明 細 書
発明の名称 : 電動移動体情報提供装置と電動移動体情報提供方法
技術分野
[0001]
本発明は、電動移動体情報提供装置と電動移動体情報提供方法に関し、特に、電動移動体のユーザーに有用な情報を提供するための技術に関する。
背景技術
[0002]
現在のバッテリー残存量(SOC:state of chargeとも呼ばれる)で、所望の行動の実行の可否を判断すること(例えば、目的地に到達可能かを判断すること)は、電動移動体、例えば、電気自動車(EV:Electric Vehicle)のユーザーにとって興味ある事項の一つである。特に、現在の技術では、バッテリーに蓄電可能な電力量や効率的なバッテリーへの充電には制約があり、したがって、ユーザーが所望する行動の実行の可否は、実際に電気自動車を運転する上で重要な情報の一つである。
[0003]
特許文献1(特開2010-210271号公報)は、現在のバッテリー残存量で電気自動車が目的地に到着可能か否かを精度よく判定するための技術を開示している。この公報に記載の技術では、現在地から目的地までの経路の環境情報に基づいて車両補機により消費される電力量を推定し、車両補機により消費される電力量を考慮して、電気自動車が目的地に到着可能か否かを判定している。
[0004]
当該特許文献1は、目的地に到達できると判断した場合に目的地到達後のバッテリー残存量を求め、目的地到達後のバッテリー残存量で電気自動車が走行可能な距離を算出することを開示している。現在地から目的地までの経路距離に、目的地到達後のバッテリー残存量で電気自動車が走行可能な距離を加算した値を走行可能距離としてディスプレイに表示することで、目的地に到達した後にどのようなタイミングで充電を行えばよいかをドライバに容易に認識させることができ、利便性を向上させることができる。
[0005]
しかしながら、発明者らの検討によれば、目的地到達後のバッテリー残存量で電気自動車が走行可能な距離と現在地から目的地までの経路距離とを加算して得られる走行可能距離を表示するという手法には、目的地の到達後に実行可能な行動の判断に一層に有用な情報を提供するという観点では、改善の余地がある。
先行技術文献
特許文献
[0006]
特許文献1 : 特開2010-210271号公報
発明の概要
[0007]
したがって、本発明の目的は、目的地への到達後に実行可能な行動の判断に一層に有用な情報をユーザーに提供することができる電動移動体情報提供装置と電動移動体情報提供方法を提供することにある。
[0008]
本発明の一の観点では、電動移動体に関する情報を提供する電動移動体情報提供装置が、或る地点における電動移動体のSOC(state of charge)について、電動移動体が或る地点から目的地に到達した後で目的地を出発した場合に到達可能である複数の到達可能地点を算出する算出部と、複数の到達可能地点が視覚的に認識可能である到達可能範囲表示画面を表示するための表示データを生成する表示データ生成部とを具備する。
[0009]
到達可能範囲表示画面には、複数の到達可能地点を通過する閉曲線が表示されることが好ましい。ここでいう閉曲線とは、線分を組み合わせて構成されるものも含まれることに留意されたい。ここで、複数の到達可能地点のうちの2つが目的地との距離が異なる場合、該閉曲線は、円ではないように描かれることになる。
[0010]
到達可能範囲表示画面には、目的地から複数の到達可能地点へ到達する経路が表示されることが好ましく、また、到達可能範囲表示画面には、出発地から目的地への経路が表示されることが好ましい。更に、到達可能範囲表示画面では、閉曲線の内側の部分が、閉曲線の外側の部分と異なる色調で表示されることが好ましい。
[0011]
一実施形態では、算出部は、目的地を取り囲むように複数の次目的地を決定し、目的地を次出発地として設定し、次出発地から次目的地への電動移動体の走行をシミュレートする走行シミュレーションを行い、次出発地から複数の次目的地のそれぞれに到達する経路において次出発地から出発した場合に到達可能である地点として複数の到達可能地点を算出する。この場合、算出部は、目的地における電動移動体のSOCを算出し、目的地と複数の次目的地との間の距離が、目的地における電動移動体のSOCに依存しているように、複数の次目的地を決定することが好ましい。
[0012]
また、算出部は、交差点を表現するノードと、ノードを連結する道路を表現するリンクとで道路網を表現する道路網モデルを用いて走行シミュレーションを行い、且つ、算出部は、目的地を取り囲むように複数の次目的地範囲を決め、次目的地範囲のそれぞれに含まれるノードを次目的地として決定してもよい。このとき、算出部は、目的地における電動移動体のSOCを算出し、目的地と複数の次目的地範囲のそれぞれとの距離が目的地における電動移動体のSOCに依存した距離になるように、複数の次目的地範囲を決定することが好ましい。また、複数の次目的地範囲のうちの特定の次目的地範囲に道路網モデルのノードが含まれていない場合、算出は、特定の次目的地範囲の大きさ及び/又は位置を調節してもよい。
[0013]
一実施形態では、算出部は、目的地を次出発地として設定し、目的地を取り囲むように複数の次目的地を決定し、次出発地から次目的地への電動移動体の走行をシミュレートする走行シミュレーションを、交差点を表現するノードと、ノードを連結する道路を表現するリンクとで道路網を表現する道路網モデルを用いて実行し、次出発地から複数の次目的地のそれぞれに到達する経路において次出発地から出発した場合に到達可能である地点として複数の到達可能地点を算出してもよい。ここで、算出部は、複数の次目的地の決定を、目的地を取り囲むように複数の次目的地範囲を設定し、複数の次目的地範囲のうち、道路網モデルの少なくとも一のノードが含まれる次目的地範囲については少なくとも一のノードのいずれかを次目的地として決定し、複数の次目的地範囲のうち、道路が存在しないような地域に設定された道路不存在次目的地範囲については、道路網モデルの少なくとも一のノードを含むように変更して変更後次目的地範囲を決定し、且つ、変更後次目的地範囲に含まれるノードを次目的地として決定してもよい。この場合、算出部は、走行シミュレーションにより、次出発地から変更後次目的地範囲から決定された次目的地に到達可能であると判断した場合、次目的地と道路不存在次目的地範囲の位置の間に位置する仮想到達可能位置を決定し、算出は、閉曲線を、複数の到達可能地点と仮想到達可能位置とを通過するように決定することが好ましい。
[0014]
なお、複数の到達可能地点のそれぞれは、電動移動体のSOCが特定値になる地点として算出してもよい。
[0015]
また、一例としては、「或る地点」が、電動移動体が現在位置している現在地であり、算出部に与えられる電動移動体のSOCは、現在の電動移動体のSOCである。
[0016]
