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1. (WO2011125785) アオウキクサ由来の新規アレンオキサイドシンターゼ
Document

明 細 書

発明の名称 アオウキクサ由来の新規アレンオキサイドシンターゼ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009  

発明の効果

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031  

実施例

0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2A   2B   2C   3A   3B   4  

明 細 書

発明の名称 : アオウキクサ由来の新規アレンオキサイドシンターゼ

技術分野

[0001]
 本発明は、アオウキクサ由来の新規のアレンオキサイドシンターゼ遺伝子、当該アレンオキサイドシンターゼ遺伝子の発現産物、並びに当該アレンオキサイドシンターゼ遺伝子を用いたアレンオキサイドシンターゼの製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 アレンオキサイドシンターゼは、ヒドロペルオキシ化した脂肪酸をアレンオキサイドに変換する活性を有する酵素である。当該アレンオキサイドは不安定であるため、非酵素的にケトール体に変換される。アレンオキサイドシンターゼは、植物、動物及び酵母においてその存在が知られている。植物であれば被子植物全般において存在していると考えられており、例えば、大麦、小麦、トウモロコシ、綿、ナス、アマ(種等)、チシャ、エンバク、ホウレンソウ、ヒマワリ等においてその存在が認められている。植物においては、アレンオキサイドシンターゼは、害虫・傷害によるストレス応答におけるジャスモン酸生合成経路に寄与しており、13-ヒドロキシペルオキシリノレン酸を、12,13-エポキシリノレン酸に変換することが一般に知られている(小澤理香, 蛋白質核酸酵素, 48(13) : 1786-1792, 2003)。
[0003]
 本発明者らは、花芽形成促進作用、植物賦活作用、及びそれらを包含する植物成長調整作用を有する以下の構造:
[化1]


 を有するα-ケトール不飽和脂肪酸(以下、KODAと呼ぶ)を見出した(特開平9-295908号公報)。KODAは、以下のスキーム:
[化2]


 に従い植物体内で又は酵素的に生成される。すなわち、α-リノレン酸に9位生成物特異性リポキシゲナーゼ(LOX)を反応させて9-ヒドロペルオキシリノレン酸を得て、続いて当該9-ヒドロペルオキシリノレン酸にアレンオキサイドシンターゼ(AOS)を反応させることにより、9位のヒドロペルオキシ基を脱水してエポキシ基を形成させ、当該エポキシ化合物を非酵素的にケトール体に変換させることによりKODAが生成する(特開平11-29410号公報、特開2001-131006号公報及び特開2009-17829号公報)。
[0004]
 KODAはさまざまな植物種において存在することが知られていたが、ストレスを受けたアオウキクサ( Lemna paucicostata)が他の植物より極めて高いレベル(数百倍)のKODAを放出することが知られていた(特開平11-29410号公報)。したがって、アオウキクサにおいては、他の植物のアレンオキサイドシンターゼに比べて活性の点で優れたアレンオキサイドシンターゼが存在することが推測されていた。しかしながら、アオウキクサからはアレンオキサイドシンターゼのcDNAは単離されておらず、配列も未知であった。
[0005]
 KODAを、α-リノレン酸やリノール酸等を出発材料として酵素合成によって製造する際には、アレンオキサイドシンターゼが必須である。しかしながら、アレンオキサイドシンターゼは、一般に自殺基質的な性質を有するため、基質の濃度を上げた場合に、却ってKODA生成量の減少をもたらすことになり、KODAを酵素法により大量生産することは難しかった。したがって、高活性型のアレンオキサイドシンターゼの特定が望まれていた。

