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1. WO2011074616 - プレスラインの搬送経路設定方法、および、複製プレスラインの搬送モーション作成方法

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明 細 書

発明の名称 プレスラインの搬送経路設定方法、および、複製プレスラインの搬送モーション作成方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010  

先行技術文献

特許文献

0011  

発明の概要

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199  

符号の説明

0200  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29  

明 細 書

発明の名称 : プレスラインの搬送経路設定方法、および、複製プレスラインの搬送モーション作成方法

技術分野

[0001]
 本発明は、プレスラインの搬送経路設定方法、および、既存プレスラインの金型と同一または同一形状の金型を用いる複製プレスラインの搬送モーション作成方法、に関する。

背景技術

[0002]
 従来、プレス機が複数並んだプレスラインでは、プレス機同士の間でワークを搬送する搬送装置が設けられる。プレスラインは、各プレス機による複数のプレス工程を経て、平板状のワークから所定の形状の製品を製造する。各プレス機には、それぞれ異なるプレス工程が割り当てられる。
[0003]
 一方、各プレス機の間に設けられた搬送装置は、所定の周期で昇降動作する各プレス機に対し、前プレス工程を実行するプレス機から、次プレス工程を実行するプレス機へ、搬送経路に沿って搬送装置を用いてワークを搬送する。そこで、このような搬送装置の搬送モーションは、このような昇降動作する各プレス機の金型である上型及び下型に干渉しないように設定する必要がある。
[0004]
 例えば、特許文献1には、このような搬送装置の搬送モーションを作成する方法が示されている。この搬送モーション作成方法では、搬送モーションの基準形を予め複数準備しておく。実際に搬送モーションを作成する際には、準備した複数の基準形から1つを選択し、さらに搬送装置の開始位置と終了位置とを指定する。この搬送モーション作成方法によれば、基準形を選択し、搬送装置の開始位置及び終了位置を指定するだけでよいので、搬送装置の搬送モーションの作成にかかる時間を短縮することができる。
[0005]
 また、特許文献2には、上記搬送装置の搬送モーションが示されている。この搬送モーションでは、搬送装置がプレス機に到達するタイミングについて、上流工程のプレス機から下流工程のプレス機へ順次位相差を設け、上記タイミングを上流工程のプレス機から下流工程のプレス機へ順次遅らせる。この搬送モーションによれば、搬送装置の搬送速度を上げることなく、プレス機の昇降速度を上げることができる。
[0006]
 また、特許文献3には、上記搬送装置の搬送モーションを作成する方法が示されている。この搬送モーション作成方法では、各プレス機及び搬送装置、ワーク及び金型の形状データを用いて干渉チェックを行い、各プレス機及び搬送装置のモーションの位相調整を行い搬送モーションを作成する。この搬送モーション作成方法によれば、各プレス機及び搬送装置、ワーク及び金型の干渉を回避しつつライン生産効率が高くなる位相調整結果を短時間の調整作業で得ることができる。
[0007]
 ところで、プレスライン全体の生産サイクルを向上する場合、金型やプレス機の昇降動作の周期に合わせて、できるだけ速やかにワークを搬送できるように、搬送装置の搬送動作を設定する必要がある。しかしながら、特許文献1に示された設定方法では、搬送装置の搬送動作は、予め準備された基準形に基づいて設定されるため、金型やプレス機の昇降動作に合わせて最適な設定を行うことが困難である。したがって、最終的には、実際にプレスラインを稼動した上で、作業者の判断に基づいて設定を最適化する必要がある。
[0008]
 また、既に稼動している既存プレスラインは、移設され複製プレスラインとして構築される場合がある。複製プレスラインは、既存プレスラインの金型が移管されるが、既存プレスラインとはプレス機や搬送装置が異なる。また、複製プレスラインは、既存プレスラインとはプレス機間の距離が異なるため、搬送装置によるワークの搬送距離も異なる。よって、複製プレスラインでは、既存プレスラインの搬送モーションを転用できないため、新たに金型やプレス機の昇降動作の周期に合わせて、できるだけ速やかにワークを搬送できるように、搬送装置の搬送モーションを作成する必要がある。
[0009]
 しかしながら、特許文献1に示された搬送モーション作成方法では、搬送装置の搬送モーションは、予め準備された基準形に基づいて作成されるため、各プレス機及び搬送装置の動作を最適にする設定を行う必要がある。また、特許文献2に示された搬送モーションを作成するには、各プレス機及び搬送装置の動作に合わせて最適な順次位相差を設定する必要がある。また、特許文献3に示された搬送モーション作成方法では、各プレス機及び搬送装置の動作が最適になるように、各プレス機及び搬送装置のモーションの位相調整を行う必要がある。
[0010]
 したがって、特許文献1~3に記載された技術では、既存プレスラインと同じ金型を用いる複製プレスラインであったとしても、実際に複製プレスラインを稼動し、各プレス機及び搬送装置の動作を最適化する工程を繰り返して、新たな搬送モーションを作成する必要がある。

先行技術文献

特許文献

[0011]
特許文献1 : 日本国特開2004-255419号公報
特許文献2 : 日本国特開2005-074476号公報
特許文献3 : 日本国特開2008-254054号公報