本発明の他の観点において、電動移動体に関する情報を提供する電動移動体情報提供方法が、特定の地点における電動移動体のSOC(state of charge)について、電動移動体が或る地点から目的地に到達した後で目的地を出発した場合に到達可能である複数の到達可能地点を算出するステップと、複数の到達可能地点が視覚的に認識可能である到達可能範囲表示画面を表示するための表示データを生成するステップとを具備する。
[0017]
一実施形態では、複数の到達可能地点を算出するステップは、目的地を取り囲むように複数の次目的地を決定するステップと、目的地を次出発地として設定するステップと、次出発地から次目的地への電動移動体の走行をシミュレートする走行シミュレーションを行うステップとを備えていてもよい。この場合、複数の到達可能地点は、走行シミュレーションにより、次出発地から複数の次目的地のそれぞれに到達する経路において次出発地から出発した場合に到達可能である地点として算出されることが好ましい。
[0018]
本発明の他の観点では、電動移動体に関する情報を提供するために使用されるプログラムが提供される。当該プログラムは、或る地点における電動移動体のSOC(state of charge)について、電動移動体が或る地点から目的地に到達した後で目的地を出発した場合に到達可能である複数の到達可能地点を算出するステップと、複数の到達可能地点が視覚的に認識可能である到達可能範囲表示画面を表示するための表示データを生成するステップとを演算装置に実行させる。
[0019]
本発明の電動移動体情報提供装置、電動移動体情報提供方法及びプログラムによれば、目的地への到達後に実行可能な行動の判断に一層に有用な情報をユーザーに提供することができる。
図面の簡単な説明
[0020]
[図1] 本発明の一実施形態の電動移動体情報提供装置として機能するEV管理システムの構成を示す概念図である。
[図2] 本実施形態において、EV管理センターに設けられるホストコンピューターの構成の例を示す図である。
[図3] 本実施形態における交通流シミュレーターの構成の例を示す図である。
[図4] 道路網モデルの例を示す概念図である。
[図5] 本実施形態における、ホストコンピューターによるデータ処理を示す機能ブロック図である。
[図6] 本実施形態における、交通流シミュレーターによるデータ処理を示すフローチャートである。
[図7] 本実施形態における次目的地範囲の設定の例を示す図である。
[図8] 本実施形態における次目的地の設定の例を示す図である。
[図9] 本実施形態における到達可能地点の算出の例を示す図である。
[図10] 本実施形態における到達可能範囲表示画面の例を示す図である。
[図11] 本実施形態における到達可能範囲表示画面の他の例を示す図である。
[図12] 本実施形態における到達可能範囲表示画面の更に他の例を示す図である。
[図13] 本実施形態において、次目的地範囲が、道路が存在しない地域(例えば海上)に設定された場合に起こり得る、到達可能範囲の過小評価の問題を説明する概念図である。
[図14] 本実施形態における、到達可能範囲の過小評価の問題の解決手法を示す概念図である。
発明を実施するための形態
[0021]
図1は、本発明の一実施形態の電動移動体情報提供装置として機能するEV管理システム10の構成を示す概念図である。EV管理システム10は、EV管理センター(EVC:Electric Vehicle Management Center)に設けられたホストコンピューター1と、交通流シミュレーター2とを備えている。
[0022]
ホストコンピューター1は、電動移動体、この例では、電気自動車3の状態を把握して管理する機能と、電気自動車3に関する様々な情報を電気自動車3のユーザー(EVユーザー)に提供する機能とを有している。詳細には、ホストコンピューター1は、無線通信網5を介して電気自動車3と通信し、電気自動車3からプローブ情報を収集する。ここで、プローブ情報とは、各電気自動車3の状態を示す情報であり、例えば、電池容量(SOC:State of Charge)を示す情報や、各電気自動車3の現在位置を示す位置情報を含んでいる。
[0023]
加えて、ホストコンピューター1は、EVユーザーによって操作されるユーザー端末4とネットワーク6を介して通信可能に接続されている。ユーザー端末4としては、例えば、パーソナルコンピュータ4aが使用されてもよいし、携帯電話、スマートフォンその他の携帯端末4bが使用されてもよい。ホストコンピューター1は、ユーザー端末4からの要求を受けて、その要求に対応する電気自動車3に関する情報をユーザー端末4に提供する。後に詳細に説明するように、本実施形態では、ホストコンピューター1は、電気自動車3が目的地に到着できるかの情報をユーザー端末4に提供すると共に、目的地に到着した後、電気自動車3が到達可能な範囲を示す到達可能範囲表示画面を表示するための表示データをユーザー端末4に送信するように構成されている。
[0024]
交通流シミュレーター2は、電気自動車3の走行シミュレーションを行うために使用されるコンピューターである。電気自動車3の走行シミュレーションにより、電気自動車3が目的地に到着できる否かの判断が行われると共に、電気自動車3が目的地に到着した後、その目的地を次出発地として出発したときに到達可能な範囲が算出される。
[0025]
図2は、ホストコンピューター1の構成の例を示す図である。ホストコンピューター1は、演算装置11と、入力装置12と、表示装置13と、外部インターフェース14と、記憶装置15とを備えている。演算装置11は、電気自動車3を管理するための様々なデータ処理と、電気自動車3に関する情報をユーザー端末4に提供するための様々なデータ処理とを行う。演算装置11としては、例えば、一又は複数のCPU(central processing unit)が使用され得る。入力装置12は、ホストコンピューター1の管理者によって操作され、各種操作によるデータ入力を受け付ける。表示装置13は、ホストコンピューター1の動作に当たって様々な画像を表示する。入力装置12、表示装置13は、ホストコンピューター1のマン-マシンインターフェースとして機能する。
[0026]
外部インターフェース14は、外部の通信手段(例えば、無線通信網5、ネットワーク6)に接続するためのインターフェースである。ホストコンピューター1は、外部インターフェース14を介して、交通流シミュレーター2、電気自動車3、ユーザー端末4との通信を行う。
[0027]
記憶装置15は、演算装置11を動作させるプログラムを格納すると共に、演算装置11によるデータ処理に必要な様々なデータを格納する。本実施形態では、記憶装置15には、EV管理サーバーソフトウェア16とEV情報提供サーバーソフトウェア17とがインストールされると共に、EV管理データベース18が、記憶装置15に格納されている。
[0028]
