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1. WO2013005261 - 流体封入式防振装置

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明 細 書

発明の名称 流体封入式防振装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026  

発明の効果

0027  

図面の簡単な説明

0028  

発明を実施するための形態

0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081  

符号の説明

0082  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 流体封入式防振装置

技術分野

[0001]
 本発明は、例えば、自動車のエンジンマウントやサスペンションマウント等に用いられて、内部に封入された流体の流動作用等に基づいて防振効果が発揮される流体封入式防振装置に関する。

背景技術

[0002]
 従来から、防振装置の一種として、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、内部に非圧縮性流体を封入して流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を得るようにした流体封入式防振装置が知られている。具体的には、例えば特許第2805305号公報(特許文献1)や特開2009-275910号公報(特許文献2)に記載のものがある。これらの流体封入式防振装置は、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成された平衡室を有しており、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されていると共に、両室がオリフィス通路によって相互に連通された構造とされている。そして、第一の取付部材と第二の取付部材との間への振動入力時に、受圧室と平衡室との間に惹起される相対的な圧力変動に基づいてオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて防振効果が発揮されるようになっている。
[0003]
 ところで、オリフィス通路は、予めチューニングされた周波数域では有効な防振効果を発揮し得るが、特にチューニング周波数よりも高周波数域の振動入力時に流動抵抗が著しく大きくなることから防振性能の大幅な低下が問題となり易い。
[0004]
 そこで、特許文献1,2に示されているように、オリフィス通路のチューニング周波数を外れた高周波小振幅の振動入力時に、受圧室の圧力変動を吸収する液圧吸収機構が提案されている。かかる液圧吸収機構は、受圧室と平衡室との間に配設された液圧吸収ゴム板によって構成されており、液圧吸収ゴム板の各一方の面に及ぼされる受圧室と平衡室の圧力差に基づいて該液圧吸収ゴム板が変位又は変形することにより、受圧室の小さな圧力変動が吸収されるようになっている。
[0005]
 また、衝撃的な大荷重入力時における受圧室の急激な圧力変動を解消させてキャビテーションに起因する異音の発生などを防止する目的で、液圧吸収機構を構成する液圧吸収ゴム板には、板厚方向に貫通するスリットが設けられて弾性舌片が形成されている。この弾性舌片は、液圧吸収ゴム板の弾性によりスリットを閉鎖状態に維持しており、衝撃的な大荷重入力で受圧室に急激な圧力変動が惹起された際にだけ弾性舌片が受圧室側または平衡室側に弾性変形してスリットを開くことで、受圧室の過大な圧力変動を回避するようになっている。
[0006]
 ところが、このような従来構造の流体封入式防振装置について本発明者が検討したところ、液圧吸収ゴム板にスリットを設けることに伴い、オリフィス通路による防振効果等が要求される通常の入力振動に対する防振性能に悪影響を及ぼすおそれのあることがわかった。即ち、受圧室にそれ程大きな圧力変動が惹起されず、本来ではスリットが閉鎖状態に維持される程度の受圧室の圧力変動を生ずるに過ぎない振動入力時にも、液圧吸収ゴム板にスリットを設けたことによる防振性能の低下が認められる場合等があったのである。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特許第2805305号公報
特許文献2 : 特開2009-275910号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、受圧室の過大な圧力変動を回避等するために液圧吸収ゴム板にスリットを設けて弾性舌片を形成した流体封入式防振装置において、通常の入力振動に対する防振性能への悪影響が抑えられる新規な構造を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0009]
 かかる課題を解決するために為された本発明の第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室とが形成されて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されており、オリフィス通路によって該受圧室と該平衡室が相互に連通されている流体封入式防振装置において、前記受圧室と前記平衡室との間に液圧吸収ゴム板が配設されており、該液圧吸収ゴム板の一方の面に前記受圧室の圧力が及ぼされると共に、該液圧吸収用ゴム板の他方の面に前記平衡室の圧力が及ぼされることにより、それら受圧室と平衡室の圧力差に基づく該液圧吸収ゴム板の変位や変形に基づいて該受圧室の圧力変動を吸収する液圧吸収機構が構成されている一方、該液圧吸収ゴム板にはスリットにより弾性舌片が形成されており、該弾性舌片の弾性変形により該スリットが開口して該受圧室と該平衡室を短絡させる短絡機構が構成されていると共に、該弾性舌片における基端部から先端部に至る長さ方向の中間部分において厚肉の補強部が一体形成されていることを特徴とする。
[0010]
 このような本態様に従う構造の流体封入式防振装置では、オリフィス通路がチューニングされた低周波大振幅振動に対してオリフィス通路を流動する流体の共振作用等に基づく防振効果が発揮される。また、高周波小振幅振動に対しては、液圧吸収用ゴム板の変位や変形に基づく受圧室の圧力吸収作用が発揮されて、オリフィス通路の実質的な閉鎖に伴う著しい高動ばね化が回避されることで良好な防振効果を得ることが出来る。更にまた、衝撃的な大荷重の入力には、液圧吸収用ゴム板に形成された弾性舌片が弾性変形してスリットが開くことにより、液圧吸収用ゴム板で仕切られた受圧室側と平衡室側とが連通状態とされる。これにより、受圧室の負圧等の大きな圧力が可及的速やかに解消されることとなって、例えばキャビテーションに起因する異音や振動の発生を低減乃至は回避することが可能となる。
[0011]
