明 細 書
技術分野
[0001]
本発明は、生後から首がすわるまでの新生児を、室内において抱っこする際、授乳する際、および入浴する際に用いる保育用具に関するものである。
背景技術
[0002]
従来、生後から首がすわるまでの新生児を抱っこする際の方法は、主に保育者が両手で新生児を抱きかかえるというものである。その際、保育者と新生児の体格差は大きく、その上新生児は身体の発達が未熟であるので、新生児の扱いには慎重を要している。保育者は常に新生児の姿勢が安全に安定しているように、抱き方を工夫しなければならない。
[0003]
抱っこを補助するための保育用具として、スリングが用いられることもある。
[0004]
母乳を授乳する際の方法は、母親が直接新生児を抱っこし、両手で新生児の体重を支えながら、新生児の口元を母親の乳首の位置に維持し続けるというものである。
[0005]
抱き方の工夫として、クッションが用いられることもある。母親は膝の上にクッションを置き、その上に新生児を置いて授乳する。
[0006]
あるいは、スリングを用いて抱っこし、授乳することもある。
[0007]
なお、スリング以外の抱っこ紐やベビーキャリー等は新生児の授乳には用いることは出来ない構造をしている。
入浴の際の方法は、大人用とは浴槽を分ける必要があるため、ベビーバスを使用している。新生児を直接湯船に入れ、保育者は片方の手で新生児の頭部を支え、もう一方の手で身体を洗って入浴させる。
その他、入浴を楽に行う方法として、特別な形状に設計されたベビーバスや、洗面台に設置して使う設計のベビーバス等や、ベビーバスと併用して用いる入浴補助用具が知られている。以下に代表的な例を挙げる。
先行技術文献
非特許文献
[0008]
非特許文献1 : 商品名「ベビーレーベルサポートバス」:製造社「コンビ社」
非特許文献2 : 商品名「新生児用ふんわりバスネット」:製造社「永和社」
非特許文献3 : 商品名「伸縮ベビーバスタブ」:製造社「アイリスショーワ社」
非特許文献4 : 商品名「バスサポートチェア」:製造社「エンジェルケア社」
非特許文献5 : 商品名「沐浴タブ」:製造社「パジ社」
非特許文献6 : 商品名「安心柔らか沐浴マット」:製造社「赤ん坊カンパニー社」
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0009]
保育者が新生児を抱っこする際には、両者の体格差が大きいうえ、新生児は身体の発達が未熟であるため、保育者は常に新生児の姿勢が安定した状態である様に配慮し、新生児に合わせた姿勢に自分の姿勢を維持し続けなければならない。そのために抱きにくさがあり、抱っこ時には疲労感を感じている。
[0010]
さらに授乳時の抱っこにおいては、母親は新生児の口に乳首をあてがうために前のめりの姿勢を取っている。授乳は、1日に昼夜を問わず約8回に及び、母親は、新生児の体重を支えながら、約20分間、この姿勢を維持し続けなければならない。そのために授乳は大変な疲労を伴う作業となっている。
[0011]
疲労感を軽減するために授乳クッションを用い、「座った母親の膝上にクッションを置き、その上に新生児を乗せて、新生児の口と、乳首の位置を近づける」という方法が行われている。しかしこの方法では、母親が新生児の口の位置に合わせて前のめりの姿勢を維持しなければならない点は改善されず、疲労軽減のために充分効果があるとは言えない。
[0012]
これらの方法に対し、スリングを用いて授乳する方法では、スリングを使用することによって、新生児の体重を母親の腕のみで支える必要が無くなる。しかも母親の乳首の位置に合わせて新生児を抱き寄せることが出来、母親本位の姿勢で授乳することが出来る。無理のある前のめりの姿勢を取り続ける必要が無く、疲労感は軽減される。