EV管理サーバーソフトウェア16は、ホストコンピューター1を、電気自動車3を管理するEV管理サーバーとして機能させるためのプログラムである。該EV管理サーバーは、電気自動車3からプローブ情報を収集し、収集した各電気自動車3のプローブ情報を各電気自動車3の車両IDと関連付けてEV管理データベース18に保存する機能を有している。
[0029]
EV情報提供サーバーソフトウェア17は、ホストコンピューター1を、電気自動車3に関する情報をユーザー端末4に提供するEV情報提供サーバーとして機能させるためのプログラムである。本実施形態では、EV情報提供サーバーは、電気自動車3が目的地に到着できるかに関する情報をユーザー端末4に提供すると共に、目的地に到着した後、電気自動車3が到達可能な範囲を示す到達可能範囲表示画面を表示するための表示データをユーザー端末4に送信する機能を有している。EV情報提供サーバーは、Webサーバーとして実装されてもよい。
[0030]
なお、ホストコンピューター1は、単一のコンピューターとして実装されるのではなく、クラウドコンピューティングを実現する一連のコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション)として実装されてもよい。
[0031]
図3は、交通流シミュレーター2の構成の例を示す図である。交通流シミュレーター2は、演算装置21と、入力装置22と、表示装置23と、外部インターフェース24と、記憶装置25とを備えている。演算装置21は、電気自動車3の走行シミュレーションのための様々なデータ処理を行う。演算装置21としては、例えば、一又は複数のCPU(central computing unit)が使用され得る。入力装置22は、交通流シミュレーター2の管理者によって操作され、各種操作によるデータ入力を受け付ける。表示装置23は、交通流シミュレーター2の動作に当たって様々な画像を表示する。入力装置22、表示装置23は、交通流シミュレーター2のマン-マシンインターフェースとして機能する。
[0032]
外部インターフェース24は、外部の通信手段に接続するためのインターフェースである。交通流シミュレーター2は、外部インターフェース24を介して、ホストコンピューター1との通信を行う。
[0033]
記憶装置15は、演算装置21を動作させるプログラムを格納すると共に、演算装置21によるデータ処理に必要な様々なデータを格納する。本実施形態では、記憶装置15には、交通流シミュレーションプログラム26がインストールされると共に、道路網モデル27が格納されている。
[0034]
交通流シミュレーションプログラム26は、電気自動車3の走行シミュレーションを演算装置21に実行させるプログラムである。交通流シミュレーションプログラム26による走行シミュレーションにより、電気自動車3が目的地に到着できる否かの判断が行われると共に、電気自動車3が目的地に到着した後、その目的地を次出発地として出発したときに到達可能な範囲が算出される。ここで、交通流シミュレーションプログラム26は、(電気自動車3を含む)多数の車両が道路を走行することで生じる交通流をシミュレーションする機能を有している。よって、当該交通流が存在する状況で電気自動車3が目的地に到着できる否かの判断を行うことができ、また、当該交通流が存在する状況について、電気自動車3が目的地に到着した後、目的地を次出発地として出発したときに到達可能な範囲が算出される。
[0035]
道路網モデル27は、道路網を模擬したモデルであり、交通流シミュレーションプログラム26による走行シミュレーションに使用される。図4は、道路網モデル27の内容を示す模式図である。道路網モデル27は、リンク28とノード29とを含んでおり、道路網をリンク28とノード29とで表現している。ノード29は、交差点を表現しており、リンク28は、2つの交差点を結ぶ道路(即ち、ノード29を連結する道路)を表現している。各リンク28には、道路の構造を表わす情報(例えば、車線数、右左折レーンの有無及び数等を示す情報)が設定される。また、ノード29には、交差点の構造を表わす情報(信号機の設置の有無などを示す情報)が設定される。また、各ノード29には、標高が設定可能であり、隣接する2つのノード29の標高の差から、該2つのノード29を接続するリンク28に対応する道路の勾配を決定可能である。リンク28に対応する道路の勾配を決定することで、該道路を走行する際に電気自動車3で消費される電力量を精密に算出することができる。更に、道路網モデル27には、天候(晴、雨、雪)、気温を設定可能である。これは、電気自動車3に装備される車両補機(エアコン、ヒータ、ワイパー等)で消費される電力量の推定を可能にし、電気自動車3で消費される電力量を精密に算出することに寄与する。
[0036]
交通流シミュレーター2も、ホストコンピューター1と同様に、単一のコンピューターとして実装されるのではなく、クラウドコンピューティングを実現する一連のコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション)として実現されてもよい。
[0037]
続いて、本実施形態のEV管理システム10の動作、特に、ホストコンピューター1及び交通流シミュレーター2におけるデータ処理について説明する。本実施形態においては、ホストコンピューター1で動作するEV情報提供サーバーが、電気自動車3が出発地(現在地でもよい)から目的地に到達可能であるか否かを示す情報をEVユーザーのユーザー端末4に提供する。加えて、該EV情報提供サーバーは、電気自動車3が目的地に到着した後、その目的地を次出発地として出発したときに電気自動車3が到達可能な範囲を表示する到達可能範囲表示画面を表示するための表示データをユーザー端末4に提供する動作を行う。ユーザー端末4は、該表示データを受けて到達可能範囲表示画面を表示する。
[0038]
この到達可能範囲表示画面の一つの特徴は、交通流シミュレーター2による走行シミュレーションによって電気自動車3が当該目的地を次出発地として出発したときに到達可能であると確認された地点(以下、「到達可能地点」という。)が視覚的に認識可能になるように生成されていることである。一例としては、到達可能地点は、電気自動車3が、目的地に到着した後、該目的地から出発して該到達可能地点のそれぞれに到達した場合に、バッテリーのSOCが特定値(0%であってもよい)になるような地点として決定されてもよい。一実施形態では、該特定値が0%(即ち、バッテリーの残存電力量がゼロ)に設定される。この場合、到達可能地点は、電気自動車3が目的地に到着した後、該目的地を次出発点として再度に出発した場合において、電気自動車3のバッテリーの残存電力量がゼロになる(即ち、SOCが0%になる)地点である電欠地点として定義されることになる。このような到達可能範囲表示画面の例が、図11に図示されている(詳細は、後に説明する)。
[0039]
このような到達可能範囲表示画面によれば、EVユーザーは、電気自動車3が目的地に到着した後、更に移動しようとする際に該目的地から到達可能な範囲を詳細に知ることができる。これは、EVユーザーにとって、目的地到達後に実行可能な行動の判断に有用である。
