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1. (WO2015141059) 薬効評価方法および薬効評価のための画像処理装置
Document

明 細 書

発明の名称 薬効評価方法および薬効評価のための画像処理装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014  

発明の効果

0015  

図面の簡単な説明

0016  

発明を実施するための形態

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080  

符号の説明

0081  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2A   2B   3   4A   4B   5   6A   6B   6C   7A   7B   7C   7D   8A   8B   8C  

明 細 書

発明の名称 : 薬効評価方法および薬効評価のための画像処理装置

技術分野

[0001]
 この発明は、培地内で培養された細胞に対する化学物質の薬効を評価する薬効評価方法および薬効評価に好適な画像処理装置に関するものである。
 関連出願の相互参照
 以下に示す日本出願の明細書、図面および特許請求の範囲における開示内容は、参照によりその全内容が本書に組み入れられる:
 特願2014-057594(2014年3月20日出願)。

背景技術

[0002]
 新たな医薬品を開発する創薬の技術分野では、特定の細胞、例えばがん細胞に対し薬効を示す薬剤を見出すためのスクリーニングが行われる。このようなスクリーニング技術としては、例えば特開2011-062166号公報に記載されたものがある。このスクリーニングでは、培養された細胞に薬剤候補となる化学物質を投与して細胞の変化を観察する。従来の一般的なスクリーニング方法では、細胞の活動によって特定の生化学的反応を示す試薬が候補薬剤とともに添加される。そして、生化学的反応により生成される物質や発光の量を計測することにより、細胞の活性度が判定される。このようなスクリーニング方法としては、例えばATPアッセイやMTTアッセイなどが知られている。
[0003]
 このようなスクリーニング方法における問題点は、試薬が高価であること、生化学的反応が現れるまでに比較的長時間を要すること、試薬が細胞の活動に影響を与えてしまい経時的な実験が行えないことなどである。
[0004]
 一方、観察対象となる細胞に影響を与えることなく観察を行う方法として、顕微鏡等を用いて細胞を撮像する技術も提案されている。例えば国際公開第2009/107321号に記載の技術では、培養液中の細胞の立体像を得るために、顕微光学系の焦点位置が深さ方向に多段階に変更され、その都度撮像が行われる。これにより、細胞の擬似的な三次元画像が得られる。この技術は、培養液が注入された容器の底面に付着した状態で培養(平面培養)された細胞を撮像するのに適している。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2011-062166号公報
特許文献2 : 国際公開第2009/107321号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 近年では、薬効評価の精度および効率の向上のために、立体的に培養された細胞集塊を用いてスクリーニングを行うことが求められるようになってきている。その理由は以下の通りである。生体内での病変部位は多数の細胞が集まった立体的構造を有している。そのため、平面培養された細胞を用いた従来の薬効評価の結果が生体における薬効と一致しないことがある。このことから、より生体に近い条件での評価を行うために、細胞集塊を用いたスクリーニングが必要となってきている。
[0007]
 この目的のために、立体的に培養された細胞集塊が化学物質の投与によってどのように変化するかを簡便に観察することのできる技術の確立が望まれている。しかし、上記従来技術を含めて、これまでこのような要求に応えることのできる技術は存在しなかった。

課題を解決するための手段

[0008]
 この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、化学物質が細胞集塊にどのような薬効を及ぼすかをより的確に評価することを可能とする技術を提供することを目的とする。
[0009]
 この発明の一の態様は、化学物質が細胞集塊に及ぼす薬効を評価する薬効評価方法であって、容器に担持された液体内に保持された前記細胞集塊を鉛直面と略一致する断面で断層撮像した、断層画像を取得する工程と、前記断層画像に基づき前記細胞集塊の特徴量を算出する工程と、前記特徴量の算出結果に基づいて、前記化学物質の薬効を判定する工程とを備えている。
[0010]
 このように構成された発明では、略鉛直方向の断面における細胞集塊の鉛直方向断面における断層画像から求められる細胞集塊の特徴量に基づき、化学物質の薬効が評価される。詳しくは後述するが、化学物質が細胞集塊に及ぼす作用についての本願発明者らの知見は以下の通りである。
[0011]
 活性の高い細胞からなる細胞集塊は、培養液のような液体内で比較的球形度の高い形状を示す。一方、化学物質の薬効により細胞の死滅や活性度の低下が起きると、細胞集塊が収縮したり、その球形度が低下したりするなどの変化が現れる。本願発明者らの知見では、このような細胞集塊の崩壊に伴う形状の変化は細胞集塊の下部または下方に生じやすい。すなわち、細胞同士の結合が維持できなくなった細胞集塊は重力により下方へ向かって崩れてゆき、また死滅した細胞は集塊から遊離して落下する。
[0012]
 このことから、細胞集塊の上面を撮像するのではなく、側面、より好ましくは鉛直方向の断面の像を撮像し観察することが有効である。そこで、この発明では、鉛直面と略一致する断面で断層撮像した断層画像から細胞集塊の特徴量を求め、その結果に基づいて化学物質の薬効を評価する。こうすることで、化学物質の作用に伴う細胞集塊の形状の変化を確実に検出して、細胞集塊に対する当該化学物質の薬効の評価を的確に、また効率よく行うことが可能となる。
[0013]
 また、この発明の他の態様は、上記目的を達成するため、液体内の細胞集塊を鉛直面と略一致する断面で断層撮像した複数の断層画像を取得する画像取得手段と、前記複数の断層画像に基づき、前記細胞集塊の表面の立体像を作成する立体像作成手段と、前記複数の断層画像または前記立体像に基づき、前記細胞集塊の特徴量を算出する特徴量算出手段とを備える画像処理装置である。
[0014]
 細胞集塊の光学像を観察して薬効を確認する場合、これまでは二次元画像(例えば細胞集塊を上方から撮像した画像)を基に細胞集塊のサイズが計測されて成長または衰弱の有無が判断される程度であった。一方、本発明の画像処理装置は、略鉛直方向を断面とする複数の断層画像から細胞集塊の立体像を作成し、さらに細胞集塊の特徴量を算出する機能を有する。そのため、前記した薬効評価方法を実施するのに極めて有効なものである。すなわち、細胞集塊の立体像が作成されることで、種々の視野方向からの細胞集塊の観察が可能となり、また細胞集塊の形状が特徴量の値により定量的に示される。したがって、細胞集塊の外観的特徴や特徴量に基づく総合的な薬効評価が可能となる。このように、本発明の画像処理装置は、化学物質の薬効評価を行おうとする利用者に対し的確な情報を提供して、その作業を極めて効果的に支援することが可能である。

