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1. (WO2015136573) シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド、シガレットフィルター、トウバンドの製造装置、及びトウバンドの製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド、シガレットフィルター、トウバンドの製造装置、及びトウバンドの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010   0011  

課題を解決するための手段

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029  

発明の効果

0030  

図面の簡単な説明

0031  

発明を実施するための形態

0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061  

実施例

0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077  

産業上の利用可能性

0078  

符号の説明

0079  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

補正された請求の範囲(条約第19条)

1   2   3   4   5   6   7   8   9  *   10  *   11  *  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド、シガレットフィルター、トウバンドの製造装置、及びトウバンドの製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、セルロースアセテートのトウバンド、該トウバンドから製造されるシガレットフィルター、該トウバンドを製造するための装置及び方法に関する。

背景技術

[0002]
 セルロースアセテートのトウバンドは、シガレットフィルターの素材としてよく知られている。トウバンドの製造では、セルロースアセテートを有機溶剤に溶解して紡糸原液が調整される。紡糸機は複数の紡糸筒を備え、各紡糸筒は多数の紡糸孔を有した紡糸口金を備える。各紡糸筒では、紡糸原液を多数の紡糸孔より吐出して多数本のフィラメントが形成され、多数本のフィラメントを集めてヤーンが形成される。トウバンドは、全紡糸筒からのヤーンを合一して捲縮処理することで製造される。シガレットフィルターの製造では、フィルターロッドがトウバンドから製造される。フィルターロッドは、トウバンドを開繊し、これにトリアセチンなどの可塑剤を添加し、これを円筒形状に成型し、これを巻紙で巻くことで製造される。シガレットフィルターはフィルターロッドを所定長さに切断することで製造される。
[0003]
 本書では、「フィラメント」は、ある1つの紡糸孔から押し出された1本の繊維(単繊維)である。「ヤーン」は、ある1つの紡糸筒で形成された多数本のフィラメントを合一した1つの繊維束(単繊維の集合体)である。「トウバンド」は、紡糸筒相当数の全ヤーン、すなわち紡糸機で形成される全フィラメントを合一した繊維束である。トウバンドは、狭義には捲縮処理された多数本のフィラメントの集合体を示す。先行技術に関連する記述では、このように定義される繊維束又は集合体を「トウバンド」ではなく「フィルタートウ」あるいは単に「トウ」と称することもある。
[0004]
 「フィラメントデニール」は、単位長さ(9000m)当たりの質量(g)によって表されるフィラメントの繊度であり、以下「FD」と略称する場合もある。すなわち、トウバンドのFDは、当該トウバンドを構成するフィラメント1本分の繊度を意味する。「トータルデニール」は、単位長さ(9000m)当たりの質量(g)によって表されるトウバンドの繊度であり、以下「TD」と略称する場合もある。「詰込み量」は、1本のフィルターロッドに充填されるトウバンドの正味重量である。
[0005]
 従前、フィラメントの断面形状にはY形その他異形が好まれてきた。例えば、特許文献1では、四角形オリフィスを有する紡糸口金を用いてH形フィラメントが作成され、その束がシガレットフィルター等に用いられている。
[0006]
 近年、「スリムタイプ」や「スーパースリムタイプ」と呼ばれる細いシガレットが市販されている。細いシガレットのフィルターを特許文献1に開示されているような従前の素材で製造すると、通気抵抗が高くなり過ぎる。近年、香味成分を封入したカプセルを埋め込んだフィルターを備えるシガレットも市販されている。カプセルは通気抵抗上昇の要因となる。通気抵抗が高いと、喫煙者がシガレットを吸いづらくなる。そこで、上記のようなシガレットのフィルターに実用されるときにも通気抵抗を低くすることが可能な素材が要望されている。
[0007]
 例えば、特許文献2は、細巻きサイズのシガレットを開示している。シガレットは、フィルター部材及び該フィルター部材の周囲に巻装される巻取紙を含むフィルターと、シガレットロッドとフィルターとを接続するようにシガレットロッド及びフィルター上に接着されるチップペーパーとを備える。チップペーパーおよび巻取紙を貫通するように貫通穴が形成され、吸煙時に空気を流入させる。フィルター部材はトウを含み、トウは、8.0デニールよりも大きいFD及び15000デニールよりも小さいTDを有し、それにより貫通孔と相まって通気抵抗を低くすることが図られている。更には、詰込み量を下げて通気抵抗を低くしているものと推測される。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 米国特許第2825120号明細書
特許文献2 : 国際公開第2013/042609号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 詰込み量を下げれば、通気抵抗を低くすることができる。しかし、同時にシガレットフィルターの硬度も低くなる。すると、喫煙中にシガレットフィルターが変形しやすくなるので、喫煙者がシガレットを吸いづらくなる。また、貫通孔からの空気流入量が増える替わりにシガレット先端からの空気流入量が減るので、喫煙により生じるタールの量が減るという問題点があった。
[0010]
 また、特許文献2では、スーパースリムタイプに適した体積を提供するためにTDを小さくし、細くなることで上昇する通気抵抗を低めるためにFDを大きくしている。その結果必然として、トウを構成するフィラメント本数が少なくなる。しかし、TDが小さくフィラメントが少なければ、トウをその長さ方向及び幅方向に均一に捲縮することが難しく、トウの品質を安定させにくい。捲縮が一定でなければ、シガレットフィルターの通気抵抗も変動し、シガレットフィルターの品質を安定させにくい。
[0011]
 そこで本発明は、硬度を維持しながらも通気抵抗及びその変動を抑制可能なシガレットフィルター、シガレットフィルターとして用いられたときにこのような作用を生むセルロースアセテートのトウバンド、並びにこのようなトウバンドを製造するための装置及び方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0012]
 本発明の一形態に係るシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドは、複数の紡糸孔それぞれより吐出される複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してなり、フィラメントデニールが5.0デニール以上であり、フィラメントのフェレエリアが0.5以上である。
[0013]
 「フェレエリア(Feret area)」は、フィラメント断面の異形性を評価するために利用可能な指標である。フェレエリアの導出に際し、フィラメントを任意の点にてフィラメント長軸方向に対して垂直に切断することによって断面がとられ、この断面に外接する平行四辺形が仮想される(図5参照)。この仮想平行四辺形では、2組の対辺のうち一方が、断面に外接する2平行線であって線間距離が最大値(いわゆる最大フェレ径(maximum Feret diameter))となる2線であり、他方が、断面に外接する2平行線であって線間距離が最小値(いわゆる最小フェレ径(minimum Feret diameter))となる2平行線である。フェレエリアは、フィラメントの断面積を仮想平行四辺形の面積で除算することで求まる面積比、換言すれば、仮想平行四辺形におけるフィラメント断面の占有率である。
