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1. (WO2011122493) 電気銅めっき用高純度銅アノード、その製造方法および電気銅めっき方法
Document

明 細 書

発明の名称 電気銅めっき用高純度銅アノード、その製造方法および電気銅めっき方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019  

実施例

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031  

産業上の利用可能性

0032  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 電気銅めっき用高純度銅アノード、その製造方法および電気銅めっき方法

技術分野

[0001]
 この発明は、例えば、ピロリン酸銅浴を用いた電気銅めっきに際し、電気銅めっき浴中のアノード側で発生するスライム等のパーティクルの発生を防止する電気銅めっき用高純度銅アノードとその製造方法、さらに、パーティクルの発生に起因するめっき不良を低減することができる高純度銅アノードを用いた電気銅めっき方法に関する。
 本願は、2010年3月30日に、日本に出願された特願2010-077215号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 従来、プリント基板のスルーホールめっきなどで用いられているピロリン酸浴中での電気銅めっきでは、銅めっき用アノード電極として高純度銅が用いられている。
 しかし、上記の電気銅めっきでは、アノード溶解時に電極表面に銅粉や金属塩を主成分とするスライムが発生し、アノード電極から剥離して浴中に流出する。この浴中に流出したスライムは、カソード電極表面に付着し、突起等のめっき不良を発生させやすくするという問題があった。
[0003]
 そこで、このような問題を解決する手法として、例えば、特許文献1に示されるように、アノードに含有される酸素含有量を規定するとともに、アノード電極の結晶粒度を規定した純銅アノードを用いた電気銅めっきが知られている。
 また、別の解決策として、例えば、特許文献2に示されるように、高純度銅インゴットを、熱間鍛造-冷間加工―歪除去焼鈍することにより、結晶粒を微細化した純銅をアノードとして用いた電気銅めっきも知られている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特許第4011336号明細書
特許文献2 : 特開2001-240949号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 従来の銅めっきアノードを用いたピロリン酸浴中での電気銅めっきにおいては、銅粉や金属塩を主成分とするスライムの発生防止が十分であるとはいえない。特に、プリント基板のスルーホールめっきなどの精緻なめっきが要求される場合には、スライム等のパーティクル発生に起因するめっき不良の発生が十分満足できる程度に抑制されていない。
 そこで、この発明では、ピロリン酸銅浴を用いた電気銅めっきに際し、電気銅めっき浴中のアノード側で発生するスライム等のパーティクルの発生を防止する電気銅めっき用高純度銅アノードとその製造方法を提供することを目的とする。また、上記のパーティクルの発生に起因するめっき不良を低減することができる高純度銅アノードを用いた電気銅めっき方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明者等は、ピロリン酸銅浴を用いた電気銅めっき時における、高純度銅アノードの結晶粒界の形態とアノードスライムの発生、めっき欠陥の関連性について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
 従来のピロリン酸銅浴を用いた高純度銅アノードを用いた電気銅めっきにおいては、電解の進行とともに銅が溶解してゆく。このアノードにおける銅の溶解は不均一に進行し、特に、結晶粒界では、選択的かつ優先的に溶解が進行する。その結果、部分的な結晶粒の脱落等が発生し、これがスライム発生の一要因となる。
[0007]
 そこで、本発明者等は、電気銅めっき用の高純度銅アノードにおいて、アノード表面からの溶解が均一に進行するように、該高純度銅アノード表面の結晶粒の粒界のうち、所謂、特殊粒界の形成割合を高め、特殊粒界の単位粒界長さLσ が、全結晶粒の単位粒界長さL に対して特定の値以上になるよう(Lσ /L ≧0.35)制御した。その結果、アノード表面からの銅の溶解は均一に進行し、アノードスライム等のパーティクルの発生も低減した。すなわち、特殊粒界の形成割合を適正に制御する事により、アノードでのスライム発生に起因するめっき不良を大幅に低減し得ることを見出した。
