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1. WO2011077619 - スパークプラグ

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明 細 書

発明の名称 スパークプラグ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010  

発明の効果

0011   0012   0013   0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051  

実施例

0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : スパークプラグ

技術分野

[0001]
 この発明は、スパークプラグに関し、特に、電極の材料にNi基合金を用いたスパークプラグに関する。

背景技術

[0002]
 自動車エンジン等の内燃機関の点火用に使用されるスパークプラグは、一般に、筒状の主体金具と、この主体金具の内孔に配置される筒状の絶縁体と、この絶縁体の先端側内孔に配置される中心電極と、一端が主体金具の先端側に接合され、他端が中心電極と火花放電間隙を形成するように設けられた接地電極とを備える。そして、スパークプラグは、内燃機関の燃焼室内で、中心電極の先端と接地電極の先端との間に形成される火花放電間隙に火花放電され、燃焼室内に充填された燃料を燃焼させる。
[0003]
 このようなスパークプラグの電極の材料には、耐酸化性、耐火花消耗性等に優れた種々のNi基合金が広く使用されている。例えば、特許文献1には、「Cr:0.5~5%,Mn:0.1~3%,Si:0.1~3%,Y:0.00001~0.5%,を含有し、残りがNiおよび不可避不純物からなる組成(以上、重量%)を有するNi基合金で構成したことを特徴とするNi基合金製点火プラグ電極」が記載されている。特許文献2には、「質量%でC:0.1%以下(0を含む)、Si:0.3~3.0%、Mn:0.5%未満(0を含む)、Cr:0.5%未満(0を含む)、Al:0.3%以下(0を含む)、HfとReの1種または2種を合計で0.005~1.0%、残部はNi及び不可避不純物からなることを特徴とする点火プラグ用電極材料」が記載されている。特許文献3には、「重量比でCr0.5~3%、Si0.3~2.5%、Mn0.5~1.8%(ただし 0.5%、1.8%含まず)およびAl0.05~2.5%(ただし0.05%含まず)を含有し、SiとCrの比(Si/Cr)が1.1未満であり、残部Niおよび不可避不純物よりなるNi基合金を用いたことを特徴とする点火プラグ用電極」が記載されている。
[0004]
 ところで、近年の地球温暖化防止、化石燃料節約等の要求の高まりに伴って、自動車等の内燃機関において、燃費向上のため空燃比を大きく設定する等の対策が講じられている。このような内燃機関においては、燃焼室、特に中心電極の先端及び接地電極の先端が位置する領域近傍の温度が高温化し、燃焼室内は高酸素濃度になる傾向がある。さらに、スパークプラグの小型化に伴い、中心電極及び接地電極も細くなるので、放電で生じた熱を、中心電極が絶縁体及びパッキンを介して主体金具へと、接地電極が主体金具へと伝導して逃がすことができなくなり(熱引きと称することもある。)、中心電極及び接地電極自身の温度も上昇し易くなる。
[0005]
 スパークプラグが、このような高温及び高酸素濃度の環境下で使用されるようになり、中心電極及び接地電極の温度も上昇し易い構造になると、従来のスパークプラグでは所望の性能を維持するのが難しくなってくる。例えば、正規の着火前に高温の電極が発火源となり、燃料に着火するプレイグニッションと呼ばれる現象が発生することがある。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開昭63-18033号公報
特許文献2 : 特開2007-92139号公報
特許文献3 : 特開平2-163335号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 そこで、プレイグニッション等の異常現象のない高性能なスパークプラグを提供すべく種々の検討を行ったところ、高温及び高酸素濃度の環境下においては、電極に付着したデポジットすなわちオイルや未燃焼燃料等の付着物と電極材料とが反応して形成されたと考えられる、複数の細かい塊状の腐食様新生異物が電極表面を覆うように形成されることがあり(図3参照。)、この腐食様新生異物が着火性に影響を与えることが分かった。この腐食様新生異物が形成されると、中心電極と接地電極との間に設けられている火花放電間隙が狭まり、着火性が落ちる虞がある。最悪の場合、中心電極と接地電極が短絡し、エンジンが失火する虞もある。また、電極の熱伝導性が低下して熱引きが悪くなることから、電極が発火源となりプレイグニッションを誘発する虞もある。
[0008]
 この発明は、高熱伝導性及び高強度を維持しつつ、腐食様新生異物の発生を抑制することのできる中心電極及び/又は接地電極を備えたスパークプラグを提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 前記課題を解決するための手段は、
(1)中心電極、及び前記中心電極との間に間隙を有するように設けられた接地電極を備え、前記中心電極及び前記接地電極のいずれか少なくとも一方がNiを96質量%以上含有する電極材料により形成されて成るスパークプラグにおいて、
 前記電極材料は、Yと希土類元素とからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.05質量%以上0.45質量%以下、Mnを0.05質量%以上、及びTiとVとNbとからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.01質量%以上含有し、かつ
 Mnの含有量(b)とTi、V、及びNbの合計含有量(a)との比(a/b)が0.02以上0.40以下であることを特徴とするスパークプラグである。
[0010]
 前記(1)の好ましい態様は、
(2)前記比(a/b)が0.03以上0.29以下、さらに好ましくは0.04以上0.14以下であり、
(3)前記電極材料は、Siを0.15質量%以上1.5質量%以下含有し、
(4)前記電極材料は、Alを0.01質量%以上0.1質量%以下含有し、
(5)前記電極材料は、Crを0.05質量%以上0.5質量%以下含有し、
(6)前記電極材料は、Cを0.005質量%以上含有し、
(7)前記電極材料は、Tiを含有し、
(8)少なくとも前記接地電極が前記電極材料により形成されてなるスパークプラグである。

