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1. (WO2015146132) 抗CD98抗体-薬物コンジュゲート
Document

明 細 書

発明の名称 抗CD98抗体-薬物コンジュゲート

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

非特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011  

課題を解決するための手段

0012   0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

図面の簡単な説明

0018  

発明を実施するための形態

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213  

実施例

0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232   0233   0234   0235   0236   0237   0238   0239   0240   0241   0242   0243   0244   0245   0246   0247   0248   0249   0250   0251   0252   0253   0254   0255   0256   0257   0258   0259   0260   0261   0262   0263   0264   0265   0266   0267   0268   0269   0270   0271   0272   0273   0274   0275   0276   0277   0278   0279   0280   0281   0282   0283   0284   0285   0286   0287   0288   0289   0290   0291   0292   0293   0294   0295   0296   0297   0298   0299   0300   0301   0302   0303   0304   0305   0306   0307   0308   0309   0310   0311   0312   0313   0314   0315   0316   0317   0318   0319   0320   0321   0322   0323   0324   0325   0326   0327   0328   0329   0330   0331   0332   0333   0334   0335   0336   0337   0338   0339   0340   0341   0342   0343   0344   0345   0346   0347   0348   0349   0350   0351   0352   0353   0354   0355   0356   0357   0358   0359   0360   0361   0362   0363   0364   0365   0366   0367   0368   0369   0370   0371   0372   0373   0374   0375   0376   0377   0378   0379   0380   0381   0382   0383   0384   0385   0386   0387   0388  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35   36   37  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

明 細 書

発明の名称 : 抗CD98抗体-薬物コンジュゲート

技術分野

[0001]
 本発明は、抗腫瘍活性を有する、抗CD98抗体と抗腫瘍性薬物とをリンカー構造部分を介して結合させた抗体-薬物コンジュゲートに関する。

背景技術

[0002]
 癌細胞表面に発現し、かつ、細胞に内在化できる抗原に結合する抗体に、細胞毒性のある薬物を結合させた抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate;ADC)は、癌細胞に選択的に薬物を送達できることによって、癌細胞内に薬物を蓄積させ、癌細胞を死滅させることが期待できる(非特許文献1~3参照)。ADCとして例えば、抗CD33抗体にカリチアマイシンを結合させたMylotarg(登録商標;ゲムツズマブオゾガマイシン)が急性骨髄性白血病の治療薬として認可されている。また、抗CD30抗体にオーリスタチンEを結合させたAdcetris(登録商標;ブレンツキシマブベドティン)がホジキンリンパ腫と未分化大細胞リンパ腫の治療薬として認可された(非特許文献4参照)。これまでに認可されたADCに含有される薬物は、DNAまたはチューブリンを標的としている。
[0003]
 抗腫瘍性の低分子化合物としてトポイソメラーゼIを阻害して抗腫瘍作用を発現する化合物であるカンプトテシン誘導体が知られている。その中で下式
[0004]
[化1]


[0005]
で示される抗腫瘍性化合物(エキサテカン、化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)は、カンプトテシン誘導体である(特許文献1、2)。この化合物は、現在臨床で用いられているイリノテカンとは異なり、抗腫瘍効果の発現には酵素による活性化を必要としない。また、イリノテカンの活性本体であるSN-38や、同じく臨床で用いられているトポテカンよりもトポイソメラーゼI阻害活性が強く、in vitroで種々の癌細胞に対して、より強い殺細胞活性を有している。特にP-glycoproteinの発現によってSN-38などに耐性を示す癌細胞に対しても効果を示した。また、マウスのヒト腫瘍皮下移植モデルでも強い抗腫瘍効果を示し、臨床試験が行われたものの上市には至っていない(非特許文献5~10参照)。エキサテカンがADCとして有効に作用するかについては明らかではなかった。
[0006]
 DE-310は、生分解性のカルボキシメチルデキストランポリアルコールポリマーにエキサテカンをGGFGペプチドスペーサーを介して結合させた複合体である(特許文献3)。エキサテカンを高分子プロドラッグ化することによって、高い血中滞留性を保持させ、さらに腫瘍新生血管の透過性の亢進と腫瘍組織滞留性を利用して、受動的に腫瘍部位への指向性を高めたものである。DE-310は、酵素によるペプチドスペーサーの切断によって、活性本体であるエキサテカン、およびグリシンがアミノ基に結合しているエキサテカンが持続的に遊離される。その結果、薬物動態が改善され、非臨床試験における種々の腫瘍の評価モデルにおいて、DE-310は、ここに含まれるエキサテカンの総量がエキサテカン単剤の投与量よりも減少しているのにも拘らず、エキサテカン単剤の投与時よりも高い有効性を示した。DE-310に関しては臨床試験が実施されて有効例も確認され、活性本体が正常組織よりも腫瘍に集積することが確認されたとの報告がある。一方、腫瘍へのDE-310および活性本体の集積は正常組織への集積と大差なく、ヒトでは受動的なターゲティングは見られなかったとの報告もある(非特許文献11~14参照)。結果としてDE-310も上市には至らず、エキサテカンがこのようなターゲティングを指向した薬物として有効に機能するかについては明らかではなかった。
[0007]
 DE-310の関連化合物として、-NH-(CH 2) 4-C(=O)-で示される構造部分を-GGFG-スペーサーとエキサテカンの間に挿入し、-GGFG-NH-(CH 2) 4-C(=O)-をスペーサー構造とする複合体も知られているが(特許文献4)、同複合体の抗腫瘍効果については全く知られていない。
[0008]
 CD98は、約40kDaのmulti-pass軽鎖とジスルフィド結合した約80~85kDaのtype II single-pass transmembrane重鎖からなるヘテロダイマーである(非特許文献15)。CD98重鎖(CD98hc、4F2またはFRP-1として公知である)は、マウスにおいてSlc3a2遺伝子で、ヒトにおいてSLC3A2遺伝子でコードされる。CD98hcはtypeII膜貫通タンパク質であり、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質尾部を有する。CD98は、少なくとも6つ存在するCD98軽鎖(アミノ酸トランスポーター、LAT-1、LAT-2など)の一つとCD98hc細胞外ドメインとの間でジスルフィド結合によりヘテロダイマーを形成する。このCD98を標的とした抗CD98抗体は、抗腫瘍活性、免疫抑制活性を有することが知られている(特許文献5~11)。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開平5-59061号公報
特許文献2 : 特開平8-337584号公報
特許文献3 : 国際公開WO1997/46260パンフレット
特許文献4 : 国際公開WO2000/25825パンフレット
特許文献5 : 国際公開WO2007/114496パンフレット
特許文献6 : 国際公開WO2008/017828パンフレット
特許文献7 : 国際公開WO2009/043922パンフレット
特許文献8 : 国際公開WO2009/090553パンフレット
特許文献9 : 特開2012-092068号公報
特許文献10 : 国際公開WO2011/118804パンフレット
特許文献11 : 国際公開WO2013/078377パンフレット

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : Ducry, L., et al., Bioconjugate Chem. (2010) 21, 5-13.
非特許文献2 : Alley, S. C., et al., Current Opinion in Chemical Biology (2010)14, 529-537.
非特許文献3 : Damle N.K., Expert Opin. Biol. Ther. (2004) 4, 1445-1452.
非特許文献4 : Senter P. D., et al., Nature Biotechnology (2012) 30, 631-637.
非特許文献5 : Kumazawa, E., Tohgo, A., Exp. Opin. Invest. Drugs (1998) 7, 625-632.
非特許文献6 : Mitsui, I., Kumazawa, E., Hirota, Y., et al., Jpn J. Cancer Res. (1995) 86, 776-786.
非特許文献7 : Takiguchi, S., Tohgo, A., et al., Jpn J. Cancer Res. (1997) 88, 760-769.
非特許文献8 : Joto, N. et al., Int J Cancer (1997) 72, 680-686.
非特許文献9 : Kumazawa, E. et al., Cancer Chemother. Pharmacol. (1998) 42, 210-220.
非特許文献10 : De Jager, R., et al., Ann N Y Acad Sci (2000) 922, 260-273.
非特許文献11 : Inoue, K. et al., Polymer Drugs in the Clinical Stage, Edited by Maeda et al. (2003), 145-153.
非特許文献12 : Kumazawa, E. et al., Cancer Sci (2004) 95, 168-175.
非特許文献13 : Soepenberg、 O. et al., Clinical Cancer Research, (2005) 11, 703-711.
非特許文献14 : Wente M. N. et al., Investigational New Drugs (2005) 23, 339-347.
非特許文献15 : Joseph M. Cantor et al., Jornal of Cell Science (2012) 125, 1373-1382.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 抗体による腫瘍の治療においては、抗体が抗原を認識して腫瘍細胞に結合しても抗腫瘍効果が十分でない場合が観察されることもあり、より効果の高い抗腫瘍抗体が必要とされる場合がある。また、抗腫瘍性の低分子化合物においては、抗腫瘍効果に優れていても副作用や毒性面など、安全性上の問題を有するものが多く、安全性をより高めてより優れた治療効果を獲得することも課題である。すなわち本発明は、抗腫瘍効果と安全性面に優れる、優れた治療効果を有する抗腫瘍剤を獲得して提供することが課題である。

課題を解決するための手段

[0012]
 本発明者らは抗CD98抗体が、腫瘍細胞を標的にできる抗体であること、すなわち、腫瘍細胞を認識できる特性、腫瘍細胞に結合できる特性、あるいは腫瘍細胞に内在化できる特性などを備えた抗体であることから、抗腫瘍性化合物であるエキサテカンを、リンカー構造部分を介して同抗体に結合させた抗体-薬物コンジュゲートに変換することによって、(1)エキサテカン誘導体を腫瘍細胞に運搬してエキサテカン誘導体の抗腫瘍効果を腫瘍細胞で特異的に発揮させることができること、(2)抗腫瘍効果の確実な発揮とともにエキサテカン誘導体の投与量を単体投与時よりも減少させることができること、(3)通常細胞へのエキサテカン誘導体の影響を緩和させることができるのでより高い安全性を達成できること、が可能と考えた。
[0013]
 このために本発明者らは特定の構造のリンカーを創出し、このリンカーを介して抗CD98抗体とエキサテカンとを結合させた抗CD98抗体-薬物コンジュゲートを獲得することに成功し、そしてこの化合物が優れた抗腫瘍効果を発揮することを見出して本発明を完成させたのである。
[0014]
 すなわち本願発明は、
(1)抗CD98抗体、リンカーおよび薬物からなる抗CD98抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩であって、
 ここで、リンカーが次式:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2-O-CH 2-C(=O)-;
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2-O-CH 2-C(=O)-;および
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2-C(=O)-NH-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2CH 2-C(=O)-;
からなる群から選択されるリンカーであり、
 薬物が次式:
[0015]
[化2]


[0016]
で表される化合物であり、
 薬物の1位のアミノ基の窒素原子がリンカーのカルボニル部分と結合し、
 抗CD98抗体がリンカーのスクシンイミド部分と結合する、
抗CD98抗体-薬物コンジュゲート;
(2)1抗体あたりの薬物の平均結合数が2~8個の範囲である前記(1)に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(3)1抗体あたりの薬物の平均結合数が3~6個の範囲である前記(1)に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(4)1抗体あたりの薬物の平均結合数が逆層クロマトグラフィー(RPC)法により測定される前記(2)または(3)に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(5)1抗体あたりの薬物の結合数が2、4、6または8個である前記(1)に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(6)リンカーが、次式:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2-O-CH 2-C(=O)-
である前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(7)リンカーが、次式:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2-O-CH 2-C(=O)-
である前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(8)リンカーが、次式:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2-C(=O)-NH-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2CH 2-C(=O)-
である前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(9)抗CD98抗体が、配列番号38の462~541番目のアミノ酸残基からなる部位に結合する、前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(10)抗CD98抗体が、
 配列番号19で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH1;
 配列番号20で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH2;
 配列番号21で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH3;
 配列番号22で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL1;
 配列番号23で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL2;および
 配列番号24で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL3;
を含み、かつ、CD98重鎖に結合する、前記(1)~(9)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(11)抗CD98抗体が、
 配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるCDRH1;
 配列番号20で表されるアミノ酸配列からなるCDRH2;
 配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるCDRH3;
 配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるCDRL1;
 配列番号23で表されるアミノ酸配列からなるCDRL2;および
 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるCDRL3;
を含み、かつ、CD98重鎖に結合する、前記(1)~(9)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(12)抗CD98抗体が、配列番号8の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を持つ重鎖可変領域および/または配列番号10の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を持つ軽鎖可変領域を含む、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(13)抗CD98抗体が、
 (1)配列番号12または14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列;
 (2)(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列;および
 (3)(1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列;
からなる群より選択される重鎖可変領域を含む重鎖;ならびに
 (4)配列番号16または18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列;
 (5)(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列;および
 (6)(4)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列;
からなる群より選択される軽鎖可変領域を含む軽鎖;
を含む、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(14)抗CD98抗体が、配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号16の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(15)抗CD98抗体が、配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(16)抗CD98抗体が、配列番号14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(17)抗CD98抗体が、配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号16の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(18)抗CD98抗体が、配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(19)抗CD98抗体が、配列番号14の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(20)配列番号38の462~541番目のアミノ酸残基からなる部位に結合する、抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(21)配列番号19で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH1;
 配列番号20で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH2;
 配列番号21で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH3;
 配列番号22で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL1;
 配列番号23で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL2;および
 配列番号24で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL3;
を含む、前記(20)に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(22)配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるCDRH1;
 配列番号20で表されるアミノ酸配列からなるCDRH2;
 配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるCDRH3;
 配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるCDRL1;
 配列番号23で表されるアミノ酸配列からなるCDRL2;および
 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるCDRL3;
を含む、前記(20)または(21)に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(23)配列番号8の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を持つ重鎖可変領域および/または配列番号410の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を持つ軽鎖可変領域を含む、前記(20)~(22)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(24)
 (1)配列番号12または14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列;
 (2)(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列;および
 (3)(1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列;
からなる群より選択される重鎖可変領域を含む重鎖;ならびに
 (4)配列番号16または18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列;
 (5)(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列;および
 (6)(4)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列;
からなる群より選択される軽鎖可変領域を含む軽鎖;
含む、前記(20)~(22)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(25)配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号16の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(20)~(22)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(26)配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(20)~(22)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(27)配列番号14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(20)~(22)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(28)配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号16の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(20)~(22)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(29)配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(20)~(22)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(30)配列番号14の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、前記(20)~(22)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片;
(31)前記(20)~(30)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩;
(32)前記(1)~(19)および(31)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩あるいは前記(20)~(30)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片を活性成分として含有する医薬組成物;
(33)抗腫瘍または抗癌のための前記(32)に記載の医薬組成物;
(34)腫瘍または癌が、肺癌、腎癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、多形神経膠芽腫、卵巣癌、膵癌、乳癌、メラノーマ、肝癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、頭頸部癌、食道癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病または多発性骨髄腫である、前記(33)に記載の医薬組成物;
(35)医薬組成物を製造するための、前記(1)~(19)および(31)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬学的に許容され得る塩、あるいは、前記(20)~(30)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片の使用;
(36)腫瘍および/または癌の治療における使用のための、前記(1)~(19)および(31)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬学的に許容され得る塩、あるいは、前記(20)~(30)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
(37)前記(1)~(19)および(31)のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩あるいは前記(20)~(30)のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片の治療有効量を哺乳動物に投与すること含む、腫瘍および/または癌の治療方法;
(38)前記(20)~(30)のいずれか1項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド;
(39)前記(38)に記載のポリヌクレオチドであって、
 (1)配列番号11または13の58~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列;
 (2)(1)のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するヌクレオチド配列;
 (3)(1)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが保有するヌクレオチド配列;および
 (4)(1)のヌクレオチド配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または付加されたヌクレオチド配列;
からなる群より選択されるポリヌクレオチド;ならびに
 (5)配列番号15または17の61~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列;
 (6)(5)のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するヌクレオチド配列;
 (7)(5)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが保有するヌクレオチド配列;および
 (8)(5)のヌクレオチド配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または付加されたヌクレオチド配列;
からなる群より選択されるポリヌクレオチド;
を含むポリヌクレオチド;
(40)配列番号11の58~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号15の61~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含む前記(39)に記載のポリヌクレオチド;
(41)配列番号11の58~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号17の61~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含む前記(39)に記載のポリヌクレオチド;
(42)配列番号13の58~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号17の61~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含む前記(39)に記載のポリヌクレオチド;
(43)前記(38)~(42)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター;
(44)前記(38)~(42)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換宿主細胞;
(45)前記(43)に記載のベクターを含む形質転換宿主細胞;ならびに
(46)前記(44)または(45)に記載の宿主細胞を培養し、培養産物から抗体を精製する工程を含む前記(20)~(30)のいずれか1項に記載の抗体の生産方法;
に関する。

発明の効果

[0017]
 特定の構造のリンカーを介してエキサテカンを抗CD98抗体に結合させた抗CD98抗体-薬物コンジュゲートによって優れた抗腫瘍効果および安全性を達成することができる。

図面の簡単な説明

[0018]
[図1] 図1は、キメラM23抗体重鎖のヌクレオチド配列(配列番号7)およびアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
[図2] 図2は、キメラM23抗体軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号9)およびアミノ酸配列(配列番号10)を示す。
[図3] 図3は、hM23-H1タイプ重鎖のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
[図4] 図4は、hM23-H2タイプ重鎖のヌクレオチド配列(配列番号13)およびアミノ酸配列(配列番号14)を示す。
[図5] 図5は、hM23-L1タイプ軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号15)およびアミノ酸配列(配列番号16)を示す。
[図6] 図6は、hM23-L2タイプ軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号17)およびアミノ酸配列(配列番号18)を示す。
[図7] 図7は、M23抗体のCDRH1のアミノ酸配列(配列番号19)、CDRH2のアミノ酸配列(配列番号20)、CDRH3のアミノ酸配列(配列番号21)、CDRL1のアミノ酸配列(配列番号22)、CDRL2のアミノ酸配(配列番号23)およびCDRL3のアミノ酸配列(配列番号24)を示す。
[図8] 図8は、M23抗体の細胞内在化能を示す。
[図9] 図9は、hM23-H1L1-薬物コンジュゲートが、ヒトバーキットリンパ腫移植マウスに対して示す抗腫瘍効果を示す。
[図10] 図10は、hM23-H1L2-薬物コンジュゲートが、ヒトバーキットリンパ腫移植マウスに対して示す抗腫瘍効果を示す。
[図11] 図11は、hM23-H2L2-薬物コンジュゲートが、ヒトバーキットリンパ腫移植マウスに対して示す抗腫瘍効果を示す。
[図12] 図12は、hM23-H1L1-薬物コンジュゲートが、ヒトバーキットリンパ腫移植マウスに対して示す抗腫瘍効果を示す。
[図13] 図13は、一部のアミノ酸配列をマウスの配列に置換したヒトCD98とFLAGとの融合タンパクを発現させた細胞を用いて、M23抗体のエピトープを解析した結果を示す。
[図14] 図14は、一部のアミノ酸配列をマウスの配列に置換したヒトCD98とFLAGとの融合タンパクを発現させた細胞の細胞膜上での該融合タンパク質の発現を確認した結果を示す。