発明の効果

[0015]
 本発明の薬効評価方法では、化学物質の作用による細胞集塊の変化を確実に検出して、細胞集塊に対する当該化学物質の薬効の評価を的確にかつ効率よく行うことができる。また、本発明の画像処理装置では、このような薬効評価を行う者を極めて効果的に支援することができる。
 この発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、添付図面を参照しながら次の詳細な説明を読めば、より完全に明らかとなるであろう。ただし、図面は専ら解説のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。

図面の簡単な説明

[0016]
[図1] 本発明にかかる画像処理装置の一実施形態を示す図である。
[図2A] この画像処理装置における撮像原理を説明する図である。
[図2B] この画像処理装置における撮像原理を説明する図である。
[図3] この画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
[図4A] 断層画像および立体像の例を示す図である。
[図4B] 断層画像および立体像の例を示す図である。
[図5] この実施形態における薬効評価方法を示すフローチャートである。
[図6A] 衰弱するスフェロイドの一例を示す図である。
[図6B] 衰弱するスフェロイドの一例を示す図である。
[図6C] 衰弱するスフェロイドの一例を示す図である。
[図7A] 衰弱するスフェロイドの他の例を示す図である。
[図7B] 衰弱するスフェロイドの他の例を示す図である。
[図7C] 衰弱するスフェロイドの他の例を示す図である。
[図7D] 衰弱するスフェロイドの他の例を示す図である。
[図8A] スフェロイドの鉛直断面を模式的に示す図である。
[図8B] スフェロイドの鉛直断面を模式的に示す図である。
[図8C] スフェロイドの鉛直断面を模式的に示す図である。

