明 細 書
発明の名称 : ポリアミド捲縮加工糸およびそれを用いた織編物
技術分野
[0001]
本発明は、低吸水性ポリアミドを少なくとも一部に含む繊維からなる捲縮加工糸であって、染色加工工程を通過した製品においても、シワやシボなどの発生がなく製品品位もよく、高いストレッチ性を有する織編物を提供するポリアミド捲縮工糸に関するものである。
背景技術
[0002]
従来からポリアミド繊維は、ポリエステルと比べて柔らかくタッチも良好であり、衣料用途に広く用いられている。衣料用ポリアミド繊維の代表であるナイロン6やナイロン66等で一種類のポリマーからなる単一糸は、繊維自体に伸縮性が殆どないため、仮撚加工等を行って伸縮性が付与され、伸縮性のある織編物用に使用されている。しかしながら、このような単一糸に仮撚加工等の加工を施したものでは、十分に満足できる伸縮性を有する織編物を得ることは困難であった。
[0003]
そこで、弾性を有する繊維を用いることによって伸縮性を有する織編物を得る方法や、あるいは、性質の異なる2種類以上のポリマーを併用し、染色等の熱処理により捲縮を発現させる潜在捲縮性能を有する複合繊維とすることによって、伸縮性を有する織編物を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
[0004]
前者の弾性を有する繊維においては、ポリウレタン系弾性糸が多く用いられるが、ポリウレタン系弾性糸は染色性や耐光性に課題があるため、ナイロン6やナイロン66からなる繊維糸条でカバーリング加工を施して用いるのが一般的である。このため、製品の質量が重くなることや、カバーリング加工費やポリウレタン系弾性糸の製品コストが高くなることや生地重量が重い等の課題が残る。
[0005]
また別に、伸縮性を有する繊維として、ナイロン系エラストマーとポリアミドをサイドバイサイド型や偏芯芯鞘型に配した複合繊維が提案されているが(特許文献2参照)、この提案では、ポリアミド独特の膨潤性のために、精錬工程や染色工程等の加工工程を通過することによりそのストレッチ性が失われ、製品においては十分なストレッチが得られないという課題があった。
[0006]
さらには、このようなポリアミド繊維は、原糸や加工糸の状態では、捲縮性に優れ、そして良好なストレッチが得られるものであっても、織編物の精練や染色加工の湿熱工程において、ポリアミド繊維特有のシワ発生が起こりやすく、また熱セット工程の乾熱工程において湿熱工程でついたシワが取れにくいために、織編物品位を維持するために、湿熱工程においては織編物に張力を与えながらの加工が必要である。このように、湿熱工程において織編物に張力をかけることにより、原糸や加工糸が持つ捲縮を十分に発現させることができず、結果的にストレッチ性に乏しい織編物となるという課題がある。
[0007]
また、特許文献3には潜在捲縮ポリアミドにて、織物での経ストレッチと回復性が良好な素材を提案しているが、ポリアミドは含水で膨潤する傾向があり、精練・リラックス、染色の工程でシワやシボが発生しやすく、通常は引き伸ばして加工するためストレッチが落ちる。ストレッチを上げるために、加工する張力を低くすれば、比較的高いストレッチ性が得られるが、シワやシボなど品位を上げることは難しい。
先行技術文献
特許文献
[0008]
特許文献1 : 特開2000-27031号公報
特許文献2 : 特開平57-193521号公報
特許文献3 : 特開2003-129352号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0009]
そこで本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、本発明の目的は、低吸水性のポリアミドを含む繊維を用い、捲縮加工糸のもつ伸縮性を織編物において十分に発現させることが可能な伸縮性と柔軟性を付与することが可能なポリアミド捲縮加工糸にて、品位の良好なストレッチの高い織編物を提供することにある。本発明は、これまでできなかった課題解決を異なる技術的アプローチによって達成するものである。
課題を解決するための手段
[0010]
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明のポリアミド捲縮加工糸は、温度30℃、相対湿度90%RH時の平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを少なくとも40質量%含む繊維からなる捲縮加工糸であって、伸縮伸長率が100%以上であることを特徴とする高ストレッチポリアミド捲縮加工糸である。
[0011]
また、本発明のポリアミド捲縮加工糸は、温度30℃、相対湿度90%RH時の平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを少なくとも40質量%含む繊維からなる捲縮加工糸であって、クリンプ伸長率が25%以上であることを特徴とするポリアミド捲縮加工糸である。
[0012]
本発明のポリアミド捲縮加工糸の好ましい態様によれば、前記の低吸水性ポリアミドが、ナイロン610またはその共重合体が少なくとも一部に含まれる繊維からなることである。
[0013]
本発明のポリエステル捲縮加工糸の好ましい態様によれば、前記の繊維の湿熱捲縮維持率が30%以上で乾熱捲縮維持率が50%以上であり、乾熱捲縮維持率/湿熱捲縮維持率で示される捲縮維持率比が1.0以上1.7以下であることである。
[0014]
