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1. WO2013002271 - 耐屈曲性導電材料の選定方法及びそれを用いたケーブル

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明 細 書

発明の名称 耐屈曲性導電材料の選定方法及びそれを用いたケーブル

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013  

発明の効果

0014   0015   0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053  

産業上の利用可能性

0054  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : 耐屈曲性導電材料の選定方法及びそれを用いたケーブル

技術分野

[0001]
本発明は、導電材料に負荷する応力振幅(動的荷重)と応力繰り返し数(破断までの回数)との関係を示すS-N曲線を用いて耐屈曲性に優れた導電材料を選定する耐屈曲性導電材料の選定方法及びそれを用いたケーブルに関する。

背景技術

[0002]
産業用ロボットが普及し、その高性能化に伴ってそれに用いられるケーブルに対しても高い性能が要求されてきている。ケーブルに対する要求特性のなかでも特に耐屈曲性は極めて重要であり、電線メーカーではその耐屈曲性ケーブルの開発が大きな技術課題となっている。これまではケーブル用導電材料として電気用軟銅線が主に用いられてきたが、耐屈曲回数が100万回を大きく超えるケーブルニーズが徐々に広がっている。ここで、耐屈曲性ケーブルの耐屈曲性を評価する動的駆動試験法として、例えば±90度の左右曲げ試験法が採用されている。
[0003]
一方、金属材料は弾性範囲の荷重であっても繰り返し荷重を受けると疲労し、遂には破断することが知られている。このため、金属材料に一定の繰り返し応力を負荷した場合、どのくらいの回数まで耐えられるか、一定の繰り返し回数まで破断させないためには、繰り返し負荷する応力の範囲はどの程度であるべきかを把握するために、S-N曲線が広く使われている。
このS-N曲線の応用に関して、例えば、特許文献1には、銅材に振幅が変動する繰り返し応力を負荷した場合に、銅材が破断するまでの破断繰り返し数を求める銅材の疲労寿命の推定方法が提案されている。また、特許文献2には、ガスタービンの軸ねじりトルクに対応するシェアピンのS-N曲線を用いて、シェアピンの寿命を計算して予測する方法が提案されている。更に、非特許文献1には、薄片試験片を用いた材料の疲労特性の評価方法が提案されている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開平11-64203号公報
特許文献2 : 特開2000-37095号公報

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : 津志田雅之、外3名、「薄片試験片用小型疲労試験機の開発とマグネシウム単結晶の疲労試験」、材料、日本材料学会、2009年8月、第58巻、第8号、p.703-708

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
耐屈曲性に優れたケーブルを開発するために必要な導電材料の選定を行う場合、これまではケーブル屈曲試験を行っていた。しかしながら、耐屈曲回数が100万回を超える試験では数十日間を超える試験時間が、耐屈曲回数が1000万回を超える試験では数百日間を超える試験時間が必要になるという問題があり、新しい導電材料を選定するためのケーブル屈曲試験を頻繁に実施することは、実質的に困難であった。
また、特許文献1、2の技術は、特定材料についてS-N曲線を求め、求めたS-N曲線を用いて寿命予測(破断時期や交換時期の予測)を行うものであって、例えば、繰り返し回数が1000万回を超える範囲で予測を行おうとする場合は、繰り返し回数が1000万回を超える範囲までの試験を行ってS-N曲線を求める必要がある。このため、S-N曲線を求めることに長時間を要し、実効的な寿命予測方法とはいえない。
また、非特許文献1の技術は、薄片試験片を用いて材料の疲労破壊特性を評価するものであって、薄片試験片を構成する材料のS-N曲線が短時間で得られるという利点はあるが、得られたS-N曲線からケーブルの耐屈曲性を直接予測することはできない。
[0007]
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、導電材料のS-N曲線を積極的に利用し、耐屈曲性に優れた導電材料を迅速かつ簡便に選定することが可能な耐屈曲性導電材料の選定方法及びそれを用いたケーブルを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
前記目的に沿う第1の発明に係る耐屈曲性導電材料の選定方法は、導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、該導電材料が100万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、
前記導電材料の前記S-N曲線における10 ~10 回の破断までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を関数式y=-21.5Ln(x)+455で示す領域内にあることを選定基準にする。
[0009]
前記目的に沿う第2の発明に係る耐屈曲性導電材料の選定方法は、導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、該導電材料が500万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、
前記導電材料の前記S-N曲線における10 ~10 回の破断までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を関数式y=-21.5Ln(x)+475で示す領域内にあることを選定基準にする。
[0010]
前記目的に沿う第3の発明に係る耐屈曲性導電材料の選定方法は、導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、該導電材料が1000万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、
前記導電材料の前記S-N曲線における10 ~10 回の破壊までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を関数式y=-21.5Ln(x)+505で示す領域内にあることを選定基準にする。
[0011]
前記目的に沿う第4の発明に係る耐屈曲性導電材料の選定方法は、導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、該導電材料が2500万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、
前記導電材料の前記S-N曲線における10 ~10 回の破壊までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を関数式y=-21.5Ln(x)+560で示す領域内にあることを選定基準にする。
[0012]
第1~第4の発明に係る耐屈曲性導電材料の選定方法において、前記関数式は、前記動的駆動試験に使用する試験体が線径dμmの素線で構成されたケーブルに対応して設定され、線径がzμmの素線で構成されたケーブルの前記動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料の選定には、前記関数式のy切片の値に(z-d)/2で算出される補正値を加えて該関数式を修正することが好ましい。
[0013]
前記目的に沿う第5の発明に係るケーブルは、第1~第4の発明に係る耐屈曲性導電材料の選定方法によって選ばれた導電材料を使用している。

