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1. (WO2015133266) 電気回路網のSパラメータ導出方法
Document

明 細 書

発明の名称 電気回路網のSパラメータ導出方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

非特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013   0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018   0019   0020  

発明の効果

0021  

図面の簡単な説明

0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070  

符号の説明

0071  

請求の範囲

1   2  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 電気回路網のSパラメータ導出方法

技術分野

[0001]
 本発明は電気回路網のSパラメータ導出方法に関する。

背景技術

[0002]
 従来、表面実装型電子部品などの同軸コネクタを有しない電子部品は、同軸コネクタを有する測定治具に実装し、測定治具と測定装置の間を同軸ケーブルを介して接続して、電気特性が測定されることがある。このような測定においては、個々の測定治具の特性のばらつきや、個々の同軸ケーブル及び測定装置の特性のばらつきが、電気特性測定誤差の原因となる。
[0003]
 同軸ケーブル及び測定装置については、基準特性を有する標準器を同軸ケーブルを介して測定装置に接続して測定することにより、標準器を接続した同軸ケーブル先端よりも測定装置側の誤差を同定することができる。
[0004]
 しかし、測定治具については、電子部品を実装する部分の接続端子と同軸ケーブルに接続するための同軸コネクタとの間の電気特性の誤差を精度よく同定することができない。また、測定治具間の特性が一致するように調整することは容易ではない。特に広い帯域幅で、測定治具間の特性が一致するように測定治具を調整することは、極めて困難である。
[0005]
 そこで、補正データ取得用試料を複数の測定治具に実装して測定し、測定治具間における測定値のばらつきから、ある測定治具(以下、「基準治具」という。)と他の測定治具(以下、「試験治具」という。)との間の相対的な誤差を補正する数式を予め導出しておき、任意の電子部品の電気特性について、試験治具に実装した状態で測定した測定値(試験治具測定値)から、この数式を用いて、その電子部品を基準治具に実装して測定した測定値(試験治具測定値)についての推定値を算出する、いわゆる相対誤差補正法が提案されている。
[0006]
 例えば図10に示すように、補正するため数式CA 6×6を示す第1の回路網32aと、測定値S T3×3を示す第2の回路網30aとが接続された回路網全体20aから、推定値S D3×3を算出することができる(例えば、特許文献1~3参照)。
[0007]
 回路網を接続した結果を正確に計算するためには、一般的に、回路網をSパラメータで表し計算するメーソン法が用いられる(例えば、非特許文献1参照)。
[0008]
 高速な回路網接続演算を行うための最も一般的な解決手段として、Tパラメータを用いた単純な行列演算を用いた手法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特許第3558086号公報
特許文献2 : 特許第4009876号公報
特許文献3 : 特許第5246172号公報

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : Hunton, J.K.、"Analysis of Microwave Measurement Techniques by Means of Signal Flow Graphs"、IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques、vol. 8、issue 2、p.206-212
非特許文献2 : Frei, J.; Cai, Xiao-Ding; Muller, S.、"Multiport S-Parameter and T-Parameter Conversion With Symmetry Extension"、IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques、vol.56、issue 11、p.2493-2504

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 例えば図1に示すように、入力ポートの数と接続ポートの数が異なる非対称回路網52に、DUTの回路網2が接続された回路網全体56について計算する場合、先行技術には以下の問題点がある。
[0012]
 メーソン法は、非対称回路網を含む回路網全体について正確に計算できるという長所がある。しかしながら、計算時間が長いという欠点がある。
[0013]
 Tパラメータを用いた単純な行列演算を用いた手法では、入力ポートと接続ポートのポート数が異なるような場合(このような条件のTパラメータを「Unbalance Tパラメータ」と呼ぶ。)には、正確な計算結果が得られない。
[0014]
 本発明は、かかる実情に鑑み、非対称回路網を含む回路網全体のSパラメータを正確に、かつ短時間で計算することができる電気回路網のSパラメータ導出方法を提供しようとするものである。

