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1. (WO2015129574) 貫通孔を有する絶縁基板
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明 細 書

発明の名称 貫通孔を有する絶縁基板

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011  

発明の効果

0012   0013   0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053  

実施例

0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 貫通孔を有する絶縁基板

技術分野

[0001]
 本発明は、ビア導体やスルーホール導体を形成するための貫通孔を多数有するセラミック基板に関するものである。

背景技術

[0002]
 SAWフィルター等の電子デバイスを実装するための基板として、セラミック等の絶縁基板に貫通穴を設け、その穴を導体で埋め、貫通電極とする構造の基板(ビア基板)が用いられている。近年は携帯電話に代表される通信機器の小型化に伴い、使用される電子デバイスにも小型化、低背化が求められており、その構成要素であるビア基板についても同様に薄板化が求められている。
[0003]
 更に、こうした基板の貫通孔の直径は、例えば100μm以下とする細径化が求められており、また高密度で多数形成することが求められている。また、保持基板の材質には、配線間のリーク電流を押さえるために高い抵抗が求められる。
[0004]
 このため、ビア基板には、薄板化した際も、生産プロセスにおけるハンドリングに耐えうるだけの強度が必要とされる。一方で、最終的にはダイシングによりビア基板を個片化することから、加工性が良好であることが必要である。
[0005]
 ビア基板の貫通電極は、蒸着、スパッタ等の薄膜プロセスにより作製されるため、凹凸による断線等を避けるためビア基板の表裏面、貫通孔内部が平滑であることが求められる。貫通孔は、焼成前の金型プレス、レーザー加工、焼成後のレーザー加工、ブラスト加工により形成される(特許文献1~3)。
[0006]
 ビア基板の材料としては、アルミナセラミックスが機械的強度、耐熱性、絶縁性等に優れることから、広く使用されている。また、アルミナセラミックスの中でも、特に高純度のものは透光性、耐アルカリ性、耐プラズマ性にも優れることから、高輝度放電灯用の発光管や半導体製造装置の部材、ダミーウエハー等に広く使用されている(特許文献4~7)。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特許4012936
特許文献2 : 特開2013-232546
特許文献3 : 特開2014-57124
特許文献4 : 特開2003-95730
特許文献5 : 特開2001-199761
特許文献6 : 特開2001-64075
特許文献7 : 特開H06-157132

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 アルミナセラミックスを、貫通孔を有する絶縁基板の材質として用い、蒸着、スパッタといった薄膜プロセスで貫通電極を作製する場合、貫通孔内面に粒界による凹凸があると、それが原因となり断線しやすくなる。一方、アルミナセラミックスの粒径を大きくすると、粒界の数が減るため断線は防止できるが、絶縁基板全体の強度が低下する。このため、絶縁基板を薄板化した際のハンドリングが難しくなり、また、絶縁基板作製時の研削、研磨工程やダイシングの際、クラックやチッピングが起こりやすくなる。
[0009]
 特許文献2記載の絶縁基板においては、例えばアルミナセラミックス材料とガラス材料とを混合して焼結させることで絶縁基板を製造しており、このベース基板にレーザ光を照射することで貫通孔を形成している。これによって、絶縁基板の貫通孔に面する内壁面にガラスコーティングを形成し、内壁面を平滑にする。しかし、実際にこうした絶縁基板を作製してみると、貫通孔に面するコーティングの熱膨張係数が、基材であるアルミナセラミックスと異なることから、生産プロセス中および実装後の熱サイクルによって、絶縁基板が破損しやすくなる。
[0010]
 本発明の課題は、導電部形成用の貫通孔を有する絶縁基板において、研削、研磨やダイシング等の加工の際にチッピングやクラックを防止でき、かつ熱サイクルを加えたときにチッピングやクラックを防止できるようにすることである。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明は、導体用の貫通孔が配列されている絶縁基板であって、
 絶縁基板の厚さが25~100μmであり、貫通孔の径が20μm~100μmであり、絶縁基板が、本体部分と、貫通孔に露出する露出領域とを備えており、絶縁基板がアルミナ焼結体からなり、アルミナ焼結体の相対密度が99.5%以上であり、アルミナ焼結体の純度が99.9%以上であり、本体部分におけるアルミナ焼結体の平均粒径が3~6μmであり、露出領域におけるアルミナ焼結体を構成する板状のアルミナ粒子の平均長さが8~25μmであることを特徴とする。

