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1. (WO2011125777) 制御装置
Document

明 細 書

発明の名称 制御装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032  

図面の簡単な説明

0033  

発明を実施するための形態

0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146  

産業上の利用可能性

0147  

符号の説明

0148  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 制御装置

技術分野

[0001]
 本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機に駆動連結される中間部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、入力部材と中間部材とを選択的に駆動連結する第一係合装置と、中間部材と出力部材とを選択的に駆動連結する第二係合装置と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に関する。

背景技術

[0002]
 上記のような車両用駆動装置を制御対象とする制御装置として、例えば下記の特許文献1に記載された装置が既に知られている。以下、この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1における符号(必要に応じて、対応する部材の名称を含む)を引用して説明する。この特許文献1の車両用駆動装置は、いわゆる1モータパラレルタイプのハイブリッド車両用の駆動装置として構成されており、内燃機関〔エンジンE〕と回転電機〔モータジェネレータMG〕とを選択的に駆動連結する第一係合装置〔第一クラッチCL1〕と、回転電機〔モータジェネレータMG〕と車輪〔RL、RR〕とを結ぶ動力伝達経路の一部を選択的に駆動連結する第二係合装置〔第二クラッチCL2〕と、を備えている。
[0003]
 この特許文献1に記載の制御装置は、少なくとも第一係合装置の解放状態且つ第二係合装置の完全係合状態で回転電機のトルクのみを動力源として走行するEV走行モードと、第一係合装置の完全係合状態且つ第二係合装置のスリップ係合状態で、内燃機関のトルクを動力源に含みながら走行するWSC走行モードと、第一係合装置の完全係合状態且つ第二係合装置の解放状態で内燃機関のトルクにより回転電機に発電を行わせる発電モードと、を含む複数のモードを実現可能に構成されている。そして、この制御装置は、車両停止状態から車両を発進させるとき、通常はWSC走行モードを選択するように構成されている。
[0004]
 特許文献1のWSC走行モードでの発進制御では、第二係合装置がスリップするため、当該第二係合装置は発熱する。発熱を繰り返す等して第二係合装置が過熱すると、当該第二係合装置の耐久性が低下する等の問題が生じるため、特許文献1に記載の制御装置は、第二係合装置の温度が所定温度以上となったときは、車両の停止中には発電モードを選択して内燃機関のトルクにより回転電機に発電を行わせる。そして、十分な蓄電量を得た上で、第一係合装置を解放すると共に第二係合装置を完全係合させてEV走行モードで車両を発進させるように構成されている。これにより、第二係合装置がスリップするのを回避して、当該第二係合装置の過熱による耐久性の低下を回避することが可能とされている。
[0005]
 しかし、第一係合装置が解放状態とされて回転電機のトルクのみを動力源として走行するEV走行モードでは、回転電機は車両を駆動するためのトルクを出力しなければならないため発電を行うことができない。すなわち、発電モードにおける回転電機の発電が車両の発進により中断されてしまう。よって、例えば車両の停車時間に比べて低車速での走行時間が長くなるような場合には、十分な蓄電量を確保できない可能性があった。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開2007-314097号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 そこで、第二係合装置の耐久性の低下を抑制ししつつ、停車中に発電を行っている状態からその発電状態を維持したままで車両を発進させることができる制御装置の実現が望まれる。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明に係る、内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機に駆動連結される中間部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材と前記中間部材とを選択的に駆動連結する第一係合装置と、前記中間部材と前記出力部材とを選択的に駆動連結する第二係合装置と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置の特徴構成は、前記第一係合装置の両側の係合部材の回転速度の差を第一差回転速度とすると共に、前記第二係合装置の両側の係合部材の回転速度の差を第二差回転速度として、前記第一係合装置が第一差回転速度を有さない状態で前記回転電機が発電を行い、且つ、前記第二係合装置が駆動力を伝達しない状態から、前記回転電機が発電を行ったままで車両を発進させる特定発進制御で実行する制御の中に、前記第一係合装置を、第一差回転速度を有さずに駆動力を伝達する状態から第一差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態に移行させると共に、前記第二係合装置を、駆動力を伝達しない状態から第二差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態に移行させる差回転制御領域を有する点にある。
[0009]
 なお、本願では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。
 また、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
[0010]
 上記の特徴構成によれば、特定発進制御の実行により、車両の発進時に回転電機が発電を行っている状態を維持することができる。このとき、差回転制御領域において、第一係合装置が第一差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態に移行されると共に第二係合装置が第二差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態に移行されるので、第一係合装置及び第二係合装置を介して内燃機関のトルクを車輪側へ伝達することができる。よって、発電状態を維持したままで車両を発進させることができる。
 また、上記の特徴構成では、特定発進制御の実行中、第一係合装置が第一差回転速度を有さずに駆動力を伝達する状態に維持される場合と比較して、第一係合装置の第一差回転速度を増大させることによって第二係合装置の第二差回転速度を減少させ、第二係合装置のスリップ量を低減させることができる。よって、第二係合装置の発熱量を低減してその過熱を抑制し、第二係合装置の耐久性の低下を抑制することができる。
 従って、第二係合装置の耐久性の低下を抑制ししつつ、停車中に発電を行っている状態からその発電状態を維持したままで車両を発進させることができる制御装置が実現できる。
[0011]
 ここで、前記差回転制御領域を第一制御領域とし、当該第一制御領域よりも後に、前記第二係合装置が第二差回転速度を有さない状態で、前記出力部材の回転速度の上昇に伴い、前記第一係合装置を、第一差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態から第一差回転速度を有さずに駆動力を伝達する状態に移行させる第二制御領域を有する構成とすると好適である。
[0012]
 この構成によれば、第一制御領域の後の第二制御領域において、出力部材の回転速度の上昇に伴って第一差回転速度を次第に減少させることができる。よって、第一係合装置が過熱するのを抑制して第一係合装置の耐久性の低下を抑制することができる。また、当該第一係合装置を介して車輪側へ伝達する内燃機関のトルクを大きく確保することができる。
[0013]
 また、前記出力部材の回転速度が上昇する状態で、前記中間部材の回転速度を所定値に維持して第二差回転速度を次第に減少させる第三制御領域を、前記第一制御領域と前記第二制御領域との間に更に有する構成とすると好適である。
[0014]
 この構成によれば、第三制御領域において出力部材の回転速度が上昇する状態で中間部材の回転速度を所定値に維持させることで、例えば第一制御領域において第二差回転速度がなくなるまで当該第二差回転速度を減少させる場合と比較して、第二差回転速度がなくなる時点の前後において、中間部材の回転が低下から上昇へと変化することがない。よって、中間部材の回転速度が急激に変動するのを抑制することができる。従って、中間部材の回転速度の急激な変動が第二係合装置を介して出力部材及び車輪に伝達されるのを抑制して、第二差回転速度がなくなる時点におけるショックの発生を抑制することができる。
[0015]
 また、前記中間部材に駆動連結され、作動状態で前記第一係合装置及び前記第二係合装置への供給油圧を発生させるオイルポンプを備え、前記第三制御領域において、前記中間部材の回転速度を、前記オイルポンプにより前記第一係合装置及び前記第二係合装置の双方に必要とされる供給油圧を確保可能な回転速度とするように前記回転電機を制御する構成とすると好適である。
[0016]
 この構成によれば、第三制御領域において出力部材の回転速度が上昇する状態で中間部材の回転速度を、所定の値に維持させることで、上記と同様に第二差回転速度がなくなる時点におけるショックの発生を抑制することができる。
 また、この構成によれば、中間部材の回転速度が所定の値に維持されることで、当該所定回転速度で回転する中間部材に駆動連結されるオイルポンプにより、第一係合装置及び第二係合装置の双方に必要とされる供給油圧を確保することができる。よって、制御対象となる車両用駆動装置に、例えば電動式オイルポンプ等の、車両の駆動力源とは独立して作動可能な他の油圧源を備える必要がなくなる。従って、そのような他の油圧源の設置を省略して、車両用駆動装置の製造コストを低減することが可能となる。
[0017]
 また、前記出力部材の回転速度が上昇する状態で、当該出力部材の回転速度の上昇に応じて前記中間部材の回転速度を上昇させ第二差回転速度を所定の目標差回転速度に維持させる第四制御領域を、前記第一制御領域と前記第三制御領域との間に更に有する構成とすると好適である。
[0018]
 この構成によれば、第三制御領域において中間部材の回転速度を所定値に維持させるよりも前に、第四制御領域において第二差回転速度を所定の目標差回転速度に一旦維持させるので、例えば第一制御領域から直接的に第三制御領域へと移行する場合と比較して、早期に第二差回転速度を低下させることができる。よって、このような第四制御領域を第三制御領域の前に有することで、第二係合装置の発熱量を効果的に低減して第二係合装置の耐久性の低下を良好に抑制しつつ、第二差回転速度がなくなる時点におけるショックの発生を抑制することができる。
 なお、この場合における「目標差回転速度」の値としては、例えば所定の一定値や、中間部材と出力部材とを結ぶ動力伝達経路における第二係合装置の下流側の係合部材の回転速度の関数として定まる値等を採用することができる。
[0019]
 また、前記差回転制御領域において、前記第二係合装置を、駆動力を伝達しない状態から第二差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態を経て、更に第二差回転速度を有さずに駆動力を伝達する状態まで移行させる構成とすると好適である。
[0020]
 この構成によれば、第一制御領域において第二係合装置が第二差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態まで移行されるので、例えば第一制御領域の設定時間を一定とした場合には、比較的急速に第二差回転速度をなくすことができる。よって、第二係合装置の発熱量をより効果的に低減することができ、第二係合装置の耐久性の低下をより効果的に抑制することができる。
[0021]
 また、第一差回転速度が所定の大きさとなるように前記第一係合装置への供給油圧を制御し、要求発電量に基づいて決定される目標回転速度に一致する回転速度とするように前記回転電機を制御し、前記出力部材に伝達されるトルクが車両を駆動するために必要となる要求駆動力に一致するように前記第二係合装置への供給油圧を制御し、前記要求発電量を発電するために前記回転電機に提供される発電トルクと前記要求駆動力との和に一致するトルクを前記内燃機関に出力させるための内燃機関制御指令を内燃機関制御部に出力する制御領域を有する構成とすると好適である。
[0022]
 この構成によれば、内燃機関制御部への所定の内燃機関制御指令の出力と第一係合装置への供給油圧の制御とによって、要求発電量を発電するための発電トルクと要求駆動力との和に一致するトルクを第一係合装置を介して内燃機関側から回転電機側へと適切に伝達させることができる。また、回転電機の回転速度を所定の目標回転速度に一致する状態とするように回転電機を制御することによって、要求発電量に応じた発電量を適切に確保することを可能とできる。更に、第二係合装置への供給油圧の制御によって、要求駆動力に一致するトルクを出力部材に伝達することができ、車両を適切に走行させることができる。
[0023]
 これまで説明してきた構成において、前記特定発進制御中、第一差回転速度及び第二差回転速度を所望の形態で変化させるように前記第二係合装置への供給油圧を制御する構成とすると好適である。
[0024]
 この構成によれば、第二係合装置への供給油圧を制御することにより、各制御領域において、第一差回転速度及び第二差回転速度を適切に変化させ、第一係合装置及び第二係合装置の状態をこれまで説明してきたような形態で変化させることができる。
[0025]
 ところで、車両を走行させるための要求駆動力に応じた駆動トルクを前記車輪に伝達させるように前記内燃機関及び前記回転電機の動作制御を行うと共に、前記駆動トルクのうちの前記内燃機関の負担分を当該内燃機関が出力している状態で、前記入力部材の回転速度を所定回転速度に維持するように前記第一係合装置への供給油圧を制御する構成とすると好適である。
[0026]
 この構成によれば、内燃機関が出力する、駆動トルクのうちの当該内燃機関の負担分を上限として、入力部材と一体回転する内燃機関の回転速度に応じたトルクを、第一係合装置を介して内燃機関側から車輪側へと伝達することができる。よって、このような第一係合装置への供給油圧の制御を行うことで、第一係合装置を介して適切な大きさのトルクを車輪側へ伝達することができる。
 なお、このような観点からは、「所定回転速度」は、駆動トルクのうちの内燃機関の負担分を当該内燃機関が出力するために必要となる回転速度に設定されていることが好ましい。
[0027]
 或いは、車両を走行させるための要求駆動力に応じた駆動トルクを前記車輪に伝達させるように前記内燃機関及び前記回転電機の動作制御を行うと共に、前記第一係合装置の伝達トルク容量を、前記駆動トルクのうちの前記内燃機関の負担分相当値とするように前記第一係合装置への供給油圧を制御する構成とすると好適である。
[0028]
 この構成によれば、内燃機関が出力する、駆動トルクのうちの当該内燃機関の負担分を上限として、第一係合装置の伝達トルク容量に応じたトルクを、第一係合装置を介して内燃機関側から車輪側へと伝達することができる。よって、このような第一係合装置への供給油圧の制御を行うことで、駆動トルクのうちの内燃機関の負担分を、第一係合装置を介して適切に車輪側へ伝達することができる。これにより、車両を適切に走行させることができる。
[0029]
 上記の構成において、車両をクリープ走行させるためのクリープトルクを前記車輪に伝達させるように前記内燃機関及び前記回転電機の動作制御を行うと共に、前記第一係合装置の伝達トルク容量を、前記クリープトルクのうちの前記内燃機関の負担分相当値とするように前記第一係合装置への供給油圧を制御する構成とすると好適である。
[0030]
 この構成によれば、内燃機関が出力する、クリープトルクのうちの当該内燃機関の負担分を上限として、第一係合装置の伝達トルク容量に応じたトルクを、第一係合装置を介して内燃機関側から車輪側へと伝達することができる。よって、このような第一係合装置への供給油圧の制御を行うことで、クリープトルクのうちの内燃機関の負担分を、第一係合装置を介して適切に車輪側へ伝達することができる。これにより、車両を適切にクリープ走行させることができる。
 また、この構成では、第二係合装置を介して車輪側に伝達されるトルクの上限値は、比較的小さな値に設定されるクリープトルクに等しくなる。係合装置における発熱量は、当該係合装置を介して伝達されるトルクの大きさと当該係合装置における差回転速度との積に比例するため、上記の構成を採用することで、第二係合装置における発熱量をより低減することができる。よって、第二係合装置が過熱するのをより有効に抑制して、当該第二係合装置の耐久性の低下を有効に抑制することができる。
[0031]
 これまで説明してきた構成において、係合状態で発進用変速段を形成する発進用係合装置を含む複数の係合装置を有する変速機構を、前記中間部材と前記出力部材との間に備えており、前記発進用係合装置が前記第二係合装置とされた前記車両用駆動装置を制御対象とする構成とすると好適である。
[0032]
 変速機構内に備えられて係合状態で発進用変速段を形成する発進用係合装置では、中間部材と出力部材とを結ぶ動力伝達経路における第二係合装置の下流側の係合部材の回転速度は、車両発進時の車速(出力部材の回転速度)に比例してその上昇速度が緩やかとなりがちである。そのため、上記動力伝達経路における第二係合装置の上流側の係合部材の回転速度の変化の形態に関わらず、第二差回転速度は比較的大きくなって第二係合装置の発熱量も大きくなり易い。
 この構成によれば、発熱量が大きくなり易く過熱による耐久性低下の問題が生じ易いと言える変速機構の発進用係合装置を適切に保護しつつ、停車中の発電状態を維持したままで車両を発進させることができる。

