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1. (WO2015137494) ボールねじおよびその製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 ボールねじおよびその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019  

発明の効果

0020   0021  

図面の簡単な説明

0022  

発明を実施するための形態

0023  

実施例

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038  

産業上の利用可能性

0039  

符号の説明

0040  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : ボールねじおよびその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、例えば、自動車のVベルト式無段変速機等のアクチュエータに使用されるボールねじに関し、詳しくは、ボールをねじ軸の内径側に沈み込ませて下流側から上流側へ戻すボール循環溝で接続された軸循環タイプのボールねじおよびその製造方法に関するものである。

背景技術

[0002]
 ボールねじは、外周に螺旋状のねじ溝が形成されたボールねじ軸と、円筒面内に螺旋状のねじ溝が形成されたボールねじナットと、対向する両ねじ溝で構成されたボール転動路内に転動自在に収容された多数のボールとからなり、ボールねじ軸あるいはボールねじナットの回転を軸方向の並進運動に変換する機械要素である。
[0003]
 従来、ボールねじは、ねじ軸とナットとの伸縮動作に関係なく、それらの各ねじ溝内に収容される多数のボールの抜け出しを防止するために、ねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝とで構成されるボール転動路の両端を連通連結させて閉ループとし、ボールをこの閉ループ内で無限循環させている。
[0004]
 このようなボールねじには、ボールの循環機構として、例えば、リターンチューブやエンドプレートあるいは駒式と呼ばれる種々の形式のものがあるが、例えば、図5(a)に示すようなボールねじ50は、内周に螺旋状のねじ溝51aが形成された円筒状のナット51と、このナット51に内挿され、外周にねじ溝51aのリード角と同一のリード角からなる複数のねじ溝52aが形成されたねじ軸52と、両ねじ溝間に転動自在に収容された多数のボール53とを備え、ねじ軸52の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部に、ねじ溝52a、52aの隣合う1周部分同士を連結して個別に閉ループとするボール連結溝54aが設けられた軸循環タイプで構成されている。この連結溝54aは、ねじ軸52とは別体の駒部材54の表面に形成され、この駒部材54はねじ軸52に装着されている。
[0005]
 駒部材54には、ねじ軸52のねじ溝52aの一部に嵌合する係止部56が一体に形成され、この係止部56をねじ溝52aに嵌合することにより、位置精度良く駒部材54をねじ軸52に装着することができる。駒部材54はねじ軸52に対して複数個が軸方向に並べて設けられ、複数条並んだ周回経路から構成されている。図5(b)に示すように、ねじ軸52は中空軸で構成され、駒部材54を装着する嵌合用開口55が内外の周面に貫通して形成されている。
[0006]
 このボールねじ50では、ねじ軸52に連結溝54aを有する駒部材54を装着し、ボール53を循環させる周回経路が構成されているので、ナット51に周回経路を構成するための駒部材等の循環部材を配置する必要がなく、ナット51の外径を小さくでき、ボールねじ50をコンパクト化することができる。
[0007]
 また、ボールねじ50が、自動車のVベルト式無段変速機等のアクチュエータに使用される場合、回転しないねじ軸52側に駒部材54を配置されているので、ボールねじ50の取付時にモーメント荷重やラジアル荷重の加わる方向が予め分かっており、駒部材54を負荷の少ない位置に片寄せて配置できるように容易に設計することができ、ボールねじ50の長寿命化が可能となる(例えば、特許文献1参照。)。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2003-21217号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 然しながら、こうした従来のボールねじ50では、駒部材54をねじ軸52の外径側から嵌合用開口55に嵌め込み、駒部材54をねじ軸52の中空孔57側から加締または接着等でねじ軸52に固定しているため、作業性が悪くなる。そこで、外径側から加締めるとすると、駒部材54が嵌合されたねじ軸52の外径側に抜け出る恐れが生じる。すなわち、内径側の抜けに対しては、塑性変形させた肉が機械的なストッパーの役割を果たすが、外径側の抜けに対しては、機械的なストッパーがなく摩擦力のみでの保持になるため、加締めが不十分な場合、抜ける恐れがある。
[0010]
 本発明は、こうした従来の問題に鑑みてなされたもので、駒部材の高い位置決め精度と強固な固定を図って信頼性を向上させたボールねじおよびその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
 係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に螺旋状のねじ溝が形成された円筒状のナットと、このナットに内挿され、外周に螺旋状のねじ溝が形成された中空状のねじ軸と、前記両ねじ溝により形成される転動路に転動自在に収容された多数のボールと、前記ねじ軸に内外の周面に貫通して前記ねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材と、を備え、前記ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材が前記ねじ軸に固定されている。
[0012]
 このように、内周に螺旋状のねじ溝が形成された円筒状のナットと、このナットに内挿され、外周に螺旋状のねじ溝が形成された中空状のねじ軸と、両ねじ溝により形成される転動路に転動自在に収容された多数のボールと、ねじ軸に内外の周面に貫通してねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材と、を備え、ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材がねじ軸に固定されているので、ナットに周回経路を構成するための循環部材を配置する必要がなく、ナットの外径を小さくでき、ボールねじをコンパクト化することができると共に、駒部材の高い位置決め精度が得られ、駒部材が外径方向に飛び出る方向への抜け止めに対して強固な固定を図って信頼性を向上させたボールねじを提供することができる。
[0013]
 好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記駒部材がMIMによって成形された焼結金属で構成されていれば、加工度が高く複雑な形状であっても容易に、かつ精度良く所望の形状・寸法に成形することができる。
[0014]
 また、請求項3に記載の発明のように、前記駒部材の加締密着部がランド部より低い段差形状に形成されていれば、加締部が、駒部材の外周部より低くなって段差を有した構造となり、組立作業中に障害となることはない。
[0015]
 また、本発明のうち請求項4に記載の方法発明は、内周に螺旋状のねじ溝が形成された円筒状のナットと、このナットに内挿され、外周に螺旋状のねじ溝が形成された中空状のねじ軸と、前記両ねじ溝により形成される転動路に転動自在に収容された多数のボールと、前記ねじ軸に内外の周面に貫通して前記ねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材と、を備え、前記ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材が前記ねじ軸に固定され、その後、このねじ軸が熱処理によって表面に硬化処理が施される。
[0016]
 このように、ねじ軸に内外の周面に貫通してねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材を備え、ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材がねじ軸に固定され、その後、このねじ軸が熱処理によって表面に硬化処理が施されるので、加締部の加工性を向上させ、駒部材の強度・耐久性を向上させることができる。
[0017]
 また、請求項5に記載の発明のように、前記ねじ軸が高周波焼入れによって硬化処理されていれば、局部加熱ができて硬化層深さの設定が比較的容易にできる。
[0018]
 また、請求項6に記載の発明のように、前記ねじ軸のねじ溝がポイント切削によって成形加工されていれば、所定のねじ溝を精度良く仕上げることができる。
[0019]
 また、請求項7に記載の発明のように、前記ねじ軸のねじ溝が、熱処理後にショットピーニングによる仕上げ加工が行われていれば、熱処理によりねじ溝等に付着したスケールや表層の粒界酸化層を除去することができ、ボールねじの低コスト化を達成することができると共に、耐久性を向上させることができる。

