国際・国内特許データベース検索
このアプリケーションの一部のコンテンツは現在ご利用になれません。
この状況が続く場合は、次のお問い合わせ先までご連絡ください。フィードバック & お問い合わせ
1. (WO2015132990) エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電力機器
Document

明 細 書

発明の名称 エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電力機器

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009  

発明の効果

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065  

実施例 1

0066  

実施例 2

0067  

実施例 3

0068  

実施例 4

0069  

実施例 5

0070  

実施例 6

0071  

実施例 7

0072  

実施例 8

0073   0074   0075   0076  

符号の説明

0077  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電力機器

技術分野

[0001]
 本発明は、エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた静止器、遮断機、回転機等の電力機器に関する。

背景技術

[0002]
 静止器、遮断機、回転機といった電力機器においては小型化、軽量化が進行している。これに伴い機器の電流密度、発熱量が増しており、それに用いる絶縁材料には高耐熱化が求められている。一方、電力機器の絶縁材料としては、低コスト性、高接着性、耐熱性、加工性等のバランスが良いエポキシ樹脂が広く用いられてきた。エポキシ樹脂の高耐熱化手法としては、例えば特許文献1に記載のナフタレン骨格等の剛直構造の導入、特許文献2や特許文献3に記載のような3個以上のエポキシ基を構造中に有する多官能エポキシ樹脂の適用が挙げられる。
[0003]
 同様にエポキシ樹脂の硬化剤である酸無水物に対しても剛直化、多官能化の手法が検討されてきた。そのような例としては、特許文献2に記載のメチルナジック酸無水物(酸無水物当量178、日立化成工業(株)製MHAC-P)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量168、日立化成工業(株)HN-5500)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量166、日立化成工業(株)HN-2200)の例があり、その実施例52~54において耐熱温度指数が酸無水物当量の増大、即ち分子量の増大に伴い増すことが示されている。また、特許文献4には、四官能であるメチルヘキサヒドロシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物を硬化剤とする例があり、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を硬化剤とした場合よりもガラス転移温度が高温化することが記載されている。
[0004]
 しかし、多官能化、剛直化したエポキシ樹脂、多官能化した酸無水物、分子量が大きな酸無水物を用いて絶縁材料の高耐熱化をなした場合、樹脂組成物の溶融温度や粘度が増加し、注型性が低下する。
[0005]
 また、電力機器の絶縁材料には高熱伝導性、耐クラック性、高耐電圧性も求められており、例えば特許文献5に記載のように、有機、無機フィラーを配合して改質する手法が求められる。しかし、ワニスに有機、無機フィラーを添加すると、ワニス粘度を増加させる。ワニス粘度の増加にともなう注型性の低下は、微細で複雑な絶縁構造の形成を妨げるため、配線間への空隙の発生を助長するほか、ワニスからの脱泡操作を困難にするため、電力機器の絶縁材中への気泡の残存を助長する。配線間の空隙や絶縁材中の気泡は、電力機器の絶縁信頼性を損なうのでこれを避ける必要がある。
[0006]
 ワニス粘度を低減する手法としては、特許文献1、2に記載のようにワニスへの希釈剤の配合のほか、有機、無機フィラーの表面を改質する効果を有する各種カップリング剤の添加や、技術文献1に記載のように分散剤を添加する手法が一般に用いられる。しかし、反応性希釈剤やカップリング剤、分散剤自体の熱分解開始温度は、エポキシ樹脂硬化物の熱分解開始温度よりも低い場合が多い。そのため特に注型や含浸操作によって電力機器の構造材や絶縁材を形成する注型用ワニスにおいては、ワニス粘度の低減とその硬化物の高耐熱化、特に熱分解開始温度の高温化による高耐熱化が求められていた。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特開平6-233486号公報
特許文献2 : 特開平9-316167号公報
特許文献3 : 特開平8-109316号公報
特許文献4 : 特開2010-193673号公報
特許文献5 : 特開2011-1424号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 本発明の第一の目的は、液状エポキシ樹脂組成からなる注型用ワニスの低粘度性を維持しつつ、その硬化物の耐熱性を向上する特定の有機・無機フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物を提供することである。また、本発明の第二の目的は、更なる高耐熱化を実現する絶縁構造と、それを構造材または絶縁材とする電力機器を提供することである。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明に係る樹脂組成物は、常温で液状のエポキシ樹脂の当量が200g/eq以下であるエポキシ樹脂と、常温で液状の酸無水物と、常温で液状の多官能ビニルモノマーと、無水マレイン酸と、前記エポキシ樹脂と前記酸無水物と前記無水マレイン酸の硬化反応を促進するエポキシ樹脂硬化触媒と、前記多官能ビニルモノマーと前記無水マレイン酸との硬化反応を促進するラジカル重合開始剤と、破砕状結晶質シリカと、少なくとも針状フィラーと鱗片状フィラーのいずれか一方を含む無機フィラーと、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子と、コアシェルゴム粒子を含有する。

発明の効果

[0010]
 本発明により、液状エポキシ樹脂組成からなる注型用ワニスの低粘度性を維持しつつ、その硬化物の耐熱性を向上する特定の有機・無機フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 冷熱クラック耐性を評価するサンプルの作製工程および形状を表す模式図(1)。
[図2] 冷熱クラック耐性を評価するサンプルの作製工程および形状を表す模式図(2)。
[図3] 冷熱クラック耐性を評価するサンプルの作製工程および形状を表す模式図(3)。
[図4] 冷熱クラック耐性を評価するサンプルの作製工程および形状を表す模式図(4)。
[図5] 冷熱クラック耐性を評価するサンプルの作製工程および形状を表す模式図(5)。
[図6] 冷熱クラック耐性を評価するサンプルの作製工程および形状を表す模式図(6)。
[図7] 冷熱試験の温度、サイクル条件を示す模式図。
[図8] モデル変圧器用注型コイルの断面模式図。

