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1. (WO2015141501) 縮重合反応性ポリマー及びその製造装置
Document

明 細 書

発明の名称 縮重合反応性ポリマー及びその製造装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007   0008   0009  

課題を解決するための手段

0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065  

実施例

0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100  

産業上の利用可能性

0101  

符号の説明

0102  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

図面

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : 縮重合反応性ポリマー及びその製造装置

技術分野

[0001]
 本発明は、縮重合反応性ポリマーの製造方法及びその製造装置に関する。

背景技術

[0002]
 縮重合反応性ポリマーは、エンジニアプラスチックの中でも需要の大きな分野で用いられており、代表的なものとしては、ポリカーボネートやポリアミド、PETボトルに代表されるポリエステル系の樹脂等が挙げられる。例えば、芳香族ポリカーボネートは、透明性や耐熱性、耐衝撃強度等の機械的強度が優れたエンジニアリングプラスチックであり、光ディスクや電気電子分野、自動車等の工業用途で幅広く用いられている。
[0003]
 従来、芳香族ポリカーボネートをエステル交換法で製造するための種々の重合器が知られている。しかしながら、ポリカーボネートは重合に伴って粘度が増大するため、機械的撹拌を必要とする重合器を利用しようとすると、重合度が大きくなって粘度が増大した場合に機械的撹拌が困難になる。そのため、そのような重合器は、製造できるポリカーボネートの重合度に制限があり、シート用途に広く用いられている高分子量の芳香族ポリカーボネートを製造することは困難であった。
[0004]
 機械的攪拌を必要としない重合装置として、溶融プレポリマーをワイヤー等のガイドに沿わせて自重で落下させながら重合させるガイド接触流下式重合装置が知られている。このような重合装置を用いると、重合に伴って撹拌ができなくなるという問題が解消される上に、副生する芳香族モノヒドロキシ化合物(例えばフェノール)を溶融物の表面から効率的に抜き出し、高分子量の芳香族ポリカーボネートを製造することができる。例えば、特許文献1には、ワイヤーガイドを溶融プレポリマー塊の幅に対して特定の間隔になるよう設置した重合器を用いた縮重合反応性ポリマーの製造方法が記載されている。この製造方法によると、高品質の縮重合反応性ポリマーを高い重合速度で効率よく製造できる。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 国際公開第2012/056903号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 ガイド接触流下式重合装置において、重合器の底部(例えば特許文献1の図1において、不活性ガス供給口9とポリマー排出口7との間の領域)には、ワイヤーガイドから落下した重合物が排出口から流出するまでの間滞留する。重合物の流下する量と排出量とは同程度になるように制御されるが、運転を継続しているうちに、多少増減し、滞留物の液面が上下する場合がある。液面が上昇した際に逆円錐状の底部の上部壁面に接触していた比較的粘度の高い重合物の一部は、液面が下降した後もその壁面に付着して残存する。残存した重合物が流下する重合物の流路に存在する場合は、その流下する重合物に押し流されて滞留物に合流するため、あまり問題にならない。
[0007]
 しかしながら、残存した重合物が、流下する重合物の流路ではない壁面に付着している場合、流下する重合物に押し流されることなく残存してしまい、周囲雰囲気に曝されたり、熱履歴を受けやすくなったりする。そして、滞留物の液面が再び上昇した際に、残存した重合物は滞留物中と混ざり合うことになるが、周囲雰囲気に曝されたり熱履歴を受けたりする間に劣化してしまうことがあり、それらが滞留物と混ざり合うことで、結果的に得られる樹脂製品の品質を低下させる要因になる。
[0008]
 従来、重合器が小さく、内部構造が単純な場合には、残存部を回避する内部構造を設計することが容易であった。そのような設計として、例えば、鉛直方向に延びる垂直ワイヤーを単純に均等に設置することが挙げられる。しかしながら、実際に工業的にポリマーを生産する場合、重合器が大きくなり、製作上及び強度上の課題から、重合器内部の構造が複雑となる。例えば、垂直ワイヤーを数ブロックに分割して設置することが必要となる。その結果、垂直ワイヤーブロックの構造がワイヤーから落下する重合物の流路に大きな影響を与えるため、重合物の残存部が発生しないような構造とする必要が生じてきた。
[0009]
 本発明は、本発明者らが見出した上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、縮重合反応性ポリマーの品質を高く維持できる縮重合反応性ポリマーの製造方法及びその製造装置を提供することである。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下[1]~[13]のとおりである。
[1]下記工程(I)及び(II):
 (I)縮重合反応性ポリマーを製造するための重合器であって、ケーシングと、そのケーシング内に設けられたガイドと、前記ケーシングに接続しその下方に設けられたポリマー排出口とを備える重合器に、溶融プレポリマーを供給する工程、及び、
 (II)前記ガイドの表面に前記溶融プレポリマーを接触させながら流下させて該溶融プレポリマーを重合し、それにより前記縮重合反応性ポリマーを製造する工程、
を有する縮重合反応性ポリマーの製造方法であって、
 前記ケーシングは、前記ポリマー排出口の上端周縁部の径よりも大きな径の下端周縁部を有する筒状上部と、前記筒状上部の前記下端周縁部と前記ポリマー排出口の前記上端周縁部とを接続し、且つ前記下端周縁部から前記上端周縁部に向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部とを有し、前記ケーシング、前記ガイド及び前記ポリマー排出口は、前記ガイドから落下する前記縮重合反応性ポリマーが、前記テーパ状下部に滞留しつつ、前記テーパ状壁の内面に沿って前記ポリマー排出口に流下するよう配置されており、
 前記筒状上部の径が0.90m以上10m以下であって、
 前記テーパ状下部における前記縮重合反応性ポリマーが流下する仮想最外周囲部分内において、前記縮重合反応性ポリマーが流下する部分の鉛直方向上方からの投影面積S1と、前記縮重合反応性ポリマーが流下しない部分の鉛直方向上方からの投影面積S2と、が下記式(1)で表される条件を満たす、製造方法。
 S1/(S1+S2)>0.60  (1)
[2]前記投影面積S1と前記投影面積S2とが、下記式(1A)で表される条件を満たす、[1]に記載の製造方法。
 S1/(S1+S2)>0.85  (1A)
[3]前記投影面積S1と前記投影面積S2とが、下記式(1B)で表される条件を満たす、[1]に記載の製造方法。
 S1/(S1+S2)>0.95  (1B)
[4]前記ガイドが複数の垂直ワイヤーを備えるワイヤーガイドであって、前記縮重合反応性ポリマーの安定生産レートが、5kg/(hr・100mm)以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5]下記工程(I)及び(II):
 (I)縮重合反応性ポリマーを製造するための重合器であって、ケーシングと、そのケーシング内に設けられたガイドと、前記ケーシングに接続しその下方に設けられたポリマー排出口とを備える重合器に、溶融プレポリマーを供給する工程、及び、
 (II)前記ガイドの表面に前記溶融プレポリマーを接触させながら流下させて該溶融プレポリマーを重合し、それにより前記縮重合反応性ポリマーを製造する工程、
を有する縮重合反応性ポリマーの製造方法であって、
 前記ケーシングは、前記ポリマー排出口の上端周縁部の径よりも大きな径の下端周縁部を有する筒状上部と、前記筒状上部の前記下端周縁部と前記ポリマー排出口の前記上端周縁部とを接続し、且つ前記下端周縁部から前記上端周縁部に向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部とを有し、前記ケーシング、前記ガイド及び前記ポリマー排出口は、前記ガイドから落下する前記縮重合反応性ポリマーが、前記テーパ状下部に滞留しつつ、前記テーパ状壁の内側表面に沿って前記ポリマー排出口に流下するよう配置されており、
 前記テーパ状下部に滞留する前記縮重合反応性ポリマーの液面と前記テーパ状壁の内面とが接触して形成される円形部分において、円周の全長L0と、前記円周のうち前記縮重合反応性ポリマーが流下する部分と実質的に接触する部分の長さL1と、が下記式(2)で表される条件を満たす範囲で、前記液面を変動させる、製造方法。
 L1/L0>0.90  (2)
[6]前記全長L0と、前記長さL1と、が下記式(2A)で表される条件を満たす範囲で、前記液面を変動させる、[5]に記載の製造方法。
 L1/L0=1.00  (2A)
[7]
 前記テーパ状下部が、更にテーパ状上部分とテーパ状下部分とそれらに挟まれた筒状中部分とを有し、
 前記テーパ状上部分と前記筒状中部分とを接続する部分には、前記縮重合反応性ポリマーが流下しない部分が存在せず、前記テーパ状下部に滞留する前記縮重合反応性ポリマーの液面が、前記筒状中部分に存在するよう制御する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の製造方法。
[8]前記テーパ状下部に滞留する前記縮重合反応性ポリマーの滞留時間が3時間以内である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の製造方法。
[9]前記ガイドがワイヤーガイドであって、前記縮重合反応性ポリマーが、異なる前記ワイヤーガイド間で互いに接触して一体化することによって面状流動体を形成しながら、前記ワイヤーガイドを落下する、[1]~[8]のいずれか1つに記載の縮重合反応性ポリマーの製造方法。
[10]前記縮重合反応性ポリマーが芳香族ポリカーボネートである、[1]~[9]のいずれか1つに記載の製造方法。
[11]縮重合反応性ポリマーを製造するための重合器を備える縮重合反応性ポリマーの製造装置であって、
 前記重合器は、ケーシングと、そのケーシング内に設けられるガイドであって、その表面に溶融プレポリマーを接触させながら流下させて該溶融プレポリマーを重合するためのガイドと、前記ケーシングに接続しその下方に設けられたポリマー排出口とを備え、
 前記ケーシングは、前記ポリマー排出口の上端周縁部の径よりも大きな径の下端周縁部を有する筒状上部と、前記筒状上部の前記下端周縁部と前記ポリマー排出口の前記上端周縁部とを接続し、且つ前記下端周縁部から前記上端周縁部に向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部とを有し、前記ケーシング、前記ガイド及び前記ポリマー排出口は、前記ガイドから落下する前記縮重合反応性ポリマーが、前記テーパ状下部に滞留しつつ、前記テーパ状壁の内面に沿って前記ポリマー排出口に流下するよう配置されており、
 前記テーパ状下部における前記縮重合反応性ポリマーが流下する仮想最外周囲部分内において、前記縮重合反応性ポリマーが流下する部分の鉛直方向上方からの投影面積S1と、前記縮重合反応性ポリマーが流下しない部分の鉛直方向上方からの投影面積S2と、が下記式(1)で表される条件を満たす、製造装置。
 S1/(S1+S2)>0.60  (1)
[12]前記テーパ状下部が、更にテーパ状上部分とテーパ状下部分とそれらに挟まれた筒状中部分とを有する、[11]に記載の製造装置。
[13]前記テーパ状上部分と前記筒状中部分とを接続する部分には、前記縮重合反応性ポリマーが流下しない部分が存在せず、前記テーパ状下部に滞留する前記縮重合反応性ポリマーの液面が、前記筒状中部分に存在するよう制御できる、[12]に記載の製造装置。
[14]前記縮重合反応性ポリマーが芳香族ポリカーボネートである、[11]~[13]のいずれか1つに記載の製造装置。