 ここで、特殊粒界とは、「Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949)」に基づき定義されるΣ値で3≦Σ≦29に属する対応粒界であって、かつ、「Acta.Metallurgica.Vol.14,p.1479,(1966)」で述べられている当該対応粒界における固有対応部位格子方位欠陥Dqが、Dq≦15°/Σ 1/2を満たす結晶粒界であるとして定義される。
[0008]
 また、本発明者等は、電気銅めっき用の高純度銅アノードの製造に際し、所定の冷間加工、熱間加工を施して加工歪みを与えた後、所定の温度範囲(250~900℃)で再結晶化熱処理を行うことによって、銅アノードの表面に存在する結晶粒界のうちの、所謂、特殊粒界の形成割合の高い(Lσ /L ≧0.35)電気銅めっき用の高純度銅アノードを製造し得ることを見出した。
[0009]
 さらに、本発明者等は、特殊粒界の形成割合の高い(Lσ/L≧0.35)高純度銅アノードを使用し、例えば、プリント基板のスルーホールめっきを行った場合には、スルーホール内面には汚染、突起等のめっき欠陥のない精緻なめっき層を形成し得ることを見出した。
[0010]
 本発明の第一の態様は、電気めっき用高純度銅アノードにおいて、走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、隣接する結晶粒相互の配向方位差が15°以上の結晶粒の界面を結晶粒界とし、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、これを単位面積1mm 当たりに換算した単位全粒界長さL を求め、
また、同じく走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、相互に隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσを測定し、これを単位面積1mm 当たりに換算して単位全特殊粒界長さLσ を求めた場合、
上記測定した結晶粒界の単位全粒界長さL Nと、同じく上記測定した特殊粒界の単位全特殊粒界長さLσ との特殊粒界長比率Lσ /L Nが、
 Lσ /L ≧0.35
の関係を満足する結晶粒界組織を有することを特徴とする電気めっき用高純度銅アノードである。
 本発明の第一の態様の電気めっき用高純度銅アノードは、平均結晶粒径が3~1000μmであってもよい。
 本発明の第二の態様は、電気めっき用高純度銅に加工を施して加工歪みを与えた後、250~900℃で再結晶化熱処理を行うことにより、特殊粒界長比率Lσ /L を0.35以上とする電気めっき用高純度銅アノードの製造方法である。
 本発明の第二の態様の電気めっき用高純度銅アノード製造方法では、加工は、冷間加工または熱間加工の内の少なくとも何れかにより行ってもよい。
 本発明の第二の態様の電気めっき用高純度銅アノード製造方法では、冷間加工と再結晶化熱処理、あるいは、熱間加工と再結晶化熱処理、またはこれらを組み合わせた処理を、特殊粒界長比率Lσ /L が0.35以上となるまで繰り返し行ってもよい。
 本発明の第二の態様の電気めっき用高純度銅アノード製造方法では、350~900℃の温度範囲で圧下率5~80%の熱間加工を施し、その後、3~300秒間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行ってもよい。
 本発明の第二の態様の電気めっき用高純度銅アノード製造方法では、圧下率5~80%の冷間加工を施し、その後、250~900℃の温度範囲に加熱し、5分~5時間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行ってもよい。
 本発明の第三の態様の電気銅めっき方法は、走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、隣接する結晶粒相互の配向方位差が15°以上の結晶粒の界面を結晶粒界とし、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、これを単位面積1mm 当たりに換算した単位全粒界長さL を求め、また、同じく走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、相互に隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσを測定し、これを単位面積1mm 当たりに換算して単位全特殊粒界長さLσ を求めた場合、上記測定した結晶粒界の単位全粒界長さL Nと、同じく上記測定した特殊粒界の単位全特殊粒界長さLσ との特殊粒界長比率Lσ /L Nが、Lσ /L ≧0.35の関係を満足する結晶粒界組織を有する電気めっき用高純度銅アノードを用いた電気銅めっき方法である。

