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1. (WO2012005323) クラスレート化合物および熱電変換材料ならびに熱電変換材料の製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 クラスレート化合物および熱電変換材料ならびに熱電変換材料の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010   0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017   0018  

図面の簡単な説明

0019  

産業上の利用分野

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

実施例 1

0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087  

実施例 2

0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107  

実施例 3

0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : クラスレート化合物および熱電変換材料ならびに熱電変換材料の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、クラスレート化合物およびそれを用いた熱電変換材料ならびに熱電変換材料の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 ゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することを可能とする。その性質を利用し、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、熱電変換素子は、環境問題に配慮した省エネルギー技術として注目されている。
[0003]
 ゼーベック効果を利用した熱電変換素子の無次元性能指数ZTは、下記の式(1)で表すことができる。
   ZT=S T/ρκ … (1)
 式(1)中、S、ρ、κおよびTは、それぞれ、ゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導度および測定温度を表す。
[0004]
 式(1)から明らかなように、熱電変換素子の性能を向上させるためには、素子のゼーベック係数を大きくすること、電気抵抗率を小さくすること、熱伝導度を小さくすることが重要である。
[0005]
 従来、高い性能指数を示す熱電変換材料として、ビスマス・テルル系材料、シリコン・ゲルマニウム系材料、鉛・テルル系材料などを用いた熱電変換素子が知られている。
[0006]
 ところで、従来の熱電変換素子は、それぞれ解決すべき課題を有する。
 たとえば、ビスマス・テルル系材料は室温では大きなZT値を有するが、100℃を越えれば急激にそのZT値が小さくなり、廃熱発電のような200℃~800℃程度では、熱電変換材料として利用できなくなる。また、ビスマス・テルル系、鉛・テルル系は環境負荷物質の鉛とテルルを含んでいる。
[0007]
 そこで、熱電性能が良好で環境負荷が少なく、さらに軽量な新しい熱電変換材料が求められている。そして、そのような新しい熱電変換材料の1つとしてクラスレート化合物が注目されている。
[0008]
 Ba、Ga、Al、Siからなるクラスレート化合物の組成や合成法については既に開示されており、特許文献1には、単位格子あたりx個(10.8≦x≦12.2)のSi原子が、Al原子とGa原子のいずれかで置換されているBa (Al,Ga) Si 46-xの単結晶とその製造方法が開示されている。特許文献2には、P型のBa-Al-Siクラスレート化合物において700KでのZTが1.01であることが開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開2004-67425号公報
特許文献2 : 特許第4413323号公報(段落0048など)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
 しかし、これらのクラスレート化合物には以下の課題がある。
 すなわち、特許文献1に記載の技術では、ZTが明らかではなく、性能が低いことが懸念される。特許文献2に記載の技術では、p型については開示されているが、n型についてのZTは明らかではなく、性能が低いことが懸念される。
[0011]
 ただし、大きな無次元性能指数ZTを得るためには単相のSiクラスレートを使用することが最良であるものの、大きな無次元性能指数ZTを得ようとすると、単相のSiクラスレートには割れが発生しやすいという問題もある。
[0012]
 したがって、本発明の主な目的は、有害元素を含まず、安価な材料で、200℃~800℃でのZTが0.2以上、好ましくは800℃という高温領域でのZTが0.4以上の熱電変換素子に好適に用いられる新規なクラスレート化合物およびそれを用いた熱電変換材料ならびに熱電変換材料の製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、割れの発生を防止することができる熱電変換材料を提供することである。

課題を解決するための手段

[0013]
 上記課題を解決するため本発明の第1の態様によれば、
 化学式Ba Ga Al Si (7.77≦a≦8.16,7.47≦b≦15.21,0.28≦c≦6.92,30.35≦d≦32.80,a+b+c+d=54)で表されるクラスレート化合物が提供される。
[0014]
 本発明の第2の態様によれば、
 n型の熱電変換材料であって、
 化学式Ba Ga Al Si (7.77≦a≦8.16,7.47≦b≦15.21,0.28≦c≦6.92,30.35≦d≦32.80,a+b+c+d=54)で表されるクラスレート化合物を含む熱電変換材料が提供される。
[0015]
 本発明の第3の態様によれば、
 化学式Ba Ga Al Si (7.8≦a≦8.16,7.91≦b≦10.74,4.36≦c≦6.95,30.13≦d≦31.54,a+b+c+d=54)で表されるクラスレート化合物を主体とする熱電変換材料であって、
 X線回折測定におけるSiクラスレート相の最強ピークをIHSと、第2相の最強ピークをIAとしたとき、その最強ピーク比が100%未満であることを特徴とする熱電変換材料が提供される。
   「最強ピーク比」=IHS/(IHS+IA)×100(%)
[0016]
 本発明の第4の態様によれば、
 前記熱電変換材料を製造する製造方法であって、
 Ba,Ga,Al,Siを原料として混合・溶融・凝固して所定の組成のクラスレート化合物を調製する調製工程と、
 前記クラスレート化合物を粉砕して微粒子とする粉砕工程と、
 前記微粒子を焼結する焼結工程と、
 を有する熱電変換材料の製造方法が提供される。