発明の効果

[0020]
 本発明に係るボールねじは、内周に螺旋状のねじ溝が形成された円筒状のナットと、このナットに内挿され、外周に螺旋状のねじ溝が形成された中空状のねじ軸と、前記両ねじ溝により形成される転動路に転動自在に収容された多数のボールと、前記ねじ軸に内外の周面に貫通して前記ねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材と、を備え、前記ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材が前記ねじ軸に固定されているので、ナットに周回経路を構成するための循環部材を配置する必要がなく、ナットの外径を小さくでき、ボールねじをコンパクト化することができると共に、駒部材の高い位置決め精度が得られ、駒部材が外径方向に飛び出る方向への抜け止めに対して強固な固定を図って信頼性を向上させたボールねじを提供することができる。
[0021]
 また、本発明に係るボールねじの製造方法は、内周に螺旋状のねじ溝が形成された円筒状のナットと、このナットに内挿され、外周に螺旋状のねじ溝が形成された中空状のねじ軸と、前記両ねじ溝により形成される転動路に転動自在に収容された多数のボールと、前記ねじ軸に内外の周面に貫通して前記ねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材と、を備え、前記ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材が前記ねじ軸に固定され、その後、このねじ軸が熱処理によって表面に硬化処理が施されるので、加締部の加工性を向上させ、駒部材の強度・耐久性を向上させることができる。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 本発明に係るボールねじの一実施形態を示す縦断面図である。
[図2] (a)は、図1の駒部材の装着状態を示す要部拡大図、(b)は、(a)のII-II線に沿って断面した部分断面図である。
[図3] 図1の駒部材を示し、(a)は、加締前の駒部材を示す要部拡大図、(b)は、加締後の駒部材を示す要部拡大図である。
[図4] 本発明に係る駒部材の加締治具を示す斜視図である。
[図5] (a)は、従来のボールねじを示す縦断面図、(b)は、(a)の破断側面図である。