[0013]
しかしスリングを用いて行う授乳には、2点の問題点がある。
[0014]
その1点は、スリングは装着する際に手間を必要とするという点である。スリングで抱っこするためには、まず環状にしたスリングを保育者の一方の肩から他方の脇の下にゆったりと斜め掛けにする。次にポーチ部に新生児を収納し、その後スリングの生地を絞って全体を整える。3段階の手間であるが、スリングは長く幅のある1枚布で構成されているので、扱いにくい。保育者の身体と新生児がフィットするように装着するには、ある程度の要領の良さと時間を要する。そのため新生児は授乳の際、空腹に泣きながら、母親がスリングを整えるまで待たなければならない。昼夜を問わない1日約8回に及ぶ授乳のたびにスリングを装着することは、母親と新生児の、両者の精神的ストレスとなっている。
[0015]
もう1点の問題点は、ポーチ部に収納された新生児が、授乳にふさわしくない姿勢になってしまうという点である。スリングの布は柔らかく、新生児の頭部から胴体を真っ直ぐな姿勢に保持する機能が無い。そのため、新生児は自分自身の体重によって沈下し、胸部、腹部に圧迫感のある丸まった姿勢になってしまう。この姿勢は胎内にいる時と同様であるため、問題は無いとする意見はあるが、やはり授乳時には避けるべきであると考える。
[0016]
以上のように、抱っこは育児に不可欠な保育行為であるが、直接抱っこすることも、また授乳クッション、スリング等補助用具を用いる事も、程度の差はあるが保育者と新生児のストレスを伴っている。保育者にも新生児にも、使用時のストレスを感じさせない、使用方法が簡便で使用感が楽な抱っこ用保育用具が望まれている。
[0017]
また、生後間もない新生児の入浴については、大人と浴槽を分けて行う必要があるため、ベビーバスが使用されている。通常入浴はベビーバスを浴室の床上に置き、直接新生児を湯船に入れるという方法で行われる。この時保育者は前かがみの姿勢を取り、片方の手で新生児の頭部を支え、もう一方の手で身体を洗って入浴させる。そのため新生児を支える手は新生児の体重による負担があり、前かがみの姿勢を維持しなければならないため、腰や背中の疲労が大きい。
[0018]
入浴補助用具として、上記「先行技術文献」に挙げた保育用具が販売されている。これらの保育用具を、新生児の安全で快適な入浴、保育者の疲労の軽減という観点から検証してみると、次の事が指摘できる。
「非特許文献1」について
ベビーバスの底部が新生児の身体を安定して保持する設計となっている。そのため、次の問題点がある。
1・サポート部がベビーバスの底部に設計されているため、使える湯量が少なく、冷めやすい。
2.背中を洗うために体位移動をさせる際、少ない湯量の中での移動は難しく、新生児に負担がかかる。
「非特許文献2」について
ネット状の補助用具を座椅子状にプラスチック製のベビーバスに取り付け、新生児を斜めに座らせた状態で入浴させることが出来る。
1.ネット状補助用具をプラスチック製のバスの縁に掛けて使用するため、ベビーバスの材質を選ばなければならない。空気を入れて使うビニールタイプのバスには使用できない。
2.ネットの雑菌の繁殖を防ぐため、使用後すぐに洗って乾燥させる必要がある。
「非特許文献3」について
ベビーバスのシンク部の形状が座椅子状になっている。
1.シンク部の形状が座椅子状であるため、使える湯量が少なく冷めやすい。
2.座椅子状であるため、背中を洗うためのうつ伏せに出来ない。上半身を起こして洗うことは出来るが、その際足の逃げ場がなく窮屈である。
「非特許文献4」について
背中、お尻を乗せるところがメッシュ状になった浴室用座椅子。