図面の簡単な説明

[0033]
[図1] 第一の実施形態に係る車両用駆動装置及びその制御装置の概略構成を示す模式図である。
[図2] 第一の実施形態に係る特定発進制御による各部の動作状態を示すタイムチャートである。
[図3] 第一の実施形態に係る特定発進制御の処理手順を示すフローチャートである。
[図4] 第二の実施形態に係る特定発進制御による各部の動作状態を示すタイムチャートである。
[図5] 第二の実施形態に係る特定発進制御の処理手順を示すフローチャートである。
[図6] 第三の実施形態に係る特定発進制御による各部の動作状態を示すタイムチャートである。
[図7] 第三の実施形態に係る特定発進制御の処理手順を示すフローチャートである。
[図8] 第四の実施形態に係る特定発進制御による各部の動作状態を示すタイムチャートである。
[図9] 第五の実施形態に係る特定発進制御による各部の動作状態を示すタイムチャートである。

発明を実施するための形態

[0034]
1.第一の実施形態
 本発明に係る制御装置の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る制御装置3は、駆動装置1を制御対象とする駆動装置用制御装置である。ここで、本実施形態に係る駆動装置1は、車両6の車輪15の駆動力源として内燃機関11及び回転電機12の一方又は双方を用いる車両(ハイブリッド車両)を駆動するための駆動装置(ハイブリッド車両用駆動装置)である。この駆動装置1は、いわゆる1モータパラレルタイプのハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
[0035]
 本実施形態に係る駆動装置1は、図1に示すように、内燃機関11に駆動連結される入力軸Iと、回転電機12に駆動連結される中間軸Mと、車輪15に駆動連結される出力軸Oと、入力軸Iと中間軸Mとを選択的に駆動連結する入力クラッチCTと、中間軸Mと出力軸Oとを選択的に駆動連結する第一クラッチC1と、を備えている。このような構成において、本実施形態に係る駆動装置1は、所定条件下で車両6を発進させる際の、入力クラッチCT、第一クラッチC1、及び回転電機12を含む各部の制御内容に特徴を有する。以下では、本実施形態に係る駆動装置1について、詳細に説明する。
[0036]
1-1.駆動装置の駆動伝達系の構成
 まず、本実施形態に係る駆動装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、この駆動装置1は、車両6の第一の駆動力源としての内燃機関11に駆動連結される入力軸Iと、車両6の第二の駆動力源としての回転電機12と、回転電機12に駆動連結される中間軸Mと、変速機構13と、車輪15に駆動連結される出力軸Oと、を備えている。これらの構成は、ケース(駆動装置ケース)内に収容されている。本実施形態においては、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、中間軸Mが本発明における「中間部材」に相当する。また、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。これらの入力軸I、中間軸M、及び出力軸Oは、同軸上に配置されている。
[0037]
 内燃機関11は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。内燃機関11は入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。本例では、内燃機関11のクランクシャフト等の内燃機関出力軸が入力軸Iに駆動連結されている。なお、内燃機関11が、内燃機関出力軸と入力軸Iとの間にダンパ等の他の装置を介して駆動連結された構成としても好適である。内燃機関11は、入力クラッチCTを介して回転電機MGに駆動連結されている。
[0038]
 入力クラッチCTは、内燃機関11と回転電機12との間に設けられ、内燃機関11と回転電機12との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能な摩擦係合装置である。本実施形態では、入力クラッチCTは入力軸Iと中間軸Mとを選択的に駆動連結するように設けられている。また、本実施形態では、入力クラッチCTは、当該入力クラッチCTに対する供給油圧を制御することにより、その伝達トルク容量Tctの増減を連続的に制御することが可能なクラッチとされている。このようなクラッチとしては、例えば湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等が好適に用いられる。本実施形態においては、入力クラッチCTが本発明における「第一係合装置」に相当する。
[0039]
 回転電機12は、不図示のロータとステータとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。回転電機12のロータは中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。また、回転電機12は、インバータ装置27を介して蓄電装置28に電気的に接続されている。本例では、蓄電装置28としてバッテリが用いられている。なお、蓄電装置28としてキャパシタ等を用いても好適である。回転電機12は、蓄電装置28から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eが出力するトルクや車両6の慣性力により発電した電力を蓄電装置28に供給して当該蓄電装置28を蓄電させる。また、回転電機12のロータと一体回転する中間軸Mは、変速機構13に駆動連結されている。すなわち、中間軸Mは、変速機構13の入力軸(変速入力軸)となっている。
[0040]
 変速機構13は、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速機構である。変速機構13は、これら複数の変速段を形成するために、一又は二以上の遊星歯車機構等の歯車機構と、この歯車機構の回転要素の係合又は解放を行い、変速段を切り替えるためのクラッチやブレーキ等の複数の係合装置(本例では、摩擦係合装置)と、を備えている。ここで、本実施形態においては、変速機構13は複数の摩擦係合装置のうちの1つとして、第一クラッチC1を備えている。第一クラッチC1は、中間軸Mと変速機構13内に設けられた変速中間軸Sとを選択的に駆動連結するように設けられている。変速中間軸Sは、変速機構13内の他の係合装置や軸部材を介して出力軸Oに駆動連結されている。このように、第一クラッチC1は、中間軸Mと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路の一部である中間軸Mと変速中間軸Sとの間を選択的に駆動連結するように設けられている。言い換えれば、回転電機12と車輪15との間に設けられることになる第一クラッチC1は、回転電機12と車輪15との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能である。本実施形態においては、第一クラッチC1が本発明における「第二係合装置」に相当する。
[0041]
 本実施形態では、第一クラッチC1は、当該第一クラッチC1に対する供給油圧を制御することにより、その伝達トルク容量Tc1の増減を連続的に制御することが可能なクラッチとされている。このようなクラッチとしては、例えば湿式多板クラッチ等が好適に用いられる。また、本実施形態においては、複数の変速段のうち、図1に示す第一クラッチC1及び不図示のワンウェイクラッチの係合状態で第1速段が形成される構成となっている。そして、停止状態にある車両6が発進する際には、この第1速段が発進用変速段として形成される。従って、本実施形態においては、第二係合装置としての第一クラッチC1は、本発明における「発進用係合装置」として機能する。
[0042]
 変速機構13は、各変速段について設定された所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、出力軸Oへ伝達する。変速機構13から出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置14を介して左右二つの車輪15に分配されて伝達される。これにより、車両6を走行させる。
[0043]
 本実施形態においては、駆動装置1は、中間軸Mに駆動連結されるオイルポンプ24を備えている。オイルポンプ24は、不図示のオイルパンに蓄えられた油を吸引し、駆動装置1の各部に油を供給するための油圧源として機能する。このオイルポンプ24は、中間軸Mを介して少なくとも車両6の第二の駆動力源としての回転電機12に機械的に駆動連結された機械式のオイルポンプとされている。このようなオイルポンプ24としては、例えばギヤポンプやベーンポンプ等が好適に用いられる。オイルポンプ24は、中間軸Mを介して伝達される回転電機12及び内燃機関11の一方又は双方の駆動力により駆動されて作動する作動状態で、油を吐出して油圧を発生させる。オイルポンプ24により吐出された圧油は、油圧制御装置25により所定油圧に調整されてから、入力クラッチCTや変速機構13内に備えられる第一クラッチC1等の複数の摩擦係合装置に供給される。
[0044]
 なお、本実施形態では、駆動装置1は、車両6の駆動力源としての内燃機関11及び回転電機12の駆動力とは無関係に作動する電動式オイルポンプ(不図示)を備えている。この電動式オイルポンプは、電動モータを専用の駆動力源として備えており、オイルポンプ24とは独立して作動し、例えば車両6の停止中等にオイルポンプ24により吐出される油のみでは十分な油圧が得られない場合等に作動してオイルポンプ24の吐出能力を補助する。
[0045]
1-2.制御装置の構成
 次に、本実施形態に係る駆動装置1を制御するための制御装置3の構成について説明する。図1に示すように、制御装置3は、主に内燃機関11を制御するための内燃機関制御ユニット30と、主に回転電機12、入力クラッチCT、及び変速機構13を制御するための駆動装置制御ユニット40と、を備えている。内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40は、駆動装置1の各部の動作制御を行う中核部材としての機能を果たしている。
[0046]
 この内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40は、それぞれCPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている(不図示)。そして、ROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40の各機能部が構成されている。これらの各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。更に、内燃機関制御ユニット30と駆動装置制御ユニット40との間でも、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。
[0047]
 また、図1に示すように、この制御装置3は、駆動装置1及び車両6の各部に設けられた複数のセンサ、具体的には、入力軸回転速度センサSe1、中間軸回転速度センサSe2、車速センサSe3、アクセル開度検出センサSe4、ブレーキ操作検出センサSe5、及び充電状態検出センサSe6からの情報を取得可能に構成されている。入力軸回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。ここで、入力軸Iには内燃機関11の出力軸(内燃機関出力軸)が一体的に駆動連結されているので、入力軸回転速度センサSe1により検出される入力軸Iの回転速度は、内燃機関11の回転速度に等しい。中間軸回転速度センサSe2は、中間軸Mの回転速度を検出するセンサである。ここで、中間軸Mには回転電機12のロータが一体的に駆動連結されているので、中間軸回転速度センサSe2により検出される中間軸Mの回転速度は、回転電機12の回転速度に等しい。車速センサSe3は、車速を検出するセンサであり、本実施形態では出力軸Oの回転速度を検出することにより車速を検出する。アクセル開度検出センサSe4は、アクセルペダル17の操作量を検出することによりアクセル開度を検出するセンサである。ブレーキ操作検出センサSe5は、ブレーキペダル18の操作の有無を検出するセンサである。充電状態検出センサSe6は、SOC(state of charge:充電状態)を検出することにより蓄電装置28の蓄電量を検出するセンサである。これらの各センサSe1~Se6による検出結果を示す情報は、内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40へ出力される。
[0048]
 内燃機関制御ユニット30は、内燃機関制御部31を備えている。
 内燃機関制御部31は、内燃機関11の動作制御を行う機能部であり、内燃機関制御手段として機能する。内燃機関制御部31は、内燃機関11の出力トルク(内燃機関トルクTe)及び回転速度の制御目標を決定し、この制御目標に応じて内燃機関11を動作させることにより、内燃機関11の動作制御を行う。本実施形態では、後述する要求トルク決定部42が、車両要求トルクTdを決定すると共にそのうちの内燃機関11による負担分である内燃機関要求トルクを決定する。内燃機関制御部31は、その内燃機関要求トルクに基づいて内燃機関トルクTeを制御する。内燃機関制御部31は、更に、後述する特定発進制御部47からの指令に従い、特定発進制御の一端を担う。
[0049]
 駆動装置制御ユニット40は、走行モード決定部41、要求トルク決定部42、回転電機制御部43、入力クラッチ動作制御部44、変速機構動作制御部45、差回転速度取得部46、及び特定発進制御部47を備えている。
[0050]
 走行モード決定部41は、車両6の走行モードを決定する機能部であり、走行モード決定手段として機能する。走行モード決定部41は、例えば車速センサSe3により検出される車速と、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度と、充電状態検出センサSe6により検出される蓄電装置28の蓄電量等に基づいて、駆動装置1が実現すべき走行モードを決定する。その際、走行モード決定部41は、メモリ等の記録媒体に記憶して備えられた、車速、アクセル開度、及び蓄電量と走行モードとの関係を規定したマップ(不図示)を参照する。
[0051]
 例えば、車両6の通常走行時には、パラレルモードが選択される。このパラレルモードでは、入力クラッチCTが完全係合状態とされ、少なくとも内燃機関トルクTeが出力軸Oを介して車輪15に伝達された状態となって車両6を走行させる。なお、回転電機12は、必要に応じて蓄電装置28からの電力の供給を受けて回転電機トルクTmを出力して内燃機関トルクTeによる駆動力を補助し、或いは、内燃機関トルクTeの一部を用いて発電して蓄電装置28の充電を行う。また例えば、車両6の停止時には、蓄電装置28の蓄電量に応じて発電モードが選択される。この発電モードでは、入力クラッチCTが完全係合状態とされると共に第一クラッチC1を含む変速機構13内の全ての係合装置が解放状態とされ、回転電機12と車輪15との間の駆動力の伝達が遮断された状態で、内燃機関11が出力する内燃機関トルクTeにより回転電機12が発電を行う。また例えば、発電モードからの車両発進等、回転電機12が発電を行っており且つ入力クラッチCTが完全係合状態とされた状態からの車両発進時には、特定発進モードが選択される。この特定発進モードでは、入力クラッチCT及び発進用係合装置としての第一クラッチC1を少なくともスリップ係合状態に制御して、内燃機関トルクTeを駆動力源に含みながら車両6を発進させる。その際、回転電機12は発電している状態を維持する。本発明は、この特定発進モードでの車両発進時における車両6の各部の動作制御に特徴を有する。この点については後述する。なお、ここで説明したモードは一例であり、これら以外にも、例えば入力クラッチCTの解放状態で回転電機トルクTmのみにより車両6を走行させる電動走行モード等を選択することも可能である。
[0052]
 要求トルク決定部42は、車両6を走行させるために必要とされる車両要求トルクTdを決定する機能部であり、要求トルク決定手段として機能する。要求トルク決定部42は、車速センサSe3により検出される車速と、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度とに基づいて、車両要求トルクTdを決定する。また、本実施形態では、要求トルク決定部42は、車両要求トルクTd、車速や加減速等の走行状態、及び蓄電装置28の蓄電量等の車両状態等に基づいて、車両要求トルクTdのうち、内燃機関11による負担分である内燃機関要求トルクと、回転電機12による負担分である回転電機要求トルクと、をそれぞれ決定する機能も果たす。要求トルク決定部42により決定された内燃機関要求トルクは、内燃機関制御指令として内燃機関制御ユニット30の内燃機関制御部31に出力される。従って、本実施形態においては、要求トルク決定部42は内燃機関制御指令出力部としても機能する。また、回転電機要求トルクは、駆動装置制御ユニット40の回転電機制御部43に出力される。
[0053]
 回転電機制御部43は、回転電機12の動作制御を行う機能部であり、回転電機制御手段として機能する。回転電機制御部43は、回転電機12の出力トルク(回転電機トルクTm)及び回転速度の制御目標を決定し、この制御目標に応じて回転電機12を動作させることにより、回転電機12の動作制御を行う。ここで、要求トルク決定部42は、車両要求トルクTdを決定すると共に、そのうちの回転電機12による負担分である回転電機要求トルクを決定している。回転電機制御部43は、その回転電機要求トルクに基づいて回転電機トルクTmを制御する。これにより、回転電機制御部43と内燃機関制御部31との協働により、内燃機関トルクTeと回転電機トルクTmとの加算値として得られる車両6の駆動トルクが車両要求トルクTdに等しくなるように、内燃機関11及び回転電機12の動作が制御される(図2を参照)。このようにして、車両要求トルクTdが適切に満たされる。なお、所定のクリープトルクTcrを車輪15側に伝達して所定車速以下の低車速状態で車両を走行させる場合についても同様である(図9を参照)。
