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1. (WO2015129215) アルコール環境での応力腐食割れ試験方法
Document

明 細 書

発明の名称 アルコール環境での応力腐食割れ試験方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

非特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019  

発明の効果

0020  

図面の簡単な説明

0021  

発明を実施するための形態

0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045  

実施例 1

0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : アルコール環境での応力腐食割れ試験方法

技術分野

[0001]
 本発明は、アルコール環境で使用される鋼材の応力腐食割れ(以下SCCと記載)を実験室的に模擬し、その応力腐食割れ感受性を評価することのできる試験方法に関するものである。

背景技術

[0002]
 バイオアルコールのうち、例えばバイオエタノールは、主にとうもろこしや小麦などの糖分を分解・精製して造られる。近年では、石油(ガソリン)の代替燃料として、またガソリンと混合する燃料として世界中で広く使用されており、その使用量は年々増加する傾向にある。バイオエタノールを貯蔵・運搬する工程あるいはガソリンと混合する工程等において、鋼材が使用されている。しかしながら、バイオエタノールは鋼材に対する腐食性が高く、すなわち鋼材において高い残留応力が存在する箇所や変動荷重に晒される箇所でのSCCの発生が、バイオエタノールの取り扱いを困難にしている。
[0003]
 バイオエタノールは、その製造工程で酢酸などのカルボン酸が極微量不純物として存在することや、貯蔵中に吸水や溶存酸素及び塩化物イオンを取り込むことが、腐食性を高める一因となっている。そのため、バイオアルコール環境における鋼材のSCC感受性を正しく評価するためのSCC試験方法が求められている。
[0004]
 例えば非特許文献1および2では、引張試験片に2×10 -6in/s~8×10 -7in/sの一定の歪速度で歪を負荷し、破断後の破面状態からSCC感受性を評価する方法が報告されている。
[0005]
 また、例えば、非特許文献3では、予亀裂を付加した引張疲労試験片に対して、模擬バイオエタノール溶液中で鋼材の引張強さの60~80%に相当する変動荷重を1.4×10 -4Hzの周波数で負荷し、試験により進展した亀裂距離をもってSCC感受性を評価する方法が報告されている。

先行技術文献

非特許文献

[0006]
非特許文献1 : F. Gui,J. A. Beavers and N. Sridhar, Evaluation of ammonia hydroxide for mitigating stress corrosion cracking of carbon steel in fuel gradeethanol, NACE Corrosion Paper,No.11138 (2011)
非特許文献2 : X. Lou,J. D. Yang and Preet M Singh, Film breakdown and anodic dissolution during stress corrosion cracking of carbon steel in bioethanol, J. Electrochem. Soc., 157, C86, (2010)
非特許文献3 : F. Gui,N. Sridhar and J. A. Beavers, Localized corrosion ofcarbon steel and its implications on the mechanism and inhibition of stress corrosion cracking in Fuel-grade ethanol, Corrosion,Vol.66, No.12, 125001 (2010)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 しかしながら、非特許文献1または2に開示された試験方法は、高い残留応力や変動荷重によって亀裂が進展する現実のSCCを再現できていない。すなわち、この方法では一定の歪速度で歪が負荷され続け、亀裂先端での新生面(newly-formed surface)の生成が常に生じるため、実環境よりも厳しいSCC環境となっており、本来鋼材が有しているSCC感受性を正しく見積もれない可能性がある。
[0008]
 また、実環境では局部腐食部に応力が集中することで、亀裂が生成するが、前記試験法は歪の負荷によって強制的に亀裂を生成させるため、バイオアルコール中のSCC環境を模擬できているとは云い難い。すなわち、本来鋼材が有しているSCC感受性を正しく見積もれない可能性がある。
[0009]
 また、非特許文献3に開示されたSCC感受性評価試験方法は、変動荷重サイクルを加え、予め人工的に付与した予亀裂からのクラックの進展を評価するため、クラック進展過程に対する影響は考慮される。しかし、クラックの生成過程が無視されており、SCC感受性をトータルで評価するには不十分である。
[0010]
 加えて、試験体をマクロで考えた場合試験最大荷重が弾性域(elastic region)にあること、またサイクル条件が緩いことから、亀裂進展速度が遅く、試験に多くの日数を要し、短期評価が困難であるという問題もある。本発明の目的は、バイオアルコール環境における鋼材に対して、実験室的にバイオアルコール中のSCC環境を模擬しつつ、短期間での評価を可能とするSCC試験方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0011]
 そこで、発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究、検討を重ねた結果、以下の課題を解決するための手段を得た。
[0012]
 [1] 鋼材のアルコール中での応力腐食割れ感受性を評価する試験であって、前記鋼材の単軸引張試験片を覆うセル中に、カルボン酸:0.1mmol/L以上40mmol/L未満、塩化物イオン:0.05mg/L以上300mg/L未満及び水:0.1vol.%以上5vol.%未満を含むアルコール溶液を充填し、前記単軸引張試験片の引張軸方向に、最大応力を試験溶液温度での降伏強度以上引張強さ未満、最小応力を前記降伏強度の0%以上90%以下とする変動応力を、2.0×10 -5~2.0×10 -2Hzの周波数で、前記単軸引張試験片に負荷することを特徴とするアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[0013]
 [2] 前記試験溶液温度を0℃以上50℃未満とすることを特徴とする[1]に記載のアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[0014]
 [3] 前記試験溶液中の溶存酸素濃度が、1mg/L以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載のアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[0015]
 [4] 前記変動応力が前記最大応力に到達後、前記最大応力を30秒以上保持することを特徴とする[1]乃至[3]の何れかに記載のアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[0016]
 [5] 前記単軸引張試験片にあって、平行部に切り欠き加工部を具備することを特徴とする[1]乃至[4]の何れかに記載のアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[0017]
 なお、本試験に使用できるアルコールとは、脂肪族の1価アルコールを指し、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が好適に使用できる。
[0018]
 また、本試験に使用できるカルボン酸とは、飽和脂肪酸を指し、具体的にはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が好適に使用できる。
[0019]
 また、本試験に使用できる塩化物イオンは、無機塩類に含まれるCl イオンを指し、具体的な無機塩類としては塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等が好適に使用できる。

