国際・国内特許データベース検索
このアプリケーションの一部のコンテンツは現在ご利用になれません。
この状況が続く場合は、次のお問い合わせ先までご連絡ください。フィードバック & お問い合わせ
1. (WO2015133364) 複合微多孔質膜及びこれを用いたフィルター
Document

明 細 書

発明の名称 複合微多孔質膜及びこれを用いたフィルター

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022  

発明の効果

0023  

図面の簡単な説明

0024  

発明を実施するための形態

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048  

実施例

0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

符号の説明

0073  

産業上の利用可能性

0074  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 複合微多孔質膜及びこれを用いたフィルター

技術分野

[0001]
 本発明は、膜分離活性汚泥法(メンブレンバイオリアクター:MBR)等に代表される水処理用途に適した微多孔質膜に関する。

背景技術

[0002]
 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる微多孔質膜は耐薬品性、耐熱性に優れることからエアフィルター、バグフィルター、液濾過用フィルターとして幅広く使用されている。PVDFの微多孔質膜の製法としては、非溶媒誘起相分離法(ポリマーをその良溶媒に溶かした溶液を作製し、この溶液をガラス板などに薄く塗布したものを非溶媒に浸漬することで相分離を誘起し、微多孔質膜を得る方法)などがある(例えば特許文献1)。
[0003]
 PVDFの微多孔質膜は疎水性であるため、水処理用途に用いるためには表面をポリビニルアルコール(PVA)等の親水化剤で被覆したり、エタノール置換したりして親水化処理を施す必要がある(例えば特許文献2)。しかし、この手法で得られる親水化微多孔質膜は親水化効果の持続性に乏しく、PVAやエタノールが全て溶出した場合に親水化効果がなくなってしまう。また、濾液中にPVAが混入したり、PVAで細孔が目詰まりしたりするといった問題がある。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 国際公開第10/032808号パンフレット
特許文献2 : 特開平05-023557号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 このようなことから、本発明の課題は、親水化剤の被覆による細孔の目詰まりがなく、恒久的な親水性を有する水処理用途の複合微多孔質膜及びこれを用いたフィルターを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、表面構造を最適化したポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜を用い、その表面をSiO ガラス層で被覆して得られた複合微多孔質膜が前記課題を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
[0007]
 本発明の第1の態様に係る複合微多孔質膜は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の少なくとも片側の表面にSiO ガラス層を被覆させたことを特徴とする。この様に構成すると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の持つ耐熱性と耐薬品性に加え、SiO ガラス層の有する親水化効果を得られるため、濾過膜として優れた性能を示す。
[0008]
 本発明の第2の態様に係る複合微多孔質膜は、上記発明の第1の態様に係る複合微多孔質膜において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜が、非溶媒誘起相分離法により作製されている。この様に構成すると、孔径が膜の厚み方向に変化する非対称構造(図8左参照)を有し、微孔が形成されたスキン層と前記スキン層を支える前記微孔よりも大きい空孔が形成された支持層を備える構造を有するため、スキン層で濾過精度を維持し、支持層で透過性を確保できるため、優れた濾過性能を示す。
[0009]
 本発明の第3の態様に係る複合微多孔質膜は、上記発明の第1の態様または第2の態様に係る複合微多孔質膜において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜は非対称膜であり、微孔が形成されたスキン層と前記スキン層を支える、前記微孔よりも大きい空孔が形成された支持層とを備え、前記スキン層は複数の球状体を有し、それぞれの前記球状体から複数の線状の結合材が3次元方向に伸びており、隣接する前記球状体は、前記線状の結合材により互いに接続され、前記球状体を交点とした3次元網目構造を形成する。
 図1に本発明に係る3次元網目構造の一例を示す。図1は、スキン層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。なお、「スキン層」とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の断面において表面からマクロボイドまでの層をいい、「支持層」とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜全体からスキン層を除いた層をいう。「マクロボイド」とは、微多孔質膜の支持層に発生し、最小で数μm、最大で支持層の厚さとほぼ同じ大きさとなる巨大な空洞をいう。「球状体」とは、3次元網目構造の交点に形成された球状であって、完全な球状に限られず、ほぼ球状も含まれる。このように構成すると、球状体と球状体の間の空隙が線状の結合材で仕切られた形となるため、形状・大きさが揃った微孔ができやすく、透過性に優れたスキン層を形成することができる。線状の結合材は、球状体を架橋する役割も果たすため、球状体が脱落等することがなく、濾液に濾材自体が混入するのを防ぐことができる。さらに、3次元網目構造の交点に球状体が存在するため、濾過膜として使用する際に圧力によりスキン層がつぶれるのを防ぐことができる。すなわち、耐圧性が高い。さらに、球状体と線状の結合材による図1に示すような3次元網目構造により、スキン層の空隙が従来の同程度の孔径を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜に比べて多くなり、通路が維持され、さらに空隙がより均質に立体的に配置されているため、優れた透過性を有する。
[0010]
 本発明の第4の態様に係る複合微多孔質膜は、上記本発明の第3の態様に係る複合微多孔質膜において、前記球状体の粒径が、平均粒径の±10%の幅の範囲に50%以上となる度数分布を有する。このように構成すると、スキン層が有する球状体は、その粒径が揃ったものとなる。よって、球状体と球状体の間に、孔径が均一な空隙が形成され易い。