発明の効果

[0011]
 この発明に係るスパークプラグは、高Ni基合金において、特定量のYと希土類元素とからなる群より選択される少なくとも1種、Mn、及びTiとVとNbとからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、かつMnの含有量(b)とTi、V、及びNbの合計含有量(a)との比(a/b)が特定の範囲にある電極材料で形成されてなる中心電極及び/又は接地電極を備えているから、高熱伝導性及び高強度を維持しつつ、腐食様新生異物の発生を抑制することのできる、中心電極及び/又は接地電極を備えたスパークプラグを提供することができる。
[0012]
 また、前記電極材料がさらに特定量のSi、Al、及び/又はCrを含有すると、より一層腐食様新生異物の発生を抑制することができる。
[0013]
 また、前記電極材料がさらに特定量のCを含有すると、より一層高い強度を得ることができ、電極の折損及び変形を防止することができる。
[0014]
 さらに、中心電極よりも高温になり、デポジットにも曝され易い接地電極が、前記電極材料により形成されてなると、より一層効果的である。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 図1は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグを説明する説明図であり、図1(a)は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの一部断面全体説明図であり、図1(b)は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの主要部分を示す断面説明図である。
[図2] 図2(a)は、この発明に係るスパークプラグの他の実施例であるスパークプラグの主要部分を示す断面説明図であり、図2(b)は、この発明に係るスパークプラグのさらに別の実施例であるスパークプラグの主要部分を示す断面説明図である。
[図3] 図3は従来のスパークプラグに形成された腐食様新生異物の写真である。

