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1. (WO2015133019) セルロース繊維ナノ分散液圧入装置およびそれを用いたセルロース繊維ナノ分散液圧入方法、並びに炭化水素生産方法
Document

明 細 書

発明の名称 セルロース繊維ナノ分散液圧入装置およびそれを用いたセルロース繊維ナノ分散液圧入方法、並びに炭化水素生産方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009   0010   0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017   0018   0019   0020  

図面の簡単な説明

0021  

発明を実施するための形態

0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074  

実施例

0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144  

産業上の利用可能性

0145  

符号の説明

0146  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : セルロース繊維ナノ分散液圧入装置およびそれを用いたセルロース繊維ナノ分散液圧入方法、並びに炭化水素生産方法

技術分野

[0001]
 本発明は、主に、原油・ガス等の炭化水素の生産事業の過程や土木作業での止水作業において適用されるセルロース繊維ナノ分散液圧入装置およびそれを用いたセルロース繊維ナノ分散液圧入方法、並びに炭化水素生産方法に関するものである。

背景技術

[0002]
 原油回収、ガス回収作業、あるいは土木作業において、井戸からの多量の地下水産出が問題となることが多い。すなわち、例えば、油層中に貯留された原油・ガス等の炭化水素の回収において、炭化水素と共に随伴水が産出されるが、随伴水には、多量の原油成分がエマルジョン状態で含まれる他、多種の有機酸、重金属イオンなどが含まれるため、その処理に多大のコストを要する。特に、炭化水素の生産開始から時間が経過し、原油の二次回収や三次回収が必要とされる油田においては、油層内の高透過性区域を介し、大量の随伴水が産出されるため、この処理が大きな課題となっている。
[0003]
 ここで、上記地下水の産出を防止することを目的とし、地下水の通路を、ゲルを用いて防ぐ手法が各種検討されている。その一例として、例えば、アクリルアミドとスルホン酸塩含有モノマーからなる共重合体溶液、もしくはアクリルアミドとスルホン酸塩含有モノマー、及びカルボン酸塩含有モノマーからなる多元共重合体に、6価クロムを含有する化合物とその還元剤とからなるゲル化剤を添加してなる抱水性ゲルを使用する手法がある(特許文献1)。
[0004]
 一方、原油の二次回収法において、油層から回収される原油の総重量を増加させるために、岩盤の油層内の高透過性区域における注入流体の透過率を低下させて低透過性区域からの原油回収率を上げることを目的とし、ゲル化可能な組成物を使用することが検討されており、その組成物として、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース等の天然高分子、又はポリアクリルアミド等の水溶性高分子と、イオン架橋剤等とを含有する組成物を用いたものが知られている(特許文献2)。
[0005]
 また、バクテリア由来のセルロースナノクリスタルをグァーガムで架橋させて岩盤の油層内の高透過性区域における注入流体の透過率を低下させる手法も検討されている(特許文献3)。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特公平1-12538号公報
特許文献2 : 特開平2-272191号公報
特許文献3 : 国際公開2013/154926号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 しかしながら、上記特許文献1に提案のゲル組成物では、合成系の高分子であるポリアクリルアミドや、架橋剤に含まれるクロムが、地中に残存したり、地下水に流出したりする問題があるため、環境負荷が大きく、周辺住民に健康被害を及ぼすおそれがある。また、高分子溶液と金属イオン架橋剤の混合で、架橋反応が進展してしまうため、高分子溶液と金属イオン架橋剤を別個に注入せざるを得ず、高分子溶液部分と、架橋剤部分の界面近傍以外の硬化の信頼性に懸念が残る。また、金属イオン架橋剤をマイクロカプセル化し、地下で一定時間経過後に金属イオン架橋剤が放出されるようにするなどの対策も検討されているが、pHや温度、圧力など地下の多用な環境に適用するために、マイクロカプセルの調整が煩雑であり、汎用的ではない。
[0008]
 一方、上記特許文献2のゲル組成物に使用されるキサンタンガムは、微生物由来のバイオポリマーであるため環境負荷は小さいものの、その架橋剤に含まれるクロムやホウ素が、環境負荷の点で問題となり得る。また、このようなバイオポリマーは、様々な微生物が存在する地中において、ゲル化前に生分解される可能性もあるため、充分な止水効果が得られない懸念がある。なお、特許文献2に開示の技術は、そもそも、止水効果を得ることを目的としていない。
[0009]
 他方、上記特許文献3の、バクテリア由来のセルロースナノクリスタルをグァーガムで架橋させたものは、グァーガムが高温で分解することから、特に油田のように地熱の高い場所では充分な止水効果が得られないといった問題がある。また、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されるゲル組成物は、粘液状の液体であり、流動性を失わないため、ゲル化しても一定の流動性を有する問題がある。
[0010]
 すなわち、上記提案のゲル組成物は、地中の井戸などに注入する際、地熱(120℃以上)の影響や、さらにポンプやドリル等による機械的せん断の影響により、粘性劣化を引き起こしやすく、その後ゲル化した際の止水効果に悪影響が及びやすいといった懸念がある。さらに、上記例示のバイオポリマーは、生物起源であり地下に意図しない他地域から持ち込まれた外来微生物を導入する可能性を否定できない。
[0011]
 また、原油の二次回収においては、一次回収等で産出し分離した水を再度井戸に圧入して、油層に残った原油を回収する手法などがとられるが、油層内の浸透率の違いや圧入流体と油層流体との比重差のために掃攻箇所が偏るため、原油回収率向上の点において改善の余地がある場合が多い。
[0012]
 本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、土木作業における止水作業や、原油・ガス等の炭化水素の生産事業の過程においてその回収率を向上させるために適用することができる、セルロース繊維ナノ分散液圧入装置およびそれを用いたセルロース繊維ナノ分散液圧入方法、並びに炭化水素生産方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

[0013]
 上記の目的を達成するため、本発明は、針葉樹起源パルプのセルロース繊維がナノ分散された液体を地層に圧入するための圧入装置であって、針葉樹起源パルプを水中で破砕する破砕手段と、上記破砕手段で得られたセルロース繊維含有液を希釈する希釈手段と、上記希釈手段で得られたセルロース繊維のナノ分散液を井戸に圧入するための圧入手段とを備えたことを特徴とするセルロース繊維ナノ分散液圧入装置を第一の要旨とする。
[0014]
 また、本発明は、上記第一の要旨のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置を用い、地下の井戸近傍の透水層にセルロース繊維のナノ分散液を圧入することを特徴とする、セルロース繊維ナノ分散液圧入方法を第二の要旨とする。
[0015]
 また、本発明は、上記第一の要旨のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置が好ましく用いられる炭化水素生産方法であって、針葉樹起源パルプを水中で破砕し、それを液体に分散させて得られたセルロース繊維ナノ分散液を、井戸から地下の透水層に圧入するセルロース繊維ナノ分散液圧入工程を有することを特徴とする炭化水素生産方法を第三の要旨とする。
[0016]
 すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、針葉樹起源パルプを水中で破砕する破砕手段と、上記破砕手段で得られたセルロース繊維含有液を希釈する希釈手段と、上記希釈手段で得られたセルロース繊維のナノ分散液を井戸に圧入するための圧入手段とを備えた、セルロース繊維ナノ分散液圧入装置を用いることにより、環境に負荷をかけず安定した止水作業がなされるようになることを突き止め、本発明に到達した。特に、原油・ガス等の炭化水素の生産事業の過程において、上記セルロース繊維ナノ分散液圧入装置を用い、針葉樹パルプ起源のセルロース繊維がナノ分散された分散液を井戸から地下の透水層に圧入すると、そのゲルによって、井戸近傍の油層水産出箇所や、油層岩盤内の高透過性区域(卓越流路)を塞き止めることができ、環境に負荷をかけず安定した止水効果が得られ、井戸からの炭化水素回収率を上げることができるようになることを、本発明者らは突き止めた。

