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1. (WO2015136953) ペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 ペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

非特許文献

0011  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022  

発明の効果

0023  

図面の簡単な説明

0024  

発明を実施するための形態

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041  

実施例 1

0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051  

実施例 2

0052   0053   0054   0055  

実施例 3

0056   0057  

実施例 4

0058   0059  

産業上の利用可能性

0060  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : ペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法

技術分野

[0001]
本発明は、ペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
結晶中に酸化物イオン(O 2-)と窒化物イオン(N 3-)が共存する金属酸窒化物(「金属オキシ窒化物」ともいう)は、光触媒、顔料、蛍光体、巨大磁歪材料、誘電体等への応用が図られている(非特許文献1) 。 
[0003]
金属酸窒化物は、一般に、原料となる酸化物の混合粉末をアンモニア気流下800℃以上の高温で数日間の熱処理を行うことにより作製される。この手法により、ATaO 2N (A は、Ca,Sr,又はBa)やPrTaON 2などの酸窒化物が得られており、光触媒としての応用が期待されている (非特許文献2,3) 。 
[0004]
ABO 3-nN n(Aは、Li +,Ba 2+,Sr 2+等の陽イオン、Bは、Ti 4+,Zr 4+,Sn 4+等の金属陽イオン)で示されるペロブスカイト型金属酸窒化物は誘電体として用いられる(特許文献1)。特許文献1には、電気炉を用いて原料の酸化物をアンモニアガスの雰囲気下で900~1000℃で窒化して、BaTaO 2N,SrTaO 2N,BaNbO 2N,LaTaO 2N,LaTiO 2N,NdTaON 2,SmTaON 2等を製造する方法が記載されている。 
[0005]
また、AB(O,N) 3(Aは、Ca,Sr,Ba,La,Pr,Nd,Sm,Eu,又はCe、Bは、W,Mo,V,Nb,Ta,又はTi)で示されるペロブスカイト型金属酸窒化物は導電体として用いられる(特許文献2)。特許文献2には、これらの金属酸窒化物を金属AとBの複合酸化物を700~900℃でアンモニア気流中で窒素化する方法が記載されている。 
[0006]
また、Ba、Sr及びCaの少なくとも1種からなる第1成分と、Ta、Zr、Nb、Ti及びHfの少なくとも1種からなる第2成分とを金属元素成分として含む酸窒化物ペロブスカイトからなる電子放出材料を製造する方法であって、原料組成物に対し、炭素を近接配置した状態で窒素ガス含有雰囲気中において800~2000℃で焼成する方法も公知である(特許文献3)。 
[0007]
また、Biと4価の元素を含む正方晶ペロブスカイト型酸窒化物からなる圧電材料(特許文献4)や、TiとNb,Taを含む正方晶ペロブスカイト型酸窒化物からなる圧電材料(特許文献5)も公知である。これらの酸窒化物は原料の混合粉末を高温で焼成する方法や、スパッタリング等の成膜法で製造される。
[0008]
これらのペロブスカイト型酸窒化物は、通常、金属酸化物の混合物をアンモガス雰囲気で高温に加熱して焼成する方法か、又はペロブスカイト型酸化物を高温アンモニアガスで窒化する方法により得られる。高温アンモニアガス窒化法を用いてチタン酸バリウムを窒化した例が報告されている(非特許文献4) 。 
[0009]
一方、ペロブスカイト型水素化物については、LaSrCoO 30.7、Sr 3Co 24.330.84等のコバルト酸化物-水素化物が報告されている(非特許文献5,6)。本発明者らは、式ATi(O,H) 3(Aは、Ca 2+,Sr 2+,又はBa 2+)を基礎とするチタンの酸水素化物(titanate oxyhydrides)の合成について報告した(非特許文献7~9、特許文献6)。この酸水素化物は、水素をヒドリド(hydride:H -)として酸化物イオン(O 2-)と共存させた化合物であり、前駆体のATiO 3をCaH 2、LiH、NaH等の金属水素化物でトポケミカル(topochemical)に還元することにより調製される。この酸水素化物は、水素化物イオン・電子混合伝導性や水素吸蔵、放出性能を有しているという特徴がある。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 特開昭61-122108号公報
特許文献2 : 特開昭63-252920号公報
特許文献3 : 特許第3,078,287号公報
特許文献4 : 特開2010-143788号公報
特許文献5 : 特開2013-128073号公報
特許文献6 : WO2013/008705 A1