発明の効果

[0011]
 本発明によれば、縮重合反応性ポリマーの品質を高く維持できる縮重合反応性ポリマーの製造方法及びその製造装置を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 本発明の実施形態で用いられる重合装置の一例を示す概略図である。
[図2] 本発明の実施形態で用いられる重合装置の一例を示す概略図であり、(A)は重合器の概略図であり、(B)はその重合器のJ-J断面を示す概略図であり、(C)は(B)のワイヤーガイドを示す拡大図であり、(D)は(C)のワイヤーガイドの一部を示す概略図である。
[図3] 比較例3及び4で用いられる重合装置の一例を示す概略図であり、(A)は重合器の概略図であり、(B)はその重合器のK-K断面を示す概略図であり、(C)は(B)のワイヤーガイドを示す拡大図であり、(D)は(C)のワイヤーガイドの一部を示す概略図である。
[図4] 本発明の実施形態で用いられる重合装置の別の一例を示す概略図である。
[図5] (A)及び(B)は、本発明の実施例で用いられる重合装置におけるワイヤーガイドの配置を示す概略図である。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書において「径」及び「直径」は、内径とも外径とも解釈できる場合、特に断りがない限り「内径」を意味する。
[0014]
 本実施形態の縮重合反応性ポリマーの製造方法は、下記工程(I)及び(II):(I)縮重合反応性ポリマーを製造するための重合器であって、ケーシングと、そのケーシング内に設けられたガイドと、ケーシングに接続しその下方に設けられたポリマー排出口とを備える重合器に、溶融プレポリマーを供給する工程、及び、(II)上記ガイドの表面に溶融プレポリマーを接触させながら流下させて該溶融プレポリマーを重合し、それにより縮重合反応性ポリマーを製造する工程を有する縮重合反応性ポリマーの製造方法であって、ケーシングは、ポリマー排出口の上端周縁部の径よりも大きな径の下端周縁部を有する筒状上部と、筒状上部の下端周縁部とポリマー排出口の上端周縁部とを接続し、且つ下端周縁部から上端周縁部に向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部とを有し、上記のケーシング、ガイド及びポリマー排出口は、上記ガイドから落下する縮重合反応性ポリマーが、テーパ状下部に滞留しつつ、テーパ状壁の内面に沿ってポリマー排出口に流下するよう配置されており、筒状上部の径が0.90m以上10m以下であって、テーパ状下部における縮重合反応性ポリマーが流下する仮想最外周囲部分内において、縮重合反応性ポリマーが流下する部分の鉛直方向上方からの投影面積S1と、縮重合反応性ポリマーが流下しない部分の鉛直方向上方からの投影面積S2とが、下記式(1)で表される条件を満たすものである。
 S1/(S1+S2)>0.60  (1)
[0015]
 また、本実施形態の縮重合反応性ポリマーの製造方法は、下記工程(I)及び(II):(I)縮重合反応性ポリマーを製造するための重合器であって、ケーシングと、そのケーシング内に設けられたガイドと、ケーシングに接続しその下方に設けられたポリマー排出口とを備える重合器に、溶融プレポリマーを供給する工程、及び、(II)上記ガイドの表面に溶融プレポリマーを接触させながら流下させて該溶融プレポリマーを重合し、それにより縮重合反応性ポリマーを製造する工程を有する縮重合反応性ポリマーの製造方法であって、ケーシングは、ポリマー排出口の上端周縁部の径よりも大きな径の下端周縁部を有する筒状上部と、筒状上部の下端周縁部とポリマー排出口の上端周縁部とを接続し、且つ下端周縁部から上端周縁部に向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部とを有し、上記のケーシング、ガイド及びポリマー排出口は、上記ガイドから落下する縮重合反応性ポリマーが、テーパ状下部に滞留しつつ、テーパ状壁の内側表面に沿ってポリマー排出口に流下するように配置されており、テーパ状下部に滞留する縮重合反応性ポリマーの液面とテーパ状壁の内面とが接触して形成される円形部分において、円周の全長L0と、円周のうち縮重合反応性ポリマーが流下する部分と実質的に接触する部分の長さL1とが、下記式(2)で表される条件を満たす範囲で、液面を変動させるものである。
 L1/L0>0.90  (2)
[0016]
 本実施形態における縮重合反応性ポリマーとは、2分子間の官能基間で反応が進行し、低分子量体が離脱して重合が進行することにより生成するポリマーであり、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレーフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の代表例としては、芳香族ヒドロキシ化合物をジアリールカーボネートと反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネートが挙げられる。
[0017]
 本実施形態におけるポリカーボネート樹脂の代表例としては、芳香族ヒドロキシ化合物をジアリールカーボネートと反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネートが挙げられる。
[0018]
 芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的な例としてはビスフェノールAが挙げられる。ビスフェノールAを、他の芳香族ジヒドロキシ化合物と同時に使用する場合は、芳香族ジヒドロキシ化合物の全体量に対してビスフェノールAを85モル%以上の割合で使用することが好ましい。また、これら芳香族ジヒドロキシ化合物は、塩素原子とアルカリ又はアルカリ土類金属の含有量が少ない方が好ましく、できれば実質的に含有していない(100ppb以下)ことが好ましい。
[0019]
 ジアリールカーボネートとしては、例えば、非置換のジフェニルカーボネート、並びに、ジトリルカーボネート及びジ-t-ブチルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェニルカーボネート等の対称型ジアリールカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートがより好ましい。これらのジアリールカーボネートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらジアリールカーボネートは、塩素原子及びアルカリ又はアルカリ土類金属の含有量が少ない方が好ましく、できればそれらを実質的に含有していない、すなわちそれらの含有量が10ppb以下であることが好ましい。
[0020]
 芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの使用割合(仕込比率)は、用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートの種類や、目標とする分子量や水酸基末端比率、重合条件等によって異なり、特に限定されない。ジアリールカーボネートは芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、好ましくは0.9~2.5モル、より好ましくは0.95~2.0モル、更に好ましくは0.98~1.5モルの割合で用いられる。また、本実施形態においては、末端変換や分子量調節のために、フェノール、t-ブチルフェノール、クミルフェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物を併用してもよい。
[0021]
 また、本実施形態では、本発明の目的達成を損なわない範囲で、縮重合反応性ポリマーに分岐構造を導入するために多官能化合物を併用してもよい。例えば、芳香族カーボネートの分岐ポリマーを製造する場合、3価の芳香族トリヒドロキシ化合物等の多官能化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物100モル%に対して0.2~1.0モル%が好ましく、0.2~0.9モル%であることがより好ましく、0.3~0.8モル%であることが特に好ましい。
[0022]
 縮重合反応性ポリマーの製造は、重合触媒を加えずに実施することができるが、重合速度を高めるため、必要に応じて触媒の存在下で行われる。触媒を用いる場合、触媒は1種だけ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。触媒の使用量は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として芳香族ポリカーボネートを製造する場合、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物100質量部に対して、通常1.0×10 -8~1.0質量部、好ましくは1.0×10 -7~1.0×10 -1質量部の範囲で選ばれる。
[0023]
 縮重合反応性ポリマーが芳香族ポリカーボネートの場合、数平均分子量は、500~100000の範囲であると好ましく、より好ましくは、2000~30000の範囲である。数平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。
[0024]
 本実施形態において「溶融プレポリマー」とは、重合途中の溶融物を意味する。例えば、縮重合反応性ポリマーが芳香族ポリカーボネートである場合、「溶融プレポリマー」は、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとから得られ、かつ、目的とする数平均分子量を有する芳香族ポリカーボネートよりも低い分子量を有する重合途中の溶融物を意味する。すなわち、重合器に導入する重合原料を指す場合もあれば、重合器内である程度の重合反応が進行して分子量が高まった重合体を指す場合もある。また、溶融プレポリマーは、オリゴマーであってもよい。なお、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの混合物は加熱溶融するだけで反応が進むのでこれらの混合物は実質的に溶融プレポリマーである。本実施形態で用いられる溶融プレポリマーの数平均分子量は、重合温度で溶融している限りいくらであってもよいし、また、その化学構造によっても異なる。通常、その数平均分子量は、500以上100000未満の範囲にあり、好ましくは、500以上10000未満であり、より好ましくは、1000以上8000未満である。また、本実施形態の重合原料として用いられる溶融プレポリマーは、公知のいかなる方法によって得られたものでよい。