発明の効果

[0017]
 このように、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置は、針葉樹起源パルプを水中で破砕する破砕手段と、上記破砕手段で得られたセルロース繊維含有液を希釈する希釈手段と、上記希釈手段で得られたセルロース繊維のナノ分散液を井戸に圧入するための圧入手段とを備えており、環境に負荷をかけず安定した止水作業を行うことができる。特に、上記破砕手段が地表の井戸近傍に設けられているものは、採掘現場で井戸圧入用のセルロース繊維ナノ分散液を調製し、それを直に井戸に圧入することができるため、井戸の微生物汚染やセルロース繊維ナノ分散液の経時劣化問題等を解消することができる。
[0018]
 また、本発明の炭化水素生産方法では、ゲル化剤として用いた針葉樹パルプ起源のセルロース繊維は、架橋剤もしくは熱による架橋で、流動性のないゲルを生成する特性により、小さい環境負荷で、井戸近傍の油層水産出箇所や、油層岩盤内の高透過性区域(卓越流路)を塞き止めることができ、原油・ガス等の炭化水素の回収率を向上させることができる。特に、上記炭化水素生産方法において、架橋剤を使用せず、地熱利用により上記セルロース繊維をゲル化させる場合、井戸近傍の透水層にセルロース繊維のナノ分散液が到達する前に架橋反応が進展してしまうことがなく、さらに架橋剤を個別に注入する必要もないため、架橋剤に起因する種々の問題(環境問題、費用、注入作業、架橋制御作業等)も解消することができる。
[0019]
 また、上記炭化水素生産方法において、架橋剤を使用する場合であっても、上記針葉樹起源パルプのセルロース繊維として、繊維表面の水酸基が化学修飾されているものを用い、架橋剤として多価金属塩を使用すると、上記セルロース繊維も多価金属塩も、環境負荷が小さく、さらに上記化学修飾された部分を起点として強固な架橋がなされるため、少量の配合であっても充分な止水効果が得られて、井戸からの炭化水素回収率をより効果的に上げることができる。
[0020]
 また、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置を使用し、上記針葉樹起源パルプのセルロース繊維を、架橋剤を使用せず、いわゆる増粘剤として用い、ポリマー攻法のように、そのセルロース繊維のナノ分散液を井戸から圧入し、その井戸の対象油層内の液状炭化水素を、油層を介して繋がっている他の井戸へと押し出すことで、液状炭化水素の回収率を向上させるといった、液状炭化水素増進回収方法(EOR)に使用することもできる。

図面の簡単な説明

[0021]
[図1] 本発明の炭化水素生産方法の一例を示す説明図である。
[図2] 本発明の炭化水素生産方法の他の例を示す説明図である。
[図3] 実施例のゲル化判定方法に用いられたサンプルの性状を示したサンプル写真である。