非特許文献

[0011]
非特許文献1 : Fuertes, S. (2012). "Chemistry and application of oxynitrideperovskites." J. Mater. Chem. 22,3293-3299, (2012)
非特許文献2 : A.Hellwig et al.,"Formation of barium-tantalum oxynitrides" J. Mater. Sci. 29 ,4686-4693 (1994)
非特許文献3 : S. Balaz et al. "Electronic Structure of Tantalum OxynitridePerovskite Photocatalysts" Chemistry of Materials 25(16),pp 3337-3343(2013)
非特許文献4 : Brauniger, T., Muller,T.,Pampel,A.,and Abicht,"Study of Oxygen-Nitrogen Replacement in BaTiO3 by 14N Solid-State Nuclear Magnetic Resonance." Chem.Mater.17,4114-4117,H.P.(2005)
非特許文献5 : M.A.Hayward et al.,"The Hydride Anion in an Extended Transition Metal Oxide Array;LaSrCoO3H0.7" Science,295,1882-1884(2002)
非特許文献6 : R.M.Helps et al.,"Sr3Co2O4.33H0.84; An Extended Transition Metal Oxide-Hydride" Inorganic Chemistry,49,11062-11068(2010)
非特許文献7 : Y.kobayashi et al.,"An oxyhydride of BaTiO3 exhibiting hydride exchange and electronic conductivity" Nat.Mater.,11,507-511(2012)
非特許文献8 : T.Sakaguchi et al.,"Oxyhydrides of (Ca,Sr,Ba)TiO3 PerovskiteSolid Solutions" Inorg.Chem.,51(21),11371-11376(2012)
非特許文献9 : 矢島 健 他、「ペロブスカイト型酸水素化物」日本結晶学会誌第55巻 第4号、242~247頁、(2013)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0012]
ペロブスカイト型金属酸窒化物は、一般に、原料となる金属酸化物の混合粉末を電気炉内でアンモニア気流下800℃以上の高温で数日間加熱することにより作製される。しかし、この高温アンモニアガス窒化法は、金属と酸素との結合を切る反応と金属と窒素との反応を行う方法であるために、高温かつ数日の反応を必要とし、投入されるエネルギーが大きく、高コストで、電気炉をいためやすく、取扱いにはより注意が必要になる、といった問題点がある。また、高温での化学反応を用いる場合、熱力学的に安定な相しか得られず、組成や構造の制御が難しい。さらに、粉末の表面のみに窒化反応が進行し表面部と内部に窒化程度に差が生じる。

