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1. WO2011125570 - 転写用ドナー基板、デバイスの製造方法および有機EL素子

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明 細 書

発明の名称 転写用ドナー基板、デバイスの製造方法および有機EL素子

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012  

課題を解決するための手段

0013  

発明の効果

0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097  

実施例

0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120  

産業上の利用可能性

0121  

符号の説明

0122  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

明 細 書

発明の名称 : 転写用ドナー基板、デバイスの製造方法および有機EL素子

技術分野

[0001]
 本発明は、有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜のパターニングに使用される転写用ドナー基板、および、かかる転写用ドナー基板を使用するデバイスの製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが両極に挟まれた有機発光層内で再結合するものである。コダック社のC.W.Tangらによって有機EL素子が高輝度に発光することが示されて以来、多くの研究機関で検討が行われてきた。
[0003]
 この発光素子は、薄型でかつ低駆動電圧下での高輝度発光と、発光層に種々の有機材料を用いることにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色をはじめとした多様な発光色を得ることが可能であることから、カラーディスプレイとしての実用化が進んでいる。例えば、図1に示すアクティブマトリクス型カラーディスプレイにおいては、画素を構成するR、G、Bの各副画素に対応させるように少なくとも発光層17R、17G、17Bを高精度にパターニングする技術が要求される。また、高性能有機EL素子を実現するためには多層構造が必要であり、典型的な膜厚が0.1μm以下である、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを順に積層する必要がある。
[0004]
 従来、薄膜の微細パターニングにはフォトリソグラフィー法、インクジェット法や印刷法などのウェットプロセス(塗布法)が用いられてきた。しかしながら、ウェットプロセスでは、先に形成した下地層の上にフォトレジストやインクなどを塗布した際に、極薄である下地層の形態変化や望ましくない混合などを完全に防止することが困難であり、使用できる材料が限定される。また、溶液から乾燥させることで形成した薄膜の画素内での膜厚均一性、および、基板内の画素間均一性を達成することが難しく、膜厚ムラに伴う電流集中や素子劣化が起きるために、ディスプレイとしての性能が低下するという問題があった。
[0005]
 ウェットプロセスを用いないドライプロセスによるパターニング方法としてマスク蒸着法が検討されている。実際に実用化されている小型有機ELディスプレイの発光層は専ら本方式でパターニングされている。しかしながら、蒸着マスクは金属板に精密な穴を開ける必要があるために、大型化と精度の両立が困難であり、また、大型化するほど基板と蒸着マスクとの密着性が損なわれる傾向にあるために、大型有機ELディスプレイへの適用が難しかった。
[0006]
 ドライプロセスで大型化を実現するために、あらかじめドナーフィルム上の有機EL材料をパターニングしておき、デバイス基板とドナーフィルム上の有機EL材料とを密着させた状態でドナーフィルム全体を加熱することで、有機EL材料をデバイス基板に転写させる方法が開示されている(特許文献1参照)。さらに、区画パターン(隔壁)内にパターニングされた有機EL材料をデバイス基板に接しない配置で対向させ、ホットプレートによりドナー基板全体を加熱することで有機EL材料を蒸発させ、デバイス基板に堆積させる蒸着転写法が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、上記手法ではドナー基板全体が加熱されて熱膨張するために、ドナー基板上にパターニングされた有機EL材料のデバイス基板に対する相対位置が変位し、しかも大型化するほど変位量が大きくなるために高精度パターニングが難しいという問題があった。さらに、近距離で対向させたデバイス基板が輻射により加熱されたり、区画パターンがある場合には、区画パターンからの脱ガスの影響などを受けたりするために、デバイス性能が悪化するという問題があった。
[0007]
 ドナー基板の熱膨張による変位を防ぐ方法として、ドナー基板上に光熱変換層を形成し、その上に有機EL材料を熱蒸着により全面成膜し、光熱変換層に高強度レーザーを部分照射することにより発生した熱を利用して、全面に形成された、または区画パターンを用いずにR、G、Bを塗り分けた有機EL材料の一部分をデバイス基板にパターン転写する選択転写方式が開発されている(特許文献3~4参照)。しかしながら、発生した熱は横方向にも拡散するので、レーザー照射範囲より広い領域の有機EL材料が転写され、その境界も明確ではない。これを防ぐためには、極めて短時間に高強度のレーザーを照射することが考えられる。しかしこの場合、有機EL材料が極めて短時間のうちに加熱されるため、最高到達温度を正確に制御することが難しい。そのため、有機EL材料が分解温度以上に達する確率が高くなり、結果としてデバイス性能が低下する問題があった。さらに、レーザーがRGB副画素ごとに選択的に照射される必要があるために、基板が大型化して画素の総数が増加するほど1枚の基板の処理時間が長くなるという問題もあった。
[0008]
 ドナー基板の熱膨張による変位を防ぐ別の方法として、ドナー基板に光熱変換層を形成せずに、ドナー基板上の有機EL材料をレーザーで直接加熱する直接加熱転写法が開示されている(特許文献5参照)。特許文献5では、さらにR、G、Bを区画パターンで塗り分けておくことによりパターニングの際の混色の可能性を小さくしている。しかしながら、有機EL材料の典型的な膜厚は25nmと非常に薄いために、レーザーが十分に吸収されずにデバイス基板まで到達し、デバイス基板上の下地層を加熱してしまう問題がある。さらに、有機EL材料を昇華温度以上に加熱して十分な転写を行うには高強度のレーザーが必要となるが、区画パターンにレーザーが照射されると区画パターンが劣化するので、劣化防止のためには有機EL材料のみにレーザーが照射されるように高精度位置合わせが必要であり、大型化が困難であった。
[0009]
 さらに、ドナー基板に光熱変換層を形成して、その上にR、G、Bの有機EL材料を塗り分けておき、光熱変換層にレーザーを照射して一括転写することで、ドナー基板の熱膨張による変位を防ぐ方法も開示されている(特許文献6参照)。しかしながら、ドナー基板上には区画パターンが形成されていないために、R、G、Bを溶液状態で塗布した際に隣の材料と混合したり、乾燥時の溶媒蒸気が隣の材料を再溶解させたりする問題があり、有機EL材料を高精度に塗り分けすることが困難であった。このため、ドナー基板上に区画パターンを設けて有機EL材料を高精度に塗りわけを可能にする方法も開示されている(特許文献7~8参照)。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 特開2002-260854号公報
特許文献2 : 特開2000-195665号公報
特許文献3 : 特許第3789991号公報
特許文献4 : 特開2005-149823号公報
特許文献5 : 特開2004-87143号公報
特許文献6 : 特開2008-235011号公報
特許文献7 : 特開2009-146715号公報
特許文献8 : WO2009/154156号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 上記のとおり、大型化と精度を両立させるためにドナー基板上に区画パターンを設けて有機EL材料を高精度に塗りわけ、これを転写することが可能である。しかし従来の方法で作製されたドナー基板を用いて発光材料を転写して得られる素子は、蒸着法により得られる素子と比べると性能が十分でないことがあった。本発明者らはこの問題点について検討を重ねた結果、発光材料をドナー基板上の区画パターン内に塗布する際に、区画パターン材料から不純物が溶け出し発光材料と混合することが、転写後の素子性能を劣化させる要因の1つであることを見出した。
[0012]
 そこで本発明はかかる問題を解決し、転写法を利用する場合にも高性能な有機EL素子を作製できるドナー基板を提供し、また不純物の少ない高性能な有機EL素子をはじめとするデバイスを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明は、基板上に形成された光熱変換層と、少なくとも一部が前記光熱変換層の上面に形成された区画パターンとを含み、前記区画パターン表面にバリア層が形成され、前記区画パターン内に転写層が形成されていることを特徴とする転写用ドナー基板である。

発明の効果

[0014]
 本発明は、有機EL材料をはじめとした薄膜に混入する不純物を大幅に低減し、大型化かつ高精度の微細パターニングを可能にし、素子の輝度向上と耐久性向上の著しい効果をもたらすものである。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 本発明のドナー基板を用いた転写により発光層がパターニングされた有機EL素子の一例を示す断面図。
[図2] 本発明のドナー基板を用いた転写による有機EL素子の発光層パターニング方法の一例を示す断面図。
[図3] 図2における光照射方法の一例を示す平面図。
[図4] 本発明のドナー基板を用いた転写を説明する断面図。
[図5] 本発明のドナー基板における撥液処理層の設計の一例を説明する断面図。
[図6] 本発明のドナー基板における撥液処理層の設計の別の一例を説明する平面図。
[図7] 光の照射方法の一例を示す斜視図。
[図8] 光の照射方法の一例を示す斜視図。
[図9] 光の照射方法の一例を示す斜視図。
[図10] 光の照射方法の一例を示す斜視図。
[図11] 本発明技術と従来技術における発光層のパターニング精度の差を説明する断面図。
[図12] 転写法と蒸着法における発光層のエッジ形状の違いを説明する断面図。
[図13] 本発明の有機EL素子の作製に適したドナー基板の構造の一例を説明する断面図。

