国際・国内特許データベース検索
このアプリケーションの一部のコンテンツは現在ご利用になれません。
この状況が続く場合は、次のお問い合わせ先までご連絡ください。フィードバック & お問い合わせ
1. (WO2015146234) 炭素繊維フェルト、その製造方法、及び液流通型電解槽
Document

明 細 書

発明の名称 炭素繊維フェルト、その製造方法、及び液流通型電解槽

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017  

発明の効果

0018   0019  

図面の簡単な説明

0020  

発明を実施するための形態

0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056  

実施例

0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079  

符号の説明

0080  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : 炭素繊維フェルト、その製造方法、及び液流通型電解槽

技術分野

[0001]
本発明は、導電性が高く、電解液など流体の透過性、浸透性の良い炭素繊維フェルトとその製造方法、及びその炭素繊維フェルトを有する液流通型電解槽に関する。

背景技術

[0002]
近年、クリーンな電気エネルギーの需要が急速に伸び、太陽光発電や風力発電といった新エネルギーの導入が積極的に進められている。しかし、これらの発電方式は、天候に左右される為、発電周波数や出力が安定化せず、制御が難しいという課題がある。その対策として、蓄電池を経由して出力することで、出力変動の平準化、余剰電力の貯蔵、負荷平準化を図ることが検討されている。
[0003]
これらの発電方式とは別に、一次電池、二次電池(蓄電池)、燃料電池といった各種電池、及び電気メッキ、食塩電解、有機化合物の電解合成などの電解工業などに、液流通型電解槽を利用する場合が増えつつある。
[0004]
液流通型電解槽を利用する蓄電池の一つであるレドックスフロー型蓄電池は、比較的安全なイオンを用いること、室温で作動する為、熱源が必要なく、高効率で運転できること、サイクル寿命が1万回以上と長寿命であるなどの優れた特徴を備え、また容易に大型化が可能であることから、大型の蓄電池として期待されている。
[0005]
図3は、レドックスフロー型電池の動作原理を示す概念図である。
レドックスフロー型電池32の主要部は、充電/放電反応を行うと共に、液流通型電解槽として作用するセル部(以下、液流通型電解槽と称す)34と、電力を貯蔵する電解液タンク部36、38と、から構成されている。液流通型電解槽34は、液流通型電極として作用する正極50及び負極52と、これらを分離する隔膜44と、液流通型電解槽34の両側に設けられる集電板40、42と、から構成されている。
[0006]
液流通型電解槽34には、2種類の電解液(送液ポンプ46、48によるそれぞれの電解液の流れ方向を矢印P、Qで示す)が供給されている。充電時においては、正極50で溶質の酸化反応が行われ、負極52で溶質の還元反応が行われる。放電時には、正極50で溶質の還元反応が行われ、負極52で溶質の酸化反応が行われる。これらの酸化還元反応を繰り返すことにより、充放電が行われる。
[0007]
前記正極50、負極52としては、導電性があり、化学的に安定な素材であることから炭素材料が好ましく用いられている。この炭素材料のうちでも、電解液の透過性が高く、電極反応を効率的に進行させる必要から表面積が大きいことが好ましいため、細い繊維の集合体である炭素繊維フェルトが更に好ましく用いられている。電極として使用されるフェルトには、電解液を少ない流通抵抗で循環させるため、液体透過性、浸透性が良いことが求められる。その解決策として、熱プレスや切削加工などにより炭素繊維フェルト表面に電解液流通用の溝を形成することが提案されている(例えば、特許文献1)。
[0008]
特許文献1では、炭素繊維前駆体フェルトの片面に熱プレス又は切削加工により溝を形成させた後、フェルトを炭素化することで、片面に溝が形成された炭素繊維フェルトを得ている。しかし、このようにして得られる炭素繊維フェルトは、熱プレス又は切削加工などが施された部分の繊維が損傷するため、炭素繊維フェルトの強度が低下し、また、熱プレス工程が追加されることで、電極コストが高くなる。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特許3560181号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
本発明は、電解液などの流体の透過性、浸透性が良く、厚み方向の導電性が高く、取扱性に優れる炭素繊維フェルト、そのフェルトの製造方法、及びそのフェルトを有する液流通型電解槽を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
本発明者らは、上記課題について鋭意検討しているうち、炭素繊維フェルトの厚み方向の繊維配列度が所定範囲内にあると共に、このフェルトの面方向の繊維配向において、最も繊維配列度の高い方向の繊維配列度と、その繊維配列度の高い方向と直交する方向の繊維配列度と、の差が所定範囲内にある炭素繊維フェルトは、そのフェルトを液流通型電解槽に用いる場合、通液方向への電解液などの流体の透過性、浸透性に優れ、更に厚み方向への導電性及び取扱性に優れていることを見出した。
[0012]
この炭素繊維フェルトは、所定の条件で作製した炭素繊維前駆体フェルトを炭素化することにより得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0013]
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
[0014]
[1] 厚み方向の繊維配列度が5~40%であり、面方向の繊維配向において、最も繊維配列度の高い方向の繊維配列度と、その繊維配列度の高い方向と直交する方向の繊維配列度と、の差が3~50%である炭素繊維フェルト。
[0015]
[2] 炭素繊維前駆体繊維ウェッブを積層角0~60°又は120~180°の範囲で2層以上積層して炭素繊維前駆体繊維ウェッブ積層体を得、前記炭素繊維前駆体繊維ウェッブ積層体をパンチング数300~3000回/cm の範囲でパンチングして炭素繊維前駆体フェルトを得、前記炭素繊維前駆体フェルトを不活性雰囲気下で炭素化する炭素繊維フェルトの製造方法。
[0016]
[3] [1]に記載の炭素繊維フェルトを有する液流通型電解槽。
[0017]
[4] 液流通型電解槽に配置した炭素繊維フェルトにおいて、通液方向の繊維配列度と、通液方向と直交する方向の繊維配列度と、の差が2.5%以上である[3]に記載の液流通型電解槽。

