明 細 書
発明の名称 : ヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の製造方法及びその製造中間体
技術分野
[0001]
本発明は、ヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の新規な製造法及びその製造中間体に関する。さらに詳しくは、本発明は、糖尿病治療薬又はその製造中間体としてのヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の効率的な製造法、及びそのような製造法に有用な製造中間体に関する。
背景技術
[0002]
現在、糖尿病治療薬として、インスリン分泌促進薬(スルホニルウレア剤)、ブドウ糖吸収阻害薬(α-グルコシダーゼ阻害剤)、インスリン抵抗性改善薬(ビグアナイド剤、チアゾリジン誘導体)などが臨床で用いられている。しかし、いずれも低血糖、下痢、乳酸アシドーシス、浮腫などの副作用を伴うことや、効果が十分でないなどの課題を依然として有している。このような臨床ニーズを満たす、新たな糖尿病治療及び予防薬として、特許文献1や特許文献2では下記式(I)に含まれるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体が開示されており、その代表的化合物が糖尿病動物モデルにおいて優れた血糖上昇抑制効果を示すと報告されている。
[0003]
[化1]
[0004]
特許文献1では、一般式(I)に含まれるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の一般的合成法として下記スキームに示す方法が示されている。(式中の記号は、特許文献1を参照のこと。)
[0005]
一般式(I)においてXが低級アルキレン基又は低級アルケニレン基であり、Aが-OR5であり、R5が低級アルキル基であるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体(F)は次のようにして製造することができる。
[0006]
[化2]
[0007]
カルボン酸誘導体(D)とアミジノフェノール誘導体(E)とをエステル化することで、目的とするXが低級アルケニレン基を示すヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体(F)を製造することができ、また製造工程のいずれかの段階で、例えばメタノール、エタノール又は酢酸エチル等の本反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、水素雰囲気下で、例えば10%パラジウム/炭素のような触媒で処理する工程を行うことでXが低級アルキレン基を示すヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体(F)を製造することができる。
[0008]
エステル化反応は公知の方法を適用することが可能であり、例えば(1)酸ハライドを用いる方法、(2)縮合剤を用いる方法等が挙げられる。
[0009]
(1)酸ハライドを用いる方法は、例えばジクロロメタン等の本反応に悪影響を及ぼさない溶媒中又は無溶媒で、例えばN,N-ジメチルホルムアミド等のような触媒の存在下又は非存在下で、例えば塩化チオニルや塩化オキサリル等と反応させて得られた酸塩化物を、例えばジクロロメタン又はテトラヒドロフラン等の本反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、例えばピリジンやトリエチルアミンのような塩基の存在下でアルコールと反応させることにより行われる。
[0010]
(2)縮合剤を用いる方法は、例えばカルボン酸とアルコールを例えばテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド又はジクロロメタン等の本反応に悪影響を及ぼさない溶媒中、例えばピリジンやトリエチルアミン等の塩基の存在下又は非存在下で、例えば1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)又は1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤を用いて反応させることにより行われる。
[0011]
一般式(I)においてAが-OR5であり、R5が水素原子であるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体(i)は、ウィッティヒ試薬(B)の換わりにウィッティヒ試薬(G)(式中E
2はメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基又はベンジル基等の保護基を示す)を用いることで得られるエステル誘導体(H)を、例えば水酸化ナトリウム等の塩基による加水分解、例えば塩酸又はトリフルオロ酢酸等の酸による加水分解又は水素雰囲気下で例えば10%パラジウム/炭素等で処理する等の脱保護を行うことで製造することができる。
[0012]
[化3]
[0013]
特許文献2においても、一般式(I)に含まれるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の一般的合成法として同様の記載がある。
[0014]
しかしながら、特許文献1や特許文献2の実施例では、エステル誘導体(F)や(i)の単離操作にカラムクロマトグラフィーを用いており、またその収率も工業的プロセスとするには相応しいものではなかった。したがって、一般式(I)に含まれるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体は、有用な糖尿病治療薬として期待できるものの、従来の製造方法では経済性、生産性が悪く、工業的に効率良く製造し得る新しい方法が望まれていた。
先行技術文献
特許文献
[0015]
特許文献1 : 国際公開第2011/071048号
特許文献2 : 国際公開第2013/187533号
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0016]
従来方法よりも収率、品質良く式(I)に含まれるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体を製造する工業的製法が望まれていた。
課題を解決するための手段
[0017]
上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、以下に示すヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体を製造する工業的製法、およびそれに用いられる新規な中間体を見出し、本発明を完成するに至った。
[0018]
即ち、本発明は、下記式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の工業化に適した製造法とその製造に有用な中間体を提供する。
[0019]
本発明は、以下に関する。
[1] 以下の工程(g)と(h)を含む、式(4)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[0020]
[化4]
[0021]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は低級アルキル基を表し、
R
5は、tert-ブチル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成する)
(g) 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物を、(A)アルキルリチウム、又は(B)有機アミンとアルキルリチウムから調製されるリチウム錯体の存在下で反応させ、式(3)で表される化合物を得る工程
[0022]
[化5]
[0023]
[化6]