発明の効果

[0012]
 本発明者は、導体形成用の貫通孔を有する絶縁基板を、高純度のアルミナ焼結体によって形成することを検討した。この際、アルミナ焼結体のアルミナ粒子を微細化することで、絶縁基板を薄くしてもその強度を高く維持する必要がある。しかし、こうした絶縁基板に貫通孔を形成すると、貫通孔内壁面に導電膜を形成したときに断線が生じやすくなる。
[0013]
 このため、特許文献2記載のように、絶縁基板を構成するセラミックス中にガラス成分を混合することで、貫通孔に面する内壁面にガラス成分を析出させることも検討した。これによって、貫通孔内壁面に形成する導体の断線を防止できるはずである。しかし、この場合には、絶縁基板に熱サイクルが加わると、クラックやチッピングが発生しやすくなることがわかった。
[0014]
 このため、本発明者は、絶縁基板を構成するアルミナ焼結体の粒子を微細化するのと同時に、できるだけ高純度化し、貫通孔に面する内壁面へのガラス成分の析出を防止した。これと共に、貫通孔に面する内壁面に沿って、板状粒子からなる露出領域を形成した。この結果、研削、研磨やダイシング等の加工の際にチッピングやクラックを防止でき、かつ熱サイクルを加えたときにもチッピングやクラックを防止できることを見いだし、本発明に到達した。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] (a)は、貫通孔2の形成された絶縁基板1を模式的に示す平面図であり、(b)は、貫通孔2の形状異常を示す模式図であり、(c)は、貫通孔2の形成された絶縁基板1を模式的に示す断面図である。
[図2] (a)は、絶縁基板1の貫通孔とその周辺を示す拡大図であり、(b)は、貫通孔、露出領域および本体部分の模式図である。
[図3] 平均粒径の算出例を示す模式図である。
[図4] 貫通孔の周りの板状粒子の平均長さの算出法を説明するための模式図である。
[図5] 図4の模式図に対応する顕微鏡写真である。
[図6] 絶縁基板の好適な製造手順の一例を示すフロー図である。
[図7] 絶縁基板の好適な製造手順の一例を示すフロー図である。
[図8] 熱サイクル試験で適用した温度プロファイルを示す。
[図9] 絶縁基板1の貫通孔とその周辺の拡大写真である。