発明の効果

[0014]
第1~第4の発明に係る耐屈曲性導電材料の選定方法においては、過去に測定されたS-N曲線のデータ又は新たに作成されたS-N曲線のデータに基づいて、導電材料の耐屈曲性を推定することができ、実際に動的駆動試験を実施しなくても、用途に応じた耐屈曲性を有する導電材料を迅速かつ簡便に選定することが可能になる。
[0015]
第1~第4の発明に係る耐屈曲性導電材料の選定方法において、関数式が、動的駆動試験に使用する試験体が線径dμmの素線で構成されたケーブルに対応して設定されている際に、線径がzμmの素線で構成されたケーブルの動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料の選定に、関数式のy切片の値に(z-d)/2で算出される補正値を加えて関数式を修正する場合、ケーブルを構成する素線の線径を考慮して、動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料の選定を行うことができる。
[0016]
前記目的に沿う第5の発明に係るケーブルにおいては、実際にケーブルの動的駆動試験(例えばケーブル屈曲試験)を行うことなく、導電材料のS-N曲線を用いてケーブルの用途に適した耐屈曲性を備えた導電材料を迅速かつ簡便に選定することができ、信頼性を有するケーブルを迅速かつ低コストで製造することが可能になる

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 本発明の一実施例に係る耐屈曲性導電材料の選定方法で使用するケーブル屈曲試験破断回数範囲を推定するS-N曲線である。
[図2] ケーブル屈曲試験破断回数100万回以上を推定する際に用いる線径の変化を考慮したS-N曲線である。
[図3] ケーブル屈曲試験破断回数範囲を推定するS-N曲線の説明図である。
[図4] 実験例1~3の導電材料のS-N曲線である。
[図5] 実験例4~6の導電材料のS-N曲線である。
[図6] 実験例7、8の導電材料のS-N曲線である。
[図7] 実験例9~12の導電材料のS-N曲線である。