発明の概要

[0012]
 本発明の一以上の実施例は、金型の形状に適した搬送装置の搬送経路を設定できる搬送経路設定方法を提供する。
[0013]
 また、本発明の一以上の実施例は、昇降動作する上型と搬送装置とが干渉しないようなプレスラインの運転条件を効率的に設定できる運転条件設定方法を提供する。
[0014]
 また、本発明の一以上の実施例は、既存プレスラインの金型と同一または同一形状の金型を用いる複製プレスラインの構築に際し、搬送モーションの作成工数を削減できる搬送モーション作成方法を提供する。
[0015]
 本発明のある実施例では、プレスラインの搬送経路設定方法は、
 搬送装置の搬送経路を規定する制御点の位置を仮設定する仮設定工程と、
仮設定された制御点の位置情報に基づいて搬送装置が当該制御点を通過する搬送経路を算出し、さらに当該搬送経路に沿って搬送装置を移動させた場合における保持部の軌跡を算出する軌跡算出工程と、
 算出された保持部の軌跡と下型の形状とを比較するとともに、軌跡を複数の区間に分割し、さらに当該軌跡と下型との間隔が区間ごとに設定された目標値に近づくように、制御点の位置を調整する搬送経路決定工程と、
 を含む。
[0016]
 また、本発明のある実施例では、プレスラインの運転条件設定方法は、
 上型の形状データに基づいて、上型の表面のうち搬送装置又はワークと干渉する可能性がある複数の候補点を抽出する候補点抽出工程と、
 複数の候補点をそれぞれ通過する複数の上型干渉曲線を、仮設定した運転条件のもとで生成する上型干渉曲線生成工程と、
 複数の上型干渉曲線のうち上型に対して1つの候補点のみにおいて干渉する1つの上型干渉曲線について、当該1つの上型干渉曲線と対応する候補点との間に隙間が形成されるように、仮設定された運転条件を補正する運転条件決定工程と、
 を含む。
[0017]
 また、本発明のある実施例では、複製プレスラインの搬送モーション作成方法は、
 上型に対する既存搬送装置の軌跡から形成される既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータを読み込むデータ読込工程と、
 既存プレスライン上型干渉曲線を所定の間隔で分割した複数の分割点によって点列化する既存プレスライン上型干渉曲線点列化工程と、
 上型に対する新搬送装置の軌跡により形成される新上型干渉曲線を、複数の分割点についてそれぞれ生成する新上型干渉曲線個別設定工程と、
 新上型干渉曲線のうち、複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する1つの新上型干渉曲線を選択する新上型干渉曲線選択工程と、
 新上型干渉曲線選択工程によって選択した1つの新上型干渉曲線を、上型と所定のクリアランスを保つように上型から離れる方向に移動して、設定新上型干渉曲線を生成する新上型干渉曲線補正工程と、
 を含む。
[0018]
 また、本発明のある実施例では、複製プレスラインの搬送モーション作成方法は、
 既存搬送経路から形成される既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ、及び、新搬送経路の搬送条件に関する新搬送条件データを読み込むデータ読込工程と、
 既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ及び新搬送条件データに基づいて、既存プレスライン下型干渉曲線から上方に離れた位置に仮下型干渉曲線を初期設定する新下型干渉曲線初期設定工程と、
 仮下型干渉曲線に所定間隔で複数の制御点を設け、複数の制御点をそれぞれ既存プレスライン下型干渉曲線に向かって、複数の制御点が既存プレスライン下型干渉曲線と所定のクリアランスとなるようにそれぞれ移動させることにより新下型干渉曲線を生成する搬送経路設定工程と、
 を含む。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 第1典型的実施例におけるプレスラインの概略構成を示す図である。
[図2] 第1典型的実施例における搬送装置を鉛直方向上方から視た図である。
[図3] 第1典型的実施例における搬送モーション演算装置の構成を示すブロック図である。
[図4] 第1典型的実施例における搬送モーション演算装置により搬送モーションデータおよびプレスモーションデータを生成する手順を示すフローチャートである。
[図5] 第1典型的実施例における計算用データ処理の手順を示すフローチャートである。
[図6] 第1典型的実施例における上型の輪郭線に設定された複数の干渉候補点の構成を示す図である。
[図7] 第1典型的実施例における干渉候補点を抽出する手順を示す図である。
[図8] 第1典型的実施例におけるバキュームカップに設定した代表点と、その軌跡を模式的に示す図である。
[図9] 第1典型的実施例における係る搬送経路とこの搬送経路に沿って移動する搬送装置のクロスバーの構成を示す模式図である。
[図10] 第1典型的実施例における搬送経路の復路を設定する手順を示すフローチャートである。
[図11] 第1典型的実施例における搬送装置の制御点の構成を示す図である。
[図12] 第1典型的実施例における3つの区間に分割された搬送経路の構成を示す図である。
[図13] 第1典型的実施例における搬送装置間位相差とラインSPMとを設定する詳細な手順を示すフローチャートである。
[図14] 第1典型的実施例におけるプレス機の型内に2つの搬送装置が同時に存在した状態を示す図である。
[図15] 第1典型的実施例における上型干渉曲線の特性を模式的に示す図である。
[図16] 第1典型的実施例における複数の干渉候補点を通過する上型干渉曲線の構成を示す図である。
[図17] 第1典型的実施例におけるプレス-搬送位相差の作業可能範囲を示す図である。
[図18] 第1典型的実施例におけるプレスSPMを低減した場合における作業可能範囲の変化を示す図である。
[図19] 第2典型的実施例における複製プレスラインの概略構成を示す図である。
[図20] 第2典型的実施例における搬送モーション作成方法において用いられる既存プレスラインの概略構成を示す図である。
[図21] 第2典型的実施例におけるモーションデータ演算装置の構成を示すブロック図である。
[図22] 第2典型的実施例におけるモーションデータ演算装置により搬送モーションデータを生成する手順を示すフローチャートである。
[図23] 第2典型的実施例におけるモーションデータ演算装置による新下型干渉曲線の作成手順を示すフローチャートである。
[図24] 第2典型的実施例における既存プレスラインの既存搬送経路とこの既存搬送経路に沿って移動する既存搬送装置のクロスバーの構成を示す模式図である。
[図25] 第2典型的実施例における複製プレスラインの新搬送経路とこの新搬送経路に沿って移動する新搬送装置のクロスバーの構成を示す模式図である。
[図26] 第2典型的実施例における昇降する上型から視た新搬送装置のクロスバーの軌跡を示す図である。
[図27] 第2典型的実施例におけるモーションデータ演算装置による新上型干渉曲線の作成手順を示すフローチャートである。
[図28] 第2典型的実施例における既存プレスラインにおいて、上型から視た既存搬送装置のクロスバーの軌跡を示す図である。
[図29] 第2典型的実施例における複製プレスラインにおいて、上型から視た新搬送装置のクロスバーの軌跡を示す図である。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下、本発明の典型的実施例を図面に基づいて説明する。
[0021]
<第1典型的実施例>
 図1は、第1典型的実施例のプレスライン101の概略構成を示す図である。
[0022]
 プレスライン101は、ワークWを加工する複数台のプレス機102と、各プレス機102に付随して設けられ、これらプレス機102の間でワークWを搬送する複数台の搬送装置103と、各プレス機102の動作と各搬送装置103の動作とを制御する制御装置104とを備える。
[0023]