発明を実施するための形態

[0016]
 この発明に係るスパークプラグは、中心電極と接地電極とを有し、この中心電極の一端と接地電極の一端とが間隙を介して対向するように配置されている。この発明に係るスパークプラグは、このような構成を有するスパークプラグであれば、その他の構成は特に限定されず、公知の種々の構成を採ることができる。
[0017]
 この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグを図1に示す。図1(a)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ1の一部断面全体説明図であり、図1(b)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ1の主要部分を示す断面説明図である。なお、図1(a)では紙面下方を軸線AXの先端方向、紙面上方を軸線AXの後端方向として、図1(b)では紙面上方を軸線AXの先端方向、紙面下方を軸線AXの後端方向として説明する。
[0018]
 このスパークプラグ1は、図1(a)及び(b)に示されるように、略棒状の中心電極2と、中心電極2の外周に設けられた略円筒状の絶縁体3と、絶縁体3を保持する略円筒状の主体金具4と、一端が中心電極2の先端面と火花放電間隙Gを介して対向するように配置されると共に他端が主体金具4の端面に接合された接地電極6とを備えている。
[0019]
 前記主体金具4は、略円筒形状を有しており、絶縁体3を内装することにより絶縁体3を保持するように形成されている。主体金具4における先端方向の外周面にはネジ部9が形成されており、このネジ部9を利用して図示しない内燃機関のシリンダヘッドにスパークプラグ1が装着される。主体金具4は、導電性の鉄鋼材料、例えば、低炭素鋼により形成されることができる。
[0020]
 前記絶縁体3は、主体金具4の内周部に滑石(タルク)10又はパッキン11等を介して保持されており、絶縁体3の軸線方向に沿って中心電極2を保持する軸孔を有している。絶縁体3は、絶縁体3における先端方向の端部が主体金具4の先端面から突出した状態で、主体金具4に固着されている。絶縁体3は、機械的強度、熱的強度、電気的強度を有する材料であることが望ましく、このような材料として、例えば、アルミナを主体とするセラミック焼結体が挙げられる。
[0021]
 中心電極2は、外材7と、外材7の内部の軸心部に同心に埋め込まれるように形成されてなる内材8とにより形成されている。中心電極2は、その先端部が絶縁体3の先端面から突出した状態で絶縁体3の軸孔に固定されており、主体金具4に対して絶縁保持されている。中心電極2は、後述する電極材料又はこの電極材料以外の公知の材料で形成され、特に中心電極2の外材7は後述する電極材料で形成されるのがよい。
[0022]
 前記接地電極6は、例えば、略角柱体に形成されてなり、一端が主体金具4の端面に接合され、途中で略L字に曲げられて、その先端部が中心電極2の軸線方向に位置するように、その形状及び構造が設計されている。接地電極6がこのように設計されることによって、接地電極6の一端が中心電極6と火花放電間隙Gを介して対向するように配置されている。火花放電間隙Gは、中心電極2の先端面と接地電極6の表面との間の間隙であり、この火花放電間隙Gは、通常、0.3~1.5mmに設定される。接地電極6は、後述する電極材料又はこの電極材料以外の公知の材料で形成されればよいが、通常、接地電極6は中心電極2よりも高温に曝されるため、接地電極6は後述する電極材料で形成されるのがよい。
[0023]
 スパークプラグ1においては、前記のように、中心電極2及び接地電極6の少なくとも一方が下記電極材料で形成され、好ましくは、より高温に達する接地電極6が下記電極材料で形成される。
[0024]
 電極材料としては、Niを95質量%以上含有する高Ni基合金とNiを50~85質量%含有し、Cr及びFeを10~42質量%含有するインコネル600、インコネル601(Inconel:商標名)等の低Ni基合金が広く知られている。この発明においては、前記高Ni基合金について検討を行い、本願発明を完成させるに到った。
[0025]
 これらの電極を形成する電極材料は、Niを96質量%以上、Yと希土類元素とからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.05質量%以上0.45質量%以下、Mnを0.05質量%以上、及びTiとVとNbとからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.01質量%以上含有し、かつMnの含有量(b)とTi、V、及びNbの合計含有量(a)との比(a/b)が0.02以上0.40以下である。
[0026]
 電極材料におけるNiの含有率が96質量%未満であると、電極材料の熱伝導率が低下するので、放電で生じた熱を電極が効果的に逃がすことができなくなり、放電部が常に高温となる結果、電極が酸化消耗してしまう。また、電極温度が上昇することにより、プレイグニッションすなわち正規の着火前に高温の電極が発火源になり燃料に着火するという現象が生じることがある。電極材料の高熱伝導率が維持できる点で、Niの含有率は96質量%以上であるのがよい。
[0027]
 電極材料におけるYと希土類元素とからなる群より選択される少なくとも1種の合計含有率が0.05質量%未満であると、電極が高温に曝されることにより電極材料の組織が粒成長し易くなるので、電極が折損及び変形し易くなる。また、前記合計含有率が0.45質量%を超えると、電極に付着したデポジットすなわちオイルや未燃焼燃料等の付着物と電極材料とが反応して、多数の細かい塊状の腐食様新生異物が電極の表面を覆うように形成されるという特異な現象が生じ易くなる。このような腐食様新生異物が形成されると、中心電極2の先端面とこれに対向する接地電極6の表面との間の間隔が狭まり、着火性が落ちる虞がある。最悪の場合、中心電極と接地電極が短絡し、エンジンが失火する虞もある。また、腐食様新生異物が形成されると、電極の熱伝導性が低下して熱引きが悪くなることからプレイグニッションを誘発する虞がある。