発明の効果

[0017]
 本発明によれば、優れた熱電変換特性を有するクラスレート化合物およびそれを用いた熱電変換材料とその製造方法を提供することができる。
 特に、有害元素を含まず、安価な材料で、200℃~800℃でのZTが0.2以上、好ましくは800℃という高温領域でのZTが0.4以上のn型の熱電変換素子に好適に用いられる新規なクラスレート化合物およびそれを用いた熱電変換材料、さらにはその熱電変換材料の製造方法を提供することができる。
[0018]
 本発明の第3の態様によれば、最強ピーク比が100%未満であってSiクラスレート相の他に第2相が含まれるため、割れの発生を防止することができる。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 実施例1~13および比較例1~11にかかるサンプルのSi組成比(d)と800℃における無次元性能指数(ZT)との関係を示す概略的な図面である。
[図2] Siクラスレート化合物相の最強ピーク比が100%である場合のX線回折結果を示す概略的な図面である。
[図3] 図2の一定範囲(2θ=31~33)の拡大図である。
[図4] Siクラスレート化合物相の最強ピーク比が95%である場合のX線回折結果を示す概略的な図面であって、その一定範囲(2θ=31~33)の拡大図である。
[図5] Siクラスレート化合物相の最強ピーク比が90%である場合のX線回折結果を示す概略的な図面であって、その一定範囲(2θ=31~33)の拡大図である。
[図6] 本発明の実施例1~11,12~25およびその比較例1~5にかかるサンプルのピーク強度比とZT変化率との関係を概略的に示す図面である。
[図7] 本発明の実施例1,2およびその比較例1~4にかかるサンプルの粉末X線回折結果を示す概略的な図面である。
[図8] 本発明の実施例1,2およびその比較例1~4にかかるサンプルの温度と無次元性能指数(ZT)との関係を示す概略的な図面である。
[0020]
 以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
[0021]
[第1の実施形態]
(A)クラスレート化合物および熱電変換材料
 本実施形態にかかるクラスレート化合物は、化学式Ba Ga Al Si (7.77≦a≦8.16,7.47≦b≦15.21,0.28≦c≦6.92,30.35≦d≦32.80,a+b+c+d=54)で表され、BaとGaとAlとSiとが同時に含まれた化合物であり、本実施形態にかかる熱電変換材料は当該クラスレート化合物を含むn型熱電材料である。
[0022]
 本実施形態にかかるクラスレート化合物は、主に、基本的な格子がSiのクラスレート格子から構成され、Ba元素がその内部に内包され、クラスレート格子を構成する原子の一部がGa,Alで置換された構造を有している。
 本実施形態にかかる「クラスレート化合物」は、Siクラスレート相を主体とするものであればよく、クラスレート相には該当しない他の相が含まれてもよい。当該「クラスレート化合物」は好ましくはSiクラスレート単相である。
[0023]
 化学式Ba Ga Al Si の組成比のうち、Ga,Al,Siの各組成比b,c,dは概ね、次のような関係を有する。
   b+c+d=46
 このような関係を満たせば、当該クラスレート化合物はSiクラスレート相を主体とするものとして実現され、理想的な結晶構造をとりうる。
[0024]
 本実施形態にかかる熱電変換材料は、800℃におけるZTが0.4以上である。
 なお、本実施形態にかかる熱電変換材料は、上記クラスレート化合物を主成分とし、少量の他の添加物が含まれてもよい。
[0025]
(B)製造方法
 本発明の好ましい実施形態にかかる熱電変換材料の製造方法は、
(1)Ba,Ga,Al,Siを原料として混合・溶融・凝固して所定の組成のクラスレート化合物を調製する調製工程と、
(2)前記クラスレート化合物を粉砕して微粒子とする粉砕工程と、
(3)前記微粒子を焼結する焼結工程と、
を有する。
 これらの工程を経ることにより、所定の組成を有し、ポア(空隙)が少なく、組成が均一な材料が得られるという利点がある。
[0026]
(1)調製工程
 調製工程では、所定の組成を有しかつ均一な組成のクラスレート化合物のインゴットを製造する。
[0027]
 まず、所望のクラスレート化合物の組成となるように、所定量の原料(Ba,Ga,Al,Si)を秤量し混合させる。原料は、単体であってもよいし、合金や化合物であってもよく、その形状は、粉末でも片状でも塊状であってもよい。
 また、Siの原料として単体のSiではなくAl-Siの母合金を用いると、融点が低下するのでより好ましい。
[0028]
 溶融時間としては、すべての原料が液体状態で均質に混ざり合う時間が必要とされるが、製造に要するエネルギーを考慮すると、溶融時間はできるだけ短時間であることが望まれる。そのため、溶融時間は、好ましくは1~100分であり、さらに好ましくは1~10分であり、特に好ましくは1~5分である。
[0029]
 原料混合物からなる粉末を溶融する方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。
 溶融方法としては、たとえば、抵抗発熱体による加熱、高周波誘導溶解、アーク溶解、プラズマ溶解、電子ビーム溶解などが挙げられる。
 ルツボとしては、グラファイト、アルミナ、コールドクルーシブルなどが、加熱方法に対応して適宜用いられる。
[0030]
 溶融の際は、材料の酸化を防ぐために、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気下でおこなわれるのが好ましい。
 短時間で均質に混ざり合った状態とするためには、好ましくは微細な粉末状の原料が混合されるのがよい。ただし、Baとしては、酸化を防ぐために、好ましくは塊状を呈するものを使用する。また、溶融時に機械的な攪拌または電磁的な攪拌を加えるのも好ましい。
[0031]
 溶融後、インゴットにするためには、鋳型を用いて鋳造してもよいし、ルツボ中で凝固させてもよい。
 できあがったインゴットの均質化のためには、溶融後にアニール処理をおこなってもよい。
