明 細 書
技術分野
[0001]
本発明は、内燃機関のクランクシャフトと同期して回転する駆動側回転体に対する従動側回転体の相対回転位相を制御する弁開閉時期制御装置に関する。
背景技術
[0002]
近年、内燃機関(以下「エンジン」とも称する)の運転状況に応じて吸気弁及び排気弁の開閉時期を変更可能とする弁開閉時期制御装置が実用化されている。この弁開閉時期制御装置は、例えば、エンジンの作動による駆動側回転体の回転に対する従動側回転体の相対回転位相(以下、単に「相対回転位相」とも称する)を変化させることにより、従動側回転体の回転に伴って開閉される吸排気弁の開閉時期を変更する機構を有している。
[0003]
一般に、吸排気弁の最適な開閉時期はエンジンの始動時や車両の走行時などエンジンの運転状況により異なる。エンジンの始動時には、相対回転位相を最遅角位相と最進角位相との間の中間ロック位相に拘束することにより、エンジンの始動に最適な吸排気弁の開閉時期を実現すると共に、駆動側回転体と従動側回転体によって形成される流体圧室の仕切部が揺動して打音が発生するのを抑制している。そのため、エンジンを停止させる前には、相対回転位相を中間ロック位相に拘束しておくことが望まれる。エンジンの停止には、交差点等での短時間停止時にエンジンをストップして排気ガスの排出やガソリンの消費を抑制するアイドリングストップも含まれる。
[0004]
特許文献1には、最進角位相及び最遅角位相の間の中間位相でロックピンをロックする際に、確実にロックすることができるバルブタイミング調整装置が開示されている。このバルブタイミング調整装置においては、制御弁は、第一領域に移動することにより進角ポート及びロックポートをそれぞれ主供給ポート及び排出開口部に接続する一方、第一領域に対して第二方向にずれた第二領域に移動することにより進角ポート及びロックポートの双方を主供給ポートに接続するように構成されている。第一領域は、第一主規制部材によって回転位相を規制位相にロックするロック領域である。更に第一領域は、進角室に連通する進角ポートを主供給ポートに接続することにより進角室に供給される進角供給流量が第一方向の移動端における流量よりも少ない流量に絞られる絞り領域を有する。これにより、当該絞り領域では、ベーンロータの進角側への回転速度は、当該少量に制御される流量に応じた遅い速度になる。更にこのようなベーンロータの進角側への緩やかな位相変化時には、ロックポートと排出開口部とが接続されてロック室から作動油が排出される。従って、ベーンロータの進角側への緩やかな位相変化により、ロック室からの作動油の流出に伴う回転位相のロックを確実に行うことができる。
先行技術文献
特許文献
[0005]
特許文献1 : 特開2012-140968号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0006]
昨今、アイドリングストップ機能を有する車両において、燃費を向上させる目的のため、エンジンを停止させる指令が出されるタイミングが早まっている。すなわち、従前であれば、アイドリングストップ機能付き車両は、車速がゼロになってからエンジン停止の指令が出されていたのに対し、最近では所定の車速(例えば10km/h)を下回った時点でエンジン停止の指令が出されるようになっている。ただし、エンジンを適切に再始動させるためには、相対回転位相を中間ロック位相に拘束した後にエンジンを停止させなければならない。そのため、エンジンの停止指令が出されてから短時間で相対回転位相を中間ロック位相に拘束する必要がある。
[0007]
特許文献1に開示されたバルブタイミング調整装置においては、確実に回転位相を中間ロック位相でロックさせるために、ベーンロータの進角側への回転速度が遅くなるように構成されている。そのため、このバルブタイミング調整装置をアイドリングストップ機能付きの車両に適用した場合、短時間で中間ロック位相に拘束できないおそれがある。
[0008]
従って、相対回転位相を短時間で変化させて中間ロック位相に拘束することができる弁開閉時期制御装置を提供することが求められている。
課題を解決するための手段
[0009]
上記課題を解決するために、本発明に係る弁開閉時期制御装置の特徴構成は、内燃機関の駆動軸と同期回転する駆動側回転体と、前記駆動側回転体の内側で前記駆動側回転体の軸心と同軸心に配置され、前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に区画形成される流体圧室と、前記駆動側回転体及び前記従動側回転体の少なくとも一方に設けられた仕切部で前記流体圧室を仕切ることにより形成される進角室及び遅角室と、作動流体の給排により、前記駆動側回転体に対する前記従動側回転体の相対回転位相が最進角位相と最遅角位相との間の中間ロック位相に拘束されるロック状態と前記中間ロック位相の拘束が解除されたロック解除状態とが選択的に切り替えられる中間ロック機構と、前記進角室に給排される前記作動流体の流通を許容する進角流路と、前記遅角室に給排される前記作動流体の流通を許容する遅角流路と、給電量を変化させることによりスプールの位置を変化させ、前記進角室、前記遅角室及び前記中間ロック機構に対する前記作動流体の給排を制御する少なくとも1つの電磁弁と、を備え、前記中間ロック機構から前記作動流体が排出され且つ前記進角室及び前記遅角室のいずれか一方に前記作動流体が供給されいずれか他方から前記作動流体が排出されるように前記電磁弁が制御されたロック移行モードにあるときに前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の最大流量は、前記中間ロック機構に前記作動流体が供給されるように前記電磁弁が制御されている位相可変モードにあるときに前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の最大流量よりも多い点にある。
[0010]
進角流路を流通する作動流体の流量が増加すれば進角室への作動流体の給排は速く行われ、遅角流路を流通する作動流体の流量が増加すれば遅角室からの作動流体の給排は速く行われる。そして、進角室、遅角室への作動流体の給排が速く行われれば、相対回転位相の進角方向又は遅角方向への変化速度が速くなる。よって、このような構成とすれば、中間ロック機構から作動流体が排出されるロック移行モードの方が、中間ロック機構に作動流体が供給される位相可変モードよりも、相対回転位相の進角方向又は遅角方向への変化速度が速くなる。従って、例えば、相対回転位相が最遅角位相や最進角位相付近にあるときにロック移行モードになるように電磁弁を制御すると、相対回転位相が高速で変化し、短時間で中間ロック位相でのロック状態に到達させることができる。
[0011]
本発明に係る弁開閉時期制御装置においては、前記ロック移行モードにあるときに、前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の流量は前記電磁弁の前記スプールが前記スプールの可動範囲の端部へ近づくにつれて増加すると好適である。
[0012]
スプールの位置が、その可動範囲の端部にあるときは、スプールを移動させるソレノイドへの給電量が0か最大のときである。すなわち、ソレノイドへの給電量が0か最大のときに、進角室、遅角室への作動流体の給排が速く行われて、相対回転位相の進角方向又は遅角方向への変化速度が最大になる。従って、このような構成とすれば、相対回転位相を高速で変化させたいときに、給電量を細かく制御する必要がない。つまり、給電量を0か最大のいずれかにすることにより、高速で相対回転位相を変化させることができ、短時間で中間ロック位相でのロック状態に到達させることができる。
[0013]
本発明に係る弁開閉時期制御装置においては、前記ロック移行モードにおいて前記相対回転位相が進角方向と遅角方向の両方向に変化可能に構成されており、前記ロック移行モードにおいて、前記電磁弁の前記スプールが前記スプールの可動範囲の一方の端部にあるときに前記相対回転位相が前記進角方向へ変化しつつ前記作動流体は前記中間ロック機構から第1排出流路を流通して排出され、前記スプールが可動範囲の他方の端部にあるときに前記相対回転位相が前記遅角方向へ変化しつつ前記作動流体は前記前記中間ロック機構から第2排出流路を流通して排出され、前記相対回転位相が前記遅角方向へ変化するときの前記従動側回転体の速度である遅角変化速度の方が前記相対回転位相が前記進角方向へ変化するときの前記従動側回転体の速度である進角変化速度よりも速い場合、前記進角変化速度に対する前記遅角変化速度の速度比以上に、前記第2排出通路を流通する前記作動流体の流量が前記第1排出流路を流通する前記作動流体の流量よりも多く、前記進角変化速度の方が前記遅角変化速度よりも速い場合、前記遅角変化速度に対する前記進角変化速度の速度比以上に、前記第1排出通路を流通する前記作動流体の流量が前記第2排出流路を流通する前記作動流体の流量よりも多いと好適である。