発明の効果

[0018]
本発明の炭素繊維フェルトは、厚み方向の電気抵抗値が低く、かつ、電解液などの流体の通液を阻害しないため、液流通型電解槽に配置する炭素繊維フェルトとして、好適に使用できる。
[0019]
本発明の炭素繊維フェルトの製造方法によれば、得られる炭素繊維フェルトの厚み方向の繊維配列度、面方向の繊維配列度を適正に制御できるため、厚み方向の導電性を維持しつつ、通液方向への電解液などの流体の透過性、浸透性に優れた、液流通型電解槽に配置する材料として好適に使用できる炭素繊維フェルトを得ることができる。

図面の簡単な説明

[0020]
[図1] 本発明の炭素繊維フェルトを示す概念斜視図である。
[図2] 本発明の炭素繊維フェルトを用いたレドックスフロー型電池の液流通型電解槽を示す概念斜視図である。
[図3] レドックスフロー型電池の動作原理を示す概念図である。

発明を実施するための形態

[0021]
図1は、本発明の炭素繊維フェルトの一例を示す概念斜視図である。
[0022]
以下、本発明の炭素繊維フェルトをレドックスフロー型電池の電極に使用する場合を例として、本発明の炭素繊維フェルトを説明する。
[0023]
図1において、2は炭素繊維フェルトであり、このフェルト2の厚み(T)を示す方向をZとする。厚み方向Zにおいて互いに対向する両表面C、C’の形状は、矩形、円形など種々のものが適用できるが、電極として用いるには図1の例のような矩形のものが好ましい。以下、両表面C、C’の形状ついては、矩形のものに沿って本発明を説明する。矩形の面方向の内、繊維配列度の高い方向をX、その直交方向をYとする。
[0024]
 本発明の炭素繊維フェルトは、厚み方向の繊維配列度が5~40%であり、好ましくは7~35%であり、より好ましくは10~30%である。炭素繊維フェルトの厚み方向の繊維配列度が5~40%であることで、厚み方向の電気抵抗値が低く、かつ、電解液の通液性に優れた炭素繊維フェルトとなる。
[0025]
 厚み方向の繊維配列度が5%未満の場合は、圧縮応力が低くなり、導電抵抗が高く、電池出力性能が低下する。厚み方向の繊維配列度が40%を超える場合は、通液圧力損失が高くなり、ポンプの消費エネルギーが大きくなる。厚み方向の導電抵抗を低くするには、パンチング数を多くする必要がある。パンチング数を過度に多くすれば、繊維が損傷し、フェルトの強度が低下する。更には、損傷した脱落の毛羽が発生する等の不具合が生ずる為、好ましくない。
[0026]
厚み方向の繊維配列度は、炭素繊維前駆体フェルト作製時のカード方式や、パンチング数、針の形状、パンチング深さ、炭素化時の長手方向の張力により制御できる。
[0027]
 さらに、本発明の炭素繊維フェルトは、面方向の繊維配向において、最も繊維配列度の高い方向の繊維配列度と、その繊維配列度の高い方向と直交する方向の炭素繊維配列度と、の差が3~50%であり、好ましくは5~30%である。繊維配列度の差が3~50%であることで、電解液の流通性が大きく向上した通液圧力損失の低い炭素繊維フェルトとなる。なお、本発明において、繊維配列方向Xは、X線回折においてZ-X面(A、A’)及びZ-Y面(B、B’)で360°試料を回転させて測定し、結晶子の配向ピークを得ることにより決定される。
[0028]
面方向の繊維配列度は、カード方式や、レイヤー工程での綾振り速度、ピッチやラチス速度調整などにより、制御できる。例えば、レイヤー工程で面方向の繊維配列度を調整する場合、積層する時の角度を好ましくは0~60°又は120~180°の間、より好ましくは10~50°又は130~170°の間に制御することで、繊維配列度を調整したウェッブを形成できる。
[0029]