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明が解決すべき課題は、KODAの生成に有用なアレンオキサイドシンターゼを同定し、cDNAを単離すること、当該cDNAを組み込んだベクターを提供すること、当該ベクターを導入した形質転換体を提供すること、並びに当該形質転換体を用いてアレンオキサイドシンターゼ遺伝子の発現産物を提供すること、ひいては当該アレンオキサイドシンターゼを用いてKODAやジャスモン酸などの化合物を酵素的に製造する方法を提供することである。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明者らは、上記課題の解決を目的として鋭意検討を行い、他の植物の数百倍ものKODAを放出するアオウキクサから新規アレンオキサイドシンターゼcDNAを単離するにあたり、より活性の高いアレンオキサイドシンターゼcDNAを得るため、アオウキクサ株をKODA生産能についてスクリーニングを行った。具体的には、62種類のアオウキクサ株のスクリーニングを行ったところ、驚くべきことにアオウキクサSH株が、他のアオウキクサ株の平均の12倍以上のKODA生産能を有することを発見した(図1)。
[0008]
 本発明者らは、アオウキクサSH株からアレンオキサイドシンターゼcDNAを単離し、ベクターに組み込んで、当該ベクターを大腸菌に導入してアレンオキサイドシンターゼのタンパク質の発現を行い、当該アレンオキサイドシンターゼタンパク質の活性を試験した。アオウキクサSH株由来のアレンオキサイドシンターゼは、従来使用されていたシロイヌナズナのアレンオキサイドシンターゼよりも高い活性を有することを明らかにした(図4)。
[0009]
 そこで、本発明者らは、アオウキクサSH株に由来する新規アレンオキサイドシンターゼ遺伝子及び当該遺伝子によりコードされるタンパク質を提供する。具体的に、本発明は、配列番号1に表される塩基配列のDNAからなる遺伝子、及び当該DNAと実質的に同一なDNAからなる遺伝子、並びにこれらの遺伝子によりコードされるタンパク質を提供する。さらに、本発明者らは、上記DNAとベクター断片とを結合させてなる発現ベクターを提供する。さらに、本発明は、当該発現ベクターが形質転換された微生物、動物細胞又は昆虫細胞などの形質転換体にも関する。本発明に係るアレンオキサイドシンターゼは、上記形質転換体を培養し、当該形質転換体を回収し、当該形質転換体からアレンオキサイドシンターゼを抽出し、そして精製することにより得られる。

発明の効果

[0010]
 本発明に係るアオウキクサSH株由来のアレンオキサイドシンターゼは、従来使用されていたアレンオキサイドシンターゼに比較して活性が高いことが示された(図3)。この高い活性は、一般に知られているアレンオキサイドシンターゼが有する自殺基質的性質を有さないことに起因していると考えられる。したがって、本発明に係るアレンオキサイドシンターゼを用いることにより、α-リノレン酸やリノール酸等を出発材料とする酵素的合成法において、KODAを始めとするα-ケトール不飽和脂肪酸を効率よく製造することが可能になる。また、アレンオキサイドシンターゼは、ジャスモン酸生合成経路にも寄与するため、ジャスモン酸を効率よく製造することも可能になる。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 図1は、62種のアオウキクサ株におけるKODA生産量を示す図である。
[図2A] 図2Aは、アオウキクサSH株のアレンオキサイドシンターゼ遺伝子の核酸配列とアミノ酸配列を示す図である。
[図2B] 図2Bは、図2Aの配列の続きを示す図である。
[図2C] 図2Cは、図2Bの配列の続きを示す図である。
[図3A] 図3Aは、シロイヌナズナAOSを用いたKODA生成のHPLCクロマトグラムを示す図である。
[図3B] 図3Bは、SHLpAOSを用いたKODA生成のHPLCクロマトグラムを示す図である。
[図4] 図4は、大腸菌において発現されたSH株由来アレンオキサイドシンターゼ(SHLpAOS)、及びコントロールとして用いたシロイズナズナのアレンオキサイドシンターゼ(AtAOS)のアレンオキサイドシンターゼ活性を比較する図である。