課題を解決するための手段

[0015]
 本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した電気回路網のSパラメータ導出方法を提供する。
[0016]
 電気回路網のSパラメータ導出方法は、(i)入力ポートと接続ポートとを有する第1の回路網の第1Sパラメータを用意する第1のステップと、(ii)第2の回路網のSパラメータを測定する第2のステップと、(iii)前記第1のステップで用意した前記第1Sパラメータと前記第2のステップで計測した前記第2の回路網の前記第1Sパラメータ又は前記第1Tパラメータとを用いて、前記第1の回路網の前記接続ポートに前記第2の回路網が接続された回路網全体のSパラメータを計算する第3のステップとを備える。前記第1の回路網は、前記入力ポートの数が前記接続ポートの数より少ない非対称回路網である。前記第3のステップにおいて、前記回路網全体の前記全体Sパラメータとして、前記第1の回路網の前記入力ポート側にダミーポートを追加して前記第1の回路網を対称回路網に変換した仮想第1の回路網を想定したうえで、前記仮想第1の回路網の仮想Tパラメータのうち前記ダミーポートに対応するパラメータを未知の値として用いて、前記仮想第1の回路網の前記接続ポートに前記第2の回路網が接続された仮想回路網全体の仮想Sパラメータのうち前記入力ポートに対応する前記全体Sパラメータを計算する。
[0017]
 上記方法において、第1の回路網に第2の回路網を接続した回路網全体の全体Sパラメータを計算することによって、第2の回路網の第2Sパラメータの測定値を第1の回路網を用いて補正することができる。仮想第1の回路網が対称回路網であるため仮想第1の回路網の仮想Tパラメータのうち前記ダミーポートに対応するパラメータを用いて、回路網全体の全体Sパラメータを短時間で計算することができる。また、仮想回路網全体の仮想Sパラメータのうち入力ポートに対応する全体Sパラメータは、正確に計算することができる。
[0018]
 また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した電気回路網のSパラメータ導出方法を提供する。
[0019]
 電気回路網のSパラメータ導出方法は、(i)入力ポートと接続ポートとを有する第1の回路網の第1Sパラメータ又は第1Tパラメータを用意する第1のステップと、(ii)第2の回路網の第2Sパラメータを測定する第2のステップと、(iii)前記第1のステップで用意した前記第1Sパラメータ又は前記第1Tパラメータと前記第2のステップで計測した前記第2の回路網の前記第2Sパラメータとを用いて、前記第1の回路網の前記接続ポートに前記第2の回路網が接続された回路網全体の全体Sパラメータを計算する第3のステップとを備える。前記第1の回路網は、前記入力ポートの数が前記接続ポートの数より多い非対称回路網である。前記第3のステップにおいて、前記回路網全体の前記全体Sパラメータとして、前記第1の回路網の前記接続ポート側に第1のダミーポートを追加して前記第1の回路網を対称回路網に変換した仮想第1の回路網と、前記第2の回路網に前記第1のダミーポートと接続される第2のダミーポートを想定したうえで、前記仮想第1の回路網の仮想Tパラメータを未知の値として用い、かつ、前記仮想第2の回路網の仮想Sパラメータのうち前記第2のダミーポートに対応するパラメータをゼロと置いて、前記仮想第1の回路網の前記接続ポート及び前記第1のダミーポートに前記仮想第2の回路網が接続された仮想回路網全体の仮想Sパラメータのうち前記入力ポートに対応する前記全体Sパラメータを計算する。
[0020]
 上記方法において、第1の回路網に第2の回路網を接続した回路網全体の全体Sパラメータを計算することによって、第2の回路網の第2Sパラメータの測定値を第1の回路網を用いて補正することができる。仮想第1の回路網が対称回路網であるため仮想第1の回路網のTパラメータを用いて、回路網全体の全体Sパラメータを短時間で計算することができる。また、仮想第2の回路網の仮想Sパラメータのうち第2のダミーポートに対応するパラメータをゼロと置くことによって、回路網全体の全体Sパラメータを正確に計算することできる。