[0028]
 前記希土類元素としては、Nd、La、Ce、Dy、Er、Yb、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Ho、Tm、Luを挙げることができる。
[0029]
 電極材料におけるMnの含有率が0.05質量%以上であると、この電極材料により形成された電極の表面に強固な酸化被膜が形成されるので、電極の耐酸化性が向上する。Mnにより形成される酸化被膜は耐酸化性に対しては有効に作用する。しかし、電極が高温及び高酸素濃度の環境下に曝されると、電極の表面に腐食様新生異物が発生することがある。この腐食様新生異物は、電極が高温及び高酸素濃度の環境下に置かれたことにより、電極に付着したデポジットに含まれるCとこのMnにより形成される酸化被膜とが反応して、形成されたと考えられる。この腐食様新生異物が電極の表面を覆うように形成されると、上述したように、正常な着火が行なわれなくなってしまう。
[0030]
 そこで、電極材料として、Mnに加えて、Ti、V、及びNbからなる群より選択される少なくとも1種を含有させると、腐食様新生異物の形成を抑制することができることを見出した。電極材料がTi、V、及びNbからなる群より選択される少なくとも1種を含有すると、Ti、V、及びNbからなる群より選択される少なくとも1種が酸化被膜に侵入したデポジット由来のCをトラップすることにより、CとMnの酸化被膜とが反応して形成される腐食様新生異物の発生が抑制されると推定される。例えばCをトラップしたTiは、TiCを形成する。TiCはMnの酸化被膜と反応して化合物を形成しないので、Mnの酸化被膜は融点が下がることなく、安定して存在することができるようになる。その結果、腐食様新生異物が形成され難くなると考えられる。
[0031]
 したがって、電極材料におけるMnの含有率とTi、V、及びNbからなる群より選択される少なくとも1種の合計含有率とが所定範囲にあるだけでなく、Mnの含有量に対するTi、V、及びNbの合計含有量の割合が特定の範囲にあることが、本願発明の課題を達成するためには重要である。すなわち、Mnを0.05質量%以上含有し、Ti、V、及びNbからなる群より選択される少なくとも1種を0.01質量%以上含有し、かつMnの含有量(b)とTi、V、及びNbの合計含有量(a)との比(a/b)が0.02以上0.40以下であると、腐食様新生異物の形成が抑制される。
[0032]
 もっとも、電極材料は、実施の態様を考慮してMnを0.07質量%以上含有することがあり、また3質量%以下で含有することもあり、Ti、V、及びNbからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.02質量%以上含有することがあり、また0.1質量%以下で含有することもある。
[0033]
 前記比(a/b)は0.03以上0.29以下であるのが好ましく、0.04以上0.14以下であるのが特に好ましい。比(a/b)が前記範囲内にあると、腐食様新生異物の形成がより一層抑制される。
[0034]
 前記Ti、V、及びNbは、いずれもデポジット由来のCをトラップする作用があると考えられ、いずれも腐食様新生異物の形成を抑制する効果があるが、これらのうちでは、経済性の観点からTiを含有させるのが特に好ましい。
[0035]
 電極材料は、Siを含有するのが好ましく、0.15質量%以上1.5質量%以下含有するのが特に好ましい。
[0036]
 電極材料は、Alを含有するのが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下含有するのが特に好ましい。
[0037]
 電極材料は、Crを含有するのが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下含有するのが特に好ましい。
[0038]
 電極材料が、Si、Al、及び/又はCrを含有すると、Mnの酸化被膜がさらに強固になる。したがって、電極材料が、Si、Al、及び/又はCrを含有、特に前記範囲内で含有すると、耐酸化性が向上すると共に、Mnの酸化被膜中にデポジット由来のCが侵入し難くなるので、より効果的に腐食様新生異物の発生を抑制することができる。
[0039]
 電極材料は、Cを含有するのが好ましく、0.005質量%以上含有するのが特に好ましい。電極材料におけるCの含有率が0.005質量%以上であると、高温環境下での電極材料の機械的強度を確保できるので、電極の折損及び変形を防止することができる。電極が高温環境下に曝されたり、電極の熱引きが悪く、電極温度が上昇したりしても、電極の機械的強度を確保できる点で、Cの含有率は0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上0.05質量%以下であるのがよい。
[0040]
 この電極材料は、Ni、Yと希土類元素とからなる群より選択される少なくとも1種、Mn、及びTiとVとNbとからなる群より選択される少なくとも1種と、所望により、Si、Al、Cr、及び/又はCとを実質的に含有する。これらの各成分は、前述した各成分の含有率の範囲内で、これら各成分と不可避不純物との合計が100質量%になるように含有される。前記成分以外の成分、例えば、S、P、Fe、Cu、B、Zr、Mg、及び/又はCaが微量の不可避不純物として含有されることがある。これらの不可避不純物の含有量は少ない方が好ましいが、本願発明の目的を達成することができる範囲内で含有していてもよく、前述した成分の合計質量を100質量部としたときに、前述した1種類の不可避不純物の割合は0.1質量部以下、含有されるすべて種類の不可避不純物の合計割合は0.2質量部以下であるのがよい。
[0041]