発明の効果

[0011]
 この発明の電気銅めっき用の高純度銅アノード、その製造方法および電気銅めっき方法によれば、例えば、電気銅めっきにより、プリント基板のスルーホール内面に精緻なめっき層を形成する場合にも、アノードスライムの発生を抑制するとともに、スルーホール内面におけるスライムに起因する汚染、突起等のめっき欠陥の発生防止を図ることができる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] (a)~(d)は、電解によるアノード表面の溶解進行状況を示す模式図であり、(a)は電解が開始された初期状態、(b)は電解を開始し一定時間経過時点での粒界の選択的溶解が始まった状態、(c)は粒界の選択的溶解の結果、形状因子による電流密度の不均一化が生じ、そのため、さらに加速度的な粒界の選択溶解が起こっている状態、(d)は粒界の溶解によって、未溶解の結晶粒が剥離・剥落を生じる状態、をそれぞれ示す。
[図2] 本発明3のEBSD解析結果を示し、太い線が特殊粒界、細い線が一般粒界を示す(図3~9についても同じ)。
[図3] 本発明5のEBSD解析結果を示す。
[図4] 本発明8のEBSD解析結果を示す。
[図5] 本発明10のEBSD解析結果を示す。
[図6] 本発明13のEBSD解析結果を示す。
[図7] 本発明20のEBSD解析結果を示す。
[図8] 比較例1のEBSD解析結果を示す。
[図9] 比較例4のEBSD解析結果を示す。