発明を実施するための形態

[0022]
 つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
[0023]
 本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置は、先に述べたように、針葉樹起源パルプを水中で破砕する破砕手段と、上記破砕手段で得られたセルロース繊維含有液を希釈する希釈手段と、上記希釈手段で得られたセルロース繊維のナノ分散液を井戸に圧入するための圧入手段とを備えている。なお、本発明において、ナノ分散とは、後記に示す測定方法による上記セルロース繊維の最大繊維径が1000nm以下、好ましくは500nm以下となるよう、上記セルロース繊維をナノレベルで分散させることを言う。そのため、上記破砕手段には、針葉樹起源パルプを上記のようにナノレベルで破砕する性能を要する。また、上記各手段は、装置として一体化されているものであってもよいが、それらの各手段を担う設備が有機的に連携されているのであれば、必要に応じ、個々の設備に分かれていてもよい。
[0024]
 特に、上記破砕手段は、針葉樹起源パルプを水中で破砕するため、破砕手段で得られたセルロース含有液は、大量の水を含む。このため、輸送コスト等を考慮すると破砕手段は井戸近傍に設けられることが好ましい。なお、井戸近傍とはいわゆるオンサイトと略同義で、石油・ガス生産プラント内に設置し各坑井にパイプライン等で輸送することを意味する。また、上記破砕手段が地表の井戸近傍に設けられているものは、採掘現場で井戸圧入用のセルロース繊維ナノ分散液を調製し、それを直に井戸に圧入することができるため、ナノ分散の際に滅菌がなされたものが直に井戸に圧入されるため、井戸の微生物汚染やセルロース繊維ナノ分散液の経時劣化問題等を解消することができ、好ましい。
[0025]
 さらに、上記圧入装置内に、上記破砕手段で得られたセルロース繊維含有溶液に対して徐々に水を加えて希釈するための希釈手段を備えることにより、上記セルロース繊維含有溶液をいきなり大量の水で希釈するよりも省電力で撹拌分散させることができ、効率的に上記セルロース繊維ナノ分散液を得ることができる。
[0026]
 そして、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入方法は、上記セルロース繊維ナノ分散液圧入装置を用い、地下の井戸近傍の透水層にセルロース繊維のナノ分散液を圧入することを特徴とするものであり、これにより、井戸への土木作業等において、環境に負荷をかけず安定した止水作業を行うことができる。
[0027]
 また、本発明の炭化水素生産方法は、原油・ガス等の炭化水素の生産事業の過程において行われるものであり、先に述べたように、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置が好ましく用いられる。すなわち、本発明の炭化水素生産方法は、針葉樹起源パルプを水中で破砕し、それを液体に分散させて得られたセルロース繊維ナノ分散液を、井戸から地下の透水層に圧入することにより行われる。ここで、上記炭化水素生産方法において、架橋剤を使用せず、上記セルロース繊維ナノ分散液を井戸に圧入した後、その圧入経路を遮断し、所定時間(およそ24時間以上)静置すると、地熱(およそ120℃以上)により上記セルロース繊維が良好にゲル化するため、そのゲルによって、井戸近傍の油層水産出箇所や、油層岩盤内の高透過性区域(卓越流路)を塞き止めることができ、環境に負荷をかけず安定した止水効果が得られ、井戸からの炭化水素回収率を上げることができるようになる。さらに、架橋剤を使用していないため、井戸近傍の透水層にセルロース繊維のナノ分散液が到達する前に架橋反応が進展してしまうことがなく、しかも架橋剤を個別に注入する必要もないため、架橋剤に起因する種々の問題(環境問題、費用、注入作業、架橋制御作業等)も解消することができるようになる。一方、架橋剤を使用する場合であっても、上記針葉樹起源パルプのセルロース繊維として、繊維表面の水酸基が化学修飾されているものを用い、架橋剤として多価金属塩を使用すると、上記セルロース繊維も多価金属塩も、環境負荷が小さいものであるため、環境汚染の観点から好ましく、さらに上記化学修飾された部分を起点として強固な架橋がなされるため、少量の配合であっても充分な止水効果が得られて、井戸からの炭化水素回収率をより効果的に上げることができる。
[0028]
 なお、本発明の炭化水素生産方法において、セルロース繊維ナノ分散液の圧入を行う井戸(圧入井)と、炭化水素の回収を行う井戸(生産井)とが、同一の井戸である場合には、上記井戸の油層からの水(随伴水)の産出量が減り、その結果、炭化水素の回収率を向上させることができる。また、上記圧入井と生産井とが異なる井戸である場合には、上記セルロース繊維のゲルにより、圧入流体の卓越流路が塞がれることから、圧入井からの更なる水やガスの圧入により、圧入流体の流路が変わり、油層内に残されていた炭化水素が生産井へと追いやられ、炭化水素の回収率を向上させることができる。
[0029]
 また、上記に示すセルロース繊維ナノ分散液圧入工程の後、その圧入経路を遮断する遮断工程と、上記圧入経路の遮断を開放後に井戸から炭化水素を回収する生産工程とを有することが、上記セルロース繊維のゲル化が良好に行われ、良好な止水効果が得られて井戸からの炭化水素回収率をより効果的に上げることができることから、好ましい。
[0030]
 そして、上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程よりも前に、および/または、上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程よりも後に、多価金属塩含有水溶液を井戸に圧入する多価金属塩含有水溶液圧入工程を有すると、良好な架橋が所期のゲルを形成する地点になされ、良好な止水効果が得られて井戸からの炭化水素回収率をより効果的に上げることができることから、好ましい。また、適宜、上記セルロース繊維ナノ分散液に、多価金属塩を含有するようにしてもよい。
[0031]
 また、上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程よりも後に、セルロース繊維不含の水溶液を圧入し、ついで上記遮断工程を行うと、止水効果を得たい位置で上記セルロース繊維をゲル化させることがより容易にできるようになるため、炭化水素回収率をより効果的に上げる観点から、好ましい。
[0032]
 また、上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程の前に、井戸に清水を圧入すると、油層における井戸周辺の塩イオン濃度を低下させることができ、後に圧入するセルロース繊維ナノ分散液が、井戸の油層内の水層(高浸透率層)側に行き渡る前に、地中の金属イオン(ナトリウムイオン、マグネシウムイオン等)によりゲル化し、結果、上記水層側が良好に塞き止められなくなるといった問題が生じるのを防ぐことができる。なお、本発明において、上記清水は、塩化ナトリウム換算で1%未満のナトリウムイオン濃度でかつ塩化カルシウム換算で0.3%未満のカルシウムイオン濃度の水を意味する。
[0033]
 ここで、本発明の炭化水素生産方法の一例を、図1に基づき説明する。この例は、上記圧入を行う井戸(圧入井)と、炭化水素といった炭化水素の回収を行う井戸(生産井)とが、同一の井戸であり、上記圧入後の井戸の密閉を開放することにより、油層からの炭化水素の回収を行うといった回収方法を示している。なお、この回収方法では、上記セルロース繊維ナノ分散液を井戸に圧入した後、上記多価金属塩水溶液を井戸に圧入することが、止水効果の観点から好ましい。そして、図1では、地中の油層に向かって、ケーシング2およびチュービング1が埋められており、ケーシング2とチュービング1の間には、パッカー(閉鎖部)8が設けられている。井戸は、通常、このような構成であり、炭化水素の最初の自噴が終わり、ポンプによる炭化水素の汲み上げ(一次回収)が終わった後、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置を用いた炭化水素生産方法が適用される。上記炭化水素生産方法では、通常、まず、バルブa4、b3、b5を開放し(他のバルブは全て閉じ)、ポンプp1により、ケーシング2内のチュービング1から、井戸に清水を注入し、油層における井戸周辺の塩イオン濃度を低下させる。つぎに、上記開放したバルブを閉じた後、バルブa5を開放し、高圧ホモジナイザー3(スギノマシン社製のスターバースト等)等により針葉樹起源パルプを水中で破砕し、セルロース繊維を高圧分散させた後、バルブa2、a3を開放し、必要に応じ他の添加剤も加え、上記セルロース繊維含有液を希釈し、撹拌機4により、上記セルロース繊維のナノ分散液を調製する。そして、バルブb1、b5を開放し、ポンプp2により、ケーシング2内のチュービング1から、上記セルロース繊維ナノ分散液を井戸(井戸近傍の透水層)に圧入する。続いて、バルブa1を開放し、撹拌機5により、多価金属塩含有水溶液を調製する。そして、井戸の油層内の水層側に上記セルロース繊維ナノ分散液を行き渡らせた後、バルブb2を開放し、ポンプp3により、ケーシング2内のチュービング1から、上記調製の多価金属塩含有水溶液を、井戸に圧入する。その後、バルブb5を閉じ、加圧を保持したまま、上記セルロース繊維がゲル化するまで井戸を密閉する。そして、図示のように、水をゲルにより塞き止めた後、バルブb1、b2、b3、b6を閉じ、b4を開放し、さらに、バルブb5の開放(井戸の密閉の開放)を行う。これにより、井戸の油層内の高浸透率層からの水を塞ぎ止めた状態で低浸透率層に残っている炭化水素をケーシング2内のチュービング1を通して回収することから、油層からの水(随伴水)の産出量が減り、その結果、炭化水素の回収率を向上させることができる。そして、産出された炭化水素・水は、ケーシング2内のチュービング1を通過し、必要に応じポンプp4を用いて、汲み上げられた後、分別タンク6で分別される。このようにして、炭化水素は回収され、水は、例えば、脱塩機7により脱塩された後、水タンク9へ移され、再利用される。
[0034]
 また、本発明の炭化水素生産方法の他の例を、図2に基づき説明する。この例では、図2(i)に示すように、圧入井と生産井とが、異なる井戸であり、図2(ii)に示すように、まず、先行水として清水11を適宜圧入して流路から塩類をできるだけ除去した後、前記セルロース繊維のナノ分散液と多価金属塩含有水溶液との圧入により得られた圧入流体12を、圧入井と生産井との卓越流路13に送り込む。なお、前記セルロース繊維ナノ分散液と多価金属塩含有水溶液は、圧入井への圧入前に、両者を静かに撹拌し、更に必要に応じ、摩擦低減剤、界面活性剤、乳化抑制剤、殺菌剤等を添加して静かに撹拌し、それにより得られた圧入流体(スラグ)12を、圧入井に圧入してもよい。そして、上記スラグ12は、必要に応じ、図示のように、後押し水14等で卓越流路13まで運搬してもよい。このようにして、図2(iii)に示すように、卓越流路13を、上記スラグのゲル15で塞いだ後、圧入井から更に水やガスを圧入することにより、図2(iv)に示すように、圧入流体の流路が変わり、油層内に残されていた未掃攻箇所の炭化水素が生産井へと追いやられ、炭化水素の回収率を向上させることができる。
[0035]
 なお、本発明の炭化水素生産方法に用いられる針葉樹起源パルプのセルロース繊維を、いわゆる増粘剤として用いるのであれば、そのセルロース繊維ナノ分散液を井戸から圧入し、ポリマー攻法のように、その井戸の対象油層内の液状炭化水素を、油層を介して繋がっている他の井戸へと押し出すことで、液状炭化水素の回収率を向上させることができる。このような液状炭化水素増進回収方法(EOR)においては、セルロース繊維を架橋させる必要がないため、架橋剤は不用であり、圧入経路を遮断して所定時間静置することも不用である。そして、この液状炭化水素増進回収方法(EOR)においても、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置が好ましく用いられる。
[0036]
 また、本発明の炭化水素生産方法において、セルロース繊維ナノ分散液や多価金属塩水溶液を井戸に圧入する際の圧力は、回収効率等の観点から、坑底圧力が、油層圧力より0.1~100atm高くなるように設定することが好ましく、より好ましくは、油層圧力より1~30atm高くなるように圧入圧力を調整する。
[0037]
 また、上記セルロース繊維ナノ分散液において、上記セルロース繊維の固形分含有量は、通常、分散液全体の0.01~10重量%の範囲であり、好ましくは、分散液全体の0.1~1重量%の範囲であり、より好ましくは、分散液全体の0.1~0.2重量%の範囲である。すなわち、上記のようにセルロース繊維が少量であっても、良好な擬塑性流動性を発現することができ、充分な止水効果を得ることができるからである。なお、上記多価金属塩水溶液中の難溶性多価金属塩含有量は、その水溶液全体の0.001~1重量%の範囲であることが好ましい。
[0038]
 ここで、本発明に用いられるセルロース繊維ナノ分散液において、そのセルロース繊維は、数平均繊維径が、通常2~500nmであり、分散安定性、止水性能等の点から、好ましくは2~150nmであり、より好ましくは2~100nmであり、特に好ましくは3~80nmである。すなわち、上記数平均繊維径が小さすぎると、本質的に分散媒体に溶解してしまい、逆に、上記数平均繊維径が大きすぎると、セルロース繊維が沈降してしまい、上記セルロース繊維を配合することによる機能性を発現することができなくなるからである。なお、上記セルロース繊維の最大繊維径は、1000nm以下であり、好ましくは500nm以下である。すなわち、上記セルロース繊維の最大繊維径が大きすぎると、セルロース繊維が沈降してしまい、上記セルロース繊維の機能性の発現が低下する傾向がみられるからである。
[0039]
 上記セルロース繊維の数平均繊維径および最大繊維径は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、固形分率で0.05~0.1重量%の微細セルロースの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5,000倍、10,000倍あるいは50,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出する。
[0040]
 また、上記セルロース繊維のアスペクト比は、通常50以上であるが、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。すなわち、アスペクト比が小さすぎると、充分な擬塑性流動性が得られないおそれがあるからである。
[0041]
 上記セルロース繊維のアスペクト比は、例えば以下の方法で測定することができる。すなわち、セルロース繊維を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、セルロース繊維の数平均繊維径、および繊維長を算出し、これらの値を用いて、下記の式(1)に従い、アスペクト比を算出することができる。
[0042]
[数1]
 アスペクト比=数平均繊維長(nm)/数平均繊維径(nm)……(1)
[0043]
 また、上記セルロース繊維は、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料を微細化した繊維である。すなわち、針葉樹起源パルプにおいては、ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構成する。ここで、上記セルロース繊維を構成するセルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14~17°付近と、2シータ=22~23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
[0044]
 また、上記セルロース繊維は、必要に応じ、セルロース繊維表面の水酸基が化学修飾されている。化学修飾されたセルロースとしては、例えば、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、多価カルボキシメチルセルロース、長鎖カルボキシセルロース、一級アミノセルロース、カチオン化セルロース、二級アミノセルロース、メチルセルロース、長鎖アルキルセルロースがあげられる。なかでも、繊維表面の水酸基の選択性に優れており、反応条件も穏やかであることから、酸化セルロースが好ましい。なお、本発明において、カルボキシメチル基、カルボキシル基等の含量が0.1mmol/g未満のものは、「セルロース繊維表面の水酸基が化学修飾されている。」との条件を満たしていないものとみなす。
[0045]
 上記酸化セルロースは、針葉樹起源パルプを原料とし、水中においてN-オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させることにより上記針葉樹起源パルプを酸化して反応物繊維を得る酸化反応工程、不純物を除去して水を含浸させた反応物繊維を得る精製工程、および水を含浸させた反応物繊維を溶媒に分散させる分散工程を含む製造方法により得ることができる。
[0046]
 なお、本発明に用いられるセルロース繊維は、その他にも、例えば、セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化変性されてアルデヒド基,ケトン基およびカルボキシル基のいずれかとなっていることが好ましい。カルボキシル基の含量(カルボキシル基量)は1.2~2.5mmol/gの範囲が好ましく、より好ましくは1.5~2.0mmol/gの範囲である。上記カルボキシル基量が小さすぎると、セルロース繊維の沈降や凝集を生じる場合があり、上記カルボキシル基量が大きすぎると、水溶性が強くなり過ぎるおそれがあるからである。
[0047]
 上記セルロース繊維のカルボキシル基量の測定は、例えば、乾燥重量を精秤したセルロース試料から0.5~1重量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(2)に従いカルボキシル基量を求めることができる。
[0048]
[数2]
 カルボキシル基量(mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース重量〕……(2)
[0049]
 なお、カルボキシル基量の調整は、後述するように、セルロース繊維の酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を制御することにより行うことができる。
[0050]
 また、上記セルロース繊維は、上記酸化変性後、還元剤により還元させることが好ましい。これにより、アルデヒド基およびケトン基の一部ないし全部が還元され、水酸基に戻る。なお、カルボキシル基は還元されない。そして、上記還元により、上記セルロース繊維の、セミカルバジド法による測定でのアルデヒド基とケトン基の合計含量を、0.3mmol/g以下とすることが好ましく、特に好ましくは0~0.1mmol/gの範囲、最も好ましくは実質的に0mmol/gである。これにより、単に酸化変性させたものよりも、分散安定性が増し、特に温度等に左右されず長期にわたり分散安定性に優れるようになる。
[0051]
 そして、上記セルロース繊維が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TEMPO)等のN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであり、上記酸化反応により生じたアルデヒド基およびケトン基が、還元剤により還元されたものであることが、本発明の炭化水素生産方法に要求される特性を容易に得る観点から、好ましい。また、上記還元剤による還元が、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH )によるものであることが、上記観点から、より好ましい。
[0052]
