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1. (WO2015129342) 研磨用組成物
Document

明 細 書

発明の名称 研磨用組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

発明の概要

0007   0008   0009   0010   0011   0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112  

実施例

0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : 研磨用組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、研磨用組成物に関し、特にコバルト元素を含む層の溶解抑制効果の高い研磨用組成物に関する。

背景技術

[0002]
 近年、LSI(Large Scale Integration)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;以下、単にCMPとも記す)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線(ダマシン配線)形成において頻繁に利用される技術である。ダマシン配線技術は、配線工程の簡略化や、歩留まりおよび信頼性の向上が可能であり、今後適用が拡大していくと考えられる。
[0003]
 CMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を研磨剤で浸し、基板の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から所定の圧力(以下、単に研磨圧力とも記す)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨剤と金属膜の凸部との機械的摩擦によって、凸部の金属膜を除去するものである。
[0004]
 ところで、現在、ダマシン配線としては、低抵抗であることから配線金属として銅が主に用いられており、銅は今後DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表されるメモリデバイスにも使用が拡大されると考えられる。そして、ダマシン配線を形成する導電性物質(銅や銅合金等)の下層には、層間絶縁膜中への導電性物質の拡散防止のためにバリア層が形成される。当該バリア層を構成する材料としては、従来、タンタル、タンタル合金、またはタンタル化合物等が用いられてきた(たとえば、特開2001-85372号公報および特開2001-139937号公報)。
[0005]
 近年、配線の微細化傾向に伴い、良好な状態で銅のメッキをすることが難しく、ボイド(局所的にいかなる物質も存在しない現象)が発生するという現象が起きている。
[0006]
 そこで、上記不都合を解決するため、近年では、バリア層と銅の間に、銅と馴染みやすいコバルト元素やコバルト化合物を含む層を使用することで密着性を補う検討がなされている。

発明の概要

[0007]
 ダマシン配線技術では、一般に、トレンチが設けられた絶縁体層上にバリア層、金属配線層を形成した後、配線部分以外における余分な配線材(金属配線層)およびバリア層をCMPにより取り除く操作が行われる。
[0008]
 しかしながら、近年では、上述の通り、コバルト元素を含む層を用いたダマシン配線技術が検討されており、コバルト元素を含む層をCMPにより研磨する際、コバルトが溶解しやすいという問題が生じている。より詳細には、ダマシン配線技術において、余分な金属配線層およびバリア層を除去するためにCMPを行う際、コバルト元素を含む層が溶解し、表面にピットや腐食が生じてしまうという問題があった。このように、CMPを行う際にコバルト元素を含む層にピットや腐食が生じてしまうと、コバルト元素を含む層の機能が損なわれる虞がある。
[0009]
 よって、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨する際、コバルト元素を含む層の溶解を抑制することができる研磨用組成物が求められている。
[0010]
 したがって、本発明は、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨する際、コバルト元素を含む層の溶解を抑制することができる研磨用組成物を提供することを目的とする。
[0011]
 上記課題を解決すべく、本発明者は鋭意研究を積み重ねた。その結果、特定の有機化合物群から選択されるコバルト溶解抑制剤と、pH調整剤と、を含み、pHが4以上12以下である、研磨用組成物を使用することで、上記課題が解決されうることを見出した。より詳細には、コバルト溶解抑制剤として、エーテル結合を有する有機化合物、ヒドロキシ基を有する有機化合物、カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を用いることで、コバルトの溶解が効果的に抑制されるという知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
[0012]
 すなわち、本発明は、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、コバルト溶解抑制剤と、pH調整剤と、を含み、pHが4以上12以下であり、前記コバルト溶解抑制剤は、エーテル結合を有する有機化合物、ヒドロキシ基を有する有機化合物、カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、研磨用組成物である。