発明を実施するための形態

[0012]
 従来、ワニスの低粘度化は特許文献1、特許文献2に記載されているように希釈剤を適用する方法が一般的である。また、有機・無機フィラーを含有するワニスにおいては、技術文献1に記載のように分散剤を添加する手法もとられる。先行技術においては、希釈剤の添加は、硬化物の耐熱性を低下させることからその使用量は抑えるべきであるとしていた。分散剤についても、同様のことが言える。しかし、発明者は相当量の希釈剤や分散剤を用いた場合においても、ゴム粒子、針状フィラーや鱗片状フィラーを樹脂組成物に添加した場合において、その硬化物の長期熱劣化にともなう強度低下が抑制できること、更にその硬化物上に耐熱樹脂層を形成することによって、該硬化物の熱分解開始温度を高温化できることを見出し、本発明に至った。
[0013]
 本発明における第一の発明では、特定の有機・無機フィラーを含有する液状エポキシ樹脂組成物を提供する。第一の発明は、例えば、常温で液状のエポキシ樹脂の当量が200g/eq以下であるエポキシ樹脂と、常温で液状の酸無水物と、常温で液状の多官能ビニルモノマーと、無水マレイン酸と、前記エポキシ樹脂と前記酸無水物と前記無水マレイン酸の硬化反応を促進するエポキシ樹脂硬化触媒と、前記多官能ビニルモノマーと前記無水マレイン酸との硬化反応を促進するラジカル重合開始剤と、破砕状結晶質シリカと、少なくとも針状フィラーと鱗片状フィラーのいずれか一方を含む無機フィラーと、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子と、コアシェルゴム粒子を含有する。
[0014]
 液状のエポキシ樹脂、液状の酸無水物、液状の多官能ビニルモノマーはワニスの低粘度化に寄与する成分である。無水マレイン酸は、エポキシ樹脂と多官能ビニルモノマーとを共重合化し、硬化物の架橋密度を増して高耐熱化に寄与する成分である。破砕状結晶質シリカは、硬化物の低熱膨張化、高熱伝導化に寄与する成分である。針状または鱗片状フィラー、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、コアシェルゴム粒子は、硬化物の耐クラック性を向上する成分であり、耐熱性の改善にも寄与する。特に鱗片状フィラーは、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性向上能力が高いので好ましく用いられる。
[0015]
 本発明における第二の発明は、エポキシ樹脂組成物の硬化物上に耐熱樹脂層を有する絶縁構造を提供する。耐熱樹脂層の設置により、エポキシ樹脂組成物の硬化物と外気との接触を抑制し、エポキシ樹脂組成物の硬化物中の樹脂成分の酸化による熱劣化を抑制するものである。耐熱樹脂層は、その5wt%重量減少温度がエポキシ樹脂組成物の硬化物中の樹脂成分よりも高い耐熱樹脂成分を用いて作製されることが好ましい。また、耐熱樹脂層は、少なくとも電力機器の表面のうち、エポキシ樹脂組成物の硬化物が外気と接している部分に設置する。これによって電力機器を構成するエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性が向上する。
[0016]
 本発明のエポキシ樹脂組成物、絶縁構造を適用することによって電力機器の耐熱性、絶縁信頼性が改善されるものである。
[0017]
 エポキシ樹脂組成物としては、液状エポキシ樹脂、液状酸無水物、無水マレイン酸、多官能ビニルモノマー、カップリング剤、分散剤を含有し、更にフィラー成分として、特定サイズの破砕状シリカ、少なくとも針状フィラーと鱗片状フィラーのいずれか一方を含む無機フィラー、ゴム粒子を含有する液状エポキシ樹脂組成物の使用が好ましい。
[0018]
 液状エポキシ樹脂、液状酸無水物、無水マレイン酸、多官能ビニルモノマーは、無水マレイン酸を介して互いに共重合して架橋密度の高い硬化物を与える。以下、本発明の樹脂組成物をエポキシ-ビニル共重合型液状樹脂組成物、その硬化物をエポキシ-ビニル共重型絶縁材料と称す。エポキシ-ビニル共重合型液状樹脂組成物の硬化物は、高架橋密度が高く、高温下における弾性率の低下が抑制されるとともにガラス転移温度も高い。
[0019]
 また、高架橋密度化によりエポキシ-ビニル共重型絶縁材料の耐クラック性は低下する傾向にあるものの、特定範囲のサイズの破砕状結晶質シリカ、針状フィラー、鱗片状フィラー、ゴム粒子を所定量配合することによって、硬化物の熱伝導性、靭性及び強度を改善し、耐熱性とともに耐クラック性を付与することができる。
[0020]
 本発明の実施態様を提示すれば、以下のとおりである。なお、本発明においては、常温を25℃と定義する。
(1)常温で液状のエポキシ樹脂の当量が200g/eq以下であるエポキシ樹脂と、常温で液状の酸無水物と、常温で液状の多官能ビニルモノマーと、無水マレイン酸と、前記エポキシ樹脂と前記酸無水物と前記無水マレイン酸の硬化反応を促進するエポキシ樹脂硬化触媒と、前記多官能ビニルモノマーと前記無水マレイン酸との硬化反応を促進するラジカル重合開始剤と、破砕状結晶質シリカと、少なくとも針状フィラーと鱗片状フィラーのいずれか一方を含む無機フィラーと、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子と、コアシェルゴム粒子とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
[0021]
 本構成のエポキシ樹脂組成物は、希釈剤である多官能ビニルモノマーの効果によってワニス粘度の低減がなされる。また、その硬化物からなる該構造材または絶縁材は、複合化した有機・無機フィラーの効果によって熱伝導性、靭性、強度に優れる。冷熱衝撃耐性にも優れていることから、長期熱劣化試験におけるエポキシ樹脂硬化物へのクラックの発生が抑制され、熱劣化後の強度低下が抑制されることから結果として、優れた耐熱性を示す。特に鱗片状フィラーを配合した場合に、耐熱性の改善効果が高い。
(2)上記(1)の構成に加え、以下の特徴を有する。破砕状結晶質シリカの平均粒径が5μm以上、50μm以下であり、針状フィラーの平均直径が0.1μm以上、3μm以下、平均長さ10μm以上、50μm以下であり、鱗片状フィラーの平均粒径が5μm以上、200μm以下であり、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の平均粒径が10nm以上、100nm以下であり、コアシェルゴム粒子の平均粒径が101nm以上、2000nm以下である。
[0022]
 破砕状結晶質シリカは、高熱伝導性および低熱膨張性を付与し、針状フィラーおよび鱗片状フィラーは、高強度性を付与し、ゴム粒子は高靭性を付与する。微粒子の複合化によって硬化収縮の抑制、残留応力の低減、微細クラック先端の応力分散によるクラック成長の抑制、熱膨張係数の調整、熱伝導性の向上、低価格化、高耐熱化が効果的になされる。
なお、ゴム粒子の平均粒径は、一次粒子の大きさを表す。
(3)上記(2)の構成に加え、以下の特徴を有する。破砕状結晶質シリカと、無機フィラーと、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子と、コアシェルゴム粒子とで構成する有機・無機フィラーをエポキシ樹脂組成物の総量に対して30~76wt%含有し、有機・無機フィラー中の成分構成は、破砕状結晶質シリカが50wt%~96wt%であり、無機フィラーが1~35wt%、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子が1~5wt%であり、コアシェルゴム粒子が2~10wt%の範囲である。
[0023]
 本構成のエポキシ樹脂と酸無水物と無水マレイン酸と多官能ビニルモノマーからなる母材のワニス粘度は低いので、本範囲の有機・無機フィラーを含有するワニスにおいても粘度の上昇が抑制され、脱泡や注型、含浸作業の効率性を増すことができる。