 加えて、本態様の流体封入式防振装置では、液圧吸収ゴム板の弾性舌片が部分的に厚肉とされて補強部が形成されていることにより、液圧吸収ゴム板や弾性舌片の全体的なばね特性への大きな影響を回避しつつ、弾性舌片における微小な弾性変形や不規則な弾性変形等が抑えられ得る。その結果、オリフィス通路を通じての流体流動による防振効果や液圧吸収用ゴム板の変位や変形による防振効果などが要求される通常の振動入力時に、スリットでばね定数が比較的小さくされた弾性舌片が不規則に振動や微小変形或いは共振変形することが抑えられて、弾性舌片ひいては液圧吸収ゴム板全体における形状の安定性が図られる。これにより、受圧室内圧力の速やかな吸収が要求されない通常の振動入力状況下において、スリットや弾性舌片を設けたことに起因する防振性能への悪影響が抑えられ、目的とする防振効果が有効に発揮され得るのである。
[0012]
 すなわち、本発明者が検討したところ、液圧吸収ゴム板に形成された弾性舌片は、そのばね特性や入力振動の周波数等の特定条件下で弾性変形して形状が不安定になるおそれがあり、弾性舌片が不安定に変形等することよって防振特性に悪影響が及ぼされるおそれがあるとの知見を得た。かかる知見に基づいて、本発明を完成したものであり、本発明では、弾性舌片において望まれない不安定な変形を抑えることにより、防振特性の安定化を達成し得たのである。
[0013]
 具体的には、弾性舌片において問題となる不安定な変形や共振のような微小な繰返し変形は、特に弾性舌片の長さ方向の中間部分を補強することで、大荷重入力時におけるスリットによる液圧解消作用を損なうことなく、効果的に抑えることができることを見いだした。蓋し、弾性舌片の基端部は液圧吸収ゴム板で支持されて不安定な変形が抑えられており、この基端部に更に補強部を設けてばね剛性を上げることが必要性に乏しいだけでなく、弾性舌片の変形によるスリットの開放作動に対する変形抵抗が大きくなり過ぎてスリットの開放作動に支障がでるおそれがある。また、弾性舌片の先端部に補強部を設けると、弾性舌片の先端マスが大きくなり、弾性舌片自体の共振的な弾性変形が大きくなってしまうおそれがあると共に、弾性舌片の初期の変形反応が鈍くなってスリットが速やかに開放され難くなるおそれがあるからである。
[0014]
 また、特に、弾性舌片の補強部を、ゴム弾性体で一体形成したことにより、部品点数の増加や製造工程の複雑化などを伴うことなく、弾性舌片の変形態様の安定化が簡易に実現され得、可動ゴム板自体の変位や変形によって発揮される防振特性への悪影響も回避され得るのである。
[0015]
 本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る流体封入式防振装置において、前記液圧吸収ゴム板には放射状に延びる複数本のスリットが設けられており、前記弾性舌片が、それらスリットの放射中心回りで隣り合うスリット間に位置して周方向に複数形成されているものである。
[0016]
 本態様の流体封入式防振装置では、特に3本以上のスリットが周方向で適当な間隔をもって、例えば等間隔をもって形成されることにより、扇形の平板形状をもって複数枚の弾性舌片が優れたスペース効率をもって容易に形成され得る。
[0017]
 本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る流体封入式防振装置において、放射状に延びる複数本の前記スリットの各先端をつなぐ外接円よりも内周側に位置して、前記弾性舌片における前記補強部が形成されているものである。
[0018]
 本態様の流体封入式防振装置では、放射状のスリットで形成された各弾性舌片において、基端部分におけるばね特性への悪影響を抑えつつ、特に不規則に弾性変形し易いと考えられる各弾性舌片の長さ方向の中間部分を効率的に補強することができる。それ故、衝撃的な大荷重の入力時に各弾性舌片が変形してスリットが開かれることによるキャビテーション異音の防止などの効果と、各弾性舌片の変形態様の安定化によるオリフィス通路や液圧吸収機構による防振効果との、両者の両立が一層高度に実現可能となる。
[0019]
 本発明の第四の態様は、前記第一~第三の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記弾性舌片における前記補強部が、該弾性舌片の表裏両側に向かって突出するゴム突部により構成されているものである。
[0020]
 本態様の流体封入式防振装置では、ゴム突部による弾性舌片の補強効果が表裏両側で略同じとされることで、弾性舌片の弾性特性が安定して、補強部による弾性舌片の不安定な変形抑制効果がより効果的に発揮され得る。
[0021]
 本発明の第五の態様は、前記第一~第四の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記弾性舌片における前記補強部が、該弾性舌片の幅方向に延びる突条により構成されているものである。
[0022]
 本態様の流体封入式防振装置では、受圧室内の過大な圧力回避に際してのスリット開口のための弾性舌片の変形特性を大きく損なうことなく、弾性舌片の不安定な変形を効率的に抑えることの出来る補強部が効果的に実現され得ることとなり、特に弾性舌片の幅方向寸法が大きい場合にも有効である。例えば、放射状に延びる複数本のスリットにより各弾性舌片が扇板形状で形成される場合には、各弾性舌片における補強部が、スリットの放射中心回りで周方向に延びる環状の突条によって形成され得る。なお、本態様の突条は、弾性舌片の長さ方向で所定距離を隔てて複数本形成することも可能である。
[0023]
 本発明の第六の態様は、前記第一~第五の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記液圧吸収ゴム板には該液圧吸収ゴム板よりも剛性が大きい硬質補強板が固着されていると共に、該硬質補強板には板厚方向の貫通窓が形成されており、該液圧吸収ゴム板において該貫通窓を覆蓋する部分に前記スリットが設けられて前記弾性舌片が形成されているものである。
[0024]
 本態様の流体封入式防振装置では、液圧吸収ゴム板そのものの弾性変形が硬質補強板で制限されることにより、液圧吸収ゴム板の過大な変形や不規則な変形が防止される。それ故、液圧吸収ゴム板の全体的な過大変形に起因するオリフィス通路の防振効果への悪影響が防止されて、目的とする防振効果を一層有利に得ることが可能となる。また、各弾性舌片が基端側にも、硬質補強板の補強作用が及ぼされることにより、弾性舌片の変形態様の安定性の更なる向上も図られ得る。
[0025]
 本発明の第七の態様は、前記第一~第六の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記液圧吸収ゴム板における板厚方向の変位を許容し且つ変位量を制限して、該液圧吸収ゴム板を支持せしめるゴム板支持部が、前記第二の取付部材に設けられているものである。
[0026]
 本態様の流体封入式防振装置では、液圧吸収ゴム板の変位量が確実に制限されることで、液圧吸収ゴム板の全体的な過大変形や過大変位に起因するオリフィス通路の防振効果への悪影響が防止され得る。具体的には、例えば液圧吸収ゴム板が、前記第六の態様に係る硬質補強板を備えること等により硬質である場合には、液圧吸収ゴム板の外周部分を板厚方向両側で所定の隙間をもって支持せしめる凹形の環状溝などによって、本態様のゴム板支持部が実現され得る。また、そのような硬質補強板を備えておらず弾性変形可能な液圧吸収ゴム板の場合には、例えばそれぞれ複数の透孔を備えた規制板を、液圧吸収ゴム板の板厚方向両側で所定の隙間をもって配設し、それら両規制板への液圧吸収ゴム板の当接によって変位量を制限することでゴム板支持部が実現されうる。