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明は、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、コバルト溶解抑制剤と、pH調整剤と、を含み、pHが4以上12以下であり、前記コバルト溶解抑制剤は、エーテル結合を有する有機化合物、ヒドロキシ基を有する有機化合物、カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、研磨用組成物である。このような構成とすることにより、コバルト元素を含む層の溶解を効果的に抑制することができる。
[0014]
 バリア層等を構成するコバルトは、一般的なバリア層(および金属配線層)の研磨条件下において溶解してしまうため、本発明者は、コバルト溶解抑制剤として種々の化合物を検討した。その結果、驚くべきことに、エーテル結合を有する有機化合物、ヒドロキシ基を有する有機化合物、カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を研磨用組成物に添加した際に、優れたコバルトの溶解抑制効果が得られることを見出した。そのメカニズムは以下のように説明されるが、以下のメカニズムは推測によるものであり、本発明は下記メカニズムに何ら限定されるものではない。
[0015]
 バリア層等を構成するコバルトは、一般的なバリア層(および金属配線層)の研磨条件である弱酸性~アルカリ性(およそpHが4以上12以下の領域)である場合、研磨時に使用される水等により酸化されやすい。その結果、表面が酸化されたコバルトは、CMPを行う際、溶解しやすくなっていると考えられる。
[0016]
 このとき、層中に含まれるコバルトの最表面は、ヒドロキシ基(-OH)、酸素原子(O)、または酸素イオン(O 2-)等で被覆された状態であると推測される。一方、本発明で用いられるコバルト溶解抑制剤は、エーテル結合、ヒドロキシ基、およびカルボキシル基の少なくとも一つを有するため、これらの構造(官能基)が、コバルトの最表面にあるヒドロキシ基、酸素原子または酸素イオン等に対し、水素結合により強固に化学吸着しやすい。よって、酸化されたコバルトの最表面に対して上記特定の構造(官能基)を有する有機化合物が化学吸着することにより、当該有機化合物が層表面を被覆する被覆膜(不動態膜)の役割を果たすことができる。その結果、層の溶解、研磨を効果的に抑制することができると考えられる。
[0017]
 しかしながら、本発明者は、カルボキシル基を有する有機化合物であっても、コバルト溶解抑制剤として使用できないものがあることもまた見出し、さらに検討を進めた。その結果、カルボキシル基を有する有機化合物のうち、分子量が130以上であるものであれば、コバルト溶解抑制剤として有効に機能することが判明した。この点については、以下のように推測される。
[0018]
 カルボキシル基等の酸性基を有する有機化合物のうち、分子量の小さなものは、一般的に酸性度が高い(pKaが小さい)傾向にある。酸性度が高い有機化合物は、CMPにおいてコバルトを溶解させてしまうため、コバルト溶解抑制剤として機能できないことがある。したがって、カルボキシル基を有する有機化合物をコバルト溶解抑制剤として用いる場合は、酸性度が比較的低い化合物を用いる必要がある。ここで、カルボキシル基等の酸性基を有する有機化合物は、一般に、分子量が大きくなるにつれて、その酸性度は低くなる(pKaが大きい)傾向にある。したがって、カルボキシル基を有する有機化合物の分子量を130以上とすることにより、酸化されたコバルト表面に吸着しながらも、自身の酸性度によってコバルトを溶解させることがないため、コバルトの溶解を抑制する効果を得ることができる。
[0019]
 したがって、以上より、本発明によれば、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨する際、コバルト元素を含む層の溶解を抑制することができる研磨用組成物が提供される。
[0020]
 本発明に係る研磨用組成物、これを用いた研磨方法および基板の製造方法について、詳細を以下に説明する。
[0021]
 [研磨対象物]
 まず、本発明に係る研磨対象物および半導体配線プロセスの一例を説明する。半導体配線プロセスは、通常、以下の工程を含む。
[0022]
 まず、基板上に、トレンチを有する絶縁体層を形成する。続いて、当該絶縁体層の上に、バリア層、コバルト元素を含む層、金属配線層を順次に形成する。なお、本明細書中、「コバルト元素を含む」とは、層においてコバルト元素が含まれる態様を示すものであり、層中のコバルトは、単体であってもよいし、コバルト酸化物、コバルト化合物、コバルト合金の形態で存在していてもよい。
[0023]
 バリア層およびコバルト元素を含む層は、金属配線層の形成に先立って、絶縁体層の表面を覆うように絶縁体層の上に形成される。それらの層の形成方法は特に制限されず、たとえば、スパッタ法、めっき法等の公知の方法により形成することができる。バリア層及びコバルト元素を含む層の厚さはトレンチの深さおよび幅よりも小さい。金属配線層は、バリア層及びコバルト元素を含む層の形成に引き続いて、少なくともトレンチが埋まるようにバリア層の上に形成される。金属配線層の形成方法は特に制限されず、たとえば、スパッタ法、めっき法等の公知の方法により形成することができる。
[0024]
 次に、CMPにより、配線部分以外の余分な金属配線層、コバルト元素を含む層およびバリア層を除去する。その結果、トレンチの中に位置するバリア層の部分(バリア層の内側部分)の少なくとも一部、トレンチの中に位置するコバルト元素を含む層の部分(コバルト元素を含む層の内側部分)の少なくとも一部およびトレンチの中に位置する金属配線層の部分(金属配線層の内側部分)の少なくとも一部が絶縁体層の上に残る。すなわち、トレンチの内側にバリア層の一部、コバルト元素を含む層の一部および金属配線層の一部が残る。こうして、トレンチの内側に残った金属配線層の部分が、配線として機能することになる。なお、これら金属配線層、コバルト元素を含む層、バリア層のCMPによる研磨方法の詳細は後述する。
[0025]
 バリア層は他の金属を含んでもよい。当該他の金属の例としては、例えば、タンタル、チタン、タングステン;金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等の貴金属等が挙げられる。これら他の金属は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
[0026]
 金属配線層に含まれる金属は特に制限されず、たとえば、銅、アルミニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、チタン、タングステン等が挙げられる。これらの金属は、合金または金属化合物の形態で金属配線層に含まれていてもよい。好ましくは銅、または銅合金である。これら金属は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
[0027]
 次に、本発明の研磨用組成物の構成について、詳細に説明する。
[0028]
 [コバルト溶解抑制剤]
 本発明の研磨用組成物は、コバルト溶解抑制剤を含む。コバルト溶解抑制剤は、上述の通り、CMPを行う際、コバルトが溶解してしまうことを抑制する目的で添加される。本発明において、コバルト溶解抑制剤は、エーテル結合を有する有機化合物、ヒドロキシ基を有する有機化合物、カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である。
[0029]
 なお、本明細書中、「有機化合物」とは、炭素原子および水素原子を含むすべての化合物を総称するものであって、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族化合物および芳香族化合物を例示することができる。また、本明細書中、「塩」とは、陽イオンと陰イオンが電荷を中和する形で生じた化合物を意味する。本発明において、塩は、研磨用組成物中、一部または全部が解離した状態で存在していてもよく、そのように塩が解離した状態で存在することを含めて、「塩を含有する」と表現する。また、コバルト溶解抑制剤としての有機化合物は、エーテル結合、ヒドロキシ基、カルボキシル基から選択される二つ以上の構造(官能基)を有するものであってもよい。ただし、カルボキシル基を一つ以上有する有機化合物は、エーテル結合、ヒドロキシ基を含んでいても、カルボキシル基を有する化合物に分類されるものとする。したがって、たとえば、ヒドロキシ基およびカルボキシル基の両方を有する化合物である場合は、カルボキシル基を有する有機化合物に分類される。
[0030]
 コバルト溶解抑制剤は、上記特定の構造(官能基)を有するものであれば、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。なお、本明細書中、「低分子化合物」とは、その分子量が400未満である化合物を指す。低分子化合物の分子量は、化学式を基に算出することができる。また、「高分子化合物」とは、その分子量が400以上であるものを指す。高分子化合物の分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法や光散乱法による測定が一般的であるが、本明細書においては、分子量(重量平均分子量)は、標準物質としてポリスチレン、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC法により測定した値を示すものとする。
[0031]
 本発明におけるコバルト溶解抑制剤は、親水性基であるエーテル結合、ヒドロキシ基もしくはカルボキシル基またはこれらの塩と、炭素-炭素結合を含む有機骨格を有する疎水性基を有する有機化合物である。このように、親水性基および疎水性基を有する有機化合物は、コバルトを含む層に吸着する際、疎水性相互作用により、親水性基が基板(コバルトを含む層)側、疎水性基が研磨液中に並ぶように配向し、分子膜が形成されると考えられる。よって、このような疎水性基を研磨液側に向けた分子膜は、密に並びやすく、疎水性基が大きくなるほど、より密な分子膜が形成されるため、CMPに用いる研磨液中で強固な防食膜として機能する傾向があると推測される。したがって、コバルト溶解抑制剤としての有機化合物の分子量は特に制限されるものではないが、大きいほど、高いコバルト溶解抑制効果を発揮することができる傾向にある。