本発明のポリアミド捲縮加工糸の好ましい態様によれば、前記の繊維が、0.03以上0.15以下の粘度差を有する2種類のポリアミドをサイドバイサイド型に貼り合わせた繊維である。
[0015]
本発明においては、前記のポリアミド捲縮加工糸を少なくとも一部に含む織編物を製編織することができ、この織編物には精練と染色工程が液流加工により施されることである。
[0016]
本発明のポリアミド捲縮加工糸から得られる織編物は、温度30℃、相対湿度90%RH時の平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを少なくとも40質量%以上含み、上記低吸水性ポリアミドを一方の成分とするサイドバイサイド型複合糸の仮撚糸を含み、織物経方向における14.7N/5cm荷重時の伸長率が20%以上であり、織物経方向における伸長回復率が80%以上であることを特徴とするポリアミド高伸長織物である。
[0017]
本発明のポリアミド高伸長織物の好ましい態様によれば、ラミネート加工またはコーティング加工が施されていることを特徴とするポリアミド高伸長織物である。
[0018]
本発明のポリアミド高伸長織物の好ましい態様によれば、低吸水性ポリアミドとして、ナイロン610またはその共重合体を一方の成分とするサイドバイサイド型複合糸が、少なくとも一部に含まれることを特徴とするポリアミド高伸長織物である。
[0019]
本発明の織編物の好ましい態様によれば、前記の織物緯方向の14.7N/5cm荷重時の伸長率が20%以上であることである。
発明の効果
[0020]
本発明によれば、低吸水性ポリアミドを含む繊維を用い、捲縮加工糸のもつ伸縮性を織編物において十分に発現させることが可能な伸縮性と柔軟性を付与することが可能なポリアミド捲縮加工糸が得られ、特に、本発明のポリアミド捲縮加工糸を用いることにより、従来のポリアミド織物では難しかった経方向に高い伸縮性を持った織編物を得ることが可能となる。
発明を実施するための形態
[0021]
次に、本発明のポリアミド捲縮加工糸について詳細に説明する。本発明のポリアミド捲縮加工糸は、温度30℃、相対湿度90%RH時の平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを少なくとも40質量%含む繊維からなる捲縮加工糸であって、伸縮伸長率が100%以上のポリアミド捲縮加工糸である。
[0022]
本発明のポリアミド捲縮加工糸としては、温度30℃、相対湿度90%RH、処理時間24時間としたときの平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを少なくとも40質量%含む繊維を用いることが必要である。平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを40質量%以上含む繊維を用いることにより、精練工程や染色加工工程などの湿熱条件下における膨潤が小さく、これらの工程時の織編物の伸びが小さくなる。これにより、織編物に余分な張力をかけることなく精練工程や染色加工工程などの工程を通すことが可能となるためである。
[0023]
低吸水性ポリアミドが40質量%未満の繊維では、糸条や織編物の膨潤が大きく、精練工程や染色加工工程などの工程でタルミによる通過不良やシワなど織編物の品位低下が発生するため、高い張力でこれらの工程を通さなければならない。このため、熱による発現する捲縮が大きく低下し、ストレッチが少ない製品(織編物)となってしまう。低吸水ポリアミドを含む繊維を捲縮加工糸の一部に用いてもよく、100質量%で用いることもできる。また、本発明では平均吸水率が5%以下の低吸水ポリアミドを含む繊維としているが、平均吸水率が5%より大きくなると精練や染色加工時の膨潤が大きくなり、上記するストレッチ製品(織編物)が得られなくなる。
通常のポリエステル程度であれば精練や染色加工工程などでのタルミも発生しないため、平均吸水率の下限値としては、通常ポリエステル並みの0.4%程度であればよい。
[0024]
本発明のポリアミド捲縮加工糸の伸縮伸長率は、100%以上である。伸縮伸長率が100%よりも小さいと、製品(織編物)において十分なストレッチ性が得られない。ストレッチ性を発現させるためには高い捲縮加工糸を用いることが好ましいが、実質的に、捲縮加工糸に付与できる伸縮伸長率で400%以上の値の捲縮加工糸を得ようとすると、製糸や仮撚工程における糸の通過性が低下し、品質も安定しないことがある。よって、伸縮伸長率の好ましい範囲は150%以上400%以下である。
[0025]
ここで、伸縮伸長率とは、処理する条件によって数値が大きく異なる捲縮加工糸の伸長性測定方法である。本発明では、加工工程通過後の製品ストレッチを予測する方法の一つとして用いるため、布帛(織編物)構造内を想定した荷重をかけた湿熱処理を、伸縮伸長率の処理条件として用いることとする。詳細な測定方法は、後述する。
伸縮伸長率が100%以上の捲縮加工糸を得る方法として、サイドバイサイド型複合紡糸において、粘度差や収縮差を有するポリマーの組合せとする方法や、紡糸後の繊維に捲縮を強く付与する加工(仮撚や押し込み捲縮)を付与することで高い捲縮加工糸を得ることができ、この2つを併用する方法が有効である。ただし、サイドバイサイド型の複合紡糸では、捲縮発現時に繊維にらせん状の捲縮形状となるため、仮撚によってストレッチ効果が発現しないことがある。この捲縮を有効に発現させるには、仮撚の撚係数を20000以上35000以下で調整することが好ましい。