発明を実施するための形態

[0019]
 本明細書において、「癌」と「腫瘍」は同じ意味に用いられる。
[0020]
 本明細書において、「遺伝子」は、DNAのみならずそのmRNA、cDNAおよびそのcRNAを含む。
[0021]
 本明細書において、「ポリヌクレオチド」は核酸と同じ意味に用いられ、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチドおよびプライマーを含む。
[0022]
 本明細においては、「ポリペプチド」と「タンパク質」は同じ意味に用いられる。
[0023]
 本明細書において、「細胞」は、動物個体内の細胞、培養細胞を含む。
[0024]
 本明細書において、「CD98」はCD98タンパク質と同じ意味に用いられる。CD98は重鎖と軽鎖からなっているので、「CD98重鎖」および「CD98軽鎖」はそれぞれCD98重鎖タンパク質およびCD98軽鎖タンパク質と同じ意味に用いられる。さらに、本明細書において「CD98」は、特に明記されない限り、「CD98重鎖」および「CD98軽鎖」、または、「CD98重鎖」または「CD98軽鎖」のいずれか一つと相互に変換可能に用いられる。
[0025]
 本明細書において、「抗CD98抗体」とは、CD98重鎖に結合できる抗体をいう。
[0026]
 本明細書において、「細胞傷害」とは、何らかの形で、細胞に病理的な変化をもたらすことをいい、直接的な外傷にとどまらず、DNAの切断や塩基の二量体の形成、染色体の切断、細胞分裂装置の損傷、各種酵素活性の低下などあらゆる細胞の構造や機能上の損傷をいう。
[0027]
 本明細書において、「細胞傷害活性」とは上記細胞傷害を引き起こすことをいう。
[0028]
 本明細書において、「抗体依存性細胞傷害活性」とは、「antibody dependent cellular cytotoxicity(ADCC)活性」のことであり、NK細胞が抗体を介して腫瘍細胞などの標的細胞を傷害する作用活性を意味する。
[0029]
 本明細書において、「補体依存性細胞傷害作用活性」とは、「complement dependent cytotoxicity(CDC)活性」のことであり、補体が抗体を介して腫瘍細胞などの標的細胞を傷害する作用活性を意味する。
[0030]
 本明細書において、「抗体の抗原結合断片」とは、「抗体の機能性断片」とも呼ばれ、抗原との結合活性を有する抗体の部分断片を意味しており、Fab、F(ab’)2、scFvなどを含む。また、F(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であるFab’も抗体の抗原結合断片に含まれる。但し、抗原との結合能を有している限りこれらの分子に限定されない。また、これらの抗原結合断片には、抗体タンパク質の全長分子を適当な酵素で処理したもののみならず、遺伝子工学的に改変された抗体遺伝子を用いて適当な宿主細胞において産生されたタンパク質も含まれる。
[0031]
 本明細書において、「Fab’」とは、上記のようにF(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であり。但し、遺伝子工学的に改変された抗体遺伝子を用いて産生されるFab’も本発明におけるFab’に含まれる。
[0032]
 本明細書において、「エピトープ」とは、特定の抗CD98抗体の結合するCD98の部分ペプチドまたは部分立体構造を意味する。CD98の部分ペプチドであるエピトープは、免疫アッセイ法など当業者によく知られている方法、例えば以下の方法によって決定することができる。まず、抗原の様々な部分構造を作製する。部分構造の作製にあたっては、公知のオリゴペプチド合成技術を用いることができる。例えば、CD98のC末端あるいはN末端から適当な長さで順次短くした一連のポリペプチドを当業者に周知の遺伝子組み換え技術を用いて作製した後、それらに対する抗体の反応性を検討し、大まかな認識部位を決定した後に、さらに短いペプチドを合成してそれらのペプチドとの反応性を検討することによって、エピトープを決定することができる。また、特定の抗体の結合する抗原の部分立体構造であるエピトープは、X線構造解析によって前記の抗体と隣接する抗原のアミノ酸残基を特定することによって決定することができる。
[0033]
 本明細書において、「同一のエピトープに結合する抗体」とは、共通のエピトープに結合する異なる抗体を意味している。第一の抗体の結合する部分ペプチドまたは部分立体構造に第二の抗体が結合すれば、第一の抗体と第二の抗体が同一のエピトープに結合すると判定することができる。また、第一の抗体の抗原に対する結合に対して第二の抗体が競合する(即ち、第二の抗体が第一の抗体と抗原の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列または構造が決定されていなくても、第一の抗体と第二の抗体が同一のエピトープに結合すると判定することができる。さらに、第一の抗体と第二の抗体が同一のエピトープに結合し、かつ第一の抗体が抗腫瘍活性などの特殊な効果を有する場合、第二の抗体も同様の活性を有することが期待できる。したがって、第一の抗CD98抗体の結合する部分ペプチドに第二の抗CD98抗体が結合すれば、第一の抗体と第二の抗体がCD98の同一のエピトープに結合すると判定することができる。また、第一の抗CD98抗体のCD98に対する結合に対して第二の抗CD98抗体が競合することを確認することによって、第一の抗体と第二の抗体がCD98の同一のエピトープに結合する抗体と判定することができる。
[0034]
 本明細書において、「CDR」とは、相補性決定領域(CDR:Complemetarity detemining region)をいう。抗体分子の重鎖および軽鎖にはそれぞれ3箇所のCDRがあることが知られている。CDRは、超可変領域(hypervariable domain)とも呼ばれ、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域内にあって、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖および軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造上において、それぞれ3ヶ所に分離している。本明細書においては、抗体のCDRについて、重鎖のCDRを重鎖アミノ酸配列のN末端側からCDRH1、CDRH2、CDRH3と表記し、軽鎖のCDRを軽鎖アミノ酸配列のN末端側からCDRL1、CDRL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。
[0035]
 本明細書において、「数個」とは、2~10個、2~9個、2~8個、2~7個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、または、2個を意味し、好ましくは2個である。
 本明細書において、「薬物平均結合数」とは、薬物抗体比(Drug-to-Antibody Ratio (DAR))とも呼ばれ、抗体1分子に対して結合する薬物の平均数を意味する。
 本明細においては、「同一性」と「相同性」は同じ意味に用いられる。
[0036]
(CD98)
 CD98は、約40kDaのmulti-pass軽鎖とジスルフィド結合した約80~85kDaのtype II single-pass transmembrane重鎖からなるヘテロダイマーである(非特許文献15)。CD98重鎖(CD98hc、4F2、またはFRP-1として公知である)は、マウスにおいてSlc3a2遺伝子で、ヒトにおいてSLC3A2遺伝子でコードされる。CD98hcはtypeII膜貫通タンパク質であり、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質尾部を有する。CD98は、少なくとも6つ存在するCD98軽鎖(LAT-1、LAT-2など)の一つとCD98hc細胞外ドメインとの間でジスルフィド結合によりヘテロダイマーを形成する。CD98重鎖はインテグリンのシグナル伝達に関与し、CD98軽鎖はアミノ酸輸送に関与する。
[0037]
 CD98重鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は公的データベース上で公開されており、例えば、ヌクレオチド配列としては、NM_001012662、NM_001013251(GenBank)、アミノ酸配列としては、NP_001012680、NP_001013269(GenBank)などにより参照可能である。ヌクレオチド配列NM_001012662は配列番号37、アミノ酸配列NP_001012680は配列番号38として本明細書中にも開示されている。
[0038]
 CD98は、ヒト、非ヒト哺乳動物(ラット、マウスなど)のCD98発現細胞から直接精製して使用するか、あるいは当該細胞の細胞膜画分を調製して使用することができ、また、CD98をin vitroにて合成する、あるいは遺伝子操作によって宿主細胞に産生させることによって得ることができる。遺伝子操作では、具体的には、CD98 cDNAを発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質およびエネルギー物質を含む溶液中で合成する、あるいは他の原核生物、または真核生物の宿主細胞を形質転換させることによってCD98を発現させることによって、該タンパク質を得ることができる。また、前記の遺伝子操作によるCD98発現細胞、あるいはCD98を発現している細胞株をCD98として使用することも可能である。
[0039]
 また、上記CD98重鎖のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列からなり、当該タンパク質と同等の生物活性を有するタンパク質もCD98重鎖に含まれる。
[0040]
(抗CD98抗体)
 本発明に用いられる抗CD98抗体は、CD98重鎖に結合できる抗体であれば特に限定されない。かかる抗体は、CD98を発現している腫瘍細胞を認識できる特性、かかる腫瘍細胞に結合できる特性、および、かかる腫瘍細胞内に取り込まれて内在化する特性を有する。
[0041]
 本発明に用いられる抗CD98抗体は、この分野で通常実施される方法を用いて、CD98重鎖またはCD98重鎖のアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原となるCD98の生物種はヒトに限定されず、マウス、ラットなどのヒト以外の動物に由来するCD98を動物に免疫することもできる。この場合には、取得された異種CD98に結合する抗体とヒトCD98との交差性を試験することによって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
[0042]
 また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature(1975)256, p.495-497;Kennet, R.ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367, Plenum Press, N.Y.(1980))に従って、抗CD98抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
[0043]
 なお、抗原となるCD98重鎖はCD98重鎖の遺伝子を遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって得ることができる。
[0044]
 具体的には、CD98重鎖の遺伝子を発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現したCD98重鎖を精製すればよい。以下、具体的に抗CD98抗体の取得方法を説明する。
[0045]
(1)抗原の調製
 抗CD98抗体を作製するための抗原としては、CD98重鎖またはその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、これらに任意のアミノ酸配列や担体が付加された誘導体、CD98重鎖を発現している細胞などを挙げることができる。
[0046]
 CD98は、ヒトの腫瘍組織あるいは腫瘍細胞から直接精製して使用することができ、また、CD98をin vitroにて合成する、あるいは遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって得ることができる。
[0047]
 遺伝子操作では、具体的には、CD98のcDNAを発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質およびエネルギー物質を含む溶液中で合成する、あるいは他の原核生物、または真核生物の宿主細胞を形質転換させることによってCD98を発現させることにより、抗原を得ることができる。
[0048]
 また、膜タンパク質であるCD98の細胞外領域と抗体の定常領域とを連結した融合タンパク質を適切な宿主・ベクター系において発現させることによって、分泌タンパク質として抗原を得ることも可能である。
[0049]
 CD98のcDNAは例えば、CD98のcDNAを発現しているcDNAライブラリーを鋳型として、CD98のcDNAを特異的に増幅するプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下「PCR」という)(Saiki, R. K., et al., Science(1988)239, p.487-489参照)を行なう、いわゆるPCR法により取得することができる。
[0050]
 ポリペプチドのin vitro合成としては、例えばロシュ・ダイアグノスティックス社製のラピッドトランスレーションシステム(RTS)を挙げることができるが、これに限定されない。
[0051]
 原核細胞の宿主としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)などを挙げることができる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。また、ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与することができる配列を有するものが好ましい。
[0052]
 真核細胞の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母などの細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. Cell(1981)23, p.175-182、ATCC CRL-1650;ATCC:American Type Culture Collection)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL-1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L.A. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1980)77, p.4126-4220)などがよく用いられているが、これらに限定されない。
[0053]
 上記のようにして得られる形質転換体は、常法に従い培養することができ、該培養により細胞内、または細胞外に目的のポリペプチドが産生される。
[0054]
 該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、大腸菌であれば、例えば、LB培地に必要に応じて、アンピシリンなどの抗生物質やIPMGを添加して用いることができる。
[0055]
 上記培養により、形質転換体の細胞内または細胞外に産生される組換えタンパク質は、該タンパク質の物理的性質や化学的性質などを利用した各種の公知の分離操作法により分離・精製することができる。
[0056]
 該方法としては、具体的には例えば、通常のタンパク質沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せなどを例示できる。
[0057]
 また、発現させる組換えタンパク質に6残基からなるヒスチジンタグを繋げることにより、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することができる。あるいは、発現させる組換えタンパク質にIgGのFc領域を繋げることにより、プロテインAカラムで効率的に精製することができる。
[0058]
 上記方法を組合せることにより容易に高収率、高純度で目的とするポリペプチドを大量に製造できる。
[0059]
(2)抗CD98モノクローナル抗体の製造
 CD98と特異的に結合する抗体の例として、CD98と特異的に結合するモノクローナル抗体を挙げることができるが、その取得方法は、以下に記載する通りである。
[0060]
 モノクローナル抗体の製造にあたっては、一般に下記のような作業工程が必要である。すなわち、
[0061]
(a)抗原を調製する工程、
(b)抗原を動物に注射することによって免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、
(c)ミエローマを調製する工程、
(d)抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合させる工程、
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群を選別する工程、
(f)単一細胞クローンへ分割(クローニング)する工程、
(g)場合によっては、ハイブリドーマを培養してモノクローナル抗体を製造する工程、または、ハイブリドーマを移植した動物を飼育してモノクローナル抗体を製造する工程、
(h)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性、およびその結合特異性を検討、あるいは標識試薬としての特性を検定する工程
などである。
[0062]
 以下、モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞およびミエローマを使用することもできる。
[0063]
(a)抗原を調製する工程
 抗原としては、前記したような方法で調製したCD98またはその一部、CD98発現組換え体細胞よって調製した膜画分、CD98発現組換え体細胞、CD98発現細胞株、当業者に周知の方法を用いて、化学合成したCD98の部分ペプチドなどを使用することができる。
[0064]
(b)抗体産生細胞を調製する工程
 工程(a)で得られた抗原と、フロインドの完全または不完全アジュバント、またはカリミョウバンのような助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。あるいはCD98発現細胞を免疫原として実験動物に免疫する。実験動物は公知のハイブリドーマ作製法に用いられる動物を支障なく使用することができる。具体的には、例えばマウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマなどを使用することができる。ただし、摘出した抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞の入手容易性などの観点から、マウスまたはラットを被免疫動物とするのが好ましい。
[0065]
 また、実際に使用するマウスおよびラットの系統には特に制限はなく、マウスの場合には、例えば各系統A、AKR、BALB/c、BDP、BA、CE、C3H、57BL、C57BL、C57L、DBA、FL、HTH、HT1、LP、NZB、NZW、RF、R III、SJL、SWR、WB、129などが、またラットの場合には、例えば、Wistar、Low、Lewis、Sprague、Dawley、ACI、BN、Fischerなどを用いることができる。
[0066]
 これらのマウスおよびラットは例えば日本クレア社、日本チャ-ルス・リバー社、など実験動物飼育販売業者より入手することができる。
[0067]
 このうち、後述のミエローマ細胞との融合適合性を勘案すれば、マウスではBALB/c系統が、ラットではWistarおよびLow系統が被免疫動物としてさらに好ましい。
[0068]
 また、抗原のヒトとマウスでの同一性を考慮し、自己抗体を除去する生体機構を低下させたマウス、すなわち自己免疫疾患マウスを用いることも好ましい。
[0069]
 なお、これらマウスまたはラットの免疫時の週齢は、好ましくは3~12週齢、さらに好ましくは4~6週齢である。
[0070]
 動物を免疫する方法としては、例えば、Weir, D. M., Handbook of Experimental Immunology Vol.I.II.III., Blackwell Scientific Publications, Oxford(1987)、Kabat, E. A. and Mayer, M. M., Experimental Immunochemistry, Charles C Thomas Publisher Springfield, Illinois(1964)などに記載されている公知の方法を用いることができる。
[0071]
 これらの免疫法のうち、抗原を動物の皮下に投与する方法が好ましい。免疫効率を高めるために、前半は皮内投与を行い、後半または最終回のみ静脈内投与を行うことがさらに好ましい。
[0072]
 抗原の投与スケジュールは、被免疫動物の種類、個体差などによって異なるが、一般には、抗原投与回数3~6回、投与間隔1~3週間が好ましく、投与回数4~5回、投与間隔1~2週間がさらに好ましい。
[0073]
 また、抗原の投与量は、動物の種類、個体差などによって異なるが、一般には0.05~5mg、好ましくは0.1~0.5mg程度とする。
[0074]
 追加免疫は、以上の通りの抗原投与の1~6週間後、好ましくは1~4週間後、さらに好ましくは1~3週間後に行う。免疫原が細胞の場合には、1×10 6~1×10 7個の細胞を使用する。
[0075]
 なお、追加免疫を行う際の抗原投与量は、動物の種類、大きさなどによって異なるが、一般に、例えばマウスの場合には0.05~5mg、好ましくは0.1~0.5mg、さらに好ましくは0.1~0.2mg程度とする。免疫原が細胞の場合には、1×10 6~1×10 7個の細胞を使用する。
[0076]
 上記追加免疫から1~10日後、好ましくは2~5日後、さらに好ましくは2~3日後に被免疫動物から抗体産生細胞を含む脾臓細胞またはリンパ球を無菌的に取り出す。その際に抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給源として用いれば、以後の操作の効率を高めることができる。
[0077]
 ここで用いられる抗体価の測定法としては、例えば、RIA法またはELISA法を挙げることができるがこれらの方法に制限されない。ELISA法の場合は、以下に記載するような手順によって行うことができる。
[0078]
 まず、精製または部分精製した抗原をELISA用96ウェルプレートなどの固相表面に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係なタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(本明細書において「BSA」という場合がある)によって覆い、該表面を洗浄後、第一抗体として段階希釈した試料(例えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中の抗体を結合させる。
[0079]
 さらに第二抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加えてマウス抗体に結合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化などを測定することによって、抗体価を算出する。
[0080]
 被免疫動物の脾臓細胞またはリンパ球からの抗体産生細胞の分離は、公知の方法(例えば、Kohler et al., Nature(1975)256, p.495、Kohler et al., Eur. J. Immunol.(1977)6, p.511;Milstein et al., Nature(1977)266, p.550;Walsh, Nature,(1977)266, p.495)に従って行うことができる。例えば、脾臓細胞の場合には、脾臓を細切して細胞をステンレスメッシュで濾過した後、イーグル最小必須培地(MEM)に浮遊させて抗体産生細胞を分離する一般的方法を採用することができる。
[0081]
(c)ミエローマを調製する工程
 細胞融合に用いるミエローマには特段の制限はなく、公知の細胞株から適宜選択して用いることができる。ただし、融合細胞からハイブリドーマを選択する際の利便性を考慮して、その選択手続が確立しているHGPRT(Hypoxanthine-guanine phosphoribosyl transferase)欠損株を用いるのが好ましい。
[0082]
 すなわち、マウス由来のX63-Ag8(X63)、NS1-ANS/1(NS1)、P3X63-Ag8.U1(P3U1)、X63-Ag8.653(X63.653)、SP2/0-Ag14(SP2/0)、MPC11-45.6TG1.7(45.6TG)、FO、S149/5XXO、BU.1など、ラット由来の210.RSY3.Ag.1.2.3(Y3)など、ヒト由来のU266AR(SKO-007)、GM1500・GTG-A12(GM1500)、UC729-6、LICR-LOW-HMy2(HMy2)、8226AR/NIP4-1(NP41)などである。これらのHGPRT欠損株は例えば、ATCCなどから入手することができる。
[0083]
 これらの細胞株は、適当な培地、例えば8-アザグアニン培地[RPMI-1640培地にグルタミン、2-メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、およびウシ胎仔血清(本明細書において「FBS」という場合がある)を加えた培地に8-アザグアニンを加えた培地]、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium;IMDM)、またはダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;DMEM)で継代培養するが、細胞融合の3~4日前に正常培地(例えば、10% FBSを含むASF104培地(味の素社製))で継代培養し、融合当日に2×10 7以上の細胞数を確保しておく。
[0084]
(d)細胞融合させる工程
 抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、公知の方法(Weir, D.M., Handbookof Experimental Immunology Vol.I.II.III., Blackwell Scientific Publications, Oxford(1987);Kabat, E.A. and Mayer, M.M., Experimental Immunochemistry, Charles C Thomas Publisher Springfield, Illinois(1964)など)に従い、細胞の生存率を極度に低下させない程度の条件下で適宜実施することができる。
[0085]
 そのような方法は、例えば、ポリエチレングリコールなどの高濃度ポリマー溶液中で抗体産生細胞とミエローマ細胞とを混合する化学的方法、電気的刺激を利用する物理的方法などを用いることができる。このうち、上記化学的方法の具体例を示せば以下のとおりである。
[0086]
 すなわち、高濃度ポリマー溶液としてポリエチレングリコールを用いる場合には、分子量1500~6000、好ましくは2000~4000のポリエチレングリコール溶液中で、30~40℃、好ましくは35~38℃の温度で抗体産生細胞とミエローマ細胞とを1~10分間、好ましくは5~8分間混合する。
[0087]
(e)ハイブリドーマ群を選択する工程
 上記細胞融合によって得られるハイブリドーマの選択方法は特に制限はないが、通常HAT(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)選択法(Kohler et al., Nature(1975)256, p.495;Milstein et al., Nature(1977)266, p.550)が用いられる。
[0088]
 この方法は、アミノプテリンで生存し得ないHGPRT欠損株のミエローマ細胞を用いてハイブリドーマを得る場合に有効である。
[0089]
 すなわち、未融合細胞およびハイブリドーマをHAT培地で培養することによって、アミノプテリンに対する耐性を持ち合わせたハイブリドーマのみを選択的に残存させ、かつ増殖させることができる。
[0090]
(f)単一細胞クローンへ分割(クローニング)する工程
 ハイブリドーマのクローニング法としては、例えばメチルセルロース法、軟アガロース法、限界希釈法などの公知の方法を用いることができる(例えばBarbara, B.M.and Stanley, M.S.:Selected Methods in Cellular Immunology, W.H. Freeman and Company, San Francisco(1980)参照)。これらの方法のうち、特にメチルセルロース法などの三次元培養法が好適である。例えば、細胞融合によって形成されたハイブリドーマ群をClonaCell-HY Selection Medium D(StemCell Technologies社製 #03804)などのメチルセルロース培地に懸濁して培養し、形成されたハイブリドーマコロニーを回収することでモノクローンハイブリドーマの取得が可能である。回収された各ハイブリドーマコロニーを培養し、得られたハイブリドーマ培養上清中に安定して抗体価の認められたものをCD98モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
[0091]
 このようにして樹立されたハイブリドーマ株の例としては、CD98ハイブリドーマM23を挙げることができる。なお、本明細書において、CD98ハイブリドーマM23が産生する抗体を、「M23抗体」または単に「M23」と記載する。
[0092]
 M23抗体の重鎖可変領域は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する。また、M23抗体の軽鎖可変領域は、配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する。
[0093]
(g)モノクローナル抗体を製造する工程
 このようにして選択されたハイブリドーマは、これを培養することによって、モノクローナル抗体を効率よく得ることができるが、培養に先立ち、目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングすることが望ましい。
[0094]
 このスクリーニングにはそれ自体既知の方法が採用できる。
[0095]
 抗体価の測定は、例えば上記(b)の項目で説明したELISA法によって行うことができる。
[0096]
 以上の方法によって得たハイブリドーマは、液体窒素中または-80℃以下の冷凍庫中に凍結状態で保存することができる。
[0097]
 クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHAT培地から正常培地に換えて培養される。
[0098]
 大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、あるいはスピナー培養で行われる。この大量培養における上清から、Protein Aカラム精製など、当業者に周知の方法を用いて精製することによって、本発明のタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。
[0099]
 また、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/c)、あるいはNu/Nuマウスの腹腔内にハイブリドーマを注射し、該ハイブリドーマを増殖させることによって、本発明のモノクローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。
[0100]
 腹腔内に投与する場合には、事前(3~7日前)に2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(2,6,10,14-tetramethylpentadecane;プリスタン)などの鉱物油を投与すると、より多量の腹水が得られる。
[0101]
 例えば、ハイブリドーマと同系統のマウスの腹腔内に予め免疫抑制剤を注射し、T細胞を不活性化した後、20日後に10 6~10 7個のハイブリドーマ・クローン細胞を、血清を含まない培地中に浮遊(0.5mL)させて腹腔内に投与し、通常腹部が膨満し、腹水がたまったところでマウスより腹水を採取する。この方法によって、培養液中に比べて約100倍以上の濃度のモノクローナル抗体が得られる。
[0102]
 上記方法によって得たモノクローナル抗体は、例えばWeir, D.M.:Handbook of Experimental Immunology, Vol.I,II,III, Blackwell Scientific Publications, Oxford(1978)に記載されている方法で精製することができる。
[0103]
 かくして得られるモノクローナル抗体は、CD98に対して高い抗原特異性を有する。
[0104]
(h)モノクローナル抗体の検定
 かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプおよびサブクラスの決定は以下のように行うことができる。
[0105]
 まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、またはRIA法を挙げることができる。
[0106]
 オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮操作が必要である。
[0107]
 一方、ELISA法またはRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と反応させ、さらに第二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対応する抗体を用いることによって、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同定することが可能である。
[0108]
 また、さらに簡便な方法として、市販の同定用のキット(例えば、マウスタイパーキット;バイオラッド社製)などを利用することもできる。
[0109]
 さらに、タンパク質の定量は、フォーリンロウリー法、および280nmにおける吸光度(1.4(OD 280)=イムノグロブリン1mg/mL)より算出する方法によって行うことができる。
[0110]
 さらに、(2)の(a)~(h)の工程を再度実施して別途に独立してモノクローナル抗体を取得した場合においても、M23抗体と同等の細胞傷害活性を有する抗体を取得することが可能である。このような抗体の一例として、M23抗体と同一のエピトープに結合する抗体を挙げることができる。新たに作製されたモノクローナル抗体が、M23抗体の結合する部分ペプチドまたは部分立体構造に結合すれば、該モノクローナル抗体がM23抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。また、M23抗体のCD98に対する結合に対して該モノクローナル抗体が競合する(即ち、該モノクローナル抗体が、M23抗体とCD98の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列または構造が決定されていなくても、該モノクローナル抗体がCD98抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。エピトープが同一であることが確認された場合、該モノクローナル抗体がM23抗体と同等の抗原結合能または生物活性を有していることが強く期待される。
[0111]
(3)その他の抗体
 本発明に用いられる抗体には、上記CD98に対するモノクローナル抗体に加え、ヒトに対する異種抗原性を低下させることなどを目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト抗体なども含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
[0112]
 キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウスまたはラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, 6851-6855(1984)参照)。
[0113]
 マウス抗ヒトCD98抗体M23由来のキメラ抗体は、配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる抗体であり、任意のヒト由来の定常領域を有していて良い。
[0114]
 このようなキメラ抗体の一例として、配列番号8の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号10の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する軽鎖からなる抗体を挙げることができる。なお、配列番号8に示される重鎖配列中で、1~19番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、136~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。また、配列表の配列番号10に示される軽鎖配列中で、1~20番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、136~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。
[0115]
 配列番号8に示される重鎖アミノ酸配列は、配列番号7に示されるヌクレオチド配列によってコードされている。配列番号7に示されるヌクレオチド配列の1~57番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の重鎖シグナル配列をコードしており、58~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の重鎖可変領域をコードしており、406~1395番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の重鎖定常領域をコードしている。
[0116]
 配列番号10に示される軽鎖アミノ酸配列は、配列番号9に示されるヌクレオチド配列によってコードされている。配列番号9に示されるヌクレオチド配列の1~60番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の軽鎖シグナル配列をコードしており、61~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の軽鎖可変領域をコードしており、406~720番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の軽鎖定常領域をコードしている。
[0117]
 配列番号7および8の配列は図1に、配列番号9および10の配列は図2に各々記載されている。
[0118]
 ヒト化抗体としては、CDRのみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986)321, p.522-525参照)、CDR移植法によって、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開パンフレットWO90/07861)を挙げることができる。
[0119]
 M23抗体由来のヒト化抗体(本明細書において、「ヒト化M23抗体」、「ヒト化M23」、「hM23抗体」または「hM23」という場合がある。)としては、M23抗体の6種全てのCDR配列を保持する限り、特定のヒト化抗体に限定されない。なお、M23抗体の重鎖可変領域は、配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(NYLIE)、配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(VINPGSGVTNYNEKFKG)、および配列番号21に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(AEAWFAY)を保有している。また、M23抗体の軽鎖可変領域は、配列表の配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KSSQSLLYSSNQKNYLA)、配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(WASTRES)、および配列番号24に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QRYYGYPWT)を保有している。
[0120]
 マウス抗体M23のヒト化抗体の例としては、
(1)配列番号12または14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列、
(2)上記(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列、および
(3)上記(1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列
からなる群より選択される重鎖可変領域を含む重鎖、ならびに
(4)配列番号16または18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列、
(5)上記(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列、および
(6)上記(4)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列
からなる群より選択される軽鎖可変領域を含む軽鎖、
の任意の組合せを挙げることができる。
[0121]
 また、アミノ酸の置換としては保存的アミノ酸置換が好ましい。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸側鎖に関連のあるアミノ酸グループ内で生じる置換である。好適なアミノ酸グループは、以下のとおりである:
酸性グループ=アスパラギン酸およびグルタミン酸;塩基性グループ=リシン、アルギニンおよびヒスチジン;
非極性グループ=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファン;ならびに
非帯電極性ファミリー=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニンおよびチロシン。
[0122]
 他の好適なアミノ酸グループは次のとおりである:
脂肪族ヒドロキシグループ=セリンおよびスレオニン;
アミド含有グループ=アスパラギンおよびグルタミン;
脂肪族グループ=アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;ならびに
芳香族グループ=フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン。
[0123]
 かかるアミノ酸置換は元のアミノ酸配列を有する物質の特性を低下させない範囲で行うのが好ましい。
[0124]
 上記重鎖および軽鎖の好適な組合せの抗体としては、
 配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖および配列番号16の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体、
 配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体、
 配列番号14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖および配列番号16の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体、ならびに、
 配列番号14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体、
を挙げることができる。
[0125]
 さらに好適な組合せの抗体としては、
 配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖および配列番号16の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体、
 配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体、ならびに、
 配列番号14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体、
を挙げることができる。
[0126]
 また、別の好適な組合せの抗体としては、
 配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号16の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
 配列番12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
 配列番号14の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号16の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、ならびに、
 配列番号14の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
を挙げることができる。
[0127]
 さらに好適な組み合わせの抗体としては、
 配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号16の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
 配列番12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、ならびに、
 配列番号14の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
を挙げることができる。
[0128]
 上記の重鎖アミノ酸配列および軽鎖アミノ酸配列と高い同一性を示す配列を組み合わせることによって、上記の各抗体と同等の生物活性を有する抗体を選択することが可能である。このような同一性は、一般的には80%以上の同一性であり、好ましくは90%以上の同一性であり、より好ましくは95%以上の同一性であり、最も好ましくは99%以上の同一性である。また、重鎖または軽鎖のアミノ酸配列に1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を組み合わせることによっても、上記の各抗体と同等の生物活性を有する抗体を選択することが可能である。
[0129]
 二種類のアミノ酸配列間の同一性は、Blast algorithm version 2.2.2(Altschul, Stephen F., Thomas L.Madden, Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang、 Zheng Zhang、 Webb Miller, and David J. Lipman(1997),「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs」, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)のデフォルトパラメーターを使用することによって決定することができる。Blast algorithmは、インターネットでwww.ncbi.nlm.nih.gov/blastにアクセスすることによっても使用することができる。
[0130]
 なお、配列番号12または14に示される重鎖アミノ酸配列中で、1~19番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、136~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。配列番号12または14に示される重鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号11または13に示されるヌクレオチド配列によってコードされている。各ヌクレオチド配列の1~57番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の重鎖シグナル配列をコードしており、58~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の重鎖可変領域をコードしており、406~1395番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の重鎖定常領域をコードしている。配列番号11および12の配列は図3に、配列番号13および14の配列は図4に各々記載されている。
[0131]
 また、配列表の配列番号16または18に示される軽鎖アミノ酸配列中で、1~20番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は可変領域であり、136~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は定常領域である。配列番号16または18に示される軽鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号15または17に示されるヌクレオチド配列によってコードされている。各ヌクレオチド配列の1~60番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の軽鎖シグナル配列をコードしており、61~405番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の軽鎖可変領域をコードしており、406~720番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列は抗体の軽鎖定常領域をコードしている。配列番号15および16の配列は図5に、配列番号17および18の配列は図6に各々記載されている。
[0132]
 これらのヌクレオチド配列と他の抗体のヌクレオチド配列との間の同一性についてはBlast algorithmによって決定することができる。
[0133]
 本発明に用いられる抗体としては、さらに、M23抗体と同一のエピトープに結合するヒト抗体を挙げることができる。抗CD98ヒト抗体とは、ヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列のみを有するヒト抗体を意味する。抗CD98ヒト抗体は、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いた方法(Tomizuka, K. et al., Nature Genetics(1997)16, p.133-143;Kuroiwa, Y. et al., Nucl.Acids Res.(1998)26, p.3447-3448;Yoshida, H. et al., Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10, p.69-73(Kitagawa, Y., Matsuda, T. and Iijima, S., eds.), Kluwer Academic Publishers, 1999.;Tomizuka, K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(2000)97, p.722-727などを参照。)によって取得することができる。
[0134]
 このようなヒト抗体産生マウスは、具体的には、内在性免疫グロブリン重鎖および軽鎖の遺伝子座が破壊され、代わりに酵母人工染色体(Yeast artificial chromosome、YAC)ベクターなどを介してヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖の遺伝子座が導入された遺伝子組み換え動物を、ノックアウト動物およびトランスジェニック動物の作製、およびこれらの動物同士を掛け合わせることによって作り出すことができる。
[0135]
 また、遺伝子組換え技術によって、そのようなヒト抗体の重鎖および軽鎖の各々をコードするcDNA、好ましくは該cDNAを含むベクターによって真核細胞を形質転換し、遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体を産生する形質転換細胞を培養することによって、この抗体を培養上清中から得ることもできる。
[0136]
 ここで、宿主としては例えば真核細胞、好ましくはCHO細胞、リンパ球やミエローマなどの哺乳動物細胞を用いることができる。
[0137]
 また、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得する方法(Wormstone, I.M. et al, Investigative Ophthalmology & Visual Science.(2002)43(7), p.2301-2308;Carmen, S. et al., Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002), 1(2), p.189-203;Siriwardena, D. et al., Ophthalmology(2002)109(3), p.427-431など参照。)も知られている。
[0138]
 例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージ表面に発現させて、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法(Nature Biotechnology(2005), 23, (9), p.1105-1116)を用いることができる。
[0139]
 抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。
[0140]
 抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクターを作製し、適当な宿主に導入して発現させることによってヒト抗体を取得することができる(WO92/01047、WO92/20791、WO93/06213、WO93/11236、WO93/19172、WO95/01438、WO95/15388、Annu. Rev. Immunol(1994)12, p.433-455、Nature Biotechnology(2005)23(9), p.1105-1116)。
[0141]
 新たに作製されたヒト抗体が、M23抗体の結合する部分ペプチドまたは部分立体構造に結合すれば、該ヒト抗体がM23抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。また、M23抗体のCD98に対する結合に対して該ヒト抗体が競合する(すなわち、該ヒト抗体が、M23抗体とCD98の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列または構造が決定されていなくても、該ヒト抗体がM23抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。エピトープが同一であることが確認された場合、該ヒト抗体がM23抗体と同等の生物活性を有していることが強く期待される。
[0142]
 以上の方法によって得られたキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体は、公知の方法などによって抗原に対する結合性を評価し、好適な抗体を選抜することができる。
[0143]
 抗体の性質を比較する際の別の指標の一例としては、抗体の安定性を挙げることができる。示差走査カロリメトリー(DSC)は、蛋白の相対的構造安定性のよい指標となる熱変性中点(Tm)を素早く、また正確に測定することができる装置である。DSCを用いてTm値を測定し、その値を比較することによって、熱安定性の違いを比較することができる。抗体の保存安定性は、抗体の熱安定性とある程度の相関を示すことが知られており(Lori Burton, et al., Pharmaceutical Development and Technology(2007)12, p.265-273)、熱安定性を指標に、好適な抗体を選抜することができる。抗体を選抜するための他の指標としては、適切な宿主細胞における収量が高いこと、および水溶液中での凝集性が低いことを挙げることができる。例えば収量の最も高い抗体が最も高い熱安定性を示すとは限らないので、以上に述べた指標に基づいて総合的に判断して、ヒトへの投与に最も適した抗体を選抜する必要がある。
[0144]
 本発明に用いられる抗体には抗体の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、抗体に化学的または生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合またはO-結合炭水化物鎖の化学修飾体などが含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合またはO-結合への糖鎖付加、N末端またはC末端のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末端にメチオニン残基が付加したものなどが含まれる。また、本発明に用いられる抗体または抗原の検出または単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾物の意味に含まれる。このような本発明に用いられる抗体の修飾物は、元の抗体の安定性および血中滞留性の改善、抗原性の低減、かかる抗体または抗原の検出または単離などに有用である。
[0145]
 また、抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコース化など)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、WO99/54342、WO00/61739、WO02/31140などが知られているが、これらに限定されるものではない。本発明に用いられる抗体には当該糖鎖修飾を調節された抗体も含まれる。
[0146]
 本発明に用いられる抗CD98抗体は、抗体遺伝子を一旦単離した後、適当な宿主に導入して得ることもできる。抗体遺伝子の具体例としては、本明細書に記載された抗体の重鎖配列をコードする遺伝子および軽鎖配列をコードする遺伝子を組み合わせたものを挙げることができる。宿主細胞を形質転換する際には、重鎖配列遺伝子と軽鎖配列遺伝子は、同一の発現ベクターに挿入されていることが可能であり、また別々の発現ベクターに挿入されていることも可能である。
[0147]
 真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真核微生物を用いることができる。特に動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. Cell(1981)23, p.175-182、ATCC CRL-1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL-1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L.A. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1980)77, p.4126-4220)を挙げることができる。
[0148]
 原核細胞を使用する場合は、例えば、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。
[0149]
 これらの細胞に目的とする抗体遺伝子を形質転換によって導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することによって抗体が得られる。当該培養においては抗体の配列によって収量が異なる場合があり、同等な結合活性を持つ抗体の中から収量を指標に医薬としての生産が容易なものを選別することが可能である。よって、本発明に用いられる抗体には、上記形質転換された宿主細胞を培養する工程、および当該工程で得られた培養物から目的の抗体または当該抗体の抗原結合断片を採取する工程を含むことを特徴とする当該抗体の製造方法によって得られる抗体も含まれる。
[0150]
 なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A, 705:129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry, 360:75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失および修飾は、抗体の抗原結合能およびエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用など)には影響を及ぼさない。したがって、本発明には当該修飾を受けた抗体および当該抗体の抗原結合断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1または2のアミノ酸が欠失した欠失体、およびアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)などを挙げることができる。但し、抗原結合能およびエフェクター機能が保たれている限り、本発明に用いられる抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に用いられる抗体を構成する2本の重鎖は、完全長および上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせたものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に用いられる抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類および培養条件に影響を受け得るが、本発明に用いられる抗体の主成分としては2本の重鎖の双方でカルボキシル末端の1つのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる。
[0151]
 本発明に用いられる抗体のアイソタイプとしては、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)などを挙げることができるが、好ましくはIgG1またはIgG2を挙げることができる。
[0152]
 また本発明に用いられる抗体は、抗体の抗原結合部を有する抗体の抗原結合断片またはその修飾物であってもよい。抗体をパパイン、ペプシンなどの蛋白質分解酵素で処理するか、あるいは抗体遺伝子を遺伝子工学的手法によって改変し適当な培養細胞において発現させることによって、該抗体の断片を得ることができる。このような抗体断片のうちで、抗体全長分子の持つ機能の全てまたは一部を保持している断片を抗体の抗原結合断片と呼ぶことができる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv、または重鎖及び軽鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)、diabody(diabodies)、線状抗体、及び抗体断片より形成された多特異性抗体などを挙げることができる。また、F(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であるFab’も抗体の断片に含まれる。
 本発明に用いられる抗体は、抗腫瘍性化合物を結合させた抗体―薬物コンジュゲートでもよい。抗腫瘍性化合物としては、抗腫瘍効果を有する化合物であって、リンカー構造に結合できる置換基、部分構造を有するものであれば特に制限はない。抗腫瘍性化合物は、リンカーの一部または全部が腫瘍細胞内で切断されて抗腫瘍性化合物部分が遊離されて抗腫瘍効果が発現される。リンカーが薬物との結合部分で切断されれば抗腫瘍性化合物が本来の構造で遊離され、その本来の抗腫瘍効果が発揮される。
 抗腫瘍性化合物としては、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、シクロシチジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセート、白金系抗腫瘍剤(シスプラチン若しくはその誘導体)、タキソール若しくはその誘導体、カンプトテシン若しくはその誘導体(特開平6-87746号公報に記載された抗腫瘍剤)などを挙げることができ、好ましくはエキサテカンである。
[0153]
 本発明に用いられる抗CD98抗体の生物活性としては、抗原結合活性、抗原と結合することによって該抗原を発現する細胞に内在化する活性、抗原の活性を中和する活性、抗原の活性を増強する活性、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性、補体依存性細胞傷害(CDC)活性および抗体依存性細胞媒介食作用(ADCP)を挙げることができるが、本発明に用いられる抗体が有する機能は、CD98重鎖に対する結合活性であり、好ましくはCD98重鎖と結合することによってCD98発現細胞に内在化する活性である。さらに、本発明に用いられる抗体は、細胞内在化活性に加えて、ADCC活性、CDC活性および/またはADCP活性を併せ持っていても良い。
[0154]
 抗体の抗原結合活性は、フローサイトメトリーを用いて確認できる。
[0155]
 細胞に内在化する活性は、(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡で可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiation(2008) 15, 751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol. 15, 5268-5282, December 2004)、または(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて、細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPアッセイ(BioTechniques 28:162-165, January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシンとしては、ジフテリア毒素の触媒領域とプロテインGのリコンビナント複合タンパク質も使用可能である。
[0156]
 得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばカラムクロマトグラフィー、フィルター濾過、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動などを適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual, Daniel R.Marshak et al., eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996);Antibodies:A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988))が、これらに限定されるものではない。
[0157]
 クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーなどを挙げることができる。
[0158]
 これらのクロマトグラフィーは、HPLCやFPLCなどの液体クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
[0159]
 アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムを挙げることができる。例えばプロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(GEヘルスケア社)などを挙げることができる。
[0160]
 また抗原を固定化した担体を用いて、抗原への結合性を利用して抗体を精製することも可能である。
[0161]
 本発明に用いられる抗CD98抗体は、CD98重鎖に結合できる抗体であれば特に限定されないが、好ましくは、次の抗体である:
 (1)CD98重鎖と結合することによってCD98発現細胞に内在化する特性を有する抗体;
 (2)CD98がヒトCD98である上記(1)に記載の抗体または当該抗体;
 (3)抗体の重鎖におけるCDRとして、配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、および、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、ならびに、抗体の軽鎖におけるCDRとして、配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、および、配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を有する上記(1)または(2)に記載の抗体;
 (4)定常領域がヒト由来定常領域である上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の抗体;
 (5)ヒト化されている上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の抗体;
 (6)抗体の重鎖の可変領域が、
  (a)配列番号12におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列、
  (b)配列番号14におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列、
  (c)(a)または(b)の配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列、および、
  (d)(a)または(b)の配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されたアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列からなり、
 抗体の軽鎖の可変領域が、
  (e)配列番号16におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列、
  (f)配列番号18におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列、
  (g)(e)または(f)の配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列、および、
  (h)(e)または(f)の配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、上記(5)に記載の抗体;
 (7)抗体の重鎖の可変領域および抗体の軽鎖の可変領域の組合せが、
 配列番号12におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域および配列番号16におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域の組合せ、
 配列番号12におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域および配列番号18におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域の組合せ、
 配列番号14におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域および配列番号16におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域の組合せ、および
 配列番号14におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域および配列番号18におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域の組合せ、
からなる群より選択される組合せである、上記(6)に記載の抗体;
(8)抗体の重鎖の可変領域および抗体の軽鎖の可変領域の組合せが、
 配列番号12におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域および配列番号16におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域の組合せ、
 配列番号12におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域および配列番号18におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域の組合せ、または、
 配列番号14におけるアミノ酸番号20~135に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域および配列番号18におけるアミノ酸番号21~135に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域の組合せ、
である、上記(6)に記載の抗体;
(9)重鎖および軽鎖の組合せが、
 配列番号12におけるアミノ酸番号20~465に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号16におけるアミノ酸番号21~240に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の組合せ、
 配列番号12におけるアミノ酸番号20~465に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18におけるアミノ酸番号21~240に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の組合せ、
 配列番号14におけるアミノ酸番号20~465に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号16におけるアミノ酸番号21~240に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の組合せ、および、
 配列番号14におけるアミノ酸番号20~465に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18におけるアミノ酸番号21~240に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の組合せ、
からなる群から選択される組合せである、上記(6)に記載の抗体;
(10)重鎖および軽鎖の組合せが、
 配列番号12におけるアミノ酸番号20~465に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号16におけるアミノ酸番号21~240に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の組合せ、
 配列番号12におけるアミノ酸番号20~465に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18におけるアミノ酸番号21~240に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の組合せ、または、
 配列番号14におけるアミノ酸番号20~465に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18におけるアミノ酸番号21~240に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の組合せ、
である、上記(6)に記載の抗体;あるいは、
(11)上記(1)~(10)のいずれか1項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を培養する工程および当該工程で得られた培養物から目的の抗体を採取する工程を含む当該抗体の製造方法によって得られる抗体。
[0162]
(薬物)
 本発明に用いられる薬物は、次式:
[0163]
[化3]