[0032]
 エーテル結合またはヒドロキシ基を有する有機化合物は、酸性基を含まないものであれば、コバルトを溶解させることがないか、またはコバルトを溶解させても、特に問題とならない程度である。分子量は有機化合物の酸性度に影響する要素の一つであるが、上記エーテル結合またはヒドロキシ基を有する有機化合物の分子量は、特に制限されない。酸性基を含まず、エーテル結合またはヒドロキシ基を有する有機化合物をコバルト溶解抑制剤として用いる場合、当該有機化合物の分子量の下限は特に制限されないが、疎水性基によって密な分子膜を形成するという観点から、50以上であると好ましく、60以上であるとより好ましく、100以上であるとさらにより好ましい。また、上述の通り、分子量は大きいほど好ましいため、その上限は特に制限されないが、実質的には、1000000以下である。
[0033]
 また、エーテル結合またはヒドロキシ基を有する有機化合物であって、かつ酸性基(ただし、カルボキシル基を除く)を含むものは、コバルトを溶解させることがあるため、酸性度を低くし、コバルトの溶解を抑制する目的から、その分子量は大きい方が好ましい。具体的には、化合物中に含まれる酸性基の種類にも依存するが、当該有機化合物の分子量の下限は、100以上であると好ましく、130以上であるとより好ましく、150以上であるとさらにより好ましい。また、その上限は特に制限されないが、実質的には、1000000以下である。
[0034]
 なお、本明細書中、特に断りのない限り、「酸性基」とは、解離性のプロトンを有する置換基であり、pKaが11以下である。たとえば、ホスホニル基、ホスホリル基、スルホ基、ホウ酸基等の酸性を示す基である酸基が挙げられる。
[0035]
 カルボキシル基を有する有機化合物をコバルト溶解抑制剤として用いる場合、上述のように、その分子量の下限は130以上である。疎水性基によって密度の高い分子膜を形成する観点から、その分子量は大きいほど好ましく、分子量の下限は、140以上であると好ましく、150以上であるとより好ましく、180以上であるとさらにより好ましく、200以上であると特に好ましい。一方、分子量の上限は特に制限されないが、実質的には、1000000以下である。
[0036]
 なお、上記分子量は、有機化合物が塩の形態をとっている場合は、上記特定の構造(官能基)が塩を形成する前の有機化合物の分子量を指すものとする。
[0037]
 本発明に係る研磨用組成物において、コバルト溶解抑制剤として好ましく用いられる有機化合物の具体的な例を以下に説明する。
[0038]
 エーテル結合を有する有機化合物としては、特に制限されないが、たとえば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、tert-アミルエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグリム、トリグリム、フラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロメチルフラン、ジオキソラン等の脂肪族エーテル;メトキシベンゼン、エトキシベンゼン等の芳香族エーテル;γ-ブチロラクロン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、δ-ヘキサラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン等のラクトン類;セルロース、プルラン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート等の高分子化合物が挙げられる。なかでも、上記エーテル結合を有する有機化合物は、ポリオキシエチレン構造および/またはポリオキシプロピレン構造を有していると好ましい。かような構造を有する有機化合物は、酸素原子およびエチレン鎖またはプロピレン鎖によって密な分子膜が形成しやすく、コバルトの溶解を抑制する効果が高いため、好ましい。よって、上記有機化合物の中でも、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート等が好ましい。また、水溶性が高く、研磨時に扱いやすいという観点からは、フラン、テトラヒドロフラン、γ-ノナラクトン、プルラン等が好ましい。
[0039]
 また、ヒドロキシ基を有する有機化合物は、ヒドロキシ基と共に、さらにエーテル結合を含んでいる構造であってもまた好適である。すなわち、前記コバルト溶解抑制剤は、エーテル結合を有すると共にヒドロキシ基を有する有機化合物であると好ましい。エーテル結合およびヒドロキシ基を有する構造を有する有機化合物は、密な分子膜を形成することができるため、コバルトの溶解を抑制する効果が高い。かような有機化合物としては、セルロース、プルラン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート等が挙げられる。
[0040]
 ヒドロキシ基を有する有機化合物としては、特に制限されないが、たとえば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-ドデシルアルコール、n-ステアリルアルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、(2-エトキシ)-エトキシエタノール等の脂肪族アルコール;フェノール、α-ナフトール、β-ナフトール等の芳香族アルコール;ポリビニルアルコール等のアルコール系重合体が挙げられる。なかでも、前記ヒドロキシ基を有する有機化合物は、アルコール骨格またはフェノール骨格を有していると好ましい。かような構造を有する化合物は、コバルトの溶解を抑制する効果が高いため、好ましい。よって、上記有機化合物の中でも、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、フェノール、ポリビニルアルコール等が好ましい。これらの有機化合物は、水溶性が高く、研磨時に扱いやすいという観点からもまた好ましい。
[0041]
 カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物としては、たとえば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸、ロジン酸(アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等)等の飽和または不飽和脂肪酸(R COOH;R は炭素原子数7~20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはシクロアルキニル基);フェニル酢酸、ケイ皮酸、メチルケイ皮酸、ナフトエ酸等の炭素原子数7~20の芳香族カルボン酸;アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の二価の飽和または不飽和脂肪酸(HOOC-R -COOH;R は炭素原子数7~20のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基またはシクロアルキニレン基);フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の炭素原子数8~21の二価の芳香族カルボン酸等;が挙げられる。なかでも、水溶性が高く、研磨時に扱いやすいという観点から、ラウリン酸、オレイン酸、ロジン酸(特にアビエチン酸)等が好ましい。
[0042]
 本発明の研磨用組成物において、コバルト溶解抑制剤として用いることができる塩としては、有機化合物中に含まれる上記特定の構造(官能基)、すなわち、エーテル結合、ヒドロキシ基、カルボキシル基が塩となった化合物である。すなわち、上記特定の構造(官能基)を有する化合物に由来する陰イオンと、当該陰イオンと対になる陽イオン(カウンターイオン)との組み合わせが挙げられる。したがって、かような塩としては、たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の一価の金属塩;アンモニウム塩;アルコールアミン塩、アルキルアミン塩等のアミン塩が好ましく例示できる。これらの塩の中でも、ラウリル酸カリウム、ラウリル酸アンモニウム、ラウリル酸トリエタノールアミン塩がさらにより好ましい。
[0043]
 上記有機化合物またはその塩は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
[0044]
 以上より、本発明の研磨用組成物においてコバルト溶解抑制剤として用いられる化合物は、フラン、テトラヒドロフラン、γ-ノナラクトン、プルラン、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、フェノール、ポリビニルアルコール、ラウリン酸、オレイン酸、アビエチン酸、ラウリル酸カリウム、ラウリル酸アンモニウム、ラウリル酸トリエタノールアミン塩およびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートからなる群より選択される、少なくとも1種であると好ましい。これらのなかでも、コバルト溶解抑制剤は、ラウリン酸、オレイン酸、ラウリル酸カリウムおよびラウリル酸アンモニウムからなる群より選択される、少なくとも1種であると好ましい。
[0045]
 なお、上記具体例の中には、以下で詳述する他の成分として挙げた化合物群と重複するものが記載されているが、そのような化合物が研磨用組成物に含まれる場合、当該化合物はコバルト溶解抑制剤として含まれているものとする。
[0046]
 上記化合物の中でも、コバルト溶解抑制剤は、酸化されたコバルト表面に対し、より吸着しやすい傾向があるという理由から、カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物またはその塩であると好ましい。
[0047]
