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1. (WO2015137074) 成分測定装置、方法及びプログラム
Document

明 細 書

発明の名称 成分測定装置、方法及びプログラム

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

発明の概要

0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : 成分測定装置、方法及びプログラム

技術分野

[0001]
 この発明は、体液又は呈色反応後の前記体液に含まれる色素成分の光学的特性に基づいて、前記体液中の被測定成分を測定する成分測定装置、方法及びプログラムに関する。

背景技術

[0002]
 従来から、生化学分野や医療分野において、被検体の体液中に含まれる目的成分(被測定成分ともいう)を測定する一手法として吸光光度法が知られている。被測定成分と異なる別の成分が体液中に多く含まれる場合、別の成分が光吸収・光散乱等の光学的現象を引き起こし、その結果、測定上の外乱因子として作用することがある。そこで、被測定成分の測定精度を維持すべく、この外乱因子の影響を除去する手法が種々提案されている。
[0003]
 特開平11-241993号公報では、測定にて得られた透過スペクトルを関数式に適合させることで、任意の波長領域における散乱スペクトルを求める方法が提案されている。そして、この散乱スペクトルを波長毎に差し引くことで、透過スペクトルの測定精度を向上する旨が記載されている。

発明の概要

[0004]
 ところで、特開平11-241993号公報の段落[0009]には、分光光度計を用いて試料の透過スペクトルを測定する旨が記載されている。しかし、同文献の図2及び図3に記載される程度のデータ数を得るためには、波長域が広い分光放射特性を有する光源と、単色光を得るための分光器を組み合わせて使用する必要がある。その結果、サイズの大型化及び製造コストの高騰を招くという問題があった。
[0005]
 本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、少ないデータ数であっても被測定成分の測定精度を十分に確保可能な成分測定装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
[0006]
 本発明に係る成分測定装置は、体液又は呈色反応後の前記体液に含まれる色素成分の光学的特性に基づいて前記体液中の被測定成分を測定する装置であって、前記色素成分とは異なる別の成分による光吸収率が相対的に大きい第1波長域に属する特定波長における吸光度を第1実測値として、前記光吸収率が相対的に小さい第2波長域に属する1つ又は複数の波長における吸光度を一群の第2実測値としてそれぞれ取得する吸光度取得部と、前記体液中での光散乱に起因する吸光度の変化量である散乱起因変化量の波長特性を示し、且つ、1つ以上の係数で特定される関数形を決定する関数形決定部と、前記第1実測値に関する式であって前記体液中での光吸収に起因する吸光度の変化量である吸収起因変化量を含む第1関係式、及び、前記第2実測値に関する式であって前記吸収起因変化量を含まない一群の第2関係式に基づいて、未知数としての前記1つ以上の係数を算出する係数算出部と、前記係数算出部により算出された前記1つ以上の係数を前記関数形決定部により決定された前記関数形に適用した関数を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、少なくとも前記光散乱の影響を除去する吸光度補正部を備える。
[0007]
 このように、光吸収率が相対的に大きい第1波長域にて吸収起因変化量を含む1つの関係式(第1関係式)、及び、光吸収率が相対的に小さい第2波長域にて吸収起因変化量を含まない残りの数の関係式(第2関係式)に基づいて、未知数としての1つ以上の係数を算出する係数算出部を設けたので、吸収起因変化量に関する自由度が最小値(すなわち、1)になり、この自由度が小さいほど、散乱起因変化量の波長特性を高精度に近似するためのデータ数が少なくて済む。これにより、少ないデータ数であっても光散乱の影響を適切に除去可能になり、被測定成分の測定精度を十分に確保できる。
[0008]
 また、前記吸光度補正部は、前記吸収起因変化量を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、前記光吸収の影響を更に除去することが好ましい。光散乱のみならず光吸収の影響も併せて考慮することで、被測定成分の測定精度が更に向上する。
[0009]
 また、前記係数算出部は、前記色素成分の濃度に相当する濃度相当吸光度、前記散乱起因変化量及び前記吸収起因変化量の加算値が前記第1実測値に等しいと表現する前記第1関係式、並びに、前記濃度相当吸光度及び前記散乱起因変化量の加算値が前記第2実測値に等しいと表現する一群の前記第2関係式に基づいて、前記1つ以上の係数を算出することが好ましい。
[0010]
 また、前記係数算出部は、濃度に関わらず前記色素成分の吸収スペクトルが相似関係である拘束条件を付与し、前記1つ以上の係数を算出することが好ましい。吸収スペクトルの相似性を導入することで、濃度相当吸光度に関する自由度が小さくなるのでデータ数が更に少なくて済む。
[0011]
 また、前記関数形決定部は、前記第2実測値の個数よりも少ない個数の前記係数で特定される前記関数形を決定することが好ましい。
[0012]
 また、前記関数形決定部は、前記関数形として、多項式関数、累乗関数及び指数関数のうちのいずれか1つに決定することが好ましい。散乱スペクトルは、波長の増加につれて単調に且つ滑らかに減少する傾向があるため、上記したいずれかの関数形に適合させることで精度よく近似できる。
[0013]
 また、前記吸光度取得部は、波長の間隔が互いに20nm以上である前記第1実測値及び一群の前記第2実測値を取得することが好ましい。波長の間隔を所定値以上に広げることで、散乱起因変化量が有意に異なるデータが得られ、その結果、散乱起因変化量の近似精度が向上する。
[0014]