発明を実施するための形態

[0016]
 図2、図3および図4は、本発明のドナー基板を用いた薄膜パターニング方法の一例を示す断面図および平面図である。なお、本明細書中で使用する多くの図は、カラーディスプレイにおける多数の画素を構成するRGB副画素の最小単位を抜き出して説明している。また、理解を助けるために、横方向(基板面内方向)に比較して縦方向(基板垂直方向)の倍率を拡大している。
[0017]
 図2において、ドナー基板30は、支持体31、光熱変換層33、区画パターン34、バリア層35、区画パターン内に存在する転写材料37(有機ELのRGB各発光材料の塗布膜)からなる。一例として、バリア層をドナー基板全面に形成した態様を(a)、バリア層を区画パターン上のみに形成した態様を(b)に示した。有機EL素子(デバイス基板)10は、支持体11、その上に形成されたTFT(取出電極込み)12と平坦化層13、絶縁層14、第一電極15、正孔輸送層16からなる。なお、これらは例示であるため、後述のように各基板の構成はこれらに限定されない。
[0018]
 このパターニング方法は、まず、ドナー基板30の区画パターン34と、デバイス基板10の絶縁層14との位置を合わせた状態で、両基板を対向するように配置する。次いでドナー基板30の支持体31側からレーザーを入射して光熱変換層33に吸収させ、そこで発生する熱により転写材料37R、37G、37Bを同時に加熱・蒸発させ、それらをデバイス基板10の正孔輸送層16上に堆積させることで、発光層17R、17G、17Bを一括して転写、形成するものである。転写材料37R、37G、37Bに挟まれる区画パターン34の全域と、転写材料37R、37Bの外側に位置する区画パターン34の一部の領域が転写材料37と同時に加熱されるようにレーザーを照射することが、図2および図3の態様における特徴である。
[0019]
 図3は、図2におけるレーザー照射の様子をドナー基板30の支持体31側から見た模式図である。全面に形成された光熱変換層33があるために、支持体31(ガラス板)側から区画パターン34や転写材料37R、37G、37Bは実際には見えないが、レーザーとの位置関係を説明するために点線にて図示した。レーザービームは矩形であり、転写材料37R、37G、37Bを跨ぐようにして照射され、かつ、転写材料37R、37G、37Bの並びに対して垂直方向にスキャンされる。なお、レーザービームは相対的にスキャンされればよく、レーザーを移動させても、ドナー基板30とデバイス基板20とのセットを移動させても、その両方でもよい。
[0020]
 図4は転写材料37をレーザーで転写した際の断面の模式図である。ドナー基板30の支持体31側から入射したレーザーは光熱変換層33を介して転写材料37を加熱し、デバイス基板側に転写させることができる。光熱変換層の熱は区画パターン34にも伝わるが、区画パターンのデバイス側に接するところまでは加熱されずデバイス側を熱劣化させることは生じない。
[0021]
 しかし、区画パターンと光熱変換層の界面では熱履歴により脱ガスや分解物が生成しやすい。そのため、繰り返しドナー基板を用いると、転写材料を溶解させた溶剤に不純物成分が溶出し、これが転写材料とともにデバイス基板に転写されるなどして有機EL素子などのデバイスの性能を劣化させることがわかった。不純物の溶出は区画パターンが有機、無機のいずれの材料である場合にも起こりうるが、有機材料である場合はこのような溶出が特に起こりやすい。
[0022]
 図2~図4に示す方法においては、区画パターン上にバリア層35が設けられているため、区画パターンからの不純物溶出(区画パターンに含まれる不純物の溶出や、区画パターンを構成する材料自体の溶出)を防止できる。また、転写材料と区画パターンが同時に加熱されるように光を当てた場合であっても、区画パターンからの脱ガスなどに起因するデバイス性能への悪影響を最小限に抑制できる。
[0023]
 また、区画パターンはフォトリソグラフィー法などにより高精度にパターニングすることができるために、異なる転写材料の転写パターンの隙間を最小にすることができる。これは、より開口率を高めて耐久性に優れた有機ELディスプレイを作製できるという効果につながる。
[0024]
 本発明におけるさらに発展した態様においては、図5および図6に示すように区画パターン上のバリア層35上に撥液処理層36が形成されている。図5(a)および図6(a)は区画パターンよりも広く撥液処理層を設計した場合であり、塗布後の溶剤が区画パターン内でとどまり区画パターン上には塗られないため転写材料を有効に使うことができる。図5(b)および図6(b)は区画パターンよりも狭く撥液処理層を設計した場合であり、区画パターン上のエッジ部にも転写材料がぬれ広がるため転写材料を多めに使用するが、区画パターン内のぬれの均一性を上げることができるため転写後の膜厚均一性が向上できる。これらのどちらの場合も状況により選択できる。撥液処理層で溶剤がはじかれるため、区画パターン内に塗布された溶剤がバリア層上にぬれ広がり隣接する区画に侵入する(混色する)ことを防ぐことができる。このことは、区画パターン同士の間隔を狭くした場合にも当てはまる。したがって、転写材料を各区画パターン内に正確に塗布することができ、特に従来では達成できなかった高精度・極狭のパターンにおいて、多色の塗りわけが可能となる。また区画パターンをデバイス側の絶縁層幅より狭く設計できるので、転写材料を従来よりも均一にデバイス基板に転写することができるという大きな利点も持っている。
[0025]
 以下では、本発明をさらに詳細に説明する。
[0026]
 (1)照射光
 照射光の光源としては、容易に高強度が得られ、照射光の形状制御に優れるレーザーを好ましい光源として例示できるが、赤外線ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュランプなどの光源を利用することもできる。レーザーでは、半導体レーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、アルゴンイオンレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザーなど公知のレーザーが利用できる。本発明における目的の1つは、転写材料へのダメージを低減することであるから、短時間に高強度の光が照射される間欠発振モード(パルス)レーザーより、連続発信モード(CW)レーザーの方が好ましい。
[0027]
 照射光の波長は、照射雰囲気とドナー基板の支持体における吸収が小さく、かつ、光熱変換層において効率よく吸収されれば特に限定されない。従って、可視光領域だけでなく紫外光から赤外光まで利用できる。ドナー基板の好適な支持体の材料を考慮すると、好ましい波長領域として、300nm~5μmを、更に好ましい波長領域として、380nm~2μmを例示することができる。
[0028]
 照射光の形状は図3で例示した矩形に限定されるものではない。線状、楕円形、正方形、多角形など転写条件に応じて最適な形状を選択できる。複数の光源から重ね合わせにより照射光を形成してもよいし、逆に、単一の光源から複数の照射光に分割することもできる。スキャン速度は特に限定されないが、0.01~2m/sの範囲が一般的に好ましく使用される。光の照射強度が比較的小さく、より低速でスキャンすることで転写材料へのダメージを低減する場合には、スキャン速度は0.6m/s以下、さらに0.3m/s以下であることが好ましい。
[0029]
 スキャンを同じ場所に繰り返して転写を行う分割転写の場合は、分割回数を増やすことで全体の低温下を図る場合には、1回のスキャン当たりの投入熱量を減らすために、スキャン速度は比較的高速の0.3m/s以上であることが好ましい。このとき分割数は2回から50回が好ましい。これは回数が少なすぎると転写時の分子の熱がデバイス側の正孔輸送層を劣化させるためであり、逆に回数が多すぎると生産性が低下するだけでなく、投入される熱量の合計が大きくなりデバイス側・ドナー側の有機分子を劣化させるからである。
[0030]
 光の照射の態様は、図2~図4に示すような、転写材料37R、37G、37Bに挟まれる区画パターン34の全域と、転写材料37R、37Bの外側に位置する区画パターン34の一部の領域が転写材料37と同時に加熱されるようなものに限られない。その他の態様としては、例えば、適当な幅の光(一例として、転写材料37の少なくとも一部と区画パターン34の少なくとも一部とが同時に加熱されるような幅の光)を照射し、これをスキャンする態様や、転写領域の一定割合を覆う光をステップ照射していく態様などが挙げられる。もちろん、これら以外の態様であってもよい。
[0031]
 具体例をいくつか示すと、照射エリアが大きい場合は図7(a)に示すように、ドナー基板30の転写領域38の全幅を覆うような光を照射することで、1回のスキャンで全転写材料を一括転写することもできる。この配置では、ドナー基板30に対する光照射の位置合わせを大幅に軽減できる。図7(b)に示すように、基板上に転写領域38が複数存在する場合には、それらを一括転写することも可能である。デルタ配列と呼ばれるように、RGBの各副画素が一直線に並んでいない場合でも、照射光を直線的にスキャンできるために、容易に転写を実施できる。
[0032]
 照射エリアが転写領域38の半分程度の場合は、例えば図8(a)に示すようにドナー基板30の転写領域38の半分程度の幅を覆うような光を照射し、図8(b)に示すように次のスキャンで残りの半分に光を照射し、2回のスキャンで全転写材料を転写することができる。さらに、図9に示すように、スキャン方向に段違いの位置関係にある2つの光を同時にスキャンすることで、上記2回のスキャンと同様に転写材料37を転写することもできる。光源の最大出力や光の均一性などの制約から転写領域38の全幅を覆う1つの光を得ることが難しい場合でも、このようにすることで、擬似的に1回のスキャンと同様に全転写材料を一括転写することができる。もちろん、図10に示すように、光の幅をさらに狭くして、数を増やすことでも同様の効果を得ることができる。
[0033]
 照射強度や転写材料の加熱温度の好ましい範囲は、照射光の均一性、照射時間(スキャン速度)、ドナー基板の支持体や光熱変換層の材質や厚さ、反射率、区画パターンの材質や形状、転写材料の材質や厚さなど様々な条件に影響される。本発明では、光熱変換層に吸収されるエネルギー密度が0.01~10J/cm
の範囲となり、転写材料が220~400℃の範囲に加熱される程度の照射条件を整えることが目安となる。
[0034]
 (2)ドナー基板
 ドナー基板の支持体は、光の吸収率が小さく、その上に光熱変換層や区画パターン、転写材料を安定に形成できる材料であれば特に限定されない。条件によっては樹脂フィルムを使用することが可能であり、樹脂材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリエポキシ、ポリプロピレン、ポリオレフィン、アラミド樹脂、シリコーン樹脂などを例示できる。
[0035]
 化学的・熱的安定性、寸法安定性、機械的強度、透明性の面で、好ましい支持体としてガラス板を挙げることができる。ソーダライムガラス、無アルカリガラス、含鉛ガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、低膨張ガラス、石英ガラスなどから条件に応じて選択することができる。本発明の転写プロセスを真空中で実施する場合には、支持体からのガス放出が少ないことが要求されるので、ガラス板は特に好ましい支持体である。
[0036]
 また、ガラスの表面を種種のカップリング剤によりコーティングしてもよく、これにより、光熱変換層との密着を向上させることができる。カップリング剤としてはSi系、Al系、Ti系、Zn系などのカップリング剤があり、いずれも用いることができる。光熱変換層の金属や酸化物との密着効果が大きいカップリング剤としてはアミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤などが好ましく用いられる。
[0037]
 光熱変換層が高温に加熱されても、支持体自体の温度上昇(熱膨張)を許容範囲内に収める必要があるので、支持体の熱容量は光熱変換層のそれより十分大きいことが好ましい。従って、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの10倍以上であることが好ましい。許容範囲は転写領域の大きさやパターニングの要求精度などに依存するために一概には示せないが、例えば、光熱変換層が室温から300℃上昇し、その熱拡散により支持体が加熱された場合の支持体自体の温度上昇を、光熱変換層の温度上昇分の1/100である3℃以下に抑制したい場合には、光熱変換層と支持体の体積熱容量が同程度の場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの100倍以上であることが好ましい。また、支持体自体の温度上昇を、光熱変換層の温度上昇分の1/300である1℃以下に抑制したい場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの300倍以上であることが更に好ましい。光熱変換層の体積熱容量が支持体の2倍程度である典型的な場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの200倍以上であることが好ましく、600倍以上であることが更に好ましい。このようにすることで、大型化しても熱膨張による寸法変位量が少なく、高精度パターニングが可能になる。
[0038]
 光熱変換層は、効率よく光を吸収して熱を発生し、発生した熱に対して安定である材料・構成であれば特に限定されない。例として、カーボンブラック、黒鉛、チタンブラック、有機顔料または金属粒子などを樹脂に分散させた薄膜、もしくは金属薄膜などの無機薄膜を利用することができる。本発明では、光熱変換層が300℃程度に加熱されることがあるので、光熱変換層は耐熱性に優れた無機薄膜からなることが好ましく、光吸収や成膜性の面で、金属薄膜からなることが特に好ましい。金属材料としては、タングステン、タンタル、ニオブ、マンガン、モリブデン、チタン、クロム、金、銀、銅、白金、鉄、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、ジルコニウム、シリコン、カーボンなどの単体や合金の薄膜、それらの積層薄膜を使用できる。
[0039]
 光熱変換層の支持体側には必要に応じて反射防止層を形成することができる。さらに、支持体の光入射側の表面にも反射防止層を形成してもよい。これらの反射防止層は屈折率差を利用した光学干渉薄膜が好適に使用され、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの単体や混合薄膜、それらの積層薄膜を使用できる。
[0040]
 光熱変換層は転写材料の蒸発に十分な熱を与える必要があるので、光熱変換層の熱容量は転写材料のそれより大きいことが好ましい。従って、光熱変換層の厚さは転写材料の厚さより厚いことが好ましく、転写材料の厚さの5倍以上であることが更に好ましい。数値としては0.02~2μmが好ましく、0.1~1μmが更に好ましい。光熱変換層は照射光の90%以上、更に95%以上を吸収することが好ましいので、これらの条件を満たすように光熱変換層の厚さを設計することが好ましい。
[0041]
 光熱変換層に入射する光が入射側に反射されて、光熱変換層での光の吸収効率が低下することを抑制するために、支持体と光熱変換層の間に反射防止層を設けることもできる。反射防止層は、透明性が高く、屈折率差が大きく異なる層の積層体であることが好ましい。これにより屈折率の差が大きい層の界面で多重反射が形成されるため、反射防止層の厚さを入射波長にあわせて調整しておくことにより、光学干渉を利用して入射波長の反射を大きく低減することができる。この反射防止層にも光熱変換層からの熱が伝わるので、反射防止層の材質は熱応力が発生しやすく、支持体との密着力が高いものが良い。その例として、金属酸化物、または金属硫化物などが挙げられる。その一例としては、Al 、Bi 、CaO、CdO、CdS、CeO 、Fe 、Fe 、La 、Nd 、Sb ,Sb 、SiO、Si O、SnO 、TiO 、ThO 、WO 、ZnS、ZrO などがあげられるがこれらに限られない。反射防止層を形成する場合は、光熱変換層にて発生した熱を効率よく転写材料に伝えることの妨げにならないように、要求される機能を満たす範囲内で薄くなるように設計することが好ましい。
[0042]
 光熱変換層は転写材料が存在する部分に形成されていれば、その平面形状は特に限定されない。上記において例示したようにドナー基板全面に形成されていてもよいし、例えば、区画パターンが、支持体との密着性は良好であるが光熱変換層との密着性に乏しい場合には、区画パターンの下部で光熱変換層が不連続となり、区画パターンと支持体の少なくとも一部が接触するようにパターニングされていてもよい。光熱変換層がパターニングされる場合には、区画パターンと同種の形状となる必要はなく、例えば、区画パターンが格子状で、光熱変換層はストライプ状であってもよい。光熱変換層は光吸収率が大きいことから、光熱変換層を利用して転写領域内外の適切な位置にドナー基板の位置マークを形成することが好ましい。
[0043]
 光熱変換層や反射防止層の形成方法としては、スピンコートやスリットコート、真空蒸着、EB蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど、材料に応じて公知技術を利用できる。パターニングする場合には公知のフォトリソグラフィー法やレーザーアブレーションなどを利用できる。
[0044]