課題を解決するための手段

[0013]
本発明者らは、ペロブスカイト型金属酸化物として代表的なチタン酸バリウムに対しイオン交換プロセスを伴う新しい手法を施すことにより、700℃未満の低温かつ1時間から数日の反応で窒化物イオンを金属酸化物に導入し、酸窒化物を作製することに成功した。この手法では、従来の高温アンモニアガス窒化法を用いてチタン酸バリウムを窒化した報告例(非特許文献4) よりも多くの窒化物イオンを金属酸化物の内部に導入し、かつ窒化物イオンの含有量を任意に制御することが可能である。 
[0014]
アンモニアガスを用いる従来の窒化物の作製には、アンモニアの熱分解温度である700℃以上、好ましくは800℃以上の高温かつ長時間の原料の加熱が必要であったが、本発明者らが発見した700℃未満、好ましくは600℃以下での低温でのイオン交換プロセスを伴う手法(以下、「低温アンモニア処理」という場合がある。)は、環境への負荷が少なく安全であり、高温反応では困難であった組成や結晶構造の制御も可能である。 
[0015]
具体的には、ペロブスカイト型金属酸化物を直接、高温アンモニアガス処理するのではなく、金属水素化物を用いて還元酸素脱離反応によって金属酸化物の酸化物イオンを部分的に脱離させ、水素をヒドリド(H -)として酸化物イオンと共存した酸水素化物に変換した後、低温アンモニア処理によりヒドリド(以下、「H」と記す場合もある。)と窒素(以下、「N」と記す場合もある。)のH/N交換プロセスを経て窒化物イオンをペロブスカイト型金属酸化物に導入することができることを見出した。 
[0016]
このH/N交換プロセスは、金属と酸素との結合を切る還元反応と金属と窒素との窒化反応に基づく従来の還元窒化法とは異なりイオン交換反応であり、窒化を低温で容易に行うことができる。H/N交換において、HとN交換は、1:1の割合で交換するわけではないがHを一部又は全てNに交換することができる。 
[0017]
すなわち、本発明は、金属水素化物を用いて還元酸素脱離反応によりペロブスカイト型酸化物を還元して、酸化物イオン(O 2-)と水素化物イオン(H -)が共存するペロブスカイト型酸水素化物を形成する水素化工程(A)と、窒素供給源物質の存在下、300℃以上、600℃以下の温度で前記ペロブスカイト型酸水素化物を熱処理して、水素化物イオン(H -)を窒化物イオン(N 3-)とイオン交換させて窒化物イオン(N 3-)を含有するペロブスカイト型酸窒化物を形成する窒化工程(B) と、を含むことを特徴とするペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法、である。 
[0018]
前記窒化工程(B)において、窒素供給源物質は、アンモニアガス気流を用いることができる。 
[0019]
前記窒化工程(B)において、窒素供給源物質は、アンモニアガス発生剤を用いることができる。 
[0020]
前記窒化工程(B)において、窒素供給源物質は、窒素ガス気流を用いることができる。 
[0021]
前記ペロブスカイト型酸化物は、式;A n+1n3n+1 (式中、nは1,2,3,∞のいずれか、Aは、Ca、Ba、Sr、Pb、Mgのうち少なくとも1つ、Bは、Co,W,Mo,V,Ta,Zr,Nb,Ti 及びHfの少なくとも1つ)で示される。また、前記ペロブスカイト型酸水素化物は、式;A n+1n(O 1-xx3n+1(式中、A、Bは出発物質に同じであり、Hは酸化物イオンを置換した水素化物イオン(H -)である。0.01≦x≦0.2、nは1、2、3、∞のいずれか)で示される。 
[0022]
前記ペロブスカイト型酸化物、前記ペロブスカイト型酸水素化物、及び前記ペロブスカイト型金属酸窒化物の形態は、粉末又は薄膜であることが好ましい。

発明の効果

[0023]
本発明では、従来の窒化法に比べ低温かつ短時間で酸窒化物を作製することができ、また、より多くの窒化物イオンの導入及び含有量の制御が可能である。従来の高温窒化法では窒化が困難であったペロブスカイト型金属酸化物に対して本発明の手法を用いることにより、多くの窒化物イオンを導入することができる。

図面の簡単な説明

[0024]
[図1] 実施例1において、低温アンモニア処理としてアンモニアガスフロー法を用いて得られた窒化物イオン含有チタン酸バリウムの粉末X線回折パターン図である。図中の温度は、アンモニアガス処理時の反応温度を示している。
[図2] 実施例1において得られた窒化物イオン含有チタン酸バリウム(NH 3 flow 500℃)の中性子回折のリートベルト構造解析結果を示したグラフ(図2(a))及び リートベルト構造解析から得られた結晶構造の模式図(図2(b))である。
[図3] 上図は、実施例1で得られたBaTi(O 3-zH xN y)(ただし、z≧x+y、z-x-yは酸素欠陥量を表す)の格子定数(a軸、c軸)を窒素含有量yについてプロットしたグラフである。下図は、同様の試料の水素含有量(x)と窒素含有量(y)の関係を示したグラフである。
[図4] 実施例2において、窒化処理後の単結晶薄膜に対するXPS測定の結果を示すグラフである。
[図5] 実施例3において、得られた窒化物イオン含有チタン酸バリウムの粉末X線回折パターン図である。
[図6] 実施例4において、得られた窒化物イオン含有チタン酸バリウムの粉末X線回折パターン図である。