発明を実施するための形態

[0023]
 内周に螺旋状のねじ溝が形成された円筒状のナットと、このナットに内挿され、外周に前記ねじ溝のリード角と同一のリード角からなる螺旋状のねじ溝が形成された中空状のねじ軸と、前記両ねじ溝により形成される転動路に転動自在に収容された多数のボールと、前記ねじ軸に内外の周面に貫通して前記ねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材と、を備え、この駒部材がMIMによって成形された焼結金属で構成され、前記転動路を周回経路とするS字状の連結溝と、前記ねじ軸のねじ溝に係合される一対のアームが形成されると共に、前記ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部の複数箇所を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材が前記ねじ軸に固定されている。
実施例
[0024]
 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
 図1は、本発明に係るボールねじの一実施形態を示す要部断面図、図2(a)は、図1の駒部材の装着状態を示す要部拡大図、(b)は、(a)のII-II線に沿って断面した部分断面図、図3は、図1の駒部材を示し、(a)は、加締前の駒部材を示す要部拡大図、(b)は、加締後の駒部材を示す要部拡大図、図4は、本発明に係る駒部材の加締治具を示す斜視図である。
[0025]
 図1に示すボールねじ1は、無段変速機のアクチュエータに適用され、外周に螺旋状のねじ溝2aが形成された固定側のねじ軸2と、このねじ軸2に外嵌され、内周に螺旋状のねじ溝3aが形成された回転側のナット3と、ねじ軸2とナット3間の対向する両ねじ溝2a、3aにより形成された転動路に収容された多数のボール4と、ボール4の循環用部材となる駒部材5とを備え、軸循環タイプのボールねじ1を構成している。
[0026]
 ナット3はSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、浸炭焼入れによってその表面に55~62HRCの範囲に硬化処理が施されている。各ねじ溝2a、3aの断面形状は、サーキュラアーク形状であってもゴシックアーク形状であっても良いが、ここではボール4との接触角が大きくとれ、アキシアルすきまが小さく設定できるゴシックアーク形状に形成されている。これにより、軸方向荷重に対する剛性が高くなり、かつ振動の発生を抑制することができる。
[0027]
 ねじ軸2はS55C等の中炭素鋼やSCM415等の肌焼き鋼からなり、円筒状のねじ軸2に、内外の周面に貫通してねじ溝2aの一部を切欠く断面略円形の駒窓6が穿設され、この駒窓6に対応して断面略円形の駒部材5が嵌合されている。駒部材5の外方(外径側の周面)には、ねじ溝2aの隣り合う1周分同士を連結する連結溝5aが形成され、この連結溝5aとねじ溝2aの略1周の部分とでボール4の転動路を構成している。転動路内の内外のねじ溝2a、3a間に介在された多数のボール4は、ねじ溝2a、3aに沿って転動し、駒部材5の連結溝5aに案内されると共に、ナット3のねじ山を乗り越えて隣り合うねじ溝2aに戻り、再びねじ溝2a、3aに沿って転動する。なお、ここでは、駒窓6および駒部材5が断面略円形に形成されたものを例示したが、円形に限らず、例えば、小判形形状であっても良い。
[0028]
 図2(a)に示すように、駒部材5の連結溝5aは、ねじ軸2の隣り合うねじ溝2a、2a間を滑らかに接続するようにS字状に湾曲して形成されている。そして、両駒窓の縁部は、ねじ軸2の隣り合うねじ溝2aの溝縁部に合致するように連結溝5aがねじ溝2aに接続されている。なお、図示しないナット3のねじ溝3aとねじ軸2のねじ溝2aとは、互いに同じリード角に設定されている。
[0029]
 この駒部材5の連結溝5aは、隣り合うねじ溝2a、2aの上流側と下流側とを個別に連通連結するものであり、ねじ溝2aの下流のボール4を内径側へ沈み込ませ、ナット3のランド部を乗り越えさせて上流側へ戻すように、連結溝5aの深さは、ボール4が連結溝5a内でナット3におけるねじ溝3aのねじ山を越えることができる深さとされている。さらに、駒部材5の両側には断面が略円形の丸棒状に形成されたアーム9が突設され、ねじ軸2のねじ溝2aに僅かな径方向すきまを介して係合されている。このアーム9によって、駒部材5がねじ軸2に対して軸方向に位置決めされている。
[0030]
 本実施形態では、駒部材5は、金属粉末を可塑状に調整し、射出成形機で成形される焼結合金からなる。この射出成形に際しては、まず、金属粉と、プラスチックおよびワックスからなるバインダとを混練機で混練し、その混練物をペレット状に造粒する。造粒したペレットは、射出成形機のホッパに供給し、金型内に加熱溶融状態で押し込む、所謂MIM(Metal Injection Molding)により成形されている。こうしたMIMによって成形される焼結合金であれば、加工度が高く複雑な形状であっても容易に、かつ精度良く所望の形状・寸法に成形することができる。