[0025]
 図1は、本実施形態の重合装置の一例を示す概略図である。重合装置は重合器100を備えている。重合器100は、重合原料をガイドの一例である縮重合反応性ポリマー製造用ワイヤーガイド(以下、単に「ワイヤーガイド」と呼ぶ。)に接触させながら落下させて、該重合原料のガイド接触落下重合を行うことのできるガイド接触落下重合器である。重合器100は、原料供給口1と、原料供給口1に連通する原料供給ゾーン3と、該原料供給ゾーン3の下方に位置し且つ該原料供給ゾーン3に連通するガイド接触落下重合反応ゾーン5と、該ガイド接触落下重合反応ゾーン5下部に位置するポリマー排出口7とを備えており、それらの各ゾーンはケーシング13に包囲されている。反応ゾーン5にはワイヤーガイド4が設置されている。そのワイヤーガイド4の上方には、重合原料である溶融プレポリマーをワイヤーガイド4の全体に供給できるように分配するための分配板2が備えられている。その分配板2には、分配板2上の溶融プレポリマーをワイヤーガイド4に移送するための孔であるポリマー供給孔12が形成されている。ケーシング13は、ポリマー排出口7の上端周縁部7aの径よりも大きな径の下端周縁部13eを有する筒状の上部13aと、上部13aの下端周縁部13eとポリマー排出口7の上端周縁部7aとを接続し、その下端周縁部13eから上端周縁部7aに向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部13cとを有する。ワイヤーガイド4は、鉛直方向に延びる複数の垂直ワイヤー10と、水平方向に延びる固定用ワイヤー11とが組み合わされてなるものである。
[0026]
 固定用ワイヤー11は、垂直ワイヤー10を構造的に保持するものであり、省略することが可能である。また、固定用ワイヤー11を複数本用いるときの隣り合う固定ワイヤー間の間隔は、任意に選択することができるが、好ましくは、30mm以上1000mm以下、更に好ましくは、40mm以上200mm以下である。
[0027]
 ガイド接触落下重合器(以下、単に「重合器」と呼ぶ場合がある。)及びそれを用いた製造方法の一例について、図1を用いてより詳細に説明する。また、以下の説明では縮重合反応性ポリマーが芳香族ポリカーボネートである場合について説明する。ただし、本発明は以下に説明されるものに限定されない。
[0028]
 溶融プレポリマーは原料供給口1から重合器100に供給される。供給された溶融プレポリマーは、分配板2の上方の原料供給ゾーン3に移送され、分配板2に形成されたポリマー供給孔12を通じて、ワイヤーガイド4が保持されているガイド接触落下重合反応ゾーン5へ移送される。溶融プレポリマーはワイヤーガイド4の上端に供給され、該ワイヤーガイド4の垂直ワイヤー10に沿うように接触しながら自重により落下する。その落下中に重合反応で副生するモノヒドロキシ化合物(例えばフェノール)を、真空ベント口6から抜き出すことにより重合反応が進行し、芳香族ポリカーボネートが製造される。該芳香族ポリカーボネートは下部に位置するポリマー排出口7を経由して、排出ポンプ8により抜き出される。
[0029]
 溶融プレポリマー及びそれから製造される芳香族ポリカーボネート(以下、これらを「溶融プレポリマー等」という。)が1本のワイヤーガイド4に接触しながら自重により落下する際、その溶融プレポリマー等の少なくとも一部は、隣の垂直ワイヤー10に接触しながら落下する溶融プレポリマー等と互いに接触・集合し、一体化した溶融プレポリマー等の塊を形成すると好ましい。そして、このような複数の垂直ワイヤー10間の溶融プレポリマー等の接触・集合がワイヤーガイド4のほぼ全面に広がってゆくに従い、溶融プレポリマー等の塊が、個々の垂直ワイヤー10に沿った「線状」の落下ではなく、ワイヤーガイド4全体に対して「面状」の外観を呈しながら落下することとなる。ここで、溶融プレポリマー等の塊が「面状の外観を呈する」とは、溶融プレポリマー等の塊が複数の垂直ワイヤー10に跨がって存在し、垂直ワイヤー10の並設方向に平行な鉛直平板形状を呈する状態をいう。すなわち、溶融プレポリマーの塊は、面状流動体を形成しながら、ワイヤーガイド4を落下し、芳香族ポリカーボネートへと転化する。
[0030]
 この面状流動体を形成するように垂直ワイヤーを配置した重合器を用いることは、本実施形態において特に好ましい。同じ分子量の芳香族ポリカーボネートを同じ温度、同じ真空度で生産する場合、溶融プレポリマー等の塊が線状に落下するよりも面状に落下する構造を有する重合器を用いた方が、重合器単位断面積当たりの上記塊の流量は増加する。結果として重合器のテーパ状下部13cに落下する芳香族ポリカーボネートの密度が増加する。また、面状に落下する方が、テーパ状下部13cに落下する単位時間当たりの芳香族ポリカーボネート量も増加するため、テーパ状下部13c部分の芳香族ポリカーボネートによる洗浄効果も一層高まる。芳香族ポリカーボネートの生産レートとしては、安定生産レート(kg/(hr・100mm))が、3kg/(hr・100mm)以上であることが好ましく、5kg/(hr・100mm)以上であることがより好ましく、10kg/(hr・100mm)以上であることが更に好ましい。ここで、「安定生産レート」とは、単位時間当たり、複数の垂直ワイヤーを備えるワイヤーガイドにおいて、水平方向100mm当たりの縮重合反応性ポリマー(芳香族ポリカーボネート)の生産量であって、芳香族ポリカーボネートを安定的に生産できる上限の上記生産量を意味する。その単位は、kg/(hr・100mm)である。また、芳香族ポリカーボネートを安定的に生産したか否かは、得られた芳香族ポリカーボネートの数平均分子量(Mn)が、目標とする値の±5%以内であるか否かにより判断される。Mnが、目標とする値の±5%以内であれば、芳香族ポリカーボネートを安定的に生産できたといえる。
[0031]
 この場合、ポリマー供給孔12を経由して供給された複数の垂直ワイヤー10間の溶融プレポリマー同士を接触・集合させると、水平方向の溶融プレポリマーの相互作用により、水平方向に均一な落下状態を得ることが可能となる。すなわち、個々の垂直ワイヤー10を溶融プレポリマーが独立して落下する場合よりも溶融プレポリマー全体が均一速度で落下することになるため、重合器100内で溶融プレポリマーの滞留時間をより均一にすることができ、これによって数平均分子量が均一な芳香族ポリカーボネートを高い生産性で製造することが可能となる。また、従来、隣り合う垂直ワイヤー10に沿って落下する溶融プレポリマーが互いに接触・集合すればするほど、重合反応で副生するモノヒドロキシ化合物(例えばフェノール)が抜けるべき表面積は小さくなり、重合速度は大きく低下すると考えられていた。ところが、本発明者らの検討によると、重合速度自体は大きく低下せず、ワイヤーガイド4に供給する溶融プレポリマーの量を多くすることができるため、生産性が飛躍的に増加し、重合器の単位断面積当たりの溶融プレポリマーの密度を高めることができる。その結果、個々の垂直ワイヤー10に独立して溶融プレポリマーを接触落下させる場合に比べて、生産性を大きく高めることが可能となる。
[0032]
 ワイヤーガイド4の詳細な構造、ポリマー供給孔12とワイヤーガイド4との位置関係などの詳細は、特許文献1に記載されたものであってもよく、特許文献1は参照によりここに取り込まれる。
[0033]
 また、溶融プレポリマーには、重合中に発泡して表面積が増加するように、重合器100に導入する前に、不活性ガス供給口9からの不活性ガスを吸収させることが好ましい。不活性ガスを溶融プレポリマーに吸収させる具体的方法としては、国際公開第99/64492号に記載の方法等を用いることができる。
[0034]
 ワイヤーガイド4において生成した芳香族ポリカーボネートは、ワイヤーガイド4の下端から落下するが、その少なくとも一部は、ケーシング13のテーパ状下部(以下、「ケーシング底部」ともいう。)13cのテーパ状壁に落下する。テーパ状壁に落下した芳香族ポリカーボネートは、そのテーパ状壁の内面を傾斜に沿って、ポリマー排出口7に向かって流下する。その芳香族ポリカーボネートは、ポリマー排出口7を経由して排出ポンプ8から抜き出される。テーパ状下部13cには、通常、所定量の芳香族ポリカーボネートを滞留させる。その滞留量が少ない場合、排出ポンプ8によって一定量の芳香族ポリカーボネートを排出することが困難になりやすく、また、芳香族ポリカーボネートの滞留量が更に少なくなると、排出ポンプ8がキャビテーションを起こす場合もある。テーパ状下部13cに滞留させる芳香族ポリカーボネートの量は、排出ポンプ8による排出量や、排出経路に設けられた弁体(図示せず。)を調節することによって制御できる。このとき、ケーシング底部13cには、芳香族ポリカーボネートが滞留し(以下、滞留した芳香族ポリカーボネートを単に「滞留物」と呼ぶ場合もある。)、その液面がケーシング底部13cのテーパ状壁に接触する。
[0035]
 本実施形態の一つの態様では、重合器100のケーシング13における円筒状の上部(以下、「ケーシング胴部」ともいう。)13aの直径(内径)が0.90m以上10m以下であって、ケーシング底部13cにおける芳香族ポリカーボネートが流下する仮想最外周囲部分内において、芳香族ポリカーボネートが流下する部分(X)の鉛直方向上方からの投影面積S1と、流下しない部分(Y)の鉛直方向上方からの投影面積S2とが、下記式(1)で表される条件を満たす。
 S1/(S1+S2)>0.60  (1)
[0036]
 ケーシング胴部13aの直径は、0.90m以上10m以下である。この直径が0.90m以上であると、芳香族ポリカーボネートを生産性良く量産できる。また、実際の重合器の製作容易性の観点から、ケーシング胴部13aの直径は10m以下であり、8m以下であると更に好ましい。ケーシング胴部13aは円筒状であって高さ方向(鉛直方向)のいずれの部分であっても同じ直径を有することが好ましいが、高さ方向において異なる直径を有するものであってもよい。ケーシング胴部13aが高さ方向において異なる直径を有する場合、その最小値をケーシング胴部13aの直径とする。また、ケーシング胴部13aの側壁に設けられる真空ベント口6及び不活性ガス供給口9による径の変化は、ケーシング胴部13aの直径の計算に考慮しない。さらに、ケーシング胴部13aには、ケーシング底部13cが観察できるように観察窓を設置してもよい。
[0037]