発明の効果

[0021]
 本発明によれば、非対称回路網にダミーポートを追加して対称回路に変換し、対称回路のTパラメータを用いて、非対称回路網を含む回路網全体のSパラメータを正確に、かつ短時間で計算することができる。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 第1の回路網に第2の回路網が接続された回路ブロック図である。(計算例1)
[図2] 仮想第1の回路網に第2の回路網が接続された回路ブロック図である。(計算例1)
[図3] (a)第1の回路網の回路ブロック図、(b)仮想第1の回路網の回路ブロック図である。(計算例1)
[図4] (a)第1の回路網に第2の回路網が接続された回路ブロック図、(b)仮想第1の回路網に第2の回路網が接続された回路ブロック図である。(計算例2)
[図5] (a)第1の回路網に第2の回路網が接続された回路ブロック図、(b)仮想第1の回路網に仮想第2の回路網が接続された回路ブロック図である。(計算例3)
[図6] (a)基準治具の説明図、(b)試験治具の説明である。(実験例1)
[図7] 基準治具の写真である。(実験例1)
[図8] 試験治具の写真である。(実験例1)
[図9] 標準試料の写真である。(実験例1)
[図10] 相対誤差補正法のブロック図である。(従来例)

発明を実施するための形態

[0023]
 以下、本発明の実施の形態について、図1~図9を参照しながら説明する。
[0024]
 まず、本発明の概要について説明する。電気回路網のSパラメータ導出方法は、(i)入力ポートと接続ポートとを有する第1の回路網の第1Sパラメータ又は第1Tパラメータを用意する第1のステップと、(ii)第2の回路網の第2Sパラメータを測定する第2のステップと、(iii)第1のステップで用意した第1Sパラメータと第2のステップで計測した第2の回路網の第2Sパラメータとを用いて、第1の回路網の接続ポートに第2の回路網が接続された回路網全体の全体Sパラメータを計算する第3のステップとを備える。第1の回路網は、入力ポートの数と接続ポートの数とが異なる非対称回路網である。
[0025]
 この場合、回路網全体の全体Sパラメータは、非対称回路網である第1の回路網の第1Sパラメータを用いて正確に計算することは可能であるが、計算時間は長くなる。第1Tパラメータを用いると、第1Sパラメータを用いる場合に比べ、計算時間は短くなる。しかしながら、非対称回路網のTパラメータ、すなわちUnbalance Tパラメータについては、正確な計算が不可能である。
[0026]
 そこで、本発明は、非対称回路網である第1の回路網の入力ポート側(又は接続ポート側)にダミーポートを追加して第1の回路網を対称回路網に変換した仮想第1の回路網の仮想Tパラメータを用いて、仮想第1の回路網に第2の回路網(又は第2の回路網にダミーポートが追加された仮想第2の回路網)が接続された仮想回路網全体の仮想Sパラメータのうち、第1の回路網と第2の回路網とが接続された回路網全体に対応する全体Sパラメータを計算する。このとき、ダミーポートに関する回路網パラメータは、未知の値として取り扱い、計算する。仮想Tパラメータのダミーポートに対応するパラメータを未知とし、仮想Sパラメータのダミーポートに対応するパラメータをゼロとしても、回路網全体の本来の計算結果に関係する信号には影響を与えない。
[0027]
 このように非対称回路網を対称回路網に変換すると、高速に計算可能なTパラメータで正確に計算結果を導出できる。これにより、シミュレーション計算の高速化が実現でき、量産工程での特性選別の高速化、非対称回路網を用いた開発における設計の効率化などが実現できる。
[0028]
 次に、計算例1~3について説明する。
[0029]
 <計算例1> 入力1ポート、接続2ポートの計算例1について、図1~図3の回路ブロック図を参照しながら説明する。
[0030]
 図1に示すように、第1の回路網52は、入力1ポート、接続2ポートの非対称回路網であり、ポート1は入力ポート、ポート2及びポート3は接続ポートである。第1の回路網52の接続ポートに、第2の回路網2の2つポートがそれぞれ接続されている。なお、図1においてa ,b (i=1,2,3)は、ポートiの信号を表している。
[0031]
 第2の回路網2はDUT(試料)の測定値であり、第1の回路網52はDUT(試料)の測定値の誤差を補正するための回路網である。すなわち、第1の回路網52と第2の回路網2とが接続された回路網全体56から、DUTの測定値を補正した値を得ることができる。
[0032]
 非対称回路網である第1の回路網52の第1Sパラメータを用いて回路網全体56の全体Sパラメータを計算すると、計算が複雑になり、計算時間が長くなる。そこで、図3(a)に示す第1の回路網52に対して、図3(b)に示すように、入力ポート側にダミーポートを追加して対称回路網に変換した仮想第1の回路網54を導入する。
[0033]
 図2に示すように、仮想第1の回路網54と第2の回路網2とが接続された仮想回路網全体58の仮想Sパラメータは、仮想第1の回路網54の仮想Tパラメータを用いて短時間で計算することができる。仮想回路網全体58の仮想Sパラメータのうち、仮想第1の回路網54の入力ポートに対応するSパラメータによって、図1の回路網全体56の全体Sパラメータを得ることができる。以下、具体的に説明する。
[0034]
 第1の回路網52は、第1Sパラメータを用いて、次の数式1で表わすことができる。
[数1]


