国際・国内特許データベース検索
このアプリケーションの一部のコンテンツは現在ご利用になれません。
この状況が続く場合は、次のお問い合わせ先までご連絡ください。フィードバック & お問い合わせ
1. (WO2015141720) 多気筒エンジンの動弁装置
Document

明 細 書

発明の名称 多気筒エンジンの動弁装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009   0010   0011  

課題を解決するための手段

0012  

発明の効果

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020  

図面の簡単な説明

0021  

発明を実施するための形態

0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122  

符号の説明

0123  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17A   17B   17C   17D   18   19   20   21   22   23   24A   24B   24C   24D   24E   24F   25   26   27A   27B   27C   28   29A   29B   29C   29D   29E  

明 細 書

発明の名称 : 多気筒エンジンの動弁装置

技術分野

[0001]
 本発明は、バルブリフト特性が異なる複数のカムを切替える機能を有する多気筒エンジンの動弁装置に関する。

背景技術

[0002]
 車両に搭載される近年の多気筒エンジンとしては、運転中に運転形態を切替えることが可能なものがある。切替えられる運転形態は、燃料消費量や出力特性などが異なる二つの運転形態である。運転形態の切替えは、吸気弁や排気弁を駆動する動弁装置を使用して行われることが多い。
[0003]
 運転形態を切替えることが可能な従来の動弁装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された動弁装置は、カムシャフトと、このカムシャフトと吸気弁または排気弁との間で駆動力を伝達するロッカーアームと、運転形態を切替えるための駆動装置とを備えている。カムシャフトには、吸気弁または排気弁を駆動するための第1のカムおよび第2のカムと、運転形態を切替えるための前進用カムおよび後退用カムとが設けられている。第1のカムと第2のカムは、バルブリフト量が異なる形状に形成されている。これらの第1および第2のカムとロッカーアームとのうちいずれか一方は、カムシャフトの軸線方向に移動自在に構成されている。
[0004]
 前進用カムと後退用カムは、それぞれ螺旋状に形成されたカム溝によって構成されており、カムシャフトの軸線方向に並べて配設されている。前進用カムの螺旋は、カムシャフトの外周面に沿って軸線方向の一方と回転方向とに延びている。後退用カムの螺旋は、カムシャフトの外周面に沿って軸線方向の他方と回転方向とに延びている。すなわち、前進用カムと後退用カムとは、螺旋の延びる方向が逆方向となる形状に形成されている。
[0005]
 駆動装置は、前進用カムに選択的に接触する前進用カムフォロアと、後退用カムに選択的に接触する後退用カムフォロアとを備えている。前進用カムフォロアと後退用カムフォロアは、第1および第2のカムとロッカーアームとのうちいずれか一方に連結されている。
 この駆動装置の前進用カムフォロアが前進用カムに接触することによって、第1および第2のカムまたはロッカーアームがカムシャフトの軸線方向の一方に移動する。
[0006]
 後退用カムフォロアが後退用カムに接触することによって、第1および第2のカムまたはロッカーアームがカムシャフトの軸線方向の他方に移動する。このため、第1のカムがロッカーアームに接触する第1の運転形態と、第2のカムがロッカーアームに接触する第2の運転形態とが切り替えられる。このように運転形態が切り替えられる時期は、吸気弁または排気弁が閉じている時期である。
 特許文献1中には、1つの駆動装置で1気筒または2気筒において運転形態を切替える動弁装置が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特開2010-249123号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 特許文献1に開示されている動弁装置では、多気筒エンジンに適用すると、後述する2つの問題が生じる。第1の問題は、1本のカムシャフトに前進用カムと後退用カムとが気筒毎に設けられると、カムシャフトの全長が長くなってエンジンが大型化してしまうという問題である。この第1の問題は、1組の前進用カムと後退用カムとを2気筒分の駆動装置において共有することにより、ある程度は解消することができる。しかし、この構成を採ると、第2の問題が生じる。
[0009]
 第2の問題は、運転形態を切替えることが可能なエンジン回転数に制約を受けるという問題である。特許文献1記載の動弁装置において、1組の前進用カムと後退用カムとを使って2つの気筒の運転形態を切替えるためには、2つの気筒において吸気弁または排気弁が同時に閉じているときに前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアが軸線方向に移動する必要がある。
[0010]
 2つの気筒において吸気弁または排気弁が同時に閉じている期間は、1つの気筒で吸気弁または排気弁が閉じている期間より短くなる。この場合、前進用カムと後退用カムの傾斜部分の傾斜角度が相対的に大きくなる。このように傾斜部分の傾斜角度が大きくなると、カムフォロアの移動方向が急速に変わるとともに、カムフォロアがカムシャフトの軸線方向に移動する速度が高くなる。この結果、前進用カムと前進用カムフォロアとの接触部分および後退用カムと後退用カムフォロアとの接触部分が摩耗し易くなる。
 このため、運転形態の切替えは、エンジン回転数に制約を受け、エンジン回転数が低いときにしか行うことができなくなる。
[0011]
 本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、エンジンの運転形態を切替えるにあたって、エンジンの大型化を防ぐことができるとともに、切替時のエンジン回転数に制約を受けることがない多気筒エンジンの動弁装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0012]
 この目的を達成するために、本発明に係る多気筒エンジンの動弁装置は、多気筒エンジン用シリンダヘッドに回転自在に支持されたカムシャフト本体と、前記カムシャフト本体の各気筒の吸気弁または排気弁と対応する位置に設けられた気筒毎の第1の弁駆動用カムと、前記第1の弁駆動用カムとはバルブリフト特性が異なる形状に形成され、前記第1の弁駆動用カムとカムシャフト本体の軸線方向に隣り合う位置に設けられた気筒毎の第2の弁駆動用カムと、前記カムシャフト本体と平行なロッカーシャフトを介して前記シリンダヘッドに前記ロッカーシャフトを中心として揺動自在に支持されるとともに前記軸線方向に移動自在に支持され、前記第1の弁駆動用カムまたは第2の弁駆動用カムと吸気弁または排気弁との間に介在する気筒毎のロッカーアームと、前記カムシャフト本体の回転を前記軸線方向の往復運動に変換し、前記第1の弁駆動用カムと前記第2の弁駆動用カムのバルブリフト量が共に0であるときに前記ロッカーアームに前記軸線方向へ推力を加えて前記ロッカーアームを前記軸線方向に移動させて、このロッカーアームを前記第1の弁駆動用カムと接触する第1の位置と前記第2の弁駆動用カムに接触する第2の位置とのいずれか一方の位置に位置付ける駆動装置とを備え、前記駆動装置は、前記カムシャフト本体の外周部に設けられ、カムシャフト本体の軸線方向の一方と回転方向とに延びる傾斜部を有する1つの前進用カムと、前記前進用カムと前記軸線方向に隣り合う位置に設けられ、カムシャフト本体の軸線方向の他方と回転方向とに延びる傾斜部を有する1つの後退用カムと、前記カムシャフト本体における前記前進用カムおよび後退用カムが設けられた部分と対向する位置に、前記軸線方向へ移動可能な状態で前記カムシャフト本体の回転方向に並べて配置された気筒毎のスライダと、前記スライダのそれぞれに設けられ、前記1つの前進用カムに選択的に接触する前進用カムフォロアと、前記スライダのそれぞれに設けられ、前記1つの後退用カムに選択的に接触する後退用カムフォロアと、前記スライダと前記ロッカーアームとを気筒毎に連結する気筒毎の連結機構とを備えるものであることを特徴とする。