 区画パターンは、転写材料の境界を規定し、光熱変換層で発生した熱に対して安定である材料・構成であれば特に限定されない。無機物では酸化ケイ素や窒化ケイ素をはじめとする酸化物・窒化物、ガラス、セラミックスなどを、有機物ではポリビニル、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリスチレン、アクリル、ノボラック、シリコーンなどの樹脂を例として挙げることができる。プラズマテレビの隔壁に用いられるガラスペースト材料を本発明の区画パターン形成に用いることもできる。区画パターンの熱導電性は特に限定されないが、区画パターンを介して対向するデバイス基板に熱が拡散するのを防ぐ観点から、有機物のように熱伝導率が小さい方が好ましい。さらに、パターニング特性と耐熱性の面でも優れた材料としては、ポリイミドとポリベンゾオキサゾールを好ましい材料として例示できる。
[0045]
 なお、検討を重ねるにしたがって、これらの区画パターン構成材料、特に樹脂成分から溶出する不純物が、転写法により作製された素子の性能を低下させている大きな原因の1つであることがわかった。この不純物は、例えば感光性材料に含まれる感光剤や未反応の低分子有機成分、水分、イオン性の元素などが考えられるが、特に遊離したイオン性の元素が問題になると考えられる。このため本発明では区画パターンからの不純物の溶出を抑える手段を提供している。
[0046]
 区画パターンの成膜方法は特に限定されず、無機物を用いる場合には真空蒸着、EB蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、レーザーアブレーションなどの公知技術を、有機物を用いる場合には、スピンコート、スリットコート、ディップコートなどの公知技術を利用できる。区画パターンのパターニング方法は特に限定されず、例えば公知のフォトリソグラフィー法が利用できる。フォトレジストを使用したエッチング(あるいはリフトオフ)法によって区画パターンをパターニングしてもよいし、例示した上記樹脂材料に感光性を付加させた材料を用いて、区画パターンを直接露光、現像することでパターニングすることもできる。さらに、全面形成した区画パターン層に型を押しつけるスタンプ法やインプリント法、樹脂材料を直接パターニング形成するインクジェット法やノズルジェット法、各種印刷法などを利用することもできる。
[0047]
 区画パターンの形状としては、図3にて既に例示した格子状構造に限定されるのではなく、例えば、ドナー基板30上に3種類の転写材料37R、37G、37Bが形成されている場合には、区画パターン34の平面形状がy方向に伸びるストライプであってもよい。
[0048]
 区画パターンの厚さについては特に限定されず、転写材料はデバイス基板の被転写面に直接接しない方が好ましく、また、ドナー基板の転写材料とデバイス基板の被転写面との間隙は、1~100μm、さらに2~20μmの範囲に保つことが好ましいので、区画パターンの厚さは転写材料の厚さより厚く、また、1~100μm、さらに2~20μmの厚さであることが好ましい。また、区画パターン内に転写材料を塗布する際に溶剤が区画パターンからあふれないように塗布する必要があるがこのためにはさらに厚いことが好ましく4μm以上が好ましい。このような厚さの区画パターンをデバイス基板に対向させることで、ドナー基板の転写材料とデバイス基板の被転写面との間隙を一定値に保つことが容易になり、また、蒸発した転写材料が他の区画へ侵入する可能性を低減できる。
[0049]
 区画パターンの断面形状は、蒸発した転写材料がデバイス基板に均一に堆積することを容易にするために、順テーパー形状であることが好ましい。図2で例示したように、デバイス基板10の上に絶縁層14のようなパターンが存在する場合には区画パターン34の幅よりも絶縁層14の幅の方が広いことが好ましい。また、位置合わせの際には、区画パターン34の幅が絶縁層14の幅に収まるように配置することが好ましい。この場合には、区画パターン34が薄くても、絶縁層14を厚くすることで、ドナー基板30とデバイス基板10とを所望の間隙に保持することができる。区画パターンの典型的な幅は5~50μm、ピッチは25~300μmであるが、用途に応じて最適な値に設計すればよく、特に限定はされない。
[0050]
 区画パターン上にはバリア層が設けられる。バリア層は、前述の通り区画パターンから転写材料を含む溶液への不純物等の溶出を防ぐためのものである。また、転写材料を含む溶液の溶媒が区画パターンへ侵入し、ドナー基板を汚染したり、侵入した溶媒が隣の区画へ混入したりすることを防ぐ役割も果たす。
[0051]
 バリア層を形成する材料の一例として、金属、金属酸化物、金属窒化物、珪素酸化物、珪素窒化物などが挙げられる。ドナー基板は繰り返し洗浄され再利用されることが多いため、膜の剥離が起きないような耐久性が求められることから、光熱変換層および区画パターンとの密着性が高い材料を選ぶことが好ましい。上記の中でも金属、その一例としてクロム、ニッケル、亜鉛、チタン、バナジウム、タンタル、マンガンなどが密着性の上で好ましい。更に光熱変換層と同種の金属であれば光熱変換層との密着性が向上するのでより好ましい。また、バリア層として金属が好ましい点については他にも以下の理由が挙げられる。金属は密度が高く、被覆性が高いことから、区画パターンからの低分子成分の溶出を大きく抑えることができる。また、塑性変形に対して伸びることができるため、熱応力に対してクラックが発生しにくく、不純物溶出の点で大きな利点がある。
[0052]
 また、バリア層を複数層設けることも可能で、この場合は各層ごとに上記の材料を自由に組み合わせて用いることができる。中でも、区画パターンや光熱変換層と接する部分に密着層を設け、最表面に耐候性の良好な材料を設けることがさらに好ましい。密着層にはクロム、ニッケル、亜鉛、チタン、バナジウム、タンタル、マンガンのいずれかを含有することが好ましく、またその表面を少し酸化または窒化させてもかまわない。最表面層には化学的に安定な金・銀・白金・パラジウム・ロジウム・イリジウム・ルテニウム・オスミウムなどの貴金属類、金属酸化物、珪素酸化物、珪素窒化物や、耐酸性に優れた金属の層が形成されていることが望ましい。耐酸性に優れた金属としてはバナジウム、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコン、ハフニウム・タングステンなどが例として挙げられる。最表面に珪素酸化物を用いると材料そのものは高いバリア性を持つが、珪素酸化物自体が多孔質になりやすく、その場合は表面積が増してしまい逆に吸湿しやすくなる。これに付随して洗浄の際には塩素など、撥液処理の際にはフッ素などのイオン性不純物の表面残留量が増加し、それが転写された素子の性能が低下する場合が発生する。このため金属、特に貴金属のような最表面層を設ける方が平滑な表面状態を形成しやすく望ましい。
[0053]
 バリア層の作製方法は特に限定されないが、一般的にはスパッタ法、蒸着法、CVD法などが考えられる。厚みも特に限定されないが耐久性の観点から0.05μm以上が好ましい。区画パターン内(セル内)にもバリア層を形成する図2(a)の場合は、光熱変換層からバリア層を介して転写材料へ効率的に熱伝導を行う観点から、バリア層の厚さは0.7μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。区画パターン上のみにバリア層を形成する図2(b)の場合はバリア層をさらに厚くすることができ、耐久性を向上させることができる。また、区画パターン上のみにバリア層を形成する場合の作製方法は特に限定されないが、その一例として区画パターン上のみ開口させたマスクを用いて真空蒸着法やスパッタ法で区画パターン上のみにバリア層を形成する方法がある。また、区画パターン全面にバリア層を形成し、その後に区画パターン以外の部分が露出するようにフォトリソグラフィー法でレジスト形成し、開口部をエッチングして区画パターン上のみにバリア層を形成することもできる。なお、バリア層は少なくとも区画パターンを覆っていればよいので、区画パターン内にもバリア層を形成する場合は、その一部のみに形成してもよい。
[0054]
 区画パターン上のバリア層の表面には、転写材料を溶解させた溶液を撥液させることにより区画パターン内に留めるための撥液処理層が設けられることが好ましい。撥液処理層は転写材料を溶解させるために用いられている溶媒に対して接触角が大きいことが好ましく、40°以上が好ましく、60°以上がより好ましい。撥液処理層は薄いほどそこから溶出するおそれのある不純物の絶対量が少ないので好ましいが、薄すぎると撥液処理の効果が損なわれるおそれがある。よって撥液処理層を設ける場合の好ましい厚さは0.5nm以上100nm以下である。後述する単分子膜の場合は1nm以上5nm以下が好ましい。なお、撥液処理層は必ずしも連続膜である必要はなく、バリア層上で溶液を弾き、塗りの区画分けができる機能があればよい。
[0055]
 撥液処理層を設けるための具体的な手法としては、区画パターン上にさまざまな低表面エネルギーの有機膜、特にフッ素を含む有機材料の層を作製して区画パターン上面に撥液機能をもたせることが望ましい。その処理層作製方法の一例として区画パターン上のバリア層の表面に、(1)シリコーン樹脂、(2)フッ化ビニル樹脂、骨格にフッ素を含むアクリル樹脂やポリイミド樹脂などのフッ素含有高分子材料、または(3)フッ素を含むカップリング剤などの層を形成することがあげられる。特にフッ素を含むシランカップリング剤はバリア層上に単分子膜を形成し、高分子材料と異なり内部に不純物を吸蔵しない。このため転写材料を塗布した際に溶媒に溶け出す不純物が他の有機高分子膜やシリコーン膜に比べ圧倒的に減少するので特に好ましい。また、高分子材料の撥液処理層では、バリア層と強固な密着性を持たないことにより、ドナー基板を繰り返し使用すると撥液処理層が剥離することがある。こうして高分子材料そのものに含まれる不純物が熱や溶剤の浸透により徐々に溶出してしまい、転写材料に混入し有機EL素子の性能を劣化させてしまう場合がある。これに対しフッ素を含むシランカップリング剤の場合は、撥液機能を持ちバリア層の材料表面に化学的に結合する膜が強固にバリア層を被覆するため、溶媒の浸透が発生せず、不純物溶出が非常に抑えられる。
[0056]
 フッ素を含むカップリング剤は化学構造式で示すと、次の式で表されるような化合物が代表的な構造としてあげられる。特に、直鎖状のパーフルオロアルキル基をもつカップリング剤がバリア層との密着力が高くなり、耐久性が向上するので好ましい。
(1)CF CH CH Si(OCH
(2)CF CH SiCl
(3)CF (CF CH CH SiCl
(4)CF (CF CH CH Si(OCH
(5)CF (CF CH CH SiCl
(6)CF (CF CH CH Si(OCH
(7)CF (CF CH CH Si(CH )Cl
(8)CF (CF CH CH Si(CH )(OCH
(9)(CH SiOSO CF
(10)CF CON(CH )SiCH
(11)CF CH CH Si(OCH
(12)CF CH OSi(OCH
(13)CF COO(CH 15Si(OCH3)
(14)CF (CF 3~15CH CH Si(OCH
(15)CF (CF CH CH Si(OCH
(16)CF (CF CH CH Si(OCH
(17)CF (CF CH CH Si(OCH  
(18)CF (CF 11CH CH Si(OCH  
(19)CF (CF 11CH CH Si(OCH  
 撥液処理層の区画パターン上への作製方法は特に限定されないが、感光性レジストをバリア層上の全面に塗布し、区画パターン上のみ開口させて開口部を処理する方法が挙げられる。またフィルムやガラスに撥液材料を塗布し、撥液未処理のバリア層つきドナー基板に対向させて貼り合わせ、フィルムまたはガラス上の撥液材料をドナー基板の区画パターン上に移しとることもできる。また、溶剤を用いてインクジェット法やノズル塗布法を用いて区画パターンの上部のみに塗布するなどさまざまな方法が挙げられる。
[0057]
 (3)転写材料
 転写材料は、有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜を形成する材料である。転写材料は、有機材料、金属を含む無機材料いずれでもよく、加熱された際に、蒸発、昇華、あるいはアブレーション昇華するか、あるいは、接着性変化や体積変化を利用して、ドナー基板からデバイス基板へと転写されるものであればよい。また、転写材料が薄膜形成材料の前駆体であり、転写前あるいは転写中に熱や光によって薄膜形成材料に変換されて転写膜が形成されてもよい。
[0058]
 転写材料の厚さは、それらの機能や転写回数により異なる。例えば、フッ化リチウムなどのドナー材料(電子注入材料)を転写する場合には、その厚さは1nmで十分であるし、電極材料の場合には、その厚さは100nm以上になることもある。本発明の好適なパターニング薄膜である発光層の場合は、転写材料の厚さは10~100nmが、さらに20~50nmであることが好ましい。
[0059]
 転写材料の形成方法は特に限定されず、真空蒸着やスパッタリングなどのドライプロセスを利用することもできるが、大型化に対応が容易な方法として、少なくとも転写材料と溶媒からなる溶液を区画パターン内に塗布し、前記溶媒を乾燥させた後に転写することが好ましい。塗布法としては、インクジェット、ノズル塗布、電界重合や電着、オフセットやフレキソ、平版、凸版、グラビア、スクリーンなどの各種印刷などを例示できる。特に、本発明では各区画パターン内に定量の転写材料を正確に形成することが重要であり、この観点から、インクジェットを特に好ましい方法として例示できる。
[0060]
 区画パターンがないと、塗液から形成されるRGB有機EL材料層は互いに接することになり、その境界は一様ではなく、少なからず混合層が形成される。これを防ぐために、互いに接しないように隙間を空けて形成した場合には、境界領域の膜厚を中央と同一にすることが困難である。いずれの場合も、この境界領域はデバイスの性能低下を招くために転写することができないので、ドナー基板上の有機EL材料パターンよりも幅の狭い領域を選択的に転写する必要がある。従って、実際に使用可能な有機EL材料の幅が狭くなり、有機ELディスプレイを作製した際には、開口率の小さな(非発光領域の面積が大きな)画素となってしまう。また、境界領域を除いて転写しなければならない都合上、一括転写ができないので、R、G、Bを順次にレーザー照射して、それぞれ独立に転写する必要があり、高強度レーザー照射の高精度位置合わせが必要となる。このような問題を解決する観点から、区画パターンと塗液から形成された転写材料を有するドナー基板を用いて、前記の方法で一括転写する方法を、本発明の特に好ましい態様として例示できる。
[0061]
 転写材料と溶媒とからなる溶液を塗布法に適用する場合には、一般的には界面活性剤や分散剤などを添加することで溶液の粘度や表面張力、分散性などを調整してインク化することが多い。しかしながら、本発明では、それらの添加物が転写材料に残留物として存在すると、転写時にも転写膜内に取り込まれて、不純物としてデバイス性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。従って、これらの不純物の添加または意図せぬ混入を最小にすることが好ましく、乾燥後の転写材料の純度が95%以上、さらに98%以上となるように溶液を調製することが好ましい。インク中の溶剤以外の成分に占める転写材料の割合を95重量%以上とすることで、このような調整が可能である。
[0062]
 溶媒としては、水、アルコール、炭化水素、芳香族化合物、複素環化合物、エステル、エーテル、ケトンなど公知の材料を使用することができる。本発明において好適に使用されるインクジェット法では、100℃以上、さらに150℃以上の比較的高沸点の溶媒が使用されること、さらに、有機EL材料の溶解性に優れていることから、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、γ-ブチルラクトン(γBL)、安息香酸エチル、テトラヒドロナフタレン(THN)、キシレン、クメンなどを好適な溶媒として例示できる。
[0063]
 転写材料が溶解性と転写耐性、転写後のデバイス性能を全て満たす場合には、転写材料自体(デバイス構成材料)を溶媒に溶解させることが好ましい。転写材料が溶解性に乏しい場合には、転写材料に、アルキル基などの溶媒に対する可溶性基を導入することで、可溶性を改良することができる。このような材料を本明細書では転写材料(デバイス構成材料)の前駆体という。デバイス性能面で優れる転写材料に可溶性基を導入した場合には、性能が低下することがある。その場合には、例えば転写時の熱において、この可溶性基を脱離させて原型材料をデバイス基板に堆積させることもできる。
[0064]
 可溶性基を導入した転写材料を転写する際に、ガスの発生や転写膜への脱離物の混入を防止するためには、転写材料が塗布時に溶媒に対する可溶性基をもち、塗布後に熱または光によって可溶性基を変換または脱離させた後に、転写材料を転写することが好ましい。例えば、ベンゼン環やアントラセン環を有する材料を例に挙げると、式(1)~(2)に示すような可溶性基をもつ材料に光を照射して原型材料に変換することができる。また、式(3)~(6)に示すように、可溶性基としてエチレン基やジケト基などの分子内架橋構造を導入し、そこからエチレンや一酸化炭素を脱離させるプロセスによって原型材料に復帰させることもできる。可溶性基の変換または脱離は乾燥前の溶液状態でも、乾燥後の固体状態でもよいが、プロセス安定性を考慮すると、乾燥後の固体状態で実施することが好ましい。転写材料の原型分子は非極性的であることが多いために、固体状態にて可溶性基を脱離する際に脱離物を転写材料内に残留させないためには、脱離物の分子量は小さく極性的(非極性的な原型分子に対して反発的)であることが好ましい。また、転写材料内に吸着されている酸素や水を脱離物と一緒に除去するためには、脱離物がこれらの分子と反応しやすいことが好ましい。これらの観点からは一酸化炭素を脱離するプロセスで可溶化基を変換または脱離することが特に好ましい。本手法はナフタセン、ピレン、ペリレンなどの縮合多環炭化水素化合物の他、縮合多環複素化合物にも適用できる。もちろん、これらは置換されていても無置換であっても良い。
[0065]
[化1]