[0164]
で表されるカンプトテシン誘導体であるエキサテカン((1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)である。エキサテカンは、優れた抗腫瘍活性を有しているものの、抗腫瘍薬として市販されるには至っていない。エキサテカンは、公知の方法で容易に取得でき、1位のアミノ基をリンカー構造への結合部位として好適に使用することができる。また、エキサテカンはリンカーの一部が結合した状態で腫瘍細胞内に遊離される場合もあるが、このような状態でも優れた抗腫瘍効果が発揮される優れた化合物である。
[0165]
 エキサテカンはカンプトテシン構造を有するので、酸性水性媒体中(例えばpH3程度)ではラクトン環が形成された構造(閉環体)に平衡が偏り、一方、塩基性水性媒体中(例えばpH10程度)ではラクトン環が開環した構造(開環体)に平衡が偏ることが知られている。このような閉環構造および開環構造に対応するエキサテカン残基を導入した薬物コンジュゲートであっても同等の抗腫瘍効果が期待され、いずれのものも本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。
[0166]
 抗体-薬物コンジュゲートにおいて、抗体1分子への薬物の結合数は、その有効性、安全性に影響する重要因子である。抗体-薬物コンジュゲートの製造は、薬物の結合数が一定の数となるよう、反応させる原料・試薬の使用量などの反応条件を規定して実施されるが、低分子化合物の化学反応とは異なり、異なる数の薬物が結合した混合物として得られるのが通常である。抗体1分子への薬物の結合数は平均値、すなわち、平均薬物結合数として特定され、表記される。本発明でも原則として断りのない限り、すなわち、異なる薬物結合数をもつ抗体-薬物コンジュゲート混合物に含まれる特定の薬物結合数をもつ抗体-薬物コンジュゲートを示す場合を除き、薬物の結合数は平均値を意味する。抗体分子へのエキサテカンの結合数はコントロール可能であり、1抗体あたりの薬物平均結合数として、1~10個程度のエキサテカンを結合させることができるが、好ましくは2~8個であり、より好ましくは3~6個である。なお、当業者であれば後述の実施例の記載から抗体に必要な数の薬物を結合させる反応を設計することができ、エキサテカンの結合数をコントロールした抗体-薬物コンジュゲートを取得することができる。
[0167]
(リンカー)
 本発明に用いられるリンカーは、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2-O-CH 2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2-O-CH 2-C(=O)-、または
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2-C(=O)-NH-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2CH 2-C(=O)-
の構造で示されるリンカーであるが、これ等から選択されるいずれか1種のリンカーであればよい。これらのうちでは、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2-O-CH 2-C(=O)-
が特に好ましい。なおここで「-(Succinimid-3-yl-N)-」は、次式:
[0168]
[化4]