1.座椅子であるため、体を温めるためのベビーバスが別に必要である。
2.湯船の中でないため、浮力の助けを得ることが出来ず、背中を洗う際、新生児に負担がかかる。
3.メッシュ状部分の雑菌を防ぐため、使用後すぐに洗って乾燥させる必要がある。
「非特許文献5」について
座椅子状に組み立てて、洗面台に設置して使用する。
1.座椅子状であるため、使える湯量が少なく冷めやすい。
2.座椅子状に形成されているため、背中を洗うためのうつ伏せに出来ない。上半身を起こしたとき、足の逃げ場がなく窮屈である。
「非特許文献6」について
洗面台に設置しても、浴室の床上に設置しても使用できる沐浴用マットである。
1.材質がスポンジであるため、使用後スポンジ内に水分が残り、雑菌が繁殖する。そのため清潔感に欠ける。
2.使用後乾燥させて清潔を保つために労力を要する。
[0019]
上記検証を踏まえると、従来の保育用具には次の様な課題がある。
1.非特許文献1、3、5、6のように、使える湯量が少ないと、新生児の体位移動の際、お湯の浮力が小さく、新生児に負担がかかる。湯温も冷めやすく、冬場には風邪をひかせてしまう恐れがある。そのため新生児にとってストレスの多い入浴となる。
2.非特許文献2、4、6のように、清潔を保つために労力を要する材質であると、手入れの為に保育者の負担が増す。
3.非特許文献1、2、3、5、6は、新生児を扱う際、保育者がベビーバスの構造、位置に合わせて体勢を作る必要がある。保育者本位の姿勢がとりにくい。そのため腰や背中の疲労感がある。
[0020]
上記指摘部分が改善されて、保育者にとっても新生児にとっても快適な、
ストレスの少ない入浴が出来るようになる入浴用保育用具が望まれている。
課題を解決するための手段
[0021]
首がすわるまでの新生児の、身体発達の未熟さに由来する姿勢保持の不安定さを補助すること、および保育者と新生児の間の体格差を補うことが出来る保育用具であって、保育用具である。
[0022]
新しく考える保育用具は、新生児の頭部から胴体下部までの背面と、臀部と臀部体側部、大腿部後側を安定保持する構造で、おおむね新生児の身体のつくりに沿って形作られ、座椅子状である。保育用具からの脱落を防止する機能、保育者が安全に扱うための機能もその構造に組み込むことが出来る。薄くて軽く、強度がある材料で形成され、新生児の身体にフィットし、新生児を抱っこした時の圧迫感や入浴時の不安定感から、新生児を守る。その表面には柔軟性、摩擦性、耐水性、耐熱性、耐アレルギー性のある加工が施され、保育者が扱いやすく、新生児にとって安全であるように配慮されている。
[0023]
以後、この保育用具を「だっこ籠Y」と呼び、形状が座椅子と類似していることから、新生児をだっこ籠Yに入れる事を「座らせる」と表現する。
発明の効果
[0024]
だっこ籠Yによる抱っこによれば、新生児はだっこ籠Yによって安定保持される。新生児は身体発達が充分でなく、姿勢を保持する能力が未熟であるが、だっこ籠Yに座らせることで安定した状態を維持できる。新生児はだっこ籠Yを介して抱っこされるが、だっこ籠Yは強度のある材料で形成されているため、直接抱っこされているときの様な圧迫感や不安定感から守られている。新生児は座椅子に座った時の様に背中を伸ばした状態を保つことが出来、スリングによる抱っこの様に、丸まった姿勢にはならない。新生児の身体にフィットした、強度のある座椅子状の形状によって、どのように抱っこしても、新生児はだっこ籠Y内で安定保持される。
また、保育者は、新生児の体格に合わせるのではなく、自分の体格や姿勢に合わせて、だっこ籠Yを抱き寄せて持つことが出来る。そのため小さな新生児の体格に合わせて無理な姿勢を維持する必要が無くなる。