発明の効果

[0027]
 本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置では、通常の振動入力時において、弾性舌片の不規則な変形等が補強部で抑えられることにより、オリフィス通路や液圧吸収用ゴム板による防振効果を十分に確保され得る。しかも、衝撃的大荷重の入力等に因り受圧室に過大な圧力変動が惹起された際には、弾性舌片が弾性変形して受圧室内圧力がスリットを通じて速やかに解消されることにより、キャビテーション等の問題が効果的に防止され得る。

図面の簡単な説明

[0028]
[図1] 本発明の第一の実施形態としての流体封入式防振装置を示す縦断面図であって、図2のI-I断面図。
[図2] 同流体封入式防振装置を構成する可動部材の平面図。
[図3] 同可動部材の底面図。
[図4] 図2のIV-IV断面図。
[図5] 図2のV-V断面図。
[図6] 本発明の別の形態としての可動部材の平面図。
[図7] 同可動部材の底面図。
[図8] 図6のVIII-VIII断面図。

発明を実施するための形態

[0029]
 以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
[0030]
 先ず、図1には、本発明に係る第一の実施形態としての流体封入式防振装置10が示されている。この流体封入式防振装置10は、防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材12と、防振連結される他方の部材に取り付けられる第二の取付部材14が、本体ゴム弾性体16で相互に弾性連結された構造を有している。そして、例えば、第一の取付部材12が防振連結される一方の部材である自動車のパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材14が防振連結される他方の部材である自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーによって防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、主たる振動入力方向である図1中の上下方向を言うものとする。
[0031]
 より詳細には、第一の取付部材12は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成された高剛性の部材とされており、略円形ブロック形状を有している。また、第一の取付部材12の上端部には、径方向外方に向かって広がるフランジ部18が一体形成されている。更に、第一の取付部材12の上端面に開口して中心軸上を延びるようにボルト穴20が形成されており、ボルト穴20の内周面には雌ねじが刻設されている。そして、第一の取付部材12は、例えば、ボルト穴20に螺着される図示しない取付ボルトによって図示しないパワーユニットにボルト固定されるようになっている。
[0032]
 一方、第二の取付部材14は、第一の取付部材12と同様の金属材で形成された高剛性の部材とされており、全体として薄肉大径の略円筒形状を有している。また、第二の取付部材14の軸方向中間部分には、くびれ部22が設けられている。くびれ部22は、軸方向下方に向かって次第に縮径するテーパ部24と、テーパ部24の下端部から外周側に向かって広がる環状の段差部26を含んで構成されている。また、第二の取付部材14の下端部には、外周側に向かって広がる環状の段差28が形成されており、段差28の外周縁部には下方に向かって延び出す円環形状のかしめ片30が一体形成されている。このような第二の取付部材14は、例えば、第二の取付部材14に外嵌固定される図示しないブラケットが車両ボデーに取り付けられること等により、車両ボデーに固定されるようになっている。
[0033]
 上述の如き第一の取付部材12と第二の取付部材14は、同一中心軸上に配設されると共に、第一の取付部材12が第二の取付部材14に対して軸方向上方に離隔配置されている。そして、それら第一の取付部材12と第二の取付部材14の間に本体ゴム弾性体16が介装されることにより、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16で弾性的に連結されている。
[0034]
 本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円錐台形状を有するゴム弾性体で形成されている。また、本体ゴム弾性体16の径方向中央部分には、大径側端面(図1中、下側の端面)に開口するように大径の円形凹所32が形成されている。また、本体ゴム弾性体16の小径側端部には、第一の取付部材12が差し込まれており、フランジ部18の下面が本体ゴム弾性体16の小径側の軸方向端面に重ね合わされるようにして加硫接着されている。一方、本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周面には、第二の取付部材14の上部およびテーパ部24が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16で相互に連結されている。なお、本実施形態における本体ゴム弾性体16は、第一の取付部材12と第二の取付部材14を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
[0035]
 さらに、本体ゴム弾性体16と一体形成されたシールゴム層34が第二の取付部材14の内周面に固着されている。シールゴム層34は、薄肉のゴム膜で形成されており、第二の取付部材14における段差部26の内周面から段差28の内周縁部に亘る部位を覆うように被着形成されている。
[0036]
 また、第二の取付部材14の下端開口部には、可撓性膜36が配設されている。可撓性膜36は、薄肉大径の略円形ドーム形状を有するゴム膜で形成されており、弾性変形が容易に許容されるようになっている。また、可撓性膜36の外周縁部には、固定金具38が固着されている。固定金具38は、略円環形状を有しており、筒状の固着部40と該固着部40の上端から外周側に向かって広がる鍔状部42を一体的に備えている。そして、固定金具38の固着部40に対して可撓性膜36の外周縁部が加硫接着されることにより、可撓性膜36が固定金具38を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。なお、本実施形態では、鍔状部42の外周縁部と上端面を除く略全面に亘って固定金具38が可撓性膜36と一体形成されたゴム層で覆われている。