 さらに、分子構造上、疎水性基を研磨溶液中に配向させて分子膜を形成しやすい(自己配列により、強固な分子膜を形成しやすい)という観点から、カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物は、上述のように、親水性基としてカルボキシル基を有するとともに、疎水性基となる有機骨格を持った構造が好ましい。また、カルボキシル基は、エーテル結合の酸素原子やヒドロキシ基と比較して、特にコバルト表面に対して吸着しやすいため、カルボキシル基を有する有機化合物は、より強固な分子膜を形成することが可能となる。このとき、カルボキシル基によりコバルト表面に吸着した有機化合物は、カルボン酸コバルト(たとえば、ラウリン酸コバルト)のような不溶性の塩を形成するため、コバルト表面に良好な不動態膜が形成され、コバルトの溶解(腐食)を効果的に防止することができる。
[0048]
 本発明の研磨用組成物中のコバルト溶解抑制剤の含有量(濃度)は、層中の酸化されたコバルト表面を十分に覆うことができる量であれば、特に制限されず、極めて少量であってもその効果を発揮することができる。コバルト溶解抑制剤が低分子化合物である(具体的には、分子量が400未満である)場合、コバルト溶解抑制剤の含有量(濃度)の下限は、0.0001g/L以上であることが好ましく、0.0005g/L以上であることがより好ましく、0.001g/L以上であることがさらにより好ましい。0.0001g/L以上とすることにより、層表面をコバルト溶解抑制剤が十分に被覆し、コバルト溶解の抑制効果を十分に発揮することができる。また、本発明の研磨用組成物中のコバルト溶解抑制剤は、その量が多いほどコバルトの溶解を抑制する効果が高く、その含有量(濃度)の上限は、特に制限されない。しかしながら、コバルトの溶解を抑制する効果が高いものは、それと同時にコバルトの研磨速度が低下する傾向にある。したがって、経済的な観点や、コバルトの研磨速度を必要以上に低下させないという観点から、コバルト溶解抑制剤の含有量の上限は、10g/L以下であることが好ましく、5g/L以下であることがより好ましく、0.5g/L以下であることがさらに好ましい。この範囲であれば、本発明の効果をより効率的に得ることができる。なお、二種以上のコバルト溶解抑制剤を使用する場合は、これらのコバルト溶解抑制剤の総量が上記範囲であると好ましい。
[0049]
 また、コバルト溶解抑制剤が高分子化合物である(具体的には、分子量が400以上である)場合、コバルト溶解抑制剤の含有量(濃度)の下限もまた、特に制限されず、極めて少量であってもその効果を発揮することができるが、0.001g/L以上であることが好ましく、0.005g/L以上であることがより好ましく、0.01g/L以上であることがさらに好ましい。0.001g/L以上とすることにより、層表面をコバルト溶解抑制剤が十分に被覆し、コバルト溶解の抑制効果を十分に発揮することができる。また、本発明の研磨用組成物中のコバルト溶解抑制剤は、多いほどコバルトの溶解を抑制する効果が高く、その含有量(濃度)の上限は、特に制限されない。しかしながら、上記と同様に、経済的な観点や、コバルトの研磨速度を必要以上に低下させないという観点から、コバルト溶解抑制剤が高分子化合物である場合、10g/L以下であることが好ましく、5g/L以下であることがより好ましく、0.5g/L以下であることがさらに好ましい。この範囲であれば、本発明の効果をより効率的に得ることができる。なお、二種以上のコバルト溶解抑制剤を使用する場合は、これらのコバルト溶解抑制剤の総量が上記範囲であると好ましい。
[0050]
 さらに、コバルト溶解抑制剤として低分子化合物と高分子化合物とを併用する場合には、コバルト溶解抑制剤の含有量(濃度)は、上記高分子化合物を用いた場合の好ましい含有量(濃度)とすると好ましい。
[0051]
 本発明に係る研磨用組成物に含まれるコバルト溶解抑制剤は、下記特性を有していると好ましい。具体的には、コバルト溶解抑制剤について腐食量を評価する際の電気量が35mC/cm /min未満となる化合物であると好ましい。当該電気量は、コバルトの溶解量に比例するものであり、その値が小さいことは、コバルトの溶解が抑制されていることを意味する。
[0052]
 よって、上記測定による電気量は、その値が小さいほどコバルトの溶解が抑制されるという点で好ましく、その上限は、30mC/cm /min以下であるとより好ましく、25mC/cm /min以下であるとさらに好ましく、15mC/cm /min以下であると特に好ましい。一方で、当該電気量が小さいほど、コバルトの溶解は抑制されることを示す一方で、コバルトを含む層の研磨速度が低下する。よって、上記電気量は、0.01mC/cm /min以上であると好ましい。上記範囲とすることにより、コバルトの溶解を抑制することができると共に、十分なコバルトの研磨速度を得ることができる。なお、上記電気量の値は、実施例中に記載の方法により測定された値を指すものとする。
[0053]
 [pH調整剤]
 本発明の研磨用組成物のpHは、4以上12以下である。pHが4未満であると、コバルトの溶解を抑制しきれないという不都合がある。一方、pHを12超とすると、研磨剤として添加している砥粒が溶解するという不都合がある。なお、本明細書中「pH」は液温(25℃)において堀場製作所製の型番F-72のpHメータを使って測定した値を言うものとする。
[0054]
 前記コバルト溶解抑制剤の効果をより得やすくするために、該pHの下限は、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上、さらに好ましくは5.0以上である。また、コバルト溶解抑制剤の効果を十分に発揮するため、該pHの上限は、好ましくは12.0以下、より好ましくは11.0以下、さらに好ましくは10.5以下である。
[0055]
 前記pHは、pH調整剤を適量添加することにより、調整することができる。pH調整剤を添加することにより、研磨用組成物のpHを調整し、これにより、研磨対象物の研磨速度や砥粒の分散性等を制御することができる。該pH調整剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、pH調整剤は酸および塩基のいずれであってもよく、また、無機化合物および有機化合物のいずれであってもよい。
[0056]
 酸の具体例としては、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-安息香酸、グリコール酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸および乳酸などのカルボン酸(ただし、分子量が130未満のもの)、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸等の有機硫酸等の有機酸等が挙げられる。
[0057]
 塩基の具体例としては、アンモニア、エチレンジアミンおよびピペラジンなどのアミン、ならびにテトラメチルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。これらpH調整剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
[0058]
 これらの中でも、入手容易性等の観点から、pH調整剤は、酢酸、硫酸、硝酸、テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であると好ましい。
[0059]
 なお、上記具体例の中には、以下で詳述する他の成分として挙げた化合物群と重複するものが記載されているが、そのような化合物が研磨用組成物に含まれる場合、当該化合物はpH調整剤として含まれているものとする。
[0060]
 pH調整剤の含有量は特に制限されず、所望のpHが実現される量を用いればよい。なお、本発明のコバルト溶解抑制剤は、少量であってもその効果を十分に発揮するため、pH調整剤として、通常コバルトの溶解を促進してしまう有機酸(酢酸等)を用いた場合であっても、十分にコバルトの溶解を抑制する効果を発揮することができる。
[0061]
 [他の成分]
 本発明の研磨用組成物は、必要に応じて、水、砥粒、防腐剤、防カビ剤、酸化剤、還元剤、研磨促進剤、金属防食剤、水溶性高分子、界面活性剤、難溶性の有機物を溶解するための有機溶媒等の他の成分をさらに含んでもよい。以下、好ましい他の成分である、水、砥粒、酸化剤、研磨促進剤および金属防食剤について説明する。
[0062]
 〔水〕
 本発明の研磨用組成物は、上記各成分を分散または溶解するための分散媒または溶媒として水を含んでいると好ましい。他の成分の作用を阻害することを抑制するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましく、具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水が好ましい。
[0063]
 〔砥粒〕
 本発明に係る研磨用組成物は、砥粒を含むことができる。研磨用組成物中に含まれる砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨する作用を有し、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を向上させる。
[0064]
 使用される砥粒は、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。該砥粒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、該砥粒は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
[0065]
 これら砥粒の中でも、シリカが好ましく、特に好ましいのはコロイダルシリカである。
[0066]
 砥粒は表面修飾されていてもよい。通常のコロイダルシリカは、酸性条件下でゼータ電位の値がゼロに近いために、酸性条件下ではシリカ粒子同士が互いに電気的に反発せず凝集を起こしやすい。これに対し、酸性条件でもゼータ電位が比較的大きな負の値を有するように表面修飾された砥粒は、酸性条件下においても互いに強く反発して良好に分散する結果、研磨用組成物の保存安定性を向上させることになる。このような表面修飾砥粒は、例えば、アルミニウム、チタンまたはジルコニウムなどの金属あるいはそれらの酸化物を砥粒と混合して砥粒の表面にドープさせることにより得ることができる。
[0067]