 ところで、セミカルバジド法による、アルデヒド基とケトン基との合計含量の測定は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、乾燥させた試料に、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうする。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌する。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(3)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めることができる。なお、セミカルバジドは、アルデヒド基やケトン基と反応しシッフ塩基(イミン)を形成するが、カルボキシル基とは反応しないことから、上記測定により、アルデヒド基とケトン基のみを定量できると考えられる。
[0053]
[数3]
 カルボニル基量(mmol/g)=(D-B)×f×〔0.125/w〕……(3)
  D:サンプルの滴定量(ml)
  B:空試験の滴定量(ml)
  f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター(-)
  w:試料量(g)
[0054]
 また、先に述べたように、本発明に用いられるセルロース繊維は、繊維表面上のセルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的に酸化変性されてアルデヒド基,ケトン基およびカルボキシル基のいずれかとなっていることが好ましいが、このセルロース繊維表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的に酸化されているかどうかは、例えば、 13C-NMRチャートにより確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの 13C-NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりにカルボキシル基等に由来するピーク(178ppmのピークはカルボキシル基に由来するピーク)が現れる。このようにして、グルコース単位のC6位水酸基のみがカルボキシル基等に酸化されていることを確認することができる。
[0055]
 また、上記セルロース繊維におけるアルデヒド基の検出は、例えば、フェーリング試薬により行うこともできる。すなわち、例えば、乾燥させた試料に、フェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液と、硫酸銅五水和物水溶液)を加えた後、80℃で1時間加熱したとき、上澄みが青色、セルロース繊維部分が紺色を呈するものは、アルデヒド基は検出されなかったと判断することができ、上澄みが黄色、セルロース繊維部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基は検出されたと判断することができる。
[0056]
 本発明に用いられるセルロース繊維ナノ分散液は、針葉樹起源パルプを材料とし、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置等を使用して、後記の(4)分散工程(微細化処理工程)等を行うことにより得ることができる。好ましくは、後記の、(1)酸化反応工程、(2)還元工程、(3)精製工程を行った後、(4)の分散工程(微細化処理工程)を行うことにより得ることができる。以下、各工程を順に説明する。
[0057]
(1)酸化反応工程
 針葉樹起源パルプとN-オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10~11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的に針葉樹起源パルプのセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN-オキシル化合物を酸化する物質のことである。
[0058]
 上記針葉樹起源パルプは、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。また、上記針葉樹起源パルプとして、単離等の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用すると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤しやすい状態であるため、反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため好ましい。
[0059]
 上記反応における針葉樹起源パルプの分散媒体は水であり、反応水溶液中の針葉樹起源パルプ濃度は、試薬(針葉樹起源パルプ)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の重量に対して約5%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
[0060]
 また、上記N-オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物があげられる。上記N-オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4-アセトアミド-TEMPOが好ましい。上記N-オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1~4mmol/l、さらに好ましくは0.2~2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
[0061]
 上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、反応速度の点から、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N-オキシル化合物に対して約1~40倍モル量、好ましくは約10~20倍モル量である。
[0062]
 上記反応水溶液のpHは約8~11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4~40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、特に温度の制御は必要としない。所望のカルボキシル基量等を得るためには、共酸化剤の添加量と反応時間により、酸化の程度を制御する。通常、反応時間は約5~120分、長くとも240分以内に完了する。
[0063]
(2)還元工程
 上記セルロース繊維は、上記酸化反応後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。具体的には、酸化反応後の酸化セルロースを精製水に分散し、水分散体のpHを約10に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。本発明に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH 、NaBH CN、NaBH 等があげられる。なかでも、コストや利用可能性の点から、NaBH が好ましい。
[0064]
 還元剤の量は、酸化セルロースを基準として、0.1~4重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは1~3重量%の範囲である。反応は、室温または室温より若干高い温度で、通常、10分~10時間、好ましくは30分~2時間行う。
[0065]
 上記の反応終了後、各種の酸により反応混合物のpHを約2に調整し、精製水をふりかけながら遠心分離機で固液分離を行い、ケーキ状の酸化セルロースを得る。固液分離は濾液の電気伝導度が5mS/m以下となるまで行う。
[0066]
(3)精製工程
 つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99重量%以上)の反応物繊維と水の分散体とする。
[0067]
 上記精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても差し支えない。このようにして得られる反応物繊維の水分散体は、絞った状態で固形分(セルロース)濃度としておよそ10重量%~50重量%の範囲にある。この後の分散工程を考慮すると、50重量%よりも高い固形分濃度とすると、分散に極めて高いエネルギーが必要となることから好ましくない。
[0068]
(4)分散工程(微細化処理工程)
 上記精製工程にて得られる水を含浸した反応物繊維(水分散体)を、分散媒体中に分散させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロース繊維の分散体を得ることができる。その後、必要に応じて上記セルロース繊維を乾燥してもよい。上記セルロース繊維の分散体の乾燥法としては、例えば、分散媒体が水である場合は、スプレードライ、凍結乾燥法、真空乾燥法等が用いられ、分散媒体が水と有機溶媒の混合溶液である場合は、ドラムドライヤーによる乾燥法、スプレードライヤーによる噴霧乾燥法等が用いられる。なお、上記セルロース繊維の分散体を乾燥することなく、分散体の状態で本発明の炭化水素生産方法に用いても差し支えない。
[0069]
 上記分散工程で使用する分散機としては、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することにより、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となり、さらにセルロース繊維に付着した細菌等の微生物の滅菌もなされる点で好ましい。なお、上記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機等を用いても差し支えない。また、2種類以上の分散機を組み合わせて用いても差し支えない。
[0070]
 以上のようにして、本発明に用いられるセルロース繊維ナノ分散液を得ることができる。
[0071]
 本発明の炭化水素生産方法において必要に応じて用いられる、前記多価金属塩としては、具体的には、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンといった多価金属イオンを有する難溶性多価金属塩が用いられる。このような難溶性多価金属塩を用いることにより、環境負荷の問題を解消することが可能である。なかでも、水への溶解度と、溶解時の均一分散性の観点から、塩基性酢酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム無水和物(カリ明礬)、炭酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムが好ましい。
[0072]
 また、上記セルロース繊維ナノ分散液に必要に応じ加えられる他の添加剤としては、例えば、界面活性剤[米国特許第4331447号明細書記載の界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ジオクチルスルホコハク酸ソーダなど]、酸化防止剤〔フェノール系化合物(ハイドロキノン、カテコールなど)、ヒンダードアミン[2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートなど]、含硫化合物[2-メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩(金属塩またはアンモニウム塩など)、チオ尿素、テトラメチルチウラムジサルファイド、ジメチルジチオカルバミン酸およびその塩(金属塩またはアンモニウム塩など)、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなど]、含リン化合物(トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムなど)、含窒素化合物(グアニジン硫酸塩など)〕、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンなど)、鉱物(シリカ、クレイ、スメクタイト、モンモリロナイトなど)等があげられる。なお、上記他の添加剤の含有量は、上記セルロース繊維ナノ分散液の5重量%以下で配合することが好ましい。
[0073]
 なお、本発明の炭化水素生産方法を行うのに適した油層は、砂岩層、礫岩層、石灰岩層、花崗岩層、及び水圧破砕技術を適用した頁岩層であり、セルロース繊維ナノ分散液の浸透性の観点から、浸透率は10ミリダルシー以上、好ましくは50ミリダルシー以上である。
[0074]
 本発明の炭化水素生産方法は、生産流体に占める水の割合が多くなった井戸に対して適用し、随伴水処理にかかる労力・コストを軽減できると同時に、原油・ガスの回収率を向上させることができる。また、水・ガスの圧入による油の掃攻効率を改善することができる点においても、本発明の炭化水素生産方法は極めて有効である。
実施例
[0075]
 つぎに、実施例について比較例等と併せて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「%」とあるのは、特に限定のない限り重量基準を意味する。
[0076]
≪実施例1~12、参考例、比較例1~5≫
[0077]
〔セルロース繊維A1(実施例用)の調製〕
 針葉樹パルプ100gを、イソプロパノール(IPA)435gと水65gとNaOH9.9gの混合液中にいれ、30℃で1時間撹拌した。このスラリー系に50%モノクロル酢酸のIPA溶液23.0gを加え、70℃に昇温し1.5時間反応させた。得られた反応物を80%メタノールで洗浄し、その後メタノールで置換し乾燥させ、カルボキシメチル化セルロース繊維を調製した。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A1を調製した。
[0078]
〔セルロース繊維A2(実施例用)の調製〕
 針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.2mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10~11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維を得た。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A2を調製した。
[0079]
〔セルロース繊維A3(実施例用)の調製〕
 次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して6.5mmol/gとした以外は、セルロース繊維A2の調製法に準じて、セルロース繊維A3を調製した。
[0080]
〔セルロース繊維A4(実施例用)の調製〕
 次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して12.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A2の調製法に準じて、セルロース繊維A4を調製した。
[0081]
〔セルロース繊維A5(実施例用)の調製〕
 セルロース繊維A2の調製法と同様の手法で針葉樹パルプを酸化させた後、遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4%に調整した。その後、24%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをセルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、セルロース繊維を得た。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A5を調製した。
[0082]
〔セルロース繊維A6(実施例用)の調製〕
 セルロース繊維A3の調製法と同様の手法で針葉樹パルプを酸化させた後、セルロース繊維A5の調製法と同様の手法で還元、精製した。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A6を調製した。
[0083]
〔セルロース繊維A7(実施例用)の調製〕
 セルロース繊維A4の調製法と同様の手法で針葉樹パルプを酸化させた後、セルロース繊維A5の調製法と同様の手法で還元、精製した。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A7を調製した。
[0084]
〔セルロース繊維A′1(参考例用)の調製〕
 針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)50gを水4950gに分散させ、パルプ濃度1重量%の分散液を調製した。この分散液をセレンディピターMKCA6-3(増幸産業社製)で30回処理し、セルロース繊維A′1を得た。
[0085]
〔セルロース繊維A′2(比較例用)の調製〕
 原料の針葉樹パルプに替えて再生セルロースを使用するとともに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、再生セルロース1.0gに対して27.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A2の調製法に準じて、セルロース繊維A′2を調製した。
[0086]
 上記のようにして得られたセルロース繊維A1~A7,A′1,A′2について、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1に示した。
[0087]
<結晶構造>
 X線回折装置(リガク社製、RINT-Ultima3)を用いて、セルロース繊維の回折プロファイルを測定し、2シータ=14~17°付近と、2シータ=22~23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
[0088]
<数平均繊維径、アスペクト比の測定>
 セルロース繊維の数平均繊維径、および繊維長を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM-1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および繊維長を算出した。さらに、これらの値を用いてアスペクト比を下記の式(1)に従い算出した。
[数4]
 アスペクト比=数平均繊維長(nm)/数平均繊維径(nm)……(1)
[0089]
<カルボキシメチル基量、およびカルボキシル基量の測定>
 セルロース繊維0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(2)に従いカルボキシル基量(セルロース繊維A1のみ、カルボキシメチル基量)を求めた。
[数5]
 カルボキシル基量(またはカルボキシル基量)(mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース重量〕……(2)
[0090]
<カルボニル基量の測定(セミカルバジド法)>
 セルロース繊維を約0.2g精秤し、これに、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加え、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(3)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
[数6]
 カルボニル基量(mmol/g)=(D-B)×f×〔0.125/w〕……(3)
  D:サンプルの滴定量(ml)
  B:空試験の滴定量(ml)
  f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター(-)
  w:試料量(g)
[0091]
<アルデヒド基の検出>
 セルロース繊維を0.4g精秤し、日本薬局方に従って調製したフェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液5mlと、硫酸銅五水和物水溶液5ml)を加えた後、80℃で1時間加熱した。そして、上澄みが青色、セルロース繊維部分が紺色を呈するものはアルデヒド基が検出されなかったと判断し、「なし」と評価した。また、上澄みが黄色、セルロース繊維部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基が検出されたと判断し、「あり」と評価した。
[0092]
[表1]


