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1. WO2013011992 - 路面状態推定方法、及び路面状態推定装置

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明 細 書

発明の名称 路面状態推定方法、及び路面状態推定装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019  

図面の簡単な説明

0020  

発明を実施するための形態

0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037  

符号の説明

0038  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 路面状態推定方法、及び路面状態推定装置

技術分野

[0001]
 本発明は、走行中の路面状態を推定する方法とその装置に関するものである。

背景技術

[0002]
 自動車の走行安定性を高めるため、路面状態もしくはタイヤの接地状態を精度良く推定し、車両制御へフィードバックすることが求められている。予め路面状態やタイヤの接地状態を推定することができれば、制駆動や操舵といった危険回避の操作を起こす前に、例えば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、安全性が一段と高まることが予想される。
[0003]
 路面状態を推定する方法としては、タイヤのショルダー部にタイヤ周方向に延長するサイプを含む易変形構造領域が特定の周期Pで形成された路面状態推定用タイヤを用い、加速度センサーにより、走行中のタイヤトレッドの振動を検出して振動スペクトルを求めるとともに、車輪速センサーにより測定した車輪速と前記周期Pとから算出される検出周波数における易変形構造領域に起因する振動レベルの大きさから路面状態を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
 また、車輪運動状態量を用いて車輪の接地性を推定する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、車輪速からバネ下共振周波数範囲における振動成分を抽出してFFT分析し、得られたゲインの最大値G vと予め設定された基準値G v0とを比較して、ゲインの最大値G vが基準値G v0以上である場合には車輪の接地性が悪いと判定し、ゲインの最大値G vが基準値G v0より小さい場合には車輪の接地性が良いと判定する。
 また、左右の車輪の車両バネ下部に加速度センサーを取付けて車両が路面突起を乗り越えたときの車両バネ下部の振動を検出するとともに、バネ下振動の最大値と最小値との差A p-pを算出し、この最大値と最小値との差A p-pと予め求めておいた路面突起高さX 1及び路面突起幅X 2と最大値と最小値との差A p-pとの関係を示す重回帰式とを用いて路面突起高さX 1と路面突起幅X 2とを推定する路面形状検出装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。なお、重回帰式は車輪速毎に求められる。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2010-274906号公報
特許文献2 : 特開平8-15069号公報
特許文献3 : 特許第3186474号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 しかしながら、前記路面状態推定用タイヤを用いた方法では、トレッドパターンが限定されるため、パターン作成の自由度が低いといった問題点があった。
 また、車輪運動状態量を用いて車輪の接地性を推定する方法では、実際に用いている車輪運動状態量が車輪速だけなので、路面状態の推定精度を確保するためには、タイヤやサスペンションの情報を追加する必要があった。
 また、車両バネ下部の振動を検出する方法では、車両が路面突起を乗り越えたときに発生する11~12Hz前後のバネ下共振を利用しているため、一過性の路面突起の形状については推定できるものの、路面の滑り易さに関係する路面性状を推定することは困難である。
[0006]
 本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、バネ下前後加速度と車輪速のデータとを用いて、走行中の路面の状態を精度よく推定することのできる方法とその装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、車輪速V wの変化量ΔV wと車両バネ下の前後加速度G xとは比例関係にあるが、車輪速V wの変化量ΔV wの変動幅σ(ΔV w)とバネ下前後加速度G xの変動幅σ(G x)との関係は路面状態、特に、路面の凹凸による振動gの変動幅σ(g)に依存することから、車輪速V wと車両バネ下の前後加速度G xとを検出して車輪速V wの変化量ΔV wの変動幅σ(ΔV w)の大きさとバネ下前後加速度G xの変動幅σ(G x)の大きさとの関係を求めれば、走行中の路面状態を精度よく推定できることを見出し本発明に到ったものである。
 すなわち、本願発明は、車両のバネ下に取付けられた加速度センサーによりバネ下前後加速度G xを検出するステップと、車輪速V wを検出するステップと、前記検出された車輪速の変化量ΔV wを算出するステップと、前記算出された車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)と前記検出されたバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)とを算出するステップと、前記車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)と前記バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)との関係から路面状態を推定するステップと、を有することを特徴とする。
 路面の凹凸が大きいと、σ(G x)がσ(ΔV w)から予想されるσ(G x)よりも大きくなるので、走行中の路面が排水舗装路などの凹凸の比較的大きな路面であるか、乾燥舗装路などの凹凸の少ない平滑路であるかを容易に推定することができる。