[0032]
 アニール処理の処理時間は、製造時の省エネルギーを考慮すると、なるべく短時間とされることが望まれるが、アニール効果を考慮すると、長い時間が必要とされる。アニール処理の処理時間は、好ましくは1時間以上であり、さらに好ましくは1~10時間がさらに好ましい。
[0033]
 アニール処理の処理温度は、好ましくは700~950℃であり、さらに好ましくは850~930℃である。処理温度が700℃未満であると、均質化が不十分になるという問題が生じ、処理温度が950℃を超えると、再溶融による濃度偏析が生じるという問題が生じる。
[0034]
(2)粉砕工程
 粉砕工程では、調製工程によって得られたインゴットを、ボールミルなどを用いて粉砕し、微粒子状のクラスレート化合物を得ることができる。
[0035]
 得られる微粒子としては、焼結性を向上するために粒度が細かいことが望まれる。本実施形態では、微粒子の粒径は、好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上75μm以下である。
[0036]
 所望の粒径の微粒子とするためには、ボールミルなどによってインゴットを粉砕した後、粒度を調製する。粒度の調製方法は、ISO3310-1規格のレッチェ社製試験ふるいとレッチェ社製ふるい振とう機AS200デジットを用いたふるい分けによりおこなえばよい。
[0037]
 なお、この粉砕工程に代えて、ガスアトマイズ法などの各種アトマイズ法やフローイングガスエバポレーション法などを用いて微粉末を製造することもできる。
[0038]
(3)焼結工程
 焼結工程では、前記粉砕工程で得られた微粉末状のクラスレート化合物を焼結して、均質で空隙の少ない、所定の形状の固体を得ることができる。
[0039]
 焼結方法としては、放電プラズマ焼結法、ホットプレス焼結法、熱間等方圧加圧焼結法などを用いることができる。
[0040]
 放電プラズマ焼結法を用いる場合、その焼結の1条件となる焼結温度は、好ましくは600~900℃であり、より好ましくは800~900℃である。焼結時間は好ましくは1~10分であり、より好ましくは3~7分である。圧力は好ましくは40~80MPaであり、より好ましくは50~70MPaである。
[0041]
 焼結温度が600℃以下では焼結せず、焼結温度が1000℃以上では溶解する。焼結時間が1分未満では密度が低く、焼結時間が10分以上では焼結が完了・飽和し、それ以上時間をかける意義がないと考えられる。
[0042]
 特に、焼結工程では、微粉末状のクラスレート化合物を上記焼結温度まで加熱してその温度で上記焼結時間保持し、その後に当該クラスレート化合物を加熱前の温度まで冷却する。この場合、微粉末状のクラスレート化合物を焼結温度まで加熱する工程とその温度で保持している工程とでは加圧状態とし、その後当該クラスレート化合物を冷却する工程では加圧状態を解除する。
 かかる圧力操作によれば、微粉末状のクラスレート化合物の焼結工程での割れを抑制することができる。
[0043]
(C)クラスレート化合物相の生成の確認
 前記の製造方法によって、クラスレート化合物が生成されたかどうかは、粉末X線回折(XRD)により確認することができる。
[0044]
 具体的には、焼結後のサンプルを再度粉砕して粉末X線回折測定し、得られるピークがタイプ1クラスレート相(Pm-3n、No.223)のみを示すものであれば、タイプ1クラスレート化合物が合成されたことを確認できる。
 しかし、実際にはタイプ1クラスレート相のみからなるものと、不純物相を含むものとがあるため、不純物のピークも観察される。
[0045]
 本実施形態にかかるクラスレート化合物におけるSiクラスレート化合物相の最強ピーク比は85%以上であり、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
[0046]
 なお、本実施形態にかかる最強ピーク比とは、粉末X線回折測定において測定されたSiクラスレート化合物相の最強ピーク(IHS)、不純物相A(BaGa 4―Y(Al,Si) (0≦Y≦4))の最強ピーク強度(IA)、不純物相B(BaAl Si など)の最強ピーク強度(IB)より、下記の式(2-1)で定義される。
   「最強ピーク比」=IHS/(IHS+IA+IB)×100(%) … (2-1)
[0047]
(D)特性評価試験
 次に、上記の方法で製造される熱電変換材料の無次元性能指数ZTを算出するための特性評価について説明する。
[0048]
 特性評価項目は、ゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導度κである。
 特性評価試験では、電子線マイクロアナライザー(島津製作所製EPMA-1610)による組成分析とミクロ組織観察、焼結密度測定をおこなう。
 各種特性評価用サンプルは、20mmφ(直径20mm)×5~20mm(高さ5~20mm)の円柱状焼結体から、切り出し、整形する。
[0049]
 「ゼーベック係数S」および「電気抵抗率ρ」は、四端子法によりアルバック理工(株)製の熱電特性評価装置 ZEM-3を用いて測定する。
 「熱伝導率κ」は、比熱c、密度δ、熱拡散率αの測定結果から、下記の式(3)により算出する。
   κ=cδα … (3)
 「比熱c」は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)法により測定する。測定装置として、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計 EXSTAR6000DSCを用いる。
 「密度δ」は、アルキメデス法により測定する。測定装置として、(株)島津製作所製の精密電子天秤 LIBROR AEG-320を用いる。
 「熱拡散率α」は、レーザーフラッシュ法により測定する。測定装置として、アルバック理工(株)製の熱定数測定装置 TC-7000を用いる。
[0050]
 以上の測定結果から、式(1)を用いて熱電変換材料の性能を評価する指数である無次元性能指数ZTを算出することができる。算出された無次元性能指数から、その熱電変換材料の特性を評価することができる。