[0054]
 また、回転電機制御部43は、負の回転電機トルクTm(<0)を回転電機12に出力させることにより、動力の供給を受ける回転電機12に発電を行わせることができる。すなわち、回転電機12は、車両6の前進走行時には基本的に正方向に回転するため、正方向に回転しつつ負の回転電機トルクTm(<0)を出力して発電する。本実施形態では、上述したように例えば発電モードや特定発進モード等では内燃機関トルクTeにより回転電機12に発電させる構成とされており、回転電機12に発電させるためのトルクを「発電トルクTg」としている。この発電トルクTgは、負の回転電機トルクTm(<0)の絶対値に一致する。回転電機制御部43は、更に、後述する特定発進制御部47からの指令に従い、特定発進制御の一端を担う。
[0055]
 入力クラッチ動作制御部44は、入力クラッチCTの動作を制御する機能部であり、入力クラッチ動作制御手段(第一係合装置動作制御手段)として機能する。ここで、入力クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して入力クラッチCTに供給される油圧を制御することにより、入力クラッチCTの動作を制御する。
[0056]
 なお、以下の説明では、入力クラッチCTを含む各係合装置の状態に関して、「解放状態」は、当該係合装置の両側の係合部材間で回転及び駆動力が伝達されない状態を表す。「スリップ係合状態」は、両側の係合部材が回転速度差を有する状態で駆動力を伝達可能に係合されている状態を表す。「直結係合状態」は、両側の係合部材が一体回転する状態で係合されている状態を表す。「完全係合状態」は、両側の係合部材が定常的に一体回転する状態で係合されている状態を表す。また、「係合圧」は、一方の係合部材と他方の係合部材とを相互に押し付け合う圧力を表す。また、「解放圧」は、当該係合装置が定常的に解放状態となる圧を表す。「解放境界圧」は、当該係合装置が解放状態とスリップ係合状態との境界のスリップ境界状態となる圧(解放側スリップ境界圧)を表す。「係合境界圧」は、当該係合装置がスリップ係合状態と直結係合状態との境界のスリップ境界状態となる圧(係合側スリップ境界圧)を表す。「完全係合圧」は、当該係合装置が定常的に直結係合状態となる圧を表す。
[0057]
 例えば、入力クラッチ動作制御部44は、入力クラッチCTに供給される油圧を解放境界圧(所謂、ストロークエンド圧)未満の解放圧とすることにより、入力クラッチCTを解放状態とする。入力クラッチCTの解放状態では、内燃機関11及び入力軸Iと回転電機12及び中間軸Mとの間の駆動力の伝達が遮断される。すなわち、入力クラッチCTの解放状態では、入力クラッチCTが駆動力を伝達しない状態となる。また、入力クラッチ動作制御部44は、入力クラッチCTに供給される油圧を係合境界圧以上の圧とすることにより、入力クラッチCTを直結係合状態とし、更に完全係合圧とすることにより、入力クラッチCTを完全係合状態とする。入力クラッチCTの直結係合状態(完全係合状態を含む)では、内燃機関11及び入力軸Iと回転電機12及び中間軸Mとが一体回転する状態で、これらの間で駆動力が伝達される。すなわち、入力クラッチCTの直結係合状態では、入力クラッチCTが後述する第一差回転速度ΔN1を有さずに駆動力を伝達する状態となる。
[0058]
 また、入力クラッチ動作制御部44は、例えば入力クラッチCTに十分に大きなトルクが伝達されている状態で、当該入力クラッチCTに供給される油圧を解放境界圧より大きく且つ完全係合圧未満の圧(具体的には、解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧)とすることにより、入力クラッチCTをスリップ係合状態(部分係合状態)とする。ここで、スリップ係合状態は、解放状態と直結係合状態との間の、係合開始後であって且つ直結係合前の状態である。入力クラッチCTのスリップ係合状態では、内燃機関11及び入力軸Iと回転電機12及び中間軸Mとが相対回転する状態で、これらの間で駆動力が伝達される。すなわち、入力クラッチCTのスリップ係合状態では、当該入力クラッチCTを滑らせながら(スリップさせながら)トルクの伝達を行うことができる。この入力クラッチCTのスリップ係合状態では、入力クラッチCTが第一差回転速度ΔN1を有しつつ駆動力を伝達する状態となる。
[0059]
 なお、入力クラッチCTの完全係合状態又はスリップ係合状態で伝達可能なトルクの大きさは、入力クラッチCTのその時点の係合圧に応じて決まる。このときのトルクの大きさを、入力クラッチCTの「伝達トルク容量Tct」とする。つまり、その時点における入力クラッチCTの伝達トルク容量Tctを上限として、内燃機関11と回転電機12との間で、入力クラッチCTを介したトルクの伝達が行われる。本実施形態では、上記のとおり伝達トルク容量Tctの増減が連続的に制御可能とされている。なお、入力クラッチCTのスリップ係合状態で当該入力クラッチCTを介して伝達されるトルクの伝達方向は、入力軸Iと中間軸Mとの間の相対回転の向きに応じて決まる。入力クラッチ動作制御部44は、更に、後述する特定発進制御部47からの指令に従い、特定発進制御の一端を担う。
[0060]
 変速機構動作制御部45は、変速機構13の動作を制御する機能部であり、変速機構動作制御手段として機能する。変速機構動作制御部45は、車両6のアクセル開度及び車速に基づいて目標変速段を決定すると共に、変速機構13において決定された目標変速段を形成する制御を行う。なお、駆動装置制御ユニット40は、不図示のメモリ等に、アクセル開度及び車速に基づくシフトスケジュールを設定した所定の変速マップを格納して備えている。変速機構動作制御部45は、この変速マップと車両6のアクセル開度及び車速とに基づいて、各時点で変速機構13において形成されるべき目標変速段を決定する。そして、変速機構動作制御部45は、決定された目標変速段に基づいて、変速機構13内に備えられる所定の摩擦係合装置に油圧制御装置25を介して油圧を供給して当該係合装置を係合状態として目標変速段を形成する。変速機構動作制御部45は、決定された目標変速段に変更があった場合には、所定の2つの係合装置の掴み替えを行うことにより、形成される変速段を切り替える制御も行う。
[0061]
 上記のとおり、変速機構13には、係合状態でワンウェイクラッチと協働して発進用変速段としての第1速段を形成する第一クラッチC1が備えられており、この第一クラッチC1も、当然に変速機構動作制御部45の制御対象に含まれる。よって、ここでは特に第一クラッチC1の動作制御に着目すると、変速機構動作制御部45は第一クラッチ動作制御手段(第二係合装置動作制御手段)として機能している。変速機構動作制御部45は、油圧制御装置25を介して第一クラッチC1に供給される油圧を制御することにより、第一クラッチC1の動作を制御する。
[0062]
 例えば、変速機構動作制御部45は、第一クラッチC1に供給される油圧を解放境界圧未満の解放圧とすることにより、第一クラッチC1を解放状態とする。第一クラッチC1の解放状態では、回転電機12及び中間軸Mと変速中間軸Sとの間の駆動力の伝達が遮断される。すなわち、第一クラッチC1の解放状態では、第一クラッチC1が駆動力を伝達しない状態となる。また、変速機構動作制御部45は、第一クラッチC1に供給される油圧を係合境界圧以上の圧とすることにより、第一クラッチC1を直結係合状態とし、更に完全係合圧とすることにより、第一クラッチC1を完全係合状態とする。第一クラッチC1の直結係合状態(完全係合状態を含む)では、回転電機12及び中間軸Mと変速中間軸Sとが一体回転する状態で、これらの間で駆動力が伝達される。すなわち、第一クラッチC1の直結係合状態では、第一クラッチC1が後述する第二差回転速度ΔN2を有さずに駆動力を伝達する状態となる。変速中間軸Sに伝達された駆動力は、出力軸Oを介して車輪15に伝達される。
[0063]
 また、変速機構動作制御部45は、第一クラッチC1に供給される油圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧とすることにより、第一クラッチC1をスリップ係合状態とする。第一クラッチC1のスリップ係合状態では、回転電機12及び中間軸Mと変速中間軸Sとが相対回転する状態で、これらの間で駆動力が伝達される。すなわち、第一クラッチC1のスリップ係合状態では、当該第一クラッチC1を滑らせながら(スリップさせながら)トルクの伝達を行うことができる。この第一クラッチC1のスリップ係合状態では、第一クラッチC1が第二差回転速度ΔN2を有しつつ駆動力を伝達する状態となる。
[0064]
 なお、第一クラッチC1の完全係合状態又はスリップ係合状態で伝達可能なトルクの大きさは、第一クラッチC1のその時点の係合圧に応じて決まる。このときのトルクの大きさを、第一クラッチC1の「伝達トルク容量Tc1」とする。つまり、その時点における第一クラッチC1の伝達トルク容量Tc1を上限として、回転電機12と車輪15との間で、第一クラッチC1を介したトルクの伝達が行われる。本実施形態では、上記のとおり伝達トルク容量Tc1の増減が連続的に制御可能とされている。なお、第一クラッチC1のスリップ係合状態で当該第一クラッチC1を介して伝達されるトルクの伝達方向は、中間軸Mと変速中間軸Sとの間の相対回転の向きに応じて決まる。変速機構動作制御部45は、更に、後述する特定発進制御部47からの指令に従い、特定発進制御の一端を担う。
[0065]
 差回転速度取得部46は、第一差回転速度ΔN1及び第二差回転速度ΔN2を取得する機能部であり、差回転速度取得手段として機能する。ここで、第一差回転速度ΔN1は、入力クラッチCTの両側の係合部材である入力軸Iと中間軸Mとの間の回転速度の差である。差回転速度取得部46は、入力軸回転速度センサSe1により検出される入力軸Iの回転速度から中間軸回転速度センサSe2により検出される中間軸Mの回転速度を減算して得られる減算値として、第一差回転速度ΔN1を取得する。なお、入力クラッチCTの完全係合状態では、入力軸Iと中間軸Mとが一体回転するので第一差回転速度ΔN1がない(第一差回転速度ΔN1がゼロの)状態となる。一方、入力クラッチCTのスリップ係合状態又は解放状態では、入力軸Iと中間軸Mとが相対回転するので第一差回転速度ΔN1を有する(第一差回転速度ΔN1がゼロより大きい)状態となる。
[0066]
 第二差回転速度ΔN2は、第一クラッチC1の両側の係合部材である中間軸Mと変速中間軸Sとの間の回転速度の差である。差回転速度取得部46は、中間軸回転速度センサSe2により検出される中間軸Mの回転速度から車速センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度に基づいて定まる変速中間軸Sの回転速度を減算して得られる減算値として、第二差回転速度ΔN2を取得する。なお、変速中間軸Sの回転速度は、出力軸Oの回転速度と変速機構13において形成された変速段の変速比との積として得ることができる。なお、第一クラッチC1の完全係合状態では、中間軸Mと変速中間軸Sとが一体回転するので第二差回転速度ΔN2がない(第二差回転速度ΔN2がゼロの)状態となる。一方、第一クラッチC1のスリップ係合状態又は解放状態では、中間軸Mと変速中間軸Sとが相対回転するので第二差回転速度ΔN2を有する(第二差回転速度ΔN2がゼロより大きい)状態となる。差回転速度取得部46により取得された第一差回転速度ΔN1及び第二差回転速度ΔN2の情報は、特定発進制御部47に出力される。
[0067]
 特定発進制御部47は、停止状態にある車両6が発進する際に、内燃機関制御部31、回転電機制御部43、入力クラッチ動作制御部44、及び変速機構動作制御部45等を協調制御することにより特定発進制御を実行する機能部であり、特定発進制御手段として機能する。ここで、特定発進制御は、入力クラッチCTの完全係合状態且つ第一クラッチC1の解放状態で回転電機12が発電を行っている状態から、回転電機12が発電を行ったままで車両6を発進させる制御である。言い換えれば、この特定発進制御は、入力クラッチCTが第一差回転速度ΔN1を有さない状態で回転電機12が発電を行い、且つ、第一クラッチC1が駆動力を伝達しない状態から、回転電機12が発電を行ったままで車両6を発進させる制御である。
[0068]
 この特定発進制御部47は、車両6の停止時において、例えば本実施形態のように発電モードが選択され、入力クラッチCTが完全係合状態とされて入力クラッチCTが第一差回転速度ΔN1を有さない状態で回転電機12が発電を行っていることをトリガーとして機能発現する。なお、車両6の停止時には第一クラッチC1は解放状態となっているものとする。すなわち、特定発進制御部47は、車両6の通常走行時には機能停止しており、車両6の停止時に第一差回転速度ΔN1がない状態で回転電機12が発電を行っていることを検知して初めて機能発現する。
[0069]
1-3.特定発進制御の内容
 次に、駆動装置制御ユニット40の特定発進制御部47を中核として、内燃機関制御部31、回転電機制御部43、入力クラッチ動作制御部44、及び変速機構動作制御部45等が協働することにより実行される、特定発進制御の詳細について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、特定発進制御部47を中核とするこれらの各機能部を総称して「特定発進制御部47等」と称する場合がある。なお、本実施形態における特定発進制御は、上記特定発進モードによる車両6の発進動作である「特定発進動作」を対象としており、非特定発進動作とも言える入力クラッチCTのスリップ係合状態又は解放状態からの車両6の発進動作を対象としていない。同様に、非特定発進動作の一種である、回転電機12が発電を行っていない状態からの車両6の発進動作も対象としていない。
[0070]
 図2は、本実施形態に係る特定発進制御による車両各部の動作状態を示すタイムチャートである。この図においては、上から順に、内燃機関11、回転電機12、及び変速中間軸Sの回転速度、第一差回転速度ΔN1及び第二差回転速度ΔN2、内燃機関11及び回転電機12の出力トルク、入力クラッチCT及び第一クラッチC1のトルク容量(係合圧)、入力クラッチCT及び第一クラッチC1の発熱量、アクセル開度及びブレーキ操作、を示している。なお、内燃機関11の回転速度は入力軸Iの回転速度に一致し、回転電機12の回転速度は中間軸Mの回転速度に一致する。また、変速中間軸Sの回転速度は出力軸Oと比例関係にある。また、比較のため、本実施形態に係る特定発進制御を行うことなく(一例として、入力クラッチCTの完全係合状態且つ第一クラッチC1のスリップ係合状態で)車両6を発進させた場合における第二差回転速度ΔN2及び第一クラッチC1の発熱量を、それぞれ一点鎖線で示している
[0071]
 図2に示すように、本実施形態に係る特定発進制御では、差回転制御領域としての第一制御領域D1を有する。また、本実施形態に係る特定発進制御は第二制御領域D2を有している。すなわち、本実施形態に係る特定発進制御は、第一制御領域D1及び第二制御領域D2の2つの制御領域を有する。第二制御領域D2は、第一制御領域D1の後に実行される。また、第一制御領域D1の前にはプレ制御領域DPが実行され、第二制御領域D2の後には通常制御領域DNが実行される。よって、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、その前後でプレ制御領域DP、第一制御領域D1、第二制御領域D2、及び通常制御領域DNの4つの制御領域をこの順に有する。以下、順に説明する。
[0072]
 プレ制御領域DPは、実質的な特定発進制御が行われる前の予備的な制御領域である。本実施形態においては、プレ制御領域DPでは、車両6は停止状態にあり発電モードが選択されている。発電モードでは入力クラッチCTは完全係合状態に維持され、入力クラッチCTは第一差回転速度ΔN1を有さずに(第一差回転速度ΔN1がゼロの状態で)駆動力を伝達する状態にある。この状態で、内燃機関11のトルクにより回転電機12が発電を行っている。なお、このとき内燃機関11及び回転電機12は、一体回転する状態でいずれもアイドル回転数Niで回転している。また、このときの内燃機関トルクTe(=Tg)と回転電機トルクTm(Tm=-Tg)とは大きさが等しく向きが反対の関係にあり、本例では内燃機関トルクTe及び回転電機トルクTmは比較的小さな値に維持されている。よって、本例では、入力クラッチCTへの供給油圧も比較的低圧に維持されているが、少なくとも入力クラッチCTの伝達トルク容量Tctは内燃機関トルクTe以上となる値に維持されている。これにより、入力クラッチCTは完全係合状態に維持され、入力クラッチCTは第一差回転速度ΔN1を有さない状態に維持されている。一方、第一クラッチC1は解放状態に維持され、第一クラッチC1は駆動力を伝達しない状態で大きな第二差回転速度ΔN2を有している。なお、このときの第二差回転速度ΔN2は、一体回転する内燃機関11及び回転電機12の回転速度であるアイドル回転数Niに等しくなっている。また、アクセル開度がゼロとなっていると共にブレーキ操作がなされた状態となっている。
[0073]
 プレ制御領域DPでは、特定発進制御部47は、運転者による発進操作を監視している。ここで、「発進操作」とは、停止状態にある車両6を発進させるために運転者により行われる操作である。本実施形態では、アクセルペダル17の踏み込み操作及びブレーキペダル18の開放操作を「発進操作」としている。例えば、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度が所定量(例えば、1~10%)以上となり、且つ、ブレーキ操作検出センサSe5によりブレーキ操作の解除が検出されたときに、発進操作を検知する構成とすることができる。特定発進制御部47により運転者による発進操作が検知されると、特定発進制御による実質的な制御(本実施形態においては、第一制御領域D1及び第二制御領域D2)が開始される。
[0074]
