明 細 書
技術分野
背景技術
[0002]
従来の計量装置として、搬送コンベアによって搬入される物品の質量を計量器で計量し、物品搬入から予め設定されたタイミング時の計量器の計量信号に基づいて物品質量の選別判定を行う計量装置であって、計量器で計量された物品の質量に対応する計量信号を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された計量信号を波形表示する質量波形表示手段と、上記のタイミングを計量信号の波形と同一画面上に表示するタイミング表示手段と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
先行技術文献
特許文献
[0003]
特許文献1 : 特開平03-282220号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0004]
上記装置ではフィルタ後の計量値を取得するタイミングを視覚的に確認できるため、適切なタイミングでの計量値の取得が可能となる。しかしながら、上記装置にあっては、計量した結果に基づく計量値の取得タイミングの適切さを実現できるにとどまり、選択しているフィルタ条件が適切であるか否かは分からない。
[0005]
本発明は、実際に計量を行わなくても適切なフィルタ条件を確実に判断できる計量装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0006]
本発明に係る計量装置は、物品を計量して、計量した物品の質量に対応する原信号を出力する計量部と、計量部から出力された原信号にフィルタリング処理を行うフィルタ部と、フィルタリング処理後の計量信号の波形を表示部に表示させる制御部と、を備えた計量装置であって、原信号及び計量信号の少なくとも一方を記憶する記憶部を備え、制御部は、記憶部に記憶されている原信号又は計量信号に対して特性の異なる複数のフィルタリング処理を行った場合の複数の計量信号の波形を予測して生成し、当該複数の計量信号の波形を表示部に表示させる。
[0007]
この計量装置では、制御部は、記憶部に記憶されている原信号又は計量信号に対して特性の異なる複数のフィルタリング処理を行った場合の複数の計量信号の波形を予測して生成し、複数の計量信号の波形を表示部に表示させている。このように、特性の異なる複数のフィルタリング処理が行われた場合の波形を予測(シミュレーション)して生成し、表示部に表示させることにより、フィルタを設定する作業者は、各フィルタの効果を視覚的に確認することができる。したがって、作業者は、表示部に表示された一の波形と他の波形とを比較することで、使用環境や設定環境に応じた最適なフィルタを判断することができる。このように、計量装置では、実際に計量を行わなくても適切なフィルタ条件を確実に判断できる。その結果、計量装置では、適切なフィルタが選択されるので、正確な計量を実現できる。
[0008]
一実施形態においては、複数の計量信号の波形を表示部において重ねて表示させてもよい。このように、フィルタリング処理が実施された場合の波形を重ねて表示させることにより、一の波形と他の波形とにおいて、フィルタによる効果をより容易に比較することができる。
[0009]
一実施形態においては、制御部は、計量精度及び能力の少なくとも一方の基準を、表示部に表示させてもよい。これにより、作業者は、表示部に表示された複数の波形のうち、計量精度に関してフィルタの効果が最も適切な波形、若しくは、所望する能力を得られる波形を基準に基づいて選択することができる。したがって、高い計量精度や高い処理能力が得られるフィルタを容易に選択することができる。なお、計量精度若しくは能力の基準とは、例えば、波形の振幅を制限するものであってもよいし、波形において計量を実施するタイミングを示すものであってもよい。
[0010]
一実施形態においては、制御部は、基準の基準値を、表示部に複数表示させてもよい。このように、基準の基準値を表示させることにより、作業者の求める計量精度や能力に合わせたフィルタを基準値に基づいて選択することができる。
[0011]