 また、前記体液は血液であり、前記別の成分はヘモグロビンであり、前記吸光度取得部は、前記第1波長域を400~600nmとする前記第1実測値、前記第2波長域を600~1000nmとする一群の前記第2実測値を取得することが好ましい。
[0015]
 また、前記体液は血液であり、前記色素成分は前記血液中のグルコース濃度に応じて呈色する成分であることが好ましい。
[0016]
 本発明に係る成分測定方法は、体液又は呈色反応後の前記体液に含まれる色素成分の光学的特性に基づいて前記体液中の被測定成分を測定する方法であって、前記色素成分とは異なる別の成分による光吸収率が相対的に大きい第1波長域に属する特定波長における吸光度を第1実測値として、前記光吸収率が相対的に小さい第2波長域に属する1つ又は複数の波長における吸光度を一群の第2実測値としてそれぞれ取得する取得ステップと、前記体液中での光散乱に起因する吸光度の変化量である散乱起因変化量の波長特性を示し、且つ、1つ以上の係数で特定される関数形を決定する決定ステップと、前記第1実測値に関する式であって前記体液中での光吸収に起因する吸光度の変化量である吸収起因変化量を含む第1関係式、及び、前記第2実測値に関する式であって前記吸収起因変化量を含まない一群の第2関係式に基づいて、未知数としての前記1つ以上の係数を算出する算出ステップと、前記1つ以上の係数を前記関数形に適用した関数を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、少なくとも前記光散乱の影響を除去する補正ステップを成分測定装置に実行させる。
[0017]
 本発明に係る成分測定プログラムは、体液又は呈色反応後の前記体液に含まれる色素成分の光学的特性に基づいて前記体液中の被測定成分を測定するためのプログラムであって、前記色素成分とは異なる別の成分による光吸収率が相対的に大きい第1波長域に属する特定波長における吸光度を第1実測値として、前記光吸収率が相対的に小さい第2波長域に属する1つ又は複数の波長における吸光度を一群の第2実測値としてそれぞれ取得する取得ステップと、前記体液中での光散乱に起因する吸光度の変化量である散乱起因変化量の波長特性を示し、且つ、1つ以上の係数で特定される関数形を決定する決定ステップと、前記第1実測値に関する式であって前記体液中での光吸収に起因する吸光度の変化量である吸収起因変化量を含む第1関係式、及び、前記第2実測値に関する式であって前記吸収起因変化量を含まない一群の第2関係式に基づいて、未知数としての前記1つ以上の係数を算出する算出ステップと、前記1つ以上の係数を前記関数形に適用した関数を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、少なくとも前記光散乱の影響を除去する補正ステップを成分測定装置に実行させる。
[0018]
 本発明に係る成分測定装置、方法及びプログラムによれば、光吸収率が相対的に大きい第1波長域にて吸収起因変化量を含む1つの関係式(第1関係式)、及び、光吸収率が相対的に小さい第2波長域にて吸収起因変化量を含まない残りの数の関係式(第2関係式)に基づいて、未知数としての1つ以上の係数を算出するようにしたので、吸収起因変化量に関する自由度が最小値(すなわち、1)になり、この自由度が小さいほど、散乱起因変化量の波長特性を高精度に近似するためのデータ数が少なくて済む。これにより、少ないデータ数であっても光散乱の影響を適切に除去可能になり、被測定成分の測定精度を十分に確保できる。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 本発明の一実施形態に係る成分測定装置の斜視図である。
[図2] 図1に示す測定用チップの分解斜視図である。
[図3] 図1におけるIII-III線に沿った断面図である。
[図4] 図1に示す成分測定装置の電気ブロック図である。
[図5] 図4に示す演算部の機能ブロック図である。
[図6] 図6Aは、全血の吸光スペクトルを示すグラフである。図6Bは、エリオグラウシンの吸光スペクトルを示すグラフである。
[図7] 図1及び図4に示す成分測定装置の動作説明に供されるフローチャートである。
[図8] 第1波長域及び第2波長域に関する概略説明図である。
[図9] 散乱起因変化量の算出結果を示すグラフである。
[図10] ヘマトクリット値の検量線を示すグラフである。
[図11] 色素濃度の検量線を示すグラフである。
[図12] この成分測定方法による定量誤差を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下、本発明に係る成分測定方法について、それを実施する成分測定装置及び成分測定プログラムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
[0021]
[成分測定装置10の全体構成]
 図1は、この実施形態に係る成分測定装置10の斜視図である。成分測定装置10は、図示しない被検体の血液成分を測定可能に構成された血糖計である。
[0022]
 成分測定装置10は、例えば樹脂材料からなる筐体12と、測定用チップ14が装着されるチップ装着部16と、チップ装着部16の近傍上面に設けられたボタン群(より詳細には、電源ボタン18及び操作ボタン19)と、筐体12の上面中央に設けられた表示器20とを備える。
[0023]
 本図例において、筐体12は角が丸い直方形状に形成されているが、この形状に限られない。例えば、ユーザにとって片手で把持し易くするための形状を種々採用してもよい。測定用チップ14は、成分測定装置10の先端部(チップ装着部16)に装着した状態で使用される。
[0024]
[測定用チップ14の構成]
 図2は、図1に示す測定用チップ14の分解斜視図である。図3は、図1におけるIII-III線に沿った断面図である。
[0025]
 測定用チップ14は、ベース部材22と、ベース部材22に重なるカバー部材24と、ベース部材22及びカバー部材24の間に配置されたガス透過性フィルム26とを備える。ベース部材22及びカバー部材24により、測定用チップ14の成形品本体28が構成される。
[0026]