[0037]
 このような可撓性膜36は、第二の取付部材14に組み付けられる。即ち、固定金具38における鍔状部42の外周縁部が、第二の取付部材14の下端部に設けられた段差28に対して下方から重ね合わされると共に、鍔状部42が第二の取付部材14に一体形成されたかしめ片30によってかしめ固定されることにより、可撓性膜36が第二の取付部材14の下端部に固定されるようになっている。
[0038]
 このように、可撓性膜36が第一の取付部材12と第二の取付部材14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対して組み付けられることにより、第二の取付部材14の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されていると共に、第二の取付部材14の軸方向下側の開口部が可撓性膜36で流体密に閉塞されている。これにより、第二の取付部材14の内周側において本体ゴム弾性体16と可撓性膜36の軸方向間には、外部から密閉された流体室としての流体封入領域44が形成されている。
[0039]
 また、流体封入領域44には、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いはそれらの混合液等の非圧縮性流体が封入流体として封入されている。なお、封入流体は、特に限定されるものではないが、後述するオリフィス通路68を流動せしめられる流体の共振作用等に基づく防振効果を有利に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。なお、このような流体の封入は、可撓性膜36の第二の取付部材14(第二の取付部材14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品)への組付けを非圧縮性流体中で行うことにより、有利に実現することが出来る。
[0040]
 また、流体封入領域44には、仕切部材46が収容配置されている。仕切部材46は、厚肉の略円板形状を有しており、本実施形態では、仕切部材本体48と蓋部材50を含んで構成されている。
[0041]
 仕切部材本体48は、全体として厚肉の略円板形状を有しており、本実施形態では鉄やアルミニウム合金、硬質合成樹脂材等の硬質材で形成されている。また、仕切部材本体48の外周縁部には、上端面および外周面に開口する切欠状溝52が、一周よりも短い所定の長さで周方向に延びるように形成されている。
[0042]
 また、仕切部材本体48の径方向中央部分には、収容凹所54が形成されている。収容凹所54は、仕切部材本体48において切欠状溝52の内周側に所定距離を隔てて形成されており、上方に向かって開口する円形の凹所とされている。更に、仕切部材本体48の径方向中央部分には、下側中央凹所56が形成されている。下側中央凹所56は、仕切部材本体48において収容凹所54と上下方向で略対応する位置に形成された円形の凹所であって、軸方向下方に向かって開口せしめられている。
[0043]
 一方、蓋部材50は、仕切部材本体48と略同一の直径を有する薄肉の円板形状を呈しており、本実施形態では仕切部材本体48と同様の硬質材で形成されている。そして、蓋部材50が、仕切部材本体48の上端面に対して上方から重ね合わされて組み合わされることにより、本実施形態における仕切部材46が構成されている。
[0044]
 このように蓋部材50が仕切部材本体48に対して重ね合わされることにより、切欠状溝52の上側開口部が蓋部材50で覆蓋されており、仕切部材46の外周面に開口して周方向に延びる周方向溝が切欠状溝52を利用して形成されている。また、仕切部材本体48に形成された収容凹所54の開口部が蓋部材50で覆われることによって、仕切部材46の内部に収容領域58が形成されている。
[0045]
 かくの如き仕切部材46は、流体封入領域44に収容状態で配設されている。即ち、仕切部材46は、第二の取付部材14の下側開口部から挿し入れられて、蓋部材50の外周縁部が第二の取付部材14の段差部26に対して下方から当接せしめられると共に、仕切部材本体48の外周縁部に対して固定金具38の鍔状部42が下方から重ね合わされる。そして、固定金具38の鍔状部42が第二の取付部材14のかしめ片30で第二の取付部材14に対して固定されることにより、仕切部材46が第二の取付部材14の段差部26と固定金具38の鍔状部42との間で位置決めされて、第二の取付部材14によって固定的に支持されている。なお、本実施形態では、第二の取付部材14に対して仕切部材46が内挿された状態で、第二の取付部材14に八方絞り等の縮径加工を施すことにより、仕切部材46の外周面がシールゴム層34を介して第二の取付部材14に密着せしめられている。
[0046]
 このようにして仕切部材46が流体封入領域44内において軸直角方向に広がって配設されて、第二の取付部材14で支持されることにより、流体封入領域44が仕切部材46を挟んで軸方向で上側と下側に二分されている。即ち、仕切部材46を挟んだ一方(上方)の側において、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に圧力変動が惹起される受圧室60が形成されていると共に、仕切部材46を挟んだ他方(下方)の側において、壁部の一部が可撓性膜36で構成されて、可撓性膜36の変形によって容積変化が許容される平衡室62が形成されている。なお、これら受圧室60と平衡室62には、流体封入領域44に封入された非圧縮性流体が封入されている。
[0047]
 また、仕切部材46の外周縁部に形成された前記周方向溝の外周側開口部が、第二の取付部材14によって流体密に覆蓋されており、仕切部材46の外周縁部を周方向に所定の長さで延びるトンネル状通路が形成されている。更に、蓋部材50には、該トンネル状通路の一方の端部を仕切部材46の上方に開口させる上側連通路64が形成されていると共に、仕切部材本体48には、該トンネル状通路の他方の端部を仕切部材46の下方に開口させる下側連通路66が形成されている。そして、トンネル状通路の一方の端部が上側連通路64を通じて受圧室60に連通されていると共に、該トンネル状通路の他方の端部が下側連通路66を通じて平衡室62に連通されており、受圧室60と平衡室62を相互に連通するオリフィス通路68が形成されている。なお、本実施形態では、受圧室60の壁ばね剛性に応じてオリフィス通路68の通路長と通路断面積の比が適当に設定されることにより、オリフィス通路68を通じて両室60,62の間で流動せしめられる流体の共振周波数が、自動車のエンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数にチューニングされている。