発明を実施するための形態

[0017]
 図1は本発明にかかる画像処理装置の一実施形態を示す図である。この画像処理装置1は、本発明にかかる薬効評価方法を実施するために有益な情報を提供することが可能である。この機能により、画像処理装置1は、使用者による薬効評価方法の実施を極めて効果的に支援することができるものである。以下、この画像処理装置1の構成と、この装置を用いて行うことのできる本発明の薬効評価方法の一実施形態とについて、順に説明する。なお、各図における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面、Z軸が鉛直軸を表す。より詳しくは、(+Z)方向が鉛直上向き方向を表している。
[0018]
 この画像処理装置1は、液体(例えば培養液)中で培養されたスフェロイド(細胞集塊)を断層撮像する。そして、画像処理装置1は、これにより得られた断層画像を画像処理して、スフェロイドの立体像を作成する。また、画像処理装置1は、断層画像または立体像に基づいてスフェロイドの外観的特徴を定量的に示す特徴量の算出を行う。
[0019]
 画像処理装置1は、板状部材の上面に液体を担持可能な窪部(ウェル)Wが多数形成されたウェルプレート(マイクロプレートとも称される)WPを、ウェルWの開口面を上向きにして略水平姿勢に保持する保持部10を備えている。ウェルプレートWPの各ウェルWには予め適宜の培養液が所定量注入されており、液中ではウェルWの底面WbにスフェロイドSpが培養されている。図1では一部のウェルWにのみスフェロイドSpが記載されているが、各ウェルWでスフェロイドSpが培養される。
[0020]
 保持部10により保持されたウェルプレートWPの上方に、撮像ユニット20が配置される。撮像ユニット20は、撮像対象物の断層画像を非接触、非破壊(非侵襲)で撮像することが可能なものである。ここでは一例として、光干渉断層撮像(Optical Coherence Tomography;OCT)装置が用いられるものとする。詳しくは後述するが、OCT装置である撮像ユニット20は、撮像対象物への照明光を発生する光源21と、光源21からの光を分割するビームスプリッタ22と、対物レンズ23と、基準ミラー24と、光検出器25と、これらを一体的に保持・収容する筐体26とを備えている。
[0021]
 また、画像処理装置1はさらに、装置の動作を制御する制御ユニット30と、撮像ユニット20の可動部を駆動する走査駆動機構40とを備えている。制御ユニット30は、CPU(Central Processing Unit)31、A/Dコンバータ32、3D復元部33、特徴量算出部34、インターフェース(IF)部35、画像メモリ36およびメモリ37を備えている。
[0022]
 CPU31は、所定の制御プログラムを実行することで装置全体の動作を司り、CPU31により実行される制御プログラムや処理中に生成されたデータはメモリ37に保存される。A/Dコンバータ32は、撮像ユニット20の光検出器25から受光光量に応じて出力される信号をデジタル画像データに変換する。3D復元部33は、撮像ユニット20により撮像された複数の断層画像の画像データに基づいて、撮像された細胞集塊の立体像(3D像)を作成する。特徴量算出部34は、撮像ユニット20により撮像された1つまたは複数の断層画像、もしくは3D復元部33により作成された立体像の画像データに基づき、細胞集塊の形態的特徴を定量的に示す特徴量を算出する。撮像ユニット20により撮像された断層画像の画像データおよび3D復元部33により作成された立体像の画像データは、画像メモリ36により記憶保存される。
[0023]
 インターフェース部35は画像処理装置1と外部との通信を担う。具体的には、インターフェース部35は、外部機器と通信を行うための通信機能と、ユーザからの操作入力を受け付けたり各種の情報をユーザに報知するためのユーザインターフェース機能とを有する。この目的のために、インターフェース部35には、入力デバイス351と、表示部352とが接続されている。入力デバイス351は、装置の機能選択や動作条件設定などに関する操作入力を受け付け可能な例えばキーボード、マウスまたはタッチパネルなどである。表示部352は、撮像ユニット20により撮像された断層画像や3D復元部33により作成された立体像、特徴量算出部34により算出された特徴量の値など各種の処理結果を表示する例えば液晶ディスプレイを備える。
[0024]
 また、走査駆動機構40は、CPU31から与えられる制御指令に応じて撮像ユニット20に所定の走査移動を行わせる。次に説明するように、走査駆動機構40により実行される撮像ユニット20の走査移動と、光検出器25による受光光量の検出との組み合わせにより、撮像対象物である細胞集塊の断層画像が取得される。
[0025]
 図2Aおよび図2Bはこの画像処理装置における撮像原理を説明する図である。より具体的には、図2Aは撮像ユニット20における光路を示す図であり、図2Bはスフェロイドの断層撮像の様子を模式的に示す図である。なお、原理を理解しやすくするために、図2Aでは、撮像ユニット20の各構成のうち筐体26、および撮像光学系における一般的な対物レンズと同等である対物レンズ23の記載が省かれている。前記したように、撮像ユニット20は光干渉断層撮像(OCT)装置として機能するものである。
[0026]
 撮像ユニット20では、例えばレーザダイオードまたは発光ダイオードなどの発光素子を有する光源21から低コヒーレンス光ビームL1が出射される。光ビームL1はビームスプリッタ22に入射し、破線矢印で示す一部の光L2がウェルWに向かい、一点鎖線矢印で示す一部の光L3が基準ミラー24に向かう。
[0027]
 ウェルWに向かった光L2は、ウェルWに担持された培養液内のスフェロイドSpに入射し、スフェロイドSpにより反射される。スフェロイドSpが光ビームL2に対する透過性を有するものでなければ光ビームL2はスフェロイドSpの表面で反射される。一方、スフェロイドSpが光ビームL2に対してある程度の透過性を有するものである場合、光ビームL2はスフェロイドSp内まで進入してその内部の構造物により反射される。光ビームL2として例えば近赤外線を用いることで、入射光をスフェロイドSp内部まで到達させることが可能である。
[0028]
 スフェロイドSpの表面もしくは内部で反射された光L4および基準ミラー24で反射された光L5は、ビームスプリッタ22を介して光検出器25に入射する。このとき、スフェロイドSpでの反射による破線で示される光路の長さと、基準ミラー24での反射による一点鎖線で示される光路の長さとが等しければ、光検出器25に入射する2つの光の間で干渉が生じる。ここで、光源21からの光のコヒーレンス長(可干渉距離)が十分短いとき、スフェロイドSpからの反射光のうち、その光路長が基準ミラー24からの反射光の光路長に相当する深さ(Z方向位置)の反射面からの反射光のみが、基準ミラー24からの反射光と干渉する。
[0029]