 図3に示すように、成形品本体28には、血液が流入可能な流入口30と、流入口30に連通する導入路32と、導入路32に連通すると共に血液が流れることが可能な血液通路34と、複数の突起36を有する血液展開部38と、測定用の光が照射される測定部40が形成されている。測定部40は、血液展開部38よりも下流側に配置されている。血液展開部38には、血液中の成分と反応することにより血中濃度に応じた色に呈色する発色試薬42が塗布されている。また、成形品本体28には、血液通路34と大気とを連通する連通路44が形成されている。
[0027]
 ベース部材22とカバー部材24とを組み合わせることにより、発色試薬42と血液とを反応させる所定容量のスペース46が成形品本体28の内部に形成される。スペース46の形状は任意であるが、スペース46の高さは、血液がスムーズに流れ、且つ広い範囲の血中濃度が測定でき、必要血液量が少なくて済むように、例えば20~100μmの範囲が好ましい。スペース46の大きさは、光学的測定が可能であって血液量が少なくて済むように、例えば0.2~50mm 2の範囲が好ましい。
[0028]
 図2に示すように、ベース部材22は、本図例では円盤状の部材であり、その下面には、成分測定装置10に着脱可能に装着するための複数(ここでは4つ)の装着突起50が設けられている。また、ベース部材22には、カバー部材24の下面に設けられた嵌合突起52に嵌合する複数(図示例では2つ)の嵌合穴54が形成されている。
[0029]
 図1~図3に示すように、カバー部材24の上面外方寄りの箇所には、カバー部材24から突出した先端先細り形状の採血ノズル56が設けられる。採血ノズル56の先端には流入口30が設けられる。また、図3に示すように、カバー部材24には、流入口30と血液通路34とを連通する導入路32が設けられる。すなわち、採血ノズル56の先端に血液を点着させると、血液が、流入口30から流入し、毛細管現象により、導入路32を介して血液通路34へと導かれる。
[0030]
 いわゆる比色式の成分測定装置10は、測定部40に向けて光を照射し、その透過光量(又は反射光量)を検出し、血中濃度に応じた発色の強度に相関する検出信号を得る。そして、成分測定装置10は、予め作成した検量線を参照することで被測定成分を測定(例えば、濃度を定量)する。
[0031]
[成分測定装置10の電気ブロック図]
 図4は、図1に示す成分測定装置10の電気ブロック図である。なお、本図の左方には、成分測定装置10の先端側(測定用チップ14を含む)における部分拡大断面図が示されている。チップ装着部16には、装着突起50に嵌合可能な装着穴58が設けられており、装着突起50と装着穴58との嵌合により、測定用チップ14が成分測定装置10に装着される。
[0032]
 成分測定装置10は、上述した電源ボタン18、操作ボタン19、表示器20の他、演算部60と、メモリ62と、電源回路63と、測定光学系64とを更に備える。
[0033]
 演算部60は、MPU(Micro-Processing Unit)又はCPU(Central Processing Unit)で構成されており、メモリ62等に格納されたプログラムを読み出し実行することで、各部の制御動作を実現可能である。メモリ62は、揮発性又は不揮発性である非一過性の記憶媒体で構成され、この成分測定方法を実行するために必要な各種データ(プログラムを含む)を読出し又は書込み可能である。電源回路63は、電源ボタン18の操作に応じて、演算部60を含む成分測定装置10内の各部に電力を供給し、又はその供給を停止する。
[0034]
 測定光学系64は、呈色後の血液に含まれる色素成分の光学的特性を取得可能な光学システムである。測定光学系64は、具体的には、発光部66(本図例では、4種類の光源67、68a、68b、68c)と、発光制御回路70と、受光部72(本図例では、1個の受光素子)と、受光制御回路74とを備える。
[0035]
 光源67、68a~68cは、分光放射特性が異なる光(例えば、可視光、赤外光)を放射する。光源67、68a~68cのピーク波長はそれぞれ、λ1、λ2a~λ2cである。複数種類の光源67、68a~68cとしては、LED(Light Emitting Diode)素子、有機EL(Electro-Luminescence)素子、無機EL素子、LD(Laser Diode)素子を含む種々の発光素子を適用することができる。
[0036]
 受光部72は、測定用チップ14(より詳細には、カバー部材24)からの反射光を受光する。受光部72としては、PD(Photo Diode)素子、フォトコンダクタ(光導電体)、フォトトランジスタ(Photo Transistor、PT)を含む種々の光電変換素子を適用することができる。
[0037]
 発光制御回路70は、各光源67、68a~68cに駆動電力信号を供給することで、光源67、68a~68cを点灯させ、又は消灯させる。受光制御回路74は、受光部72から出力されたアナログ信号に対して、対数変換及びA/D変換を施すことでデジタル信号(以下、検出信号という)を取得する。
[0038]
[演算部60の機能ブロック図]
 図5は、図4に示す演算部60の機能ブロック図である。演算部60は、測定光学系64による測定動作を指示する測定指示部76、及び、各種データを用いて色素成分の濃度を定量する濃度定量部77の各機能を実現する。
[0039]
 濃度定量部77は、定量処理に必要な各種データを取得するデータ取得部78(吸光度取得部)と、後述する散乱起因変化量S(λ)の関数形を決定する関数形決定部80と、この関数形を特定する1つ以上の係数(例えば、p、qの2つ)を算出する係数算出部82と、光散乱の影響を除去した吸光度{すなわち、濃度相当吸光度D(λ)}を推定する吸光度補正部84とを有する。
[0040]
 本図例では、メモリ62には、実測吸光度A(λ1)に相関する第1実測値データ86と、実測吸光度A(λ2a)、A(λ2b)、A(λ2c)に相関する一群の第2実測値データ88と、吸光度と各種物理量(例えば、ヘマトクリット値、濃度)の関係を示す検量線データ90とが格納されている。
[0041]
[測定時の問題点]
