明 細 書
[0001]
この出願は、2014年3月10日出願の特願2014-046386の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。
技術分野
[0002]
この発明は、鉄道車両における車軸軸受の異常を検知する鉄道車両用軸受異常検知装置に関する。
背景技術
[0003]
鉄道車両においては、車軸軸受に異常が発生した場合、車両の運転を停止するなどの処置が必要となり、多大な損失が発生する。そこで、各種検出素子を軸受装置に取り付け、軸受装置の運転状態を検出する鉄道車両用センサ付軸受装置が提案されている(特許文献1)。この鉄道車両用センサ付軸受装置によると、電源バイパスコンデンサ、演算増幅回路の電源バイパスコンデンサ、基準電圧を出力するレギュレータのバイパスコンデンサなどに、セラミックコンデンサを採用している。
先行技術文献
特許文献
[0004]
特許文献1 : 特許第4321171号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005]
前記セラミックコンデンサは、コンパクトである点で装置の小形化に貢献するが、例えば、プリント基板の表面にセラミックコンデンサを実装した場合、プリント基板の反りなどによる外力や装置の衝撃により、クラックが生じやすい欠点がある。また、セラミックコンデンサにクラックが発生した状態で使用すると、マイグレーションを起こして内部でショートすることがある。セラミックコンデンサを電源用バイパスコンデンサとして使用する場合、電源ラインとグランドラインがショートすることになるため、過大な電流が流れる。この場合、センサの機能が不完全となる。
[0006]
この発明の目的は、外力や装置の衝撃に対する耐久性を改善し、装置の信頼性を向上することができる鉄道車両用軸受異常検知装置を提供することである。
課題を解決するための手段
[0007]
この発明の鉄道車両用軸受異常検知装置は、鉄道車両の台車に設けた軸箱に組み込まれる転がり軸受の異常を検知する鉄道車両用軸受異常検知装置であって、前記転がり軸受の運転状態を検出する温度検出素子、振動検出素子、および速度検出素子の少なくともいずれか1つの検出素子と、この検出素子で検出した物理量を出力信号に変換する処理回路と、前記検出素子または前記処理回路に電圧を印加する電源とを備え、前記検出素子および前記処理回路における電圧印加対象の電源ラインとGNDラインの間に、電源バイパスコンデンサを設け、この電源バイパスコンデンサが、フィルムタイプのコンデンサである。
[0008]
この構成によると、検出素子は転がり軸受の運転状態を検出する。処理回路は、この検出素子で検出した物理量を出力信号に変換する。検出素子または処理回路には、電源から電圧が印加される。検出素子として、例えば、振動検出素子が適用された場合、鉄道車両の走行時に軸箱の転がり軸受が回転すると、転動体の回転通過に伴い軸受の固有振動が発生する。軸受の転がり面に異常が発生すると、この転がり面の異常に起因する振動が顕著となり、転動体の通過周期でピークが発生する。これらの運転状態を検出して記録手段に記録し、例えば、外部の解析装置にて周波数解析を行う。この解析結果により、軸受の異常判定を行う。
[0009]
電源ラインとGNDラインの間に接続される電源バイパスコンデンサは、電源に重畳するノイズをバイパスして、電源から電圧印加対象に安定した電圧を供給するうえ、電源電圧の変動を抑える。この電源バイパスコンデンサに、フィルムタイプのコンデンサを用いることにより、この電源バイパスコンデンサに衝撃が作用しても、コンデンサ表面でその衝撃を緩和、吸収することができる。これにより、電源バイパスコンデンサにクラックが生じることを未然に防止し、マイグレーションの発生を抑えることができる。したがって、電源ラインとGNDラインがショートすることを防止し、過大な電流が流れることを防止することができる。
[0010]
前記処理回路は、プリント基板に実装されるものであっても良い。プリント基板に反りなどによる外力が作用する場合においても、電源バイパスコンデンサに、フィルムタイプのコンデンサを用いることにより、この電源バイパスコンデンサが弾性変形することで、電源バイパスコンデンサにクラックが生じることを未然に防止できる。
[0011]
前記処理回路を収納するケースを設け、前記検出素子は、前記ケースに取り付けられるものであっても良い。この場合、検出素子をより被検出体に近い測定部位に配置することができる。
[0012]