発明を実施するための形態

[0018]
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の第1の実施例に係る耐屈曲性導電材料の選定方法は、図1に示すように、導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、導電材料が100万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、導電材料のS-N曲線における10 ~10 回の破断までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を
関数式y=-21.5Ln(x)+455   (1)
で示す領域内にあることを選定基準としている。
[0019]
耐屈曲性導電材料で素線を作製し、この素線でケーブルを構成する場合、動的駆動試験(第2~第4の実施例の場合も同様)としては、例えばケーブル屈曲試験を採用することができる。ここで、ケーブル屈曲試験は、線径が80μmの素線を用いて作製した断面積が0.2mm のケーブルを試験体とし、試験体に荷重100gを負荷した状態で、曲げ半径が15mm、折り曲げ角度範囲が±90度の左右繰り返し曲げを加えることにより行う。
[0020]
また、S-N曲線(第2~第4の実施例の場合も同様)は、ケーブルの素線と同一の耐屈曲性導電材料を用いて、長さ30mm、幅3mm、厚さ0.3mmの部材を作製し、部材の一端から24mmの幅方向中央位置に直径が0.5mmの円孔を形成した後、表面を鏡面仕上げして作製した試験片の疲労試験(応力繰り返し負荷試験)から求めた。なお、疲労試験は、試験片の他端側にホルダーを、ホルダーの先端が円孔中心から1mmの位置になるように取り付け、試験片の一端を下方にしてホルダーを音響用スピーカのボイスコイル部に固定して、ボイスコイルを振動させて試験片が1次共振状態になるように周波数を調整して行った。そして、試験片のホルダー付け根に生じる最大応力を片持ち梁の曲げ応力の式から求め、疲労試験時の応力振幅とした。
[0021]
本発明の第2の実施例に係る耐屈曲性導電材料の選定方法は、図1に示すように、導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、導電材料が500万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、導電材料のS-N曲線における10 ~10 回の破断までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を
関数式y=-21.5Ln(x)+475   (2)
で示す領域内にあることを選定基準としている。
[0022]
本発明の第3の実施例に係る耐屈曲性導電材料の選定方法は、図1に示すように、導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、導電材料が1000万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、導電材料のS-N曲線における10 ~10 回の破断までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を
関数式y=-21.5Ln(x)+505   (3)
で示す領域内にあることを選定基準としている。
[0023]
本発明の第4の実施例に係る耐屈曲性導電材料の選定方法は、図1に示すように、導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、導電材料が2500万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、導電材料のS-N曲線における10 ~10 回の破断までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を
関数式y=-21.5Ln(x)+560   (4)
で示す領域内にあることを選定基準としている。
[0024]
そして、第1~第4の実施例に係る耐屈曲性導電材料の選定方法において、関数式(1)~(4)が、ケーブル屈曲試験に使用する試験体が線径80μm(dμmの一例)の素線で構成されたケーブルに対応して設定され、線径がzμmの素線で構成されたケーブルのケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料の選定には、関数式(1)~(4)のy切片の値に(z-80)/2で算出される補正値を加えて関数式を修正する。図2に、素線の線径を50及び100μmとしたときに関数式(1)を修正して得られる関数式がそれぞれ示す応力振幅と破断回数の関係を、関数式(1)が示す応力振幅と破断回数の関係と併せて示す。
以下、関数式(1)~(4)について説明する。
[0025]
一般に、繰り返し応力疲労試験から得られるS-N曲線において、応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域では、応力振幅(繰り返し応力)と破断回数(破断までの応力繰り返し回数)の関係(疲労破壊挙動)は直線近似、即ち応力振幅と破断回数の関係を1次関数を用いて表現できる。
更に、繰り返し応力疲労試験で耐疲労破壊特性が高い材質を選定し、選定した材質の素線から構成したケーブルを用いてケーブル屈曲試験を行うと、高い耐屈曲性を示す(破断回数が大きい)結果が得られ、繰り返し応力疲労試験結果とケーブル屈曲試験結果は対応関係にあることが知られている。
[0026]
このため、導電材料Pを基準材料として、導電材料Pで作製した試験片の疲労試験で、10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数(直線)pを求めると共に、この導電材料Pで形成した素線から構成されたケーブルのケーブル屈曲試験から破断回数Npを求めておくと、材質が異なる導電材料Qを用いた疲労試験で、10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数qを求めた場合、1次関数pより1次関数qが高応力側(高破断回数側)に存在すると、導電材料Qで形成した素線から構成されたケーブルのケーブル屈曲試験から求まる破断回数Nqは、破断回数Npより大きくなることが予想される。一方、1次関数pより1次関数qが低応力側(低破断回数側)に存在すると、導電材料Qで形成した素線から構成されたケーブルのケーブル屈曲試験から求まる破断回数Nqは、破断回数Npより小さくなることが予想される。
[0027]
そこで、基準材料として純度99.9%の銅を用いて試験片を作製して疲労試験を行い、10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数(直線)を求めた。また、純度99.9%の銅で形成した素線から構成したケーブルのケーブル屈曲試験を行い、破断回数を求めた。純度99.9%の銅の10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示すS-N曲線を図3に示す。なお、10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数(回帰直線)は、yを応力振幅値、xを応力繰り返し数(回)としてy=-21.5Ln(x)+505と求まり、ケーブル屈曲試験で得られた破断回数は1000万回であった。
[0028]