[0093]
 上記のように、セルロース繊維A′1は、繊維表面の水酸基が化学修飾されておらず、セルロース繊維A′2は、セルロースI型結晶構造を有していない。なお、上記セルロース繊維A2~A7に関し、セルロース繊維表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にカルボキシル基等に酸化されているかどうかについて、 13C-NMRチャートで確認した結果、酸化前のセルロースの 13C-NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れていた。このことから、セルロース繊維A2~A7は、いずれもグルコース単位のC6位水酸基のみがアルデヒド基等に酸化されていることが確認された。
[0094]
[実施例1]
 前記のようにして得られたセルロース繊維A1について、次のようにして、機械的せん断による粘性劣化の評価を行った。すなわち、セルロース繊維A1に、純水を加え、固形分濃度0.5%になるよう希釈し、ホモミキサーMARKII2.5型(PRIMIX社製)を用いて4,000rpmで5分間撹拌し、測定液を得た。つぎに、上記測定液を25℃で1日静置した後、B型粘度計(BROOKFIELD社製、ローターNo.4、6rpm、3分、25℃)を用いて粘度を測定した。その後、ウォーターバスを用いて60℃に加温し、測定液の温度を60℃に保持したままホモミキサーMARKII2.5型(PRIMIX社製)を用いて12,000rpmで60分間撹拌(せん断処理)した。その後、処理液をさらに25℃で1日静置した後、B型粘度計(BROOKFIELD社製、ローターNo.4、6rpm、3分、25℃)を用いて粘度を測定した。そして、上記せん断処理前後での粘度から、下記の式(4)より粘度保持率(%)を算出し、下記の基準に従い、粘性劣化の度合いを評価したところ、「◎」の評価が得られた。
[数7]
 粘度保持率(%)=[せん断処理後の粘度(mPa・s)/せん断処理前の粘度(mPa・s)]×100……(4)
  ◎:粘度保持率が85%以上
  ○:粘度保持率が70%以上85%未満
  △:粘度保持率が55%以上70%未満
  ×:粘度保持率が55%未満
[0095]
 つぎに、上記セルロース繊維A1をゲル化剤として純水に希釈(組成物全量の0.5重量%がセルロース繊維A1となるよう希釈)した後、架橋剤として塩基性酢酸アルミニウムを組成物全量の0.2重量%となるよう添加し、T.K.ホモミキサー(PRIMIX社製)により4000rpmで10分間撹拌した。この撹拌物について、下記の基準に従って、各特性の評価を行った結果、いずれも「○」の評価が得られた。
[0096]
〔ゲル化〕
 ガラス瓶に移して1日静置後、ゲル化せず(もしくはゲル化が不充分で)、ガラス瓶を傾けた際に、容器から流動的に流れ出たものを「×」、ゲル化が良好になされ、容器から一つの塊となって出る、または容器から流れ出ないものを「○」と評価した。
[0097]
〔環境負荷〕
 ゲル化剤、架橋剤のいずれかに、環境負荷物質(地中に残存したり、地下水に流出したりすることにより、周辺住民に健康被害を及ぼすおそれのある物質)を使用しているものを「×」、ゲル化剤、架橋剤のいずれにも環境負荷物質を使用していないものを「○」と評価した。
[0098]
〔6rpmでの粘度、チクソトロピーインデックス(TI)の測定〕
 前記のようにして得られた測定液のうち250gを25℃で1日静置した後、B型粘度計(BROOKFIELD社製、ローターNo.4、6rpm、3分、25℃)を用いて粘度を測定した。
 つぎに、回転数を60rpmに変更した以外は、上記と同条件で粘度を測定し、下記の式(5)に従い、チクソトロピーインデックス(TI)を算出し、下記の基準に従い、TIの評価を行った。
[数8]
 TI=回転数6rpmでの粘度(mPa・s)/回転数60rpmでの粘度(mPa・s)……(5)
  ◎:TIが6以上
  ○:TIが4以上6未満
  △:TIが3以上4未満
  ×:TIが3未満
[0099]
[実施例2~7、参考例、比較例1~3]
 下記の表2に示すように、セルロース繊維A1に代えて、前記のようにして得られたセルロース繊維A2~A7,A′1,A′2、市販のポリアクリルアミド(テルコートDP、テルナイト社製)、市販のキサンタンガム(XCDポリマー、テルナイト社製)のいずれかを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、各特性の評価を行った。その結果を、下記の表2に併せて示す。
[0100]
[表2]