[0048]
 ここにおいて、仕切部材46に形成された収容領域58には、図2~5に示されているような可動部材70が収容配置されている。可動部材70は、全体として略円板形状を有しており、液圧吸収ゴム板72と拘束板としての硬質補強板74によって構成されている。
[0049]
 液圧吸収ゴム板72は、略円板形状を有するゴム弾性体であって、その外径寸法が、収容領域58の内径寸法よりも僅かに小さくされている。また、液圧吸収ゴム板72の厚さ寸法も、収容領域58の高さ寸法よりも僅かに小さくされており、収容領域58への配設下、液圧吸収ゴム板72の上下面と収容領域58の上下内面との間に存在する隙間により、収容領域58内での液圧吸収ゴム板72の板厚方向への変位が許容されるようになっている。なお、液圧吸収ゴム板72の外周面には、周方向に延びるリップ形状をもって突出する位置決め突部76が、周上の複数箇所に一体形成されている。そして、これら複数の位置決め突部76により、収容領域58内で液圧吸収ゴム板72が略中央に位置決めされて、板厚方向の変位が小さな接触抵抗で許容されるようになっている。
[0050]
 さらに、液圧吸収ゴム板72の板厚方向中間部分に埋設された状態で、略円板形状の硬質補強板74が配設されており、液圧吸収ゴム板72に加硫接着されている。硬質補強板74は、液圧吸収ゴム板72よりも剛性が大きい合成樹脂材や金属材等によって形成されている。また、硬質補強板74の外径寸法は、液圧吸収ゴム板72の外径寸法よりも小さくされており、液圧吸収ゴム板72の中央部分の弾性変形が硬質補強板74によって実質的に阻止されている。
[0051]
 なお、本実施形態では、硬質補強板74を外周側に外れて位置する液圧吸収ゴム板72の外周縁部において、板厚方向両側に突出する上下の弾性当接部78,78が、周方向に連続した円環形状で一体形成されている。そして、これら上下の弾性当接部78,78の突出高さが周方向で連続的に変化せしめられることにより、液圧吸収ゴム板72の外周縁部が、周方向において板厚方向で両側に波打ったように延びる波状部とされている。即ち、液圧吸収ゴム板72の外周縁部は、上下の弾性当接部78,78を含む板厚方向の寸法が実質的に変化しないで、厚さ方向の中心位置が周方向で上下に振れるように変化せしめられている。特に本実施形態では、上下の弾性当接部78,78の突出先端面が略サイン波状に一定周期(例えば、周方向で90度周期)で周方向に滑らかに波打った形状とされている。
[0052]
 また、硬質補強板74には、板厚方向に貫通する複数の貫通窓80が形成されている。本実施形態では、各貫通窓80が円形孔とされており、液圧吸収ゴム板72の径方向中間部分において周方向で等間隔に四つ形成されている。そして、各貫通窓80は、液圧吸収ゴム板72の単体からなるゴム弁板82で覆蓋されている。
[0053]
 かかるゴム弁板82は、略一定の厚さ寸法で広がる円板形状を有している。ゴム弁板82の外周部分には、硬質補強板74の貫通窓80の内周縁部上に位置して厚さ方向両側に突出する緩衝リブ84が全周に亘って環状に一体形成されている。この緩衝リブ84の突出高さは、液圧吸収ゴム板72の全面において板厚方向で最も外方に突出するように設定されている。各ゴム弁板82の外周部分において、液圧吸収ゴム板72の上下両面に突出する緩衝リブ84,84が形成されていることにより、ゴム弁板82の外周部分が補強されていると共に、液圧吸収ゴム板72の収容領域58内面への当接時の衝撃が緩和されるようになっている。
[0054]
 また、ゴム弁板82には、スリット86が形成されている。スリット86は、ゴム弁板82の中心から径方向外方に向かって放射状に延びるように複数本形成されており、ゴム弁板82を厚さ方向に貫通している。本実施形態において、スリット86は、図2,3に示されているように、放射中心回りで等間隔に3本形成されており、周方向で各隣り合うスリット86,86間に、扇形の平板形状とされた弾性舌片88がそれぞれ形成されている。即ち、かかる弾性舌片88では、複数のスリット86,86,86の放射中心点が弾性舌片88の先端部とされている一方、この放射中心点を中心として弾性舌片88の両側のスリット86,86の先端をつないで延びる円弧の線上に位置する部分が弾性舌片88の基端部とされている。
[0055]
 なお、各スリット86は、その先端部がゴム弁板82の外周縁部までは至らない長さとされており、特に本実施形態では、弾性当接部78,78にも僅かに至らない先端部長さで各スリット86が形成されている。また、各スリット86は、外力が作用しない初期状態で閉鎖するようになっており、各ゴム弁板82の周方向両端面が、スリット86を挟んで隣り合うゴム弁板82の周方向端面に対して、スリット86の全長に亘って密接状態で重ね合わされている。尤も、かかるスリット86は、要求される防振特性に応じて完全に閉鎖されている必要はなく、周方向で隣り合う弾性舌片88の周方向両端面間が僅かに離隔していても良い。
[0056]
 さらに、各弾性舌片88には、部分的に厚肉なゴム突部である補強部90が突出して一体形成されている。弾性舌片88における補強部90は、弾性舌片88の幅方向に延びる突条により構成されている。弾性舌片88の幅方向とは、弾性舌片88の基端部から先端部に延びる長さ方向に対して直交する方向であり、スリット86に対しても直交して延びる方向である。なお、本実施形態では、補強部90は、スリット86の放射中心を中心とする円の周方向に延びる円弧形状をもって、各弾性舌片88に形成されている。更に本実施形態では、弾性舌片88において、放射状に延びる各スリット86の先端をつなぐ外接円で囲まれた領域内に補強部90が形成されている。また、補強部90が弾性舌片88の基端部から先端部に至る長さ方向の中間部分に形成されており、特に長さ方向において中央よりも外周側に偏倚していることが望ましい。具体的には、ゴム弁板82の表裏両面において、放射状に延びるスリット86の放射中心回りで山形断面をもって周方向に連続して延びる弾性突条が形成されており、かかる弾性突条がスリットで分断されることにより、各弾性舌片88毎に独立した補強部90が形成されている。
[0057]