通液圧力損失(通液圧損)は、液流通型電解槽当たり20kPa(150mmHg)未満が好ましく、16kPa(120mmHg)以下がより好ましい。通液圧力損失が20kPa以上であると、電解液を循環する為のポンプ容量が大きくなり、ポンプに使用される電力の為に、電力ロスが大きくなる。
[0030]
本発明の炭素繊維フェルトにおいては、適正な厚み方向の繊維配列度を有し、且つ、通液方向の繊維配列度が大きいものが好ましい。フェルトの厚み方向の導電抵抗による発熱ロスや、ポンプの駆動のエネルギーロスを低減でき、発電効率を高めることができるためである。
[0031]
炭素繊維フェルトの厚みは、1~10mmが好ましく、1.5~7mmがより好ましい。1mm未満の場合は、圧力損失が高く、ポンプの駆動のエネルギーロスが大きくなる為、好ましくない。10mmを超えると、システムが大きくなりすぎ、設計の自由度が下がる為、好ましくない。厚みは、炭素繊維前駆体フェルト作製時の前駆体繊維の仕込み量(目付)、繊維太さ、パンチング数により制御できる。
[0032]
目付は、100~1000g/m が好ましく、200~800g/m がより好ましい。100g/m 未満の場合は、反応に寄与する表面積が小さくなり、蓄電効率が低下する為、好ましくない。1000g/m を超える場合は、システムが大きくなりすぎ、設計の自由度が下がる為、好ましくない。目付は、前駆体繊維の仕込み量やウェッブの積層数により制御できる。
[0033]
厚み方向の電気抵抗値は540mΩ/cm 以下が好ましく、500mΩ/cm 以下がより好ましく、400mΩ/cm が特に好ましい。540mΩ/cm を超えると電極として使用した場合に、導電抵抗が高く、充放電のロスが大きくなる為、好ましくない。厚み方向の電気抵抗値は、厚み方向の繊維配列度や炭素化温度により制御できる。
[0034]
圧縮応力は0.3~1.5MPaが好ましく、0.5~1.2MPaがより好ましい。0.3MPa未満の場合は、電極50、52(図3参照)として液流通型電解槽34に組込んだ場合に、隔膜44と集電体40、42の接触が十分でなく、厚み方向の電気抵抗値が高くなり、電解槽34のセル抵抗が高くなる為、好ましくない。1.5MPaを超える場合は、隔膜44にかかる応力が大きくなり、隔膜44を損傷する可能性がある為、好ましくない。圧縮応力は、厚み方向の繊維配列度、使用する前駆体繊維の太さ、繊維焼成後に炭化する樹脂を予め前駆体繊維に添加しておくことで調整できる。
[0035]
[炭素繊維フェルトの製造方法]
本発明の炭素繊維フェルトの製造方法は特に限定されるものではなく、何れの方法で製造しても良いが、以下の方法が好ましい。
[0036]
炭素繊維前駆体繊維で作製された炭素繊維前駆体フェルトを用意する。次いで、不活性雰囲気下で炭素化する。これにより本発明の炭素繊維フェルトが得られる。
[0037]
炭素繊維フェルトの製造原料即ち炭素繊維前駆体繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維、ピッチ系繊維、レーヨン繊維、セルロース等の従来公知の何れかの原料繊維、又は、各種原料繊維を空気中で酸化処理することによって得られる耐炎繊維等が挙げられる。
[0038]
ここで、PAN系繊維とは、例えばアクリロニトリルを95質量%以上含有するモノマーを重合した単独重合体又は共重合体を含む紡糸溶液を、湿式又は乾湿式紡糸法において紡糸・水洗・乾燥・延伸等の処理を行うことによって得られる原料繊維である。共重合するモノマーとしては、アクリル酸メチル、イタコン酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸等が好ましい。