(4)上記(3)の構成に加え、以下の特徴を有する。有機・無機フィラーの総量に対してカップリング剤を0.2~1wt%、分散剤を0.2~1wt%含有する。
[0024]
 カップリング剤、分散剤を併用することにより、ワニス粘度を更に低減することができるので電力機器の製造性が更に改善される。
(5)上記(1)~(4)のいずれかの構成を有するエポキシ樹脂組成物の硬化物を構造材または絶縁材に用いる。
[0025]
 本構成を採用することによって、電力機器の構造材または絶縁材へのボイド発生の抑制、熱伝導性、靭性、強度、冷熱衝撃耐性、耐熱性の付与がなされ、電力機器の絶縁信頼性の向上、長寿命化をなすことができる。
(6)上記(5)の構成に加え、以下の特徴を有する。構造材または絶縁材の外気に触れる部分に、構造材または絶縁材を構成する樹脂成分よりも、高い熱分解開始温度を有する耐熱絶縁層を設置する。
[0026]
 本構成を採用することによって、エポキシ樹脂組成物の硬化物の酸化を伴う熱劣化が抑制され、構造材または絶縁材の熱分解開始温度が高温化し、電力機器の耐熱性、寿命を、更に増すことができる。なお、耐熱樹脂層上に装飾を目的として更に着色塗料層を設置してもよい。
(7)上記(6)の構成に加え、以下の特徴を有する。構造材または絶縁材とは異なる部位に金属材を有し、その金属材の外気に触れる部分に、前記耐熱絶縁層を設置する。
[0027]
 電力機器の該構造材または該絶縁材とともに金属材料部分を耐熱樹脂層で同時に被覆することによって、金属材料部分の腐食や、電極部分からの漏電を防止できる。また、エポキシ樹脂硬化物上のみを耐熱樹脂層で被覆する場合には、金属材料部分にマスキングを施す等の工夫が必要となり、生産性の低下を招くので、電力機器の外観上の問題や、耐熱樹脂層の設置コストの許す範囲で、電力機器の外側を全体的に耐熱樹脂層で被覆することが好ましい。
(8)上記(6)または(7)の構成に加え、以下の特徴を有する。耐熱樹脂層が、リニア構造を有するポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドから選ばれるイミド系樹脂である。
[0028]
 リニア構造を有するポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドから選ばれるイミド系樹脂は、エナメル線の絶縁被覆材として用いられていることから明らかなように耐熱性が優れているとともに、柔軟性を兼ね備えている。そのため電力機器の耐熱樹脂層として用いた場合、耐熱樹脂層に傷やクラックが発生しにくいことから好ましい。
(9)上記(6)~(8)のいずれかの構成に加え、以下の特徴を有する。耐熱樹脂層が塗装によって形成される。
(10)上記(6)~(9)のいずれかの構成に加え、以下の特徴を有する。変圧器コイルを有する。
[0029]
 本構成は、電力機器が、高温状態で長期にわたって外気に曝されるモールド変圧器であることを明確にするものであり、特に構造材または絶縁材の酸化劣化防止の効果が高いものと思われる。
[0030]
 以下、本発明の構成材料について説明する。本発明で用いられる耐熱樹脂層としては、それ自体の耐熱性が優れ、柔軟性をも併せ持つポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドが好ましく用いられる。その例としては、ポリエステルイミドとして耐熱クラス200℃程度の東特塗料(株)製Neoheat8600,8600A,8600AY等を、ポリアミドイミドとしては、耐熱クラス220℃程度である日立化成工業(株)製HCP-5000、HPC-512,HPC-5020,HPC-6000等を、ポリイミドとしては耐熱クラス240℃程度である日立化成工業(株)製HCI-7000、HCI-1000、HCI-1200E、HCI-1300等を上げる事が出来る。これらで形成される耐熱樹脂層は、膜厚が10μm以上、100μm以下の範囲で用いることが、耐熱性の改善効果と経済性の観点から好ましい。また、耐熱樹脂層の乾燥、硬化は180℃以上、300℃以下の範囲で行う。乾燥、硬化時間は、膜厚にもよるが5分から1時間の範囲で実施される。
[0031]
 本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、好ましくは、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。より好ましいエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が200g/eq以下のものが、ワニス粘度の低減の観点から好ましい。
[0032]
 具体的には、DIC(株)製EPICLON840(エポキシ当量180~190g/eq、粘度9000~11000mP・s/25℃)、EPICLON850(エポキシ当量183~193g/eq、粘度11000~15000mP・s/25℃)、EPICLON830(エポキシ当量165~177g/eq、粘度3000~4000mP・s/25℃)三菱化学(株)製jER827(エポキシ当量180~190g/eq、粘度9000~11000mP・s/25℃)、jER828(エポキシ当量184~194g/eq、粘度12000~15000mP・s/25℃)、jER806(エポキシ当量160~170g/eq、粘度1500~2500mP・s/25℃)、jER807(エポキシ当量160~175g/eq、粘度3000~4500mP・s/25℃)等が挙げられる。耐熱性の観点からはビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、低粘度化の観点からはビスフェノールF型エポキシ樹脂の使用が好ましい。また、両特性バランスをとるため、これらのエポキシ樹脂はブレンドして用いることもできる。
[0033]
 酸無水物としては、常温で液状である酸無水物を用いる事が好ましい。その例としては、日立化成工業(株)製HN-2000(酸無水物当量166g/eq、粘度30~50mPa・s/25℃)、HN-5500(酸無水物当量168g/eq、粘度50~80mPa・s/25℃)、MHAC-P(酸無水物当量178g/eq、粘度150~300mPa・s/25℃)、DIC(株)製EPICLON B-570H(酸無水物当量166g/eq、粘度40mPa・s/25℃)を挙げることができる。
[0034]
 酸無水物全体の1~33mol%を無水マレイン酸とすることが好ましい。無水マレイン酸は常温で固体であるが、本範囲においては液状の酸無水物及び多官能ビニルモノマーに溶解させることができ、液状酸無水物と同様にして取り扱うことができる。無水マレイン酸は、多官能ビニルモノマーとの共重合性が高いのでエポキシ-ビニル共重合型絶縁材料の構成成分として好ましい。
[0035]
 多官能ビニルモノマーとしては、分子内に複数のアクリレート基、メタクリレート基、スチレン基、アリル基等の不飽和二重結合を有する化合物を用いることができる。中でも常温で液体である化合物の適用が好ましい。その例としては、東洋ケミカルズ(株)製ヘキサンジオールジアクリレート(Miramer M200、粘度15mPa・s/25℃)、ヘキサンジオールEO変性ジアクリレート(Miramer M202、粘度30mPa・s/25℃)、トリプロピレングリコールジアクリレート(Miramer M220、粘度20mPa・s/25℃)、トリメチロールプロパントリアクリレート(Miramer M300、粘度120mPa・s/25℃)、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(Miramer M3130、粘度65mPa・s/25℃)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Miramer M410、粘度750mPa・s/25℃)、ジエチレングリコールジメタクリレート(Miramer M231、粘度20mPa・s/25℃)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(Miramer M301、粘度60mPa・s/25℃)、和光純薬工業(株)製トリアリルイソシアネート(粘度80~110mPa・s/30℃)、1,2-ビス(m-ビニルフェニル)エタン、1-(p-ビニルフェニル)-2-(m-ビニルフェニル)エタン等が挙げられる。