発明を実施するための形態

[0012]
 以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、アオウキクサSH株に由来する新規アレンオキサイドシンターゼ遺伝子及び当該遺伝子によりコードされるタンパク質に関する。具体的に、本発明は、配列番号1で表される塩基配列のDNA、及び当該DNAと実質的に同一なDNAからなる遺伝子に関する。さらに、本発明は、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子、並びに当該アミノ酸配列と実質的に同一なアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子にも関する。さらに、本発明は上記DNAの断片であって、アレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA断片にも関する。
[0013]
 「実質的に同一なDNA」とは、参照元のDNAと塩基配列において少なくとも70%の同一性を有するDNAをいう。この同一性は、好ましくは、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%である。さらに、「実質的に同一なDNA」は、参照元のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAのこともいう。これらの「実質的に同一なDNA」は、転写、翻訳された場合には、参照元のDNAがコードするタンパク質と同じ酵素活性、すなわちアレンオキサイドシンターゼ活性を有する。
[0014]
 ハイブリダイゼーションは周知の方法又はそれに準じる方法、例えばJ.Sambrookら、Molecular Cloning 2nd, Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989に記載の方法に従って行うことができ、そして高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、例えばNaCl濃度が約10~40mM、好ましくは約20mM、温度が約50~70℃、好ましくは約60~65℃である条件をいう。
[0015]
 本発明はさらに、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、並びに当該アミノ酸配列と実質的に同一なアミノ酸配列からなるタンパク質に関する。さらに、本発明は、配列番号1で表される塩基配列のDNA、又は当該DNAと実質的に同一なDNAによりコードされ、かつアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質にも関する。さらに、本発明は上記タンパク質の断片であって、アレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質断片にも関する。
[0016]
 「実質的に同一なアミノ酸配列からなるタンパク質」とは、参照元のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ参照元のアミノ酸配列からなるタンパク質の活性、すなわちアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質をいう。さらに、「実質的に同一なアミノ酸配列からなるタンパク質とは、参照元のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する配列からなり、かつアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質をいう。同一性は、好ましくは、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%である。
[0017]
 本明細書において配列番号1は、アオウキクサSH株由来のアレンオキサイドシンターゼの塩基配列を表し、配列番号2は当該アレンオキサイドシンターゼのアミノ酸配列を表す。これらの具体的な配列を図2A~Cに示す。
[0018]
 アレンオキサイドシンターゼ活性とは、ヒドロペルオキシ化された脂肪酸をアレンオキサイドに変換する酵素活性を意味する。
[0019]
 本発明でいうアレンオキサイドシンターゼ又はアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質とは、例えば後述の活性測定法によりアレンオキサイドシンターゼ活性を有することの認められたものをいう。例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するアレンオキサイドシンターゼの活性と比較し、例えば少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の活性を有するもの、更には100%以上、例えば110%以上、120%以上、150%以上、200%以上の活性を有するものを包含する。