 なお、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)やバネ下前後加速度G xの変動幅σ(G x)としては、所定時間(例えば、0.5秒)分のΔV wのデータ、及びG xのデータがガウス分布しているとしたときの標準偏差σや半値幅のような、データのバラつきを表す量を用いることができる。
[0008]
 また、本願発明は、前記路面状態を推定するステップにおいて、前記算出されたバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)が、前記車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)を下記の式(1)に示すような、予め求めておいた車輪速の変化量の変動幅とバネ下前後加速度の変動幅との関係を示す変動幅判定式に代入して得られたバネ下前後加速度の変動幅の計算値以下である場合に、走行中の路面が平滑路であると推定するようにしたものである。
   σ(G x)=K・σ(ΔV w)+σ(g) ……(1)
 このように、様々な路面で車両を走行させてバネ下前後加速度の変動幅と車輪速の変化量の変動幅との関係を示す変動幅判定式を予め求めておき、この変動幅判定式を用いて路面状態を推定するようにしたので、走行中の路面が凹凸の比較的大きな路面か平滑路かを確実に推定することができる。
[0009]
 また、本願発明は、前記路面状態を推定するステップにおいて、前記車輪速の変化量の変動幅が予め設定された最大車輪速変化量変動幅を超えた場合、または、前記算出されたバネ下前後加速度の変動幅が予め設定された最大加速度変動幅を超えた場合には、走行中の路面が不整路であるとしたものである。
 ここで、「不整路」は、未舗装路やひび割れが生じている路面、あるいは、シャーベット路などのように、路面の凹凸が大きくかつ不規則な路面であって、通常の接地性が得られない路面を指す。走行中の路面が不整路である場合には、車輪速の変動幅及びバネ下前後加速度の変動幅のいずれか一方もしくは両方が大きくなる。そこで、路面を不整路、凹凸の比較的大きな路面、平滑路の3つに分類するようにすれば、走行中の路面状態の推定精度を更に向上させることができる。
[0010]
 また、本願発明は、前記バネ下前後加速度G xに加えて車両バネ下の横方向加速度であるバネ下横方向加速度G yを検出して、前記バネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)を算出し、前記算出されたバネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)と前記バネ下前後加速度の変動幅σ(G )との関係から、前記推定された平滑路が乾燥舗装路であるか否かを判定するようにしたものである。
 このように、バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)の大きさとバネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)の大きさとの関係を調べることで、推定された平滑路が平滑な乾燥舗装路であるかアイスバーンのような平滑な凍結路であるかを判定することができるので、走行中の路面状態を更に精度よく推定することができる。
[0011]
 また、本願発明は、前記バネ下前後加速度G xに加えて車両バネ下の横方向加速度であるバネ下横方向加速度G yを検出し、前記バネ下前後加速度と前記バネ下横方向加速度との積G x×G yの絶対値|G x×G y|と、前記バネ下前後加速度の絶対値|G x|と前記バネ下横方向加速度の絶対値|G y|との積|G x|×|G y|とを算出し、前記算出された|G x×G y|と|G x|×|G y|との関係から、前記推定された平滑路が乾燥舗装路であるか否かを判定するようにしたものである。
  このように、|G x×G y|の大きさと|G x|×|G y|の大きさとの関係を調べることで、推定された平滑路が平滑な乾燥舗装路であるか、アイスバーンのような平滑な凍結路であるかを判定することができるので、走行中の路面状態を更に精度よく推定することができる。
[0012]
 また、本願発明は、前記路面状態を推定するステップが、前記車輪速の変化量の変動幅と前記バネ下前後加速度の変動幅との関係から走行中の路面が凹凸のある路面であるか否かを推定するステップと、前記推定された路面が凹凸のある路面である場合に、前記検出されたバネ下前後加速度を周波数分析して求められる周波数スペクトルの200Hz~230Hz帯域内におけるピーク位置の周波数であるピーク周波数を算出し、前記ピーク周波数と車輪速とから前記凹凸のある路面が滑り易い路面か否かを推定するステップとを備え、前記走行中の路面が凹凸のある路面であるか否かを推定するステップでは、前記算出されたバネ下前後加速度の変動幅が、前記車輪速の変化量の変動幅を予め求めておいたバネ下前後加速度の変動幅と車輪速の変化量の変動幅との関係を示す変動幅判定式に代入して得られたバネ下前後加速度の変動幅の計算値を超えた場合に、走行中の路面が凹凸のある路面であると推定し、前記凹凸のある路面が滑り易い路面か否かを推定するステップでは、予め求めておいたピーク周波数と車輪速との関係を示す周波数判定式に前記検出された車輪速を代入して得られたピーク周波数の計算値よりも前記検出されたピーク周波数が小さい場合に、前記凹凸のある路面が、路面摩擦係数μが0.3よりも小さい滑り易い路面であるとするようにしたものである。
 なお、「凹凸のある路面」は、通常の接地性が得られない路面である不整路と、乾燥舗装路などの凹凸の少ない路面である平滑路との中間路面で、請求項1に記載の「凹凸の比較的大きな路面」を指す。
[0013]
 路面の凹凸が大きいと、σ(G x)がσ(ΔV w)から予想されるσ(G x)よりも大きくなるので、走行中の路面が排水舗装路などの凹凸のある路面であるか、乾燥舗装路などの凹凸の少ない平滑路であるかを容易に推定することができる。
 更に、路面が凹凸のある路面である場合には、バネ下前後加速度を周波数分析して求められる周波数スペクトルの200Hz~230Hz帯域内におけるピーク位置の周波数であるピーク周波数f pと車輪速V wとから凹凸のある路面が滑り易い路面か否かを推定するようにしたので、凹凸のある路面が排水性舗装路などの滑りにくい路面なのか雪路などの滑り易い路面なのかを精度よく推定することができる。