[0169]
で表される構造を有する。この部分構造における3位が抗CD98抗体への結合部位である。この3位での該抗体との結合は、チオエーテルを形成して結合することが特徴である。この構造部分の1位の窒素原子は、この構造が含まれるリンカー内に存在するメチレンの炭素原子と結合する。すなわち、抗体とリンカーの結合部分は次式:
[0170]
[化5]


[0171]
(式中、「抗体-S-」は抗体由来であり、n 1は2または5である。)で示される。
[0172]
 「GGFG」は、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンからなるテトラペプチドである。
[0173]
 本発明に用いられるリンカーは例えば、後述する実施例に記載に方法に従って調製することができる。
[0174]
(抗体-薬物コンジュゲート)
 本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、抗CD98抗体を還元してそのヒンジ部のジスルフィド結合をスルフヒドリル基に変換した抗体に対し、実施例記載の方法で得られる、末端にマレイミジル基を有する次に示す薬物-リンカー中間体化合物
[化6]


のいずれかを反応させることによって製造することができる。
 スルフヒドリル基を有する抗CD98抗体は、当業者周知の方法で得ることができる(Hermanson, G.T, Bioconjugate Techniques, pp.56-136, pp.456-493, Academic Press(1996))。例えば、Traut’s試薬を抗体のアミノ基に作用させる方法、N-サクシンイミジル S-アセチルチオアルカノエート類を抗体のアミノ基に作用させた後、ヒドロキシルアミンを作用させる方法、N-サクシンイミジル 3-(ピリジルジチオ)プロピオネートを作用させた後、還元剤を作用させる方法、ジチオトレイトール、2-メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)などの還元剤を抗体に作用させて抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元してスルフヒドリル基を生成させる方法などを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0175]
 具体的には、還元剤としてTCEPを、抗体内ヒンジ部ジスルフィド1個当たりに対して0.3~3モル当量用い、キレート剤を含む緩衝液中で、抗体と反応させることで、抗体内ヒンジ部ジスルフィドが部分的若しくは完全に還元された抗体を得ることができる。
[0176]
 キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などを挙げることができる。これらを1~20mMの濃度で用いればよい。
[0177]
 緩衝液としては、リン酸ナトリウムやホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム溶液などを用いることができる。具体的には、抗体は4~37℃にて1~4時間TCEPと反応させることで部分的若しくは完全に還元されたスルフヒドリル基を有する抗体を得ることができる。
[0178]
 このスルフヒドリル基を有する抗体1個あたり、2乃至20モル当量の薬物-リンカー中間体化合物を使用して、抗体1個当たり2個乃至8個の薬物が結合した抗体―薬物コンジュゲートを製造することができる。具体的には、スルフヒドリル基を有する抗体を含む緩衝液に、薬物-リンカー中間体化合物を溶解させた溶液を加えて反応させればよい。ここで、緩衝液としては、酢酸ナトリウム溶液、リン酸ナトリウムやホウ酸ナトリウムなどを用いればよい。反応時のpHは5乃至9であり、より好適にはpH7付近で反応させればよい。薬物-リンカー中間体化合物を溶解させる溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒を用いることができる。
 薬物-リンカー中間体化合物を溶解させた有機溶媒溶液は、スルフヒドリル基を有する抗体を含む緩衝液に1乃至20%v/vを加えて反応させればよい。反応温度は、0乃至37℃、より好適には10乃至25℃であり、反応時間は、0.5乃至2時間である。反応は、未反応の薬物-リンカー中間体化合物の反応性をチオール含有試薬によって失活させることによって終了できる。チオール含有試薬は例えば、システインまたはN-アセチル-L-システイン(NAC)である。より具体的には、NACを、用いた薬物-リンカー中間体化合物に対して、1乃至2モル当量加え、室温で10乃至30分インキュベートすることにより反応を終了できる。
[0179]
 製造した抗体-薬物コンジュゲートは、以下の共通操作によって濃縮、バッファー交換、精製、抗体濃度及び抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定を行い、抗体-薬物コンジュゲートの同定を行うことができる。
[0180]
1.抗体または抗体-薬物コンジュゲート水溶液の濃縮
 Amicon Ultra(50,000 MWCO、Millipore Corporation)の容器内に抗体または抗体-薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R、Beckman Coulter, Inc.)を用いた遠心操作(2000G~3800Gにて5~20分間遠心)にて、抗体若しくは抗体-薬物コンジュゲート溶液を濃縮する。
[0181]
2.抗体の濃度測定
 UV測定器(Nanodrop 1000、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行う。その際に、抗体ごとに異なる280nm吸光係数(1.3mLmg -1cm -1~1.8mLmg -1cm -1)を用いる。
[0182]
3.抗体のバッファー交換
 Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat. No. 17-0852-02、GE Healthcare Japan Corporation)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA、5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM、pH6.0;本明細書において「PBS6.0/EDTA」という場合がある。)にて平衡化する。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをのせたのち、PBS6.0/EDTA 3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取する。この画分を共通操作Aによって濃縮し、共通操作Bを用いて抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて10mg/mLに抗体濃度を調整する。
[0183]
4.抗体-薬物コンジュゲートの精製
 Sorbitol(5%)を含む酢酸緩衝液(10mM、pH5.5;本明細書において「ABS」という場合がある。)にてNAP-25カラムを平衡化する。このNAP-25カラムに、抗体-薬物コンジュゲート反応水溶液(2.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ、緩衝液で溶出させるゲルろ過精製操作を計2~3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーや低分子化合物(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、N-アセチル-L-システイン(NAC)およびジメチルスルホキシド)を除いた抗体-薬物コンジュゲートを得る。
[0184]
5.抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度および抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定(UV法)
 抗体-薬物コンジュゲートにおける結合薬物濃度は、抗体-薬物コンジュゲート水溶液の280nmおよび370nmの二波長におけるUV吸光度を測定したのちに下記の計算を行うことで、算出することができる。
 ある波長における全吸光度は系内に存在する全ての吸収化学種の吸光度の和に等しい[吸光度の加成性]ことから、抗体と薬物のコンジュゲーション前後において、抗体および薬物のモル吸光係数に変化がないと仮定すると、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度および薬物濃度は、下記の関係式で示される。
A 280=A D,280+A A,280=ε D,280C D+ε A,280C A  式(1)
A 370=A D,370+A A,370=ε D,370C D+ε A,370C A  式(2)
 ここで、A 280は280nmにおける抗体-薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A 370は370nmにおける抗体-薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A A,280は280nmにおける抗体の吸光度を示し、A A,370は370nmにおける抗体の吸光度を示し、A D,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、A D,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、ε A,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、ε A,370は370nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、ε D,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体のモル吸光係数を示し、ε D,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体のモル吸光係数を示し、C Aは抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度を示し、C Dは抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物濃度を示す。
 ここで、ε A,280、ε A,370、ε D,280およびε D,370は、事前に用意した値(計算推定値若しくは化合物のUV測定から得られた実測値)が用いられる。例えば、ε A,280は、抗体のアミノ酸配列から、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって推定することができる。ε A,370は、通常、ゼロである。ε D,280およびε D,370は、用いるコンジュゲート前駆体をあるモル濃度に溶解させた溶液の吸光度を測定することで、ランベルト・ベールの法則(吸光度=モル濃度×モル吸光係数×セル光路長)によって、得ることができる。抗体-薬物コンジュゲート水溶液のA 280およびA 370を測定し、これらの値を式(1)および(2)に代入して連立方程式を解くことによって、C AおよびC Dを求めることができる。さらにC DをC Aで除することで1抗体あたりの薬物平均結合数が求めることができる。
[0185]
6.抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定(RPC法)
 抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数は、前述のUV法に加え、以下の逆層クロマトグラフィー(Reversed Phase Chromatography (RPC))法を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によっても求めることができる。
[0186]
[6-1.HPLC分析用サンプルの調製(抗体-薬物コンジュゲートの還元)]
 抗体-薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合する。混合物を37℃で30分インキュベートすることで、抗体-薬物コンジュゲートのL鎖及びH鎖間のジスルフィド結合を切断したサンプルを、HPLC分析に用いる。
[0187]
[6-2.HPLC分析]
 HPLC分析を、下記の測定条件にて行う。
 HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent Technologies)
 検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
 カラム:PLRP-S(2.1×50mm、8μm、1000Å;Agilent Technologies、P/N PL1912-1802)
 カラム温度:80℃
 移動相A:0.04%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
 移動相B:0.04%TFAを含むアセトニトリル溶液
 グラジエントプログラム:29%-36%(0分-12.5分)、36%-42%(12.5-15分)、42%-29%(15分―15.1分)、29%-29%(15.1分―25分)
 サンプル注入量:15μL
[0188]
[6-3.データ解析]
〔6-3-1〕 薬物の結合していない抗体のL鎖(L 0)及びH鎖(H 0)に対して、薬物の結合したL鎖(薬物が一つ結合したL鎖:L 1)及びH鎖(薬物が一つ結合したH鎖:H 1、薬物が二つ結合したH鎖:H 2、薬物が三つ結合したH鎖:H 3)は、結合した薬物の数に比例して疎水性が増し保持時間が大きくなることから、L 0、L 1、H 0、H 1、H 2、H 3の順に溶出される。L 0及びH 0との保持時間比較により検出ピークをL 0、L 1、H 0、H 1、H 2、H 3のいずれかに割り当てることができる。
[0189]
〔6-3-2〕 薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、L鎖、H鎖及び薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値の補正を行う。
[0190]
[数1]


[0191]
[数2]


[0192]
 ここで、各抗体におけるL鎖及びH鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体のL鎖及びH鎖のアミノ酸配列から推定される値を用いることができる。また、薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、各薬物リンカーをメルカプトエタノールまたはN-アセチルシステインで反応させ、マレイミド基をサクシニイミドチオエーテルに変換した化合物の実測のモル吸光係数(280nm)を用いることができる。
[0193]
〔6-3-3〕 ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って計算する。
[0194]
[数3]


[0195]
〔6-3-4〕 抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数を、下式に従って計算する。
 薬物平均結合数=(L 0ピーク面積比×0+L 0ピーク面積比×1+H 0ピーク面積比×0+H 1ピーク面積比×1+H 2ピーク面積比×2+H 3ピーク面積比×3)/100×2
[0196]
 本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、腫瘍細胞内に移動した後にはリンカー部分が切断され、NH 2-CH 2-O-CH 2-C(=O)-(NH-DX)、NH 2-CH 2CH 2-O-CH 2-C(=O)-(NH-DX)、またはNH 2-CH 2CH 2CH 2-C(=O)-(NH-DX)が腫瘍細胞内で遊離する。ここで、「-(NH-DX)」は次式:
[0197]
[化7]