 この電極材料に含まれる各成分の含有率は、次のようにして測定することができる。すなわち、この電極材料を電極とした場合に、この電極と主体金具及び/又は貴金属チップ等の他の部材とを溶融接着する際に形成される溶融部を除く部分から試料を採取し(炭素硫黄分析は0.3g以上、ICP発光分析は0.2g以上が望ましい)、Cの含有量は炭素硫黄分析により、その他成分はICP発光分析(inductively coupled plasma emission spectrometry)を行うことにより、分析する。Niについては上記分析測定値の残部として算出する。炭素硫黄分析では、採取した試料を燃焼炉にて熱分解し、非分散赤外線検出することでCの含有量を定量する(炭素硫黄分析装置として、例えば、ホリバ製作所製EMIA-920V)。ICP発光分析では、試料を酸分解法(例えば硝酸)により溶液化し、定性分析の後、検出元素及び指定元素について定量を行う(ICP発光分析装置として、例えば、サーモフィッシャー製iCAP-6500)。いずれの分析も3回の測定値の平均値を算出し、その平均値を電極材料における各成分の含有率とする。
[0042]
 なお、この電極材料は、所定の原料を所定の配合割合で配合して、以下に示すように製造される。製造された電極材料の組成は、原料の組成とはほぼ一致する。したがって、この電極材料に含まれる各成分の含有率は、簡易的な方法として原料の配合割合からも算出することができる。
[0043]
 上述した電極材料がスパークプラグにおける中心電極及び接地電極のいずれか少なくとも一方、特に接地電極に使用されると、これらの電極が高温及び高酸素濃度の雰囲気に曝されても、さらにはスパークプラグの小型化に伴って中心電極及び接地電極の断面積が小さくなったとしても、高熱伝導性及び機械的強度を維持しつつ、腐食様新生異物の形成を抑制することができる。電極が高熱伝導性を有すると、放電で生じた熱を主体金具に速やかに伝導させることができるので、電極の温度上昇による電極の酸化消耗を防止することができる。また、燃焼効率向上の要求に伴い、内燃機関内が高温及び高酸素濃度になる傾向にあるところ、高温下においても電極の機械的強度が維持されているので、使用中の折損及び変形を防止することができる。さらに、腐食様新生異物の形成を抑制することができるので、腐食様新生異物が形成されると、中心電極の端面とこれに対向する接地電極の表面との間の間隔が狭まり、着火性が落ちたり、最悪の場合、中心電極と接地電極が短絡し、エンジンが失火したりする虞があるところ、このような着火不良を抑制することができる。また、腐食様新生異物が形成されると、電極の熱伝導性が低下して熱引きが悪くなることから電極が発火源となりプレイグニッションを誘発する虞があるところ、このような現象を防止することができる。
[0044]
 前記スパークプラグ1は、例えば次のようにして製造される。まず、各成分の含有率が前述した範囲となる電極材料を、Niを96質量%以上、Yと希土類元素とからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.05質量%以上0.45質量%以下、Mnを0.05質量%以上、及びTiとVとNbとからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.01質量%以上、所望によりSiを0.15質量%以上1.5質量%以下、Alを0.01質量%以上0.1質量%以下、Crを0.05質量%以上0.5質量%以下、及びCを0.005質量%以上を溶解して、調整する。なお、電極材料における、Mnの含有量(b)とTi、V、及びNbの合計含有量(a)との比(a/b)が0.02以上0.4以下となるように調整する。
[0045]
 このようにして調整した電極材料を所定の形状に加工して中心電極2及び/又は接地電極6を作製する。電極材料の調整及び加工を連続して行うこともできる。例えば、真空溶解炉を用いて、所望の組成を有する合金の溶湯を調製し、真空鋳造にて各溶湯から鋳塊を調製した後、この鋳塊を、熱間加工、線引き加工等して、所定の形状及び所定の寸法に適宜調整して、中心電極2及び/又は接地電極6を作製することができる。なお、内材8をカップ状に形成した外材7に挿入し、押し出し加工等の塑性加工にて中心電極2を形成することもできる。また、図2(a)に示されるように、接地電極61が外部層12とこの外部層12の軸心部に埋め込まれるように設けられた軸部13とにより形成されてなる場合には、軸部13をカップ状に形成した外部層12に挿入し、押し出し加工等の塑性加工した後、略角柱状に塑性加工したものを、接地電極61にすることができる。
[0046]
 次いで、所定の形状に塑性加工等によって形成した主体金具4の端面に、接地電極6の一端部を電気抵抗溶接又はレーザ溶接等によって接合する。接地電極が接合された主体金具をZnめっき又はNiめっきを施す。Znめっき又はNiめっきの後に3価クロメート処理を行っても良い。また、接地電極にめっきが付いていても良く、接地電極にめっきが付かないようにマスキングをしても良く、接地電極に付いためっきを別途剥離しても良い。次いで、セラミック等を所定の形状に焼成することによって絶縁体3を作製し、中心電極2を絶縁体3に公知の手法により組み付け、接地電極6が接合された主体金具4にこの絶縁体3を組み付ける。そして、接地電極6の先端部を中心電極2側に折り曲げて、接地電極6の一端が中心電極2の先端部と対向するようにして、スパークプラグ1が製造される。
[0047]
 本発明に係るスパークプラグは、自動車用の内燃機関例えばガソリンエンジン等の点火栓として使用され、内燃機関の燃焼室を区画形成するヘッド(図示せず)に設けられたネジ穴に前記ネジ部9が螺合されて、所定の位置に固定される。この発明に係るスパークプラグは、如何なる内燃機関にも使用することができるが、高熱伝導性、高強度を維持しつつ腐食用新生異物の形成を抑制することのできる中心電極及び/又は接地電極を備えているから、特に、高温及び高酸素濃度となる内燃機関に好適に使用されることができる。
[0048]
 この発明に係るスパークプラグ1は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記スパークプラグ1は、中心電極2の先端面と接地電極6における一端の表面とが、中心電極2の軸線方向で、火花放電間隙Gを介して対向するように配置されているが、この発明において、図2(a)及び(b)に示されるように、中心電極2の側面と接地電極61,62における一端の先端面が、中心電極2の半径方向で、火花放電間隙Gを介して対向するように配置されていてもよい。この場合に、中心電極2の側面に対向する接地電極61,62は、図2(a)に示されるように単数が設けられても、図2(b)に示されるように複数が設けられてもよい。