[0024]
[化7]
[0025]
(式中、R
1は、ハロゲン原子を表し、
R
4は、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はn-ブチル基を表し、
R
12は、水素原子又はハロゲン原子を表し、
その他の各記号は前記で定義したとおりである)、
(h) 水及びアルコールを含む溶媒中で、式(3)で表される化合物を金属ヒドロキシドを用いて加水分解し、式(4)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩を得る工程。
[2] アルキルリチウムがn-ブチルリチウムである、前記[1]記載の製造方法。
[3] 以下の工程(k)と(l)を含む、式(11)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[0026]
[化8]
[0027]
(k) 式(12)で表される化合物と式(13)で表される化合物を、(A)n-ブチルリチウム、又は(B)ジイソプロピルアミン及びジイソプロピルエチルアミンから選ばれる有機アミンとn-ブチルリチウムから調製されるリチウム錯体の存在下で反応させ、式(10)で表される化合物を得る工程、
[0028]
[化9]
[0029]
[化10]
[0030]
[化11]
[0031]
(l) 水及びアルコールを含む溶媒中で、式(10)で表される化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム及び水酸化カリウムから選ばれる金属ヒドロキシドを用いて加水分解し、式(11)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩を得る工程。
[4] 工程(m)を含む、式(4)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[0032]
[化12]
[0033]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表し、
R
5は、低級アルキル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成する)
(m) 式(5)で表される化合物と式(2)で表される化合物を、塩基を用いて反応させ、式(4)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩を得る工程
[0034]
[化13]
[0035]
[化14]
[0036]
(式中、R
12はハロゲン原子を表し、
その他の記号は前記で定義したとおりである)。
[5] 工程(n)を含む、式(11)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[0037]
[化15]
[0038]
(n) 式(14)で表される化合物と式(13)で表される化合物を、水素化ナトリウム及びリチウムジイソプロピルアミドを用いて反応させ、式(11)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩を得る工程。
[0039]
[化16]
[0040]
[化17]
[0041]
[6] 以下の工程(o)から(q)を含む、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[0042]
[化18]
[0043]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成し、
R
8、R
9、R
10及びR
11は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す)
(o) 式(4)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させ、式(6)で表される酸ハライドに変換する工程
[0044]
[化19]
[0045]
[化20]
[0046]
(式中、R
5は、低級アルキル基を表し、
Xは、ハロゲン原子を表し、
その他の記号は前記で定義したとおりである)、
(p) 式(6)で表される酸ハライドを、式(7)で表される化合物と反応させ、式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩へ変換する工程
[0047]
[化21]
[0048]
[化22]
[0049]
(式中、記号は前記で定義したとおりである)、
(q) 式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩を酸性条件にて脱保護し、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩へと変換する工程。
[7] 以下の工程(r)から(t)を含む、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[0050]
[化23]
[0051]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成し、
R
8、R
9、R
10及びR
11は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す)
(r) 式(4)で表される化合物を塩化チオニル又は塩化オキサリルと反応させ、式(16)で表される酸クロライドに変換する工程
[0052]
[化24]
[0053]
[化25]
[0054]
(式中、R
5は、低級アルキル基を表し、
その他の記号は前記で定義したとおりである)、
(s) 式(16)で表される酸クロライドを有機塩基存在下、式(7)で表される化合物と反応させ、式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩へ変換する工程
[0055]
[化26]
[0056]
[化27]
[0057]
(式中、各記号は前記で定義したとおりである)、
(t) 式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩をHCl、HBr、硫酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸で脱保護し、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩へと変換する工程。
[8] 以下の工程(u)から(w)を含む、式(17)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[0058]
[化28]
[0059]
(u) 式(11)で表される化合物を塩化チオニルと反応させ、式(18)で表される酸クロライドに変換する工程、
[0060]
[化29]
[0061]
[化30]
[0062]
(v) 式(18)で表される酸クロライドをピリジン存在下、式(19)で表される化合物と反応させ、式(15)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩へ変換する工程、
[0063]
[化31]
[0064]
[化32]
[0065]
(w) 式(15)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩をHCl存在下で脱保護し、式(17)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩へと変換する工程。
[9] 下記式(20)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0066]
[化33]
[0067]
(式中、R
4aは、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はn-ブチル基を表し、
R
6a及びR