 以上のように、この実施形態に係る成分測定装置10は構成される。成分測定装置10の動作説明に先立ち、全血を用いて血液成分を測定する際の問題点について言及する。ここで、「全血」とは、成分毎に分離されておらず、すべての成分を含む血液を意味する。
[0042]
 以下、全血中に含まれる特定成分(例えば、グルコース)と発色試薬42との反応により色素成分が生成されることを想定し、エリオグラウシンを添加した全血の解析例について詳細に説明する。
[0043]
 図6Aは全血の吸光スペクトルを示すグラフであり、図6Bはエリオグラウシンの吸光スペクトルを示すグラフである。グラフの横軸は波長(λ;単位:nm)であり、グラフの縦軸は吸光度(単位:なし)である。
[0044]
 図6Aにおける実線で示すグラフは、エリオグラウシンの濃度(「色素濃度」ともいう)が0[mg/dl]である全血の吸光スペクトルに相当する。このグラフは、波長が長くなるにつれて吸光度が次第に小さくなるトレンド曲線を有し、且つ、λ=540nm、585nmを中心とする2つのピークを有する。この2つのピークは、赤血球中の一成分であるヘモグロビンの吸光特性に起因する。
[0045]
 一方、破線で示すグラフは、色素濃度が220[mg/dl]である全血の吸光スペクトルに相当する。このグラフは、実線と比べて、可視光の波長範囲にわたって吸光度が増加しており、且つ、λ=630nmを中心とする別のピークが存在する。すなわち、このピークは、エリオグラウシンの吸光特性に起因する。
[0046]
 図6Bにおける各グラフは、色素濃度がそれぞれ異なる全血の吸光スペクトルを示す。本図から理解されるように、各吸光スペクトルは、色素濃度に関わらず相似関係にあると言える。
[0047]
 一般的に言えば、測定対象である色素成分(具体的には、エリオグラウシン)以外の成分が試料の中に含まれるとき、光学的現象の発生によって色素成分の測定結果に影響を与えることがある。例えば、[1]血液中の成分(具体的には、血球)による「光散乱」、[2]色素成分とは別の成分(具体的には、ヘモグロビン)による「光吸収」が発生することで、真の値よりも大きい吸光度が測定される傾向がある。
[0048]
 そこで、上記した光学的現象に関して、次の(1)式に基づく数理モデルで記述する。
  A(λ)=D(λ)+S(λ)+H(λ) ‥‥(1)
[0049]
 ここで、A(λ)は、実際の測定により得られた吸光度(未加工データ)であり、以下「実測吸光度」と称する場合がある。S(λ)は、血液中での光散乱に起因する吸光度の変化量であり、以下「散乱起因変化量」と称する場合がある。D(λ)は、色素成分の濃度に相当する吸光度であり、以下「濃度相当吸光度」と称する場合がある。H(λ)は、別の成分の光吸収に起因する吸光度の変化量であり、以下「吸収起因変化量」と称する場合がある。
[0050]
 この(1)式を変形すると、濃度相当吸光度D(λ)は、次の(2)式で求められる。
  D(λ)=A(λ)-S(λ)-H(λ) ‥‥(2)
[0051]
 ところが、未知である散乱起因変化量S(λ)、吸収起因変化量H(λ)を推定するためには、異なる波長λにおける実測吸光度A(λ)を取得し、複数個の(1)式を連立する必要がある。例えば、多数の実測吸光度A(λ)を得るためには、波長域が広い分光放射特性を有する光源と、単色光を得るための分光器を組み合わせて使用する必要がある。その結果、成分測定装置10のサイズが大きくなり、製造コストが高騰するという問題が生じる。
[0052]
 また、上記した問題を根本的に解決するため、試料に対して前処理を行うことも考えられる。「前処理」とは、測定上不要である成分を試料から除去する各種処理であり、例えば、遠心分離処理、界面活性剤の添加処理が含まれる。ところが、前処理を施すことで色素成分が変質し、その性状又は濃度が変化する懸念がある。そもそも、前処理を行うための設備及び時間が別途必要であるため、投資上又は作業上の負担が大きい。
[0053]
 そこで、上記した装置構成又は前処理を採用することなく、少ないデータ数であっても被測定成分の測定精度を十分に確保可能な手法を提案する。
[0054]
[成分測定装置10の動作]
 続いて、成分測定装置10の動作について、図7のフローチャート及び図5の機能ブロック図を主に参照しながら説明する。
[0055]
 ステップS1において、測定光学系64は、第1波長域R1に属する特定波長(波長λ1)における吸光度(以下、第1実測値)を測定する。ここで、第1波長域R1とは、色素成分とは別の成分(具体的には、ヘモグロビン)による光吸収率が相対的に大きい波長領域を意味する。
[0056]
 図8は、第1波長域R1及び第2波長域R2に関する概略説明図である。グラフの横軸は波長であり、グラフの縦軸は吸光度である。ここでは、酸化ヘモグロビンの吸収スペクトルが表記されている。
[0057]
 本図から理解されるように、この吸収スペクトルは、λ=420nm、540nm、585nmを中心とする3つのピークを有し、λ>600nmの波長領域ではきわめて小さい値になる。ここで、λ=600nmを境界として、短波長側を第1波長域R1、長波長側を第2波長域R2と定義するとき、第1波長域R1における光吸収率は、第2波長域R2における光吸収率よりも相対的に大きくなっている。
[0058]
 例えば、光源67はLED素子で構成され、この分光放射特性はλ1=540nmを中心とする鋭いピークを有する場合を想定する。ここで、λ1は、ヘモグロビンの吸収スペクトル(図8参照)におけるピーク波長の1つに相当する点に留意する。
[0059]
 測定に先立ち、測定指示部76は、1番目の測定を開始する旨を測定光学系64(より詳細には、発光制御回路70)に指示する。この指示を受けて、測定光学系64は、光源67からの放射光を測定用チップ14に投光して得た、反射光の光量を検出する。これにより、測定光学系64は、実測吸光度A(λ1)に相関する検出信号を得る。
[0060]
 演算部60は、この検出信号を第1実測値データ86としてメモリ62に一時的に記憶させる。その後、データ取得部78は、特定波長(λ1)と紐付けた状態下にて、メモリ62から第1実測値データ86を読み出して取得する。
[0061]