[0035]
 次の数式2は、数式1に値を代入した一例である。
[数2]


[0036]
 ここで、数式1のS 31、S 32、S 13、S 23を0と置いたのは、確認計算を容易するためであり、本発明を適用できる特別な条件を設定しているものではない。
[0037]
 仮想第1の回路網54のSパラメータは、次の数式3で示すように、数式2にダミーポートのSパラメータが追加された形になる。
[数3]


[0038]
 数式3をTパラメータに変換すると、次の数式4になる。なお、対称回路網のSパラメータをTパラメータに変換する変換式は、例えば特許文献3に開示されている。
[数4]


[0039]
 第2の回路網2の第2Sパラメータの一例として、次の数式5を用いる。
[数5]


[0040]
 数式4の仮想Tパラメータで表された仮想第1の回路網54に、第2Sパラメータを用いて数式5で表された第2の回路網2が接続された仮想回路網全体58は、特許文献3に開示された計算手法により、次の数式6で表される。
[数6]


[0041]
 数式6の右辺の左側の2×2行列式は、仮想回路網全体58の仮想Sパラメータを表す。そのうち、第1の回路網52の入力ポートに対応する仮想Sパラメータは、信号(a ,b )のみに関わるS 11のみであり、回路網全体56の全体Sパラメータは、ダミーポートの影響を受けることなく、次の数式7を得る。
[数7]


[0042]
 メーソン法により計算した結果も、数式7と同じ値になる。このことから、非対称回路網にダミーポートを追加して対称回路網とし、仮想Tパラメータを用いて正確に回路網計算できることが確認できる。
[0043]
 ちなみに、非特許文献2に開示されたUnbalance Tパラメータを用いた手法では、計算結果は、次の数式8となり、正確に計算することが不可能であることが確認できる。
[数8]


[0044]
 <計算例2> 入力1ポート、接続3ポートの場合の計算例2について、図4の回路ブロック図を参照しながら説明する。
[0045]
 図4(a)に示すように、第1の回路網60は、入力1ポート、接続3ポートの非対称回路網である。第1の回路網60の接続ポートに、第2の回路網4の3つのポートがそれぞれ接続されている。第1の回路網60に第2の回路網4が接続された回路網全体66の全体Sパラメータは、図4(b)に示すように、第1の回路網60の入力ポート側にダミーポートを2つ追加して対称回路網にした仮想第1の回路網62の接続ポートに、第2の回路網4の3つのポートがそれぞれ接続されている仮想回路網全体68の仮想Sパラメータを、仮想第1の回路網62の仮想Tパラメータを用いて計算することによって得ることができる。
[0046]
 一例として、第1の回路網60の第1Sパラメータを、数式9で示す値に設定する。
[数9]


[0047]
 第1の回路網60の入力ポート側にダミーポートを2つ追加して対称回路網にした仮想第1の回路網62のSパラメータを、次の数式10に示す。
[数10]


[0048]
 計算例1と同様に、数式10のSパラメータを変換した仮想Tパラメータを用いて、仮想回路網全体68の仮想Sパラメータを計算し、仮想Sパラメータのうち第1の回路網52の入力ポートに対応するSパラメータを求めた計算結果は、ダミーポートのパラメータの影響を受けることなく、次の数式11となる。
[数11]