7aは、同一であり、メチル基又はエチル基を表すか、又はR
6a及びR
7aは、それらが結合する炭素原子とともに、シクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する)
[10] R
6a及びR
7aが、メチル基を表す、前記[9]記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[11] R
4aが、メチル基を表す、前記[9]記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[12] 下記式(10)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0068]
[化34]
[0069]
[13] 下記式(21)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0070]
[化35]
[0071]
(式中、R
5aは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基又はn-ブチル基を表し、
R
6a及びR
7aは、同一であり、メチル基又はエチル基を表すか、又はR
6a及びR
7aは、それらが結合する炭素原子とともに、シクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する)
[14] R
6a及びR
7aが、メチル基を表す、前記[13]記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[15] R
5aが、tert-ブチル基を表す、前記[13]記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[16] 下記式(11)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0072]
[化36]
[0073]
[17] 下記式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0074]
[化37]
[0075]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表し、
R
5は、低級アルキル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成し、
R
8、R
9、R
10及びR
11は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す)
[18] 式(8)中、R
2及びR
3が、水素原子を表し、
R
6及びR
7が、同一又は異なって、それぞれ独立して、メチル基、エチル基又はプロピル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにシクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する、
前記[17]記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[19] 下記式(15)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0076]
[化38]
発明の効果
[0077]
本発明はヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の大量合成に適した製造方法および新規な中間体を提供する。本発明の製造方法においては、低級アルキル基で保護されたエステル誘導体を中間体として使用することにより、生成物を晶析することが可能であり、ろ過分離により生成物を簡便に単離精製することができる。本発明の製造方法を用いることにより、収率よく高純度で目的化合物であるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体を製造することができる。
発明を実施するための形態
[0078]
本明細書において、「置換基を有してもよい」とは、「置換または無置換である」ことを意味する。特に断りのない限り置換基の位置および数は任意であって、特に限定されるものではない。置換基の数は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個である。2個以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一であっても異なっていても良い。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、低級アルキル基、低級アシル基、低級アルコキシル基、低級アルキルチオ基等が挙げられる。
[0079]
「低級アルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖または環状のアルキル基を示す。例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基及びシクロペンチル基等が挙げられる。
[0080]
「ハロゲン原子」とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
[0081]
「C
3-8シクロアルカン環」とは、炭素数3~8のシクロアルカン環を示す。例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環が挙げられる。
[0082]
「低級アシル基」とは、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖または環状のアルキル基またはアルケニル基を有するアシル基を示す。例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、シクロプロパノイル基、シクロブタノイル基、シクロペンタノイル基及びシクロヘキサノイル基等が挙げられる。
[0083]
「低級アルコキシル基」とは、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖または環状のアルキル基を有するアルコキシル基を示す。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
[0084]
「低級アルキルチオ基」とは、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖状または環状のアルキル基を有するアルキルチオ基を示す。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基及びシクロブチルチオ基等が挙げられる。
[0085]
前記式において、好ましい態様は以下のとおりである。
R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表す。好ましくは、R
2及びR
3は、水素原子を表す。
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成する。好ましくは、R
6及びR
7は、同一であり、メチル基、エチル基又はプロピル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともに、シクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する。更に好ましくは、R
6及びR
7は、メチル基を表す。
R
4は、低級アルキル基を表す。好ましくは、R
4は、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はn-ブチル基を表す。更に好ましくは、R
4は、メチル基を表す。
R
5は、低級アルキル基を表す。好ましくは、R
5は、tert-ブチル基を表す。
R
8、R
9、R