 ステップS2において、測定光学系64は、第2波長域R2に属する1つ又は複数の波長における吸光度(以下、一群の第2実測値)をそれぞれ測定する。ここで、第2波長域R2とは、別の成分(ヘモグロビン)による光吸収率が相対的に小さい波長領域を意味する。
[0062]
 例えば、光源68a~68cはいずれもLED素子で構成され、これらの分光放射特性は、先頭から順に、λ2a=610nm、λ2b=630nm、λ2c=650nmを中心とする鋭いピークを有する場合を想定する。ここで、λ2bは、エリオグラウシンの吸収スペクトル(図6B参照)におけるピーク波長に相当する点に留意する。
[0063]
 測定指示部76は、光源68a~68cのオン・オフ状態を順次切り替えることで、実測吸光度A(λ2a)、A(λ2b)、A(λ2c)に相関する検出信号をそれぞれ得る。演算部60は、これらの検出信号を第2実測値データ88としてメモリ62に一時的に記憶させる。その後、データ取得部78は、複数の波長(λ2a~λ2c)と紐付けた状態下にて、メモリ62から第2実測値データ88を読み出して取得する。
[0064]
 なお、第1波長域R1及び第2波長域R2は、体液及び被測定成分の種類に応じて適切に設定される。例えば、血液中のヘモグロビンの場合、データ取得部78は、第1波長域R1を400~600nmとする第1実測値データ86、第2波長域R2を600~1000nmとする第2実測値データ88を取得する。
[0065]
 また、データ取得部78は、波長の間隔が互いに20nm以上である第1実測値データ86及び第2実測値データ88を取得することが好ましい。波長の間隔を所定値以上に広げることで、散乱起因変化量S(λ)が有意に異なるデータが得られ、その結果、散乱起因変化量S(λ)の近似精度が向上する。
[0066]
 ステップS3において、関数形決定部80は、少なくとも1つの係数で特定される散乱起因変化量S(λ)の関数形を決定する。具体的には、関数形決定部80は、第2実測値の個数よりも少ない数の係数で特定される関数形を決定する。後述する関係式と自由度の関係から、各係数が不定値になることを回避できるからである。
[0067]
 関数形決定部80は、任意の関数形を採用してもよく、好ましくは、多項式関数、累乗関数及び指数関数のうちのいずれか1つを選択する。なぜならば、散乱スペクトルは、波長の増加につれて単調に且つ滑らかに減少する傾向があるため、上記したいずれかの関数形に適合させることで精度よく近似できるからである。
[0068]
 この実施形態では、2つの係数(p,q)で特定される関数形を導入する。例えば、多項式関数、累乗関数及び指数関数である場合、これらの関数形はそれぞれ、次の(3)式~(5)式で表現される。
  S(λ)=p・λ+q      ‥‥(3)
  S(λ)=p・λ^q      ‥‥(4)
  S(λ)=p・exp(q・λ) ‥‥(5)
[0069]
 なお、関数形決定部80は、固定された関数形を決定してもよいし、測定条件に応じて異なる関数形(係数の個数を含む)を決定してもよい。この測定条件として、例えば、体液、被測定成分、又は測定用チップ14の種類が挙げられるが、これらに限られない。
[0070]
 ステップS4において、係数算出部82は、ステップS1及びS2で取得された実測吸光度A(λ)を用いて、ステップS3で決定された関数形を特定する1つ以上の係数を算出する。ここで、係数算出部82は、波長の属性によって分類された2種類の関係式を連立し、適した係数を決定する。ここでは、(3)式に示す関数形(λの1次関数)にて決定された場合を例に説明する。
[0071]
 第1波長域R1における関係式(以下、第1関係式)は、濃度相当吸光度D(λ)、散乱起因変化量S(λ)及び吸収起因変化量H(λ)の加算値が実測吸光度A(λ)に等しいと表現した式に相当する。詳細には、次の(6)式で表現される。
  A(λ1)=D(λ1)+(p・λ1+q)+H(λ1) ‥‥(6)
[0072]
 また、第2波長域R2における関係式(以下、第2関係式)は、濃度相当吸光度D(λ)及び散乱起因変化量S(λ)の加算値が実測吸光度A(λ)に等しいと表現した式に相当する。詳細には、次の(7)式~(9)式で表現される。
  A(λ2a)=D(λ2a)+(p・λ2a+q) ‥‥(7)
  A(λ2b)=D(λ2b)+(p・λ2b+q) ‥‥(8)
  A(λ2c)=D(λ2c)+(p・λ2c+q) ‥‥(9)
[0073]
 また、図6Bに示したような、吸収スペクトルの相似性に着目する。具体的には、任意に定めた2つの波長間において、濃度に関わらず色素成分の吸光度の比が常に一定であると仮定する。この場合、次の(10)式~(13)式が成り立つ。
  C1=D(λ1)/D(λ2b)     ‥‥(10)
  C2a=D(λ2a)/D(λ2b)   ‥‥(11)
  C2b=D(λ2b)/D(λ2b)=1 ‥‥(12)
  C2c=D(λ2c)/D(λ2b)   ‥‥(13)
[0074]
 ここで、C1、C2a~C2bは、実験的に予め求められた既知の値である。なお、C2b=1としたのは、濃度相当吸光度D(λ2b)を最終的に求めるからである。図6Bの例によれば、C1=0.0854、C2a=0.7968、C2c=0.6479と算出される。
[0075]
 このように、係数算出部82は、色素成分の濃度に関わらず吸収スペクトルが相似関係である拘束条件を付与してもよい。吸収スペクトルの相似性を導入することで、濃度相当吸光度D(λ)に関する自由度が小さくなるのでデータ数が更に少なくて済む。
[0076]
 (10)式~(13)式を(6)式~(9)式にそれぞれ代入することで、4つの未知数p、q、D(λ2b)、H(λ1)に関する連立線形方程式、すなわち、次の(14)式~(17)式が導出される。
  A(λ1)=C1・D(λ2b)+(p・λ1+q)+H(λ1)  ‥‥(14)
  A(λ2a)=C2a・D(λ2b)+(p・λ2a+q)     ‥‥(15)
  A(λ2b)=C2b・D(λ2b)+(p・λ2b+q)     ‥‥(16)
  A(λ2c)=C2c・D(λ2b)+(p・λ2c+q)     ‥‥(17)
[0077]