[0036]
 これら多官能ビニルモノマーは、エポキシ樹脂100重量部に対して、10重量部以上、100重量部以下の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して無水マレイン酸と多官能ビニルモノマーの総量が10重量部以上、50重量部以下の範囲で用いることが耐クラック性改善の観点から好ましい。
[0037]
 本発明のエポキシ-ビニル共重合型液状樹脂組成物には、エポキシ樹脂と酸無水物との硬化反応を促進するエポキシ硬化触媒および多官能ビニルモノマーの硬化反応を促進するラジカル重合触媒を含有する。エポキシ硬化触媒の例としては、トリメチルアミン,トリエチルアミン,テトラメチルブタンジアミン,トリエチレンジアミン等の3級アミン類,ジメチルアミノエタノール,ジメチルアミノペンタノール,トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-メチルモルフォリン等のアミン類、又、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド,セチルトリメチルアンモニウムクロライド,セチルトリメチルアンモニウムアイオダイド,ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド,ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド,ドデシルトリメチルアンモニウムアイオダイド,ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド,ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムブロマイド,アリルドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド,ベンジルジメチルステアリルアンモニウムブロマイド,ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド,ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムアセチレート等の第4級アンモニウム塩、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-プロピル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-アジン-2-メチルイミダゾール、1-アジン-2-ウンデシル等のイミダゾール類、アミンとオクタン酸亜鉛やコバルト等との金属塩、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7、N-メチル-ピペラジン,テトラメチルブチルグアニジン,トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルテトラフェニルボレート、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7-テトラフェニルボレート等のアミンテトラフェニルボレート,トリフェニルホスフィン,トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,アルミニウムトリアルキルアセトアセテート,アルミニウムトリスアセチルアセトアセテート,アルミニウムアルコラート,アルミニウムアシレート,ソジウムアルコラートなどが挙げられる。その添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1重量部以上、1.0重量部以下の範囲とすることが好ましく、特に注型作業時のワニスの増粘を抑制することを目的とする場合には、硬化触媒の添加量を0.1重量部以上、0.5重量部以下とすることが好ましい。本範囲において100℃におけるゲル化時間及び硬化物であるエポキシービニル共重合型絶縁材料のガラス転移温度を調整することができる。
[0038]
 ラジカル重合触媒の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルのようなベンゾイン系化合物、アセトフェノン、2、2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンのようなアセトフェノン系化合物、チオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントンのようなチオキサンソン系化合物、4、4'-ジアジドカルコン、2、6-ビス(4'-アジドベンザル)シクロヘキサノン、4、4'-ジアジドベンゾフェノンのようなビスアジド化合物、アゾビスイソブチロニトリル、2、2-アゾビスプロパン、m、m'-アゾキシスチレン、ヒドラゾン、のようなアゾ化合物、2、5-ジメチル-2、5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2、5-ジメチル-2、5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジクミルパーオキシドのような有機過酸化物等が挙げられる。特に100℃におけるゲル化を調整するためには、1時間半減期温度が少なくとも100℃を超えるラジカル重合触媒を用いることが好ましい。その例としては、t-ブチルパーオキシマレイン酸(1持間半減期温度119℃、日油(株)製パーブチルMA)、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレラート(1持間半減期温度126.5℃、日油(株)製パーヘキサV)、2、5-ジメチル-2、5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3(1持間半減期温度149.9℃、日油(株)製パーヘキシン25B)、ジクミルパーオキシサイド(1持間半減期温度175.2℃、日油(株)製パークミルD)等をあげることができる。その添加量は、無水マレイン酸と多官能ビニルモノマーの総量100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以下、の範囲とすることが、ゲル化時間の調整の観点から好ましい。特に注型作業時のワニスの増粘を抑制することを目的とする場合、硬化触媒の添加量を0.1重量部以上、0.5重量部以下とすることが好ましい。
[0039]
 更に本発明のエポキシ-ビニル共重合型液状樹脂組成物には平均粒径が5μm以上、50μm以下の破砕状結晶質シリカ、直径が0.1μm以上、3μm以下であり、長さが10μm以上、50μm以下である針状フィラーまたは平均粒径が5μm以上、200μm以下である鱗片状フィラー、粒径が10nm以上、100nm以下である架橋ゴム粒子、粒径が100nm以上、2000nm以下であるコアシェルゴム粒子を含むことを特徴とする複合微粒子を含有する。
[0040]
 破砕状結晶質シリカは、低熱膨張性、高熱伝導性を有し、価格も安価であることから複合微粒子の主成分として好ましい。その好ましい平均粒径は5μm以上、50μm以下であり、更に好ましくは0.1μm~100μm程度の広い粒度分布を持つことが好ましい。その結果、破砕状結晶質シリカを高充填した場合においてもワニス粘度の上昇を抑制できる。そのようなシリカの例としては、林化成(株)製SQ-H22、SQ-H18、(株)龍森製CRYSTALITEシリーズ等がある。