[0011]
 本発明の第5の態様に係る複合微多孔質膜は、上記本発明の第3の態様または第4の態様に係る複合微多孔質膜において、前記結合材の長さが、平均長の±30%の幅の範囲に50%以上となる度数分布を有する。このように構成すると、スキン層が有する球状体はより均一に分散される。よって、球状体と球状体の間に、孔径が均一な空隙が形成され易い。
[0012]
 本発明の第6の態様に係る複合微多孔質膜は、上記本発明の第3の態様~第5の態様のいずれか1の態様に係る複合微多孔質膜において、前記球状体は、0.05~0.5μmの平均粒径を有する。このように構成すると、上記範囲内の平均粒径を有する球状体と、球状体を相互接続する線状の結合材により、球状体と球状体の間に、微孔が容易に形成される。
[0013]
 本発明の第7の態様に係る複合微多孔質膜は、上記本発明の第3の態様~第6の態様のいずれか1の態様に係る複合微多孔質膜において、前記スキン層の厚みは、0.5~5μmであり、前記支持層の厚みは、20~500μmである。このように構成すると、スキン層は非対称膜において不純物を取り除く層(機能層)であるため、球状体を交点とした3次元網目構造の形成を妨げない範囲内であれば、薄いほど濾過抵抗を小さくできるため好ましい。微多孔質膜の大部分を占める支持層は、不純物の除去にほとんど寄与しないが、極度に薄いスキン層だけでは破れてしまうため、スキン層よりも十分に厚い支持層によりこれを回避することができる。
[0014]
 本発明の第8の態様に係る複合微多孔質膜は、上記本発明の第3の態様~第7の態様のいずれか1の態様に係る複合微多孔質膜において、前記支持層を支える基材層を備える。
 このように構成すると、基材層が補強材となり、より高い濾過圧に耐えられるようになる。また、製膜時の塗布において、素材となる樹脂を溶媒に溶解させた原料液が不用意に流れ出すのを防ぐことができる。特に、粘性の低い原料液の場合に有効である。なお、支持層の一部は基材層と混在した形となり、両者の境界はそれほど明確ではない。支持層と基材層の混在部分が少なすぎると、支持層が基材層から剥離しやすくなる場合がある。
[0015]
 本発明の第9の態様に係る複合微多孔質膜は、上記本発明の第1の態様~第8の態様に係る複合微多孔質膜において、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、60万~100万である。
 このように構成すると、上記重量平均分子量のポリフッ化ビニリデン系樹脂では、球状体とそれらを互いに架橋接続する線状の結合材による球状体を交点とした3次元網目構造を有するスキン層を備えたポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜を容易に形成することができる。
[0016]
 本発明の第10の態様に係る複合微多孔質膜は、上記本発明の第1の態様~第9の態様のいずれか1の態様に係る複合微多孔質膜において、その平均流孔径が5~500nmである。平均流孔径が5nm以上であると、濾過時の目詰まりに伴う圧力損失の増加を最小限にすることができ、500nm以下であると、粗大不純物粒子の透過を抑制することができるため、優れた濾過性能を示す。
[0017]
 本発明の第11の態様に係る複合微多孔質膜は、上記本発明の第1の態様~第10の態様のいずれか1の態様に係る複合微多孔質膜において、平膜の形状を示す。このように構成すると、中空糸と比較して、濾過膜を複数組み合わせたモジュールを作成した際に、膜と膜の間に夾雑物が堆積しにくく、圧力損失の増加を抑制することができるため、優れた濾過性能を示す。
[0018]
 本発明の第12の態様に係るフィルターは、上記本発明の第1の態様~第11の態様のいずれか1の態様に係る複合微多孔質膜を用いることを特徴とするフィルターである。この様に構成すると、親水性および透過性に優れた複合微多孔質膜をフィルターとして利用することができる。該フィルターを用いた場合、複合微多孔質膜から不純物の溶出がないため、エネルギー効率や処理水質に優れた性能を示すことから、MBR等の水処理用途に好適に利用できる。
[0019]
 本発明の第13の態様に係る複合微多孔質膜の製造方法は、上記本発明の第1の態様~第11の態様のいずれか1の態様に係る複合微多孔質膜の製造方法であって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の少なくとも片側にシリカ前駆体の塗膜を形成した後、前記シリカ前駆体をSiO ガラスに転化させることにより、SiO ガラス層を形成し、少なくとも片側がSiO ガラスで被覆されたポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜を得る製造方法である。この様に構成すると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の表面にムラなくSiO ガラス層を形成できるため、優れた親水化効果を得ることができる。
[0020]
 本発明の第14の態様に係る複合微多孔質膜の製造方法は、上記本発明の第13の態様に係る複合微多孔質膜の製造方法であって、前記シリカ前駆体がポリシラザンである複合微多孔質膜の製造方法である。この様に構成すると、緻密な構造を持つSiO ガラス層への転化を容易に進めることができる。
[0021]
 本発明の第15の態様に係る複合微多孔質膜の製造方法は、上記本発明の第8の態様に係る複合微多孔質膜の製造方法であって、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解した原料液を前記基材層上に塗布する塗布工程と前記塗布工程後、非溶媒中に前記基材層と塗布した前記原料液を浸ける浸漬工程とを備える。このように構成すると、非対称膜であるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜であって、スキン層が複数の球状体を有する微多孔質膜の製造方法となる。スキン層が有する球状体は、互いに線状の結合材により架橋され、球状体を交点とする3次元網目構造を形成する。球状体がより均一の大きさでより均質に分散しているため、スキン層の微孔が一様に分散し、優れた透過性を有する。
[0022]
 本発明の第16の態様に係る複合微多孔質膜の製造方法は、上記本発明の第9の態様に係る複合微多孔質膜の製造方法であって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解した原料液を基材層上または支持体上に塗布する塗布工程と前記塗布工程後、非溶媒中に前記基材層と塗布した前記原料液を浸ける浸漬工程とを備える。
 このように構成すると、スキン層が有する3次元網目構造の形成に適したポリフッ化ビニリデン系樹脂を素材として用いているため、球状体が互いに線状の結合材により架橋され、当該球状体を交点とする3次元網目構造をスキン層に容易に形成することができる。