[0020]
 本発明の遺伝子(cDNA)は、例えば以下の手順で得ることができる。植物由来のアレンオキサイドシンターゼに共通したアミノ酸配列からプライマーを設計し、RT-PCR等を行って、cDNA断片を得る。この断片を必要に応じて 32Pまたはジゴキシゲニン等でラベルし、これを用いて5'-RACEまたは3'-RACE、あるいは作製したcDNAライブラリーを用いて常法によりスクリーニングを行い、アレンオキサイドシンターゼ遺伝子(cDNA)全長を得ることができる。塩基配列の決定は、サンガー法やマキサム-ギルバート法等の一般的方法によって行うことができる。
[0021]
 別法としては、アオウキクサ由来アレンオキサイドシンターゼを、硫安分画や各種クロマトグラフィー等の手段を用いて精製し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、PVDF膜等に電気的に転写し、クマシーブリリアントブルー等の色素で検出されるバンドを切り出した後、プロテインシークエンサーにより、N末端アミノ酸配列を決定し、この配列を元にプライマーを設計して、上述の方法に準じてPCRを行うことによりアレンオキサイドシンターゼ遺伝子(cDNA)全長を得ることができる。
[0022]
 単離した遺伝子(cDNA)は例えばプラスミド、ウィルス等に周知の方法により挿入して発現ベクターを調製し、これを宿主細胞、例えば微生物、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等の培養細胞に導入して発現させることにより、当該タンパク質を大量調製することが可能である。さらに、タンパク質発現系として、例えば小麦胚芽抽出物を用いる無細胞タンパク質発現系が使用されることもある。
[0023]
 ベクターとしては、大腸菌( Escherichia coli)由来のプラスミド、例えばpBR322、pBR325、pUC18、pUC119、バチルス・スブチリス( Bacillus subtilis)由来のプラスミド、例えばpUB110、pTP5、pC194、酵母由来プラスミド、例えばpSH19、pSH15、λファージ等のバクテリオファージ、レトロウィルス、ワクシニアウィルス、バキュロウィルス等の動物ウィルスの他、pA1-11、pXT1、pRC/CMV、pRC/RSV、pcDNAI/Neo等が用いられるがこれらに限定されるものではない。本発明においては市販のベクター、pET41a(Novagen)を用いることができる。
[0024]
 本発明に係る遺伝子を含む発現ベクターは、本発明に係る遺伝子を適当なベクターのプロモーターの下流に、適当な制限部位を介して周知の方法で連結することにより製造できる。本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであれば特に制限されない。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーター、β-アクチンプロモーター等が挙げられる。宿主が大腸菌等のエシェリヒア属の細菌の場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーター等、宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penプロモーター、宿主が酵母の場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等を用いるのが好ましい。宿主が昆虫の場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター等が好ましい。所望により、発現ベクターには更にエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点、等を含んでよい。
[0025]
 宿主細胞には、組換タンパク質を産生するための宿主として従来から利用されている原核又は真核細胞のいずれでもよく、例えば限定することなく、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞又は真菌細胞であり、そして好ましくは細菌又は真菌などの微生物である。「真菌」なる語は糸状菌及び酵母を包含することを意図する。適当な細菌の例は、エシェリヒア( Escherichia)属、例えば大腸菌、バチルス属、例えばバチルス・スブチリス( Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス( Streptomyces)属、例えばストレプトマイセス・リビダンス( S. lividans)等のグラム陽性菌、シュードモナス( Pseudomonas)属、例えばシュードモナス・セパシア( P. cepacia)等のグラム陰性菌が挙げられる。また、この細胞は真菌、即ち酵母又は糸状菌の細胞であってもよい。酵母は例えばサッカロマイセス( Saccharomyces)属の細胞、例えばS.セレビジエ( S. cerevisiae)であってよい。糸状菌宿主生物は例えばアスペルギルス( Aspergillus)種の株、例えばA.ニガー( A. niger)であってよい。昆虫細胞としては、例えばSf細胞、MG1細胞、BmN細胞等が挙げられる。動物細胞としては、例えばサル細胞COS-7細胞、Vero細胞、チャイニーズハムスター細胞CHO等が挙げられる。本発明においては大腸菌細胞を利用するのが特に好ましい。