[0041]
 針状フィラー、鱗片状フィラーは、硬化収縮の抑制、硬化物の高強度化のほか、後述するゴム粒子成分との複合作用により、耐クラック性、耐熱性の改善に寄与する。針状フィラーのサイズは直径が0.1μm以上、3μm以下であり、長さが10μm以上、50μm以下であることが、鱗片状フィラーのサイズは平均粒径5μm以上、200μm以下であることがワニス粘度の上昇を抑制するために好ましい。耐熱性の改善効果の点からは鱗片状フィラーの適用が特に好ましい。
[0042]
 針状フィラーの例としては、四国化成工業(株)製アルボレックスY(ホウ酸アルミニウムウイスカ、径0.10μm以上、1μm以下、長さ10μm以上、30μm以下)、大塚化学(株)製ティモスN(チタン酸カリウムウイスカ、径0.3μm以上、0.6μm以下、長さ10μm以上、20μm以下、宇部興産(株)製モスハイジ(硫酸マグネシウムウイスカ、径0.10μm、長さ10μm以上、30μm以下)、丸尾カルシウム(株)製ウィスカルA(炭酸カルシウムウイスカ、径0.10μm以上、1μm以下、長さ20μm以上、30μm以下)などがある。鱗片状フィラーとしては、ガラスフレーク、タルク、マイカ等を用いることができる。経済性の点から粉砕マイカが好ましく、その例としては(株)ヤマグチマイカ製、SJ-005(平均粒径5μm)、YM-21S(平均粒径23μm)、SB-061R(平均粒径130μm)、B-82(平均粒径180μm)等がある。
[0043]
 ゴム粒子成分は、硬化物に対して可とう性、応力緩和性を付与し、耐クラック性、耐熱性の改善に寄与する。本発明では、粒径が10nm以上、100nm以下である架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子と、粒径が101nm以上、2000nm以下であるコアシェルゴム粒子を併用する。小粒径のゴム粒子において微細なクラックの成長を抑制し、更に小粒径のゴム粒子では緩和しきれない応力を大粒径のゴム粒子において緩和し、クラックの進展を最小限に抑制するものである。また、小径の架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子のみを用いて、その添加量を増し、硬化物の弾性率を低減してクラックの発生を抑制することもできるが、その場合、ワニスの粘度の著しい上昇を招く。本発明では、粒径の異なるゴム粒子と併用することによってワニス粘度の著しい上昇を抑制しつつ、耐クラック性を改善するものである。大粒径のゴム粒子としてはエポキシ樹脂に対して分散性が改善されているコアシェルゴム粒子を用いることが好ましい。
[0044]
 コアシェルゴム粒子の例としては、Rohm&Haas社製、商品名パラロイドEXL2655(平均粒径200nm)、ガンツ化成(株)製、商品名スタフィロイドAC3355(平均粒径100~500nm)、ゼフィアックF351(平均粒径300nm)等が挙げられる。
[0045]
 破砕状結晶質シリカと、無機フィラーと、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子と、コアシェルゴム粒子とで構成する有機・無機フィラーの配合量は、エポキシ樹脂組成物の総量に対して30~76wt%の範囲で用いることが好ましい。30wt%以下では有機・無機フィラーの効果である熱伝導性、靭性、冷熱衝撃性、低熱膨張性、耐熱性等の特性が低下する。一方、その配合量が76wt%を超えるとワニス粘度の著しい増大を招く。有機・無機フィラー中の成分構成は、破砕状結晶質シリカが50wt%~96wt%であり、無機フィラーが1~35wt%、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子が1~5wt%であり、コアシェルゴム粒子が2~10wt%の範囲である。破砕状結晶質シリカは、主に構造材、絶縁材の高熱伝導化、低熱膨張化に寄与する成分であり、破砕状結晶質シリカ粒子間の一部は互いに接触していることが好ましい。そのため破砕状結晶質シリカの添加量は50~96wt%、更に好ましくは80~96wt%である。その他の無機フィラーである針状、鱗片状フィラーは、強度、靭性、冷熱衝撃性、耐熱性の改善に寄与する成分である。その形状に由来して各種効果を発現するものであるが、ワニスの増粘を招くため、その配合量は1~35wt%とすることが好ましく、更に5~30wt%の範囲で用いることが各種特性のバランスの観点から好ましい。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子は、主に靭性、冷熱衝撃性を改善する成分であるが、ワニス粘度を増大させるため本発明では、その他の無機フィラー、コアシェルゴム粒子を併用する。好ましい配合量は1~5wt%であり、更にワニス粘度の観点から1~3wt%の範囲で用いることが好ましい。コアシェルゴム粒子は、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子との相互作用により靭性、冷熱衝撃性を付与する成分である。その好ましい配合量は2~10wt%である。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子よりも粒子径が大きいため、ワニス粘度の増大は抑制されるものの、ワニス粘度のいっそうの低減、熱分解開始温度の高温化をはかるために2~5wt%の範囲で用いることが更に好ましい。
[0046]
 カップリング剤としては、各種のシラン系、チタネート系カップリング剤が使用できる。そのようなカップリング剤の例としては、シラン系カップリング剤としては、信越化学工業(株)製KBM-402、KBM-403、KBM-502、KBM-504等のエポキシシラン、ビニルシランが好ましい例として挙げられる。チタネート系カップリング剤としては、日本曹達(株)製S-151、S-152、S-181等を挙げる事が出来る。
[0047]
 分散剤としては、各種のノニオン系界面活性剤が好ましく、その例としてはビックケミージャパン(株)製、BYK-W903、BYK-W980、BYK-W996、BYK-W9010等を挙げる事が出来る。
[0048]
 これらのカップリング剤、分散剤は、有機・無機フィラーの表面に化学結合または吸着してその表面を改質することによってワニス粘度の低減に寄与する。従って過剰に配合しても、有機・無機フィラーの表面に化学結合または吸着できず、更なる低粘度効果は期待できない。また、過剰な配合は樹脂硬化物のガラス転移温度、熱分解開始温度を低下させることから好ましくない。以上のことからカップリング剤、分散剤の配合量は、有機・無機フィラー総量に対して、それぞれ0.2~1wt%の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくは0.4~0.8wt%の範囲で用いることが好ましい。
[0049]
 本発明における耐熱指数とは、小澤法による分解反応の速度論的解析の手法に従って、樹脂の熱分析に基づいて算出される指数であって、樹脂硬化物を定温で保持して、該硬化物中の樹脂成分の重量が5wt%減量するのに30年を要する保持温度意味するものとする。
[0050]
 熱分析の手法としては、複数の昇温速度でスキャンして、硬化物中の樹脂成分の重量が5wt%減量する温度を観測する方法(Friedman-小澤法)がある。この方法では、各昇温速度に対して、所定の重量減少に達する温度をプロットすることにより、重量減少に係わる樹脂成分の分解反応の活性化エネルギーを算出することが出来る。
[0051]
 また、2種類以上の異なる保持温度において、樹脂硬化物中の樹脂成分の5wt%重量減少時間を計測する方法(小澤-Flynn-Wall法)がある。この方法では、各保持温度に対して、計測した重量減少時間をプロットすることによって樹脂成分の分解反応の活性化エネルギーを導出することが出来る。これらの方法で求めた活性化エネルギーから耐熱指数を算出することが出来る。