発明の効果

[0023]
 本発明の複合微多孔質膜は、膜表面がSiO ガラス層で被覆された規則的な3次元網目構造を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜からなる複合微多孔質膜であるため、耐熱性、耐薬品性に優れ、高い空孔率と、恒久的な親水性を有する。

図面の簡単な説明

[0024]
[図1] 図1は本発明におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜が有するスキン層の表面写真である。
[図2] 図2は従来のポリフッ化ビニリデン製濾過膜の写真である。
[図3] 図3は本発明における複合微多孔質膜の製造方法を示すフロー図である。
[図4] 図4は実施例1の複合微多孔質膜が有するスキン層の表面写真である。
[図5] 図5は比較例1の微多孔質膜が有するスキン層の表面写真である。
[図6] 図6の(a)は、実施例1の複合微多孔質膜の断面写真である。図6の(b)は、スキン層の断面部分の拡大写真である。
[図7] 図7は実施例1の複合微多孔質膜が有するスキン層の表面写真であり、球状体の粒径と線状の結合材の長さの測定に用いた写真である。
[図8] 図8は非対称膜の断面図(左)と対称膜の断面図(右)を示す模式図である。(出典:特許庁ホームページ/平成17年度 標準技術集 水処理技術/1-6-2-1 対称膜と非対称膜)