[0014]
高速で相対回転位相を変化させて、短時間で中間ロック位相でのロック状態を実現させるためには、中間ロック機構からの短時間での作動流体の排出が必要である。そこで、このような構成とすれば、変化速度の遅い方向に相対回転位相が変化するときの中間ロック機構からの作動流体の排出流量よりも、変化速度の速い方向に相対回転位相が変化するときの中間ロック機構からの作動流体の排出流量を多くすることができる。その結果、高速で相対回転位相を高速させたときにも、確実に中間ロック位相でのロック状態を実現させることができる。
[0015]
本発明に係る弁開閉時期制御装置においては、前記位相可変モードにおいて、前記相対回転位相を保持しつつ前記中間ロック機構に前記作動流体を供給するときの前記作動流体の流量が、前記相対回転位相を変化させつつ前記中間ロック機構に前記作動流体を供給するときの前記作動流体の流量よりも多いと好適である。
[0016]
中間ロック機構がロック解除状態にあるときに発生し得る大きな問題の1つが、意図せずにロック状態になることである。ロック状態になると、相対回転位相の変化が規制されるため、所望の相対回転位相に変化させることができないおそれがある。このような意図しないロック状態は、相対回転位相が中間ロック位相で保持された状態で、カムの回転で発生するカムシャフトのトルク変動に伴って作動流体に油圧脈動が発生し、その油圧脈動の下限値がロック解除を維持できる油圧を下回ったときに発生する。
[0017]
そこで、このような構成とすれば、相対回転位相が中間ロック位相で保持されているときの、中間ロック機構に作用する作動流体による圧力損失が最小になる。この結果、油圧脈動の下限値を高めることができ、意図しないロック状態の発生を抑制することができる。
図面の簡単な説明
[0018]
[図1] 第1実施形態に係る弁開閉時期制御装置の構成を表す縦断面図である。
[図2] 図1のII-II線断面図である。
[図3] OCVの作動による、各流路における作動油の流通状態を表す図である。
[図4] スプールの位置を変化させたときの、進角室、遅角室、及び、中間ロック機構から給排される作動油の流量の変化を表すグラフである。
[図5] W1におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図6] W2におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図7] W3におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図8] W4におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図9] W4EにおけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図10] 第2実施形態に係る弁開閉時期制御装置の構成を表す縦断面図である。
[図11] 図10のXI-XI線断面図である。
[図12] OCVの作動による、各流路における作動油の流通状態を表す図である。
[図13] スプールの位置を変化させたときの、進角室、遅角室、及び、中間ロック機構から給排される作動油の流量の変化を表すグラフである。
[図14] W1におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図15] W2におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図16] W3におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図17] W4におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図18] W5におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図19] W5におけるOCVの作動状態を表す拡大断面図である。
[図20] その他の実施形態に係る弁開閉時期制御装置の構成を表す縦断面図である。
発明を実施するための形態
[0019]
1.第1実施形態
以下に、自動車用エンジン(以下、単に「エンジンE」と称する)における吸気弁側の弁開閉時期制御装置に本発明を適用した第1実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明において、エンジンEは内燃機関の一例である。
[0020]
〔全体構成〕
図1に示すように、弁開閉時期制御装置10は、クランクシャフトCと同期回転するハウジング1と、ハウジング1の内側でハウジング1の軸心Xと同軸心に配置され、エンジンEの弁開閉用のカムシャフト101と一体回転する内部ロータ2とを備えている。カムシャフト101は、エンジンEの吸気弁103の開閉を制御するカム104の回転軸であり、内部ロータ2、及び固定ボルト5と同期回転する。カムシャフト101は、エンジンEのシリンダヘッドに回転自在に組み付けられている。なお、クランクシャフトCは駆動軸の一例であり、ハウジング1は駆動側回転体の一例であり、内部ロータ2は従動側回転体の一例である。
[0021]
固定ボルト5のカムシャフト101に近い側の端部には雄ねじ5bが形成されている。ハウジング1と内部ロータ2を組み合わせた状態で固定ボルト5を中心に挿通し、固定ボルト5の雄ねじ5bとカムシャフト101の雌ねじ101aとを螺着することで、固定ボルト5がカムシャフト101に対して固定されると共に、内部ロータ2とカムシャフト101も固定される。
[0022]
ハウジング1は、カムシャフト101が接続される側とは反対側に配置されているフロントプレート11と、内部ロータ2に外装される外部ロータ12と、タイミングスプロケット15を一体的に備えカムシャフト101が接続される側に配置されているリヤプレート13とを締結ボルト16により組み付けて構成される。ハウジング1には内部ロータ2が収容され、内部ロータ2と外部ロータ12との間に、後述する流体圧室4が形成される。内部ロータ2と外部ロータ12とは、軸心Xを中心にして相対回転自在に構成されている。なお、リヤプレート13にタイミングスプロケット15を備えずに、外部ロータ12の外周部にタイミングスプロケット15を備えていてもよい。
[0023]
ハウジング1とカムシャフト101との間に軸心Xを中心とする回転方向に付勢力を作用させる戻しばね70を備えている。この戻しばね70は、ハウジング1に対する内部ロータ2の相対回転位相(以下、単に「相対回転位相」とも称する)が最遅角にある状態から進角側の所定の相対回転位相(本実施形態においては後述する中間ロック位相P)に達するまで付勢力を作用させ、相対回転位相が所定回転位相より進角側の領域では付勢力を作用させない機能を有するものであり、例えば、トーションばねやゼンマイばねが用いられる。なお、戻しばね70は、ハウジング1と内部ロータ2との間に配置されていてもよい。
[0024]
クランクシャフトCが回転駆動すると、動力伝達部材102を介してタイミングスプロケット15にその回転駆動力が伝達され、ハウジング1が図2に示す回転方向Sに回転駆動する。ハウジング1の回転駆動に伴い、内部ロータ2が回転方向Sに回転駆動してカムシャフト101が回転し、カムシャフト101に設けられたカム104がエンジンEの吸気弁103を押し下げて開弁させる。
[0025]
図2に示すように、外部ロータ12に、径方向内側に突出し且つ内部ロータ2の外周面に当接する3個の突出部14を回転方向Sに沿って互いに離間させて形成することにより、内部ロータ2と外部ロータ12との間に流体圧室4が形成されている。突出部14は、内部ロータ2の外周面に対するシューとしても機能する。内部ロータ2の外周面のうち流体圧室4に面する部分に、外部ロータ12の内周面に当接する突出部21が形成されている。突出部21によって、流体圧室4は進角室41と遅角室42とに分割されている。なお、本実施形態においては、流体圧室4が3箇所となるよう構成されているが、これに限られるものではない。
[0026]