発明を実施するための形態

[0016]
 以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。
 図1(a)、(c)に示すように、絶縁基板1には一方の主面1aと他方の主面1bとが設けられており、主面1aと1bとの間を貫通する貫通孔2が多数形成されている。
[0017]
 図2に示すように、絶縁基板1は、本体部分5と、本体部分5の貫通孔2に露出する部分に設けられた露出領域4とを備えている。露出領域4は、貫通孔2に面しており、露出領域4の表面が内壁面3を構成している。本体部分5と露出領域4とはアルミナ焼結体からなっており、両者のセラミックス組織は一体化している。
[0018]
 貫通孔内には所定の導体を形成可能である。こうした導体としては、Ag、Au、Cu、Pd、またはその混合物や、これらに少量のガラス成分を混合してペースト化したものを孔内面に充填した後、400~900℃で焼付けして固定化させたものや(ビア導体)、孔の内面にのみ導体を印刷し、同様に焼付けしたもの(スルホール導体)などを例示できるが、導体の形態は特に限定されるものではない。また、基板の主面1a、1bには、所定の配線やパッドなどを形成する。また,絶縁基板は、一体の中継基板とする。
[0019]
 本発明の絶縁基板には、導体用の貫通孔が配列されている。ここで、絶縁基板の厚さT(図2参照)は25~100μmである。絶縁基板のハンドリングに必要な強度の観点からは、絶縁基板の厚さを25μm以上とするが、50μm以上が更に好ましい。
[0020]
 絶縁基板に形成する貫通孔の径W(図1、図2参照)は20μm以上である。この貫通孔径は、成形しやすさの観点からは、25μm以上が更に好ましい。また、貫通孔の密度を上げるためには、貫通孔径Wは、100μm以下とするが、80μm以下が更に好ましい。
[0021]
 隣接する貫通孔2の間隔D(最も近接する貫通孔間の距離)は、破損やクラックを抑制するという観点からは、50μm以上が好ましく、100μm以上が更に好ましい。また、隣接する貫通孔2の間隔Dは、貫通孔の密度を向上させるという観点からは、1000μm以下が好ましく、500μm以下が更に好ましい。
[0022]
 絶縁基板のハンドリングの際の強度を確保するという観点からは、絶縁基板を構成するアルミナ焼結体の相対密度を99.5%以上とするが、99.6%以上とすることが更に好ましい。この上限は特になく、100%であってよい。
[0023]
 この相対密度は気孔率から算出することができる。
 相対密度(%)= 100(%)-気孔率(%)
 本発明においては、以下のようにして気孔率を決定する。
 すなわち、ハンドル基板の断面(接合面に対して垂直な断面)を鏡面研磨、サーマルエッチングし、結晶粒界を際立たせた後、光学顕微鏡写真(200倍)を撮影する。そして、ハンドル基板の厚さ方向(接合面に垂直な方向)に0.1mm、接合面に水平な方向に1.0mmの層状の視野を設定する。そして、各視野について、大きさ0.5μm以上の気孔の総面積を算出し、得られた気孔面積から視野面積比を算出し、気孔率とする。
[0024]
 本発明では、絶縁基板の本体部分5(図2参照)を構成するアルミナ焼結体の粒子5aの平均粒径を3~6μmとする。この平均粒径を6μm以下とすることで絶縁基板の強度を向上させ、後述するような貫通孔の形状異常も抑制できる。この観点からは、本体部分をアルミナ焼結体の平均粒径を5μm以下とすることが更に好ましい。また、平均粒径を3μm以上とすることで、電子デバイス実装後のダイシングの際、チッピングやクラックの発生の防止や、砥石の磨耗を抑えることができる。この観点からは3.5μm以上とすることが更に望ましい。
[0025]
 ここで、本体部分5の結晶粒子5aの平均粒径は以下のようにして測定するものである。
(1) 焼結体の表面を鏡面研磨、サーマルエッチングして粒界を際立たせた後、顕微鏡写真(100~200倍)を撮影し、単位長さの直線が横切る粒子の数を数える。これを異なる3箇所について実施する。なお、単位長さは500μm~1000μmの範囲とする。
(2) 実施した3箇所の粒子の個数の平均をとる。
(3) 下記の式により、平均粒径を算出する。
 [算出式]
    D=(4/π)×(L/n)
   [D:平均粒径、L:直線の単位長さ、n:3箇所の粒子の個数の平均]
[0026]
 平均粒径の算出例を図3に示す。異なる3箇所の位置において、それぞれ単位長さ(例えば500μm)の直線が横切る粒子の個数が22、23、19としたとき、平均粒径Dは、上記算出式により、
D=(4/π)×[500/{(22+23+19)/3}]=29.9μm
となる。
[0027]
 本発明では、絶縁基板の貫通孔への露出領域4(図2参照)を構成するアルミナ焼結体の粒子4の平均長さを8~25μmとする。この平均長さを8μm以上とすることによって、導電膜の断線や抵抗値上昇を防止できる。この観点からは、絶縁基板の貫通孔への露出領域4(図2参照)を構成する焼結体の平均長さを10μm以上とすることが更に好ましい。
[0028]
 また、絶縁基板の貫通孔への露出領域4を構成する焼結体の平均長さを25μm以下とすることによって、熱サイクル印加時のクラックを防止できる。この観点からは、絶縁基板の貫通孔への露出領域4を構成する焼結体の平均長さを15μm以下とすることが更に好ましい。
[0029]
 ここで、露出領域4の板状粒子4aの平均長さは以下のようにして測定するものである。