 第一制御領域D1は、特定発進制御の初期段階で行われる制御領域である。この第一制御領域D1では、入力クラッチCTのスリップ係合状態で第一差回転速度ΔN1を次第に(本例では一定の時間変化率で)増大させると共に、第二差回転速度ΔN2を次第に(本例では一定の時間変化率で)減少させる制御が行われる。すなわち、第一制御領域D1では、入力クラッチCTを、第一差回転速度ΔN1を有さずに駆動力を伝達する状態から第一差回転速度ΔN1を有しつつ駆動力を伝達する状態に移行させると共に、第一クラッチC1を、駆動力を伝達しない状態から第二差回転速度ΔN2を有しつつ駆動力を伝達する状態に移行させる制御が行われる。
[0075]
 第一制御領域D1では、車両6の運転者によるアクセルペダル17の踏み込み操作に応じて車両要求トルクTd及び内燃機関要求トルクが増大する。特定発進制御部47は、要求トルク決定部42を介して内燃機関制御指令としての内燃機関要求トルクを内燃機関制御部31に出力し、これに従って内燃機関トルクTeが増大される。また、内燃機関11及び入力軸Iの回転速度も上昇される。本例では、回転電機トルクTm(=-Tg)は第一制御領域D1においてもそのまま一定値に維持されている(以下、各制御領域においても同様)。これにより、回転電機12に少なくとも発電トルクTg及びその回転速度に応じた量の電力を発電させている。この状態で、入力クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して係合境界圧未満の所定圧まで入力クラッチCTへの供給油圧を次第に増大させて、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態とする。また、変速機構動作制御部45は、油圧制御装置25を介して第一クラッチC1への供給油圧を完全係合圧まで次第に増大させることにより、当該第一クラッチC1を完全係合状態とする。
[0076]
 第一制御領域D1では、第一クラッチC1に供給する油圧を完全係合圧まで増大させることで、車輪15、出力軸O、変速中間軸S、及び第一クラッチC1を介して伝達される走行抵抗により中間軸Mの回転速度が比較的早期に大きく引き下げられる。一方、入力軸Iの回転速度は上記のとおり上昇し、変速中間軸Sの回転速度は車速に比例して緩やかに上昇する。これより、本実施形態における特定発進制御の第一制御領域D1では、特定発進制御部47等は、第二差回転速度ΔN2を比較的急速に減少させると共に、第一差回転速度ΔN1を比較的急速に増大させる。本例では、第二差回転速度ΔN2がなくなるまで第二差回転速度ΔN2を減少させる。すなわち、本実施形態に係る第一制御領域D1では、第一クラッチC1を、駆動力を伝達しない状態から第二差回転速度ΔN2を有しつつ駆動力を伝達する状態を経て、更に第二差回転速度ΔN2を有さずに駆動力を伝達する状態まで移行させる。
[0077]
 なお、第一制御領域D1では、内燃機関制御部31は、内燃機関制御指令としての内燃機関要求トルクに従い、内燃機関トルクTeをその内燃機関要求トルクに追従させる制御を実行する。ここで、本実施形態では、内燃機関11の目標トルク(内燃機関要求トルク)は、車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に設定される。特定発進制御部47は、要求トルク決定部42を介して車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に等しい内燃機関要求トルクを内燃機関制御部31に指令する。内燃機関制御部31は、その内燃機関要求トルクに従い、車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に等しい内燃機関トルクTe(=Tg+Td)を内燃機関11に出力させる。
[0078]
 第一制御領域D1では、入力クラッチ動作制御部44は、入力クラッチCTの第一差回転速度ΔN1をゼロよりも大きい所定の目標差回転速度とする制御を実行する。本実施形態においては、第一差回転速度ΔN1の目標値は、次第に(本例では、一定の時間変化率で)上昇するように設定される。すなわち、入力クラッチ動作制御部44は、第一制御領域D1では、入力クラッチCTの第一差回転速度ΔN1が次第に増大するように入力クラッチCTへの供給油圧(入力クラッチCTの係合圧)を制御する。入力クラッチCTをこのように制御することで、第一差回転速度ΔN1を次第に増大させつつ、入力軸Iに伝達されるトルクを、入力クラッチCTを介して内燃機関11側から回転電機12側へと適切に伝達させることができる。
[0079]
 第一制御領域D1では、変速機構動作制御部45は、第一クラッチC1の第二差回転速度ΔN2をゼロよりも大きい所定の目標差回転速度とする制御を実行する。本実施形態においては、第二差回転速度ΔN2の目標値は、次第に(本例では、一定の時間変化率で)低下するように設定される。すなわち、変速機構動作制御部45は、第一制御領域D1では、第一クラッチC1の第二差回転速度ΔN2が次第に減少するように第一クラッチC1への供給油圧(第一クラッチC1の係合圧)を制御する。その際、変速機構動作制御部45は、第一クラッチC1の伝達トルク容量Tc1が少なくとも要求トルク決定部42により決定される車両要求トルクTd以上となるように第一クラッチC1への供給油圧を制御する。第一クラッチC1をこのように制御することで、第二差回転速度ΔN2を次第に減少させつつ、中間軸Mに伝達された内燃機関トルクTeのうち、車両要求トルクTdに相当する大きさのトルクを、第一クラッチC1を介して車輪15側となる出力軸Oに伝達させることができる。
[0080]
 また、第一制御領域D1では、特定発進制御部47は、第一クラッチC1が第二差回転速度ΔN2を有さなくなった(第二差回転速度ΔN2がゼロとなった)か否かを監視している。第一制御領域D1は、第二差回転速度ΔN2がなくなるまで実行され、第二差回転速度ΔN2がなくなると、次に第二制御領域D2が開始される。
[0081]
 第二制御領域D2は、本実施形態では特定発進制御の中期段階から終期段階にかけて行われる制御領域である。この第二制御領域D2では、第一クラッチC1が第二差回転速度ΔN2を有さない状態で、出力軸Oの回転速度の上昇に伴って入力クラッチCTの第一差回転速度ΔN1を次第に減少させる制御が行われる。すなわち、第二制御領域D2では、第一クラッチC1が第二差回転速度ΔN2を有さない状態で、出力軸O及びこれに比例する変速中間軸Sの回転速度の上昇に伴い、入力クラッチCTを、第一差回転速度ΔN1を有しつつ駆動力を伝達する状態から第一差回転速度ΔN1を有さずに駆動力を伝達する状態に移行させる制御が行われる。
[0082]
 第二制御領域D2では、当該第二制御領域D2の初期段階を除き、内燃機関トルクTeが経時変化しない一定値に維持されると共に、内燃機関11及び入力軸Iの回転速度も経時変化しない一定値に維持される。なお、「経時変化しない一定値」は、全体として経時変化することなくほぼ一定に保たれる値を意図して用いており、完全に経時変化しないことまでは要求されず、瞬時的な多少の変動は当然許容される(以下、同様)。
[0083]
 また、入力クラッチ動作制御部44は、第一制御領域D1において油圧制御装置25を介して所定圧まで増大させた入力クラッチCTへの供給油圧を基本的にそのまま一定値に維持して、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態に維持させる。但し、後述するように、入力クラッチ動作制御部44は、入力クラッチCTへの供給油圧をフィードバック制御して、多少の変動を繰り返しながら全体としては一定値に維持させる。また、第二制御領域D2では、既に第一クラッチC1が完全係合状態となっているので、変速中間軸Sと一体回転する中間軸Mの回転速度は、車速の上昇に伴って緩やかに上昇する。これより、本実施形態における特定発進制御の第二制御領域D2では、特定発進制御部47等は、第二差回転速度ΔN2がない状態を維持すると共に、当該第二制御領域D2の初期段階を除き第一差回転速度ΔN1を次第に(本例では、一定の時間変化率で緩やかに)減少させる。
[0084]
 この際、本実施形態においては、内燃機関制御部31は、要求トルク決定部42により決定された内燃機関要求トルクに基づいて、車両要求トルクTdに応じた駆動トルクのうち内燃機関11の負担分に相当する大きさの内燃機関トルクTeを出力させるように、内燃機関11の動作制御を行っている。なお、本実施形態では、特定発進制御中、回転電機12は発電トルクTgの供給を受けて発電を行っているので、「車両要求トルクTdに応じた駆動トルクのうち内燃機関11の負担分に相当する大きさの内燃機関トルクTe」は、上記のとおり車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に一致する(Te=Td+Tg)。この状態で、入力クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して、入力軸Iの回転速度、すなわち内燃機関11の内燃機関出力軸の回転速度を所定回転速度に維持するように、入力クラッチCTへの供給油圧を制御する。この場合における「所定回転速度」は、本例では、内燃機関要求トルクに応じた内燃機関トルクTeを内燃機関11が出力するために必要となる当該内燃機関11の回転速度である。このような内燃機関トルクTeと回転速度との関係は、マップや式等の形態で規定され、不図示のメモリ等の記録媒体に記憶して備えられている。このような入力クラッチCTへの供給油圧のフィードバック制御を行うことで、入力クラッチCTを介して適切な大きさの内燃機関トルクTeを車輪15側へ伝達することが可能となっている。
[0085]
 また、第二制御領域D2では、特定発進制御部47は、入力クラッチCTが第一差回転速度ΔN1を有さなくなった(第一差回転速度ΔN1がゼロとなった)か否かを監視している。第二制御領域D2は、第一差回転速度ΔN1がなくなるまで実行され、第一差回転速度ΔN1がなくなると、入力クラッチ動作制御部44は油圧制御装置25を介して入力クラッチCTへの供給油圧を完全係合圧まで上昇させて当該入力クラッチCTを完全係合
状態とし、特定発進制御を終了する。なお、特定発進制御の終了後は通常走行制御が開始される。図2のタイムチャートにおいては、この通常走行制御の領域を通常制御領域DNとして表示している。通常制御領域DNでは例えばパラレルモードが選択され、入力クラッチCTの完全係合状態で、車両6の走行状態に応じて内燃機関制御部31及び回転電機制御部43が内燃機関11及び回転電機12をそれぞれ適切に動作制御して車両6を走行させる。
[0086]
 このように、本実施形態に係る特定発進制御では、入力クラッチCTの完全係合状態で回転電機12が発電を行い、且つ、第一クラッチC1の解放状態から、回転電機12が発電を行ったままで車両6を発進させる特定発進動作に際して、差回転制御領域としての第一制御領域D1及びその後に実行される第二制御領域D2を有している。これにより、第一制御領域D1において入力クラッチCTをスリップ係合状態として第二差回転速度ΔN2を次第に減少させると共に第一差回転速度ΔN1を次第に増大させつつ、回転電機12が発電を行っている状態を維持したままで車両6を発進させる。更に、第二差回転速度ΔN2をなくして第一クラッチC1を完全係合させた後、第二制御領域D2において、回転電機12が発電を行っている状態を維持したままで第一差回転速度ΔN1がなくなるまで当該第一差回転速度ΔN1を次第に減少させて入力クラッチCTを完全係合させる。このような特定発進制御によれば、第一制御領域D1において第二差回転速度ΔN2を次第に減少させるので、図2に示すように、第一クラッチC1のスリップ量を低減させて当該第一クラッチC1の発熱量を低減することができる。よって、第一クラッチC1が過熱するのを抑制して当該第一クラッチC1の耐久性の低下を抑制することができる。なお、第一クラッチC1の温度は、当該第一クラッチC1がスリップ係合状態となった後でやや遅れて上昇する。そのため、上記のように第二差回転速度ΔN2を次第に低下させて第一クラッチC1のスリップ量を次第に低減させることで、第一クラッチC1が耐熱温度以上に過熱するのを有効に抑制することができる。
[0087]
 また、本実施形態においては、第一制御領域D1において第一クラッチC1に供給する油圧を完全係合圧まで増大させ、第二差回転速度ΔN2を比較的急速に減少させてゼロにすると共に、第一差回転速度ΔN1を比較的急速に増大させる。これにより、第一クラッチC1の発熱量をより効果的に低減して当該第一クラッチC1の耐久性の低下をより効果的に抑制することが可能となっている。
[0088]
 特に、本実施形態における第一クラッチC1のように、変速機構13内に備えられて係合状態で発進用の変速段(本例における第1速段)を形成する発進用係合装置では、その動力伝達経路における下流側の係合部材(本例における変速中間軸S)の回転速度は、車両発進時の車速に比例してその上昇速度が緩やかとなりがちである。そのため、従来技術の欄で説明したようなWSCモードでの車両発進を行う場合には、第一クラッチC1のスリップ量(第二差回転速度ΔN2)が比較的大きくなって発熱量も比較的大きくなってしまう(図2の一点鎖線を参照)。また、変速機構13の外部において内燃機関11と回転電機12との間に設けられる入力クラッチCTには、第一クラッチC1と比較して滑りに対する耐久性に優れ、耐熱性能に優れたものが用いられている場合が多い。そこで、本実施形態に係る特定発進制御を実行することにより、特定発進動作に際して第一クラッチC1のスリップ量に対応する第二差回転速度ΔN2を減少させると共に入力クラッチCTのスリップ量に対応する第一差回転速度ΔN1を増大させることで、総合的に見て第一クラッチC1及び入力クラッチCTの発熱量をそれぞれ適正化することが可能となっている。すなわち、第二差回転速度ΔN2のみが大きな値を維持して第一クラッチC1の発熱量のみが増大することを抑制するように第一差回転速度ΔN1と第二差回転速度ΔN2とを適宜調整し、各クラッチCT、C1の滑りに対する耐久性をも考慮して、各クラッチCT、C1の発熱量をそれぞれ適正量とすることが可能である。よって、本実施形態のように「発進用係合装置」が「第二係合装置」として備えられた駆動装置1の構成が、本願の適用対象として特に適している。
[0089]
 また、第一制御領域D1では第一差回転速度ΔN1は次第に増大するが、その場合でも入力クラッチCTはスリップ係合状態に維持されるため、内燃機関11に大きな内燃機関トルクTeを出力させることにより、少なくとも入力クラッチCTの伝達トルク容量Tctに応じたトルクを、当該入力クラッチCTを介して車輪15側へ伝達することが可能となる。特に、本実施形態においては、内燃機関11が車両要求トルクTdに応じた駆動トルクのうち内燃機関11の負担分に相当する大きさの内燃機関トルクTe(=Td+Tg)を出力している状態で、入力クラッチ動作制御部44は、その内燃機関トルクTeを出力するために必要となる内燃機関11の回転速度とするように入力クラッチCTへの供給油圧をフィードバック制御する。よって、入力クラッチCTを介して適切な大きさの内燃機関トルクTeを車輪15側へ伝達することが可能であると共に、その内燃機関トルクTeを利用して特定発進動作時に車両6を駆動させるための駆動力を十分に確保することができる。従って、本実施形態に係る駆動装置1によれば、特定発進動作に際して第一クラッチC1の耐久性の低下を抑制しながら車両発進時の駆動力を十分に確保することが可能である。
[0090]
 更に本実施形態では、特定発進制御では、内燃機関トルクTe(=Td+Tg)と車両要求トルクTdとの差分である発電トルクTgが回転電機12に提供され、回転電機12が発電を行っている状態が維持される。そのため、車両6の停車中に発電モードが実現されて回転電機12が発電を行っている状況から車両6が発進したような場合であっても、その回転電機12の発電が車両6の発進により中断されてしまうこともない。よって、車両6の停車時間に比べて低車速での走行時間が長いような場合(例えば、渋滞中の道路を走行する場合等、極低車速で長時間走行しなければならない場合等)であっても、蓄電装置28に十分な蓄電量を確保することができる。特に、極低車速での走行時には、内燃機関11の自立運転を継続させるために入力クラッチCT及び第一クラッチC1の少なくとも一方をスリップ係合状態とする必要があるが、このような場合にも各クラッチの耐久性の低下を抑制しながら、蓄電装置28に十分な蓄電量を確保することができるという利点がある。
[0091]
1-4.特定発進制御の処理手順
 次に、本実施形態に係る制御装置3による特定発進制御の処理手順について説明する。本例では、車両6の停車中に発電モードが実現されている状態から特定発進モードで車両6を発進させる場合(特定発進動作を行う場合)を想定して説明する。図3は、本実施形態に係る特定発進制御の処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する特定発進制御の手順は、内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40の各機能部により実行される。これらの各機能部がプログラムにより構成される場合には、内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40が備える演算処理装置は、各機能部を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
[0092]
 図3に示すように、まず車両停止中であるか否かが判定される(ステップ#01)。この判定は、例えば車速センサSe3により検出される車速の情報に基づいて行うことができる。車両停止中であると判定された場合には(ステップ#01:Yes)、次に入力クラッチCTが第一差回転速度ΔN1を有していない(第一差回転速度ΔN1がゼロである)か否かが判定される(ステップ#02)。入力クラッチCTが第一差回転速度ΔN1を有すると判定された場合には(ステップ#02:Yes)、次に回転電機12が発電中であるか否かが判定される(ステップ#03)。車両停止中ではないと判定され(ステップ#01:No)、入力クラッチCTが第一差回転速度ΔN1を有すると判定され(ステップ#02:No)、或いは回転電機12が発電中ではないと判定された場合には(ステップ#03:No)、本願が対象とする特定発進制御の実質的な制御は実行されることなく、通常走行制御が実行されて(ステップ#10)、特定発進制御を終了する。なお、第一差回転速度ΔN1があると判定され、或いは回転電機12が発電中ではないと判定された場合からの非特定発進動作に際しては、例えば電動走行モードでの車両発進が行われる構成として良い。