[0052]
 なお、前記刊行物に示されるように、算出される耐熱指数は、樹脂組成物の硬化物の耐熱寿命が構造変化のみによって決まり、構造変化がただ一つの反応で進行しているとの仮定のもとで算出される値である。
(実施例)
 以下に、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例は本発明の具体的な説明のためのものであって、本発明の範囲がこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の発明思想の範囲内において自由に変更可能である。
[0053]
 なお、表1、2における材料組成比は重量比である。
[0054]
 試薬および評価方法を以下に示す。
(1)供試試料
 jER828、三菱化学(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ等量約190g/eq。
[0055]
 HN-5500、日立化成(株)3-又は4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、酸無水物当量168g/eq、構造中に不飽和二重結合がない酸無水物。
[0056]
 無水マレイン酸、和光純薬(株)製、酸無水物当量98g/eq。
[0057]
 M3130、東洋ケミカルズ(株)製トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、多官能ビニルモノマー。
[0058]
 2E4MZ-CN、四国化成工業(株)製1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、エポキシ硬化触媒。
パーヘキシン25B、日油(株)製2、5-ジメチル-2、5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ラジカル重合触媒。
[0059]
 XJ-7、(株)龍森製結晶性破砕状シリカ、粒径約6.3μm、破砕状結晶質シリカ。
[0060]
 ウィスカルA、丸尾カルシウム(株)製炭酸カルシウムウイスカ、径0.1~1μm、長さ20~30μm、針状フィラー
 B-82、(株)ヤマグチマイカ製マイカパウダー、平均粒径180μm、鱗片状フィラー
 SJ-005、(株)ヤマグチマイカ製マイカパウダー、平均粒径5μm、鱗片状フィラー
 S-151、日本曹達(株)製チタニウムステアレート、カップリング剤
 KBM-503、信越化学工業(株)製3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、カップリング剤。
[0061]
 KBM-403、信越化学工業(株)製3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、カップリング剤。
[0062]
 カルボン酸変性放射線架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、平均粒径50~100nm
 コアシェルゴム粒子、ガンツ化成(株)製スタフィロイドAC3355平均粒径100~500nm
 分散剤:ビックケミージャパン(株)製BYK-W9010
 ポリアミドイミド、日立化成工業(株)製ポリアミドイミドワニス(HPC-6000) 昇温速度10℃における5wt%重量減小温度=471℃
(2)ワニスの調整
 所定の配合比で各成分を配合し、(株)シンキー製AR-100型自転・公転式ミキサーで3分間攪拌してワニスを作製した。
(3)硬化物の作製
 ワニスをφ45mm、深さ5mmのアルミカップに注ぎ、大気中で100℃/1時間、110℃/1時間、140℃/1時間、170℃/15時間の多段階加熱により硬化物を作製した。
(4) 耐熱樹脂層の設置
 硬化物から約10mgの樹脂を切り出し、105℃で2時間乾燥した後、正確に重量を観測した(Xg)。本サンプルにポリアミドイミドワニスをディップ法により塗布した。塗布後のサンプルを窒素気流下、105℃/10分、150℃/10分、180℃/10分、220℃/10分の条件で乾燥し、耐熱樹脂層つきサンプルを作製し、その重量Bを正確に観測した。ポリアミドイミドの膜厚は、10~30μmであった。同様の乾燥条件にて、耐熱樹脂層なしのサンプルも作製し、初期重量Xgを観測した。
[0063]
 (5)熱重量測定(TGA)
 先に作製したサンプルを大気中で昇温速度5℃、10℃、20℃の各条件で熱重量測定を実施し、下記式にて樹脂成分が5wt%減量する温度を観測し、耐熱指数を算出した。
<耐熱樹脂層付サンプル>
サンプル中のエポキシ樹脂組成物の樹脂成分の熱減量率=
((B-加熱後の重量)/(X×(100-フィラー含有率)/100))×100
<耐熱樹脂層の無いサンプル>
サンプル中のエポキシ樹脂組成物の樹脂成分の熱減量率=
((X-加熱後の重量)/(X×(100-フィラー含有率)/100))×100
(5)ワニス粘度の測定
 ワニスの粘度は、E型粘度計を用いて、90℃における値を観測した。
(6)冷熱衝撃試験
 図1に示したSUS309S製C型ワッシャー1の両面に図2のようにSUS309S製ビス2を接着剤にて接着した。本C型ワッシャーを図3のように離型処理を施したSUS309S製のC型ワッシャー注型カップ3の中心に設置した。図4のように本カップに所定のワニスを注ぎ、大気中で100℃/1時間、110℃/1時間、140℃/1時間、170℃/15時間の多段階加熱により硬化し、注型樹脂4を製造した。次いで図5に示すC型ワッシャー埋め込みサンプル5に対して、図6のように日立化成工業(株)製ポリアミドイミドワニス(HPC-6000)を塗布し、最終乾燥温度220℃/10分にて大気中で乾燥し、耐熱樹脂層を設置した。図7に示した冷熱衝撃を加えて、硬化物層、耐熱樹脂層へのクラックの発生の有無を観測した。クラックが発生しなかった最低温度を冷熱クラック耐性として観測した。
(7)長期熱劣化後の曲げ強度試験
 表1、表2にサンプルの樹脂組成比を示した。各樹脂組成物から厚さ5mm、幅12.5mm、長さ140mmの樹脂板サンプルを20~40枚作製した。硬化条件は大気中で100℃/1時間、110℃/1時間、140℃/1時間、170℃/15時間の多段階加熱とした。耐熱樹脂層付のサンプルは、ポリアミドイミドワニスをディップ法により塗布し、塗布後のサンプルを窒素気流下、105℃/10分、150℃/10分、180℃/10分、220℃/10分の条件で乾燥して作製した。ポリアミドイミドからなる耐熱樹脂層の厚さは、10~50μmであった。各樹脂板サンプルについて5サンプルの曲げ強度を観測し、その平均値を初期強度Aとして求めた。次いで各樹脂板サンプルを大気下、250℃/100時間、500時間、1000時間の条件で熱劣化させた。各熱劣化後の樹脂板サンプルの5サンプルの曲げ強度を観測し、その平均値Bを求めた。各条件ごとに下記式により強度低下率C%を求めた。
強度低下率C(%)=(B-A)/A×100
(比較例1)
 比較例1の組成と評価結果を表1に示した。比較例1はゴム粒子を含まないエポキシ樹脂組成物の例である。耐熱樹脂層は設置していない。本ワニスは、ワニス粘度が2.8Pa・sと低いものの、耐熱指数の算定値は88℃と低く、冷熱クラック耐性は、-20℃と高い値を示した。本ワニスの課題は、耐熱性の向上と冷熱クラック耐性の向上であった。
(比較例2)
 比較例2の組成と評価結果を表1に示した。比較例2は、比較例1の組成物にゴム粒子を配合した組成である。ゴム粒子の配合によって冷熱クラック耐性は、-60℃以下に改善されたものの、比較例1に比べて樹脂成分の5wt%重量減少温度が約10℃低下した。また、ワニス粘度が20Pa・sに増加した。本ワニスの課題は、ワニスの低粘度化と、樹脂成分の5wt%重量減少温度の高温化であった。
[0064]
[表1]