[0026]
また、捲縮加工糸において、クリンプ伸長率が25%以上あることが重要である。織編物製品における捲縮加工糸であれば、織編物製品から抜き出した糸で評価することで、製織や製編、染色加工工程での捲縮低下を含めた捲縮加工糸の状態を評価する。前述した伸縮伸長率は捲縮加工糸が持つ糸のポテンシャルを見極める指標であるが、前述したように、製織・製編後の染色加工工程において、ポリアミドはその特有の膨潤のために、シワなどの品位や工程通過性を考慮し、比較的高い張力を掛けて加工されることが一般的であるが、このような高い張力下では織編構造内の本発明のポリアミド捲縮加工糸の捲縮発現が抑えられ、設計していた高い伸長性が得られにくくなる。本発明のポリアミド捲縮加工糸を用いることで、前述するように、ポリアミドで発生しやすいシワなどの品位低下や工程通過性の悪化は起こりにくい。よって、加工工程においても加工張力を適正にコントロールするなど、適正な染色加工方法を行うことで、染色加工後の織編物製品の構造内の本発明のポリアミド捲縮加工糸において、十分な捲縮を発現可能となり、織編物において目標の高い伸長特性が得られる。高い伸長特性を得るためには、織編物製品から抜き出した捲縮加工糸のクリンプ伸長率が25%以上の高い捲縮を維持していることが重要となる。
[0027]
本発明のポリアミド捲縮加工糸を構成する繊維の少なくとも一部に用いられる低吸水性のポリアミドは、例えば、セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位とジアミン単位の組み合わせにより得られる、ナイロン210、ナイロン310、ナイロン410、ナイロン510、ナイロン610、ナイロン710、ナイロン810、ナイロン910、ナイロン1010、ナイロン1110およびナイロン1210などが挙げられる。中でも、ナイロン410、ナイロン510、ナイロン610、ナイロン710、ナイロン810、ナイロン910、ナイロン1010、ナイロン1110およびナイロン1210がさらに好ましく挙げられる。これらの中でも、重合性が安定し捲縮加工糸の黄化が少なく、染色性が良好なナイロン610が最も好ましく用いられる。
ここで、セバシン酸は、例えば、ひまし油の種子から精製することにより製造することができ、植物由来原料と位置付けられる。セバシン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸などが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲でこれらを配合することができる。また、これらのジカルボン酸についても、植物由来であることが好ましい。上記セバシン酸単位以外のジカルボン酸単位の共重合量としては、全ジカルボン酸単位中0~40モル%以下が好ましく、0~20モル% がより好ましく、0~ 10モル% がさらに好ましい。ジアミン単位を構成するジアミンとしては、炭素数2 以上のジアミン、好ましくは炭素数4~12 のジアミンが挙げられ、具体的には、プトレシン、1,5-ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタンジアミン、フェニレンジアミン、エタンブトールなどが挙げられる。また、これらのジアミンについても、植物由来であることが好ましい。
[0028]
本発明のポリアミド捲縮加工糸を構成する繊維は、湿熱捲縮維持率が好ましくは30%以上で乾熱捲縮維持率が好ましくは50%以上であり、乾熱捲縮維持率/湿熱捲縮維持率で示される捲縮維持率比が1.0以上1.7以下であることが好ましい。
[0029]
本発明のポリアミド捲縮加工糸は、湿熱捲縮維持率が好ましくは30%以上で、乾熱捲縮維持率が好ましくは50%以上であり、乾熱捲縮維持率/湿熱捲縮維持率で示される捲縮維持率比が1.0以上1.7以下であることが好ましい。
[0030]
本発明において、湿熱捲縮維持率と乾熱捲縮維持率とは、捲縮加工糸が捲縮加工糸単体で湿熱状態と乾熱状態において、最大限発揮する捲縮に対して、布帛(織編物)状態における精練、染色および乾熱セットにおける湿熱や乾熱の処理時の捲縮加工糸の捲縮特性を、どれほど維持できるかを示す目安となる。まず、本発明では、ポリアミド捲縮加工糸の湿熱捲縮維持率を30%以上とすることが好ましい。湿熱捲縮率が30%未満であれば、捲縮が小さすぎて織編物に十分なストレッチを付与することが困難である。また、ポリアミド捲縮加工糸の乾熱の捲縮維持率は好ましくは50%以上である。湿熱捲縮維持率と同様に、乾熱捲縮維持率も50%より小さければ、ストレッチ不足となる傾向を示す。このような観点から、湿熱捲縮維持率のより好ましい範囲は40%以上であり、乾熱捲縮維持率のより好ましい範囲は70%以上である。
[0031]
ここで、上記の湿熱捲縮維持率、乾熱捲縮維持率、および乾熱捲縮維持率/湿熱捲縮維持率を同時に達成する方法としては、低吸水性ポリアミドを40質量%以上含み、伸縮伸長率の高い捲縮加工糸とすることで達成でき、さらに、サイドバイサイド型に張り合わせた繊維構造とすることや、仮撚などの捲縮加工などを適宜用い、条件を調整する方法が挙げられる。
[0032]
ここで、ポリアミド糸状の状態において、荷重を掛けずに処理することにより捲縮が大きく発現する捲縮加工糸は従来から数多く存在するが、織編物の状態での精練、染色および乾熱セットの工程を再現することはできておらず、ポリアミド織編物、特に織物経方向においてストレッチが高い素材(織編物)は少ない。これは、ポリアミド糸状が織編物として形成されている状態の張力(荷重)や、湿熱と乾熱の捲縮発現と維持挙動が考慮されていないためである。