[0093]
 一方、本例の特定発進動作時のように、車両停止中であると判定され(ステップ#01:Yes)、且つ第一差回転速度ΔN1がないと判定され(ステップ#02:Yes)、且つ回転電機12が発電中であると判定された場合には(ステップ#03:Yes)、プレ制御領域DPが実行される(ステップ#04)。プレ制御領域DPにおける特定発進制御部47等による制御内容については、上記で説明したとおりである。次に、特定発進制御部47は、運転者による発進操作がなされたか否か、すなわち、本例ではアクセル開度が所定量以上まで上昇し且つブレーキ操作が解除されたか否かを判定する(ステップ#05)。発進操作がなされたと判定されると(ステップ#05:Yes)、本願が対象とする特定発進制御の実質的な制御が開始されることになる。
[0094]
 すなわち、まず第一制御領域D1が実行される(ステップ#06)。第一制御領域D1における特定発進制御部47等による制御内容については、上記で説明したとおりである。第一制御領域D1では、特定発進制御部47は、第一クラッチC1が第二差回転速度ΔN2を有さなくなった(第二差回転速度ΔN2がゼロとなった)か否かを監視している(ステップ#07)。そして、第二差回転速度ΔN2がなくなったと判定されると(ステップ#07:Yes)、次に第二制御領域D2が実行される(ステップ#08)。第二制御領域D2における特定発進制御部47等による制御内容については、上記で説明したとおりである。第二制御領域D2では、特定発進制御部47は、入力クラッチCTが第一差回転速度ΔN1を有さなくなった(第一差回転速度ΔN1がゼロとなった)か否かを監視している(ステップ#09)。そして、第一差回転速度ΔN1がなくなったと判定されると(ステップ#09:Yes)、特定発進制御の実質的な制御を終了する。なお、この間、回転電機12は発電している状態を維持している。その後、通常走行制御として通常制御領域DNが実行され(ステップ#10)、特定発進制御を終了する。
[0095]
 以上説明したように、本実施形態に係る駆動装置1によれば、特定発進制御を実行することにより、第一クラッチC1の耐久性の低下を抑制ししつつ、停車中に回転電機12により発電を行っている状態からその発電状態を維持したままで車両6を発進させることが可能である。
[0096]
2.第二の実施形態
 本発明に係る制御装置の第二の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る駆動装置1の駆動伝達系の構成及び制御装置3の構成は、基本的には上記第一の実施形態と同様である。但し、特定発進制御部47等により実行される特定発進制御の具体的内容が、上記第一の実施形態とは一部相違している。以下では、本実施形態に係る制御装置3について、上記第一の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
[0097]
2-1.特定発進制御の内容
 まず、本実施形態に係る特定発進制御の詳細について説明する。図4は、本実施形態に係る特定発進制御による車両各部の動作状態を示すタイムチャートである。この図においても、上記第一の実施形態と同様、上から順に、内燃機関11、回転電機12、及び変速中間軸S(出力軸O)の回転速度、第一差回転速度ΔN1及び第二差回転速度ΔN2、内燃機関11及び回転電機12の出力トルク、入力クラッチCT及び第一クラッチC1のトルク容量(係合圧)、入力クラッチCT及び第一クラッチC1の発熱量、アクセル開度及びブレーキ操作、を示している。
[0098]
 図4に示すように、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、第一制御領域D1、第二制御領域D2、及び第三制御領域D3の3つの制御領域を有する。第二制御領域D2は第一制御領域D1の後に実行されると共に、第三制御領域D3は第一制御領域D1と第二制御領域D2との間に実行される。また、第一制御領域D1の前にはプレ制御領域DPが実行され、第二制御領域D2の後には通常制御領域DNが実行される。よって、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、その前後でプレ制御領域DP、第一制御領域D1、第三制御領域D3、第二制御領域D2、及び通常制御領域DNの5つの制御領域をこの順に有する。以下、順に説明する。
[0099]
 プレ制御領域DPは、実質的な特定発進制御が行われる前の予備的な制御領域である。プレ制御領域DPで選択される発電モードでは、入力クラッチCTは完全係合状態に維持され、入力クラッチCTは第一差回転速度ΔN1を有さずに(第一差回転速度ΔN1がゼロの状態で)駆動力を伝達する状態にある。この状態で、内燃機関11のトルクにより回転電機12が発電を行っている。このとき、入力クラッチCTは完全係合状態に維持され、第一差回転速度ΔN1がない状態に維持されている。一方、第一クラッチC1は解放状態に維持され、第一クラッチC1は駆動力を伝達しない状態で大きな第二差回転速度ΔN2を有している。プレ制御領域DPでは、特定発進制御部47は、運転者による発進操作を監視している。特定発進制御部47により運転者による発進操作が検知されると、特定発進制御による実質的な制御(本実施形態においては、第一制御領域D1、第三制御領域D3、及び第二制御領域D2)が開始される。
[0100]
 第一制御領域D1は、特定発進制御の初期段階で行われる制御領域である。この第一制御領域D1では、入力クラッチCTのスリップ係合状態で第一差回転速度ΔN1を次第に(本例では一定の時間変化率で)増大させると共に、第二差回転速度ΔN2を次第に(本例では一定の時間変化率で)減少させる制御が行われる。第一制御領域D1では、車両6の運転者によるアクセルペダル17の踏み込み操作に応じて車両要求トルクTd及び内燃機関要求トルクが増大し、これに従って内燃機関トルクTeが増大される。また、内燃機関11及び入力軸Iの回転速度も上昇される。本例では、回転電機トルクTm(=-Tg)はそのまま一定値に維持されている。この状態で、入力クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して係合境界圧未満の所定圧まで入力クラッチCTへの供給油圧を次第に増大させることにより、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態とする。また、変速機構動作制御部45は、油圧制御装置25を介して係合境界圧未満の所定圧まで第一クラッチC1への供給油圧を次第に増大させることにより、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態とする。
[0101]
 第一制御領域D1では、第一クラッチC1に供給する油圧を、係合境界圧未満ではあるが所定圧まで増大させることで、車輪15、出力軸O、変速中間軸S、及び第一クラッチC1を介して伝達される走行抵抗により中間軸Mの回転速度が引き下げられる。このとき、本実施形態においては、入力クラッチ動作制御部44は、中間軸Mの回転速度を所定の目標回転速度Ntまで引き下げるように、第一クラッチC1への供給油圧を制御する。本実施形態では、このような目標回転速度Ntには、オイルポンプ24により入力クラッチCT及び第一クラッチC1の双方に必要とされる供給油圧を確保可能な回転速度(これを「第一目標回転速度Nt1」とする)が設定されている。更に本実施形態では、この第一目標回転速度Nt1は、オイルポンプ24により、入力クラッチCT及び第一クラッチC1を含む、駆動装置1に備えられている全ての油圧駆動式の係合装置に必要とされる供給油圧を確保可能な回転速度に設定されている。図示の例では、第一目標回転速度Nt1は、第一制御領域D1の終期段階における入力軸Iの回転速度と変速中間軸Sの回転速度との中間的な回転速度であって、より具体的にはアイドル回転数Niよりもわずかに低い回転速度に設定されている。
[0102]
 一方、入力軸Iの回転速度は上記のとおり上昇し、変速中間軸Sの回転速度は車速に比例して緩やかに上昇する。これより、本実施形態における特定発進制御の第一制御領域D1では、特定発進制御部47等は、第二差回転速度ΔN2を減少させると共に、第一差回転速度ΔN1を増大させる。このとき、本実施形態における第一制御領域D1の期間(時間)は上記第一の実施形態における第一制御領域D1の期間(時間)とほぼ等しい。そのため、本実施形態では、上記第一の実施形態と比較して、第二差回転速度ΔN2を比較的緩やかに減少させると共に、第一差回転速度ΔN1を比較的緩やかに増大させる。また、第一制御領域D1では、特定発進制御部47は、中間軸Mの回転速度が上記の第一目標回転速度Nt1に到達したか否かを監視している。第一制御領域D1は、中間軸Mの回転速度が第一目標回転速度Nt1に到達するまで実行され、中間軸Mの回転速度が第一目標回転速度Nt1に等しくなると、次に第三制御領域D3が開始される。
[0103]
 第三制御領域D3は、本実施形態では特定発進制御の中期段階で行われる制御領域である。この第三制御領域D3では、出力軸Oの回転速度及びこれに比例する変速中間軸Sの回転速度が上昇する状態で中間軸Mの回転速度を一定の値に設定された目標回転速度Nt(本例では、第一目標回転速度Nt1)に維持して第二差回転速度ΔN2を次第に減少させる制御が行われる。第三制御領域D3では、当該第三制御領域D3の初期段階を除き、内燃機関トルクTeが経時変化しない一定値に維持されると共に、内燃機関11及び入力軸Iの回転速度も経時変化しない一定値に維持される。また、入力クラッチ動作制御部44は、第一制御領域D1において油圧制御装置25を介して所定圧まで増大させた入力クラッチCTへの供給油圧を基本的にそのまま一定値に維持して、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態に維持させる。但し、本実施形態においても、入力クラッチ動作制御部44は入力クラッチCTへの供給油圧をフィードバック制御して、多少の変動を繰り返しながら全体としては一定値に維持させる。また、第三制御領域D3では、中間軸Mの回転速度は第一目標回転速度Nt1に維持されて、経時変化しない一定値に維持される。これより、本実施形態における特定発進制御の第三制御領域D3では、特定発進制御部47等は、当該第三制御領域D3の初期段階を除き第一差回転速度ΔN1を経時変化しない一定値に維持すると共に、第二差回転速度ΔN2を一定の時間変化率で緩やかに減少させる。
[0104]
 この際、本実施形態においても上記第一の実施形態と同様に、内燃機関制御部31は、要求トルク決定部42により決定された内燃機関要求トルクに基づいて、車両要求トルクTdに応じた駆動トルクのうち内燃機関11の負担分に相当する大きさの内燃機関トルクTe(=Td+Tg)を出力させるように、内燃機関11の動作制御を行っている。この状態で、入力クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して、入力軸Iの回転速度、すなわち内燃機関11の内燃機関出力軸の回転速度を、内燃機関要求トルクに応じた内燃機関トルクTeを内燃機関11が出力するために必要となる所定回転速度に維持するように、入力クラッチCTへの供給油圧を制御する。このような入力クラッチCTへの供給油圧のフィードバック制御を行うことで、入力クラッチCTを介して適切な大きさの内燃機関トルクTeを車輪15側へ伝達することが可能となっている。なお、このような内燃機関11及び入力クラッチCTの動作制御は、第三制御領域D3の後に実行される第二制御領域D2においても継続して行なわれる。
[0105]
 また、第三制御領域D3では、特定発進制御部47は、第一クラッチC1が第二差回転速度ΔN2を有さなくなった(第二差回転速度ΔN2がゼロとなった)か否かを監視している。第三制御領域D3は、第二差回転速度ΔN2がなくなるまで実行され、第二差回転速度ΔN2がなくなると、変速機構動作制御部45は油圧制御装置25を介して第一クラッチC1への供給油圧を完全係合圧まで上昇させて当該第一クラッチC1を完全係合状態とし、次に第二制御領域D2が開始される。第二制御領域D2及びその後の通常制御領域DNにおける制御内容は、上記第一の実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
[0106]
 このように、本実施形態に係る特定発進制御では、入力クラッチCTの完全係合状態で回転電機12が発電を行い、且つ、第一クラッチC1の解放状態から、回転電機12が発電を行ったままで車両6を発進させる特定発進動作に際して、第一制御領域D1並びにその後に実行される第三制御領域D3及び第二制御領域D2を有している。これにより、第一制御領域D1において入力クラッチCTをスリップ係合状態として第二差回転速度ΔN2を次第に減少させると共に第一差回転速度ΔN1を次第に増大させつつ、回転電機12が発電を行っている状態を維持したままで車両6を発進させる。更に、第三制御領域D3において第二差回転速度ΔN2をなくして第一クラッチC1を完全係合させた後、第二制御領域D2において第一差回転速度ΔN1がなくなるまで当該第一差回転速度ΔN1を次第に減少させて入力クラッチCTを完全係合させる。このような特定発進制御によれば、第一制御領域D1及び第三制御領域D3において第二差回転速度ΔN2を次第に減少させるので、第一クラッチC1のスリップ量を低減させて当該第一クラッチC1の発熱量を低減することができる。よって、第一クラッチC1が過熱するのを抑制して当該第一クラッチC1の耐久性の低下を抑制することができる。また、特定発進動作に際して、入力クラッチCTを介して適切な大きさの内燃機関トルクTeを車輪15側へ伝達することができるので、車両6を駆動させるための駆動力を十分に確保することができる。
[0107]
 また、本実施形態においては、第三制御領域D3では中間軸Mの回転速度が所定の第一目標回転速度Nt1に維持される。これにより、第一目標回転速度Nt1で回転駆動されるオイルポンプ24により、駆動装置1に備えられている全ての油圧駆動式の係合装置(入力クラッチCT及び第一クラッチC1を含む)に必要とされる供給油圧を確保することができる。そこで、上記第一の実施形態においてオイルポンプ24と併設されていた電動式オイルポンプは、本実施形態に係る駆動装置1には備えられていない。このように、本実施形態では、車両6の駆動力源である内燃機関11及び回転電機12とは独立して作動可能な他の油圧源としての電動式オイルポンプの設置を省略して、駆動装置1の製造コストの低減が図られている。
[0108]
 更に、第三制御領域D3では中間軸Mの回転速度が所定の目標回転速度Nt(本例では、第一目標回転速度Nt1)に維持されることにより、当該第三制御領域D3の終期段階において第二差回転速度ΔN2を滑らかにゼロに収束させ、第二差回転速度ΔN2がなくなる時点の前後における中間軸Mの回転速度の急激な変動を抑制することができる。よって、そのような中間軸Mの回転速度の急激な変動が第一クラッチC1を介して変速中間軸S、出力軸O及び車輪15に伝達されるのを抑制して、第二差回転速度ΔN2がなくなる時点におけるショックの発生を抑制することが可能とされている。また、回転電機12が発電を行っている状態を維持して、蓄電装置28に十分な蓄電量を確保することができる。
[0109]
2-2.特定発進制御の処理手順
 次に、本実施形態に係る制御装置3による特定発進制御の処理手順について説明する。図5は、本実施形態に係る特定発進制御の処理手順を示すフローチャートである。この図5のフローチャートと、上記第一の実施形態における図3のフローチャートとを対比すると良く理解できるように、本実施形態に係る特定発進制御の処理手順と、上記第一の実施形態に係る特定発進制御の処理手順とは、その多くが重複している。すなわち、本実施形態に係る特定発進制御におけるステップ#21~ステップ#26の処理内容は上記第一の実施形態に係る特定発進制御のステップ#01~ステップ#06の処理内容と同一である。また、本実施形態に係る特定発進制御におけるステップ#29~ステップ#32の処理内容は上記第一の実施形態に係る特定発進制御のステップ#07~ステップ#10の処理内容と同一である。つまり、本実施形態に係る特定発進制御では、上記第一の実施形態に係る特定発進制御のステップ#06とステップ#07との間に、ステップ#27及びステップ#28の処理が追加された構成となっている。以下では、追加された処理の前後を中心に説明する。
[0110]
 図5に示すように、ステップ#25の判定において、発進操作がなされたと判定されると(ステップ#25:Yes)、本願が対象とする特定発進制御の実質的な制御が開始される。すなわち、まず第一制御領域D1が実行される(ステップ#26)。第一制御領域D1における特定発進制御部47等による制御内容については、上記で説明したとおりである。第一制御領域D1では、特定発進制御部47は、中間軸Mの回転速度が目標回転速度Ntに到達したか否かを監視している(ステップ#27)。本実施形態では、上記のとおり目標回転速度Ntとして、オイルポンプ24により全ての係合装置(入力クラッチCT及び第一クラッチC1を含む)に必要とされる供給油圧を確保可能な第一目標回転速度Nt1が設定されている。そして、中間軸Mの回転速度が第一目標回転速度Nt1に到達したと判定されると(ステップ#27:Yes)、次に第三制御領域D3が実行される(ステップ#28)。第三制御領域D3における特定発進制御部47等による制御内容については、上記で説明したとおりである。第三制御領域D3では、特定発進制御部47は、第二差回転速度ΔN2がなくなった(第二差回転速度ΔN2がゼロとなった)か否かを監視している(ステップ#29)。そして、第二差回転速度ΔN2がなくなったと判定されると(ステップ#27:Yes)、その後、第二制御領域D2及び通常制御領域DNが実行されて(ステップ#28~ステップ#32)、特定発進制御を終了する。
[0111]
3.第三の実施形態