[0065]
[表2]


実施例 1
[0066]
 実施例1の組成と評価結果を表1に示した。実施例1は、比較例2の組成物の硬化物に耐熱樹脂層を設置した例である。耐熱樹脂層の設置によって、硬化物中の樹脂成分の5wt%重量原初温度は372℃に大きく上昇し、これにともない耐熱指数は145℃に改善された。また、冷熱クラック耐性は-60℃以下を示した。これによりエポキシ樹脂組成物の硬化物上への耐熱樹脂層の設置が、エポキシ樹脂組成物の硬化物中の樹脂成分の5wt%重量減少温度を高温化し、耐熱性の改善に貢献することが明らかとなった。
実施例 2
[0067]
 実施例2の組成と評価結果を表1に記載した。実施例2は、実施例1のワニスに分散剤を配合した例である。実施例1と比較して、ワニス粘度は低下し、4.1Pa・sとなった。これにより分散剤の配合がワニス粘度の低減に効果的であることが確認された。また、耐熱樹脂層の効果により、硬化物中の樹脂成分の5wt%重量原初温度は372℃に、耐熱指数は145℃に維持された。また、冷熱クラック耐性も-60℃以下と優れた値を示した。以上により、本構成のワニス及び耐熱樹脂層の設置によってワニス粘度の低減と、その硬化物の高耐熱化、冷熱クラック耐性が両立できることが明らかとなった。
実施例 3
[0068]
 実施例3は、酸無水物としてMHAC-Pを用いた例である。MHAC-Pを用いたことによって耐熱性は更に改善され、5wt%重量減少温度は377℃、耐熱指数は183℃を示した。また、分散剤の効果によりワニスの粘度は4.7Pa・sと低く、ゴム粒子と針状フィラーの併用効果により冷熱クラック耐性は-60℃と優れた値を示した。
(比較例3)
 比較例3は、比較例1の樹脂組成物の硬化物の長期熱劣化後の曲げ強度試験結果を示した例である。劣化時間の進行にともない曲げ強度は低下し、250℃で1000時間劣化した後の強度は55%低下した。
(比較例4)
 比較例4は、比較例3の樹脂組成物にゴム粒子と分散剤を配合した例である。250℃で1000時間劣化した後の強度は30%低下した。ゴム粒子のクラック防止効果によって、熱劣化にともなう強度低下率は抑制されたものの、耐熱性の改善効果としては不十分であった。
実施例 4
[0069]
 実施例4は、比較例4の樹脂組成物に平均粒径5μmの鱗片状フィラーを配合した例である。250℃で1000時間劣化した後の強度は5%低下した。鱗片状フィラーの配合により、熱劣化による強度低下率が著しく小さくなり、耐熱性が改善ざれた。本発明の樹脂組成物を用いて作製される電力機器は、その構造材または絶縁材の耐熱性が改善されると思われる結果を得た。
実施例 5
[0070]
 実施例5は、比較例4の樹脂組成物に平均粒径5μmの鱗片状フィラーを増量して配合した例である。250℃で1000時間劣化した後の強度は2%低下した。鱗片フィラーの増量により、耐熱性が更に改善した。本発明の樹脂組成物を用いて作製される電力機器は、その構造材または絶縁材の耐熱性が改善されると思われる結果を得た。
実施例 6
[0071]
 実施例6は、比較例4の樹脂組成物に平均粒径180μmの鱗片状フィラーを配合した例である。250℃で1000時間劣化した後の強度は5%低下した。鱗片状フィラーの配合により、熱劣化による強度低下率が著しく小さくなり、耐熱性が改善ざれた。本発明の樹脂組成物を用いて作製される電力機器は、その構造材または絶縁材の耐熱性が改善されると思われる結果を得た。
実施例 7
[0072]
 実施例7は、実施例6の樹脂組成物の硬化物上に耐熱樹脂層を設置した例である。250℃で1000時間劣化した後の強度は低下しなかった。このことからエポキシ樹脂組成物の硬化物上に耐熱樹脂層を設置することにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性が著しく改善されることが確認された。以上のことから、本発明の絶縁構成を有する電力機器は、その構造材または絶縁材の耐熱性が改善されると思われる結果を得た。
実施例 8
[0073]
 実施例6に記載のエポキシ-ビニル共重合型液状樹脂組成物を25kg準備した。本液状樹脂組成物を90℃に加熱して、1torrで約20分間脱気した。90℃におけるワニス粘度は、約5Pa・sであった。モデル変圧器用注型コイルの型を90℃に加熱し、脱気後の液状樹脂組成物25kgを流し込み、再度1torrで20分間、真空脱気した。その後、大気中で100℃/5時間、110℃/2時間、140℃/2時間/、170℃/15時間の条件で硬化した。次いで、8時間かけて50℃に冷却し、型を外して図2に示すモデル変圧器用注型コイルを作製した。型を外した後、ポリアミドイミドワニスを乾燥後の膜厚が約10~50μmとなるように、スプレー塗装した。ポリアミドイミドワニスの乾燥条件は、大気中、105℃/60分、150℃/60分、180℃/60分、220℃/60分とした。
[0074]
 図8にモデル変圧器用注型コイルの断面模式図を示す。モデル変圧器用注型コイルは、注型樹脂7、シールドコイル8、二次コイル9、一次コイル10、耐熱樹脂層11を備える。変圧器コイルは周知であるので、詳細な説明は省略する。
[0075]
 モデル変圧器用注型コイルの外観、断面観察の結果、エポキシ樹脂硬化物内部や耐熱樹脂層にクラックやボイドは認められず、耐熱樹脂層付のモールド変圧器用注型コイルを用いたモールド変圧器は、耐熱性、耐クラック性、絶縁信頼性が優れていると思われる結果を得た。
[0076]
 本発明は、各種電子、電機機器の絶縁材、構造材に用いられている酸無水物硬化型エポキシ樹脂の高耐熱化手法として有効である。特に特定サイズの破砕状結晶質シリカ、針状無機フィラー、鱗片状無機フィラー、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、コアシェルゴム粒子、希釈剤、カップリング剤、分散剤等を含有するワニスにおいては、ゴム成分や希釈剤、分散剤、カップリング剤等の耐熱性の低い成分の酸化をともなう熱分解反応が抑制されることから、ワニス粘度の低減、硬化物の高耐熱化、冷熱クラック耐性の改善がバランス良くなされるため、電力機器の高耐熱化手法として好適である。