10及びR
11は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子又はハロゲン原子を表す。好ましくは、R
8、R
9及びR
11は水素原子を表し、R
10はフッ素原子を表す。
Xは、ハロゲン原子を表す。好ましくは、Xは塩素原子を表す。
[0086]
本発明の化合物が塩の形態を成し得る場合、医薬的に許容しうる塩が好ましい。このような医薬的に許容しうる塩としては、例えば、カルボキシル基等の酸性基を有する化合物に対しては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属との塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩を挙げることができる。塩基性基を有する化合物に対しては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩を挙げることができる。
[0087]
本発明で用いられる塩としては、上記の医薬的に許容しうる塩に挙げたもののほかに、化学的に許容しうる塩が挙げられ、化学的に許容しうる酸との塩と化学的に許容しうる塩基との塩が含まれる。
[0088]
本発明に用いられる化学的に許容しうる酸との塩としては、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等)、有機カルボン酸(例えば、炭酸、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸、タンニン酸、酪酸、デカン酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等)、有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等)との塩などが挙げられる。
[0089]
化学的に許容しうる塩基との塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、バリウム塩等)、金属塩(例えば、マグネシウム塩、アルミニウム塩等)などが挙げられる。
[0090]
本発明の化合物には、その溶媒和物、例えば水和物、アルコール付加物等も含まれる。アルコール付加物としては、メタノール溶媒和物、エタノール溶媒和物、イソプロピルアルコール溶媒和物などが挙げられる。
[0091]
一般式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の製造方法を以下に示す。
本発明は、式(9)で示される化合物又はその化学的に許容しうる塩を製造する方法であって、以下の工程(a)から(f)を用いることを特徴とする製造方法である。
[0092]
(a) 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との反応により、式(3)で表されるジエステルを合成する工程
[0093]
[化39]
[0094]
[化40]
[0095]
[化41]
[0096]
(b) 式(3)のジエステルの脱保護により、式(4)で表されるエステルを合成する工程
[0097]
[化42]
[0098]
(c) 式(5)で表される化合物と(2)で表される化合物との反応により、式(4)で表されるエステルを合成する工程
[0099]
[化43]
[0100]
[化44]
[0101]
[化45]
[0102]
(d) 式(4)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させ、式(6)で表される酸ハライドに変換する工程
[0103]
[化46]
[0104]
(e) 式(6)で表される化合物を、式(7)で表される化合物と反応させ、式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩へ変換する工程
[0105]
[化47]
[0106]
[化48]
[0107]
(f) 式(8)で表される化合物を酸性条件下にて脱保護し、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩へと変換する工程
[0108]
[化49]
[0109]
以下、好ましい実施形態について更に詳細に記載する。
工程(a)
本反応は、塩基存在下で行うことが好ましい。
反応に用いる塩基としては、(A)アルキルリチウム、又は(B)ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機アミンとアルキルリチウムから調製されるリチウム錯体が挙げられる。(A)n-ブチルリチウム、又は(B)ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機アミンとn-ブチルリチウムから調製されるリチウム錯体を用いることが好ましい。塩基の使用量は、式(1)の化合物1モルに対して、約1.0モルから約2.0モルが好ましい。
反応溶媒としては、エーテル類、炭化水素類を用いることができ、その中でもテトラヒドロフランが好ましい。
反応温度は-78℃から0℃が好ましい。反応時間は、通常、約30分間である。
[0110]
工程(b)
脱保護に用いる試薬としては、水酸化ナトリウムなどの金属ヒドロキシドが好ましい。金属ヒドロキシドとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属ヒドロキシドが挙げられる。金属ヒドロキシドの使用量は、式(3)のジエステル1モルに対して、約1.0モルから約2.0モルが好ましい。
反応溶媒としては、アルコールと水の混合溶媒が好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
反応温度は10℃から40℃が好ましい。反応時間は、通常、約12時間から約24時間である。
[0111]
工程(c)
本反応は、塩基存在下で行うことが好ましい。
用いる塩基としては、ジイソプロピルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどの有機アミンとn-ブチルリチウムから調製されるリチウム錯体とアルカリ金属水素化物が好ましい。リチウム錯体としては、リチウムジイソプロピルアミン(LDA)が好ましい。アルカリ金属水素化物としては、水素化ナトリウム(NaH)が好ましい。リチウム錯体の使用量は、式(5)の化合物1モルに対して、約1.0モルから約1.2モルが好ましく、アルカリ金属水素化物(例、水素化ナトリウム)の量も、式(5)の化合物1モルに対して、約1.0モルから約1.2モルが好ましい。
反応溶媒としては、エーテル類、炭化水素類を用いることができ、その中でもテトラヒドロフランが好ましい。
反応温度は、-78℃から0℃が好ましい。反応時間は、通常、約30分間である。
[0112]
工程(d)
酸ハロゲン化の反応溶媒としては、酢酸エステルが好ましく、酸ハロゲン化剤としては、塩化チオニル又は塩化オキサリルが好ましい。また、添加剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)やN-メチルピロリドン(NMP)が好ましい。
酸ハロゲン化剤の使用量は、式(4)の化合物1モルに対して、好ましくは約1.0モルから約1.5モルが好ましい。
反応温度は0℃から45℃までの間であり、10℃から30℃が好ましい。反応時間は、通常、約30分間から約2時間である。
[0113]
工程(e)
工程(d)で得られた酸ハライド(6)を、好ましくは塩基存在下、アミジノフェノール誘導体(7)と反応させることで、式(8)で表されるジエステル誘導体が得られる。反応溶媒としては、アセトニトリルが好ましい。
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ルチジンなどの有機塩基が挙げられる。塩基としては、ピリジンが好ましい。塩基の使用量は、酸ハライド(6)1モルに対して、通常、約2.0モルから約3.0モルである。