 本実施形態にかかる熱電変換材料では、800℃におけるZTが0.4以上である。
[0051]
[第2の実施形態]
 第2の実施形態は下記の点で第1の実施形態と異なっている。
(A)クラスレート化合物および熱電変換材料
 本実施形態にかかるクラスレート化合物は、化学式Ba Ga Al Si (7.8≦a≦8.16,7.91≦b≦10.74,4.36≦c≦6.95,30.13≦d≦31.54,a+b+c+d=54)で表され、BaとGaとAlとSiとが同時に含まれた化合物であり、本実施形態にかかる熱電変換材料は当該クラスレート化合物を含むn型熱電材料である。
[0052]
 本実施形態にかかるクラスレート化合物は、主に、基本的な格子がSiのクラスレート格子から構成され、Ba元素がその内部に内包され、クラスレート格子を構成する原子の一部がGa,Alで置換された構造を有している。
 本実施形態にかかる「クラスレート化合物」は、Siクラスレート相を主体とするものであり、これとは異なる他の相(第2相または副相)が含まれているものである。
[0053]
 化学式Ba Ga Al Si の組成比のうち、Ga,Al,Siの各組成比b,c,dは概ね、次のような関係を有する。
   b+c+d=46
 このような関係を満たせば、当該クラスレート化合物はSiクラスレート相を主体とするものとして実現され、理想的な結晶構造をとりうる。
[0054]
 なお、本実施形態にかかる熱電変換材料は、上記クラスレート化合物を主成分とし、少量の他の添加物が含まれてもよい。
[0055]
 (C)クラスレート化合物相の生成の確認
 第1の実施形態と同様に、前記の製造方法によって、クラスレート化合物が生成されたかどうかは、粉末X線回折(XRD)により確認することができる。
[0056]
 具体的には、焼結後のサンプルを再度粉砕して粉末X線回折測定し、得られるピークがタイプ1クラスレート相(Pm-3n、No.223)のみを示すものであれば、タイプ1クラスレート化合物が合成されたことを確認できる。
 本実施形態では、タイプ1クラスレート相のピークに加え、当該クラスレート化合物中に第2相を含むことから、第2相のピークも観察される。
[0057]
 本実施形態にかかるクラスレート化合物におけるSiクラスレート化合物相の最強ピーク比は100%未満であり、好ましくは99%以下であり、さらに好ましくは99%以下でかつ96%以上である。
[0058]
 本実施形態にかかる最強ピーク比とは、粉末X線回折測定において測定されたSiクラスレート化合物相の最強ピーク(IHS)、第2相A(BaGa 4―Y(Al,Si) (0≦Y≦4))の最強ピーク(IA)より、下記の式(2-2)で定義される。
   「最強ピーク比」=IHS/(IHS+IA)×100(%) … (2-2)
[0059]
 Siクラスレート化合物相の最強ピーク比が100%未満であるとは、クラスレート化合物中に第2相を含むという意味であり、X線回折結果において第2相が検出可能であるという意味である。
[0060]
 図2および図3に示すとおり、Siクラスレート化合物相の最強ピーク比が100%である場合には、2θ=31~33の範囲において、Siクラスレート化合物相の最強ピークIHSのみが確認され、第2相Aの最強ピーク(IA)は確認することができない。
[0061]
 これに対し、図4および図5に示すとおり、Siクラスレート化合物相の最強ピーク比がたとえば95%または90%である場合には、2θ=31~32の範囲において、Siクラスレート化合物相の最強ピークIHSが確認され、さらに2θ=32~33の範囲において、第2相Aの最強ピーク(IA)が確認される。
 Siクラスレート化合物相の最強ピーク比が100%未満であるとは、図4および図5に示すようなX線回折結果を得られると言い換えることができる。
[0062]
[第3の実施形態]
 第3の実施形態は下記の点で第1の実施形態と異なっている。
(A)クラスレート化合物および熱電変換材料
 本実施形態にかかるクラスレート化合物は、化学式Ba Ga y-xAl Si 46-y(7≦z≦8,15≦y≦17,0<x<y)で表され、BaとGaとAlとSiとが同時に含まれた化合物であり、本実施形態にかかる熱電変換材料は当該クラスレート化合物を含むn型熱電材料である。
[0063]
 本実施形態にかかるクラスレート化合物は、主に、基本的な格子がSiのクラスレート格子から構成され、Ba元素がその内部に内包され、クラスレート格子を構成する原子の一部がGa,Alで置換された構造を有している。
 本実施形態にかかる「クラスレート化合物」は、Siクラスレート相を主体とするものであればよく、クラスレート相には該当しない他の相が含まれてもよい。当該「クラスレート化合物」は好ましくはSiクラスレート単相である。
[0064]
 化学式Ba Ga y-xAl Si 46-y(7≦z≦8,15≦y≦17,0<x<y)中のxの値(範囲)は、上記のとおり0<x<yであり、好ましくは4≦x≦10であり、より好ましくは4≦x≦6である。
 z,yが上記の範囲内であることで、当該クラスレート化合物はSiクラスレート相を主体とするものとして実現される。z,yの値がこの範囲から外れると、他の相の比率が増え、ZTが低くなる。また、xが上記の範囲内であることで、当該クラスレート化合物はクラスレート相の比率がより高くなり、ZTがより高くなる。
[0065]
 本実施形態にかかる熱電変換材料は、200~800℃におけるZTが0.2以上であり、好ましくは500℃におけるZTが0.3以上である。
 なお、本実施形態にかかる熱電変換材料は、上記クラスレート化合物を主成分とし、少量の他の添加物が含まれてもよい。
[0066]
[第4の実施形態]
 第4の実施形態は下記の点で第1の実施形態と異なっている。
(A)クラスレート化合物および熱電変換材料
 本実施形態にかかるクラスレート化合物は、化学式Ba Ga y-xAl Si 46-y(7≦z≦8,15≦y≦17,0<x<y)で表され、BaとGaとAlとSiとが同時に含まれた化合物であり、本実施形態にかかる熱電変換材料は当該クラスレート化合物を含むn型熱電材料である。