[0049]
 数式11の結果は、メーソン法を用いた計算結果と同じであり、正確に計算できることが分かる。
[0050]
 計算例1、2のように、第1の回路網の入力ポートの数が接続ポートの数より少ない場合、入力ポート側のポート数が接続ポートの数と同じになるように第1の回路網の入力ポート側にダミーポートが追加された仮想第1の回路網を導入する。第1の回路網の接続ポートに第2の回路網が接続された回路網全体の全体Sパラメータは、仮想第1の回路網と第2の回路網とが接続された仮想回路網全体の仮想Sパラメータのうち、入力ポートに対応するSパラメータと等しい。仮想回路網全体の仮想Sパラメータのうち入力ポートに対応するSパラメータは、対称回路網である仮想第1の回路網の仮想Tパラメータを用いて短時間で正確に計算することができる。したがって、計算例1、2のような取り扱いにより、どのようなポート数でも対応できる。
[0051]
 <計算例3> 次に、第1の回路網の入力ポートの数が接続ポートの数よりも多い場合の計算例3について、図5のブロック図を参照しながら説明する。
[0052]
 図5(a)に示すように、第1の回路網70は、入力2ポート、接続1ポートの非対称回路網である。第1の回路網70の接続ポートに、第2の回路網6が接続されている。第1の回路網70に第2の回路網6が接続された回路網全体76の全体Sパラメータは、図5(b)に示すように、仮想第1の回路網72と、仮想第2の回路網8とが接続された仮想回路網全体78の仮想Sパラメータから得ることができる。仮想第1の回路網72は、第1の回路網70の接続ポート側にダミーポートを1つ追加して対称回路網に変換したものである。仮想第2の回路網8は、第2の回路網6に、仮想第1の回路網72のダミーポートに対応するダミーポートが追加されている。仮想回路網全体78は、仮想第1の回路網72の接続ポートと仮想第2の回路網8の接続ポートとが接続され、仮想第1の回路網72のダミーポートと仮想第2の回路網8のダミーポートとが接続されている。
[0053]
 第1の回路網70の入力ポートの数より接続ポートの数が多い場合のみの処理として、第1の回路網70に接続する第2の回路網6のSパラメータを変更する必要がある。図5における非対称回路網の場合、第2の回路網6は1ポートデバイスであるため、その値は数式12で表される。
[数12]


[0054]
 図5(b)に示すように、第2の回路網6を対称回路網の仮想第2の回路網8に変更した場合、仮想第2の回路網8のSパラメータは、次に数式13に示すように、ダミーポートに関わるSパラメータの値を0と置いて2ポートデバイスとして表す。
[数13]