発明を実施するための形態

[0025]
 以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
[0026]
 本発明における複合微多孔質膜について説明する。本発明の複合微多孔質膜はポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の表面をSiO ガラス層で被覆した構造からなり、SiO ガラス層は疎水性のポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜に親水性を付与する働きをしている。
 SiO ガラス層はポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の細孔全体にシリカ前駆体溶液を浸透および被覆させて形成することが好ましいが、複合微多孔質膜に要求される通気性及び通液性を維持する必要性も考慮すれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の表面の少なくとも片側がSiO ガラス層で被覆されるように、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の少なくとも片側にSiO ガラス層を形成すればよい。
[0027]
 本発明に用いられるポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンホモポリマーおよび/またはフッ化ビニリデン系共重合体を含有する樹脂を挙げることができる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、物性(粘度、分子量等)の異なる複数種類のフッ化ビニリデン系ホモポリマーを含有させてもよい。または、複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有させてもよい。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデン残基構造を有するポリマーならば特に限定されず、典型的にはフッ化ビニリデンモノマーとそれ以外のフッ素系モノマーとの共重合体であり、例えばフッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上のフッ素系モノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体を挙げることができる。特に好ましくは、フッ化ビニリデンホモポリマー(ポリフッ化ビニリデン)である。
 本発明に用いるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜は、上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いることで構成できるが、さらに他の成分を含有していてもよい。また、本発明に用いるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる微多孔質膜でもよい。この場合、本発明の効果を妨げない範囲であれば、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂以外のポリマーや、他の特性を付与させるための抗菌剤等の添加剤を挙げることができる。
[0028]
 本発明の複合微多孔質膜は、孔径が膜の厚み方向に変化する非対称構造を有し(図8左参照)、膜の表面付近の層(スキン層)の孔径が最も小さく、裏面に向かうにつれて孔径が大きくなる。スキン層が分離特性に必要な孔径を持ち、機能層として機能する。残りの部分は、支持層として機能する層であり、孔径が大きく透過抵抗が小さく、流路と膜強度を保持する。スキン層の厚みは、0.5~5μmが好ましく、支持層の厚みは、20~500μmが好ましい。
[0029]
 図1は、本発明の複合微多孔質膜の表面(スキン層側)を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真の一部である。図1に示すように、スキン層は複数の球状体1を有し、それぞれの球状体1から複数の線状の結合材2が3次元方向に伸びており、互いに隣接する球状体1は、線状の結合材2により接続され、球状体1を交点とした3次元網目構造を形成しており、生じた空隙が孔となっている。そのため、スキン層に孔ができやすく、その孔が変形しにくい。非対称膜は、スキン層と呼ばれる緻密な薄い層を有しており、この層は一般に孔が少ないため、この層に変形しにくい多くの孔を開けることが、透過性を改良するために極めて有効である。第3の実施の形態に係る複合微多孔質膜は、スキン層が有する球状体1とそれらを互いに接続する線状の結合材2により、透過性が大幅に改良されている。そのため、同程度の平均流孔径を有する従来の微多孔質膜よりも高い透過性を有することができる。ここで「平均流孔径」とは、ASTM F316-86で求められる値であり、複合微多孔質膜を濾過膜として使う場合、その阻止粒径に大きく影響する。本発明において、複合微多孔質膜の平均流孔径は、5~500nmであることが好ましく、5~450nmがより好ましく、10~400nmが最も好ましい。複合微多孔質膜の平均流孔径が5nm以上であると、濾過時の目詰まりに伴う圧力損失の増加を最小限にできるため好ましく、500nm以下であると、粗大不純物粒子の透過を抑制することができるため好ましい。
 さらに球状体1は、図1に示すように、その大きさがほぼ揃っており、ほぼ均一に分散している。そのため、球状体1と球状体1の間に生ずる空隙の形状と大きさが揃ったスキン層を構成する。球状体1間の空隙は、隣接する球状体1を架橋する線状の結合材2により区切られ、その結果として形成された孔は、外周曲線に凹みがない卵型またはほぼ卵型となる。このように、孔の形状が均質の微多孔質膜となる。
[0030]
 従来のポリフッ化ビニリデン製濾過膜の表面は、本発明でいう「球状体」または「結合材」を有していたとしてもどちらか一方しか有していないため、本発明の効果が得られない。例えば、本発明でいう「結合材」に相当する部分しか持たないポリフッ化ビニリデン製濾過膜は、濾過膜として使えるだけの強度を維持するために、「結合材」に相当する部分を太くする必要があり、したがって、線状ではなく面状となるため、孔を微細にすることが難しい。図2は、一例として、そのような構造を持つ、従来のポリフッ化ビニリデン製濾過膜の走査型電子顕微鏡写真である。
[0031]
 本発明の複合微多孔質膜のスキン層が有する球状体の平均粒径は、0.05~0.5μmであることが好ましい。より好ましくは0.1~0.4μmであり、さらに好ましくは0.2~0.3μmである。球状体の粒径は、その多くが平均粒径に近い値をとり、均一な大きさとなる。また、平均粒径は製造された微多孔質膜により異なり、上記のとおり値には幅がある。そのため、スキン層に形成される孔の大きさが異なり、平均流孔径の異なる種々の微多孔質膜を得ることができる。