そして、疲労破壊挙動が1次関数で表現可能な場合、材質が同一の試験片であれば、疲労破壊挙動の違いは、得られた1次関数を平行移動した1次関数で表現できると解される。このため、ケーブル屈曲試験で得られる破断回数が100万回であるケーブルを構成している素線の材料における10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数は、ケーブル屈曲試験の破断回数が1000万回である材料の10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数を、破断回数が1/10になるように低破断回数側に移動させることにより決定する。したがって、ケーブル破断回数が100万回に対応した素線の材料の10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数を、例えばy=-21.5Ln(x)+455とする。
[0029]
また、ケーブル屈曲試験で得られる破断回数が500万回であるケーブルを構成している素線の材料における10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数は、ケーブル屈曲試験の破断回数が1000万回である材料の10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数を、破断回数が1/2になるように低破断回数側に移動させることにより決定する。したがって、ケーブル破断回数が500万回に対応した素線の材料の10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数を、例えばy=-21.5Ln(x)+475とする。
[0030]
一方、ケーブル屈曲試験で得られる破断回数が2500万回であるケーブルを構成している素線の材料における10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数は、ケーブル屈曲試験の破断回数が1000万回である材料の10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数で、高破断回数側を推定することになる。このため、過少評価を防止するため、ケーブル屈曲試験の破断回数が1000万回である材料の10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数を、破断寿命が10倍になるように高破断回数側に移動させることにより決定する。したがって、ケーブル破断回数が2500万回に対応した素線の材料の10 ~10 回の有限寿命領域における疲労破壊挙動を示す1次関数を、例えばy=-21.5Ln(x)+560とする。
[0031]
ケーブル屈曲試験時の曲げ半径をRとして、素線の線径がzμmの場合に発生する歪みは、(R+z/2)/Rであり、素線の線径が80μmの場合に発生する歪みは、(R+80/2)/Rである。したがって、素線の線径が80μmの場合を基準とした場合、素線の線径がzμmの場合に発生する歪み変化分は、{(R+z/2)/R}-{(R+80/2)/R}=(z-80)/(2R)となる。このため、素線の線径が80μmより大きいと、ケーブル屈曲試験時に発生する歪みは、素線の線径が80μmの場合より大きくなり、発生する応力も大きくなる。一方、素線の線径が80μmより小さいと、ケーブル屈曲試験時に発生する歪みは、素線の線径が80μmの場合より小さくなり、発生する応力も小さくなる。
[0032]
そこで、ケーブル屈曲試験における素線の線径の違いを、繰り返し応力疲労試験で得られるS-N曲線に反映させる場合、疲労破壊挙動を示す1次関数を、発生する歪み変化分に相当する応力の値だけ、応力軸に沿って移動させる必要がある。また、応力は、歪みと繰り返し応力疲労試験に用いた試験片の弾性率との積として求まるので、素線の線径80μmの場合を基準として、歪みの変化分の線径依存部分(z-80)/2だけを独立させた形式で1次関数に組み込むと、ケーブル屈曲試験時の素線線径の違いをS-N曲線に反映させた場合の疲労破壊挙動を示す1次関数は、y=-21.5Ln(x)+K+(z-80)/2となる。ここで、Kは1次関数のy切片である。
[0033]
本発明の一実施例に係るケーブルは、第1~第4の実施例に係る耐屈曲性導電材料の選定方法によって選ばれた導電材料を使用するものである。
例えば、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐えるケーブル(素線の線径は80μm)を作製する場合、先ず、種々の耐屈曲性導電材料に対して予め作成しておいたS-N曲線のデータにおいて、10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線の中から、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+455よりは高応力側に存在し、500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+475よりは低応力側に存在する回帰直線を選定する。なお、ケーブルの素線が80μmと異なる場合は、y=-21.5Ln(x)+455+(z-80)/2よりは高応力側に存在し、y=-21.5Ln(x)+475+(z-80)/2よりは低応力側に存在する回帰直線を選定する。
そして、選定した回帰直線に対応する耐屈曲性導電材料が、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐えるケーブルの素線を形成する候補材料となる。
[0034]
500万回以上のケーブル屈曲試験に耐えるケーブル(素線の線径は80μm)を作製する場合は、予め作成しておいたS-N曲線の10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線の中から、y=-21.5Ln(x)+475よりは高応力側に存在し、1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+505よりは低応力側に存在する回帰直線を選定する。なお、ケーブルの素線が80μmと異なる場合は、y=-21.5Ln(x)+475+(z-80)/2よりは高応力側に存在し、y=-21.5Ln(x)+505+(z-80)/2よりは低応力側に存在する回帰直線を選定する。
そして、選定した回帰直線に対応する耐屈曲性導電材料が、500万回以上のケーブル屈曲試験に耐えるケーブルの素線を形成する候補材料となる。
[0035]
1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐えるケーブル(素線の線径は80μm)を作製する場合は、予め作成しておいたS-N曲線の10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線の中から、y=-21.5Ln(x)+505よりは高応力側に存在し、2500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+560よりは低応力側に存在する回帰直線を選定する。なお、ケーブルの素線が80μmと異なる場合は、y=-21.5Ln(x)+505+(z-80)/2よりは高応力側に存在し、y=-21.5Ln(x)+560+(z-80)/2よりは低応力側に存在する回帰直線を選定する。
そして、選定した回帰直線に対応する耐屈曲性導電材料が、1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐えるケーブルの素線を形成する候補材料となる。
[0036]
2500万回以上のケーブル屈曲試験に耐えるケーブル(素線の線径は80μm)を作製する場合は、予め作成しておいたS-N曲線の10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線の中から、y=-21.5Ln(x)+560より高応力側に存在する回帰直線を選定する。なお、ケーブルの素線が80μmと異なる場合は、y=-21.5Ln(x)+560+(z-80)/2よりは高応力側に存在する回帰直線を選定する。そして、選定した回帰直線に対応する耐屈曲性導電材料が、2500万回以上のケーブル屈曲試験に耐えるケーブルの素線を形成する候補材料となる。