発明の効果

[0013]
 本発明に係る動弁装置において、エンジンの運転形態を切替えるためには、前進用カムフォロアを前進用カムに接触させるか、後退用カムフォロアを後退用カムに接触させる。前進用カムまたは後退用カムは、カムシャフト本体の回転に伴って回転方向の下流側に進み、所定の切替時期に前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアをカムシャフトの軸線方向の一方または他方に押す。この押圧動作は、前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアと対応する気筒の第1のカムと第2のカムのバルブリフト量が共に0になる期間内(吸気弁または排気弁が閉じている期間内)に行われる。
[0014]
 前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアが軸線方向に押されることにより、これらのカムフォロアを支持するスライダと、このスライダに連結機構を介して連結されたロッカーアームとが一体となってカムシャフト本体の軸線方向に移動する。ここでは、このスライダを便宜上「第1のスライダ」という。また、以下においては、カムシャフト本体の軸線方向へのスライダおよびロッカーアームの移動を単に「スライド」という。
[0015]
 前進用カムと後退用カムは、上述したように前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアをカムシャフト本体の軸線方向に押した後、さらに回転方向の下流側に進む。そして、この前進用カムと後退用カムは、第1のスライダより回転方向の下流側に位置する次のスライダの前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアをカムシャフト本体の軸線方向に押す。ここでは、便宜上、次のスライダを単に「第2のスライダ」という。この押圧動作は、第2のスライダと対応する気筒の第1の弁駆動用カムと第2の弁駆動用カムのバルブリフト量が共に0になる期間内に行われる。
[0016]
 この第2のスライダは、前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアによって押されることにより、この第2のスライダに連結機構を介して連結されたロッカーアームと一体にスライドする。
 ロッカーアームは、スライダと一体に移動することによって、第1の位置または第2の位置に位置付けられる。ロッカーアームが第1の位置に位置付けられると、第1の弁駆動用カムがロッカーアームに接触し、第1の弁駆動用カムによって規定されるバルブリフト特性に基づいて吸気弁または排気弁が動作する。
[0017]
 一方、ロッカーアームが第2の位置に位置付けられると、第2の弁駆動用カムがロッカーアームに接触し、第2の弁駆動用カムによって規定されるバルブリフト特性に基づいて吸気弁または排気弁が動作する。すなわち、ロッカーアームが第1の位置から第2の位置へ移動したり、あるいは第2の位置から第1の位置に移動することにより、このロッカーアームと対応する気筒において、運転形態が切替えられる。切替えられる運転形態としては、出力特性や燃料消費量などが異なる2つの運転形態である。
[0018]
 本発明に係る多気筒エンジンの動弁装置においては、気筒毎のスライダがカムシャフト本体の回転方向に並ぶ状態で配置されている。これらの複数のスライダは、運転形態が切替えられるときに1組の前進用カムと後退用カムを駆動源として順次スライドする。このため、本発明によれば、前進用カムと後退用カムとを気筒毎に備える場合と較べると、カムシャフト本体の軸線方向の長さを短く形成でき、動弁装置の小型化を図ることができる。
[0019]
 スライダがスライドする期間(カムシャフト本体の回転角度)は、このスライダと対応する気筒において第1および第2のカムのバルブリフト量が共に0になる期間内であれば、制約を受けることはない。すなわち、スライダがスライドする期間は、複数の気筒の吸気弁または排気弁が同時に閉じている期間と較べると、長くとることができる。
[0020]
 このため、前進用カムと後退用カムは、カムシャフト本体が高速で回転する場合であってもカムフォロアが円滑に移動する形状に形成することができる。このことは、運転形態を切替えるときにエンジン回転数に制約を受けることがないことを意味する。
 したがって、本発明によれば、エンジンの運転形態を切替えるにあたって、エンジンの小型化を図りながら、エンジン運転域の全域において切替動作を行うことが可能な多気筒エンジンの動弁装置を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0021]
[図1] 図1は、本発明の第1の実施の形態による多気筒エンジンの動弁装置の正面図である。同図においては、この動弁装置が装備されるシリンダヘッドの一部を破断した状態で描いてある。
[図2] 図2は、第1の実施の形態によるカムシャフトの側面図である。
[図3] 図3は、第1の実施の形態によるカムシャフトの断面図である。図3は、図2におけるカムシャフトのIII-III線断面図である。
[図4] 図4は、第1の実施の形態によるカムシャフトの回転角とバルブリフト量の関係を示すグラフである。
[図5] 図5は、第1の実施の形態による切替用カムを拡大して示す側面図である。
[図6] 図6は、第1の実施の形態による前進用カムと後退用カムの展開図である。
[図7] 図7は、第1の実施の形態による前進用カムの開始端側直線部を示す断面図である。図7は、図5におけるVII-VII線断面図である。
[図8] 図8は、第1の実施の形態による前進用カムの終了端側直線部を示す断面図である。図8は、図5におけるVIII-VIII線断面図である。
[図9] 図9は、第1の実施の形態による前進用カムと後退用カムの深さを説明するためのグラフである。
[図10] 図10は、第1の実施の形態による動弁装置の側面図である。
[図11] 図11は、第1の実施の形態によるロッカーアームとスライダおよび連結機構とを示す斜視図である。
[図12] 図12は、第1の実施の形態による駆動装置の分解斜視図である。
[図13] 図13は、第1の実施の形態によるロッカーアームとスライダおよび連結機構とを気筒毎に示す分解斜視図である。
[図14] 図14は、第1の実施の形態によるロッカーアームとスライダおよび連結機構とを示す平面図である。
[図15] 図15は、第1の実施の形態による第1および第2のロッカーシャフトと第1および第2の結合部材の断面図である。
[図16] 図16は、第1の実施の形態による第3および第4のロッカーシャフトと第3および第4の結合部材の断面図である。
[図17A] 図17Aは、第1の実施の形態によるロッカーシャフトおよび連結部材の断面図で、図14におけるA-A線断面図である。
[図17B] 図17Bは、第1の実施の形態によるロッカーシャフトおよび連結部材の断面図で、図14におけるB-B線断面図である。
[図17C] 図17Cは、第1の実施の形態によるロッカーシャフトおよび連結部材の断面図で、図14におけるC-C線断面図である。
[図17D] 図17Dは、第1の実施の形態によるロッカーシャフトおよび連結部材の断面図で、図14におけるD-D線断面図である。
[図18] 図18は、第1の実施の形態によるスライダと連結部材の断面図である。図18は、図14におけるXVIII-XVIII線断面図である。
[図19] 図19は、第1の実施の形態によるスライダと連結部材の断面図である。図19は、図14におけるXIX-XIX線断面図である。
[図20] 図20は、第1の実施の形態によるスライダの断面図である。図20は、図14におけるXX-XX線断面図である。
[図21] 図21は、第1の実施の形態によるスライダと切替用カムを示す側面図である。
[図22] 図22は、第1の実施の形態による駆動装置の断面図である。
[図23] 図23は、第1の実施の形態による駆動装置のカバーを示す斜視図である。
[図24A] 図24Aは、第1の実施の形態によるスライダにおける前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアを支持する部分の断面図である。図24Aは、前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアが使用位置に位置している状態を示す。
[図24B] 図24Bは、第1の実施の形態によるスライダにおける前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアを支持する部分の断面図である。図24Bは、前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアが中間位置に位置している状態を示す。
[図24C] 図24Cは、第1の実施の形態によるスライダにおける前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアを支持する部分の断面図である。図24Cは、前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアが退避位置に位置している状態を示す。
[図24D] 図24Dは、第1の実施の形態によるスライダにおける前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアを支持する部分の断面図である。図24Dは、図24AにおけるD-D線断面図である。
[図24E] 図24Eは、第1の実施の形態によるスライダにおける前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアを支持する部分の断面図である。図24Eは、図24BにおけるE-E線断面図である。
[図24F] 図24Fは、第1の実施の形態によるスライダにおける前進用カムフォロアまたは後退用カムフォロアを支持する部分の断面図である。図24Fは、図24CにおけるF-F線断面図である。
[図25] 図25は、第1の実施の形態による駆動装置の制御系の構成を示すブロック図である。
[図26] 図26は、第1の実施の形態によるアクチュエータの構成を説明するための側面図である。図26においては、スライダを省略して描いてある。
[図27A] 図27Aは、第1の実施の形態によるスライダとカムフォロアの動作を説明するための断面図で、第1の運転形態が採られているときの状態を示す。図27Aには、切替用カムと、1気筒分のスライダおよびアクチュエータのみが描いてある。
[図27B] 図27Bは、第1の実施の形態によるスライダとカムフォロアの動作を説明するための断面図で、切替中の状態を示す。図27Bには、切替用カムと、1気筒分のスライダおよびアクチュエータのみが描いてある。
[図27C] 図27Cは、第1の実施の形態によるスライダとカムフォロアの動作を説明するための断面図で、第2の運転形態への切替が終了した状態を示す。図27Cには、切替用カムと、1気筒分のスライダおよびアクチュエータのみが描いてある。
[図28] 図28は、第2の実施の形態による駆動装置の分解斜視図である。
[図29A] 図29Aは、第3の実施の形態による係合部材を説明するための図である。図29Aは、スライダの側面図である。
[図29B] 図29Bは、第3の実施の形態による係合部材を説明するための図である。図29Bは、スライダの背面図である。
[図29C] 図29Cは、第3の実施の形態による係合部材を説明するための図である。図29Cは、スライダの平面図である。
[図29D] 図29Dは、第3の実施の形態による係合部材を説明するための図である。図29Dは、図29BにおけるD-D線断面図である。
[図29E] 図29Eは、第3の実施の形態による係合部材を説明するための図である。図29Eは、図29BにおけるE-E線断面図である。