 なお、各弾性舌片88の表裏両面に形成された補強部90,90は、互いに同じ位置に同じ大きさで、表裏対称に形成されていることが好ましい。それにより弾性舌片88の形状が安定し、弾性変形効果も十分に発揮され得る。また、本実施形態では、補強部90の断面において、頂部が外周側に偏倚されており、補強部90の外周側の曲率半径に比して内周側の曲率半径が大きくされており、なだらかに傾斜している。これにより、弾性舌片88において、ゴム弁板82の外周側に位置する基端部分よりもゴム弁板82の中心側に位置する先端部分の方が周方向幅が小さくされて変形し易くされている特性を考慮し、補強部90,90の形成によりゴム弁板82に及ぼされる特性変化の軽減が図られている。また、補強部90の突出高さ寸法は弾性舌片88の厚さ寸法の30~100%であることが望ましい。補強部90が小さ過ぎると十分な補強効果が得られ難く、大き過ぎると弾性舌片88の弾性特性等への悪影響が懸念されるからである。
[0058]
 このような構造とされた可動部材70は、仕切部材46の内部に形成された収容領域58内に配設されており、前述のように、収容領域58内で可動部材70が板厚方向に所定距離だけ変位可能とされている。また、収容領域58の上側壁部を構成する蓋部材50の中央部分には、軸方向に貫通する上側透孔96が形成されており、上側透孔96を通じて収容領域58が受圧室60に連通されている。一方、収容領域58の下側壁部を構成する仕切部材本体48の中央部分(収容凹所54の底壁部)には、軸方向に貫通する下側透孔98が形成されており、下側透孔98を通じて収容領域58が平衡室62に連通されている。
[0059]
 なお、本実施形態では、上下の透孔96,98が、何れも大径の円形透孔とされており、それら上側透孔96と下側透孔98が略等しい直径で形成されている。また、上下の透孔96,98の内径寸法は、可動部材70における硬質補強板74の外径寸法よりも小さくされており、可動部材70における硬質補強板74の配設領域が上下の透孔96,98の外周部分に当接することで、可動部材70の板厚方向への変位量が確実に規定されるようになっている。
[0060]
 要するに、上下の透孔96,98が形成されることで、仕切部材46には、内周面に開口して周方向に延びる環状溝が形成されており、この環状溝に対して、可動部材70の外周部分が差し入れられている。そして、環状溝の内面への当接によって変位量が制限される領域内で、可動部材70が、仕切部材46を介して、第二の取付部材14に対して変位可能に支持されているのである。このことから明らかなように、本実施形態では、仕切部材46によって液圧吸収ゴム板72を変位可能に支持するゴム板支持部が構成されている。
[0061]
 更にまた、上下の透孔96,98の大きさは、可動部材70に設けられたゴム弁板82が、それら上下の透孔96,98を通じて受圧室60や平衡室62へ十分な面積で露呈されるように設定されている。具体的には、軸方向の投影において各ゴム弁板82の50%以上、好適には80%以上が、上下の透孔96,98を通じて受圧室60や平衡室62に露呈されることが好ましい。
[0062]
 これにより、収容領域58内に配設された可動部材70の上面に対して受圧室60の圧力が上側透孔96を通じて及ぼされるようになっていると共に、可動部材70の下面に対して平衡室62の圧力が下側透孔98を通じて及ぼされるようになっている。
[0063]
 そして、可動部材70が収容領域58内において受圧室60と平衡室62を仕切るように配設されていることにより、振動入力によって受圧室60と平衡室62の間で相対的な圧力差が生じると、可動部材70が軸方向に微小変位せしめられて、受圧室60の圧力変動を吸収する液圧吸収機構が構成されている。
[0064]
 また、本実施形態では、液圧吸収ゴム板72の外周縁部が上下の透孔96,98よりも外周側にまで広がっていると共に、液圧吸収ゴム板72の固着された硬質補強板74が上下の透孔96,98の開口領域よりも大径の円板形状とされており、硬質補強板74の外周縁部が全周に亘って上下の透孔96,98よりも外周側に広がっている。これにより、大振幅振動の入力に際して、硬質補強板74が固着された液圧吸収ゴム板72の外周部分が、収容領域58の上下内面に対して当接せしめられて、可動部材70の軸方向での変位が一層確実に制限されるようになっている。
[0065]
 また、受圧室60と平衡室62の圧力差が著しく大きい場合には、ゴム弁板82に形成された弾性舌片88の弾性変形によってスリット86が開口されるようになっており、スリット86を通じて受圧室60と平衡室62が相互に連通されるようになっている。これにより、衝撃的な大荷重の入力に際して、オリフィス通路68よりも小さな流動抵抗で受圧室60と平衡室62を相互に連通する短絡機構が構成されている。要するに本実施形態においては、弾性舌片88の弾性を利用して、スリット86の連通状態と遮断状態を切り換える弁構造によって短絡機構が実現されている。
[0066]
 このような構造とされた流体封入式防振装置10では、車両への装着下、自動車のエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、受圧室60と平衡室62の相対的な圧力変動に基づいて、低周波数域にチューニングされたオリフィス通路68を通じての流体流動が生ぜしめられる。その際、受圧室60と平衡室62の相対的な圧力差が可動部材70の変位による液圧吸収機能を上回ることから、可動部材70の変位量が制限されて実質的に拘束される。それ故、オリフィス通路68を通じての流体流動量が効果的に確保されて、流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果(高減衰効果)が有効に発揮され得る。
[0067]
 また、通常のエンジンシェイクに相当する低周波数大振幅振動の入力時には、オリフィス通路68を通じての流体流動によって受圧室60の圧力変動が平衡室62に逃がされることとなり、受圧室60の圧力変動が著しく大きくなることもない。従って、可動部材70においても、弾性舌片88の弾性により、受圧室60と平衡室62の圧力差に抗してスリット86が閉塞状態に保持される。また、それ故、受圧室60の圧力のスリット86を通じての逃げが防止されて、受圧室60と平衡室62の相対的な圧力差に基づくオリフィス通路68を通じての流体流動と、それに基づく防振性能が一層効果的に発揮されうる。
[0068]