[0031]
 前記金属粉として、後に浸炭焼入が可能な材質、例えば、C(炭素)が0.13wt%、Ni(ニッケル)が0.21wt%、Cr(クロム)が1.1wt%、Cu(銅)が0.04wt%、Mn(マンガン)が0.76wt%、Mo(モリブデン)が0.19wt%、Si(シリコン)が0.20wt%、残りがFe(鉄)等からなるSCM415を例示することができる。駒部材5は、浸炭焼入れおよび焼戻し温度を調整して行われる。また、駒部材5の材料としてこれ以外にも、Niが3.0~10.0wt%含有し、加工性、耐食性に優れた材料(日本粉末冶金工業規格のFEN8)、あるいは、Cが0.07wt%、Crが17wt%、Niが4wt%、Cuが4wt%、残りがFe等からなる析出硬化系ステンレスSUS630であっても良い。このSUS630は、固溶化熱処理で20~33HRCの範囲に表面硬さを適切に上げることができ、強靭性と高硬度を確保することができる。
[0032]
 ボール4の組み込みは、ねじ軸2の駒窓6に駒部材5をねじ軸2の外径側から装着した後、ねじ軸2の軸端からナット3を当てがい、ボール4を両ねじ溝2a、3a間に順次挿入しながらナット3を回転させ、ナット3をねじ軸2に移動させることによって行う。なお、これ以外にも、ねじ軸2の駒窓6に駒部材5を装着した後、仮軸を用いてボール4を同様に挿入するようにしても良い。
[0033]
 ここで、駒部材5のアーム9、9をねじ軸2のねじ溝2aに係合させた状態で駒部材5が駒窓6に嵌挿される。そして、図2(b)、図3に示すように、ねじ軸2のランド部2bの外周部の複数箇所(ここでは、2箇所)を一部潰して駒部材5に密着する状態まで塑性変形させて形成した加締部7によって駒部材5がねじ軸2に固定される。なお、ここでは、駒部材5の加締密着部5bがランド部より低い段差形状に形成されている。これにより、加締部7が、駒部材5の外周部より低くなって段差を有した構造となり、組立作業中に障害となることはない。
[0034]
 このように、本実施形態では、ナット3に周回経路を構成するための循環部材を配置する必要がなく、ナット3の外径を小さくでき、ボールねじ1をコンパクト化することができると共に、駒部材5のアーム9、9をねじ軸2のねじ溝2aに係合させているので、駒部材5の高い位置決め精度が得られ、ねじ軸2のランド部2bを一部潰して駒部材5に密着する状態まで塑性変形させて形成した加締部7によって駒部材5がねじ軸2に固定されているので、駒部材5が外径方向に飛び出る方向への抜け止めに対して強固な固定を図って信頼性を向上させたボールねじ1を提供することができる。
[0035]
 駒部材5の加締め加工は、図4に示す加締治具8を使用して行われる。この加締治具8は円柱状をなし、一端部に複数(ここでは、2箇所)の押付部8aが周方向等配に突出して形成されている。これらの押付部8aをねじ軸2のランド部2bの外周部に押圧することにより、ランド部2bの一部を潰して塑性変形させ、駒部材5の加締密着部(段差部)5bに覆い被さるように加締部7が形成されている。したがって、加締部7を容易に、かつ精度良く形成することができると共に、駒部材5の強度・耐久性を向上させることができる。
[0036]
 また、本実施形態では、ポイント切削によってねじ溝2aの成形加工を完了させた後、駒部材5をねじ軸2に加締固定し、その後、ねじ軸2を熱処理によってその表面に55~62HRCの範囲の硬化層が形成されている。これにより、加締部7の加工性を向上させることができる。なお、熱処理は、浸炭焼入れでも高周波誘導加熱による焼入れでも良いが、局部加熱ができて硬化層深さの設定が比較的容易にできる高周波焼入れが好適である。ここで言う「ポイント切削」とは、ねじ溝2aがゴシックアーク形状の場合、エンドミルのノーズ半径が、ねじ溝2aの溝曲率半径よりも小さなエンドミルを用い、このエンドミルをねじ溝2aの有効長さ分だけ複数回移動させ、エンドミルの軌跡を複数重ねることにより所定形状のねじ溝2aの成形が行われる切削方法のことを言う。
[0037]
 なお、ねじ軸2のねじ溝2aは、熱処理後に研削加工は行わず、熱処理によりねじ溝2a等に付着したスケールや表層の粒界酸化層を除去するためにショットピーニングによる仕上げ加工(図示せず)が行われている。このショットピーニングは、スチールビーズの粒径を20~100μm、噴射時間は約90秒、噴射圧は1~3kg/cm 、噴射ノズルとワークの表面までの距離は略140mmとした。これにより、ボールねじ1の低コスト化を達成することができると共に、耐久性を向上させることができる。
[0038]
 以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。

