明 細 書
技術分野
[0001]
本発明は、伸び状態と折りたたみ状態との間で姿勢を変化させることが可能な多関節ロボットアームに関する。
背景技術
[0002]
例えば複数の自動加工機を介してワークの加工が行われる場合、各自動加工機との間でワークを受け渡しするためにワーク自動搬送機などが使用される。そうしたワーク自動搬送機は、ワークを持って移動する搬送位置と自動加工機の加工箇所との間に距離があるため、その間の受渡しを行う多関節ロボットアームが用いられている。下記特許文献1には加工装置に用いられた多関節ロボットアームが開示されている。具体的には、工作機械の上部にあるレールに沿って走行する多関節ロボットアームであり、ロボットベースに対して第1関節と第2関節を介して第1アームと第2アームが連結され、第2アームの先端に第3関節を介してロボットハンドが取りつけられている。そして、各関節とロボットハンドの作動により工作機械に対するワークの受け渡しが行われる。
先行技術文献
特許文献
[0003]
特許文献1 : 特開2010-64158号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0004]
従来の多関節ロボットアームは、第1関節から第3関節を有することによって複数のアームが折りたたまれるものであるが、それは複数のアームが関節を介して折りたたまれるだけの単純な構成であった。そのため、今後、自動加工機などで要求されるであろうワーク自動搬送機への小型化に応えられるものではない。すなわち、自動加工機自身の小型化や、そうした自動加工機などを複数備えた加工設備全体がコンパクト化に伴い、ワーク自動搬送機のための搬送スペースやワークの受渡しを行う加工スペースがより狭くなると考えられる。そのため、ワーク自動搬送機の主要な構成である多関節ロボットアームは、ある程度の距離のワークの受渡しを可能にしつつ、コンパクトであることが必要になる。
[0005]
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、小スペースでの使用が可能な多関節ロボットアームを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0006]
本発明の一態様における多関節ロボットアームは、所定の幅の間隔でベース部材に立設された一対の支持部材と、前記一対の支持部材に対して第1関節によって回転支持された第1アーム部材と、前記第1アーム部材に対して第2関節によって回転支持された第2アーム部材とを備え、前記第2アーム部材は、前記第2関節とは反対側にワークを把持するロボットハンドを保持し、前記第1アーム部材は、両端部分に前記第1関節および第2関節を有する一対の側部を有し、当該一対の側部の間に前記第2アーム部材が入り込む収納空間が存在するものであることを特徴とする多関節ロボットアーム。
発明の効果
[0007]
本発明によれば、第1関節や第2関節の作動によって第1アームと第2アームとが伸びた状態と折りたたまれた状態とを作り出すことができ、所定の状態変化に伴ってロボットハンドを作動させることによりワークの受渡しが行われる。そして、多関節ロボットアームは、折りたたまれた状態では一対の上腕部の間の収納空間に前記第2アーム部材が入り込むことでコンパクトになり、限られたスペースでの使用が可能になる。
図面の簡単な説明
[0008]
[図1] 複数の工作機械からななる加工機械ラインを示した斜視図である。
[図2] 工作機械の内部構造である加工モジュールを示した斜視図である。
[図3] 加工機械ライン内に設けられたオートローダーであり、多関節ロボットアームが伸びた状態を示した斜視図である。
[図4] 加工機械ライン内に設けられたオートローダーであり、多関節ロボットアームが折りたたまれた状態を示した斜視図である。
[図5] オートローダーを示した側面図である。
[図6] 図5に示すオートローダーのA-A矢視の一部断面図である。
[図7] 図5に示すオートローダーのB-B矢視の一部断面図である。
発明を実施するための形態
[0009]