 光検出器25が干渉光を検出することで、スフェロイドSpのうち、基準ミラー24の位置に対応する特定の深さの反射面からの反射光を選択的に検出することができる。矢印A1で示すように基準ミラー24の位置を変化させることにより、スフェロイドSpの任意の深さからの反射光を検出することができる。これにウェルWに入射する光L2のX方向への走査が組み合わせられ、光検出器25により干渉光が随時検出される。これにより、XZ平面と平行な鉛直面を断面とするスフェロイドSpの断層画像を撮像することができる。
[0030]
 矢印A2で示すように、ウェルWに対する撮像ユニット20の相対位置がY方向に多段階に変更され、その都度断層画像の撮像が行われる。これにより、図2Bに示すように、スフェロイドSpをXZ平面と平行な断面で断層撮像した多数の断層画像Itを得ることができる。Y方向の走査ピッチを小さくすれば、スフェロイドSpの立体構造を把握するのに十分な分解能の画像データを得ることができる。撮像ユニット20における上記各部の走査移動は、CPU31から制御指令を受けた走査駆動機構40の作動によって実現される。
[0031]
 図3はこの画像処理装置の動作を示すフローチャートである。最初に、撮像すべきスフェロイドSpが培養液とともに担持されたウェルプレートWPが、ユーザまたは搬送ロボットにより保持部10にセットされる(ステップS101)。CPU31は、撮像ユニット20および走査駆動機構40を制御して、ウェルW内のスフェロイドSpの断層撮像を行う(ステップS102)。
[0032]
 より詳しくは、光ビームの走査によりスフェロイドSpに対する光ビームの入射位置がX方向に変化する。また、基準ミラー24の位置が変化することで反射光を受光する受光面のZ方向位置が変更される。これと連動して光検出が行われることで、XZ平面に平行な平面、つまりY方向に垂直な鉛直面を断面とするスフェロイドSpの断層画像が得られる。そして、ウェルWに対し撮像ユニット20がY方向に移動することで断面のY方向位置を変化させながら、各断面におけるスフェロイドSpの断層画像が撮像される。これが繰り返されることで、Y方向に互いに位置の異なる断面についての多数の断層画像が取得される。これらの画像データは画像メモリ36に記憶保存される。
[0033]
 こうして得られた画像データに基づき、3D復元部33が、スフェロイドSpの立体像に対応する3D画像データを作成する(ステップS103)。具体的には例えば、Y方向に離散的に取得された断層画像データをY方向に補間することにより、3D画像データを求めることが可能である。断層画像データから3D画像データを作成する技術は既に実用化されているので詳しい説明を省略する。
[0034]
 図4Aおよび図4Bは断層画像および立体像の例を示す図である。Y方向に位置を変えながらXZ平面に平行な断面でスフェロイドSpを撮像した多数の断層画像(二次元画像)I2(図4A)から、スフェロイドSpの全体的外観を示す立体像(三次元画像)I3(図4B)が作成される。図4Aに例示する断層画像I2では、スフェロイドSpの表面、すなわちスフェロイドSpの内部と培養液との界面が明瞭に表れている。また、スフェロイドSp内部の構造、具体的にはスフェロイドSpを構成する多数の細胞間の界面に対応する細かいテクスチャが見受けられる。一方、図4Bに示す立体像では、スフェロイドSpの表面の形状が明瞭に示される。
[0035]
 図4Aにおいて画像下部に現れている弧状の白い筋はウェルWの底面Wbの像である。使用されたウェルプレートWPにおいてウェルWの底面Wbが中央に向かって僅かに窪んだ形状となっていたため、このような弧状の像として現れている。図4Bの画像下部の白い平板状の像も同様である。これは後出の各図においても同様である。
[0036]
 このようにして断層画像から作成される3D画像データは、仮想的なXYZ画素空間における各画素の座標とその画素値とを対応付けたものである。このような3D画像データが作成されると、以後はこれを用いて種々の処理を行うことができる。例えば、スフェロイドSpを種々の視野方向から見た画像に対応する画像を画像処理によって作成し表示部352に表示させる。こうすることで、ユーザはあたかもスフェロイドを目の前にして任意の方向から見ているかのような感覚でその外形や表面形状の観察を行うことができる。
[0037]
 図3に戻って、画像処理装置1の動作説明を続ける。図4Bに例示されるように、スフェロイドSpの表面には細胞の界面に相当する細かい凹凸がある。後述するように、本発明にかかる薬効評価方法ではスフェロイドSpの全体的な形状的特徴に基づいて判断がなされる。そのため、このような細かい凹凸はスフェロイドSpの特徴を定量的に表す際の誤差要因となり得る。そこで、スフェロイドSpの表面をより単純な、つまり凹凸の少ない曲面に近似した近似曲面が求められる(ステップS104)。その算出方法としては種々の近似計算が考えられ、その一例については後に説明する。
[0038]
 求められた近似曲面はスフェロイドSpの包絡外形を表す曲面である。この近似曲面にはスフェロイドSpを構成する個々の細胞の状態に関する情報は少ないが、スフェロイドSp全体の形状的特徴がより明確に表れる。この近似曲面に基づいて、特徴量算出部34が、スフェロイドSpの特徴を定量的に示す特徴量を算出する(ステップS105)。
[0039]
 後述する本発明の薬効評価方法では、薬剤候補となる化学物質を投与されたスフェロイドSpの形状がどのように変化するかによって、当該化学物質の薬効が評価される。特に、正常なスフェロイドが培養液中で球形に近い形状となる一方、化学物質によりダメージを受けたスフェロイドは収縮したり形状が崩れる。そこで、このような外形の変化を定量的に検出することができる特徴量が用いられる。例えば、スフェロイドの直径、体積およびその表面積、スフェロイド表面の曲率および曲率半径、ならびにスフェロイドの球形度などが、特徴量として算出される。近似曲面を用いてこれらの特徴量を求めることで、スフェロイドの表面状態に起因する算出誤差を低減することができる。
[0040]
 ここで、前記した近似曲面の算出方法の一例を説明する。XYZ画素空間における近似曲面を方程式z=f(x,y)により表すこととし、この関数fを、3D画像データに基づき求めればよい。3D画像データから滑らかな曲面を求めるために最小二乗近似が行われる。ここでは簡便な例として平面近似、すなわち次式:
  z=ax+by+c … (式1)
が用いられる。点列(x ,y ,z )、i=1~n(nは自然数)があるとき、上記(式1)にx 、y を代入して得られたzの値とz との差の二乗和が最小となるような定数a、b、cの値が求められる。具体的には、最小二乗和の式を定数a、b、cそれぞれを変数として偏微分した式の値を0とした方程式を連立させて解けばよい。
[0041]
 行列式を用いた解法の一例を示す。(式1)にx 、y を代入して得られるzの値の集合をベクトルZにより表すこととすると、ベクトルZを次式により表すことができる。
[数1]