 ここで、関係式の個数と未知数の個数(自由度)が一致するので、連立線形方程式を解くことで、p、q、D(λ2b)、H(λ1)の各値は一意に定まる。なお、散乱起因変化量S(λ)の関数形が(4)式又は(5)式であるとき、上記した手順に沿って同様に算出できる。これらの場合、関係式が非線形関数を含むため、連立非線形方程式を解く必要がある点に留意する。
[0078]
 図9は、散乱起因変化量S(λ)の算出結果を示すグラフである。グラフの横軸は波長(λ)であり、グラフの縦軸は散乱起因変化量S(λ)である。実線、破線及び一点鎖線はそれぞれ、「1次関数」、「累乗関数」及び「指数関数」による算出結果を示す。
[0079]
 ここでは、共通する2点、具体的には、λ1=540nm、λ2b=630nmを通るように係数(p,q)が決定されている。本図から理解されるように、λ1<λ<λ2aの波長範囲では、どの関数形を用いても差異は殆ど生じない。ところが、この波長範囲を離れるにつれて、選択した関数形に応じて算出結果が有意に異なってくる。このように、実際の散乱起因変化量S(λ)により近い関数形を選択することが望ましい。
[0080]
 ステップS5において、濃度定量部77は、ステップS4で算出されたp、q、D(λ2b)、H(λ1)を用いて、被測定成分であるエリオグラウシンの濃度を定量する。この定量処理に先立ち、吸光度補正部84は、濃度相当吸光度D(λ2b)を補正することで、血液中での光散乱及び/又は光吸収の影響を除去する。
[0081]
 先ず、特定波長λ1におけるヘマトクリット値Hct(単位:%)を算出する。この「ヘマトクリット値」は、血液中に占める赤血球の容積の割合を意味する。ヘマトクリット値Hctは、特定波長λ1における検量線f(・)を用いて、次の(18)式で算出される。
  Hct=f(H(λ1)) ‥‥(18)
[0082]
 ここで、検量線f(・)は、吸収起因変化量H(λ)をヘマトクリット値Hctに換算するための特性関数である。この検量線f(・)と、後述する検量線g(・)は、テーブル形式の検量線データ90(図5参照)として、メモリ62に予め記憶されている。
[0083]
 光散乱及び光吸収の影響を除去した吸光度(以下、補正吸光度Dc)は、(12)式、(16)式及び(18)式を用いて、次の(19)式で与えられる。
  Dc=(A(λ2b)-p・λ2b-q)/(1-Hct/100) ‥‥(19)
[0084]
 最後に、被測定成分の濃度(以下、定量濃度Dm)は、波長λ2bにおける検量線g(・)を用いて、次の(20)式で算出される。
  Dm=g(Dc) ‥‥(20)
[0085]
 ここで、検量線g(・)は、補正吸光度Dcを定量濃度Dmに換算するための特性関数である。これにより、定量濃度Dmが得られる(ステップS5)。
[0086]
 このように、吸光度補正部84は、吸収起因変化量H(λ)を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、光吸収の影響を更に除去することができる。光散乱のみならず光吸収の影響も併せて考慮することで、被測定成分の測定精度が更に向上する。
[0087]
 ステップS6において、ステップS5で定量された濃度情報を表示器20に表示させる。表示処理に先立ち、演算部60は、表示器20に表示させる可視情報を決定した後、その可視情報に応じた表示制御信号を表示器20側に供給する。なお、可視情報として、濃度の他、例えば、トレンド、測定の成否、測定時刻、診断結果等が挙げられる。
[0088]
 以上のようにして、成分測定装置10は、血液中の成分の測定動作を終了する。その後、測定用チップ14をチップ装着部16から取り外し、電源ボタン18をオフにする。
[0089]
[検証実験]
 続いて、この成分測定方法による効果を検証する実験の手順及び結果について説明する。
[0090]
<1.試料の作製>
 先ず、被検体から採血した全血に対して遠心分離処理を施し、血漿成分を取得した。この血漿成分にエリオグラウシン(シグマアルドリッチ社製)を添加することで色素成分の濃度を調整した。そして、色素濃度が異なる各溶液に血球成分を添加し、色素濃度及び/又はヘマトクリット値がそれぞれ異なる複数の試料を得た。色素濃度はそれぞれ、(1)20mg/dl、(2)70mg/dl、(3)130mg/dl、(4)220mg/dlを設計値とした。また、ヘマトクリット値はそれぞれ、(1)25%、(2)40%、(3)60%を設計値とした。
[0091]
<2.ヘマトクリット値の検量線>
 複数の試料をヘマトクリット毛細管(VC-H075P;テルモ株式会社製)に分取した後、遠心分離処理を施すことで、ヘマトクリット値Hct(%)の実測値をそれぞれ得た。また、市販の紫外可視分光光度計(V-530;日本分光株式会社製)を用いて、それぞれ溶血させた試料における吸光スペクトルを測定し、波長λ1=540nmにおける吸光度をそれぞれ得た。そして、横軸をヘマトクリット値とし、縦軸を吸光度とするプロットを試料毎に作成した。
[0092]
 図10は、ヘマトクリット値Hctの検量線を示すグラフである。実線で示すグラフは、被検体毎、試料毎のプロットにおける回帰直線に相当する。本図に示すように、含有するエリオグラウシンの濃度によって各プロットのばらつきが存在するものの、全体的に判断すれば各プロットのばらつきが比較的少なく、検量線のリニアリティ(正相関)が高いことを確認した。
[0093]
<3.検証A(色素濃度の検量線)>
 第1の検証実験として、波長λ2b=630nmにおける色素濃度の検量線を求めた。具体的には、横軸を色素濃度とし、縦軸を濃度相当吸光度とするプロットを試料毎に作成した。ここで、「比較例」として実測吸光度Aを用いると共に、「実施例」として、散乱起因変化量S(λ)を1次関数にて算出して得た補正吸光度Dcを用いた。
[0094]
 図11は、色素濃度の検量線を示すグラフである。塗り潰しがあるプロットは比較例(以下「補正無し」)であり、塗り潰しがないプロットは実施例(以下「1次関数補正」)である。また、実線で示すグラフは、被検体毎、試料毎のプロットにおける回帰直線に相当する。
[0095]
 本図から理解されるように、「補正無し」における各プロットのばらつきが(特に低濃度域にて)多いと共に、検量線のリニアリティが低くなっている。一方、「1次関数補正」における各プロットのばらつきは総じて少なく、検量線のリニアリティが高くなっている。