一実施形態においては、制御部は、記憶された計量信号の波形を、表示部において予測して生成された複数の計量信号の波形と重ねて表示させてもよい。このように、記憶部に記憶された計量信号の波形と、予測して生成された複数の計量信号の波形とを表示部において重ねて表示させることにより、フィルタリング処理による効果をより顕著に確認することができる。
[0012]
一実施形態においては、記憶部に記憶された計量信号は、実際に計量部において物品が計量されたときの計量信号であってもよい。このように、計量部において実際に物品が計量されたときに出力された計量信号を記憶し、この計量信号に対してフィルタリング処理を実施した場合の波形を生成することにより、実際に計量する物品に対応したフィルタの選択を行うことができる。
[0013]
一実施形態においては、計量部は、物品を搬送しながら計量してもよい。このように、静止計量を行う場合に対して、動計量を行う場合には、実施の物品が搬送中にばたついたりすることや、物品の搬送方向での重心位置のずれ等の計量への影響に実際に応じた設定をすることができる。したがって、このような計量への影響を最低限にする最適なフィルタを容易に選択することができる本発明の上記構成は、動計量を行う計量装置において特に有効である。
[0014]
一実施形態においては、制御部は、物品の長さ寸法と、物品の搬送速度とを、表示部に表示させてもよい。計量装置の搬送部は、通常、計量が行われる計量部分と、その計量部分に物品を搬入する搬入部分と、計量部分から物品を搬出する搬出部分と、の3つに分けられている。物品の計量は、計量部分に物品が全て載ったときのタイミングの計量信号が用いられている。つまり、物品が計量部分と搬入部分又は搬出部分とに跨って位置しているときの計量信号は用いない。本発明では、物品の長さ寸法と搬送速度とを表示部に表示させている。物品の長さ寸法と搬送速度とからは、搬入部分から計量部分に物品が完全に乗り継ぐまでの時間を求めることができる。これにより、計量のタイミングの下限を把握することができるので、より適切なタイミングで計量信号を取り込むことができる。
[0015]
一実施形態においては、フィルタリング処理に用いられるフィルタを手動で選択する手動選択モードと、フィルタを自動で選択する自動選択モードとを選択する選択部を備え、制御部は、自動選択モードが選択された場合、複数のフィルタのうち、計量のタイミングにおいて計量信号の波形のばらつきが最も小さくなるフィルタを選択し、当該フィルタによりフィルタリング処理を行った場合の計量信号の波形と、当該フィルタ以外の他のフィルタによりフィルタリング処理を行った場合の計量信号の波形とを区別して表示部に表示させる。これにより、自動で選択されたフィルタによる計量信号の波形と、他のフィルタによる計量信号の波形とを視覚的に確認することができる。したがって、作業者は、表示部に表示された一の波形と他の波形とを比較することで、自動で選択されたフィルタの効果を確認できる。
発明の効果
[0016]
本発明によれば、実際に計量を行わなくても適切なフィルタ条件を確実に判断できる。
図面の簡単な説明
[0017]
[図1] 一実施形態に係る計量装置を示す図である。
[図2] 図1に示す計量装置の構成を示す図である。
[図3] タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
[図4] タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
[図5] タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
発明を実施するための形態
[0018]
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[0019]
図1は、一実施形態に係る計量装置を模式的に示す図である。図2は、図1に示す計量装置の構成を示す図である。図1及び図2に示される計量装置1は、物品Pの質量を図1中の矢印の方向に搬送しながら計量する装置である。計量装置1は、例えば、生産ラインの最終ラインに配置される。
[0020]