[0014]
 シガレットフィルター分野におけるフィラメントのフェレエリアの技術的な意義を以下に説明する。一般に、シガレットフィルター内では、フィラメント長軸方向が、シガレットの主流煙の流れに対して概略垂直に向けられている(図6参照)。主流煙は、このように配置されたフィラメントで阻止され、主流煙に含まれる液滴がフィラメントに衝突して捕集される。このクロスフローに照らして、フィラメントの阻止能力は、フェレエリアの導出に際して仮想される平行四辺形を断面形状とする仮想フィラメントの阻止能力と概略同等であるといえる。よって、フェレエリアが小さいことは、フィラメントの断面積に対してフィラメントの阻止能力が高いことを示す。フィラメントの断面積はトウバンドの質量(トウ詰込重量)と正に相関するので、フェレエリアが小さいことは、小さなトウバンド質量で多くの主流煙を遮り得ることを示す。
[0015]
 例えば、真円断面を有するフィラメントの場合、仮想平行四辺形は一辺の長さが真円断面の直径に等しい正方形となるので、フェレエリアはπr 2/4r 2、すなわち約0.785となる(rは、真円断面の半径)が、従来、このようなフィラメントは質量の割に捕集性能に優れない非効率な素材とされ、フェレエリアを如何に小さくするかが試みられてきた。その一環として断面の異形化が試みられ、前述のとおり異形紡糸孔及び異形断面が好まれてきた。例えば三角形紡糸孔又はY型紡糸孔を用いて形成されたY形断面を有するフィラメントでは、当該Y形断面が三角形を部分的に収縮変形した形状に相当するので、フェレエリアは0.5未満になる。このように断面の異形性が著しくなると、フェレエリアが小さくなる。
[0016]
 本発明者は、上記課題目的を達成すべくシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドを開発する過程で、従前の開発思想とは逆に、比較的大きなフェレエリアのフィラメントでトウバンドを構成すれば、そのトウバンドは、異形断面を有するフィラメントで構成された従前のトウバンドと同一の質量条件であっても、阻止能力をより低下させることができ、その分通気抵抗もより低下させることができると着想した。
[0017]
 本発明の前記一形態に係るトウバンドによれば、フィラメントが5.0以上と比較的大きいので、通気抵抗を抑制することができる。更に、フィラメントのフェレエリアが0.5以上であり、従前一般的に用いられてきたY形又はH形断面を有するフィラメントのフェレエリアよりも大きく、異形性が抑えられている。したがって、このトウバンドのシガレットフィルター実用時には、質量に比して(トウ詰込重量を大きくしても)通気抵抗を抑制することができる。また、このトウバンドをシガレットフィルターとして用いたときには、エアがシガレットフィルター内でフィラメント外表面に沿って円滑に流れていき、通気抵抗が抑制される。そして、通気抵抗が抑制される分、フィラメント本数を多く保つことが可能となる。
[0018]
 このように、比較的大きなフェレエリアのフィラメントを用いることで、シガレットフィラターとして用いたときに、通気抵抗の抑制が図られる。このため、詰め込み量を少なくせずに済み、シガレットフィルターの硬度を高く維持できる。また、トータルデニールを殊更小さくせずに済み、そのためトウバンドを構成するフィラメント本数を少なくせずに済み、トウバンドに安定した捲縮処理を施すことができる。したがって、トウバンドの品質及び生産性を高くすることができる。そして、このトウバンドを素材としてシガレットフィルターを製造した場合には、硬度を高く維持しながらも通気抵抗及びその変動を抑えることができる。
[0019]
 前記フィラメントデニールが10デニール以下であってもよい。前記フェレエリアが0.9以下であってもよい。
[0020]
 トータルデニールが14,000デニール以上でもよい。前記トータルデニールが22,000デニール以下でもよい。好ましくは、トータルデニールが15000~21000デニール、より好ましくは15000~20000、デニールである。
[0021]
 本発明の他形態に係るシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドは、複数の紡糸孔それぞれより吐出される複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してなり、フィラメントデニールが5.0デニール以上であり、前記フィラメントの断面の面積をS、当該断面の周長をLとした場合における前記面積及び前記周長の比S/Lが5以上である。
[0022]
 「比S/L」も、フェレエリアと同様、フィラメント断面の異形性を評価するために利用される指標である。主流煙に含まれる液滴をエアロゾルと捉えると、フィラメントの表面がこれを捕集すると考えることができる。その場合、比S/Lが小さいほど、フィラメントの断面積ひいてはトウ詰込重量に対して捕集性能が高くなる。フィラメント断面の異形性が著しいと、比S/Lが小さくなる。本発明者は、フィラメントデニールを特定範囲とすることにより比S/Lを適切な範囲に制御することができることを発見した。
[0023]
 本発明の前記他形態に係るトウバンドによれば、フィラメントデニールが5.0以上と比較的大きいので通気抵抗を抑制することができ、且つフィラメントデニールがそのような範囲にあるので比S/Lを5以上と適切な範囲に制御することができる。更に、比S/Lが5以上であるので、このトウバンドをシガレットフィルターとして用いたときには、トウ詰込重量に比して通気抵抗を抑制することができる。このため、詰込み量、トータルデニール及びフィラメント本数を下げずに済む。したがって、トウバンドの生産性を高くすることができるし、このトウバンドからシガレットフィルターを製造した場合には、硬度を高く維持しながらも通気抵抗及びその変動を抑えることができる。
[0024]
 前記フィラメントデニールが10デニール以下であり、前記比S/Lが9以下であってもよい。
[0025]
 本発明の一形態に係るシガレットフィルターは、前記トウバンドから製造され、14~18mmの円周長、好ましくは14~17mm、より好ましくは14~15mmの円周長を有する。これにより、細いシガレットでも、シガレットフィルターの硬度を高く維持しながら通気抵抗及びその変動を抑えることができる。
[0026]
 本発明の一形態に係るシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド製造装置は、複数の紡糸孔それぞれより吐出される複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してなる、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドを製造する装置であって、前記複数の紡糸孔を有した紡糸口金を備え、前記紡糸孔が円形であり、その直径が50μm以上である。
[0027]
 本発明の一形態に係るシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド製造方法は、複数の紡糸孔それぞれより紡糸原液を吐出して複数本のフィラメントを形成する工程と、前記複数本のフィラメントを合一して捲縮してトウバンドを形成する工程と、を備え、前記紡糸孔が円形であり、その直径が50μm以上である。
[0028]
 紡糸孔がこのようなサイズであれば、フィラメントデニールが大きくなって断面形状の変化が大きくなるところ、紡糸孔を円形としている。このため、フィラメントデニールを5.0デニール以上とするフィラメントであって、フェレエリアを0.5以上及び/又は比S/Lを5以上とする比較的滑らかな断面形状を有するフィラメントを形成することができる。
[0029]
 前記紡糸孔が円形であり、その直径が100μm以下であってもよい。これにより、フィラメントデニールを10デニール以下とするフィラメントであって、フェレエリアを0.9以下及び/又は比S/Lを9以下とするフィラメントを形成することができる。