 プレスライン101は、各プレス機102による複数のプレス工程を経て、平板状のワークから所定の形状の製品を製造する。複数のプレス機102は、プレス工程の進行と同じ順序で配置されるとともに、各プレス機102には、各プレス工程が割り当てられる。第1典型的実施例では、図1中、左側から右側へ向かって順にプレス工程が進行するものとする。また、このプレス工程が進行する方向と、各搬送装置がワークを搬送する搬送方向Yとは同じであるとする。
[0024]
 各プレス機102は、ワークWの下側に配置された下型121と、この下型121に対向して配置された上型122と、下型121に対して上型122を接近、離隔させる昇降機構123と、この昇降機構123を制御する図示しないコントローラと、を有する。以上のプレス機102は、下型121に対し上型122を鉛直方向Zに沿って昇降することで、ワークWをプレス加工する。
[0025]
 搬送装置103は、柱状のクロスバー132と、隣接するプレス機の間に設定された搬送経路Cに沿ってクロスバー132を移動する図示しない移動装置と、この移動装置を制御する図示しないコントローラと、を有する。また、クロスバー132には、ワークWに吸着しこれを所定の姿勢で保持する複数の保持部が設けられている。第1典型的実施例では、この保持部として図1に示すような皿状のバキュームカップ131を用いた場合について説明するが、保持部の形状、位置、および数などは、以下のものに限らない。
[0026]
 図2は、搬送装置103を鉛直方向上方から視た図である。図2に示すように、クロスバー132は、搬送方向Yに対して垂直な方向Xに延びる。また、このクロスバー132には、合計4つのバキュームカップ131が搬送方向Y前後に設けられている。また、これらバキュームカップ131は、鉛直方向Zに沿って視て真円状となっている。
[0027]
 図1に戻って、各搬送装置103の搬送経路Cは、前プレス工程を実行するプレス機102から次プレス工程を実行するプレス機102へ延びる往路COと、次プレス工程を実行するプレス機102から前プレス工程を実行するプレス機102へ延びる復路CBと、を含んで構成される。各搬送装置103は、隣接するプレス機102の間で、このような搬送経路Cに沿ってクロスバー132を移動し、前プレス工程に対応するプレス機2で加工されたワークWを、次プレス工程に対応するプレス機102へ搬送する。すなわち、搬送装置103は、ワークWをバキュームカップ131で保持しながら往路COを移動し、復路CBではワークWを保持せず空走する。
[0028]
 各搬送装置103は、以下のように動作し、ワークWを搬送する。先ず、前プレス工程に対応するプレス機102の上型122と下型121との間へ、クロスバー132を復路CBに沿って移動する。次に、バキュームカップ131で加工後のワークWを吸引し、このワークWを保持する。次に、次プレス工程に対応するプレス機102の上型122と下型121との間へ、ワークWを保持したまま、クロスバー132を往路COに沿って移動する。次に、保持したワークWをプレス機102の下型121に設置する。
[0029]
 制御装置104は、所定のプレスモーションデータおよび搬送モーションデータに基づいて、各プレス機102および各搬送装置103のコントローラに制御信号を送信し、各プレス機102の周期的な昇降動作(以下、「プレスモーション」という)、並びに、各搬送装置103の周期的な搬送動作(以下、「搬送モーション」という)を制御する。
[0030]
 搬送モーション演算装置105は、各プレス機102のプレスモーションを規定したプレスモーションデータを読み込み、各搬送装置103の搬送モーションを規定した搬送モーションデータを生成し、さらにこれらプレスモーションデータおよび搬送モーションデータを、制御装置104に送信する。
[0031]
 ここで、プレスモーションデータおよび搬送モーションデータの内容について説明する。プレスモーションを規定するプレスモーションデータには、各プレス機102の上型122を駆動する速度、位置、および時刻等のプレスモーションに関する情報が含まれる。この上型122を駆動する速度は、プレス機102のワークの加工能力を示す加工速度、すなわち、プレスSPMとして特徴付けられる。したがって、このプレスSPMが大きいほど、上型122を昇降する周期が短くなる。
[0032]
 搬送モーションを規定する搬送モーションデータには、各搬送装置103の搬送経路Cと、この搬送経路Cに沿って搬送装置103を駆動する速度に関する情報が含まれる。第1典型的実施例では、搬送装置103の搬送経路Cを、3次元空間内におけるクロスバー132の中心位置の軌跡として定義する。
[0033]
 この他、搬送モーションデータには、ワークの生産能力、すなわちプレスライン101において1分間でワークを加工できる数量を示すライン速度としてのラインSPMに関する情報が含まれる。すなわち、このラインSPMを大きな値に設定することにより、プレスライン101における生産サイクルを向上することができる。また、各搬送装置103を駆動する速度や時刻は、このラインSPMに合わせて決定される。
[0034]
 また、周期的な搬送モーションを繰り返す搬送装置103を複数制御するため、搬送モーションデータには、各搬送装置103間の搬送モーションの位相差(以下、「搬送装置間位相差」という)に関する情報が含まれる。またさらに、周期的なプレスモーションを繰り返す各プレス機102と、周期的な搬送モーションを繰り返す各搬送装置103とを制御するため、搬送モーションデータには、各プレス機102の搬送モーションと各搬送装置103の搬送モーションとの間の位相差(以下、「プレス-搬送間位相差」という)に関する情報が含まれる。
[0035]
 搬送モーション演算装置105は、以上のような情報を含むプレスモーションデータおよび搬送モーションデータを、制御装置104に送信する。
[0036]
 図3は、搬送モーション演算装置105の構成を示すブロック図である。搬送モーション演算装置105は、入力装置151と、記憶装置152と、演算装置153と、を含んで構成される。
[0037]
 入力装置151は、作業者が操作可能なキーボードやマウスなどのハードウェアで構成される。この入力装置151を操作することにより入力されたデータや指令は、演算装置153に入力される。記憶装置152は、ハードディスクやCDROMなどのハードウェアで構成される。この記憶装置152には、各種データが記憶されており、記憶されたデータは、演算装置153に適宜入力される。
[0038]
 演算装置153は、CPU、ROM、RAMなどのハードウェアにより構成される。この演算装置153は、これらハードウェアにより実現される複数の機能ブロックを備える。より具体的には、演算装置153は、計算用データ読込部1531と、計算用データ処理部1532と、搬送経路算出部1533と、搬送経路評価部1534と、搬送装置間位相差算出部1535と、作業可能範囲算出部1536と、作業可能範囲評価部1537と、モーションデータ出力部1538と、を含んで構成される。
[0039]
 記憶装置152には、各プレス機の上型および下型の形状、各工程におけるワークの形状、並びに各搬送装置のクロスバーおよびバキュームカップの形状や位置を規定したCADデータが記憶される。記憶装置152には、このようなCADデータの他、予め設定されたプレスモーションデータが記憶されている。
[0040]
 計算用データ読込部1531は、記憶装置152に記憶された各種CADデータを読み込む(後述の図4のステップS201を参照)。計算用データ処理部1532は、計算用データ読込部1531により読み込まれたCADデータに前処理を施し計算にかかる負荷を軽減する(後述の図4のステップS203を参照)。
[0041]
 搬送経路算出部1533は、前処理が施されたCADデータ、並びに、ラインSPMを含む各種搬送条件に基づいて、各搬送装置の搬送経路Cを算出する(後述の図4のステップS204を参照)。搬送経路評価部1534は、搬送経路算出部1533により算出された搬送経路Cを評価し、実際に搬送装置Cに沿ったワークの搬送が可能であるか否かを判別する(後述の図4のステップS205参照)。