[0037]
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験例について、以下に説明する。
(実験例1)
電線用の銅材(以下、銅材Aという)から、長さ30mm、幅3mm、厚さ0.3mmの部材を作製し、部材の一端から24mmの幅方向中央位置に直径が0.5mmの円孔を形成した。次いで、円孔が形成された部材の表面を鏡面仕上げして試験片を作製した。続いて、試験片の他端側にホルダーを、ホルダーの先端が円孔中心から1mmの位置になるように取り付け、試験片の一端を下方にしてホルダーを音響用スピーカのボイスコイル部に固定した。そして、ボイスコイルを振動させて試験片が1次共振状態になるようにして、疲労試験を行った。なお、試験片のホルダー付け根に生じる最大応力を片持ち梁の曲げ応力の式から求め、疲労試験時の応力振幅とした。応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域における疲労試験結果を図4に示す。また、10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線は、y=-21.5Ln(x)+470であった。
[0038]
図4には、100万回以上及び500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線における10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式をそれぞれ示している。回帰直線y=-21.5Ln(x)+470は、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限値を示すy=-21.5Ln(x)+455(関数式(1))よりは高応力側に存在するが、500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+475(関数式(2))よりは低応力側に存在している。したがって、銅材Aを用いて作製するケーブルのケーブル屈曲試験を行った場合、破断回数は100万回を超えると推定できるが、破断回数が500万回未満と推定できる。
[0039]
一方、銅材Aから作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体とし、試験体に荷重100gを負荷した状態で、曲げ半径が15mm、折り曲げ角度範囲が±90度の左右繰り返し曲げを加えることによりケーブル屈曲試験を行った結果、破断回数は450万回であった。したがって、100万回以上及び500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(1)、(2)と、銅材AのS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、銅材Aを用いて作製するケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0040]
(実験例2)
実験例1の銅材とは別の電線用の銅材(以下、銅材Bという)を用いて、実験例1と同様の疲労試験を行った。応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域における疲労試験結果を図4に示す。また、10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線は、y=-4.8Ln(x)+119であった。
銅材Bの回帰直線y=-4.8Ln(x)+119は、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+455(関数式(1))より低応力側に存在するため、銅材Bを用いて作製するケーブルのケーブル屈曲試験を行った場合、破断回数は100万回未満と推定できる。
一方、銅材Bで作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体として、実験例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は2000回であった。したがって、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(1)と、銅材BのS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、銅材Bで作製するケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0041]
(実験例3)
純度99.9%の純銅(以下、銅材Cという)を用いて、実験例1と同様の疲労試験を行った。応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を図4に示す。また、10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線は、y=-20.7Ln(x)+455であった。
銅材Cの回帰直線は、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+455(関数式(1))の低応力側直下に存在するため、破断回数は100万回未満であるが、100万回に近いと推定できる。
一方、銅材Cで作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体として、実験例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は90万回であった。したがって、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(1)と、銅材CのS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、銅材Cで作製するケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0042]
(実験例4)
実験例1、2とは別の電線用の銅材(以下、銅材Dという)を用いて、実験例1と同様の疲労試験を行った。応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域における疲労試験結果を図5に示す。また、10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線は、y=-35Ln(x)+700であった。
銅材Dの回帰直線は、500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限値を示すy=-21.5Ln(x)+475(関数式(2))よりは高応力側に存在し、1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+505(関数式(3))と交差しているため、破断回数は500万回以上であるが、1000万回未満と推定できる。
一方、銅材Dで作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体として、実験例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は600万回であった。したがって、10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(2)、(3)と、銅材Dの10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、銅材Dで作製するケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0043]
(実験例5)