 球状体の粒径は、複合微多孔質膜のスキン層側表面を球状体が明確に確認できる倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて写真を撮り、少なくとも50個の任意の球状体の粒径を測定し、数平均することにより求めることができる。具体的には、実施例に記載したとおりである。なお「粒径」とは、図7に示すとおり、球状体の外周をその周囲の孔を含まないような最大直径の真円で囲んだ場合の当該真円の直径である。スキン層が有する孔の形状をより均一にするために、個々の球状体の形状は完全な球体に近いことが好ましく、球状体の大きさはばらつきが少ないことが好ましい。
[0032]
 球状体の粒径は、度数分布において、平均粒径の±10%幅の範囲に50%以上の度数分布を有していることが好ましい。より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。平均粒径の±10%の幅の範囲に50%以上の度数が分布していると、スキン層の球状体はより均一の形状・大きさを有し、球状体と球状体の間に孔径が均一の(揃った)空隙を形成することができる。
[0033]
 本発明の複合微多孔質膜のスキン層が有する線状の結合材の平均長は、0.05~0.5μmであることが好ましい。より好ましくは0.1~0.4μm、さらに好ましくは0.2~0.3μmである。線状の結合材の長さは、その多くが平均長に近い値をとり、均一な長さとなる。また、平均長は製造された微多孔質膜により異なり、上記のとおり値には幅がある。そのため、スキン層に形成される孔の大きさが異なり、平均流孔径の異なる種々の複合微多孔質膜を得ることができる。
 線状の結合材の平均長は、複合微多孔質膜のスキン層側表面を線状の結合材が明確に確認できる倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて写真を撮り、少なくとも100本の任意の線状の結合材の長さを測定し、数平均することにより求めることができる。具体的には、実施例に記載したとおりである。「線状の結合材の長さ」とは、図7に示すとおり、球状体の外周をその周囲の孔を含まないような最大直径の真円で囲んだ場合の当該真円間の距離である。
[0034]
 線状の結合材の長さは、度数分布において、平均長の±30%幅の範囲に50%以上の度数分布を有していることが好ましい。より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは、60%以上である。平均長±30%の幅の範囲に50%以上の度数が分布していると、スキン層の球状体はより均質に分散され、球状体と球状体の間に孔径が均一または揃った空隙を形成することができる。
[0035]
 球状体の平均粒径と線状の結合材の平均長の比率は、3:1~1:3の間にあることが好ましい。球状体の平均粒径が線状の結合材の平均長の3倍より小さいと、複合微多孔質膜のスキン層表面の開口部が大きくなり、高い透過量がより顕著に得られるようになる。また、球状体の平均粒径が結合材の平均長の3分の1より大きいと、1つの球状体に接続できる結合材の数が多くなるので、濾材の脱落が少なく、耐圧性が高いという特徴がより顕著に得られるようになる。
[0036]
 ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、60万~100万であることが好ましい。より好ましくは70万~95万であり、さらに好ましくは79万~90万である。ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が高いほど、球状体と線状の結合材が生成しやすくなり、3次元網目構造を有するスキン層を備えたポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜を容易に得ることができるようになる。これにより、後述する良溶媒や貧溶媒などの選定幅が広がり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の透過性や膜強度をより上げることが容易になる。また、重量平均分子量(Mw)を100万よりも大幅に高くしすぎないようにすることで、原料液の粘度を抑えることができるので、均一に塗布しやすくなり、支持層と基材層の混在部分がよりできやすくなるため好ましい。
 なお、本発明の効果を妨げない範囲で、他素材との接着性や膜強度を上げるために、この範囲を外れる重量平均分子量(Mw)のポリフッ化ビニリデン系樹脂を混合してもよい。
[0037]
 ここで、良溶媒とは、原料液を塗布する温度条件で、必要量のポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させることが可能な液である。また、非溶媒とは、塗膜中の良溶媒を非溶媒に置換する温度条件で、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解も膨潤もさせない溶媒である。また、貧溶媒とは、必要量のポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させることはできないが、それ未満の量を溶解させることができるか、あるいは膨潤させる溶媒である。
[0038]
 良溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等を挙げることができる。これらの良溶媒は混合して用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で、貧溶媒、非溶媒が含まれていてもよい。製膜を常温で行う場合には、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。
[0039]
 非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o-ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体等を挙げることができる。非溶媒は、良溶媒に溶解する必要があり、良溶媒と自由比率で混合するものが好ましい。非溶媒に意図的に良溶媒や貧溶媒を加えてもよい。
 良溶媒と非溶媒の置換速度は、本発明において、3次元網目構造の発現に影響するため、その組合せも重要である。組合せとしては、3次元網目構造の発現のし易さから、NMP/水、DMAc/水、DMF/水などが好ましく、DMAc/水の組合せが特に好ましい。
[0040]