発明の効果

[0030]
 本発明によれば、硬度を維持しながらも通気抵抗及びその変動を抑制可能なシガレットフィルター、及びシガレットフィルターとして用いられたときにこのような作用を生むセルロースアセテートのトウバンドを提供することができる。また、このようなトウバンドを製造するための装置及び方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0031]
[図1] 実施形態に係るシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドを製造するための装置及び方法を示す概念図である。
[図2] 実施形態に係る紡糸口金の底面図である。
[図3] 実施形態に係るフィラメントの断面を示す図である。
[図4] フィラメント断面の異形性を評価するための指標の説明図である。(a)は実施形態に係るフィラメントの断面の一例を示し、(b)は比較例を示す。
[図5] フェレエリアの導出法を説明する図である。
[図6] シガレットフィルター内でのシガレット主流煙の流れの一例を示す図である。

発明を実施するための形態

[0032]
 以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付し、その重複説明を省略する。
[0033]
 図1は、実施形態に係るシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドTBを製造するための装置及び方法を示す概念図である。図1に示すように、トウバンド製造装置1は、ミキサー2、濾過機3、紡糸機4、捲縮機5、乾燥機6及び梱包機7を含む。トウバンドの製造では、紡糸原液(以下、単に「ドープ」という場合もある)が調製される(原液調製工程)。原液調製工程では、ミキサー2にて、セルロースアセテートがアセトンなどの有機溶剤に溶解され、所要濃度(例えば、20wt%以上30wt%以下の重量濃度、好ましくは26wt%)の溶液が調整される。次いで、濾過機3にて、溶液が濾過される。この濾液が紡糸原液として用いられる。
[0034]
 原液調製工程の後、紡糸機4、捲縮機5及び乾燥機6を用いて、セルロースアセテートのトウバンドTBが紡糸原液から製造される(紡糸工程)。トウバンドTBは梱包機7で圧縮及び梱包される(梱包工程)。
[0035]
 詳細図示を省略するが、シガレットフィルターは、トウバンドTBを素材として製造される。シガレットフィルターの製造では、フィルターロッドが中間品として製造される。つまり、トウバンドTBが、開繊されてトリアセチンなどの可塑剤を添加される。そのトウバンドTBが、プラグ巻上げ機を用いて、対象シガレットのサイズ(径及び円周長)に適合した円筒形状に成型されて巻紙がフィルターロッドに巻かれる。このように製造されたフィルターロッドは、対象シガレットに応じた所定長さに切断される。これにより、複数のシガレットフィルターが1本のフィルターロッドから製造される。
[0036]
 本実施形態に係るトウバンドTBは、いわゆるスリムタイプ又はスーパースリムタイプのような細いシガレットに装着されるシガレットフィルターの素材に好適である。シガレットフィルターは、例えば14mm以上18mm以下の円周長(好ましくは14~17mm、より好ましくはより好ましくは14~15mm以下の円周長)を有する。
[0037]
 紡糸工程及びその実行に用いる機器4~6について説明する。紡糸機4は、複数の紡糸筒11と、紡糸筒11それぞれに対応する複数の紡糸口金12とを備えている。紡糸筒11は、鉛直方向に長尺の筒体であり、紡糸口金12は紡糸筒11の上端部に設けられている。紡糸口金12は、複数の紡糸孔10(図2参照)を有している。
[0038]
 紡糸原液は、紡糸ポンプ13で複数の紡糸口金12に送り込まれる。各紡糸筒11において、紡糸原液が、紡糸口金12の複数の紡糸孔それぞれより紡糸筒11内へと下向きに吐出され、複数本のフィラメントFが乾式紡糸法によって形成される。複数本のフィラメントFが下に向かうほど互いの間隔は縮まっていき、それにより1つのヤーンYが形成される。ヤーンYは、対応する紡糸筒11の底より下向きに排出される。この紡糸機4では、複数のヤーンYが複数の紡糸筒11それぞれより排出される。
[0039]
 各ヤーンYは、オイリング装置14から繊維油剤及び水を含むオイルエマルジョンを付与され、ゴデットローラ15の周りを通過し、捲縮機5へ送られる。複数のヤーンYはゴデットローラ15から捲縮機5へ向かう過程で互いに合一され、それによりトウバンドTBが形成される。捲縮機5は、例えば公知のスタフィングボックス型である。トウバンドTBは、押込みロールで圧迫されながらクリンパボックス(stuffer box)に送り込まれる。これにより、トウバンドTBに波形の捲縮が付与される。捲縮されたトウバンドTB(狭義のトウバンド)は、捲縮機5から乾燥機6へ送られる。乾燥機6では、残留溶剤及び水分がトウバンドTBから除去される。
[0040]
 乾式紡糸法によるセルロースアセテートのフィラメントの形成過程について説明する。紡糸液は、ある紡糸孔より吐出されてから紡糸筒11から排出されるまでの間、紡糸筒11内で下向きに走行する。ドープの走行開始時点(すなわち、ドープが紡糸孔より吐出された時点)では、ドープは液相である。ドープの走行中、溶剤がドープから蒸発することでフィラメントが形成され、ドープは液相から固相になる。溶剤は走行開始直後よりドープ表面から蒸発する。
[0041]
