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1. (WO2012001968) アトマイザーおよび発光分析装置
Document

明 細 書

発明の名称 アトマイザーおよび発光分析装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014  

発明の効果

0015   0016   0017  

図面の簡単な説明

0018  

発明を実施するための形態

0019  

実施例 1

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037  

実施例 2

0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056  

産業上の利用可能性

0057  

符号の説明

0058  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19  

明 細 書

発明の名称 : アトマイザーおよび発光分析装置

技術分野

[0001]
 本発明は、大気圧プラズマを用いて試料中の目的とする元素の原子化を行うアトマイザーに関するものであり、大気圧プラズマを発生させるための電源に特徴を有するものである。また、本発明は、そのアトマイザーを用いた発光分析装置に関するものである。

背景技術

[0002]
原子吸光分析や原子発光分析では、試料を原子化する装置(アトマイザー)が必要となるが、従来よりアトマイザーとして原子吸光分析では黒鉛炉、原子発光分析ではICP装置などが広く用いられている。また、特許文献1のように、大気圧プラズマを用いたアトマイザーも知られている。
[0003]
 特許文献1には、以下のような発光分析方法が記載されている。まず、アトマイザーを用いて目的元素を含む試料に大気圧プラズマを照射して試料を原子化し、その原子化された試料中の金属元素蒸気を大気圧プラズマ中に混入させ、プラズマ中の高エネルギー電子によって励起発光させる。この発光を分光器を通して測定し、試料中の目的元素の密度などを計測する。
 すなわち、特許文献1に記載のアトマイザーは、大気圧プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、大気圧プラズマを試料に導き照射する誘導電極とを有しており、プラズマ発生装置の電源と、プラズマ発生装置の電極と誘導電極との間に電圧を印加する電源との2つの電源を備えている。大気圧プラズマはプラズマ温度が低く、電子密度が高いため、効率的に試料を原子化することができる。
[0004]
 また、上記アトマイザーの大気圧プラズマの発生には、商用のAC電源の電圧を昇圧して電極に印加することが記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2008-241293

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかし、商用AC電源を用いた場合、電圧がなだらかに上昇するため放電開始電圧になるまでに時間遅れが生じ、原子化の効率が悪かった。そのため、目的元素の種類によっては発光強度が低下し、測定が困難であった。
 また、特許文献1のアトマイザーは、2つの電源を備えているため、装置を小型化して携帯型とすることができなかった。
[0007]
 そこで本発明の目的は、大気圧プラズマを用いたアトマイザーにおいて、原子化の高効率化を図ることである。
 また、本発明の他の目的は、大気圧プラズマを用いたアトマイザーの小型化を図ることである。

課題を解決するための手段

[0008]
 第1の発明は、電源を用いて電圧を印加して大気圧プラズマを発生させ、試料に大気圧プラズマを照射して試料を原子化するアトマイザーであって、電源は、正負が交互に反転する矩形パルス電圧を出力する、ことを特徴とするアトマイザーである。
[0009]
 第2の発明は、第1の発明において、棒状の第1電極と、管状であって、その管内に、第1電極の軸回りにおいて管内壁から第1電極が離間した状態となるように第1電極の先端部を保持し、管内壁と第1電極との隙間に、第1電極の先端部側の軸方向に放電ガスが流される絶縁管と、第1電極の先端部から一定距離隔てて配置された第2電極と、試料を保持する凹部を有し、その凹部底面に第2電極が露出した絶縁材からなる試料保持部と、を有し、電源は、第1電極および前記第2電極間に電圧を印加する、ことを特徴とするアトマイザーである。
[0010]
 第3の発明は、棒状の第1電極と、管状であって、その管内に、第1電極の軸回りにおいて管内壁から第1電極が離間した状態となるように第1電極の先端部を保持し、管内壁と第1電極との隙間に、第1電極の先端部側の軸方向に放電ガスが流される絶縁管と、第1電極の先端部から一定距離隔てて配置された第2電極と、試料を保持する凹部を有し、その凹部底面に第2電極が露出した絶縁材からなる試料保持部と、第1電極および第2電極間に電圧を印加する交流電源と、を有することを特徴とするアトマイザーである。
[0011]
 放電ガスには、Ar、He、窒素、酸素、空気などを用いることができる。
[0012]
 第1電極および第2電極の材料は、SUS、銅、タングステンなどを用いることができる。ただし、第2電極には、分析の目標となる元素を含む材料を用いないようにするか、もしくは分析の目標となる元素を含まない材料によって被膜、めっき等を施す必要がある。第2電極が原子化されて分析に影響を与えてしまうのを避けるためである。
[0013]
 第4の発明は、第3の発明のアトマイザーと、試料を中心として、第1電極と第2電極との対向方向に垂直な面に対して45~75°の角度で、アトマイザーによって原子化された試料を含む大気圧プラズマの発光を受光して分光分析する分光装置と、を備えた発光分析装置である。
[0014]
 受光角度をこのような範囲とすることで、分析に十分な発光強度を得ることができる。より望ましい角度は、60°である。