アミジノフェノール誘導体(7)の使用量は、酸ハライド(6)1モルに対して、通常、約1.0モルから約1.2モルが好ましい。
反応温度は-60℃から30℃までの間であり、-25℃から10℃が好ましい。反応時間は、通常、約30分間である。
反応混合液に、トリフルオロ酢酸(TFA)及び水を滴下することで、反応系中からジエステル誘導体(8)をTFA塩として結晶化(晶析)させることが可能であり、ろ過分離により単離精製することができる。TFAの使用量は、酸ハライド(6)1モルに対して、通常、約2.0モルから約3.0モルである。
滴下及び晶析の温度は0℃から20℃が好ましい。晶析の時間は通常、約2から約24時間である。
析出したジエステル誘導体(8)又はその塩は、ろ過分離により簡便に単離精製することができる。
[0114]
工程(f)
工程(e)で得られたジエステル誘導体(8)を、酸性条件にて脱保護することで、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体が得られる。
反応に用いる酸としては、HCl、HBr、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。好ましくは、HClである。
反応溶媒としては、1,4-ジオキサン、アセトンが好ましく、添加剤として水を加えることが好ましい。
反応温度は、10℃から60℃が好ましい。反応時間は、通常、約6時間から約24時間である。
反応により、ヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体の結晶化(晶析)が可能であり、ろ過分離により単離精製することができる。
[0115]
「反応系」とは、反応を行った反応混合物、又は反応混合物から不溶物(例えば、触媒など)をろ別した反応液を意味する。
[0116]
式(1)及び式(5)の化合物は、自体公知の方法にしたがって製造することができる。
[0117]
本発明はまた、本発明の方法で用いられる下記の中間体を提供する。
下記式(20)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0118]
[化50]
[0119]
(式中、R
4aは、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はn-ブチル基を表し、
R
6a及びR
7aは、同一であり、メチル基又はエチル基を表すか、又はR
6a及びR
7aは、それらが結合する炭素原子とともに、シクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する)
[0120]
式(20)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
以下の構造を有する化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0121]
[化51]
[0122]
以下の構造を有する化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0123]
[化52]
[0124]
以下の構造を有する化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0125]
[化53]
[0126]
下記式(10)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0127]
[化54]
[0128]
下記式(21)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0129]
[化55]
[0130]
(式中、R
5aは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基又はn-ブチル基を表し、
R
6a及びR
7aは、同一であり、メチル基又はエチル基を表すか、又はR
6a及びR
7aは、それらが結合する炭素原子とともに、シクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する)
[0131]
式(21)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
以下の構造を有する化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0132]
[化56]
[0133]
以下の構造を有する化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0134]
[化57]
[0135]
以下の構造を有する化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0136]
[化58]
[0137]
下記式(11)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[0138]
[化59]
実施例
[0139]
以下、実施例によって本発明の詳細を述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(分析条件)
以下の実施例における分析は、下記の測定装置を用いて、常法に従って行った。
(1)
1H-NMR
装置:AvanceIII 400, Burker社製
(2)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
HPLC:LC-2010AHT(島津製作所製)
使用カラム:InertSustain C18 φ4.6 mm×150 mm,粒径3 μm (GL-Sciences製)
検出波長:UV 254 nm
カラム温度:40℃
注入量:10 μL
分析時間:18分
流速:1.5 mL/min
溶離液:A液: 水/トリフルオロ酢酸混液(1000:1)
B液: アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液(1000:1)
グラジエント:0min: 20%B, 0→13min: 20→90%B, 13→15min: 90%B,
15→15.1min: 90→20%B, 15.1→18min: 20%B
なお、合成の各工程においての収率は、標準品のHPLCエリア面積値をもとに算出した値である。
[0140]
(実施例1)
5-(2-tert-ブトキシカルボニル-2-メチルプロピル)チオフェン-2-カルボン酸 メチルエステルの合成
[0141]
[化60]
[0142]
ジイソプロピルエチルアミン(46.8 mL, 1.87 eq)のテトラヒドロフラン(THF, 169 mL)溶液に、n-BuLi(95.1 mL, 1.75 eq, 2.65M in hexane)を-78℃にて5分で滴下し、そのまま15分撹拌した。その後、2-ブロモ-2-メチルプロパン酸tert-ブチルエステル(43.8 mL, 1.63 eq)を滴下し、そのまま30分撹拌した。その後、5-ブロモメチルチオフェン-2-カルボン酸 メチルエステルのシクロペンチルメチルエーテル(CPME)溶液(gross 95.43 g, net 33.86 g, 144.0 mol)を加え、1時間撹拌した。水(169 mL)を加えた後、ヘプタン(339 mL)にて抽出し、エタノール(112 mL)と水(223 mL)の混合液で洗浄した後、濃縮を行うことで、表題化合物(gross 59.28 g, net 37.10 g)を取得した(収率86.3%)。
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.62 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.04 (s, 2H), 1.45 (s, 9H), 1.18 (s, 6H).