 さらに、アイドリング振動や走行こもり音等に相当する中乃至高周波数域の小振幅振動の入力時には、オリフィス通路68が反共振的な作用によって実質的に遮断状態となる。その際、受圧室60と平衡室62の相対的な圧力差に基づいて可動部材70が板厚方向で微小変位を許容されることで、受圧室60に惹起される圧力変動を平衡室62側に逃して吸収する液圧吸収作用が発揮される。それ故、オリフィス通路68の実質的な遮断に伴う著しい高動ばね化が回避されて、良好な防振性能が発揮されることとなる。なお、アイドリング振動や走行こもり音に相当する中乃至高周波数域の振動入力に際しても、受圧室60の圧力変動が、可動部材70の変位に基づいて平衡室62に逃がされることにより、スリット86が略閉塞状態に保持される。
[0069]
 一方、走行時における段差の乗り越え等により衝撃的な大荷重が入力されて、受圧室60に著しい圧力変動が発生すると、受圧室60と平衡室62の圧力差に基づいてゴム弁板82における各弾性舌片88が大きく変形し、スリット86が開口せしめられる。そして、受圧室60と平衡室62がスリット86を通じて相互に連通されて、スリット86を通じての流体流動により、受圧室60の極めて著しい圧力変動が可及的速やかに解消され得る。それ故、例えば受圧室60におけるキャビテーションの発生を抑えて、キャビテーションに起因する異音や振動の発生を防止することも可能となる。
[0070]
 ここにおいて、ゴム弁板82における弾性舌片88には、部分的に厚肉とされることで補強部90が形成されている。これにより、弾性舌片88が弾性変形してスリット86を開放させる特性を確保しつつ、弾性舌片88の局部的な変形剛性を高めて、弾性舌片88の変形の安定化が図られている。それ故、衝撃的な大荷重の入力時にはスリット86を開口させて、受圧室60における著しい圧力変動を抑えることが出来ると共に、エンジンシェイクやアイドリング振動、走行こもり音等のオリフィス通路68や液圧吸収機構による防振効果が発揮される通常の振動入力時には、弾性舌片88の不規則な変形やそれに起因する予期しないスリット86の開放が効果的に防止されて、オリフィス通路68や液圧吸収機構による所期の防振効果が有効に発揮され得るのである。
[0071]
 特に弾性舌片88における補強部90は、弾性舌片88の長さ方向の中間部分に設けられていることから、かかる補強部90の形成により、弾性舌片88の基端部における弾性変形特性の増大や、弾性舌片88の先端部におけるマスの増大などに伴う不具合も回避されうる。それ故、上述の如き補強部90を弾性舌片88に形成することにより、衝撃的な大荷重入力時におけるスリット86の開口に基づいて発揮されるキャビテーション防止等の特性を十分に確保しつつ、通常走行時などにおける弾性舌片88の不規則な変形や共振等に伴う防振性能の低下を効果的に防止することが可能となるのである。
[0072]
 また、本実施形態では、ゴム弾性体で形成された液圧吸収ゴム板72に硬質補強板74を固着せしめた可動部材70が採用されており、ゴム弁板82の周囲が硬質補強板74で補強されている。この硬質補強板74による補強効果が各弾性舌片88にも及ぼされることから、弾性舌片88の変形態様の更なる安定化が図られ得る。
[0073]
 更にまた、本態様では、ゴム弁板82の外周側が上下の緩衝リブ84,84で補強されていることから、スリット86の先端部分における亀裂が防止されて優れた耐久性が実現されうる。また、仮にスリット86の先端部分に亀裂が発生した場合でも、ゴム弁板82の外周側に配設された硬質補強板74で亀裂の成長が防止され得る。
[0074]
 以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
[0075]
 例えば、前記実施形態では、三方向に延び出す直線的な切込みで構成された放射状のスリット86が例示されているが、スリット86の具体的な形状は、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、特許文献1に記載の如きU字状などに湾曲した一本のスリットや、相互に離隔して組み合わされた複数本のスリット等によって弾性舌片を形成することも可能である。
[0076]
 また、弾性舌片88に形成される補強部90は、上面又は下面の一方だけに形成されていても良いし、相互に異なる大きさや形状を採用することで、上方への変形特性と下方への変形特性とを異ならせることも可能である。更にまた、かかる補強部90は、前記実施形態のように弾性舌片88の周方向の全長に亘って形成されている必要はなく、例えば図6~8に示されているように、弾性舌片88において独立した一つ又は複数の弾性突起100によって補強部を構成することも可能である。なお、図6~8では、その理解を容易とするために、前記実施形態と同様な構造とされた部材および部位に対して前記実施形態と同一の符号を付しておく。
[0077]
 また、前記実施形態では、可動部材70を構成する硬質補強板74に複数の貫通窓80が形成されていたが、貫通窓80が一つだけ形成された構造であっても良い。更に、かかる硬質補強板74は、本発明において必須でなく、可動部材70を、硬質補強板74が固着されていない液圧吸収ゴム板72の単体によって構成することも可能である。
[0078]
 また、前記実施形態では、液圧吸収ゴム板72で構成された可動部材70が、仕切部材46から独立した部品で構成されており、仕切部材46によって板厚方向で微小変位可能に支持されていたが、かかる液圧吸収ゴム板72で構成された可動部材70の外周部分を仕切部材46に対して加硫接着したり挟圧保持させたりする等して固定的に支持せしめることも可能である。このように液圧吸収ゴム板72の外周縁部を仕切部材で固定的に支持せしめた可動膜構造では、液圧吸収ゴム板72の弾性変形に基づいて液圧吸収機能が発揮され得る。
[0079]
 また、液圧吸収ゴム板72において仕切部材46への当接衝撃を緩和する弾性当接部78や緩衝リブ84は、必要に応じて設けられるものであって、その形成や形状、位置などは限定されるものでない。例えば、前記実施形態では、緩衝リブ84,84がゴム弁板82の外周部分に形成されていたが、それに加えてまたは代えて、硬質補強板74の表面から突出するゴム突起やゴム突条、シボなどからなる緩衝突部を設けても良い。
[0080]
 また、前記実施形態では、仕切部材46に大径の上下透孔96,98が形成されることにより、可動部材70に形成された各弾性舌片88の表裏両面が直接に受圧室60や平衡室62に晒されていたが、そのような大径の上下透孔96,98に代えて、例えば複数の小径孔を形成して、それら小径孔を通じて、受圧室60や平衡室62の圧力が各弾性舌片88に及ぼされるようにしても良い。
[0081]
 その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。