[0026]
 宿主細胞の形質転換は周知の方法、例えば塩化カルシウム法、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、リポフェクチン法、プロトプラストポリエチレン融合法、エレクトロポレーション法等が利用でき、利用する宿主細胞により適当な方法を選択すればよい。
[0027]
 得られる組換宿主細胞を適当な培養培地で培養し、培養液から、慣用の手順、例えば限定することなく、遠心又はろ過により培養液から細胞を分離させ、必要に応じて細胞を破壊し、硫酸アンモニウム等の塩により上清液又は濾液のタンパク質性成分を沈殿させ、次いで様々なクロマトグラフィー手順、例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を行うことにより目的のタンパク質を回収することができる。目的タンパク質の回収を達成するために、タグ配列を含むベクターを用いることもできる。タグとしては、Hisタグ、GSTタグ、c-Mycタグ、HAタグなどが挙げられる。
[0028]
 本発明のタンパク質をコードするDNAの上流に分泌のための微生物用又は動物用の適当なシグナル配列を接続すれば、当該タンパク質を培地中に分泌発現させることもできる。このような分泌型に改変したDNAは、培地中に分泌した当該タンパク質の精製を容易にする点で有用である。かかるシグナル配列の例としては、大腸菌の場合pelBシグナル(S.P.Lei ら、J. Bacteriology, 169:4379-4383, 1987)、酵母の場合α因子シグナル(A.J. Brake, Yeast Genetic Engineering, p269 Butterworth, 1989)、動物細胞の場合イムノグロブリンのシグナルSG-1(H.Maedaら、Hum. Antibod. Hybridomas, 2:124-134, 1991)、C25のシグナル(WO94/20632)等が挙げられる。
[0029]
 アレンオキサイドシンターゼ活性の測定は、α-リノレン酸に9位生成物特異性リポキシゲナーゼを作用させ、続いて酵素生成物である9-ヒドロキシペルオキシリノレン酸(9-HPOT)に一定量のアレンオキサイドシンターゼを加えることにより、KODAを生成し、生成されたKODAをHPLCにより定量的に分析することによって行うことができる。
[0030]
 本発明にかかるタンパク質は、例えば種々のリノール酸、リノレン酸誘導体等の合成に利用するための試薬として有用であり得る。具体的に、本発明に係るタンパク質は、植物成長調整剤として有用なα-ケトール不飽和脂肪酸、特にKODAを、リノール酸やリノレン酸から酵素的に合成する場合に使用する酵素として有用である。また、本発明の遺伝子を植物体に導入することで、植物体内に存在するリノール酸やリノレン酸のアレンオキサイドシンターゼによる代謝をコントロールすることも可能になると考えられる。
[0031]
 以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例等により、本発明の技術的範囲が限定されるべきものではない。
実施例
[0032]
実施例1:KODA高生産アオウキクサ株のスクリーニング
 様々な場所から採取された62種類のアオウキクサを準備し、1/2倍に稀釈したHutnerの培地中において、24~25℃の昼光色蛍光ライトからの連続的な光照射の下で継代培養した。1/2倍に稀釈したHutnerの培地は、次の成分:
 スクロース             10g/l
 K 2HPO 4           200mg/l
 NH 4NO 3           100mg/l
 EDTA遊離酸         250mg/l
 Ca(NO 3)・4H 2O     176mg/l
 MgSO 4・7H 2O       250mg/l
 FeSO 4・7H 2O      12.4mg/l
 MnCl 2・4H 2O      8.92mg/l
 ZnSO 4・7H 2O      32.8mg/l
 Na 2MoO 4・2H 2O     12.6mg/l
 H 3BO 3            7.1mg/l
 Co(NO 3)・6H 2O     0.1mg/l
 CuSO 4・5H 2O      1.97mg/l
 を含み、KOH(50%)を用いてpH6.2~6.5に調整した。
[0033]