次に、本発明についてその一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。先ず図1は、複数の工作機械からななる加工機械ラインを示した斜視図である。この加工機械ライン1は、ベース2上に4台の工作機械10(10A,10B,10C,10D)が搭載されている。4台の工作機械10は、いずれも同じ型のNC旋盤であり、内部構造および全体の形状や寸法が同じものである。そして、各々の工作機械10に対してワークの受け渡しを行うオートローダー(ワーク自動搬送機)が設けられている。ここで「加工機械ライン」とは、一定の関係をもった複数の工作機械がオートローダーによってワークの受け渡しが行われる工作機械群をいう。
[0010]
本実施形態の工作機械10は幅寸法が狭く、機体同士も極めて近接配置しているため、加工機械ライン1全体が非常にコンパクトである。そのため外装カバー5の前面部には作業者の目線の高さに合わせて操作パネル7が取り付けられているが、作業者は一つの操作パネル7だけでなく隣の操作パネル7も確認可能な配置である。そして、この工作機械10は、全体が外装カバー5によって覆われており内部に加工部が設けられている。また、外装カバー5の前面部501の内部にはオートローダーの搬送スペースが設けられ、4台の工作機械10A~10Dの間を受渡し装置が移動可能になっている。
[0011]
次に図2は、工作機械10の内部構造である加工モジュールを示した斜視図である。外装カバー5を外した工作機械10は、加工モジュール20が前後方向に移動可能な状態でベース2上に搭載されている。図2は、加工モジュール20が後方に引き出された状態を示している。ベース2に取り付けられた外装カバー5は後方が開いているため、加工モジュール20は後方からそのまま引き出すことが可能である。その際、ベース2の後方に台車170が配置され、ベース2上の加工モジュール20は台車170へと移し換えられる。また、外装カバー5の前面部分は開閉可能であるため、加工モジュール20を前方への引き出すことも可能である。更に、各々の工作機械10は、加工モジュール20を外装カバー5と一体に引き出すことも可能である。よって、加工機械ライン1の工作機械10A~10Dは、全てがベース2上に組み付けられて一つになっているが、引き出し可能な各々の加工モジュール20は独立している。
[0012]
ベース2には1台の加工モジュール20に対して2本レール161が設置され、そのレール161上に車輪を載せた加工モジュール20が配置される。従って、レール161上を車輪が転がることにより、加工モジュール20がベース2の長手方向、つまり工作機械10の前後方向に移動可能になっている。特に前方への移動は自走可能な構成になっている。具体的には、可動ベッド16に歯を下向きにしたラック162が固定され、ベース2の前方部分にピニオンを装着した引出用モータ163が固定されている。ラック162は可動ベッド16から前方へ突出すようにして固定され、加工モジュール20がベース2に搭載された際にラック162がピニオンに噛み合い、引出用モータ163の駆動によって加工モジュール20が前後方向に移動する。
[0013]
次に、本実施形態の工作機械10は、エンドミルやドリルなどの回転工具、或いはバイトなどの切削工具を保持したタレットを備えるタレット旋盤である。そのため加工モジュール20は、工作物(ワーク)を把持する主軸チャック11を備えた主軸台12、工具が取り付けられたタレット装置13、そのタレット装置13をZ軸やX軸に沿って移動させるZ軸駆動装置やX軸駆動装置、駆動部を制御するための加工制御装置15などを備えている。ここで、Z軸は、把持したワークを回転させる主軸台12の回転軸(主軸)と平行な水平軸である。X軸は、Z軸に対して直交し、タレット装置13の工具をZ軸に対して進退させる移動軸であり、本実施形態では垂直方向である。X軸方向は、図1に示す工作機械10及び加工機械ライン1の両方とも上下方向である。
[0014]
