条件が成立したら、前記回転速度差増大抑制制御を開始する、請求項2記載のフライホイール式回生システム。
[請求項4]
 前記変速機は無段変速機であって、前記制御手段は、アクセルペダル開度に応じた変速線を用いて前記変速機の変速比を制御し、
 前記目標回転速度は、前記アクセルペダル全閉時の変速線に従って前記車速に応じて決まる前記入力部の回転速度に対応した回転速度に設定される、請求項3記載のフライホイール式回生システム。
[請求項5]
 前記変速機の前記入力部の回転により駆動され、前記変速機を変速させる油圧を生成するオイルポンプを備え、
 前記変速機を制御するのに必要な前記オイルポンプの吐出流量を確保可能な前記入力部の回転速度の下限値である油量収支確保回転速度に対して、前記アクセルペダル全閉時の変速線に従って前記車速に応じて決まる前記入力部の回転速度に対応した回転速度の方が低い場合は、前記目標回転速度は、前記油量収支確保回転速度に設定される、請求項4記載のフライホイール式回生システム。
[請求項6]
 前記制御開始条件には、前記車両が前記駆動源の駆動力で走行していること、及び、前記車速が上限車速以下であることが含まれている、請求項3~5のいずれか1項に記載のフライホイール式回生システム。
[請求項7]
 前記制御開始条件には、前記フライホイールの回転速度が前記目標回転速度未満であること、及び、前記フライホイールの回転速度が前記車速に応じて設定される下限回転速度以上であることが含まれている、請求項3~6のいずれか1項に記載のフライホイール式回生システム。
[請求項8]
 前記制御手段は、前記車両の減速走行を予測する予測手段を備え、
 前記制御開始条件には、前記予測手段が減速走行を予測したことが含まれている、請求項3~7のいずれか1項に記載のフライホイール式回生システム。
[請求項9]
 前記回転速度差制御は、前記車両の制動中において、前記フライホイールの回転速度が前記目標回転速度を下回ることを含む制御開始条件が成立したら、前記モータを制御して、前記摩擦締結要素の締結を開始する前に前記摩擦締結要素の前記回転速度差を低減させる締結前制御である、請求項1記載のフライホイール式回生システム。
[請求項10]
 前記制御手段は、前記摩擦締結要素の前記回転速度差がゼロになるように前記締結前制御を実施する、請求項9記載のフライホイール式回生システム。
[請求項11]
 前記制御手段は、前記締結前制御により前記回転速度差を低減した後、前記摩擦締結要素をスリップさせながら締結する、請求項9記載のフライホイール式回生システム。
[請求項12]
 前記変速機は無段変速機であって、前記制御手段は、アクセルペダル開度に応じた変速線を用いて前記変速機の変速比を制御し、
 前記回生制御の開始条件には、前記車両が制動状態であることに加えて、前記変速機の前記入力部の回転速度が、アクセルペダル全閉の場合の変速線に従った回転速度になったことが含まれている、請求項1~11のいずれか1項に記載のフライホイール式回生システム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]