だっこ籠Yは、床上に置いて使用する新生児用チェアの脚の様な、付属物はついていない構造である。軽くて薄く、新生児の身体にフィットしたシンプルな構造をしているため、保育者は気軽にだっこ籠Yを抱きかかえることが出来る。保育者は直接に新生児を抱っこするのではなく、だっこ籠Yを介して抱っこする事によって、抱っこ時のストレスが軽減される。
[0025]
使用に際しては、「だっこ籠Yに新生児を座らせ、だっこ籠Yごと保育者の胸元に抱き寄せる」という動作で行う。簡便な使用方法で、スリングの装着の様に、使用時の煩わしさを感じることが無い。しかも薄くて軽いため、直接新生児を腕だけで抱っこするような使用感に近い。使用方法が簡便で、使用感が軽いため、常用しやすく、常用することによってストレスを感じる機会が減り、疲労は軽減される。
新生児の入浴ついては、非常に慎重を要する作業である。耳・鼻・口にお湯が入らないように、不安定な首に注意を払い、頭部を支えて新生児の身体を洗わなければならない。この姿勢維持は保育者にとって無理を強いられる姿勢であり、背中や腰の疲労を招いている。しかし、だっこ籠Yを使用することによってこの作業を楽に行うことが出来る。
[0026]
だっこ籠Yに新生児を座らせて入浴させるが、だっこ籠Yを使用することによって、保育者は直接新生児の頭部を支えなくても、新生児を洗うことが出来るようになる。新生児を座らせただっこ籠Yを片手で支えて、もう一歩の手で身体を洗うか、あるいは新生児を座らせただっこ籠Yをベビーバスに固定して、両手で新生児を洗うが、二通りの使用方法が出来る。どちらの方法も、新生児の耳に水が入らないように、新生児の耳を塞いでいる必要が無い。その結果、新生児の頭部を支えるための、無理のある姿勢を維持する負担が軽減され、背中、腰の疲労が軽減される。
[0027]
だっこ籠Yの使用後の管理については、その表面全体には耐水加工が施されているため、お湯で流した後水分を拭き取るだけで、清潔を保つことが出来る。非特許文献2、4、6のように、使用後の管理に労力を要することは無い。
図面の簡単な説明
[0028]
[図1] 図1は、本発明の保育用具を示す斜視図である。
[図2] 図2は、本発明の保育用具を示す正面図である。
[図3] 図3は、本発明の保育用具を示す側面図である。
[図4] 図4は、本発明の保育用具を示す縦方向断面図である。
[図5] 図5は、本発明の保育用具であるだっこ籠Yに座った新生児の座り方(座り方1、実施例1)を示す説明図である。
[図6] 図6は、本発明の保育用具であるだっこ籠Yに座った新生児の座り方(座り方2、実施例2)を示す説明図である。
[図7] 図7は、本発明の保育用具のデザイン例を示す説明図である。
[図8] 図8は、本発明の保育用具を使用して新生児を入浴させている状態を示す(実施例3)斜視図である。
[図9] 図9は、本発明の保育用具を使用して新生児の背中を洗う状態を示す(実施例4)説明図である。
[図10] 図10は、本発明の保育用具とスリングとの併用例を示す(実施例5)説明図である。
[図11] 図11は、本発明の保育用具の安全ベルトの使用例を示す(実施例6)説明図である。
[図12] 図12は、だっこ籠Y専用ベビーバスとだっこ籠Yとの併用例1を示す(実施例7)説明図である。
[図13] 図13は、だっこ籠Y専用ベビーバスとだっこ籠Yとの併用例2を示す(実施例8)説明図である。
[図14] 図14は、だっこ籠Y専用ベビーバスとだっこ籠Yとの併用例3を示す(実施例9)説明図である。
[図15] 図15は、実施例9のだっこ籠Y専用ベビーバスを示す斜視図である。
[図16] 図16は、実施例9の反り部を示す斜視図である。