[0101]
 上記表2の結果より、実施例の測定液は、粘性劣化を生じず、塩基性酢酸アルミニウムによるゲル化も良好であることから、止水効果が高く、環境負荷の点でも良好な結果が得られた。これに対し、参考例の測定液では、粘性劣化は生じなかったものの、塩基性酢酸アルミニウムによるゲル化がなされなかった。比較例1の測定液では、セルロース繊維A′2が針葉樹起源でないことから、セルロースI型結晶構造を有しておらず、粘性劣化の点でも劣っていた。比較例2のポリアクリルアミドや、比較例3のキサンタンガムも、粘性劣化の点で劣っており、塩基性酢酸アルミニウムによるゲル化もなされなかった。さらに、ポリアクリルアミドを用いた比較例2は、環境負荷の点でも劣る結果となった。
[0102]
 なお、上記表2の結果より、実施例および参考例の測定液は、比較例の測定液に比べ、6rpmでの粘度が高く、TIも高く、粘性劣化もみられなかった。このことから、液状炭化水素増進回収方法(EOR)、すなわち、増粘剤が配合された水溶液を、井戸(圧入井)に圧入し、その井戸の対象油層内の液状炭化水素を、油層を介して繋がっている他の井戸(生産井)へと押し出し、上記他の井戸から液状炭化水素の回収を行うといった手法において、実施例および参考例の測定液を増粘剤として使用した場合、上記特性から、比較例の測定液を増粘剤として使用した場合に比べ、残存する原油の押し出し効果が高いことが認められる。そのため、実施例および参考例の測定液を増粘剤として使用した上記液状炭化水素増進回収方法では、液状炭化水素の回収効率を向上させることができる。また、実施例の測定液はTIが高いことから、井戸に圧入しやすいことが認められ、結果、この測定液を増粘剤として使用した液状炭化水素増進回収方法は、他の多くの石油増進回収方法に比べ、容易に実施することができる。
[0103]
 また、上記液状炭化水素増進回収方法(EOR)では、針葉樹起源パルプのセルロース繊維をナノ分散させて希釈し得られた溶液を井戸に圧入することにより、上記のような作用効果が得られるため、これに特化した、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置は、上記作用効果を得るうえで有用であることがわかる。すなわち、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置は、針葉樹起源パルプを水中で破砕する破砕手段と、上記破砕手段で得られたセルロース繊維含有液を希釈する希釈手段と、上記希釈手段で得られたセルロース繊維のナノ分散液を井戸に圧入するための圧入手段とを備えたものである。特に、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置における破砕手段が井戸近傍に設けられているものは、採掘現場で井戸圧入用のセルロース繊維ナノ分散液を調製し、それを直に井戸に圧入することができるため、井戸の微生物汚染やセルロース繊維ナノ分散液の経時劣化問題等を解消することができるため、上記実施例における作用効果を得るうえで、非常に有用である。
[0104]
[実施例8~12、比較例4,5]
 下記の表3に示すように、ゲル化剤として、セルロース繊維A1に代えて、前記のようにして得られたセルロース繊維A7、市販のポリアクリルアミド(テルコートDP、テルナイト社製)、市販のキサンタンガム(XCDポリマー、テルナイト社製)のいずれかを用い、さらに、架橋剤の種類《塩基性酢酸アルミニウム(酢酸Al)、硫酸カリウムアルミニウム無水和物(カリ明礬)、重クロム酸ナトリウム(重Cr酸Na)、ホウ砂》や、上記ゲル化剤および架橋剤の配合量を、下記の表3に示すようにした。それ以外は、実施例1と同様にして、「ゲル化」および「環境負荷」の評価を行った。その結果を、下記の表3に併せて示す。
[0105]
[表3]


[0106]
 上記表3の結果より、実施例では、ゲル化が良好であることから、止水効果が高く、環境負荷の点でも良好な結果が得られた。これに対し、比較例4および比較例5では、架橋剤である重クロム酸ナトリウムやホウ砂により良好にゲル化がなされたものの、その架橋剤等により、環境負荷の点で劣る結果となった。
[0107]
 そして、ゲル化剤が配合された水溶液を井戸に圧入し、井戸から炭化水素を回収するといった炭化水素生産方法において、実施例のゲル化剤および架橋剤を使用した場合、上記特性から、比較例のゲル化剤および架橋剤を使用した場合に比べ、環境負荷が小さく、止水効果も高いといったことが認められるため、図1に示すような炭化水素生産方法に適用することができる。また、図2に示すような、原油回収率向上のために井戸を通じて油層内に水やガスを圧入している状況下に対し、実施例のゲル化剤および架橋剤を使用して、その圧入流体の卓越流路にてゲルを形成させて流体の侵入を中止させ、圧入流体の流路を変えることにより、油層内に残されていた油をより多く他の井戸から回収することができ、炭化水素の増進回収につながるといったことが認められる。
[0108]
 また、上記図1および図2に示す炭化水素生産方法では、針葉樹起源パルプのセルロース繊維をナノ分散させて希釈し得られた溶液を井戸に圧入することにより、上記のような作用効果が得られるため、これに特化した、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置は、上記作用効果を得るうえで有用であることがわかる。すなわち、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置は、針葉樹起源パルプを水中で破砕する破砕手段と、上記破砕手段で得られたセルロース繊維含有液を希釈する希釈手段と、上記希釈手段で得られたセルロース繊維のナノ分散液を井戸に圧入するための圧入手段とを備えたものである。特に、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置における破砕手段が井戸近傍に設けられているものは、採掘現場で井戸圧入用のセルロース繊維ナノ分散液を調製し、それを直に井戸に圧入することができるため、井戸の微生物汚染やセルロース繊維ナノ分散液の経時劣化問題等を解消することができるため、上記実施例における作用効果を得るうえで、非常に有用である。
[0109]
≪実施例13~23、比較例6~14≫
[0110]
〔セルロース繊維B1(実施例用)の調製〕
 針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)50gを水4950gに分散させ、パルプ濃度1質量%の分散液を調整した。この分散液をセレンディピターMKCA6-3(増幸産業社製)で30回処理し、セルロース繊維B1を得た。
[0111]
〔セルロース繊維B2(実施例用)の調製〕
 針葉樹パルプ100gを、イソプロパノール(IPA)435gと水65gとNaOH9.9gの混合液中にいれ、30℃で1時間撹拌した。このスラリー系に50%モノクロル酢酸のIPA溶液23.0gを加え、70℃に昇温し1.5時間反応させた。得られた反応物を80%メタノールで洗浄し、その後メタノールで置換し乾燥させ、カルボキシメチル化セルロース繊維を調製した。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング社製、H11)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維B2を調製した。
[0112]
〔セルロース繊維B3(実施例用)の調製〕
 針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が12mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10~11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維を得た。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング社製、H11)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維B3を調製した。
[0113]
〔セルロース繊維B′1(比較例用)の調製〕
 針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)50gを水4950gに分散させ、パルプ濃度1質量%の分散液を調整した。この分散液をセレンディピターMKCA6-3(増幸産業社製)で10回処理し、セルロースB′1を得た。
[0114]
〔セルロース繊維B′2(比較例用)の調製〕
 原料の針葉樹パルプに替えて再生セルロースを使用するとともに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、再生セルロース1.0gに対して27.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維B3の調製に準じて、セルロースB′2を調製した。
[0115]
 上記のようにして得られたセルロース繊維B1~B3,B′1,B′2について、前記基準に従って、下記の表4に示す評価を行った。その結果は、以下の通りである。
[0116]
[表4]