[0033]
本発明では、湿熱と乾熱の捲縮維持率の比を小さくすることにより、シワの発生が少なく、また、シワ発生後に乾熱でセットを掛けてシワの除去および品位の向上が可能な織編物を提案するものである。すなわち、本発明のポリアミド捲縮加工糸においては、上記の乾熱捲縮維持率/湿熱捲縮維持率で示される捲縮維持率比が1.0以上1.7以下であることが好ましい。この捲縮維持率比は、乾熱と湿熱の捲縮維持率比が近い値の方が好ましいが、上述しているとおり、ポリアミド繊維では湿熱処理での形態セット性が高いことから、上記の捲縮維持率比が1.0よりも小さい値の捲縮加工糸の作製は困難である。また、捲縮維持率比の限界として、1.7より大きければ乾熱セットで品位向上の認められなく、製品(織編物)品位を保つために、精練、染色およびセット加工において、生地(織編物)に張力を掛けるために、糸条においても捲縮発現が小さく、結果として織編物に十分なストレッチが与えられない。
[0034]
本発明においては、糸条の捲縮の観点から、後に示すサイドバイサイド型に張り合わせた組み合わせが好ましい態様である。
[0035]
サイドバイサイド型複合糸における低吸水性ポリアミドの混用割合は、上述しているとおり40質量%以上であることが必要である。
低吸水性ポリアミドの使用割合が40質量%未満であれば、上記に示す精練、染色およびセット加工時の捲縮発現効果が小さくなったり、製品(織編物)品位が悪くなる。また、低吸水性ポリアミドを捲縮加工糸に単独で使用することもできるが、低吸水性ポリアミドは高価な場合には、その使用割合を少なくした方が製品コストを安価にすることができる。
[0036]
コストを考えると、低吸水性ポリアミドの混用割合は、好ましくは40質量%以上80質量%以下の範囲である。さらに、サイドバイサイド型とした場合に、捲縮性から考えると、低吸水性ポリアミドの好ましい混用割合は40質量%以上70質量%以下となる。
[0037]
本発明のポリアミド捲縮加工糸を構成する、低吸水性ポリアミドを含む繊維は、粘度差を有する2種類のポリアミドをサイドバイサイド型に貼り合わせた繊維であることが好ましい。サイドバイサイド型に貼り合わせた繊維構造とすることにより、使用するポリマー間に粘度差や収縮差を作り、繊維自体が持つ捲縮が高くなる。
[0038]
また、低吸水性のポリマーを少なくとも一方に配置することにより、前述した精練や染色工程での品位低下や捲縮発現不良が起こりにくくなる。通常、低吸水性ポリマーはコストが高く、それ単体で繊維にした場合に非常に高価となってしまうが、サイドバイサイド型の繊維構造とすることにより、高価なポリマーの割合を少なくすることができ、繊維の価格を低く抑えることができるために、ストレッチ性能に加えてストロングポイントとなる。
[0039]
さらに、ポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた繊維において、一方のポリマーと他方のポリマーの粘度差が0.03以上0.15以下であることが好ましい。粘度差が0.03未満であれば、粘度差による捲縮発現効果は小さく、粘度差が0.15より大きければポリアミドポリマー間の接合性の悪さや紡糸不良が起こるために、品質問題が起こる場合がある。
[0040]
本発明のポリアミド捲縮加工糸においては、初期ヤング率を15以上25cN/dtex以下とすることによりやわらかい風合いを維持しつつ、織編物風合いもしっかりする。また、強度を2.0cN/dtex以上とすることにより、高次工程での通過性や製品強度を保持することができる。
[0041]
このサイドバイサイド型に張り合わせた繊維のポリアミドの組み合わせとして、ストレッチ性能、製品コスト、紡糸性および高次通過性の観点から、高粘度ポリマーとしてナイロン610またはその共重合体を用い、低粘度ポリマーとしてナイロン6または66またはその共重合体を用いることが好ましい。
[0042]
次に、本発明のポリアミド捲縮加工糸の製造方法の一例について説明する。
[0043]
まず、粘度差を有する2種類のポリアミドをサイドバイサイド型の紡糸口金で溶融紡出するが、このとき、常用の複合紡糸装置を用いて、常用のサイドバイサイド型の紡糸口金で溶融紡糸することができる。そして、紡出された糸条を冷却固化し、油剤を付与した後、好ましくは速度4000m/分以上で捲き取り、高配向未延伸糸を得る。
[0044]
高配向未延伸糸を得る際には、4000m/分以上の速度で捲き取ることが好ましい。捲き取り速度がこれよりも低いと、紡糸油剤や空気中の水分吸収等により、捲き取り中の糸条が膨潤し、安定紡糸が困難となる。
[0045]
得られた高配向未延伸糸には、仮撚加工を施すことによって、上記のような本発明のポリアミド捲縮加工糸を得るが、生産性と捲縮状態を考慮すると、仮撚数を決定する撚係数の範囲は、好ましくは、20000以上35000以下で行う。
[0046]
本発明で用いられる低吸水性のポリアミドを含む繊維は、従来公知の単独糸やサイドバイサイド複合糸用口金により所定のポリマーを選択して溶融複合紡糸することによって得ることができ、その製造工程は、一旦未延伸糸を得、その後延伸する2工程法のUY/DT法であっても、一工程で延伸糸を得るOSP法であってもさしつかえない。また、半延伸糸POYであってもよい。
[0047]