[0039]
これら炭素繊維前駆体繊維の中でも、繊維の柔軟性や加工性の面から、原料繊維のPAN系繊維を空気中で200~400℃で酸化処理することによって得られるPAN系耐炎繊維が好ましい。
[0040]
先ず、炭素繊維前駆体繊維を公知の方法でフェルト化する。フェルト化の方法は、カードによって開繊してウェッブを得、このウェッブをレイヤー工程で2層以上積層してウェッブ積層体を得、このウェッブ積層体をニードルパンチによりパンチングしてフェルト化する方法が好ましい。
[0041]
カードによりウェッブを作製し、レイヤー工程でウェッブ積層体を作製する場合、レイヤー工程でのウェッブの積層角度を前述の範囲内に制御することで、最終製品炭素繊維フェルトの面方向の繊維配向において、最も繊維配列度の高い方向の繊維配列度と、その繊維配列度の高い方向と直交する方向の繊維配列度と、の差が3~50%の炭素繊維フェルトとすることができる。面方向の繊維配列度は、レイヤー工程での積層角度調整による以外にも、カード方式での開繊調整や、レイヤー工程での綾振り速度調整、ピッチやラチス速度調整により、制御することもできる。
[0042]
炭素繊維前駆体繊維がPAN系耐炎繊維の場合、その密度は特に限定されるものではないが、1.33~1.45g/cm であることが好ましい。耐炎繊維の密度が1.33g/cm 未満の場合は、炭素化時の収縮が大きく、工程が不安定になり易い傾向がある。耐炎繊維の密度が1.45g/cm を超える場合は、繊維が脆く、パンチング等の交絡処理時に脱落が多く、加工性が低下する傾向にある。
[0043]
原料繊維の炭素繊維前駆体繊維の繊度は、0.1~5.0dtexであることが好ましく、0.5~3.5dtexであることがより好ましく、1.0~3.3dtexが特に好ましい。炭素繊維前駆体繊維の繊度が0.1dtex未満の場合は、開繊性が悪く、均質な混合が難しい。炭素繊維前駆体繊維の繊度が5.0dtexを超える場合は、強度の高いフェルトが得られない。また、繊維間の接点が低減し、炭素化後の電気抵抗値が高くなる。
[0044]
本発明の炭素繊維前駆体フェルトに用いる炭素繊維前駆体ステープルとしては、炭素繊維前駆体ステープルの繊維長が30~75mm、繊度が0.5~3.5dtex、クリンプ数4~20ヶ/2.54cm、クリンプ率4~20%に加工したものが好ましい。
[0045]
フェルト加工等における交絡処理は、ニードルパンチ方法により、パンチング数(交絡処理回数)300~3000回/cm の範囲で行う。パンチング数が300回/cm 未満の場合は、パンチング数が少ないので、フェルトの強度が低下する。更に、厚み方向の繊維配列度が所定の量まで到達できないので、圧縮応力が低くなり、厚み方向の電気抵抗値が高くなる。パンチング数が3000回/cm を超える場合は、交絡処理による繊維への損傷が大きく、脱落毛羽などが大量に発生する虞がある為、好ましくない。なお、ニードルパンチ方法におけるパンチング方向は、パンチング面の片側からでも両側からでも良い。
[0046]
以上のようにして炭素繊維前駆体フェルトを作製した後、これを炭素化処理することで、炭素繊維フェルトが得られる。
[0047]
炭素化処理は、炭素繊維前駆体フェルトを不活性雰囲気下、最高温度を1300~2300℃にして、0.5~120分間焼成することにより行う。好ましくは、第1炭素化処理と第2炭素化処理との2段階で焼成を行う。その場合、第1炭素化処理は、交絡処理後の炭素繊維前駆体フェルトを、不活性雰囲気下300~1000℃にして、0.5~120分間で焼成して分解ガスを処理する。第2炭素化処理は、第1炭素化処理された炭素繊維前駆体フェルトを、不活性雰囲気下、最高温度1300~2300℃にして0.5~120分間焼成して行うことが好ましい。この第2炭素化処理時の最高温度は、1500~2300℃の範囲であることがより好ましい。