[0055]
 これによって、その後の計算は、第1の回路網の入力ポートの数が接続ポートの数より少ない計算例1、2と同じように、仮想第1の回路網72が対称回路網であるため仮想第1の回路網72の仮想Tパラメータを用いて、回路網全体76の全体Sパラメータを短時間で計算することができる。また、仮想第2の回路網8の仮想Sパラメータのうち第2のダミーポートに対応するパラメータをゼロと置くことによって、回路網全体76の全体Sパラメータを正確に計算することできる。
[0056]
 <実験例1> 相対誤差補正法に本発明を適用した実験例1について、図6~図9を参照しながら説明する。
[0057]
 相対誤差補正法は、基準治具と試験治具との相対誤差を補正する相対誤差補正アダプタと呼ぶ第1の回路網と、試験治具を用いて測定した測定値を示す第2の回路網とが接続された回路網全体のSパラメータを計算することによって、試験治具を用いて測定した試料について基準治具を用いて測定したならば得られる測定値(推定値)を得る手法である。
[0058]
 図6(a)は基準治具10の説明図である。図1(a)に示すように、基準治具10は、実装部14と、2つの同軸コネクタ11,12とを備えている。実装部14には、2つの信号端子及び1つのGND端子を有する電子部品が実装される。電子部品の信号端子は、高周波信号の印加又は検出に係わる信号ラインに接続される信号ラインポートの端子である。電子部品のGND端子は、信号ラインポート以外の非信号ラインポートの端子である。実装部14には、電気部品の2つの信号端子にそれぞれ電気的に接続される2つの信号ライン接続端子15,16と、電気部品のGND端子に電気的に接続される非信号ライン接続端子17とが設けられている。同軸コネクタ11,12は、信号ライン接続端子15,16にそれぞれ電気的に接続されている。非信号ライン接続端子17はGNDに接続されている。基準治具10のポート1、2の同軸コネクタ11,12は、同軸ケーブルを用いてネットワークアナライザに接続し、電子部品が基準治具10の実装部14に実装され基準治具10に接続された状態(「基準状態」とも呼ぶ。)で電子部品の電気特性を測定する。このように測定した測定値は、基準治具10による誤差を含んでいる。
[0059]
 図6(b)は試験治具20の説明図である。図1(b)に示すように、試験治具20は、電子部品の2つの信号端子にそれぞれ電気的に接続される2つの信号ライン接続端子24,25と、電子部品の1つのGND端子に電気的に接続される非信号ライン接続端子26と、2つの信号ライン接続端子24,25及び非信号ライン接続端子26にそれぞれ電気的に接続されている3つの同軸コネクタ21,22,23とを備えている。試験治具20のポート1、2、3の接続端子24,25,26と、ネットワークアナライザとを、同軸ケーブルを用いて接続し、電子部品が試験治具20の接続端子24,25,26に接続された状態(「試験状態」とも呼ぶ。)で電子部品の電気特性を測定する。このように測定した測定値は、試験治具20による誤差を含んでいる。
[0060]
 図6の測定状態において、試験治具20を用いて測定した試料について、その試料を基準治具10を用いて測定したならば得られる測定値(推定値)を、相対誤差補正法によって算出する。この場合、相対補正アダプタ、すなわち第1の回路網は、入力2ポート、接続3ポートの非対称回路となる。
[0061]
 本発明の手法によって非対称回路網に対する高速に計算が行えることを確認するために、自作基板にてGND端子のインピーダンスの異なる2つの測定状態(基準状態、及び試験状態)を構成した。図7は、基準治具の写真である。図8は、試験治具の写真である。図9は、標準試料の写真である。
[0062]
 図7に示すように、基準治具のGNDポートはSHORTにしている。図8に示すように、試験治具には、Port1-GND、Port2-GND間それぞれに、510Ωの抵抗を接続し、図6の基準治具に比べ、アイソレーションを劣化させている。図9に示すように、標準試料は、Port1、Port2、GNDの3ポートを有する。
[0063]
 次の表1に示す7つの3ポート標準試料を自作基板で用意した。標準試料の値自体は未知である。標準試料の基準状態と試験状態の測定値のみを使用して、相対補正アダプタのSパラメータを算出した。すなわち、第1の回路網のSパラメータを用意した。
[表1]


[0064]
 その他の実験条件は以下の通りである。
  [測定器]    E5071C(アジレント社)
  [測定ポート数] 基準治具:2ポート、試験治具:3ポート
  [測定周波数]  60MHz~6GHz
  [測定ポイント数]1601点
  [中間周波数]  1kHz 
  [DUT]    自作基板(50Ωのマイクロストリップライン)
[0065]
 DUTは試験治具に実装して測定した。相対誤差補正法の計算にはコンピュータを用いた。コンピュータにDUTの測定値が入力されてから、基準治具を用いて測定したならば得られる測定値(推定値)の計算が完了するまでの時間を計測した。
[0066]
 3ポート、1601点の条件で、回路網全体をSパラメータで表し計算するメーソン法で計算した場合には、およそ60sかかった。これに対し、第1の回路網を対称回路網に変換した仮想第1の回路網の仮想Tパラメータを使用する本発明の計算手法の場合には、30msであり、計算時間が大幅に短縮された。
[0067]
 計算時間の短縮、高速化によって、量産工程のような高速で特性選別を実施する場合には、処理能力が上がる。また、処理能力が上がるので、特性選別機や測定器などの設備投資を少なくできる。
[0068]
 <まとめ> 以上に説明したように、非対称回路網にダミーポートを追加して対称回路に変換すると、対称回路の仮想Tパラメータを用いて、非対称回路網を含む回路網全体のSパラメータを正確に、かつ短時間で計算することができる。
[0069]
 なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
[0070]
 例えば、本発明は、相対誤差補正法に限らず、電子部品の測定値を第2の回路網で表し、電子部品の測定値を第1の回路網を用いて補正する場合に、広く適用することができる。例えば、電子部品等の特性を測定し、回路基板に実装した際の全体の特性を算出したり、電子部品等の特性を治具越しに測定し、治具の影響を除いた特性を算出することにも適用できる。また、測定対象は電子部品に限らず、複数の電子部品が実装された電子部品モジュールにも適用できる。