 なお、変動幅判定式としては、下記に再掲する式(1)に示すような、様々な路面で車両を走行させて求めた、車輪速の変化量の変動幅とバネ下前後加速度の変動幅との関係を示す一次式を挙げることができる。
   σ(G x)=K・σ(ΔV w)+σ(g)……(1)
 また、周波数判定式としては、例えば、下記の式(2)に示すような、排水舗装路と雪路とで車両を走行させて求めた、ピーク周波数f pと車輪速V wとの関係を示す一次式を挙げることができる。
   f p=a・V w+b ……(2)
 また、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)やバネ下前後加速度G xの変動幅σ(G x)としては、所定時間(例えば、0.5秒)分のΔV wのデータ、及びG xのデータがガウス分布しているとしたときの標準偏差σや半値幅のような、データのバラつきを表す量を用いることができる。
[0014]
 また、本願発明は、前記路面状態を推定するステップにおいて、前記算出された車輪速の変化量の変動幅が予め設定された最大車輪速変化量変動幅を超えた場合、または、前記バネ下前後加速度の変動幅が予め設定された最大加速度変動幅を超えた場合には、走行中の路面が不整路であると推定することを特徴とする。
 ここで、「不整路」は、前述したように、通常の接地性が得られない路面であり、走行中の路面が不整路である場合には、車輪速の変化量の変動幅及びバネ下前後加速度の変動幅のいずれか一方もしくは両方が大きくなる。
 そこで、σ(ΔV w)>σ AMまたはσ(G x)>σ GMである場合には、路面が不整路と推定して、排水舗装路や雪路などの凹凸のある路面と区別する。
 これにより、走行中の路面が不整路であることを確実に推定できる。
[0015]
 また、本願発明は、請求項1に記載の路面状態推定方法を実現するための路面状態推定装置であって、車両のバネ下に取付けられてバネ下前後加速度G xを検出するバネ下前後加速度検出手段と、車輪速V wを検出する車輪速検出手段と、前記検出された車輪速の変化量ΔV wを算出する車輪速変化量算出手段と、前記車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)と前記バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)とを算出する変動幅算出手段と、予め求めておいた車輪速の変化量の変動幅とバネ下前後加速度の変動幅との関係を示す変動幅判定式(σ(G x)=K・σ(ΔV w)+σ(g))を記憶する記憶手段と、前記算出された車輪速の変化量の変動幅とバネ下前後加速度の変動幅と前記変動幅判定式とを用いて走行中の路面状態を推定する路面状態推定手段とを備えたことを特徴とする。
 このような構成を採ることにより、走行中の路面が排水舗装路などの凹凸の比較的大きな路面か、乾燥舗装路などの凹凸の少ない平滑路かを容易に推定することのできる路面状態推定装置を得ることができる。
[0016]
 また、本願発明は、車両のバネ下に取付けられてバネ下横方向加速度を検出するバネ下横方向加速度検出手段G yと、前記検出されたバネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)を算出するバネ下横方向加速度変動幅算出手段とを備え、前記路面状態推定手段が、前記算出されたバネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)と前記バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)との関係から、前記推定された路面が乾燥舗装路であるか否かを判定することを特徴とするものである。
 これにより、推定された路面が平滑な乾燥舗装路であるか、アイスバーンのような平滑な凍結路であるかを確実に判定することができる。
[0017]
 また、本願発明は、車両のバネ下に取付けられてバネ下横方向加速度G yを検出するバネ下横方向加速度検出手段と、前記バネ下前後加速度G xと前記バネ下横方向加速度G yとの積の絶対値|G x×G y|と、前記バネ下前後加速度の絶対値|G x|と前記バネ下横方向加速度の絶対値|G y|との積|G x|×|G y|、とを算出する加速度積算出手段とを備え、前記路面状態推定手段が、|G x×G y|と|G x|×|G y|との関係から、前記推定された路面が乾燥舗装路であるか否かを判定することを特徴とするものである。
 これによっても、推定された路面が平滑な乾燥舗装路であるか、アイスバーンのような平滑な凍結路であるかを確実に判定することができる。
[0018]
 また、本願発明は、前記検出されたバネ下前後加速度を周波数分析する周波数分析手段と、前記周波数分析により得られた周波数スペクトルの200Hz~230Hz帯域内におけるピーク位置の周波数であるピーク周波数を算出するピーク周波数算出手段とを更に備え、前記記憶手段が、予め設定された車輪速の最大変動幅、バネ下前後加速度の最大変動幅、及び、バネ下前後加速度の変動幅と車輪速の変化量の変動幅との関係を示す変動幅判定式を記憶し、前記路面状態推定手段が、前記算出されたバネ下前後加速度の変動幅が、前記車輪速の変化量の変動幅を前記変動幅判定式に代入して得られたバネ下前後加速度の変動幅の計算値より大きく、かつ、前記車輪速の変化量の変動幅と前記バネ下前後加速度の変動幅とがそれぞれ前記車輪速の変化量の最大変動幅及び前記バネ下前後加速度の最大変動幅以下であるときに、前記路面が凹凸のある路面であると判定し、前記判定された路面が凹凸のある路面である場合には、予め求めておいたピーク周波数と車輪速との関係を示す周波数判定式に前記検出された車輪速を代入して得られたピーク周波数の計算値よりも前記検出されたピーク周波数が小さい場合に、前記凹凸のある路面が、路面摩擦係数μが0.3よりも小さい滑り易い路面であると推定することを特徴とするものである。
 これにより、走行中の路面が凹凸のある路面か否かを精度よく推定できるとともに、路面が凹凸のある路面である場合には、路面が滑り易い路面であるか否かを容易に推定することができる。
[0019]
 なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。