進角室41及び遅角室42には作動油(作動流体の一例)が供給、排出され、又はその給排が遮断されることにより、突出部21に作動油の油圧を作用させ、その油圧により相対回転位相を進角方向又は遅角方向へ変化させ、あるいは、任意の位相に保持する。進角方向とは、進角室41の容積が大きくなる方向であり、図2に矢印S1で示す方向である。遅角方向とは、遅角室42の容積が大きくなる方向であり、図2に矢印S2で示す方向である。突出部21が進角方向S1の移動端(軸心Xを中心にした揺動端)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、突出部21が遅角方向S2の移動端(軸心Xを中心にした揺動端)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称する。なお、最進角位相は突出部21の進角方向S1の移動端だけはなく、この近傍を含む概念である。これと同様に、最遅角位相は突出部21の遅角方向S2での移動端だけではなく、この近傍を含む概念である。
[0027]
図2に示すように、内部ロータ2には、進角室41に連通する進角流路43と、遅角室42に連通する遅角流路44と、後述する中間ロック機構8に給排する作動油が流通するロック解除流路45が形成されている。図1に示すように、この弁開閉時期制御装置10では、エンジンEのオイルパン61に貯留される潤滑油を作動油として用いており、この作動油が進角室41、遅角室42、中間ロック機構8に供給される。
[0028]
〔中間ロック機構〕
弁開閉時期制御装置10は、ハウジング1に対する内部ロータ2の相対回転位相の変化を拘束することにより、相対回転位相を最進角位相と最遅角位相との間にある中間ロック位相Pに拘束する中間ロック機構8を備えている。相対回転位相が中間ロック位相Pに拘束された状態でエンジンEを始動することによって、エンジン始動直後の作動油の油圧が安定しない状況においても、クランクシャフトCの回転位相に対するカムシャフト101の回転位相を適正に維持し、エンジンEの安定的な回転を実現することができる。
[0029]
図2に示すように、中間ロック機構8は、第1ロック部材81と、第1スプリング82と、第2ロック部材83と、第2スプリング84と、第1凹部85と、第2凹部86により構成される。
[0030]
第1ロック部材81と第2ロック部材83はプレート状の部材で構成され、軸心Xに平行な姿勢で内部ロータ2の方向に向けて接近、離間できるように外部ロータ12に対し移動自在に支持されている。第1ロック部材81は第1スプリング82の付勢力により内部ロータ2の方向に移動し、第2ロック部材83は第2スプリング84の付勢力により内部ロータ2の方向に移動する。
[0031]
第1凹部85は、内部ロータ2の外周に軸心Xの方向に沿って溝状に区画形成されている。第1凹部85は周方向で遅角方向S2に向かって浅い溝と深い溝が連続して形成されている。浅い溝の溝幅は第1ロック部材81の厚みより広く、深い溝の溝幅は浅い溝と同等の溝幅で第1ロック部材81の厚みよりも広い。第2凹部86は、内部ロータ2の外周に軸心Xの方向に沿って溝状に区画形成されている。第2凹部86は周方向で遅角方向S2に向かって浅い溝と深い溝が連続して形成されている。浅い溝の溝幅は第2ロック部材83の厚みと同程度で、深い溝の溝幅は第2ロック部材83の厚みよりも十分に広く、第1凹部85の深い溝の溝幅よりも広い。
[0032]
図2に示すように、第1凹部85と第2凹部86に作動油が供給されていない状態における中間ロック位相Pでは、第1スプリング82の付勢力により内部ロータ2に向けて移動した第1ロック部材81が第1凹部85と嵌合し、第1ロック部材81が第1凹部85の深い溝の進角方向S1の端部に当接して内部ロータ2の遅角方向S2への変化を規制する。また、第2スプリング84の付勢力により内部ロータ2に向けて移動した第2ロック部材83が第2凹部86と嵌合し、第2ロック部材83が第2凹部86の深い溝の遅角方向S2の端部に当接して内部ロータ2の進角方向S1への変化を規制する。このように、内部ロータ2の進角方向S1と遅角方向S2への変化を同時に規制することにより相対回転位相を中間ロック位相Pに拘束する。これがロック状態である。
[0033]
ロック解除流路45は、第1凹部85の深い溝と第2凹部86の深い溝のそれぞれの底面に接続されており、ロック状態にあるときに作動油がロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給されると、第1ロック部材81と第2ロック部材83は作動油の油圧を受ける。この油圧が第1スプリング82と第2スプリング84の付勢力を上回ると第1ロック部材81と第2ロック部材83は第1凹部85と第2凹部86からそれぞれ離間し、ロック解除状態となる。また、ロック解除状態において第1凹部85と第2凹部86にある作動油は、ロック解除流路45を流通して弁開閉時期制御装置10の外部に排出されうる。このように、ロック解除流路45は、第1凹部85と第2凹部86へ給排される作動流体の流通を許容する。
[0034]
〔OCV〕
図1に示すように、本実施形態においては、OCV(オイルコントロールバルブ)51が、内部ロータ2の内側で且つ軸心Xと同軸心に配設されている。OCV51は電磁弁の一例である。OCV51は、スプール52と、スプール52を付勢する第1バルブスプリング53aと、給電量を変化させてスプール52を駆動する電磁ソレノイド54とを備えて構成される。なお、電磁ソレノイド54については、公知の技術であるので詳細な説明を省略する。
[0035]
スプール52は、固定ボルト5のカムシャフト101から遠い側の端部である頭部5c側から軸心Xの方向に沿って形成された断面円形の孔である収容空間5aに収容されており、収容空間5aの内部で軸心Xの方向に沿って摺動可能に構成されている。スプール52も軸心Xの方向に沿った断面円形の有底穴である主排出流路52bを有している。主排出流路52bは入口付近では奥に比べて内径が大きくなっており、段差が形成されている。
[0036]
第1バルブスプリング53aは収容空間5aの奥部に配設されており、スプール52を電磁ソレノイド54の方向(図1の左方向)に常時付勢している。スプール52は、収容空間5aに取り付けられたストッパ55により、収容空間5aから飛び出さない。主排出流路52bに形成された段差が第1バルブスプリング53aの一方を保持している。収容空間5aとそこから連続して形成されている内径の小さい有底穴である第3供給部分47cとの境界にはパーティション5dが挿入されており、パーティション5dは第1バルブスプリング53aの他方を保持している。電磁ソレノイド54に給電すると、電磁ソレノイド54に設けられたプッシュピン54aが、スプール52の端部52aを押圧する。その結果、スプール52は第1バルブスプリング53aの付勢力に抗してカムシャフト101の方向に摺動する。OCV51は、電磁ソレノイド54への給電量を0から最大まで変化させることにより、スプール52の位置調節ができるよう構成されている。電磁ソレノイド54への給電量は、不図示のECU(電子制御ユニット)によって制御される。
[0037]
OCV51は、スプール52の位置に応じて進角室41及び遅角室42への作動油の供給、排出、保持を切り換えると共に、中間ロック機構8への作動油の供給と排出を切り換える。図3に、電磁ソレノイド54への給電量に応じてスプール52の位置がW1~W5に変化したときのOCV51の作動構成を示す。
[0038]
〔油路構成〕
図1に示すように、オイルパン61に貯留されている作動油は、クランクシャフトCの回転駆動力が伝達されることにより駆動する機械式のオイルポンプ62によって汲み上げられ、後述する供給流路47を流通する。そして、供給流路47を流通した作動油は、OCV51を経由して、進角流路43、遅角流路44、ロック解除流路45に供給される。
[0039]
図1、図5~図9に示すように、進角室41に接続される進角流路43は、固定ボルト5に形成された貫通孔である第1進角部分43aと、第1進角部分43aに繋がり内部ロータ2に形成された第2進角部分43bとにより構成されている。遅角室42に接続される遅角流路44は、固定ボルト5に形成された貫通孔である第1遅角部分44aと、第1遅角部分44aに繋がり内部ロータ2に形成された第2遅角部分44bとにより構成されている。第1凹部85、第2凹部86に接続されるロック解除流路45は、固定ボルト5に形成された貫通孔である第1解除部分45aと、第1解除部分45aに繋がり内部ロータ2に形成された第2解除部分45bとにより構成されている。
[0040]
供給流路47は、カムシャフト101に形成された第1供給部分47aと、カムシャフト101と固定ボルト5との間の空間である第2供給部分47bと、固定ボルト5に形成された第3供給部分47cと、固定ボルト5の周囲に形成された第4供給部分47dと、内部ロータ2に形成された第5供給部分47eと、固定ボルト5の軸心Xの方向に沿った異なる場所に形成された2個の第6供給部分47fとにより構成され、各流路はこの順で繋がっている。