[0042]
 ここで、次式を定義し、未知数ベクトルXを求める。
[数2]


[0043]
 係数行列Gは長方形行列であるため、演算が煩雑である。そこで、(式2)の両辺に右から転置行列 Gを作用させると、
   GZ= GG・X … (式4)
となり、未知数ベクトルXは次式:
  X=( GG) -1GZ … (式5)
と表すことができる。行列 GGは正規行列であり、正方行列となっている。(式5)の右辺については、例えばガウスの掃出し法を用いて解くことができる。
[数3]


[0044]
 これらの結果から、未知数ベクトルXが求められ、定数a、b、cの値が求まる。これを(式1)に代入して、近似曲面の方程式が得られる。
[0045]
 以上は一次方程式による平面近似の場合であるが、より高次の方程式でも同様に考えることが可能である。
[0046]
 例えば二次方程式の場合、
  z=f(x,y)=ax 2+by 2+cxy+dx+ey+f … (式8)
とおき、6つの定数a~fを未知数とし、(式2)の係数行列Gに代えて、値1,x ,y ,x ,x 2,y 2を1行の要素とするn行6列の係数行列を用いて方程式を立てる。
[0047]
 そして、上記と同様に転置行列を用いて6×6の正規行列を持つ方程式に変換し、未知数a~fを求めればよい。
[0048]
 次に、求められた近似曲面上の任意の点Pにおける近似曲面の曲率の求め方を説明する。曲面の曲率は、ガウス曲率Kと平面曲率Hとの2つを用いて表すものとする。曲面の方程式z=f(x,y)に対して、下記パラメータを設定する。
[数4]


[0049]
 そうすると、ガウス曲率Kおよび平面曲率Hは下式により定義することができる。座標が画素単位で離散的に表される画素空間において曲率を求めるに際しては、(式9)における微分を画素ピッチでの差分に置き換えて数値計算を行うことが可能である。
[数5]