 図4は、粒子の平均長さの算出法を説明するための模式図であり、図2(a)に対応している。ただし、図4では、絶縁基板が横向きになっている。図5は、図4に対応する写真である。
[0030]
 絶縁基板を貫通孔部で割断し、割断面より孔内面の顕微鏡写真(200倍)を撮影し、単位長さの直線Sが横切る粒子の長さを測定する。これを異なる3箇所について実施し、3本の直線が横断した粒子の長さの平均を平均長さとする。
[0031]
 例えば図4の例において、粒子1~10の長さの平均値を平均長さとする。
 ここで、前記直線Sは、貫通孔の中心軸C(図2(a))と平行に絶縁基板の表面から裏面へと向かって貫通するように引くものとする。そして、前記の「単位長さ」は、基板の厚さTと等しくする。
[0032]
 絶縁基板の露出領域4の板状粒子の厚さAは、結晶4aが少なくとも一層存在すれば良く、具体的には少なくとも0.5μm以上とし、好ましくは1~3μmとする。
 また、板状粒子4のアスペクト比は、2.5以上であることが好ましく、10以上であることが更に好ましい。ただし、板状粒子4のアスペクト比とは、前記平均長さ/厚さAのことである。
[0033]
 本発明においては、絶縁基板を構成するアルミナ焼結体のアルミナ純度は99.9%以上とする。これによって、貫通孔に面する露出領域におけるガラス成分の析出を防止できる。
[0034]
 アルミナ焼結体のアルミナ純度は、粉末状に粉砕した試料を硫酸で加圧酸分解により溶解し、その溶解液をICP発光分光分析法にて分析することで決定する。
[0035]
 好適な実施形態においては、絶縁基板を構成するアルミナ焼結体に焼結助剤としてジルコニアが200~800質量ppm、マグネシアが150~300質量ppmおよびイットリアが10~30質量ppm添加されている。こうした構成によって、前述した純度、気孔率、相対密度を確保しつつ、粗大な気泡の生成を抑制し、後述の貫通孔の形状異常を防止でき、しかもアルミナ焼結体の絶縁破壊電圧は50kV/mm以上と非常に高くすることができるので、微細な貫通孔を形成しても絶縁破壊が生じにくい。サファイアの絶縁破壊電圧は47kV/mmであり、通常のアルミナ焼結体の絶縁破壊電圧は12kV/mmである。更に、本アルミナ焼結体の誘電正接は、サファイアと同等であり、通常のアルミナ焼結体の誘電正接よりはるかに低く、例えば10分1程度である。
[0036]
 本実施形態において、絶縁基板を構成するアルミナ焼結体におけるジルコニアの添加量は300質量ppm以上が更に好ましく、また、600質量ppm以下が更に好ましい。また、絶縁基板を構成するアルミナ焼結体におけるマグネシアの添加量は200質量ppm以上が更に好ましく、また、280質量ppm以下が更に好ましい。また、絶縁基板を構成するアルミナ焼結体におけるイットリアの添加量は12質量ppm以上が更に好ましく、また、20質量ppm以下が更に好ましい。
[0037]
 アルミナ基板に貫通孔を多数形成した場合には、貫通孔の形状異常が生ずることがある。例えば、図1(b)に示すように、こうした貫通孔2が一方に向かって膨れ、膨れ部3が形成されることがあった。
[0038]
 こうした膨れ部3の形態および寸法について検討した結果、緻密質のアルミナ焼結体中にも残留している粗大な気孔に起因するボイドが、比較的微細な貫通孔2に連結し、一体化したものと考えられた。こうしたボイドは、径10μm以上の粗大な気孔に起因するものである。
[0039]
 本発明者は、こうした知見に基づき、緻密質アルミナ焼結体の材質について更に検討した。この基板には多数の貫通電極を形成することから、高抵抗を実現するため、高純度のアルミナ焼結体を採用することは望ましい。しかし、これと同時に、絶縁基板の本体部分を構成する焼結体の平均粒径が3~6μm、相対密度が99.5%以上となるように制御することで、径10μm以上の粗大な気孔を抑制し、貫通孔の形状異常を防止できる。
[0040]
 絶縁基板に貫通孔を形成する方法は、特に限定されない。例えば、絶縁基板のグリーンシートにピンやレーザー加工によって貫通孔を形成することができる。あるいは、アルミナ焼結体からなるブランク基板を製造した後に、ブランク基板にレーザー加工によって貫通孔を形成することもできる。
[0041]
 図6、図7は、それぞれ、本発明の絶縁基板を製造するのに適した手順を例示するフロー図である。
[0042]
 まず、アルミナ成形体用のスラリーを作製する。
 好ましくは純度99.9%以上(更に好ましくは99.95%以上)の高純度アルミナ粉末に対して前述のような焼結助剤の粉末を添加する。このような高純度アルミナ粉末としては、大明化学工業株式会社製の高純度アルミナ粉体を例示できる。
[0043]
 多結晶セラミック焼結体の成形方法は特に限定されず、ドクターブレード法、押し出し法、ゲルキャスト法など任意の方法であってよい。特に好ましくは、基板を、以下のようなドクターブレード法を用いて製造する。
[0044]
(1) セラミック粉体とともに、結合剤となるポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)、または、アクリル樹脂を、可塑剤、分散剤と共に分散媒中に分散してスラリーを調製し、ドクターブレード法にて、テープ状に成形した後、分散媒を乾燥させてスラリーを固化させる。
[0045]
(2) 1枚で所望の厚さが得られない場合は、薄いテープを複数枚積み重ね、プレス積層またはCIP積層することで所望の厚みの基板形状の成形体を得る。