[0040]
以下、ホストコンピューター1のEV情報提供サーバーとしての動作について、詳細に説明する。図5は、ホストコンピューター1のEV情報提供サーバーとしての動作の例を示す機能ブロック図である。
[0041]
ユーザー端末4は、EVユーザーによる操作に応じて、電気自動車3が目的地に到着可能かを問い合わせる到達可否判断リクエスト41をホストコンピューター1に送る機能を有している。EV情報提供サーバーがWebサーバーである場合には、このような機能は、EV情報提供サーバーによって提供されるWebサイトにユーザー端末4のWebブラウザによってアクセスすることで実現されてもよい。到達可否判断リクエスト41は、ユーザー情報と、目的地を示す目的地情報とを含んでいる。該ユーザー情報は、電気自動車3を特定する車両IDを含んでいる。また、ユーザーが、現在の電気自動車3の位置(現在地位置)、及び、現在のSOCについて電気自動車3が目的地に到着可能かを知ることを希望する場合、到達可否判断リクエスト41は、その旨を示す情報を含んでいてもよい。また、特定の出発時刻に特定の出発地位置にある電気自動車3が、該出発地位置を特定のSOCで出発する場合について、電気自動車3が目的地に到着可能かを知ることを希望する場合、到達可否判断リクエスト41は、その旨を示す情報、出発時刻を示す出発時刻情報、出発地位置を示す出発地情報、及び、当該特定のSOCを示すSOC情報を含んでいてもよい。例えば、特定のチャージステーションで満充電を行った後、目的地に到着可能かを知りたい場合、到達可否判断リクエスト41は、該チャージステーションの位置を示す出発地位置及びSOCが100%であることを示すSOC情報を含むように生成される。
[0042]
ホストコンピューター1は、到達可否判断リクエスト41を受け取ると、入力情報処理31を行う。具体的には、入力情報処理31では、到達可否判断リクエスト41のユーザー情報に含まれている車両IDを用いてEV管理データベース18が検索され、該車両IDに対応する電気自動車3の最新のプローブ情報43が取得される。図5では、EV管理データベース18の検索に用いられるユーザー情報が符号42で示されている。取得される最新のプローブ情報43は、該電気自動車3の現在のSOCを示す情報と、現在の電気自動車3の位置を示す現在地情報とを含んでいる。入力情報処理31では、入力情報処理31で得られた情報(即ち、到達可否判断リクエスト41、及び、最新のプローブ情報43)を含むシミュレーションリクエスト44が作成され、シミュレーションリクエスト44が該シミュレーション用インプットデータ作成処理32に引き渡される。
[0043]
シミュレーション用インプットデータ作成処理32では、シミュレーションリクエスト44に基づいて交通流シミュレーター2に適合したデータ形式を有するインプットデータ45が作成される。インプットデータ45は、出発地の位置を示す出発地情報、目的地の位置を示す目的地情報、及び、該出発地における電気自動車3のSOCを示すSOC情報、を含んでいる。インプットデータ45は、交通流シミュレーター2に引き渡される。
[0044]
ここで、インプットデータ45の作成方法は、シミュレーションリクエスト44に含まれる到達可否判断リクエスト41の内容に応じて異なっている。到達可否判断リクエスト41が、現在の電気自動車3の位置(現在地位置)、及び、現在のSOCについて電気自動車3が目的地に到着可能かを知ることを希望することを示している場合、最新のプローブ情報に示されている現在の電気自動車3の位置を示すように出発地情報が生成され、最新のプローブ情報に示されているSOCを示すようにインプットデータ45のSOC情報が作成される。即ち、現在の電気自動車3の位置を出発地とし、現在のSOCで目的地に到着可能かを判断することを求めるインプットデータ45が生成される。一方、到達可否判断リクエスト41が、特定の電気自動車3の位置(出発地位置)及び特定のSOCについて、電気自動車3が目的地に到着可能かを知ることを希望することを示している場合、該特定の位置を示すように出発地情報が生成され、該特定のSOCを示すようにインプットデータ45のSOC情報が作成される。即ち、該特定の位置を出発地とし、該出発地において電気自動車3のSOCが該特定のSOCである場合に、目的地に到着可能かを判断することを求めるインプットデータ45が生成される。
[0045]
交通流シミュレーター2は、引き渡されたインプットデータ45に基づいて走行シミュレーションを行い、その走行シミュレーションの結果を示すシミュレーション結果データ46をホストコンピューター1に返す。当該走行シミュレーションにおいては、交通流シミュレーター2の記憶装置25に記憶されている道路網モデル27が使用される。
[0046]
図6は、交通流シミュレーター2による処理を示すフローチャートである。まず、走行シミュレーションが行われ(ステップS01)、電気自動車3が、出発地情報に示されている出発地におけるSOCがSOC情報に示されているSOCである場合に、該出発地から目的地情報に示されている目的地に到達可能であるか否かが判断される(ステップS02)。走行シミュレーションにおいて目的地に到達できないと判断された場合、電気自動車3のバッテリーのSOCが0%になる地点(電欠地点)が記録され(ステップS09)、目的地に到達できない旨を示す情報、及び、電欠地点を示す電欠地点情報を含むようにシミュレーション結果データ46が生成される。電欠地点情報は、出発地から電欠地点まで走行するために必要な走行時間を含んでいてもよい。この場合、ユーザー端末4には、目的地に到達できないこと、及び、走行シミュレーションで得られた電欠地点が表示される。
[0047]
一方、目的地に到達可能であると判断された場合、ステップS03~S08の処理が行われる。ステップS03~S08の処理では、電気自動車3が目的地に到着した後、その目的地を次出発地として出発したときに到達可能である地点(即ち、到達可能地点)を算出する処理が行われる。ここで、ステップS03~S08において算出される到達可能地点の数は複数であり、また、該複数の到達可能地点は、目的地に対して様々な方向に位置して目的地を取り囲むように算出される。以下、ステップS03~S08の処理について説明する。
[0048]
まず、インプットデータ45の目的地情報に示される目的地が、次の走行シミュレーションにおける出発地(次出発地)として設定される(ステップS03)。更に、次出発地(即ち、インプットデータ45の目的地情報に示されてる目的地)を取り囲むように、複数の次目的地範囲が設定される。ここで、次目的地範囲とは、次の走行シミュレーションにおいて目的地として設定される位置の範囲である。留意すべきことは、次目的地範囲は、交通流シミュレーター2によって自動的に設定され、ユーザーによって指定されるものではない点である。以下の処理の説明から理解されるように、次目的地範囲は、到達可能地点の算出のために仮に設定される目的地を選択するために設定される範囲に過ぎない。ただし、設定される次目的地範囲の数は、ユーザーによって可変に調節されてもよい。