[0029]
全体の主な構成は、図1、2に示すように、生後から首がすわるまでの新生児の、頭部から胴体下部までの背面を、身体のつくりに沿って安定保持する背もたれ部Aと、臀部、臀部体側部、大腿部後側を身体のつくりに沿って安定保持する座面部Bと、背もたれ部Aの両側部の中ほどに、背もたれ部Aから続いて隆起し、新生児の横方向への脱落を防ぐための胴体安定保持部Cと、背もたれ部Aの上端部に背もたれ部Aから続いて背面側へ反って成る反り部Dと、臀部から大腿部後側へと続く座面部Bの背面側のカーブ上で、だっこ籠Yをベビーバスで使用の際に支点となる部分に設けられた滑り止め部Iとで成っており、おおむね座椅子状に構成されている。
[0030]
背もたれ部Aは、縦方向の形状は、平坦、あるいは新生児の身体のつくりに沿う、頭部と胴体の収まりが良い緩い曲面の組み合わせで形作られている。首がすわるまでの新生児の、少なくとも後頭部から胴体下部までを保持する。横方向の形状も、平坦か、あるいは新生児の身体のつくりに沿って頭部と胴体の収まりが良い緩い曲面の組み合わせで形作られている。横方向の幅は、新生児の頭部、胴体を安定保持することが出来る幅である。
[0031]
座面部Bは、背もたれ部A下部から続いて形成されており、新生児の臀部、臀部体側部、大腿部後側のつくりに沿う、緩い曲面状に形作られている。新生児の臀部、臀部体側部、大腿部後側を包むように安定保持し、かつ新生児を自然な姿勢で座らせることが出来るような形状に形作られている。
[0032]
座面部Bの両側部には、図1に示す様に、新生児が自然な体位で座るための空き部Eを設けても良い。新生児は両足を揃えて座ると股関節脱臼を起こしやすいが、空き部Eを設ける事によって本来の体位を妨げずに座らせることが出来る。
[0033]
背もたれ部Aの中ほどには、背もたれ部Aから続いて胴体安定保持部Cが隆起している。新生児の不安定な横方向移動を制限し、だっこ籠Yから横方向に脱落することを防ぎ、胴体を安定保持する。隆起の高さは新生児の胴体の厚み程度の高さで、縦方向は、新生児の母乳授乳を妨げず、座面部Bの両側部に空き部Eを設ける事を妨げない位置に設ける。あるいは、胴体安定保持部Cは、背もたれ部Aから隆起して、そのまま空き部Eを設けずに、座面部Bの臀部体側部を保持する部分に続いても良い。
[0034]
上記胴体安定保持部Cと空き部Eは、図7に示すように、だっこ籠Yに求める機能によっては、設けなくても良い。胴体安定保持部Cと空き部Eを設けないデザインは、保育者にとっては入浴の際に身体を洗いやすく、また新生児にとっては蒸れにくい。図7に示すだっこ籠Yは、安全ベルトの通す穴Hも示している。
[0035]
反り部Dは、図3に示すように、背もたれ部Aの上端部からだっこ籠Yの背面側に反っているような形状で成っている。その大きさは、保育者がだっこ籠Yを安全に取り扱うために、反り部Dに保育者が手を掛けることが出来る大きさである。
また、だっこ籠Yをベビーバスと併用する場合に、両手を空けることが出来る様にするために、だっこ籠Yをベビーバスに固定する使い方も出来る。そのために反り部Dは、図12に示すように、ベビーバスにだっこ籠Yを固定するための連結フックKに反り部Dを掛けること、あるいは図13に示すように、だっこ籠Y専用ベビーバスの掛け口Lに反り部Dを掛けること、あるいは図16に示すように、反り部Dに穴Pを設けることが出来る、形状と大きさである。具体的には、上端部から2~3センチ程度の長さで、約90度の角度をとって背面側に反っている形状である。
[0036]