発明の効果

[0020]
 本発明によれば、バイオアルコール環境における鋼材に対して、実験室的に、バイオアルコール中のSCC環境を模しつつ、短期間での評価を可能とするSCC試験方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0021]
[図1] 応力腐食割れ試験片の形状例を示す図である。
[図2] 応力腐食割れ試験後の試験片断面のクラック発生状況を示す顕微鏡観察による図である。

発明を実施するための形態

[0022]
 以下に、本発明を具体的に説明する。
[0023]
 本発明者らはバイオアルコール環境におけるSCCの発生メカニズムを調査した結果、以下のことを知見した。
[0024]
 一般に、アルコール中では鋼材表面は酸化被膜が安定に存在することができ、この酸化皮膜で鋼材表面が保護されるため、腐食反応はほとんど進行しない。しかしながら、輸送パイプ等の運用に際して変動荷重が生じる箇所に溶接部近傍等が位置し、この溶接部近傍等に高い残留応力が存在した場合、局部的に塑性域の応力が負荷され、機械的に表面の酸化被膜が破壊される。この被膜破壊部において、選択的なアノード溶解が生じ、クラックが発生する。
[0025]
 さらに、変動荷重環境下に長期間さらされる構造体にあっては、被膜破壊部における、局部腐食と、被膜再生が何度も繰り返され、クラックの進展が進み、構造を保てなくなる。クラック進展過程を詳しく述べると以下のとおりである。まず、生成したばかりのクラックは新生面であるため、そこではアノード溶解反応がおこるが、同時に再酸化被膜形成反応が生じるために、深さ方向への大きなアノード溶解(クラック進展)は生じない。
[0026]
 しかしながら、変動荷重により再度局部的に塑性域の応力が負荷されることで、酸化被膜は再び破壊され、アノード溶解が生じる。このようにしてアノード溶解が進展して、深度が増したクラックは、より高感度な応力集中部位となる。加えて、クラック先端での酸素供給が困難となり、被膜形成が不十分となる。
[0027]
 さらに、鋼材表面との酸素濃度差と塩化物イオン、カルボン酸の存在のために、クラック先端を選択的なアノード部とした腐食反応が一層容易となり、溶解反応が加速し、クラック進展が促される。最終的には構造が保てなくなり、破断に至るものと考えられる。本発明者らは、ここで得られたメカニズムに関する知見を基に、バイオアルコール中のSCCを実験室的に模擬しつつ、短時間での評価試験を可能とすべく以下の条件とした。
[0028]
 本発明においては、単軸引張試験片を覆うセル中に、カルボン酸:0.1mmol/L以上40mmol/L未満、塩化物イオン:0.05mg/L以上300mg/L未満及び水:0.1vol.%以上5vol.%未満を含むアルコール溶液を充填し、前記単軸引張試験片の引張軸方向に、変動応力を負荷する試験方法とした。本試験方法においてアルコール溶液環境はバイオアルコール腐食環境を模擬しており、変動応力による応力負荷は施設の運用によって不可避的に生じる応力を模擬している。
[0029]
 次に、試験環境条件を限定した理由について説明する。バイオアルコールによる腐食はアルコール溶液中の腐食因子の濃度に大きく左右される。
[0030]
 まず、カルボン酸はバイオエタノール中の局部腐食因子であり、鋼材表面の酸化被膜を溶解する働きをするとともに、酸化被膜の再生を阻害する働きをする。機械的に表面の酸化被膜が破壊される荷重環境では、亀裂発生には必ずしも、酢酸等のカルボン酸による被膜溶解を必要としない。しかし、亀裂進展には、亀裂先端でのカルボン酸による被膜再生阻害作用が必要である。しかしながら、濃度が0.1mmol/L未満では酸化被膜の再生阻害作用が十分に働かない。また、40mmol/L以上では被膜溶解が広範囲に亘り、全面腐食となるため、カルボン酸濃度は0.1mmol/L以上40mmol/L未満とした。なお、好ましくは、0.1mmol/L以上30mmol/L未満である。
[0031]
 また、塩化物イオンもバイオアルコール中の局部腐食因子であり、鋼材の酸化被膜溶解部でのアノード反応を促進する働きをする。しかしながら、濃度が0.05mg/L未満では腐食を促進しないため、0.05mg/L以上とした。なお、好ましくは、0.1mg/L以上である。一方、濃度が300mg/L以上では、腐食が促進されすぎてしまい、全面腐食となり、応力腐食割れが生じないため、300mg/L未満とした。なお、好ましくは、0.1mg/L以上270mg/L未満である。
[0032]
 また、水もバイオアルコール中の腐食挙動に大きく関与する。すなわち、カルボン酸の解離プロトンの輸送体として、酸化被膜溶解過程に関与する。0.1vol.%未満では溶液中の解離プロトンを輸送するに不十分であり、鋼材表面の酸化被膜が溶解せず、腐食しない。一方、5vol.%以上では、鋼材表面でカルボン酸の解離プロトンが均一に供給され全面腐食となるため、水の濃度は0.1vol.%以上5vol.%未満とした。なお、好ましくは、0.3vol.%以上3vol.%未満である。
[0033]
 さらに、試験溶液中の溶存酸素は酸化被膜の生成に関与するため、その濃度は、1mg/L以上とすることが好ましい。より好ましくは5mg/L以上である。一方で、過度な酸素濃度の増加は、それに伴う試験設備の大掛り化を招き、試験の汎用性が損なわれる。また、実際のバイオアルコール関連施設環境で、濃度が1000mg/L以上になることは想定できないため、上限は1000mg/L未満とすることが好ましい。より好ましくは5mg/L以上800mg/L未満である。
[0034]