[0067]
 本実施形態にかかるクラスレート化合物は、主に、基本的な格子がSiのクラスレート格子から構成され、Ba元素がその内部に内包され、クラスレート格子を構成する原子の一部がGa,Alで置換された構造を有している。
 本実施形態にかかる「クラスレート化合物」は、Siクラスレート相を主体とするものであればよく、クラスレート相には該当しない他の相が含まれてもよい。当該「クラスレート化合物」は好ましくはSiクラスレート単相である。
[0068]
 化学式Ba Ga y-xAl Si 46-y(7≦z≦8,15≦y≦17,0<x<y)中のxの値(範囲)は、上記のとおり0<x<yであり、好ましくは4≦x≦10であり、より好ましくは4≦x≦6である。
 z,yが上記の範囲内であることで、当該クラスレート化合物はSiクラスレート相を主体とするものとして実現される。z,yの値がこの範囲から外れると、他の相の比率が増え、ZTが低くなる。また、xが上記の範囲内であることで、当該クラスレート化合物はクラスレート相の比率がより高くなり、ZTがより高くなる。
[0069]
 本実施形態にかかる熱電変換材料は、200~800℃におけるZTが0.2以上であり、好ましくは500℃におけるZTが0.3以上である。
 なお、本実施形態にかかる熱電変換材料は、上記クラスレート化合物を主成分とし、少量の他の添加物が含まれてもよい。
[0070]
(B)製造方法
(1)調製工程
 本実施形態にかかる調製工程では、溶融温度として、原料混合物に含まれる材料のうち、最も融点の高い原料の融点以上の温度が必要である。
[0071]
 たとえば、単体のSiが含まれた原料の場合には、Siの融点(1414℃)以上が必要である。ただし、原料混合物のうち最も融点の高い原料の融点以上の温度が必要といっても、製造に要するエネルギーや材料の酸化を考慮すると、溶融温度はできるだけ低温であることが望まれる。したがって、単体のSiが含まれた原料の場合には、溶融温度は好ましくは1500℃以下であり、さらに好ましくは1420℃である。
[0072]
 以下、本発明を、実施例1~3を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例1~3により限定されるものではない。
 基本的に、「実施例1」は第1の実施形態にかかる化合物の実験例を、「実施例2」は第2の実施形態にかかる化合物の実験例を、「実施例3」は第3,第4の実施形態にかかる化合物の実験例を、それぞれ示している。
実施例 1
[0073]
(1)サンプルの作製
 純度2N以上の高純度のBaと、純度3N以上の高純度のAl,Gaと、純度3N以上の高純度のSiとを、表1,表2に記載の配合比率で秤量し、原料混合物を調製した。
[0074]
 この原料混合物を、Ar(アルゴン)雰囲気中において、水冷銅ハース上で300Aの電流で1分間アーク溶解した後、原料の不均一を解消するためにインゴットを反転して、再度アーク溶解を行う工程を5回繰り返し、そのまま水冷銅ハース上で常温まで冷却することによりクラスレート化合物を有するインゴットを得た。
 その後、インゴットの均一性を高めるために、アルゴン雰囲気で、900℃で6時間のアニール処理をおこなった。
[0075]
 得られたインゴットを、メノウ製遊星ボールミルを用いて粉砕し、微粒子を得た。このとき、得られた粒子の粒径の平均が75μm以下となるようにISO3310-1規格のレッチェ社製試験ふるいとレッチェ社製ふるい振とう機AS200デジットを用いて粒度を調製した。
[0076]
 得られた焼結用粒子を、放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いて、圧力60MPaまで加圧した後に900℃まで加熱を行い、その後900℃で5分間焼結した。焼結が終了してから、加圧状態を解除し、900℃から室温まで冷却を行った。
[0077]
 なお、焼結用粒子の焼結が終了してから、加圧状態を保持し続けて冷却を行うと、割れが生じてしまったが、上記のとおりに焼結後に加圧状態を解除して900℃から室温まで冷却を行うと、そのような割れを抑制することができた。得られるサンプルやダイスの劣化を考慮すると、冷却温度が500℃以上では真空雰囲気で保持することが好ましいが、500℃未満では大気雰囲気で保持してもかまわない。
[0078]
 このようにして得られたサンプルの焼結体を、組成分析するとともに、前記の「(C)クラスレート化合物の生成の確認」のX線回折と、前記の「(D)特性評価試験」とに供した。
[0079]
(2)サンプルの評価
(2.1)組成分析
 組成分析の結果を表1,表2に示す。
 表1から、実施例1-1~1-13のサンプルにおいて、所望の組成Ba Ga Al Si (7.77≦a≦8.16,7.47≦b≦15.21,0.28≦c≦6.92,30.35≦d≦32.80,a+b+c+d=54)の化合物が得られたことがわかる。
[0080]
(2.2)X線回折分析
 得られたサンプルを、粉末X線回折で分析した。
 得られた結果から、式(2)に基づき最強ピーク比を算出した。
 算出結果を表1,表2に示す。
[0081]
(2.3)特性評価
 得られたサンプルについて、上記「(D)特性評価試験」の記載のとおりに、特性評価を行った。
 ゼーベック係数を測定したところ、すべてのサンプルでゼーベック係数が負となり、各サンプルがn型であることがわかった。
 さらに、800℃における電気抵抗率、熱伝導率を測定し、これらから無次元性能指数ZTを求めた。
[0082]
 得られた無次元性能指数ZTの値を表1,表2に示す。
 さらに、得られた無次元性能指数ZTを、各サンプルのSi組成比(d)に対してプロットすると、図1に示す結果が得られた。
[0083]
 図1中、「○」印は実施例1-1~1-13を、「△」印は比較例1-3~1-11を、「×」印は比較例1-1,1-2を、それぞれ示している。実施例1-1~1-13の無次元性能指数ZTと組成比dとの間には、下記式の関係が成立していた。
   ZT=-0.0056d +0.7238d -35.154d +760.26d-6174.7
[0084]
[表1]