 増殖したアオウキクサをろ紙上に広げ、2時間放置した後、水中に1時間浸漬した。その水を高速液体クロマトグラフィー(HPLC;カラム:TYPE UG120 5μm SIZE 4.6mm I.D×250mm;ガードフィルター:INERTSTL 4.6mm×50mm;溶離液:50%アセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸;条件:吸光度の波長210λ(nm)、流速1mL/min、カラム温度40℃)でKODAの濃度を分析した。全てのアオウキクサ株のKODA生産量の平均は4.97μMであった。その中で、アオウキクサSH株は60.2μMのKODAを生産しており、全株の平均KODA生産量の約12倍も多く、極めて高い生産量を与えた(図1)。
[0034]
実施例2:アオウキクサ株由来アレンオキサイドシンターゼのクローニングとその活性測定
 アオウキクサSH株( Lemna paucicostata, SH)から RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用い、全RNAを抽出し、1.8μg の全RNAから、LongRange 2Step RT-PCR Kit(Qiagen)を用いRT-PCR法によりcDNAを合成した。合成したcDNAを、以下に示すシロイヌナズナ( Arabidopsis thaliana)由来プライマーを使用し、PCRのアニーリング温度を45℃と低めに設定し、SH株由来アレンオキサイドシンターゼ(SHLpAOS)の一部配列情報を得た。
   AOS-Forward   5’-GGA ACT AAC CGG AGG CTA CCG-3’(配列番号3)
   AOS-Reverse   5’-CCG TCT CCG GTC CAT TCG ACC ACA A-3’(配列番号4)
[0035]
 この配列情報をもとに、3’または5’RACE法(Rapid Amplification of cDNA end)により全長配列を決定した。
3’-RACE用プライマー
SH-3’-TP:5’-TCTGGGCAGACTCTTCTTTGGAG-3’(配列番号5)
5’-RACE用プライマー
SH-5’-TP:5’-CCGGCTTGCGCTATATATCTGAGAATT-3’(配列番号6)
3’-RACE
上記実験で得られたSH株の全RNA2μgを鋳型として、CapFishing TM target full-length cDNA cloning Kit(Seegene)を用いてcDNAを合成した。このcDNAを鋳型溶液として、キット内アダプタープライマー(3’-RACEプライマー)とSH-3’-TPとそれぞれPCRを行った。
5’-RACE
上記実験で得られたSH株の全RNA2μgを鋳型として、CapFishing TM target full-length cDNA cloning Kit(Seegene)を用いてcDNAを合成した。このcDNAを鋳型溶液として、キット内アダプタープライマー(5’-RACEプライマー)とSH-5’-TPとそれぞれPCRを行った。
[0036]
 PCR産物の配列を決定し、以下に示すプライマーと前述のcDNAを用いてPCRを行い、cDNAの全配列をpTAC-2ベクター(BioDynamics)にサブクローニングした。尚、発現ベクターに挿入するために、5’側にNcoI、3’側にXhoIサイトをそれぞれ付加した。
 SHAOS-F: 5’-CCGCGCCATGGAGAAGAGAATGTCTGTCTCGC-3’(配列番号7)
 SHAOS-R: 5’-CCGCGCTCGAGGTTGAATAAGCACGAGTGT-3’(配列番号8)
この結果、SH株より1配列の新規AOSホモログ(核酸配列1443bp、アミノ酸配列480aa、推定分子量53.3KDa)が得られた(図2A-C)。このアオウキクサSH株より得られたアレンオキサイドシンターゼをSHLpAOSと名付けた。
[0037]
 上記の方法でpTAC-2ベクターに組み込んだ、SHLpAOS配列を、それぞれNcoI、XhoIで切断した後に、市販のタンパク質発現用ベクターpET41a(Novagen)に導入し、アオウキクサ・アレンオキサイドシンターゼ発現用プラスミドpET41a/SHLpAOSを得た。このプラスミドを大腸菌BL21(DE3)株(Novagen)に形質転換した。そして、30mg/Lのカナマイシンを含むLB培地3mlに植菌し、37℃、250rpmで一晩振盪培養した。この培養液を同濃度のカナマイシンと1%グルコースを含むLB培地10mlに対して100μl添加し、37℃、250rpmで3~4時間振盪培養した。この培養液25mlから遠心分離にて菌体を回収し、0.1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(和光純薬)、30mg/Lのカナマイシンを含むTB培地50mlに移し、25℃、250rpmで一晩振盪培養し、アレンオキサイドシンターゼの誘導を行った。培養終了後、遠心分離を行い、菌体湿重量1gに対し、5mlのBugBuster TM(Novagen)を加え、菌体を溶解した。その後遠心分離を行い(9,000rpm、5分、4℃)、上清を回収し、酵素液とした。この酵素液を用いてKODA製造における活性試験を行った。
[0038]