[0042]
 搬送装置間位相差算出部1535は、搬送経路算出部1533により算出された搬送経路C、および入力装置151から入力されたラインSPMに基づいて、搬送装置間位相差を計算する(後述の図13のステップS261を参照)。
[0043]
 作業可能範囲算出部1536は、記憶装置152に記憶されたプレスモーションデータを読み込む。さらに、この読み込んだプレスモーションデータ、並びに、設定された搬送経路Cおよび搬送装置間位相差でプレスラインを稼動した場合に、上型と搬送装置およびこの搬送装置により搬送されたワークとが干渉せずにプレス-搬送間位相差を設定可能な作業可能範囲を算出する(後述の図13のステップS265を参照)。
[0044]
 作業可能範囲評価部1537は、算出された作業可能範囲を評価し、全プレス機に対して作業可能範囲を確保できたか否かを判別する。作業可能範囲を確保できた場合には、この範囲内にプレス-搬送間位相差を設定する(後述の図4のステップS211を参照)。モーションデータ出力部1538は、以上のようにして算出されたプレスモーションデータおよび搬送モーションデータを、制御装置104に送信する(後述の図4のステップS216を参照)。
[0045]
 次に、図4に示すメインフローチャートを参照して、搬送モーション演算装置105により、プレスモーションデータおよび搬送モーションデータを生成し、制御装置に送信する手順について説明する。
[0046]
 ステップS201では、各種CADデータを読み込む。このステップでは、各プレス機の上型の形状、各プレス機の下型およびワークが載置された下型の形状、各プレス工程におけるワークの形状、および各搬送装置のクロスバーやバキュームカップの形状や位置を規定したCADデータを記憶装置から読み込む。
[0047]
 ステップS202では、搬送条件を入力する。ここで搬送条件とは、搬送装置によりワークを搬送する際に必要となる、種々の設定値を示す。具体的にはこの搬送条件には、上述のラインSPMの他、ワークを吸引する際におけるクロスバーの高さ、ワークの下型に対するリフト量および送り量、並びに、ワークを搬送する際においてワークを保持する姿勢に関する量などの設定値が含まれる。また、このステップにおいて、ラインSPMは暫定的に最大値に設定される。ここで最大値に設定されたラインSPMは、後に詳述する図13のステップS261~S267の工程において、適切な値に再設定される。
[0048]
 ステップS203では、計算用データ処理を行う。上記ステップS201で読み込んだ上型や下型などの形状を規定したCADデータは、一般的には3次元データである。このような3次元データに基づいて、以下に示す各種計算を行うことも原理的には可能であるが、計算に膨大な時間がかかるおそれがある。そこで、このステップでは、搬送経路Cや、後述の作業可能範囲の計算にかかる負荷を軽減するため、ステップS201において読み込んだ3次元のCADデータに前処理を施し、計算に用いるための各種データを生成する。後に詳述するように、上型や下型の形状データは、搬送経路Cに沿って移動する搬送装置との干渉を検査する際に用いる。しかしながら実際は、上型や下型に干渉するおそれのある部位は搬送装置の形状に応じて限定される。そこでこの計算用データ処理では、上型および下型のうち干渉する可能性の高い箇所を、搬送装置の形状に基づいて特定しておき、そしてその箇所に特化した計算を行うべく、3次元データから2次元データや点群データなどの各種データを生成する。
[0049]
 図5は、計算用データ処理の詳細な手順を示すフローチャートである。なお、ステップS231,232で生成されるデータは、主に後述の図13のステップS262,S263で用いられるものであり、ステップS233,S235で生成されるデータは、主に後述の図10のステップS245で用いられるものである。
[0050]
 ステップS231では、上型の2次元のシルエットデータを生成する。搬送装置は、上述のように搬送方向に対し垂直に延びるクロスバーからバキュームカップを略鉛直方向の下方に向けて設けられているため、上型に対してはクロスバーが干渉する可能性が高く、下型に対してはバキュームカップが干渉する可能性が高くなっている。上述のように、クロスバーは柱状であり、搬送方向に対して垂直な方向に延びている。このような形状のクロスバーを移動させたときにおける上型との干渉を考慮する場合、上型の形状としては、クロスバーの延在方向Xに沿って視たときにおける上型の輪郭の形状、すなわち、上型を搬送経路と平行な平面に投影したときにおける上型の形状が主に重要になると考えられる。そこで、このステップS231では、上型を搬送装置の搬送経路と平行な平面に投影して得られる図6に示すような2次元のシルエットデータを、上型の3次元データから生成する。
[0051]
 ステップS232では、上記ステップS231で生成した上型の2次元のシルエットデータに基づいて、上型の表面のうち搬送装置のクロスバーと干渉する可能性がある複数の干渉候補点を抽出する。先ず、図6に示すように、任意の方位間隔ごとに複数の方位D1~DLを設定する。次に、各方位D1~DLに沿って延びる方向線に対する垂線と、上型外部とが1点のみで接する点を複数の干渉候補点A1~AN,B1~BNとして抽出する。このとき、上型の中心に対し右側、すなわちワークの搬出時にクロスバーが通過する側にある干渉候補点を、搬出時の複数の干渉候補点A1~ANとする。また、上型の中心に対し左側、すなわちワークの搬入時にクロスバーが通過する側にある干渉候補点を、搬入時の複数の干渉候補点B1~BNとする。
[0052]
 図7に示すように、複数の方位D1~DLのうちの1つDMに基づいて、上述のような干渉候補点AMを抽出する具体的な手順を説明する。先ず、方位DMに沿って延びる方向線に対する垂線LMを引く。次に、この垂線LMを、上型外部側から上型内部側へ方位DMに沿って平行移動させたときに、この垂線LMが上型の輪郭線と初めて接する点を干渉候補点AMとして抽出する。これに限らず、垂線LMを上型内部側から上型外部側へ方位DMに沿って平行移動させたときに、この垂線LMが上型の輪郭線と最後に接する点を干渉候補点AMとして抽出してもよい。
[0053]
 図5に戻って、ステップS233では、全バキュームカップに対し、1つ当り少なくとも4つの特徴点を抽出する。バキュームカップは、上述のように皿状でありその吸着部は下方に向けられている。そこで、以下のバキュームカップと下型との干渉にかかる計算では、計算の有効性を維持しながら高速の演算が可能となるように、このステップS233では、環状の吸着部の外周に少なくとも4つの特徴点P1,P2,P3,P4を仮想的に設定する(図8参照)。そして以下では、クロスバーを搬送経路に沿って移動させた場合におけるバキュームカップの軌跡を、特徴点P1~P4の軌跡として捉える。ステップS233では、このような複数の特徴点を、全バキュームカップに対して抽出する。
[0054]
 ステップS234では、抽出した全バキュームカップのそれぞれに対する複数の特徴点P1~P4を下型に載置されたワークに投影する。ステップS235では、ワークが載置された下型の、各特徴点P1~P4の軌跡を含む断面の2次元データを生成する。上述のようにバキュームカップの形状を2次元平面内の4つの特徴点P1~P4として単純化することに伴い、下型の形状も単純化して捉えることができる。つまり図8に示すように、バキュームカップの軌跡を特徴点P1~P4の軌跡として捉えたとき、バキュームカップと下型との干渉を考慮する場合、下型の形状としては、これら特徴点P1~P4の軌跡TR1,TR2,TR3,TR4を含む各平面に沿った断面形状のみが主に重要になると考えられる。そこで、このステップS235では、4つのバキュームカップの代表点P1~P4を下型に搬送方向Yに沿って、下型に載置されたワークに投影することにより、代表点P1~P4の各軌跡TR1~TR4を含む各平面に沿ったワークおよび下型の断面の2次元データを、下型の3次元データから生成する。