[0041]
第3供給部分47cは、軸心Xの方向に沿って固定ボルト5に形成された有底穴と、これに対して軸心X方向の異なる2箇所で外周まで貫通する複数の孔とにより構成されている。該有底穴の途中にはチェックバルブ48が備えられており、パーティション5dとチェックバルブ48とで保持される第2バルブスプリング53bにより、チェックバルブ48は第3供給部分47cの有底穴を閉じる方向に付勢されている。
[0042]
第5供給部分47eは、軸心Xの方向に沿って固定ボルト5に形成され且つ両端が閉塞された流路と、該流路から軸心X方向の異なる3箇所で径方向内側に向かって内周面まで形成された3個の環状溝により構成されている。3個の環状溝のうちの1個は第4供給部分47dに対向しており、残りの2個の環状溝はそれぞれ別々の第6供給部分47fに対向している。
[0043]
図5の左から順に示すように、固定ボルト5に形成された貫通孔である、第6供給部分47f、第1解除部分45a、第1進角部分43a、第6供給部分47f、第1遅角部分44aは、固定ボルト5の収容空間5aに対向する内周面に形成された環状溝である、第1環状溝47g、第2環状溝47h、第3環状溝47i、第4環状溝47j、第5環状溝47kにそれぞれ繋がっている。
[0044]
スプール52の外周面には、供給流路47を流通する作動油を進角流路43、遅角流路44、ロック解除流路45のいずれかに供給する第7環状溝52cと第8環状溝52dが形成されている。スプール52には、更に、進角流路43、遅角流路44、ロック解除流路45を流通する作動油を主排出流路52bに排出する第1貫通孔52eと第2貫通孔52fが形成されている。第1貫通孔52eと第2貫通孔52fは、スプール52の外周面に形成された環状溝である、第9環状溝52h、第10環状溝52iにそれぞれ繋がっている。更に、主排出流路52bを流通する作動油を弁開閉時期制御装置10の外部に排出する第3貫通孔52gが形成されている。
[0045]
〔OCVの動作〕
(1)W1の状態
図5に示すように、電磁ソレノイド54に給電を行わない場合(給電量が0)においてOCV51は図3のW1の状態にあり、第1バルブスプリング53aの付勢力によりスプール52はストッパ55に当接し、最も左方に位置している。この状態において供給流路47に作動油を供給すると、作動油は第1供給部分47a、第2供給部分47b、第3供給部分47cを流通する。第3供給部分47cにおいてチェックバルブ48に作用する油圧が第2バルブスプリング53bの付勢力を上回ると、チェックバルブ48は開弁する。そして作動油は、第4供給部分47d、第5供給部分47e、第6供給部分47fを流通し、第1環状溝47gを介して第7環状溝52cに到達し、第4環状溝47jを介して第8環状溝52dに到達する。
[0046]
第7環状溝52cはいずれの流路にも繋がっておらずそれ以上作動油は流れない。第8環状溝52dは第3環状溝47iを介して進角流路43に繋がっているので、作動油は進角流路43を流通し、進角室41に供給される。すなわち、進角流路43は供給状態である。一方、遅角流路44は第5環状溝47kと第10環状溝52iを介して第2貫通孔52fと繋がり、ロック解除流路45は第2環状溝47hと第9環状溝52hを介して第1貫通孔52eと繋がっている。そのため、遅角室42、第1凹部85、第2凹部86にある作動油は、主排出流路52bから第3貫通孔52gを通って、弁開閉時期制御装置10の外部に排出される。すなわち、遅角流路44、ロック解除流路45はいずれもドレン状態である。よって、W1の状態は、図3に示すように、中間ロック機構8(第1凹部85、第2凹部86)と遅角室42から作動油が排出され、進角室41に作動油が供給されて相対回転位相が進角方向S1に変化する状態であり、これは「進角作動による中間ロック位相Pへのロック」である。W1の状態が本発明のロック移行モードに該当する。
[0047]
W1の状態において、作動油の油圧が一定であるとすると、進角流路43を流通して進角室41に供給される作動油の流量は、第3環状溝47iと第8環状溝52dの対向する面積(以下、「第1面積」と称する)、及び、第4環状溝47jと第8環状溝52dの対向する面積(以下、「第2面積」と称する)のうち、小さい方の面積に支配される。図5の状態においては、第1面積と第2面積とはほぼ同じであるためどちらか一方に支配されることはない。遅角室42から排出されて遅角流路44を流通する作動油の流量は、第5環状溝47kと第10環状溝52iの面積(以下、「第3面積」と称する)により決まる。第1凹部85と第2凹部86から排出されてロック解除流路45を流通する作動油の流量は、第2環状溝47hと第9環状溝52hの面積(以下、「第4面積」と称する)により決まる。これ以降、明記はしないが、作動油の油圧は一定であるとの前提で説明する。これにより、作動油の流量は環状溝同士の対向面積の大小により決まる。
[0048]
図3に示すW1の状態を維持したまま電磁ソレノイド54への給電量を増加させると、スプール52は図5の状態から右方へ移動する。移動するにつれて、第1面積は単調に減少し、第2面積は単調に増加する。これにより、流量は第1面積に支配され、図4に示すように、進角流路43を流通して進角室41に供給される作動油の流量(上のグラフの実線)は単調に減少する。第3面積、第4面積も単調に減少し、遅角室42から排出されて遅角流路44を流通する作動油の流量(上のグラフの破線)、及び、第1凹部85と第2凹部86から排出されてロック解除流路45を流通する作動油の流量(下のグラフの破線)も単調に減少する。すなわち、電磁ソレノイド54への給電量を増加させると、相対回転位相の進角方向S1への変化速度が遅くなる。逆説的には、ロック移行モード(W1)における進角流路43、遅角流路44、ロック解除流路45のそれぞれを流通する作動油の流量は、電磁ソレノイド54への給電量を0に近づけてスプール52の位置を左端に近づけるにつれて単調に増加し、給電量が0のときに最大となる。
[0049]
進角流路43を流通する作動油の流量が増加すれば進角室41への作動油の供給は速く行われ、遅角流路44を流通する作動油の流量が増加すれば遅角室42からの作動油の排出は速く行われる。進角室41、遅角室42への作動油の供給、排出が速く行われれば、相対回転位相の進角方向S1への変化速度が速くなる。また、ロック解除流路45を流通する作動油の流量が増加すれば、第1凹部85、第2凹部86にある作動油の排出は速く行われる。この結果、電磁ソレノイド54への給電量が0のときに、相対回転位相の進角方向S1への変化速度が最大になると共に、第1凹部85、第2凹部86にある作動油は最速で排出される。従って相対回転位相が最遅角位相付近にあるときに電磁ソレノイド54への給電量を0にすると、相対回転位相を高速で進角方向S1に変化させて短時間で中間ロック位相Pでのロック状態を実現することができる。
[0050]
(2)W2の状態
図6に示すように、電磁ソレノイド54への給電量を増やしてOCV51が図3のW2の状態になった場合には、スプール52はW1の状態よりも少し右方に移動している。この状態において供給流路47に作動油を供給すると、作動油は第7環状溝52c、第8環状溝52dに到達する。第7環状溝52cは第2環状溝47hを介してロック解除流路45に繋がっているので、作動油はロック解除流路45を流通し、第1凹部85、第2凹部86に供給される。すなわち、ロック解除流路45は供給状態に切り換わる。従って、供給された作動油の油圧が第1スプリング82、第2スプリング84の付勢力を上回ると、第1ロック部材81と第2ロック部材83は第1凹部85と第2凹部86からそれぞれ離間し、ロック解除状態になる。なお、図6は、W1の状態からW2の状態に切り換わった直後の状態を表している。
[0051]
第8環状溝52dは引き続き進角流路43に繋がっているので、作動油は進角流路43を流通し、進角室41に供給される。すなわち、進角流路43は供給状態である。一方、遅角流路44も引き続き第2貫通孔52fと繋がっているので、遅角室42にある作動油は、主排出流路52bから第3貫通孔52gを通って、弁開閉時期制御装置10の外部に排出される。すなわち、遅角流路44はドレン状態である。よって、W2の状態は、図3に示すように、中間ロック機構8(第1凹部85、第2凹部86)と進角室41に作動油が供給され、遅角室42から作動油が排出されて相対回転位相が進角方向S1に変化する状態であり、これは「ロック解除した状態での進角作動」である。W2の状態が本発明の位相可変モードに該当する。
[0052]