 フィラメントの断面形状は、溶剤がドープ表面から蒸発する速度である蒸発速度と、溶剤がドープ中心から表面に拡散する速度である拡散速度との関係によって特徴づけられる。蒸発速度は、(1)セルロースアセテートの溶剤保持力、(2)雰囲気温度での溶剤の蒸気圧、(3)各走行点での雰囲気ガスの溶剤蒸気による飽和度、(4)紡糸液の吐出速度、及び(5)蒸発表面積などの因子に依存する。拡散速度はフィックの第2法則に従う。
[0042]
 ドープの走行開始直後、ドープ中心部からの拡散がドープ表面での蒸発に追い付かず、ドープ表層が固化してスキンが形成される。スキンが形成されると、フィラメントの断面周長がある程度決まる。ドープ中心部にあった溶剤は、スキン中を拡散して蒸発する。このため、スキン形成後にスキン内体積(すなわち、フィラメントの断面積)が減り、スキンは半径方向に変形する。よって、フィラメントの断面は、紡糸孔の形状から変形された形状を呈する。
[0043]
 本発明者が見出したことは以下のとおりである。すなわち、紡糸孔の口径が小さいと、スキンが形成される段階で、ドープ中心部にあった溶剤の多くがスキン中を拡散して蒸発している。そのため、フィラメント断面形状は紡糸孔の形状から大きく変わらない。例えば紡糸孔が円形であれば、フィラメント断面は略円形となってその異形性は小さい。断面の異形性が小さいと濾過性能を確保しにくい。従前は、紡糸孔に異形形状を採用してフィラメント断面にY型やH型などの異形を採用することで、濾過性能が確保されてきた。
[0044]
 前記因子(1)から(4)は工程によりほぼ決定される。すなわち、(1)は使用溶剤に依存し、(2)雰囲気温度は工程での乾燥温度に依存し、(3)は乾燥風量、(4)は紡糸速度などの生産能力により決定される。一方、因子(5)に関し、紡糸孔の口径が大きいと、フィラメントの断面も大きくなって蒸発表面積が大きくなる。蒸発表面積が大きいと、蒸発速度が高くなってフィラメント断面の異形性が強くなる。また、紡糸孔の口径が大きいと、スキン内に閉じ込められる溶剤の体積も大きくなる。この点からも、フィラメント断面の異形性が強くなる。
[0045]
 そこで、紡糸孔の口径を特定範囲内に収めて紡糸孔の形状を円形とすれば、フィラメント断面の異形性を制御し、一定の濾過性能を確保することができる。すなわち、紡糸孔の口径が小さい場合には好ましかったY型やH型の異形断面を用いず、円形で特定範囲の口径を有する紡糸孔を用いれば、フィラメントの断面に適度な異形性が発現でき、このような異形性を有する特定のFDを有するフィラメントによって通気抵抗が適切に制御される。
[0046]
 図2は、実施形態に係る紡糸口金12の底面図である。図2に示すように、複数の紡糸孔10は、紡糸筒11内に臨む紡糸口金12の底面12aで開口する。一例として、底面12aは円形であり、複数の紡糸孔10は底面12a上で円環状に配列されてもよいが、底面12aの形状及び紡糸孔10の配列は、適宜変更可能である。紡糸孔10は円形であり、その直径は50μm以上100μm以下である。より好ましくは、50μm以上90μm以下である。
[0047]
 図3は、実施形態に係るフィラメントFの断面を示す図である。当該断面は、フィラメントFをフィラメント長軸方向に対して垂直に切断することによって得られる。このフィラメントFのFDは5.0デニール以上10デニール以下である。より好ましくは、5.5デニール以上9.0デニール以下である。上記した紡糸孔10を用いることで、トウバンドTBのFDをこのような数値範囲内に収めることができる。
[0048]
 紡糸孔10の口径が上記した特定範囲内に収まるので、それより吐出されたフィラメントFの断面形状の異形性は、適度な範囲に制御される。フィラメントFの断面形状は、真円でないもののY形やH形と比べれば異形性は抑えられており、円に近似した形状を呈する。
[0049]
 図4は、フィラメント断面の異形性を評価するための指標の説明図である。図4(a)は、実施形態に係るフィラメントFの断面の一例、図4(b)は、比較例であり、三角形又はY形の紡糸孔を有する紡糸口金を用いて形成されたY形フィラメントFyの断面の一例である。指標は、例えば「フェレエリア」又は「比S/L」である。
[0050]
 「フェレエリア」は、フィラメントFの断面積をS、当該断面に外接する仮想平行四辺形VPの面積をSVPとした場合において、面積Sの面積SVPに対する比(S/SVP)である。この仮想平行四辺形では、2組の対辺のうち一方が、断面に外接する2平行線であって線間距離が最大フェレ径となる。他方が、断面に外接する2本の平行線であって線間距離が最小フェレ径となる。そのため、任意の点でフィラメントFの断面をとって当該断面のフェレエリアを求めると、フェレエリアは断面の法線周りの姿勢によらない値となる。断面が真円であればフェレエリアは0.785[-]であり、三角形であればフェレエリアは0.5[-]以下である。
[0051]
 フィラメントFの断面は微小である。しかし、顕微鏡を通じて撮影された画像の電子データを公知の画像処理技術を用いて処理することによって又は当該撮影画像に基づいて手計算することによって、フィラメント断面に外接する仮想平行四辺形VPの設定、断面積S、面積SVP及び断面周長Lの測定を実施することができる。
[0052]