産業上の利用可能性

[0039]
 本発明に係るボールねじは、自動車の無段変速機等のアクチュエータに用いられるボールねじに適用できる。

符号の説明

[0040]
1 ボールねじ
2 ねじ軸
2a、3a ねじ溝
2b ねじ軸のランド部
3 ナット
4 ボール
5 駒部材
5a 連結溝
5b 加締密着部
6 駒窓
7 加締部
8 加締治具
8a 押付部
9 アーム
50 ボールねじ
51 ナット
51a、52a ねじ溝
52 ねじ軸
53 ボール
54 駒部材
54a 連結溝
55 嵌合用開口
56 係止部

請求の範囲

[請求項1]
 内周に螺旋状のねじ溝が形成された円筒状のナットと、
 このナットに内挿され、外周に螺旋状のねじ溝が形成された中空状のねじ軸と、
 前記両ねじ溝により形成される転動路に転動自在に収容された多数のボールと、
 前記ねじ軸に内外の周面に貫通して前記ねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材と、を備え、
 前記ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材が前記ねじ軸に固定されていることを特徴とするボールねじ。
[請求項2]
 前記駒部材がMIMによって成形された焼結金属で構成されている請求項1に記載のボールねじ。
[請求項3]
 前記駒部材の加締密着部がランド部より低い段差形状に形成されている請求項1または2に記載のボールねじ。
[請求項4]
 内周に螺旋状のねじ溝が形成された円筒状のナットと、
 このナットに内挿され、外周に螺旋状のねじ溝が形成された中空状のねじ軸と、
 前記両ねじ溝により形成される転動路に転動自在に収容された多数のボールと、
 前記ねじ軸に内外の周面に貫通して前記ねじ溝の一部を切欠く駒窓が形成され、この駒窓に嵌合された駒部材と、を備え、
 前記ねじ軸の軸方向で隣り合うねじ溝の間に存在するランド部を一部潰して塑性変形させて形成した加締部によって当該駒部材が前記ねじ軸に固定され、その後、このねじ軸が熱処理によって表面に硬化処理が施されることを特徴とするボールねじの製造方法。
[請求項5]
 前記ねじ軸が高周波焼入れによって硬化処理されている請求項4に記載のボールねじの製造方法。
[請求項6]
 前記ねじ軸のねじ溝がポイント切削によって成形加工されている請求項4または5に記載のボールねじの製造方法。
[請求項7]
 前記ねじ軸のねじ溝が、熱処理後にショットピーニングによる仕上げ加工が行われている請求項4に記載のボールねじの製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]