 また、一般にバイオアルコールは、ガソリンと混合されて使用される。ガソリンはバイオアルコール中の腐食に影響を及ぼさないが、混合後の組成を再現する目的で、ガソリンを30vol.%未満添加しても良い。
[0035]
 次に応力条件に関して説明する。バイオアルコール中のSCCは応力集中によるすべりの発生と、アノード溶解が繰り返されるメカニズムで進展すると考えられる。さらに言うなら、メカニズムに大きく関与する新生面は、アノード溶解反応の影響を受け、断続的に生成されたり、あるいは速度を変えながら生成される。また、アノード溶解反応は、新生面の生成速度の影響を受け、新生面での酸化被膜の再生速度が新生面の生成速度に追いつかない場合に、顕著に進行すると考えられる。
[0036]
 すなわち、バイオアルコール環境で使用される鋼材のSCC環境を実験室的に模擬するためには、応力集中部に対して、局所的なすべりが生じ得るだけの荷重が付加される環境であって、且つすべりの発生と、アノード溶解速度が相互に影響し合う環境である必要がある。さらには、応力が緩和され、亀裂先端とその近傍で酸化被膜が十分に再生されたのち、応力が増加し亀裂先端が選択的に被膜破壊された場合、亀裂部でのアノード溶解反応が加速される。
[0037]
 そこで、鋼材に対して単軸引張方向に変動応力を与えることとした。変動応力であれば、SCCメカニズムを再現しつつ、亀裂進展を加速し、短時間での評価が可能となる。亀裂進展を促す観点から、変動応力条件は、試験溶液温度と同じ温度における前記鋼材の降伏強度の100%以上且つ、引張強さの100%未満に相当する応力を、最大応力とし、降伏強度の0%以上90%以下に相当する応力を最小応力とした。最大応力が降伏強度の100%未満の場合、亀裂未発生の時点では塑性域の応力が負荷されず、機械的作用による表面の酸化被膜破壊が生じない。すなわち、亀裂発生の前段階として、アルコール溶液中のカルボン酸や塩化物イオンによる被膜溶解を起点とした局部腐食過程が必要となるため、評価までに長時間を要することとなる。
[0038]
 なお、SCCに因らない機械的な破断を避けるために、更に引張強さの100%未満であることが必要である。また、最小応力が降伏強度の91%以上の場合、亀裂近傍での応力緩和が十分に起こらず、亀裂先端とその近傍で酸化被膜が十分に再生されず、応力増加による亀裂先端での選択的なアノード反応の促進効果が得られない。
[0039]
 一方、最小応力が降伏強度の0%未満の場合(圧縮応力となる)は、応力振幅が過度に大きくなり、腐食を伴わない疲労破壊現象による破断が起こり得る。すなわち鋼材のアルコール中での応力腐食割れ感受性を正しく評価できない。よって、最小応力は降伏強度の0%以上90%以下とする。より好ましくは、降伏強度の0%以上80%以下である。また、本試験で算出する降伏強度は、下降伏点、0.2%オフセット耐力、0.5%オンセット耐力が好適に使用できる。
[0040]
 また、変動応力の周波数は2.0×10 -5~2.0×10 -2Hzとした。2.0×10 -5Hz未満では被膜破壊頻度が少なく、亀裂進展の促進効果が十分に得られない。一方、2.0×10 -2Hzを超えた場合、亀裂先端の被膜破壊部での被膜再生時間が十分に確保できず、亀裂進展が抑制される。なお、応力緩和後での応力増加による被膜破壊とそこでのアノード溶解を十分に生じさせるために、最大応力到達時には、30秒以上最大応力を負荷し続けることが好ましい。
[0041]
 また、試験溶液温度によって、鋼材の機械的特性や腐食反応速度が変化することから、腐食量、SCC進展の程度が異なってくる。実際のバイオアルコール設備が置かれる温度を模擬するために、試験溶液温度は0℃以上50℃未満であることが好ましい。
[0042]
 以上説明したように、本発明に係る試験方法は、バイオアルコールを模擬した腐食環境において、鋼材に前記条件の変動応力を与えることで、実SCC環境を模擬しつつ、SCCの発生を加速させる。
[0043]
 ここで、対象となる鋼材は、裸鋼材又は、塗装を施した鋼材等、種々の状態が可能である。
[0044]
 また、試験片の形状について特別の限定はないが、例えば、図1に示した丸棒引張タイプの形状であって、平行部の粗度(JIS B0601:2001)をRz<10μmとすることが好ましい。また、亀裂の発生位置を限定し、且つより早期での評価をする目的で、試験片の平行部に切欠加工を施してもよい。切欠先端の曲率半径が小さすぎる場合、バイオアルコール環境での亀裂生成過程が考慮されず、SCC感受性をトータルで評価するには不十分となる。したがって、切欠先端の曲率半径は20μm以上とするのが好ましい。また、切欠加工を施した試験片を用いる場合の負荷応力の基準は、切欠底を断面積として、同形状の試験片を用いて得られた降伏強度と引張強さを適用する。
[0045]
 本発明に係る試験方法は、試験開始より破断に至るまでの時間を基に、対象とする鋼材のSCC感受性を定量的に評価することが可能である。さらに、SCC対策を施した鋼材の、耐SCC性向上効果を比較検討することも可能となる。また、試験期間中に破断に至らずとも、未破断試験片を取り出して、断面観察をすることで、クラック進展距離からSCC感受性を見積もることもできる。
実施例 1
[0046]
 以下、実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0047]
 一般的なラインパイプ用途を模擬した表1に示す成分組成を有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を、真空溶解炉で溶製後または転炉溶製後、連続鋳造によりスラブとした。ついで、1230℃に加熱後、仕上圧延終了温度:820℃の条件で熱間圧延を実施して、13mm厚の鋼板とした。
[0048]
[表1]