[0096]
<4.検証B(定量精度)>
 第2の検証実験として、色素濃度の定量精度を求めた。図10及び図11に示す検量線とは別に、1名の被検体から採血した全血を用いた。この全血に関し、エリオグラウシンの濃度が220mg/dlであり、ヘマトクリット値35%であった。そして、上記した手順に従って、この全血から複数の試料(ヘマトクリット値は20~40%)を作製・測定した。
[0097]
 ここで、(18)式における検量線f(・)として図10に示す特性曲線を用いた。また、(20)式における検量線g(・)として図11に示す特性曲線(「1次関数補正」)を用いた。
[0098]
 図12は、この成分測定方法による定量誤差を示すグラフである。グラフの横軸は濃度(単位:mg/dl)であり、グラフの縦軸は相対誤差(単位:%)である。この「相対誤差」は、100×{(実際濃度)-(定量濃度)}/(実際濃度)の式に従って算出される値である。本図から理解されるように、すべての相対誤差が5%以内に収まっており、この方法による定量精度が高いことが示された。
[0099]
[応用例]
 上記では、色素成分としてエリオグラウシンを中心に説明したが、これに限られず、血液中のグルコース濃度に応じて呈色反応する色素成分であってもよい。この色素成分を用いることで、全血血漿中グルコースの濃度を測定できる。発色試薬42の組成として、例えば、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ペルオキシダーゼ(POD)、4-アミノアンチピリン(4-AA)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)の組み合わせが挙げられる。
[0100]
 この組成によれば、全血血漿中グルコースはGODの作用でその濃度に応じた過酸化水素を生成する。そしてPODの共存下で生成した過酸化水素の量に応じた4-AAとMAOSが縮合してλ=630nmに極大吸収をもつ色素となる。この縮合体の吸光度を測定することで、グルコースの濃度を測定・定量することが可能となる。
[0101]
[この実施形態による効果]
 以上のように、成分測定装置10は、呈色反応後の体液に含まれる色素成分(例えば、エリオグラウシン)の光学的特性に基づいて体液中の被測定成分(例えば、血漿成分)を測定する装置である。
[0102]
 そして、成分測定装置10は、色素成分とは異なる別の成分(例えば、ヘモグロビン)による光吸収率が相対的に大きい第1波長域R1に属する特定波長(λ1)における吸光度(A)を第1実測値として、光吸収率が相対的に小さい第2波長域R2に属する1つ又は複数の波長(λ2a~λ2c)における吸光度(A)を一群の第2実測値としてそれぞれ取得するデータ取得部78と、散乱起因変化量(S)の波長特性を示し、且つ、1つ以上の係数(p,q)で特定される関数形を決定する関数形決定部80と、吸収起因変化量(H)を含む第1関係式及び吸収起因変化量(H)を含まない一群の第2関係式に基づいて、未知数としての1つ以上の係数(p,q)を算出する係数算出部82と、1つ以上の係数(p,q)を上記の関数形に適用した関数を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、少なくとも光散乱の影響を除去する吸光度補正部84を備える。
[0103]
 このように構成することで、吸収起因変化量(H)に関する自由度が最小値(すなわち、1)になり、この自由度が小さいほど、散乱起因変化量(S)の波長特性を高精度に近似するためのデータ数が少なくて済む。これにより、少ないデータ数(例えば、4点)であっても光散乱の影響を適切に除去可能になり、被測定成分の測定精度を十分に確保できる。
[0104]
[補足]
 なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
[0105]
 上記の実施形態では、試料として、血液を例に挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば、リンパ液、髄液、唾液を含む体液であってもよい。また、体液の種類に応じた任意の成分に適用可能であり、測定結果として成分の量のみならず、これとは別に又はこれと併せて成分の性質を得るようにしてもよい。
[0106]
 上記の実施形態では、色素成分として、発色試薬42を添加して発現させた成分を例に挙げて説明したが、発色試薬42を添加しない体液(すなわち、原液)の色素成分を測定してもよい。
[0107]
 上記の実施形態では、発光部66として、複数種類の光源67、68a~68cを例に挙げて説明したが、単一の光源と、該光源の前方に配置された複数種類の光学フィルタ(バンドパス型)を組み合わせて構成してもよい。

請求の範囲

[請求項1]
 体液又は呈色反応後の前記体液に含まれる色素成分の光学的特性に基づいて前記体液中の被測定成分を測定する成分測定装置(10)であって、
 前記色素成分とは異なる別の成分による光吸収率が相対的に大きい第1波長域(R1)に属する特定波長(λ1)における吸光度(A)を第1実測値として、前記光吸収率が相対的に小さい第2波長域(R2)に属する1つ又は複数の波長(λ2a~λ2c)における吸光度(A)を一群の第2実測値としてそれぞれ取得する吸光度取得部(78)と、
 前記体液中での光散乱に起因する吸光度の変化量である散乱起因変化量(S)の波長特性を示し、且つ、1つ以上の係数(p,q)で特定される関数形を決定する関数形決定部(80)と、
 前記第1実測値に関する式であって前記体液中での光吸収に起因する吸光度の変化量である吸収起因変化量(H)を含む第1関係式、及び、前記第2実測値に関する式であって前記吸収起因変化量(H)を含まない一群の第2関係式に基づいて、未知数としての前記1つ以上の係数(p,q)を算出する係数算出部(82)と、
 前記係数算出部(82)により算出された前記1つ以上の係数(p,q)を前記関数形決定部(80)により決定された前記関数形に適用した関数を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、少なくとも前記光散乱の影響を除去する吸光度補正部(84)と