発明を実施するための形態

[0025]
<酸水素化物の調製>                        ペロブスカイト型構造は、化学式ABX 3で表される化合物のとる結晶構造の一形式であり、ペロブスカイト型金属酸化物は化学式ABO 3で代表される。出発物質のペロブスカイト型金属酸化物の種類は、特定のものに限定されないが、代表的なものとして例えば、式ABO 3、A 2BO 4、A 327、又はA 4310で表わされる化合物が挙げられる。これらの酸化物は、まとめて下記の一般式で表わされる。 
[0026]
(式I) A n+1n3n+1 (式中、nは1,2,3,∞のいずれか)       n=1の場合は、式A 2BO 4、n=2の場合は、式A 327、n=3の場合は、式A 4310、n=∞の場合は、式ABO 3となる。なお、A,B,Oの少なくとも1つの元素組成に20原子%までの欠損があっても構わない。  
[0027]
上記一般式のAは、代表的には、Ca、Ba、Sr、Pb、Mgのうち少なくとも1つであるが、これらの2価の陽イオンに限らず、LaやNaなどの異価数のカチオンや欠損を含むものを固溶させたものでもよい。また、上記一般式のBは、Co,W,Mo,V,Ta,Zr,Nb,Ti及びHfの少なくとも1つである。 
[0028]
出発物質のペロブスカイト型金属酸化物及び得られるペロブスカイト型酸水素化物、ペロブスカイト型金属酸窒化物の形態は、粉末又は薄膜であることが好ましい。 
[0029]
上記の出発物質に含まれる酸化物イオンの一部を引抜き、水素化物イオン(H -)に置換するためにCaH 2、LiH、BaH 2、SrH 2又はMgH 2等の金属水素化物を用いる。このような反応は、「還元酸素脱離反応」と言われる。酸化物イオンを水素化物イオンに置換できるのは、CaH 2、LiH、BaH 2、SrH 2又はMgH 2は、600℃以下の低温でも強力な還元力を発揮し、酸化物からの酸素引抜き能力だけでなく水素化物イオンを供与する能力を有するためと考えられる。また、比較的低温で置換反応が生じるので出発物質の構造骨格を壊すことなく、トポケミカルに脱酸素反応と、大量の水素化物イオンの挿入反応を同時に達成することができるので製造が容易である。 
[0030]
上記の方法で得られたペロブスカイト型酸化物-水素化物は、酸素サイトのうち、最大20原子%程度を水素で置き換えた物質である。水素化物イオンはその一部又は全てを窒化物イオンに交換できるので、置換された酸素の量は1原子%以上であればよく、多量の窒化物イオンと交換するためには、5原子%以上、さらに好ましくは10原子%以上置換することができる。 
[0031]
すなわち、上記の方法で得られたペロブスカイト型酸化物-水素化物は、下記の基本式IIで示すことができる。                  (式II)A n+1n(O 1-xx3n+1(式中、A、Bは出発物質に同じであり、Hは酸化物イオンを置換した水素化物イオン(H -)である。0.01≦x≦0.2、nは1、2、3、∞のいずれか)。                  なお、A,B,Oの少なくとも1つの元素組成に20原子%までの欠損があっても構わない。 
[0032]
置換された水素は酸素サイトをランダム(統計的)に占有する。しかし、水素化能決定因子のいずれかを制御することにより、得られるペロブスカイト型酸化物-水素化物の粉末又は薄膜の表面から中央に向かって水素濃度の分布に勾配を作ることができる。 
[0033]
<イオン交換プロセス>                       得られた金属酸水素化物A n+1n(O 1-xx3n+1に含まれる水素化物イオン(H -)と窒化物イオン(N 3-)の交換反応は、下記のいずれかの窒素供給源物質を用いる熱処理方法で行うことができる。(1)アンモニアガス気流。(2)アンモニアガス発生剤。例えば、加熱分解によりアンモニアを発生する尿素や加熱反応によりアンモニアを生成するナトリウムアミド(NaNH 2)粉末と塩化アンモニウム(NH 4Cl)粉末との混合粉末。(3)窒素ガス気流。
[0034]
アンモニアガスの熱分解を利用した窒化物や酸窒化物の合成は多数報告されているが高温での反応が必要である。これに対し、本発明では、上記(1)の方法では、金属酸水素化物粉末又は薄膜をアンモニアガス気流に曝して、300℃以上、600℃以下で短時間(通常、3時間程度)、熱処理することにより、アンモニアガスをHとNに熱分解し、酸水素化物中の水素化物イオンの一部又は全部を窒化物イオンと交換する。 
[0035]