図1及び図2に示されるように、計量装置1は、コンベア(搬送部)3と、計量セル(計量部)5と、AFV(Anti Floor Vibration)セル(外乱振動検出部)7と、フィルタ部9と、フィルタ部11と、記憶部13と、コントローラ(制御部)15と、タッチパネル(表示部)17と、を備えている。
[0021]
コンベア3は、第1コンベア部3aと、第2コンベア部3bと、第3コンベア部3cと、を備えている。第1コンベア部3a、第2コンベア部3b及び第3コンベア部3cは、物品Pの搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。すなわち、第1コンベア部3a及び第3コンベア部3cは、第2コンベア部3bを挟む位置に配置されている。物品Pの計量は、物品Pが第2コンベア部3b上に位置しているときに行われる。第1コンベア部3aは、第2コンベア部3bに物品Pを搬入するコンベアである。第1コンベア部3aには、例えば、金属検出機(図示しない)が設けられている。第3コンベア部3cは、第2コンベア部3bから物品Pを搬出するコンベアである。第3コンベア部3cには、例えば、質量が適正範囲から逸脱している物品Pを振り分ける振分機(図示しない)が設けられている。
[0022]
計量セル5は、第2コンベア部3bに位置する物品Pを計量する。計量セル5は、負荷に応じた圧縮及び引張を受ける起歪体6を備えており、架台8に内装されている。起歪体6は、第2コンベア部3bを支持する可動剛体部6aと、架台8に固定される固定剛体部6bと、を有している。計量セル5では、起歪体6に貼着された複数のストレインゲージ(図示しない)がホイートストンブリッジ回路に接続されている。計量セル5は、負荷に応じた電気的信号を上記回路から取り出し、これを原信号として出力する。計量セル5から出力される原信号は、アナログ信号である。そのため、原信号は、A/D変換部(図示しない)によりデジタル信号に変換される。A/D変換された原信号は、フィルタ部9及び記憶部13に出力される。
[0023]
フィルタ部9は、計量セル5から出力された原信号にフィルタリング処理を行う。フィルタ部9は、フィルタリング処理により、計量セル5から出力された原信号のノイズを除去する。フィルタ部9は、特性の異なる複数のフィルタリング処理を行うことが可能とされている。具体的には、フィルタ部9は、例えば、コンベア3のローラやモータ等の回転体の周波数のノイズを減衰させるノッチフィルタ(バンドストップフィルタ)(以下、第1フィルタ)と、物品Pの質量に応じて各周波数帯域の減衰量を変更可能な3Dフィルタ(以下、第2フィルタ)と、を有している。フィルタ部9は、計量セル5から出力された原信号を受け取ると、この原信号に所定のフィルタリング処理を行い、フィルタリング処理後の計量信号を記憶部13に出力する。フィルタ部9における第1フィルタ及び第2フィルタの選択は、ユーザによる手動設定及びコントローラ15による設定が可能とされている。
[0024]
AFVセル7は、計量セル5を含む計量装置1の外乱振動を検出する。AFVセル7は、計量セル5の固定剛体部6bに設けられており、計量装置1が配置された床Fから計量装置1に伝わる振動やコンベア3の振動等を検出する。AFVセル7は、外乱振動を検出し、この外乱振動に対応する振動信号を出力する。AFVセル7から出力される振動信号は、アナログ信号である。そのため、振動信号は、A/D変換部によりデジタル信号に変換される。AD変換された振動信号は、フィルタ部11に出力される。
[0025]
フィルタ部11は、AFVセルから出力された振動信号にフィルタリング処理を行う。フィルタ部11は、フィルタリング処理により、AFVセル7から出力された振動信号のノイズを除去する。フィルタ部11は、AFVセル7から出力された振動信号を受け取ると、この振動信号に所定のフィルタリング処理を行い、フィルタリング処理後の振動信号を記憶部13に出力する。
[0026]
記憶部13は、各種信号を記憶する。記憶部13は、計量セル5から出力された原信号、フィルタ部9から出力された計量信号、及び、フィルタ部11(AFVセル7)から出力された振動信号を記憶する。
[0027]