発明の効果

[0015]
 本第1、第2の発明によれば、矩形波の立ち上がり、立ち下がりの鋭さから、瞬時に放電開始電圧まで印加することができ、発光強度の高い状態が一定期間保たれるため、試料の原子化の高効率化を図ることができる。その結果、発光強度が向上し、分析精度の向上を図ることができる。また、電圧をパルス化することでプラズマ温度の上昇を抑制し、原子化した試料の分散が抑えられる。その結果、原子化した試料の密度が向上し、大気圧プラズマに含まれる原子化された試料の密度も向上し、発光強度が向上する。また、正の矩形パルスと負の矩形パルスを交互に印加するため、大気圧プラズマを安定に生成することができる。
[0016]
 第3の発明のアトマイザーは、電源が1つであるため小型化が可能であり、これにより携帯型のアトマイザーを実現することができる。
[0017]
 また、第4の発明の発光分析装置によると、分析に十分な発光強度を得ることができるので、分析の精度を向上させることができる。

図面の簡単な説明

[0018]
[図1] 実施例1のアトマイザーの構成を示した図。
[図2] 実施例1のアトマイザーのパルス高圧電源の電圧波形とプラズマの発光波形とを示したグラフ。
[図3] 実施例1のアトマイザーの商用AC電源の電圧波形とプラズマの発光波形とを示したグラフ。
[図4] 実施例1のアトマイザーによる発光強度の時間依存性を示したグラフ。
[図5] 実施例1のアトマイザーによるパルス幅と大気圧プラズマの温度との関係を示したグラフ。
[図6] 実施例1のアトマイザーによるパルス幅と大気圧プラズマの電子密度との関係を示したグラフ。
[図7] 実施例1のアトマイザーによるパルス幅と発光強度との関係を示したグラフ。
[図8] 実施例2のアトマイザーの構成を示した図。
[図9] 実施例2のアトマイザーの棒状電極10部分の構成を拡大して示した図。
[図10] 実施例2のアトマイザーの試料電極11部分の構成を拡大して示した図。
[図11] 実施例2のアトマイザーによる大気圧プラズマの発光強度の受光角度依存性を示したグラフ。
[図12] 実施例2のアトマイザーによる大気圧プラズマの発光強度の測定距離依存性を示したグラフ。
[図13] 実施例2のアトマイザーによる大気圧プラズマの発光強度のArガス流速依存性を示したグラフ。
[図14] 実施例2のアトマイザーによるセラミックス管14の内径を2mmとした場合の大気圧プラズマを示した写真。
[図15] 実施例2のアトマイザーによるセラミックス管14の内径を3mmとした場合の大気圧プラズマを示した写真。
[図16] 実施例2のアトマイザーによる大気圧プラズマの発光強度の凹部16直径依存性を示したグラフ。
[図17] 実施例2のアトマイザーによる大気圧プラズマ発光の時間特性を示したグラフ。
[図18] 実施例2のアトマイザーによるCuの発光強度の時間特性を示したグラフ。
[図19] 実施例2のアトマイザーによる下水サンプル中のCu、Znの濃度を測定した結果を示したグラフ。