実験例1、2、4とは別の電線用の銅材(以下、銅材Eという)を用いて、実験例1と同様の疲労試験を行った。応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線y=-28.0Ln(x)+594を図5に示す。
銅材Eの回帰直線は、500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限値を示すy=-21.5Ln(x)+475(関数式(2))よりは高応力側に存在し、1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+505(関数式(3))の直下に存在するため、破断回数は1000万回に近い回数と推定できる。
一方、銅材Eで作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体として、実験例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は900万回であった。したがって、1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(3)と、銅材Eの10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、銅材Eで作製するケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0044]
(実験例6)
実験例1、2、4、5とは別の電線用の銅材(以下、銅材Fという)を用いて、実験例1と同様の疲労試験を行った。応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線y=-29.2Ln(x)+535を図5に示す。
銅材Fの回帰直線は、1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+505(関数式(3))よりは高応力側に存在し、2500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限値を示すy=-21.5Ln(x)+560(関数式(4))の下側に存在するため、破断回数は2500万回に近い回数と推定できる。
一方、銅材Fで作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体として、実験例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は2400万回であった。したがって、1000万回以上及び2500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(3)、(4)と、銅材Fの10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、銅材Fで作製するケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0045]
(実験例7)
銅材Cで作製した線径が100μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体として、実験例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は50万回であった。
ここで、素線の線径が80μmであるケーブルが100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える場合、耐屈曲性導電材料のS-N曲線における10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式はy=-21.5Ln(x)+455であるから、ケーブル屈曲試験時の素線の線径が100μmの場合は、下限値を示す関数式は、y=-21.5Ln(x)+455+(100-80)/2=-21.5Ln(x)+465と修正される。一方、銅材Cを用いた疲労試験における応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線はy=-22.8Ln(x)+480である。そして、図6に示すように、線径100μmの場合に修正した下限値を示す関数式y=-21.5Ln(x)+465と銅材Cの10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線y=-22.8Ln(x)+480を比較すると、銅材Cの回帰直線は、線径100μmの場合に修正した下限値を示す関数式y=-21.5Ln(x)+465の低応力側に存在しており、ケーブル屈曲試験の破断回数は100万回未満と推定でき、ケーブル屈曲試験と一致する。
[0046]
(実験例8)
銅材Cで作製した線径が50μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体に対して、実験例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は200万回であった。
ここで、素線の線径が80μmであるケーブルが100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える場合、耐屈曲性導電材料のS-N曲線における10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式はy=-21.5Ln(x)+455であるから、ケーブル屈曲試験時の素線の線径が50μmの場合は、下限値を示す関数式は、y=-21.5Ln(x)+455+(50-80)/2=-21.5Ln(x)+440と修正される。一方、銅材Cを用いた疲労試験における応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線はy=-17.9Ln(x)+392である。そして、図6に示すように、線径50μmの場合に修正した下限値を示す関数式y=-21.5Ln(x)+440と銅材Cの10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線y=-17.9Ln(x)+392を比較すると、銅材Cの回帰直線は、線径50μmの場合に修正した下限値を示す関数式y=-21.5Ln(x)+440の高応力側に存在しており、ケーブル屈曲試験の破断回数は100万回以上と推定でき、ケーブル屈曲試験と一致する。
[0047]
(実験例9)
アルミニウムに0.45mass%のジルコニウム、0.2mass%のシリコン、及び0.15mass%の鉄を加えて作製し、熱処理したアルミニウム系材料から、長さ30mm、幅3mm、厚さ0.3mmの部材を作製し、部材の一端から24mmの幅方向中央位置に直径が0.5mmの円孔を形成した。次いで、円孔が形成された部材の表面を鏡面仕上げして試験片を作製した。続いて、試験片の他端側にホルダーを、ホルダーの先端が円孔中心から1mmの位置になるように取り付け、試験片の一端を下方にしてホルダーを音響用スピーカのボイスコイル部に固定した。そして、ボイスコイルを振動させて試験片が1次共振状態になるようにして、疲労試験を行った。なお、試験片のホルダー付け根に生じる最大応力を片持ち梁の曲げ応力の式から求め、疲労試験時の応力振幅とした。応力繰り返し数が10 ~10 回の有限寿命領域における疲労試験結果を図7に示す。また、10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線は、y=-11.1Ln(x)+320であった。
[0048]