 本発明に係る制御装置の第三の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る駆動装置1の駆動伝達系の構成及び制御装置3の構成は、基本的には上記の各実施形態と同様である。但し、特定発進制御部47等により実行される特定発進制御の具体的内容が、上記の各実施形態とは一部相違している。以下では、本実施形態に係る制御装置3について、上記の各実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に明記しない点については、上記の各実施形態と同様とする。
[0112]
3-1.特定発進制御の内容
 まず、本実施形態に係る特定発進制御の詳細について説明する。図6は、本実施形態に係る特定発進制御による車両各部の動作状態を示すタイムチャートである。この図においても、上記第一の実施形態と同様、上から順に、内燃機関11、回転電機12、及び変速中間軸S(出力軸O)の回転速度、第一差回転速度ΔN1及び第二差回転速度ΔN2、内燃機関11及び回転電機12の出力トルク、入力クラッチCT及び第一クラッチC1のトルク容量(係合圧)、入力クラッチCT及び第一クラッチC1の発熱量、アクセル開度及びブレーキ操作、を示している。
[0113]
 図6に示すように、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、第一制御領域D1、第二制御領域D2、第三制御領域D3、及び第四制御領域D4の4つの制御領域を有する。第二制御領域D2は第一制御領域D1の後に実行されると共に、第三制御領域D3は第一制御領域D1と第二制御領域D2との間に実行され、更に第四制御領域D4は第一制御領域D1と第三制御領域D3との間に実行される。また、第一制御領域D1の前にはプレ制御領域DPが実行され、第二制御領域D2の後には通常制御領域DNが実行される。よって、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、その前後でプレ制御領域DP、第一制御領域D1、第四制御領域D4、第三制御領域D3、第二制御領域D2、及び通常制御領域DNの6つの制御領域をこの順に有する。以下、順に説明する。
[0114]
 プレ制御領域DPは、実質的な特定発進制御が行われる前の予備的な制御領域である。プレ制御領域DPで選択される発電モードでは、入力クラッチCTは完全係合状態に維持され、入力クラッチCTは第一差回転速度ΔN1を有さずに(第一差回転速度ΔN1がゼロの状態で)駆動力を伝達する状態にある。この状態で、内燃機関11のトルクにより回転電機12が発電を行っている。このとき、入力クラッチCTは完全係合状態に維持され、第一差回転速度ΔN1がない状態に維持されている。一方、第一クラッチC1は解放状態に維持され、第一クラッチC1は駆動力を伝達しない状態で大きな第二差回転速度ΔN2を有している。プレ制御領域DPでは、特定発進制御部47は、運転者による発進操作を監視している。特定発進制御部47により運転者による発進操作が検知されると、特定発進制御による実質的な制御(本実施形態においては、第一制御領域D1、第四制御領域D4、第三制御領域D3、及び第二制御領域D2)が開始される。
[0115]
 第一制御領域D1は、特定発進制御の初期段階で行われる制御領域である。この第一制御領域D1では、入力クラッチCTのスリップ係合状態で第一差回転速度ΔN1を次第に(本例では一定の時間変化率で)増大させると共に、第二差回転速度ΔN2を次第に(本例では一定の時間変化率で)減少させる制御が行われる。第一制御領域D1では、車両6の運転者によるアクセルペダル17の踏み込み操作に応じて車両要求トルクTd及び内燃機関要求トルクが増大し、これに従って内燃機関トルクTeが増大される。また、内燃機関11及び入力軸Iの回転速度も上昇される。本例では、回転電機トルクTm(=-Tg)はそのまま一定値に維持されている。この状態で、入力クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して係合境界圧未満の所定圧まで入力クラッチCTへの供給油圧を次第に増大させることにより、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態とする。また、変速機構動作制御部45は、油圧制御装置25を介して係合境界圧未満の所定圧まで第一クラッチC1への供給油圧を次第に増大させることにより、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態とする。
[0116]
 第一制御領域D1では、第一クラッチC1に供給する油圧を、係合境界圧未満ではあるが所定圧まで増大させることで、車輪15、出力軸O、変速中間軸S、及び第一クラッチC1を介して伝達される走行抵抗により中間軸Mの回転速度が引き下げられる。このとき、本実施形態においては、入力クラッチ動作制御部44は、中間軸Mの回転速度を引き下げて、第二差回転速度ΔN2を所定の目標差回転速度ΔNtとするように、第一クラッチC1への供給油圧を制御する。本実施形態では、このような目標差回転速度ΔNtには、所定の一定値、すなわち中間軸Mの回転速度と変速中間軸Sの回転速度との間に所定の差回転が存在することが識別可能なゼロ以上の値が設定されている。図示の例では、目標差回転速度ΔNtは、アイドル回転数Niの20~30%程度の値に設定されている。
[0117]
 一方、入力軸Iの回転速度は上記のとおり上昇し、変速中間軸Sの回転速度は車速に比例して緩やかに上昇する。これより、本実施形態における特定発進制御の第一制御領域D1では、特定発進制御部47等は、第二差回転速度ΔN2を減少させると共に、第一差回転速度ΔN1を増大させる。このとき、本実施形態における第一制御領域D1の期間(時間)は上記第一の実施形態における第一制御領域D1の期間(時間)とほぼ等しい。そのため、本実施形態では、上記第一の実施形態と比較して、第二差回転速度ΔN2を比較的緩やかに減少させると共に、第一差回転速度ΔN1を比較的緩やかに増大させる。但し、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtとなる時点における中間軸Mの回転速度は、上記第二の実施形態における第一目標回転速度Nt1よりも十分に低い。そのため、本実施形態では、上記第二の実施形態と比較した場合には、第二差回転速度ΔN2を比較的急速に減少させると共に、第一差回転速度ΔN1を比較的急速に増大させる。また、第一制御領域D1では、特定発進制御部47は、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtに到達したか否かを監視している。第一制御領域D1は、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtに到達するまで実行され、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtに等しくなると、次に第四制御領域D4が開始される。
[0118]
 第四制御領域D4は、本実施形態では特定発進制御の中期段階で行われる制御領域である。この第四制御領域D4では、出力軸Oの回転速度及びこれに比例する変速中間軸Sの回転速度が上昇する状態で、当該出力軸Oの回転速度及び変速中間軸Sの回転速度の上昇に応じて中間軸Mの回転速度を上昇させ第二差回転速度ΔN2を所定の目標差回転速度ΔNtに維持させる制御が行われる。第四制御領域D4では、当該第四制御領域D4の初期段階を除き、内燃機関トルクTeが経時変化しない一定値に維持されると共に、内燃機関11及び入力軸Iの回転速度も経時変化しない一定値に維持される。また、入力クラッチ動作制御部44は、第一制御領域D1において油圧制御装置25を介して所定圧まで増大させた入力クラッチCTへの供給油圧を基本的にそのまま一定値に維持して、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態に維持させる。また、第四制御領域D4では、変速機構動作制御部45は、第一クラッチC1への供給油圧を次第に微減させることにより、第二差回転速度ΔN2を目標差回転速度ΔNtに維持させる。すると、中間軸Mの回転速度は、車速に比例して緩やかに上昇する変速中間軸Sの回転速度の上昇に合わせて緩やかに上昇する。これより、本実施形態における特定発進制御の第四制御領域D4では、特定発進制御部47等は、当該第四制御領域D4の初期段階を除き第一差回転速度ΔN1を緩やかに減少させると共に、第二差回転速度ΔN2を経時変化しない一定値に維持する。
[0119]
 この際、本実施形態においても、内燃機関制御部31は、要求トルク決定部42により決定された内燃機関要求トルクに基づいて、車両要求トルクTdに応じた駆動トルクのうち内燃機関11の負担分に相当する大きさの内燃機関トルクTe(=Td+Tg)を出力させるように、内燃機関11の動作制御を行っている。但し、本実施形態においてはこの状態で、入力クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して、入力クラッチCTの伝達トルク容量Tctを内燃機関要求トルクに応じた内燃機関トルクTe(=Td+Tg)に相当する値とするように、入力クラッチCTへの供給油圧を制御する。このような入力クラッチCTへの供給油圧のフィードフォワード制御を行うことで、内燃機関11が出力する内燃機関トルクTeを、入力クラッチCTを介して適切に車輪15側へ伝達することが可能となっている。なお、このような内燃機関11及び入力クラッチCTの動作制御は、第四制御領域D4の後に実行される第三制御領域D3及び第二制御領域D2においても継続して行なわれる。
[0120]
 また、第四制御領域D4では、特定発進制御部47は、中間軸Mの回転速度が所定の目標回転速度Ntに到達したか否かを監視している。本実施形態では、このような目標回転速度Ntには、所定の一定値、すなわち第四制御領域D4の開始時における変速中間軸Sの回転速度よりも高く且つ入力軸Iの回転速度よりも低い第二目標回転速度Nt2が設定されている。図示の例では、第二目標回転速度Nt2は、アイドル回転数Niの60~70%程度の値に設定されている。第四制御領域D4は、中間軸Mの回転速度が第二目標回転速度Nt2に到達するまで実行され、中間軸Mの回転速度が第二目標回転速度Nt2に到達すると、変速機構動作制御部45は油圧制御装置25を介して第一クラッチC1への供給油圧を経時変化しない一定値に維持させて、次に第三制御領域D3が開始される。第三制御領域D3並びにその後の第二制御領域D2及び通常制御領域DNにおける制御内容は、目標回転速度Ntの具体的設定が異なる(第二目標回転速度Nt2≠第一目標回転速度Nt1)点を除いて上記第二の実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
[0121]
 このように、本実施形態に係る特定発進制御では、入力クラッチCTの完全係合状態で回転電機12が発電を行い、且つ、第一クラッチC1の解放状態から、回転電機12が発電を行ったままで車両6を発進させる特定発進動作に際して、第一制御領域D1並びにその後に実行される第四制御領域D4、第三制御領域D3及び第二制御領域D2を有している。これにより、第一制御領域D1において入力クラッチCTをスリップ係合状態として第二差回転速度ΔN2を次第に減少させると共に第一差回転速度ΔN1を次第に増大させつつ、回転電機12が発電を行っている状態を維持したままで車両6を発進させる。更に、第四制御領域D4から第三制御領域D3にかけて第二差回転速度ΔN2をなくして第一クラッチC1を完全係合させた後、第二制御領域D2において第一差回転速度ΔN1がなくなるまで当該第一差回転速度ΔN1を次第に減少させて入力クラッチCTを完全係合させる。このような特定発進制御によれば、第一制御領域D1から第三制御領域D3にかけて第二差回転速度ΔN2を次第に減少させるので、第一クラッチC1のスリップ量を低減させて当該第一クラッチC1の発熱量を低減することができる。よって、第一クラッチC1が過熱するのを抑制して当該第一クラッチC1の耐久性の低下を抑制することができる。また、特定発進動作に際して、内燃機関トルクTeを、入力クラッチCTを介して適切に車輪15側へ伝達することができるので、車両6を駆動させるための駆動力を十分に確保することができる。
[0122]
 また、本実施形態においては、第四制御領域D4において第二差回転速度ΔN2を一旦所定の目標差回転速度ΔNtに維持することにより、比較的早期に第二差回転速度ΔN2を低下させている。そして、その後の第三制御領域D3において中間軸Mの回転速度を所定の目標回転速度Nt(本例では、第二目標回転速度Nt2)に維持することにより、第二差回転速度ΔN2がなくなる時点におけるショックの発生の抑制が図られている。従って、本実施形態に係る特定発進制御によれば、第一クラッチC1の発熱量を効果的に低減して当該第一クラッチC1の耐久性の低下を効果的に抑制しつつ、第二差回転速度ΔN2がなくなる時点におけるショックの発生を抑制することが可能とされている。また、回転電機12が発電を行っている状態を維持して、蓄電装置28に十分な蓄電量を確保することができる。
[0123]
3-2.特定発進制御の処理手順
 次に、本実施形態に係る制御装置3による特定発進制御の処理手順について説明する。図7は、本実施形態に係る特定発進制御の処理手順を示すフローチャートである。この図7のフローチャートと、上記第二の実施形態における図5のフローチャートとを対比すると良く理解できるように、本実施形態に係る特定発進制御の処理手順と、上記第二の実施形態に係る特定発進制御の処理手順とは、その多くが重複している。すなわち、本実施形態に係る特定発進制御におけるステップ#41~ステップ#46の処理内容は上記第二の実施形態に係る特定発進制御のステップ#21~ステップ#26の処理内容と同一である。また、本実施形態に係る特定発進制御におけるステップ#49~ステップ#54の処理内容は上記第二の実施形態に係る特定発進制御のステップ#27~ステップ#32の処理内容と同一である。つまり、本実施形態に係る特定発進制御では、上記第二の実施形態に係る特定発進制御のステップ#26とステップ#27との間に、ステップ#47及びステップ#48の処理が追加された構成となっている。以下では、追加された処理の前後を中心に説明する。
[0124]
 図7に示すように、ステップ#45の判定において、発進操作がなされたと判定されると(ステップ#45:Yes)、本願が対象とする特定発進制御の実質的な制御が開始される。すなわち、まず第一制御領域D1が実行される(ステップ#46)。第一制御領域D1における特定発進制御部47等による制御内容については、上記で説明したとおりである。第一制御領域D1では、特定発進制御部47は、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtに到達したか否かを監視している(ステップ#47)。そして、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtに到達したと判定されると(ステップ#47:Yes)、次に第四制御領域D4が実行される(ステップ#48)。第四制御領域D4における特定発進制御部47等による制御内容については、上記で説明したとおりである。第四制御領域D4では、特定発進制御部47は、中間軸Mの回転速度が目標回転速度Nt(本例では、第二目標回転速度Nt2)に到達したか否かを監視している(ステップ#49)。そして、中間軸Mの回転速度が第二目標回転速度Nt2に到達したと判定されると(ステップ#49:Yes)、その後、第三制御領域D3、第二制御領域D2、及び通常制御領域DNが実行されて(ステップ#50~ステップ#54)、特定発進制御を終了する。
[0125]
4.第四の実施形態
 本発明に係る制御装置の第四の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る駆動装置1の駆動伝達系の構成及び制御装置3の構成は、基本的には上記の各実施形態と同様である。また、本実施形態に係る特定発進制御の具体的内容は、上記第二の実施形態と類似しているものの、一部相違している。以下では、本実施形態に係る駆動装置1について、上記第二の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第二の実施形態と同様とする。
[0126]
 図8は、本実施形態に係る特定発進制御による車両各部の動作状態を示すタイムチャートである。図8に示すように、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、第一制御領域D1、第二制御領域D2、及び第三制御領域D3の3つの制御領域を有する。そして、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、その前後でプレ制御領域DP、第一制御領域D1、第三制御領域D3、第二制御領域D2、及び通常制御領域DNの5つの制御領域をこの順に有する。
[0127]
 本実施形態においても、上記第二の実施形態と同様、第一制御領域D1において、入力クラッチ動作制御部44は中間軸Mの回転速度を所定の目標回転速度Ntまで引き下げるように、第一クラッチC1への供給油圧を制御する。本実施形態では、このような目標回転速度Ntには、オイルポンプ24により入力クラッチCT及び第一クラッチC1を含む全ての係合装置に必要とされる供給油圧を確保可能な回転速度とは無関係の所定の一定値、すなわち第一制御領域D1の終期段階における変速中間軸Sの回転速度よりも高く且つ入力軸Iの回転速度よりも低い第二目標回転速度Nt2が設定されている。本例における第二目標回転速度Nt2は、上記第二の実施形態における目標回転速度Ntと同じとされており、アイドル回転数Niの60~70%程度の値に設定されている。このような第二目標回転速度Nt2の設定では、第二目標回転速度Nt2で回転駆動されるオイルポンプ24だけでは、入力クラッチCT及び第一クラッチC1を含む全ての係合装置に必要とされる供給油圧を確実に確保できない可能性がある。よって、本実施形態においては上記第一の実施形態と同様、駆動装置1には車両6の駆動力源である内燃機関11及び回転電機12とは独立して作動可能な他の油圧源としての電動式オイルポンプが備えられている。
[0128]