本発明の低吸水性のポリアミドを含むポリアミド捲縮加工糸は、仮撚加工によって作成される仮撚糸であることが重要である。ポリアミド繊維糸条に仮撚加工を行うことにより、高い捲縮を付与できることが従来から知られているが、低吸水性のポリアミドを含む繊維に仮撚を行うことで熱処理が低温の領域から高い捲縮が発現し、精練や染色工程における織編物の品位を低下させることなく、高い捲縮を維持することができ、織編物に高いストレッチ性を付与することができるため、低吸水性のポリアミドを含む繊維からなる仮撚捲縮加工糸とすることが好ましい。さらに、サイドバイサイド型のポリアミド捲縮加工糸に仮撚加工を行うことにより、湿熱乾熱処理前の繊維形態である顕在捲縮が大きくなり、さらに収縮後に発現する潜在捲縮も高くなるために、低吸水性のポリアミドを単体で用いる繊維からなる捲縮加工糸よりも大きな捲縮と織編物においては、大きなストレッチを付与することが可能となる。
[0048]
ここで、仮撚加工の方法には、ピンタイプ、フリクションタイプおよびベルトタイプ等種々存在する。ただし、本発明では、総繊度が細い合成繊維を用いることが好ましいため、ピンタイプを用いることが好ましく、フリクションを用いる場合はディスク枚数を増やす等総繊度の細い合成繊維に対応し、仮撚を施すことが好ましい。
[0049]
本発明のポリアミド捲縮加工糸を少なくとも一部に含む織編物では、精練と染色工程を液流加工で行うことが好ましい。前述しているとおり、低吸水性のポリアミドを含む繊維を使用することにより、湿熱工程でのセット性が低いために、織編物におけるシワなどの品位低下が起こりにくく、湿熱でのシワなどの品位低下も乾熱工程で改善可能となるため、より高い捲縮発現が可能な液流加工工程で作製することが好ましいためである。また、液流加工工程でも、加工中に織編物への引っ張り張力が低いタイプの液流染色機、ノズルおよび加工条件に設定することがより好ましい方法として用いられる。また、中間セットや仕上げセット工程においても、本発明のポリアミド捲縮加工糸を含んだ織編物を用いることで、湿潤によるたるみが少ないことから、生地を余分に引っ張らなくても生地を張った状態で熱セットができる。
[0050]
これまで、シワなど品位低下抑制のために、織物に高い張力をかけて加工するため、緯方向のストレッチが高いポリアミド織物の作製は可能であったが、張力をかけて加工するために、経方向の捲縮加工糸の捲縮が発現できず、織物の経方向に高いストレッチを付与することが困難であった。本発明では、上述した手法を用いることにより、従来にない高いストレッチ性のある織物を作製することが可能となった。具体的には、織物の経方向伸長率が20%以上である。また、従来の方法では特に難しい問題であった経方向の伸長率については、大きくしすぎると高次の通過性や製品の品質の低下、生地の伸長回復率の低下を招いていた。本発明のポリアミド捲縮加工糸を経方向に用いることで、織物の経方向の伸長率が14.7N/5cm荷重時で20%以上であり、織物経方向における伸長回復率が80%以上である良好なストレッチ性を持つ織物を作製することが可能となる。より好ましい範囲は、伸長回復率80%以上を維持しつつ、織物の経方向の伸長率が25%以上40%以下となる。緯方向伸長率も20%以上であることがさらに好ましい。
[0051]
ここで、本発明のポリアミド捲縮加工糸は高価となることが予想されるため、ポリアミド捲縮加工糸を経糸にのみ使用して、織物経方向に高いストレッチを付与し、緯糸に従来の高捲縮加工糸を用いることにより、比較的安価で経緯方向ともにストレッチの高い織物を得ることができる。
[0052]
また、本発明のポリアミド捲縮加工糸を用いて得られたストレッチ織物にラミネートやコーティング加工を施して、防風性能や耐水性能を向上させた製品を作ることが可能である。ラミネートやコーティングで織物のストレッチ性が低下する場合もあるために、ラミネートやコーティングの加工方法を適宜選定することが好ましい。具体的には、使用するラミネート材やコーティング材の選定や、加工時に織物に張力を掛けて加工するため、品位を確認しつつ加工張力を落とす方法、ラミネートの接着方式を全面接着ではなく、ドット接着など部分接着とする方法、およびコーティングを部分コーティングとする方法等が挙げられる。
[0053]
ラミネートは、反応性接着剤を被膜もしくは織物、または被膜、織物の両方に塗布して、乾燥もしくは半乾燥し、貼り合わせて圧着するドライラミネート法、あるいは、接着剤を塗布した被膜もしくは織物、または被膜、織物の両方を、乾燥させることなく貼り合わせて圧着するウェットラミネート法などの方法により積層する。または、あらかじめ樹脂被膜中に架橋剤を混合するなど反応性を付与しておき、織物と熱圧着することでラミネートしてもよい。
被膜と織物とを貼り合わせた後に、離型支持体を離型し、透湿性防水織物を得ることができる。得られた透湿性防水織物には、必要に応じて、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤などを用いて撥水処理を施してもよい。このようなラミネート加工を行うことにより、衣料素材に利用すれば、フィッシング、登山衣などのアウトドアウェア、スキー関連ウェア、ウインドブレーカー、アスレチックウェア、ゴルフウェア、レインウェア、カジュアルコートなどのほか、屋外作業着、手袋、靴などにも用いることができる。
[0054]