[0066]
 (4)デバイス基板
 デバイス基板の支持体は特に限定されず、ドナー基板で例示した材料を用いることができる。両者を対向させて転写材料を転写させる際に、温度変化による熱膨張の違いによりパターニング精度が悪化するのを防ぐためには、デバイス基板とドナー基板の支持体の熱膨張率の差は10ppm/℃以下であることが好ましく、またこれらの基板が同一材料からなることが更に好ましい。ドナー基板の特に好ましい支持体として例示したガラス板は、デバイス基板の特に好ましい支持体としても例示できる。なお、両者の厚さは同じでも異なっていてもよい。
[0067]
 デバイス基板は転写時には支持体のみから構成されていてもよいが、デバイスの構成に必要な構造物をあらかじめ支持体上に形成しておくほうが一般的である。例えば、図1に示した有機EL素子では、絶縁層14や正孔輸送層16までを従来技術によって形成しておき、それをデバイス基板として使用することができる。
[0068]
 上記絶縁層のような構造物は必須ではないが、デバイス基板とドナー基板とを対向させる際に、ドナー基板の区画パターンがデバイス基板に形成済みの下地層に接触し、傷つけることを防止する観点から、デバイス基板にあらかじめ形成されているのが好ましい。絶縁層の形成には、ドナー基板の区画パターンとして例示した材料や成膜方法、パターニング方法を利用することができる。絶縁層の形状や厚さ、幅、ピッチについても、ドナー基板の区画パターンで例示した形状や数値を例示することができる。
[0069]
 (5)転写プロセス
 ドナー基板とデバイス基板とを真空中で対向させ、転写空間をそのまま真空に保持した状態で大気中に取り出し、転写を実施することができる。例えば、ドナー基板の区画パターンおよび/またはデバイス基板の絶縁層を利用して、これらに囲まれた領域を真空に保持することができる。この場合には、ドナー基板および/またはデバイス基板の周辺部に真空シール機能を設けてもよい。デバイス基板の下地層、例えば正孔輸送層が真空プロセスで形成され、発光層を本発明によってパターニングし、電子輸送層も真空プロセスで形成する場合は、ドナー基板とデバイス基板とを真空中で対向させ、真空中で転写を実行することが好ましい。この場合に、ドナー基板とデバイス基板とを真空中で高精度に位置合わせし、対向状態を維持する方法には、例えば、液晶ディスプレイの製造プロセスにおいて使用されている、液晶材料の真空滴下・貼り合わせ工程などの公知技術を利用することができる。また、転写雰囲気によらず、転写時にドナー基板を放熱あるいは冷却することもできるし、ドナー基板を再利用する場合には、ドナー基板をエンドレスベルトとして利用することも可能である。金属などの良導体で形成した光熱変換層を利用することで、ドナー基板を静電方式により容易に保持することができる。
[0070]
 本発明においては蒸着モードの転写が好ましいために、1回の転写において単層の転写膜をパターニングすることが好ましい。しかしながら、剥離モードやアブレーションモードを利用することで、例えば、ドナー基板上に電子輸送層/発光層の積層構造を形成しておき、その積層状態を維持した状態でデバイス基板に転写することで、発光層/電子輸送層の転写膜を1回でパターニングすることもできる。
[0071]
 転写雰囲気は大気圧でも減圧下でもよい。例えば、反応性転写の場合には、酸素などの活性ガスの存在下で転写を実施することもできる。本発明では転写材料の転写ダメージの低減が課題の1つであるので、窒素ガスなどの不活性ガス中、あるいは真空下であることが好ましい。圧力を適度に制御することで、転写時に膜厚ムラの均一化を促進することが可能である。転写材料へのダメージ低減や転写膜への不純物混入の低減、蒸発温度の低温化の観点では、真空下であることが特に好ましい。
[0072]
 本発明のドナー基板は、区画パターンと発光層がバリア層によって隔てられているため、基板表面の洗浄性が向上している。このことによりドナー基板表面のイオン性不純物の洗浄が容易になるため、転写層を塗布した際の不純物の混入を大きく減らすことができる。そのため、転写膜内の不純物も低減できる。特に不純物としてのフッ素、塩素などのハロゲンは素子の性能を大きく低下させることがわかっており、本発明のドナー基板を用いた転写方法によって、素子への不純物混入を抑制し素子の性能を大きく向上できる。
[0073]
 塗布法により形成した薄膜を有機EL素子の機能層として直接利用する従来法の問題の1つは膜厚ムラであった。本発明においても、塗布法によって転写材料を形成した時点では同等の膜厚ムラが発生しうるが、本発明における好ましい転写方式である蒸着モードでは、転写時に転写材料が分子(原子)レベルにほぐれた状態で蒸発した後に、デバイス基板に堆積するために、転写膜の膜厚ムラは軽減される。従って、例えば、塗布時には転写材料が顔料のように分子集合体からなる粒子であり、たとえ転写材料がドナー基板上において連続膜ではなくても、それを転写時に分子レベルにほぐして蒸発させ、堆積させることで、デバイス基板上においては膜厚均一性にすぐれた転写膜を得ることができる。
[0074]
 次に、本発明のパターニング方法を用いてデバイスを製造する方法について説明する。本発明において、デバイスとは有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどをいう。有機TFTでは有機半導体層や絶縁層、ソース、ドレイン、ゲートの各種電極などを、有機太陽電池では電極などを、センサーではセンシング層や電極などを本発明によりパターニングすることができる。以下では、有機EL素子を例に挙げてその製造方法について説明する。
[0075]
 図1は、有機EL素子10(ディスプレイ)の典型的な構造の例を示す断面図である。支持体11上にTFT12や平坦化層13などで構成されるアクティブマトリクス回路が構成されている。素子部分は、その上に形成された第一電極15/正孔輸送層16/発光層17/電子輸送層18/第二電極19である。第一電極の端部には、電極端における短絡発生を防止し、発光領域を規定する絶縁層14が形成される。素子構成はこの例に限定されるものではなく、例えば、第一電極と第二電極との間に正孔輸送機能と電子輸送機能とを合わせもつ発光層が一層だけ形成されていてもよく、正孔輸送層は正孔注入層と正孔輸送層との、電子輸送層は電子輸送層と電子注入層との複数層の積層構造であってもよく、発光層が電子輸送機能をもつ場合には電子輸送層が省略されてもよい。また、第一電極/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/第二電極の順に積層されていてもよい。また、これらの層はいずれも単層であっても複数層であってもよい。なお、図示されていないが、第二電極の形成後に、公知技術あるいは本発明のパターニング方法を利用して、保護層の形成やカラーフィルターの形成、封止などが行われてもよい。
[0076]
 カラーディスプレイでは少なくとも発光層がパターニングされる必要があり、発光層は本発明において好適にパターニングされる薄膜である。絶縁層や第一電極、TFTなどは公知のフォトリソグラフィー法によりパターニングされることが多いが、本発明のドナー基板を用いた方法によりパターニングしてもよい。また、正孔輸送層や電子輸送層、第二電極などの少なくとも一層をパターニングする必要がある場合には、本発明のドナー基板を用いた方法によりパターニングしてもよい。また、発光層のうちR、Gのみを本発明によりパターニングして、その上にBの発光層とR、Gの電子輸送層を兼ねる層を全面形成することもできる。
[0077]
 図1に示した有機EL素子の作製例としては、第一電極15まではフォトリソグラフィー法を、絶縁層14は感光性ポリイミド前駆体材料を利用した公知技術によりパターニングし、その後、正孔輸送層16を真空蒸着法を利用した公知技術によって全面形成する。この正孔輸送層16を下地層として、その上に、図2に示した本発明のドナー基板を用いた方法により、発光層17R、17G、17Bをパターニングする。その上に、電子輸送層18、第二電極19を真空蒸着法などを利用した公知技術によって全面形成すれば、有機EL素子を完成することができる。
[0078]
 発光層は単層でも複数層でもよく、各層の発光材料は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。発光効率、色純度、耐久性の観点から、発光層はホスト材料とドーパント材料との混合物の単層構造であることが好ましい。従って、発光層を成膜する転写材料はホスト材料とドーパント材料との混合物であることが好ましい。
[0079]
 区画パターン内に転写材料を配置する際に、後述の塗布法を利用する場合には、ホスト材料とドーパント材料との混合溶液を塗布、乾燥させて転写材料を形成することができる。ホスト材料とドーパント材料との溶液を別に塗布してもよい。転写材料を形成した段階でホスト材料とドーパント材料とが均一に混合されていなくても、転写時に両者が均一に混合されればよい。また、転写時にホスト材料とドーパント材料との蒸発温度の違いを利用して、発光層中のドーパント材料の濃度を膜厚方向に変化させることもできる。
[0080]
 発光材料としては、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム(Alq )などのキノリノール錯体やベンゾチアゾリルフェノール亜鉛錯体などの各種金属錯体、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、クリセン誘導体、ピロメテン誘導体、リン光材料と呼ばれるイリジウム錯体系材料などの低分子材料や、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体などの高分子材料を例示することができる。特に、発光性能に優れ、本発明のパターニング方法に好適な材料としては、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ピロメテン誘導体、各種リン光材料を例示できる。
[0081]
 正孔輸送層は単層でも複数層でもよく、各層は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。正孔注入層と呼ばれる層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送性(低駆動電圧)や耐久性の観点から、正孔輸送層には正孔輸送性を助長するアクセプタ材料が混合されていてもよい。従って、正孔輸送層を成膜する転写材料は単一材料からなっても複数材料の混合物からなってもよい。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。
[0082]
 正孔輸送材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-1,1’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(NPD)やN,N’-ビフェニル-N,N’-ビフェニル-1,1’-ジフェニル-4,4’-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-(N-フェニルカルバゾリル)-1,1’-ジフェニル-4,4’-ジアミンなどに代表される芳香族アミン類、N-イソプロピルカルバゾール、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、オキサジアゾール誘導体やフタロシアニン誘導体に代表される複素環化合物などの低分子材料や、これら低分子化合物を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの高分子材料を例示できる。アクセプタ材料としては、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ヘキサアザトリフェニレン(HAT)やそのシアノ基誘導体(HAT-CN6)などの低分子材料を例示することができる。また、第一電極表面に薄く形成される酸化モリブデンや酸化ケイ素などの金属酸化物も正孔輸送材料やアクセプタ材料として例示できる。
[0083]
 電子輸送層は単層でも複数層でもよく、各層は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。正孔阻止層や電子注入層と呼ばれる層も電子輸送層に含まれる。電子輸送性(低駆動電圧)や耐久性の観点から、電子輸送層には電子輸送性を助長するドナー材料が混合されていてもよい。電子注入層と呼ばれる層は、このドナー材料として論じられることも多い。電子輸送層を成膜する転写材料は単一材料からなっても複数材料の混合物からなってもよい。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。
[0084]
 電子輸送材料としては、Alq や8-キノリノラートリチウム(Liq)などのキノリノール錯体、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物などの低分子材料や、これら低分子化合物を側鎖に有する高分子材料を例示できる。
[0085]
 ドナー材料としては、リチウムやセシウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属、それらのキノリノール錯体などの各種金属錯体、フッ化リチウムや酸化セシウムなどのそれらの酸化物やフッ化物を例示することができる。電子輸送材料やドナー材料は各RGB発光層との組み合わせによる性能変化が起こりやすい材料の1つであり、本発明によりパターニングされる別の好ましい例として例示される。
[0086]