 また、ケーシング底部13cは、上方から下方に向けて細くなるテーパ状の形状を有する。テーパ状の形状としては、例えば、錐状(線形テーパ)、指数関数テーパ、放物線テーパ及び半球状が挙げられる。芳香族ポリカーボネートをより確実に流下させ、壁面に芳香族ポリカーボネートが付着した状態になり難くする観点から、上方から下方に向けて細くなる逆錘状の形状を有することが好ましく、上方から下方に向けて細くなる逆円錐状の形状を有することがより好ましい。
[0038]
 上記「仮想最外周囲部分」とは、流下する部分(X)の複数の最外点と、その複数の最外点間を結んだ直線で包囲される領域をいう。また、「最外点」とは、重合器100を鉛直方向上方から見た投影図(平面図)において、ポリマー排出口7の中心から任意の方向に直線を延ばした場合に、ワイヤーガイド4の投影との交点で最も遠い点を意味するが、そのうち、最外点間を結んだ直線で包囲される領域が外側に凸の形状とならないような点は除外される。これらについて、図2を参照しつつ、詳細に説明する。図2は、本実施形態で用いられる重合装置の一例を示す概略図であり、(A)は重合器の概略図であり、(B)はその重合器のJ-J断面を示す概略図であり、(C)は(B)のワイヤーガイドを示す拡大図であり、(D)は(C)のワイヤーガイドの一部を示す概略図である。(A)は、滞留物及びその液面レベルL及びJ-J断面を付した以外は図1と同じ図であるので、ここでは説明を省略する。(B)において、複数のワイヤーガイド4a,4b(以下、これらをまとめて「ワイヤーガイド4」ともいう。)は、それぞれ垂直ワイヤー10と固定用ワイヤー11とを組み合わせて構成されており、また、中央には、ポリマー排出口7が示されている。そして、(B)を拡大した(C)における外縁が「仮想最外周囲部分」の外縁である。すなわち、ポリマー排出口7の中心Zから幾何学的に延ばされた直線と、ワイヤーガイド4a,4bの投影を示す線との交点のうち最も遠い点である「最外点」がW、複数の「最外点」の集合が太線で示された部分であり、それらの「最外点」間を結んだ直線が細線で示された部分である。ここで、点Vも、ポリマー排出口7の中心Zから幾何学的に延ばされた直線と、ワイヤーガイド4a,4bの投影を示す線との交点のうち最も遠い点であるが、点Vも「最外点」として含めると、領域が外側に凸の形状にならないため、点Vは「最外点」から除外される。そして、ケーシング底部13cが上方から下方に向けて細くなる逆円錐状の場合に、(C)におけるハッチング部分を仮想最外周囲部分における流下しない部分(Y)とする。
[0039]
 図3は、後述のように、本発明の範囲外である重合装置を示す概略図であり、図2と同様に、(A)は重合器の概略図であり、(B)はその重合器のK-K断面を示す概略図であり、(C)は(B)のワイヤーガイドを示す拡大図であり、(D)は(C)のワイヤーガイドの一部を示す概略図である。図3においては、隣接する2つの最外点Wに向かってポリマー排出口7の中心Zから幾何学的に延ばされた2本の直線とそれら隣接する最外点W間を結んだ直線とで囲まれた三角形の部分をポリマーが流下しない部分(Y)とする。ここで、図3に示すように、流下しない部分(Y)から、中心部に位置する排出部は除かれる。また、図2及び図3に示すように、隣接する「最外点」W間を結ぶ直線と「最外点」Wに向かってポリマー排出口7の中心Zから幾何学的に延ばされた直線及びワイヤーガイドの投影を示す線で囲まれた多角形のうち、その多角形の内部(周囲は含まず)に、ワイヤーガイドの投影を示す線がない場合は、その多角形をポリマーが流下しない部分(Y)とする。ここでワイヤーガイドの投影を示す線とは、ワイヤーガイドを上方からみた時にワイヤーガイドの両端部の垂直ワイヤーを結んだ直線を意味する。
[0040]
 本実施形態では、仮想最外周囲部分において、流下しない部分(Y)の比率が小さいことが望ましい。具体的には、仮想最外周囲部分内の流下する部分(X)の鉛直方向上方からの投影面積S1と、流下しない部分(Y)の鉛直方向上方からの投影面積S2(図2(C)におけるハッチング部分の面積)との関係が、下記式(1)で表される条件を満たし、より好ましくは下記式(1A)で表される条件を満たし、更に好ましくは下記式(1B)で表される条件を満たし、なおも更に好ましくは下記式(1C)で表される条件を満たし、特に好ましくは下記式(1D)で表される条件を満たす。
 S1/(S1+S2)>0.60  (1)
 S1/(S1+S2)>0.85  (1A)
 S1/(S1+S2)>0.95  (1B)
 S1/(S1+S2)>0.98  (1C)
 S1/(S1+S2)≧0.99  (1D)
[0041]
 かかる条件を満たすように、ワイヤーガイド4の数、大きさ、形状及び配置を設定することにより、条件を満たさない場合と比較して、ワイヤーガイド4から落下した芳香族ポリカーボネートが流下しない部分(Y)を小さくすることができる。これにより、ケーシング底部13cの滞留物の液面(図2(A)及び(C)に符号Lで示される。)が上昇した後に下降した場合であっても、流下しない部分(Y)に残存した芳香族ポリカーボネートの量が少なくなる。その結果、その残存した芳香族ポリカーボネートが周囲雰囲気に曝されたり熱履歴を受けたりして劣化した場合であっても、再び滞留物の液面Lが上昇して滞留物に混入する劣化した芳香族ポリカーボネートの量を最小限に留めることが可能になる。また、重合器の底部における重合物の流路は、生産する樹脂の粘度の相違や重合器の内壁表面の状態変化によって変化することがある。樹脂の粘度の相違について詳細に述べると、同じ重合器である粘度の樹脂製品を生産した後に、それとは異なる粘度の樹脂製品を生産する場合、重合器の底部における重合物の流路がそれらの樹脂製品間で異なることがある。その場合、後者の樹脂製品を生産する際に流路が変化し、前者の樹脂製品を生産する時に流路となっていた領域に重合物の残存した部分(残存部)が発生し、その残存部は周囲雰囲気に曝されたり、熱履歴を受けやすくなったりする。その結果、劣化した重合物の残存部は、再び前者の樹脂製品を生産する時に、その重合物の流路となり、劣化した重合物が洗い流される。この時にも多くの劣化した重合物が製品となる重合物に混入することとなる。そのような場合も、重合物の流路が変化しにくく、重合物の流動する領域が限られることによって、重合物の残存部が発生しにくくなり、劣化した重合物の滞留物への混入も抑制することができる。芳香族ポリカーボネートの劣化は、熱履歴を受けたり周囲雰囲気に曝されたりすることによって高分子量化したり、条件によってはゲル化することである。このような劣化物は、最終的に得られる芳香族ポリカーボネート製品の分子量分布を上昇させたり分岐量を増加させたりして、その製品の物性、色相、外観を悪化させる原因となりうる。ところが、上述のとおり、本実施形態では劣化した芳香族ポリカーボネートの混入量を最小限に留めることができる。したがって、最終的に得られる芳香族ポリカーボネートの品質を高く維持することができる。
[0042]
 更にケーシング底部13cにおいて、後述の液面レベルとして50%以下となるテーパ状壁の領域、特に30%以下となるテーパ状壁の領域における流動部分S1と非流動部分S2との関係が、上記式(1)で表される条件を満たすと好ましく、上記式(1A)で表される条件を満たすとより好ましく、上記式(1B)で表される条件を満たすと更に好ましく、上記式(1C)で表される条件を満たすとなおも更に好ましく、上記式(1D)で表される条件を満たすと特に好ましく、S1/(S1+S2)が1.00(すなわち、S2=0)になることはないが、S1/(S1+S2)が限りなく1.00に近いことが極めて好ましい。このような領域では、液面レベルの高さによって、頻繁に周囲雰囲気に曝されたり滞留物に接触したりすることを繰り返すので、本発明による利点をより有効に享受することができる。
[0043]
 本実施形態の別の態様においては、ケーシング底部13cに滞留する芳香族ポリカーボネートの液面Lとテーパ状壁の内面とが接触して形成される円形部分において、円周の全長L0と、円周のうち縮重合反応性ポリマーが流下する部分と実質的に接触する部分の長さL1とが、下記式(2)で表される条件を満たす範囲で、液面Lを変動させる。さらに、下記式(2A)で表される条件を満たす範囲で、液面Lを変動させることが好ましい。
 L1/L0>0.90  (2)
 L1/L0=1.00  (2A)
[0044]
 ここで、「円形部分」とは、ケーシング底部13cが上方から下方に向けて細くなる逆円錐状である場合に形成される部分であり、図2の(C)において点線で示される円周で包囲される部分である。L1/L0が0.90を超える場合は、L1/L0が0.90以下である場合に比べて、滞留物の、芳香族ポリカーボネートが流下しない部分との接触が少なくなる。これにより、滞留物の液面Lが上昇した後に下降した場合であっても、流下しない部分に残存する芳香族ポリカーボネートの量が少なくなる。したがって、劣化した芳香族ポリカーボネートの滞留物への混入量をより最小限に留めることができるので、最終的に得られる芳香族ポリカーボネート製品の品質をさらに高く維持することができる。特に上記式(2A)で表される条件を満たす場合は、芳香族カーボネートが流下しない部分に滞留物を接触させないように、液面Lを変動させることを意味するので、特に芳香族ポリカーボネート製品の品質を高く維持することが可能となる。
[0045]
 液面Lの位置は、できるだけ一定に保つことが望ましい。具体的には、液面レベルの変動幅を10%以内、好ましくは5%以内、更に好ましくは2%以内になるように保持する。ここで、「液面レベル」とは、重合器下部のポリマー排出口の上端周縁部の鉛直方向の位置を0%とし、ケーシング底部の上端周縁部(すなわち、ケーシング胴部の下端周縁部)の鉛直方向の位置を100%としたときの鉛直方向における液面の位置を百分率で示したものである。重合器100においては、重合器100下部のポリマー排出口7の上端周縁部7aの鉛直方向の位置を0%とし、ケーシング底部13cの上端周縁部(すなわち、ケーシング胴部13aの下端周縁部13e)の鉛直方向の位置を100%としたときの鉛直方向における液面の位置を百分率で示したものが「液面レベル」である。
[0046]