[0049]
図7は、ステップS03で設定される次目的地範囲の例を示している。ステップS01において、出発地51から目的地52に到達可能かを判断する走行シミュレーションが行われ、ステップS02において、経路53で出発地51から目的地52に到達可能であると判断されたとする。
[0050]
この場合、目的地52(即ち、次出発地)の周りを取り囲むように、複数の次目的地範囲54が放射状に設定される。ここで、次目的地範囲54は、次出発地から十分に離れており、次出発地から次目的地範囲内の位置に電気自動車3が到達することが想定されないような位置に設定される。一実施例では、次目的地範囲54は、ある大きさの円又は正多角形として設定してもよい。図7の例では、各次目的地範囲54は、目的地52を中心とする円60の上に中心が位置する円として設定される。ここで、円60の半径は、目的地52における電気自動車3のSOCに基づいて決定され、目的地52における電気自動車3のSOCから想定される走行可能距離に対応する線分の長さと比べて十分に大きく設定される。最も簡便には、円60の半径は、目的地52における電気自動車3のSOCに所定の係数を乗じることによって決定してもよい。
[0051]
続いて、各次目的地範囲54に、道路網モデル27のノード29が存在するかが判断される(ステップS05)。ノード29が存在しない次目的地範囲54がある場合、その次目的地範囲54について調整が行われる(ステップS06)。次目的地範囲54の調整は、次目的地範囲54の大きさや位置を変更することによって行われる。例えば、次目的地範囲54が円として設定されている場合、次目的地範囲54の調整は、該円の中心の位置及び/又は該円の半径を変更することで行ってもよい。また、次目的地範囲54が正多角形として設定されている場合、次目的地範囲54の調整は、該正多角形の中心の位置及び/又は該正多角形の中心から頂点までの距離を変更することで行ってもよい。次目的地範囲54の調整は、少なくとも一のノード29が各次目的地範囲54に含まれるように各次目的地範囲54が設定されるまで繰り返して行われる。
[0052]
各次目的地範囲54に少なくとも一のノード29が含まれるように次目的地範囲54が決定された後、図8に図示されているように、各次目的地範囲54について次目的地55が決定される(ステップS07)。ある次目的地範囲54に単一のノード29のみが存在する場合、そのノード29が次目的地55として決定される。一方、ある次目的地範囲54に複数のノード29が存在する場合、そのうちの一つが次目的地55として選択される。この結果、次目的地55も、目的地52(次出発地)を取り囲むように決定されることになる。
[0053]
続いて、次出発地(即ち、目的地52)から次目的地55までの電気自動車3の走行をシミュレートする走行シミュレーションが行われる(ステップS08)。次出発地におけるSOCとしては、ステップS01の走行シミュレーションで得られた目的地52における電気自動車3のSOCが使用される。
[0054]
ここで、ステップS04において、次目的地範囲が次目的地から十分に離れて決定されているため、ステップS08の走行シミュレーションにおいては、次出発地と次目的地との間に、電欠地点(即ち、SOCが0%になる地点)が決定されるはずである。次出発地から電欠地点まで経路上の地点が、当該目的地を次出発地として出発したときに到達可能であると判断される地点である。次出発地から電欠地点まで経路上の地点(次出発地を除き、電欠地点を含む)のいずれかが、「到達可能地点」として算出される。
[0055]
到達可能地点は、電欠地点として決定されてもよいし、SOCが特定値(例えば、20%)になる地点として決定されてもよい。また、到達可能地点は、次目的地から往復可能な地点(即ち、次目的地から到達し、更に、再度、次目的地に戻れる地点)として決定されてもよい。また、到達可能地点は、次出発地から電欠地点までの経路上であって、次出発地から出発して所定の経過時間(例えば、30分)が経過した時点で到達する地点として決定されてもよい。更に、到達可能地点は、次出発地から電欠地点までの経路上であって、次出発地から出発して所定の走行距離を走行した時点で到達する地点として決定されてもよい。
[0056]
図9は、各次目的地55について決定された到達可能地点57の例を示す図である。次出発地(即ち、目的地52)から経路56を通って到達可能な地点が、到達可能地点57として決定されている。ステップS08の走行シミュレーションでは、次出発地から各到達可能地点57に到達することができる経路56が特定され、更に、次出発地から各到達可能地点57に到達するのに要する走行時間及び/又は走行距離も算出される。
[0057]
ステップS08の走行シミュレーションによって算出された到達可能地点57、及び、関連する情報(例えば、到達可能地点57におけるSOC、次出発地から各到達可能地点57に到達することができる経路56、及び、次出発地から各到達可能地点57に到達するのに要する走行時間)が記録されて(ステップS09)、交通流シミュレーター2による処理が完了する。
[0058]
更に、交通流シミュレーター2による処理の結果は、シミュレーション結果データ46としてホストコンピューター1に返される。シミュレーション結果データ46は、電気自動車3が、出発地情報に示されている出発地から、目的地情報に示されている目的地に到達可能であるか否かを示す到着可否情報を含んでいる。加えて、該シミュレーション結果データ46は、到達可能地点(電気自動車3が目的地に到着した後、その目的地を次出発地として出発したときに到達可能であると判断された地点)を示す到達可能地点データを含んでいる。また、シミュレーション結果データ46は、到達可能地点57に関連する情報(例えば、到達可能地点57におけるSOC、次出発地から各到達可能地点57に到達することができる経路56、及び、次出発地から各到達可能地点57に到達するのに要する走行時間)を含んでいてもよい。更に、シミュレーション結果データ46は、ステップS07で設定された次目的地55の位置を示す情報を含んでいてもよい。
[0059]
図5に戻り、シミュレーション結果データ46がホストコンピューター1に返されると、到達可能範囲表示画面を表示するための表示データ47を生成する地図表示処理33が行われる。ここで、上述されているように、到達可能範囲表示画面とは、電気自動車3が目的地に到着した後、その目的地を次出発地として出発したときに電気自動車3が到達可能な範囲を表示する画面である。表示データ47は、ユーザー端末4に送られ、ユーザー端末4では、表示データ47に対応する到達可能範囲表示画面が表示される。
[0060]