[0049]
 また、前記スパークプラグ1は、中心電極2及び接地電極6が共に前記電極材料で形成されているが、この発明において、中心電極のみが前記電極材料で形成されていてもよく、接地電極のみが前記電極材料で形成されていてもよい。この発明に係るスパークプラグは、通常、中心電極よりも接地電極の方がより高温に曝されるため、少なくとも接地電極を前記電極材料で形成するのが好ましい。なお、中心電極2が前記電極材料以外の材料で形成される場合には、例えば、外材7が前記電極材料以外の公知のNi合金等で形成され、内材8がCu又はAg等の熱伝導性に優れた金属材料により形成される。
[0050]
 前記スパークプラグ1は、図1(b)に示されるように、接地電極6全体が前記電極材料により形成されているが、図2(a)に示されるように、接地電極61が、外部層12と、外部層12の内部の軸心部に同心に埋め込まれるように設けられた軸部13とにより形成され、外部層12が前記電極材料、軸部13がCuを主成分とする金属材料により形成されてもよい。あるいは、図2(b)に示されるように、接地電極62が、外部層14と、外部層14の内部の軸心部に同心に埋め込まれるように設けられた軸部15と、軸部15と外部層14との間に軸部15を覆うように設けられた中間層16とにより形成され、外部層14が前記電極材料、中間層16がCuを主成分とする金属材料、軸部15がNiを主成分とする金属材料により形成されてもよい。このような構造を有する接地電極は、熱引きがよく、高温になった接地電極の温度を効果的に下げることができる。
[0051]
 さらに、前記スパークプラグ1は、中心電極2及び接地電極6を備えているが、この発明においては、中心電極の先端部及び接地電極の表面の両方又はいずれか一方に、貴金属チップを備えていてもよい。中心電極の先端部及び接地電極の表面に形成される貴金属チップは、通常、円柱又は角柱形状を有し、適宜の寸法に調整され、適宜の溶接手法例えばレーザ溶接又は電気抵抗溶接により中心電極の先端部、接地電極の表面に溶融固着される。この場合、対向する2つの貴金属チップの表面の間に形成される間隙、又は貴金属チップの表面とこの貴金属チップに対向する中心電極2又は接地電極6の表面との間の間隙が前記火花放電間隙となる。この貴金属チップを形成する材料は、例えば、Pt、Pt合金、Ir、Ir合金等の貴金属が挙げられる。
実施例
[0052]
<スパークプラグ試験体の作製>
 通常の真空溶解炉を用いて、表1及び2に示す組成(質量%)を有する合金の溶湯を調製し、真空鋳造にて各溶湯から鋳塊を調製した。その後、この鋳塊を熱間鋳造にて直径4.2mmの丸棒とした。この丸棒をカップ状に形成し、Cuの内材をカップ状外材に挿入し、押し出し加工等の塑性加工後に線引き加工を施して、直径2.5mmの複合材とし、直径4.2mmの丸棒から線引き加工、塑性加工等を施し断面寸法1.6mm×2.8mmの線材とし、前記複合材をスパークプラグ試験体の中心電極、前記線材をスパークプラグ試験体の接地電極に作製した。
[0053]
 そして、公知の手法により、主体金具の一端面に前記接地電極の一端部を接合し、次いで、セラミックで形成された絶縁体に前記中心電極を組み付け、接地電極が接合された主体金具にこの絶縁体を組み付けた。そして、接地電極の先端部を中心電極側に折り曲げて、接地電極の一端が中心電極の先端部と対向するようにして、スパークプラグ試験体を製造した。
[0054]
 なお、製造されたスパークプラグ試験体のねじ径はM14であり、絶縁体の端面から軸線方向に突出する中心電極の端面までの長さを示す中心電極出寸法は3mm、主体金具の端面から軸線方向に突出する絶縁体の端面までの長さを示す絶縁体出寸法は3mm、中心電極の端面とこの中心電極に対向する接地電極の表面との間の火花放電間隙は1.1mmであった。
[0055]
<評価方法>
(腐食様新生異物の形成)
 前述のように製造したスパークプラグ試験体を、2000cc、6気筒のガソリンエンジンに取り付け、スロットル全開状態で、エンジン回転数5000rpmの状態を維持し、100~200時間の運転を行った。なお、燃料は無鉛ガソリンを使用した。
 腐食様新生異物の形成状態にいては、拡大鏡(×50)を用いて、接地電極の表面に腐食様新生異物が形成されているか否かを目視により判断し、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1及び2に示す。
 ×:100時間の運転で腐食様新生異物が観察された場合。
 ○:150時間の運転で腐食様新生異物が観察された場合。
 ◎:200時間の運転で腐食様新生異物が観察された場合。
 ☆:200時間の運転で腐食様新生異物が観察されなかった場合。
[0056]
(強度試験)
 前述のように製造したスパークプラグ試験体を、接地電極が1000℃になるように加熱しつつ、周波数40Hz、加速度30Gにて、振動試験を行い、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1及び2に示す。
 ×:4時間未満の振動試験で折損した場合。
 ○:4時間以上8時間未満の振動試験で折損した場合。
 ◎:8時間の振動試験で折損しなかった場合。
[0057]
(熱伝導性試験)
 前述のように製造したスパークプラグ試験体と同様の寸法を有し、かつ中心電極の外材と接地電極とが純Niで形成されたスパークプラグを、接地電極の温度が1000℃になるようにバーナーで加熱した。この加熱条件と同じ条件で、前述のように製造したスパークプラグ試験体をバーナーで加熱し、接地電極の温度を放射温度計で測定し、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1及び2に示す。
 ×:接地電極の温度が1050℃を超えた場合。
 ○:接地電極の温度が1000~1050℃であった場合。
[0058]
[表1]