このような低温での熱処理による交換反応は、金属酸水素化物中で、水素化物イオンが上記式IIで示すB金属イオンと弱く結合し、結晶内を拡散しやすいことに由来する。アンモニアガスとの熱処理温度が高い程、金属酸水素化物の窒素化反応は高速に進行する。また、反応時間を長くすることによっても交換度を制御することができる。つまり、熱処理温度、時間を調整することにより、金属酸水素化物に導入される窒素化物イオンの量を任意に制御することが可能である。  
[0036]
上記(2)の方法では、アンモニアガス発生剤、例えばNaNH 2とNH 4Clは加熱(200℃以上)により以下の化学反応を起こし、アンモニアガスを発生させ塩化ナトリウム(NaCl)を生成する。              NaNH 2+NH 4Cl→2NH 3(気体)+NaCl(固体) 
[0037]
したがって、金属酸水素化物粉末又は薄膜をNaNH 2粉末及びNH 4Cl粉末と混合し、混合物を熱処理すると、(1)の方法と同様に、アンモニアガスの分解によりHとNのイオン交換反応を起こすことが可能である。 
[0038]
アンモニアガス発生剤、例えばNaNH 2とNH 4Clの混合粉末を含む雰囲気は、石英ガラスのような熱的、化学的耐久性のある容器中にNaNH 2とNH 4Clの混合粉末と金属酸水素化物粉末又は薄膜を同時に真空封入すると良い。NaNH 2とNH 4Clと金属酸水素化物は接触させる必要はない。熱処理温度は、(1)の方法と同様に300℃以上600℃以下の低温で十分であり、反応時間は12時間から24時間を要する。容器中の雰囲気はアルゴンや窒素ガスのような不活性雰囲気であってもよい。 
[0039]
上記(3)の方法では、HとNのイオン交換反応のための窒素供給源物質として窒素ガスを用いる。金属酸水素化物粉末又は薄膜を窒素ガス気流に曝して、300℃以上600℃以下の低温で数時間熱処理を施すことにより、水素化物イオンは窒化物イオンに交換される。 
[0040]
上記式(I)において、BがTiであるペロブスカイト型チタン含有酸化物は、誘電性、圧電性、焦電性といった優れた電気特性を示すことから、種々の電子材料への応用という観点で古くから研究されてきた。これらの特性に加え、チタンは低コストであること、生体親和性が高いことから、酸窒化物の構成元素として魅力的である。 
[0041]
以下、式ABO 3で表されるペロブスカイト型金属酸化物の代表例であるチタン酸バリウム(BaTiO 3)を出発原料としてチタン酸バリウム酸窒化物を製造する方法について、実施例を用いて具体的に説明する。当業者は、チタン酸バリウム酸窒化物に限られず、既知の組成の金属酸窒化物について、窒化の程度に難易はあっても原理的に全て本発明の低温アンモニア処理方法が適用できること、また、本発明の方法の適用により新規な金属酸窒化物の創成も可能であることを容易に理解できるであろう。
実施例 1
[0042]
<水素化工程(A)>                          粒径が100nm程度のチタン酸バリウム(BaTiO 3)粉末を100℃、真空雰囲気で脱水した後、3当量の水素化カルシウム(CaH 2)粉末とグローブボックス中で混合し、ハンドプレス機によりペレットに成型した。このペレットを内部容量約15cm 3の石英管中に入れ、真空封入をした後、580℃、150時間の熱処理を施すことによって水素化した。熱処理後の試料を0.1M、NH 4Clのメタノール溶液により処理することで、生成物に付着した未反応のCaH 2と副生成物のCaOを取り除いた。 
[0043]
得られた粉末は黒色に近い青色を呈した。粉末X線回折、粉末中性子回折からペロブスカイト型結晶構造を維持していることが分かった。リートベルト解析、及び昇温脱離分析(TDS)から、組成はBaTi(O 0.80.23をとることが確認された。 
[0044]
<窒化工程(B)>                           BaTi(O 0.80.23粉末を100℃、真空雰囲気で脱水した後、ハンドプレス器によりペレットに成型した。このペレットを内径約3cmの石英管中に入れ、アンモニアガス気流中(毎分300mL)、375℃、400℃、425℃、500℃で3時間の熱処理を行うことによって窒素化反応を大気圧中で行った。
[0045]
得られた試料は、昇温脱離分析(TDS)により水素量を測定し、微量元素分析により窒素量を測定し、組成を決定したところ、表1に示すような水素化物イオン(H -)と窒化物イオン(N 3-)を含有する組成をとることが確認された(□はO、H、Nいずれでも占有されていない欠損を示す)。 
[0046]
[表1]