発明を実施するための形態

[0019]
 以下、本発明の具体的な実施例について、図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例 1
[0020]
 図1は、実施例1のアトマイザーの構成を示した図である。実施例1のアトマイザーは、棒状電極10(本発明の第1電極)と、試料電極11(本発明の第2電極)とを有している。棒状電極10は、直径1.2mmのCu製の棒状であり、試料電極11は、外径2m、内径1mmのステンレス製の管状である。棒状電極10の外周面は絶縁体102により被覆されている。
[0021]
 棒状電極10には、Cu以外に、ステンレス、モリブデン、タングステンなどを用いることができる。また、試料電極11には、ステンレス以外に、Cu、モリブデン、タングステンなどを用いることができる。ただし、試料電極11自体が原子化してしまい、分析に影響を与えてしまうことを考慮して、試料電極11には目的元素を含まない材料を用いるか、目的元素を含まない材料で被膜、めっき等を施す必要がある。
[0022]
 棒状電極10の先端部は、セラミックス管12の管内に軸方向を一致させて納められている。セラミックス管12は、試料電極11に対向する先端側が一段階狭くなっていて、棒状電極10は、この狭くなった管内121まで伸びている。棒状電極10とセラミックス管12の内壁との間には隙間101が設けられている。この棒状電極10の軸回りの空間101がArガスの流路となる。
[0023]
 セラミックス管12は、絶縁管13と連結している。絶縁管13は軸方向に垂直な方向に分岐13aを有しており、セラミックス管12の管内120から絶縁管13の管内130に伸びる棒状電極10は、曲げられて絶縁管13の分岐13aの管内に挿入され、外部に露出している。絶縁管13には、フッ素樹脂などの絶縁材を用いることができる。
[0024]
 さらに、セラミックス管12の試料電極11に対向する先端部側には、外径がセラミックス管12の内径にほぼ一致した短いセラミックス管14がはめ込まれている。
[0025]
 絶縁管13は放電用ガスであるArが封入されたガスボンベ(図示しない)に、減圧・流量制御器などを介して接続されている。ガスボンベから供給されたArガスは、絶縁管13の管内130からセラミックス管12の管内120へと軸方向に供給され、棒状電極10とセラミックス管12の内壁との間の隙間101を棒状電極10の先端部の軸方向に流れてセラミックス管14の先端140からArガスが排出される。
[0026]
 放電ガスには、Ar以外にもHe、Ne、N、空気、などを用いることができる。
[0027]
 試料電極11は、内径2mm、外径3mmのセラミックス管15によって覆われている。セラミックス管15の先端150は外径が拡張されており、セラミックス管15の端面151にはすり鉢状の凹部16が形成されている。凹部16の底面152には、試料電極11が露出している。この凹部16によって、原子化する試料を保持する。また、試料電極11を管状とすることで、その管内を通してセラミックス管15の先端150の凹部16に液体の試料を供給することが可能となっている。また、セラミックス管15はフッ素樹脂材17によってさらに覆われている。なお、凹部16に一定量の試料を保持する場合には、試料電極11を管状とする必要はなく、棒状などとしてもよい。
[0028]
 棒状電極10、試料電極11は高圧パルス電源18に接続されており、正負が交互に反転する矩形パルス電圧が印加される。Arガスを棒状電極10とセラミックス管12の内壁との間の管内120に棒状電極10の先端部の軸方向に流しながら、棒状電極10、試料電極11に電圧を印加することで、棒状電極10の先端部11に大気圧プラズマが生じ、その大気圧プラズマが試料電極11に伸びていく。そして、大気圧プラズマが凹部16に保持された試料に照射され、試料が原子化される。原子化された試料の一部は、大気圧プラズマに混入して発光し、この発光を受光装置によって受光して発光スペクトルを解析することで、試料中の目的元素の定量分析などを行うことができる。また、目的元素の共鳴線スペクトルを発光する光源を用い、その光源の光を原子化された試料に照射して吸光分析を行うこともできる。
[0029]
 図2は、高圧パルス電源18の出力電圧波形と、実施例1のアトマイザーによる大気圧プラズマの発光波形との対応を示したグラフである。また、図3は、従来の商用AC電源の電圧波形と、比較例のアトマイザーによる大気圧プラズマの発光波形とを示したグラフである。ここで比較例のアトマイザーとは、実施例1のアトマイザーにおいて、パルス高圧電源に替えて商用AC電源の電圧を昇圧して用いたアトマイザーである。