[0059]
[表2]


[0060]
 本願発明の範囲に含まれる電極材料で形成された電極を備えたスパークプラグは、表1及び表2に示されるように、腐食様新生異物が形成され難く、高強度であり、高熱伝導性を有していた。
[0061]
 一方、本願発明の範囲外にある電極材料で形成された電極を備えたスパークプラグは、表1及び2に示されるように、腐食様新生異物の形成、強度及び熱伝導性の少なくとも1つの特性が劣っていた。
[0062]
 比較例1~3は、Ti、V及びNbを含有せず、比較例4~8は、Mnの含有率及び比(a/b)が本願発明の範囲外にあり、いずれも腐食様新生異物の形成に関する評価が劣っていた。比較例9~12は、比(a/b)が本願発明の範囲外にあり、腐食様新生異物の形成に関する評価が劣っていた。比較例13~15は、Y及び/又は希土類元素の含有率が本願発明の範囲より少なく、強度に関する評価が劣っていた。比較例16は、Y及び/又は希土類元素の含有率が本願発明の範囲より多く、腐食様新生異物の形成に関する評価が劣っていた。比較例17~22は、Niの含有率が本願発明の範囲より少なく、熱伝導率に関する評価が劣っていた。
[0063]
1,101,102 スパークプラグ
2 中心電極
3 絶縁体
4 主体金具
6,61,62 接地電極
7 外材
8 内材
9 ネジ部
10 タルク
11 パッキン
12,14 外部層
13,15 軸部
16 中間層
G 火花放電間隙