背もたれ部Aには、図2に示すように、新生児を安定保持するための安全ベルトを通す通す穴H1~H4を設けても良い。その位置は、図2に示すH1、H2、H3、H4の4か所で、新生児の両肩、胴体の両体側部にあたる部分である。図11に示す様に、安全ベルトJはX状の形状に作られ、その4本のベルトの端がだっこ籠Yの背面から4か所の通す穴を通って前面に出され、新生児の胴体上で接合され、新生児の身体をしっかりと保持し、新生児がだっこ籠Yの上方向および横方向から脱落することを防ぐ。
[0037]
座面部Bの、臀部から大腿部後側へと続く背面側のカーブ上には、図3に示すように、滑り止め部Iが設けられている。滑り止め部Iはだっこ籠Yをベビーバスで用いる際にだっこ籠Yの支点となる部分で、だっこ籠Yとベビーバスの間の摩擦を大きくし、だっこ籠Yが滑ることを防ぐ。
[0038]
穴Pは、ベビーバスQに設けた突起部O(図15に示す)にだっこ籠Yの反り部Dを掛けて、だっこ籠Yを固定するための穴である。穴Pは、反り部Dと背もたれ部Aの上部に設ける。穴Pを設けたために反り部Dの強度が損なわれないように、また、だっこ籠Yを安定させて掛けることが出来る様に、穴の大きさを工夫することが必要である。強度と安定が得られれば、穴Pは、反り部D部分だけに設けても良い。
[0039]
材質については、図4に示すように、保育者が直接抱っこしているような使用感を得られるように、薄く、軽量で、しかも新生児を乗せても安全である強度を併せ持っている材料で作ることが必要である。例えば圧延アルミ板等の軽金属、強化プラスチック等を用いる。これらの材料で成形し、これを本体Fとする。
[0040]
本体Fには表面加工Gを施す。表面加工Gの材料は、新生児にとって使用感の良い柔軟性と、使用の際に新生児とだっこ籠Yの間の摩擦で新生児が不安定に移動することを防ぐ効果を得られる摩擦性と、保育者がだっこ籠Yを滑らせずに持つことが出来る効果を得られる摩擦性を有する材料であることが必要である。さらに入浴にも使用するため、耐水性、耐熱性、耐アレルギー性の性質を併せ持った材料であることも必要である。例えば、ポリプロピレンやウレタン、ナイロンである。特に耐アレルギー性については法令上の規制に適合した、人体に対する無害性に対処された材料を使用する。
[0041]
さらに、情操に好影響となる、色彩やデザインを施しても良い。
上記の仕様で作られた抱っこ籠の使用方法であるが、抱っこする際には、新生児を抱っこ籠に座らせて、その状態のまま保育者の胸元にだっこ籠Yを抱き寄せる。だっこ籠Yを介して、新生児を抱っこする。授乳についても同様である。
[0042]
だっこ籠Yを使用する入浴においては、だっこ籠Yはベビーバスに固定しても、固定しなくても使用することが出来る。固定する場合の例を挙げる。
図1に示すだっこ籠Yを、図12に示す様に、ベビーバスM(断面を示す)に幅広のS字状のフックK(断面を示す)を用いて、連結して用いる。このようにだっこ籠Yをベビーバスに固定することによって、手で支える必要が無くなる。
あるいは、図13に示す様に、だっこ籠Yを掛けるための掛け口LをベビーバスNに設け、ここにだっこ籠Yの反り部Dを掛けて固定することもできる。
[0043]
あるいは、図14に示すように、ベビーバスQにだっこ籠Yを固定するための突起部Oを設け、だっこ籠Yの反り部Dには穴Pを設けて、突起部Oに穴Pを掛けて固定する。
あるいは、ベビーバスQの突起部Oにかえて、そり部Dに嵌合する凹部を設け、ここにそり部Dをはめ込んで固定する。この凹部には、凹部中央に係合部を設け、そこにそり部Dの穴Pを係合させて固定してもよい。この場合は、新生児の入浴後にベビーバスQを裏返して保管、収納する際に、突起部Oが無いので邪魔にならない。
これらの方法を行うベビーバスM、N、Qは、成形されたプラスチック製で、シンクの形状は角丸四角柱様のものである。