図7には、100万回以上、500万回以上、及び1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線における10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式をそれぞれ示している。熱処理したアルミニウム系材料の回帰直線y=-11.1Ln(x)+320は、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+455(関数式(1))よりは高応力側に存在するが、500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+475(関数式(2))とは交差している。したがって、熱処理したアルミニウム系材料のケーブル屈曲試験を行った場合、破断回数は100万回を超えると推定できるが、破断回数が500万回を超えるとは推定できない。
[0049]
一方、熱処理したアルミニウム系材料で作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体とし、試験体に荷重100gを負荷した状態で、曲げ半径が15mm、折り曲げ角度範囲が±90度の左右繰り返し曲げを加えることによりケーブル屈曲試験を行った結果、破断回数は500万回であった。したがって、100万回以上及び500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(1)、(2)と、熱処理したアルミニウム系材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、熱処理したアルミニウム系材料のケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0050]
(実験例10)
純度99%のアルミニウム材料(純アルミニウム材料)を用いて、実施例1と同様の疲労試験を行った。10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線は、y=-4.8Ln(x)+119であった。
図7に示すように、純アルミニウム材料の回帰直線y=-4.8Ln(x)+119は、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+455(関数式(1))より低応力側に存在するため、純アルミニウム材料のケーブル屈曲試験を行った場合、破断回数は100万回未満と推定できる。
一方、純アルミニウム材料で作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体に対して、実施例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は2000回であった。したがって、100万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(1)と、純アルミニウム材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、純アルミニウム材料のケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0051]
(実験例11)
アルミニウムに0.75mass%のジルコニウム、0.33mass%の鉄、0.30mass%のシリコン、0.04mass%のチタンを加えて作製したアルミニウム系材料(Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料)を用いて、実施例1と同様の疲労試験を行った。10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線は、y=-16.6Ln(x)+460であった。
図7に示すように、Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料の回帰直線y=-16.6Ln(x)+460は、1000万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+505(関数式(3))より高応力側に存在し、2500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+560(関数式(4))より低応力側に存在するため、Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料のケーブル屈曲試験を行った場合、破断回数は1000万回以上、2500万回未満と推定できる。
一方、Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料で作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体に対して、実施例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は2000万回であった。したがって、10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(3)、(4)と、Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料のケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0052]
(実験例12)
アルミニウムに0.75mass%のジルコニウム、0.33mass%の鉄、0.30mass%のシリコン、0.04mass%のチタンを加えて溶製したアルミニウム系材料を10℃/min以上の冷却速度で急冷し、減面率80%の加工を施した後に350℃で5時間の時効処理を行い、更に減面率80%の加工を実施して作製した組織制御Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料を用いて、実施例1と同様の疲労試験を行った。10 ~10 回の範囲の有限寿命領域を直線近似した回帰直線は、y=-14.8Ln(x)+471であった。
図7に示すように、組織制御Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料の回帰直線は、2500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の存在領域の下限を示すy=-21.5Ln(x)+560(関数式(4))の高応力側に存在するため、破断回数は2500万回以上と推定できる。
一方、組織制御Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料で作製した線径が80μmの素線を用いて構成した断面積が0.2mm のケーブルを試験体に対して、実施例1と同様のケーブル屈曲試験を実施すると、破断回数は5000万回であった。したがって、2500万回以上のケーブル屈曲試験に耐える耐屈曲性導電材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線が存在する領域の下限値を示す関数式(4)と、組織制御Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料のS-N曲線の10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を比較することで、組織制御Al-Zr-Fe-Si-Ti系材料のケーブルを用いたケーブル屈曲試験の破断回数を予測できることが確認された。
[0053]
以上、本発明を、実施例を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施例に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。
更に、本実施例とその他の実施例や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、ケーブル屈曲試験の方法は、本実施例に示した方法以外の方法を適用することができる。
また、導電材料には、金属材料のほかに導電性プラスチックを使用することができる。
更に、S-N曲線の縦軸に示す応力振幅の代わりに、歪み振幅を採用してもよい。