[0050]
 次に、上記のように構成された画像処理装置1を用いた、化学物質の薬効評価方法について説明する。従来は、培養液中で二次元培養された標的細胞に薬剤候補である化学物質を投与し、細胞の生存能力(バイアビリティ)がどのように変化するかを観察することで、当該化学物質の薬効が評価されてきた。しかしながら、近年では、このようにして薬効が認められた化学物質が生体内では同様の薬効を示さないという例が生じてきている。その原因の1つは、標的細胞は生体内で多数が塊となって立体的な構造を有しているのに対し、薬効の確認が二次元培養された細胞で行われていることにあると考えられる。すなわち、二次元培養された細胞では投与された化学物質が多くの細胞に触れるため薬効が現れやすい一方、三次元的構造を有する細胞では、塊の内部に位置する細胞には化学物質が届きにくく、薬効が出にくい。
[0051]
 このため、培養液中で三次元培養された標的細胞の集塊を用いて薬剤候補である化学物質の薬効を評価する必要性が高まっている。しかしながら、このような三次元構造を有する細胞集塊、すなわち培養液中のスフェロイドの状態を仔細に観察することのできる技術が確立されていない。そのため、的確にかつ効率よく評価を行うことができる環境はこれまで整っていなかった。上記した画像処理装置1はこのような観察に好適なものであり、これを利用することで、化学物質の薬効評価(スクリーニング)をより的確に、しかも効率よく行うことが可能となる。
[0052]
 図5はこの実施形態における薬効評価方法を示すフローチャートである。まず、ウェルプレートWPの各ウェルWに適宜の培養液が注入され、その内部で標的となる細胞が培養されてスフェロイドSpが作製される(ステップS201)。そして、各ウェルWに対して、評価対象である化学物質がそれぞれ所定量ずつ投与される(ステップS202)。
[0053]
 こうして化学物質が投与されたスフェロイドSpを、画像処理装置1が画像データ化する(ステップS203)。すなわち、断層画像の撮像と、それにより得られた画像データに基づく演算とが、画像処理装置1によって実行される。撮像は、化学物質が投与されて所定時間経過後に1回のみ行われてもよい。また、一定時間ごとに複数回撮像を行う、いわゆるタイムラプス撮像が行われてもよい。画像処理装置1によりスフェロイドSpの断層画像データ、立体像データおよび特徴量が求められると、これらの情報に基づき総合的に当該化学物質の薬効が評価される(ステップS204)。
[0054]
 薬効があればスフェロイドSpは衰弱し収縮する。したがって、時間をおいて撮像された画像の各々から算出された特徴量のうちスフェロイドSpの直径、表面積または体積が経時的に減少を示していれば、薬効があったものと判断することができる。これらの特徴量に有意な変化がない、または増加している場合には、薬効がないと判断することができる。なお、スフェロイドSpの体積については、ある断面方向におけるスフェロイドSpの断面積を断面方向と垂直方向に積分することにより算出可能である。例えば、三次元画像によらず、撮像により得られた複数の断層画像から直接算出することも可能である。体積Vが求められると、次式:
  V=4πr /3
の関係から、スフェロイドSpと同じ体積を有する球の半径rが算出できる。この値rを曲率半径とみなしてもよく、その場合、曲率は(1/r)により表される。
[0055]
 ただし、次に説明するように、これらの情報のみからではスフェロイドSpのバイアビリティを判断することが難しいケースもある。
[0056]
 図6Aないし図6Cは衰弱するスフェロイドの一例を示す図である。この図の画像例では、スフェロイドをその側方よりもやや上から見下ろす方向に視野方向が設定されている。図6Aはバイアビリティの比較的高いスフェロイドの画像(立体像)であり、多数の細胞が集まって略球形をなしている。ただし画像の右下部分に崩壊の兆候が現れている。
[0057]
 一方、図6Bは衰弱して崩壊し始めたスフェロイドの画像であり、図6Cはさらに崩壊が進んだスフェロイドの画像である。これらの例では、細胞間の結合が弱まって球形が維持されなくなり、細胞は形状の不規則な集塊をなしている。これらの場合、表面積や体積などの特徴量、あるいは上方からの観察だけでは図6Aの状態との識別が難しいことがある。ただし定性的には、種々の視野方向から立体像を観察することで形状の崩れを発見することは比較的容易である。また定量的には、スフェロイド表面の曲率や球形度などの特徴量の変化を見ることで、球形形状からの崩壊を検出することが可能である。
[0058]
 スフェロイドSpの表面(またはその近似曲面)は完全な球面ではない。したがって、その形状の崩れを検知するためには、互いに異なる2以上の方向の断面から見た曲率を相互に比較することが有効である。細胞のバイアビリティが低下したスフェロイドSpは、重力の作用により下方、つまりウェルWの底面に向かって落ち込むように崩れてゆく。したがって、スフェロイドSpを水平方向から見たときの表面の曲率が、特に大きく変化すると考えられる。このことから、水平方向に(すなわちXY平面上で)見た曲率Rxyと、鉛直方向に(例えばXZ平面上で)見た曲率Rxzとの間に有意な差異があるとき、スフェロイドSpが崩壊している、つまり薬効が現れていると判断することができる。表示画像からこのことを確認する場合には、特に水平方向に近い方向からスフェロイドSpを観察することが有効である。
[0059]
 図7Aないし図7Dは衰弱するスフェロイドの他の例を示す図である。図7Aは崩壊が始まった別のスフェロイドの立体像の例である。図7Bは図7AのA-A矢視断面図であり、鉛直面を断面としてスフェロイドを水平方向に見たときの像に相当する。この例では、スフェロイドは球形に比較的近い形状を留めているが、ウェル底面Wbに、スフェロイドの周囲を取り巻くように粒状の物体が分布している。
[0060]
 図7Cおよび図7Dはそれぞれ、図7BのB-B矢視断面図、C-C矢視断面図であり、いずれもスフェロイドを水平断面で見た断面図である。ウェル底面Wbから比較的離れた水平断面で見た図7Cでは、スフェロイドの外周が比較的円形に近い形状となっている。これに対し、よりウェル底面Wbに近い水平断面で見た図7Dでは、中央部分で塊となったスフェロイド周囲の例えば白丸印で囲んだ位置に、形状不定で不鮮明な像が見受けられる。これもウェル底面Wbに分布する粒状物の像である。なお図7Dにおいて、スフェロイドから離れた位置でスフェロイドを囲むように広がる弧状の白い領域は、湾曲したウェル底面Wbの一部が映り込んだものである。
[0061]
 これらの画像においてウェル底面Wbに分布する粒状物は、スフェロイドから遊離して沈みウェルWの底に堆積した遊離細胞またはその残滓(デブリ)である。化学物質が細胞のバイアビリティを低下させることで生じる現象として、スフェロイドSpの表面付近の細胞がその位置に留まることができなくなって遊離するケースもある。遊離した細胞は活性度が低く、培養液の底に沈殿してウェル底面Wbに堆積する。したがって、このような遊離細胞やデブリの有無および量は、薬効を指標する有効な情報として利用することができる。遊離細胞等の有無については、表示部352に表示される画像から目視観察により判断することができる。
 また、画像処理によって自動的に遊離細胞等の検出が行われるようにしてもよい。例えば、図7Dに示すようなウェル底面Wbに近い水平断面を示す画像における細胞の分布範囲の大きさや形状などから、遊離細胞の有無やその量などを検出することができる。スフェロイド内では細胞が比較的小さな範囲に集まるのに対し、遊離細胞はまとまりなく散在するからである。
[0062]
 これらの情報、すなわち、断層画像から再構成された立体像に基づく種々の視野方向からのスフェロイドの目視観察結果や、算出された各種の特徴量、遊離細胞の検出結果などから総合的にスフェロイドの変化が検証される。これにより、主観的判断に頼ったり細胞にダメージを与える従来のスクリーニング技術に比べて、より的確で効率的な薬効の評価を行うことが可能となる。したがって、各種化学物質のスクリーニングをより効率よく行うことができる。鉛直面と略一致する断面における断層画像を用いて評価に供することでその効果が顕著となる。その理由を以下に説明する。
[0063]