[0055]
 また、複数の下型のうちの1つと、この下型に載置されたワークに注目すると、ワークの形状は、プレス加工前とプレス加工後とでは異なったものとなる。したがって、上記ワークおよび下型の断面の2次元データの生成では、プレス加工前のワークが載置された下型と、プレス加工後のワークが載置された下型との2種類の2次元データを生成する。これにより、(バキュームカップの数)×(1つのバキュームカップから抽出した特徴点の数)×2(プレス加工前およびプレス加工後のワーク)に相当する数のワークおよび下型の断面の2次元データが生成される。なお、プレス加工前のワークを下型に搬入する搬送装置(後述の図9の搬送装置103A参照)と、プレス加工後のワークを上記下型から搬出する搬送装置(後述の図9の搬送装置103B参照)とでは、一般的にそれぞれのバキュームカップの位置や数は異なったものとなる。したがってこの場合、プレス加工前のワークが載置された下型の断面の位置および数は、プレス加工後のワークが載置された下型の位置および数と異なったものとなる。
[0056]
 図4のメインフローチャートに戻って、ステップS204では、計算用データ処理のステップS235で生成したワークおよび下型の2次元データを用いて搬送経路Cを設定する。図9は、搬送経路Cと、この搬送経路Cに沿って移動する搬送装置103の構成を示す模式図である。なお、この図9には、往路COに沿ってワークWを保持しながら移動する搬送装置103Aと、復路CBに沿ってワークを保持せず空走する搬送装置103Bを示す。
[0057]
 図9に示すように、搬送経路Cは、搬送装置103またはこの搬送装置103により搬送されるワークWと、下型121またはこの下型121に載置されたワークWとの間隔が出来るだけ小さくなるように設定される。
[0058]
 搬送経路Cのうち復路CBでは、搬送装置103Bはワークを保持せずに空走する。このため、復路CBは、搬送装置103Bのバキュームカップ131とワークWおよび下型121との間隔が小さくなるように設定される。搬送経路Cのうち往路COでは、搬送装置103AはワークWを保持しながら移動する。このため、往路COは、搬送装置103Aにより保持されたワークWと下型121との間隔が小さくなるように設定される。このように、下型121との間隔が小さくなるように、搬送経路Cを設定することにより、下型121に対し昇降する上型122と搬送装置103との干渉を避け易くすることができる。
[0059]
 次に、図10に示すフローチャートを参照して、搬送経路Cの復路CBを設定する手順について詳細に説明する。なお以下では、復路CBのうち搬送装置が下型へ向う経路を設定する手順のみを説明する。復路CBのうち搬送装置が下型から出てゆく経路については、これと同様の手順で設定されるため詳細な説明を省略する。また往路COについては、ワークの大きさに応じて目視で設定する。
[0060]
 ステップS241では、制御点PCの位置を仮設定する。図11に示すように、この制御点PCは、クロスバー132が通過するべき点として搬送装置103の搬送経路Cを規定するものであり、下型の近傍に設定される。第1典型的実施例では、制御点PCの位置を、下型の所定の基準点PLOを原点とした座標(YPC,ZPC)で規定する。すなわち、基準点PLOから搬送方向Yに沿った距離YPCと、基準点PLOから鉛直方向Zに沿った距離ZPCとの2つの値により、制御点PCの位置を規定する。なお、このステップS241において制御点PCを仮設定する際には、ワークおよび下型から最も離れた搬送装置の動作限界値に設定することが好ましい。
[0061]
 ステップS242では、仮設定した制御点PCを通過する搬送経路Cを、制御点の位置情報(YPC,ZPC)に基づいて算出する(図11参照)。搬送装置の搬送経路は、搬送装置の搬送速度や作動範囲などにより所定の関数で規定される。したがって、上記仮設定した制御点PCの位置情報(YPC,ZPC)を、クロスバーが通過するべき点として入力することにより、図11に示すように、搬送方向Yおよび鉛直方向Zを基底とした平面内の軌跡として搬送経路Cを決定することができる。
[0062]
 ステップS243では、搬送経路を、経路の終端を含む所定の微小区間を除き、搬送装置の搬送速度に応じて3つの区間(区間1、区間2、および区間3)に分割する(図12参照)。一般的に搬送装置の搬送速度は、プレスラインの非常停止時、停電時、部品破損時などを想定して、経路の終端に近づくに従って(区間3から区間1に向うに従って)遅くなるように設定される。そこで、以下では、搬送速度が異なる区間ごとに適した搬送経路を設定するべく、搬送経路Cを3つの区間に分割する。なお以下では、区間1内の搬送経路をC1とし、区間2内の搬送経路をC2とし、区間3内の搬送経路をC3とする。ところで経路の終端では、バキュームカップがワークに接することは明らかである。また以下詳細に説明するように、第1典型的実施例では、バキュームカップの軌跡とワークおよび下型の間に所定の間隔が確保されるように、搬送経路を決定する。したがって、以下の処理において搬送装置とワークとが干渉していると誤って判定されるのを防止するため、上述のように、搬送経路のうち経路の終端を含む微小区間を除外して区間1~3を定義する。
[0063]
 ステップS244では、搬送装置を上記ステップS242で設定した搬送経路Cに沿って移動させた場合における、全バキュームカップの全特徴点の軌跡を算出する。より具体的には、搬送経路C1,C2,C3を各特徴点に平行移動することにより、各軌跡が算出される。なお以下では、全バキュームカップの全特徴点の軌跡を、区間1内に属する軌跡の集合(以下、「C1軌跡群」と言う)と、区間2内に属する軌跡の集合(以下、「C2軌跡群」と言う)と、区間3内に属する軌跡の集合(以下、「C3軌跡群」と言う)とに分類する。なお図12には、一例とし3つの特徴点の軌跡のみを示す。
[0064]
 ステップS245では、上記計算用データ処理のステップS235で生成した下型の全断面の2次元データと、上記ステップS244で算出したC1、C2、C3軌跡群とを比較することにより、ワークおよび下型と特徴点の軌跡との間隔を軌跡群ごとに算出する。
[0065]
 ステップS246では、ステップS245における軌跡群ごとの下型との間隔の測定値と、区間ごとに設定された所定の目標値とを比較する。より具体的には、軌跡群ごとの間隔の測定値と目標値との差を算出する。上述のように、搬送装置の搬送速度は、経路の終端に近づくに従って遅くなるように設定される。このように、経路の終端に近づくにつれて搬送装置の搬送速度が遅くなるように設定されることから、ワークおよび下型と軌跡との間の間隔の目標値は、区間3から区間1へ向うに従い小さくなるように設定される。
[0066]
 ステップS247では、上記ステップS246で算出された軌跡群ごとの測定値と目標値との差のうち、最も小さいものを選択する。
[0067]
 ステップS248では、上記ステップS247において選択された測定値と目標値との差が所定の許容範囲内にあるか否かを判別することにより、バキュームカップの軌跡とワークおよび下型との間隔が目標値に十分に近づいたか否かを判別する。この判別がYESの場合には、この処理を直ちに終了し、NOの場合には、ステップS249に移る。
[0068]
 ステップS249では、バキュームカップの軌跡と目標値との差が許容範囲内にないと判定されたことに応じて、バキュームカップの軌跡が上記目標値に近づくように、制御点PCの位置を調整し、ステップS242に移る。ここで、例えば、測定値が目標値よりも大きい場合、すなわち、バキュームカップの軌跡がワークおよび下型から大きく離れている場合には、制御点PCの位置を下型の基準点PLOに近づくように調整することが好ましい。また、測定値が目標値よりも小さい場合、すなわち、バキュームカップの軌跡がワークおよび下型に近すぎるかあるいはバキュームカップがワークおよび下型に干渉する場合には、制御点PCの位置を下型の基準点PLOから離すように調整することが好ましい。
[0069]