W2の状態において、進角流路43を流通して進角室41に供給される作動油の流量は第1面積により決まり、遅角室42から排出されて遅角流路44を流通する作動油の流量は第3面積により決まる。これはW1の状態と同じであるが、第1面積、第3面積ともW1状態における最小の面積よりも更に小さくなっている。一方、ロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の流量は、第1環状溝47gと第7環状溝52cの対向する面積(以下、「第5面積」と称する)、及び、第2環状溝47hと第7環状溝52cの対向する面積(以下、「第6面積」と称する)のうち、小さい方の面積により決まる。図6の状態においては、第5面積に比べて第6面積が小さいので流量は第6面積に支配される。
[0053]
図3に示すW2の状態を維持したまま電磁ソレノイド54に更に給電を行うと、スプール52は図6の状態から右方へ移動する。移動するにつれて、第1面積は単調に減少する。これにより、図4に示すように、進角流路43を流通して進角室41に供給される作動油の流量(上のグラフの実線)はW1状態に比べて更に減少する。第3面積も単調に減少し、遅角室42から排出されて遅角流路44を流通する作動油の流量(上のグラフの破線)もW1状態に比べて更に減少する。すなわち、電磁ソレノイド54への給電量を増加させると、相対回転位相の進角方向S1への変化速度が更に遅くなる。
[0054]
ロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の流量(下のグラフの実線)については、第5面積は単調に減少し第6面積は単調に増加するものの、第6面積の方が依然として小さいので、流量は第6面積に支配されて流量は増加する。以上より、電磁ソレノイド54への給電量がW2の状態を維持する最小のときに、進角流路43、遅角流路44を流通する作動油の流量は最大となり、ロック解除流路45を流通する作動油の流量は最小となる。
[0055]
この結果、図4に示すように、W1の状態からW2の状態にかけては、進角流路43を流通して進角室41に供給される作動油の流量と遅角室42から排出されて遅角流路44を流通する作動油の流量はどちらも単調に減少し、相対回転位相が進角方向S1に変化する。そして、ロック移行モード(W1)にあるときに進角流路43を流通して進角室41に供給される作動油の流量と遅角室42から排出されて遅角流路44を流通する作動油の流量の最大流量は、位相可変モード(W2)にあるときに進角流路43を流通して進角室41に供給される作動油の流量と遅角室42から排出されて遅角流路44を流通する作動油の流量の最大流量よりも大きい。一方、ロック解除流路45を流通して中間ロック機構8に給排される作動油は、W1の状態では流量は単調に減少しつつ排出され、W1からW2に切り換わる時点で一旦0になる。その後、W2に切り換わると排出から供給に切り換わり、W2の状態の間、中間ロック機構8に供給される作動油の流量は単調に増加する。
[0056]
(3)W3の状態
図7に示すように、電磁ソレノイド54に更に給電を行ってOCV51が図3のW3の状態になった場合には、スプール52はW2の状態よりも少し右方に移動している。この状態において供給流路47に作動油を供給すると、作動油は第7環状溝52c、第8環状溝52dに到達する。第7環状溝52cは引き続きロック解除流路45に繋がっているので、作動油はロック解除流路45を流通し、第1凹部85、第2凹部86に供給される。すなわち、ロック解除流路45は供給状態である。従って、W3の状態においても、W2の状態から引き続き、ロック解除状態が維持される。なお、図7は、図3に示すW3の状態の中央付近の状態を表している。
[0057]
第8環状溝52dはいずれの流路にも繋がっておらずそれ以上作動油は流れない。すなわち、進角流路43と遅角流路44には作動油は供給されない。また、進角流路43と遅角流路44は、第1貫通孔52e、第2貫通孔52fのいずれの流路とも繋がっていないので、進角室41、遅角室42の作動油が弁開閉時期制御装置10の外部に排出されることはない。従って、OCV51が上記W3の状態に制御されると、進角室41、遅角室42への作動油の給排は行われないため、内部ロータ2はそのときの相対回転位相を保持し、進角方向S1にも遅角方向S2にも変化しない。よって、W3の状態は、図3に示すように、中間ロック機構8(第1凹部85、第2凹部86)に作動油が供給され、進角室41と遅角室42には作動油は給排されずに相対回転位相が保持される状態であり、これは「中間位相保持」である。W3の状態も本発明の位相可変モードに該当する。
[0058]
W3の状態において、ロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の流量は、第5面積と第6面積の大小関係で決まるが、図7では、第5面積と第6面積とは同じ大きさである。従って、どちらか一方に支配されているのではない。そしてこの状態から給電量が変化して増減されると第5面積と第6面積とに大小関係が生じ、小さい方の面積に流量が支配される。従って、図4の下のグラフの実線が示すように、スプール52が図7に示す位置(W3の状態の中央)にあるときに、ロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の流量は最大となり、そこからスプール52が左右に移動するに従い作動油の流量は単調に減少する。
[0059]
中間ロック機構8がロック解除状態にあるときに発生し得る大きな問題の1つが、第1ロック部材81と第2ロック部材83の少なくともいずれか一方が第1凹部85と第2凹部86に意図せずに嵌合してロック状態になることである。ロック状態になると、相対回転位相の変化が規制されるため、所望の相対回転位相に変化させることができないおそれがある。第1ロック部材81と第2ロック部材83の少なくともいずれか一方が第1凹部85又は第2凹部86の上にある相対回転位相で保持された状態で、カム104の回転で発生するカムシャフト101のトルク変動に伴って作動油に油圧脈動が発生する。意図しないロック状態は、その油圧脈動の下限値がロック解除を維持できる油圧を下回ったときに発生する。
[0060]
本実施形態においては、図4に示すように、W3の状態のときに、作動油の流通を支配する面積(第5面積又は第6面積)が最大になるスプール52の位置が存在する。この面積が大きいほど作動油の流通に伴う圧力損失が低下するので、最大面積であれば、ロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の圧力損失が最小になる。この結果、油圧脈動の下限値を高めることができ、意図しないロック状態の発生を抑制することができる。
[0061]
また、最大面積となるスプール52の位置からいずれの方向にスプール52が移動しても、ロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の流量は単調に減少し、W2とW1が切り換わるときの流量は0となる。これにより、速やか且つ確実にロック移行モードに切り換えることができる。
[0062]
(4)W4の状態
図8に示すように、電磁ソレノイド54に更に給電を行ってOCV51が図3のW4の状態になった場合には、スプール52はW3の状態よりも少し右方に移動している。この状態において供給流路47に作動油を供給すると、作動油は第7環状溝52c、第8環状溝52dに到達する。第7環状溝52cは引き続きロック解除流路45に繋がっているので、作動油はロック解除流路45を流通し、第1凹部85、第2凹部86に供給される。すなわち、ロック解除流路45は供給状態である。従って、W4の状態においても、W2、W3の状態から引き続き、ロック解除状態が維持される。なお、図8は、W3の状態からW4の状態に切り換わった直後の状態を表している。
[0063]
W4の状態において、第8環状溝52dは第5環状溝47kを介して遅角流路44に繋がっているので、作動油は遅角流路44を流通し、遅角室42に供給される。すなわち、遅角流路44は供給状態である。一方、進角流路43は第3環状溝47iと第9環状溝52hを介して第1貫通孔52eと繋がっているので、進角室41にある作動油は、主排出流路52bから第3貫通孔52gを通って、弁開閉時期制御装置10の外部に排出される。すなわち、進角流路43はドレン状態である。このように、図3に示すように、W4の状態は、中間ロック機構8(第1凹部85、第2凹部86)と遅角室42に作動油が供給され、進角室41から作動油が排出されて相対回転位相が遅角方向S2に変化する状態であり、これは「ロック解除した状態での遅角作動」である。W4の状態も本発明の位相可変モードに該当する。
[0064]