[0048]
炭素化処理時の最高温度が1300℃未満の場合は、得られる炭素繊維フェルトの炭素含有率が93質量%以上にならない。かかる炭素繊維フェルトは、電気伝導性が低く、良好な燃料電池性能を提供できないため好ましくない。なお、炭素化処理時の最高温度が1500℃未満の場合は、得られる炭素繊維フェルトの炭素含有率が95質量%以上にならない。炭素化処理時の最高温度が2300℃を超える場合は、炭素繊維フェルトが剛直となって、強度が低下し、更には、炭素微粉末が発生する等の不具合が生ずる為、好ましくない。
[0049]
以上のようにして作製した炭素繊維フェルトは、このまま液流通型電解槽に組込んで用いても良い。液流通型電解槽の電解液として水溶液を用いる場合には、その濡れ性向上の為、炭素繊維フェルトを酸化処理したものを用いることが好ましい。酸化処理の方法としては、たとえば、液相酸化方法と気相酸化方法が挙げられるが、方法は特に限定されない。
[0050]
液相酸化方法としては、過酸化水素水や次亜塩素酸ソーダでの高温酸化処理や、電解液を用いた電解層中における電解質(硫酸、苛性ソーダ、硫酸アンモニウム、食塩等)での電解酸化処理方法が用いられる。
[0051]
気相酸化方法では、空気酸化(300~800℃)、オゾン酸化(25~400℃)や水蒸気や二酸化炭素による酸化(500~950℃)方法等が用いられる。
[0052]
 たとえば、気相酸化方法のうち、空気酸化処理を行う場合には、0.5~180分間酸化処理を行うことが好ましい。0.5分未満の場合は、十分に酸化処理が行われない、処理斑が大きいなどの不具合が生じる。180分を超える場合は過剰な酸化処理により、接触抵抗が増加しセル抵抗が上昇する、酸化劣化により脆くなる等の不具合が生じる為、好ましくない。
[0053]
このようにして得られる炭素繊維フェルトは、例えば導電性と通液性などが必要とされる種々の液流通型電解槽に使用されるフェルト、例えば、レドックスフロー型蓄電池の電極、ナトリウム-硫黄蓄電池の電極、燃料電池用のガス拡散層として、更には、コンポジットや摺動材などの強化繊維としても、適用できる。中でも、レドックスフロー型蓄電池の電極、ナトリウム-硫黄蓄電池の電極として好ましく用いることができる。
[0054]
図2は、上記本発明の炭素繊維フェルトを電極として組込んだレドックスフロー型蓄電池の液流通型電解槽の一例を示す概念斜視図である。図2中、16、20は炭素繊維フェルトからなる電極で、本例の液流通型電解槽12においては、それぞれ集電板14と隔膜18との間、集電板22と隔膜18との間に配置している。電極16に矢印で示すように、炭素繊維フェルトの繊維配列度の高いX方向を、通液方向Uと同一方向に配置している。この方向Uに炭素繊維フェルトの高い繊維配列度の方向Xを配向させているので、方向Xの通液圧力損失は低い。その為、循環する電解液の流通を低いエネルギーで行うことができ、電解液循環に必要なポンプ稼動のエネルギー消費量を低減できる。
[0055]
即ち、本発明の炭素繊維フェルトを、上記レドックスフロー型電池用電極等の通液性などが必要とされる電極16、20として用いる場合、電解液の流れ方向Uと、面方向の繊維配列度の高い方向Xと、が一致するように、液流通型電解槽12における、それぞれ集電板14と隔膜18との間、集電板22と隔膜18との間に配置することにより、通液圧力損失を軽減することが出来る。
[0056]