コントローラ15は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含んで構成されている。コントローラ15は、フィルタ部9から出力されて記憶部13に記憶された計量信号と、フィルタ部11から出力された振動信号とに基づいて、物品Pの質量を求める。具体的には、コントローラ15は、計量信号から振動信号を減算して、外乱振動に起因する計量信号の誤差を補正、すなわち計量信号から振動成分を除去した計量補正信号を生成する。このとき、計量信号と振動信号とは特性が異なっているため、コントローラ15は、振動信号に所定の係数を加味し、計量信号から振動信号を除去している。
[0028]
コントローラ15は、計量補正信号に基づいて物品Pの質量を求め、物品Pの質量を示す質量情報をタッチパネル17に出力する。コントローラ15は、第3コンベア部3cに振分機が設けられている場合、物品Pの質量が予め設定された適正範囲から逸脱していると判断したときには、その物品Pを振り分ける(ラインから除外する)ように、振分機に動作信号を出力する。
[0029]
タッチパネル17は、第2コンベア部3bの背後に立設された操作部19に設けられている。タッチパネル17は、コントローラ15から出力された表示情報を受け取ると、この表示情報に基づく画像を表示する。タッチパネル17は、作業者(ユーザ)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報をコントローラ15に出力する。
[0030]
上述のように、本実施形態の計量装置1では、作業者(ユーザ)によってフィルタ部9におけるフィルタの設定が可能とされている。以下、作業者がフィルタを設定する際の計量装置1の動作について、図3~図5を参照しながら説明する。図3~図5は、タッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
[0031]
最初に、計量装置1の電源が投入されると、コントローラ15は、タッチパネル17にメニュー画面を表示させる。メニュー画面には、フィルタ部9におけるフィルタの設定を開始するための「フィルタ設定ボタン」が表示されている。フィルタの設定を行う作業者は、フィルタ設定ボタンを押下する。
[0032]
コントローラ15は、タッチパネル17においてフィルタ設定ボタンが作業者によって押下されたことを確認すると、図3に示されるように、フィルタ選択画面をタッチパネル17に表示させる。具体的には、コントローラ15は、第1フィルタによるフィルタリング処理後の第1フィルタ波形W1と、第2フィルタによるフィルタリング処理後の第2フィルタ波形W2と、第1及び第2フィルタによるフィルタリング処理後の第3フィルタ波形W3と、をタッチパネル17に重ねて表示させる。図3では、第1フィルタ波形W1を実線で示し、第2フィルタ波形W2を破線で示し、第3フィルタ波形W3を一点鎖線で示している。同様の情報は、タッチパネル17に表示されている。
[0033]
コントローラ15は、実際に計量セル5において物品Pを計量して記憶部13に記憶されている計量信号に対して、第1フィルタ及び/又は第2フィルタによりフィルタリング処理を行った場合の第1~第3フィルタ波形W1~W3を予測して生成し、タッチパネル17に表示させている。コントローラ15は、第1~第3フィルタ波形W1~W3の表示を指示する表示情報をタッチパネル17に出力する。タッチパネル17は、受け取った表示情報に基づいて、第1~第3フィルタ波形W1~W3を重ねて表示する。
[0034]
また、コントローラ15は、十文字状のカーソルCをタッチパネル17に表示させる。カーソルCは、第1~第3フィルタ波形W1~W3において拡大する箇所を指定するものである。カーソルCは、例えば操作部19に設けられたジョグダイアルの操作、若しくは、タッチパネル17における任意の位置のタッチにより、移動させられる。作業者は、カーソルCの位置が決定した場合、タッチパネル17に表示されている「拡大」のボタンB1を押下する。コントローラ15は、「拡大」のボタンB1が押下されたことを確認すると、図4に示されるように、カーソルCの中心が示す位置の第1~第3フィルタ波形W1~W3を例えば10倍に拡大した画面をタッチパネル17に表示させる。コントローラ15は、図4に示される「縮小」ボタンが作業者により押下されたことを確認すると、図4に示す画面から図3に示す画面に戻す。