次に新生児の洗い方であるが、まずだっこ籠YをベビーバスM、N、Qに固定する。その後だっこ籠Yに新生児を座らせて、身体の前側を洗う。
背中を洗うには、だっこ籠Yをベビーバスに固定した状態で、片方の手をだっこ籠Yと新生児の首の間に差し入れて頭部を支え、もう片方の手で新生児の胸部と片方の脇の下を支えて、その状態で新生児の上半身を縦に起こしながら、胸部を支えている方の手にうつ伏せに受け止める。頭部を支えていた手で、後頭部、背中、臀部を洗う。
あるいは、だっこ籠Yを使用する入浴では、だっこ籠Yをベビーバスに固定せず、新生児を座らせただっこ籠Yの背もたれ部Aの背面側を片手で支え、もう片方の手で新生児の身体を洗っても良い。この様に使用することによって、保育者は、だっこ籠Yをベビーバスに固定して用いる入浴、およびだっこ籠Yを用いない入浴に比べ、保育者本位の姿勢を取って入浴作業を行うことが出来る。そのため背中や腰の負担が軽減される。
以上のように、だっこ籠Yを使用した入浴では、保育者は、両手を使って新生児を洗うことが出る、あるいは、保育者本位の姿勢を取ることが出来るために、背中や腰などの疲労が軽減される。新生児には、安定した状態で、たっぷりの湯につかることが出来るため温かく快適で、充分な湯量による浮力の助けも得られ、体位移動が楽である。両者にとってストレスの少ない入浴となる。
[0044]
以上がだっこ籠Yの形態説明と使い方であるが、新生児の身体の大きさの個体差や、成長、だっこ籠Yに求める機能や、使用する季節に応じて、数種類のデザインや大きさのだっこ籠Yを用意することが望ましい。
[0045]
なお、成長には座らせ方を変える事によって対応することが出来る。図5に示すように、新生児の身体が小さいうちは、脚以外の身体がすっぽり入るように座らせる。図6に示すように、成長に伴い窮屈になれば、手をだっこ籠Yの外に出してゆったりと座らせることが出来る。
[0046]
本発明は、新生児の抱っこ、授乳、入浴の際に使用することによって、保育者にも新生児にも、肉体的、精神的ストレスを感じさせにくい保育用具であって、生後すぐから首がすわるまでの時期の新生児の保育用具に適用できる。
符号の説明
[0047]
A 背もたれ部
B 座面部
C 胴体安定保持部
D 反り部
E 空き部
F 本体
G 表面加工
H、H1、H2、H3、H4 通す穴
I 滑り止め部
J 安全ベルト
K 連結フック
L 掛け口
M ベビーバス
N ベビーバス
O 突起部
P 穴
Q ベビーバス
請求の範囲
[請求項1]
生後から首がすわるまでの新生児の、抱っこ、授乳、入浴に兼用できる室内用保育用具であって、頭部から胴体下部までの背面を安定保持する背もたれ部Aと、臀部と臀部体側部と大腿部後側を安定保持する座面部Bと、背もたれ部Aの最上端部から続いて背面側に反って成る反り部Dから成る保育用具であって、前記背もたれ部Aの形状は、平坦、あるいは新生児の身体のつくりに沿って、後頭部と胴体背面部が収まる曲面の組み合わせで形作られ、前記座面部Bは、前記背もたれ部A下部から続いて形成され、その座面部Bの形状は、新生児の身体のつくりに沿って臀部、臀部体側部、大腿部後側が収まる曲面状に形作られており、前記反り部Dは、ベビーバスに当該保育用具を掛けること、かつ保育者の手を掛けることが出来る形状を成して形成されている保育用具。
[請求項2]
背もたれ部Aの両側部の中ほどに、背もたれ部Aから続いて隆起して成り、新生児が授乳することを妨げず、かつ新生児が自然な姿勢で座ることを妨げない形状と位置に設けられた、新生児の横方向への脱落を防ぐための胴体安定保持部Cを備えた請求項1に記載の保育用具。
図面