明 細 書
発明の名称 : 粘着シート貼付け方法および粘着シート貼付け装置
技術分野
[0001]
本発明は、自動車を含む輸送機械および各種産業機械の鋼板に貼り付けて補強或いは制振するための粘着シートの貼付け方法および粘着シート貼付け装置に関する。
背景技術
[0002]
近年、自動車などの車両の重量を軽量化するために鋼板を薄型化する傾向にある。当該薄型化に伴って鋼板の剛性が低下している。また、薄型化された鋼板は、路面の凹凸やエンジンの振動および騒音が伝わりやすい。したがって、鋼板の剛性を補うための樹脂シートまたは振動などを制振するための樹脂シートが提案されている(特許文献1を参照)。
[0003]
また、補強用の樹脂シートに添設された離型紙を剥離し、自動車のボディの側部外板を構成するサイドメンバーへの貼り付けを自動で行う装置が提案されている。当該装置は、次のようにして樹脂シートの貼り付けを行っている。
[0004]
先ず、樹脂シートから離型紙を剥離する。すなわち、搬送ベルトの前方に配備したガイド部材の先端から突き出た樹脂シートより大きい離型紙に離型紙加圧装置のアームに備わった加圧ローラを押し当てながら揺動下降させる。当該加圧ローラの下降先で搬送ベルトと協働して離型紙の先端を把持する。そのままの状態で搬送ベルトを継続的に駆動させることにより、樹脂シートをガイド部材から送り出しながらから離型紙を剥離する。
[0005]
離型紙の剥離された樹脂シートは、ガイド部材の前方に配備されたシート支持体に載置される。当該シート支持体上の樹脂シートに真空吸着装置のパッドで押し当てて吸着し、自動車のサイドメンバーまで搬送して載置する。その後、円柱状の押圧ローラを樹脂シート上で転動させてサイドメンバーに貼り付ける(特許文献2を参照)。
[0006]
特許文献1 : 特開2005-139218号公報
特許文献2 : 特開2010-24038号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0007]
しかしながら、従来の粘着シートの貼り付け方法では、次のような問題が生じている。自動車のボディの側部外板を構成するサイドメンバーは、側部外板に剛性を持たせるために湾曲または凹凸が形成されている。また、樹脂シートは、通常の粘着テープに比べて厚い。それ故に円筒状または円柱状のローラを利用した場合、ローラが凹凸部分で偏当たりをする。したがって、樹脂シートを外板に密着させることができないといった問題が生じている。
[0008]
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、輸送機械などの凹凸や湾曲した鋼板に粘着シートを密着させることのできる粘着シート貼付け方法および粘着シート貼付け装置を提供することを主たる目的とする。
課題を解決するための手段
[0009]
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
[0010]
すなわち、ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け方法であって、
回転駆動するブラシローラと前記ワークを交差させるように相対的に移動させながら粘着シートを当該ワークに貼り付ける過程で、当該ワークの表面形状に応じて当該ブラシローラの回転速度を調整する
ことを特徴とする。
[0011]
この方法によれば、ブラシローラのブラシ毛が、ワークの表面の形状に追従するように撓りながら粘着シートを押圧する。したがって、凹凸または湾曲するワークの表面に略均一な押圧で粘着シートを貼り付けることができる。
[0012]
上記実施形態において、ワークとブラシローラの相対的な移動速度よりも早い速度でブラシローラの回転速度を調整することが好ましい。
[0013]
この方法によれば、ブラシ毛が、粘着シートの表面で撓りながらスリップする。すなわち、ブラシローラによる粘着シートへの単位面積当たりの押圧を大きくしつつも、ワークとブラシローラの相対的な移動を停止させることがない。したがって、粘着シートをワークの表面に確実に密着させることができる。
[0014]
また、上記実施形態において、粘着シートを貼り付ける過程で、ブラシローラの回転抵抗を検出し、当該検出結果に応じてブラシローラの高さを調整することが好ましい。
[0015]
この方法によれば、ワークの表面形状にブラシロールを精度よく追従させることができる。その結果、ブラシローラの回転を停止させることなく、均一な押圧を粘着シートに作用させることができる。
[0016]
なお、上記の各実施形態において、次のようなブラシローラが利用される。
[0017]