[0049]
 これらの鋼板から、図1に示す形状の単軸丸棒引張試験片(平行部寸法:長さ25.4mm×直径3.81mmΦ)を切り出し、平行部を番手2000仕上相当で研磨し、一部に対して、切り欠き加工(深さ250μm、曲率半径50μm、角度60°)を施した。その後、アセトン中で超音波脱脂を5分間行い、風乾して低歪速度引張試験機に取り付けた。
[0050]
 なお、試験温度における鋼材の降伏強度と引張強さはSCC試験の前に測定した。本鋼材では、25℃における降伏強度(下降伏点)は411MPa、引張強さは511MPaであった。なお、切り欠き加工を施した鋼材では、降伏強度(下降伏点)は515MPa、引張強さは623MPaであった。測定した降伏強度に対して各条件に相当する応力を負荷し、試験材を覆うセル中へ、各組成の試験溶液を充填し、240時間放置した。本試験時間を延長した場合に、SCCが発生する可能性は必ずしも否定されるものではないが、試験方法の実用性の観点から、前記試験時間内であることが好ましい。
[0051]
 試験期間中に破断が確認された場合、その破断時間を記録した。また、破断しなかった鋼材については、試験後に試験片を取り出し、まず顕微鏡による外観観察を実施し、クラックの有無を確認した。クラックが確認された試験片については、断面を観察し、断面最大クラック長さを測定し、クラック進展距離を算出した。クラック長が20μm未満のものについては、クラック進展が十分ではなく、SCC感受性評価条件としては不適切であると判断した。以上をもとに、SCCの有無は以下のように判定した。
[0052]
   ◎ :破断
   ○ :クラックあり(クラック長さ20μm以上)
   △ :微小クラックあり(クラック長さ20μm未満)
   × :クラックなし
 図2は試験後の試験片の断面のクラックの発生状況を示す顕微鏡観察による図である。クラックの発生後、それが進展することで、図2中央に見えるような長さ20μm以上のクラックが観察できる。一方、発生後の進展が十分に行われない場合、図2右に見えるような長さ20μm未満の微小クラックに留まる。
[0053]
 実施した試験条件を表2、表3に、結果を表4に示す。
[0054]
[表2]