W4の状態において、進角室41から排出されて進角流路43を流通する作動油の流量は、第3環状溝47iと第9環状溝52hの対向する面積(以下、「第7面積」と称する)により決まる。遅角流路44を流通して遅角室42に供給される作動油の流量は、第2面積、及び、第8環状溝52dと第5環状溝47kの対向する面積(以下、「第8面積」と称する)のうち、小さい方の面積に支配される。図8の状態においては、第2面積に比べて第8面積の方が小さいので、作動油の流量は第8面積に支配される。ロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の流量は、第5面積の方が第6面積よりも小さいので、第5面積に支配される。
[0065]
図3に示すW4の状態を維持したまま電磁ソレノイド54に更に給電を行うと、スプール52は図8の状態から右方へ移動する。移動するにつれて、第7面積は単調増加する。これにより、図4に示すように、進角室41から排出されて進角流路43を流通する作動油の流量(上のグラフの破線)はW3状態から増加する。第2面積は変わらないが第8面積が単調増加し、遅角流路44を流通して遅角室42に供給される作動油の流量(上のグラフの実線)もW3状態から増加する。すなわち、電磁ソレノイド54への給電量を増加させると、相対回転位相の遅角方向S2への変化速度が速くなる。
[0066]
ロック解除流路45を流通して第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の流量(下のグラフの実線)については、第5面積は単調減少し第6面積は単調増加するので、流量は減少する。すなわち、電磁ソレノイド54への給電量がW4の状態を維持する最小のときに、進角流路43、遅角流路44を流通する作動油の流量は最小となり、ロック解除流路45を流通する作動油の流量は最大となる。
[0067]
図9に示すように、電磁ソレノイド54への給電量を最大にしてOCV51が図3のW4の右端の状態になった場合には、スプール52は図8の状態よりも少し右方に移動して収容空間5aの底面に当接して停止している。この状態は、図4に示すW4Eの状態である。このとき、第7面積は最大になるので、進角室41から排出されて進角流路43を流通する作動油の流量は最大になる。また、第8面積も最大になるので、遅角流路44を流通して遅角室42に供給される作動油の流量も最大になる。すなわち、相対回転位相の遅角方向S2への変化速度は最大になる。一方、第5面積は0になるので、ロック解除流路45を作動油が流通して第1凹部85と第2凹部86に作動油が供給されることはない。このとき、第6面積は最大になるものの、ロック解除流路45は第7環状溝52cに繋がるだけなので、第1凹部85と第2凹部86の作動油がロック解除流路45を流通して排出されることもない。
[0068]
以上のように構成した本実施形態に係る弁開閉時期制御装置10におけるロック移行モードにおいては、進角流路43を流通する作動油の流量と遅角流路44を流通する作動油の流量とロック解除流路45を流通する作動油の流量の間には正の相関関係があるように構成されている。具体的には、電磁ソレノイド54への給電量を0に近づけると、進角流路43を流通する作動油の流量と遅角流路44を流通する作動油の流量とロック解除流路45を流通する作動油の流量はいずれも増加する。進角流路43を流通する作動油の流量が増加すれば進角室41への作動油の供給は速く行われ、遅角流路44を流通する作動油の流量が増加すれば遅角室42からの作動油の排出は速く行われる。進角室41、遅角室42への作動油の供給が速く行われれば、相対回転位相の進角方向S1への変化速度が速くなる。また、ロック解除流路45を流通する作動油の流量が増加すれば、第1凹部85、第2凹部86にある作動油の排出は速く行われる。
[0069]
従って、電磁ソレノイド54への給電量が0のときに、進角流路43を流通する作動油の流量と遅角流路44を流通する作動油の流量とロック解除流路45を流通する作動油の流量はいずれも最大になるので、相対回転位相の進角方向S1への変化速度を最も速くすることができると共に、第1凹部85、第2凹部86にある作動油を最速で排出させることができる。よって、相対回転位相が最遅角位相付近にあるときに電磁ソレノイド54への給電量を0にすることにより、相対回転位相を高速で進角方向S1に変化させて短時間で中間ロック位相Pでのロック状態を実現することができる。
[0070]
また、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置10における位相可変モードにおいては、相対回転位相を保持している状態(W3の状態)のときに、中間ロック機構8への作動油の流通を支配する面積が最大になるように構成されている。この面積が大きいほど作動油の流通に伴う圧力損失が低下するので、最大面積であれば、中間ロック機構8に供給される作動油の圧力損失が最小になる。この結果、作動油の油圧脈動の下限値を高めることができ、意図しないロック状態の発生を抑制することができる。
[0071]
また、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置10は、最大面積となるスプール52の位置からいずれの方向にスプール52が移動しても、中間ロック機構8に供給される作動油の流量は単調に減少し、W2とW1が切り換わるときに0となるように構成されている。これにより、速やか且つ確実に位相可変モードからロック移行モードに切り換えることができる。
[0072]
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態に係る弁開閉時期制御装置10について図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ構成の箇所には同じ符号を付し、同様の構成に関する説明は省略する。本実施形態の弁開閉時期制御装置10においては、中間ロック機構8に給排される作動油が流通する流路として、ロック解除流路45以外に、ロック排出流路46が形成されている点である。
[0073]
ロック排出流路46も、ロック解除流路45と同様、第1凹部85の深い溝と第2凹部86の深い溝のそれぞれの底面に接続されている。しかし、ロック解除流路45が第1凹部85と第2凹部86へ給排される作動油の流通を許容するのに対して、ロック排出流路46は第1凹部85と第2凹部86に供給される作動油の流通を許容せず、第1凹部85と第2凹部86から弁開閉時期制御装置10の外部へ排出される作動油の流通のみを許容する。
[0074]
図10、図11、図14~図19に示すように、第1凹部85、第2凹部86に接続されるロック排出流路46は、固定ボルト5に形成された第1排出部分46aと、第1排出部分46aに繋がり内部ロータ2に形成された第2排出部分46bとにより構成されている。第1排出部分46aは、固定ボルト5の収容空間5aに対向する内周面に形成された第6環状溝47mに繋がっている。
[0075]
〔OCVの動作〕
(1)W1の状態
図14に示すように、電磁ソレノイド54に給電を行わない場合(給電量が0)においてOCV51は図12のW1の状態にあり、第1バルブスプリング53aの付勢力によりスプール52はストッパ55に当接し、最も左方に位置している。この状態において供給流路47に作動油を供給すると、第1実施形態と同様に、進角流路43を流通する作動油は進角室41に供給され、これと同時に、作動油は遅角室42から排出されて遅角流路44を流通し、中間ロック機構8から排出された作動油もロック解除流路45を流通する。このとき、ロック排出流路46を流通する作動油は、第6環状溝47mを介して収容空間5aに排出され、その後、主排出流路52bから第3貫通孔52gを通って、弁開閉時期制御装置10の外部に排出される。すなわち、中間ロック機構8(第1凹部85、第2凹部86)にある作動油は、ロック解除流路45とロック排出流路46の両方から排出される。以下、本実施形態のW1の状態における、ロック解除流路45、第2環状溝47h、第9環状溝52h、第1貫通孔52e、ロック排出流路46、第6環状溝47mをまとめて第1排出流路と称する。
[0076]
W1の状態は、図12に示すように、中間ロック機構8(第1凹部85、第2凹部86)と遅角室42から作動油が排出され、進角室41に作動油が供給されて相対回転位相が進角方向S1に変化する状態であり、これは「進角作動による中間ロック位相Pへのロック」である。W1の状態が本発明のロック移行モードに該当する。
[0077]