例えば、回転軸に沿って直線状に植設したブラシ毛をローラの表面に所定間隔をおいて複数列で設けられてなるブラシローラ。
[0018]
回転軸に沿って螺旋状に植設したブラシ毛をローラの表面に所定間隔をおいて複数列で設けられてなるブラシローラ。
[0019]
回転軸の端部から中央に向かって山形になるようブラシ毛をローラの表面に植設してなるブラシローラ。なお、当該ブラシローラを利用する場合、ワーク表面の凹凸に応じてブラシローラを傾斜させることが好ましい。
[0020]
この方法によれば、ワーク表面の起立部の角部にブラシ毛を偏当たりさせたり、或いは湾曲形状に追従させたりしやすくなる。
[0021]
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
[0022]
すなわち、ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け装置であって、
前記ワークを保持する保持テーブルと、
ブラシローラを回転駆動させながら前記粘着シートをワークに貼り付ける貼付けユニットと、
前記保持テーブルとブラシローラを交差させるように相対的に移動させる駆動機構と、
前記ワークの表面形状に応じて保持テーブルとブラシロールの相対的な移動速度よりも早い速度でブラシローラの回転速度を調整する速度制御部と、
を備えたことを特徴とする。
[0023]
この構成によれば、ワークに粘着シートを貼り付ける過程で、ワークの表面形状に応じてブラシローラの回転速度が移動速度よりも早く調整される。したがって、上記方法を好適に実施することができる。
[0024]
なお、当該構成において、ブラシローラの回転抵抗を検出する検出器と、
ブラシローラを昇降させる昇降機構と、
検出器の検出結果に応じて昇降機構を操作し、ブラシローラの高さを調整する高さ制御部を備えることが好ましい。
[0025]
この構成によれば、ワーク表面の凹凸形状に応じてブラシローラが昇降させられる。したがって、粘着シートに作用する押圧を略一定に保つことができる。
[0026]
さらに、上記構成において、ブラシローラを傾斜させる揺動機構を備えることが好ましい。
[0027]
この構成によれば、ワーク表面の起立部の角部にブラシ毛を偏当たりさせたり、或いは湾曲形状に追従させたりしやすくなる。
発明の効果
[0028]
本発明の粘着シート貼付け方法および粘着シート貼付け装置によれば、凹凸を有するワークの表面に粘着シートを精度よく貼り付けることができる。
図面の簡単な説明
[0029]
[図1] 粘着シート貼付け装置の正面図である。
[図2] 剥離ユニットの構成を示すブロック図である。
[図3] 貼付けユニットの構成を示すブロック図である。
[図4] 粘着シートの縦断面図である。
[図5] 粘着シートの貼付け動作を説明する図である。
[図6] 粘着シートの貼付け動作を説明する図である。
[図7] 粘着シートの貼付け動作を説明する図である。
[図8] 粘着シートの貼付け動作を説明する図である。
[図9] 粘着シートの貼付け動作を説明する図である。
[図10] 変形例の貼付けローラの正面図である。
[図11] 変形例の貼付けローラの正面図である。
符号の説明
[0030]
6 … 剥離ユニット
7 … 保持テーブル
8 … 貼付け機構
21 … 貼付けユニット
26 … 保持部
27 … 貼付けローラ
28 … 吸着パット
41 … シリンダ
42 … 揺動アーム
43 … エアーモータ
S … 粘着シート
W … ワーク
発明を実施するための最良の形態
[0031]
以下、図面を参照して本発明の一実施例説明する。なお、本実施例では、自動車のボンネットやドアなどの鋼板を補強する補強用鋼板樹脂組成物からなる粘着シートを貼り付ける場合を例にとって説明する。
[0032]
<粘着シート>
粘着シートSは、図4に示すように、補強層1に樹脂層2が積層された枚葉体である。当該樹脂層2の反対側には、当該樹脂層2の形状よりも大きいセパレータ3が添設されている。
[0033]
補強層1は、例えば、加熱による発泡する樹脂層2に靱性を付与するものである。補強層1としては、例えば、ガラスクロス、樹脂ガラスクロス、合成樹脂不織布、金属箔、カーボンファイバなどが挙げられる。
[0034]
<粘着シート貼付け装置>
図1は、この発明の一実施例に係り、粘着シート貼付け装置の全体構成を示した正面図である。
[0035]
この貼付け装置は、シート供給部4、剥離テーブル5、剥離ユニット6、保持テーブル7および貼付け機構8などから構成されている。
[0036]
シート供給部4は、後述するロボット20の移動可能な旋回半径内に設置されたストッカ9に粘着シートSを積層収納して構成されている。
[0037]