 本実施形態において、ケーシング底部13cに滞留する縮重合反応性ポリマー、例えば芳香族ポリカーボネート、の滞留時間が、3時間以内であると好ましく、2時間以内であるとより好ましく、1時間以内であると更に好ましい。この滞留時間を上述の範囲内とすることにより、ケーシング底部13cで滞留物が熱履歴を受けるのをより抑制することができるので、結果的に得られる樹脂の品質低下をより有効に防止することが可能となる。ここで、「滞留時間」は、ワイヤーガイド4から落下してケーシング底部13cのテーパ状壁に接触した時間又は滞留物に直接落下した時間を0とし、ポリマー排出口7の下流にある排出ポンプ8を通過するまでの平均時間を示す。「滞留時間」は、ケーシング底部13cにおける液面レベルから算出した滞留物の容量とその滞留物の抜き出し量から、下記式により求められる。
 滞留時間T(時間)=滞留物の容量(L)/滞留物の抜き出し量(L/時間)
[0047]
 また、溶融プレポリマーが原料供給口1を通過してから、生成した縮重合反応性ポリマーが排出ポンプ8を通過するまでの時間(以下、「重合器通過時間」という。)は、5時間以内であると好ましく、3時間以内であるとより好ましく、2時間以内であると更に好ましい。
[0048]
 上記滞留時間及び重合器通過時間を上述の範囲内に収めるためには、滞留物の液面Lをできるだけ鉛直方向に低い状態で保持すればよい。具体的には、上記液面レベルを好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下にするように制御すれば、上記滞留時間を上述の範囲内に収めやすくなる。また、ポリマー排出口7と排出ポンプ8とを接続する配管の長さ及び容量(径)を大きくすることにより、その配管内に滞留物の液面が存在するように制御してもよい。
[0049]
 本実施形態の重合装置において、芳香族ポリカーボネートを製造する場合、重合装置は上記重合器100を1基備えてもよく、2基以上備え、それらを組み合わせて用いてもよい。また、本実施形態に係る重合器100と他の重合器とを組み合わせて芳香族ポリカーボネートを製造することも可能である。例えば、初めに撹拌槽型反応器を用いて、芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートを重合することにより、溶融プレポリマーを製造し、得られた溶融プレポリマーを、本実施形態に係る重合器100を用いて重合することも好ましい。
[0050]
 溶融プレポリマーを製造するための装置としては、上述の攪拌槽型反応器以外に、例えば、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器等が挙げられる。本実施形態においては、これらを組み合わせることで段階的に縮重合反応を進めて目的の溶融プレポリマーを製造することも可能である。これらの製造方法については、例えば米国特許第5,589,564号等を参照することもできる。また、本実施形態に係る重合器、及びその他の上記反応器の材質に特に制限はなく、重合器又は反応器の少なくとも内壁面を構成する材質として、ステンレススチールやニッケル、ガラス等から選ばれる材質であってもよい。
[0051]
 本実施形態において、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとを反応させて芳香族ポリカーボネートを製造する場合、反応温度は、通常50~350℃であり、好ましくは100~290℃である。この反応の進行に伴って、芳香族モノヒドロキシ化合物が生成してくるが、これを反応系外へ除去することによって反応速度が高められる。したがって、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガス等反応に悪影響を及ぼさない不活性なガスを重合器100やその他の反応器に導入して、生成してくる芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらのガスに同伴させて除去する方法や、減圧下に反応を行う方法も好ましく用いられる。重合器100に不活性なガスを導入する場合、不活性ガス供給口9から導入すればよい。
[0052]
 好ましい反応温度は、製造する芳香族ポリカーボネートの種類や分子量、重合温度等によっても異なるが、例えばビスフェノールAとジフェニルカーボネートから芳香族ポリカーボネートを製造する場合、数平均分子量が1000未満の範囲では100~270℃の範囲が好ましく、1000以上の範囲では200~290℃の範囲が好ましい。
[0053]
 好ましい反応圧力は、製造する芳香族ポリカーボネートの種類や分子量、重合温度等によっても異なるが、例えばビスフェノールAとジフェニルカーボネートから芳香族ポリカーボネートを製造する場合、数平均分子量が1000未満の範囲では、50mmHg(6,660Pa)~常圧の範囲が好ましく、数平均分子量が1000~2000の範囲では、3mmHg(400Pa)~50mmHg(6,660Pa)の範囲が好ましく、数平均分子量が2000を超える範囲では、20mmHg(2,670Pa)以下、特に10mmHg(1,330Pa)以下が好ましく、更に2mmHg(267Pa)以下が好ましい。減圧下で、かつ前述した不活性ガスを重合器100内に不活性ガス供給口9から導入しながら反応を行う方法も好ましく用いられる。また、予め不活性ガスを吸収させた溶融プレポリマーを用いて重合させることも好ましい方法である。
[0054]
 本実施形態に係る重合器100は、特に数平均分子量が2000以上、更に好ましくは4000以上のポリカーボネートプレポリマーを原料としてポリカーボネートを重合するメイン重合器として好適に用いられる。メイン重合器は1基であっても2基以上であってもよい。また、メイン重合器における温度は、230℃以上300℃℃以下が好ましく、240℃以上270℃以下が更に好ましい。この温度が、230℃以上であることにより、加熱不足又は保温不足に起因して重合器や配管のごく一部が180℃~220℃の温度領域となることをより抑制できる。これによって、数平均分子量が1500~5000のプレポリマーが短時間で結晶化することに起因する、配管の途中に設けられたフィルターや押出機に設けられたポリマーフィルターの詰まりをより防止することが可能となる。また、メイン重合器における温度が270℃以下であることにより、滞留時間が長くなった場合に芳香族ポリカーボネート中の分岐量が増えることに起因して芳香族ポリカーボネートが脆くなるのをより抑制することができる。ただし、メイン重合器における温度を高くすると重合速度が速くなり、重合時の圧力を高くすることができて生産量を多くすることが可能となる。特にその温度を270℃以上に高くしたときに分岐量を増やさないためには、メイン重合器での滞留時間は2時間以内が好ましい。所望のポリカーボネート製品の分子量は、重合器100における温度、圧力及びポリカーボネートの生産量によって制御することが可能である。
[0055]
 重合器100を加熱する熱媒温度及び/又は重合器100内の圧力を調節することによって、ポリカーボネートの生産量及びポリカーボネートの分子量の調整が可能である。例えば、同じ生産量で、ポリカーボネートの分子量の変動を抑制したい場合は、重合器100内の圧力を調整することによって、所望のポリカーボネート製品の分子量に制御することができる。また、重合器100内の温度及び圧力を調整することによって、所望のポリカーボネート製品の分子量と生産量とを制御することも可能である。さらに、複数の重合器(そのうち少なくとも1つが重合器100である。)を用いる場合、重合器間を接続する配管の温度は、各重合器の温度により制御することができ、ポリカーボネートの粘度と流速とを調整することで制御することも可能である。また、原料供給口1の熱媒加熱系と重合器100本体の熱媒加熱系とを別々の熱媒系とすること及び/又は予熱器によって、原料供給口1における溶融プレポリマーの粘度を下げることが可能となる。重合器100からポリカーボネートを排出する出口配管は、2~4つに分岐させてもよい。分岐後は、その出口配管を経由してポリカーボネートを押出機などに供給し、そこで添加剤をポリカーボネートと混合してペレット化してもよい。あるいは、その出口配管を経由して、後段に更に設けた重合器にポリカーボネートを供給し、そこでポリカーボネートを更に高分子化してもよい。さらには、出口配管の途中から、ポリカーボネートに触媒や分岐剤等を添加して、さらに重合させることも好ましい。また、例えば、ポリカーボネートの末端基の量を調整するために、重合器100から排出されたポリカーボネートに芳香族ジアリール化合物や芳香族ジヒドキシ化合物を添加して更に重合した後、添加剤を混合し又は添加剤を混合することなくペレット化することも好ましい。
[0056]
 重合器を複数設ける場合(そのうち少なくとも1つが重合器100である。)、重合器間を接続する配管の温度を制御することにより、ポリカーボネートの結晶化物や焼けポリマー等の異物の発生を抑制することが可能となる。機器及び配管の熱媒出口温度と熱媒入口温度との差(入口-出口)は-20℃~0.1℃であると好ましく、-15℃~0.1℃であるとより好ましく、-10℃~0.1℃であると更に好ましく、-5℃~0.1℃であると特に好ましい。
[0057]
 重合器100よりも前段に設置された重合器の出口と重合器100の原料供給口1とを接続する配管には、重合器100への異物の混入を防止する観点から、フィルターを設けることが好ましい。そのフィルターの形状は、特に限定されないが、コーン状、ディスク状及び筒状が好ましい。フィルターは、配管内に挿入してもよいし、押出機に用いられるブレーカープレートのような切り替え式のものであってもよい。
[0058]
 本実施形態の製造方法により得られた芳香族ポリカーボネートは、通常はペレット化されるが、そのまま重合器を成形機と連結してフィルムやシート、ボトル等の成形品を製造してもよい。更に、フィッシュアイを微細化したり除去したりするために、ろ過精度1~50μm程度のポリマーフィルター等を設置してもよい。また、押出機やミキサー等を用いて、安定剤、酸化防止剤、染顔料、紫外線吸収剤、難燃剤等の添加剤や、ガラス繊維、フィラーとの強化剤等の添加剤等を添加・溶融混練してペレット化することができる。
[0059]
 本実施形態によれば、分子量安定性に優れる高品質の縮重合反応性ポリマー、例えば芳香族ポリカーボネート、を生産性よく工業的に製造できるので、分子量分布が小さく、適正な分岐量を有し色調及び物性に優れ、さらにゲルに起因するフィッシュアイを低減することが可能となる。特に、芳香族ポリカーボネートの数平均分子量が好ましくは10000mol/g以上、より好ましくは12000mol/g以上、更に好ましくは13000mol/g以上であっても、分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.0以上3.0以下、より好ましくは2.0以上2.8以下、更に好ましくは2.0以上2.6以下の芳香族ポリカーボネートを得ることができる。また、本実施形態によれば、分岐量が好ましくは0.3mol%以下、より好ましくは0.27mol%以下、更に好ましくは0.20mol%以下の物性及び色調に優れた芳香族ポリカーボネートを得ることができる。