 図4に戻って、ステップS205では、設定された搬送経路Cに沿ったワークの搬送が可能であるか否かを判別する。このステップでは、搬送経路Cに沿ってクロスバーを移動した場合に、このクロスバーを移動する移動装置にかかる負担等を計算することにより、実際に搬送経路Cに沿ったワークの搬送が可能であるか否かを判別する。この判別がYESの場合には、ステップS206に移り、NOの場合には、ステップS204に移り、搬送可能な搬送経路Cを再設定する。
[0070]
 ステップS206では、プレスモーションデータを読み込む。このステップでは、予め設定され、記憶装置に記憶された複数のプレスモーションデータのうち、プレスSPMが最大のプレスモーションデータを読み込む。これにより、プレスSPMは暫定値に最大値に設定される。この各プレス機のプレスSPMは、後に詳述するステップS212~S214の工程において、適切な値に再設定される。
[0071]
 ステップS207では、隣接する搬送装置間の位相差と、ラインSPMとを設定する処理を実行した後、ステップS211へ移る。図13は、これら搬送装置間の位相差と、ラインSPMとを設定する詳細な手順を示すフローチャートである。
[0072]
 先ず、ステップS261では、隣接する搬送装置間の位相差を算出する。図14は、プレス機102の型内に2つの搬送装置103A,103Bが同時に存在した状態を示す図である。より具体的には、図14は、プレス機102でワークWAを加工した後、この加工後のワークWAを搬送装置103Aで搬出しながら、加工前のワークWBを搬送装置103Bで搬入する状態を示す図である。
[0073]
 プレス機102のプレスSPMを大きな値に設定するためには、加工後のワークWAをプレス機102から搬出する時刻と、加工前のワークWBをプレス機102に搬入する時刻との時間差は、できるだけ短くすることが好ましい。すなわち、2つの搬送装置103A,103Bの型内に滞在する時間を極力低減することが好ましい。そこで、搬送装置103A,103B間の位相差は、プレス機102から搬出する加工後のワークWAと、このプレス機102に搬入する加工前のワークWBとの間の、プレス機102の型内における搬送方向Yに沿った間隔ΔYLが最小になるように設定される。ステップS261では、以上のような方針の下で、互いに隣接する搬送装置間の位相差を設定する。
[0074]
 図13に戻って、ステップS262では、上記計算用データ処理のステップS232で抽出した搬出時の各干渉候補点A1~ANおよび搬入時の各干渉候補点B1~BNに対し、これら干渉候補点A1~AN,B1~BNを通過する上型干渉曲線を、仮設定した運転条件のもとで生成する。
[0075]
 ここで、上型干渉曲線の特性について、図15を参照して説明する。上型干渉曲線とは、設定された搬送経路に沿って移動するクロスバー132のうち、上型122に干渉し易い点であるクロスバー干渉点の軌跡を、設定された所定の条件のもとで昇降動作する上型122の静止系から視た図である。すなわち、上型干渉曲線が上型と重複する場合、上型と搬送装置が干渉することを示す。なお、図15には、クロスバー132を復路CBのうち下型から出てゆく経路に沿って移動させた場合における上型干渉曲線を実線で示す。この場合、クロスバー132の上端のうち図15中、左側の点PAがクロスバー干渉点となる。また、クロスバー132を復路CBのうち下型へ向う経路に沿って移動させた場合、クロスバー132の上端のうち図15中、右側の点PBがクロスバー干渉点となる。
[0076]
 この上型干渉曲線の関数形は、上型のプレス速度と搬送装置の搬送速度の比(プレス速度/搬送速度、以下「PM比」という)に応じて変化する。例えば、プレス速度を上げてPM比を大きくすると、上型干渉曲線は、図15中、一点鎖線で示すように水平方向に対する角度が大きくなるように変化する傾向がある。一方、プレス速度を下げてPM比を小さくすると、上型干渉曲線は、図15中、二点鎖線で示すように水平方向に対する角度が小さくなるように変化する傾向がある。このように、PM比を変えると上型干渉曲線の関数形が変化するため、上型のうち干渉し易い点も変化する。したがって、第1典型的実施例では、複数の干渉候補点A1~AN,B1~BNを予め抽出しておき、以下詳細に説明するように、PM比を変えるごとにこれら複数の干渉候補点A1~AN,B1~BNの中から最も干渉しやすい点を選択することで、最適な運転条件を探索する、という手法を用いる。
[0077]
 上記ステップS262では、図16に示すように、仮設定されたラインSPMおよびプレスSPMのもとで上型干渉曲線の関数形を決定した後、この上型干渉曲線を平行移動することにより、上記抽出した干渉候補点A1~AN,B1~BNを通過する上型干渉曲線を生成する。なお、上型干渉曲線の関数形を固定したまま、これを平行移動する操作は、後述のプレス-搬送間位相差ΔTPを変化させることに相当する。また、図16には搬入時の干渉候補点B1~BNを通過する上型干渉曲線の図示を省略する。
[0078]
 ステップS263では、生成した搬出時の各干渉候補点A1~ANを通過する上型干渉曲線および搬入時の各干渉候補点B1~BNを通過する上型干渉曲線の中から、上型に対して干渉候補点でのみ干渉する上型干渉曲線を選択する。ここで、上型に対して干渉候補点のみで干渉する上型干渉曲線とは、上型に対して干渉候補点のみで接する上型干渉曲線のことをいい、図16に示す例では、干渉候補点A3を通過する上型干渉曲線に相当する。
[0079]
 ステップS264では、ステップS263で選択した上型干渉曲線を、上型から離れる方向に移動することにより、上型干渉曲線と上型との間に所定の必要クリアランスを確保する。
[0080]
 ステップS265では、上記ステップS263,S264において選択した搬出時の干渉候補点および搬入時の干渉候補点と、各干渉候補点を通過する上型干渉曲線に基づいて、各プレス機の作業可能範囲を算出し、ステップS266に移る。ここで、作業可能範囲とは、設定された各搬送装置の搬送経路C、搬送装置間位相差ΔTH、ラインSPM、およびプレスSPMのもとでプレスラインを稼動した場合に、上型と搬送装置またはこの搬送装置に保持されたワークとが干渉せずに、プレス-搬送間位相差ΔTPを設定できる範囲を示す。
[0081]
 図17は、プレス-搬送位相差の作業可能範囲を示す図である。図17に示すように、プレス-搬送間位相差によっては、上型と搬送装置とが干渉してしまい、ワークを搬出できない領域と、搬入できない領域とがある。そこで、作業可能範囲は、搬出および搬入が可能な領域に限られる。このステップS265では、各プレス機に対して、プレス-搬送間位相差を設定可能な作業可能範囲を算出する。
[0082]
 図13に戻って、ステップS266では、作業可能であるか否か、すなわち、有意な大きさの作業可能範囲が確保できたか否かを判別する。この判別がNOの場合には、仮設定したラインSPMやプレスSPMのもとでは、上型に干渉せずに搬送装置を移動させることができないと判断し、ステップS267に移る。そして、ステップS267では、ラインSPMをより小さな値に設定した後、ステップS261に移る。すなわち、作業が可能となるまで、ラインSPMを低減する。一方、この判別がYESの場合には、上記ステップS263で選択した上型干渉曲線が通過する干渉候補点にしぼり、この干渉候補点の近傍を通過するように搬送経路、ラインSPM、および搬送装置間位相差を除く残りの運転条件を決定するべく、図4のステップS211に移る。ステップS246では、作業可能となるように、ラインSPMを低減し、ステップS241に移る。
[0083]
 図4に戻って、ステップS211では、上記ステップS265で算出された各プレス機の作業可能範囲を評価し、全プレス機に対して適切な作業可能範囲が確保できたか否かを判断し、適切な作業可能範囲を確保できたと判断した場合には、例えば、作業可能範囲の略中心にプレス-搬送間位相差ΔTPを設定した後、ステップS212に移る。
[0084]