[0143]
(実施例2)
5-(2-tert-ブトキシカルボニル-2-メチルプロピル)チオフェン-2-カルボン酸の合成
[0144]
[化61]
[0145]
5-(2-tert-ブトキシカルボニル-2-メチルプロピル)チオフェン-2-カルボン酸 メチルエステル(gross 59.28 g, net 37.10 g, 124.3 mmol)に、水(80.2 mL)及びエタノール(111.3 mL)を加えた後、6N NaOH水溶液(31.1 mL, 1.5 eq)を加えて、30℃にて16時間撹拌した。反応終了後、6N HCl(31.1 mL, 1.5 eq)にて中和した後、シクロヘキサン(371 mL)で抽出した。エタノール(122 mL)と水(245 mL)の混合液で洗浄した後、活性炭(1.86 g)を加えた。25℃で22時間撹拌した後、セライトろ過により活性炭を除去し、減圧濃縮及びヘプタン(371 mL)の滴下を行った。温度を60℃まで上げた後、20℃まで温度を下げ、30分撹拌し、その後、5℃まで温度を下げた。20時間撹拌した後、析出した結晶をろ取し、冷ヘプタン(74.2 mL, 10℃)で洗浄後、50℃で減圧乾燥を行い、表題化合物(22.74 g)を取得した(収率64.3%)。
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.70 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 3.06 (s, 2H), 1.46 (s, 9H), 1.19 (s, 6H).
[0146]
(実施例3)
5-(2-tert-ブトキシカルボニル-2-メチルプロピル)チオフェン-2-カルボン酸の合成
[0147]
[化62]
[0148]
NaHのミネラルオイルディスパージョン(NaH濃度60質量%、840 mg)をTHF(19.9 mL)に懸濁させた後、5-メチルチオフェン-2-カルボン酸(2.84 g, 20.0 mmol)のTHF(11.3 mL)溶液を室温にて滴下した。60℃に昇温して10分間撹拌した後、再び室温まで冷却し、ジイソプロピルアミン(3.1 mL, 1.1 eq)を加えた。0℃に冷却した後、n-BuLi(10.5 mL, 1.05 eq, 2.0Mシクロヘキサン中)を滴下し、そのまま10分間撹拌した。-78℃まで冷却した後、2-ブロモイソ酪酸 tert-ブチルエステル(3.72 mL, 20.0 mol)を加え、30分撹拌した。0℃まで昇温した後、6N HCl(11.7 mL, 3.5 eq)及びヘプタン(28.4 mL)を加え、0℃で1時間撹拌した。生じた固体をろ別し、母液を水(17 mL)で洗浄した後、溶媒(およそ25 mL)を減圧留去した。ヘプタン(28.4 mL)を加えた後、メタノール/水=2/3(体積比, 17 mL)とメタノール/水=7/8(体積比, 17 mL)で洗浄し、溶媒(およそ60 mL)を減圧留去した。ヘプタン(28.4 mL)及び活性炭(142 mg)を加えた後、60℃に昇温して1時間撹拌した。セライトろ過により活性炭を除去した後、減圧濃縮により30 mL程度の溶液を得た後、室温にて1時間撹拌した。その後、10℃まで温度を下げ、16時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、冷ヘプタン(2.8 mL, 10℃)で洗浄後、40℃で6時間減圧乾燥を行い、表題化合物(2.44 g)を取得した(収率42.9%)。
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.71 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 3.06 (s, 2H), 1.46 (s, 9H), 1.19 (s, 6H).
[0149]
(実施例4)
5-(2-tert-ブトキシカルボニル-2-メチルプロピル)チオフェン-2-カルボン酸 4-カルバムイミドイル-2-フルオロフェニルエステルの合成
[0150]
[化63]
[0151]
5-(2-tert-ブトキシカルボニル-2-メチルプロピル)チオフェン-2-カルボン酸(2.84 g)の酢酸エチル(AcOEt, 11.4 mL)溶液に、25℃でN,N-ジメチルホルムアミド(DMF, 284 μL)及び塩化チオニル(1.1 mL, 1.5 eq)を滴下し、25℃で30分撹拌した。酸クロライドの生成を確認した後、反応溶液を濃縮し、アセトニトリル(MeCN, 8.5 mL)を加えた。この溶液を、3-フルオロ-4-ヒドロキシベンズアミジンのアンモニア・塩化水素混合物(2.26 g, 1.1 eq)のアセトニトリル(17.0 mL)懸濁液に、0℃にて滴下した。滴下終了後、ピリジン(2.0 mL, 2.5 eq)を加えた。30分後、水(25.6 mL)及びトリフルオロ酢酸(TFA, 1.9 mL, 2.5 eq)を15℃で滴下した。起晶後、水(25.6 mL)を加え、 10℃で一晩撹拌した。析出した結晶をろ取し、水(5.7 mL)で洗浄後、50℃で減圧乾燥を行い、表題化合物(4.83 g)を取得した(収率90.4%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 9.57 (s, 2H), 9.45 (s, 2H), 8.02 - 7.91 (m, 2H), 7.81 - 7.73 (m, 2H), 7.09 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 3.13 (s, 2H), 1.42 (s, 9H), 1.15 (s, 6H).