発明を実施するための形態

[0022]
 以下、本発明に係る多気筒エンジンの動弁装置の一実施の形態を図1~図27によって詳細に説明する。この実施の形態においては、本発明を直列4気筒エンジンに適用する場合の一例を説明する。
[0023]
 図1に示すエンジンの動弁装置1は、4気筒エンジン用シリンダヘッド2に設けられたカムシャフト3と、このカムシャフト3と吸気弁4との間に介在するロッカーアーム5とを備えている。カムシャフト3とロッカーアーム5とには、後述する駆動装置6が連結されている。この駆動装置6は、エンジンの出力が相対的に大きくなる第1の運転形態と、出力が相対的に小さくなる第2の運転形態とを切替えるためのものである。本発明は、図1に示す吸気弁用動弁装置1と、排気弁7を駆動するための排気弁用動弁装置(図示せず)との両方に適用することができる。なお、本発明が適用された排気弁用動弁装置は、吸気弁用動弁装置1と同一構造のものである。このため、この実施形態においては、排気弁用動弁装置の図示および説明を省略した。
[0024]
 吸気弁4は、1気筒当たり2本設けられている。これらの吸気弁4は、シリンダヘッド2の吸気ポート11を開閉する弁体4aと、この弁体4aからシリンダヘッド2の動弁室12内に延びるバルブステム4bとによって構成されている。バルブステム4bは、シリンダヘッド2にバルブステムガイド13によって移動自在に支持されている。バルブステム4bの先端部とシリンダヘッド2との間には、吸気弁4を閉じる方向に付勢するバルブスプリング14が設けられている。バルブステム4bの先端部には、キャップ状のシム4cが設けられている。
[0025]
 吸気ポート11は、シリンダヘッド2の内部で二又状に分岐する形状に形成されている。この吸気ポート11の上流端は、シリンダヘッド2の側部に開口し、吸気ポート11の下流端は、それぞれ燃焼室15に開口している。燃焼室15の中央部には点火プラグ16が設けられている。
[0026]
 カムシャフト3は、図示していないクランクシャフトの回転が伝動機構を介して伝達されることにより回転する。この実施の形態によるカムシャフト3は、図2に示すように、棒状に形成されたカムシャフト本体21と、このカムシャフト本体21における吸気弁4と対応する位置にそれぞれ設けられた動弁用カム22~29と、カムシャフト本体21の軸線方向の中央部に設けられた切替用カム30とを備えている。
[0027]
 カムシャフト本体21は、シリンダヘッド2の軸受部2aに回転自在に支持されており、軸線方向の一端部に伝動装置が接続されている。以下においては、カムシャフト本体21における伝動装置が接続される一端部を便宜上、前端部21aとし、他端部を便宜上、後端部21bとして説明する。また、以下においては、カムシャフト本体の前端部21a側を単に前側と呼称し、後端部12b側を単に後側と呼称する。前側は、図2においては右側で、図2中に符号Fを付して示す。後側は、図2においては左側で、図2中に符号Bを付して示す。
[0028]
 動弁用カム22~29は、後述するロッカーアーム5と接触するものである。各々の動弁用カム22~29は、カムシャフト本体21の軸線方向に隣り合う第1の弁駆動用カム31(以下においては、単に第1のカム31という)と、第2の弁駆動用カム32(以下においては、単に第2のカム32という)とによって構成されている。これらの第1のカム31と第2のカム32とのうちいずれか一方と吸気弁4との間に後述するロッカーアーム5が介在される。第1のカム31は、第1の運転形態が採られるときにロッカーアーム5と接触する。第2のカム32は、第2の運転形態が採られるときにロッカーアーム5と接触する。
[0029]
 複数の動弁用カム22~29のうち、カムシャフト本体21の最も前側(図2において最も右側)に位置する動弁用カム22と、この動弁カム22に隣接する動弁用カム23は、この実施の形態による4気筒エンジンの1番気筒用のものである。図2において、右から3番目に位置する動弁用カム24と4番目に位置する動弁用カム25は、2番気筒用のものである。図2において、右から5番目に位置する動弁用カム26と6番目に位置する動弁用カム27は、3番気筒用のものである。図2において、右から7番目に位置する動弁用カム28と8番目に位置する動弁用カム29は、4番気筒用のものである。
[0030]
 各動弁用カム22~29の第1のカム31は、同一の形状に形成されている。第1のカム31は、図3に示すように、ベース円部31aと頂部31bとを有している。ベース円部31aは、吸気弁4が閉じているときに使用され、頂部31bは、吸気弁4を開閉するときに使用される。ベース円部31aは、カムシャフト本体21と同一軸線上に位置する円柱の一部となる形状に形成されている。頂部31bは、ベース円部31aから径方向の外側へ断面山形状に突出する形状に形成されている。
[0031]
 第1のカム31のカムプロフィールは、図4中に実線で示すように形成されている。図4においては、第1のカム31の頂部31bが後述するロッカーアーム5に接触して吸気弁4が開く期間を「吸気弁開」として示す。また、図4において、第1のカム31のベース円部31aがロッカーアーム5に接触して吸気弁4が閉じる期間を「吸気弁閉」として示す。
 この実施の形態による4気筒エンジンの点火順序は、図4に示すように、1番気筒、3番気筒、4番気筒、2番気筒の順序である。
[0032]
 各動弁用カム22~29の第2のカム32は、第1のカム31とはバルブリフト特性が異なる形状に形成されている。また、1気筒あたり二つ設けられている第2のカム32,32のうち、カムシャフト本体21の前側に位置する一方の第2のカム32Aは、図3に示すように、第1のカム31と同様にベース円部32Aaと頂部32Abとを有している。ベース円部32Aaの曲率半径は、第1のカム31のベース円部31aの曲率半径と同一である。頂部32Abは、図4中に破線で示すように、第1のカム31の頂部31bよりバルブリフト量が少なくなる形状に形成されている。
[0033]
 1気筒あたり二つ設けられている第2のカム32,32のうち、カムシャフト本体21の後側に位置する他方の第2のカム32Bは、カムシャフト本体21と同一軸線上に位置する円柱状に形成されている。この第2のカム32Bの曲率半径は、第1のカム31のベース円部31aの曲率半径と同一である。すなわち、この第2のカム32Bは、バルブリフト量が0になる形状に形成されている。
[0034]
 切替用カム30は、後述するロッカーアーム5をカムシャフト3の軸線方向へ駆動する駆動装置6の動力源となるものである。この切替用カム30は、図5に示すように、カムシャフト本体21の大径部33に形成されている。この大径部33は、カムシャフト本体21の軸線方向の中央部に位置付けられており、他の部位より外径が大きくなる円柱状に形成されている。切替用カム30は、この大径部33の外周面に開口するカム溝33a,33bからなる前進用カム34と後退用カム35とによって構成されている。
[0035]
 前進用カム34と後退用カム35は、カムシャフト本体21の軸線方向に並ぶ状態で形成されている。この実施の形態による前進用カム34と後退用カム35は、図6に示すように、これら両カム34,35の間でカムシャフト本体21の軸線方向とは直交する仮想平面(図示せず)を対称面として面対称に形成されている。これらの前進用カム34と後退用カム35は、それぞれ3つの機能部によって構成されている。この3つの機能部とは、カムシャフト本体21の軸線方向に推力を発生させるための傾斜部36と、この傾斜部36の両端に接続された開始端側直線部37および終了端側直線部38である。図6に示す切替用カム30の進行方向は、図6中に矢印Rで示すように、図6の下部が上方に移動する方向である。
[0036]
 傾斜部36は、前進用カム34と後退用カム35における図5中に二点鎖線Aで囲まれた範囲内の部位であり、カムシャフト本体21の軸線方向と回転方向とに延びている。図5において、カムシャフト本体21の回転方向Rは、図5の下部が上方に移動する方向である。また、傾斜部36は、開始端側直線部37に接続される加速部36aと、終了端側直線部38に接続される減速部36bとを有している。
[0037]
 前進用カム34の傾斜部36と、後退用カム35の傾斜部36とは、互いに逆方向に傾斜している。前進用カム34の傾斜部36は、回転方向Rの上流側(図6においては下側)に向かうにしたがって次第にカムシャフト3の前側Fに位置する形状に形成されている。後退用カム35の傾斜部分36は、回転方向Rの上流側に向かうにしたがって次第にカムシャフト3の後側Bに位置する形状に形成されている。前進用カム34の傾斜部36の深さと、後退用カム35の傾斜部36の深さは一定である。
[0038]
 傾斜部36の一端から他端に達するために必要なカムシャフト3の回転角である切替動作角d(図4参照)は、一つの気筒において吸気弁4が閉じている期間に相当するカムシャフト3の回転角を最大として可及的大きく設定することが望ましい。ここでいう吸気弁4が閉じている期間とは、図4中に「吸気弁閉」として示す期間である。この実施の形態による切替動作角dは、カムシャフトが約1/2回転する約180°に設定されている。
[0039]
 前進用カム34と後退用カム35とにそれぞれ設けられている開始端側直線部37と終了端側直線部38は、傾斜部36の両端からカムシャフト本体21の回転方向と平行な方向のみに延びている。これらの2種類の直線部37,38のうち、開始端側直線部37は、傾斜部36よりカムシャフト本体21の回転方向の下流側に形成されている。前進用カム34の回転方向の下流側は、図5においては、前進用カム34の後端側(図5の左側)である。後退用カム35の回転方向の下流側は、図5においては、後退用カム35の前端側(図5の右側)である。終了端側直線部38は、傾斜部36よりカムシャフト本体21の回転方向の上流側に形成されている。
[0040]
 開始端側直線部37における傾斜部36とは反対側に位置する開始端部37aは、図7および図9に示すように、回転方向の下流側(図7においては反時計方向)に向かうにしたがって深さが次第に浅くなる形状に形成されている。また、開始端側直線部37における傾斜部36に接続する終了端部37bの開口幅(カムシャフト本体21の軸線方向の幅)は、図6に示すように、傾斜部36に向かうにしたがって次第に狭くなり、傾斜部36との境界になる部位において傾斜部36の開口幅と一致している。
[0041]
 終了端側直線部38における傾斜部36とは反対側に位置する終了端部38aは、図8および図9に示すように、回転方向の上流側(図8においては時計方向)に向かうにしたがって深さが次第に浅くなる形状に形成されている。すなわち、この終了端側直線部38における傾斜部36とは反対側に位置する終了端部38aの深さと、開始端側直線部37における傾斜部36とは反対側に位置する開始端部37aの深さは、傾斜部36からカムシャフト本体21回転方向に離れるにしたがって次第に浅くなる。開始端側直線部37の開始端と、終了端側直線部38の終了端は、深さが0になり、大径部33の外周面と同一周面上に位置している。
[0042]
 上述したロッカーアーム5は、図10に示すように、カムシャフト3の動弁用カム22~29毎(吸気弁4毎)に設けられており、カムシャフト3の近傍に位置する気筒毎のロッカーシャフト41~44を介してシリンダヘッド2に支持されている。ロッカーシャフト41~44には、図11に示すように、それぞれ2個のロッカーアーム5が取付けられている。ロッカーシャフト41~44は、それぞれ円筒によって形成されており、シリンダヘッド2の軸受部2aに軸線方向へ移動自在に支持されている。
[0043]
 これらのロッカーシャフト41~44は、後述する駆動装置6(図10参照)の一部を構成するものであり、上述した切替用カム30を駆動源として生じた推力によって軸線方向に移動する。ロッカーシャフト41~44の軸線方向の位置は、切替用カム30の前進用カム34と後退用カム35とによって定められる。以下においては、1番気筒用のロッカーシャフトを第1のロッカーシャフト41といい、2番気筒用のロッカーシャフトを第2のロッカーシャフト42という。また、3番気筒用のロッカーシャフトを第3のロッカーシャフト43といい、4番気筒用のロッカーシャフトを第4のロッカーシャフト44という。
[0044]
 ロッカーアーム5は、図11に示すように、第1~第4のロッカーシャフト41~44が一端部を貫通するロッカーアーム本体45と、このロッカーアーム本体45に設けられた押圧子46およびローラ47とによって構成されている。ロッカーアーム本体45は、第1~第4のロッカーシャフト41~44にこのロッカーシャフト41~44を中心として揺動自在に支持されている。また、ロッカーアーム本体45は、第1~第4のロッカーシャフト41~44に取付けられた一対のEリング48によって挟まれている。Eリング48は、ロッカーアーム5の第1~第4のロッカーシャフト41~44に対する軸線方向への移動を規制している。すなわち、ロッカーアーム5は、第1~第4のロッカーシャフト41~44と軸線方向へ一体に移動する状態で第1~第4のロッカーシャフト41~44に揺動自在に支持されている。