前記軸箱における測定部位に吸引固定される永久磁石と、この永久磁石を保持するホルダとを設け、前記振動検出素子は、前記永久磁石または前記ホルダに取り付けられるものとしても良い。この場合、軸箱における測定部位に対し、永久磁石の吸引力を利用して振動検出素子を着脱自在に設けることができる。
[0013]
前記永久磁石および前記ホルダと前記振動検出素子との間には、電気的に絶縁する絶縁体を介在させても良い。この絶縁体によって、鉄道車両から台車および軸箱を介して流れる電気ノイズから、振動検出素子を保護することができる。
[0014]
前記軸箱に磁性体からなるボルトを締結し、このボルトの頭部に前記永久磁石を吸引固定させても良い。前記ボルトとして、例えば、市販品の六角ボルトを適用することができる。この場合、コスト低減を図れる。
[0015]
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
図面の簡単な説明
[0016]
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
[図1] この発明の第1実施形態に係る鉄道車両用軸受異常検知装置を鉄道車両に設けた例を示す図である。
[図2] 図1のA-A線端面図である。
[図3] 同軸受異常検知装置における振動測定ユニットの概略構成を示す図である。
[図4] 同軸受異常検知装置の処理回路の構成を概略示す回路図である。
[図5] 同軸受異常検知装置の電源回路の概略図である。
[図6] 第2実施形態に係る軸受異常検知装置の要部の断面図である。
発明を実施するための形態
[0017]
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る鉄道車両用軸受異常検知装置を鉄道車両に設けた例を示す図であり、図2は図1のA-A線端面図である。図1および図2に示すように、この軸受異常検知装置は、転がり軸受の振動を測定する振動測定ユニット1と、この振動測定ユニット1で測定したデータを受信し外部に送信する送受信ユニット2と、これら振動測定ユニット1および送受信ユニット2に電圧を印加する電源3(図4)とを有する。
[0018]
台車4の下部に車幅方向に離隔して一対の軸箱5が設けられ、これら軸箱5にそれぞれ転がり軸受6が組み込まれている。1つの軸箱5に対し、転がり軸受6として、例えば、複列円すいころ軸受が適用される。
[0019]
各軸箱5の内周面に転がり軸受6の外輪がそれぞれ嵌合され、転がり軸受6の内輪に車軸7が嵌合される。車軸7の軸方向両端部に車輪8がそれぞれ取り付けられている。これら車輪8が転がり軸受6により回転自在に支持されて、軌道上に平行に敷設された2本のレール9上を走行可能に構成される。軸箱5には、磁性体からなるボルト10が締結されている。ボルト10として、例えば、六角ボルトが適用される。また1つの軸箱5に、転がり軸受6の組み込み位置に対応して2本の六角ボルト10が離隔して設けられる。軸箱5から露出する各六角ボルト10の頭部に、振動測定ユニット1の永久磁石11(図3)が吸引固定可能となっている。
[0020]
振動測定ユニット1について説明する。図3に示すように、振動測定ユニット1は、ケース12と、振動検出素子13と、処理回路14およびプリント基板15と、永久磁石11と、ホルダ16を有する。ケース12は、例えば、円筒形状や直方体形状に形成され、この実施形態では直方体形状である。ケース12の内部に、プリント基板15に実装される処理回路14が収納されている。処理回路14は複数の電子部品を有し、プリント基板15の両面に半田付けされる。プリント基板15としては、剛性の高いガラス入りエポキシ樹脂が望ましい。
[0021]
ケース12の軸方向一端部(図3の左右方向の左端部)に、転がり軸受の運転状態を検出する振動検出素子13が取り付けられ、振動検出素子本体がケース12内部に設けられている。振動検出素子13として、例えば、圧電型の加速度センサが適用される。ケース12の内部において、振動検出素子本体のリード端子から、処理回路14に設けた接続端子にリード線17が結線されている。
[0022]
ケース12の軸方向一端部に開口部12aが形成され、この開口部12aから、振動検出素子本体に付設されたねじ部13aがケース12の外側に突出している。このケース12の開口部12aから突出するねじ部13aに、磁性体からなる前記ホルダ16が螺合されて取り付けられている。ホルダ16におけるケース12側の底部には、ねじ部13aに螺合される雌ねじが形成されている。ねじ部13aをホルダ16の雌ねじに締め付けることで、振動検出素子本体およびホルダ16が、ケース12の軸方向一端部の壁を挟み込む状態で、ケース12の一端部に固定される。