 図8Aないし図8Cはスフェロイドの鉛直断面を模式的に示す図である。図8Aはバイアビリティの高いスフェロイドSpを示しており、その鉛直断面は略円形となる。同様に、このスフェロイドSpを上方から下向きに撮像した場合や、水平断面で断層撮像した場合でも、その外形は略円形となる。図8Bは部分的に崩壊したスフェロイドSpを示しており、崩壊に伴う形状変化はスフェロイドSpの下部において顕著に現れる。上方(Z軸方向)からのまたは水平断面(XY平面)での観察では、スフェロイドの背後に隠れてこのような変化は発見されにくい。しかしながら、鉛直断面での断層画像によれば、このようなスフェロイドSpの形状変化を容易に発見することが可能である。
[0064]
 図8Cは遊離細胞やデブリがウェル底面Wbに沈殿したケースを示している。前記したように、投与された化学物質の薬効が現れている例として、スフェロイドSpから多くの遊離細胞Dが生じるケースがある。スフェロイドSpの形状を外部から観察するのみではこのような遊離細胞Dが見落とされるおそれがある。特に、上方からの二次元撮像画像では、スフェロイドSpを構成する細胞と遊離した細胞Dとを判別することが困難である。
[0065]
 しかしながら、鉛直面での断層画像を取得する過程では、スフェロイドSpの周囲(特に下部)にスフェロイドSpとは分離した状態で沈殿する遊離細胞Dやデブリを画像に取り込むことができる。そのため、このような見落としを回避することができる。特に、断層画像から再構成された立体像を様々な方向から観察することができるようにすれば、スフェロイドSpのみならず、その周囲に分布する構造物を発見することが容易になる。
[0066]
 以上説明したように、この実施形態の画像処理装置1においては、撮像ユニット20が本発明の「画像取得手段」として機能している。また、3D復元部33および特徴量算出部34がそれぞれ本発明の「立体像作成手段」および「特徴量算出手段」として機能している。また、ウェルプレートWPが本発明の「容器」に相当し、保持部10が本発明の「保持手段」として機能する。一方、表示部352が本発明の「表示手段」として機能している。
[0067]
 なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態で算出される各特徴量は、スフェロイドの形状的特徴を指標するものとして一部の例を示したものである。これらの特徴量を用いることに本発明が限定されるものではない。すなわち、上記した特徴量の一部のみが用いられてもよく、また上記以外の特徴量が用いられてもよい。
[0068]
 また例えば、上記実施形態の制御ユニット30では、CPU31、3D復元部33および特徴量算出部34がそれぞれ個別の機能ブロックとなっている。これに代えて、例えば3D復元部33および特徴量算出部34が一体のGPU(Graphic Processing Unit)により構成されてもよい。またこれらの機能が1つのCPUにより実現される構成であってもよい。
[0069]
 また例えば、上記実施形態では断層撮像を行う撮像ユニット20として光干渉断層撮像(OCT)装置が用いられている。しかしながら、スフェロイドに対し非破壊で断層撮像を行うことのできる他の撮像原理による撮像装置、例えば共焦点顕微撮像装置を本発明の「画像取得手段」として用いてもよい。撮像をより短時間で完了することができるという点では、本実施形態のような光干渉断層撮像装置が有利である。
[0070]
 また例えば、上記実施形態では本発明の「画像取得手段」として撮像装置を用いているが、本発明にかかる画像処理装置は、それ自体が撮像機能を有することを必須とするものではない。すなわち、外部の撮像装置で撮像された断層画像データを受け入れて画像処理のみを行う態様であってもよい。この場合には、外部から画像データを受け付けるインターフェース部が本発明の「画像取得手段」として機能することになる。
[0071]
 この発明は、特定の細胞に対し薬効を有する化学物質を見出すスクリーニング技術に適用することができる。細胞が立体的に集合した細胞集塊に対する薬効を的確に評価することができるので、生体内で有効に作用する薬剤の創薬に役立てることができる。
[0072]
 また上記したように、本発明は、断層画像に基づき細胞集塊から遊離して容器の底面に堆積した遊離細胞を検出する工程をさらに備え、特徴量の算出結果と遊離細胞の検出結果とに基づいて化学物質の薬効を判定するように構成されてもよい。死滅した細胞は細胞集塊から離脱して容器の底に堆積するから、このような遊離細胞の存在は当該化学物質の薬効の有力な証拠となり得る。したがって、単に細胞集塊の形状のみに注目するのでなく、その周囲、特に容器底部に堆積した遊離細胞の有無や量を検出し評価を行うことで、その精度をより向上させることができる。
[0073]
 また本発明は、例えば、互いに異なる複数の断面について断層画像を取得するように構成されてもよい。細胞集塊の形状は完全な球体ではないから、このように複数の断層画像を用いて評価を行うことで、評価の精度をより向上させることが可能となる。
[0074]
 この場合において、例えば、複数の断層画像に基づく画像処理により、細胞集塊の表面の立体像を作成する工程がさらに設けられてもよい。多数の断層画像を収集することで、細胞集塊を擬似的に立体撮像することができる。断層画像から細胞集塊の立体像を作成しておけば、例えば細胞集塊の形状や表面状態を種々の視野方向から観察することが可能となる。これにより、特徴量の算出結果と合わせた総合的な評価が可能となって、評価精度の向上を図ることができる。
[0075]
 また、本発明で用いられる特徴量としては、例えば、細胞集塊の表面積、細胞集塊の体積、細胞集塊の表面の曲率および細胞集塊の表面の曲率半径の少なくとも1つを用いることが可能である。細胞集塊の表面積および体積からは、細胞集塊のサイズを知ることができる。また、細胞集塊の表面の曲率および曲率半径からは、細胞集塊の表面形状を知ることができる。これらはいずれも、細胞集塊が成長しているか衰弱しているかを判断するための情報として利用することができる。
[0076]
 特に、互いに異なる複数の断面それぞれにおける細胞集塊の表面の曲率を特徴量として含むようにすれば、それらを比較することで、細胞集塊が球形を維持しているか、あるいは形状が崩れているかを判断することが可能となる。
[0077]
 また本発明は、例えば、所定の時間間隔をおいて複数回、細胞集塊の断層撮像を行い、各撮像で取得される断層画像から求められる特徴量の経時変化に基づいて化学物質の薬効を判定するように構成されてもよい。このように時間の経過に伴う細胞集塊の変化を調べることで、当該化学物質の薬効をより的確に判断することが可能となる。撮像対象物に対し非接触、非破壊で撮像を行うことができる断層撮像技術、例えば光干渉断層撮像技術が実用化されている。これを適用することで、細胞集塊に影響を及ぼすことなく撮像を行うことができる。そのため、細胞集塊の経時変化を観察することが可能である。
[0078]
 また本発明において、例えば、特徴量算出手段は、立体像に基づき求められた、細胞集塊の表面に対応する近似曲面について特徴量を算出するように構成されてもよい。細胞集塊は多数の細胞の集まりであり、その表面には個々の細胞の表面に対応する不規則な凹凸が現れる。このような細かい凹凸は細胞集塊全体としての特徴を表すものではない。そこで、より単純な曲面に近似して特徴量を求めることで、細胞集塊の形状的特徴をより的確に定量化することができる。
[0079]
 また本発明は、例えば、細胞集塊が含まれる液体を担持する容器を保持する保持手段をさらに備え、画像取得手段は、容器内の細胞集塊を断層撮像する撮像装置を有する構成であってもよい。断層画像は外部の撮像装置により撮像されたものであってもよいが、本発明の画像処理装置が容器を保持する保持手段と撮像装置とを備えることにより、薬効評価という目的に最適な断層画像を取得することが可能となる。このような撮像が可能な撮像装置としては、前記したように、例えば光干渉断層撮像装置を用いることが可能である。
[0080]
 また本発明は、例えば、立体像を表示する機能を有し、表示画像における細胞集塊に対する視野の方向を変更可能な表示手段を備える構成であってもよい。このような構成によれば、細胞集塊の外観的特徴に関する種々の情報を利用者に対して提供することができ、利用者は表示画像および算出された特徴量から、総合的な薬効評価を行うことが可能となる。
 以上、特定の実施例に沿って発明を説明したが、この説明は限定的な意味で解釈されることを意図したものではない。発明の説明を参照すれば、本発明のその他の実施形態と同様に、開示された実施形態の様々な変形例が、この技術に精通した者に明らかとなるであろう。故に、添付の特許請求の範囲は、発明の真の範囲を逸脱しない範囲内で、当該変形例または実施形態を含むものと考えられる。