[0152]
(実施例5)
3-[5-(4-カルバムイミドイル-2-フルオロフェノキシ)カルボニル-2-チエニル]-2,2-ジメチルプロパン酸 塩酸塩の合成
[0153]
[化64]
[0154]
5-(2-tert-ブトキシカルボニル-2-メチルプロピル)チオフェン-2-カルボン酸 4-カルバムイミドイル-2-フルオロフェニルエステル(3.21 g)の1,4-ジオキサン(9.6 mL)懸濁液に、4M HCl/1,4-ジオキサン (9.6 mL)及びミリQ水(96 μL)を加え、50℃で15時間撹拌した。反応後、スラリーをろ過し、ろ取した固体をアセトン(6.4 mL)で洗浄後、50℃で減圧乾燥を行い、表題化合物(2.26 g)を取得した(収率92.1%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 12.58 (s, 1H), 9.62 (s, 2H), 9.47 (s, 2H), 8.08 - 7.90 (m, 2H), 7.87 - 7.71 (m, 2H), 7.09 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 3.14 (s, 2H), 1.17 (s, 6H).
[0155]
(実施例6)
3-[5-(4-カルバムイミドイル-2-フルオロフェノキシ) カルボニル-2-チエニル]-2,2-ジメチルプロパン酸 塩酸塩の精製
[0156]
[化65]
[0157]
実施例5で得られた粗結晶(1.50 g)をMeOH/AcOEt=1/1の混合溶媒(21.0 mL)、ミリQ水(45 μL)及びメタノール(1.5 mL)を加えることで溶解させた。その後、酢酸エチルへの濃縮置換を行った(合計37.5 mLの酢酸エチルを用いた)。析出した結晶をろ取し、酢酸エチル(6.0 mL)で洗浄し、50℃で減圧乾燥を行い、表題化合物(1.42 g)を取得した(収率96.6%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 12.56 (s, 1H), 9.54 (s, 2H), 9.36 (s, 2H), 8.10 - 7.87 (m, 2H), 7.84 - 7.68 (m, 2H), 7.09 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 3.14 (s, 2H), 1.16 (s, 6H).
産業上の利用可能性
[0158]
本発明の製造方法を用いることにより、収率よく高純度で目的化合物であるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体を製造することができる。式(20)の化合物、式(10)の化合物、式(21)の化合物、式(11)の化合物、式(8)の化合物及び式(15)の化合物は、ヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体(9)を製造するための中間体として有用である。
[0159]
本出願は、日本で出願された特願2014-48091を基礎としており、その内容は参照により本明細書にすべて包含されるものである。
請求の範囲
[請求項1]
以下の工程(g)と(h)を含む、式(4)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容
しうる塩の製造方法:
[化1]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は低級アルキル基を表し、
R
5は、tert-ブチル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成する)
(g) 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物を、(A)アルキルリチウム、又は(B)有機アミンとアルキルリチウムから調製されるリチウム錯体の存在下で反応させ、式(3)で表される化合物を得る工程
[化2]
[化3]
[化4]
(式中、R
1は、ハロゲン原子を表し、
R
4は、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はn-ブチル基を表し、
R
12は、水素原子又はハロゲン原子を表し、
その他の各記号は前記で定義したとおりである)、
(h) 水及びアルコールを含む溶媒中で、式(3)で表される化合物を金属ヒドロキシドを用いて加水分解し、式(4)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩を得る工程。
[請求項2]
アルキルリチウムがn-ブチルリチウムである、請求項1記載の製造方法。
[請求項3]
以下の工程(k)と(l)を含む、式(11)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容
しうる塩の製造方法:
[化5]
(k) 式(12)で表される化合物と式(13)で表される化合物を、(A)n-ブチルリチウム、又は(B)ジイソプロピルアミン及びジイソプロピルエチルアミンから選ばれる有機アミンとn-ブチルリチウムから調製されるリチウム錯体の存在下で反応させ、式(10)で表される化合物を得る工程、
[化6]
[化7]
[化8]
(l) 水及びアルコールを含む溶媒中で、式(10)で表される化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム及び水酸化カリウムから選ばれる金属ヒドロキシドを用いて加水分解し、式(11)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩を得る工程。
[請求項4]
工程(m)を含む、式(4)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[化9]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表し、
R
5は、低級アルキル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成する)
(m) 式(5)で表される化合物と式(2)で表される化合物を、塩基を用いて反応させ、式(4)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩を得る工程
[化10]
[化11]
(式中、R
12はハロゲン原子を表し、
その他の記号は前記で定義したとおりである)。
[請求項5]
工程(n)を含む、式(11)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[化12]
(n) 式(14)で表される化合物と式(13)で表される化合物を、水素化ナトリウム及びリチウムジイソプロピルアミドを用いて反応させ、式(11)で表されるエステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩を得る工程。
[化13]
[化14]
[請求項6]
以下の工程(o)から(q)を含む、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[化15]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成し、