[0035]
また、コントローラ15は、タッチパネル17に、サンプリングタイミング基準線L1と、精度基準線L2及び精度基準線L3とを、第1~第3フィルタ波形W1~W3に重ねて表示させる。サンプリングタイミング基準線L1は、物品Pの計量を行うタイミング(原信号を取得するタイミング)の許容値を示すものであり、計量装置1の処理能力に係る基準である。
[0036]
精度基準線L2及び精度基準線L3は、第1~第3フィルタ波形W1~W3の振幅が収まるべき理想的な範囲を示す基準である。第1~第3フィルタ波形W1~W3のいずれか振幅を精度基準線L2及び精度基準線L3内に収めることにより、原信号のノイズが良好に減衰され、外的な影響の少ない計量結果が得られる。精度基準線L2及び精度基準線L3は、所望する計量精度等に応じて適宜設定されればよい。
[0037]
また、精度基準線L2及び精度基準線L3は、図5に示されるように、段階的に複数の基準値が設定されていてもよい。図5に示されるように、精度基準線L2は、第1精度基準値L2
1と、第2精度基準値L2
2と、第3精度基準値L2
3と、が設定されている。同様に、精度基準線L3は、第1精度基準値L3
1と、第2精度基準値L3
2と、第3精度基準値L3
3と、が設定されている。第1精度基準値L2
1、第2精度基準値L2
2及び第3精度基準値L2
3は、第1精度基準値L2
1>第2精度基準値L2
2>第3精度基準値L2
3の関係を満たしている。第1精度基準値L3
1、第2精度基準値L3
2及び第3精度基準値L3
3は、第1精度基準値L3
1<第2精度基準値L3
2<第3精度基準値L3
3の関係を満たしている。すなわち、第3精度基準値L2
3と第3精度基準値L3
3との間に波形の振幅が収まる場合、最も高い計量精度が得られることになる。図5に示す例では、第3フィルタ波形W3が最も精度が高く、次に、第2フィルタ波形W2、第1フィルタ波形W1の順で精度が低くなる。精度基準線L2及び精度基準線L3における各基準値は、設計に応じて適宜設定されればよい。
[0038]
また、コントローラ15は、タッチパネル17のフィルタ選択画面に、物品Pの搬送速度、及び、物品Pの長さ寸法を表示させている。物品Pの搬送速度は、例えば、コンベア3を駆動させるモータの回転数から得られる。物品Pの長さ寸法は、例えば、センサによる検出や操作部19において作業者により入力されることにより得られる。
[0039]
作業者は、図3又は図4において、サンプリングタイミング基準線L1、精度基準線L2及び精度基準線L3に基づいて第1~第3フィルタ波形W1~W3を確認し、所望するフィルタの「フィルタ1」ボタンB2及び/又は「フィルタ2」ボタンB3を押下する。コントローラ15は、ボタンB2及び/又はボタンB3が押下されると、押下されたボタンに応じたフィルタを記憶部13に記憶させる。以上により、フィルタ部9において用いられるフィルタが設定される。
[0040]
以上説明したように、本実施形態の計量装置1では、コントローラ15は、実際に計量セル5において物品Pを計量して記憶部13に記憶されている計量信号に対して、第1及び第2のフィルタのフィルタリング処理を行った場合の複数の計量信号の第1~第3フィルタ波形W1~W3を予測して生成し、第1~第3フィルタ波形W1~W3をタッチパネル17に表示させている。このように、特性の異なる複数のフィルタリング処理が行われた場合の波形を予測(シミュレーション)して生成し、タッチパネル17に表示させることにより、フィルタを設定する作業者は、各フィルタ(第1フィルタ、第2フィルタ)の効果を視覚的に確認することができる。したがって、作業者は、タッチパネル17に表示された第1~第3フィルタ波形W1~W3を比較することで、使用環境や設定環境に応じた最適なフィルタを判断することができる。このように、計量装置1では、実際に計量を行わなくても適切なフィルタ条件を確実に判断できる。その結果、計量装置1では、適切なフィルタが選択されるので、正確な計量を実現できる。