[0047]
アンモニアガス処理後の試料は、窒素量が少ない場合は青色で、窒素量が増えるにつれて緑色に近づく。得られた試料は粉末X線回折、粉末中性子回折からペロブスカイト型結晶構造を維持していることが分かった。 
[0048]
図1に、各熱処理温度で得られた窒化物イオン含有チタン酸バリウムの粉末X線回折パターンを示す。図2に、500℃で熱処理した試料No.dの粉末中性子回折のリートベルト解析より決定した結晶構造を示す。熱処理後の試料では、導入された全ての水素化物イオンが窒素化物イオンに置換されていることを確認した。なお、BaTiO 2.40.6から出発してBaTiO 2.40.39になっているのでNはHより少ない割合で交換されたことが分かる。 
[0049]
図3の上図に、各熱処理温度において得られた窒化物イオン含有チタン酸バリウムの格子定数(a軸、c軸)を窒素含有量(y)についてプロットして示す。なお、図3においては、組成をBaTi(O 3-zH xN y)の式で表しているので、x,yの値は表1に示す組成の3倍の値となる。 
[0050]
窒素化前の試料は理想的な立方晶ぺロブスカイトであるが、窒素化後の試料は窒化物イオンの導入により歪んだ正方晶へ変化した。これは、強誘電体であるBaTiO 3が室温で正方晶をとるのと同様である。 
[0051]
図3の下図は、同様の試料の水素含有量(x)と窒素含有量(y)の関係を示したものである。熱処理温度が高いほどより多くの窒化物イオンが導入でき、温度によりその含有量の制御が可能であることが分かる。また、低温でも水素化物イオンを殆ど全て窒化物イオンに交換できることが分かる。
実施例 2
[0052]
試料として、1cm×1cmの面積、100nmの厚さをもったBaTiO 3の単結晶薄膜を、下記のとおりPLD法によってLSAT[(La 0.3Sr 0.7)(Al 0.65Ta 0.35) O 3] 基板上に堆積した。BaTiO 3のペレットをターゲットとして用いた。基板の温度700℃、堆積中の酸素圧は0.05Pa、励起光源にはKrFエキシマーレーザーパルス(波長=248nm)を採用した。 
[0053]
<水素化工程(A)>                          窒素で満たしたグローブボックス中で、得られた単結晶薄膜を0.2gのCaH 2粉末とともにパイレックス(登録商標)管に真空封入し、530℃の温度にて1日熱処理し水素化反応を行った。生成物に付着した未反応のCaH 2と副生成物のCaOはアセトンによる超音波洗浄を行い取除いた。    <窒化工程(B)>                           このようにして得られた前駆体単結晶薄膜に対して、実施例1のときと同様に、アンモニアガス気流中で熱処理を行うことによって窒素化反応を行いBaTi(O,N, □) 3の単結晶薄膜を得た。 
[0054]
得られた試料は、X線回折によりペロブスカイト型結晶構造を維持した単結晶薄膜であることが分かった。水素化処理を施した単結晶薄膜の電気抵抗は金属的な温度依存性を示すが、水素と窒素のイオン交換反応が進むにしたがい、徐々に電気抵抗が上昇し、完全に窒化された薄膜は絶縁体となる。 
[0055]
図4に、Xeスパッタで表面を抉った窒化処理後の単結晶薄膜に対するXPS測定の結果を示す。結合エネルギー400eVに窒素由来のピークがあることから、薄膜内部に十分多量の窒素の存在を確認した。強誘電体の必要条件である非中心対称性を反映して、同薄膜は第二次高調波発生(SHG)を示す。
実施例 3
[0056]
<水素化工程(A)>                          実施例1と同様の手順でBaTi(O 0.80.23粉末を調製した。     <窒化工程(B)>                          得られたBaTi(O 0.80.23粉末(約0.1g)を100℃、真空雰囲気で脱水した後、ハンドプレス器によりペレットに成型した。アンモニア発生剤として等モルのNaNH 2、NH 4Cl粉末の混合物(約0.06g)をハンドプレス器によりペレットに成型した。これらのペレットを石英ガラスに入れ、内部容量約15cm 3の石英管中に入れ、真空封入をした後、530℃で12時間の熱処理を行った。 
[0057]
熱処理後の試料は、イオン交換に伴い緑色を呈する。図5に、試料の粉末X線回折パターンを示す。得られた試料は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し、窒化物イオンの導入により、反応前の立方晶(a=b=c=4.01Å)から正方晶(a=b=4.00Å、c=4.02Å)へ変化した。
実施例 4
[0058]
<水素化工程(A)>                          実施例1と同様の手順でBaTi(O 0.80.23粉末を調製した。     <窒化工程(B)>                           得られたBaTi(O 0.80.23粉末(約0.1g)を100℃、真空雰囲気で脱水した後、ハンドプレス器によりペレットに成型した。このペレットを内径約3cmの石英管中に入れ、窒素ガス気流中(毎分110mL)、毎分5℃で600℃まで昇温し、600℃で5分保持した後、毎分10℃で室温まで冷却することで熱処理して窒素化反応を行った。
[0059]
熱処理後の試料は、イオン交換に伴い緑色を呈する。図6に、試料の粉末X線回折パターンを示す。得られた試料は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し、窒化物イオンの導入により、反応前の立方晶(a=b=c=4.01Å)から正方晶(a=4.00Å、c=4.02Å)へ変化した。