[0030]
 図3のように、商用AC電源を用いた場合は、電圧がなだらかに上昇するために放電開始電圧になるまでに時間遅れが生じ、また大気圧プラズマの発光強度も徐々に増加、減少する状態となっている。すなわち、商用AC電源を用いた場合には試料の原子化の効率が低下してしまう。
[0031]
 一方、図2のように正負が交互に反転する矩形パルス電圧を用いる場合には、出力電圧が瞬時に放電開始電圧まで上昇するため、大気圧プラズマの発光強度も瞬時に上昇し、発光強度はパルス高圧電源のパルス幅とほぼ同様の期間、発光強度の高い状態で一定に維持される。そのため、試料の原子化を高効率に行うことができる。また、電圧がパルスであるため、プラズマ温度の上昇が抑制され、原子化された試料の発散が抑制される。そのため、原子化された試料の密度が向上し、大気圧プラズマに含まれる原子化された試料の密度も向上する。その結果、試料中の目的元素の発光強度を向上させることができる。また、正負が交互に反転するパルスであるため、大気圧プラズマを安定して生成することができる。
[0032]
 図4は、実施例1のアトマイザーと受光装置とを用いて発光分析装置を構成し、1ppmのPbを含む水を試料として、発光分析装置によって試料中のPbの共鳴線スペクトル(波長283.3nm)の発光強度を測定したグラフである。横軸は電圧を印加後の経過時間である。高圧パルス電源18は、100Hzでデューティ比が20%の電源と、150Hzでデューティ比が30%の電源を用いた。ともにパルス幅は2msであり、パルス間隔が異なっている。また、実施例1のアトマイザーに替えて、商用AC電源を用いる比較例のアトマイザーを用いた場合のPbの共鳴線スペクトルの発光強度も測定した。
[0033]
 図4のように、商用AC電源を用いた場合は、発光強度がピークにおいても非常に弱い。一方、高圧パルス電源18を用いた場合は、ピークにおける発光強度が商用AC電源を用いた場合に比べて強かった。特に150Hzでデューティ比30%の場合の発光強度のピークは、商用AC電源の場合よりも約5倍強く、100Hzでデューティ比が20%の場合よりも約2.5倍強かった。
[0034]
 図5は、高圧パルス電源18の出力電圧のパルス幅と大気圧プラズマの温度の関係を示したグラフである。試料には1ppmのCuを含む水を用いた。図5のように、パルス幅が2msあたりまではプラズマ温度Tgはゆるやかに上昇するが、2msを越えると、プラズマ温度はほぼ一定となっていることがわかる。
[0035]
 図6は、高圧パルス電源18の出力電圧のパルス幅と大気圧プラズマの電子密度neとの関係を示したグラフである。図6のように、電子密度neはパルス幅にあまり依存せず、ほぼ一定の値であることがわかる。
[0036]
 図7は、高圧パルス電源18の出力電圧のパルス幅と発光強度との関係を示したグラフである。1ppmのCuを含む水を試料とし、試料中のCuの共鳴線スペクトル(波長324nm)の発光強度である。図7のように、発光強度はパルス幅に依存しており、パルス幅が1msぐらいの場合に発光強度のピークが存在していることがわかる。
[0037]
図4および図7の結果から、発光強度は高圧パルス電源18の出力電圧のパルス幅、パルス間隔に依存しており、パルス幅、パルス間隔の制御によって発光強度(試料の原子化効率)を制御可能であることがわかった。
実施例 2
[0038]
 次に、実施例2について説明する。図8は、実施例2のアトマイザーの構成を示した図である。実施例2のアトマイザーは、棒状電極10(本発明の第1電極)と、試料電極11(本発明の第2電極)とを有している。棒状電極10は、直径1.2mmのCu製の棒状であり、試料電極11は、外径2m、内径1mmのステンレス製の管状である。
[0039]
 棒状電極10には、Cu以外に、ステンレス、モリブデン、タングステンなどを用いることができる。また、試料電極11には、ステンレス以外に、Cu、モリブデン、タングステンなどを用いることができる。ただし、試料電極11自体が原子化してしまい、分析に影響を与えてしまうことを考慮して、試料電極11には目的元素を含まない材料を用いるか、目的元素を含まない材料で被膜、めっき等を施す必要がある。
[0040]
 図9は、アトマイザーの棒状電極10部分の構成を拡大して示した図である。棒状電極10の外周面は絶縁体102により被覆されている。棒状電極10の先端部111は、セラミックス管12の管内120に軸方向を一致させて納められている。セラミックス管12は、試料電極11に対向する先端部122が一段階狭くなっていて、棒状電極10は、この狭くなった先端部122の位置まで伸びている。棒状電極10とセラミックス管12の内壁との間には隙間101が設けられている。この棒状電極10の軸回りの空間がArガスの流路となる。