図面の簡単な説明

[0020]
[図1] 本発明の実施の形態1に係る路面状態推定装置の構成を示す図である。
[図2] 車輪速の変化量の変動幅とバネ下前後加速度の変動幅との関係を示す図である。
[図3] 本実施の形態2に係る路面状態推定装置の構成を示す図である。
[図4] バネ下前後加速度の変動幅とバネ下横方向加速度の変動幅との関係を示す図である。
[図5] 本実施の形態3に係る路面状態推定装置の構成を示す図である。
[図6] バネ下前後加速度の変動幅とバネ下横方向加速度の積の平均値の絶対値と、バネ下前後加速度の変動幅の絶対値とバネ下横方向加速度の絶対値との積の平均値との関係を示す図である。
[図7] 本実施の形態4に係る路面状態推定装置の構成を示す図である。
[図8] バネ下前後加速度の周波数スペクトルの一例を示す図である。
[図9] 車輪速とピーク周波数との関係を示す図である。

発明を実施するための形態

[0021]
 以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
[0022]
実施の形態1.
 図1は、本実施の形態1に係る路面状態推定装置10の機能ブロック図である。
 路面状態推定装置10は、バネ下前後加速度検出手段としての加速度センサー11と、車輪速検出手段としての車輪速センサー12と、車輪速変化量算出手段13と、変動幅算出手段14と、記憶手段15と、路面状態推定手段16とを備える。車輪速変化量算出手段13~路面状態推定手段16の各手段は、例えば、コンピュータのソフトウェアにより構成される。
 加速度センサー11は、図1に示すように、ナックル31に取り付けられてバネ下前後加速度G xを検出する。ナックル31は、タイヤTを装着するホイール32とともに回転するホイールハブ33と軸受けを介して連結された車輪部30の非回転側部品(車両バネ下部品)で、図示しない車体にショックアブゾーバー34等のサスペンション部材により懸架される。
 車輪速センサー12は車輪の回転速度(以下、車輪速という)V wを検出するもので、本例では、外周部に歯車が形成され車輪とともに回転するローターと、このローターと磁気回路を構成するヨークと、磁気回路の磁束変化を検出するコイルとを備え、車輪の回転角度を検出する周知の電磁誘導型の車輪速センサーを用いている。ヨークとコイルとはナックル31に装着される。
[0023]
 本例では、後述するように、変動幅σ(ΔV w),σ(G x)を算出する関係上、車輪速V wのデータとバネ下前後加速度G xのデータを、それぞれ、車輪速センサー12及び加速度センサー11の出力をサンプリングしてA/D変換した値を用いている。
 なお、車両の走行状態を制御する車両制御手段にCAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)などのネットワークが形成されている車両では、車輪速V wのデータをネットワークから取得することが好ましい。
 車輪速変化量算出手段13は、車輪速センサー12で検出された車輪速V wの変化量である車輪速の変化量ΔV wを算出する。車輪速の変化量ΔV wとしては、サンプリング点間の差分を用いることができる。
 変動幅算出手段14は、加速度センサー11で検出したバネ下前後加速度G xの変動幅σ(G x)と、車輪速変化量算出手段13で算出した車輪速ΔV wの変化量の変動幅σ(ΔV w)とをそれぞれ算出する。所定時間T(例えば、T=0.5秒)分のバネ下前後加速度G xのデータと車輪速の変化量ΔV wのデータとはガウス分布で近似できるので、本例では、変動幅σ(G x)をそれぞれのガウス分布の標準偏差σとした。
 なお、変動幅σとしては所定時間内のデータバラつきを表す量であればよいので、半値幅や2σなどを用いてもよい。
 記憶手段15は、予め設定されたバネ下前後加速度の変動幅の最大値σ GMと車輪速の変化量の変動幅の最大値σ AMと、下記の式(1)に示す、予め求めておいた車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)とバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)との関係を示す一次式から成る変動幅判定式とを記憶する。
   σ(G x)=K・σ(ΔV w)+σ(g) ……(1)
 ここで、Kは比例係数、σ(g)は一次式の切片である。
 変動幅判定式(1)は、様々な路面で車両を走行させて求めたσ(G x)とσ(ΔV w)のデータから得られた式で、バネ下前後加速度の変動幅の最大値σ GMと車輪速の変化量の変動幅の最大値σ AMも上記データから設定することができる。
[0024]
 路面状態推定手段16は、変動幅算出手段14で算出されたバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)と車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)と、記憶手段15から取り出したバネ下前後加速度の変動幅の最大値σ GM、車輪速の変化量の変動幅の最大値σ AM、及び、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)とバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)との関係を示す変動幅判定式とを用いて、走行中の路面状態を推定する。
 具体的には、σ(G x)≦K・σ(ΔV w)+σ(g)、すなわち、算出されたバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)が、変動幅判定式(1)に算出された車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)を代入して計算されるバネ下前後加速度の変動幅の計算値σ cal(G x)=K・σ(ΔV w)+σ(g)以下である場合には路面が乾燥舗装路などの凹凸の少ない平滑路であると推定し、算出値σ(G x)が計算値σ cal(G x)を超えたときには走行中の路面が排水舗装路などの凹凸の比較的大きな路面であると推定する。
 本例では、更に、バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)がバネ下前後加速度の変動幅の最大値σ GMを超えているか、もしくは、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)が車輪速の変化量の変動幅の最大値σ AMを超えている場合には、路面が、未舗装路やひび割れが生じている路面、あるいは、シャーベット路などのように、路面の凹凸が大きくかつ不規則な通常の接地性が得られない路面である不整路であるとして、排水舗装路などの凹凸の比較的大きな路面と区別する。これにより、路面状態を平滑路と、凹凸の比較的大きな路面と、不整路の3つの状態のいずれかであるかを推定することができる。