[0198]
で表され、1位のアミノ基の窒素原子がリンカーのカルボニル基と結合する。
[0199]
 また、NH 2-CH 2-O-CH 2-C(=O)-(NH-DX)の場合は同分子内にあるアミナール構造が不安定であるため、さらに自己分解してHO-CH 2-C(=O)-(NH-DX)が遊離されることが確認された。これらの化合物は本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造中間体としても好適に用いることができる。
[0200]
 本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、大気中に放置したり、または再結晶や精製操作をすることにより、水分を吸収し、あるいは吸着水が付着するなどして、水和物になる場合があり、そのような水を含む化合物または薬理学的に許容され得る塩も本発明に包含される。
 本発明の抗体-薬物コンジュゲートが、アミノ基などの塩基性基を有する場合、所望により薬理学的に許容され得る酸付加塩を形成することができる。そのような酸付加塩としては、例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などのハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などの低級アルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのアリ-ルスルホン酸塩;蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、りんご酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩などの有機酸塩;またはオルニチン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩などのアミノ酸塩などを挙げることができる。
 本発明の抗体-薬物コンジュゲートが、カルボキシ基などの酸性基を有する場合、所望により薬理学的に許容され得る塩基付加塩を形成することができる。そのような塩基付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩などの無機塩;ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-N-(2-フェニルエトキシ)アミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩などの有機アミン塩などを挙げることができる。
[0201]
 本発明はまた、抗体-薬物コンジュゲートを構成する原子の1以上が、その原子の同位体で置換された抗体-薬物コンジュゲートを包含し得る。同位体には放射性同位体および安定同位体の2種類が存在し、同位体の例としては、例えば、水素の同位体( 2Hおよび 3H)、炭素の同位体( 11C、 13Cおよび 14C)、窒素の同位体( 13Nおよび 15N)、酸素の同位体( 15O、 17Oおよび 18O)、フッ素の同位体( 18F)などを挙げることができる。同位体で標識された抗体-薬物コンジュゲートを含む組成物は、例えば、治療剤、予防剤、研究試薬、アッセイ試薬、診断剤、インビボ画像診断剤などとして有用である。同位体で標識された抗体-薬物コンジュゲート、および、同位体で標識された抗体-薬物コンジュゲートの任意の割合の混合物もすべて本発明に包含される。同位体で標識された抗体-薬物コンジュゲートは、当該分野で公知の方法により、例えば、後述する本発明の製造方法における原料の代わりに同位体で標識された原料を用いることにより、製造することができる。
[0202]
 本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、癌細胞に対して細胞傷害活性を示すことから、癌に対する治療および/または予防のための医薬組成物の有効成分として使用することができる。
 すなわち本発明の抗CD98抗体-薬物コンジュゲートは、癌治療の主要な治療法である化学療法のための薬剤として選択して使用することができ、その結果として、癌細胞の成長を遅らせ、増殖を抑え、さらには癌細胞を破壊することができる。これ等によって、癌患者において、癌による症状からの解放や、QOLの改善を達成でき、癌患者の生命を保って治療効果が達成される。癌細胞の破壊には至らない場合であっても、癌細胞の増殖の抑制やコントロールによって癌患者においてより高いQOLを達成しつつより長期の生存を達成させることができる。
 このような薬物療法においての薬物単独での使用の他、アジュバント療法において他の療法と組み合わせる薬剤としても使用でき、外科手術や、放射線療法、ホルモン療法などと組み合わせることができる。さらにはネオアジュバント療法における薬物療法の薬剤として使用することもできる。
 以上のような治療的使用の他、微細な転移癌細胞の増殖を押さえ、さらには破壊する効果も期待することができる。特に原発性の癌細胞においてCD98の発現が確認されたときに本発明の抗CD98抗体-薬物コンジュゲートを投与することよって癌転移の抑制や、予防効果を期待することができる。例えば、転移過程で体液中にある癌細胞を抑制し破壊する効果や、いずれかの組織に着床した直後の微細な癌細胞に対する抑制、破壊などの効果が期待できる。したがって、特に外科的な癌の除去後においての癌転移の抑制、予防効果が期待できる。
 本発明の抗CD98抗体-薬物コンジュゲートは、患者に対しては全身療法として投与する他、癌組織に局所的に投与して治療効果を期待することができる。
[0203]
 癌の種類としては、肺癌、腎癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、多形神経膠芽腫、卵巣癌、膵癌、乳癌、メラノーマ、肝癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、頭頸部癌、食道癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫などを挙げることができるが、CD98を発現している癌細胞由来の癌であればこれらに限定されない。
[0204]
 本発明に用いられるCD98抗体または本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、自己免疫疾患を治療するための医薬組成物、または、移植に対する拒絶反応を抑制するための医薬組成物の有効成分として使用することができる。
[0205]
 本発明の抗体-薬物コンジュゲートを含有する医薬組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ウシ、ブタなど、好ましくはヒト)に投与される場合には、全身的または局所的に、好ましくは非経口で投与され得る。
[0206]
 非経口の投与経路として、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下の経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与方法としては、例えば、注入、ボーラス注射などが挙げられるが、好ましくは、注入である。
[0207]
 本発明の医薬組成物は、投与方法に応じて適切な形態を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法によって調製できる。
[0208]
 例えば、本発明の抗体-薬物コンジュゲートと、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」などに記載されている、滅菌した液体(例えば、水および油(石油、動物、植物、または合成起源の油(例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)を含む))、食塩水溶液、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液などの溶媒、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤などの添加剤などを混合して本発明の医薬組成物を調製することができる。
[0209]
 本発明の医薬組成物はまた、可溶化剤、注射部位での疼痛を和らげるための局所麻酔剤(例えば、リグノカイン)などを含有してもよい。本発明の医薬組成物は、有効成分と溶媒などを別個の容器に入れた態様で供給されてもよい。また、本発明の医薬組成物が注入によって投与される場合、例えば、有効成分および滅菌の製薬グレードの水または食塩水を含む注入ボトルで投与されてもよい。本発明の医薬組成物が注射によって投与される場合、投与前に有効成分を注射用滅菌水または食塩水と混合して投与されてもよい。
[0210]
 本発明の医薬組成物は、抗CD98抗体-薬物コンジュゲートおよび少なくとも一つのこれ以外の癌治療剤を含んでもよい。本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、他の癌治療剤と共に投与することもでき、これによって抗癌効果を増強させることができる。このような目的で使用される他の抗癌剤は、抗体-薬物コンジュゲートと同時に、別々に、あるいは連続して個体に投与されてもよいし、それぞれの投与間隔を変えて投与してもよい。このような癌治療剤としては、carboplatin、cisplatin、gemcitabine、irinotecan(CPT-11)、paclitaxel、pemetrexed、sorafenib、vinblastin、国際公開第WO2003/038043号パンフレットに記載の薬剤、更にLH-RHアナログ(リュープロレリン、ゴセレリンなど)、エストラムスチン・フォスフェイト、エストロジェン拮抗薬(タモキシフェン、ラロキシフェンなど)、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンなど)などを挙げることができるが、抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはない。
[0211]
 本発明の医薬組成物は、凍結乾燥製剤または液状製剤として提供されてもよい。凍結乾燥製剤として提供される場合には、この分野において使用される適当な製剤添加物が含まれる製剤であってもよい。また液状製剤においても同様にして、この分野において使用される適当な製剤添加物が含まされる製剤であってもよい。
[0212]
 本発明の医薬組成物の組成および有効成分の濃度は投与方法によっても変化するが、本発明の医薬組成物に含まれる抗CD98抗体-薬物コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートの抗原に対する親和性、すなわち、抗原に対する解離定数(Kd値)の点において、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、少量の投与量であっても薬効を発揮させことができる。したがって、抗体-薬物コンジュゲートの投与量の決定に当たっては、抗体-薬物コンジュゲートと抗原との親和性の状況に基づいて投与量を設定することもできる。本発明の抗体-薬物コンジュゲートをヒトに対して投与する際には、例えば、約0.001~100mg/kgを1回あるいは1~180日間に1回の間隔で複数回投与すればよい。
[0213]
 以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。また、本明細書において、特に記載のない試薬、溶媒および出発材料は、市販の供給源から容易に入手可能である。
実施例
[0214]
(実施例1)モノクローナル抗体作製および抗体スクリーニング
(1-1)免疫
 4~6週齢のBALB/cAnNCrlCrljマウス(日本チャールス・リバー社)を使用した。0日目、7日目、15日目および24日目にベルセン(ライフテクノロジー社)で剥がした5×10 6個のMCF7細胞(ATCC HTB-22)をPBSに懸濁して背部皮下に投与した。31日目に同じ細胞を5×10 6個静脈投与し、同日に脾臓を採取しハイブリドーマ作製に用いた。
[0215]
(1-2)ハイブリドーマの作製
 脾臓細胞とマウスミエローマP3X63Ag8U.1細胞(ATCC CRL-1597)とをPEG4000(IBL社)を用いて細胞融合しハイブリドーマを作製した。その結果、MCF7細胞免疫マウスより1760クローンのハイブリドーマを樹立した。得られたハイブリドーマ培養上清を用いて抗体産生ハイブリドーマのCDCアッセイによるスクリーニングを行った。
[0216]
(1-3)ハイブリドーマのスクリーニング(CDCアッセイ)
 5000細胞/80μLとなるようにMCF7細胞を10%ウシ胎児血清(FBS)含有RPMI培地(ライフテクノロジー社)を用いて希釈し、96well plateに80μL/well添加し、一晩培養した。ハイブリドーマ培養上清を、細胞を播いたplateに20μL/well添加し、4℃で1時間静置した。ウサギ補体の希釈凍結乾燥品(Cedarlane社)に1バイアルあたり1mLの滅菌水を氷上で添加した。1分間静置、混合したのち、19mLの0.1% BSA/RPMI1640培地(BSA Sigma社)と混合した。ハイブリドーマ培養上清を添加したplateに同補体希釈液を20μL/well添加し37℃で1時間反応を行った。
[0217]
 プレートを室温で30分間放置し、室温に戻した。CellTiter-Glo試薬(Promega社)を各wellに120μL添加し、室温で10分間反応した。プレートリーダー(ARVO HTS Prekin Elmer社)にて発光量を測定した。発光量の少ないwellは、補体依存的な細胞死を誘導したと判断された。そのような補体依存的な細胞死を誘導した培養上清を産生するハイブリドーマを選択した。その結果、15クローンのスクリーニング陽性ハイブリドーマクローンが得られた。
[0218]
(実施例2)ハイブリドーマからの抗体の調製
 プリスタン(2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン;0.5ml)を腹腔内投与して予め2週間飼育した8~10週齢のマウスまたはヌードマウス(BALB/cヌードマウス、雌、日本クレア社)に、実施例1で得られたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ1~2×10 6細胞をPBSに懸濁し、0.5mLを腹腔内に注射した。10~21日後、ハイブリドーマを腹水癌化させた後に腹水を採取した。得られた腹水を遠心分離して固形分を除去後、2倍以上のPBSを添加後、MabSelect Sure HiTrap 5mlカラム(GE Healthcare Life Sciences社)による精製を行い、中性域でカラムに結合したIgG画分を回収し、精製モノクローナル抗体とした。
[0219]
(実施例3)ハイブリドーマが産生する抗体が結合する抗原の同定
(3-1)結合特異性
(3-1-1)抗原遺伝子発現細胞の調整
 CD98をコードするSLC3A2遺伝子発現ベクターを市販のSLC3A2遺伝子クローン(IOH-4673、ライフテクノロジー社)およびGateway発現ベクターpDEST40(ライフテクノロジー社)を用いて作製した。
[0220]
 NIH-3T3細胞(ATCC CRL-1658)を1×10 5細胞/mlになるよう10%ウシ胎児血清(FBS)含有RPMI培地(ライフテクノロジー社)中で調整し、pcDNA-DEST40-SLC3A2をNIH-3T3細胞にFUGENE6(ロシュアプライドサイエンス社)を用いてトランスフェクションし、37℃、5% CO 2の条件下で更に2晩培養した。同様にプラスミドを含まないFUGEN6で処理した細胞をCD98陰性コントロールとして用いた。トランスフェクションされたNIH-3T3細胞をトリプシン処理し、10% FBS含有RPMIで細胞を洗浄した後、5% FBS含有PBSに懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
[0221]
(3-1-2)フローサイトメトリー解析
 3-1-1で調製した細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、各ベクターをトランスフェクトしたNIH-3T3細胞に対しハイブリドーマ培養上清または精製抗体を加えて懸濁し、4℃で0.5~1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSで400倍に希釈したFluorescein-conjugated goat IgG fraction to mouse IgG(Whole Molecule;ICN Pharmaceuticals社、#55493)を加えて懸濁し、4℃で0.5~1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、2μg/ml 7-aminoactinomycin D(インビトロジェン(Molecular Probes)社)を含む5% FBS含有PBSに再懸濁し、フローサイトメーター(FC500:BeckmanCoulter社)で検出を行った。データ解析はFlowjo(TreeStar社)で行った。7-aminoactinomycin D陽性の死細胞をゲートで除外した後、生細胞のFITC蛍光強度のヒストグラムを作成した。陰性コントロールであるプラスミドを導入していないNIH-3T3細胞の蛍光強度ヒストグラムに対してCD98発現NIH-3T3細胞のヒストグラムが強蛍光強度側にシフトしているサンプル(ハイブリドーマ培養上清または精製抗体)を産生するハイブリドーマを抗CD98抗体産生ハイブリドーマとして取得した。このハイブリドーマをCD98ハイブリドーマM23と呼び、CD98ハイブリドーマM23が産生する抗体を、M23抗体またはM23と呼ぶ。
[0222]
(3-2)エピトープの決定
(3-2-1)抗原遺伝子発現細胞の調製
 インテグリンαvおよびインテグリンβ3をHEK293細胞内に安定形質移入した細胞株293α細胞を2.6×10 6細胞/dishになるようコラーゲンコートした100 mm dish(AGC TECHNO GLASS 社製)に播種し、10% FBS含有DMEM培地中で37℃、5% CO 2の条件下で一晩培養した。翌日、一部の配列をマウスのものと入れ替えたpcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse206-271、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse262-331、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse322-401、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse392-471、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse462-541、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse532-631、マウスCD98発現ベクターであるpGEM-T-mouseCD98をそれぞれ293α細胞にLipofectamine 2000 Transfection Reagentを用いて導入し、37℃、5% CO 2の条件下でさらに一晩培養した。翌日、発現ベクター導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、3% FBS含有PBSで細胞を洗浄した後、3% FBS含有PBSに懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
[0223]
(3-2-2)フローサイトメトリー解析
 3-2-1で調製した細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、2×10 5細胞の発現ベクター導入細胞に対し、M23抗体、ポジティブコントロールとしてMonoclonal ANTI-FLAG M2 antibody produced in mouse、ネガティブコントロールとしてMouse IgG2Aをそれぞれ10μg/mLになるように添加して懸濁し、4℃で15分間静置した。3% FBS含有PBSで1回洗浄した後、3% FBS含有PBSで500倍に希釈したAnti-Mouse IgG FITC conjugateを加えて懸濁し、4℃で20分間静置した。3% FBS含有PBSで洗浄した後、3% FBS含有PBSに再懸濁し、フローサイトメーター(BD FACSCant II:BD Biosciences社)で検出を行った。データ解析はFlowjoで行った。FITC蛍光強度のヒストグラムを作成し、ネガティブコントロールであるMouse IgG2Aの蛍光強度ヒストグラムが未染色のものに対してシフトせず、M23抗体のヒストグラムが発現ベクター非導入細胞対して発現ベクター導入細胞で強蛍光強度側にシフトしている場合を、結合すると判断した。その結果M23抗体は、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse206-271、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse262-331、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse322-401、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse392-471もしくはpcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse532-631導入細胞には結合し、pcDNA3.1-FLAG-hCD98-mouse462-541導入細胞には結合しなかった。したがって、M23抗体は、配列表の配列番号38に示される、ヒトCD98の462乃至541番目のアミノ酸配列のうち、マウスCD98と異なる配列を認識することが示された(図13)。なお、各抗原が細胞膜上に発現していることはポジティブコントロールの抗FLAG抗体を用いて確認され(図14)、M23がマウスCD98に結合しないことも確認された(図13)。
[0224]
(実施例4)M23抗体遺伝子の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定とキメラM23抗体の作製
[0225]
(4-1)M23抗体遺伝子の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
(4-1-1)CD98ハイブリドーマM23からのmRNAの調製
 M23抗体の可変領域を含むcDNAを増幅するため、CD98ハイブリドーマM23よりmRNA Isolation kit(Roche applied science社)を用いてmRNAを調製した。
[0226]
(4-1-2)cDNA(5’-RACE-Ready cDNA)の合成
 cDNA(5’-RACE-Ready cDNA)の合成は4-1-1で調製したmRNAの100ngとSMARTer RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社)を用いて実施した。
[0227]
(4-1-3)5’-RACE PCRによるM23抗体の重鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
 重鎖遺伝子の可変領域のcDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして、UPM(Universal Primer A Mix:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)、および5’-GGCATCCTAGAGTCACCGAGGAGCCAGTTG-3’(配列番号25:プライマーmG2aVR1)の配列を有するオリゴヌクレオチドを用いた。UPMはSMARTer RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社)に付属のものを使用し、mG2aVR1はデータベースのマウス重鎖(IgG2a)の定常領域の配列から設計した。
[0228]
 このプライマーの組み合わせと、4-1-2で合成したcDNA(5’-RACE-Ready cDNA)を鋳型とした5’-RACE PCRによりM23抗体の重鎖の可変領域を含むcDNAを増幅した。PCRは、PolymeraseとしてKOD-Plus-(TOYOBO社)を用い、SMARTer RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社)のマニュアルに従い、タッチダウンPCRプログラムで実施した。
[0229]
 5’-RACE PCRで増幅した重鎖の可変領域を含むcDNAをMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製後、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen社)を用いてクローニングし、クローニングした重鎖の可変領域を含むcDNAのヌクレオチド配列のシークエンス解析を実施した。シークエンスプライマーとして、データベースのマウス重鎖の定常領域の配列から設計した5’-GGCATCCTAGAGTCACCGAGGAGCCAGTTG-3’(配列番号25:プライマーmG2aVR1)の配列を有するオリゴヌクレオチド、および、NUP(Nested Universal Primer A:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)を用いた。
[0230]
 シークエンス解析は遺伝子配列解析装置(ABI PRISM 3700 DNA Analyzer;Applied Biosystems社、または、Applied Biosystems 3730xl Analyzer;Applied Biosystems社)を用いて実施し、シークエンス反応は、GeneAmp 9700(Applied Biosystems社)を用いた。
[0231]
 決定されたM23抗体の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号1に示し、アミノ酸配列を配列番号2に示した。
[0232]
(4-1-4)5’-RACE PCRによるM23抗体の軽鎖可変領域を含むcDNAの増幅と配列の決定
 M23抗体の軽鎖遺伝子の可変領域のcDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして、UPM(Universal Primer A Mix:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)および5’-AGTCCAACTGTTCAGGACGCCATTTTGTCG-3’(配列番号26:プライマーmKVR2)の配列を有するオリゴヌクレオチドを用いた。UPMはSMARTer RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社)に付属のものを使用し、mKVR2はデータベースのマウス軽鎖の定常領域の配列から設計した。
[0233]
 このプライマーの組み合わせと、4-1-2で合成したcDNA(5’-RACE-Ready cDNA)を鋳型とした5’-RACE PCRによりM23抗体の軽鎖の可変領域を含むcDNAを増幅した。
[0234]
 PCRは、PolymeraseとしてKOD-Plus-(TOYOBO社)を用い、SMARTer RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社)のマニュアルに従い、タッチダウンPCRプログラムで実施した。
[0235]
 5’-RACE PCRで増幅した軽鎖の可変領域を含むcDNAをMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製後、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen社)を用いてクローニングし、クローニングした軽鎖の可変領域を含むcDNAのヌクレオチド配列のシークエンス解析を実施した。シークエンスプライマーとして、データベースのマウス軽鎖の定常領域の配列から設計した5’-AGTCCAACTGTTCAGGACGCCATTTTGTCG-3’(配列番号26:プライマーmKVR2)の配列を有するオリゴヌクレオチド、および、NUP(Nested Universal Primer A:SMARTer RACE cDNA Amplification Kitに付属)を用いた。
[0236]
 シークエンス解析は遺伝子配列解析装置(ABI PRISM 3700 DNA Analyzer;Applied Biosystems社、または、Applied Biosystems 3730xl Analyzer;Applied Biosystems社)を用いて実施し、シークエンス反応は、GeneAmp 9700(Applied Biosystems社)を用いた。
[0237]
 決定されたM23抗体の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号3に示し、アミノ酸配列を配列番号4に示した。
[0238]
(4-2)キメラM23抗体の作製
(4-2-1)キメラおよびヒト化抗体軽鎖発現ベクターpCMA-LKの構築
 プラスミドpcDNA3.3-TOPO/LacZ(Invitrogen社)を制限酵素XbaIおよびPmeIで消化して得られる約5.4kbのフラグメントと、配列番号5に示すヒトκ鎖分泌シグナルおよびヒトκ鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片をIn-Fusion Advantage PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて結合して、pcDNA3.3/LKを作製した。
[0239]
 pcDNA3.3/LKを鋳型として、下記プライマーセットでPCRを行い、得られた約3.8kbのフラグメントをリン酸化後セルフライゲーションすることによりCMVプロモーターの下流にシグナル配列、クローニングサイト、およびヒトκ鎖定常領域を持つ、キメラおよびヒト化抗体軽鎖発現ベクターpCMA-LKを構築した。
プライマーセット
5’-TATACCGTCGACCTCTAGCTAGAGCTTGGC-3’(配列番号27:プライマー 3.3-F1)
5’-GCTATGGCAGGGCCTGCCGCCCCGACGTTG-3’(配列番号28:プライマー 3.3-R1)
[0240]
(4-2-2)キメラおよびヒト化抗体IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1の構築
 pCMA-LKをXbaIおよびPmeIで消化してκ鎖分泌シグナルおよびヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片と、配列番号6に示すヒト重鎖分泌シグナル配列およびヒトIgG1定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片をIn-Fusion Advantage PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて結合して、CMVプロモーターの下流にシグナル配列、クローニングサイトおよびヒトIgG1重鎖定常領域をもつキメラおよびヒト化抗体IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1を構築した。
[0241]
(4-2-3)キメラM23抗体重鎖発現ベクターの構築
 4-1-3で得られたM23抗体の重鎖の可変領域を含むcDNAをテンプレートとして、KOD-Plus-(TOYOBO社)と下記のプライマーセットで重鎖の可変領域をコードするcDNAを含むDNA断片を増幅し、キメラおよびヒト化IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1を制限酵素BlpIで切断した箇所にIn-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて挿入することにより、キメラM23抗体重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-G1/cM23」と命名した。キメラM23抗体重鎖のヌクレオチド配列を配列番号7に、アミノ酸配列を配列番号8に示した。配列番号7のヌクレオチド配列および配列番号8のアミノ酸配列は、図1にも記載されている。
[0242]
キメラM23抗体重鎖用プライマーセット
5’-CCAGATGGGTGCTGAGCCAGGTCCAGCTGCAGCAGTCTGGAGCTGAG-3’(配列番号29:プライマー M23H-F)
5’-GGGCCCTTGGTGGAGGCTGCAGAGACAGTGACCAGAGTCCCTTGGCC-3’(配列番号30:プライマー M23H-R)
[0243]
(4-2-4)キメラM23抗体軽鎖発現ベクターの構築
 4-1-4で得られたM23抗体の軽鎖の可変領域を含むcDNAをテンプレートとして、KOD-Plus-(TOYOBO社)と下記のプライマーセットで軽鎖の可変領域をコードするcDNAを含むDAN断片を増幅し、キメラおよびヒト化抗体軽鎖発現汎用ベクターpCMA-LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて挿入することにより、キメラM23抗体の軽鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-LK/cM23」と命名した。キメラM23抗体の軽鎖のヌクレオチド配列を配列番号9に、アミノ酸配列を配列番号10に示した。配列番号9のヌクレオチド配列および配列番号10のアミノ酸配列は、図2にも記載されている。
[0244]
キメラM23抗体軽鎖用プライマーセット
5’-ATCTCCGGCGCGTACGGCGACATTGTGATGTCACAGTCTCCATCCTCC-3’(配列番号31:プライマー M23L-F)
5’-GGAGGGGGCGGCCACAGCCCGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCCTCC-3’(配列番号32:プライマー M23L-R)
[0245]
(4-2-5)キメラM23抗体の生産
 マニュアルに従い、FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を継代培養した。対数増殖期の1.2×10 9個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を3L Fernbach Erlenmeyer Flask(CORNING社)に播種し、FreeStyle293 expression medium (Invitrogen社)で希釈して1.0×10 6細胞/mlに調製したのちに、37℃、8% CO 2インキュベータ内で90rpmで一時間振とう培養した。Polyethyleneimine(Polyscience社、#24765)3.6mgをOpti-Pro SFM(Invitrogen社)20mlに溶解し、次にPureLink HiPure Plasmidキット(Invitrogen社)を用いて調製した軽鎖発現ベクター(0.8mg)および重鎖発現ベクター(0.4mg)を20mlのOpti-Pro SFM(Invitrogen社)に添加した。Polyethyleneimine/Opti-Pro SFM混合液20mlに、発現ベクター/Opti-Pro SFM混合液20mlを加えて穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8% CO 2インキュベータで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter(ADVANTEC #CCS-045-E1H)でろ過した。pCMA-G1/cM23とpCMA-LK/cM23との組合せによって取得されたキメラM23抗体を「cM23抗体」と命名した。
[0246]
(4-2-6)cM23抗体の精製
 4-2-5で得られた培養上清から抗体を、rProtein Aアフィニティークロマトグラフィー(4-6℃下)とセラミックハイドロキシアパタイト(室温下)を用いて2段階で精製した。rProtein Aアフィニティークロマトグラフィー精製後とセラミックハイドロキシアパタイト精製後のバッファー置換工程は4~6℃下で実施した。最初に、培養上清を、PBSで平衡化したMabSelectSuRe(GE Healthcare Bioscience社、HiTrapカラム)にアプライした。培養上清がカラムに全て入ったのち、カラム容量2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBSに置換した後、5mMリン酸ナトリウム/50mM MES/pH7.0のバッファーで5倍希釈した抗体溶液を、5mM NaPi/50mM MES/30mM NaCl/pH7.0のバッファーで平衡化されたセラミックハイドロキシアパタイトカラム(日本バイオラッド、Bio-Scale CHT Type-I Hydroxyapatite Column)にアプライした。塩化ナトリウムによる直線的濃度勾配溶出を実施し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりHBSor(25mM ヒスチジン/5% ソルビトール、pH6.0)への液置換を行った。最後にCentrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K、Sartorius社、4℃下)にて濃縮し、IgG濃度を10mg/ml以上に調製し精製サンプルとした。
[0247]
(実施例5)マウス抗CD98モノクローナル抗体のヒト化抗体の設計
(5-1)M23抗体のヒト化バージョンの設計
(5-1-1)M23抗体の可変領域の分子モデリング
 M23の可変領域の分子モデリングを、相同性モデリングとして公知の方法(Methods in Enzymology, 203, 121-153(1991))によって実行した。Protein Data Bank(Nuc. Acid Res., 35, D301-D303(2007))に登録されるヒト免疫グロブリンの可変領域の1次配列(X線結晶構造から誘導される三次元構造が入手可能である)を、実施例4で決定したM23の可変領域と比較した。結果として、1MJUが、M23抗体の重鎖の可変領域に対して同様にフレームワーク中に欠損がある抗体の中で、最も高い配列相同性を有するとして選択された。また、3MBXが、M23抗体の軽鎖の可変領域に対して最も高い配列相同性を有するとして選択された。フレームワーク領域の三次元構造は、M23抗体の重鎖および軽鎖に対応する1MJUおよび3MBXの座標を組み合わせて、「フレームワークモデル」を得ることによって作製された。次いで、それぞれのCDRについての代表的なコンホメーションがフレームワークモデルに組み込まれた。
[0248]
 最後に、エネルギーの点でM23抗体の可変領域の可能性のある分子モデルを得るために、不利な原子間接触を除くためのエネルギー計算を行った。上記手順を、市販のタンパク質立体構造解析プログラムDiscoveryStudio(Accelrys社)を用いて行った。
[0249]
(5-1-2)ヒト化M23抗体に対するアミノ酸配列の設計
 ヒト化M23抗体の構築を、CDRグラフティング(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 86, 10029-10033(1989))として公知の方法によって行った。アクセプター抗体は、フレームワーク領域内のアミノ酸相同性に基づいて選択された。M23抗体のフレームワーク領域の配列を、抗体のアミノ酸配列のKabatデータベース(Nuc. Acid Res., 29, 205-206(2001))の全てのヒトフレームワークと比較し、結果として、HuMc3抗体がフレームワーク領域についての80%の配列相同性に起因して、アクセプターとして選択された。HuMc3についてのフレームワーク領域のアミノ酸残基を、M23抗体についてのアミノ酸残基と整列させ、異なるアミノ酸が使用される位置を同定した。これらの残基の位置は、上で構築されたM23抗体の三次元モデルを使用して分析され、そしてアクセプター上にグラフティングされるべきドナー残基が、Queen et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86, 10029-10033(1989))によって与えられる基準によって選択された。選択されたいくつかのドナー残基をアクセプター抗体に移入することによって、ヒト化M23抗体の配列を以下の実施例に記載されるように構築した。
[0250]
(5-2)M23抗体重鎖のヒト化
(5-2-1)hM23-H1タイプ重鎖
 配列番号8に示されるcM23抗体重鎖のアミノ酸番号24(グルタミン)をバリンに、アミノ酸番号30(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号31(バリン)をリシンに、アミノ酸番号32(アルギニン)をリシンに、アミノ酸番号35(スレオニン)をアラニンに、アミノ酸番号57(リシン)をアルギニンに、アミノ酸番号59(アルギニン)をアラニンに、アミノ酸番号67(イソロイシン)をメチオニンに、アミノ酸番号86(リシン)をアルギニンに、アミノ酸番号87(アラニン)をバリンに、アミノ酸番号89(ロイシン)をイソロイシンに、アミノ酸番号93(リシン)をスレオニンに、アミノ酸番号95(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号101(グルタミン)をグルタミン酸に、アミノ酸番号106(スレオニン)をアルギニンに、アミノ酸番号108(アスパラギン酸)をグルタミン酸に、アミノ酸番号110(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号111(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号114(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号135(アラニン)をセリンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化M23抗体重鎖を「hM23-H1タイプ重鎖」と命名した。
[0251]
 hM23-H1タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列番号12に記載されている。配列番号12のアミノ酸配列の1~19番目のアミノ残基からなる配列、20~135番目のアミノ酸残基からなる配列、136~465番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号12のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号11に記載されている。配列番号11のヌクレオチド配列の1~57番目のヌクレオチドからなる配列、58~405番目のヌクレオチドからなる配列、406~1395番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号11のヌクレオチド配列および配列番号12のアミノ酸配列は、図3にも記載されている。
[0252]
(5-2-2)hM23-H2タイプ重鎖
 配列番号8に示されるcM23重鎖のアミノ酸番号30(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号31(バリン)をリシンに、アミノ酸番号32(アルギニン)をリシンに、アミノ酸番号35(スレオニン)をアラニンに、アミノ酸番号57(リシン)をアルギニンに、アミノ酸番号59(アルギニン)をアラニンに、アミノ酸番号67(イソロイシン)をメチオニンに、アミノ酸番号89(ロイシン)をイソロイシンに、アミノ酸番号95(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号101(グルタミン)をグルタミン酸に、アミノ酸番号108(アスパラギン酸)をグルタミン酸に、アミノ酸番号110(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号111(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号114(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号135(アラニン)をセリンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化M23抗体重鎖を「hM23-H2タイプ重鎖」と命名した。
[0253]
 hM23-H2タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列番号14に記載されている。配列番号14のアミノ酸配列の1~19番目のアミノ残基からなる配列、20~135番目のアミノ酸残基からなる配列、136~465番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号14のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号13に記載されている。配列番号13のヌクレオチド配列の1~57番目のヌクレオチドからなる配列、58~405番目のヌクレオチドからなる配列、406~1395番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号13のヌクレオチド配列および配列番号14のアミノ酸配列は、図4にも記載されている。
[0254]
(5-3)M23抗体軽鎖のヒト化
(5-3-1)hM23-L1タイプ軽鎖
 配列番号10に示されるcM23抗体軽鎖のアミノ酸番号25(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号29(セリン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号35(バリン)をロイシンに、アミノ酸番号38(リシン)をアルギニンに、アミノ酸番号39(バリン)をアラニンに、アミノ酸番号41(メチオニン)をイソロイシンに、アミノ酸番号42(スレオニン)をアスパラギンに、アミノ酸番号69(セリン)をプロリンに、アミノ酸番号89(スレオニン)をセリンに、アミノ酸番号103(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号104(バリン)をロイシンに、アミノ酸番号109(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号126(グリシン)をグルタミンに、アミノ酸番号130(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号135(アラニン)をスレオニンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化M23抗体軽鎖を「hM23-L1タイプ軽鎖」と命名した。
[0255]
 hM23-L1タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号16に記載されている。配列番号16のアミノ酸配列の1~20番目のアミノ残基からなる配列、21~135番目のアミノ酸残基からなる配列、136~240番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号16のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号15に記載されている。配列番号15のヌクレオチド配列の1~60番目のヌクレオチドからなる配列、61~405番目のヌクレオチドからなる配列、406~720番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号15のヌクレオチド配列および配列番号16のアミノ酸配列は、図5にも記載されている。
[0256]
(5-3-2)hM23-L2タイプ軽鎖
 配列表の配列番号10に示されるcM23抗体軽鎖のアミノ酸番号25(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号29(セリン)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号35(バリン)をロイシンに、アミノ酸番号38(リシン)をアルギニンに、アミノ酸番号39(バリン)をアラニンに、アミノ酸番号41(メチオニン)をイソロイシンに、アミノ酸番号42(スレオニン)をアスパラギンに、アミノ酸番号69(セリン)をプロリンに、アミノ酸番号89(スレオニン)をセリンに、アミノ酸番号103(アスパラギン)をセリンに、アミノ酸番号104(バリン)をロイシンに、アミノ酸番号109(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号130(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号135(アラニン)をスレオニンに、置き換えることを伴い設計されたヒト化M23抗体軽鎖を「hM23-L2タイプ軽鎖」と命名した。
[0257]
 hM23-L2タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号18に記載されている。配列番号18のアミノ酸配列の1~20番目のアミノ残基からなる配列、21~135番目のアミノ酸残基からなる配列、136~240番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号18のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号17に記載されている。配列番号17のヌクレオチド配列の1~60番目のヌクレオチドからなる配列、61~405番目のヌクレオチドからなる配列、406~720番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号17のヌクレオチド配列および配列番号18のアミノ酸配列は、図6にも記載されている。
[0258]
(実施例6)ヒト化M23抗体発現ベクターの構築と抗体の生産
(6-1)ヒト化M23抗体の重鎖発現ベクターの構築
(6-1-1)hM23-H1タイプ重鎖発現ベクターの構築
 配列番号11に示すhM23-H1タイプ重鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号58~405に示されるhM23-H1タイプ重鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片(ヌクレオチド番号36~422)を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD-Plus-(TOYOBO社)と下記のプライマーセットでhM23-H1タイプ重鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を増幅し、キメラおよびヒト化抗体IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1を制限酵素BlpIで切断した箇所にIn-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて挿入することによりhM23-H1タイプ重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-G1/hM23-H1」と命名した。
プライマーセット
5’-AGCTCCCAGATGGGTGCTGAGC-3’(配列番号33:プライマー EG-Inf-F)
5’-GGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGC-3’(配列番号34:プライマー EG1-Inf-R)
[0259]
(6-1-2)hM23-H2タイプ重鎖発現ベクターの構築
 配列番号13に示すhM23-H2タイプ重鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号58~405に示されるhM23-H2タイプ重鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片(ヌクレオチド番号36~422)を合成し(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)、6-1-1と同様の方法でhM23-H2タイプ重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-G1/hM23-H2」と命名した。
[0260]
(6-2)ヒト化M23抗体の軽鎖発現ベクターの構築
(6-2-1)hM23-L1タイプ軽鎖発現ベクターの構築
 配列番号15に示すhM23-L1タイプ軽鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号61~405に示されるhM23-L1タイプ軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片(ヌクレオチド番号38~420)を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD-Plus-(TOYOBO社)と下記のプライマーセットでhM23-L1タイプ軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を増幅し、キメラおよびヒト化抗体軽鎖発現ベクターpCMA-LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて挿入することによりhM23-L1タイプ軽鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-LK/hM23-L1」と命名した。
プライマーセット
5’-CTGTGGATCTCCGGCGCGTACGGC-3’(配列番号35:プライマー CM-LKF)
5’-GGAGGGGGCGGCCACCGTACG-3’(配列番号36:プライマー KCL-Inf-R)
[0261]
(6-2-2)hM23-L2タイプ軽鎖発現ベクターの構築
 配列番号17に示すhM23-L2タイプ軽鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号61~405に示されるhM23-L2タイプ軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片(ヌクレオチド番号38~420)を合成し(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)、6-2-1と同様の方法でhM23-L2タイプ軽鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-LK/hM23-L2」と命名した。
[0262]
(6-3)ヒト化M23抗体の生産と精製
(6-3-1)ヒト化M23抗体の生産
 ヒト化M23抗体を4-2-5と同様の方法で生産した。pCMA-G1/hM23-H1とpCMA-LK/hM23-L1との組合せによって取得されたヒト化M23抗体を「hM23-H1L1」、pCMA-G1/hM23-H1とpCMA-LK/hM23-L2との組合せによって取得されたヒト化M23抗体を「hM23-H1L2」、およびpCMA-G1/hM23-H2とpCMA-LK/hM23-L2との組合せによって取得されたヒト化M23抗体を「hM23-H2L2」と命名した。
[0263]
(6-3-2)ヒト化M23抗体の精製
 6-3-1で得られた培養上清から抗体を4-2-6と同様の方法で精製した。
[0264]
(実施例7)hM23-H1L1 ADC(1)の作製
[0265]
[化8]