 第一電極および第二電極は、発光層からの発光を取り出すために少なくとも一方が透明であることが好ましい。第一電極から光を取り出すボトムエミッションの場合には第一電極が、第二電極から光を取り出すトップエミッションの場合には第二電極が透明である。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。また、転写の際に、例えば転写材料と酸素を反応させるなど、反応性転写を実施することもできる。透明電極材料およびもう一方の電極には、例えば、特開平11-214154号公報記載の如く、従来公知の材料を用いることができる。
[0087]
 本発明のドナー基板を用いて、転写法により作製される有機EL素子は次のような特徴を有する。例えば、転写層が発光層(R、G、B)である場合、レーザー照射してデバイス基板に転写された発光層はドナー基板のパターンをトレースする。つまり図11(a)に示すように、一定間隔で発光層がパターニングされたドナー基板を用いると、デバイス基板では、隣り合う発光層の間隔はほぼ一定となる。図11(a)においてR、G、Bと記載された部分にのびる破線はそれぞれの発光層の幅方向の中心位置を示す。隣り合う発光層間の中心位置同士の距離はほぼ一定である。なお、図11(a)では図2や図3と同様の方法でレーザー照射する態様を例示したが、他の照射方法、例えば区画パターンと転写層の一部がレーザー照射されるようにしてから、レーザーをR、G、Bの並び方向にスキャンする態様などであっても同様の結果となる。
[0088]
 一方、蒸着法によって発光層が作製される場合を図11(b)に示す。ここではR、G、Bそれぞれの蒸着時にマスクの位置合わせが必要であるが、その位置合わせを完全に行うことは困難である。マスク位置の誤差が生じた部位では、R、G、Bが一定間隔とならない場合が生じる。また、区画パターンを持たないドナー基板3枚にR、G、Bの発光層をそれぞれ形成し、部分転写する方法を図11(c)に示す。この場合は3回のレーザー照射の位置合わせを完全に行うことが困難であり、蒸着法と同様、R、G、Bが一定間隔とならない場合が生じる。このことから、本発明のドナー基板を用いた転写法では高精度にR、G、Bのパターニングを行い、その間隔をほぼ一定にできることがわかる。
[0089]
 また、本発明のドナー基板を用いて、転写法により作製される有機EL素子の別の特徴を説明する。レーザーにより転写を行なうと、図12(a)のように転写先では転写膜27のエッジにおいて膜厚がなだらかに減衰する特徴がある(図12(a)は一見、パターンのエッジが中央よりも盛り上がっているようであるが、エッジには順テーパー形状の区画パターンが存在するため、転写膜の膜厚はエッジに向かうにつれなだらかに減衰している)。一方、図12(b)に示すようにマスク蒸着では蒸着源から直線的に発光層の分子が飛来して基板に付着するため、エッジにおける膜厚の減衰が急峻となる。このように転写膜のエッジを観察することにより、蒸着法か転写法のどちらによって形成されたかを区別することもできる。
[0090]
 以上の通り、本発明の有機EL素子は、有機化合物層の少なくとも一部が転写法を用いて作製された場合であっても、該有機化合物層に混入されるハロゲンに代表される不純物が大きく低減され、優れた発光性能を示すものである。そのような有機EL素子は、好ましくは、例えば、少なくとも一対の電極間に挟持された発光層を含む有機化合物層を有し、有機化合物層の少なくとも一部が転写法を用いて作成された有機EL素子において、以下のいずれかを満たす有機EL素子である。
(1)転写法を用いて作製された層のSIMSによる元素分析で検出されるフッ素強度が炭素強度比1×10 -1以下であること。
(2)転写法を用いて作製された層のSIMSによる元素分析で検出される塩素強度が炭素強度比5×10 -3以下であること。
[0091]
 より好ましくは、前記(1)および(2)の両方を満たす有機EL素子である。さらに好ましくは、転写法を用いて作製された層が発光層であるものである。
[0092]
 ここで、フッ素強度、塩素強度および炭素強度とは、SIMSによる元素分析におけるピーク強度であり、フッ素強度または塩素強度の炭素強度比とは、フッ素強度または塩素強度を炭素強度で除したものである。一般的な有機EL発光材料では材料に含まれる炭素濃度が材料種類によらずほぼ一定となるので、SIMSで検出される炭素強度も材料によらず近い値をとる。このため、炭素強度を基準値として用いることができる。
[0093]
 有機EL素子において、例えば発光層のSIMSによる元素分析を行うには、例えば以下のようにすることができる。陰極または陽極から有機EL素子内部に向かい、深さ方向にエッチングを行う。こうして発光層の部分を露出させ、その表面にイオン照射し放出される元素を質量分析器で検出する。なお、有機層が多層形成された有機EL素子において発光層に該当する部分を検出する方法は特に限定されないが、一例としては、発光層に特徴的な元素やその濃度分布がある場合はSIMSによりその元素や分布を観測して発光層の領域を検出する方法が簡便である。上記元素分析と同時に行うことができるためである。そのほかの方法として、有機EL素子を積層方向に対して斜め方法に切削して、その切削面についてフォトルミネッセンスやカソードルミネッセンスなどの発光分析をする方法が挙げられる。この方法によれば、発光色に対応した発光が認められる部位を観察できる。その結果と、斜め切削面における電極位置と切削の傾きから発光層の位置を算定することができる。また有機EL素子の断面のTEMやSEMを用いて有機層の構造を観察して発光層の位置を検出することもできる。これらの手法を組み合わせて発光層の位置を検出し、総合的に判断して発光層と認められる位置においてSIMSにより発光層内の元素を測定することが好ましい。
[0094]
 このような有機EL素子が本発明のドナー基板により作製できることは既に説明したとおりであるが、その作製方法はこれには限られない。区画パターンを有するドナー基板を用いた転写法を利用する場合において、区画パターンからの不純物溶出が抑制できる構造のドナー基板が用いられていれば同様の特徴を有する有機EL素子を作製することができる。
[0095]
 区画パターンなどからの不純物溶出を低減できる構造の例を図13に示す。図13(a)は本発明のドナー基板を改良したものの一例であり、光熱変換層33と支持体31の間に反射防止層39を形成し光の吸収率を向上させた場合である。反射防止層39として不純物が溶出しやすい材質を用いた場合に、光熱変換層33だけではバリアできない不純物をバリア層35でブロックすることができる。図13(b)は光熱変換層33そのものをパターニングして区画パターンの役割を兼ねたものであり、不純物が溶出しやすい区画パターンが存在しないため、バリア層は設けられていない。もちろん、図13(c)に示すように、光熱変換層33からも不純物が溶出するおそれがある場合などは光熱変換層33上に更にバリア層を設けてもよい。また、図13(d)は支持体31を加工して凹凸をつけて区画パターンの役割を兼ねたものである。この場合も不純物が溶出しやすい区画パターンが存在しないため、バリア層は設けられていないが、さらにバリア層を設けてもよいのは同様である。
[0096]
 本発明における有機EL素子は、一般的に第二電極が共通電極として形成されるアクティブマトリクス型に限定されるものではなく、例えば、第一電極と第二電極とが互いに交差するストライプ状電極からなる単純マトリクス型や、予め定められた情報を表示するように表示部がパターニングされるセグメント型であってもよい。これらの用途としては、テレビ、パソコン、モニター、時計、温度計、オーディオ機器、自動車用表示パネルなどを例示することができる。
[0097]
 本発明のドナー基板を用いたパターニング方法は、有機EL素子だけでなく、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスにも適用可能である。例えば、有機TFTの従来技術として特開2003-304014号公報、特開2005-232136号公報、特開2004-266157号公報などに例示されているように、半導体の前駆体材料をデバイス基板上に直接塗布してから変換することで、半導体層を形成する手法が開示されているが、この半導体層を本発明のドナー基板を用いたパターニング方法によって形成することで、有機EL素子と同様の効果を得ることが可能である。
実施例
[0098]
 以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[0099]
 実施例1
 ドナー基板を以下のとおり作製した。支持体として無アルカリガラス基板を用い、洗浄/UVオゾン処理後に、光熱変換層として厚さ1.0μmのチタン膜をスパッタリング法により全面形成した。次に、前記光熱変換層をUVオゾン処理した後に、上にポジ型ポリイミド系感光性コーティング剤(東レ株式会社製、DL-1000)をスピンコート塗布し、プリベーキング、UV露光した後に、現像液(東レ株式会社製、ELM-D)により露光部を溶解・除去した。このようにパターニングしたポリイミド前駆体膜をホットプレートで350℃、10分間ベーキングして、ポリイミド系の区画パターンを形成した。この区画パターンの厚さは2μmで、断面は順テーパー形状であり、その幅は20μmであった。区画パターン内部には幅80μm、長さ280μmの光熱変換層を露出する開口部が、それぞれ100、300μmのピッチで配置されていた。さらに表面にバリア層としてタンタルの金属層を全面に0.4μmの厚さでスパッタ製膜した。表面にポジ型感光性レジスト(東京応化工業株式会社製:PMER-P300RH)を塗布し、区画パターン部以外を露光・溶解除去した。レジストの開口部にパーフルオロシランカップリング剤(フッ素を含むシランカップリング剤)のフッ素撥液処理剤(フロロテクノロジー社製:FG-5010)をスピンコート塗布した後に不要な薬剤を水洗し、フォトレジストを剥離した。この基板上に、Alq を1wt%含むキシレン溶液をインクジェット塗布することで区画パターン内(開口部)にAlq からなる平均厚さ25nmの転写材料を形成した。
[0100]
 なお、ドナー基板にインクジェットにより塗布を行った後に区画パターン内の転写材料部表面をION-TOF社製TOF.SIMS5を用いてTOF-SIMSの分析をすると、不純物として、CF が3e-3[ピーク強度]、Si(CH ) が1e-3[ピーク強度]検出された。以下の実施例2~6および比較例1においては実施例1で検出された不純物量を1として相対不純物量を評価した。
[0101]
 デバイス基板は以下のとおり作製した。ITO透明導電膜を140nm堆積させた無アルカリガラス基板(ジオマテック株式会社製、スパッタリング成膜品)を38×46mmに切断し、フォトリソグラフィー法によりITOを所望の形状にエッチングした。次に、ドナー基板と同様にパターニングされたポリイミド前駆体膜を、300℃、10分間ベーキングして、ポリイミド系の絶縁層を形成した。この絶縁層の高さは1.8μmで、断面は順テーパー形状であり、その幅は30μmであった。絶縁層のパターン内部には幅70μm、長さ270μmのITOを露出する開口部が、それぞれ100、300μmのピッチで配置されていた。この基板をUVオゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が3×10 -4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、正孔輸送層として、銅フタロシアニン(CuPc)を20nm、NPDを40nm、発光領域全面に蒸着により積層した。
[0102]
 次に、前記ドナー基板の区画パターンと前記デバイス基板の絶縁層との位置を合わせて対向させ、3×10 -4Pa以下の真空中で保持した後に、大気中に取り出した。絶縁層と区画パターンとで区画される転写空間は減圧に保持されていた。この状態で、転写材料の一部と区画パターンの一部が同時に加熱されるように、ドナー基板のガラス基板側から中心波長800nmのレーザー(光源:半導体レーザーダイオード)を照射し、転写材料のAlq をデバイス基板の下地層である正孔輸送層上に転写した。レーザー強度は約300W/mm 、スキャン速度は1.25m/sであり、発光領域全面に転写されるように、レーザーをオーバーラップさせる方式で繰り返しスキャンを実施した。
[0103]
 Alq 転写後のデバイス基板を、再び真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が3×10 -4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、電子輸送層として下記に示すE-1を25nm、発光領域全面に蒸着した。次に、ドナー材料(電子注入層)としてフッ化リチウムを0.5nm、さらに、第二電極としてアルミニウムを100nm蒸着して、5mm角の発光領域をもつ有機EL素子を作製した。
[0104]
 SIMS(二次イオン質量分析)装置であるPHI社製ADEPT1010を用いて有機EL素子の陰極側からイオンエッチングを行い、転写された発光層を露出させ、その部分における元素分析を行った。セシウムイオンを3keVで照射したときに検出されるフッ素、塩素および炭素の元素の検出強度を比較したところ、フッ素強度が炭素強度に対して1×10 -1以下、塩素強度が炭素強度に対して5×10 -3以下であった。なお、発光層位置は素子を斜めに切削してフォトルミネッセンスを測定することにより陰極からの深さを算出する方法であらかじめ特定した。
[0105]
 この素子に2.5mA/cm の一定電流を流したところ5cd/Aの初期輝度を示した。流し始めた直後の輝度を初期輝度とし、初期輝度を電流密度で割った値を初期発光効率、さらに一定電流を流し続けて、輝度が初期輝度から半分に低下するまでの時間を輝度半減寿命として測定した。以下の実施例2~6および比較例1においては実施例1の初期発光効率および輝度半減寿命をそれぞれ1として、相対初期発光効率および相対輝度半減寿命を評価した。
[0106]
[化2]