[0085]
[表2]


[0086]
(3)まとめ
 表1,表2および図1に示すように、Ba Ga Al Si のうちSiの組成比dが、30.35≦d≦32.80の範囲内にある場合には、ZTが0.4以上となり、熱電変換素子として好ましいことがわかる。
 Si以外のBa,Ga,Alについては、それぞれの組成比a,b,cが7.77≦a≦8.16,7.47≦b≦15.21,0.28≦c≦6.92の範囲内にあればよく、これらの組成比によってZTの傾向はほとんど変化しなかった。
[0087]
 以上から、特定の組成比Ba Ga Al Si (7.77≦a≦8.16,7.47≦b≦15.21,0.28≦c≦6.92,30.35≦d≦32.80,a+b+c+d=54)を有することが、n型の熱電特性を示しかつ800℃という高温領域でのZTが0.4以上という特性を得るのに、有用であることがわかる。
実施例 2
[0088]
(1)サンプルの作製
 純度2N以上の高純度のBaと、純度3N以上の高純度のAl,Gaと、純度3N以上の高純度のSiとを、表3,表4に示す配合比率で秤量し、原料混合物からなる粉末を調製した。
[0089]
 この粉末を、Ar(アルゴン)雰囲気中において、水冷銅ハース上で300Aの電流で1分間アーク溶解した後、原料の不均一を解消するためにインゴットを反転して、再度アーク溶解を行う工程を5回繰り返し、そのまま水冷銅ハース上で常温まで冷却することによりクラスレート化合物を有するインゴットを得た。
 その後、インゴットの均一性を高めるために、アルゴン雰囲気で、900℃で6時間のアニール処理をおこなった。
[0090]
 得られたインゴットを、メノウ製遊星ボールミルを用いて粉砕し、微粒子を得た。このとき、得られた粒子の粒径の平均が75μm以下となるようにISO3310-1規格のレッチェ社製試験ふるいとレッチェ社製ふるい振とう機AS200デジットを用いて粒度を調製した。
[0091]
 得られた焼結用粒子を、放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いて、900℃で5分間焼結した。このときの圧力は60MPaであった。このようにして得られた焼結体のサンプル(比較例2-1~2-5,実施例2-1~2-25)の配合比と組成比とを表3,表4に示す。
[0092]
 その後これらサンプルを、前記の「(C)クラスレート化合物の生成の確認」のX線回折と、前記の「(D)特性評価試験」とに供した。
[0093]
[表3]