[0055]
[表3]


[0056]
[表4]


[0057]
 表4から明らかなように、発明例(No.1~25)はいずれも、図2に示す顕微鏡観察による平行部の断面図で、破断しなかったが20μm以上のクラックが確認された試験片(○)または、破断した試験片(◎)であり、SCCが発生していることがわかる。
[0058]
 一方、比較例(No.26~34)は20μm未満の微小クラック有り(△)か、クラック無(×)の場合で、SCC性の感受性評価条件としては不適切である。

請求の範囲

[請求項1]
 鋼材のアルコール中での応力腐食割れ感受性を評価する試験であって、前記鋼材の単軸引張試験片を覆うセル中に、カルボン酸:0.1mmol/L以上40mmol/L未満、塩化物イオン:0.05mg/L以上300mg/L未満及び水:0.1vol.%以上5vol.%未満を含むアルコール溶液を充填し、前記単軸引張試験片の引張軸方向に、最大応力を試験溶液温度での降伏強度以上引張強さ未満、最小応力を前記降伏強度の0%以上90%以下とする変動応力を、2.0×10 -5~2.0×10 -2Hzの周波数で、前記単軸引張試験片に負荷することを特徴とするアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[請求項2]
 前記試験溶液温度を0℃以上50℃未満とすることを特徴とする請求項1に記載のアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[請求項3]
 前記試験溶液中の溶存酸素濃度が、1mg/L以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[請求項4]
 前記変動応力が前記最大応力に到達後、前記最大応力を30秒以上保持することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。
[請求項5]
 前記単軸引張試験片にあって、平行部に切り欠き加工部を具備することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のアルコール環境での応力腐食割れ試験方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]