剥離テーブル5は、その上に着脱可能な支持プレート11を備えている。支持レート11は、粘着シートSの全面を保持するように扁平面になっている。当該支持プレート11の先端は、丸みを有している。
[0038]
剥離ユニット6は、図1および図2に示すように、エアーシリンダからなる昇降機構12、当該エアーシリンダのロッド13の先端に装着され、昇降する可動台14に軸支された揺動アーム15および当該揺動アーム15の先端に備わった一対の可動片16A、16Bからなる把持部16などから構成されている。
[0039]
揺動アーム15は、圧力制御により揺動および停止並びに揺動速度の調整が可能に構成されている。また、可動片16A、16Bも同様に圧力制御により相対的に接近または離反移動するよう構成されている。
[0040]
昇降機構12、揺動アーム15および把持部16は、図2に示すように、それぞれが電磁弁17A、17B、17Cを介してして1次圧力調整機18および圧縮エアー源19に連通接続されている。
[0041]
1次圧力調整機18は、圧縮エアー源19から供給されるエアーの圧力を所定の安定した2次圧力にして出力する。
[0042]
保持テーブル7は、ワークWを吸着またはクランプによって保持するよう構成されている。
[0043]
貼付け機構8は、搬送用のロボット20および貼付けユニット21などから構成されている。
[0044]
ロボット20は、縦軸P周りに旋回および複数関節ごとに各アームを枢動可能に構成されている。また。アーム先端にはベアリングによって貼付けユニット21を軸Q周りに旋回させるよう保持フレーム22を備えている。なお、ロボット20は、本発明の搬送機構に相当する。
[0045]
保持フレーム22は、後述する貼付けユニット21の可動台25を往復移動させるガイドレール23が設けられている。また、ガイドレール23の一端側に落下防止用のストッパが設けられている。さらに、ガイドレール22の他端側には、可動台10に係合して固定するロック機構24が備わっている。
[0046]
貼付けユニット21は、図1および図3に示すように、可動台25、保持部26および貼付けローラ27などから構成されている。
[0047]
可動台25は、保持部26を備えている。保持部26は、バネなどの弾性体によって下向きに付勢された複数本の吸着パット28を備えている。吸着パット28は、例えば、粘着シートSをワークWに載置するときに、当該粘着シートSに均一な押圧が作用するよう所定ピッチで2次元アレー状に配備されている。
[0048]
当該吸着パット28の吸着面は、同軸芯を有する円弧状の凸部が形成されている。当該凸部は、吸着パット28の凹部内に収まる高さに設定されている。したがって、当該凸部は、吸着パット28に粘着シートSが引き込まれるのを防止する。
[0049]
また、吸着パット28は、上流側から外部接続の真空源30、1次圧力調整機31、圧力変換調整機32および電磁弁33の順に接続されている。なお、圧力変換調整機32には、逆止弁34が装備されている。
[0050]
1次圧力調整機31は、真空源30による吸引力を所定の安定した2次圧力にして出力する。
[0051]
圧力変換調整器32は、例えばレギュレータで構成されており、予め設定した2次圧力(吸引力)を一定に保つように調整する。すなわち、圧力変換調整器32は、吸着パット28の吸引力の変化をセンサ35で検知しとき、当該検知信号の実圧力と設定された基準圧力の偏差を求め、電磁弁33や逆止弁34の開度を調整することによって設定吸引力に戻す。
[0052]
貼付けローラ27は、図8および図9に示すように、円柱状のローラの軸方向に直線状に植設されたブラシ毛40をその表面に所定間隔をおいて複数列で設けられている。また、貼付けローラ27は、可動台25に固定されたシリンダ41のロッド先端に連結された揺動アーム42の先端に備わっている。貼付けローラ27は、駆動装置である例えばエアーモータ43によって回転駆動するように構成されている。なお、駆動装置は、エアーモータに限定されずダイレクトモータやパルスモータなども利用することができる。なお、貼付けローラ20は、本発明のブラシローラに相当する。
[0053]
エアーモータ43は、上流側から外部接続の圧縮エアー源40、1次圧力調整機44、圧力変換調整機45および電磁弁46の順に接続されている。なお、圧力変換調整機45には、逆止弁47が装備されている。
[0054]
圧力変換調整器45は、例えばレギュレータで構成されており、予め設定した2次圧力(圧縮エアー)を一定に保つように調整する。すなわち、圧力変換調整器45は、貼付けローラ27の回転数の変化を、例えば速度計48などのセンサによって計測し、当該計測信号から求まる回転速度と設定された基準速度の偏差を求め、電磁弁46や逆止弁47の開度を調整することによって回転速度を一定に保つよう構成されている。