[0045]
 ロッカーアーム5の押圧子46は、吸気弁4の先端部を押圧するためのもので、ロッカーアーム本体45の揺動端部に一体に形成されている。この押圧子46は、図11に示すように、第1~第4のロッカーシャフト41~44の軸線方向に所定の長さを有する形状に形成されている。この長さは、第1のカム31と第2のカム32の形成間隔以上の長さに形成されている。この形成間隔とは、第1のカム31のカム幅方向(軸線方向)の中心と、第2のカム32のカム幅方向の中心との距離、すなわち両カム31,32の形成ピッチである。
[0046]
 ロッカーアーム5のローラ47は、ロッカーアーム5の中間部分に回転自在に支持されている。ローラ47の軸線は、第1~第4のロッカーシャフト41~44の軸線と平行である。このローラ47は、第1のカム31または第2のカム32に接触して回転する位置に設けられている。ロッカーアーム5が第1~第4のロッカーシャフト41~44とともに軸線方向の一方に移動することにより、ローラ47が第1のカム31と第2のカム32とのうちいずれか一方のカムに接触する。また、ロッカーアーム5がロッカーシャフト41~44とともに軸線方向の他方に移動することにより、ローラ47が他方のカムに接触する。
[0047]
 このようなロッカーアーム5と第1~第4のロッカーシャフト41~44の軸線方向へ移動は、後述する駆動装置6(図10参照)によって行われる。駆動装置6は、詳細は後述するが、第1~第4のロッカーシャフト41~44を軸線方向に駆動し、ロッカーアーム5をローラ47が第1のカム31と接触する第1の位置と、ローラ47が第2のカム32に接触する第2の位置とのいずれか一方の位置に位置付ける。駆動装置6がこのように第1~第4のロッカーシャフト41~44を駆動する時期は、各気筒において、第1のカム31と第2のカム32のバルブリフト量が共に0である期間内の所定の時期である。第1のカム31と第2のカム32のバルブリフト量が0になる期間は、図4中に吸気弁閉として示す期間である。
[0048]
 駆動装置6は、図10および図11に示すように、第1~第4のロッカーシャフト41~44毎を含む第1~第4の連結機構51~54と、カムシャフト本体21の軸線方向の中央部を動力源として推力を発生させる推力発生部55とを備えている。
 第1~第4の連結機構51~54は、推力発生部55で生じた推力を気筒毎にロッカーアーム5に伝えるためのものである。
[0049]
 この実施の形態による第1~第4の連結機構51~54は、図12および図13に示すように、第1~第4のロッカーシャフト41~44と、これらの第1~第4のロッカーシャフト41~44毎(気筒毎)の連結部材56~59とによって構成されている。以下においては、第1の連結機構51に備えられている連結部材56を第1の連結部材56といい、第2の連結機構52に備えられている連結部材57を第2の連結部材57という。また、第3の連結機構53に備えられている連結部材58を第3の連結部材58といい、第4の連結機構54に備えられている連結部材59を第4の連結部材59という。これらの連結部材56~59の一端部には、後述する第1~第4のスライダ61~64のアーム部61a~64aが取付けられている。
[0050]
 第1の連結部材56は、図15に示すように、第1および第2のロッカーシャフト41,42の中空部内を通されており、図17Aに示すように、第1のロッカーシャフト41に圧入式の固定用ピン65によって固定されている。第1の連結部材56の後端部には、図18に示すように、第1のスライダ61のアーム部61aが固定用ピン65によって固定されている。
[0051]
 第2の連結部材57は、図15に示すように、第1および第2のロッカーシャフト41,42の中空部内を通されており、図17Bに示すように、第2のロッカーシャフト42に圧入式の固定用ピン65によって固定されている。第2の連結部材57の後端部には、図18に示すように、第2のスライダ62のアーム部62aが固定用ピン65によって固定されている。
[0052]
 第3の連結部材58は、図16に示すように、第3および第4のロッカーシャフト43,44の中空部内を通されており、図17Cに示すように、第3のロッカーシャフト43に圧入式の固定用ピン65によって固定されている。第3の連結部材58の前端部には、図19に示すように、第3のスライダ63のアーム部63aが固定用ピン65によって固定されている。
[0053]
 第4の連結部材59は、図16に示すように、第3および第4のロッカーシャフト43,44の中空部内を通されており、図17Dに示すように、第4のロッカーシャフト44に圧入式の固定用ピン65によって固定されている。第4の連結部材59の前端部には、図19に示すように、第4のスライダ64のアーム部64aが固定用ピン65によって固定されている。すなわち、第1~第4の連結部材56~59は、第1~第4のスライダ61~64のアーム部61a~64aとロッカーシャフト41~44とを気筒毎に連結している。
[0054]
 また、この実施の形態による第1~第4の連結部材56~59は、第1~第4のロッカーシャフト41~44のうち、第1~第4のスライダ61~64のアーム部61a~64aとの間に他の気筒のロッカーシャフトが位置するロッカーシャフトに対しては、他の気筒のロッカーシャフトの中空部内を通して結合されている。すなわち、第1の連結部材は、第1のスライダ61のアーム部61aとの間に第2のロッカーシャフト42が位置する第1のロッカーシャフト41に、第2のロッカーシャフト42の中空部内を通して結合されている。また、第3の連結部材は、第3のスライダ63のアーム部63aとの間に第3のロッカーシャフト43が位置する第4のロッカーシャフト44に、第3のロッカーシャフト43の中空部内を通して結合されている。
[0055]
 第1~第4の連結部材56~59は、図17A~図17Dに示すように、それぞれ断面半円状の棒体によって形成されている。第1の連結部材56と第2の連結部材57は、互いに重ねられて断面円形の状態で第1および第2のロッカーシャフト41,42の中空部内に通されている。この実施の形態による第1および第2の連結部材56,57は、第1および第2のロッカーシャフト41,42の中空部内に嵌合している。
 第3の連結部材58と第4の連結部材59は、互いに重ねられて断面円形の状態で第3および第4のロッカーシャフト43,44の中空部内に通されている。この実施の形態による第3および第4の連結部材58,59は、第3および第4のロッカーシャフト43,44の中空部内に嵌合している。
[0056]
 推力発生部55は、カムシャフト本体21の回転を軸線方向の往復運動に変換する機能を有している。この変換は、カムシャフト本体21の前進用カム34および後退用カム35と、前進用カム34に選択的に接触する前進用カムフォロア66(図20および図21参照)と、後退用カム35に選択的に接触する後退用カムフォロア67(図18および図21参照)とによって行われる。前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67は、前進用カム34および後退用カム35の中に挿入可能な円柱状のピン66a,67aによって形成されており、後述する第1~第4のスライダ61~64にそれぞれピン66a,67aの軸線方向へ移動自在に保持されている。
[0057]
 第1~第4のスライダ61~64は、図12、図13、図18および図19に示すように、上述したアーム部61a~64aと、前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67を保持するためのスライド部61b~64bとによって構成されている。スライド部61b~64bは、断面円弧状を呈する板によって形成されている。第1のスライダ61を構成するアーム部61aとスライド部61bとは、一体に形成されている。第2のスライダ62を構成するアーム部62aとスライド部62bとは、一体に形成されている。第3のスライダ63を構成するアーム部63aとスライド部63bとは、一体に形成されている。第4のスライダ64を構成するアーム部64aとスライド部64bとは、一体に形成されている。
[0058]
 スライド部61b~64bは、図22に示すように、凹曲面61c~64cがカムシャフト本体21の大径部33の外周面に近接して対向する状態でこの大径部33の近傍に配置されている。すなわち、この実施の形態によるスライド部61b~64bは、カムシャフト本体21における前進用カム34および後退用カム35が設けられた大径部33と対向する位置に、カムシャフト本体21の軸線方向へ移動可能な状態でカムシャフト本体21の回転方向に並べて配置されている。
[0059]
 また、スライド部61b~64bにおけるカムシャフト本体21の回転方向の両端は、カムシャフト本体21の軸線方向に延びる形状に形成されており、他のスライド部61b~64bと対向している。このため、スライド部61b~64bは、隣り合う他の2個のスライド部61b~64bに対してカムシャフト本体21の軸線方向に移動可能である。
 第1~第4のスライダ61~64のアーム部61a~64aは、図18および図19に示すように、スライド部61b~64bからカムシャフト本体21の径方向の外側へ延びる形状に形成されている。
[0060]
 この実施の形態によるアーム部61a~64aには、図18および図19に示すように、第1~第4の連結部材56~59に取付けられた状態において、2本の連結部材の合面68と同一平面上に位置する端面69が形成されている。すなわち、アーム部61a~64aは、他のスライダのアーム部と端面69どうしが対向する状態で第1~第4の連結部材56~59に取付けられている。第1のスライダ61のアーム部61aは、第1の連結部材56に取付けられている。すなわち、第1のスライダ61は、第1の連結部材56と第1のロッカーシャフト41とを介して1番気筒用の二つのロッカーアーム5に連結されている。
[0061]
 第2のスライダ62のアーム部62aは、第2の連結部材57に取付けられている。すなわち、第2のスライダ62は、第2の連結部材57と第2のロッカーシャフト42とを介して2番気筒用の二つのロッカーアーム5に連結されている。
 第3のスライダ63のアーム部63aは、第3の連結部材58に取付けられている。すなわち、第3のスライダ63は、第3の連結部材58と第3のロッカーシャフト43とを介して3番気筒用の二つのロッカーアーム5に連結されている。
 第4のスライダ64のアーム部64aは、第4の連結部材59に取付けられている。すなわち、第4のスライダ64は、第4の連結部材59と第4のロッカーシャフト44とを介して4番気筒用の二つのロッカーアーム5に連結されている。
[0062]
 また、第1~第4のスライダ61~64のスライド部61b~64bは、図22に示すように、この実施の形態による4気筒エンジンの点火順序と対応する順序でカムシャフト本体21の回転方向Rに並べられている。スライド部61b~64bにおけるカムシャフト本体21の回転方向Rの位置は、図4に示すように、各気筒において第1のカム31と第2のカム32のバルブリフト量が共に0になる時期に切替用カム30の傾斜部36と対向する位置である。傾斜部36の回転方向Rの位置は、カムシャフト本体21の回転に伴って変わる。このため、傾斜部36は、スライド部61bと対向した後に、スライド部63bと、スライド部64bと、スライド部62bとにこの順序で対向する。
[0063]
 これらの4個のスライド部61b~64bは、図22に示すように、カムシャフト本体21を囲む位置で円筒状を呈する形状に組み合わせられた状態でカバー71が被せられている。カバー71は、円筒状に組み合わせられた4個のスライド部61b~64bをカムシャフト本体21の周囲近傍に保持するためのものである。この実施の形態によるカバー71は、図23に示すように、大径部72と、この大径部72の両端に設けられた小径部73とを有する円筒状に形成されている。また、このカバー71は、カムシャフト本体21の径方向へ2つに分割可能に形成されている。
[0064]
 大径部72の内径は、図22に示すように、この大径部72の内周面が第1~第4のスライダ61~64の凸曲面61d~64dにクリアランス分だけ離間する大きさに形成されている。この大径部72の軸線方向の長さは、両端の小径部73,73の間にカムシャフト本体21の大径部33が収容される大きさに形成されている。すなわち、小径部73は、カムシャフト本体21の大径部33と軸線方向において対向する。この実施の形態によるカバー71の軸線方向の長さは、図10に示すように、2番気筒の動弁用カム25と、3番気筒の動弁用カム26とに挟まれる長さに形成されている。
[0065]
 このカバー71の大径部72には、複数のスリット74と複数の穴75とが形成されている。複数のスリット74は、前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67を通すためのもので、大径部72の周方向の4箇所に形成されている。前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67は、図22に示すように、このスリット74を通ってカバー71の外に突出している。