産業上の利用可能性

[0060]
本発明のペロブスカイト型金属酸窒化物の作製法は、従来の手法と比べ低温かつ短時間のプロセスであるため、環境への負荷が少なく安全であり、製造コストの低下といったメリットも期待できる。また、従来の手法では作製不可能であった、新しい酸窒化物の開発を可能とする手段であり、電子材料、電気材料、光触媒、顔料、蛍光材料分野のさらなる発展に貢献できると考えられる。

請求の範囲

[請求項1]
金属水素化物を用いて還元酸素脱離反応によりペロブスカイト型酸化物を還元して、酸化物イオン(O 2-)と水素化物イオン(H -)が共存するペロブスカイト型酸水素化物を形成する水素化工程(A)と、   窒素供給源物質の存在下、300℃以上、600℃以下の温度で前記ペロブスカイト型酸水素化物を熱処理して、水素化物イオン(H -)を窒化物イオン(N 3-)とイオン交換させて窒化物イオン(N 3-)を含有するペロブスカイト型酸窒化物を形成する窒化工程(B) と、    を含むことを特徴とするペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法。
[請求項2]
前記窒化工程(B)において、窒素供給源物質がアンモニアガス気流であることを特徴とする請求項1記載のペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法。
[請求項3]
前記窒化工程(B)において、窒素供給源物質がアンモニアガス発生剤であることを特徴とする請求項1記載のペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法。
[請求項4]
前記窒化工程(B)において、窒素供給源物質が窒素ガス気流であることを特徴とする請求項1記載のペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法。
[請求項5]
前記ペロブスカイト型酸化物が、式;A n+1n3n+1 (式中、nは1,2,3,∞のいずれか、Aは、Ca、Ba、Sr、Pb、Mgのうち少なくとも1つ、Bは、Co,W,Mo,V,Ta,Zr,Nb,Ti 及びHfの少なくとも1つ)で示され、前記ペロブスカイト型酸水素化物が、式;A n+1n(O 1-xx3n+1(式中、A、Bは出発物質に同じであり、Hは酸化物イオンを置換した水素化物イオン(H -)である。0.01≦x≦0.2、nは1、2、3、∞のいずれか)で示される化合物である、ことを特徴とする請求項1記載のペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法。
[請求項6]
前記ペロブスカイト型酸化物、前記ペロブスカイト型酸水素化物、及び前記ペロブスカイト型金属酸窒化物の形態は、粉末又は薄膜であることを特徴とする請求項1記載のペロブスカイト型金属酸窒化物の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]