[0094]
[表4]


[0095]
(2)サンプルの評価
(2.1)組成分析
 表3,表4の組成分析結果から、化学式Ba Ga Al Si (7.8≦a≦8.16,7.91≦b≦10.74,4.36≦c≦6.95,30.13≦d≦31.54,a+b+c+d=54)の化合物が得られたことがわかる。
[0096]
(2.2)X線回折分析
 各サンプルを、粉末X線回折で分析した。
 得られた結果から式(2)に基づき最強ピーク比を算出した。
 算出結果を表5,表6に示す。
[0097]
 併せて、比較例2-1(最強ピーク比が100%の場合)の結果を図2および図3に、実施例2-4(最強ピーク比が95%の場合)の結果を図4に、それぞれ示す。
[0098]
(2.3)特性評価
 各サンプルについて、上記「(D)特性評価試験」の記載のとおりに、特性評価を行った。
 ゼーベック係数を測定したところ、すべてのサンプルでゼーベック係数が負となり、各サンプルがn型であることがわかった。
[0099]
 電気抵抗率、熱伝導率を測定して無次元性能指数ZTを算出するとともに、表3,表4に示す様に配合比を調整することにより、クラスレート相の組成を固定して、最強ピーク比のみを変化させたサンプルを作製し、そのときのZTの変化率も算出した。それら算出結果を表5,表6に示す。
[0100]
 併せて、各サンプルの最強ピーク比とZT変化率との関係をプロットすると、図6に示す結果が得られた。
[0101]
 図6中、「×」印は比較例2-1~2-5を、「△」印は実施例2-1~2-14を、「○」印は実施例2-15~2-25を、それぞれ示している。
[0102]
(2.4)割れの有無の確認
 各サンプルを、電子顕微鏡で観察し、割れの発生の有無を確認した。
 確認結果を表5,表6に示す。
[0103]
 なお、「割れが有る」状態とは、前述の焼結終了時にサンプルが破壊され、ひとつの欠片あたりの体積が、割れる前の体積の90%より小さくなっている状態をいい、「割れが無い」状態とは、サンプルが破壊されていても、ひとつの欠片あたりの体積が、割れる前の体積の90%以上となっている状態のことをいう。
[0104]
[表5]


[0105]
[表6]


[0106]
(3)まとめ
 表5,表6に示すとおり、比較例2-1~2-5と実施例2-1~2-25との比較から、最強ピーク比が100%未満である場合には、割れの発生が確認されなかった。
 クラスレート化合物の割れの発生を防止する上では、熱電変換材料に第2相を形成し最強ピーク比を100%未満とするのが、有用であることがわかる。
[0107]
 さらに、図6に示すとおり、最強ピーク比が96~99%の場合に、ZT変化率が90%以上となり、最強ピーク比をこの範囲に収めることは、ZT変化率を低く抑えるうえで有用であることもわかった。
実施例 3
[0108]
(1)サンプルの作製
 純度2N以上の高純度のBaと、純度3N以上の高純度のAl,Gaと、純度3N以上の高純度のSiとを、表7に示す構成比率で秤量し、原料混合物からなる粉末を調製した。
[0109]
[表7]