R
8、R
9、R
10及びR
11は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す)
(o) 式(4)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させ、式(6)で表される酸ハライドに変換する工程
[化16]
[化17]
(式中、R
5は、低級アルキル基を表し、
Xは、ハロゲン原子を表し、
その他の記号は前記で定義したとおりである)、
(p) 式(6)で表される酸ハライドを、式(7)で表される化合物と反応させ、式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩へ変換する工程
[化18]
[化19]
(式中、記号は前記で定義したとおりである)、
(q) 式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩を酸性条件にて脱保護し、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩へと変換する工程。
[請求項7]
以下の工程(r)から(t)を含む、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[化20]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成し、
R
8、R
9、R
10及びR
11は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す)
(r) 式(4)で表される化合物を塩化チオニル又は塩化オキサリルと反応させ、式(16)で表される酸クロライドに変換する工程
[化21]
[化22]
(式中、R
5は、低級アルキル基を表し、
その他の記号は前記で定義したとおりである)、
(s) 式(16)で表される酸クロライドを有機塩基存在下、式(7)で表される化合物と反応させ、式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩へ変換する工程
[化23]
[化24]
(式中、各記号は前記で定義したとおりである)、
(t) 式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩をHCl、HBr、硫酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸で脱保護し、式(9)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩へと変換する工程。
[請求項8]
以下の工程(u)から(w)を含む、式(17)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩の製造方法:
[化25]
(u) 式(11)で表される化合物を塩化チオニルと反応させ、式(18)で表される酸クロライドに変換する工程、
[化26]
[化27]
(v) 式(18)で表される酸クロライドをピリジン存在下、式(19)で表される化合物と反応させ、式(15)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩へ変換する工程、
[化28]
[化29]
(w) 式(15)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩をHCl存在下で脱保護し、式(17)で表されるヘテロアリールカルボン酸エステル誘導体、又はその化学的に許容しうる塩へと変換する工程。
[請求項9]
下記式(20)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[化30]
(式中、R
4aは、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はn-ブチル基を表し、
R
6a及びR
7aは、同一であり、メチル基又はエチル基を表すか、又はR
6a及びR
7aは、それらが結合する炭素原子とともに、シクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する)
[請求項10]
R
6a及びR
7aが、メチル基を表す、請求項9記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[請求項11]
R
4aが、メチル基を表す、請求項9記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[請求項12]
下記式(10)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[化31]
[請求項13]
下記式(21)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[化32]
(式中、R
5aは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基又はn-ブチル基を表し、
R
6a及びR
7aは、同一であり、メチル基又はエチル基を表すか、又はR
6a及びR
7aは、それらが結合する炭素原子とともに、シクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する)
[請求項14]
R
6a及びR
7aが、メチル基を表す、請求項13記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[請求項15]
R
5aが、tert-ブチル基を表す、請求項13記載の化合物、又はその化学的に許容
しうる塩。
[請求項16]
下記式(11)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[化33]
[請求項17]
下記式(8)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[化34]
(式中、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表し、
R
5は、低級アルキル基を表し、
R
6及びR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい低級アルキル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにC
3-8シクロアルカン環を形成し、
R
8、R
9、R
10及びR
11は、同一又は異なって、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す)
[請求項18]
式(8)中、R
2及びR
3が、水素原子を表し、
R
6及びR
7が、同一又は異なって、それぞれ独立して、メチル基、エチル基又はプロピル基を表すか、又はR
6及びR
7は、それらが結合する炭素原子とともにシクロプロパン環、シクロブタン環又はシクロペンタン環を形成する、
請求項17記載の化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[請求項19]
下記式(15)で表される化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
[化35]