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明者等は、電気銅めっきにおける高純度銅アノード表面の溶解進行状況について調査したところ、以下の知見を得た。
 図1(a)~(d)の模式図に示すように、電解が開始された初期状態(a)では、アノード表面に大きな変化は生じない。しかし、電解開始後、一定の時間経過した状態(b)では、アノード表面の結晶粒は、粒内に比べ化学的に不安定な粒界から選択的に溶解し始める。さらに電解が進行した状態(c)では、粒界が選択的に溶解された結果、形状因子による電流密度の不均一化が生じ、そのため、さらに加速度的に粒界が選択溶解を起こすようになる。さらに電解が進行した状態(d)では、粒界の溶解が進むため、未溶解の結晶粒が剥離・剥落するようになり、アノードスライムの発生原因となり、また、これがめっき不良発生原因ともなる。また、未溶解の結晶粒が剥離・剥落したアノード部分には新生面が生成し、電圧変動が発生するようになり、安定した電解操業を行うことが次第に困難となる。
[0014]
 本発明者等は、上記知見をもとに、電気銅めっき用の高純度銅アノードとして、電解時間の経過とともに、粒界からの選択的溶解(不均一溶解)を生じないようなアノードについてさらに研究した。その結果、以下を見出した。高純度銅アノードにおける前記定義したところの特殊粒界(Σ値で3≦Σ≦29に属する対応粒界であって、かつ、当該対応粒界における固有対応部位格子方位欠陥Dqが、Dq≦15°/Σ 1/2を満たす結晶粒界)のいずれも単位面積中の全特殊粒界長さLσ と、高純度銅アノードにおける結晶粒界の全結晶粒界長さL との特殊粒界長比率Lσ /L が、Lσ /L ≧0.35の関係を満足する結晶粒界組織を有する場合には、結晶構造的に安定、かつ、化学的にも安定である特殊粒界の割合が増加する。上記特殊粒界の割合が増加すると、粒界の前記選択的溶解が生じにくくなり、未溶解の結晶粒の剥離・剥落が抑制されるようになる。結果として、アノードスライムの発生が低減され、同時に、スライム起因のめっき欠陥の発生も低減されるようになる。
 単位全結晶粒界長さL Nは、走査型電子顕微鏡を用いて求めることができる。まず、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、得られた後方散乱電子回折パターンから結晶の配向データを求める。次に個々の結晶の配向データを基に、隣接する結晶粒相互の配向方位差が15°以上の結晶粒の界面を結晶粒界として、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを求める。最後に、この全粒界長さLを測定面積で除算し、単位面積1mm 当たりの単位粒界長さに換算することによって、単位全結晶粒界長さL Nを求めることができる。
 特殊粒界長比率Lσ /L が、Lσ /L <0.35では、電解時の結晶粒界の選択溶解を抑えることができず、アノードスライムの発生低減、スライム起因のめっき欠陥の発生低減を図ることができないので、特殊粒界長比率Lσ /L を、Lσ /L ≧0.35と定めた。
[0015]
 本発明の第一の態様の高純度銅アノードとは、JIS・H2123の表2に規定されるCu含有量が99.96質量%以上の銅からなるアノードである。本発明の第一の態様の高純度銅アノードには、高純度銅1種または2種に属する銅を使用することができる。高純度銅1種は、Cu含有量が99.99質量%以上であり、Pの許容上限は0.0003質量%、Oの許容上限は0.001質量%であり、また、Pb、Zn、Bi、Cd、Hg、S、Se、Teの含有量も所定の許容上限値以下でなければならない。高純度銅2種では、Cu含有量が99.96質量%以上であり、Oの含有量は0.001質量%以下に抑えられる。
 また、本発明の高純度銅アノードの平均結晶粒径(双晶も結晶粒としてカウント)は、3~1000μmであることが望ましい。平均結晶粒径がこの範囲から外れるとアノードスライムがより多く発生する。
[0016]
 特殊粒界の単位全特殊粒界長さLσと、結晶粒界の全結晶粒界長さL との特殊粒界長比率Lσ /L が、Lσ /L ≧0.35の関係を満足する結晶粒界組織を有する高純度銅アノードは、電気めっき用高純度銅の製造に際し、加工(冷間加工及び/又は熱間加工)を施して加工歪みを与えた後、350~900℃で再結晶化熱処理を行うことにより、製造することができる。
 具体的な製造例としては、例えば、
製造例(A)として、400~900℃の温度範囲で、電気めっき用高純度銅に圧下率5~80%の熱間加工を施した後、3~300秒間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行うことによって、Lσ /L ≧0.35の関係を満足する結晶粒界組織を有する電気めっき用の高純度銅アノードの製造方法が挙げられる。
 また、他の製造例としては、
製造例(B)として、圧下率5~80%の冷間加工を施した後、350~900℃の温度範囲に加熱し、5分~5時間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行うことによって、Lσ /L ≧0.35の関係を満足する結晶粒界組織を有する電気めっき用の高純度銅アノードの製造方法が挙げられる。
 前記製造例(A)および(B)記載の特定の圧下率の熱間加工、冷間加工により歪みを与えた後、所定の温度範囲で、歪みを付与せず静的に保持した状態で再結晶させることによって、特殊粒界の形成が促進され、単位全特殊粒界長さLσ の比率を高め、特殊粒界長比率Lσ /L の値を0.35以上とすることができる。