[0055]
揺動アーム42は、シリンダの圧力制御により揺動および停止並びに揺動速度の調整が可能となるように、上流側から外部接続の圧縮エアー源40、1次圧力調整機51、圧力変換調整機52および電磁弁53の順に接続されている。なお、圧力変換調整機52には、逆止弁54が装備されている。
[0056]
圧力変換調整器52は、例えばレギュレータで構成されており、予め設定した2次圧力を一定に保つように調整する。すなわち、圧力変換調整器52は、貼付けローラ27に作用する回転抵抗を、例えばポテンショメータ55などのセンサによって検知し、当該回転抵抗の実測値と予め決めた基準値の偏差を求め、当該偏差に応じて電磁弁23や逆止弁24の開度を調整することによって貼付けローラ27の押圧を一定に保つよう構成されている。
[0057]
次に、上述の実施例装置を用いて、ワークに粘着シートを貼り付ける一巡の動作を図2から図9に基づいて説明する。
[0058]
先ず、図2および図3に示す操作パネル100から所定条件を制御部60に入力し、粘着シートSの剥離条件および貼り付け条件を設定する。
[0059]
剥離条件は、使用する粘着シートSに添設されたセパレータ3が破断されることなく粘着シートSから剥離可能な張力を求める。すなわち、支持プレート11でセパレータ3を折り返して剥離する過程でセパレータ3が破断するときの剥離速度を実験やシミュレーションによって予め求め、当該速度から剥離許容速度を制御部60に設定する。例えば、当該剥許容速度は、昇降機構12の下降速度と揺動アーム15の揺動下降速度から求める。当該剥離速度と略同じ速度で粘着シートSを吸着保持する保持部26を備えた貼付けユニット21を水平移動させるように設定する。本実施例では、貼付けユニット21のロック機構24を解除して貼付けユニット21が、フリーな状態でガイドレール23を走行するように設定される。換言すれば、セパレータSの剥離時に貼付けユニット21の自重および吸着パット28による下向きの付勢力が作用するよう設定される。
[0060]
次に、剥離ユニット6の把持部16の高さなどハード構成の設定をする。例えば、支持プレート11から送り出される粘着シートSの撓み量を考慮し、粘着シートSに添設されたセパレータ3の先端部分が、前方で待機している可動片16A,16Bの間に進入するよう把持部16の高さを調整する。
[0061]
次に、貼付け条件は、ロボット20のアームの動作によって貼付けユニット21を移動させながらワークWに粘着シートSを貼り付ける移動速度よりも貼付けローラ27の回転速度が早くなるよう設定される。貼り付け速度および回転速度は、使用する粘着シートSおよび貼付けローラ27に応じて実験やシミュレーションによって最適条件をレシピとして制御部60に予め記憶されている。
[0062]
また、粘着シートSの貼り付け開始位置での貼付けローラ27の押圧が所定の押圧になるように初期設定する。
[0063]
各種初期条件の設定が完了すると、装置を作動させる。先ず、ロボット20が、ストッカ9の上まで貼付けユニット21を移動させる。ロボット20は、貼付けユニット21を所定高さまで下降させる。保持部26の吸着パット28が、ストッカ9内に積層収納されている粘着シートSを吸着保持する。
[0064]
ロボット20は、粘着シートSを吸着保持している貼付けユニット21を支持プレート11上に移動させて粘着シートSを載置する。その後、貼付けユニット27は、図5に示すように、粘着シートSを吸着したまま自重および吸着パット28の弾性付勢により、粘着シートSに適度の荷重をかけながら支持プレート11上で粘着シートSをスライドさせてゆく。
[0065]
支持プレート11の先端から粘着シートSが突き出ると、前方で待機している開放状態にある可動片16A、16Bの間にセパレータ3の先端部分が進入してゆく。
[0066]
セパレータ3が所定位置まで達すると、図6に示すように、可動片16A、16Bを閉じてセパレータ3の先端部分を把持し、図7に示すように、昇降機構12を下降させつつ揺動アーム15を揺動下降する。水平搬送される粘着シートSと交差する方向に揺動アーム15を下降させることにより、セパレータ3が支持プレート11の先端で折り返されて剥離されてゆく。このとき、粘着シートSの長手水平軸に対して折り返されたセパレータ3のなす角度αは、鋭角に保たれている。
[0067]
このセパレータ3の剥離動作に同期して、貼付けユニット21は、粘着シートSを吸着保持しまま、水平移動してゆく。
[0068]
粘着シートSから剥離されたセパレータ3は、揺動アーム15の下方に配置された吸引装置70によって回収される。