[0266]
工程1:tert-ブチル(4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)カーバメート
 4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸(0.237g、1.13mmoL)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.130g、1.13mmoL)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.216g、1.13mmoL)を加えて1時間撹拌した。得られた混合物をエキサテカンのメシル酸塩(0.500g、0.94mmoL)およびトリエチルアミン(0.157mL、1.13mmoL)を加えたN,N-ジメチルホルムアミド溶液(10mL)に滴下し、室温にて一日間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=8:2(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.595g、定量的)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.87(3H,t,J=7.2Hz),1.31(9H,s),1.58(1H,t,J=7.2Hz),1.66(2H,t,J=7.2Hz),1.89-1.82(2H,m),2.12-2.21(3H,m),2.39(3H,s),2.92(2H,t,J=6.5Hz),3.17(2H,s),5.16(1H,d,J=19.2Hz),5.24(1H,d,J=18.8Hz),5.42(2H,s),5.59-5.55(1H,m),6.53(1H,s),6.78(1H,t,J=6.3Hz),7.30(1H,s),7.79(1H,d,J=11.0Hz),8.40(1H,d,J=8.6Hz).
MS(APCI)m/z:621(M+H) +.
[0267]
工程2:4-アミノ-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]ブタンアミドトリフルオロ酢酸塩
 上記工程1で得た化合物(0.388g、0.61mmoL)をジクロロメタン(9mL)に溶解した。トリフルオロ酢酸(9mL)を加え4時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(0.343g、定量的)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.87(3H,t,J=9.4Hz),1.90-1.80(4H,m),2.15-2.13(2H,m),2.27(2H,t,J=7.0Hz),2.41(3H,s),2.87-2.82(2H,m),3.18(2H,dd,J=8.0,3.7Hz)5.15(1H,d,J=19.2Hz),5.26(1H,d,J=18.8Hz),5.43(2H,s),5.61-5.56(1H,m),6.57(1H,s),7.32(1H,s),7.72(3H,brs),7.82(1H,d,J=10.9Hz),8.55(1H,d,J=8.6Hz).
MS(APCI)m/z:521(M+H) +.
[0268]
工程3:N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)グリシンアミド
 N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニルグリシン(0.081g、0.19mmoL)をジクロロメタン(3mL)に溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.021g、0.19moL)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.036g、0.19mmoL)を加え3.5時間撹拌した。得られた混合物を上記工程2で得た化合物(0.080g、0.15mmoL)を加えたN,N-ジメチルホルムアミド溶液(1.5mL)に滴下し、室温にて4時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=8:2(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.106g、73%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.87(3H,t,J=7.4Hz),1.36(9H,s),1.71(2H,m),1.86(2H,t,J=7.8Hz),2.15-2.19(4H,m),2.40(3H,s),2.77(1H,dd,J=12.7,8.8Hz),3.02(1H,dd,J=14.1,4.7Hz),3.08-3.11(2H,m),3.16-3.19(2H,m),3.54(2H,d,J=5.9Hz),3.57-3.77(4H,m),4.46-4.48(1H,m),5.16(1H,d,J=19.2Hz),5.25(1H,d,J=18.8Hz),5.42(2H,s),5.55-5.60(1H,m),6.53(1H,s),7.00(1H,t,J=6.3Hz),7.17-7.26(5H,m),7.31(1H,s),7.71(1H,t,J=5.7Hz),7.80(1H,d,J=11.0Hz),7.92(1H,t,J=5.7Hz),8.15(1H,d,J=8.2Hz),8.27(1H,t,J=5.5Hz),8.46(1H,d,J=8.2Hz).
MS(APCI)m/z:939(M+H) +.
[0269]
工程4:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)グリシンアミドトリフルオロ酢酸塩
 上記工程3で得た化合物(1.97g、2.10mmoL)をジクロロメタン(7mL)に溶解した。得られた溶液にトリフルオロ酢酸(7mL)を加えて1時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、トルエンを加えて共沸し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(1.97g、99%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.87(3H,t,J=7.4Hz),1.71-1.73(2H,m),1.82-1.90(2H,m),2.12-2.20(4H,m),2.40(3H,s),2.75(1H,dd,J=13.7,9.4Hz),3.03-3.09(3H,m),3.18-3.19(2H,m),3.58-3.60(2H,m),3.64(1H,d,J=5.9Hz),3.69(1H,d,J=5.9Hz),3.72(1H,d,J=5.5Hz),3.87(1H,dd,J=16.8,5.9Hz),4.50-4.56(1H,m),5.16(1H,d,J=19.2Hz),5.25(1H,d,J=18.8Hz),5.42(2H,s),5.55-5.60(1H,m),7.17-7.27(5H,m),7.32(1H,s),7.78-7.81(2H,m),7.95-7.97(3H,m),8.33-8.35(2H,m),8.48-8.51(2H,m).
MS(APCI)m/z:839(M+H) +.
[0270]
工程5:N-{3-[2-(2-{[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)プロパノイル]アミノ}エトキシ)エトキシ]プロパノイル}グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)グリシンアミド
 上記工程4で得た化合物(100mg、0.119mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(1.20mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(20.8μL、0.119mmoL)および3-(2-(2-(3-マレインイミドプロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパン酸N-スクシンイミジル(50.7mg、0.119mmoL)を加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=5:1(v/v)]にて精製し、標記化合物(66.5mg、48%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.85(3H,t,J=7.4Hz),1.65-1.74(2H,m),1.77-1.90(2H,m),2.07-2.19(4H,m),2.30(2H,t,J=7.2Hz),2.33-2.36(2H,m),2.38(3H,s),2.76(1H,dd,J=13.7,9.8Hz),2.96-3.18(9H,m),3.42-3.44(4H,m),3.53-3.76(10H,m),4.43(1H,td,J=8.6,4.7Hz),5.14(1H,d,J=18.8Hz),5.23(1H,d,J=18.8Hz),5.38(1H,d,J=17.2Hz),5.42(1H,d,J=17.2Hz),5.52-5.58(1H,m),6.52(1H,s),6.98(2H,s),7.12-7.17(1H,m),7.18-7.25(4H,m),7.29(1H,s),7.69(1H,t,J=5.5Hz),7.78(1H,d,J=11.3Hz),7.98-8.03(2H,m),8.11(1H,d,J=7.8Hz),8.16(1H,t,J=5.7Hz),8.23(1H,t,J=5.9Hz),8.44(1H,d,J=9.0Hz).
MS(APCI)m/z:1149(M+H) +.
[0271]
工程6:hM23-H1L1 ADC(1)
[0272]
(i)抗体のバッファー交換及び濃度調整
 実施例6にて作製したhM23-H1L1を、Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat. No. 17-0852-02、GE Healthcare Japan Corporation)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA、5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM、pH6.0;本明細書において「PBS6.0/EDTA」という場合がある。)にて平衡化した。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをのせたのち、PBS6.0/EDTA 3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取した。この画分をAmicon Ultra(50,000 MWCO、Millipore Corporation)の容器内に抗体または抗体-薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R、Beckman Coulter, Inc.)を用いた遠心操作(2000G~3800Gにて5~20分間遠心)にて、抗体若しくは抗体-薬物コンジュゲート溶液を濃縮した。UV測定器(Nanodrop 1000、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った。その際に、280nm吸光係数(1.65mLmg -1cm -1)を用いて抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて10mg/mLに抗体濃度を調整した。
[0273]
(ii)抗体の還元
 本溶液(1.00mL)を2mLポリプロピレン製チューブに採取し、10mM TCEP(東京化成工業株式会社)水溶液(0.0315mL;抗体一分子に対して4.6当量)および1Mリン酸水素二カリウム水溶液(Nacalai Tesque, Inc.; 0.015mL)を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間インキュベートすることによって、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元した。
[0274]
(iii)抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
 上記溶液を常温水浴で10分間インキュベートした後に、上記工程5で得た化合物の10mMジメチルスルホキシド溶液(0.0579mL;抗体一分子に対して9.2当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて室温で60分間撹拌し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC(Sigma-Aldrich Co. LLC)水溶液(0.0126mL;抗体一分子に対して18.4当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
[0275]
(iv)精製
 Sorbitol(5%)を含む酢酸緩衝液(10mM、pH5.5;本明細書において「ABS」という場合がある。)にてNAP-25カラムを平衡化する。このNAP-25カラムに、抗体-薬物コンジュゲート反応水溶液(2.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ、緩衝液で溶出させるゲルろ過精製操作を計2~3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーや低分子化合物(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、N-アセチル-L-システイン(NAC)およびジメチルスルホキシド)を除いた抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を6.0mL得た。
[0276]
(v)特性評価
共通操作A:抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度および抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定(1)
 抗体-薬物コンジュゲートにおける結合薬物濃度は、抗体-薬物コンジュゲート水溶液の280nmおよび370nmの二波長におけるUV吸光度を測定したのちに下記の計算を行った。
[0277]
 ある波長における全吸光度は系内に存在する全ての吸収化学種の吸光度の和に等しい[吸光度の加成性]ことから、抗体と薬物のコンジュゲーション前後において、抗体および薬物のモル吸光係数に変化がないと仮定すると、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度および薬物濃度は、下記の関係式で示される。
A 280=A D,280+A A,280=ε D,280C D+ε A,280C A  式(1)
A 370=A D,370+A A,370=ε D,370C D+ε A,370C A  式(2)
[0278]
 ここで、A 280は280nmにおける抗体-薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A 370は370nmにおける抗体-薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A A,280は280nmにおける抗体の吸光度を示し、A A,370は370nmにおける抗体の吸光度を示し、A D,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、A D,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、ε A,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、ε A,370は370nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、ε D,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体のモル吸光係数を示し、ε D,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体のモル吸光係数を示し、C Aは抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度を示し、C Dは抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物濃度を示す。
[0279]
 ここで、ε A,280、ε A,370、ε D,280およびε D,370は、事前に用意した値(計算推定値若しくは化合物のUV測定から得られた実測値)を用いた。ε A,280は、抗体のアミノ酸配列から、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって推定した。hM23-H1L1、hM23-H1L2、hM23-H2L2の場合、そのアミノ酸配列に従って、240400を推定値として用いた。ε A,370は、ゼロとした。薬物リンカーのモル吸光係数(280nm、370nm)は、薬物リンカーをメルカプトエタノールで反応させ、マレイミド基をサクシニイミドチオエーテルに変換した化合物の実測のモル吸光係数(280nm、370nm)を用いた(本実施例では、ε D,280=4964 ε D,370=18982を使用)。抗体-薬物コンジュゲート水溶液のA 280およびA 370を測定し、これらの値を式(1)および(2)に代入して連立方程式を解くことによって、C AおよびC Dを求めた。さらにC DをC Aで除することで1抗体あたりの薬物平均結合数を求めた。
[0280]
共通操作B:抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定(2)
 抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数は、前述の共通操作Aに加え、以下の方法を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によっても求めた。
[B-1.HPLC分析用サンプルの調製(抗体-薬物コンジュゲートの還元)]
 抗体-薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合した。混合物を37℃で30分インキュベートすることで、抗体-薬物コンジュゲートのL鎖及びH鎖間のジスルフィド結合を切断したサンプルを、HPLC分析に用いた。
[B-2.HPLC分析]
 HPLC分析を、下記の測定条件にて行った。
 HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent Technologies)
 検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
 カラム:PLRP-S(2.1×50mm、8μm、1000Å;Agilent Technologies、P/N PL1912-1802)
 カラム温度:80℃
 移動相A:0.04%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
 移動相B:0.04%TFAを含むアセトニトリル溶液
 グラジエントプログラム:29%-36%(0分-12.5分)、36%-42%(12.5-15分)、42%-29%(15分―15.1分)、29%-29%(15.1分―25分)
 サンプル注入量:15μL
[B-3.データ解析]
〔B-3-1〕 薬物の結合していない抗体のL鎖(L 0)及びH鎖(H 0)に対して、薬物の結合したL鎖(薬物が一つ結合したL鎖:L 1)及びH鎖(薬物が一つ結合したH鎖:H 1、薬物が二つ結合したH鎖:H 2、薬物が三つ結合したH鎖:H 3)は、結合した薬物の数に比例して疎水性が増し保持時間が大きくなることから、L 0、L 1、H 0、H 1、H 2、H 3の順に溶出された。L 0及びH 0との保持時間比較により検出ピークをL 0、L 1、H 0、H 1、H 2、H 3のいずれかに割り当てた。
〔B-3-2〕 薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、L鎖、H鎖及び薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値の補正を行った。
[0281]
[数4]