 図4(b)に示すように、比較例に係るY形フィラメントFyでは、その断面のうちその内接円ICyを除いた領域が、当該内接円ICyの円周上複数個所(3個所)から外方に突出し、当該複数個所が周方向に離れていることが顕著である。他方、仮想平行四辺形VPyは、当該領域をも外囲するよう設定されなくてはならない。したがって、仮想平行四辺形VPyは、内接円ICyと半径方向に離れてしまい内接円ICyのサイズに比して非常に大きくなる。当該領域は、仮想平行四辺形VPyから内接円ICyを除いた空間のごく一部を占有するに過ぎない。よって、比較例に係るY形フィラメントでは、フェレエリアが小さい値となる。Y形は紡糸孔の三角形を収縮したものであるので、フェレエリアは0.5未満である。また、断面外縁部の凹凸の程度が大きいので、その分、断面周長Lは断面積Sに比して大きくなり、比S/Lも小さい値となる。
[0053]
 一方、図5(a)に示すように、本実施形態に係るフィラメントFでは、円形の紡糸孔を用いて形成され、その断面外縁部での凹凸が小さい。フィラメントFの断面のうち内接円ICを除いた領域は略全周にわたって形成される。内接円ICから外方への突出量は、内接円ICの周方向に関して大きく変動しない。このため、仮想平行四辺形VPは内接円ICと半径方向に近くなる。このように、実施形態に係るフィラメントFでは、その断面形状の異形性が抑えられていることで、フェレエリアが比較的大きい値となる。また、断面外縁部の凹凸が小さく、比S/Lが大きい値となる。
[0054]
 本実施形態では、直径が40μm以上である紡糸孔10を用い、トウバンドTBのFDが5.0デニール以上であり、従前一般的なものに比べて大きい。FDが大きくなると、トウバンドTBをシガレットフィルターとして用いたときには通気抵抗を抑えることができる。
[0055]
 また、本実施形態では、円形の紡糸孔10を用いており、フィラメントFのフェレエリアが0.5以上0.9以下である。比S/Lは5以上9以下である。フィラメント断面の異形性を抑えているので、このトウバンドTBをシガレットフィルターとして用いたときには、TDが大きくても通気抵抗を抑えることができる。
[0056]
 前述のとおり、紡糸孔10の直径及びトウバンドTBのFDが大きくなり過ぎれば、異形性が顕著に現れる。トウバンドTBのFDが大きくなり過ぎれば、トウバンドTBのTD調整のため、トウバンドTBを構成するフィラメント本数を少なくする必要が生じる。
[0057]
 そこで、紡糸孔10の直径を100μm以下とし、トウバンドTBのFDを10デニール以下としている。紡糸孔10の直径は50μm以上90μm以下であることがより好ましく、トウバンドTBのFDは、15,000デニール以上22,000デニール以下であることがより好ましい。それにより、フェレエリアを0.6以上0.8以下とすることができる。また、比S/Lを5.5以上8.0以下とすることができる。
[0058]
 このように本発明においてはFDを一定の大きさに留めて異形性を抑えることにより通気抵抗の上昇を抑制することができる。更に本発明においては、フィルターの詰込み量を高くしても、通気抵抗の上昇の程度が低い。このためシガレットフィルターの詰込み量の変動によるシガレットフィルターの通気抵抗の変動を抑制できる。よって、シガレットフィルターの詰込み量を大きくすることができ、フィルター硬度を維持することができる。このようにして、シガレットフィルターの製造者はシガレットのタイプによって製造条件を変えずにシガレットフィルターを製造することができ、シガレットフィルターの生産性が向上する。
[0059]
 更に、本発明においては、トウバンドTBのTDを高く維持することもできる。例えば、トウバンドTBのTDを14,000デニール以上22,000デニール以下、好ましくは15,000デニール以上21,000デニール以下とすることができる。このようにTDを高く維持しても、シガレットフィルターとして用いらときに通気抵抗を抑制することができる。更には、トウバンドTBのTDが高く維持されるので、単位時間当たりに捲縮機5に送り込まれるトウTの体積も大きくなる。よって、トウTをクリンパボックス内に安定的に供給してトウTに捲縮を付与しやすくなる。このようにして、本発明においてはトウバンドTBの捲縮数の変動による通気抵抗の変動も抑制することができる。
[0060]
 本実施形態に係るトウバンドTBでは、FDが上記数値範囲を満たすように、フェレエリア及び/又は比S/Lが上記数値範囲を満たすようにしてトウバンドTBを形成することによって、詰込み重量の変動に伴う、通気抵抗の変動を良好に抑制することができる。本実施形態に係るトウバンドTBを用いたシガレットフィルター(プラグ)の通気抵抗の変動は、4.0%、好ましくは3.8、より好ましくは3.5.更に好ましくは3.2%以下にすることができる。
[0061]
 このように、厳しい生産管理を伴わずとも、シガレットフィルターとして用いたときに硬度を維持しながらも通気抵抗を抑制可能であって、TD及び捲縮数の変動を抑制したトウバンドTBを製造することができる。このトウバンドTBを用いてシガレットフィルターを製造することで、シガレットフィルターの硬度を高く維持すると共に通気抵抗の変動を抑制することができる。特に、このシガレットフィルターは、近年の「スリムタイプ」及び「スーパースリムタイプ」のシガレットのフィルター、又はカプセルが埋め込まれるフィルターに好適に採用することができる。
実施例
[0062]
 以下、実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例において、フェレエリア、比S/L、通気抵抗、通気抵抗の変動値及びフィルター硬度は、下記の方法で測定した。