[0107]
 実施例2
 バリア層としてモリブデンを0.4μmの厚さで製膜し、フォトリソグラフィー技術で開口部のみを塩化第二鉄溶液でモリブデンをエッチングすることにより区画パターン上のみにバリア層を設けた。それ以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。ドナー基板上の転写材料中の不純物量の分析、有機EL素子の初期発光効率および輝度半減寿命の測定、有機EL素子の発光層中のSIMS測定も実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。
[0108]
 実施例3
 バリア層として二酸化珪素を0.4μmの厚さで積層した。それ以外は実施例1と同様にして同様にして有機ELを作製した。ドナー基板上の転写材料中の不純物量の分析、有機EL素子の初期発光効率および輝度半減寿命の測定、有機EL素子の発光層中のSIMS測定も実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。区画パターンからのCF などの不純物の溶出は抑えられているものの、二酸化珪素の表面が多孔質であるため、基板の洗浄時に残留したと思われる塩素が多く検出された。
[0109]
 実施例4
 フッ素含有高分子材料撥液処理剤(フロロテクノロジー社製:FG-1010)を用いて区画パターン上のみに直接撥液処理を行った以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。ドナー基板上の転写材料中の不純物量の分析、有機EL素子の初期発光効率および輝度半減寿命の測定、有機EL素子の発光層中のSIMS測定も実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。
[0110]
 実施例5
 ドナー基板のバリア層の上の撥液処理層としてシリコーン樹脂(東レダウコーニング社製:SD4580)を塗布すること以外は実施例1と同様に有機EL素子の作成を試みたが、ドナー基板に発光材料をインクジェット塗布する際にインクが撥液層にしみ込み隣の区画内の塗布層と混色する部分が発生した。ドナー基板上の転写材料中の不純物量の分析、有機EL素子の初期発光効率および輝度半減寿命の測定、有機EL素子の発光層中のSIMS測定は実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。
[0111]
 実施例6
 ドナー基板に撥液処理を加えなかったこと以外は実施例1と同様に有機EL素子の作製を試みたが、転写材料が区画パターンを乗り越えて濡れ広がり、隣の区画にも塗布されてしまうために本来であれば混色となり塗工不良であるが、本実施例では全区画に同色を塗布するため問題にせずそのままのプロセスを進めた。ドナー基板上の転写材料中の不純物量の分析、有機EL素子の初期発光効率および輝度半減寿命の測定、有機EL素子の発光層中のSIMS測定は実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。
[0112]
 比較例1
 ドナー基板にポリイミドの区画パターンを作成した後、バリア層形成以降のプロセスを行わず、そのまま区画パターンに転写材料を塗布すること以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。ドナー基板上の転写材料中の不純物量の分析、有機EL素子の初期発光効率および輝度半減寿命の測定、有機EL素子の発光層中のSIMS測定は実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。
[0113]
 実施例7
 転写材料にAlq に対してルブレンを5wt%含み合計1wt%の溶質を含むキシレン溶液をインクジェット塗布すること以外は実施例1と同様に有機EL素子を作製した。ドナー基板上の転写材料中の不純物量の分析、有機EL素子の初期発光効率および輝度半減寿命の測定、有機EL素子の発光層中のSIMS測定は実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。なお、実施例1で検出された不純物量を1として相対不純物量を評価した。また、初期発光効率は6cd/Aを示した。以下の比較例2においては実施例7の初期発光効率および輝度半減寿命を1として相対初期発光効率および相対輝度半減寿命を評価した。
[0114]
 比較例2
 転写材料にAlq に対してルブレンを5wt%含み合計1wt%の溶質を含むキシレン溶液をインクジェット塗布すること以外は比較例1と同様に有機EL素子を作製した。ドナー基板上の転写材料中の不純物量の分析、有機EL素子の初期発光効率および輝度半減寿命の測定、有機EL素子の発光層中のSIMS測定は実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。
[0115]
 実施例8
 転写材料に下記RH-1に対して下記RD-1を0.5wt%含み合計1wt%の溶質を含むキシレン溶液をインクジェット塗布すること以外は実施例1と同様に有機EL素子を作製した。不純物量の分析、初期発光効率および輝度半減寿命の測定は実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。なお、実施例1で検出された不純物量を1として相対不純物量を評価した。また、初期発光効率は5cd/Aを示した。以下の比較例3においては実施例7の初期発光効率および輝度半減寿命を1として相対初期発光効率および相対輝度半減寿命を評価した。なお、実施例8および次の比較例3ではRD-1の分子内に不純物とはならないフッ素を含んでいるため、遊離したフッ素の微量分析を行うことができない。このため塩素のみの分析を行っている。
[0116]
[化3]