 なかでも、特に好ましいのは、有機酸を固定化したコロイダルシリカである。研磨用組成物中に含まれるコロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、例えばコロイダルシリカの表面に有機酸の官能基が化学的に結合することにより行われている。コロイダルシリカと有機酸を単に共存させただけではコロイダルシリカへの有機酸の固定化は果たされない。有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。あるいは、カルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。また特開平4-214022号公報に開示されるような、塩基性アルミニウム塩または塩基性ジルコニウム塩を添加して製造したカチオン性シリカを砥粒として用いることもできる。
[0068]
 砥粒の平均一次粒子径の下限は、5nm以上であることが好ましく、7nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。また、砥粒の平均一次粒子径の上限は、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度は向上し、また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に研磨キズ(スクラッチ)が生じるのをより抑えることができる。なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて算出される。
[0069]
 研磨用組成物中の砥粒の含有量の下限は、組成物の総量に対して、0.001g/L以上であることが好ましく、0.01g/L以上であることがより好ましく、0.05g/L以上であることがさらに好ましく、0.1g/L以上であることが最も好ましい。また、研磨用組成物中の砥粒の含有量の上限は、500g/L以下であることが好ましく、300g/Lであることがより好ましく、100g/L以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物の研磨速度が向上し、また、研磨用組成物のコストを抑えることができ、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面にディッシングが生じるのをより抑えることができる。
[0070]
 〔酸化剤〕
 本発明に係る研磨用組成物は、酸化剤を含むことができる。酸化剤は研磨対象物の表面を酸化する作用を有し、研磨用組成物中に酸化剤を加えた場合には、研磨用組成物による研磨速度が向上する利点がある。
[0071]
 使用可能な酸化剤は、例えば過酸化物である。過酸化物の具体例としては、例えば、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩などのハロゲン元素のオキソ酸塩ならびに過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩が挙げられる。なかでも過硫酸塩および過酸化水素が研磨速度の観点から好ましく、水溶液中での安定性および環境負荷への観点から過酸化水素が特に好ましい。
[0072]
 研磨用組成物中の酸化剤の含有量は、0.1g/L以上であることが好ましく、より好ましくは1g/L以上、さらに好ましくは3g/L以上である。酸化剤の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物による研磨速度が向上する利点がある。
[0073]
 研磨用組成物中の酸化剤の含有量はまた、200g/L以下であることが好ましく、より好ましくは100g/L以下、さらに好ましくは40g/L以下である。酸化剤の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストを抑えることができるのに加え、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる利点がある。また、酸化剤による研磨対象物表面の過剰な酸化が起こりにくくなる有利もある。
[0074]
 〔研磨促進剤〕
 本発明に係る研磨用組成物は、研磨促進剤を含むことができる。研磨促進剤は、金属基板の表面に錯形成して結合し、不溶性の脆性膜を金属基板の表面に形成することによって研磨用組成物による金属基板の研磨速度を向上させる働きをする。また、研磨促進剤が有するエッチング作用により、研磨用組成物による金属基板の研磨速度が向上するという有利な効果がある。かような研磨促進剤は、主としてコバルトを含む研磨対象物を研磨するために添加される。
[0075]
 使用可能な研磨促進剤の例としては、例えば、無機酸またはその塩、有機酸またはその塩、ニトリル化合物、アミノ酸、アンモニア、アミン系化合物またはその塩およびキレート剤等が挙げられる。これら研磨促進剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、該研磨促進剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
[0076]
 無機酸の具体例としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、ピロリン酸等が挙げられる。
[0077]
 有機酸の具体例としては、例えば、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、サリチル酸等の一価カルボン酸;グルタル酸、グルコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸:等のカルボン酸が挙げられる。また、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸等のスルホン酸も使用可能である。
[0078]
 なお、上記で例示した有機酸のうちの一価または多価カルボン酸は、分子量が130以上であるため、コバルト溶解抑制剤と研磨促進剤とを兼ねる剤として用いることができる。
[0079]
 研磨促進剤として、前記無機酸または前記有機酸の塩を用いてもよい。特に、弱酸と強塩基との塩、強酸と弱塩基との塩、または弱酸と弱塩基との塩を用いた場合には、pHの緩衝作用を期待することができる。このような塩の例としては、例えば、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ピロリン酸カリウム、シュウ酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、(+)-酒石酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等が挙げられる。
[0080]
 ニトリル化合物の具体例としては、例えば、アセトニトリル、アミノアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル等が挙げられる。
[0081]
 アミノ酸の具体例としては、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、オルニチン、リシン、タウリン、セリン、トレオニン、チロシン、ビシン、トリシン、3,5-ジヨード-チロシン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-アラニン、チロキシン、4-ヒドロキシ-プロリン、メチオニン、エチオニン、ランチオニン、シスタチオニン、シスチン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、S-(カルボキシメチル)-システイン、アスパラギン、グルタミン、アザセリン、アルギニン、カナバニン、シトルリン、δ-ヒドロキシ-リシン、クレアチン、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジンおよびトリプトファンが挙げられる。
[0082]
 アミン系化合物の具体例としては、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、および水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。
[0083]
 キレート剤の具体例としては、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N-トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-テトラメチレンスルホン酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,2-ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N-(2-カルボキシラートエチル)-L-アスパラギン酸、β-アラニンジ酢酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、N,N’-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-ジ酢酸、1,2-ジヒドロキシベンゼン-4,6-ジスルホン酸等が挙げられる。
[0084]
 これらの中でも、研磨速度向上の観点から、無機酸またはその塩、カルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、アミノ酸またはその塩、アンモニアまたはその塩、アミン系化合物またはその塩、およびニトリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
[0085]
 研磨用組成物中の研磨促進剤は少量でも効果を発揮するため、その含有量(濃度)の下限は、特に限定されるものではないが、0.001g/L以上であることが好ましく、0.01g/L以上であることがより好ましく、1g/L以上であることがさらに好ましい。研磨促進剤の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物による金属基板の研磨速度が向上する。一方、本発明の研磨用組成物中の研磨促進剤の含有量(濃度)の上限は、100g/L以下であることが好ましく、50g/L以下であることがより好ましく、30g/L以下であることがさらに好ましい。この範囲であれば、本発明の効果をより効率的に得ることができる。