ドット接着など部分接着としては、織物とフィルムのラミネート接着形態は部分的であるが、全体にわたって均等に分布していることが好ましく、具体的には網目状やドット状などが好ましい。接着剤の分布に偏りがあると、結露し易い部位ができたり、膜の過度な膨潤や膜破りが起こり易い部位ができ、防水性が低下することがある。また、吸水膨潤抑制、強度支持の役割のために、全体にわたって分布していることが好ましい。
ドット状に積層する場合、性能バランスの面から、ドット1つ当たりの面積は0.01~10mm
2であることが望ましい。また、ドットの形は特に限定されず、直線および円弧のそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせによって囲まれる形状など、あらゆる形のものを適宜用いることができる。
本発明において、ラミネートするフィルムの側または織物側に、グラビアコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティングなどにより、反応性を有する接着剤液を所望の厚さおよび塗布形態となるように塗布する。接着剤はドット状または線状に塗布することが好ましい。
そして、フィルムと織物を、接着剤を塗布した複合フィルムを乾燥もしくは半乾燥し、織物とはりあわせて圧着するドライラミネー法、あるいは、接着剤を塗布したフィルムを乾燥させることなく布帛とはりあわせて圧着するウェットラミネート法等の方法により積層する。織物をはりあわせた後のプレスは、ドット状あるいは網目状に塗布した接着剤を押しつぶして透湿度を低下させることが無いように、適当な温度および圧力条件下で行う。
また本発明の捲縮加工糸においては、精練・染色などの湿熱セットで捲縮がヘタリにくい加工糸とするには、湿熱捲縮維持率が30%以上であることが好ましい。
さらに、中間セットや仕上げセットなどの乾熱セットで捲縮がヘタリにくい加工糸とするには、乾熱捲縮維持率が50%以上であることが好ましい。
乾熱捲縮維持率/湿熱捲縮維持率で示される捲縮維持率比が、乾熱での加工工程に比べ、比較的、湿熱での加工工程での捲縮のヘタリが小さいという点から1.0以上1.7以下であることが好ましい。通常のナイロンは、湿熱工程で荷重を掛けられ捲縮を伸ばされた状態の加工糸捲縮が、荷重フリーで発現させた加工糸捲縮よりも、低下する。これに比べポリエステルは、荷重を掛けた湿熱工程での捲縮低下は小さい。本発明の加工糸を用いた織物でも、湿熱での捲縮低下を抑制する効果を有する。
[0055]
本発明のポリアミド捲縮加工糸は、伸縮性を必要とするスポーツ衣料、アウトドア、およびパンツやインナーなどの衣料用途に好適に用いることができる。
実施例
[0056]
次に、本発明のポリアミド捲縮加工糸を実施例によって具体的に説明する。実施例における各物性値は、次の方法により測定した。測定回数についてはJISに記載の所定の回数にて実施し、JISに記載のないものは5回の測定回数で実施し、これらの平均値を算出した。
[0057]
(A)温度30℃、相対湿度90%RH時の平均吸水率:
JIS L 0105(2006年度版)に準じて、絶乾状態と温度30℃、相対湿度90%RHで24時間処理による吸水性を測定し、その吸水率を測定した。
[0058]
(B)伸縮伸長率:
JIS L 1013(C法)(2010年度版)に準じて、伸縮伸長率を測定した。ただし、熱処理方法は、90℃の温度の温水中に荷重を掛けず20分間処理した。
[0059]
(C)湿熱捲縮維持率:
JIS L 1013(2010年度版)の伸縮復元率の測定方法に基づき、ベース捲縮率を測定する。ただし、処理条件は温水90℃、荷重なし、20分間とした。次に、新たに採取したカセを90℃の温度の温水中に20分間、0.0176mN/dtexの荷重を掛けた状態で処理する。ベース捲縮率と同一の測定方法によって湿熱捲縮率を測定し、次の式によって湿熱捲縮維持率を算出する。
・湿熱捲縮維持率=湿熱捲縮率/ベース捲縮率×100。
[0060]
(D)乾熱捲縮維持率:
ベース捲縮率は、上記の(C)と同一の値となる。採取したカセを120℃の温度の乾熱中に5分間、0.0176mN/dtexの荷重を掛けた状態で処理する。ベース捲縮率と同一の測定方法によって乾熱捲縮率を測定し、次の式によって乾熱捲縮維持率を算出する。
・乾熱捲縮維持率=乾熱捲縮率/ベース捲縮率×100。
[0061]
(E)捲縮維持率比:
乾熱維持率比は、次の式によって算出した値である。
・捲縮維持率比 = 乾熱捲縮維持率 / 湿熱捲縮維持率。
[0062]
(F)相対粘度:
絶乾試料0.25±0.001gを、98質量%硫酸で溶解濃度が1g/100mlになるように溶かし、オストワルド粘度計(中野式改良型)で25±0.2℃の恒温中で相対粘度を測定した。
[0063]
(G)強伸度と初期ヤング率:
JIS L 1013(2010年度版)に準じて、島津製作所製オートグラフAG-ISを用いて、測定した。
[0064]
(H)沸収率(沸騰水収縮率):
JIS L 1013(2010年度版)に準じて、試料をフリーにして沸騰水中に30分間浸漬した後、自然乾燥し沸収率を算出した。
[0065]
(I)生地経緯方向の伸長率:
JIS L 1096A法(定速伸長法:2010年度版)に準じて、インストロン社製引張試験機を用い、経方向と緯方向に幅50mm×300mmの試料を、つかみ間隔200mmで引張速度200mm/分、14.7Nまで伸長したときの伸長率を測定した。
[0066]
(J)生地経緯方向の伸長回復率:
伸長回復率は、JISL1096A法(定速伸長法:2010年度版)を応用して測定する。すなわち、標準状態に調温湿した試料から、経方向と緯方向に幅50mm×長さ300mmの試料を、上記の引張試験機を用いて、つかみ間隔(元の印間)200mm、引張速度200mm/分で、上記伸長率の80%(14.7Nまで伸長したときの伸長率を100%としたときの80%)まで伸長し、1分間保持する。続いて、同じ速度で元の位置まで戻して3分間保持し、ついで、この操作を11回繰り返した後、描かれた荷重-伸び曲線から残留伸び(10回繰返した後、11回目の伸長時の初荷重まで荷重した時の伸び)を測り、次式(1)によって伸長回復率(%)を求め、経緯方向のそれぞれの平均値を算出し、小数第1位まで算出する。
伸長回復率(%)={(L-L3)/L}×100 ・・・(1)
Lは伸長率の80%まで伸長時の伸び(mm)、L3は10回繰返しの残留伸び(mm)である。
[0067]
(K)仮撚の撚係数
仮撚時の撚係数K=(撚数:T/m)×√{(繊度:dtex)×0.9}
(L)クリンプ伸長率
40cmの繊維を用い、JIS L 1013(A法)(2010年度版)に準じて、クリンプ伸長率を測定した。
[0068]
織編物における糸については、織編物から糸を40cm抜き取り、抜き取った糸維に熱処理せずに、
(実施例1)
低粘度ポリマーに相対粘度2.63のナイロン6(吸水率7.7%)を用い、高粘度ポリマーには相対粘度2.71のナイロン610(吸水率3.6%)を用いて、常用の複合溶融紡糸装置にサイドバイサイド型複合紡糸口金を装着し、低粘度ポリマーと高粘度ポリマーとの複合比(質量比)を1:1として、紡糸温度260℃で溶融紡出した。この複合繊維を冷却し、油剤を付与した後、速度4000m/分で巻き取り、総繊度90dtex/12fの丸断面形状の高配向未延伸糸を得た。次に、得られた高配向未延伸糸を、ヒーター温度170℃、仮撚時の撚係数K=30000でピン仮撚機を用いて仮撚加工を施し、総繊度84dtex/12fの潜在捲縮仮撚糸を得た。
[0069]
得られた潜在捲縮仮撚糸を、平組織を用いてゾッキ織物を作製し、液流精練-液流染色によって精練と染色加工を行い、染色前後の生地乾熱セットは適宜調整した。得られた製品は、表面品位もよく経緯方向ともにストレッチ性の非常に高い素材であった。また、このまま製品として使用できるが、グラビアロールを用いて、ウレタン系2液反応型接着剤を無孔質透湿性ポリウレタン膜に直径1mmでドット状に塗布した。また別途、上記の方法にて得られた織物に予め撥水処理を施し、ポリウレタン膜と織物を積層してラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で用いた高配向未延伸糸を用い、仮撚時の撚係数K=23000とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚加工し、80dtex/12Fの捲縮加工糸を得た。
[0070]
得られた糸を、実施例1と同様な方法によって生機作製、液流精練-液流染色、染色前後の生地乾熱セットは適宜調整した。得られた製品は表面品位もよく、経緯方向ともにストレッチ性の良い素材であった。実施例1と同様にラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
(実施例3)
低粘度ポリマーに相対粘度2.62のナイロン66(吸水率7.0%)を用い、高粘度ポリマーには相対粘度2.71のナイロン610(吸水率3.6%)を用いて、実施例1と同様な方法にて、総繊度90dtex/12fの丸断面形状の高配向未延伸糸を得た。次に、得られた高配向未延伸糸を、ヒーター温度190℃、仮撚時の撚係数K=30000でピン仮撚加工機を用いて仮撚加工を施し、総繊度84dtex/12fの潜在捲縮仮撚糸を得た。
[0071]
得られた糸を、実施例1と同様な方法によって生機作製、液流精練-液流染色、染色前後の生地乾熱セットは適宜調整した。得られた製品は、表面品位もよく経緯方向ともにストレッチ性の高い素材であった。実施例1と同様にラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
(実施例4)
低粘度ポリマーに相対粘度2.63のナイロン6(吸水率7.7%)を用い、高粘度ポリマーには相対粘度3.15のナイロン12(吸水率2.0%)を用いて、実施例1と同様な方法にて、総繊度90dtex/12fの丸断面形状の高配向未延伸糸を得た。次に、得られた高配向未延伸糸を、ヒーター温度160℃、仮撚時の撚係数K=30000でピン仮撚機を用いて仮撚加工を施し、総繊度84dtex/12fの潜在捲縮仮撚糸を得た。
[0072]
得られた糸を、実施例1と同様な方法によって生機作製、液流精練-液流染色、染色前後の生地乾熱セットは適宜調整した。得られた製品は、表面品位もよく経緯方向ともにストレッチ性の高い素材であった。実施例1と同様にラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
(実施例5)
低粘度ポリマーに相対粘度2.63のナイロン6(吸水率7.7%)を用い、高粘度ポリマーには相対粘度2.83のナイロン510(吸水率4.1%)を用いて、実施例1と同様な方法にて、総繊度90dtex/12fの丸断面形状の高配向未延伸糸を得た。次に、得られた高配向未延伸糸を、ヒーター温度180℃、仮撚時の撚係数K=30000でピン仮撚機を用いて仮撚加工を施し、総繊度84dtex/12fの潜在捲縮仮撚糸を得た。
[0073]