加工モジュール20は、ベース2の上を移動できるように、車輪を備えた可動ベッド16を備え、その可動ベッド16上に主軸台12が固定されている。主軸台12は、回転自在に支持された主軸に主軸チャック11と主軸側プーリとが一体になり、主軸用サーボモータの回転が与えられるよう構成されている。一方、タレット装置13は、Z軸スライド22に搭載され、更にそのZ軸スライド22がX軸スライド26に搭載されている。Z軸スライド22は、X軸スライド26に固定されたベース21内を摺動することにより、Z軸に平行な水平方向に移動自在な構成となっている。
[0015]
Z軸駆動装置には、Z軸スライド22をZ軸方向に移動させるため、Z軸用サーボモータ23の回転出力を直進運動に変換するボールネジ駆動方式が採用されている。すなわち、Z軸用サーボモータ23の駆動によりボールネジが回転し、その回転運動がボールナットの直線運動に変換され、Z軸スライド22がZ軸と平行な方向に移動するよう構成されている。
[0016]
可動ベッド16には2本のガイドを備えたコラム25が起立して固定され、そのガイドに対してX軸スライド26が摺動自在に取り付けられている。X軸スライド26は、コラムに沿った昇降が可能であり、このX軸駆動装置にもモータの回転出力をX軸スライド26の昇降運動に変換するため、ボールネジ駆動方式が採用されている。X軸用サーボモータ28の駆動によりボールネジが回転し、その回転運動がボールナットの直線運動に変換され、X軸スライド26の昇降が可能になる。
[0017]
続いて、加工機械ライン1内に設けられたオートローダーについて説明する。図3及び図4はオートローダーを示した斜視図であり、図3は多関節ロボットアームが伸びた状態を示し、図4は多関節ロボットアームが折りたたまれた状態を示している。更に、図5は、オートローダー3を示した側面図である。そして、図6は、図5に示すオートローダー3のA-A矢視の一部断面図であり、図7は、同じく図5に示すオートローダー3のB-B矢視の一部断面図である。
[0018]
このオートローダー3は、加工機械ライン1の前方側に配置されている。具体的には、前述したように外装カバー5の前面部501の内部であり、ベース2の前方側に設けられたスペースである。オートローダー3は、そのスペースを受渡し装置がY軸方向に移動し、4台ある工作機械10A~10Dとの間でワークの受渡しを行うものである。図3及び図4にはその2台分の範囲について示している。ここでも外装カバー5を省略した図を示しているが、実際にはオートローダー3も外装カバー5内に収められる。
[0019]
ところで、このオートローダー3は、その搬送スペースが図1に示す外装カバーの前面部501内の狭い空間である。そのため、オートローダー3にはコンパクトな構成であることが要求される。また、隣り合う工作機械10同士は、ワークを加工する各々の加工領域が外装カバー5によって仕切られている。そのため、オートローダー3はY軸方向の短い幅寸法内でワークの受渡しを行わなければならない。従って、オートローダー3は、こうした狭い搬送スペースや加工スペースに対応する必要があり、特にオートローダー3の多関節ロボットアームがそうした要求を満たす構成であることが求められる。
[0020]
先ず、オートローダー3は、ワークを反転させる反転装置32と、その反転装置32や工作機械10などの間でワークの受渡しを行うための受渡し装置33、そしてその反転装置32や受渡し装置33を搭載して複数の工作機械10の間を行き来する走行装置31を備えている。そして、このオートローダー3がワークを搬送する場合には、走行装置31の駆動により、図4に示す折りたたみ状態の受渡し装置33が反転装置32とともに工作機械10A~10Dの間を移動し、ワークの加工面が裏表反転する必要がある場合には搬送中にワークが反転装置32に受渡しされ、ワークの反転が行われる。そして、工作機械10に対しては、受渡装置33が図4の折りたたみ状態から図3の伸び状態に変形してワークの受渡しが行われる。
[0021]
そこで次に、各装置について説明する。走行装置31は、ベース2の前面部に支持板41が固定され、その支持板41に工作機械10Aから10Dの方向であるY軸方向に延びたラック42や2本のレール43が固定されている。一方、走行台45にはレール43を掴んだ状態で摺動する走行スライド44が固定されている。そのため、走行台45は一定の姿勢を保ってY軸方向に移動することができる。その走行台45には走行用モータ47が設けられ、その回転軸に固定されたピニオン46がラック42に噛合している。従って、走行用モータ47の駆動によってピニオン46に回転が与えられれば、ラック42をピニオン46が転動することにより走行台45がY軸方向に移動することになる。