[0117]
 比較例3
 転写材料に下記RH-1に対して下記RD-1を0.5wt%含み合計1wt%の溶質を含むキシレン溶液をインクジェット塗布すること以外は比較例1と同様に有機EL素子を作製した。不純物量の分析、初期発光効率および輝度半減寿命の測定は実施例1と同様にして行い、結果を表1にまとめた。
[0118]
 実施例と比較例の結果、区画パターン上にバリア層を設けた場合は、その領域が全面であっても区画パターン上だけであっても、比較例に対して不純物量が少なく、有機EL素子はよい性能を示した。転写材料の種類によらず同様の傾向が確認された。また、撥液処理層に関しては、1.フッ素含有シランカップリング剤処理、2.フッ素含有高分子材料撥液処理、3.非フッ素含有高分子撥液処理の順で、有機EL素子が良好な性能を示した。不純物量は1~3の順に多くなっていることから、不純物の溶出を抑えることが有機EL素子の高性能化に大きく寄与することが確認された。
[0119]
 なお、近年の視認性を向上するための発光輝度の向上に対する要求から、必要光量を確保するため高電流でEL素子を駆動する場合がある。一般的に寿命は電流値の1.6乗に反比例することが経験的に知られており、高電流域で用いられる場合に性能低下の影響が拡大する。このため、実施例3~5のように実施例1との性能比が寿命において80~95%程度である場合であっても、たとえば倍の高電流域では輝度半減寿命が実施例1の70%以下となり実用上大きく劣る。まして、実施例1との性能比が寿命において70%程度である比較例では、倍の高電流域では輝度半減寿命が実施例1の30%以下となり、発光効率もさらに劣っていることから、実用に適さない。
[0120]
[表1]