[0282]
[数5]


[0283]
 ここで、各抗体におけるL鎖及びH鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体のL鎖及びH鎖のアミノ酸配列から推定される値を用いた。hM23-H1L1、hM23-H1L2、hM23-H2L2の場合、そのアミノ酸配列に従って、L鎖のモル吸光係数として41370を、H鎖のモル吸光係数として77810を推定値として用いた。また、薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、前述の共通操作Aで求めた実測のモル吸光係数(280nm)を用いた。
〔B-3-3〕 ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って計算した。
[0284]
[数6]


[0285]
〔B-3-4〕 抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数を、下式に従って計算した。
 薬物平均結合数=(L 0ピーク面積比×0+L 0ピーク面積比×1+H 0ピーク面積比×0+H 1ピーク面積比×1+H 2ピーク面積比×2+H 3ピーク面積比×3)/100×2
共通操作A及びBを使用して下記の特性値を得た。
[0286]
抗体濃度:1.50mg/mL、抗体収量:9.00mg(90%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.0;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.1。
[0287]
(実施例8)hM23-H1L2 ADC(1)の作製
[0288]
[化9]


[0289]
工程1:hM23-H1L2 ADC(1)
 実施例6にて作製したhM23-H1L2および実施例7工程5で得た化合物を用いて、実施例7工程6と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
[0290]
抗体濃度:1.54mg/mL、抗体収量:9.24mg(92%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.0;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.1。
[0291]
(実施例9)hM23-H2L2 ADC(1)の作製
[0292]
[化10]


[0293]
工程1:hM23-H2L2 ADC(1)
 実施例6にて作製したhM23-H2L2および実施例7工程5で得た化合物を用いて、実施例7工程6と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
[0294]
抗体濃度:1.45mg/mL、抗体収量:8.70mg(87%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.0;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.1。
[0295]
(実施例10)hM23-H1L1 ADC(2)の作製
[0296]
[化11]


[0297]
工程1:({N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシル}アミノ)メチルアセテート
 N-9-フルオレニルメトキシカルボニルグリシルグリシン(4.33g、12.2mmol)、テトラヒドロフラン(120ml)およびトルエン(40.0ml)からなる混合物に、ピリジン(1.16ml、14.7mmol)および四酢酸鉛(6.84g、14.7mmol)を加え、5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却した後、不溶物をセライト濾過によって除き、減圧下濃縮した。得られた残留物を酢酸エチルに溶解し、水および飽和食塩水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=9:1(v/v)~酢酸エチル]にて精製し、標記化合物(3.00g、67%)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl 3)δ:2.07(3H,s),3.90(2H,d,J=5.1Hz),4.23(1H,t,J=7.0Hz),4.46(2H,d,J=6.6Hz),5.26(2H,d,J=7.0Hz),5.32(1H,brs),6.96(1H,brs),7.32(2H,t,J=7.3Hz),7.41(2H,t,J=7.3Hz),7.59(2H,d,J=7.3Hz),7.77(2H,d,J=7.3Hz).
[0298]
工程2:ベンジル [({N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシル}アミノ)メトキシ]アセテート
 上記工程1で得た化合物(3.68g、10.0mmoL)およびベンジルグリコレート(4.99g、30.0mmoL)のテトラヒドロフラン(40.0mL)溶液に、カリウムtert-ブトキシド(2.24g、20.0mmoL)を0℃で加え、室温にて15分間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル、水を0℃で加え、酢酸エチル、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をジオキサン(40.0mL)、水(10.0mL)に溶解し、炭酸水素ナトリウム(1.01g、12.0mmoL)、クロロギ酸9-フルオレニルメチル(2.59g、10.0mmoL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~0:100]にて精製し、標記化合物(1.88g、40%)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl 3)δ:3.84(2H,d,J=5.5Hz),4.24(3H,t,J=6.5Hz),4.49(2H,d,J=6.7Hz),4.88(2H,d,J=6.7Hz),5.15-5.27(1H,m),5.19(2H,s),6.74(1H,brs),7.31-7.39(7H,m),7.43(2H,t,J=7.4Hz),7.61(2H,d,J=7.4Hz),7.79(2H,d,J=7.4Hz).
[0299]
工程3:[({N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシル}アミノ)メトキシ]酢酸
 上記工程2で得た化合物(1.88g、3.96mmoL)をエタノール(40.0mL)、酢酸エチル(20.0ml)に溶解した。パラジウム炭素触媒(376mg)を加え、水素雰囲気下、室温にて2時間撹拌した。不溶物をセライト濾過によって除き、溶媒を減圧留去し、標記化合物(1.52g、定量的)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:3.62(2H,d,J=6.3Hz),3.97(2H,s),4.18-4.32(3H,m),4.60(2H,d,J=6.7Hz),7.29-7.46(4H,m),7.58(1H,t,J=5.9Hz),7.72(2H,d,J=7.4Hz),7.90(2H,d,J=7.4Hz),8.71(1H,t,J=6.5Hz).
[0300]
工程4:9H-フルオレン-9-イルメチル(2-{[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]アミノ}-2-オキソエチル)カーバメート
 氷冷下、エキサテカンのメシル酸塩(0.283g、0.533mmoL)、N-ヒドロキシスクシンイミド(61.4mg、0.533mmoL)、および上記工程3で得た化合物(0.205g、0.533mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(92.9μL、0.533mmoL)およびN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.143g、0.693mmoL)を加え、室温にて3日間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(0.352g、82%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.81(3H,t,J=7.4Hz),1.73-1.87(2H,m),2.06-2.20(2H,m),2.34(3H,s),3.01-3.23(2H,m),3.58(2H,d,J=6.7Hz),3.98(2H,s),4.13-4.25(3H,m),4.60(2H,d,J=6.7Hz),5.09-5.22(2H,m),5.32-5.42(2H,m),5.50-5.59(1H,m),6.49(1H,s),7.24-7.30(3H,m),7.36(2H,t,J=7.4Hz),7.53(1H,t,J=6.3Hz),7.66(2H,d,J=7.4Hz),7.75(1H,d,J=11.0Hz),7.84(2H,d,J=7.4Hz),8.47(1H,d,J=8.6Hz),8.77(1H,t,J=6.7Hz).
MS(ESI)m/z:802(M+H) +.
[0301]
工程5:N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
 上記工程4で得た化合物(0.881g、1.10mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(11.0mL)溶液に、ピペリジン(1.1mL)を加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、標記化合物を含む混合物を得た。本混合物は、これ以上の精製は行わずに次の反応に用いた。
[0302]
工程6:N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
 氷冷下、上記工程5で得た混合物(0.439mmoL)、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.101g、0.878mmoL)およびN-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニン(特開2002-60351号公報に記載された化合物;0.440g、0.878mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(50.0mL)溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.181g、0.878mmoL)を加え、室温にて4日間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=9:1(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.269g、58%)を得た。
MS(ESI)m/z:1063(M+H) +.
[0303]
工程7:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
 上記工程6で得た化合物(0.269g、0.253mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(4.00mL)溶液に、ピペリジン(0.251mL、2.53mmoL)を加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、標記化合物を含む混合物を得た。本混合物は、これ以上の精製は行わずに次の反応に用いた。
[0304]
工程8:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
 上記工程7で得た化合物(0.253mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL)溶液に、6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジル(0.156g、0.506mmoL)を加え、室温で3日間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=9:1(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.100g、38%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.83(3H,t,J=7.2Hz),1.09-1.21(2H,m),1.33-1.47(4H,m),1.75-1.90(2H,m),2.00-2.23(4H,m),2.36(3H,s),2.69-2.81(1H,m),2.94-3.03(1H,m),3.06-3.22(2H,m),3.23-3.74(6H,m),3.98(2H,s),4.39-4.50(1H,m),4.60(2H,d,J=6.7Hz),5.17(2H,s),5.39(2H,s),5.53-5.61(1H,m),6.50(1H,s),6.96(2H,s),7.11-7.24(5H,m),7.28(1H,s),7.75(1H,d,J=11.0Hz),7.97(1H,t,J=5.7Hz),8.03(1H,t,J=5.9Hz),8.09(1H,d,J=7.8Hz),8.27(1H,t,J=6.5Hz),8.48(1H,d,J=9.0Hz),8.60(1H,t,J=6.5Hz).
MS(ESI)m/z:1034(M+H) +.
[0305]
工程9:hM23-H1L1 ADC(2)
[0306]
(i)抗体のバッファー交換及び濃度調整
 実施例6にて作製したhM23-H1L1を、Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat. No. 17-0852-02、GE Healthcare Japan Corporation)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA、5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM、pH6.0;本明細書において「PBS6.0/EDTA」という場合がある。)にて平衡化した。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをのせたのち、PBS6.0/EDTA 3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取した。この画分をAmicon Ultra(50,000 MWCO、Millipore Corporation)の容器内に抗体または抗体-薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R、Beckman Coulter, Inc.)を用いた遠心操作(2000G~3800Gにて5~20分間遠心)にて、抗体若しくは抗体-薬物コンジュゲート溶液を濃縮した。UV測定器(Nanodrop 1000、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った。その際に、280nm吸光係数(1.65mLmg -1cm -1)を用いて抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて10mg/mLに抗体濃度を調整した。
[0307]
(ii)抗体の還元
 本溶液(1.00mL)を2mLポリプロピレン製チューブに採取し、10mM TCEP(東京化成工業株式会社)水溶液(0.0158mL;抗体一分子に対して2.3当量)および1Mリン酸水素二カリウム水溶液(Nacalai Tesque, Inc.; 0.015mL)を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間インキュベートすることによって、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元した。
[0308]
(iii)抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
 上記溶液を常温水浴で10分間インキュベートした後にジメチルスルホキシド(0.0228mL)を添加した。次いで上記工程8で得た化合物の10mMジメチルスルホキシド溶液(0.0268mL;抗体一分子に対して4.6当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて室温下60分間撹拌し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC(Sigma-Aldrich Co. LLC)水溶液(0.0063mL;抗体一分子に対して9.2当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
[0309]
(v)精製
 Sorbitol(5%)を含む酢酸緩衝液(10mM、pH5.5)にてNAP-25カラムを平衡化した。このNAP-25カラムに、抗体-薬物コンジュゲート反応水溶液(2.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ、緩衝液で溶出させるゲルろ過精製操作を計2~3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーや低分子化合物(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、N-アセチル-L-システイン(NAC)およびジメチルスルホキシド)を除いた抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を6.0mL得た。
[0310]
(v)特性評価
 共通操作A及びB(ε D,280=5178(実測値) ε D,370=20217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0311]
抗体濃度:1.53mg/mL、抗体収量:9.18mg(92%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):2.9;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.6。
[0312]
(実施例11)hM23-H1L1 ADC(3)の作製
[0313]
[化12]


[0314]
工程1:hM23-H1L1 ADC(3)
 実施例6にて作製したhM23-H1L1および実施例10工程8で得た化合物を用いて、実施例7工程6と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5178(実測値) ε D,370=20217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0315]
抗体濃度:1.59mg/mL、抗体収量:9.54mg(95%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.4;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.7。
[0316]
(実施例12)hM23-H1L2 ADC(2)の作製
[化13]


[0317]
工程1:hM23-H1L2 ADC(2)
 実施例6にて作製したhM23-H1L2および実施例10工程8で得た化合物を用いて、実施例10工程9と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
[0318]
抗体濃度:1.52mg/mL、抗体収量:9.12mg(91%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.0;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.7。
[0319]
(実施例13)hM23-H1L2 ADC(3)の作製
[化14]


[0320]
工程1:hM23-H1L2 ADC(3)
 実施例6にて作製したhM23-H1L2および実施例10工程8で得た化合物を用いて、実施例7工程6と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5178(実測値) ε D,370=20217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0321]
抗体濃度:1.57mg/mL、抗体収量:9.42mg(94%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.7;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.1。
[0322]
(実施例14)hM23-H2L2 ADC(2)の作製
[0323]
[化15]


[0324]
工程1:hM23-H2L2 ADC(2)
 実施例6にて作製したhM23-H2L2および実施例10工程8で得た化合物を用いて、実施例10工程9と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
[0325]
抗体濃度:1.50mg/mL、抗体収量:9.00mg(90%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.0;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.8。
[0326]
(実施例15)hM23-H2L2 ADC(3)の作製
[化16]


[0327]
工程1:hM23-H2L2 ADC(3)
 実施例6にて作製したhM23-H2L2および実施例10工程8で得た化合物を用いて、実施例7工程6と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5178(実測値) ε D,370=20217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0328]
抗体濃度:1.51mg/mL、抗体収量:9.06mg(91%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.8;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.1。
[0329]
(実施例16)hM23-H1L1 ADC(4)の作製
[0330]
[化17]


[0331]
工程1:tert-ブチル [2-(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)エチル]カーバメート
 4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸の代わりに{2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]エトキシ}酢酸(J. Med. Chem., 1992年, 35巻, 2928頁;1.55g、6.01mmol)を用いて、実施例7工程1と同様にして、標記化合物(2.56g、73%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.87(3H,t,J=7.3Hz),1.26(9H,s),1.81-1.91(2H,m),2.13-2.22(2H,m),2.40(3H,s),3.08-3.26(4H,m),3.43-3.53(2H,m),4.00(1H,d,J=15.1Hz),4.05(1H,d,J=15.1Hz),5.14(1H,d,J=18.7Hz),5.22(1H,d,J=18.7Hz),5.40(1H,d,J=16.6Hz),5.44(1H,d,J=16.6Hz),5.59-5.66(1H,m),6.53(1H,s),6.86(1H,t,J=5.4Hz),7.31(1H,s),7.79(1H,d,J=10.9Hz),8.49(1H,d,J=9.1Hz).
MS(APCI)m/z:637(M+H) +.
[0332]
工程2:2-(2-アミノエトキシ)-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アセトアミドトリフルオロ酢酸塩
 上記工程1で得た化合物(1.50g、2.36mol)を、実施例7工程2と同様に反応させ、標記化合物(1.50g、定量的)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.87(3H,t,J=7.5Hz),1.81-1.92(2H,m),2.15-2.23(2H,m),2.41(3H,s),3.05(2H,t,J=5.1Hz),3.15-3.23(2H,m),3.71(2H,t,J=5.1Hz),4.10(2H,s),5.19(1H,d,J=18.7Hz),5.24(1H,d,J=18.7Hz),5.43(2H,s),5.58-5.66(1H,m),6.55(1H,s),7.33(1H,s),7.73-7.84(4H,m),8.55(1H,d,J=9.1Hz).
MS(APCI)m/z:537(M+H) +.
[0333]
工程3:N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[2-(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)エチル]グリシンアミド
 上記工程2で得た化合物(554mg、0.85mmol)を、実施例7工程3と同様に反応させ、標記化合物(775mg、95%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.85(3H,t,J=7.3Hz),1.36(9H,s),1.78-1.89(2H,m),2.13-2.22(2H,m),2.39(3H,s),2.71(1H,dd,J=13.4,9.8Hz),2.95(1H,dd,J=13.4,4.3Hz),3.09-3.23(1H,m),3.23-3.32(2H,m),3.40-3.62(8H,m),3.73(1H,dd,J=16.5,5.5Hz),4.03(2H,s),4.39-4.47(1H,m),5.17(1H,d,J=18.9Hz),5.25(1H,d,J=18.9Hz),5.41(1H,d,J=16.8Hz),5.45(1H,d,J=16.8Hz),5.57-5.64(1H,m),6.54(1H,s),6.99(1H,t,J=5.8Hz),7.13-7.26(5H,m),7.31(1H,s),7.76-7.82(2H,m),7.90(1H,t,J=5.2Hz),8.13(1H,d,J=7.9Hz),8.27(1H,t,J=5.8Hz),8.49(1H,d,J=8.5Hz).
MS(APCI)m/z:955(M+H) +.
[0334]
工程4:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[2-(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)エチル]グリシンアミドトリフルオロ酢酸塩
 上記工程3で得た化合物(630mg、0.659mmol)を、実施例7工程4と同様に反応させ、標記化合物(588mg、92%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.86(3H,t,J=7.3Hz),1.79-1.90(2H,m),2.13-2.22(2H,m),2.39(3H,s),2.71(1H,dd,J=13.4,10.1Hz),2.99(1H,dd,J=13.4,4.3Hz),3.09-3.23(1H,m),3.24-3.32(3H,m),3.41-3.71(7H,m),3.86(1H,dd,J=16.8,5.8Hz),4.04(2H,s),4.52(1H,td,J=9.0,4.1Hz),5.17(1H,d,J=18.9Hz),5.25(1H,d,J=18.9Hz),5.41(1H,d,J=16.5Hz),5.45(1H,d,J=16.5Hz),5.56-5.65(1H,m),6.55(1H,s),7.13-7.26(5H,m),7.32(1H,s),7.80(1H,d,J=11.0Hz),7.87-8.01(4H,m),8.29-8.36(2H,m),8.46-8.55(2H,m).
MS(APCI)m/z:855(M+H) +.
[0335]
工程5:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[2-(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)エチル]グリシンアミド
 ジイソプロピルエチルアミンの代わりにトリエチルアミン(31.4μL、0.22mmoL)を、3-(2-(2-(3-マレインイミドプロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパン酸N-スクシンイミジルの代わりに6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジル(95.3mg、0.31mmoL)を用いて、実施例7工程5と同様に標記化合物(162mg、62%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d 6)δ:0.86(3H,t,J=7.6Hz),1.13-1.22(2H,m),1.40-1.51(4H,m),1.78-1.90(2H,m),2.09(2H,t,J=7.6Hz),2.14-2.21(2H,m),2.39(3H,s),2.74(1H,dd,J=13.6,9.7Hz),2.96(1H,dd,J=13.6,4.5Hz),3.08-3.24(1H,m),3.24-3.30(1H,m),3.33-3.40(4H,m),3.47-3.68(7H,m),3.72(1H,dd,J=16.6,5.7Hz),4.03(2H,s),4.42(1H,td,J=8.6,4.2Hz),5.17(1H,d,J=18.7Hz),5.25(1H,d,J=18.7Hz),5.40(1H,d,J=17.2Hz),5.44(1H,d,J=17.2Hz),5.57-5.64(1H,m),6.52(1H,s),6.99(2H,s),7.13-7.25(5H,m),7.31(1H,s),7.74-7.81(2H,m),7.99(1H,t,J=5.7Hz),8.03-8.11(2H,m),8.22(1H,t,J=5.7Hz),8.47(1H,d,J=9.1Hz).
MS(APCI)m/z:1048(M+H) +.
[0336]
工程6:hM23-H1L1 ADC(4)
 実施例6にて作製したhM23-H1L1および上記工程5で得た化合物を用いて、実施例10工程9と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5193(実測値) ε D,370=20347(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0337]
抗体濃度:1.47mg/mL、抗体収量:8.82mg(88%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):2.8;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.6。
[0338]
(実施例17)hM23-H1L1 ADC(5)の作製
[0339]
[化18]


[0340]
工程1:hM23-H1L1 ADC(5)
 実施例6にて作製したhM23-H1L1および実施例16工程5で得た化合物を用いて、実施例7工程6と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5193(実測値) ε D,370=20347(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0341]
抗体濃度:1.47mg/mL、抗体収量:8.82mg(88%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.3;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.7。
[0342]
(実施例18)hM23-H1L2 ADC(4)の作製
[0343]
[化19]


[0344]
工程1:hM23-H1L2 ADC(4)
 実施例6にて作製したhM23-H1L2および実施例16工程5で得た化合物を用いて、実施例10工程9と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5193(実測値) ε D,370=20347(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0345]
抗体濃度:1.49mg/mL、抗体収量:8.94mg(89%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.0;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.4。
[0346]
(実施例19)hM23-H1L2 ADC(5)の作製
[0347]
[化20]


[0348]
工程1:hM23-H1L2 ADC(5)
 実施例6にて作製したhM23-H1L2および実施例16工程5で得た化合物を用いて、実施例7工程6と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5193(実測値) ε D,370=20347(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0349]
抗体濃度:1.57mg/mL、抗体収量:9.42mg(94%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.8;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.9。
[0350]
(実施例20)hM23-H2L2 ADC(4)の作製
[0351]
[化21]