[0023]
ケース12の軸方向一端部の壁と振動検出素子本体との間に、振動検出素子13のねじ部13aの緩みを防止するために、適宜ウェーブワッシャ、スプリングワッシャ(いずれも図示せず)等を挟み込んでもよい。また、ねじ部13aと前記雌ねじとの嵌合部に、緩み止めの接着剤を塗布しても良い。接着剤としては、嫌気性のタイプを使用することが望ましい。ホルダ16におけるケース12と反対側の先端部に凹部16aが形成され、この凹部16aに永久磁石11が保持されている。したがって、永久磁石11は、ホルダ16と共に、軸箱における測定部位であるボルト10に吸引固定される。
[0024]
図4は、処理回路14の構成を概略示す回路図である。処理回路14は、演算増幅回路18と、フィルタ回路19と、マイクロコンピュータ20と、基準電圧回路21を有する。振動検出素子13のアナログ出力信号は、演算増幅回路18からフィルタ回路19を介してマイクロコンピュータ20に入力される。このアナログ出力信号は、マイクロコンピュータ20の内部でA/D変換された後に、記録手段に記録される。この記録手段として、データの書換えが可能なランダムアクセスメモリ(略称RAM:Random Access Memory)が適用される。
[0025]
記録手段に記録されたデータは、図1に示すように、振動測定ユニット1からケーブル22を介して送受信ユニット2に送信され、この送受信ユニット2から外部の解析装置に無線送信される。解析装置に送信されたデータは、解析装置の記録媒体に転送されて解析に供される。これに代えて、外部の測定開始指令装置から測定開始指令信号を送受信ユニット2に無線送信し、測定開始指令信号を受信した送受信ユニット2からケーブル22を介して振動測定ユニット1に測定開始指令信号を送信することにより、振動測定ユニット1で軸箱内の軸受の振動を測定しても良い。
[0026]
図4に示すように、電源3から振動検出素子13および処理回路14に電源電圧が供給される。なお、電源電圧は、後述の電源回路により所望の電圧とされる。これら振動検出素子13および処理回路14には、第1~4電源バイパスコンデンサC1~C4が接続される。第1~4電源バイパスコンデンサC1~C4は、直流電源に重畳するノイズをバイパスして、安定した電源電圧を供給する目的や、電源電圧の変動を抑える目的で、電源ラインL1とGNDラインL2の間に接続される。
[0027]
第1~4電源バイパスコンデンサC1~C4および後述の第5~7電源バイパスコンデンサC5~C7は、フィルムタイプのコンデンサが用いられる。フィルムタイプのコンデンサとして、例えば、薄膜高分子積層コンデンサが適用され、誘電体の材質は、例えば、PET,PP,PPS,PC,PENやこれらの混合タイプの内から適宜選択可能である。
[0028]
振動検出素子13の電源ラインL1とGNDラインL2の間には、第1電源バイパスコンデンサC1が接続される。第1電源バイパスコンデンサC1により、振動検出素子13に安定した電源電圧が供給され、且つ、この供給される電源電圧の変動が抑えられる。振動検出素子13からのアナログ出力信号は、抵抗23を介して、演算増幅回路18における演算増幅器24の一方の入力端子に入力される。
[0029]
この演算増幅器24の電源ラインL1とGNDラインL2の間には、第2電源バイパスコンデンサC2が接続される。第2電源バイパスコンデンサC2により、演算増幅回路18にノイズがバイパスされた安定した電源電圧が供給され、且つ、この供給される電源電圧の変動が抑えられる。演算増幅器24からの出力信号は、コンデンサ25およびこのコンデンサ25に並列接続された抵抗等26を介して、他方の入力端子に入力される。演算増幅器24は、2つの入力端子への入力(反転入力、非反転入力)の差を増幅して出力する。
[0030]
増幅された出力信号は、直列接続された抵抗27,28を介して、フィルタ回路19における演算増幅器29の一方の入力端子に入力される。この演算増幅器29の電源ラインL1とGNDラインL2の間には、第3電源バイパスコンデンサC3が接続される。第3電源バイパスコンデンサC3により、フィルタ回路19にノイズがバイパスされた安定した電源電圧が供給され、且つ、この供給される電源電圧の変動が抑えられる。演算増幅器29からの出力信号は、他方の入力端子に入力されると共に、コンデンサ30を介して抵抗27,28間に帰還する。
[0031]
このフィルタ回路19により、軸受の固有振動に対応した所定の周波数帯域のみを抽出し、不要な周波数帯域を除去する。軸受の正常運転時は、転動体の回転通過に伴う軸受の固有振動が発生するが、軸受の転がり面に異常が発生した場合には、軸受回転数に応じた転動体の通過周期で振動のピークが重畳される。