 製膜用の原料液には、素材となるポリフッ化ビニリデン系樹脂とその良溶媒の他に、多孔化を促す多孔化剤を添加することが好ましい。多孔化剤としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒への溶解を阻害せず、非溶媒に溶解し、微多孔質膜の多孔化を促す性質を有するものならば、なんら限定されるものではない。その例としては有機物の高分子物質または低分子物質などがあり、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの水溶性ポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル(モノ、トリエステル体等)等の多価アルコールのエステル体、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド低モル付加物、ノニルフェノールのエチレンオキサイド低モル付加物、プルロニック型エチレンオキサイド低モル付加物等のエチレンオキサイド低モル付加物、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアミン塩、ポリアクリル酸ソーダ等の界面活性剤、グリセリンなどの多価アルコール類、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類を挙げることができる。これらは1種類で用いても2種類以上の混合物で用いてもよい。これらの多孔化剤は、重量平均分子量(Mw)50,000以下のものが好ましく、より好ましくは30,000以下であり、さらに好ましくは10,000以下である。多孔化剤の重量平均分子量が上記範囲内であれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液へ均一に溶解するため好ましい。この多孔化剤は、非溶媒中で良溶媒が抽出され構造凝集が起こるときに良溶媒に比べて比較的長時間、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜中に残留すると考えられる。非溶媒に水を用いる場合の多孔化剤としては、これらの機能を発揮しやすいことから、特にポリエチレングリコールが好ましく、その重量平均分子量が200~1000であるものがさらに好ましい。
[0041]
 多孔化剤を用いると、良溶媒抽出に伴う構造凝集が緩やかになってから、多孔化剤が抽出されるので、得られたポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する多孔質樹脂は、空孔性が高くなる。得られる構造は、多孔化剤の種類、分子量、添加量等に依存する。多孔化剤は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂重量に対して0.1倍~2倍量を添加することが好ましく、0.5倍~1.5倍量とすればさらに好ましい。多孔化剤の添加量が上記範囲内であれば、支持層に生じるマクロボイドが大きくなり過ぎることがなく、膜強度が低下することもなく好ましい。
[0042]
 本発明の複合微多孔質膜の製造方法は、以下のとおりである。なお、図3は、製造方法の大まかな流れを示している。
(1)原料液の調製工程(S01):
 まず、微多孔質膜の素材となるポリフッ化ビニリデン系樹脂を、多孔化剤と共に、良溶媒となる溶媒に溶解して原料液を作る。
 具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、5~20重量部のポリフッ化ビニリデンを使用し、多孔化剤として、素材重量に対して0.1倍~2倍量のポリエチレングリコールを使用して、溶媒として、70~90重量部のジメチルアセトアミド(DMAc)を使用して、これに常温~100℃で溶解させることで、原料液を得る。なお、原料液は、通常、常温に戻した後、使用する。
 ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、アルケマ製ポリフッ化ビニリデン「カイナーHSV900」「カイナーHSV800」「カイナー761A」、ソルベイ製「Solef6020」、クレハ製「W#7200」等を挙げることができる。
(2)多孔化工程(S02):
 次に、支持体としてのガラス板上に基材層としての不織布を置き、その上に原料液を塗布する。なお、不織布等を置かず、ガラス板上に直接塗布してもよく、その場合は基材層がないポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜となる。また、塗布は、製膜後の厚さが10~500μmとなるように行うことが好ましい。塗布後、直ちにまたは一定時間放置した後、支持体ごとポリフッ化ビニリデン系樹脂に対しての非溶媒に3分~12時間浸ける。塗布後の放置時間を設ける場合は、5~60秒程度が好ましい。放置時間を長く取ると平均流孔径が大きくなるが、長く取りすぎるとピンホールが生じて本発明の効果が十分に得られないことがある。良溶媒と非溶媒とが混合し、非溶媒の混入により良溶媒中の高分子の溶解性が低下し、高分子が析出し多孔化が生ずる。具体的には、ガラス板上にポリエステル不織布を置き、原料液を塗布する。塗布には、ベーカーアプリケータ、バーコーター、Tダイなどを用いることができる。非溶媒に浸けた後、支持体としてのガラス板を除去し、微多孔質膜を得る。
(3)洗浄・乾燥工程(S03):
 次に、微多孔質膜を水槽中で、非溶媒としての水(超純水)を数回入れ替えて洗浄する。一般にDMAcは水よりも蒸発しにくいことから、洗浄が不完全であると溶媒(DMAc)が濃縮し、作られた孔構造が再び溶解することがあるので、複数回の洗浄が好ましい。排水量を減らし、洗浄速度を早めるために、洗浄に温水を用いてもよいし、超音波式洗浄機を用いてもよい。洗浄した後、微多孔質膜を乾燥してもよい。乾燥は、自然乾燥でもよいし、乾燥速度を速めるために、熱風式乾燥機や遠赤外乾燥機を用いてもよいし、乾燥時の微多孔質膜の収縮やうねりを防ぐため、ピンテンター式乾燥機を用いてもよい。
(4)SiO ガラス層の形成工程(S04)
 最後に、洗浄・乾燥工程(S03)で得られたポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の表面にSiO ガラス層を形成させる。SiO ガラス層を形成する方法としては、例えば、ポリオルガノシロキサンを、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜に浸透付着させ、加熱などの手法で転化させるゾル-ゲル法を挙げることができる。
 具体的には、加水分解性ケイ素含有有機化合物を水と反応させて部分的にゲル化させた溶液を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の表面に塗布や噴霧等の手法で付着させた後、水と反応させて完全にゲル化させ、さらに通常25~120℃の範囲の好適な温度で加熱乾燥させて、複合微多孔質膜を得る手法を挙げることができる。また、下記式(A)で表される構成単位を有するポリシラザン類化合物を主体とする溶液(ポリシラザン溶液)を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜に塗布や噴霧等の手法で付着させた後、空気加熱や熱水、或いは水蒸気等の処理を経てSiO ガラス層に転化させて、複合微多孔質膜を得るポリシラザン法などを挙げることができる。
[0043]
[化1]