[0041]
 セラミックス管12は、根元において絶縁管13と連結している。絶縁管13は軸方向に垂直な方向に分岐13aを有しており、セラミックス管12の管内120から絶縁管13の管内130に伸びる棒状電極10は、曲げられて絶縁管13の分岐13aの管内に挿入され、外部に露出している。絶縁管13には、フッ素樹脂などの絶縁材を用いることができる。
[0042]
 さらに、セラミックス管12の試料電極11に対向する先端部122には、外径がセラミックス管12の内径にほぼ一致した短いセラミックス管14がはめ込まれている。
[0043]
 絶縁管13は放電用ガスであるArが封入されたガスボンベ(図示しない)に、減圧・流量制御器などを介して接続されている。ガスボンベから供給されたArガスは、絶縁管13の管内からセラミックス管12の管内120へと軸方向に供給され、棒状電極10とセラミックス管12の内壁との隙間101を棒状電極10先端部側の軸方向に流れてセラミックス管14の先端140からArガスが排出される。
[0044]
 放電ガスには、Ar以外にもHe、Ne、N、空気、などを用いることができる。
[0045]
 図10は、アトマイザーの試料電極11部分の構成を拡大して示した図である。試料電極11は、内径2mm、外径3mmのセラミックス管15によって覆われている。セラミックス管15の先端150は外径が拡張されており、セラミックス管15の端面151にはすり鉢状の凹部16が形成されている。凹部16の底面152には、試料電極11が露出している。この凹部16によって、原子化する試料を保持する。また、試料電極11を管状とすることで、その管内を通してセラミックス管15の先端150の凹部16に液体の試料を供給することが可能となっている。また、セラミックス管15はフッ素樹脂材17によってさらに覆われている。なお、凹部に一定量の試料を保持する場合には、試料電極11を管状とする必要はなく、棒状などとしてもよい。
[0046]
 棒状電極10、試料電極11は60Hzの交流電源18に接続されており、電圧が印加される。Arガスを棒状電極10とセラミックス管12の内壁との隙間101に棒状電極10の先端部側の軸方向に流しながら、棒状電極10、試料電極11に電圧を印加することで、棒状電極10の先端部111に大気圧プラズマが生じ、その大気圧プラズマが試料電極11に伸びていく。そして、大気圧プラズマが凹部16に保持された試料に照射され、試料が原子化される。原子化された試料の一部は、大気圧プラズマに混入して発光し、この発光を受光装置によって受光して発光スペクトルを解析することで、試料中の目的元素の定量分析などを行うことができる。また、目的元素の共鳴線スペクトルを発光する光源を用い、その光源の光を原子化された試料に照射して吸光分析を行うこともできる。
[0047]
 以上に説明した実施例2のアトマイザーは、従来の大気圧プラズマを用いたアトマイザーのような2つの電源を用いる構造ではなく、単一の電源を用いる構造であるから、装置の小型化が可能であり、携帯型アトマイザーを実現することができる。
[0048]
 次に、実施例2のアトマイザーを用いた各種実験結果について説明する。
[0049]
[実験例1]
 図11は、実施例2のアトマイザーによって得られる大気圧プラズマの発光強度の受光角度依存性を測定した結果を示すグラフである。横軸は、受光角度を示しており、受光角度は、試料と受光装置とを結ぶ直線が、棒状電極10と試料電極11との対向方向(軸方向)に垂直な面と成す角度である。受光装置は、端部にレンズが設けられた光ファイバーであり、光ファイバーは分光装置に接続されている。試料は1ppmのCuを含む水とし、Cuの共鳴線スペクトル波長(324.75nm)での発光強度を受光装置により測定した。また、棒状電極10と試料電極11との距離は4mmとし、試料から受光装置までの距離は4mmとした。図11のように、受光角度を45~75°としたときに検出される発光強度が高く、最も検出される発光強度が高かったのは受光角度が60°の時であった。
[0050]
 また、試料と受光装置との間の距離依存性についても測定した。受光角度は60°とし、他の条件は図11の場合と同一とした。図12に示すように、検出される発光強度には測定距離依存性があり、36mmで検出される発光強度が最も高かった。測定距離には波長依存性があると考えられるが、他の元素の共鳴線スペクトルの場合にも、Cuの場合と同様に、最適な測定距離が存在するものと考えられる。
[0051]
[実験例2]