[0025]
 次に、路面状態推定装置10を用いた路面状態を推定する方法について説明する。
 まず、加速度センサー11によりナックル31に作用する前後方向の加速度であるバネ下前後加速度G xを検出して変動幅算出手段14に送るとともに、車輪速センサー12により車輪速V wを検出して車輪速変化量算出手段13に送る。
 車輪速変化量算出手段13では、車輪速V wの変化量である車輪速の変化量ΔV wを算出して変動幅算出手段14に送る。
 変動幅算出手段14では、バネ下前後加速度G xの変動幅σ(G x)と、車輪速変化量算出手段13で算出した車輪速の変化量ΔV wの変動幅σ(ΔV w)とをそれぞれ算出して路面状態推定手段16に送る。
 路面状態推定手段16は、バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)と車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)と、バネ下前後加速度の変動幅の最大値σ GM、車輪速の変化量の変動幅の最大値σ VM、及び、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)とバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)との関係を示す変動幅判定式とを用いて、走行中の路面状態が平滑路か、凹凸の比較的大きな路面か、不整路かのいずれかであるかを推定する。具体的には、
   A;σ(ΔV w)>σ AMまたはσ(G x)>σ GM :不整路
   B;σ(G x)>K・σ(ΔV w)+σ(g):凹凸の比較的大きな路面
   C;σ(G x)≦K・σ(ΔV w)+σ(g):平滑路
と推定する。
 したがって、本実施の形態1の路面状態推定装置10を用いれば、タイヤにセンサーを装着することなく、不整路のような荒れた路面、あるいは平滑路のような凹凸の小さな路面といった路面の性状を容易に検知することができる。
[0026]
 なお、前記実施の形態1では、車輪速センサー12の出力から車輪速V wを求めたが、車両に設けられて車両の走行状態を制御する車両制御手段に情報システム(例:CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク))が形成されている車両では、車輪速V wを情報システムから取得することが好ましい。これにより、装置を簡略化できる。
[0027]
[実施例1]
 タイヤサイズが225/55R17のスタッドレスタイヤを左前輪に装着するとともに、左前輪のナックルに加速度センサーを装着した車両を、平滑路(平滑な舗装路と凍結路)、凹凸の比較的大きな路面(排水性舗装路)、及び、不整路において一定速度(30km/h~80km/h)で走行させて算出した車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)とバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)との関係を調べた。その結果を図2(a),(b)に示す。
 なお、変動幅のデータは6.5m走行毎に算出した。
 また、左輪の車輪速情報は車両の情報システム(CANのライン)から取得した。
 図2(a),(b)の横軸はσ(ΔV w)で縦軸はσ(G x)で、色のうすい丸印が平滑な舗装路のデータ、色の濃い丸印が凍結路のデータ、小さい方の四角が排水性舗装路のデータ、大きな四角が不整路のデータである。
 (b)図は(a)図の原点付近を拡大した図で、同図の太い一点鎖線で示す直線がσ(ΔV w)とσ(G x)との関係を示す変動幅判定式である。同図から、平滑路のデータは変動幅判定式のほぼ下側に分布し、凹凸の比較的大きな路面のデータは変動幅判定式のほぼ上側に分布していることが分かる。したがって、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)と前後加速度の変動幅σ(G x)との関係を調べれば、走行中の路面が乾燥舗装路などの凹凸の少ない平滑路であるか排水舗装路などの凹凸の比較的大きな路面であるかを推定できることが確認された。
 また、図2(a),(b)に示すように、不整路のデータは、一点鎖線で囲まれた領域R 0の外側、すなわち、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)の大きな領域、もしくは、バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)の大きな領域に分布している。
 したがって、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)の最大値σ GM、及び、車輪速の変化量の変動幅σ(G x)の最大値σ VMを適宜設定すれば、路面が、未舗装路やひび割れが生じている路面、あるいは、シャーベット路などのように、路面の凹凸が大きくかつ不規則な通常の接地性が得られない路面である不整路であるか否かを確実に推定することができることも確認された。
[0028]
実施の形態2.
 前記実施の形態1では、走行中の路面状態が平滑路か、凹凸の比較的大きな路面か、不整路かのいずれかであるかを推定したが、図3に示すような、ナックル31にバネ下前後加速度を検出するための加速度センサー11とバネ下横方向加速度検出手段である第2の加速度センサー11Yとを備えた路面状態推定装置10Yを用いれば、前記実施の形態1で推定された平滑路が路面摩擦係数μの大きな(μ>0.7)平滑舗装路か、路面摩擦係数μの小さな(μ<0.2)平滑な凍結路(アイスバーン)であるかを推定することができる。
 なお、加速度センサー11として、バネ下前後加速度G xとバネ下横方向加速度G yの2方向の加速度を検出できる加速度センサーを用いてもよい。
 路面状態推定装置10Yは、実施の形態1の路面状態推定装置10に車両バネ下の横方向加速度(バネ下横方向加速度)G yを検出する第2の加速度センサー11Yと、バネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)を算出するバネ下横方向加速度変動幅算出手段17と、平滑路判別手段18とを備える。
 平滑路判別手段18は、以下の式(3)に示す、変動幅算出手段14で算出されたバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)とバネ下横方向加速度変動幅算出手段17で算出されたバネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)との関係を示す第2の判別式とを用いて、路面状態推定手段16で推定された平滑路が平滑舗装路かアイスバーンかを判別する。