W1の状態においては、第1凹部85と第2凹部86から排出されてロック解除流路45を流通する作動油の流量は、第1実施形態と同じ第4面積によって決まり、第1凹部85と第2凹部86から排出されてロック排出流路46を流通する作動油の流量は、第6環状溝47mと収容空間5aの対向する面積(以下、「第9面積」と称する)により決まる。よって、第1排出流路を流通して排出される作動油の流量は第4面積と第9面積の合計面積により決まる。
[0078]
図13に示すように、W1の状態にあるときの、電磁ソレノイド54への給電量と進角流路43、遅角流路44、第1排出流路のそれぞれを流通する作動油の流量の関係は第1実施形態と同じである。すなわち、電磁ソレノイド54への給電量が0のときに、いずれも最大流量となって、相対回転位相の進角方向S1への変化速度は最大になると共に、第1凹部85、第2凹部86にある作動油は最速で排出される。そして、給電量の増加と共に流量は減少し、相対回転位相の進角方向S1への変化速度も遅くなる。
[0079]
(2)W2、W3、W4の状態
図12、図15、図16、図17に示すように、OCV51がW2、W3、W4の状態にあるときは、ロック排出流路46は供給流路47とも主排出流路52bとも繋がっていないので、作動油はロック排出流路46を流通しない。すなわち、W2、W3、W4の状態における進角流路43、遅角流路44、ロック解除流路45を流通する作動油の増減傾向は、図12、図13に示すように、第1実施形態と全く同じである。すなわち、W2の状態は「ロック解除した状態での進角作動」であり、W3の状態は「中間位相保持」であり、W4の状態は「ロック解除した状態での遅角作動」であり、これらはいずれも位相可変モードに該当する。そのため、本実施形態においては、詳細な説明を省略する。
[0080]
(3)W5の状態
本実施形態においては、第1実施形態の図9の状態(W4Eの状態)になっても、OCV51のスプール52と収容空間5aの底面との間に隙間があり、電磁ソレノイド54への給電量を増加させることにより、スプール52は更に右方へ移動して図18に示すW5の状態になる。この状態において供給流路47に作動油を供給すると、W4の状態から引き続き、進角室41から排出された作動油は進角流路43を流通し、遅角流路44を流通する作動油は遅角室42に供給される。ロック解除流路45を流通する作動油は第7環状溝52cに繋がっているものの、第7環状溝52cと第1環状溝47gとは対向せず、第5面積は0になる。すなわち、ロック解除流路45は作動油が流通しない。
[0081]
W5の状態のとき、中間ロック機構8の作動油は、ロック排出流路46だけを流通し、第6環状溝47m、第10環状溝52iを介して第2貫通孔52fから主排出流路52bに排出され、第3貫通孔52gを通って、弁開閉時期制御装置10の外部に排出される。以下、本実施形態のW5の状態における、ロック排出流路46、第6環状溝47m、第10環状溝52i、第2貫通孔52fをまとめて第2排出流路と称する。
[0082]
W5の状態は、図12に示すように、中間ロック機構8(第1凹部85、第2凹部86)と進角室41から作動油が排出され、遅角室42に作動油が供給されて相対回転位相が遅角方向S2に変化する状態であり、これは「遅角作動による中間ロック位相Pへのロック」である。W5の状態もW1の状態と同様、本発明のロック移行モードに該当する。
[0083]
W5の状態においては、進角室41から排出されて進角流路43を流通する作動油の流量は第7面積により決まり、遅角流路44を流通して遅角室42に供給される作動油の流量は第8面積により決まる。これはW4の状態と同じであるが、第7面積、第8面積ともW4状態における最大の面積よりも更に大きくなっている。一方、第2排出流路を流通して排出される作動油の流量は、第6環状溝47mと第10環状溝52iの対向する面積(以下、「第10面積」と称する)により決まる。
[0084]
図18に示すW5の状態を維持したまま電磁ソレノイド54に更に給電を行うと、スプール52は図18の状態から右方へ移動し、図19に示すように、収容空間5aの底面に当接して停止する。図18、図19に示すように、スプール52が右方へ移動するにつれて、第7面積は単調増加する。これにより、図13に示すように、進角室41から排出されて進角流路43を流通する作動油の流量(上のグラフの破線)はW4の状態の増加傾向が継続される。遅角流路44においては、第2面積は少し小さくなるが、更に小さい第8面積の方が単調増加するために第8面積が支配的となる。そのため、遅角流路44を流通して遅角室42に供給される作動油の流量(上のグラフの実線)もW4の状態の増加傾向が継続する。すなわち、電磁ソレノイド54への給電量を増加させると、相対回転位相の遅角方向S2への変化速度が更に速くなる。
[0085]
第1凹部85と第2凹部86から排出されて第2排出流路を流通する作動油の流量(下のグラフの破線)については、第10面積は単調増加するので、流量は増加する。すなわち、電磁ソレノイド54への給電量がW5の状態を維持する最小のときに、進角流路43、遅角流路44、第2排出流路を流通する作動油の流量は最小となり、給電量の増加と共に、流量も増加する。
[0086]
この結果、図13に示すように、W4の状態からW5の状態にかけては、進角室41から排出されて進角流路43を流通する作動油の流量と遅角流路44を流通して遅角室42に供給される作動油の流量はどちらも単調に増加し、相対回転位相が遅角方向S2に変化する。そして、ロック移行モード(W5)にあるときに進角室41から排出されて進角流路43を流通する作動油の流量と遅角流路44を流通して遅角室42に供給される作動油の流量の最大流量は、位相可変モード(W4)にあるときに進角室41から排出されて進角流路43を流通する作動油の流量と遅角流路44を流通して遅角室42に供給される作動油の流量の最大流量よりも大きい。一方、ロック排出流路46を流通して中間ロック機構8に給排される作動油は、W4の状態では流量は単調に減少しつつ排出され、W4からW5に切り換わる時点で一旦0になる。その後、W5に切り換わると供給から排出に切り換わり、W5の状態の間、中間ロック機構8から排出される作動油の流量は単調に増加する。
[0087]
図13に示すように、W1の状態における電磁ソレノイド54の給電量を変化させたときの第1排出流路を流通する作動油の流量の変化の傾きの絶対値よりも、W5の状態における電磁ソレノイド54の給電量を変化させたときの第2排出流路を流通する作動油の流量の変化の傾きの絶対値の方が大きくなっている。これは、W1の状態における第4面積と第9面積の合計面積よりも、W5の状態における第10面積の方が大きくなるよう構成されているからである。
[0088]
本実施形態においては、第1実施形態と同様、内部ロータ2には、カム104の回転で発生するカムシャフト101のトルク変動による平均変位力が作用しており、その作用する方向は遅角方向S2である。そして、最遅角位相から中間ロック位相Pまでは、戻しばね70による進角方向S1の付勢力が作用しているが、遅角方向S2への平均変位力により相殺されている。その結果、相対回転位相が最遅角位相近傍にあって相対回転位相を進角側に変化させるときの変化速度(進角変化速度)よりも、最進角位相近傍にあって相対回転位相を遅角側に変化させるときの変化速度(遅角変化速度)の方が速くなる。そのため、内部ロータ2を遅角方向S2に回転させて中間ロック位相Pで相対回転位相を確実に拘束させるためには、第1凹部85と第2凹部86から作動油を排出する速度を、内部ロータ2を進角方向S1に回転させて中間ロック位相Pで相対回転位相を拘束させるときよりも速くする必要がある。
[0089]
本実施形態においては、第4面積と第9面積の合計面積に対する第10面積の面積比、すなわち、第1排出流路を流通する作動油の流量に対する第2排出流路を流通する作動油の流量の流量比を、進角変化速度に対する遅角変化速度の速度比以上に大きくするように構成されている。このような構成にすることにより、第1凹部85と第2凹部86から作動油を排出する速度を速くすることができ、内部ロータ2を遅角方向S2に回転させたときでも、中間ロック位相Pで相対回転位相を確実に拘束することができる。
[0090]
3.その他の実施形態
第1実施形態及び第2実施形態においては、内部ロータ2の内側に配置された1つのOCV51で、進角室41、遅角室42、中間ロック機構8への作動油の給排を制御したが、これに限られるものではない。例えば、OCV51の機能を2つに分離し、内部ロータ2の内側に、進角室41、遅角室42への作動油の給排のみを制御するOCV51Aを配置し、ハウジング1の外側に、中間ロック機構8への作動油の給排を制御するOCV51Bを配置するように構成してもよい。また、図20に示すように、OCV51AとOCV51Bの両方をハウジング1の外側に配置する構成にしてもよい。このとき、OCV51Aについては、スプール52の位置により作動油の流量が変化する3位置比例制御弁を用いるとよい。