 複数の穴75は、第1~第4のスライダ61~64のアーム部61a~64aを通すためのものである。これらのスリット74と穴75は、第1~第4のスライダ61~64がカムシャフト本体21の軸線方向に移動することを許容するために、この軸線方向に長く形成されている。
[0066]
 第1~第4のスライダ61~64に保持された前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67は、図12に示すように、カムシャフト本体21の軸線方向に所定の間隔をおいて並べられているとともに、スライド部61b~64bをカムシャフト本体21の径方向に貫通している。前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67との間隔は、図21に示すように、前進用カム34の終了端部38aと後退用カム35の開始端部37aとの間隔と一致している。なお、この終了端部38aと開始端部37aとの間隔は、前進用カム34の開始端部37aと後退用カム35の終了端部38aとの間隔とも一致している。
[0067]
 前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67の保持は、図24A~図24Fに示すように、スライド部61b~64bに形成された貫通孔76と、スライド部61b~64bに設けられた係合部材77とを用いて行われている。貫通孔76は、前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67が長手方向(カムシャフト本体21の径方向)に移動自在に嵌合する形状に形成されている。
 この実施の形態による係合部材77は、C字状に形成されたスナップリングによって構成されており、貫通孔76の孔壁面に形成された第1の環状溝76aの中に収容されて支持されている。
[0068]
 この係合部材77の自然状態における内径は、前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67の外径より小さく形成されている。また、この係合部材77は、その内部を前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67が通ることが可能な大きさに弾性変形可能なものである。第1の環状溝76aは、図24Bに示すように、このように係合部材77が弾性変形してその外径が大きくなることを許容する大きさに形成されている。この第1の環状溝76aの溝深さは、係合部材77の線径以上の深さに形成されている。
[0069]
 前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67の外周部分には、それぞれ第2の環状溝78と第3の環状溝79とが所定の間隔をおいて形成されている。これらの第2および第3の環状溝78,79は、図24Aおよび図24Cに示すように、係合部材77の内周部が係合可能な形状に形成されている。これらの第2および第3の環状溝78,79の溝深さは、係合部材77の線径の1/2以下とすることが望ましい。
[0070]
 これらのカムフォロア側の第2および第3の環状溝78,79のうち、図24において上側に位置する第2の環状溝78の位置は、図24Aに示すように、この第2の環状溝78に係合部材77が係合した状態で前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67が前進用カム34または後退用カム35の最も深い部位まで挿入される位置である。以下においては、このように前進用カム34または後退用カム35に挿入される前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67の位置を単に「使用位置」という。
[0071]
 他方の第3の環状溝79の位置は、図24Cに示すように、この第3の環状溝79に係合部材77が係合した状態で前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67が前進用カム34または後退用カム35から出る位置である。以下においては、このように前進用カム34または後退用カム35から出る前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67の位置を単に「退避位置」という。すなわち、前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67をそれぞれ形成するピン66a,67aは、カム溝33a,33bに挿入される使用位置と、カム溝33a,33bから出る退避位置とのいずれか一方の位置に、第1~第4のスライダ61~64に設けられた係合部材77により位置決めされる。
[0072]
 これらの前進用カムフォロア66(ピン66a)と後退用カムフォロア67(ピン67a)とにおける使用位置から退避位置へ向かう方向の端部には、図22に示すように、アクチュエータ81が接続されている。このアクチュエータ81は、ピン66a,67aの使用位置から退避位置へ向かう方向の端部を押圧して、ピン66aとピン67aとのうちいずれか一方を選択的に使用位置に位置付けるものである。アクチュエータ81は、第1~第4のスライダ61~64毎(気筒毎)に設けられており、シリンダヘッド2に支持されている。
[0073]
 この実施の形態によるアクチュエータ81は、図25および図26に示すように、前進用プランジャ82と後退用プランジャ83とを備えている。図25は、各アクチュエータ81の前進用プランジャ82と後退用プランジャ83がカムシャフト本体21の軸線方向とは直交する方向(図25の紙面と平行な方向)に並ぶ状態で描いてある。しかし、前進用プランジャ82と後退用プランジャ83は、図26に示すように、実際にはカムシャフト本体21の軸線方向に並べられている。
[0074]
 前進用プランジャ82は、前進用カムフォロア66を押圧するためのものである。後退用プランジャ83は、後退用カムフォロア67を押圧するためのものである。前進用プランジャ82は、円柱状に形成されて前進用油圧シリンダ84のピストンを構成しており、油圧によって初期位置から移動し、退避位置に位置している前進用カムフォロア66を押す。前進用カムフォロア66は、前進用プランジャ82によって押されることにより使用位置に移動する。
[0075]
 後退用プランジャ83は、円柱状に形成されて後退用油圧シリンダ85のピストンを構成しており、油圧によって初期位置から移動し、退避位置に位置している後退用カムフォロア67を押す。後退用カムフォロア67は、後退用プランジャ83によって押されることにより使用位置に移動する。
 前進用プランジャ82と後退用プランジャ83の外径は、図26に示すように、前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67が前進用カム34と後退用カム35とによって押されてカムシャフト本体21の軸線方向に往復するときのストロークLより大きく形成されている。
[0076]
 前進用油圧シリンダ84と後退用油圧シリンダ85は、図25に示すように、それぞれ切替バルブ86を介して油圧ポンプ87に接続されている。切替バルブ86は、アクチュエータ81毎(気筒毎)に設けられており、各アクチュエータ81の前進用油圧シリンダ84と後退用油圧シリンダ85とに接続されている。これらの4個の切替バルブ86は、予め定めた動作時間だけ油圧を前進用油圧シリンダ84または後退用油圧シリンダ85に供給し、この動作時間が経過した後、前進用油圧シリンダ84または後退用油圧シリンダ85との間の油圧回路を開放状態とする。ここでいう開放状態とは、前進用プランジャ82が前進用カムフォロア66によって押されて初期位置に復帰可能な状態や、後退用プランジャ83が後退用カムフォロア67によって押されて初期位置に復帰可能な状態をいう。この切替バルブ86の動作は、制御装置88によって制御される。
[0077]
 制御装置88は、運転形態判別部89とバルブ駆動部90とを有している。運転形態判別部89は、目標とする運転形態を判別する機能を有している。この判別は、人為的に操作される運転形態選択スイッチ(図示せず)の動作に基づいて行ったり、エンジンの現在の運転状態を予め定めた判別用運転パターンと比較して行うことができる。この運転形態判別部89によって判別される運転形態は、後述する第1の運転形態と第2の運転形態とのうちいずれか一方の運転形態である。第1の運転形態は、通常の運転形態である。第2の運転形態は、通常の運転形態より出力が小さくなるとともに燃料消費量が少なくなる運転形態である。
[0078]
 バルブ駆動部90は、運転形態判別部89によって判別された第1の運転形態または第2の運転形態が実現される状態を目標として切替バルブ86を動作させる。バルブ駆動部90は、第2の運転形態から第1の運転形態に切替える場合、切替バルブ86を動作させ、全てのアクチュエータ81の前進用油圧シリンダ84に油圧ポンプ87から油圧が供給される状態とする。また、バルブ駆動部90は、第1の運転形態から第2の運転形態に切替える場合、切替バルブ86を動作させ、全てのアクチュエータ81の後退用油圧シリンダ85に油圧ポンプ87から油圧が供給される状態とする。
[0079]
 次に、上述したように構成された動弁装置1の動作を説明する。ここでは先ず、通常時の運転形態である第1の運転形態から第2の運転形態に切替わるときの動作を説明する。この動弁装置1において、運転形態の切替えは、目標とする運転形態が現在の運転形態と異なる場合に制御装置88が切替バルブ86を動作させることにより実施される。この動弁装置1において、第1の運転形態が採られているときは、図10に示すように、第1のカム31にロッカーアーム5のローラ47が接触している。また、第1の運転形態において、第1~第4のスライダ61~64は、図27Aに示すように、カムシャフト本体21の前側(図において右側)に位置している。
[0080]
 これらの第1~第4のスライダ61~64のスライド部61b~64bに設けられている前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67は、第1の運転形態や第2の運転形態が採られているときは、図24Cに示すように、第3の環状溝79に係合部材77が係合することにより退避位置に保持されている。第1の運転形態において、前進用カムフォロア66は、図27Aに示すように、カムシャフト本体21の軸線方向において、前進用カム34の終了端側直線部38と同一位置に位置している。第1の運転形態において、後退用カムフォロア67は、カムシャフト本体21の軸線方向において、後退用カム35の開始端側直線部37と同一位置に位置している。
[0081]
 第1の運転形態から第2の運転形態に切替えられる場合は、先ず、全てのアクチュエータ81の後退用油圧シリンダ85に切替バルブ86から油圧が供給される。このように後退用油圧シリンダ85に油圧が供給されると、後退用プランジャ83が後退用カムフォロア67を回転中のカムシャフト本体21に向けて押す。後退用カムフォロア67は、後退用油圧シリンダ85に油圧が供給されることにより、この油圧によってカムシャフト本体21に向けて付勢される。
[0082]
 この押圧時に後退用カムフォロア67が後退用カム35の開始端側直線部37と対向していた場合、この後退用カムフォロア67は、押圧により開始端側直線部37内に直接入る。この後退用カムフォロア67は、油圧によって開始端側直線部37の溝底に押し付けられた状態でカムシャフト本体21の回転に伴って開始端側直線部37内を進む。
[0083]
 一方、この押圧時に後退用カムフォロア67がカムシャフト本体21の大径部33の外周面と対向していた場合、この後退用カムフォロア67は、油圧によってこの外周面に押し付けられる。この後退用カムフォロア67は、カムシャフト本体21が更に回転することにより後退用カム35の開始端側直線部37に入る。開始端側直線部37の深さは、カムシャフト本体21の回転方向の下流側に向かうにしたがって次第に深くなる。このため、この後退用カムフォロア67は、大径部33の外周面から後退用カム35の開始端側直線部37に入ることによって、第1~第4のスライダ61~64の各スライド部61b~64bに対してカムシャフト本体21側に移動する。
[0084]
 すなわち、後退用カムフォロア67は、図24Bに示すように、係合部材77を拡径させて係合部材77と第3の環状溝79との係合状態を解消しながらスライド部61b~64bに対してカムシャフト本体21側に移動する。そして、この後退用カムフォロア67は、油圧によって開始端側直線部37の溝底に押し付けられた状態でカムシャフト本体21の回転に伴って後開始端側直線部37内を進む。
[0085]
 この後退用カムフォロア67がカムシャフト本体21の回転に伴って開始端側直線部37の終了端部まで進むと、図24Aに示すように、係合部材77が第2の環状溝78に係合する。係合部材77が第2の環状溝78に係合することによって、後退用カムフォロア67が使用位置に保持される。