符号の説明

[0077]
 1…C型ワッシャー、2…ビス、3…C型ワッシャー注型カップ、4…注型樹脂、5…C型ワッシャー埋め込みサンプル、6…耐熱樹脂層付C型ワッシャー埋め込みサンプル、7…注型樹脂、8…シールドコイル、9…二次コイル、10…一次コイル、11…耐熱樹脂層

請求の範囲

[請求項1]
 常温で液状のエポキシ樹脂の当量が200g/eq以下であるエポキシ樹脂と、
 常温で液状の酸無水物と、
 常温で液状の多官能ビニルモノマーと、
 無水マレイン酸と、
 前記エポキシ樹脂と前記酸無水物と前記無水マレイン酸の硬化反応を促進するエポキシ樹脂硬化触媒と、
 前記多官能ビニルモノマーと前記無水マレイン酸との硬化反応を促進するラジカル重合開始剤と、
 破砕状結晶質シリカと、
 少なくとも針状フィラーと鱗片状フィラーのいずれか一方を含む無機フィラーと、
 架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子と、
 コアシェルゴム粒子とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
[請求項2]
 請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物であって、
 前記破砕状結晶質シリカの平均粒径が5μm以上、50μm以下であり、
 前記針状フィラーの平均直径が0.1μm以上、3μm以下、平均長さ10μm以上、50μm以下であり、
 前記鱗片状フィラーの平均粒径が5μm以上、200μm以下であり、
 前記架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の平均粒径が10nm以上、100nm以下であり、
 前記コアシェルゴム粒子の平均粒径が101nm以上、2000nm以下であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
[請求項3]
 請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物であって、
 前記破砕状結晶質シリカと、前記無機フィラーと、前記架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子と、前記コアシェルゴム粒子とで構成する有機・無機フィラーをエポキシ樹脂組成物の総量に対して30~76wt%含有し、
 前記有機・無機フィラー中の成分構成は、前記破砕状結晶質シリカが50wt%~96wt%であり、前記無機フィラーが1~35wt%、前記架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子が1~5wt%であり、前記コアシェルゴム粒子が2~10wt%の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
[請求項4]
 請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物であって、
 前記有機・無機フィラーの総量に対してカップリング剤を0.2~1wt%、分散剤を0.2~1wt%含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
[請求項5]
 請求項1乃至4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物を構造材または絶縁材に用いたことを特徴とする電力機器。
[請求項6]
 請求項5に記載の電力機器であって、
 前記構造材または絶縁材の外気に触れる部分に、前記構造材または絶縁材を構成する樹脂成分よりも、高い熱分解開始温度を有する耐熱絶縁層を設置することを特徴とする電力機器。
[請求項7]
 請求項6に記載の電力機器であって、
 前記構造材または絶縁材とは異なる部位に金属材を有し、
 前記金属材の外気に触れる部分に、前記耐熱絶縁層を設置することを特徴とする電機機器。
[請求項8]
 請求項6または7に記載の電力機器であって、
 前記耐熱樹脂層が、リニア構造を有するポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドから選ばれるイミド系樹脂であることを特徴とする電機機器。
[請求項9]
 請求項6乃至8のいずれかに記載の電力機器であって、
 前記耐熱樹脂層が塗装によって形成されることを特徴とする電力機器。
[請求項10]
 請求項6乃至9のいずれかに記載の電力機器であって、
 変圧器コイルを有することを特徴とする電力機器。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]