   σ(G y)=a・σ(G x)+b ……(3)
[0029]
 ここで、第2の判別式について説明する。
 走行中、バネ下部分は接地面からの加振、あるいはタイヤ自身が発生する力によって振動する。路面摩擦係数μが高い場合には路面からの拘束力が強いため、大きく動くことはできない。特に、タイヤの転動方向に垂直な横方向(タイヤ幅方向)には動き難い。しかし、路面摩擦係数μが低くなると路面からの拘束力が小さくなるので横方向に動き易くなり、その結果、バネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)が大きくなる。
 すなわち、路面摩擦係数μが低い路面では、バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)に対するバネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)の比率が大きくなる。
 図4は、タイヤサイズが225/55R17のスタッドレスタイヤを左前輪に装着するとともに、左前輪のナックルに加速度センサーを装着した車両を、平滑な舗装路(μ≒0.8)とアイスバーン(μ≒0.18)において一定速度(30km/h)でそれぞれ走行させて算出したバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)とバネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)との関係を示す図で、変動幅のデータは6.5m走行毎に算出した。
 同図の丸印で示す平滑な舗装路におけるデータは太い一点鎖線で示す直線のほぼ下側に分布し、同図の十字印で示すアイスバーンにおけるデータは直線のほぼ上側に分布していることが分かる。したがって、この直線を表す式を上述した第2の判別式とすれば、路面状態推定手段16で推定された平滑路が平滑舗装路かアイスバーンかを判別することができる。
[0030]
実施の形態3.
 前記実施の形態2では、バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)とバネ下横方向加速度の変動幅σ(G y)との関係から、路面状態推定手段16で推定された平滑路が平滑舗装路かアイスバーンかを判別したが、バネ下前後加速度G xとバネ下横方向加速度G yとの積の絶対値|G x×G y|(実際には、積の平均値の絶対値)と、バネ下前後加速度の絶対値|G x|とバネ下横方向加速度の絶対値|G y|との積|G x|×|G y|(実際には、絶対値の積の平均値)とを算出し、算出された|G x×G y|と|G x|×|G y|との関係から、推定された平滑路が乾燥舗装路であるか否かを判定するようにしてもよい。
 図5は、本実施の形態3に係る路面状態推定装置10Pの構成を示す図で、路面状態推定装置10Pは、実施の形態1の路面状態推定装置10に車両バネ下の横方向加速度(バネ下横方向加速度)G yを検出する第2の加速度センサー11Yと、G x×G yの平均値の絶対値とG xの絶対値|G x|とG yの絶対値|G y|との積|G x|×|G y|の平均値とを算出する加速度積算出手段19と、平滑路判別手段18Pとを備える。
 平滑路判別手段18Pでは、加速度積算出手段19で算出されたG x×G yの平均値の絶対値(|ave(G x×G y)|)と、|G x|×|G y|の平均値(ave(|G x|×|G y|))と、|ave(G x×G y)|とave(|G x|×|G y|)との関係を示す判別曲線とを用いて、路面状態推定手段16で推定された平滑路が平滑舗装路かアイスバーンかを判別する。
[0031]
 ここで、判別曲線について説明する。
 走行中のバネ下部分は接地面からの加振、タイヤ自身に発生する力、車両の姿勢変動によるサスペンションを介した力等が作用するが、路面摩擦係数μの低い平滑路では路面からの拘束が小さくなるのでバネ下が動き易くなる。その結果、バネ下前後加速度G xとバネ下横方向加速度G yとの間に位相差が生じ、G x×G yの正負が変動する。そこで、|G x×G y|の大きさと|G x|×|G y|の大きさとの関係を調べることで、推定された平滑路が平滑な乾燥舗装路であるか、アイスバーンのような平滑な凍結路であるかを判定することができるので、走行中の路面状態を更に精度よく推定することができる。
 図6は、タイヤサイズが225/55R17のスタッドレスタイヤを左前輪に装着するとともに、左前輪のナックルに加速度センサーを装着した車両を、平滑な舗装路(μ≒0.8)とアイスバーン(μ≒0.18)において一定速度(40km/h)でそれぞれ走行させて算出した|ave(G x×G y)|とave(|G x|×|G y|)との関係を示す図で、平均値のデータは6.5m走行毎に算出した。
 同図の十字印で示す平滑な舗装路におけるデータは太い一点鎖線で示す曲線のほぼ上側に分布し、同図の丸印で示すアイスバーンにおけるデータは曲線のほぼ下側に分布していることが分かる。
 すなわち、路面摩擦係数μが高い場合には、積の平均値の絶対値|ave(G x×G y)|は大きくなり、理想的には、個々の絶対値|G x|,|G y|の積の平均ave(|G x|×|G y|)に等しくなるので、平滑な舗装路におけるデータは曲線のほぼ上側に分布する。
 一方、路面摩擦係数μが低い場合にはG x×Gの正負が変動するため、平均値ave(G x×G y)の絶対値|ave(G x×G y)|は小さくなるので、アイスバーンにおけるデータは曲線のほぼ下側に分布する。
 したがって、この曲線を表す近似式、もしくは、曲線により領域分けされたマップ等を予め求めておけば、路面状態推定手段16で推定された平滑路が平滑舗装路かアイスバーンかを判別することができる。
[0032]
実施の形態4.
 前記実施の形態1では、走行中の路面状態が平滑路か、凹凸の比較的大きな路面か、不整路かのいずれかであるかを推定したが、バネ下前後加速度の時系列波形を周波数分析して得られたバネ下前後加速度の周波数スペクトルを用いれば、前記実施の形態1で推定された路面が凹凸のある路面である場合に、凹凸のある路面が滑り易い路面であるか否かを容易に推定することができる。
 すなわち、凹凸のある路面では、路面からの入力によりタイヤに励起される振動のピーク周波数f pの位置が路面の滑り易さに依存することから、車輪速V wから求められるピーク周波数f pの位置と実際に測定したピーク周波数f pの位置との関係を求めれば、凹凸のある路面が排水性舗装路面などの高μ路であるか、雪路などの滑り易い路面であるかを容易に推定することができる。