 また、第一制御領域D1では、特定発進制御部47は、中間軸Mの回転速度が上記の第二目標回転速度Nt2に到達したか否かを監視している。第一制御領域D1は、中間軸Mの回転速度が第二目標回転速度Nt2に到達するまで実行され、中間軸Mの回転速度が第二目標回転速度Nt2に等しくなると、その後、第三制御領域D3及び通常制御領域DNが実行される。
[0129]
 本実施形態においても、上記第二の実施形態と同様に、特定発進動作に際して、第一クラッチC1が過熱するのを抑制して当該第一クラッチC1の耐久性の低下を抑制しながら、回転電機12が発電を行っている状態を維持して蓄電装置28に十分な蓄電量を確保することができ、更に車両6を駆動させるための駆動力を十分に確保することが可能となっている。また、第二差回転速度ΔN2がなくなる時点におけるショックの発生を抑制することが可能とされている。
[0130]
5.第五の実施形態
 本発明に係る制御装置の第五の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る駆動装置1の駆動伝達系の構成及び制御装置3の構成は、基本的には上記の各実施形態と同様である。また、本実施形態に係る特定発進制御の具体的内容は、上記第一の実施形態と類似しているものの、一部相違している。以下では、本実施形態に係る駆動装置1について、上記第一の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
[0131]
 図9は、本実施形態に係る特定発進制御による車両各部の動作状態を示すタイムチャートである。図9に示すように、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、第一制御領域D1と第二制御領域D2との2つの制御領域を有する。そして、本実施形態に係る特定発進制御では、特定発進動作に際して、その前後でプレ制御領域DP、第一制御領域D1、第二制御領域D2、及び通常制御領域DNの4つの制御領域をこの順に有する。
[0132]
 本実施形態においては、第一制御領域D1において、車両6の運転者によるアクセルペダル17の踏み込み操作があったとしても、第二差回転速度ΔN2がなくなって第一クラッチC1が完全係合状態となるまでは、内燃機関制御部31及び回転電機制御部43は、車速とアクセル開度とに基づいて決定される車両要求トルクTdとは無関係にそれぞれ内燃機関11及び回転電機12の動作制御を行う。より具体的には、内燃機関制御部31及び回転電機制御部43は、車両6をクリープ走行させるためのクリープトルクTcrを車輪15に伝達させるように、それぞれ内燃機関11及び回転電機12の動作制御を行う。すなわち、内燃機関制御部31と回転電機制御部43との協働により、内燃機関トルクTe(=Tcr+Tg)と回転電機トルクTm(=-Tg)との加算値が、車両要求トルクTdではなくクリープトルクTcrに等しくなるように、内燃機関11及び回転電機12の動作制御が行われる。なお、本例では、車両6の停止状態で回転電機12が発電するために出力されていた回転電機トルクTm(=-Tg)は、特定発進制御中もそのまま一定値に維持される。
[0133]
 すなわち、車両6の運転者によるアクセルペダル17の踏み込み操作があると、それに応じて内燃機関トルクTeが、クリープトルクTcrのうちの内燃機関11の負担分まで増大される。なお、本実施形態では、特定発進制御中、回転電機12は発電トルクTgの供給を受けて発電を行っているので、「クリープトルクTcrのうち内燃機関11の負担分」は、クリープトルクTcrと発電トルクTgとの和に一致する(内燃機関トルクTe=Tcr+Tg)。また、内燃機関11及び入力軸Iの回転速度は、クリープトルクTcrのうちの内燃機関11の負担分を内燃機関11が出力するのに必要となる回転速度まで上昇される。この状態で、入力クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して係合境界圧未満の所定圧まで入力クラッチCTへの供給油圧を次第に増大させることにより、当該入力クラッチCTをスリップ係合状態とする。また、変速機構動作制御部45は、油圧制御装置25を介して第一クラッチC1への供給油圧を完全係合圧まで次第に増大させることにより、当該第一クラッチC1を完全係合状態とする。
[0134]
 また、第一制御領域D1では、特定発進制御部47は、第一クラッチC1が第二差回転速度ΔN2を有さなくなった(第二差回転速度ΔN2がゼロとなった)か否かを監視している。第一制御領域D1は、第二差回転速度ΔN2がなくなるまで実行され、第二差回転速度ΔN2がなくなると、次に第二制御領域D2が開始される。なお、第二制御領域D2において、内燃機関トルクTeは、車両要求トルクTdに基づいて決定される内燃機関要求トルクに応じた値となるまで上昇される。また、それに合わせて内燃機関11の回転速度も、内燃機関要求トルクに応じた内燃機関トルクTe(=Td+Tg)を当該内燃機関11が出力するのに必要となる回転速度まで上昇されている。この状態で、第二制御領域D2が実行され、更にその後、通常制御領域DNが実行される。
[0135]
 本実施形態においても、上記第一の実施形態と同様に、特定発進動作に際して、第一クラッチC1が過熱するのをより効果的に抑制して当該第一クラッチC1の耐久性の低下を効果的に抑制しながら、回転電機12が発電を行っている状態を維持して蓄電装置28に十分な蓄電量を確保することができ、更に車両6を駆動させるための駆動力を十分に確保することが可能となっている。また、本実施形態においては、第一制御領域D1において、内燃機関トルクTeと回転電機トルクTmとの加算値が、車両要求トルクTdではなくクリープトルクTcrに等しくなるように、内燃機関11及び回転電機12が制御されると共に、入力クラッチCTの伝達トルク容量Tctが、クリープトルクTcrのうちの内燃機関11の負担分にほぼ等しい値となるように制御される。よって、車両6を適切にクリープ走行させることができる。また、この場合、第一クラッチC1を介して車輪15側に伝達されるトルクの上限値は、比較的小さい値に設定されたクリープトルクTcrに等しくなる。そのため、第一クラッチC1を介して伝達されるトルクの大きさと第二差回転速度ΔN2との積に応じて決まる当該第一クラッチC1における発熱量を、より低減することが可能となっている。よって、本実施形態に係る特定発進制御を実行することにより、第一クラッチC1が過熱するのをより有効に抑制して、当該第一クラッチC1の耐久性の低下を更に効果的に抑制することが可能となっている。
[0136]
6.その他の実施形態
 最後に、本発明に係る制御装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される特徴構成は、その実施形態でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される特徴構成と組み合わせて適用することも可能である。
[0137]
(1)上記の各実施形態においては、車両6の発進時には特定発進モードが選択され、常に特定発進制御を実行するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、特定発進動作に際して、所定の選択的実行条件が成立した場合にのみ特定発進制御を実行する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような選択的実行条件としては、例えば路面勾配等の外部要因に関する条件や、第一クラッチC1の温度等の内部要因に関する条件等、各種の条件を設定することが可能である。より具体的には、例えば車両6に設けられた勾配センサにより当該車両6が停車している路面の勾配を検出し、検出される路面勾配が所定の基準値(設定勾配閾値)以上であった場合にのみ、特定発進制御を実行する構成を採用することができる。或いは、例えば車両6に設けられた温度センサにより第一クラッチC1の温度を検出し、検出される第一クラッチC1の温度が所定の基準値(設定温度閾値)以上であった場合にのみ、特定発進制御を実行する構成を採用することができる。なお、上記のように第一クラッチC1の温度を実測するのではなく、例えば第二差回転速度ΔN2と第一クラッチC1を介して伝達されるトルクの大きさとに基づいて第一クラッチC1の温度を推定する構成としても良い。また或いは、例えば車両6に設けられた充電状態検出センサSe6により蓄電装置28の蓄電量を検出し、検出される蓄電装置28の蓄電量が所定の基準値(設定蓄電量閾値)以下であった場合にのみ、特定発進制御を実行する構成を採用することができる。これらの場合において、選択的実行条件が不成立の場合には、例えば入力クラッチCTの解放状態且つ第一クラッチC1の完全係合状態で、電動走行モードにより車両6を発進させる構成とすることができる。
[0138]
(2)上記第二の実施形態においては、目標回転速度Ntとして、オイルポンプ24により入力クラッチCT及び第一クラッチC1を含む全ての係合装置に必要とされる供給油圧を確保可能な第一目標回転速度Nt1が設定されている場合を例として説明した。また、上記第三の実施形態及び上記第四の実施形態においては、目標回転速度Ntとして所定の第二目標回転速度Nt2が設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、目標回転速度Ntとしては、変速中間軸Sの回転速度よりも高く且つ入力軸Iの回転速度よりも低い範囲内で、駆動装置1や車両6の特性等に応じて任意の値を設定することができる。同様に、上記第三の実施形態において説明した目標差回転速度ΔNtとしては、中間軸Mの回転速度と変速中間軸Sの回転速度との間に差回転が存在することが識別可能なゼロ以上の値であれば、駆動装置1や車両6の特性等に応じて任意の値を設定することができる。
[0139]
(3)この場合において、第三制御領域D3における目標回転速度Ntが少なくとも要求発電量に基づいて決定されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。ここで、要求発電量は、回転電機12が発電を行う際に回転電機12が発電すべき電力量の目標値である。このような要求発電量は、例えば充電状態検出センサSe6により検出される蓄電装置28の蓄電量や、車両6に備えられる補機類であって電力を用いて駆動されるもの(例えば、車載用エアコンディショナーのコンプレッサや灯火類等)の消費電力等に基づいて決定する構成とすることができる。そして、その要求発電量と、回転電機12の発熱量を所定量以下に抑えるための発電トルクTgの大きさの制約と、に基づいて目標回転速度Ntを決定する構成とすることができる。この場合、上記第二の実施形態で説明したようにオイルポンプ24により入力クラッチCT及び第一クラッチC1を含む全ての係合装置に必要とされる供給油圧を確保することも考慮して目標回転速度Ntを決定する構成としても良い。更に、入力クラッチCT及び第一クラッチC1の一方又は双方の発熱量をも考慮して目標回転速度Ntを決定する構成としても良い。
[0140]
(4)上記第三の実施形態においては、所定の目標差回転速度ΔNtとして、所定の一定値が設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば動力伝達経路における第一クラッチC1の下流側の係合部材である変速中間軸Sの回転速度の関数(例えば、一次関数等)として定まる値として、目標差回転速度ΔNtが設定された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合において、車速が所定速度まで上昇した際に目標差回転速度ΔNtがゼロとなるような関数を設定しておけば、上記第三の実施形態とは異なり、第四制御領域D4の後には、第三制御領域D3が実行されることなく直ちに第二制御領域D2が実行されることになる。すなわち、そのような目標差回転速度ΔNtを設定することにより、特定発進制御において、その前後でプレ制御領域DP、第一制御領域D1、第四制御領域D4、第二制御領域D2、及び通常制御領域DNの5つの制御領域をこの順に有する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
[0141]
(5)上記の各実施形態においては、第一クラッチC1及び不図示のワンウェイクラッチの係合状態で形成される第1速段が車両6の発進用の発進用変速段として形成され、特定発進制御の実行により第一クラッチC1の発熱量を低減させるように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば変速内に備えられる他の摩擦係合装置(例えば、第二クラッチやブレーキ等)の係合状態で形成される変速段が発進用変速段として形成され、特定発進制御の実行により第二クラッチ等の発熱量を低減させるように構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、第二クラッチ等が本発明における「発進用係合装置」に相当すると共に「第二係合装置」に相当する。なお、第二係合装置(発進用係合装置)が変速機構13内のブレーキとされる場合には、当該ブレーキの一方の係合部材には駆動装置ケース等の非回転部材が連結され、当該一方の係合部材の回転速度は常にゼロとなる。
[0142]
(6)上記の各実施形態においては、特定発進制御の各制御領域で、回転電機12が常に発電のための一定の回転電機トルクTm(=-Tg)を出力している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば特定発進制御において実行される制御の中に第三制御領域D3を有する場合において、中間軸Mの回転速度をより早期に目標回転速度Ntに一致させるように、回転電機12が、発電のための回転電機トルクTmに加えて、回転速度変化を促進するためのトルクを積極的に出力する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。その際、第一クラッチC1の第二差回転速度ΔN2は中間軸Mと一体回転する回転電機12の回転速度によって変化させることができるので、第一クラッチC1への供給油圧を、出力軸Oに伝達されるトルクが車両要求トルクTdに一致するように制御する構成とすると好適である。この場合、差回転制御領域としての第一制御領域D1では、所定の目標回転速度Ntに一致する回転速度となるように回転電機12が制御され、第一差回転速度ΔN1が所定の目標差回転速度となるように入力クラッチCTへの供給油圧が制御され、出力軸Oに伝達されるトルクが車両要求トルクTdに一致するように第一クラッチC1への供給油圧が制御され、更に、回転電機12に提供される発電トルクTgと車両要求トルクTdとの和に一致するトルクを内燃機関11に出力させるための内燃機関制御指令としての内燃機関要求トルクが、特定発進制御部47により要求トルク決定部42を介して内燃機関制御部31に出力され、その内燃機関要求トルクに従って内燃機関11が制御される。なお、第三制御領域D3を有さない場合においても、例えば中間軸Mの回転速度をより早期に低下させて第二差回転速度ΔN2を早期に減少させるべく、回転電機12が、発電のための回転電機トルクTmに加えて、回転速度変化を促進するためのトルクを積極的に出力する構成としても良い。
[0143]
(7)上記の各実施形態においては、第一制御領域D1では中間軸Mの回転速度を低下させるように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、少なくとも中間軸Mの回転速度を入力軸Iの回転速度よりも低くするように制御することによって、当該第一制御領域D1において第一差回転速度ΔN1を次第に増大させると共に第二差回転速度ΔN2を次第に減少させることは可能である。従って、上記の各実施形態のように第一制御領域D1において入力軸Iの回転速度が上昇される場合には、当該第一制御領域D1において、中間軸Mの回転速度を、一定値に維持させ、或いは入力軸Iの回転速度以下の回転速度の範囲内で上昇させるように制御する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
[0144]
(8)上記の各実施形態においては、制御装置3による制御対象となる駆動装置1において、変速機構13に備えられる第一クラッチC1が「第二係合装置」とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、中間軸Mと出力軸Oとの間にこれらを選択的に駆動連結するように設けられた係合装置であれば、例えば回転電機12と変速機構13との間にトルクコンバータ等の流体伝動装置を備える場合において、当該トルクコンバータが有するロックアップクラッチが「第二係合装置」とされた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、例えば中間軸Mと出力軸Oとの間に設けられた専用の伝達クラッチが「第二係合装置」とされた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
[0145]
(9)上記の実施形態においては、内燃機関制御ユニット30が内燃機関制御部31を備えると共に、駆動装置制御ユニット40が特定発進制御部47等を備え、これらが協働して特定発進制御を実行するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、これらの各機能部が、単一の制御ユニットに備えられて特定発進制御を実行するように構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、例えば回転電機12の動作制御を行う回転電機制御ユニットを駆動装置制御ユニット40から分離して備え、内燃機関制御ユニット30、回転電機制御ユニット、及び駆動装置制御ユニット40が協働して特定発進制御を実行するように構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。いずれの場合においても、一又は二以上の制御ユニットにより、本発明における「制御装置」が構成される。また、上記の各実施形態で説明した機能部の割り当ては単なる一例であり、複数の機能部を組み合わせたり、1つの機能部をさらに区分けしたりすることも可能である。
[0146]
(10)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。