更に具体的には、本発明の炭素繊維フェルトが電極16、20として組込まれた液流通型電解槽12においては、通液方向の繊維配列度と、通液方向と直交する方向の繊維配列度と、の差が、好ましくは2.5%以上になるように、より好ましくは3~50%になるように、特に好ましくは5~30%になるように炭素繊維フェルト16、20を、それぞれ集電板14と隔膜18との間、集電板22と隔膜18との間に配置する。2.5%未満の場合には、通液圧力損失が高くなり、ポンプの消費エネルギーロスが大きくなる傾向がある。
実施例
[0057]
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、操作条件の評価、各物性の測定は次の方法によった。
[0058]
[繊維配列度]
X線回折ピーク角度(2θ=26.0°付近)についてZ-X面(A)及びZ-Y面(B)で360°試料を回転させる。この時得られるX線回折の挙動変化より結晶子の配向ピークを得る。結晶子が繊維軸方向に高配向していることを利用し、この配向ピーク面積を測定し、下式により求めた。
「a」よりXとZ方向のピーク面積比を算出
(X方向のピーク面積)/(Z方向のピーク面積)・・・a
「b」よりYとZ方向のピーク面積比を算出
(Y方向のピーク面積)/(Z方向のピーク面積)・・・b
厚み方向(Z)の繊維配列度(%)
=(Z方向の配向ピーク面積)/[(X方向の配向ピーク面積)+(Y方向の配向ピーク面積)+(Z方向の配向ピーク面積)]
=1/[(X方向の配向ピーク面積)/(Z方向の配向ピーク面積)+(Y方向の配向ピーク面積)/(Z方向の配向ピーク面積)+1]
=1/(a+b+1)
通液方向(X)の繊維配列度(%)
=a×厚み方向(Z)の繊維配列度(%)
通液方向と直交方向(Y)の繊維配列度(%)
=b×厚み方向(Z)の繊維配列度(%)
ここで、炭素繊維フェルトの厚み方向をZ、通液方向(面方向の繊維配列度において、最も繊維配列度の高い方向)をX、通液方向と直交する方向をYとした。
[0059]
[目付]
サンプルとして20cm角(0.2m角)のフェルトを3枚切り出し、これを105℃、1時間乾燥した後の重量を測定した。3枚のサンプルについて、それぞれ重量をサンプル面積(0.2m×0.2m=0.04m )で除した値の平均値を目付とした。
[0060]
[フェルト厚み]
シックネスゲージ(6.9kPa)を用い、幅方向に5点測定したサンプル厚みの平均値をフェルト厚み(T)とした。
[0061]
[厚み方向の電気抵抗値]
50mm角のサンプルを切り出し、そのサンプルを2枚の50mm角(厚み10mm)の金メッキした電極で、全面接触するように挟んだ。そして、フェルト厚み(T)に対して(1/2)Tの厚みまで圧縮した時の、厚み方向の電気抵抗値を測定し、電極面積で除して単位面積あたりの電気抵抗値を求めた。
[0062]
[通液圧力損失]
通液方向が30cm、幅方向(流路幅)が50cm、厚みが0.22~0.32cm(炭素繊維フェルトの厚みの60%である厚みのスペーサーをそれぞれ用意した)であるスペーサーで形成されたセルスタックを用意した。作製された炭素繊維フェルトを通液方向(面方向の繊維配列度において、最も繊維配列度の高い方向)20cm、幅方向50cmに切ってスペーサー内に設置した。このセルスタックに50リットル/時のイオン交換水を流通させ、セルスタックの出入口の通液圧力損失を測定した。ブランクとして炭素繊維フェルトを設置しない系で同様に測定し、測定値とブランク測定値との差を炭素繊維フェルトの通液圧力損失とした。
[0063]
[圧縮応力]
2cm×2cmに切り取った炭素繊維フェルトを厚み方向に加圧して圧縮させた。圧縮前の厚みに対し、50%圧縮した時の圧縮荷重を圧縮応力とした。