[0086]
 なお、本発明の効果を阻害しない量であれば、カルボキシル基を含み、且つ、その分子量が130未満の有機化合物を研磨促進剤として添加してもよい。かような研磨促進剤としては、たとえば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、安息香酸等の一価カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸;グリシン、α-アラニン、β-アラニン、N-メチルグリシン、N,N-ジメチルグリシン、2-アミノ酪酸、ノルバリン、バリン、プロリン、サルコシン、ホモセリン、システイン、4-アミノ酪酸等のアミノ酸が挙げられる。
[0087]
 研磨促進剤として、カルボキシル基を含み、且つ、その分子量が130未満の有機化合物を用いる場合は、その含有量が多すぎる場合、コバルトを溶解させる恐れがある。しかしながら、本発明のコバルト溶解抑制剤は、少量であってもその効果を十分に発揮することができるため、かような有機化合物を研磨促進剤として用いる場合であっても、研磨促進剤の含有量の上限は特に制限されない。したがって、かような化合物を研磨促進剤として用いる場合、その含有量の上限は特に制限されるものではないが、100g/L以下であると好ましい。一方、研磨促進効果を十分に得るために、その含有量の下限は、0.01g/L以上とすると好ましい。
[0088]
 〔金属防食剤〕
 本発明に係る研磨用組成物は、金属防食剤を含むことができる。研磨用組成物中に金属防食剤を加えることにより、研磨用組成物を用いた研磨で配線の脇に凹みが生じるのをより抑えることができる。また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面にディッシングが生じるのをより抑えることができる。
[0089]
 使用可能な金属防食剤は、特に制限されないが、好ましくは複素環式化合物または界面活性剤である。複素環式化合物中の複素環の員数は特に限定されない。また、複素環式化合物は、単環化合物であってもよいし、縮合環を有する多環化合物であってもよい。該金属防食剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、該金属防食剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
[0090]
 金属防食剤として使用可能な複素環化合物の具体例としては、例えば、ピロール化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、ピリジン化合物、ピラジン化合物、ピリダジン化合物、ピリンジン化合物、インドリジン化合物、インドール化合物、イソインドール化合物、インダゾール化合物、プリン化合物、キノリジン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、ナフチリジン化合物、フタラジン化合物、キノキサリン化合物、キナゾリン化合物、シンノリン化合物、ブテリジン化合物、チアゾール化合物、イソチアゾール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、フラザン化合物等の含窒素複素環化合物が挙げられる。
[0091]
 さらに具体的な例を挙げると、ピラゾール化合物の例としては、例えば、1H-ピラゾール、4-ニトロ-3-ピラゾールカルボン酸、3,5-ピラゾールカルボン酸、3-アミノ-5-フェニルピラゾール、5-アミノ-3-フェニルピラゾール、3,4,5-トリブロモピラゾール、3-アミノピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3,5-ジメチル-1-ヒドロキシメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、1-メチルピラゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、4-アミノ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、1,2-ジメチルピラゾール、4-クロロ-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン、3,4-ジヒドロキシ-6-メチルピラゾロ(3,4-B)-ピリジン、6-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-アミン等が挙げられる。
[0092]
 イミダゾール化合物の例としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、5,6-ジメチルベンゾイミダゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、2-クロロベンゾイミダゾール、2-メチルベンゾイミダゾール、2-(1-ヒドロキシエチル)ベンズイミダゾール、2-ヒドロキシベンズイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、2,5-ジメチルベンズイミダゾール、5-メチルベンゾイミダゾール、5-ニトロベンズイミダゾール等が挙げられる。
[0093]
 トリアゾール化合物の例としては、例えば、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1-メチル-1,2,4-トリアゾール、メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシレート、1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸、1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル、1H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、3,5-ジアミノ-1H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール-5-チオール、3-アミノ-1H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-ベンジル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール、3-ブロモ-5-ニトロ-1,2,4-トリアゾール、4-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)フェノール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジプロピル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジメチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジペプチル-4H-1,2,4-トリアゾール、5-メチル-1,2,4-トリアゾール-3,4-ジアミン、1H-ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-アミノベンゾトリアゾール、1-カルボキシベンゾトリアゾール、5-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール、5-ニトロ-1H-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5,6-ジメチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-(1’,2’-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]-5-メチルベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]-4-メチルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
[0094]
 テトラゾール化合物の例としては、例えば、1H-テトラゾール、5-メチルテトラゾール、5-アミノテトラゾール、および5-フェニルテトラゾール等が挙げられる。
[0095]
 インダゾール化合物の例としては、例えば、1H-インダゾール、5-アミノ-1H-インダゾール、5-ニトロ-1H-インダゾール、5-ヒドロキシ-1H-インダゾール、6-アミノ-1H-インダゾール、6-ニトロ-1H-インダゾール、6-ヒドロキシ-1H-インダゾール、3-カルボキシ-5-メチル-1H-インダゾール等が挙げられる。
[0096]
 インドール化合物の例としては、例えば1H-インドール、1-メチル-1H-インドール、2-メチル-1H-インドール、3-メチル-1H-インドール、4-メチル-1H-インドール、5-メチル-1H-インドール、6-メチル-1H-インドール、7-メチル-1H-インドール、4-アミノ-1H-インドール、5-アミノ-1H-インドール、6-アミノ-1H-インドール、7-アミノ-1H-インドール、4-ヒドロキシ-1H-インドール、5-ヒドロキシ-1H-インドール、6-ヒドロキシ-1H-インドール、7-ヒドロキシ-1H-インドール、4-メトキシ-1H-インドール、5-メトキシ-1H-インドール、6-メトキシ-1H-インドール、7-メトキシ-1H-インドール、4-クロロ-1H-インドール、5-クロロ-1H-インドール、6-クロロ-1H-インドール、7-クロロ-1H-インドール、4-カルボキシ-1H-インドール、5-カルボキシ-1H-インドール、6-カルボキシ-1H-インドール、7-カルボキシ-1H-インドール、4-ニトロ-1H-インドール、5-ニトロ-1H-インドール、6-ニトロ-1H-インドール、7-ニトロ-1H-インドール、4-ニトリル-1H-インドール、5-ニトリル-1H-インドール、6-ニトリル-1H-インドール、7-ニトリル-1H-インドール、2,5-ジメチル-1H-インドール、1,2-ジメチル-1H-インドール、1,3-ジメチル-1H-インドール、2,3-ジメチル-1H-インドール、5-アミノ-2,3-ジメチル-1H-インドール、7-エチル-1H-インドール、5-(アミノメチル)インドール、2-メチル-5-アミノ-1H-インドール、3-ヒドロキシメチル-1H-インドール、6-イソプロピル-1H-インドール、5-クロロ-2-メチル-1H-インドール等が挙げられる。