産業上の利用可能性

[0121]
 本発明は、有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜のパターニング技術であり、携帯電話やパソコン、テレビ、画像スキャナなどに使用されるディスプレイパネルや、タッチパネル、撮像素子などの製造に利用可能である。

符号の説明

[0122]
 10 有機EL素子(デバイス基板)
 11 支持体
 12 TFT(取り出し電極含む)
 13 平坦化層
 14 絶縁層
 15 第一電極
 16 正孔輸送層
 17 発光層
 18 電子輸送層
 19 第二電極
 20 デバイス基板
 21 支持体
 27 転写膜
 30 ドナー基板
 31 支持体
 33 光熱変換層
 34 区画パターン
 35 バリア層
 36 撥液処理層
 37 転写材料
 38 転写領域
 39 反射防止層
 40 マスク

請求の範囲

[請求項1]
基板と、前記基板上に形成された光熱変換層と、少なくとも一部が前記光熱変換層の上面に形成された区画パターンとを含み、前記区画パターン表面にバリア層が形成されていることを特徴とする転写用ドナー基板。
[請求項2]
区画パターン内に転写層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載された転写用ドナー基板。
[請求項3]
バリア層が金属、金属酸化物、金属窒化物、珪素酸化物または珪素窒化物のいずれかを含む請求項1または2に記載された転写用ドナー基板。
[請求項4]
バリア層が金属を含む請求項1~3のいずれかに記載された転写用ドナー基板。
[請求項5]
区画パターン上のバリア層の表面の少なくとも一部に撥液処理層が形成されている請求項1~4のいずれかに記載された転写用ドナー基板。
[請求項6]
撥液処理層がフッ素を含むシランカップリング剤によって処理されたものであることを特徴とする請求項5に記載された転写用ドナー基板。
[請求項7]
転写層がデバイス構成材料またはその前駆体材料で構成された請求項1~6のいずれかに記載された転写用ドナー基板。
[請求項8]
請求項1~7のいずれかに記載された転写用ドナー基板をデバイス基板と対向させる工程と、前記光熱変換層に光を照射することで転写層を前記デバイス基板に転写する工程を有するデバイスの製造方法。
[請求項9]
転写層がデバイス構成材料の前駆体材料で構成されており、該前駆体材料をデバイス構成材料に変換する工程をさらに含む請求項8記載のデバイスの製造方法。
[請求項10]
デバイス構成材料の前駆体材料が転写材料に可溶性基を導入したものである請求項9記載のデバイスの製造方法。
[請求項11]
デバイスが有機EL素子である請求項8~10のいずれかに記載のデバイスの製造方法。
[請求項12]
少なくとも一対の電極間に挟持された発光層を含む有機化合物層を有し、有機化合物層の少なくとも一部が転写法を用いて作成された有機EL素子において、転写法を用いて作製された層のSIMSによる元素分析で検出されるフッ素強度が炭素強度比1×10 -1以下であるか、もしくは転写法を用いて作製された層のSIMSによる元素分析で検出される塩素強度が炭素強度比5×10 -3以下であることを特徴とする有機EL素子。
[請求項13]
転写法を用いて作製された層が発光層である請求項12記載の有機EL素子。
[請求項14]
発光層がパターニングされており、隣り合う発光層の間隔がほぼ一定である請求項13記載の有機EL素子。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]