[0064]
[実施例1]
炭素繊維前駆体としてPAN系耐炎繊維ステープル(繊維長51mm、クリンプ率10%、クリンプ数4ヶ/cm)を用い、レイヤー工程での積層角度を30°とした目付150g/m のPAN系耐炎繊維ウェッブを作製した。これを4枚積層させ、ウェッブ積層体を得た。ウェッブ積層体に400回/cm でニードルパンチを行い、炭素繊維前駆体フェルトを作製した。
この炭素繊維前駆体フェルトに700℃、10分間で前炭素化処理した後、1800℃、45分間で炭素化し、炭素繊維フェルトを得た。その炭素繊維フェルトを、空気雰囲気中で700℃、30分間の酸化処理を行い、最終製品の炭素繊維フェルトを得た。この炭素繊維フェルトについて、繊維配列度、電気抵抗値、通液圧力損失(通液圧損)、圧縮応力、炭素含有率、脱落毛羽を評価した。
[0065]
[実施例2~5]
 パンチング数を、表1に記載のパンチング数に変更した以外は、実施例1と同様の方法で電極用の炭素繊維フェルトを作製した。
[0066]
[実施例6~9]
 レイヤー積層角度を表2に記載の角度に変更した以外は、実施例3と同様の方法で電極用の炭素繊維フェルトを作製した。
[0067]
[実施例10]
 炭素化温度(焼成温度)を表2に記載の温度に変更した以外は、実施例3と同様の方法で炭素繊維フェルトを作製した。
[0068]
[比較例1]
 パンチング数を250回/cm とした以外は、実施例3と同様の方法で電極用の炭素繊維フェルトを作製した。
[0069]
[比較例2]
 パンチング数を3300回/cm とした以外は、実施例3と同様の方法で電極用の炭素繊維フェルトを作製した。
[0070]
[比較例3]
レイヤー積層角度を90°とした以外は、実施例3と同様の方法で電極用の炭素繊維フェルトを作製した。
[0071]
 表1、2に示すように、実施例1~10は、電気抵抗値、通液圧力損失が共に低く、また、セル作製時の脱落毛羽は少ないか、あるいは中程度で、良好な結果を示す炭素繊維フェルトが得られた。
[0072]
比較例1は、パンチング数が少ない為、厚み方向の繊維配列度が低下した。その結果、得られた炭素繊維フェルトは圧縮応力が低下し、電気抵抗値が高いものとなった。
[0073]
比較例2は、パンチング数が多すぎた為、多量の脱落毛羽が発生した。その結果、得られた炭素繊維フェルトは、レドックスフロー型電池の電極として使用できるものではなかった。
[0074]
比較例3は、レイヤー積層角度が90°で、本発明の範囲外であった。そのため、得られた炭素繊維フェルトの繊維配列度の差が小さくなり、通液圧力損失が大きくなってしまった。
[0075]
参考例1
実施例3では、得られた炭素繊維フェルトの面方向のうち高い繊維配列度を示す方向が通液方向と同じ方向となるように、炭素繊維フェルトをレドックスフロー型電池の液流通型電解槽にセットしてある。これについて、蓄電性能を評価した結果、表1、3に示すように高い蓄電性能(通液圧損)が得られた。通液方向の繊維配列度と、通液方向と直交する方向の繊維配列度との差は表1、3に示すように6%であった。この実施例3を、以下の参考例2と対比させるため、参考例1とする。
[0076]
参考例2
実施例3で得られた炭素繊維フェルトの面方向のうち高い繊維配列度を示す方向が通液方向と直交する方向となるように、炭素繊維フェルトをレドックスフロー型電池の液流通型電解槽にセットした。これについて、蓄電性能を評価した結果、参考例1と比較して、参考例2は表3に示すように蓄電性能(通液圧損)が劣っていた。通液方向の繊維配列度と、通液方向と直交する方向の繊維配列度との差は表3に示すように-6%であった。
[0077]
[表1]