[0069]
ロボット20は、貼付けユニット21の保持部26に粘着シートSを吸着保持させたまま保持テーブル7まで移動する。この移動過程で、貼付けユニット21を傾斜姿勢にしてガイドレール23上でスライドさせる。つまり、ガイドレール23の端部に移動した貼付けユニット21の可動台25をロック機構24によって固定する。
[0070]
貼付けユニット21が保持テーブル7上のワークWの所定位置に達すると、ロボット20は、貼付けユニット21を下降させ、吸着パット28によって吸着されている粘着シートSをワークWに載置する。
[0071]
ロボット20は、吸着を解除した吸着パット28が粘着シートSに接触しない位置まで貼付けユニット21を移動させる。その後、制御部60は、シリンダ41によって揺動アーム41を操作させ、図8に示すように、貼付けローラ27を貼付け位置まで下降させる。同時に貼り付けローラ27を回転させる。
[0072]
貼付けローラ27が貼り付け位置に達すると、ロボット20は、図9に示すように、ワークW上に貼付けローラ27を交差させるよう貼付けユニット21を移動させる。このとき、貼付けローラ27は、移動速度よりも早い速度で回転しながら粘着シートSを押圧してワークWに貼り付けゆく。
[0073]
この貼り付け過程で、ポテンショメータ55によって貼付けローラ27に作用する回転抵抗が検出される。制御部70は、回転抵抗の実測値と基準値を比較し、求まる偏差に応じてシリンダ41によって揺動アーム42の揺動角度を変更させて貼付けローラ27の高さを調整し、貼付けローラ27による粘着シートSへの押圧が一定となるようコントロールしている。
[0074]
また、制御部60は、速度計48によって貼付けローラ27の回転速度をモニタし、回転速度が一定に保たれるようにコントロールしている。
[0075]
貼付けローラ27が終端位置に達すると、制御部60は、貼付けローラ27の回転を停止させるとともに、次のワークWに粘着シートSを貼り付けるようロボット20を操作する。同時に粘着シートSの貼り付けられたワークWは、保持テーブル7から搬出される。以上でワークWに粘着シートを貼り付ける一巡の動作が終了し、以後同じ動作が繰り返される。
[0076]
上記実施例装置によれば、貼付けローラ27の表面に所定間隔をおいて複数列で設けられたブラシ毛が、粘着シートSの表面で撓りながらワーク表面に追従するとともに、スリップしながら複数回に亘って同一箇所を押圧する。すなわち、貼付けローラ27による粘着シートSへの単位面積当たりの押圧を大きくすることができる。また、貼付けローラ27の回転抵抗を検出して高さ調整しているので、貼付けローラ27の回転が停止することがない。したがって、ワーク全面に略均一な押圧を付与しながら粘着シートSをワークWに貼り付けることができるので、粘着シートSをワークWの表面に確実に密着させることができる。
[0077]
なお、本発明は以下のような形態で実施することもできる。
[0078]
(1)上記実施例装置において、貼付けユニット21は、ロボット20に装着された形態に限定されな。例えば、天井に設けられたガイドレールを走行するよう懸垂支持しれた昇降機構の先端に装着された構成であってもよい。したがって、ワークWを保持する保持テーブル7は、載置面が傾斜したものに限定されず、水平であってもよい。
[0079]
また、貼付けユニット21を固定配備し、保持テーブル7が移動するように構成してもよい。
[0080]
(2)上記実施例の貼付けローラ27は、図10に示すように、ローラ表面に螺旋状に植設されたブラ毛40をその表面に所定間隔をおいて複数列で設けたものであってもよい。或いは、貼付けローラ27は、図11に示すように、両端から回転軸の中心に向かうについてブラシ毛40が長くなるよう構成したものであってもよい。
[0081]
螺旋状にブラシ毛40を植設した貼付けローラ27Aを利用した場合、直接状にブラシ毛40を植設した貼付けローラ27に比べて、より均一な押圧力を作用させることができる。すなわち、直線状のブラシ毛40を設けた貼付けローラ27を利用した場合、ワークWに接触しているブラシ毛から次のブラシ毛の列がワークWに接触するときに、列同士のピッチによってブラシ毛40が間欠的にワークWに衝突する。換言すれば、粘着シートSに軽く衝撃を加えることになる。
[0082]
これに対して、螺旋状のブラシ毛40を設けた貼付けローラ27Bを利用した場合、螺旋に沿ってブラシ毛40が連続的に撓りながら粘着シートSを押圧する。したがって、常に均一な押圧が粘着シートSに作用する。
[0083]