符号の説明

[0071]
 2,4,6 第2の回路網
 8 仮想第2の回路網
10 基準治具
11,12 同軸コネクタ
20 試験治具
21,22,23 同軸コネクタ
52 第1の回路網
54 仮想第1の回路網
56 回路網全体
58 仮想回路網全体
60 第1の回路網
62 仮想第1の回路網
66 回路網全体
68 仮想回路網全体
70 第1の回路網
72 仮想第1の回路網
76 回路網全体
78 仮想回路網全体

請求の範囲

[請求項1]
 入力ポートと接続ポートとを有する第1の回路網の第1Sパラメータ又は第1Tパラメータを用意する第1のステップと、
 第2の回路網の第2Sパラメータを測定する第2のステップと、
 前記第1のステップで用意した前記第1Sパラメータ又は前記第1Tパラメータと前記第2のステップで計測した前記第2Sパラメータとを用いて、前記第1の回路網の前記接続ポートに前記第2の回路網が接続された回路網全体の全体Sパラメータを計算する第3のステップと、
を備えた電気回路網のSパラメータ導出方法において、
 前記第1の回路網は、前記入力ポートの数が前記接続ポートの数より少ない非対称回路網であり、
 前記第3のステップにおいて、前記回路網全体の前記全体Sパラメータとして、前記第1の回路網の前記入力ポート側にダミーポートを追加して前記第1の回路網を対称回路網に変換した仮想第1の回路網を想定したうえで、前記仮想第1の回路網の仮想Tパラメータのうち前記ダミーポートに対応するパラメータを未知の値として用いて、前記仮想第1の回路網の前記接続ポートに前記第2の回路網が接続された仮想回路網全体の仮想Sパラメータのうち前記入力ポートに対応する前記全体Sパラメータを計算することを特徴とする、電気回路網のSパラメータ導出方法。
[請求項2]
 入力ポートと接続ポートとを有する第1の回路網の第1Sパラメータ又は第1Tパラメータを用意する第1のステップと、
 第2の回路網の第2Sパラメータを測定する第2のステップと、
 前記第1のステップで用意した前記第1Sパラメータ又は前記第1Tパラメータと前記第2のステップで計測した前記第2の回路網の前記第2Sパラメータとを用いて、前記第1の回路網の前記接続ポートに前記第2の回路網が接続された回路網全体の全体Sパラメータを計算する第3のステップと、
を備えた電気回路網のSパラメータ導出方法において、
 前記第1の回路網は、前記入力ポートの数が前記接続ポートの数より多い非対称回路網であり、
 前記第3のステップにおいて、前記回路網全体の前記全体Sパラメータとして、前記第1の回路網の前記接続ポート側に第1のダミーポートを追加して前記第1の回路網を対称回路網に変換した仮想第1の回路網と、前記第2の回路網に前記第1のダミーポートと接続される第2のダミーポートが追加された仮想第2の回路網とを想定したうえで、前記仮想第1の回路網の仮想Tパラメータを未知の値として用いかつ、前記仮想第2の回路網の仮想Sパラメータのうち前記第2のダミーポートに対応するパラメータをゼロと置いて、前記仮想第1の回路網の前記接続ポート及び前記第1のダミーポートに前記仮想第2の回路網が接続された仮想回路網全体の仮想Sパラメータのうち前記入力ポートに対応する前記全体Sパラメータを計算することを特徴とする、電気回路網のSパラメータ導出方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]