[0078]
[表2]


[0079]
[表3]


符号の説明

[0080]
2 炭素繊維フェルト
A、A’ 炭素繊維フェルトの繊維配列度の高い方向と直交する方向の両表面
B、B’ 炭素繊維フェルトの繊維配列度の高い方向の両表面
C、C’ 炭素繊維フェルトの厚み方向の両表面
T 炭素繊維フェルトの厚み
X 炭素繊維フェルトの繊維配列度の高い方向を示す矢印
Y 炭素繊維フェルトの繊維配列度の高い方向と直交する方向を示す矢印
Z 炭素繊維フェルトの厚み方向を示す矢印
12、34 液流通型電解槽(セル部)
14、22、40、42 集電板
16、20、50、52 電極
18、44 隔膜
P、Q 電解液の流れ方向を示す矢印
32 レドックスフロー型蓄電池
36、38 電解液タンク部
46、48 送液ポンプ

請求の範囲

[請求項1]
 厚み方向の繊維配列度が5~40%であり、面方向の繊維配向において、最も繊維配列度の高い方向の繊維配列度と、その繊維配列度の高い方向と直交する方向の繊維配列度と、の差が3~50%である炭素繊維フェルト。
[請求項2]
 炭素繊維前駆体繊維ウェッブを積層角0~60°又は120~180°の範囲で2層以上積層して炭素繊維前駆体繊維ウェッブ積層体を得、前記炭素繊維前駆体繊維ウェッブ積層体をパンチング数300~3000回/cm の範囲でパンチングして炭素繊維前駆体フェルトを得、前記炭素繊維前駆体フェルトを不活性雰囲気下で炭素化する炭素繊維フェルトの製造方法。
[請求項3]
 請求項1に記載の炭素繊維フェルトを有する液流通型電解槽。
[請求項4]
 液流通型電解槽に配置した炭素繊維フェルトにおいて、通液方向の繊維配列度と、通液方向と直交する方向の繊維配列度と、の差が2.5%以上である請求項3に記載の液流通型電解槽。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]