[0041]
本実施形態の計量装置1では、コントローラ15は、計量精度の基準である精度基準線L2及び精度基準線L3、及び、能力の基準であるサンプリングタイミング基準線L1を、タッチパネル17において第1~第3フィルタ波形W1~W3に重ねて表示させている。これにより、作業者は、タッチパネル17に表示された複数の波形のうち、計量精度に関してフィルタの効果が最も適切な波形、若しくは、所望する能力を得られる波形を基準に基づいて選択することができる。したがって、高い計量精度や高い処理能力が得られるフィルタを容易に選択することができる。
[0042]
本実施形態の計量装置1では、コントローラ15は、図5に示されるように、精度基準線L2の基準値である第1精度基準値L2
1、第2精度基準値L2
2及び第3精度基準値L2
3と、精度基準線L3の基準値である第1精度基準値L3
1、第2精度基準値L3
2及び第3精度基準値L3
3を、タッチパネル17に複数表示させている。このように、精度基準線L2及び精度基準線L3の基準値を表示させることにより、作業者の求める計量精度や能力に合わせたフィルタを基準値に基づいて選択することができる。
[0043]
本実施形態の計量装置1では、計量セル5は、コンベア3で搬送される物品Pを計量する。このように、静止計量を行う場合に対して、動計量を行う場合には、実施の物品Pが搬送中にばたついたりすることや、物品Pの搬送方向での重心位置のずれ等の計量への影響に実際に応じた設定をすることができる。したがって、このような計量への影響を最低限にする最適なフィルタを容易に選択することができる本実施形態の上記構成は、動計量を行う計量装置1において特に有効である。
[0044]
本実施形態の計量装置1では、コントローラ15は、物品Pの長さ寸法と、物品Pの搬送速度とを、タッチパネル17に表示させている。コンベア3は、計量が行われる第2コンベア部3b(計量部分)と、その第2コンベア部3bに物品Pを搬入する第1コンベア部3a(搬入部分)と、第2コンベア部3bから物品Pを搬出する第3コンベア部3c(搬出部分)と、の3つに分けられている。物品Pの計量は、第2コンベア部3bに物品Pが全て載ったときのタイミングの計量信号が用いられている。つまり、物品Pが第2コンベア部3bと第1コンベア部3a又は第3コンベア部3cとに跨って位置しているときの計量信号は用いない。本実施形態では、コントローラ15は、物品Pの長さ寸法と搬送速度とをタッチパネル17に表示させている。物品Pの長さ寸法と搬送速度とからは、第1コンベア部3aから第2コンベア部3bに物品Pが完全に乗り継ぐまでの時間を求めることができる。これにより、計量のタイミングの下限を把握することができるので、より適切なタイミングで計量信号を取り込むことができる。
[0045]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、フィルタ設定画面において、コントローラ15が第1~第3フィルタ波形W1~W3を重ねてタッチパネル17に表示させる形態を一例に説明したが、コントローラ15は、フィルタ設定画面において、記憶部13に記憶された計量信号に基づく波形を第1~第3フィルタ波形W1~W3に重ねて表示させてもよい。この場合には、フィルタリング処理による効果をより顕著に確認することができる。
[0046]
上記実施形態では、コントローラ15は、第1~第3フィルタ波形W1~W3をタッチパネル17において重ねて表示させているが、第1~第3フィルタ波形W1~W3を重ねて表示させなくてもよい。第1~第3フィルタ波形W1~W3は、それぞれ別個に表示させてもよい。
[0047]
上記実施形態では、コントローラ15が、実際に計量セル5において物品Pを計量して記憶部13に記憶されている計量信号に対して、各フィルタのフィルタリング処理を行った場合の第1~第3フィルタ波形W1~W3を予測して生成する形態を一例に説明したが、コントローラ15は、記憶部13に記憶されている原信号に対して各フィルタのフィルタリング処理を行った場合の波形を予測して生成してもよい。