図10は、到達可能範囲表示画面の一例を示す図である。図10の到達可能範囲表示画面には、出発地51、目的地52、出発地51と目的地52とを結ぶ経路53、到達可能地点57、及び、境界線58が図示されている。図10の例では、境界線58は、到達可能地点57を通過し、且つ、目的地52(即ち、次出発地)を取り囲む閉曲線として図示される。境界線58として使用される閉曲線は、最も単純には、隣接する到達可能地点57を結ぶ線分を連結することで構成できる。また、境界線58として使用される閉曲線は、任意の近似曲線、例えば、到達可能地点57を制御点とするベジェ曲線として描かれてもよい。該ベジェ曲線の次数は、境界線58の精度や到達可能地点57の数を考慮して適宜に決定すればよい。図10では、境界線58は、隣接する到達可能地点57が、複数の線分が連結されて構成された曲線を連結することで構成されている。
[0061]
また、到達可能範囲表示画面に、次出発地から到達可能な到達可能範囲が表示されてもよい。この場合、境界線58の内部が、前記境界線58の外側の部分と異なる色調で表示されることで、到達可能範囲が表示されてもよい。
[0062]
境界線58は、必ずしも表示されなくてもよい。十分な数の到達可能地点57が図示されていれば、ユーザーは、実際上、次出発地から到達可能な到達可能範囲を認識することができる。また、境界線58のみが表示され、到達可能地点57を示すマークは図示されなくてもよい。この場合でも、到達可能地点57は、経路56を構成する道路と境界線58とが交差する位置として視覚的に認識可能である。
[0063]
図11は、到達可能範囲表示画面の他の例を示している。図11に図示されているように、ステップS07で決定された次目的地55が到達可能範囲表示画面に表示されてもよい。ただし、上述のように、次目的地55は、(ユーザーによって設定された地点ではなく)交通流シミュレーター2で自動的に設定された地点であるから、次目的地55が表示される必要性は薄いことにも留意されたい。
[0064]
図12は、到達可能範囲表示画面の更に他の例を示している。本実施形態のステップS08の走行シミュレーションにおいて、各電欠地点について、次出発地から該電欠地点との間に、異なる条件で複数の到達可能地点が決定され、到達可能表示画面に図示されても良い。この場合、到達可能範囲表示画面には、同一の条件に対応する到達可能地点が閉曲線で結ばれることで、レーダーチャートに類似したチャートとして到達可能範囲が示されても良い。到達可能地点の決定に使用されるパラメータとしては、SOC、次出発地から出発した後の経過時刻、次出発地から出発した後の走行距離が挙げられる。
[0065]
図12の例では、走行シミュレーションにおいて、SOCが第1の値(例えば、10%)であるような地点が到達可能地点57
1として決定され、SOCが第1の値と異なる第2の値(例えば、20%)であるような地点が到達可能地点57
2として決定される。到達可能地点57
1、57
2の緯度経度情報が交通流シミュレーター2の記憶装置25に保存される。境界線58
1は、到達可能地点57
1を通過し、到達可能地点57を通過し、且つ、目的地52(即ち、次出発地)を取り囲む閉曲線として図示される。同様に、境界線58
2は、到達可能地点57
2を通過し、且つ、目的地52(即ち、次出発地)を取り囲む閉曲線として図示される。図12の例では、2つのSOCの値について到達可能地点が算出されているが、3以上のSOCの値について到達可能地点が算出されてもよい。
[0066]
次出発地から出発した後の経過時刻について、同様の到達可能範囲表示画面が作成されても良い。図12を例として用いれば、次出発地から出発した後の経過時刻が第1の値(例えば、1時間)であるような地点が到達可能地点57
1として決定され、経過時刻が第1の値と異なる第2の値(例えば、45分)であるような地点が到達可能地点57
2として決定される。更に、また、次出発地から出発した後の走行距離について、同様の到達可能範囲表示画面が作成されても良い。次出発地から出発した後の走行距離が第1の値(例えば、20キロメートル)であるような地点が到達可能地点57
1として決定され、走行距離が第1の値と異なる第2の値(例えば、15キロメートル)であるような地点が到達可能地点57
2として決定される。
[0067]
以上で、到達可能範囲表示画面をユーザー端末4に表示するためにホストコンピューター1及び交通流シミュレーター2において行われるデータ処理が完了する。
[0068]
以上に述べられているような本実施形態のEV管理システム10の動作によれば、電気自動車3が目的地に到着できるかの情報をユーザーに提供すると共に、目的地に到着した後、その目的地を次出発地としたときに電気自動車3が到達可能な範囲を示す到達可能範囲表示画面をユーザーに提供することができる。該到達可能範囲表示画面には、実際の走行経路及び走行状態を考慮したシミュレーションによって到達可能であると判断された到達可能地点が表示され、これは、目的地に到達後に実行可能な行動の判断に一層に有用である。
[0069]
ここで留意すべきことは、複数の到達可能地点は、走行シミュレーションによって得られているため、目的地(次出発地)からの直線距離が同一ではない場合がある点である。即ち、複数の到達可能地点のうちの2つは、目的地からの直線距離が異なる場合がある。このような場合、境界線58を構成する閉曲線は、円としては表示されないことになる。(シミュレーションを行うことなく)単純に、目的地到達後のSOCに基づいて目的地から出発した場合に到着可能な距離を算出する手法では到達可能地点を詳細に算出ことはできず、例えば、目的地に到着した後、該目的地を出発した場合の到達可能範囲を円で示すような表示しかできない。このように、本実施形態では、実際の走行経路及び走行状態を考慮して、より詳細な到達可能範囲を示す到達可能範囲表示画面が得られる。これは、目的地に到達後に実行可能な行動の判断に一層に有用な情報をユーザーに提供することに寄与する。
[0070]
上述の手順による到達可能地点57の算出、及び、到達可能範囲表示画面の生成においては、ステップS04において、次目的地範囲54が、例えば海上のように、道路が存在しない地域に設定された場合に、到達可能範囲が、本来的には次出発地から到達可能な範囲よりも狭く表示されることが起こり得る。図13は、このような問題を示す図である。
[0071]
例えば、図13において、次目的地範囲54Aが、海上に設定されたとする。この場合、道路網モデル27のノード29が次目的地範囲54Aに存在しないから、ステップS05、S06において次目的地範囲を調整する必要がある。そして、次目的地範囲の調整の結果、図13に図示されているように、次目的地範囲が、最初に設定された次目的地範囲54Aと次出発地(即ち、目的地52)との間であり、且つ、海岸線の近傍の位置に設定されることがあり得る。このような場合、次目的地範囲54Aに対応する次目的地55Aが、次出発地(即ち、目的地52)から十分に離れておらず、ステップS08の走行シミュレーションにより、次出発地から次目的地55Aに到達可能であるという結果が得られる場合がある。