[0022]
また、走行台45には、その上方に軸受けを介して旋回テーブル48が回転自在に取り付けられている。そして、走行台45の内側には旋回用モータ49が固定され、その回転軸には減速機を介して旋回テーブル48が連結されている。この旋回テーブル48上に反転装置32や受渡し装置33が搭載されている。従って、受渡し装置33は、旋回テーブル48の回転により、加工モジュール20の方向(Z軸方向)だけではなく、加工機械ライン1へワークを搬入及び搬出を行うため外部に配置されたワーク供給パレットやワーク排出パレットへも向きを変えることができる。
[0023]
次に、旋回テーブル48上に搭載された反転装置32は、左右一対の把持爪51を有し、その把持爪51を開閉させる把持用シリンダ52が設けられている。把持用シリンダ52の作動により一対の把持爪51が互いに接近してワークを掴み、離れることによりワークを解放する。また、把持用シリンダ52の下には圧縮エアを作動流体として回転を発生させる回転アクチュエータ53が設けられ、把持爪51によって把持したワークを水平面上で180°回転させることができる。
[0024]
続いて、受渡し装置33は、伸び状態と折りたたみ状態との間で姿勢を変化させることが可能な多関節ロボットアーム35と、その先端部に組み付けられたロボットハンド36とを備えたものである。多関節ロボットアーム35は、旋回テーブル48上に所定の間隔で配置された一対の支持プレート61が起立して固定され、その上端部に上腕部材62が第1関節機構63を介して連結され、更に上腕部材62には前腕部材65が第2関節機構66を介して連結されている。そのため、多関節ロボットアーム35は、第1関節機構63および第2関節機構66の駆動により、図4に示す起立した折りたたみ状態と、図3に示す伸び状態との間で姿勢を変化させることが可能な構成となっている。
[0025]
上腕部材62は、平行に配置された一対の上腕プレート621同士が直交する横梁プレート622によって連結され、立体的な形状をしている。特に、横梁プレート622は、上腕プレート621の前方側端部を繋ぐように形成されている。そのため、上腕部材62は、後方側つまりベース2(加工モジュール20)側に開放され、図4に示すように前腕部材65が入り込む収納空間が形成されている。また、上腕プレート621には中央部分に重量を落とすための大きな軽量孔623が形成され、横梁プレート622は上腕プレート621の長手方向の一部に形成されている。こうして上腕部材62は、立体的な形状にすることによって収納空間を得るとともに剛性を高める一方、余分な部分を切り欠くなどして全体の重量を軽減させている。
[0026]
上腕部材62は、左右一対の上腕プレート621が同じく左右に設けられた一対の支持プレート61に対して回転可能な状態で支持されている。具体的には支持プレート61と上腕部材62との間には第1関節機構63が設けられ、上腕部材62の角度調整が行われるようになっている。その第1関節機構63は、支持プレート61の下方側に第1関節用モータ71が取り付けられ、その回転軸にプーリ711が固定されている。一方、支持プレート61の上端部側にはシャフト731が回転自在に設けられ、そのシャフト731にプーリ732が固定されている。そして、その上下に配置されたプーリ711とプーリ732との間にタイミングベルト72が掛け渡されている。
[0027]
シャフト731は、支持プレート61の上端部に固定された減速機733に連結され、その減速機733にはプーリ732とは反対側に配置された回転カバー734が連結されている。ここでの減速機733は、プーリ732から入力した第1関節用モータ71の回転を減速させ、その減速させた回転を回転カバー734側に出力するものである。そして、回転カバー734には上腕部材62の上腕プレート621が固定されているため、第1関節用モータ71からの回転は減速機733を介して上腕部材62に伝えられ、その上腕部材62を傾かせる。