[0091]
このような構成にしても、第1実施形態と第2実施形態で得られるのと同様の効果を得ることができる。
産業上の利用可能性
[0092]
本発明は、内燃機関のクランクシャフトと同期して回転する駆動側回転体に対する従動側回転体の相対回転位相を制御する弁開閉時期制御装置に利用することが可能である。
符号の説明
[0093]
1 ハウジング(駆動側回転体)
2 内部ロータ(従動側回転体)
4 流体圧室
8 中間ロック機構
10 弁開閉時期制御装置
21 突出部(仕切部)
41 進角室
42 遅角室
43 進角流路
44 遅角流路
51 OCV(電磁弁)
52 スプール
101 カムシャフト
C クランクシャフト(駆動軸)
E エンジン(内燃機関)
P 中間ロック位相
S1 進角方向
S2 遅角方向
X 軸心
請求の範囲
[請求項1]
内燃機関の駆動軸と同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体の内側で前記駆動側回転体の軸心と同軸心に配置され、前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に区画形成される流体圧室と、
前記駆動側回転体及び前記従動側回転体の少なくとも一方に設けられた仕切部で前記流体圧室を仕切ることにより形成される進角室及び遅角室と、
作動流体の給排により、前記駆動側回転体に対する前記従動側回転体の相対回転位相が最進角位相と最遅角位相との間の中間ロック位相に拘束されるロック状態と前記中間ロック位相の拘束が解除されたロック解除状態とが選択的に切り替えられる中間ロック機構と、
前記進角室に給排される前記作動流体の流通を許容する進角流路と、
前記遅角室に給排される前記作動流体の流通を許容する遅角流路と、
給電量を変化させることによりスプールの位置を変化させ、前記進角室、前記遅角室及び前記中間ロック機構に対する前記作動流体の給排を制御する少なくとも1つの電磁弁と、を備え、
前記中間ロック機構から前記作動流体が排出され且つ前記進角室及び前記遅角室のいずれか一方に前記作動流体が供給されいずれか他方から前記作動流体が排出されるように前記電磁弁が制御されたロック移行モードにあるときに前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の最大流量は、前記中間ロック機構に前記作動流体が供給されるように前記電磁弁が制御されている位相可変モードにあるときに前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の最大流量よりも多い、弁開閉時期制御装置。
[請求項2]
前記ロック移行モードにあるときに、前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の流量は前記電磁弁の前記スプールが前記スプールの可動範囲の端部へ近づくにつれて増加する、請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
[請求項3]
前記ロック移行モードにおいて前記相対回転位相が進角方向と遅角方向の両方向に変化可能に構成されており、
前記ロック移行モードにおいて、前記電磁弁の前記スプールが前記スプールの可動範囲の一方の端部にあるときに前記相対回転位相が前記進角方向へ変化しつつ前記作動流体は前記中間ロック機構から第1排出流路を流通して排出され、前記スプールが可動範囲の他方の端部にあるときに前記相対回転位相が前記遅角方向へ変化しつつ前記作動流体は前記前記中間ロック機構から第2排出流路を流通して排出され、
前記相対回転位相が前記遅角方向へ変化するときの前記従動側回転体の速度である遅角変化速度の方が前記相対回転位相が前記進角方向へ変化するときの前記従動側回転体の速度である進角変化速度よりも速い場合、前記進角変化速度に対する前記遅角変化速度の速度比以上に、前記第2排出通路を流通する前記作動流体の流量が前記第1排出流路を流通する前記作動流体の流量よりも多く、
前記進角変化速度の方が前記遅角変化速度よりも速い場合、前記遅角変化速度に対する前記進角変化速度の速度比以上に、前記第1排出通路を流通する前記作動流体の流量が前記第2排出流路を流通する前記作動流体の流量よりも多い、請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置。
[請求項4]
前記位相可変モードにおいて、前記相対回転位相を保持しつつ前記中間ロック機構に前記作動流体を供給するときの前記作動流体の流量が、前記相対回転位相を変化させつつ前記中間ロック機構に前記作動流体を供給するときの前記作動流体の流量よりも多い、請求項1~3のいずれか一項に記載の弁開閉時期制御装置。
補正された請求の範囲(条約第19条)
[ 2015年6月8日 ( 08.06.2015 ) 国際事務局受理 ]
[1]
[補正後] 内燃機関の駆動軸と同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体の内側で前記駆動側回転体の軸心と同軸心に配置され、前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に区画形成される流体圧室と、
前記駆動側回転体及び前記従動側回転体の少なくとも一方に設けられた仕切部で前記流体圧室を仕切ることにより形成される進角室及び遅角室と、
作動流体の給排により、前記駆動側回転体に対する前記従動側回転体の相対回転位相が最進角位相と最遅角位相との間の中間ロック位相に拘束されるロック状態と前記中間ロック位相の拘束が解除されたロック解除状態とが選択的に切り替えられる中間ロック機構と、
前記進角室に給排される前記作動流体の流通を許容する進角流路と、
前記遅角室に給排される前記作動流体の流通を許容する遅角流路と、
給電量を変化させることによりスプールの位置を変化させ、前記進角室、前記遅角室及び前記中間ロック機構に対する前記作動流体の給排を制御する少なくとも1つの電磁弁と、を備え、
前記中間ロック機構から前記作動流体が排出され且つ前記進角室及び前記遅角室のいずれか一方に前記作動流体が供給されいずれか他方から前記作動流体が排出されるように前記電磁弁が制御されたロック移行モードにあるときに前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の最大流量は、前記中間ロック機構に前記作動流体が供給されるように前記電磁弁が制御されている位相可変モードにあるときに前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の最大流量よりも多く、
前記ロック移行モードにおいて前記相対回転位相が進角方向と遅角方向の両方向に変化可能に構成されており、
前記ロック移行モードにおいて、前記電磁弁の前記スプールが前記スプールの可動範囲の一方の端部にあるときに前記相対回転位相が前記進角方向へ変化しつつ前記作動流体は前記中間ロック機構から第1排出流路を流通して排出され、前記スプールが可動範囲の他方の端部にあるときに前記相対回転位相が前記遅角方向へ変化しつつ前記作動流体は前記中間ロック機構から第2排出流路を流通して排出され、
前記相対回転位相が前記遅角方向へ変化するときの前記従動側回転体の速度である遅角変化速度の方が前記相対回転位相が前記進角方向へ変化するときの前記従動側回転体の速度である進角変化速度よりも速い場合、前記進角変化速度に対する前記遅角変化速度の速度比以上に、前記第2排出流路を流通する前記作動流体の流量が前記第1排出流路を流通する前記作動流体の流量よりも多く、
前記進角変化速度の方が前記遅角変化速度よりも速い場合、前記遅角変化速度に対する前記進角変化速度の速度比以上に、前記第1排出流路を流通する前記作動流体の流量が前記第2排出流路を流通する前記作動流体の流量よりも多い、弁開閉時期制御装置。
[2]
前記ロック移行モードにあるときに、前記進角流路及び前記遅角流路を流通する前記作動流体の流量は前記電磁弁の前記スプールが前記スプールの可動範囲の端部へ近づくにつれて増加する、請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
[4]
[補正後] 前記位相可変モードにおいて、前記相対回転位相を保持しつつ前記中間ロック機構に前記作動流体を供給するときの前記作動流体の流量が、前記相対回転位相を変化させつつ前記中間ロック機構に前記作動流体を供給するときの前記作動流体の流量よりも多い、請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置。
図面