 図7は、本実施の形態4に係る路面状態推定装置10Fの機能ブロック図である。
 路面状態推定装置10Fは、バネ下前後加速度検出手段としての加速度センサー11と、車輪速検出手段としての車輪速センサー12と、車輪速変化量算出手段13と、変動幅算出手段14と、記憶手段15と、路面状態推定手段16と、周波数分析手段21と、ピーク周波数抽出手段22と、低μ路判別手段23とを備える。
 実施の形態1と同符号の、加速度センサー11と車輪速センサー12、及び、車輪速変化量算出手段13~路面状態推定手段16の各手段は、実施の形態1と同一構成であるので、その説明を省略する。
 なお、周波数分析手段21、ピーク周波数抽出手段22、及び、低μ路判別手段23の各手段も、例えば、コンピュータのソフトウェアにより構成される。
[0033]
 周波数分析手段21は、加速度センサー11で検出したバネ下前後加速度の時系列波形を周波数分析してバネ下前後加速度の周波数スペクトルを求める。
 図8はバネ下前後加速度の周波数スペクトルの一例を示す図で、横軸は周波数、縦軸はバネ下前後加速度G xである。同図の太い実線が排水性舗装路を走行したときの周波数スペクトルで、細い実線が雪路を走行したときの周波数スペクトルである。
 ピーク周波数抽出手段22は、バネ下前後加速度の周波数スペクトルの200Hz~230Hz帯域内におけるピーク位置の周波数であるピーク周波数f pを抽出する。
 走行中、タイヤには路面からの衝撃で固有の振動が励起されるが、例えば、排水性舗装路や雪路のような、凹凸のある路面では、乾燥アスファルト路のような平滑舗装路に比べてタイヤの振動が大きくなる。この振動のピークの位置、すなわち、ピーク周波数f pは路面の滑り易さに依存する傾向がある。具体的には、図8に示すように、雪路のような路面摩擦係数μが0.3よりも小さな滑り易い路面では、同図の矢印で示すピーク周波数f pの位置は低周波側に移動する。その理由としては、路面とタイヤトレッドとの力学的な結合(バネ定数)が滑り易い路面では弱くなったためと考えられる。
 なお、乾燥アスファルト路のような平滑舗装路でもピークは観測されるが、排水性舗装路や雪路を走行した場合と比較して振動レベルが低いので、ピーク周波数抽出手段22では、ピーク周波数f pにおける振動レベルG x(f p)が予め設定した閾値Kより小さい場合には、ピーク周波数f pの抽出は行わずに、路面が平滑路であるという信号を低μ路判別手段23に送る。
 低μ路判別手段23は、ピーク周波数f pと車輪速V wとから、前述した下記の式(2)で示す周波数判定式を用いて走行中の路面状態を推定する。
   f p=a・V w+b ……(2)
[0034]
 次に、路面状態推定装置10Fを用いて路面状態を推定する方法について説明する。
 まず、加速度センサー11によりナックル31に作用する前後方向の加速度であるバネ下前後加速度G xを検出して変動幅算出手段14に送るとともに、車輪速センサー12により車輪速V wを検出して車輪速変化量算出手段13に送る。
 車輪速変化量算出手段13では、車輪速V wの変化量である車輪速の変化量ΔV wを算出して変動幅算出手段14に送る。
 変動幅算出手段14では、バネ下前後加速度G xの変動幅σ(G x)と、車輪速変化量算出手段13で算出した車輪速の変化量ΔV wの変動幅σ(ΔV w)とをそれぞれ算出して路面状態推定手段16に送る。
 路面状態推定手段16は、バネ下前後加速度の変動幅σ(G x)と車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)と、バネ下前後加速度の変動幅の最大値σ GM、車輪速の変化量の変動幅の最大値σ VM、及び、車輪速の変化量の変動幅σ(ΔV w)とバネ下前後加速度の変動幅σ(G x)との関係を示す変動幅判定式とを用いて、走行中の路面状態が平滑路か、凹凸のある路面か、不整路かのいずれかであるかを推定する。具体的には、
   A;σ(ΔV w)>σ AMまたはσ(G x)>σ GM :不整路
   B;σ(G x)>K・σ(ΔV w)+σ(g) :凹凸のある路面
   C;σ(G x)≦K・σ(ΔV w)+σ(g) :平滑路
と推定する。
[0035]
 路面状態推定手段16により、走行中の路面が凹凸のある路面であると判定された場合には、この凹凸のある路面が滑り易い路面か否かを推定する。
 具体的には、周波数分析手段21により、検出されたバネ下前後加速度G xの時系列波形を周波数分析し、図8に示すような、バネ下前後加速度の周波数スペクトルを求め、この周波数スペクトルの200Hz~230Hz帯域内におけるピーク位置の周波数であるピーク周波数f pを抽出する。
 そして、抽出されたピーク周波数f pと、車輪速センサー12により検出された車輪速V wと、周波数判定式(2)とを用いて走行中の路面状態を推定する。
   f p=a・V w+b ……(2)
 具体的には、f p>a・V w+bであれば走行中の路面が排水性舗装路面などの路面摩擦係数の高い(μ>0.7)路面であると推定し、f p≦a・V w+bであれば走行中の路面が雪路などの路面摩擦係数の低い(μ<0.3)滑り易い路面であると推定する。
 したがって、路面が凹凸のある路面である場合には、路面が排水性舗装路面などの高μ路であるか、雪路などの滑り易い路面であるかを容易に推定することができる。
[0036]
[実施例2]
 左前輪のナックルに加速度センサーを装着した車両を、排水性舗装路、及び、雪道において一定速度(40km/h,50km/h及び60km/h)で走行させ、6.5m走行毎に周波数スペクトルを算出し、過去5回の周波数スペクトルの平均を求め、この周波数スペクトルの200Hz~230Hz帯域でのピーク周波数f pを抽出し、車輪速V wとピーク周波数f pとの関係を調べた。その結果を図9に示す。なお、使用したタイヤはサイズが225/55R17のスタッドレスタイヤである。
 また、左輪の車輪速情報は車両の情報システム(CANのライン)から取得した。
 図9の横軸は車輪速で縦軸は周波数である。また、十字印が排水性舗装路でのデータで、X印が雪路のデータである。
 同図から明らかなように、路面摩擦係数が小さく滑り易い路面である雪路のデータは、同図の直線で示す周波数判別式のほぼ下側に分布し、路面摩擦係数の大きな排水性舗装路のデータは周波数判別式ほぼ上側に分布している。したがって、車輪速V wとピーク周波数f pとの関係を調べれば、走行中の路面が滑り易い状態か否かを確実に推定することができることが確認された。
[0037]
 以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。