符号の説明

[0081]
 1 画像処理装置
 10 保持部(保持手段)
 20 撮像ユニット(画像取得手段、光干渉撮像装置)
 21 光源
 22 ビームスプリッタ
 24 基準ミラー
 25 光検出器
 30 制御ユニット
 33 3D復元部(立体像作成手段)
 34 特徴量算出部(特徴量算出手段)
 352 表示部(表示手段)
 Sp スフェロイド(細胞集塊)
 W ウェル
 WP ウェルプレート(容器)

請求の範囲

[請求項1]
 化学物質が細胞集塊に及ぼす薬効を評価する薬効評価方法において、
 容器に担持された液体内に保持された前記細胞集塊を鉛直面と略一致する断面で断層撮像した、断層画像を取得する工程と、
 前記断層画像に基づき前記細胞集塊の特徴量を算出する工程と、
 前記特徴量の算出結果に基づいて、前記化学物質の薬効を判定する工程と
を備える薬効評価方法。
[請求項2]
 前記断層画像に基づき、前記細胞集塊から遊離して前記容器の底面に堆積した遊離細胞を検出する工程をさらに備え、
 前記特徴量の算出結果と前記遊離細胞の検出結果とに基づいて前記化学物質の薬効を判定する請求項1に記載の薬効評価方法。
[請求項3]
 互いに異なる複数の断面について前記断層画像を取得する請求項1または2に記載の薬効評価方法。
[請求項4]
 複数の前記断層画像に基づく画像処理により、前記細胞集塊の表面の立体像を作成する工程を備える請求項1ないし3のいずれかに記載の薬効評価方法。
[請求項5]
 前記特徴量は、前記細胞集塊の表面積、前記細胞集塊の体積、前記細胞集塊の表面の曲率および前記細胞集塊の表面の曲率半径の少なくとも1つを含む請求項1ないし4のいずれかに記載の薬効評価方法。
[請求項6]
 前記特徴量は、互いに異なる複数の断面それぞれにおける前記細胞集塊の表面の曲率を含む請求項5に記載の薬効評価方法。
[請求項7]
 所定の時間間隔をおいて複数回、前記細胞集塊の断層撮像を行い、
 各撮像で取得される前記断層画像から求められる前記特徴量の経時変化に基づいて、前記化学物質の薬効を判定する請求項1ないし6のいずれかに記載の薬効評価方法。
[請求項8]
 化学物質が細胞集塊に及ぼす薬効を評価する薬効評価のための画像処理装置において、
 液体内に保持された前記細胞集塊を鉛直面と略一致する断面で断層撮像した、複数の断層画像を取得する画像取得手段と、
 前記複数の断層画像に基づき、前記細胞集塊の立体像を作成する立体像作成手段と、
 前記複数の断層画像または前記立体像に基づき、前記細胞集塊の特徴量を算出する特徴量算出手段と
を備える画像処理装置。
[請求項9]
 前記特徴量算出手段は、前記立体像に基づき求められた、前記細胞集塊の表面に対応する近似曲面について前記特徴量を算出する請求項8に記載の画像処理装置。
[請求項10]
 前記細胞集塊が含まれる前記液体を担持する容器を保持する保持手段をさらに備え、
 前記画像取得手段は、前記容器内の前記細胞集塊を断層撮像する撮像部を有する請求項8または9に記載の画像処理装置。
[請求項11]
 前記撮像部は、光干渉断層撮像装置である請求項10に記載の画像処理装置。
[請求項12]
 前記立体像を表示する機能を有し、表示画像における前記細胞集塊に対する視野の方向を変更可能な表示手段を備える請求項8ないし11のいずれかに記載の画像処理装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2A]

[ 図 2B]

[ 図 3]

[ 図 4A]

[ 図 4B]

[ 図 5]

[ 図 6A]

[ 図 6B]

[ 図 6C]

[ 図 7A]

[ 図 7B]

[ 図 7C]

[ 図 7D]

[ 図 8A]

[ 図 8B]

[ 図 8C]