[0046]
 ここで、図6の例では、成形体の段階でパンチプレスまたはレーザー加工することによって、成形体に多数の貫通孔を成形し、孔の内面にアルミナ粒子を有機溶剤に分散させたペーストを塗布しておく。この際、ペーストに含まれるセラミック成分をアルミナ粒子のみとし、前述の焼結助剤は添加しないでおく。これにより、孔の内面付近の焼結助剤の濃度が下がり粒成長が促進され、孔の露出領域の粒子を大きくすることができる。ペーストの塗布方法としてはスクリーン印刷法によるスルホール印刷、ディップ法、スプレー法等、により実施することができる。図7の例では、成形体に貫通孔を形成する必要はない。
[0047]
 次いで、成形体を、好ましくは大気中で仮焼し、次いで、水素中で本焼成する。本焼成時の焼結温度は、焼結体の緻密化という観点から、1500~1900℃が好ましく、1550~1750℃が更に好ましい。
[0048]
 また、上記焼成の際は、モリブデン等の高融点金属からなる平坦な板の上に基板を置きその上にモリブデン等の板を載せ、基板を上下から挟み込む形で行うことが更に好ましい。これにより焼結助剤の排出が抑制され、粒成長を抑えることができる。
[0049]
 また、焼成時に十分に緻密な焼結体を生成させた後に、更に追加でアニール処理を実施することで反り修正を行うことができる。このアニール温度は、変形や異常粒成長発生を防止しつつ、焼結助剤の排出を促進するといった観点から焼成時の最高温度±100℃以内であることが好ましく、最高温度が1900℃以下であることが更に好ましい。また、アニール時間は、1~6時間であることが好ましい。このアニールの際、基板の貫通孔該当箇所に孔をあけたモリブデン等の板を載せ、貫通孔の内部を水素ガスが流れやすくしておくことで、貫通孔の露出領域の粒成長を促進させることができる。
[0050]
 こうして得られたブランク基板を粗研磨加工する。次いで、図4の例では、既に貫通孔の成形が終わっているので、主面のRaを小さくすることを目的に精密研磨加工を行うことができる。こうした精密研磨加工としては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)加工が一般的であり。これに使われる研磨スラリーとして、アルカリまたは中性の溶液に30nm~200nmの粒径を持つ砥粒を分散させたものが使われる。砥粒材質としては、シリカ、アルミナ、ダイヤ、ジルコニア、セリアを例示でき、これらを単独または組み合わせて使用する。また、研磨パッドには、硬質ウレタンパッド、不織布パッド、スエードパッドを例示できる。
[0051]
 また、最終的な精密研磨加工を実施する前の粗研磨加工を実施した後にアニール処理を行うこともできる。アニール処理の雰囲気ガスは大気、水素、窒素、アルゴン、真空を例示できる。アニール温度は1200~1600℃、アニール時間は2~12時間であることが好ましい。これにより、表面の平滑を損ねることなく、焼結助剤の排出を促進することができる。
[0052]
 図7の例では、成形体に貫通孔を形成せず、焼結後のブランク基板を粗研磨した後に、ブランク基板に貫通孔をレーザー加工によって形成する。レーザー加工は、以下のようにして行うことが好ましい。
[0053]
 短パルス化したレーザーを基板表面に照射することにより、貫通孔を形成する。パルス幅は一般的にミリ秒(1/1e-3秒)以下が使用される。また、レーザー源として、気体(CO2)や固体(YAG)が用いられる。レーザー装置内に転写用のマスクを配置し、基板表面へレーザーを導入することで、目的とする孔の形状を得ることができる。孔径および孔の形状はマスク径、レーザー出力、パルス幅、ショット数により調整することができる。これらの内、マスク径、レーザー出力、パルス幅により孔径を調整し、基板を貫通するのに最小必要数をショット数として設定するのが一般的であるが、基板貫通後もショットを繰り返すことで、露出領域の粒径のコントロールが可能となる。
実施例
[0054]
(実施例1)
 図7を参照しつつ説明した手順に従って、本発明の絶縁基板を作製した。
 具体的には、以下の成分を混合したスラリーを調製した。
(原料粉末)
 ・比表面積3.5~4.5m /g、平均一次粒子径0.35~0.45μmのα-アルミナ粉末(アルミナ純度99.99%)
         100質量部
 ・MgO(マグネシア)       250pppm
 ・ZrO (ジルコニア)       400ppm
 ・Y (イットリア)        15ppm
(分散媒)
 ・2-エチルヘキサノール          45重量部
(結合剤)
 ・PVB樹脂                4重量部
(分散剤)
 ・高分子界面活性剤             3重量部
(可塑剤)
 ・DOP                0.1重量部
[0055]
 このスラリーを、ドクターブレード法を用いて、焼成後の厚さに換算して0.25mmとなるようテープ状に成形し、焼成後の大きさに換算して、□100mmとなるよう、4辺を切断した。得られた粉末成形体を、大気中1240℃で仮焼(予備焼成)の後、基板をモリブデン製の板に載せ、水素3:窒素1の雰囲気中で1300℃から1550℃での昇温速度を50℃/hとして、1550℃で2.5時間保持し、焼成を行い、ブランク基板を得た。
[0056]
 このブランク基板を以下の条件でレーザー加工することによって、以下の寸法の貫通孔を形成した。