 を備えることを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項2]
 請求項1記載の成分測定装置(10)において、
 前記吸光度補正部(84)は、前記吸収起因変化量(H)を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、前記光吸収の影響を更に除去することを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項3]
 請求項1記載の成分測定装置(10)において、
 前記係数算出部(82)は、前記色素成分の濃度に相当する濃度相当吸光度(D)、前記散乱起因変化量(S)及び前記吸収起因変化量(H)の加算値が前記第1実測値に等しいと表現する前記第1関係式、並びに、前記濃度相当吸光度(D)及び前記散乱起因変化量(S)の加算値が前記第2実測値に等しいと表現する一群の前記第2関係式に基づいて、前記1つ以上の係数(p,q)を算出することを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項4]
 請求項3記載の成分測定装置(10)において、
 前記係数算出部(82)は、濃度に関わらず前記色素成分の吸収スペクトルが相似関係である拘束条件を付与し、前記1つ以上の係数(p,q)を算出することを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項5]
 請求項4記載の成分測定装置(10)において、
 前記関数形決定部(80)は、前記第2実測値の個数よりも少ない個数の前記係数(p,q)で特定される前記関数形を決定することを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項6]
 請求項1記載の成分測定装置(10)において、
 前記関数形決定部(80)は、前記関数形として、多項式関数、累乗関数及び指数関数のうちのいずれか1つに決定することを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項7]
 請求項1記載の成分測定装置(10)において、
 前記吸光度取得部(78)は、波長の間隔が互いに20nm以上である前記第1実測値及び一群の前記第2実測値を取得することを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項8]
 請求項1記載の成分測定装置(10)において、
 前記体液は血液であり、
 前記別の成分はヘモグロビンであり、
 前記吸光度取得部(78)は、前記第1波長域(R1)を400~600nmとする前記第1実測値、前記第2波長域(R2)を600~1000nmとする一群の前記第2実測値を取得することを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項9]
 請求項1記載の成分測定装置(10)において、
 前記体液は血液であり、
 前記色素成分は前記血液中のグルコース濃度に応じて呈色する成分である
 ことを特徴とする成分測定装置(10)。
[請求項10]
 体液又は呈色反応後の前記体液に含まれる色素成分の光学的特性に基づいて前記体液中の被測定成分を測定する成分測定方法であって、
 前記色素成分とは異なる別の成分による光吸収率が相対的に大きい第1波長域(R1)に属する特定波長(λ1)における吸光度(A)を第1実測値として、前記光吸収率が相対的に小さい第2波長域(R2)に属する1つ又は複数の波長(λ2a~λ2c)における吸光度(A)を一群の第2実測値としてそれぞれ取得する取得ステップ(S1、S2)と、
 前記体液中での光散乱に起因する吸光度の変化量である散乱起因変化量(S)の波長特性を示し、且つ、1つ以上の係数(p,q)で特定される関数形を決定する決定ステップ(S3)と、
 前記第1実測値に関する式であって前記体液中での光吸収に起因する吸光度の変化量である吸収起因変化量(H)を含む第1関係式、及び、前記第2実測値に関する式であって前記吸収起因変化量(H)を含まない一群の第2関係式に基づいて、未知数としての前記1つ以上の係数(p,q)を算出する算出ステップ(S4)と、
 前記1つ以上の係数(p,q)を前記関数形に適用した関数を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、少なくとも前記光散乱の影響を除去する補正ステップ(S5)と
 を成分測定装置(10)に実行させることを特徴とする成分測定方法。
[請求項11]
 体液又は呈色反応後の前記体液に含まれる色素成分の光学的特性に基づいて前記体液中の被測定成分を測定するための成分測定プログラムであって、
 前記色素成分とは異なる別の成分による光吸収率が相対的に大きい第1波長域(R1)に属する特定波長(λ1)における吸光度(A)を第1実測値として、前記光吸収率が相対的に小さい第2波長域(R2)に属する1つ又は複数の波長(λ2a~λ2c)における吸光度(A)を一群の第2実測値としてそれぞれ取得する取得ステップ(S1、S2)と、
 前記体液中での光散乱に起因する吸光度の変化量である散乱起因変化量(S)の波長特性を示し、且つ、1つ以上の係数(p,q)で特定される関数形を決定する決定ステップ(S3)と、
 前記第1実測値に関する式であって前記体液中での光吸収に起因する吸光度の変化量である吸収起因変化量(H)を含む第1関係式、及び、前記第2実測値に関する式であって前記吸収起因変化量(H)を含まない一群の第2関係式に基づいて、未知数としての前記1つ以上の係数(p,q)を算出する算出ステップ(S4)と、
 前記1つ以上の係数(p,q)を前記関数形に適用した関数を用いて、任意の波長にて測定された吸光度を補正することで、少なくとも前記光散乱の影響を除去する補正ステップ(S5)と
 を成分測定装置(10)に実行させることを特徴とする成分測定プログラム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]