 このように使用位置に保持された後退用カムフォロア67は、カムシャフト本体21が更に回転することによって、図27Bに示すように、後退用カム35の開始端側直線部37から傾斜部36に入り、この傾斜部36の側壁に押される。
[0086]
 このように後退用カムフォロア67が傾斜部36に入る時期は、この後退用カムフォロア67と対応する気筒において第1のカム31と第2のカム32のバルブリフト量が共に0になる期間内である。後退用カムフォロア67が傾斜部36の側壁により押されることによって、この後退用カムフォロア67を支持するスライダ61~64がカムシャフト本体21の軸線方向において後方に移動する。以下においては、このようなカムシャフト本体21の軸線方向への部材の移動を単に「スライド」という。
[0087]
 後退用カム35の傾斜部36は、上述したように後退用カムフォロア67をスライドさせた後、カムシャフト本体21の回転に伴ってさらに回転方向の下流側に進む。そして、この傾斜部36は、上述した後退用カムフォロア67を有するスライダより回転方向の下流側に位置する次のスライダの後退用カムフォロア67をスライドさせる。先にスライドした後退用カムフォロア67が1番気筒用のものであった場合は、次に3番気筒用の後退用カムフォロア67がスライドされる。
 すなわち、第1~第4のスライダ61~64は、カムシャフト本体21が回転することにより順次スライドする。このスライドは、図27Cに示すように、全ての第1~第4のスライダ61~64の後退用カムフォロア67が傾斜部36から終了端側直線部38に入るまで行われる。
[0088]
 第1~第4のスライダ61~64は、第1~第4の連結部材56~59と第1~第4のカムシャフト41~44とを介して各気筒のロッカーアーム5に連結されている。このため、上述したように第1~第4のスライダ61~64がスライドすることにより、各気筒においてロッカーアーム5が第1~第4のスライダ61~64と同一方向にスライドする。すなわち、第1の運転形態から第2の運転形態に切り替えられた場合、ロッカーアーム5は、図10に示す位置から、ローラ47が第2のカム32に接触する位置まで同図において左側に移動する。この結果、このエンジンは、第2のカム32のカムプロフィールに基づいて運転される。
[0089]
 制御装置88は、後退用油圧シリンダ85に油圧を供給するために切替バルブ86を動作させてから予め定めた動作時間が経過した後に、切替バルブ86を動作させて後退用油圧シリンダ85の油圧回路を開放状態とする。上述した動作時間としては、例えば、後退用油圧シリンダ85に油圧が供給されたときから、後退用カムフォロア67が後退用カム35の終了端側直線部38に達するまでに必要な時間とすることができる。
[0090]
 終了端側直線部38の深さは、カムシャフト本体21の回転方向の下流側に向かうにしたがって次第に浅くなる。このため、終了端側直線部38に入った後退用カムフォロア67は、カムシャフト本体21の回転に伴って終了端側直線部38の溝底によって押される。このように押された後退用カムフォロア67は、図24Bおよび図24Cに示すように、係合部材77を拡径させて係合部材77と第2の環状溝78との係合状態を解消しながらスライド部61b~64bに対してカムシャフト本体21から離間する方向に移動する。
[0091]
 このとき、後退用カムフォロア67は、後退用プランジャ83を初期位置に向けて押す。そして、後退用カムフォロア67は、カムシャフト本体21が更に回転することにより、後退用カム35から出て大径部33の外周面に摺接する。また、このときには、後退用プランジャ83が初期位置に戻される。
 このように後退用カムフォロア67が大径部33の外周面に摺接することにより、図24Cに示すように、係合部材77が第3の環状溝79に係合し、後退用カムフォロア67が退避位置に保持される。
[0092]
 このエンジンの運転形態が第2の運転形態から第1の運転形態に切替えられる場合は、制御装置88による制御によって切替バルブ86が動作し、前進用油圧シリンダ84に油圧が供給される。そして、前進用プランジャ82が油圧によって押されて前進用カムフォロア66を押す。前進用カムフォロア66は、上述した後退用カムフォロア67と同様に動作し、第1のカム31と第2のカム32のバルブリフト量が共に0になる期間内に第1~第4のスライダ61~64をスライドさせる。このときの移動方向は、カムシャフト本体21の軸線方向において前方であって、図10において右方である。この結果、各気筒のロッカーアーム5のローラ47が図10に示すように第1のカム31に接触する状態となり、エンジンの運転形態が第2の運転形態から第1の運転形態に切り替えられる。前進用カムフォロア66は、運転形態の切替えが終了した後、前進用カム34によりカムシャフト本体21の径方向の外側に向けて押されることによって退避位置に戻され、係合部材77によって退避位置に保持される。
[0093]
 このように構成された多気筒エンジンの動弁装置1においては、気筒毎の第1~第4のスライダ61~64がカムシャフト本体21の回転方向に並ぶ状態で配置されている。これらの第1~第4のスライダ61~64は、運転形態が切替えられるときに1組の前進用カム34と後退用カム35とを駆動源として順次スライドする。このため、この実施の形態によれば、前進用カム34と後退用カム35とを気筒毎に備える場合と較べると、カムシャフト本体21を短く形成でき、エンジンの小型化を図ることができる。
[0094]
 第1~第4のスライダ61~64がスライドする期間(カムシャフト本体21の回転角度)は、これらの第1~第4のスライダ61~64と対応する気筒において第1および第2のカム31,32のバルブリフト量が共に0になる期間内であれば、制約を受けることはない。すなわち、第1~第4のスライダ61~64がスライドする期間は、複数の気筒の吸気弁4または排気弁7が同時に閉じている期間と較べると、長くとることができる。
[0095]
 このため、前進用カム34と後退用カム35は、カムシャフト本体21が高速で回転する場合であっても、前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67とが円滑に移動する形状に形成することができる。このことは、運転形態を切替えるときにエンジン回転数に制約を受けることがないことを意味する。
 したがって、この実施の形態によれば、エンジンの運転形態を切替えるにあたって、エンジンの小型化を図りながら、エンジン運転域の全域において切替動作を行うことが可能な多気筒エンジンの動弁装置を提供することができる。
[0096]
 この実施の形態による前進用カム34および後退用カム35は、カムシャフト本体21の外周面に開口するカム溝33a,33bによって形成されている。
 カム溝33a,33bは、それぞれ、傾斜部36と、この傾斜部36の両端からそれぞれ回転方向と平行な方向に延びるとともに、傾斜部36から回転方向に離れるにしたがって深さが次第に浅くなる開始端側直線部37および終了端側直線部38を有している。
[0097]
 前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67は、スライダ61~64のスライド部61b~64bをカムシャフト本体21の径方向に貫通するピン66a,67aによって形成されている。
 これらのピン66a,67aは、カム溝33a,33bに挿入される使用位置と、カム溝33a,33bから出る退避位置とのいずれか一方の位置に、第1~第4のスライダ61~64に設けられた係合部材77により位置決めされる。
 また、ピン66a,67aの使用位置から退避位置へ向かう方向の端部には、ピン66aとピン67aとのうちいずれか一方のピンを選択的に押圧して使用位置に位置付けるアクチュエータ81が接続されている。
[0098]
 この実施の形態において、前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67は、アクチュエータ81により押されてカム溝33a,33bに入ることにより退避位置から使用位置に移動する。使用位置に移動した前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67は、係合部材77によって使用位置に保持される。
 この前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67は、係合部材77によって使用位置に保持された状態で前進用カム34または後退用カム35の傾斜部36を進み、スライダ61~64をカムシャフト本体21の軸線方向に押す。その後、前進用カム34または後退用カム35は、傾斜部36から終了端側直線部38に進み、この終了端側直線部38を通過するときに、カム溝33a,33bの底によってカムシャフト本体21の径方向の外側に押される。このように前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67が押されることにより、係合部材77の係合状態が解除される。前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67は、終了端側直線部38を通過して前進用カム34または後退用カム35から出てカムシャフト本体21の大径部33の外周面に接触することにより、係合部材77によって退避位置に保持される。
[0099]
 この実施の形態によれば、前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67が係合部材77によって使用位置または退避位置に保持される。このため、これらの前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67の位置を定めるためにカムフォロアをアクチュエータに常に接触させる機構を第1~第4のスライダ61~64に設ける場合と較べると、スライダ61~64が軽量かつコンパクトに形成される。
 第1~第4のスライダ61~64の軽量化と小型化とが図られると、動弁装置1を小型エンジンに搭載することが可能になる。また、第1~第4のスライダ61~64の移動時の慣性力が小さくなるから、運転形態を切替えることが可能なエンジン回転数をより一層高くすることができる。すなわち、運転形態を切替える制御を行うにあたって、自由度が高くなる。
[0100]
 前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67は、係合部材77によって使用位置に保持された状態で前進用カム34または後退用カム35の中を進む。このため、切替動作中にアクチュエータ81による押圧力が消失したとしても切替動作が中断することなく終了するから、切替動作の信頼性が高い動弁装置を提供することができる。
[0101]
 前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67は、前進用カム34または後退用カム35の終了端側直線部38によってカムシャフト本体21の径方向の外側に向けて押され、これらのカム34,35の外に出る。すなわち、前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67は、第1~第4のスライダ61~64がスライドした後、前進用カム34または後退用カム35によって使用位置から退避位置に強制的に移動させられる。
[0102]
 このため、低温時などの潤滑油の粘度が低く摩擦抵抗が大きくなる場合であっても、前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67が正しい時期に退避位置に戻される。この実施の形態による動弁装置1においては、これらのカムフォロア66,67が速やかに退避位置に戻ることができるために、次の切替え動作を迅速に行うことが可能になり、運転形態を切替える制御の自由度が高くなる。このように前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67の退避位置への復帰速度が高いと、サイクル休止を行うことが可能になる。
[0103]
 この実施の形態による第1~第4のロッカーシャフト41~44は、円筒によって形成されて気筒毎に設けられるとともに、シリンダヘッド2に軸線方向へ移動自在に支持されている。ロッカーアーム5は、第1~第4のロッカーシャフト41~44に対する軸線方向への移動が規制されて第1~第4のロッカーシャフト41~44と共に軸線方向へ一体に移動する状態で第1~第4のロッカーシャフト41~44に揺動自在に支持されている。第1~第4のスライダ61~64は、カムシャフト本体21における前進用カム34および後退用カム35が設けられた部分と対向している。また、第1~第4のスライダ61~64は、前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67を支持するスライド部61b~64bと、このスライド部61b~64bから突出したアーム部61a~64aとを備えている。