[0060]
 以上、本実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る重合器は、上記重合器100に代えて又は加えて、図4に示す重合器であってもよい。図4は、本発明で用いられる重合装置の別の一例を示す概略図である。この重合装置における重合器200は、ケーシングのテーパ状下部の形状、及びワイヤーガイドの配置以外は、上記重合器100と同様である。重合器200において、ワイヤーガイド4の配置は、重合器200のM-M断面を示す概略図である(B)に示すとおりである。このようなワイヤーガイド4の配置であっても、上記式(1)で表される条件を満たすことが可能であり、且つ、上記式(2)で表される条件を満たすように滞留物の液面を変動させることができる。
[0061]
 また、重合器200におけるケーシング13のテーパ状下部213cの形状は、(A)に示すとおりであり、テーパ状下部213cは、更にテーパ状上部分213fとテーパ状下部分213gとそれらに挟まれた筒状中部分213hとを有する。この場合、テーパ状下部分213gのテーパ状壁の内面に沿って縮重合反応性ポリマーが流下することが好ましい。テーパ状上部分213f及びテーパ状下部分213gは、上方から下方に向けて細くなるテーパ状の形状を有するが、芳香族ポリカーボネートをより確実に流下させ、壁面に芳香族ポリカーボネートが付着した状態になり難くする観点から、上方から下方に向けて細くなる逆錘状の形状を有することが好ましく、上方から下方に向けて細くなる逆円錐状の形状を有することがより好ましい。
[0062]
 また、テーパ状上部分213fと筒状中部分213hとを接続する部分Nには、縮重合反応性ポリマーが流下しない部分が存在しないことが、テーパ状下部213cにおいて該ポリマーが流下しない領域を効率的に小さくする観点から好ましい。この場合、テーパ状下部213cに滞留する縮重合反応性ポリマー(滞留物)の液面Lが筒状中部分213hに存在するよう、制御することが更に好ましい。こうすることにより、筒状中部分213hでは、縮重合反応性ポリマーが流下するので、滞留物の液面Lが上昇した後に下降した場合であっても、液面Lよりも上側の壁面に残存する芳香族ポリカーボネートを流下する縮重合反応性ポリマーで洗浄すること(セルフクリーニング)が可能となる。それに加えて、筒部中部分213hは、テーパ状の部分と比較して、壁面に芳香族ポリカーボネートが残存し難いため、筒状中部分213hで液面Lが上下しても、壁面に芳香族ポリカーボネートが付着せずに落下しやすい。
[0063]
 さらに、ガイドは、少なくとも垂直ワイヤーを含む構造体であればよく、上記ワイヤーガイド4に限定されない。
[0064]
 更に、本発明の縮重合反応性ポリマーの製造方法等においては、異物の少ない溶融プレポリマーを用いると、より品質の良いポリマーを得ることができるので好ましい。プレポリマーの製造には、例えば撹拌槽式予備重合器(図示せず)を用いることができる。また、ワイヤー式重合器での縮重合時の芳香族モノヒドロキシ化合物のような副生成物の揮散を促進するために、予め窒素をプレポリマーに吸収させる目的で、ワイヤー式窒素吸収設備(図示せず)を用いることもできる。さらには、メイン重合器で製造されたポリマーから更に高分子量のポリマーを製造するのに、ワイヤー式最終重合器(図示せず)を用いてもよい。ここで、「ワイヤー式」とは、溶融した又は液状の原料又は供給物をワイヤー等のガイドに沿わせて自重で落下させながら、所定の処理を行う方式を意味する。
[0065]
 プレポリマーやポリマー中の異物を除去する観点から、本発明の縮重合反応性ポリマーの製造方法等において、撹拌槽式予備重合器の底部からその後の工程に用いる装置に接続されるプレポリマーの移送ポンプが設置される吐出配管、並びに、ワイヤー式窒素吸収設備、メイン重合器、及び、ワイヤー式最終重合器におけるプレポリマー及び/又はポリマーの供給口又は吐出口のうち少なくとも1箇所に、フィルター(図示せず)を設置することが好ましい。フィルターの種類としては、例えば、コーンタイプのフィルター、デイスクタイプのフィルター、及び、押出機の吐出に設けられるブレーカプレートタイプのフィルター(すべて図示せず)が挙げられ、これらが好ましい。
 コーンタイプ等のフィルターエレメントの孔径は、通常、ワイヤー式の重合器や窒素吸収設備等に設けられるポリマー分散板の孔径よりも少し小さい孔径である。具体的には、フィルターの孔径は、ポリマー分散板の孔径よりも0.05~3mm小さい孔径とすることが好ましい。0.1~2mm小さい孔径であるとより好ましく、0.1~1mm小さい孔径であると更に好ましい。
 移送ポンプと直接接続し、フィルターを設けた吐出配管を用いる場合、フィルターエレメントを交換しやすくするため、その吐出配管を、吐出圧力計(図示せず)が取り付けられたL字(エルボ)二重管配管とすることが好ましい。また、フィルターを交換するために、吐出配管が原料(例えば芳香族モノヒドロキシ化合物)で洗浄できるようにすることも好ましい。
 また、加熱源の熱媒ボイラーから供給される熱媒油を用いる場合であって、その熱媒油が流通する配管がL字二重管部を有する場合は、そのL字二重管部が、バイパス配管を設けて部分的に熱媒油の流れを止めることにより、熱媒油が抜液できるような形状や構造を有することも好ましい。吐出圧力計は、移送ポンプの運転状態、プレポリマー及び/又はポリマーの数平均分子量や粘度変化及びフィルターの詰まり状況を把握するために、フィルターの上流に設けることが好ましい。さらに、ワイヤー式等のメイン重合器などに対して、プレポリマーを供給する配管の逆L字形状のエルボ配管部を用いることが好ましい。そのエルボ配管部を用いることにより、フイルター(フイルターエレメント)の交換や点検をより効率的に行うことができる。
実施例
[0066]
 以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。
 各項目の評価は以下の方法で測定した。
[0067]
(1)数平均分子量及び分子量分布
 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8320GPC」、カラム:東ソー株式会社製、製品名「TSK-GEL Super Multipore HZ-M」を2本、RI検出器)を用いて、テトラヒドロフランを溶離液とし、温度40℃で測定した。分子量(数平均分子量及び重量平均分子量)は、標準単分散ポリスチレン(VARIAN社製、製品名「EasiVial」)の較正曲線から、下式による換算分子量較正曲線を用いて求めた。
 M PC=0.3591×M PS 1.0388
ここで、式中、M PCはポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量、MPSは標準単分散ポリスチレンの数平均分子量又は重量平均分子量である。
[0068]
(2)フィッシュアイ
 得られたポリマーから、フィルム成形機(田辺プラスチック機械社製、30mmφ単軸押出機、スクリュー回転数:100rpm、吐出量:10kg/hr、バレル温度:280℃、Tダイ温度:260℃、ロール温度:120℃)を用いて、厚さ50μm、幅30cmのフィルムを成形し、任意の長さ1m中における大きさが300μm以上のフィッシュアイの数を目視にて数えた。
[0069]
(3)粘度
 原料プレポリマーと得られたポリマーの粘度は、それぞれの試料をサンプリングして、実施例、比較例に対応したそれぞれの温度にて測定した。測定装置としては、東洋精機製のキャピログラフ(製品名「CAPIROGRAPH 1B)」、型番A‐271902103)を用いた。
 分岐量は、国際公開第97/32916号に記載の異種結合単位(A)及び異種結合単位(B)の合計量で示し、国際公開第97/32916号に記載の方法に準じて求めた。
[0070]
(実施例1)
 図2に示すようなワイヤーガイド4の配置を有する図1のガイド接触流下式重合器を用いて芳香族ポリカーボネートを製造した。ケーシング13の形状は、ケーシング上部13aが円筒状であり、ケーシング底部13cが逆円錐状であった。図2の(A)に示したガイド接触落下重合反応ゾーン5において、ケーシング胴部13aの内径が1500mmの円筒形で、かつ長さ10000mmであった。図2の(D)に示すように複数の垂直ワイヤー10の片側に固定用ワイヤー11が設けられたワイヤーガイド4を、図2の(B)に示すように12枚設置した。
[0071]
 ここで、ワイヤーガイド4aにおける垂直ワイヤー10は、図2の(D)に示すような態様で、102本を10mm間隔で配置された。垂直ワイヤー10の直径は3mm、ワイヤーガイド4aの一端から他端までの水平方向の長さは1010mmであった。したがって、6枚のワイヤーガイド4aにおける垂直ワイヤー10の総本数は、612本であった。
[0072]
 垂直ワイヤー10の上部には、溶融プレポリマーを流下させるポリマー供給孔12が複数設置された。ポリマー供給孔12は、垂直ワイヤー10の真上に、ポリマー供給孔12の中心間の距離が30mmになるように設置した。ポリマー供給孔12の設置間隔及び設置数は、垂直ワイヤー10の端から2本目の上部から垂直ワイヤー2本おきに、計34個とした。
[0073]
 また、ワイヤーガイド4bにおける垂直ワイヤー10は、図2の(D)に示すような態様で、54本を10mm間隔で配置された。垂直ワイヤー10の直径は3mm、ワイヤーガイド4bの一端から他端までの水平方向の長さは530mmであった。したがって、6枚のワイヤーガイド4bにおける垂直ワイヤー10の総本数は、324本であった。
[0074]
 垂直ワイヤー10の上部には、溶融プレポリマーを流下させるポリマー供給孔12が複数設置された。ポリマー供給孔12は、垂直ワイヤー10の真上に、ポリマー供給孔12の中心間の距離が30mmになるように設置した。ポリマー供給孔12の設置間隔及び設置数は、垂直ワイヤー10の端から2本目の上部から垂直ワイヤー2本おきに、設置した。
[0075]
 複数の水平方向に延びる固定用ワイヤー11間の間隔(ピッチ)は80mmであった。その他のワイヤーガイドにおけるサイズ等を表1に示す。また、重合器の材質は全てSUS316であり、重合器の外側はジャケットになっており、熱媒で260℃に加温されていた。
[0076]
[表1]