[0117]
 上記表4の結果から、実施例用のセルロース繊維B1~B3は、いずれも数平均繊維径が2~500nmの範囲内で、セルロースI型結晶構造を有していた。これに対して、比較例用のセルロース繊維B′1は、数平均繊維径がナノレベルを超えていた。セルロース繊維B′2は、セルロースI型結晶構造を有さず、さらに数平均繊維径が小さすぎて測定不可(1nm以下)であった。
[0118]
〔実施例13〕加熱によるセルロース繊維B1のゲル化
 上記のセルロース繊維B1を固形分0.6%に蒸留水で希釈し、ホモミキサーで8,000rpm、10分間分散した。これをPTFEるつぼ(内径45mm、高さ60mm)に深さ50mmとなるように移し、ステンレス製の耐圧容器で密閉した。密閉後、恒温槽を用いて130℃で24時間加熱し、ゲル化させた。24時間後、恒温槽から取り出して室温で5時間静置した。ゲルの可否は以下の方法で判定し、判定の結果、セルロース繊維B1は上記条件でゲル化していた。
[0119]
〔ゲル化の判定方法〕
 PTFE容器にプラスチックシャーレを被せて、静かに反転させた。その後、PTFEるつぼを静かに引き上げて、内容物をプラスチックシャーレ上に取り出した。取り出してから1分後、シャーレ上の内容物の高さを測定し、ゲル化によって、図1に示すサンプル写真のように、元の形(高さ50mm)を保ち、高さが30mm以上の場合は「ゲル化」、それ未満の場合は「ゲル化せず」と判定した。
[0120]
〔実施例14、15〕加熱によるセルロース繊維B2、B3のゲル化
 セルロース繊維B1に代えてセルロース繊維B2、B3を用いた以外は実施例13と同様の手法で試験を行った。判定の結果、セルロース繊維B2、B3はともにゲル化していた。
[0121]
〔比較例6、7〕加熱によるセルロース繊維B′1、B′2のゲル化
 セルロース繊維B1に代えてセルロース繊維B′2、B′3を用いた以外は実施例13と同様の手法で試験を行った。判定の結果、セルロース繊維B′2、B′3はともにゲル化しておらず、PTFEるつぼから取り出す際に流動して元の形を保っていなかった。
[0122]
 ここで、上記実施例13~15、および比較例6,7の結果を併せて、表5に示した。
[0123]
[表5]