[0048]
上記実施形態では、作業者が、タッチパネル17に表示された第1~第3フィルタ波形W1~W3を比較して、第1フィルタ~第3フィルタのうち適切なフィルタを選択する形態を一例に説明した。しかし、フィルタの選択は、コントローラ15が行ってもよい。この場合、フィルタの選択を手動で行う手動選択モードと、フィルタの選択を自動で行う自動選択モードとを選択できる形態であってもよい。すなわち、手動選択モードと、自動選択モードとを選択できる選択部を備えていてもよい。選択部は、タッチパネル17の画面に表示されるボタンであってもよいし、機械的に設けられるボタン(スイッチ)等であってもよい。
[0049]
手動選択モード及び自動選択モードを有する場合のコントローラ15の動作について説明する。計量装置1の電源が投入されると、コントローラ15は、タッチパネル17にメニュー画面を表示させる。メニュー画面には、手動選択モードを選択するための「手動選択モードボタン」と、自動選択モードを選択するための「自動選択ボタン」とが表示されている。コントローラ15は、「手動選択モードボタン」が作業者によって押下されると、フィルタの設定を開始するための「フィルタ設定ボタン」を表示させる。手動選択モードにおける一連の動作は、上述の通りである。
[0050]
一方、コントローラ15は、「自動選択モード」が作業者によって押下されると、複数のフィルタのうち、計量のタイミングにおいて計量信号の波形のばらつきが最も小さくなる一のフィルタを選択し、一のフィルタによりフィルタリング処理を行った場合の計量信号の波形と、一のフィルタ以外の他のフィルタによりフィルタリング処理を行った場合の計量信号の波形とを区別してタッチパネル17に表示させる。
[0051]
具体的には、コントローラ15は、第1~第3フィルタのうち、計量タイミングにおいて計量信号の波形のばらつきが最も小さくなるフィルタを選択する。計量タイミングとは、原信号を取得するタイミングであり、例えばサンプリングタイミング基準線L1を基準に設定されるタイミングである。コントローラ15は、第1フィルタによるフィルタリング処理後の第1フィルタ波形W1と、第2フィルタによるフィルタリング処理後の第2フィルタ波形W2と、第1及び第2フィルタによるフィルタリング処理後の第3フィルタ波形W3とを予測して生成し、この第1~第3フィルタ波形W1~W3の波形のうち、計量タイミングにおいて最もばらつきが小さい波形を選択する。最もばらつきが小さい波形とは、例えば、図4に示される精度基準線L2及び精度基準線L3との間、より好ましくは図5に示される第3精度基準値L2
3と第3精度基準値L3
3との間に振幅が収まる波形であり、且つ、波形の振幅及び周期の変動が最も小さい波形である。すなわち、ばらつきが最も小さい波形とは、最も高い計量精度が得られる波形であり、原信号のノイズが最も良好に減衰されている。
[0052]
コントローラ15は、第1~第3フィルタ波形W1~W3に基づいて、計量のタイミングにおいてばらつきが最も小さくなる波形のフィルタを選択する。コントローラ15は、フィルタを選択すると、選択したフィルタによるフィルタ波形と、他のフィルタによるフィルタ波形とを区別してタッチパネル17に表示させる。コントローラ15は、例えば、第1~第3フィルタ波形W1~W3を色分けして区別してタッチパネル17に表示させる。
[0053]
具体的には、コントローラ15は、例えば、第3フィルタによる第3フィルタ波形W3が最もばらつきが小さいと判断した場合には、第3フィルタ波形W3を「赤色」で表示させ、第1フィルタ波形W1及び第2フィルタ波形W2を「青色」で表示させる。波形を区別する方法としては、波形の線種(実線、破線等)を変えてもよいし、その他の方法であってもよい。
[0054]