 また、上記の熱間加工、冷間加工および熱処理を、何度か繰り返し行うことによりLσ /L ≧0.35となる結晶粒界組織を得ることも何ら差し支えない。
[0017]
 特殊粒界の単位全特殊粒界長さLσ と、結晶粒界の全結晶粒界長さL との特殊粒界長比率Lσ /L が、Lσ /L ≧0.35の関係を満足する結晶粒界組織を有する高純度銅アノードを電気めっき用のアノードとして用いて電気銅めっきを行うことにより、アノードスライムの発生低減を図ることができる。さらに、例えば、プリント基板のスルーホール内面に銅めっきした場合には、スルーホールに汚染、突起等のめっき欠陥のない精緻なめっき層を形成することが可能となる。
[0018]
 高純度銅アノードの結晶粒界の特定と単位全粒界長さL Nの測定は、走査型電子顕微鏡を用いて行う。まず、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、得られた後方散乱電子回折パターンから結晶の配向データを求める。次に個々の結晶の配向データを基に、隣接する結晶粒相互の配向方位差が15°以上の結晶粒の界面を結晶粒界として、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを求める。最後に、この全粒界長さLを測定面積で除算し、単位面積1mm 当たりの単位粒界長さに換算することにより単位全粒界長さL Nを求めることができる。また、特殊粒界の特定と単位全特殊粒界長さLσ の測定は、同じく電界放出型走査電子顕微鏡を用いて求めることができる。まず、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、相互に隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する粒界の位置を決定する。そして、特殊粒界の全特殊粒界長さLσを測定し、これを測定面積で除算し、単位面積1mm 当たりの単位粒界長さに換算することにより、単位全特殊粒界長さLσ を求めることができる。
 具体的には、電界放出型走査電子顕微鏡を用いたEBSD測定装置(HITACHI社製 S4300-SE,EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)によって、結晶粒界、特殊粒界を特定し、その長さを算出することにより行うことができる。
 また、高純度銅アノードの平均結晶粒径(双晶も結晶粒としてカウントする)の測定は、上記EBSD測定装置と解析ソフトによって得られた結果から結晶粒界を決定し、観察エリア内の結晶粒子数を算出し、エリア面積を結晶粒子数で割って結晶粒子面積を算出し、それを円換算することにより平均結晶粒径(直径)を求めることができる。
[0019]
 つぎに、この発明について、実施例により具体的に説明する。
実施例
[0020]
 純度99.9質量%以上のタフピッチ純銅(TPC)、純度99.99質量%以上の高純度銅(4N OFC)、純度99.999質量%以上の高純度銅(5N OFC)、純度99.9999質量%以上の超高純度銅(6N OFC)の再結晶材あるいは鋳造材に、表1に示す条件で熱間加工(温度、加工法、加工率)および/または冷間加工(加工法、加工率)、熱処理(温度、時間)を施し、あるいは、これらを繰り返し行い、熱処理後に水冷し、表3に示す所定サイズの本発明の高純度銅アノード(本発明アノードという)1~20を製造した。
 本表1における冷間伸線加工とは、断面形状φ60mmのワイヤー状サンプルを引き抜き加工によりφ30mmの断面形状にするプロセス、ボール成型加工とは、長さ47mmに切断した断面積φ30mmの円筒状サンプルを型鍛造により、直径約40mmの球体に成型するプロセスである。
 なお、表1中の実施例としては、熱間加工-熱処理,冷間加工-熱処理あるいはこれらを所要回数繰り返し行う場合に、同一条件での繰り返しのみを挙げているが、必ずしも同一条件で繰り返す必要はなく、特許請求の範囲の各請求項で規定された条件の範囲内であれば、異なる条件(加工温度、加工法,加工率,保持温度,保持時間)での繰り返しを行うことも可能である。
[0021]
 上記で製造した本発明アノードについて、前記EBSD測定装置(HITACHI社製 S4300-SE,EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)によって、結晶粒界、特殊粒界を特定し、単位全粒界長さL および単位全特殊粒界長さLσ を求めた。
 表3に、L ,Lσ 及び特殊粒界長比率Lσ /L を示す。
 上記EBSD測定装置と解析ソフトによって得た結果から求めた平均結晶粒径の値も表3に示す。
 また、図2~図7に、それぞれ、本発明アノード3、5、8、10、13、20のEBSD解析結果を示す。
[0022]
 比較のため、上記で作製した高純度銅アノード素材に対して、表2に示す条件(少なくとも一つの条件は本発明範囲外の条件である)で、熱間加工(温度、加工法、加工率)、冷間加工(加工法、加工率)、再結晶化熱処理(温度、時間)を行い、表4に示す比較例の高純度銅アノード(比較例アノードという)1~5を製造した。
 また、上記で製造した比較例アノードについても、本発明と同様にして、単位全粒界長さL 、単位全特殊粒界長さLσ 、特殊粒界長比率Lσ /L および平均結晶粒径を求めた。
この値を表4に示す。
 また、図8、図9には、それぞれ、比較例アノード1, 4のEBSD解析結果を示す。
[0023]
[表1]