[0097]
 これらの中でも好ましい複素環化合物はトリアゾール化合物であり、特に、1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5,6-ジメチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]-5-メチルベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]-4-メチルベンゾトリアゾール、1,2,3-トリアゾール、および1,2,4-トリアゾールが好ましい。これらの複素環化合物は、研磨対象物表面への化学的または物理的吸着力が高いため、研磨対象物表面により強固な保護膜を形成することができる。このことは、本発明の研磨用組成物を用いて研磨した後の、研磨対象物の表面の平坦性を向上させる上で有利である。
[0098]
 また、金属防食剤として使用される界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
[0099]
 陰イオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、アルキルエーテル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。
[0100]
 陽イオン性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
[0101]
 両性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
[0102]
 非イオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、およびアルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
[0103]
 これらの中でも好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルである。これらの界面活性剤は、研磨対象物表面への化学的または物理的吸着力が高いため、研磨対象物表面により強固な保護膜を形成することができる。このことは、本発明の研磨用組成物を用いて研磨した後の、研磨対象物の表面の平坦性を向上させる上で有利である。
[0104]
 研磨用組成物中の金属防食剤の含有量の下限は、0.001g/L以上であることが好ましく、0.005g/L以上であることがより好ましく、0.01g/L以上であることがさらに好ましい。また、研磨用組成物中の金属防食剤の含有量の上限は、10g/L以下であることが好ましく、5g/L以下であることがより好ましく、3g/L以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面の平坦性が向上し、また、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する。
[0105]
 [研磨用組成物の製造方法]
 本発明の研磨用組成物の製造方法は、特に制限されず、例えば、コバルト溶解抑制剤となる化合物、pH調整剤、および必要に応じて他の成分を、水中で攪拌混合することにより得ることができる。
[0106]
 各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10~40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
[0107]
 [研磨方法および基板の製造方法]
 上述のように、本発明の研磨用組成物は、コバルト元素を含む層の溶解を抑制しつつ、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨することができる。よって、本発明の研磨用組成物は、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物の研磨に好適に用いられる。
[0108]
 したがって、本発明は、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨する方法であって、金属配線層を本発明の研磨用組成物で研磨する、研磨方法を提供する。また、本発明は、コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を本発明の研磨方法で研磨する工程を含む、基板の製造方法を提供する。
[0109]
 研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
[0110]
 前記研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
[0111]
 研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転速度は、10~500rpmが好ましく、研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.1~10psiが好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明の研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
[0112]
 研磨終了後、基板を流水中で洗浄し、スピンドライヤ等により基板上に付着した水滴を払い落として乾燥させることにより、コバルトを含む層を有する基板が得られる。
実施例
[0113]
 本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[0114]
 (実施例1~15、比較例1~10:研磨用組成物の調製)
 砥粒としてコロイダルシリカ(約65nmの平均二次粒子径(平均一次粒子径30nm、会合度2)5g/L、酸化剤として過酸化水素 22g/L、研磨促進剤としてイセチオン酸 20g/L、および下記表1-1~1-2に示すコバルト溶解抑制剤を、それぞれ表1-1~1-2中に記載の濃度となるように水中で攪拌混合し(混合温度:約25℃、混合時間:約10分)、pH調整剤として酢酸と水酸化カリウムを用い、pHを7.5に調整することで研磨用組成物を得た。得られた研磨用組成物のpHについて、pHメータにより、25℃で確認した。なお、コバルト溶解抑制剤の分子量について、分子量が400未満である低分子化合物については、化学式を基に算出し、分子量が400以上である高分子化合物の分子量(重量平均分子量)は、ポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。
[0115]
 (評価)
 1.電気量の測定
 Solarton社製ポテンショスタット(Model 1280Z)を用いて下記条件にて電気量について評価を行った。このとき、作用極にはPVDで成膜したCoブランケットウェハを用い、対極にはPt板を用い、参照電極にはAg/AgCl電極を用いた。腐食電位を測定する際の電解条件は浸漬電位±1.0Vの範囲で、5mV/secの走査速度で電圧を操作して得られたターフェル曲線より腐食電位を求めた。また、腐食量を表す電気量の測定において、参照電極の電位を基準として、作用極に+1.12-0.059×pHとなる電圧を印加した際の電流時間曲線を測定し、その曲線の積分値から電気量を求めた。
[0116]
 なお、電気量の評価の際には、上記の研磨用組成物とは異なり、研磨促進剤としてイセチオン酸 20g/L、および下記表1-1~1-2に示すコバルト溶解抑制剤を10mM添加し、pH調整剤として酢酸と水酸化カリウムを用い、pHを7.5に調整した組成物を用いた。
[0117]
 2.コバルトの溶解性評価(目視および光学顕微鏡による表面観察)
 まず、PVD法により、Siウェハに対してコバルト膜を成膜し、ブランケットSiウェハを準備した。このとき、膜厚は200nmとした。当該ブランケットSiウェハを、室温(25℃)で評価溶液(上記実施例または比較例において得られた研磨用組成物)に5分間浸漬し、当該ウェハについて、目視および光学顕微鏡により表面観察を行うことにより評価した。なお、光学顕微鏡による観察では、光学顕微鏡の倍率を5倍とし、ウェハ表面を観察した。
[0118]
 以下の基準にて腐食グレードの評価を行い、表1-1~表1-2中にその結果を記載した。
[0119]
 ・目視評価による評価
 ×:Coの溶解によるCo膜の消失もしくはピットやケミカルによる焼けに代表される腐食が目視で観察された;
 〇:Coのピットやケミカルによる焼けに代表される腐食が目視では観察されなかった。
[0120]
 ・光学顕微鏡による評価
 グレード1:光学顕微鏡像の75%以上の面積が溶解もしくは腐食していた;
 グレード2:光学顕微鏡像の10%以上75%未満の面積が溶解もしくは腐食していた;
 グレード3:光学顕微鏡像の1%以上10%未満の面積が溶解もしくは腐食していた;
 グレード4:光学顕微鏡像の0.05%以上1%未満の面積が溶解もしくは腐食していた;
 グレード5:光学顕微鏡像観察において腐食が確認されなかった。
[0121]
 なお、上記評価において、グレード4以上であるとき、実用的な範囲と言える。
[0122]
 3.研磨速度の測定
 下記条件により研磨を行い、研磨速度を評価した。
・研磨条件
 研磨機: 200mm用片面CMP研磨機
 パッド: ポリウレタン製パッド(Shore A61)
 圧力: 2.0psi(13.8kPa)
 定盤回転数: 127rpm
 キャリア回転数: 122rpm
 研磨用組成物の流量: 200ml/min
 研磨時間:1分
 研磨速度は、以下の式により計算した;
   研磨速度[nm/min]=1分間研磨した時の膜厚の変化量
 膜厚測定器:直流4探針法を原理とするシート抵抗測定器
 結果を表1-1~表1-2に示す。
[0123]
[表1-1]