[0028]
第1関節機構63は、こうした第1関節用モータ71の回転が伝達される駆動側回転部631と、もう一方の従動側回転部632が構成されている。従動側回転部632は、支持プレート61の上端部に径の大きいシャフト741が固定され、そこに回転カバー742が軸受743を介して組付けられている。そして、回転カバー742には上腕プレート621が固定されている。従って、第1関節用モータ71の駆動により駆動側回転部631側で上腕部材62に回転が与えられれば、もう一方の従動側回転部632において上腕部材62の回転を支持することとなる。
[0029]
次に、上腕部材62には、第1関節機構63とは反対側の端部に、前腕部材65を回転させるための第2関節機構66が設けられている。前腕部材65は、左右一対の平行な前腕プレート651が横梁プレート652によって連結されたものである。そして、前腕部材65は、その前腕プレート651が上腕プレート621と平行になるようにして、一対の上腕プレート621の間に挟まれるようにして組み付けられている。すなわち、図7に示すように、前腕部材65の一端部側が第2関節機構66によって上腕部材62に連結されている。また、前腕部材65他端部側にはロボットハンド36が保持されている。
[0030]
第2関節機構66は、第1関節機構62と同様に、左右の一方に駆動側回転部661が構成され、他方には従動側回転部662が構成されている。駆動側回転部661は、前腕プレート651に第2関節用モータ75が固定され、その回転軸がシャフト761を介して減速機762に連結されている。ここでの減速機762は、上腕プレート621と前腕プレート651との両方に固定されており、シャフト761から入力した第2関節用モータ75の回転を減速させ、その減速した回転を前腕プレート652側に出力するものである。よって、第2関節用モータ75からの回転は減速機762を介して前腕部材65に伝えられ、その前腕部材65を傾かせることとなる。
[0031]
一方、従動側回転部662は、前腕プレート651の端部に径の大きいシャフト771が固定され、そこに回転カバー772が軸受773を介して組付けられている。そして、回転カバー772には上腕プレート621が固定され、シャフト771が回転カバー772内で回転可能になっている。従って、第1関節用モータ75の駆動により駆動側回転部661側で前腕部材65に回転が与えられれば、もう一方の従動側回転部662において前腕部材65の回転を支持することとなる。
[0032]
次に、ロボットハンド36は、左右両側の回転支持部78によって前腕プレート651に対して回転可能に取り付けられている。片側の回転支持部78には回転軸にプーリが設けられ、前腕部材65に固定されたハンド用モータ79のプーリとの間でベルト81が掛け渡されている。従って、ハンド用モータ79の駆動によりロボットハンド36が回転して角度調整が行われる。そのロボットハンド36は、3本のチャック爪82が油圧によって作動するクランプ機構を有し、ワークの把持及び解放が可能な構成となっている。そのクランプ機構は、図7に示す面と、その反対側の面にも構成されている。
[0033]
このように多関節ロボットアーム35は、ベース部材(本実施形態では旋回テーブル48)に対して所定の幅間隔で一対の支持プレート61が固定され、それを基部として上腕部材62が第1関節機構63を介して、また前腕部材65が第2関節機構66を介してそれぞれ連結されている。そして、この多関節ロボットアーム35の幅寸法は、外装カバー5で囲まれた工作機械10内部へ上腕部材62や前腕部材65が入り込む大きさになるように抑えられている。つまり、幅方向の最も外側に位置する上腕プレート621の間隔が工作機械10の幅間隔に対応して構成されている。
[0034]