長さの異なるブラシ毛が植設された貼付けローラ27Bを利用する場合、ワークWの表面に対して貼付けローラ27Bを斜めにして転動させてもよい。すなわち、例えば、ワークWの表面が湾曲している場合、当該曲率と略同程度の曲率にすることにより、粘着シートSに作用させる圧を略一定に保つことができる。また、ワークWが表面に凹凸を有する場合、当該凹凸の形状に応じてブラシ毛を偏って当てることにより、凹凸の角部に粘着シートSを密着させることができる。
[0084]
(3)上記実施例装置において、貼付けローラ27の高さ調整は、上記形態に限定されない。例えば、ワークWの表面形状のマッピングデータを予め取得し、当該マッピングデータの位置情報と移動する貼付けローラ27の位置情報に基づいて、当該貼り付けローラ27の高さを調整してもよい。
産業上の利用可能性
[0085]
以上のように、本発明は、凹凸を有するワークの表面に粘着シートを精度よく貼り付けるのに適している。
請求の範囲
[請求項1]
ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け方法であって、
回転駆動するブラシローラと前記ワークを交差させるように相対的に移動させながら粘着シートを当該ワークに貼り付ける過程で、当該ワークの表面形状に応じて当該ブラシローラの回転速度を調整する
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
[請求項2]
請求項1に記載の粘着シート貼付け方法において、
前記ワークとブラシローラの相対的な移動速度よりも早い速度でブラシローラの回転速度を調整する
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
[請求項3]
請求項1または請求項2に記載の粘着シート貼付け方法において、
前記粘着シートを貼り付ける過程で、ブラシローラの回転抵抗を検出し、当該検出結果に応じてブラシローラの高さを調整する
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
[請求項4]
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粘着シート貼付け方法において、
前記ブラシローラは、回転軸に沿って直線状に植設したブラシ毛をローラの表面に所定間隔をおいて複数列で設けられてなる
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
[請求項5]
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粘着シート貼付け方法において、
前記ブラシローラは、回転軸に沿って螺旋状に植設したブラシ毛をローラの表面に所定間隔をおいて複数列で設けられてなる
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
[請求項6]
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の粘着シート貼付け方法において、
前記ブラシローラは、回転軸の端部から中央に向かって山形になるようブラシ毛をローラの表面に植設してなり、
前記ワーク表面の凹凸に応じてブラシローラを傾斜させる
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
[請求項7]
ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け装置であって、
前記ワークを保持する保持テーブルと、
ブラシローラを回転駆動させながら前記粘着シートをワークに貼り付ける貼付けユニットと、
前記保持テーブルとブラシローラを交差させるように相対的に移動させる駆動機構と、
前記ワークの表面形状に応じて保持テーブルとブラシロールの相対的な移動速度よりも早い速度でブラシローラの回転速度を調整する速度制御部と、
を備えたことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
[請求項8]
請求項7に記載の粘着シート貼付け装置おいて、
前記ブラシローラの回転抵抗を検出する検出器と、
前記ブラシローラを昇降させる昇降機構と、
前記検出器の検出結果に応じて昇降機構を操作し、ブラシローラの高さを調整する高さ制御部と、
を備えたことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
[請求項9]
請求項7または請求項8に記載の粘着シート貼付け装置おいて、
前記ブラシローラを傾斜させる揺動機構と、
を備えたことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
図面