[0063]
 (フェレエリア)
 実施例又は比較例に係るトウバンドから鉛筆状のフィラメントサンプルを作製した。すなわち、トウバンドから繊維束を一部抜き取り、繊維束が鉛筆芯に相当する部位に位置するようにしてパラフィンで繊維束を包んだ。このように作製されたフィラメントサンプルをミクロトームで厚さ1μm~10μmにスライスしてサンプル切片を得た。サンプル切片を光学顕微鏡(オリンパス株式会社(Olympus Corporation)製『BX-51』)で観察し、観察で得た画像を画像処理装置に取り込んだ。画像処理装置に、当該画像に含まれる1つのフィラメント断面に外接する仮想平行四辺形VPの設定、並びにフィラメントの断面積及び仮想平行四辺形VPの面積の測定を行わせた。フェレエリアを、フィラメントの断面積を仮想平行四辺形の面積で除算することによって算出した。
[0064]
 (比S/L)
 上記サンプル切片を上記光学顕微鏡で観察し、観察で得た画像を画像処理装置に取り込み、画像処理装置に、当該画像に含まれる1つのフィラメント断面について、断面積及び周囲長の測定を行わせた。比S/Lを、断面積を周囲長で除算することによって算出した。
[0065]
 (通気抵抗)
 実施例又は比較例に係るトウバンドからフィルターロッドサンプルを作製した。すなわち、既存の製造装置を用いてトウバンドを所定の直径に集束し、フィルター巻上げ機を用いてトウバンドを巻紙で固定することで、所定長さ及び所定詰込み量(正味トウ重量)を有するフィルターロッドサンプルを作製した。温度22±1℃、湿度60±10%の空気を毎秒17.5ccの流量でフィルターロッドサンプルを通過させ、そのときのフィルター両端の圧力差[mmWG](ミリメートルウォーターゲージ)を測定した。なお、実施例及び比較例の全てにおいて、フィルターロッドサンプルは巻紙を貫通する貫通孔を有していない。
[0066]
 (通気抵抗の変動値)
 フィルターロッドサンプルを15本に1本の間隔で計300本サンプリングする。300本それぞれの通気抵抗の測定値から変動値をパーセント表示した。
[0067]
 (フィルター硬度)
 プラグ長さ:120mm、円周:16.70mm、通気抵抗:350mmWGとなるように成型されたフィルターロッドサンプルについて、硬度計(フィルトローナ社(Filtrona)製『QTM7』)を用いてフィルター硬度を測定した。フィルターの硬度の測定に際し、フィルターロッドサンプルの側面に垂直に300gの荷重を掛けた。フィルター硬度は、次式より算出された。
[0068]
  フィルター硬度[%]=d/d0×100
 dは、荷重による変形後におけるフィルターロッドサンプルの荷重方向の直径、d0は、変形前におけるフィルターロッドサンプルの直径である。全く変形がなければ硬度は100%であり、硬度が100%に近いほど硬いことを意味する。
(実施例1~2)
 実施例1に係るトウバンドは次のように製造された。すなわち、平均酢化度55.2%のセルロースジアセテートをアセトンに溶解し、濃度約25質量%の紡糸原液を調製した。温度50~60℃の紡糸原液を紡糸口金に供給した。各紡糸孔は直径71μmの円形である。紡糸原液を各紡糸口金より紡糸筒内に吐出し、FD:8.6デニールのフィラメントを形成した。紡糸筒内では、アセトンを蒸発させるため、フィラメントに120~150℃の加熱空気をあてた。紡糸筒より排出された束状の集合体(ヤーン)にオイルエマルジョンを付与し、これをゴデットローラで巻き取った。ヤーンを合一してTD:21,000デニールのトウバンドを形成した。このトウバンドに捲縮を付与し、乾燥機でトウバンドを乾燥させた。実施例2に係るトウバンドは、直径59μmの円形紡糸孔を用いてFD:6.0デニールのフィラメントを形成した以外は、実施例1と同様に製造された。
(比較例1~7)
 比較例1に係るトウバンドは、1辺45μm程度の三角形紡糸孔を用いてFD:2.0デニールのフィラメントを形成した以外は、実施例1と同様に製造された。比較例2に係るトウバンドは、1辺55μm程度の三角形紡糸孔を用いてFD:3.0デニールのフィラメントを形成した以外は、実施例1と同様に製造された。比較例3に係るトウバンドは、1辺80μm程度の三角形紡糸孔を用いてFD:6.0デニールのフィラメントを形成した以外は、実施例1と同様に製造された。比較例4に係るトウバンドは、1辺85μmの三角形紡糸孔を用いてFD:7.0デニールのフィラメントを形成した以外は、実施例1と同様に製造された。比較例5に係るトウバンドは、1辺95μm程度の三角形紡糸孔を用いてFD:8.6デニールのフィラメントを形成した以外は、実施例1と同様に製造された。比較例6に係るトウバンドは、TDが17,000である以外は、比較例3と同様に製造された。比較例7に係るトウバンドは、1辺95μm程度の三角形紡糸孔を用いてFD:8.0デニールのフィラメントを形成し、TDが15000である以外は、実施例1と同様に製造された。
[0069]
 実施例1~2及び比較例1~7に係るトウバンドから、プラグ長さ:120mm、円周:16.70mm、トウ詰込重量:0.35g/rodのフィルターロッドサンプルを作製し、作製されたフィルターロッドサンプルを温度:20℃、湿度:65%の空調室内で24時間保管して調湿した。
[0070]
 得られたサンプルについて、通気抵抗及びその変動値を上記測定方法で測定した。また、実施例1及び比較例7に係るサンプルについて、フィルター硬度を上記測定方法で測定した。表1はその測定結果を示す。
[0071]
[表1]