また、多関節ロボットアーム35には、その幅方向のほぼ中央部分にロボットハンド36が取り付けられている。そして、ロボットハンド36は、多関節ロボットアーム35の幅方向両側から回転支持されている。そのロボットハンド36を保持した前腕部材65は上腕部材62より小さく、図4に示すように上腕部材65の収納空間に収まる大きさで形成されている。上腕部材62は、横梁プレート622を小さくして支持プレート61側に大きな開口部分が形成され、多関節ロボットアーム35の折りたたみ作動により、例えば股下を通すようなイメージで反転装置32とワークの受渡しができるようになっている。また、支持プレート61には外側面にストッパ611が形成され、多関節ロボットアーム35の伸び状態と折りたたみ状態との際に、上腕部材62の姿勢(傾き)を一定にするようになっている。
[0035]
続いて、本実施形態の作用について説明する。加工機械ライン1では、ワークが供給パレットからオートローダー3により取り出され、工作機械10Aから順番に工作機械10Dへと搬送される。工作機械10ではタレット装置13の割出しによって加工内容に対応した工具が選択される。例えば、穴あけ加工ではエンドミルなどの回転工具が選択され、タレット装置13に搭載された加工用モータの駆動により回転工具に回転が与えられる。また、旋削加工やバリ取り加工ではバイトなどの切削工具が選択される。そして、X軸駆動装置やZ軸駆動装置によってX軸及びZ軸方向にタレット装置13が移動し、主軸台12の主軸チャック11にセットされたワークに対する工具の位置が調整されて所定の加工が行われる。
[0036]
オートローダー3は、走行用モータ47の駆動によって回転するピニオン46がラック42を転動してY軸方向に移動する。その際、走行スライド44がレール43を掴んで摺動することにより、受渡し装置33などの姿勢を保って移動する。搬送中の受渡し装置33は、多関節ロボットアーム35が図4に示す折りたたみ状態である。そして、対象となる工作機械10の前に停止してワークの受渡しが行われる。ワークの受渡しの際には、多関節ロボットアーム35が、図4に示す折りたたみ状態から図3に示す伸び状態になる。すなわち、多関節ロボットアーム35は、上腕部材62が工作機械10(ベース2)側へと傾いて前傾姿勢になるとともに、上腕部材62から出た前腕部材65が、その上腕部材62よりも前方へと配置される。
[0037]
このとき多関節ロボットアーム35では、第1関節用モータ71が駆動し、その回転がタイミングベルト72を介してシャフト731に伝わり、更に減速機733を介して上腕部材62に伝えられる。そのため、上腕部材62は図4に示す起立した状態から図3に示す前傾姿勢になる。また、第2関節用モータ75が駆動し、その回転がシャフト761を介して減速機762に伝わり、上腕部材62に対して前腕部材65が回転する。そのため、前腕部材65は、図4に示す収納状態から上腕部材62内の収納空間を出て図3に示すように前方へと送り出される。こうした伸び状態によりロボットハンド36が工作機械10の主軸チャック11に近づけられる。一方で、第1関節用モータ71と第2関節用モータ75とを逆回転させることにより、図3に示す伸び状態から図4に示す折りたたみ状態に戻される。
[0038]
ワークの受け渡しでは、ハンド用モータ79の駆動により、その回転がベルト81を介して回転支持部78に伝えられる。そのため、ロボットハンド36が回転して角度調整が行われる。ロボットハンド36では、作動油の供給及び排出によって3本のチャック爪82が径方向に移動し、ワークの把持及び解放が行われる。そして、そのワークが表裏両面に加工が行われる場合には、受渡し装置33から反転装置32に対してワークが受渡しされる。その受渡しは、前述したように多関節ロボットアーム35が折りたたみ状態になり、ロボットハンド36に把持されたワークが上腕部材62の下方開口部分を通って反転装置32へと送られる。
[0039]
以上に説明した本実施形態の多関節ロボットアーム35は、上腕部材62が収納空間を有し、ロボットハンド36を保持した前腕部材65がその収納空間に収まるように折りたたまれた状態を作り出すことができる。そのため、多関節ロボットアーム35がコンパクトになり、外装カバー5の前面部501で覆われた狭い搬送スペース内でも受渡し装置33を移動させることができる。そして、多関節ロボットアーム35が伸びた状態では、離れた位置にある工作機械10の主軸チャック11との間でワークの受渡しを行うことができる。
[0040]