[0104]
 気筒毎の第1~第4の連結機構51~54は、第1~第4のスライダのアーム部61a~64aと第1~第4のロッカーシャフト41~44とを気筒毎に連結する気筒毎の第1~第4の連結部材56~59と、この連結部材が結合された第1~第4のロッカーシャフト41~44とによって構成されている。
 気筒毎の第1~第4の連結部材56~59は、気筒毎の第1~第4のロッカーシャフト41~44のうち、第1~第4のスライダ61~64のアーム部61a~64aとの間に他の気筒用のロッカーシャフト42,43が位置する第1および第4のロッカーシャフト41,44に対しては、他のロッカーシャフト42,43の中空部内を通して結合されている。
[0105]
 この実施の形態によれば、円筒からなる第1~第4のロッカーシャフト41~44の中空部内を利用して第1~第4の連結部材56~59が配置されているから、第1~第4の連結機構51~54がコンパクトに形成される。このため、動弁装置1が小型に形成されるから、更なるエンジンの小型化を図ることができる。
[0106]
 この実施の形態において、上述した他のロッカーシャフト42,43の中空部内を通される第1および第4の連結部材56,59と、他のロッカーシャフト42,43を第2および第3のスライダ62,63のアーム部62a,63aに連結する第2および第3の連結部材57,59とは、それぞれ断面半円状の棒体によって形成されている。また、これらの第1~第4の連結部材56~59は、互いに重ねられて断面円形の状態で他のロッカーシャフト42,43の中空部内に通されている。この実施の形態においては、第1および第2の連結部材56,57が第1および第2のロッカーシャフト41,42内を通されて、第3および第4の連結部材58,59が第3および第4のロッカーシャフト43,44内を通されている。
[0107]
 この実施の形態によれば、第1~第4の連結部材56~59を形成するに当たり、第1~第4のロッカーシャフト41~44の中空部内のスペースを最大限に使用可能な大きさに形成することができる。このため、剛性が高い第1~第4の連結部材56~59を使用して第1~第4のスライダ61~64と第1~第4のロッカーシャフト41~44とを接続することができるから、第1~第4のスライダ61~64の移動が正確に第1~第4のロッカーシャフト41~44に伝達される。したがって、この実施の形態によれば、運転形態の切替えを正確に行うことが可能な多気筒エンジンの動弁装置を提供することができる。
[0108]
 この実施の形態によるシリンダヘッド2は、4気筒エンジンのものである。吸気弁4または排気弁7は、1気筒当たり2個設けられている。第1のカム31および第2のカム32は、1本のカムシャフト本体21に4気筒分設けられている。前進用カム34と後退用カム35は、カムシャフト本体21の軸線方向の中央部に設けられている。気筒毎に形成された第1~第4のスライダ61~64は、それぞれカムシャフト本体21の外周面に近接した状態で対向する凹曲面61c~64cを有し、かつカムシャフト本体21の回転方向の両端が他のスライダ61~64と対向している。
[0109]
 この実施の形態によれば、第1~第4のスライダ61~64がカムシャフト本体21を囲みかつカムシャフト本体21に可及的接近する状態で配置される。第1~第4のスライダ61~64は、カムシャフト本体21の軸線方向において、カムシャフト本体21の軸線方向中央部と同じ位置に配置される。このため、これらの第1~第4のスライダ61~64と各気筒のロッカーアーム5とを連結する気筒毎の第1~第4の連結機構51~54は、各スライダ61~64からカムシャフト本体21の軸線方向の一方と他方とに振り分けて配置されるから、カムシャフト本体21から大きく離間することなく配置される。
 したがって、この実施の形態によれば、駆動装置6をカムシャフト本体21の近傍にコンパクトに構成することができるから、より一層小型化された多気筒エンジンの動弁装置を提供することができる。
[0110]
 この実施の形態による係合部材77は、第1~第4のスライダ61~64に支持されたスナップリングによって構成されている。このスナップリングは、前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67とを構成するピン66a,67aに形成された第2および第3の環状溝78,79に係合可能な形状に形成されている。
 この実施の形態によれば、ピン66a,67aが使用位置と退避位置との間で移動するときにスナップリングが弾性変形し、係合状態が解除される。この係合状態を解除する動作は、自動で行われる。
[0111]
 このため、前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67の係合状態を解除するための専門の機構は不要であるから、これらのカムフォロア66,67を使用位置と退避位置とに保持する機構の簡素化を図ることができる。したがって、第1~第4のスライダ61~64のより一層の小型化を図ることができ、更に小型化された多気筒エンジンの動弁装置を提供することができる。
[0112]
(第2の実施の形態)
 本発明に係る多気筒エンジンの動弁装置は、図28に示すように構成することができる。図28において、前記図1~図27によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
[0113]
 図28に示す動弁装置100は、2気筒エンジン用のものである。この動弁装置1のカムシャフト101は、1番気筒の2つの吸気弁4(図示せず)または排気弁7(図示せず)を駆動するための2つの動弁用カム22,23と、2番気筒の2つの吸気弁4(図示せず)または排気弁7(図示せず)を駆動するための2つの動弁用カム24,25とを備えている。1番気筒用の動弁用カム22,23と、2番気筒用の動弁用カム24,25との間には、切替用カム30が設けられている。
[0114]
 また、この動弁装置100の1番気筒用の第1のロッカーシャフト41と、2番気筒用の第2のロッカーシャフト42には、それぞれ二つのロッカーアーム5が揺動自在かつ軸線方向への相対移動が規制された状態で取付けられている。
 第1のロッカーシャフト41と第2のロッカーシャフト42は、シリンダヘッド2(図示せず)に軸線方向へ移動自在に支持されている。第1のロッカーシャフト41の一端部(カムシャフト本体21の後側となる後端部)には、第1のスライダ61が直接連結されている。第2のロッカーシャフト42の一端部(カムシャフト本体21の前側となる前端部)には、第2のスライダ62が直接連結されている。
[0115]
 第1および第2のロッカーシャフト41,42と第1および第2のスライダ61,62との連結部は、第1および第2のロッカーシャフト41,42に形成された環状溝102に第1および第2のスライダ61,62のアーム部61a,61bが係合する構造が採られている。
 第1のスライダ61のスライド部61bと、第2のスライダ62のスライド部62bとは、カムシャフト本体21の大径部33を挟んで互いに対向する位置に位置付けられている。
[0116]
 この実施の形態に示す動弁装置100においても、第1および第2のカム31,32のバルブリフト量が0になる期間の略全域を利用して第1および第2のスライダ61,62を個別にスライドさせることができる。したがって、この実施の形態を採る場合であっても、第1の実施の形態を採るときと同等の効果が得られる。
[0117]
(第3の実施の形態)
 カムフォアを退避位置または使用位置に保持するための係合部材は、図29A~図29Eに示すように構成することができる。
 この実施の形態による第1~第4のスライダ61~64のスライド部61b~64bには、図29A~図29Eに示すように、四角柱状の凸体111が設けられている。なお、図29は、便宜上、この実施の形態の構成を適用した第4のスライダ64が描いてある。
 この凸体111は、スライド部61b~64bからカムシャフト本体21の径方向の外側に向けて突出している。この凸体111には、図29Dに示すように、円柱状のピン66a,67aからなる前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67とが設けられている。前進用カムフォロア66および後退用カムフォロア67は、凸体111に形成された2つのピン孔112,113に移動自在に嵌合している。これらのピン孔112,113は、カムシャフト本体21の軸線方向とは直交する方向に延びて凸体111およびスライド部61b~64bを貫通している。2つのピン孔112,113は、カムシャフト本体21の軸線方向に所定の間隔をおいて並ぶ位置に形成されている。
[0118]
 この実施の形態による前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67の外周部には、使用位置側環状溝114と退避位置側環状溝115とが所定の間隔をおいて形成されている。これらの使用位置側環状溝114と退避位置側環状溝115の溝幅は、第1の実施の形態で示す第2および第3の環状溝78,79の溝幅より広く形成されている。
 凸体111におけるカムシャフト本体21の軸線方向に延びる一対の側面には、図29Cに示すように、固定用ボルト116によって板ばね117とストッパープレート118とがそれぞれ取付けられている。
[0119]
 また、この側面には、凸体111を貫通する2つの貫通孔121(図29E参照)が開口している。これらの貫通孔121は、ピン孔112,113の一部と交差する位置に形成されている。これらの貫通孔121の一端の開口部には、ボール122が挿入されている。このボール122は、凸体111に固定された板ばね117によって貫通孔121の他端に向けて(前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67に向けて)付勢されている。ボール122は、板ばね117と前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67とに挟まれている。
[0120]
 このため、このボール122は、前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67が凸体111に対して移動することにより、使用位置側環状溝114または退避位置側環状溝115に係入する。ボール122が使用位置側環状溝114に係合することにより、前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67が使用位置に保持される。また、ボール122が退避位置側環状溝115に係合することによって、前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67が退避位置に保持される。この実施の形態においては、このボール122が請求項7記載の発明でいう「係合部材」に相当する。また、この実施の形態においては、板ばね117が請求項7記載の発明でいう「ばね部材」に相当する。
[0121]
 この実施の形態によれば、前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67とが使用位置と退避位置との間で移動するときに板ばね117が弾性変形し、ボール122と使用位置側環状溝114または退避位置側環状溝115との係合状態が解除される。この係合状態を解除する動作は、自動で行われる。このため、前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67の係合状態を解除するための専用の機構は不要であるから、これらのカムフォロア66,67を使用位置と退避位置とに保持する機構の簡素化を図ることができる。したがって、この実施の形態においても、第1~第4のスライダ61~64のより一層の小型化を図ることができ、更に小型化された多気筒エンジンの動弁装置を提供することができる。
[0122]
 上述した第1~第3の実施の形態を採る場合の前進用カムフォロア66と後退用カムフォロア67は、それぞれ第2および第3の環状溝78,79や使用位置側環状溝114、退避位置側環状溝115などが形成されている。また、係合部材77(スナップリングやボール122)は、1本の前進用カムフォロア66や後退用カムフォロア67に対して1個ずつ設けられている。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはない。すなわち、係合部材77と、この係合部材77が係合する環状溝の数や、係合部材77が設けられる部材は、適宜変更することができる。例えば、前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67に環状溝を1つだけ形成し、この環状溝に係合可能な2つの係合部材77を第1~第4のスライダ61~64にそれぞれ設けてもよい。また、係合部材77を前進用カムフォロア66または後退用カムフォロア67に1つあるいは2つ設け、この係合部材77と係合する環状溝を第1~第4のスライダ61~64に2つあるいは1つ設けることもできる。