符号の説明

[0038]
 10 路面状態推定装置、
11 加速度センサー、11Y 第2の加速度センサー、
12 車輪速センサー、13 車輪速変化量算出手段、
14 変動幅算出手段、15 記憶手段、16 路面状態推定手段、
17 バネ下横方向加速度変動幅算出手段、
18,18P 平滑路判別手段、19 加速度積算出手段、
21 周波数分析手段、22 ピーク周波数抽出手段、
23 低μ路判別手段、
30 車輪部、31 ナックル、32 ホイール、33 ホイールハブ、
34 ショックアブゾーバー、T タイヤ。

請求の範囲

[請求項1]
 車両のバネ下に取付けられた加速度センサーによりバネ下前後加速度を検出するステップと、
車輪速を検出するステップと、
前記検出された車輪速の変化量を算出するステップと、
前記算出された車輪速の変化量の変動幅と前記検出されたバネ下前後加速度の変動幅とを算出するステップと、
前記車輪速の変化量の変動幅と前記バネ下前後加速度の変動幅との関係から路面状態を推定するステップと、
を有する路面状態推定方法。
[請求項2]
 前記路面状態を推定するステップでは、
前記算出されたバネ下前後加速度の変動幅が、前記車輪速の変化量の変動幅を予め求めておいたバネ下前後加速度の変動幅と車輪速の変化量の変動幅との関係を示す変動幅判定式に代入して得られたバネ下前後加速度の変動幅の計算値以下である場合に、走行中の路面が平滑路であると推定する請求項1に記載の路面状態推定方法。
[請求項3]
 前記路面状態を推定するステップでは、
前記車輪速の変化量の変動幅が予め設定された最大車輪速変化量変動幅を超えた場合、または、前記算出されたバネ下前後加速度の変動幅が予め設定された最大加速度変動幅を超えた場合には、走行中の路面が不整路であると推定する請求項1または請求項2に記載の路面状態推定方法。
[請求項4]
 前記バネ下前後加速度に加えて車両バネ下の横方向加速度であるバネ下横方向加速度を検出して、前記バネ下横方向加速度の変動幅を算出し、
前記算出されたバネ下横方向加速度の変動幅と前記バネ下前後加速度の変動幅との関係から、前記推定された平滑路が乾燥舗装路であるか否かを判定する請求項2に記載の路面状態推定方法。
[請求項5]
 前記バネ下前後加速度に加えて車両バネ下の横方向加速度であるバネ下横方向加速度を検出し、
前記バネ下前後加速度と前記バネ下横方向加速度との積の絶対値と、前記バネ下前後加速度の絶対値と前記バネ下横方向加速度の絶対値との積とを算出し、
前記算出されたバネ下前後加速度とバネ下横方向加速度との積の絶対値と、前記バネ下前後加速度の絶対値と前記バネ下横方向加速度の絶対値との積との関係から、前記推定された平滑路が乾燥舗装路であるか否かを判定する請求項2に記載の路面状態推定方法。
[請求項6]
 前記路面状態を推定するステップは、
前記車輪速の変化量の変動幅と前記バネ下前後加速度の変動幅との関係から走行中の路面が凹凸のある路面であるか否かを推定するステップと、
前記推定された路面が凹凸のある路面である場合に、前記検出されたバネ下前後加速度を周波数分析して求められる周波数スペクトルの200Hz~230Hz帯域内におけるピーク位置の周波数であるピーク周波数を算出し、前記ピーク周波数と車輪速とから前記凹凸のある路面が滑り易い路面か否かを推定するステップとを備え、
前記走行中の路面が凹凸のある路面であるか否かを推定するステップでは、
前記算出されたバネ下前後加速度の変動幅が、前記車輪速の変化量の変動幅を予め求めておいたバネ下前後加速度の変動幅と車輪速の変化量の変動幅との関係を示す変動幅判定式に代入して得られたバネ下前後加速度の変動幅の計算値を超えた場合に、走行中の路面が凹凸のある路面であると推定し、
前記凹凸のある路面が滑り易い路面か否かを推定するステップでは、
予め求めておいたピーク周波数と車輪速との関係を示す周波数判定式に前記検出された車輪速を代入して得られたピーク周波数の計算値よりも前記検出されたピーク周波数が小さい場合に、前記凹凸のある路面が、路面摩擦係数μが0.3よりも小さい滑り易い路面であると推定する請求項1に記載の路面状態推定方法。
[請求項7]
 前記走行中の路面が凹凸のある路面であるか否かを推定するステップにおいて、
前記算出された車輪速の変化量の変動幅が予め設定された最大車輪速変化量変動幅を超えた場合、または、前記バネ下前後加速度の変動幅が予め設定された最大加速度変動幅を超えた場合には、走行中の路面が不整路であると推定する請求項6に記載の路面状態推定方法。
[請求項8]
 車両のバネ下に取付けられてバネ下前後加速度を検出するバネ下前後加速度検出手段と、
車輪速を検出する車輪速検出手段と、
前記検出された車輪速の変化量を算出する車輪速変化量算出手段と、
前記車輪速の変化量の変動幅と前記バネ下前後加速度の変動幅とを算出する変動幅算出手段と、
予め求めておいた車輪速の変化量の変動幅とバネ下前後加速度の変動幅との関係を示す変動幅判定式を記憶する記憶手段と、
前記算出された車輪速の変化量の変動幅とバネ下前後加速度の変動幅と前記変動幅判定式とを用いて走行中の路面状態を推定する路面状態推定手段とを備えた路面状態推定装置。
[請求項9]
 車両のバネ下に取付けられてバネ下横方向加速度を検出するバネ下横方向加速度検出手段と、
前記検出されたバネ下横方向加速度の変動幅を算出するバネ下横方向加速度変動幅算出手段とを備え、
前記路面状態推定手段は、
前記算出されたバネ下横方向加速度の変動幅と前記バネ下前後加速度の変動幅との関係から、前記推定された路面が乾燥舗装路であるか否かを判定する請求項8に記載の路面状態推定装置。
[請求項10]
 車両のバネ下に取付けられてバネ下横方向加速度を検出するバネ下横方向加速度検出手段と、
前記バネ下前後加速度と前記バネ下横方向加速度との積の絶対値と、前記バネ下前後加速度の絶対値と前記バネ下横方向加速度の絶対値との積とを算出する加速度積算出手段とを備え、
前記路面状態推定手段は、
前記バネ下前後加速度とバネ下横方向加速度との積の絶対値と、前記バネ下前後加速度の絶対値とバネ下横方向加速度の絶対値との積との関係から、前記推定された路面が乾燥舗装路であるか否かを判定する請求項8に記載の路面状態推定装置。
[請求項11]
 前記検出されたバネ下前後加速度を周波数分析する周波数分析手段と、
前記周波数分析により得られた周波数スペクトルの200Hz~230Hz帯域内におけるピーク位置の周波数であるピーク周波数を算出するピーク周波数算出手段とを備え、
前記記憶手段は、
予め設定された車輪速の最大変動幅、バネ下前後加速度の最大変動幅、及び、バネ下前後加速度の変動幅と車輪速の変化量の変動幅との関係を示す変動幅判定式を記憶し、
前記路面状態推定手段は、
前記算出されたバネ下前後加速度の変動幅が、前記車輪速の変化量の変動幅を前記変動幅判定式に代入して得られたバネ下前後加速度の変動幅の計算値より大きく、かつ、前記車輪速の変化量の変動幅と前記バネ下前後加速度の変動幅とがそれぞれ前記車輪速の変化量の最大変動幅及び前記バネ下前後加速度の最大変動幅以下であるときに、前記路面が凹凸のある路面であると判定し、
前記判定された路面が凹凸のある路面である場合には、
予め求めておいたピーク周波数と車輪速との関係を示す周波数判定式に前記検出された車輪速を代入して得られたピーク周波数の計算値よりも前記検出されたピーク周波数が小さい場合に、前記凹凸のある路面が、路面摩擦係数μが0.3よりも小さい滑り易い路面であると推定する請求項8に記載の路面状態推定装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]