 ステップS212では、ステップS208において算出された各プレス機に対する作業可能範囲に、余剰があるか否かを判別する。この判別がYESの場合、すなわち、作業可能範囲に余剰がある場合、ステップS213に移り、余剰があるプレス機におけるプレスSPMをより小さな値に設定した後、ステップS214に移る。ステップS214では、設定されたプレスSPMのもとで作業可能範囲を再び算出し、ステップS212に移る。一方、この判別がNOの場合には、プレスモーションデータ、および搬送モーションデータの設定を終了し、ステップS215に移る。
[0085]
 図18は、プレスSPMを低減した場合における作業可能範囲の変化を示す図である。図18に示すように、ラインSPMを保ったまま、プレスSPMのみを低減すると、作業可能範囲が狭くなる。これは、上述のようにプレスSPMを低減すると上型干渉曲線の関数形が変化し、結果として上型干渉曲線と上型との隙間が狭くなるためであり、したがって、上記作業可能範囲の余剰は上型干渉曲線と上型との隙間に相当する。
[0086]
 以上のように、ステップS212~S214では、設定された各搬送装置の搬送経路C、各搬送装置間位相差ΔTH、ラインSPM、およびプレス-搬送間位相差ΔTPのもとで、上型干渉曲線と上記ステップS265において作業可能範囲を算出する際に着目した干渉候補点との間の隙間が所定の下限値になるまで、プレスSPMが低減される。ここで、上型干渉曲線と干渉候補点との隙間の下限値は、プレスラインの非常停止時、停電時、部品破損時などを想定して、非常時であっても上型と搬送装置とが干渉しないような値に、設備仕様に応じて設定される。
[0087]
 図4に戻って、ステップS215では、設定されたプレスモーションデータおよび搬送モーションデータのもとで、プレス機のプレスモーションおよび搬送装置の搬送モーションを再現するアニメーションを生成する。作業者は、このアニメーションを視て、プレスモーションデータおよび搬送モーションデータの最終確認を行う。
[0088]
 ステップS216では、プレスモーションデータおよび搬送モーションデータを制御装置に送信し、この処理を終了する。
[0089]
(1)第1典型的実施例によれば、先ず、搬送経路を規定する制御点PCの位置を仮設定し、この制御点PCの位置情報(YPC,ZPC)に基づいて、搬送装置103が制御点PCを通過する搬送経路Cを算出し、さらにこの搬送経路Cに沿って搬送装置103を移動させた場合におけるバキュームカップ131の軌跡を算出する。次に、このバキュームカップ131の軌跡と下型121の形状とを比較し、さらにこの軌跡と下型121との間隔が区間1~3ごとに設定された目標値に近づくように、上記仮設定した制御点PCの位置を調整する。これにより、搬送装置103のバキュームカップと下型121とが干渉しない最適な搬送経路Cを、制御点PCの位置を調整するだけで設定することができる。また、これにより、搬送装置103が下型121と干渉せずかつ最も低くなるような搬送経路Cを設定することができるので、結果として、プレスライン全体の生産サイクルを向上することができる。
[0090]
(2)また、搬送装置103の1つのバキュームカップ131に対し4つの代表点P1~P4を設定する。そして、バキュームカップ131の上記代表点P1~P4の軌跡と、これら代表点P1~P4の軌跡を含む各平面に沿った下型の断面形状とを比較する。すなわち、3次元データを扱わずに、2次元のデータを扱うことで、バキュームカップ131の軌跡と下型との形状とを比較し、搬送経路103の制御点PCを調整する。これにより、搬送経路Cを設定するために必要な計算時間を大幅に短縮することができる。
[0091]
(3)さらに、上型122の形状データに基づいて、上型122と搬送装置103と干渉する可能性がある複数の干渉候補点A1~ANを抽出し、さらに仮設定した運転条件のもとで各干渉候補点を通過する上型干渉曲線を生成する。次に、生成した複数の上型干渉曲線のうち、上型122に対して干渉候補点のみにおいて干渉する上型干渉曲線とこの曲線に対応する干渉候補点に着目し、これら上型干渉曲線と干渉候補点との間に隙間が形成されるように、この上型干渉曲線を生成するために仮設定した運転条件を補正する。これにより、搬送装置103が昇降動作する上型122の近傍を通過するような運転条件を効率的に設定することができる。また、このような運転条件を設定することにより、プレスライン全体の生産サイクルを向上することができる。
[0092]
(4)さらに、上記計算用データ処理のステップS232で、複数の干渉候補点を抽出する際に用いる上型122の形状データとして、上型122を搬送経路Cと平行な平面に投影して生成された2次元データを用いることにより、3次元データを用いた場合と比較して計算にかかる時間を短縮することができる。
[0093]
(5)また、上型122の2次元の形状データに基づいて、任意の方位間隔ごとに延びる方向線に対する垂線と、上型122外部と1点のみで接する点を干渉候補点として抽出する。これにより、簡易な計算で、複数の候補点を抽出することができる。また、上型のうち搬送装置が干渉する干渉点の位置は、運転条件に応じて変化する。運転条件を変化させた後は、抽出した複数の干渉候補点の中から再び干渉点を選択するため、上型と搬送装置との隙間をより確実に確保できる。
[0094]
<第2典型的実施例>
 図19は、第2典型的実施例の複製プレスライン1の概略構成を示す図である。
[0095]
 複製プレスライン1は、ワークWを加工する複数台のプレス機2と、各プレス機2に付随して設けられ、これらプレス機2の間でワークWを搬送する複数台の新搬送装置3と、各プレス機2の動作と各新搬送装置3の動作とを制御する複製プレスライン制御装置4と、各プレス機2の動作と各新搬送装置3の動作に関するモーションデータを生成し複製プレスライン制御装置4に出力するモーションデータ演算装置5と、各プレス機2のプレスモーションデータを複製プレスライン制御装置4に出力する複製プレスラインプレスモーションデータ出力装置6とを備える。
[0096]
 複製プレスライン1は、各プレス機2による複数のプレス工程を経て、平板状のワークから所定の形状の製品を製造する。複数のプレス機2は、プレス工程の進行と同じ順序で配置されるとともに、各プレス機2には、各プレス工程が割り当てられる。第2典型的実施例では、図19中、左側から右側へ向かって順にプレス工程が進行するものとする。また、このプレス工程が進行する方向と、各新搬送装置がワークを搬送する搬送方向Yとは同じであるとする。
[0097]
 各プレス機2は、ワークWの下側であってボルスタ24の上に配置された下型21と、この下型21に対向して配置された上型22と、下型21に対して上型22を接近、離隔させる昇降機構23と、この昇降機構23を制御する図示しないコントローラと、を有する。以上のプレス機2は、下型21に対し上型22を昇降することで、ワークWをプレス加工する。第2典型的実施例では、上型22及び下型21は、後に説明する既存プレスライン1Aの上型22及び下型21と同一である。ここで、上型22及び下型21が既存プレスライン1Aの上型22及び下型21と同一であるとは、既存プレスライン1Aの上型22及び下型21を取り外して、複製プレスライン1における上型22及び下型21として再利用する場合、及び既存プレスライン1Aの上型22及び下型21と同一形状の上型22及び下型21を新たに製造して、複製プレスライン1における上型22及び下型21とする場合のいずれの場合であってもよい。
[0098]
 各新搬送装置3は、複数のバキュームカップ31が連結されたクロスバー32と、隣接するプレス機の間に設定された新搬送経路C1に沿ってクロスバー32を移動する図示しない移動装置と、この移動装置を制御する図示しないコントローラと、を有する。
[0099]
 図19に示すように、各新搬送装置3の新搬送経路C1は、前プレス工程を実行するプレス機2から次プレス工程を実行するプレス機2へ延びる新往路CO1と、次プレス工程を実行するプレス機2から前プレス工程を実行するプレス機2へ延びる新復路CB1と、を含んで構成される。各新搬送装置3は、隣接するプレス機2の間で、このような新搬送経路C1に沿ってクロスバー32を移動し、前プレス工程に対応するプレス機2で加工されたワークWを、次プレス工程に対応するプレス機2へ搬送する。すなわち、新搬送装置3は、ワークWを保持しながら新往路CO1を移動し、新復路CB1ではワークWを保持せず空走する。