 KODA製造における活性試験は、5mMリノレン酸溶液(0.1%Tween80溶液に溶解)を作成し、pH7の条件下で、イネの胚芽より抽出したリポキシゲナーゼと室温で10分間反応させ、9-ヒドロキシペルオキシリノレン酸(9-HPOT)溶液を合成した。この9-HPOT反応溶液20μlに対し、SHLpAOSタンパク質又はシロイヌナズナ由来AOS(AtAOS)タンパク質0.32ngを加え、室温で10分間反応させた。反応後、50℃で3分間の加熱処理により反応を終了させた。10μlのこの溶液をHPLCで分析した。HPLC分析は、カラム:カプセルパックC-18 UG120(4.6×250mm、資生堂)、カラム温度:40℃、移動相:50%アセトニトリル溶液(0.02%TFA)、流速:1ml/min、検出波長:210nmで行った。当該HPLCの結果を図3(A,B)に示す。HPLCチャートに示すように、KODAのピークが確認され、アオウキクサSH株由来のアレンオキサイドシンターゼはKODA製造に利用可能であることが示された。また、SHLpAOSタンパク質はAtAOSタンパク質より7倍近く活性が強かった(図4)。
[0039]
 アオウキクサSH株より得られたSHLpAOSのカイネティクス解析を行った。40mMMリン酸バッファー(pH7.5)、1%EtOHの反応液を用い、反応温度は25℃で行った。基質である9-HPOTは5~53μMの基質濃度で試験した。なお、基質となる9-HOPTはEtOH溶液として添加し、EtOH終濃度が1%となるように調製した。反応液100μLをキュベットに加えSmartSpec Plusスペクトロフォトメーター(Bio-Rad)を用い、234nmの吸光度の減少を、2秒のインターバルで経時的に1分間スキャニングした。測定したA 234から反応産物の量を算出した(e=25,000)。カイネティックパラメーターはHanes-Woolfプロット([S]/v versus [S]プロット)を用いて決定した。この結果、表1に示すようにSHLpAOSでは、Km値がAtAOSより大幅に低く、9-HPOTとの親和性は約5倍高かった。また、V maxはAtAOSの約2.8倍と非常に高かった。k cat値もSHLpAOSのほうがAtAOSの約2.8倍と高いものであり、反応回転が非常に効率的に起こっている。k cat/K m値は、SHLpAOSがAtAOSの約14倍となった。SHLpAOSがAtAOSと比較して、実用的なKODA製造において非常に有用なAOSであると考えられる。以上のことから、アオウキクサSH株からクローニングしたSHLpAOSは、これまでに報告のない、非常に高い活性を有するAOSであることが明らかとなった。
[0040]
[表1]


請求の範囲

[請求項1]
 以下の(a)~(e):
 (a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA;
 (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA;
 (c)配列番号2で表わされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA;
 (d)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の同一性を有し、かつアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA;及び
 (e)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
 からなる群から選ばれるDNAからなる遺伝子。
[請求項2]
 請求項1に記載のDNAとベクター断片とを結合させてなる発現ベクター。
[請求項3]
 請求項2に記載の発現ベクターを、宿主となる微生物、動物細胞又は植物細胞に導入してなる形質転換体。
[請求項4]
 請求項3に記載の形質転換体を培養することを特徴とする、アレンオキサイドシンターゼの製造方法。
[請求項5]
 以下の(a)~(d):
 (a)配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (b)配列番号2で表わされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質;及び
 (c)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと少なくとも90%の同一性を有するDNAによりコードされ、かつアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質;及び
 (d)配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつアレンオキサイドシンターゼ活性を有するタンパク質
 からなる群から選ばれるタンパク質。

図面

[ 図 1]

[ 図 2A]

[ 図 2B]

[ 図 2C]

[ 図 3A]

[ 図 3B]

[ 図 4]