産業上の利用可能性

[0147]
 本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機に駆動連結される中間部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、入力部材と中間部材とを選択的に駆動連結する第一係合装置と、中間部材と出力部材とを選択的に駆動連結する第二係合装置と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に好適に利用することができる。

符号の説明

[0148]
1    車両用駆動装置
3    制御装置
6    車両
11   内燃機関
12   回転電機
13   変速機構
15   車輪
24   オイルポンプ
30   内燃機関制御ユニット
40   駆動装置制御ユニット
I    入力軸(入力部材)
M    中間軸(中間部材)
O    出力軸(出力部材)
CT   入力クラッチ(第一係合装置)
C1   第一クラッチ(第二係合装置、発進用係合装置)
Td   車両要求トルク(要求駆動力)
Tcr  クリープトルク
Tct  入力クラッチのトルク容量
ΔN1  第一差回転速度
ΔN2  第二差回転速度
ΔNt  目標差回転速度
D1   第一制御領域(差回転制御領域)
D2   第二制御領域
D3   第三制御領域
D4   第四制御領域

請求の範囲

[請求項1]
 内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機に駆動連結される中間部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材と前記中間部材とを選択的に駆動連結する第一係合装置と、前記中間部材と前記出力部材とを選択的に駆動連結する第二係合装置と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
 前記第一係合装置の両側の係合部材の回転速度の差を第一差回転速度とすると共に、前記第二係合装置の両側の係合部材の回転速度の差を第二差回転速度として、
 前記第一係合装置が第一差回転速度を有さない状態で前記回転電機が発電を行い、且つ、前記第二係合装置が駆動力を伝達しない状態から、前記回転電機が発電を行ったままで車両を発進させる特定発進制御で実行する制御の中に、
 前記第一係合装置を、第一差回転速度を有さずに駆動力を伝達する状態から第一差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態に移行させると共に、前記第二係合装置を、駆動力を伝達しない状態から第二差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態に移行させる差回転制御領域を有する制御装置。
[請求項2]
 前記差回転制御領域を第一制御領域とし、当該第一制御領域よりも後に、前記第二係合装置が第二差回転速度を有さない状態で、前記出力部材の回転速度の上昇に伴い、前記第一係合装置を、第一差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態から第一差回転速度を有さずに駆動力を伝達する状態に移行させる第二制御領域を有する請求項1に記載の制御装置。
[請求項3]
 前記出力部材の回転速度が上昇する状態で、前記中間部材の回転速度を所定値に維持して第二差回転速度を次第に減少させる第三制御領域を、前記第一制御領域と前記第二制御領域との間に更に有する請求項2に記載の制御装置。
[請求項4]
 前記中間部材に駆動連結され、作動状態で前記第一係合装置及び前記第二係合装置への供給油圧を発生させるオイルポンプを備え、
 前記第三制御領域において、前記中間部材の回転速度を、前記オイルポンプにより前記第一係合装置及び前記第二係合装置の双方に必要とされる供給油圧を確保可能な回転速度とするように前記回転電機を制御する請求項3に記載の制御装置。
[請求項5]
 前記出力部材の回転速度が上昇する状態で、当該出力部材の回転速度の上昇に応じて前記中間部材の回転速度を上昇させ第二差回転速度を所定の目標差回転速度に維持させる第四制御領域を、前記第一制御領域と前記第三制御領域との間に更に有する請求項3又は4に記載の制御装置。
[請求項6]
 前記差回転制御領域において、前記第二係合装置を、駆動力を伝達しない状態から第二差回転速度を有しつつ駆動力を伝達する状態を経て、更に第二差回転速度を有さずに駆動力を伝達する状態まで移行させる請求項1又は2に記載の制御装置。
[請求項7]
 第一差回転速度が所定の大きさとなるように前記第一係合装置への供給油圧を制御し、
 要求発電量に基づいて決定される目標回転速度に一致する回転速度とするように前記回転電機を制御し、
 前記出力部材に伝達されるトルクが車両を駆動するために必要となる要求駆動力に一致するように前記第二係合装置への供給油圧を制御し、
 前記要求発電量を発電するために前記回転電機に提供される発電トルクと前記要求駆動力との和に一致するトルクを前記内燃機関に出力させるための内燃機関制御指令を内燃機関制御部に出力する制御領域を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
[請求項8]
 前記特定発進制御中、第一差回転速度及び第二差回転速度を所望の形態で変化させるように前記第二係合装置への供給油圧を制御する請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
[請求項9]
 車両を走行させるための要求駆動力に応じた駆動トルクを前記車輪に伝達させるように前記内燃機関及び前記回転電機の動作制御を行うと共に、前記駆動トルクのうちの前記内燃機関の負担分を当該内燃機関が出力している状態で、前記入力部材の回転速度を所定回転速度に維持するように前記第一係合装置への供給油圧を制御する請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置。
[請求項10]
 車両を走行させるための要求駆動力に応じた駆動トルクを前記車輪に伝達させるように前記内燃機関及び前記回転電機の動作制御を行うと共に、前記第一係合装置の伝達トルク容量を、前記駆動トルクのうちの前記内燃機関の負担分相当値とするように前記第一係合装置への供給油圧を制御する請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置。
[請求項11]
 車両をクリープ走行させるためのクリープトルクを前記車輪に伝達させるように前記内燃機関及び前記回転電機の動作制御を行うと共に、前記第一係合装置の伝達トルク容量を、前記クリープトルクのうちの前記内燃機関の負担分相当値とするように前記第一係合装置への供給油圧を制御する請求項10に記載の制御装置。
[請求項12]
 係合状態で発進用変速段を形成する発進用係合装置を含む複数の係合装置を有する変速機構を、前記中間部材と前記出力部材との間に備えており、前記発進用係合装置が前記第二係合装置とされた前記車両用駆動装置を制御対象とする請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]