[0032]
フィルタ回路19を通過した出力信号は、抵抗31を介してマイクロコンピュータ20に入力される。このマイクロコンピュータ20内部において、出力信号はA/D変換された後に記録手段に一時的に記録される。マイクロコンピュータ20に、過大な電圧が印加されないように基準電圧回路21が接続されている。この基準電圧回路21の電源ラインL1とGNDラインL2の間には、第4電源バイパスコンデンサC4が接続される。第1電源バイパスコンデンサC4により、基準電圧回路21にノイズがバイパスされた安定した電源電圧が供給され、且つ、この供給される電源電圧の変動が抑えられる。
[0033]
電源3には、所望の電圧を取り出すために電源回路32が接続される。
図5は、電源回路32の概略図である。電源ラインL1に、電源回路32におけるDC/DCコンバータ33の入力端子を接続することで、このDC/DCコンバータ33の出力端子から所望の電圧が取り出される。この電源回路32の電源ラインL1とGNDラインL2の間に、第5~7電源バイパスコンデンサC5,C6,C7が接続される。これら第5~7電源バイパスコンデンサC5,C6,C7により、電源回路32からノイズがバイパスされた安定した電源電圧で且つ変動が抑えられた電源電圧が出力される。
[0034]
送受信ユニットについて説明する。図1に示すように、振動測定ユニット1に一時的に記録されたデータは、ケーブル22を介して、送受信ユニット2に送信される。この送受信ユニット2は、例えば、鉄道車両のボディー34に固定される。送受信ユニット2は、例えば、受信したデータを、定められた周波数からなる電磁波のセンサ信号にしてアンテナ2aにより解析装置に送信する。
[0035]
これに代えて、外部の測定開始指令装置から測定開始指令信号を送受信ユニット2に無線送信し、測定開始指令信号を受信した送受信ユニット2からケーブル22を介して振動測定ユニット1に測定開始指令信号を送信することにより、振動測定ユニット1で軸箱内の軸受の振動を測定し、内部のメモリや記録メディアに記録しても良い。この場合、振動測定ユニット1から記録メディアを取り出して解析装置にて解析を行う。
[0036]
さらに、これらに代えて、振動測定ユニット1の内部のメモリに一時的に記録されたデータを、ケーブル22を介して送受信ユニット2に送信し、この送受信ユニット2がこのデータを定められた周波数からなる電磁波のセンサ信号に変換して、アンテナ2aにより解析装置に送信しても良い。
[0037]
解析装置について説明する。解析装置は、例えば、鉄道車両の運転室内に設けられ、送受信ユニット2から送信される周波数に対応した周波数を受信する。受信したセンサ信号は、異常判定部で周波数解析により軸受の異常判定に供される。異常判定部は、例えば、転がり軸受の回転数とセンサ信号とから、転がり軸受の異常に起因する振動周波数を特定し、この振動周波数により軸受に異常があるか否かを判定する。転がり軸受の回転数は、鉄道車両の駆動源から演算により求めても良いし、転がり軸受の回転数を検出する回転検出手段を設けても良い。
[0038]
以上説明した鉄道車両用軸受異常検知装置によると、鉄道車両の走行時に軸箱5の転がり軸受6が回転すると、転動体の回転通過に伴い軸受の固有振動が発生する。軸受6の転がり面に異常が発生すると、この転がり面の異常に起因する振動が顕著となり、転動体の通過周期でピークが発生する。これらの運転状態を検出してマイクロコンピュータ20内部の記録手段に記録し、外部の解析装置にて周波数解析を行う。この解析結果により、軸受6の異常判定を行う。
[0039]
電源ラインL1とGNDラインL2の間に接続される第1~7電源バイパスコンデンサC1~C7は、電源3に重畳するノイズをバイパスして、電源3から電圧印加対象に安定した電圧を供給するうえ、電源電圧の変動を抑える。第1~7電源バイパスコンデンサC1~C7に、フィルムタイプのコンデンサを用いることにより、第1~7電源バイパスコンデンサC1~C7に衝撃が作用しても、コンデンサ表面でその衝撃等を緩和、吸収することができる。これにより、第1~7電源バイパスコンデンサC1~C7にクラックが生じることを未然に防止し、マイグレーションの発生を抑えることができる。したがって、電源ラインL1とGNDラインL2がショートすることを防止し、過大な電流が流れることを防止することができる。
[0040]