得られた糸を、実施例1と同様な方法によって生機作製、液流精練-液流染色、染色前後の生地乾熱セットは適宜調整した。得られた製品は、表面品位もよく経緯方向ともにストレッチ性の高い素材であった。実施例1と同様にラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
[0074]
(比較例1)
実施例1で用いたナイロン6を用い、速度4000m/分で紡糸した90dtex/12fの丸断面の高配向未延伸糸を、実施例1と同様な方法で仮撚加工し、78dtex/12Fの仮撚糸を得た。
[0075]
得られた糸を、実施例1と同様な方法によって生機作製、液流精練-液流染色、染色前後の生地乾熱セットは適宜調整したが、乾熱セットでもシワ・シボがとれず、得られた製品はシワやシボが発生した品位の悪い素材であった。実施例1と同様にラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
[0076]
(比較例2)
比較例1と同一の生機を用いて、オープンソーパーにて連続精練-液流染色機を用いて、染色前後の生地乾熱セットはシワなど品質を確認しつつ適宜調整したが、得られた製品はシワがなく品位は良いが、経方向のストレッチ性の低い素材であった。実施例1と同様にラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
[0077]
(比較例3)
比較例1で用いた高配向未延伸糸を用い、仮撚時の撚係数K=23000で設定した同様な方法で仮撚加工を行い、78dtex/12Fの仮撚糸を得た。
[0078]
得られた糸を、比較例2と同様な方法に精練・染色・生地乾熱セットを行った。得られた製品はシワやシボがなく品位は良いが、経方向・緯方向ともにストレッチ性の低い素材であった。実施例1と同様にラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
[0079]
(比較例4)
実施例5で用いたナイロン66を用い、速度4000m/分で紡糸した90dtex/12fの丸断面の高配向未延伸糸を、実施例5と同様な方法で仮撚加工し、78dtex/12Fの仮撚糸を得た。
[0080]
得られた糸を、比較例2と同様な方法でシワなど品質を確認しつつ適宜調整したが、得られた製品は経方向ストレッチの低い素材であった。実施例1と同様にラミネート加工を実施した。結果を表1に示す。
[0081]
[表1]
請求の範囲
[請求項1]
温度30℃、相対湿度90%RH時の平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを少なくとも40質量%含み、前記低吸水性ポリアミドを一方の成分とするサイドバイサイド型複合糸であり、かつ仮撚加工され、クリンプ伸長率が25%以上であることを特徴とするポリアミド捲縮加工糸。
[請求項2]
温度30℃、相対湿度90%RH時の平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを少なくとも40質量%含み、前記低吸水性ポリアミドを一方の成分とするサイドバイサイド型複合糸であり、かつ仮撚加工され、伸縮伸長率が100%以上であることを特徴とするポリアミド捲縮加工糸。
[請求項3]
前記低吸水性ポリアミドとして、ナイロン610またはその共重合体が少なくとも一部に含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド捲縮加工糸。
[請求項4]
湿熱捲縮維持率が30%以上で乾熱捲縮維持率が50%以上であり、乾熱捲縮維持率/湿熱捲縮維持率で示される捲縮維持率比が1.0以上1.7以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド捲縮加工糸。
[請求項5]
前記サイドバイサイド型複合糸が、0.03以上0.15以下の粘度差を有する2種類のポリアミドをサイドバイサイド型に貼り合わせた複合糸である請求項1~4のいずれかに記載のポリアミド捲縮加工糸。
[請求項6]
請求項1~5のいずれかに記載のポリアミド捲縮加工糸を少なくとも一部に含むことを特徴とする織編物。
[請求項7]
液流加工により精練と染色工程が施されたものであることを特徴とする請求項6に記載の織編物。
[請求項8]
温度30℃、相対湿度90%RH時の平均吸水率が5%以下の低吸水性ポリアミドを少なくとも40質量%含み、前記低吸水性ポリアミドを一方の成分とするサイドバイサイド型複合糸の仮撚糸を用いた織物であり、織物経方向における14.7N/5cm荷重時の伸長率が20%以上であり、織物経方向における伸長回復率が80%以上であることを特徴とするポリアミド織物。
[請求項9]
ラミネート加工またはコーティング加工が施されていることを特徴とする請求項8に記載のポリアミド織物。
[請求項10]
前記低吸水性ポリアミドとして、ナイロン610またはその共重合体を一方の成分とするサイドバイサイド型複合糸が、少なくとも一部に用いられていることを特徴とする請求項8または9に記載のポリアミド織物。
[請求項11]
湿熱捲縮維持率が30%以上で、乾熱捲縮維持率が50%以上であり、乾熱捲縮維持率/湿熱捲縮維持率で示される捲縮維持率比が1.0以上1.7以下であることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載のポリアミド織物。
[請求項12]
織物緯方向の14.7N/5cm荷重時の伸長率が20%以上であることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載のポリアミド織物。