 図13は、大気圧プラズマの発光強度のArガス流量依存性を測定した結果を示すグラフである。棒状電極10と試料電極11との距離は6mmとした。また、試料として1ppmのCu含む水と、20ppmのCuを含む水を用意した。図13(a)が1ppmのCu含む水の場合、図13(b)が20ppmのCuを含む水の場合である。いずれの試料の場合も、0.4L/minで発光強度が最大であった。これは、流量が遅いとプラズマが不安定となって発光強度が低下し、流量が速いと原子化した試料が飛散してしまい発光強度が低下してしまうためと考えられる。このように、Arガス流量の最適値が存在していることがわかった。また、Arガス流量は、0.2 liter/min以上、0.8 liter/min以下が望ましい。
[0052]
[実験例3]
 図14はセラミックス管14の内径を2mmとした場合の大気圧プラズマを示した写真、図15は内径を3mmとした場合の大気圧プラズマを示した写真である。セラミックス管14の内径を大きくすると大気圧プラズマが太くなり、試料へのプラズマ照射範囲が広がって発光強度を向上することができるのではと期待したが、図14、15を比較するとわかるように、内径を2mmから3mmにしても大気圧プラズマが太くなるわけではなかった。また、内径を3mmとした場合にはプラズマが不安定となり、均一な太さにはならなかった。この結果、セラミックス管14の内径は、2mm以下が望ましい。また、この結果から、太くて安定した大気圧プラズマが得られる内径の最適値が存在していると思われる。また、その内径の最適値は、電源容量や棒状電極10の材料、直径などの構成要素に依存しているものと考えられる。
[0053]
[実験例4]
 試料を保持する凹部16の直径の違いによる発光強度を比較した。凹部16の直径は、2、3、4mmとした。棒状電極10から試料電極11までの距離は6mm、Arガス流量は0.8L/min、試料には10ppmのCuを含む水を用いた。4mmでは、試料電極11表面でのプラズマ位置が不安定となった。図16は、凹部16の直径を2mm、3mmとしたときの、発光スペクトルを示した図である。図16のように、試料を保持する凹部16の直径が大きい方が発光強度も向上することがわかった。この結果から、凹部16の直径には発光強度を最大とする最適値が存在していることがわかった。凹部16の直径を3mm以上とすることが望ましい。
[0054]
[実験例5]
 試料の供給方法の違いについて、サンプル注入法と定量供給法の2つの方法を検討した。サンプル注入法は、試料電極11の管内を通して凹部16に液体試料を随時一定量供給する方法である。定量供給法は、測定毎に凹部16に一定量の液体試料を供給する方法である。この2つの方法を実験により検討した結果、再現性、測定時の安定性などの点から定量供給法が好ましいことがわかった。
[0055]
[実験例6]
 大気圧プラズマの発光の時間特性を測定した。試料には1ppmのCuを含む水を用い、Arガス流量は0.4L/min、棒状電極10と試料電極11との間隔は4mmとした。図17は、Cu、H、Nの発光強度の時間特性を示したグラフである。Cuは324.75nm、Hは486.13nm、Nは380nmの波長である。時間軸はアトマイズプラズマを点火した時間を原点としている。図17のように、水素の発光強度のピークと、銅の発光強度のピークがほぼ一致している。これは、大気圧プラズマにより試料の水が蒸発して原子化されると同時に、水に含まれるCuも原子化されていることを示している。また、H、Cuの発光強度のピークから遅れてNの発光強度が増加しているが、これは試料が蒸発するにしたがって空気が混入していくためである。また、Cuの発光強度の時間特性について、再現性を確認するために、3回測定を繰り返した。図18はその結果を示したグラフである。この結果、Cuの発光強度のピークの再現性は10%程度であることがわかった。
[0056]
[実験例7]
 下水サンプルを試料として用い、実施例1のアトマイザーを用いた発光分析装置の有効性について確認した。下水サンプル中のCu、Znの濃度について、事前にICP装置を用いた発光分析によって測定したところ、それぞれ3.5ppm、10ppmであった。図19(a)は、Cuの濃度を測定した結果、図19(b)は、Znの濃度を測定した結果である。図中、菱形のプロットは濃度既知(それぞれ0.5ppm、1ppm、2ppmの濃度のCu濃度またはZn濃度)の標準試料について測定した結果である。また、図19中、黒丸プロットはICP装置により測定した下水サンプル中のCu、Znの濃度である。実施例1のアトマイザーを用いた発光分析装置による下水サンプル中のCu、Znの濃度測定結果を示す菱形プロットは、図中の黒丸プロットと重なっている。この結果、実施例1のアトマイザーを用いた発光分析装置は、高い精度で定量分析が可能であることが確認できた。