[0124]
[表1-2]


[0125]
 上記1-1~表1-2に示すように、本発明の研磨用組成物(実施例1~15)は、比較例の研磨用組成物に比べて、電気化学測定による電気量が小さいため、コバルトを含む層(バリア層)の溶解が抑制されていることが示されている。また、実施例および比較例の研磨用組成物を用いて研磨を行った研磨対象物の光学顕微鏡観察による腐食評価の結果より、上記電気量が小さい(上記電気量が35mC/cm /min未満である)ものは、コバルトの溶解が抑制され、ピットや腐食の発生が抑制されていることが示された。さらに、コバルトを含む層の溶解は、コバルト溶解抑制剤としてカルボキシル基を含む有機化合物およびその塩を使用したときに特に抑制されることも示された。
[0126]
 さらに、本出願は、2014年2月26日に出願された日本特許出願番号2014-035798号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。

請求の範囲

[請求項1]
 コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、
 コバルト溶解抑制剤と、
 pH調整剤と、
を含み、
 pHが4以上12以下であり、
 前記コバルト溶解抑制剤は、エーテル結合を有する有機化合物、ヒドロキシ基を有する有機化合物、カルボキシル基を有すると共に分子量が130以上の有機化合物、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、研磨用組成物。
[請求項2]
 前記エーテル結合を有する有機化合物は、ポリオキシエチレン構造および/またはポリオキシプロピレン構造を有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
[請求項3]
 前記ヒドロキシ基を有する有機化合物は、アルコール骨格またはフェノール骨格を有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
[請求項4]
 前記コバルト溶解抑制剤は、エーテル結合を有すると共にヒドロキシ基を有する有機化合物である、請求項1に記載の研磨用組成物。
[請求項5]
 コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を研磨する方法であって、
 前記金属配線層を請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨用組成物で研磨する、研磨方法。
[請求項6]
 コバルト元素を含む層を有する研磨対象物を請求項5に記載の研磨方法で研磨する工程を含む、基板の製造方法。