コントローラ15は、計量のタイミングにおいてばらつきが最も小さくなる波形のフィルタを選択すると、そのフィルタを記憶部13に記憶させる。なお、コントローラ15は、第1~第3フィルタ波形W1~W3をタッチパネル17に表示させると、例えば、フィルタの設定を確認するポップアップ(例えば、「第3フィルタに設定してもよろしいですか?」)を表示させてもよい。コントローラ15は、ポップアップに表示された例えば「OK」のボタンが作業者によって押下されると、選択したフィルタを記憶部13に記憶させる。一方、コントローラ15は、ポップアップに表示された「NO」のボタンが作業者によって押下されると、第1フィルタ又は第2フィルタを選択させるポップアップを表示させてもよい。コントローラ15は、ポップアップに表示された「第1フィルタ」を選択するボタン又は「第2フィルタ」を選択するボタンが作業者によって押下されると、押下されたボタンに対応するフィルタを記憶部13に記憶させる。
[0055]
以上の構成では、作業者は、自動で選択されたフィルタによる計量信号の波形と、他のフィルタによる計量信号の波形とを視覚的に確認することができる。したがって、作業者は、表示部に表示された一の波形と他の波形とを比較することで、自動で選択されたフィルタの効果を確認できる。
[0056]
上記実施形態では、精度基準線L2及び精度基準線L3に基準値を設定しているが、サンプリングタイミング基準線L1においても基準値を設定してもよい。
[0057]
上記実施形態では、操作表示部としてタッチパネル17を一例に説明したが、操作表示部はこれに限定されない。表示部としてディスプレイを使用し、操作部としてキーボード等を使用してもよい。
[0058]
上記実施形態では、コンベア3を備え、物品Pを搬送しながら計量する計量装置1を一例に説明したが、計量装置の形態はこれに限定されない。本発明は、組み合せ計量装置等にも適用可能である。
符号の説明
[0059]
1…計量装置、5…計量セル(計量部)、9…フィルタ部、13…記憶部、15…コントローラ(制御部)、17…タッチパネル(表示部)、W1…第1フィルタ波形、W2…第2フィルタ波形、W3…第3フィルタ波形。
請求の範囲
[請求項1]
物品を計量して、計量した前記物品の質量に対応する原信号を出力する計量部と、
前記計量部から出力された前記原信号にフィルタリング処理を行うフィルタ部と、
フィルタリング処理後の計量信号の波形を表示部に表示させる制御部と、を備えた計量装置であって、
前記原信号及び前記計量信号の少なくとも一方を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記原信号又は前記計量信号に対して特性の異なる複数のフィルタリング処理を行った場合の複数の計量信号の波形を予測して生成し、当該複数の計量信号の波形を前記表示部に表示させる、計量装置。
[請求項2]
前記制御部は、前記複数の計量信号の波形を前記表示部において重ねて表示させる、請求項1記載の計量装置。
[請求項3]
前記制御部は、計量精度及び能力の少なくとも一方の基準を、前記表示部に表示させる、請求項1記載の計量装置。
[請求項4]
前記制御部は、前記基準の基準値を、前記表示部に複数表示させる、請求項3記載の計量装置。
[請求項5]
前記制御部は、前記記憶された前記計量信号の波形を、前記表示部において前記予測して生成された複数の計量信号の波形と重ねて表示させる、請求項1~4のいずれか一項記載の計量装置。
[請求項6]
前記記憶部に記憶された計量信号は、実際に前記計量部において前記物品が計量されたときの計量信号である、請求項1~5のいずれか一項記載の計量装置。
[請求項7]
前記計量部は、前記物品を搬送しながら計量する、請求項1~6のいずれか一項記載の計量装置。
[請求項8]
前記制御部は、前記物品の長さ寸法と、前記物品の搬送速度とを、前記表示部に表示させる、請求項7記載の計量装置。
[請求項9]
前記フィルタリング処理に用いられるフィルタを手動で選択する手動選択モードと、前記フィルタを自動で選択する自動選択モードとを選択する選択部を備え、
前記制御部は、前記自動選択モードが選択された場合、複数の前記フィルタのうち、計量のタイミングにおいて前記計量信号の波形のばらつきが最も小さくなるフィルタを選択し、当該フィルタによりフィルタリング処理を行った場合の前記計量信号の波形と、当該フィルタ以外の他の前記フィルタによりフィルタリング処理を行った場合の前記計量信号の波形とを区別して前記表示部に表示させる、請求項1~8のいずれか一項記載の計量装置。
図面