産業上の利用可能性

[0057]
 本発明のアトマイザーは、吸光分析や発光分析などの分析装置に用いることができる。

符号の説明

[0058]
 10:棒状電極
 11:試料電極
 12、14、15:セラミックス管
 13:絶縁管
 16:凹部
 17:フッ素樹脂材
 18:電源
 

請求の範囲

[請求項1]
 電源を用いて電圧を印加して大気圧プラズマを発生させ、試料に前記大気圧プラズマを照射して前記試料を原子化するアトマイザーであって、
 前記電源は、正負が交互に反転する矩形パルス電圧を出力する、
 ことを特徴とするアトマイザー。
[請求項2]
 棒状の第1電極と、
 管状であって、その管内に、前記第1電極の軸回りにおいて管内壁から前記第1電極が離間した状態となるように前記第1電極の先端部を保持し、管内壁と前記第1電極との隙間に、前記第1電極の先端部側の軸方向に放電ガスが流される絶縁管と、
 前記第1電極の先端部から一定距離隔てて配置された第2電極と、
 試料を保持する凹部を有し、その凹部底面に前記第2電極が露出した絶縁材からなる試料保持部と、
 を有し、
 前記電源は、前記第1電極および前記第2電極間に電圧を印加する、
 ことを特徴とする請求項1に記載のアトマイザー。
[請求項3]
 棒状の第1電極と、
 管状であって、その管内に、前記第1電極の軸回りにおいて管内壁から前記第1電極が離間した状態となるように前記第1電極の先端部を保持し、管内壁と前記第1電極との隙間に、前記第1電極の先端部側の軸方向に放電ガスが流される絶縁管と、
 前記第1電極の先端部から一定距離隔てて配置された第2電極と、
 試料を保持する凹部を有し、その凹部底面に前記第2電極が露出した絶縁材からなる試料保持部と、
 前記第1電極および前記第2電極間に電圧を印加する交流電源と、
 を有することを特徴とするアトマイザー。
[請求項4]
 請求項3に記載のアトマイザーと、
 前記試料を中心として、前記第1電極と前記第2電極との対向方向に垂直な面に対して45~75°の角度で、前記アトマイザーによって原子化された試料を含む大気圧プラズマの発光を受光して分光分析する分光装置と、
 を備えた発光分析装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]