処理回路14はプリント基板15に実装される。プリント基板15に反りなどによる外力が作用する場合においても、第1~4電源バイパスコンデンサC1~C4に、フィルムタイプのコンデンサを用いることにより、第1~4電源バイパスコンデンサC1~C4が弾性変形することで、第1~4電源バイパスコンデンサC1~C4にクラックが生じることを未然に防止できる。
[0041]
振動検出素子13は、永久磁石11のホルダ16に取り付けられているので、軸箱5における測定部位に対し、永久磁石11の吸引力を利用して振動検出素子13を着脱自在に設けることができる。永久磁石11を吸引固定させるボルト10として、例えば、市販品の六角ボルトを適用できるので、コスト低減を図れる。
[0042]
第2実施形態として、図6に示すように、永久磁石11およびそのホルダ16と、振動検出素子13との間に電気絶縁体35を介在させても良い。この場合、鉄道車両から台車4および軸箱5を通じて流れる電気ノイズから、振動検出素子13を保護することができる。
[0043]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、転がり軸受の運転状態を検出する検出素子として振動検出素子を適用したが、この振動検出素子に限定されるものではない。例えば、転がり軸受の温度を検出する温度検出素子または転がり軸受の回転速度を検出する速度検出素子を適用しても良い。
[0044]
前記温度検出素子を適用する場合、例えば、転がり軸受の回転数が上がる程、軸受温度が上昇するため、これらの関係を予め関係設定手段に記録しておく。解析装置は、例えば、計測された回転数に対し、前記関係設定手段を照らし合わせ、温度検出素子で検出され処理回路で処理された軸受温度が閾値よりも大きいとき、転がり軸受に異常が発生したと判定できる。
[0045]
検出素子として前記速度検出素子を適用する場合、解析装置は、例えば、鉄道車両の駆動源の回転数に対し、速度検出素子で検出され処理回路で処理された転がり軸受の回転速度が許容回転速度から外れているとき、転がり軸受に異常が発生したと判定できる。これら閾値、許容回転速度等は、例えば、実験やシミュレーションの結果から定められる。
[0046]
鉄道車両の発信装置より空中を飛ぶ電磁ノイズから検出素子を保護するために、ケース12の内面に導電性の高い金属等の膜を形成しても良い。この膜を流れるノイズは、軸箱5側にアースしても良い。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
符号の説明
[0047]
3 電源
4 台車
5 軸箱
6 転がり軸受
11 永久磁石
12 ケース
13 振動検出素子
14 処理回路
15 プリント基板
16 ホルダ
C1~C7 第1~第7電源バイパスコンデンサ
請求の範囲
[請求項1]
鉄道車両の台車に設けた軸箱に組み込まれる転がり軸受の異常を検知する鉄道車両用軸受異常検知装置であって、
前記転がり軸受の運転状態を検出する温度検出素子、振動検出素子、および速度検出素子の少なくともいずれか1つの検出素子と、
この検出素子で検出した物理量を出力信号に変換する処理回路と、
前記検出素子または前記処理回路に電圧を印加する電源と、
を備え、
前記検出素子および前記処理回路における電圧印加対象の電源ラインとGNDラインの間に、電源バイパスコンデンサを設け、この電源バイパスコンデンサが、フィルムタイプのコンデンサである鉄道車両用軸受異常検知装置。
[請求項2]
請求項1記載の鉄道車両用軸受異常検知装置において、前記処理回路は、プリント基板に実装されている鉄道車両用軸受異常検知装置。
[請求項3]
請求項1または請求項2に記載の鉄道車両用軸受異常検知装置において、前記処理回路を収納するケースを設け、前記検出素子は、前記ケースに取り付けられている鉄道車両用軸受異常検知装置。
[請求項4]
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の鉄道車両用軸受異常検知装置において、前記軸箱における測定部位に吸引固定される永久磁石と、この永久磁石を保持するホルダとを設け、
前記振動検出素子は、前記永久磁石または前記ホルダに取り付けられている鉄道車両用軸受異常検知装置。
[請求項5]
請求項4に記載の鉄道車両用軸受異常検知装置において、前記永久磁石および前記ホルダと前記振動検出素子との間に、電気的に絶縁する絶縁体が介在されている鉄道車両用軸受異常検知装置。
[請求項6]
請求項4または請求項5に記載の鉄道車両用軸受異常検知装置において、前記軸箱に磁性体からなるボルトが締結され、
このボルトの頭部に前記永久磁石が吸引固定されている鉄道車両用軸受異常検知装置。
図面