 実施例1~2及び比較例1~5に係るトウバンドから、トウ詰込重量を0.33g/rodとするフィルターロッドサンプルも作製した。比較例6に係るトウバンドから、トウ詰込重量を0.33、0.28g/rodとするフィルターロッドサンプルも作製した。比較例7に係るトウバンドから、トウ詰込重量を0.33、0.28、0.24g/rodとするフィルターロッドサンプルも作製した。得られたサンプルについて通気抵抗を上記測定方法で測定した。表2はその測定結果を示す。
[0072]
[表2]


 実施例1(8.6R21000)と比較例5(8.6Y21000)の対比から明らかな通り、三角型紡糸孔では、TDを21,000デニールとすると、FDを8.6デニールまで太くしても、プラグ長さ120mm、円周16.70mmで達成できる通気抵抗が430mmWG程度である。
[0073]
 300mmWG程度の通気抵抗を達成したい場合、三角型紡糸孔ではTDを小さくする必要がある。比較例7(8.0Y15000)のとおり、TD15,000デニール、FD8.0デニールでは、通気抵抗が530mmWGとなる。そこで、詰込み重量を減少させることで、通気抵抗を低くする必要がある。詰込み重量が0.25gから0.28gの間であれば、300mmWG程度の通気抵抗を達成できる。しかしながら、表2に記載したとおり、詰込み重量の減少に従って硬度は低くなる(比較例7)。
[0074]
 これに対し、紡糸孔形状を円形にしてフィラメントデニールを大きくすることでフェレエリアが大きなフィラメントを得ることができる。そのようなトウバンドでトータルデニールを高く保っても、通気抵抗は大きくはならない。
[0075]
 そして、実施例1と比較例7の対比から明らかな通り、トータルデニールを高く保った場合には、プラグの通気抵抗の変動幅を小さくすることができる。
[0076]
 更には、重量変動による通気抵抗の変動が、比較例7と比べて小さく、詰込み重量が変化した場合でも、実施例1から明らかな通り、通気抵抗の変化の割合は小さい。
[0077]
 このため、例えば、円形紡糸孔を用いFDが大きく、フェレエリアが大きなフィラメントを用いたTDが大きなトウバンドでは詰込み重量を保ったまま約30%通気抵抗を下げることが可能である。これにより、硬度問題の可能性を低減でき、プラグ巻上げ時の詰込重量の変動による通気抵抗の変動も小さくすることができる。