産業上の利用可能性

[0054]
本発明の耐屈曲性導電材料の選定方法では、ケーブルの動的駆動試験(例えば、±90度の左右曲げ試験)を実施せずに、ケーブルに使用する導電材料を用いて作製した試験片を用いた疲労試験を行って得られたS-N曲線における10 ~10 回の有限寿命領域を直線近似する回帰直線を求め、この回帰直線に基づいてケーブルの寿命を推定することができるので、耐屈曲性に優れた新規の導電材料を迅速かつ簡便に探索することが可能になる。その結果、耐屈曲性の要求特性に適切に対応するケーブルを迅速かつ安価に提供することができる。

請求の範囲

[請求項1]
導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、該導電材料が100万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、
前記導電材料の前記S-N曲線における10 ~10 回の破断までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を関数式y=-21.5Ln(x)+455で示す領域内にあることを選定基準にすることを特徴とする耐屈曲性導電材料の選定方法。
[請求項2]
導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、該導電材料が500万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、
前記導電材料の前記S-N曲線における10 ~10 回の破断までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を関数式y=-21.5Ln(x)+475で示す領域内にあることを選定基準にすることを特徴とする耐屈曲性導電材料の選定方法。
[請求項3]
導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、該導電材料が1000万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、
前記導電材料の前記S-N曲線における10 ~10 回の破壊までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を関数式y=-21.5Ln(x)+505で示す領域内にあることを選定基準にすることを特徴とする耐屈曲性導電材料の選定方法。
[請求項4]
導電材料の疲労試験を行って求めた破断回数と応力振幅の関係を示すS-N曲線から、該導電材料が2500万回以上の動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料を選定する方法であって、
前記導電材料の前記S-N曲線における10 ~10 回の破壊までの応力繰り返し数の範囲において、応力振幅値をyMPa、応力繰り返し数をx回として求めた疲労破壊の有限寿命領域を直線近似した回帰直線が、下限値を関数式y=-21.5Ln(x)+560で示す領域内にあることを選定基準にすることを特徴とする耐屈曲性導電材料の選定方法。
[請求項5]
請求項1~4のいずれか1項に記載の耐屈曲性導電材料の選定方法において、前記関数式は、前記動的駆動試験に使用する試験体が線径dμmの素線で構成されたケーブルに対応して設定され、線径がzμmの素線で構成されたケーブルの前記動的駆動試験に耐える耐屈曲性導電材料の選定には、前記関数式のy切片の値に(z-d)/2で算出される補正値を加えて該関数式を修正することを特徴とする耐屈曲性導電材料の選定方法。
[請求項6]
請求項1~5のいずれか1項に記載の耐屈曲性導電材料の選定方法によって選ばれた導電材料を使用することを特徴とするケーブル。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]