[0044]
 式(A)中、Rはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~22のアルキルを示す。
 本発明の複合微多孔質膜を得るためには、シリカ前駆体としてポリシラザンを用いたポリシラザン法が最も好ましい。ポリシラザン法は、緻密な構造を持つSiO ガラス層への転化が比較的容易に進むことで高強度の複合微多孔質膜を得易く、架橋剤や触媒残渣等に由来する不純物溶出が少ないため好ましい。
[0045]
 本発明で用いるポリシラザンは、低温でSiO ガラスに転化できるポリシラザンであることが好ましい。このようなポリシラザンの例として、特開平2004-155834号公報に記載されているSi-H結合を有するポリシラザンを含有する溶液や、特開平5-238827号公報に記載されているケイ素アルコキシド付加ポリシラザンや、特開平6-122852号公報に記載されているグリシドール付加ポリシラザン、特許第3307471号公報に記載されているアセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンなどを挙げることができる。なお、ポリシラザン溶液は、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製「アクアミカ」として入手できる。
 前記ポリシラザン溶液を前記微多孔質膜に塗布する方法としては、特に限定されないが、ロールコート、グラビアコート、ブレードコート、スピンコート、バーコート、スプレーコート等公知の方法を挙げることができる。前記微多孔質膜に前記ポリシラザン溶液を塗布し、付着させた後にプレ乾燥により溶剤を蒸発、ポリシラザン層を作製する。さらに加熱や熱水浸漬、スチーム暴露等の手法によってポリシラザン層をSiO ガラス層に転化させて、微多孔質膜とする。なお、ポリシラザン層を形成した状態で巻き取った後、巻取り体ごと加熱やスチーム暴露等の処理を施してSiO ガラス層に転化させてもよい。
[0046]
 多孔化工程(S02)のとおり、製膜時には基材層を備えてもよい。基材層を備えると、原料液の塗布の際に原料液が不用意に流れ出すのを防ぐことができる。特に、粘性の低い原料液の場合に有効である。さらに、基材層は濾過の際の補強材として機能し、膜が濾過圧に耐えられるようになる。基材層としては、抄紙、スパンボンド法やメルトブロー法などで得られた不織布、織布、多孔質板などを用いることができ、その素材にはポリエステル、ポリオレフィン、セラミックなどを用いることができる。中でも、柔軟性、軽量性、強度、耐熱性などのバランスに優れることから、ポリエステル製不織布、ポリプロピレン製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布が好ましい。なお、不織布を用いる場合、その目付は15~150g/m の範囲が好ましく、30~90g/m の範囲がさらに好ましい。目付が15g/m を上回ると、基材層を設けた効果が十分に得られる。また、目付が150g/m を下回ると、折り曲げや熱接着などの後加工がし易くなる。
[0047]
 SiO ガラス層の形成工程(S04)において、ポリシラザン溶液の濃度は0.1~20重量部の範囲が好ましく、0.5~10重量部の範囲がさらに好ましい。ポリシラザン濃度が0.1重量部を上回ると十分な親水化効果が得られ、20重量部を下回るとSiO ガラス層が細孔を閉塞しないため、十分な透過性を確保できる。
 また、ポリシラザン溶液を付着する過程には、微多孔質膜の耐薬品性、耐熱変形性を妨げない範囲で、ポリシラザン溶液に適当な充填剤を加えることにより、フィルターとしての性能をさらに向上させることができる。充填剤の例としては、酸化亜鉛、二酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカの他、炭化ケイ素、窒化ケイ素、カーボンなどの微粒子を挙げることができる。カーボンとしては、グラファイトカーボン微粒子の他に活性炭、カーボンナノチューブ等から構成される微粒子も含まれる。これら充填剤の少なくとも1種がポリシラザンと共に微多孔質膜に付着し、SiO ガラス層中に強固に固着することにより脱落のない複合多孔質膜を得ることができる。
 ポリシラザン溶液中の充填剤の濃度は、通常0~20重量%、好ましくは0~10重量%である。このような濃度範囲であると、フィルターとしての性能を更に向上させることができる。
[0048]
 以上のとおり、本発明の複合微多孔質膜は、表層がSiO ガラス層で被覆されているため、高い親水性を有し、SiO ガラス層によるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の微孔の閉塞もないため、高い透過性を維持することが可能となる。また、膜材料としてポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いているため、優れた耐薬品性、高い耐熱温度(~120℃)を有することができる。さらに、スキン層が均質の球状体と線状の結合材による3次元網目構造を有するため、スキン層の孔の大きさや孔径が揃っており、高い透過性(例えば高通水性、高通液性)を実現することができる。すなわち、孔の大きさや形がより均一であるため、孔径分布のより狭い膜となり、粒子阻止率を保ちつつ従来にない透過性を得ることができる。さらに、上記のような3次元網目構造を有する微多孔質膜であるためポリシラザン溶液を膜全体に均質に塗布しやすくSiO ガラス層の親水化効果を効果的に発揮できる。本発明の複合微多孔質膜は、濾過膜等のフィルター用途以外に、絆創膏などに使う薬液保持材、衛生材料の表面材、バッテリーセパレータ等といった用途に用いることもできる。
実施例
[0049]
 以下に、実施例等を参照して本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの記載により本発明の範囲が限定されることはない。
[0050]
〔使用した部材等〕
 多孔化材であるポリエチレングリコール600(重量平均分子量600)は、和光純薬工業(株)製の試薬1級を用いた。
 溶媒であるN-ジメチルアセトアミドは、和光純薬工業(株)製の試薬特級を用いた。
 ポリフッ化ビニリデンは、アルケマ製ポリフッ化ビニリデン「カイナーHSV900」(重量平均分子量80万、数平均分子量54万)を用いた。
 基材層として、ポリエステル不織布は、日本バイリーン製カード不織布(H-8007、目付70g/m )を用いた。
 支持体は、ガラス板(大きさ20cm×20cm)を用いた。
 水は、ミリポア製「DirectQ UV」(商品名)で製造した比抵抗値18MΩ・cm以上の超純水を用いた。
[0051]
〔評価方法〕
 実施例および比較例で得られた微多孔質膜の物性値は下記の方法にて測定した。
1)ポリマーの平均分子量
 数平均分子量、重量平均分子量は、ポリマーをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、カラムとしてShodex Asahipak KF-805Lを用いて、DMFを展開剤としてゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。
2)スキン層の厚み、支持層の厚み
 図6に示すとおり、得られた複合微多孔質膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影し、この写真を画像解析して、表面からマクロボイドが存在するまでの長さを「スキン層の厚み」、複合微多孔質膜全体の厚みからスキン層の厚みを引いた値を「支持層の厚み」とした。
3)平均流孔径
 平均流孔径は、PMI社製「Capillary Flow Porometer CFP-1200AEX」を用い、ASTM F316-86に準じて求めた。
4)流束
 得られた複合微多孔質膜を直径25mmに切り取り、適当量のエタノールに浸漬した場合と浸漬していない場合それぞれについて有効濾過面積3.5cm のフィルターシートホルダーにセットし、濾過圧力50kPaで加圧して水を5mL通水させ、通水に要する時間を測定した。流束を下記式(1)により求めた。
 流束(10 -9/m /Pa/sec)=通水量(m )÷有効濾過面積(m )÷濾過圧力(Pa)÷時間(sec)              ・・・(1)
5)球状体の数、平均粒径、度数分布
 複合微多孔質膜のスキン層表面を、走査型電子顕微鏡で、倍率2万倍で写真撮影した。そして、図7に示すとおり、写真中央の縦4μm×横6μmの領域に中心部を有する球状体について、球状体の外周を、その周囲の孔が含まれないような最大直径の真円で囲み、その真円の直径を球状体の粒径とした。ただし、接続する線状の結合材の数が3以下のものは、線状の結合材との区別が難しいため、球状体とはみなさなかった。そして、該領域に含まれる全球状体の直径の平均値を、平均粒径とした。また、全球状体の中から、平均粒径の±10%の幅の範囲に含まれる粒子を数え、その数を、球状体の全粒子数で割って、度数分布を求めた。
6)結合材の数、平均長、度数分布
 図7に示すとおり、該領域に含まれる球状体の間にある全ての結合材(ただし2つの球状体が複数の結合材で結ばれている場合にはその内の1本のみ)の数と長さを測定し、全結合材の数と平均長を求めた。また、その中から、その平均長の±30%の幅の範囲に含まれる結合材の数を数え、その数を全結合材の数で割って、度数分布を求めた。
[0052]
[実施例1]
〔原料液の調製工程〕
 原料液の全量を100重量部として、ジメチルアセトアミドを86重量部、ポリフッ化ビニリデン「カイナーHSV900(重量平均分子量80万)」を7重量部、ポリエチレングリコールを7重量部とし、これらを混合し、90℃で溶解した。それを常温に戻して原料液とした。
〔多孔化工程〕
 ガラス板上に、ポリエステル不織布を置き、その上に原料液を、ベーカーアプリケータを使って厚さ250μmで塗布した。塗布後、直ちに水に入れ、膜を多孔化した。水を数回入れ替えて洗浄し、その膜を水から出し、乾燥してポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜とした。
〔SiO ガラス層形成工程〕
 ポリシラザン溶液として、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製「アクアミカ(登録商標)型番NAX121-01(ポリシラザン濃度1.0重量部)」を用い、多孔化工程を終えたポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜を浸漬し、取り出した後、溶媒が完全に蒸発するまで30分程度ドラフト内で静置し、130℃に保ったオーブン内に入れ、1時間加熱処理を行った後常温で1週間静置し、複合微多孔質膜を得た。
[0053]
[比較例1]
 SiO ガラス層形成工程を省略した以外はすべて実施例1と同じ方法で単層の微多孔質膜を得た。
[0054]
 図4と図5のスキン層の走査型電子顕微鏡写真を比較してわかるように、実施例1の複合微多孔質膜のスキン層は球状体と線状の結合材からなる3次元網目構造を構成しており、比較例1の単層の微多孔質膜のスキン層と比較してもSiO ガラス層により微孔が閉塞されていないことがわかる。表1に示すとおり、平均流孔径も同じ値を示していることからも微多孔質膜の内部が閉塞していないこともわかる。また、実施例1は比較例1と比べてエタノール処理なしでも非常に高い流束を示していることから、SiO ガラス層の形成により、親水性が非常に高くなっていることがわかる。
[0055]
[表1]