産業上の利用可能性

[0078]
 本発明は、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドに用いると有益である。

符号の説明

[0079]
F フィラメント
TB トウバンド
1 トウバンド製造装置
4 紡糸機
5 捲縮機
10 紡糸孔
11 紡糸筒
12 紡糸口金

請求の範囲

[請求項1]
 複数の紡糸孔それぞれより吐出される複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してなる、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドであって、
 フィラメントデニールが5.0デニール以上であり、
 前記フィラメントのフェレエリアが0.5以上である、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[請求項2]
 前記フィラメントデニールが10デニール以下である、請求項1に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[請求項3]
 前記フェレエリアが0.9以下である、請求項1又は2に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[請求項4]
 トータルデニールが14,000デニール以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[請求項5]
 前記トータルデニールが22,000デニール以下である、請求項4に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[請求項6]
 複数の紡糸孔それぞれより吐出される複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してなる、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドであって、
 フィラメントデニールが、5.0デニール以上であり、
 前記フィラメントの断面の面積をS、当該断面の周長をLとした場合における前記面積及び前記周長の比S/Lが5以上である、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[請求項7]
 前記フィラメントデニールが10デニール以下であり、前記比S/Lが9以下である、請求項6に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[請求項8]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトウバンドから製造され、14~18mmの円周長を有する、シガレットフィルター。
[請求項9]
 複数の紡糸孔それぞれより吐出される複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してなる、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドを製造する装置であって、
 前記複数の紡糸孔を有する紡糸口金を備え、前記紡糸孔が円形であり、その直径が50μm以上である、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド製造装置。
[請求項10]
 前記紡糸孔が円形であり、その直径が100μm以下である、請求項9に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド製造装置。
[請求項11]
 複数の紡糸孔それぞれより紡糸原液を吐出して複数本のフィラメントを形成する工程と、
 前記複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してトウバンドを形成する工程と、を備え、
 前記紡糸孔が円形であり、その直径が50μm以上である、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド製造方法。

補正された請求の範囲(条約第19条)
[ 2014年8月7日 ( 07.08.2014 )  国際事務局受理 ]

[1]
 複数の紡糸孔それぞれより吐出される複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してなる、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドであって、
 フィラメントデニールが5.0デニール以上であり、
 前記フィラメントのフェレエリアが0.5以上である、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[2]
 前記フィラメントデニールが10デニール以下である、請求項1に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[3]
 前記フェレエリアが0.9以下である、請求項1又は2に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[4]
 トータルデニールが14,000デニール以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[5]
 前記トータルデニールが22,000デニール以下である、請求項4に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[6]
 複数の紡糸孔それぞれより吐出される複数本のフィラメントを束状に合一して捲縮してなる、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンドであって、
 フィラメントデニールが、5.0デニール以上であり、
 前記フィラメントの断面の面積をS、当該断面の周長をLとした場合における前記面積及び前記周長の比S/Lが5以上である、シガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[7]
 前記フィラメントデニールが10デニール以下であり、前記比S/Lが9以下である、請求項6に記載のシガレットフィルター用のセルロースアセテートのトウバンド。
[8]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトウバンドから製造され、14~18mmの円周長を有する、シガレットフィルター。
[9]
[削除]
[10]
[削除]
[11]
[削除]

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]