[0077]
 ビスフェノールAとジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAのモル比で1.08)とから製造され、260℃に保たれた溶融プレポリマー(芳香族ポリカーボネートの前駆体;数平均分子量(Mn)は4500)を、供給ポンプによって原料供給口1より原料供給ゾーン3に連続的に供給した。重合器100内の分配板2に形成された複数のポリマー供給孔12から、ガイド接触落下重合反応ゾーン5に連続的に供給された溶融プレポリマーは、ワイヤーガイド4に沿って流下し、それに伴い重合反応が進行した。ポリマー供給孔12から吐出された溶融プレポリマーは、ポリマー供給孔12の下方に設置されたワイヤーガイド4に沿って落下し、ワイヤーガイド4の上端部から200mmより下方において、水平方向に互いに接触して、それにより、落下中の溶融プレポリマー/芳香族ポリカーボネート塊は「面状」の外観を呈した。得られた芳香族ポリカーボネートは、ケーシング底部13cのテーパ状壁の内面に落下した。
[0078]
 テーパ状壁の内面に落下した芳香族ポリカーボネートは、重力によってケーシング底部13cの逆円錐状の頂点に向かって流下し、そこに設けられたポリマー排出口7より、配管に落下した。図2の(C)において、ハッチング部分は、芳香族ポリカーボネートが流下しない部分(Y)の投影であり、幾何学的に芳香族ポリカーボネートが流下しない部分(Y)を鉛直方向上方からの投影図で示したものである。また、図2の(C)における最外枠が、仮想最外周囲部分の枠であり、仮想最外周囲部分のうち、流下しない部分(Y)以外の部分が芳香族ポリカーボネートが流下する部分(X)である。
[0079]
 投影面積S1と投影面積S2との関係は、S1/(S1+S2)=0.94であった。
[0080]
 ワイヤーガイド4の下端から重合器100のケーシング底部13cのテーパ状壁に落下した芳香族ポリカーボネートは、ケーシング底部13cにおいて滞留する量がほぼ一定となるように、排出ポンプ8によってポリマー排出口7から連続的に抜き出した。
[0081]
 滞留物の液面は、図2の(A)及び(C)に示すように、ケーシング底部13cに位置し、滞留物の滞留量について、その液面レベルが10%±2%の範囲で変動するよう、排出ポンプ8の出力を制御した。
[0082]
 このとき、液面レベルの変動の制御を、芳香族ポリカーボネートが流下する部分(X)のみに液面が存在するように行ったため、テーパ状下部に滞留した芳香族ポリカーボネートの液面とテーパ状壁の内面とが接触して形成される円形部分の円周の全長L0と、円周のうち芳香族ポリカーボネートが流下する部分と接触する部分の長さL1との比L1/L0は1.00であった。
[0083]
 また、ガイド接触落下重合反応ゾーン5内の減圧度は、真空ベント口6を通して、ポリマー排出口7より抜き出される芳香族ポリカーボネートの数平均分子量が12800になるように調整した。1時間ごとに得られた芳香族ポリカーボネートの数平均分子量を測定した。10時間連続で数平均分子量が12800±100にあることを確認して、溶融プレポリマーの供給量と芳香族ポリカーボネートの抜き出し量を段階的に増やした。その結果、芳香族ポリカーボネートの抜き出し量(安定生産レート)が6kg/(hr・100mm)になるまでは安定的に数平均分子量12800±100の芳香族ポリカーボネートを製造することができた。ここでの抜き出し量は、複数の垂直ワイヤー10で構成されるワイヤーガイド4において、水平方向100mm当たりの生産量を意味し、単位としては、kg/(hr・100mm)で表した値である。また、得られた芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量は、36000であり、分子量分布は、2.8であった。ケーシング底部13cでの滞留物の滞留時間は、50分であった。また、分岐量は、0.26mol%であり、更にフィシュアイは0個であった。以上の結果を表1にまとめて示す。なお、表1において、溶融プレポリマーの粘度の値は、260℃で測定した値である。また、目視で観察できる50μm以上のフィッシュアイも認められなかった。また、芳香族ポリカーボネートの生産量は600kg/hであり、生産性良く量産できた。
[0084]
(実施例2~13)
 表1に示すように各種条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、芳香族ポリカーボネートを得た。得られた芳香族ポリカーボネートにおける各種物性及び評価結果を表1にまとめて示す。なお、実施例3及び4においては、ワイヤーガイドの配置を図4の(B)に断面を示すものから図5の(A)に断面を示すものに代え、実施例13においては、ワイヤーガイドの配置を図4の(B)に断面を示すものから図5の(B)に断面を示すものに代えた。また、実施例4においては、固定ワイヤーを備えていないワイヤーガイドを用いた。また、実施例2~10及び13におけるL1/L0は1.00であった。
 さらに、実施例11においては、表1に示す変更に加えて、ワイヤーガイド間の間隔400mmを280mmに変更(よって480mmを540mmに変更)し、720mmを240mmに変更(よって320mmを560mmに変更)した以外は、以下に詳述する図3と同じ重合器を用いた。なお、実施例11のL1/L0は0.78であった。
 さらに、実施例12においては、表1に示す変更に加えて、ワイヤーガイド間の間隔400mmを160mmに変更(よって480mmを600mmに変更)し、720mmを240mmに変更(よって320mmを560mmに変更)した以外は、以下に詳述する図3と同じ重合器を用いた。なお、実施例12のL1/L0は0.81であった。
[0085]
(比較例1)
 ケーシング胴部13aの内径が300mmであり、垂直ワイヤー21本を一列に配置した重合器を用いてポリカーボネートを生産した。他の条件は、実施例1と同様であった。液面レベル(L)を一定に30分間保ち、数平均分子量(Mn)10300のポリカーボネートを生産した。得られたポリマーのフィッシュアイは2個と比較的良好であったが、生産量は32kg/hと極めて低かった。
[0086]
(比較例2)
 ケーシング胴部13aの内径が2000mmの重合器を用い、垂直ワイヤー400本を均質に配置しようとしたが製作性及び耐荷重性において困難なため、設計できなかった。
[0087]
(比較例3)
 図3に示すようなワイヤーガイド4の配置を有する図1のガイド接触流下式重合器を用いて芳香族ポリカーボネートを製造した。ワイヤーガイド4の配置以外、例えばケーシング13の形状などは、実施例1と同様の重合器であった。図3の(A)に示したガイド接触落下重合反応ゾーン5は、ケーシング胴部13aの内径が2000mmの円筒形で、かつ長さ10000mmであった。図3の(D)に示すように複数の垂直ワイヤー10の片側に固定用ワイヤー11が設けられたワイヤーガイド4を、図3の(A)のK-K断面の概略図である(B)に示すように20枚設置した。なお、図3における(A)~(D)は、図2における(A)~(D)に対応し、それぞれ同種の図を示している。
[0088]
 ここで、1枚のワイヤーガイド4における垂直ワイヤー10は、図3の(D)に示すような態様で、9本を60mm間隔で配置されており、垂直ワイヤー10の直径は3mm、ワイヤーガイド4の一端から他端までの水平方向の長さは480mmであった。したがって、20枚のワイヤーガイド4における垂直ワイヤー10の総本数は、180本であった。
[0089]
 垂直ワイヤー10の上部には、溶融プレポリマーを流下させるポリマー供給孔12が複数設置された。ポリマー供給孔12は、全ての垂直ワイヤーの真上に設置した。
[0090]
 複数の水平方向に延びる固定用ワイヤー11間の間隔(ピッチ)は80mmであった。その他のワイヤーガイドにおけるサイズ等を表1に示す。また、重合器の材質は全てSUS316であり、重合器の外側はジャケットになっており、熱媒で265℃に加温されていた。
[0091]
 ビスフェノールAとジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAのモル比で1.08)とから製造され、265℃に保たれた溶融プレポリマー(芳香族ポリカーボネートの前駆体;数平均分子量(Mn)は4500)を、供給ポンプによって原料供給口1より原料供給ゾーン3に連続的に供給した。重合器100内の分配板2に形成された複数のポリマー供給孔12から、ガイド接触落下重合反応ゾーン5に連続的に供給した溶融プレポリマーは、ワイヤーガイド4に沿って流下し、それに伴い重合反応が進行した。ポリマー供給孔12から吐出された溶融プレポリマーは、ポリマー供給孔12の下方に設置されたワイヤーガイド4に沿って落下し、ワイヤーガイド4の上端部から下方に独立して流下しつつ、芳香族ポリカーボネートに転化し、ケーシング底部13cのテーパ状壁の内面に独立に落下した。
[0092]
 テーパ状壁の内面に落下した芳香族ポリカーボネートは、重力によってケーシング底部13cの逆円錐状の頂点に向かって流下し、そこに設けられたポリマー排出口7より、配管に落下した。図3の(C)において、ハッチング部分は、芳香族ポリカーボネートが流下しない部分(Y)の投影であり、幾何学的に芳香族ポリカーボネートが流下しない部分(Y)を鉛直方向上方からの投影図で示したものである。芳香族ポリカーボネートは、垂直ワイヤー10からそれぞれ独立に落下するため、図3の(C)に斜線部で図示していない部分にも流下しない部分(Y)が多数存在した。
[0093]
 図3の(C)における最外枠が、仮想最外周囲部分の枠であり、仮想最外周囲部分のうち、流下しない部分(Y)以外の部分に、芳香族ポリカーボネートが流下する部分(X)が認められた。
[0094]
 投影面積S1と投影面積S2との関係は、S1/(S1+S2)<0.5であった。また、L1/L0は0.53であった。
[0095]
 ワイヤーガイド4の下端から重合器100のケーシング底部13cのテーパ状壁に落下した芳香族ポリカーボネートは、ケーシング底部13cにおいて滞留する量がほぼ一定となるように、排出ポンプ8によってポリマー排出口7から連続的に抜き出した。
[0096]
 滞留物の液面は、図3の(A)及び(C)に示すように、ケーシング底部13cに位置し、滞留物の滞留量について、その液面レベルが30%±20%の範囲で変動するよう、排出ポンプ8の出力を制御した。
[0097]
 このとき、液面レベルの変動の制御を、芳香族ポリカーボネートが流下しない部分(Y)にも液面が存在するように行ったため、液面の上昇によって流下しない部分(Y)に付着した芳香族ポリカーボネートは、液面の下降によってその流下しない部分(Y)に残存し、熱履歴を受けた。その結果、熱履歴を受けた芳香族ポリカーボネートが、再度液面が上昇した時に滞留物に混入して、ポリマー排出口7から排出された。
[0098]
 また、ガイド接触落下重合反応ゾーン5内の減圧度は、真空ベント口6を通してポリマー排出口7より抜き出される芳香族ポリカーボネートの数平均分子量が12800になるように調整した。1時間ごとに得られた芳香族ポリカーボネートの数平均分子量を測定した。10時間連続で数平均分子量が12800±100にあることを確認して、溶融プレポリマーの供給量と芳香族ポリカーボネートの抜き出し量を段階的に増やした。その結果、芳香族ポリカーボネートの抜き出し量(安定生産レート)が1.5kg/(hr・100mm)になるまでは安定的に数平均分子量12800±100の芳香族ポリカーボネートを製造することができた。ここでの抜き出し量は、複数の垂直ワイヤー10で構成されるワイヤーガイド4において、水平方向100mm当たりの生産量を意味し、単位としては、kg/(hr・100mm)で表した値である。また、得られた芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量は、45000であり、分子量分布は、3.5であった。ケーシング底部13cでの滞留物の滞留時間は、4時間であった。また、フィシュアイは10個であった。以上の結果を表1に示す。
[0099]
(比較例4)
 垂直ワイヤー10の間隔を10mm(垂直ワイヤー10の総本数で980本)とした以外は、比較例3と同様にして芳香族ポリカーボネートを製造した。投影面積S1と投影面積S2との関係は、S1/(S1+S2)<0.5であり、L1/L0は0.55であった。フィッシュアイの数は8個であった。
[0100]
 本出願は、2014年3月19日出願の日本特許出願(特願2014-057195)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