請求の範囲

[請求項1]
 中心電極、及び前記中心電極との間に間隙を有するように設けられた接地電極を備え、前記中心電極及び前記接地電極のいずれか少なくとも一方がNiを96質量%以上含有する電極材料により形成されて成るスパークプラグにおいて、
 前記電極材料は、Yと希土類元素とからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.05質量%以上0.45質量%以下、Mnを0.05質量%以上、及びTiとVとNbとからなる群より選択される少なくとも1種を合計で0.01質量%以上含有し、かつ
 Mnの含有量(b)とTi、V、及びNbの合計含有量(a)との比(a/b)が0.02以上0.40以下であることを特徴とするスパークプラグ。
[請求項2]
 前記比(a/b)が0.03以上0.29以下であることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
[請求項3]
 前記比(a/b)が0.04以上0.14以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
[請求項4]
 前記電極材料は、Siを0.15質量%以上1.5質量%以下含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
[請求項5]
 前記電極材料は、Alを0.01質量%以上0.1質量%以下含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
[請求項6]
 前記電極材料は、Crを0.05質量%以上0.5質量%以下含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
[請求項7]
 前記電極材料は、Cを0.005質量%以上含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
[請求項8]
 前記電極材料は、Tiを含有することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
[請求項9]
 少なくとも前記接地電極が前記電極材料により形成されてなることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のスパークプラグ。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]