 CO レーザー:波長   10.6μm  
 パルス:1000Hz- On time 5μs
 レーザーマスク径:   0.9 mm
 ショット回数: 40回
 貫通孔系W:      0.05 mm
 貫通孔の間隔D:    0.12 mm
[0057]
 次いで、大気中1300℃で5時間アニール処理を行い、グラインダーによる研削、ダイヤモンド砥粒によるラップ、CMPリキッドによる研磨を順に行った。
[0058]
 具体的には、グラインダーによる研削を行った後、グリーンカーボンによる両面ラップ加工により形状を整え、次いでダイヤモンドスラリーによる両面ラップ加工を実施した。ダイヤモンドの粒径は3μmとした。最後にSiO 砥粒とダイヤモンド砥粒によるCMP加工を実施し、洗浄を実施し、絶縁基板1を得た。
[0059]
 得られた絶縁基板の各部位の粒径を確認したところ、貫通孔に面する露出領域4では、孔内面を覆うような板状結晶4aが形成されていた。以下は、得られた基板1の特性である。

 露出領域4における平均長さ:10μm
 本体部分における平均粒径: 3.5μm
絶縁破壊電圧:  測定平均 75kV/mm
 絶縁基板1の厚さ:    80μm
 貫通孔2の径W:      40 μm
 絶縁基板のアルミナ純度: 99.9%
 相対密度:        99.6%
 気孔率:         0.4%
 抵抗率:        10E14  Ω・cm
 貫通孔の間隔D:     200  μm
 貫通孔の個数:        2500  個/cm 2
 径10μm以上の気孔の密度: 0.0%
[0060]
 得られた絶縁基板の貫通孔について、異常の有無を確認したところ、形状の異常やクラック、破損は見つからなかった。
 また得られた基板を貫通孔部分で割断し、その周囲の粒子の状態をSEMで観察(図9)したところ、貫通孔内壁の板状粒子の厚みは、場所による差は見られるが、0.5~5μmの範囲であった。また、貫通孔内壁の板状粒子のアスペクト比は2.5~20であった。
 次いで、得られた基板の表裏面、および貫通孔内面に蒸着による金属膜を形成した後、ダイシングにより□2mmの大きさに個片化した。その後、金属膜の断線有無、ダイシングによるクラック、チッピングの有無、および、熱衝撃試験後の貫通孔部のクラック、チッピングの有無の評価を行い、結果を表1に示す。ただし、10個のサンプルについてそれぞれ試験を行った。
[0061]
(ダイシング条件)
 砥石回転数=30000rpm
 砥石の送り速度=80mm/sec
 砥石粒度=SD325(レジンボンド)
 砥石幅=0.15mm
(熱衝撃試験条件)
 温度プロファイルを図8に示す。
 昇温速度=40℃/min(RT~最高温度)
 最高温度=350℃×0.5分
 降温速度=-30℃/min(最高温度~100℃):100℃以降は自然冷却
[0062]
(実施例2~5)
 実施例1と同様の方法により実験を行った。ただし、焼成温度、レーザー加工条件、アニール条件、貫通孔のレーザー加工条件を調整し、表1に示す各種粒径の基板を作成し、実施例1と同様の評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。貫通孔内壁の板状粒子の厚みは、いずれも0.5~5μmの範囲であった。また、貫通孔内壁の板状粒子のアスペクト比は2.5~20であった。
[0063]
(比較例1)
 実施例1と同様の方法により作成した。ただし、アルミナ原料粉末として、純度96%のアルミナ原料を用いた。
 得られた基板を実施例1と同様に評価し、評価結果を表2に示した。
[0064]
(比較例2~10)
 実施例1と同様の方法により実験を行った。ただし、焼成温度、レーザー加工条件、アニール条件、貫通孔のレーザー加工条件を調整し、表1に示す各種粒径の基板を作成し、実施例1と同様の評価を行った。得られた評価結果を表2、表3に示す。
[0065]
[表1]