[0072]
このとき、次目的地55Aを到達可能地点として判断し、次目的地55Aと隣接する到達可能地点57Aとを用いて境界線58を決定すると、到達可能範囲を過小評価することがあり得る。なぜなら、隣接する到達可能地点57Aと、次目的地範囲54Aの中心と、次目的地55Aとを頂点とする三角形の中の領域59には、本来、次出発地から到達可能な領域が含まれ得るからである。
[0073]
図14は、一実施形態における、到達可能範囲の過小評価の問題の解決手法を示す概念図である。次目的地範囲が、最初に設定された次目的地範囲54Aと次出発地(即ち、目的地52)との間に設定され、次目的地55Aが、該次目的地範囲から選択され、且つ、ステップS08の走行シミュレーションにより、次出発地から次目的地55Aに到達可能であるという結果が得られたとする。この場合、次目的地55Aと最初に設定された次目的地範囲54Aの位置の間の位置、より具体的には、次目的地55Aと最初に設定された次目的地範囲54Aの位置(例えば、次目的地範囲54Aが円又は正多角形である場合にはその中心54Aaの位置)とを結ぶ線分62の上の位置に、仮想到達可能位置61が設定される。この仮想到達可能位置61は、仮想到達可能位置61と次目的地55Aとの距離ΔLが、次式(1)の関係を満たすように決定されることが好ましい: ΔL={L
1/(SOC
o2-SOC
d2)}×SOC
D2 ・・・(1)ここで、L
1は、目的地52(次出発地)から次目的地55Aまでの経路56Aに沿った走行距離であり、SOC
o2は、ステップS01の走行シミュレーションにおいて算出された、目的地52に到着したときにおけるSOCであり、SOC
d2は、ステップS08の走行シミュレーションにおいて算出された、次目的地55AにおけるSOCである。
[0074]
この場合、境界線58は、仮想到達可能位置61と隣接する到達可能地点57Aとを通過する曲線(閉曲線)として決定されてもよい。図13では、境界線58のうちの隣接する到達可能地点57Aと仮想到達可能位置61の間の部分58aが、該到達可能地点57Aと仮想到達可能位置61とを結ぶ線分で構成されている場合について図示されている。境界線58の部分58aは、曲線であってもよい。
[0075]
このようにして仮想到達可能位置61及び境界線58を決定することにより、到達可能範囲の過小評価を抑制することができる。詳細には、上述の仮想到達可能位置61及び境界線58の決定手法によれば、隣接する到達可能地点57A、次目的地55A及び仮想到達可能位置61を頂点とする3角形の領域63が、境界線58の内部の領域(即ち、到達可能領域)として図示されることになる。該領域63は、実際には到達可能であると考えられる領域であり、よって、領域63が境界線58の内部の領域として含まれることで、到達可能範囲の過小評価を抑制することができる。なお、ステップS08の走行シミュレーションにより、次目的地55Aまで到着することができるという結果が得られた場合には、このような手順による仮想到達可能位置61の算出及び境界線58の決定が行われる必要はない。
[0076]
以上には、本発明の実施形態が具体的に記述されているが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。本発明が、様々な変更と共に実施され得ることは、当業者には自明的であろう。
[0077]
例えば、上記では、ホストコンピューター1と交通流シミュレーター2とが別のハードウェア資源を用いてデータ処理を行う実施形態が記述されているが、ホストコンピューター1と交通流シミュレーター2とが、同一のハードウェア資源を用いるシステムとして実装されても良い。
[0078]
また、上記では、ホストコンピューター1と交通流シミュレーター2とを用いて到達可能範囲表示画面を生成する実施形態が記述されているが、十分な演算能力を有するのであれば、他の機器(例えば、ナビゲーション装置)によって、ホストコンピューター1と交通流シミュレーター2において行われた演算が行われ得る。ただし、本実施形態のように、交通流シミュレーター2を用いる場合には、(電気自動車3を含む)多数の車両が道路を走行することで生じる交通流のシミュレーションを行い、当該交通流が存在する状況で電気自動車3が目的地に到着できる否かの判断を行うことができる。加えて、本実施形態では、交通流が存在する状況において、電気自動車3が目的地に到着した後、目的地を次出発地として出発したときに到達可能な範囲を示す到達可能範囲表示画面を生成することができる。これらは、より正確な情報を提供することに寄与する。
[0079]
また、上記の実施形態では、電動移動体として電気自動車が用いられている例をあげているが、本発明は、電池式自動二輪車など、バッテリーを搭載し、そのバッテリーに蓄えられた電気を用いて駆動輪を駆動する電動移動体に適用され得ることに留意されたい。
請求の範囲
[請求項1]
電動移動体に関する情報を提供する電動移動体情報提供装置であって、
或る地点における前記電動移動体のSOC(state of charge)について、前記電動移動体が前記或る地点から目的地に到達した後で前記目的地を出発した場合に到達可能である複数の到達可能地点を算出する算出手段と、
前記複数の到達可能地点が視覚的に認識可能である到達可能範囲表示画面を表示するための表示データを生成する表示データ生成手段と
を具備する
電動移動体情報提供装置。
[請求項2]
請求項1に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記到達可能範囲表示画面には、前記複数の到達可能地点を通過する閉曲線が表示される
電動移動体情報提供装置。
[請求項3]
請求項2に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記複数の到達可能地点のうちの2つが前記目的地との距離が異なる場合、前記閉曲線が円ではない
電動移動体情報提供装置。
[請求項4]
請求項1乃至3のいずれかに記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記到達可能範囲表示画面には、前記目的地から前記複数の到達可能地点へ到達する経路が表示される
電動移動体情報提供装置。
[請求項5]
請求項4に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記到達可能範囲表示画面には、前記或る地点から前記目的地への経路が表示される
電動移動体情報提供装置。
[請求項6]
請求項3に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記到達可能範囲表示画面では、前記閉曲線の内側の部分が、前記閉曲線の外側の部分と異なる色調で表示される
電動移動体情報提供装置。
[請求項7]