ロボットハンド36は、多関節ロボットアーム35を幅方向に見た場合に、そのほぼ中央部分に配置されて両端が支持されている。そして、多関節ロボットアーム35は、自重のほかロボットハンド36やワークの重量を左右両側で支えるように構成されている。そのため、多関節ロボットアーム35の各部分にかかる荷重を小さくすることができ、各部分の部材や装置の軽量化あるいは小型化が可能になる。この点、上腕部材62は、その立体的な形状によって収納空間を得るとともに剛性が高められている。そして、上腕プレート621から剛性に影響のない程度に余分な部分を切り欠くことによって軽量化され、第1関節用モータ71への負荷が軽減されるため、モータの小型化に寄与している。また、受渡し装置33が軽量化されることにより走行用モータ47への負荷が軽減され、モータの小型に寄与する。
[0041]
本実施形態では、多関節ロボットアーム35が工作機械10を相手として構成されている。工作機械10は特に幅寸法が短くコンパクトなものであり、ワークの受渡しを行う相手となる主軸チャック11が幅方向のほぼ中央付近に配置されている。多関節ロボット35はこうした狭い幅を通して作業をすることに有効である。また、多関節ロボットアーム35は、工作機械10側だけではなく、その反対側に配置された反転装置32との間でもワークの受渡しを可能にしている。
[0042]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、加工機械ライン1に組み込まれた多関節ロボットアームを示して説明したが、本発明の多関節ロボットアームは受渡し装置を構成するものに限定されるわけではない。
また、多関節ロボットアームの構成も前記実施形態に限定されるわけではない。例えば、前腕部材65は左右一対の前腕プレートによってロボットハンド36を両端支持しているが、片側支持するようなものであってもよい。
また、上腕部材62は、一対の上腕プレート621間の力の伝達を横梁プレート622が行っている。この点、力の伝達に対する剛性が得られれば、例えば、横梁プレート622に代えて幅の狭い板材を前腕部材65側端部に設けたり、或いは横梁プレート622を無くして前腕部材65によって行わせるようにしてもよい。これにより、上腕部材62を図3に示した傾きとは反対側に大きく傾かせることができる。
符号の説明
[0043]
1:加工機械ライン 2:ベース 3:オートローダー 5:外装カバー 10:工作機械 11:主軸チャック 31:走行装置 32:反転装置 33:受渡し装置 35:多関節ロボットアーム 36:ロボットハンド 61:支持プレート 62:上腕部材 621:上腕プレート 622:横梁プレート 63:第1関節機構 65:前腕部材 66:第2関節機構
請求の範囲
[請求項1]
所定の幅の間隔でベース部材に立設された一対の支持部材と、前記一対の支持部材に対して第1関節によって回転支持された第1アーム部材と、前記第1アーム部材に対して第2関節によって回転支持された第2アーム部材とを備え、
前記第2アーム部材は、前記第2関節とは反対側にワークを把持するロボットハンドを保持し、前記第1アーム部材は、両端部分に前記第1関節および第2関節を有する一対の側部を有し、当該一対の側部の間に前記第2アーム部材が入り込む収納空間が存在するものであることを特徴とする多関節ロボットアーム。
[請求項2]
前記一対の支持部材は、2枚の平行な支持プレートであり、前記第1アーム部材は、前記側部に相当する平行な一対の側面プレートが幅方向の横梁材によって連結され、当該一対の側面プレートおよび横梁材により3方向を囲む前記収納空間が形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の多関節ロボットアーム。
[請求項3]
前記第1アーム部材は、前記一対の側面プレートに重量軽減孔が形成され、かつ、前記横梁材が前記側面プレートの長手方向の一部分に接合された板材であることを特徴とする請求項2に記載の多関節ロボットアーム。
[請求項4]
前記第2アーム部材は、平行な一対の側面プレートが幅方向の横梁材によって連結されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の多関節ロボットアーム。
図面