[0352]
工程1:hM23-H2L2 ADC(4)
 実施例6にて作製したhM23-H1L1および上記実施例16工程5で得た化合物を用いて、実施例10工程9と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5193(実測値) ε D,370=20347(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0353]
抗体濃度:1.48mg/mL、抗体収量:8.88mg(89%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.1;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.9。
[0354]
(実施例21)hM23-H2L2 ADC(5)の作製
[0355]
[化22]


[0356]
工程1:hM23-H2L2 ADC(5)
 実施例6にて作製したhM23-H1L1および上記実施例16工程5で得た化合物を用いて、実施例7工程6と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。共通操作A及びB(ε D,280=5193(実測値) ε D,370=20347(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0357]
抗体濃度:1.56mg/mL、抗体収量:9.36mg(94%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):5.9;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.1。
[0358]
(実施例22)hM23-H1L1 ADC(6)の作製
[化23]


[0359]
工程1:hM23-H1L1 ADC(6)
(i)抗体のバッファー交換及び濃度調整
 実施例6にて作製したhM23-H1L1を、Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat. No. 17-0852-02、GE Healthcare Japan Corporation)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA、5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM、pH6.0;本明細書において「PBS6.0/EDTA」という場合がある。)にて平衡化する。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをのせたのち、PBS6.0/EDTA 3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取する。この画分をAmicon Ultra(50,000 MWCO、Millipore Corporation)の容器内に抗体または抗体-薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R、Beckman Coulter, Inc.)を用いた遠心操作(2000G~3800Gにて5~20分間遠心)にて、抗体若しくは抗体-薬物コンジュゲート溶液を濃縮した。UV測定器(Nanodrop 1000、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った。その際に、280nm吸光係数(1.65mLmg -1cm -1)を用いて抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて10mg/mLに抗体濃度を調整した。
[0360]
(ii)抗体の還元
 本溶液(10 mL)を50mLポリプロピレン製チューブに採取し、10mM TCEP水溶液(0.377 mL;抗体一分子に対して5.5当量)および1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.287 mL)を加えた。本溶液のpHが7.2±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間インキュベートすることによって、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元した。
[0361]
(iii)抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
 上記溶液を15℃の水浴中で5分間インキュベートした後に、実施例10工程8で得た化合物の10mMジメチルスルホキシド溶液(0.617 mL;抗体一分子に対して9.0当量)を加え、15℃の水浴中で30分間撹拌し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.088mL;抗体一分子に対して12.9当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応性を停止させた。
[0362]
(iv)精製
 Sorbitol(5%)を含む酢酸緩衝液(10mM、pH5.5)にてNAP-25カラムを平衡化した。このNAP-25カラムに、抗体-薬物コンジュゲート反応水溶液(2.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ、緩衝液で溶出させるゲルろ過精製操作を計2~3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーや低分子化合物(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、N-アセチル-L-システイン(NAC)およびジメチルスルホキシド)を除いた抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を35mL得た。
[0363]
(v)特性評価
 共通操作A及びB(ε D,280=5178(実測値) ε D,370=20217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0364]
抗体濃度:2.59 mg/mL、抗体収量:90.7 mg(91%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.4;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.8。
[0365]
(実施例23)hM23-H1L1 ADC(7)の作製
[化24]


[0366]
工程1:hM23-H1L1 ADC(7)
(i)抗体のバッファー交換及び濃度調整
 実施例6にて作製したhM23-H1L1を、Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat. No. 17-0852-02、GE Healthcare Japan Corporation)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA、5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM、pH6.0;本明細書において「PBS6.0/EDTA」という場合がある。)にて平衡化した。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをのせたのち、PBS6.0/EDTA 3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取する。この画分をAmicon Ultra(50,000 MWCO、Millipore Corporation)の容器内に抗体または抗体-薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R、Beckman Coulter, Inc.)を用いた遠心操作(2000G~3800Gにて5~20分間遠心)にて、抗体若しくは抗体-薬物コンジュゲート溶液を濃縮した。UV測定器(Nanodrop 1000、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った。その際に、280nm吸光係数(1.65mLmg -1cm -1)を用いて抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて10mg/mLに抗体濃度を調整した。
[0367]
(ii)抗体の還元
 本溶液(10 mL)を50mLポリプロピレン製チューブに採取し、10mM TCEP水溶液(0.178 mL;抗体一分子に対して2.6当量)および1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.287 mL)を加えた。本溶液のpHが7.2±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキュベートすることによって、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元した。
[0368]
(iii)抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
 上記溶液を15℃の水浴中で5分間インキュベートした後に、実施例10工程8で得た化合物の10mMジメチルスルホキシド溶液(0.308 mL;抗体一分子に対して4.5当量)を加え、15℃の水浴中で1時間撹拌し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.088mL;抗体一分子に対して12.9当量)を加え、さらに室温にて20分間撹拌し、薬物リンカーの反応性を停止させた。
[0369]
(iv)精製
 Sorbitol(5%)を含む酢酸緩衝液(10mM、pH5.5)にてNAP-25カラムを平衡化した。このNAP-25カラムに、抗体-薬物コンジュゲート反応水溶液(2.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ、緩衝液で溶出させるゲルろ過精製操作を計2~3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーや低分子化合物(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、N-アセチル-L-システイン(NAC)およびジメチルスルホキシド)を除いた抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を35mL得た。
[0370]
(v)特性評価
 共通操作A及びB(ε D,280=5178(実測値) ε D,370=20217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
[0371]
抗体濃度:2.63mg/mL、抗体収量:92.1mg(92%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.3;共通操作Bにて測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.9。
[0372]
(試験例1)cM23抗体の内在化活性
 Mol Biol Cell. 2004; 15: 5268-5282に準じてcM23抗体の内在化活性を調べた。
[0373]
 cM23、抗transferrin receptor抗体(陽性コントロール)およびコントロールhIgG1(陰性コントロール)をAlexa488標識した。各Alexa488標識抗体を氷冷10% FBS添加RPMI 1640で2μg/mLに調整し、96-well U底plateに50μLずつ分注した。セミコンフルエントのNCI-H322細胞を回収し、氷冷10% FBS添加RPMI 1640で4×10 6cells/mLに懸濁し、抗体分注済みのplateに細胞を50μLずつ分注した。plate mixerで攪拌した後、4℃で1時間インキュベートし、氷冷wash buffer(3% FBS添加PBS)150μLを加え、遠心して上清を除去した。さらに氷冷wash buffer 200μLを加えて上清を除去することを2回行った。
(1)4℃インキュベーションのみのサンプル:上記洗浄済みの細胞に氷冷wash buffer(1000倍希釈LIVE/DEAD Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit(dead cell dye、Invitrogen社 #L10119)添加)またはAnti-Alexa-488溶液(25μg/mL Anti-Alexa-488 antibody、1000倍希釈dead cell dye添加)を75μL添加し、新しいplateに移して氷上で30分間インキュベートした。氷冷固定溶液(2% PFAおよび3% FBS添加PBS)を150μL/wellで添加し、空いているwellに固定溶液とwash bufferの2:1溶液を150μLずつ分注し、サンプルを100μL添加しFACS Canto(ベクトン・ディッキンソン社)で蛍光を測定した。
(2)37℃インキュベーションサンプル:上記洗浄済みの細胞に37℃に温めた10% FBSを添加したRPMI 1640を100μL加えてplate mixerで懸濁し、96well V bottom plateに移して1時間または3時間37℃、5% CO 2下でインキュベートした。100μLの氷冷wash bufferを添加し、全量を96-well round bottom plateに移して遠心した。上清を除去後、氷冷wash buffer(1000倍希釈dead cell dye添加)またはAnti-Alexa-488溶液(25μg/mL、1000倍希釈dead cell dye添加)を75μL添加し、新しいplateに移して氷上で30分間インキュベートした。氷冷固定溶液を150μL/wellで添加し、空いているwellに固定溶液とwash bufferの2:1溶液を150μLずつ分注し、サンプルを100μL添加してFACS Cantoで蛍光を測定した。
[0374]
 図8に示すように、NCI-H322細胞についてAlexa488標識cM23を用いた評価により、約16%のcM23の内在化活性が認められた。なお、図8におけるTfR AbはAlexa488で標識した抗transferrin receptor抗体の略である。
[0375]
(試験例2)hM23抗体の抗原結合活性の測定
(2-1)抗体(培養上清)を用いた抗原結合活性の測定
 抗体と抗原(Recombinant Human SLC3A2/MDU1(Sino Biological Inc.))との解離定数測定は、Biacore T200(GE Healthcare Bio-Sciences)を使用し、固定化した抗ヒトIgG(Fc)抗体に抗体をリガンドとして捕捉(キャプチャー)して抗原をアナライトとして測定するキャプチャー法にて行った。抗ヒトIgG(Fc)抗体(Human anibody capture kit、GE Healthcare Bio-Sciences)は、センサーチップCM5(GE Healthcare Bio-Sciences)へアミンカップリング法にて約1000RU共有結合させた。リファレンスセルにも同様に固定化した。ランニングバッファーとしてHBS-EP+(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% Surfactant P20、GE Healthcare Bio-Sciences)を用いた。抗ヒトIgG(Fc)抗体を固定化した測定側セルに、流速10μL/分で60秒間の添加で20-30RUのキャプチャーとなるようにHBS-EP+にて濃度調整した抗体を含む培養上清(6-3-1で得られた培養上清)を添加した。リファレンスセルおよび測定側セルに抗原の希釈系列溶液(0.077-100nMおよび0nM)を流速30μL/分で300秒間添加し、引き続き600秒間の解離相をモニターした。再生溶液として、3M MgCl 2を流速10μL/分で60秒間、2回添加した。データの解析には、分析ソフトウェア(Biacore T200 Evaluation Software、version 1.0)の1:1 Bindingモデルを用いて、結合速度定数kon、解離速度定数koffおよび解離定数(KD;KD=koff/kon)を算出した。
[0376]
[表1]


[0377]
(2-2)精製抗体を用いた抗原結合活性の測定
 6-3-2で得られた抗体を用いて、上記と同様に結合速度定数、解離速度定数および解離定数を算出した。
[0378]
[表2]


[0379]
(試験例3)ADCの細胞傷害活性
 ヒト形質細胞腫NCI-H929、ヒトバーキットリンパ腫Ramos、ヒトメラノーマMeWoをAmerican Type Culture Collectionから購入した。NCI-H929細胞およびRamos細胞は2×10 3cells/well、MeWo細胞は1×10 3cells/wellで96-well plateに播種し、同時に培地で系列希釈した各抗体とADCを添加した(終濃度:0.1、1、10、100、1000ng/mL、各n=2)。37℃、5% CO 2に設定したインキュベーターにて6日間培養し、Cell Titer Glo(Promega KK)を用いてATP量を測定した。細胞生存率を次式により算出し、回帰直線を用いて50%生存抑制濃度IC 50(ng/mL)を算出した。その結果を表に示す。
細胞生存率 (%) = 100 × (T-B)/(C-B)
T: ADC処理細胞ウェルの発光量
C: 無処理細胞ウェルの平均発光量 (n = 2)
B:ブランクウェルの平均発光量 (n = 2)
[0380]
[表3]


[0381]
 hM23H1L1、hM23H1L2およびhM23H2L2はin vitro細胞傷害活性を示さなかったが、それらのADCは細胞傷害活性を示した。
[0382]
(試験例4)ADCの抗腫瘍効果(1)
 5週齢の雌SCIDマウス(日本チャールス・リバー社)を実験使用前にSPF条件化で7日間馴化した。マウスには固形飼料(FR-2、Funabashi Farms Co., Ltd)を給餌し、1~5ppmの塩素を添加した水を与えた。生理食塩水に懸濁したRamos細胞(8×10 7cells/mL)を100μL/mouseでSCIDマウスの右腋窩部に皮下移植した(Day 0)。Day 10に腫瘍の長径および短径をデジタルキャリパー(CD-15CX、Mitutoyo Corp.)で測定し、下記式に従って算出した腫瘍体積を基に群分けを実施した(n=6)。
腫瘍体積(mm 3)=1/2×長径(mm)×[短径(mm)] 2
[0383]
 群分け当日に抗体またはADCをABSで0.3mg/mLに希釈し、10mL/kgで尾静脈内投与した(3mg/kg)。その後、週に2回腫瘍径を測定した。腫瘍体積の変化を図9~11に示す。
[0384]
 hM23H1L1、hM23H1L2およびhM23H2L2は腫瘍増殖抑制活性を示したが、それらのADCは抗体単独よりも強い抗腫瘍活性を示した。
[0385]
(試験例5)ADCの抗腫瘍効果(2)
 5週齢の雌SCIDマウス(日本チャールス・リバー社)を実験使用前にSPF条件化で9日間馴化した。マウスには固形飼料(FR-2、Funabashi Farms Co.,Ltd)を給餌し、1~5ppmの塩素を添加した水を与えた。生理食塩水に懸濁したRamos細胞(5×10 7cells/mL)を100μL/mouseでSCIDマウスの右腋窩部に皮下移植した(Day 0)。Day 11に腫瘍の長径および短径をデジタルキャリパー(CD-15CX、Mitutoyo Corp.)で測定し、下記式に従って算出した腫瘍体積を基に群分けを実施した(n=8)。
腫瘍体積(mm 3)=1/2×長径(mm)×[短径(mm)] 2
[0386]
 群分け当日に抗体またはADCをABSで0.3mg/mLに希釈し、10mL/kgで尾静脈内投与した(3mg/kg)。その後、週に2回腫瘍径を測定した。腫瘍体積の変化を図12に示す。
[0387]
 hM23-H1L1は腫瘍増殖抑制活性を示したが、ADCは抗体単独よりも強い抗腫瘍活性を示した。
[0388]
配列番号1:M23抗体の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列
配列番号2:M23抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号3:M23抗体の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列
配列番号4:M23抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号5:ヒトκ鎖分泌シグナルおよびヒトκ鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号6:ヒト重鎖分泌シグナルおよびヒトIgG1定常領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号7:キメラM23抗体重鎖のヌクレオチド配列
配列番号8:キメラM23抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号9:キメラM23抗体軽鎖のヌクレオチド配列
配列番号10:キメラM23抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号11:hM23-H1タイプ重鎖のヌクレオチド配列
配列番号12:hM23-H1タイプ重鎖のアミノ酸配列
配列番号13:hM23-H2タイプ重鎖のヌクレオチド配列
配列番号14:hM23-H2タイプ重鎖のアミノ酸配列
配列番号15:hM23-L1タイプ軽鎖のヌクレオチド配列
配列番号16:hM23-L1タイプ軽鎖のアミノ酸配列
配列番号17:hM23-L2タイプ軽鎖のヌクレオチド配列
配列番号18:hM23-L2タイプ軽鎖のアミノ酸配列
配列番号19:M23抗体のCDRH1のアミノ酸配列
配列番号20:M23抗体のCDRH2のアミノ酸配列
配列番号21:M23抗体のCDRH3のアミノ酸配列
配列番号22:M23抗体のCDRL1のアミノ酸配列
配列番号23:M23抗体のCDRL2のアミノ酸配列
配列番号24:M23抗体のCDRL3のアミノ酸配列
配列番号25:プライマーmG2aVR1のヌクレオチド配列
配列番号26:プライマーmKVR2のヌクレオチド配列
配列番号27:プライマー3.3-F1のヌクレオチド配列
配列番号28:プライマー3.3-R1のヌクレオチド配列
配列番号29:プライマーM23H-Fのヌクレオチド配列
配列番号30:プライマーM23H-Rのヌクレオチド配列
配列番号31:プライマーM23L-Fのヌクレオチド配列
配列番号32:プライマーM23L-Rのヌクレオチド配列
配列番号33:プライマーEG-Inf-Fのヌクレオチド配列
配列番号34:プライマーEG1-Inf-Rのヌクレオチド配列
配列番号35:プライマーCM-LKFのヌクレオチド配列
配列番号36:プライマーKCL-Inf-Rのヌクレオチド配列
配列番号37:ヒトCD98重鎖のヌクレオチド配列
配列番号38:ヒトCD98重鎖のアミノ酸配列

請求の範囲

[請求項1]
 抗CD98抗体、リンカーおよび薬物からなる抗CD98抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩であって、
 ここで、リンカーが次式:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2-O-CH 2-C(=O)-;
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2-O-CH 2-C(=O)-;および
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2-C(=O)-NH-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2CH 2-C(=O)-;
からなる群から選択されるリンカーであり、
 薬物が次式:
[化1]


で表される化合物であり、
 薬物の1位のアミノ基の窒素原子がリンカーのカルボニル部分と結合し、
 抗CD98抗体がリンカーのスクシンイミド部分と結合する、
抗CD98抗体-薬物コンジュゲート。
[請求項2]
 1抗体あたりの薬物の平均結合数が2~8個の範囲である請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項3]
 1抗体あたりの薬物の平均結合数が3~6個の範囲である請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項4]
 1抗体あたりの薬物の平均結合数が逆層クロマトグラフィー(RPC)法により測定される請求項2または3に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項5]
 1抗体あたりの薬物の結合数が2、4、6または8個である請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項6]
 リンカーが、次式:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2-O-CH 2-C(=O)-
である請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項7]
 リンカーが、次式:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2CH 2CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2-O-CH 2-C(=O)-
である請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項8]
 リンカーが、次式:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH 2CH 2-C(=O)-NH-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-O-CH 2CH 2-C(=O)-GGFG-NH-CH 2CH 2CH 2-C(=O)-
である請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項9]
 抗CD98抗体が、配列番号38の462~541番目のアミノ酸残基からなる部位に結合する請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項10]
 抗CD98抗体が、
 配列番号19で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH1;
 配列番号20で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH2;
 配列番号21で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH3;
 配列番号22で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL1;
 配列番号23で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL2;および
 配列番号24で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL3;
を含み、かつ、CD98重鎖に結合する、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項11]
 抗CD98抗体が、
 配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるCDRH1;
 配列番号20で表されるアミノ酸配列からなるCDRH2;
 配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるCDRH3;
 配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるCDRL1;
 配列番号23で表されるアミノ酸配列からなるCDRL2;および
 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるCDRL3;
を含み、かつ、CD98重鎖に結合する、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項12]
 抗CD98抗体が、配列番号8の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を持つ重鎖可変領域および/または配列番号10の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を持つ軽鎖可変領域を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項13]
 抗CD98抗体が、
 (1)配列番号12または14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列;
 (2)(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列;および
 (3)(1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列;
からなる群より選択される重鎖可変領域を含む重鎖;ならびに
 (4)配列番号16または18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列;
 (5)(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列;および
 (6)(4)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列;
からなる群より選択される軽鎖可変領域を含む軽鎖;
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項14]
 抗CD98抗体が、配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号16の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項15]
 抗CD98抗体が、配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項16]
 抗CD98抗体が、配列番号14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項17]
 抗CD98抗体が、配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号16の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項18]
 抗CD98抗体が、配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項19]
 抗CD98抗体が、配列番号14の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項20]
 配列番号38の462~541番目のアミノ酸残基からなる部位に結合する、抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項21]
 配列番号19で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH1;
 配列番号20で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH2;
 配列番号21で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRH3;
 配列番号22で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL1;
 配列番号23で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL2;および
 配列番号24で表されるアミノ酸配列あるいは該アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるCDRL3;
を含む、請求項20に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項22]
 配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるCDRH1;
 配列番号20で表されるアミノ酸配列からなるCDRH2;
 配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるCDRH3;
 配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるCDRL1;
 配列番号23で表されるアミノ酸配列からなるCDRL2;および
 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるCDRL3;
を含む、請求項20または21に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項23]
 配列番号8の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を持つ重鎖可変領域および/または配列番号10の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を持つ軽鎖可変領域を含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項24]
 (1)配列番号12または14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列;
 (2)(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列;および
 (3)(1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列;
からなる群より選択される重鎖可変領域を含む重鎖;ならびに
 (4)配列番号16または18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列;
 (5)(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列;および
 (6)(4)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列;
からなる群より選択される軽鎖可変領域を含む軽鎖;
含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項25]
 配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号16の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項26]
 配列番号12の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項27]
 配列番号14の20~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項28]
 配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号16の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項29]
 配列番号12の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項30]
 配列番号14の20~465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号18の21~240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項31]
 請求項20~30のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩。
[請求項32]
 請求項1~19および31のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩あるいは請求項20~30のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片を活性成分として含有する医薬組成物。
[請求項33]
 抗腫瘍または抗癌のための請求項32に記載の医薬組成物。
[請求項34]
 腫瘍または癌が、肺癌、腎癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、多形神経膠芽腫、卵巣癌、膵癌、乳癌、メラノーマ、肝癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、頭頸部癌、食道癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病または多発性骨髄腫である、請求項33に記載の医薬組成物。
[請求項35]
 医薬組成物を製造するための、請求項1~19および31のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬学的に許容され得る塩、あるいは、請求項20~30のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片の使用。
[請求項36]
 腫瘍および/または癌の治療における使用のための、請求項1~19および31のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬学的に許容され得る塩、あるいは、請求項20~30のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片。
[請求項37]
 請求項1~19および31のいずれか1項に記載の抗体-薬物コンジュゲートまたはその薬理学的に許容され得る塩あるいは請求項20~30のいずれか1項に記載の抗CD98抗体または該抗体の抗原結合断片の治療有効量を哺乳動物に投与すること含む、腫瘍および/または癌の治療方法。

図面

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