産業上の利用可能性

[0101]
 本発明によると、分子量安定性に優れる高品質の縮重合反応性ポリマー、特に芳香族ポリカーボネート、を生産性よく工業的に製造できるので、分子量分布が小さく、適正な分岐量を有し色調及び物性に優れ、さらにゲルに起因するフィッシュアイを低減することが可能となる。したがって、芳香族ポリカーボネート等の縮重合反応性ポリマーを製造する際に、産業上の利用可能性がある。

符号の説明

[0102]
 1…原料供給口、2…分配板、3…原料供給ゾーン、4…ワイヤーガイド、5…ガイド接触落下重合反応ゾーン、6…真空ベント口、7…ポリマー排出口、8…排出ポンプ、9…不活性ガス供給口、10…垂直方向のワイヤー(垂直ワイヤー)、11…水平方向のワイヤー(固定用ワイヤー)、12…ポリマー供給孔、13…ケーシング、100,200…ガイド接触落下重合器(重合器)。

請求の範囲

[請求項1]
 下記工程(I)及び(II):
 (I)縮重合反応性ポリマーを製造するための重合器であって、ケーシングと、そのケーシング内に設けられたガイドと、前記ケーシングに接続しその下方に設けられたポリマー排出口とを備える重合器に、溶融プレポリマーを供給する工程、及び、
 (II)前記ガイドの表面に前記溶融プレポリマーを接触させながら流下させて該溶融プレポリマーを重合し、それにより前記縮重合反応性ポリマーを製造する工程、
を有する縮重合反応性ポリマーの製造方法であって、
 前記ケーシングは、前記ポリマー排出口の上端周縁部の径よりも大きな径の下端周縁部を有する筒状上部と、前記筒状上部の前記下端周縁部と前記ポリマー排出口の前記上端周縁部とを接続し、且つ前記下端周縁部から前記上端周縁部に向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部とを有し、前記ケーシング、前記ガイド及び前記ポリマー排出口は、前記ガイドから落下する前記縮重合反応性ポリマーが、前記テーパ状下部に滞留しつつ、前記テーパ状壁の内面に沿って前記ポリマー排出口に流下するよう配置されており、
 前記筒状上部の径が0.90m以上10m以下であって、
 前記テーパ状下部における前記縮重合反応性ポリマーが流下する仮想最外周囲部分内において、前記縮重合反応性ポリマーが流下する部分の鉛直方向上方からの投影面積S1と、前記縮重合反応性ポリマーが流下しない部分の鉛直方向上方からの投影面積S2と、が下記式(1)で表される条件を満たす、製造方法。
 S1/(S1+S2)>0.60  (1)
[請求項2]
 前記投影面積S1と前記投影面積S2とが、下記式(1A)で表される条件を満たす、請求項1に記載の製造方法。
 S1/(S1+S2)>0.85  (1A)
[請求項3]
 前記投影面積S1と前記投影面積S2とが、下記式(1B)で表される条件を満たす、請求項1に記載の製造方法。
 S1/(S1+S2)>0.95  (1B)
[請求項4]
 前記ガイドが複数の垂直ワイヤーを備えるワイヤーガイドであって、前記縮重合反応性ポリマーの安定生産レートが、5kg/(hr・100mm)以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項5]
 下記工程(I)及び(II):
 (I)縮重合反応性ポリマーを製造するための重合器であって、ケーシングと、そのケーシング内に設けられたガイドと、前記ケーシングに接続しその下方に設けられたポリマー排出口とを備える重合器に、溶融プレポリマーを供給する工程、及び、
 (II)前記ガイドの表面に前記溶融プレポリマーを接触させながら流下させて該溶融プレポリマーを重合し、それにより前記縮重合反応性ポリマーを製造する工程、
を有する縮重合反応性ポリマーの製造方法であって、
 前記ケーシングは、前記ポリマー排出口の上端周縁部の径よりも大きな径の下端周縁部を有する筒状上部と、前記筒状上部の前記下端周縁部と前記ポリマー排出口の前記上端周縁部とを接続し、且つ前記下端周縁部から前記上端周縁部に向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部とを有し、前記ケーシング、前記ガイド及び前記ポリマー排出口は、前記ガイドから落下する前記縮重合反応性ポリマーが、前記テーパ状下部に滞留しつつ、前記テーパ状壁の内側表面に沿って前記ポリマー排出口に流下するよう配置されており、
 前記テーパ状下部に滞留する前記縮重合反応性ポリマーの液面と前記テーパ状壁の内面とが接触して形成される円形部分において、円周の全長L0と、前記円周のうち前記縮重合反応性ポリマーが流下する部分と実質的に接触する部分の長さL1と、が下記式(2)で表される条件を満たす範囲で、前記液面を変動させる、製造方法。
 L1/L0>0.90  (2)
[請求項6]
 前記全長L0と、前記長さL1と、が下記式(2A)で表される条件を満たす範囲で、前記液面を変動させる、請求項5に記載の製造方法。
 L1/L0=1.00  (2A)
[請求項7]
 前記テーパ状下部が、更にテーパ状上部分とテーパ状下部分とそれらに挟まれた筒状中部分とを有し、
 前記テーパ状上部分と前記筒状中部分とを接続する部分には、前記縮重合反応性ポリマーが流下しない部分が存在せず、前記テーパ状下部に滞留する前記縮重合反応性ポリマーの液面が、前記筒状中部分に存在するよう制御する、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項8]
 前記テーパ状下部に滞留する前記縮重合反応性ポリマーの滞留時間が3時間以内である、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項9]
 前記ガイドがワイヤーガイドであって、前記縮重合反応性ポリマーが、異なる前記ワイヤーガイド間で互いに接触して一体化することによって面状流動体を形成しながら、前記ワイヤーガイドを落下する、請求項1~8のいずれか1項に記載の縮重合反応性ポリマーの製造方法。
[請求項10]
 前記縮重合反応性ポリマーが芳香族ポリカーボネートである、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項11]
 縮重合反応性ポリマーを製造するための重合器を備える縮重合反応性ポリマーの製造装置であって、
 前記重合器は、ケーシングと、そのケーシング内に設けられるガイドであって、その表面に溶融プレポリマーを接触させながら流下させて該溶融プレポリマーを重合するためのガイドと、前記ケーシングに接続しその下方に設けられたポリマー排出口とを備え、
 前記ケーシングは、前記ポリマー排出口の上端周縁部の径よりも大きな径の下端周縁部を有する筒状上部と、前記筒状上部の前記下端周縁部と前記ポリマー排出口の前記上端周縁部とを接続し、且つ前記下端周縁部から前記上端周縁部に向かって延在するテーパ状壁を有するテーパ状下部とを有し、前記ケーシング、前記ガイド及び前記ポリマー排出口は、前記ガイドから落下する前記縮重合反応性ポリマーが、前記テーパ状下部に滞留しつつ、前記テーパ状壁の内面に沿って前記ポリマー排出口に流下するよう配置されており、
 前記テーパ状下部における前記縮重合反応性ポリマーが流下する仮想最外周囲部分内において、前記縮重合反応性ポリマーが流下する部分の鉛直方向上方からの投影面積S1と、前記縮重合反応性ポリマーが流下しない部分の鉛直方向上方からの投影面積S2と、が下記式(1)で表される条件を満たす、製造装置。
 S1/(S1+S2)>0.60  (1)
[請求項12]
 前記テーパ状下部が、更にテーパ状上部分とテーパ状下部分とそれらに挟まれた筒状中部分とを有する、請求項11に記載の製造装置。
[請求項13]
 前記テーパ状上部分と前記筒状中部分とを接続する部分には、前記縮重合反応性ポリマーが流下しない部分が存在せず、前記テーパ状下部に滞留する前記縮重合反応性ポリマーの液面が、前記筒状中部分に存在するよう制御できる、請求項12記載の製造装置。
[請求項14]
 前記縮重合反応性ポリマーが芳香族ポリカーボネートである、請求項11~13のいずれか1項に記載の製造装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]