[0024]
[表2]


[0025]
[表3]


[0026]
[表4]


[0027]
 上記の本発明アノード1~20、比較例アノード1~5(いずれも、アノード表面積は400cm )を用い、プリント基板をカソードとして、5枚のプリント基板のスルーホールに対して、ピロリン酸銅浴を用いた電気銅めっきを行った。
 めっき液: ピロリン酸銅80g/L、ピロリン酸カリウム400g/L、pH8.5(pHはアンモニアで調整)
 めっき条件:液温 50℃、
       カソード電流密度 3 A/dm
       めっき時間 20 分/枚、
[0028]
 上記の本発明アノード1~20、比較例アノード1~5について、電気銅めっき開始から5枚目のプリント基板の電気銅めっき完了までに発生したアノードスライム発生量を測定した。
 また、めっき後のプリント基板のスルーホール内面を、光学顕微鏡で観察し、スルーホール内面に形成されている高さ3μm以上の突起を欠陥とみなして、突起欠陥数をカウントした。
 これらの測定結果を表5、表6に示す。
[0029]
[表5]


[0030]
[表6]


[0031]
 表5、表6に示される結果から、本発明の電気銅めっき用の高純度銅アノード、電気銅めっき用の高純度銅アノードの製造方法および電気銅めっき方法によれば、例えば、プリント基板のスルーホール内面に銅めっき層を形成する場合にも、アノードスライムの発生を抑制するとともに、スルーホール内面における汚染、突起等のめっき欠陥の発生防止を図ることができることが分かる。
 特殊粒界長比率Lσ /L が0.35未満である比較例アノードでは、アノードスライム発生量が多いばかりか、スライム起因のめっき欠陥が多発していることが分かる。

産業上の利用可能性

[0032]
 電気銅めっきに際して、アノードスライムの発生を抑制でき、被めっき材表面におけるめっき欠陥の発生を防止し得るという優れた効果を有する。特に、プリント基板のスルーホール内面への銅めっき層形成に適用された場合には、プリント基板のスルーホール内面における汚染、突起等の欠陥の発生を防止することができるため、工業的な有用性が極めて高い。

請求の範囲

[請求項1]
 電気めっき用高純度銅アノードにおいて、
(a)走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、隣接する結晶粒相互の配向方位差が15°以上の結晶粒の界面を結晶粒界とし、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、これを単位面積1mm 当たりに換算した単位全粒界長さL を求め、
(b)走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、相互に隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσを測定し、これを単位面積1mm 当たりに換算して単位全特殊粒界長さLσ を求めた場合、
(c)上記測定した結晶粒界の単位全粒界長さL と、同じく上記測定した特殊粒界の単位全特殊粒界長さLσ との特殊粒界長比率Lσ /L が、
 Lσ /L ≧0.35
の関係を満足する結晶粒界組織を有することを特徴とする電気めっき用高純度銅アノード。
[請求項2]
 平均結晶粒径が3~1000μmである請求項1に記載の電気めっき用高純度銅アノード。
[請求項3]
 電気めっき用高純度銅に加工を施して加工歪みを与えた後、250~900℃で再結晶化熱処理を行うことにより、特殊粒界長比率Lσ /L を0.35以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
[請求項4]
 加工は、冷間加工または熱間加工の内の少なくとも何れかにより行う請求項3に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
[請求項5]
 冷間加工と再結晶化熱処理、あるいは、熱間加工と再結晶化熱処理、またはこれらを組み合わせた処理を、特殊粒界長比率Lσ /L が0.35以上となるまで繰り返し行う請求項3に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
[請求項6]
 冷間加工と再結晶化熱処理、あるいは、熱間加工と再結晶化熱処理、またはこれらを組み合わせた処理を、特殊粒界長比率Lσ /L が0.35以上となるまで繰り返し行う請求項4に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
[請求項7]
 350~900℃の温度範囲で圧下率5~80%の熱間加工を施し、その後、3~300秒間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行う請求項3に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
[請求項8]
 圧下率5~80%の冷間加工を施し、その後、250~900℃の温度範囲に加熱し、5分~5時間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行う請求項3に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
[請求項9]
 請求項1または2に記載の電気めっき用高純度銅アノードを用いた電気銅めっき方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]