[0124]
〔実施例16、17〕架橋剤によるセルロース繊維B2、B3のゲル化(1)
 上記のセルロース繊維B2、またはB3を固形分0.6%に蒸留水で希釈し、ホモミキサーで8,000rpm、10分間分散した。ここに塩基性酢酸アルミニウムを全量に対して0.2%添加し、ホモミキサーでさらに8,000rpm、10分間分散した。これを100mlビーカーに深さ50mmとなるように移し、ラップをした状態で24時間静置してゲル化した。24時間後、ゲルの可否は以下の方法で判定し、判定の結果、セルロース繊維B2、およびB3は上記条件でゲル化していた。
[0125]
〔ゲル化の判定方法〕
 100mlビーカーにプラスチックシャーレを被せて、静かに反転させた。その後、ビーカーを静かに引き上げて、内容物をプラスチックシャーレ上に取り出した。取り出してから1分後、シャーレ上の内容物の高さを測定し、ゲル化によって元の形(高さ50mm)を保ち、高さが30mm以上の場合は「ゲル化」、それ未満の場合は「ゲル化せず」と判定した。
[0126]
〔比較例8、9〕架橋剤によるセルロース繊維B′1、B′2のゲル化
 セルロース繊維B2に代えてセルロース繊維B′2、B′3を用いた以外は実施例16と同様の手法で試験をおこなった。判定の結果、セルロース繊維B′2、B′3はともにゲル化しておらず、ビーカーから取り出す際に流動して元の形を保っていなかった。
[0127]
〔実施例18、19〕架橋剤によるセルロース繊維B2、B3のゲル化(2)
 上記のセルロース繊維B2、またはB3を固形分0.6%に蒸留水で希釈し、ホモミキサーで8,000rpm、10分間分散した。これを100mlビーカーに深さ50mmとなるように移し、ここに静かに1.0M塩化アルミニウム水溶液を全量に対して2.0%添加した。その後、ラップをした状態で24時間静置してゲル化した。24時間後、ゲルの可否は以下の方法で判定し、判定の結果、セルロース繊維B2、およびB3は上記条件でゲル化していた。
[0128]
〔ゲル化の判定方法〕
 100mlビーカーにプラスチックシャーレを被せて、静かに反転させた。その後、ビーカーを静かに引き上げて、内容物をプラスチックシャーレ上に取り出した。取り出してから1分後、シャーレ上の内容物の高さを測定し、ゲル化によって元の形(高さ50mm)を保ち、高さが30mm以上の場合は「ゲル化」、それ未満の場合は「ゲル化せず」と判定した。
[0129]
〔比較例10、11〕架橋剤によるセルロース繊維B′1、B′2のゲル化
 セルロース繊維B2に代えてセルロース繊維B′2、B′3を用いた以外は実施例18と同様の手法で試験をおこなった。判定の結果、セルロース繊維B′2、B′3はともにゲル化しておらず、ビーカーから取り出す際に流動して元の形を保っていなかった。
[0130]
〔実施例20〕模擬油層を用いたポリマーEOR試験
<模擬油層の準備>
 長さ400mmのフッ素樹脂製チューブ(内径15mm)2本をY字型コネクタで、それぞれを同じ側に接続し、さらに、反対側に、シリンジから液体を圧入できるように、長さ50mmの第3のフッ素樹脂チューブを取り付けた。長さ400mmのフッ素樹脂製チューブの一方には海砂(ナカライテスク社製)を詰め込み、最後に脱脂綿を詰め、その先をピンチコックで押圧して隙間を5mm程度とし、中の海砂を封入した。Y字型コネクタの2本のチューブが接続されている側を模擬油層とし、そのうち海砂が封入されている側を低浸透性模擬油層、もう一方を高浸透性模擬油層とした。また、Y字型コネクタの反対側を圧入側とした。
[0131]
<模擬油層の水攻法試験>
 最初に、高浸透性模擬油層の先端を折り曲げ密封した状態で、圧入側からシリンジポンプを用いてシリコンオイルを圧入した。その次に、高浸透性模擬油層の先端を開放し、低浸透性模擬油層の先端を折り曲げ密封した状態で、圧入側からシリンジポンプを用いてシリコンオイルを圧入した。このようにして、どちらの模擬油層内もシリコンオイルで満たした。続いて、どちらの模擬油層も先端を開放した状態で、シリンジポンプを用いて圧入側からブライン(3%塩化ナトリウム水溶液)を圧入した。その結果、海砂を封入していない高浸透性模擬油層側からのみシリコンオイル、およびブラインが流出した。
[0132]
<模擬油層のセルロースナノ繊維によるポリマーEOR試験>
 固形分濃度2.0%のセルロース繊維B3に蒸留水を添加し、ホモミキサーで8,000rpm×10min撹拌した。これにより、0.2%セルロース繊維B3水分散液を調製した。この0.2%セルロース繊維B3水分散液を上記の模擬油層の圧入側からシリンジポンプを用いて圧入した。その結果、ブラインでは高浸透性模擬油層からのみシリコンオイル、およびブラインが流出しなかったのに対し、セルロース繊維水分散液の場合は海砂が封入されている低浸透性模擬油層側からもシリコンオイル、およびブラインの流出が確認できた。
[0133]
〔実施例21〕加熱ゲルによる止水試験
<模擬油層の密閉と加熱によるゲル化>
 実施例20と同様に模擬油層内をシリコンオイルで満たした後、高浸透性模擬油層の端から、シリンジポンプを用いて0.2%セルロース繊維B3水分散液を10ml圧入し、その後、全てのフッ素樹脂チューブを折り曲げて密閉した。次いで、密閉状態の模擬油層を蒸留水で満たしたガラス容器の中に沈め、これをオートクレーブで130℃、3気圧で24時間加熱後、5時間かけて徐冷した。
[0134]
<止水性評価試験>
 模擬油層の全てのフッ素樹脂チューブを解放した後、シリンジポンプを用いて圧入側からブライン(3%塩化ナトリウム水溶液)を圧入した。その結果、高浸透性模擬油層内ではセルロース繊維がゲル化し、ブラインの流出を妨げたため、低浸透性模擬油層からのみシリコンオイル、およびブラインが流出した。
[0135]
〔比較例12〕
 セルロース繊維B3に代えてB′2を用いた以外は実施例21と同様の試験を行った。しかし、セルロース繊維B′2はゲル化しておらず、高浸透性模擬油層側からシリコンオイル、およびブラインが流出した。
[0136]
〔実施例22〕架橋ゲルによる止水試験(1)
<作液>
 固形分濃度2.0%のセルロース繊維B3に蒸留水を添加し、ホモミキサーで8,000rpm×10min撹拌した。さらに塩基性酢酸アルミニウムを全量に対して0.1%添加し、さらにホモミキサーで8,000rpm×10min撹拌した。これを架橋ゲル化セルロース水分散液とした。
[0137]
<模擬油層の密閉と加熱によるゲル化>
 実施例20と同様に模擬油層内をシリコンオイルで満たした後、高浸透性模擬油層の端から、シリンジポンプを用いて架橋ゲル化セルロース水分散液を10ml圧入し、その後、全てのフッ素樹脂チューブを折り曲げて密閉した。この状態で24時間静置し、セルロース繊維を架橋ゲル化させた。
[0138]
<止水性評価試験>
 模擬油層の全てのフッ素樹脂チューブを解放した後、シリンジポンプを用いて圧入側からブライン(3%塩化ナトリウム水溶液)を圧入した。その結果、高浸透性模擬油層内ではセルロース繊維がゲル化し、ブラインの流出を妨げたため、低浸透性模擬油層からのみシリコンオイル、およびブラインが流出した。
[0139]
〔比較例13〕
 セルロース繊維B3に代えてB′2を用いた以外は実施例22と同様の試験を行った。しかし、セルロース繊維B′2はゲル化しておらず、高浸透性模擬油層側からシリコンオイル、およびブラインが流出した。
[0140]
〔実施例23〕架橋ゲルによる止水試験(2)
<作液>
 固形分濃度2.0%のセルロース繊維B3に蒸留水を添加し、ホモミキサーで8,000rpm×10min撹拌し、0.2%セルロース繊維水分散液を調製した。
[0141]
<模擬油層の密閉と加熱によるゲル化>
 実施例20と同様に模擬油層内をシリコンオイルで満たした後、高浸透性模擬油層の端から、シリンジポンプを用いて0.2%セルロース繊維水分散液を10ml圧入した。続いて、1.0M塩化アルミニウム水溶液を0.2ml圧入した。その後、全てのフッ素樹脂チューブを折り曲げて密閉した。この状態で24時間静置し、セルロース繊維を架橋ゲル化させた。
[0142]
<止水性評価試験>
 模擬油層の全てのフッ素樹脂チューブを解放した後、シリンジポンプを用いて圧入側からブライン(3%塩化ナトリウム水溶液)を圧入した。その結果、高浸透性模擬油層内ではセルロース繊維がゲル化し、ブラインの流出を妨げたため、低浸透性模擬油層からのみシリコンオイル、およびブラインが流出した。
[0143]
〔比較例14〕
 セルロース繊維B3に代えてB′2を用いた以外は実施例23と同様の試験を行った。しかし、セルロース繊維B′2はゲル化しておらず、高浸透性模擬油層側からシリコンオイル、およびブラインが流出した。
[0144]
 なお、上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。

産業上の利用可能性

[0145]
 本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置は、環境に負荷をかけず安定した止水作業を行うことができる。特に、本発明のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置は、原油・ガス等の炭化水素の生産方法に好適に用いることができる。また、本発明の炭化水素生産方法は、生産流体に占める水の割合が多くなった井戸に対して適用し、随伴水処理にかかる労力・コストを軽減できると同時に、原油・ガスの回収率を向上させることができる。さらに、水・ガスの圧入による油の掃攻効率を改善することができる点においても、本発明の炭化水素生産方法は極めて有効である。

符号の説明

[0146]
 1 チュービング
 2 ケーシング
 3 高圧ホモジナイザー
 4,5 撹拌機
 6 分別タンク
 7 脱塩機
 8 パッカー
 9 水タンク
 p1~p4 ポンプ
 a1~a5,b1~b6 バルブ

請求の範囲

[請求項1]
 針葉樹起源パルプのセルロース繊維がナノ分散された液体を地層に圧入するための圧入装置であって、針葉樹起源パルプを水中で破砕する破砕手段と、上記破砕手段で得られたセルロース繊維含有液を希釈する希釈手段と、上記希釈手段で得られたセルロース繊維のナノ分散液を井戸に圧入するための圧入手段とを備えたことを特徴とするセルロース繊維ナノ分散液圧入装置。
[請求項2]
 上記破砕手段が地表の井戸近傍に設けられている、請求項1記載のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置。
[請求項3]
 請求項1または2記載のセルロース繊維ナノ分散液圧入装置を用い、地下の井戸近傍の透水層にセルロース繊維のナノ分散液を圧入することを特徴とする、セルロース繊維ナノ分散液圧入方法。
[請求項4]
 針葉樹起源パルプを水中で破砕し、それを液体に分散させて得られたセルロース繊維ナノ分散液を、井戸から地下の透水層に圧入するセルロース繊維ナノ分散液圧入工程を有することを特徴とする炭化水素生産方法。
[請求項5]
 上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程と、その圧入経路を遮断する遮断工程と、上記圧入経路の遮断を開放後に井戸から炭化水素を回収する生産工程とを有する、請求項4記載の炭化水素生産方法。
[請求項6]
 上記セルロース繊維ナノ分散液として、その分散液中のセルロース繊維表面の水酸基が化学修飾されたものを用いる、請求項4または5記載の炭化水素生産方法。
[請求項7]
 上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程よりも前に、および/または、上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程よりも後に、多価金属塩含有水溶液を井戸に圧入する多価金属塩含有水溶液圧入工程を有する、請求項6に記載の炭化水素生産方法。
[請求項8]
 上記セルロース繊維ナノ分散液に、多価金属塩を含有する、請求項6または7に記載の炭化水素生産方法。
[請求項9]
 上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程よりも後に、セルロース繊維不含の水溶液を圧入し、ついで上記遮断工程を行う、請求項5~8のいずれか一項に記載の炭化水素生産方法。
[請求項10]
 上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程を行う井戸(圧入井)と、炭化水素の回収を行う井戸(生産井)とが、異なる井戸である、請求項4~9のいずれか一項に記載の炭化水素生産方法。
[請求項11]
 上記セルロース繊維ナノ分散液圧入工程の前に、井戸に清水を圧入する、請求項4~10のいずれか一項に記載の炭化水素生産方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]