符号の説明

[0123]
 1…動弁装置、2…シリンダヘッド、4…吸気弁、5…ロッカーアーム、6…駆動装置、7…排気弁、21…カムシャフト本体、31…第1のカム(第1の弁駆動用カム)、32…第2のカム(第2の弁駆動用カム)、33a,33b…カム溝、34…前進用カム、35…後退用カム、36…傾斜部、37…開始端側直線部、38…終了端側直線部、41…第1のロッカーシャフト、42…第2のロッカーシャフト、43…第3のロッカーシャフト、44…第4のロッカーシャフト、51…第1の連結機構、52…第2の連結機構、53…第3の連結機構、54…第4の連結機構、56…第1の連結部材、57…第2の連結部材、58…第3の連結部材、59…第4の連結部材、61~64…第1~第4のスライダ、61a~64a…アーム部、61b~64b…スライド部、61c~64c…凹曲面、66…前進用カムフォロア、67…後退用カムフォロア、66a,67a…ピン、77…係合部材、78…第2の環状溝、79…第3の環状溝、81…アクチュエータ、117…板ばね、122…ボール。

請求の範囲

[請求項1]
 多気筒エンジン用シリンダヘッドに回転自在に支持されたカムシャフト本体と、
 前記カムシャフト本体の各気筒の吸気弁または排気弁と対応する位置に設けられた気筒毎の第1の弁駆動用カムと、
 前記第1の弁駆動用カムとはバルブリフト特性が異なる形状に形成され、前記第1の弁駆動用カムと前記カムシャフト本体の軸線方向に隣り合う位置に設けられた気筒毎の第2の弁駆動用カムと、
 前記カムシャフト本体と平行なロッカーシャフトを介して前記シリンダヘッドに前記ロッカーシャフトを中心として揺動自在に支持されるとともに前記軸線方向に移動自在に支持され、前記第1の弁駆動用カムまたは第2の弁駆動用カムと吸気弁または排気弁との間に介在する気筒毎のロッカーアームと、
 前記カムシャフト本体の回転を前記軸線方向の往復運動に変換し、前記第1の弁駆動用カムと前記第2の弁駆動用カムのバルブリフト量が共に0であるときに前記ロッカーアームに前記軸線方向へ推力を加えて前記ロッカーアームを前記軸線方向に移動させて、このロッカーアームを前記第1の弁駆動用カムと接触する第1の位置と前記第2の弁駆動用カムに接触する第2の位置とのいずれか一方の位置に位置付ける駆動装置とを備え、
 前記駆動装置は、
 前記カムシャフト本体の外周部に設けられ、前記カムシャフト本体の軸線方向の一方と回転方向とに延びる傾斜部を有する1つの前進用カムと、
 前記前進用カムと前記軸線方向に隣り合う位置に設けられ、前記カムシャフト本体の軸線方向の他方と回転方向とに延びる傾斜部を有する1つの後退用カムと、
 前記カムシャフト本体における前記前進用カムおよび後退用カムが設けられた部分と対向する位置に、前記軸線方向へ移動可能な状態で前記カムシャフト本体の回転方向に並べて配置された気筒毎のスライダと、
 前記スライダのそれぞれに設けられ、前記1つの前進用カムに選択的に接触する前進用カムフォロアと、
 前記スライダのそれぞれに設けられ、前記1つの後退用カムに選択的に接触する後退用カムフォロアと、
 前記スライダと前記ロッカーアームとを気筒毎に連結する気筒毎の連結機構とを備える多気筒エンジンの動弁装置。
[請求項2]
 請求項1記載の多気筒エンジンの動弁装置において、
 前記前進用カムと前記後退用カムは、前記カムシャフト本体の外周面に開口するカム溝によって形成され、
 前記カム溝は、それぞれ、前記傾斜部と、この傾斜部の両端からそれぞれ前記回転方向と平行な方向に延びるとともに、前記傾斜部から前記回転方向に離れるにしたがって深さが次第に浅くなる直線部とを有し、
 前記前進用カムフォロアと後退用カムフォロアは、前記スライダを前記カムシャフト本体の径方向に貫通するピンによって形成され、
 前記ピンは、前記カム溝に挿入される使用位置と、前記カム溝から出る退避位置とのいずれか一方の位置に、前記スライダに設けられた係合部材により位置決めされ、
 前記ピンの前記使用位置から前記退避位置へ向かう方向の端部には、前記前進用カムフォロアを形成するピンと、前記後退用カムフォロアを形成するピンとのうちいずれか一方のピンを選択的に押圧して前記使用位置に位置付けるアクチュエータが接続されていることを特徴とする多気筒エンジンの動弁装置。
[請求項3]
 請求項1または請求項2記載の多気筒エンジンの動弁装置において、
 前記ロッカーシャフトは、円筒によって形成されて気筒毎に設けられるとともに、前記シリンダヘッドに軸線方向へ移動自在に支持され、
 前記ロッカーアームは、前記ロッカーシャフトに対する前記軸線方向への移動が規制されて前記ロッカーシャフトと共に軸線方向へ一体に移動する状態で前記ロッカーシャフトに揺動自在に支持され、
 前記各スライダは、前記カムシャフト本体における前進用カムおよび後退用カムが設けられた部分と対向するとともに前記前進用カムフォロアおよび後退用カムフォロアを支持するスライド部と、このスライド部から突出したアーム部とを備え、
 前記気筒毎の連結機構は、前記スライダのアーム部と前記ロッカーシャフトとを気筒毎に連結する気筒毎の連結部材と、この連結部材が結合された前記ロッカーシャフトとによって構成され、
 前記気筒毎の連結部材は、気筒毎のロッカーシャフトのうち、前記スライダのアーム部との間に他の気筒用のロッカーシャフトが位置するロッカーシャフトに対しては、前記他のロッカーシャフトの中空部内を通して結合されていることを特徴とする多気筒エンジンの動弁装置。
[請求項4]
 請求項3記載の多気筒エンジンの動弁装置において、
 前記他のロッカーシャフトの中空部内を通される前記連結部材と、前記他のロッカーシャフトを前記スライダのアーム部に連結する連結部材とは、それぞれ断面半円状の棒体によって形成されているとともに、互いに重ねられて断面円形の状態で前記他のロッカーシャフトの中空部内に通されていることを特徴とする多気筒エンジンの動弁装置。
[請求項5]
 請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載の多気筒エンジンの動弁装置において、
 前記シリンダヘッドは4気筒エンジンのものであり、
 前記吸気弁または前記排気弁は1気筒当たり2個設けられ、
 前記第1の弁駆動用カムおよび前記第2の弁駆動用カムは、1本のカムシャフト本体に4気筒分設けられ、
 前記前進用カムと後退用カムは、前記カムシャフト本体の軸線方向の中央部に設けられ、
 前記気筒毎に形成された4個のスライダは、それぞれ前記カムシャフト本体の外周面に近接した状態で対向する凹曲面を有し、かつカムシャフト本体の回転方向の両端が他のスライダと対向していることを特徴とする多気筒エンジンの動弁装置。
[請求項6]
 請求項2記載の多気筒エンジンの動弁装置において、
 前記係合部材は、前記スライダと前記ピンとのうちいずれか一方の部材に支持されたスナップリングによって構成され、
 前記スナップリングは、前記スライダと前記ピンとのうち他方の部材に形成された環状溝に係合可能な形状に形成されていることを特徴とする多気筒エンジンの動弁装置。
[請求項7]
 請求項2記載の多気筒エンジンの動弁装置において、
 前記係合部材は、前記スライダに保持されるとともにばね部材によって前記ピンに向けて付勢されたボールによって構成され、
 前記ピンには、前記ボールが係合する環状溝が形成されていることを特徴とする多気筒エンジンの動弁装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17A]

[ 図 17B]

[ 図 17C]

[ 図 17D]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24A]

[ 図 24B]

[ 図 24C]

[ 図 24D]

[ 図 24E]

[ 図 24F]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27A]

[ 図 27B]

[ 図 27C]

[ 図 28]

[ 図 29A]

[ 図 29B]

[ 図 29C]

[ 図 29D]

[ 図 29E]