[0066]
[表2]


[0067]
[表3]



[0068]
 実施例では、断線不良、ダイシング後のクラックとチッピング、熱衝撃試験後のクラックとチッピングは見られないか、あるいは非常に少なかった。また、貫通孔の形状異常も見られなかった。
[0069]
 比較例1では、絶縁基板の貫通孔に面する露出領域にガラス成分が析出していた。この結果、断線不良は防止されていたが、ダイシング後のクラックとチッピング、熱衝撃試験後のクラックとチッングが多かった。
[0070]
 比較例2では、露出領域における板状粒子の平均長さが6μmと小さいが、断線不良、ダイシング後のクラックが多い。
 比較例3では、露出領域における板状粒子の平均長さが30μmであり、本体部分における平均粒径が8μmであるが、ダイシング後のクラック、熱サイクル後のクラックが多い。
 比較例4では、本体部分における平均粒径が15μmであるが、ダイシング後のクラックとチッピングおよび熱衝撃試験後のクラックとチッピングが共に多い。
 比較例5では、露出領域における平均長さが30μmであるが、熱衝撃試験後クラックが多い。
 比較例6では、露出領域における板状粒子の平均長さが35μmであり、本体部分における平均粒径が2μmであるが、ダイシング後のクラックが多い。
 比較例7では、アルミナ純度が98%であり、本体部分における平均粒径が1μmであるが、ダイシング後クラックが多い。
[0071]
 比較例8では、露出領域における板状粒子の平均長さが15μmであり、本体部分における平均粒径が8μmであるが、ダイシング後のクラック、熱サイクル後のクラックが多い。
 比較例9では、露出領域における板状粒子の平均長さが15μmであり、本体部分における平均粒径が1μmであるが、ダイシング後のクラックが多い。
 比較例10では、露出領域における板状粒子の平均長さが6μmであり、本体部分における平均粒径が5μmであるが、断線不良が多い。

請求の範囲

[請求項1]
 導体用の貫通孔が配列されている絶縁基板であって、
 前記絶縁基板の厚さが25~100μmであり、前記貫通孔の径が20μm~100μmであり、前記絶縁基板が、本体部分と、前記貫通孔に露出する露出領域とを備えており、前記絶縁基板がアルミナ焼結体からなり、前記アルミナ焼結体の相対密度が99.5%以上であり、前記アルミナ焼結体の純度が99.9%以上であり、前記本体部分における前記アルミナ焼結体の平均粒径が3~6μmであり、前記露出領域における前記アルミナ焼結体を構成するアルミナ粒子が板状をなしており、板状の前記アルミナ粒子の平均長さが8~25μmであることを特徴とする、貫通孔を有する絶縁基板。
[請求項2]
 前記貫通孔がレーザー加工によって形成されていることを特徴とする、請求項1記載の絶縁基板。
[請求項3]
 前記アルミナ焼結体の成形時に前記貫通孔が成形されていることを特徴とする、請求項1記載の絶縁基板。
[請求項4]
 前記アルミナ焼結体に焼結助剤としてジルコニアが200~800質量ppm、マグネシアが150~300質量ppmおよびイットリアが10~30質量ppm添加されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載の絶縁基板。
[請求項5]
 前記アルミナ焼結体の絶縁破壊電圧が50kV/mm以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つの請求項に記載の絶縁基板。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]