符号の説明

[0082]
10:流体封入式防振装置、12:第一の取付部材、14:第二の取付部材、16:本体ゴム弾性体、36:可撓性膜、60:受圧室、62:平衡室、68:オリフィス通路、72:液圧吸収ゴム板、74:硬質補強板、80:貫通窓、86:スリット、88:弾性舌片、90:補強部

請求の範囲

[請求項1]
 第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室とが形成されて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されており、オリフィス通路によって該受圧室と該平衡室が相互に連通されている流体封入式防振装置において、
 前記受圧室と前記平衡室との間に液圧吸収ゴム板が配設されており、該液圧吸収ゴム板の一方の面に前記受圧室の圧力が及ぼされると共に、該液圧吸収用ゴム板の他方の面に前記平衡室の圧力が及ぼされることにより、それら受圧室と平衡室の圧力差に基づく該液圧吸収ゴム板の変位や変形に基づいて該受圧室の圧力変動を吸収する液圧吸収機構が構成されている一方、
 該液圧吸収ゴム板にはスリットにより弾性舌片が形成されており、該弾性舌片の弾性変形により該スリットが開口して該受圧室と該平衡室を短絡させる短絡機構が構成されていると共に、該弾性舌片における基端部から先端部に至る長さ方向の中間部分において厚肉の補強部が一体形成されていることを特徴とする流体封入式防振装置。
[請求項2]
 前記液圧吸収ゴム板には放射状に延びる複数本のスリットが設けられており、前記弾性舌片が、それらスリットの放射中心回りで隣り合うスリット間に位置して周方向に複数形成されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
[請求項3]
 放射状に延びる複数本の前記スリットの各先端をつなぐ外接円よりも内周側に位置して、前記弾性舌片における前記補強部が形成されている請求項2に記載の流体封入式防振装置。
[請求項4]
 前記弾性舌片における前記補強部が、該弾性舌片の表裏両側に向かって突出するゴム突部により構成されている請求項1~3の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
[請求項5]
 前記弾性舌片における前記補強部が、該弾性舌片の幅方向に延びる突条により構成されている請求項1~4の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
[請求項6]
 前記液圧吸収ゴム板には該液圧吸収ゴム板よりも剛性が大きい硬質補強板が固着されていると共に、該硬質補強板には板厚方向の貫通窓が形成されており、該液圧吸収ゴム板において該貫通窓を覆蓋する部分に前記スリットが設けられて前記弾性舌片が形成されている請求項1~5の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
[請求項7]
 前記液圧吸収ゴム板における板厚方向の変位を許容し且つ変位量を制限して、該液圧吸収ゴム板を支持せしめるゴム板支持部が、前記第二の取付部材に設けられている請求項1~6の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]