[0056]
 表2~3に、実施例1の複合微多孔質膜の走査型電子顕微鏡写真から求めた球状体1の粒径(真円直径)を示す。
[0057]
[表2]


[0058]
[表3]


[0059]
 表4に実施例1の球状体の粒径の特徴を示す。実施例1の複合微多孔質膜が有するスキン層は、球状体の平均粒径が0.190μmである。さらに、球状体の62%にあたる112個の球状体は、その粒径が平均粒径の±10%の範囲内に入るものである。
[0060]
[表4]


[0061]
 表5に球状体の粒径の度数分布表を示す。粒径は、幅0.05μm(0.15~0.20μm)内に集中しており、球状体が均一の粒径を有していることがわかる。
[0062]
[表5]


[0063]
 表6~10に、実施例1の複合微多孔質膜の走査型電子顕微鏡写真から求めた線状の結合材2の長さ(真円間の長さ)を示す。
[0064]
[表6]


[0065]
[表7]


[0066]
[表8]


[0067]
[表9]


[0068]
[表10]


[0069]
 表11に実施例1の線状の結合材の特徴を示す。実施例1の複合微多孔質膜が有するスキン層は、線状の結合材の平均長が0.219μmである。さらに、結合材の61%にあたる259本の結合材は、その長さが平均長の±30%の範囲内に入っている。
[0070]
[表11]


[0071]
 表12に線状の結合材の長さの度数分布表を示す。度数分布は、0.20~0.25μmの範囲がピークとなるように増加減少しており、結合材の長さが特定の範囲に集中しているのがわかる。
[0072]
[表12]


符号の説明

[0073]
1  球状体
2  線状の結合材
3  膜全体の厚み(支持層の厚み=全体-スキン層)
4  マクロボイド
5  スキン層の厚み

産業上の利用可能性

[0074]
 本発明の複合微多孔質膜は、アルコール置換等の親水化処理なしで高い透水性を示すことから、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が有する耐薬品性と耐熱性に優れたフィルターを作製することができる。このため、メンブレンバイオリアクターや浄水膜、高温殺菌の工程が必須となる医薬、食品用途への用途に対し、特に有効な利用が可能となる。

請求の範囲

[請求項1]
 ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の少なくとも片方の表面にSiO ガラス層を被覆させたことを特徴とする複合微多孔質膜。
[請求項2]
 ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜が非溶媒誘起相分離法を用いて作製されることを特徴とする請求項1に記載の複合微多孔質膜。
[請求項3]
 ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜が非対称膜であって、微孔が形成されたスキン層と前記スキン層を支える、前記微孔よりも大きい空孔が形成された支持層とを備え、前記スキン層は複数の球状体を有し、それぞれの前記球状体から複数の線状の結合材が3次元方向に伸びており、隣接する前記球状体は、前記線状の結合材により互いに接続され、前記球状体を交点とした3次元網目構造を形成する、請求項1または2に記載の複合微多孔質膜。
[請求項4]
 前記球状体の粒径は、平均粒径の±10%の幅の範囲に50%以上の度数分布を有する、請求項3に記載の複合微多孔質膜。
[請求項5]
 前記結合材の長さは、平均長の±30%の幅の範囲に50%以上の度数分布を有する、請求項3または4に記載の複合微多孔質膜。
[請求項6]
 前記球状体は、0.05~0.5μmの平均粒径を有する、請求項3~5のいずれか1項に記載の複合微多孔質膜。
[請求項7]
 前記スキン層の厚みは、0.5~5μmであり、前記支持層の厚みは、20~500μmである、請求項3~6のいずれか1項に記載の複合微多孔質膜。
[請求項8]
 前記支持層を支える基材層を備える、請求項3~7のいずれか1項に記載の複合微多孔質膜。
[請求項9]
 前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、60万~100万である、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合微多孔質膜。
[請求項10]
 複合微多孔質膜の平均流孔径が、5~500nmであることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の複合微多孔質膜。
[請求項11]
 複合微多孔質膜が、平膜の形状であることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の複合微多孔質膜。
[請求項12]
 請求項1~11のいずれか1項に記載の複合微多孔質膜を用いることを特徴とするフィルター。
[請求項13]
 請求項1~11のいずれか1項に記載の複合微多孔質膜の製造方法であって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜の少なくとも片側にシリカ前駆体の塗膜を形成した後、前記シリカ前駆体をSiO ガラスに転化させることにより、SiO ガラス層を形成し、少なくとも片側がSiO ガラスで被覆されたポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する微多孔質膜を得ることを特徴とする複合微多孔質膜の製造方法。
[請求項14]
 前記シリカ前駆体が、ポリシラザンであることを特徴とする請求項13に記載の微多孔質膜の製造方法。
[請求項15]
 請求項8に記載の複合微多孔質膜の製造方法であって、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解した原料液を前記基材層上に塗布する塗布工程と前記塗布工程後、非溶媒中に前記基材層と塗布した前記原料液を浸ける浸漬工程とを備える複合微多孔質膜の製造方法。
[請求項16]
 請求項9に記載の複合微多孔質膜の製造方法であって、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解した原料液を基材層上または支持体上に塗布する塗布工程と前記塗布工程後、非溶媒中に前記基材層または支持体と塗布した前記原料液を浸ける浸漬工程とを備える複合微多孔質膜の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]