[0110]
 この粉末を、Ar(アルゴン)雰囲気中において、水冷銅ハース上で300Aの電流で1分間アーク溶解した後、原料の不均一を解消するためにインゴットを反転して、再度アーク溶解を行う工程を5回繰り返し、そのまま水冷銅ハース上で常温まで冷却することによりクラスレート化合物を有するインゴットを得た。
 その後、インゴットの均一性を高めるために、アルゴン雰囲気で、900℃で6時間のアニール処理をおこなった。
[0111]
 得られたインゴットを、メノウ製遊星ボールミルを用いて粉砕し、微粒子を得た。このとき、得られた粒子の粒径の平均が75μm以下となるようにISO3310-1規格のレッチェ社製試験ふるいとレッチェ社製ふるい振とう機AS200デジットを用いて粒度を調製した。
[0112]
 得られた焼結用粒子を、放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いて、900℃で5分間焼結した。このときの圧力は60MPaであった。
[0113]
 このようにして得られた6種のサンプル(実施例3-1~3-2,比較例3-1~3-4)の焼結体を、前記の「(C)クラスレート化合物の生成の確認」のX線回折と、前記の「(D)特性評価試験」とに供した。
[0114]
(2)サンプルの評価
(2.1)組成分析
 組成分析の結果を、表8に示す。
 表8から、実施例3-1,3-2のサンプルにおいて、所望の組成Ba Ga y-xAl Si 46-y(7≦z≦8,15≦y≦17,0<x<y)の化合物が得られたことがわかる。
[0115]
[表8]


[0116]
(2.2)X線回折分析
 実施例3-1,3-2と比較例3-1~3-4のサンプルを、粉末X線回折で分析した。その結果を図7に示し、併せてその結果から式(2)に基づき最強ピーク比を算出した。図7中、黒塗りの逆三角形印は主に不純物ピークを示している。
[0117]
 図7に示すとおり、実施例3-1,3-2と比較例3-4のサンプルで不純物のピークが低く、比較例3-1~3-3のサンプルは不純物のピークが比較的高かった。
[0118]
(2.3)特性評価
 実施例3-1,3-2と比較例3-1~3-4のサンプルについて、上記「(D)特性評価試験」の記載のとおりに、特性評価を行った。
 ゼーベック係数を測定したところ、すべてのサンプルでゼーベック係数が負となり、各サンプルがn型であることがわかった。
[0119]
 さらに、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、これらから得られた無次元性能指数ZTを、温度に対してプロットすると、図8に示す結果が得られた。この結果から、実施例3-1,3-2のサンプルでは200~800℃の間でZTが高いという結果になった。
[0120]
(3)まとめ
 特定の組成比Ba Ga y-xAl Si 46-y(7≦z≦8,15≦y≦17,0<x<y)を有することが、n型の熱電特性を示しかつ200~800℃でのZTが0.2以上という特性を得るのに、有用であることがわかる。

産業上の利用分野

[0121]
 本発明の好ましい態様にかかるクラスレート化合物は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換しうる熱電変換素子に好適に利用することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 化学式Ba Ga Al Si (7.77≦a≦8.16,7.47≦b≦15.21,0.28≦c≦6.92,30.35≦d≦32.80,a+b+c+d=54)で表されるクラスレート化合物。
[請求項2]
 n型の熱電変換材料であって、
 化学式Ba Ga Al Si (7.77≦a≦8.16,7.47≦b≦15.21,0.28≦c≦6.92,30.35≦d≦32.80,a+b+c+d=54)で表されるクラスレート化合物を含む熱電変換材料。
[請求項3]
 化学式Ba Ga Al Si (7.8≦a≦8.16,7.91≦b≦10.74,4.36≦c≦6.95,30.13≦d≦31.54,a+b+c+d=54)で表されるクラスレート化合物を主体とする熱電変換材料であって、
 X線回折測定におけるSiクラスレート相の最強ピークをIHSと、第2相の最強ピークをIAとしたとき、その最強ピーク比が100%未満であることを特徴とする熱電変換材料。
   「最強ピーク比」=IHS/(IHS+IA)×100(%)
[請求項4]
 請求項3に記載の熱電変換材料において、
 前記第2相がBaGa 4―Y(Al,Si) (0≦Y≦4)で表される化合物であることを特徴とする熱電変換材料。
[請求項5]
 請求項2~4のいずれか一項に記載の熱電変換材料を製造する製造方法であって、
 Ba,Ga,Al,Siを原料として混合・溶融・凝固して所定の組成のクラスレート化合物を調製する調製工程と、
 前記クラスレート化合物を粉砕して微粒子とする粉砕工程と、
 前記微粒子を焼結する焼結工程と、
 を有する熱電変換材料の製造方法。
[請求項6]
 請求項5に記載の熱電変換材料の製造方法において、
 前記焼結工程は、
 前記微粒子を一定の焼結温度まで加熱する加熱工程と、
 前記微粒子を前記焼結温度で一定時間保持する温度保持工程と、
 前記微粒子を加熱前の温度まで冷却する冷却工程とを、有し、
 前記加熱工程および前記温度保持工程では加圧雰囲気とし、
 前記冷却工程では加圧雰囲気を解除することを特徴とする熱電変換材料の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]