請求項1乃至5のいずれかに記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記算出手段は、前記目的地を取り囲むように複数の次目的地を決定し、前記目的地を次出発地として設定し、前記次出発地から前記次目的地への前記電動移動体の走行をシミュレートする走行シミュレーションを行い、前記次出発地から前記複数の次目的地のそれぞれに到達する経路において前記次出発地から出発した場合に到達可能である地点として前記複数の到達可能地点を算出する
電動移動体情報提供装置。
[請求項8]
請求項7に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記算出手段は、前記目的地における前記電動移動体のSOCを算出し、前記目的地と前記複数の次目的地との間の距離が、前記目的地における前記電動移動体のSOCに依存しているように、前記複数の次目的地を決定する
電動移動体情報提供装置。
[請求項9]
請求項7に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記算出手段は、交差点を表現するノードと、前記ノードを連結する道路を表現するリンクとで道路網を表現する道路網モデルを用いて前記走行シミュレーションを行い、且つ、
前記算出手段は、前記目的地を取り囲むように複数の次目的地範囲を決め、前記次目的地範囲のそれぞれに含まれるノードを前記次目的地として決定する
電動移動体情報提供装置。
[請求項10]
請求項9に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記算出手段は、前記目的地における前記電動移動体のSOCを算出し、前記目的地と前記複数の次目的地範囲のそれぞれとの距離が前記目的地における前記電動移動体のSOCに依存した距離になるように、前記複数の次目的地範囲を決定する
電動移動体情報提供装置。
[請求項11]
請求項9に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記複数の次目的地範囲のうちの特定の次目的地範囲に前記道路網モデルのノードが含まれていない場合、前記算出手段は、前記特定の次目的地範囲の大きさ及び/又は位置を調節する
電動移動体情報提供装置。
[請求項12]
請求項2に記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記算出手段は、前記目的地を次出発地として設定し、前記目的地を取り囲むように複数の次目的地を決定し、前記次出発地から前記次目的地への前記電動移動体の走行をシミュレートする走行シミュレーションを、交差点を表現するノードと、前記ノードを連結する道路を表現するリンクとで道路網を表現する道路網モデルを用いて実行し、前記次出発地から前記複数の次目的地のそれぞれに到達する経路において前記次出発地から出発した場合に到達可能である地点として前記複数の到達可能地点を算出し、
前記算出手段は、前記複数の次目的地の決定を、前記目的地を取り囲むように複数の次目的地範囲を設定し、前記複数の次目的地範囲のうち、前記道路網モデルの少なくとも一のノードが含まれる次目的地範囲については前記少なくとも一のノードのいずれかを前記次目的地として決定し、前記複数の次目的地範囲のうち、道路が存在しないような地域に設定された道路不存在次目的地範囲については、前記道路網モデルの少なくとも一のノードを含むように変更して変更後次目的地範囲を決定し、且つ、前記変更後次目的地範囲に含まれるノードを前記次目的地として決定し、
前記算出手段は、前記走行シミュレーションにより、前記次出発地から前記変更後次目的地範囲から決定された前記次目的地に到達可能であると判断した場合、前記次目的地と前記道路不存在次目的地範囲の位置の間に位置する仮想到達可能位置を決定し、
前記算出手段は、前記閉曲線を、前記複数の到達可能地点と前記仮想到達可能位置とを通過するように決定する
電動移動体情報提供装置。
[請求項13]
請求項1乃至12のいずれかに記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記複数の到達可能地点のそれぞれが、前記電動移動体のSOCが特定値になる地点として算出される
電動移動体情報提供装置。
[請求項14]
請求項1乃至11のいずれかに記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記或る地点が、前記電動移動体が、現在、位置している現在地位置であり、
前記算出手段に与えられる前記電動移動体のSOCは、現在の前記電動移動体のSOCである
電動移動体情報提供装置。
[請求項15]
請求項1乃至5のいずれかに記載の電動移動体情報提供装置であって、
前記算出手段は、前記目的地を取り囲むように複数の次目的地を決定し、前記目的地を次出発地として設定し、前記次出発地から前記次目的地への前記電動移動体の走行をシミュレートする走行シミュレーションを行い、前記次出発地から前記複数の次目的地のそれぞれに到達する経路のそれぞれについて、前記次出発地から出発した場合に到達可能であり、且つ、それぞれ異なる条件を満たす地点として、前記複数の到達可能地点のうちの複数の特定条件到達可能地点を算出し、
前記到達可能範囲表示画面には、前記複数の特定条件到達可能地点のうちの前記異なる条件のうちの第1条件を満たす複数の第1特定条件到達可能地点を通過する第1閉曲線と、前記複数の特定条件到達可能地点のうちの前記異なる条件のうちの第2条件を満たす複数の第2特定条件到達可能地点を通過する第2閉曲線とが表示される
電動移動体情報提供装置。
[請求項16]
電動移動体に関する情報を提供する電動移動体情報提供方法であって、
特定の地点における前記電動移動体のSOC(state of charge)について、前記電動移動体が前記或る地点から目的地に到達した後で前記目的地を出発した場合に到達可能である複数の到達可能地点を算出するステップと、
複数の到達可能地点が視覚的に認識可能である到達可能範囲表示画面を表示するための表示データを生成するステップと
を具備する
電動移動体情報提供方法。
[請求項17]
請求項16に記載の電動移動体情報提供方法であって、
前記複数の到達可能地点を算出するステップは、
前記目的地を取り囲むように複数の次目的地を決定するステップと、
前記目的地を次出発地として設定するステップと、
前記次出発地から前記次目的地への前記電動移動体の走行をシミュレートする走行シミュレーションを行うステップとを備え、
前記複数の到達可能地点は、前記走行シミュレーションにより、前記次出発地から前記複数の次目的地のそれぞれに到達する経路において前記次出発地から出発した場合に到達可能である地点として算出される
電動移動体情報提供方法。
[請求項18]
請求項16または17に記載の電動移動体情報提供方法を実現するためのプログラムが記録された記録媒体。
図面