[0100]
 各新搬送装置3は、以下のように動作し、ワークWを搬送する。先ず、前プレス工程に対応するプレス機2の上型22と下型21との間へ、クロスバー32を新復路CB1に沿って移動する。次に、バキュームカップ31で加工後のワークWを吸引し、このワークWを保持する。次に、次プレス工程に対応するプレス機2の上型22と下型21との間へ、ワークWを保持したまま、クロスバー32を新往路CO1に沿って移動する。次に、保持したワークWをプレス機2の下型21に設置する。
[0101]
 複製プレスライン制御装置4は、複製プレスラインプレスモーションデータ出力装置6から出力されたプレスモーションデータ及びモーションデータ演算装置5から送信された搬送モーションデータに基づいて、各プレス機2及び各新搬送装置3のコントローラに制御信号を送信し、各プレス機2の周期的な昇降動作(以下、「プレスモーション」という)、並びに、各新搬送装置3の周期的な搬送動作(以下、「搬送モーション」という)を制御する。
[0102]
 モーションデータ演算装置5は、各新搬送装置3の搬送モーションを規定した搬送モーションデータを生成し、さらにこの搬送モーションデータを、複製プレスライン制御装置4に送信する。
[0103]
 ここで、プレスモーションデータ及び搬送モーションデータの内容について説明する。プレスモーションを規定するプレスモーションデータには、各プレス機2の上型22を駆動する速度、位置及び時刻等のプレスモーションに関する情報が含まれる。この上型22を駆動する速度は、プレス機2のワークの加工能力を示す加工速度、すなわち、プレスSPMとして特徴付けられる。したがって、このプレスSPMが大きいほど、上型22を昇降する周期が短くなる。
[0104]
 搬送モーションを規定する搬送モーションデータには、各新搬送装置3の新搬送経路C1と、この新搬送経路C1に沿って新搬送装置3を駆動する速度に関する情報が含まれる。また、搬送モーションデータには、新搬送経路C1となる新下型干渉曲線に関するデータ及び上型と新搬送装置3とが所定のクリアランスを保つように設定された新上型干渉曲線に関するデータを含む。新搬送経路は、所定の定点から視た新搬送装置3における任意の点の軌跡で示すことができるが、第2典型的実施例では、新搬送装置3の新搬送経路C1を、3次元空間内におけるクロスバー32の中心位置の軌跡として定義する。
[0105]
 この他、搬送モーションデータには、ワークの生産能力、すなわち複製プレスライン1において1分間でワークを加工できる数量を示すライン速度としてのラインSPMに関する情報が含まれる。すなわち、このラインSPMを大きな値に設定することにより、複製プレスライン1における生産サイクルを向上することができる。また、各新搬送装置3を駆動する速度や時刻は、このラインSPMに合わせて決定される。
[0106]
 また、周期的な搬送モーションを繰り返す新搬送装置3を複数制御するため、搬送モーションデータには、各新搬送装置3間の搬送モーションの位相差に関する情報が含まれる。またさらに、周期的なプレスモーションを繰り返す各プレス機2と、周期的な搬送モーションを繰り返す各新搬送装置3とを制御するため、搬送モーションデータには、各プレス機2のプレスモーションと各新搬送装置3の搬送モーションとの間の位相差に関する情報が含まれる。
[0107]
 モーションデータ演算装置5は、搬送モーションデータに含まれる新下型干渉曲線に関するデータ及び新上型干渉曲線に関するデータを作成し、複製プレスライン制御装置4に送信する。
[0108]
 複製プレスラインプレスモーションデータ出力装置6は、各プレス機2のプレスモーションを規定したプレスモーションデータを生成し、さらにこのプレスモーションデータを、複製プレスライン制御装置4に送信する。
[0109]
 ここで、プレスモーションデータの内容について説明する。プレスモーションを規定するプレスモーションデータには、各プレス機2の上型22を駆動する速度、位置及び時刻等のプレスモーションに関する情報が含まれる。この上型22を駆動する速度は、プレス機2のワークの加工能力を示す加工速度、すなわち、プレスSPMとして特徴付けられる。したがって、このプレスSPMが大きいほど、上型22を昇降する周期が短くなる。
[0110]
 図20は、第2典型的実施例に係る搬送モーション作成方法において用いられる既存プレスライン1Aの概略構成を示す図である。
[0111]
 既存プレスライン1Aは、金型が複製プレスライン1に移管されるプレスラインである。既存プレスライン1Aは、ワークWを加工する複数台のプレス機2Aと、各プレス機2Aに付随して設けられ、これらプレス機2Aの間でワークWを搬送する複数台の既存搬送装置3Aと、を備える。
[0112]
 既存プレスライン1Aは、各プレス機2Aによる複数のプレス工程を経て、平板状のワークから所定の形状の製品を製造する。複数のプレス機2Aは、プレス工程の進行と同じ順序で配置されるとともに、各プレス機2Aには、各プレス工程が割り当てられる。第2典型的実施例では、図20中、左側から右側へ向かって順にプレス工程が進行するものとする。また、このプレス工程が進行する方向と、各新搬送装置がワークを搬送する搬送方向Yとは同じであるとする。既存プレスライン1Aで製造する所定の形状の製品は、複製プレスライン1(図19参照)で製造する所定の形状の製品と同様である。また、既存プレスライン1Aのプレス工程の進行順序は、複製プレスライン1のプレス工程の進行順序と同様である。
[0113]
 各プレス機2Aは、ワークWの下側であって既存ボルスタ24Aの上に配置された下型21と、この下型21に対向して配置された上型22と、下型21に対して上型22を接近、離隔させる昇降機構23Aと、この昇降機構23Aを制御する図示しないコントローラと、を有する。以上のプレス機2Aは、下型21に対し上型22を昇降することで、ワークWをプレス加工する。既存プレスライン1Aの上型22及び下型21は、複製プレスライン1に移管され、複製プレスライン1の上型22及び下型21として使用される。
[0114]
 各既存搬送装置3Aは、複数の既存バキュームカップ31Aが連結されたクロスバー32Aと、隣接するプレス機の間に設定された既存搬送経路C2に沿ってクロスバー32Aを移動する図示しない移動装置と、この移動装置を制御する図示しないコントローラと、を有する。
[0115]
 図20に示すように、各既存搬送装置3Aの既存搬送経路C2は、前プレス工程を実行するプレス機2Aから次プレス工程を実行するプレス機2Aへ延びる往路CO2と、次プレス工程を実行するプレス機2Aから前プレス工程を実行するプレス機2Aへ延びる復路CB2と、を含んで構成される。各既存搬送装置3Aは、隣接するプレス機2Aの間で、このような既存搬送経路C2に沿ってクロスバー32Aを移動し、前プレス工程に対応するプレス機2Aで加工されたワークWを、次プレス工程に対応するプレス機2Aへ搬送する。すなわち、既存搬送装置3Aは、ワークWを保持しながら往路CO2を移動し、復路CB2ではワークWを保持せず空走する。
[0116]
 既存プレスライン1Aの各既存搬送装置3Aは、複製プレスライン1の各新搬送装置3(図19参照)と同様に、以下のように動作し、ワークWを搬送する。先ず、前プレス工程に対応するプレス機2Aの上型22と下型21との間へ、クロスバー32Aを復路CB2に沿って移動する。次に、既存バキュームカップ31Aで加工後のワークWを吸引し、このワークWを保持する。次に、次プレス工程に対応するプレス機2Aの上型22と下型21との間へ、ワークWを保持したまま、クロスバー32Aを往路CO2に沿って移動する。次に、保持したワークWをプレス機2Aの下型21に設置する。
[0117]
 第2典型的実施例では、既存搬送装置3Aの既存搬送経路C2は、上記新搬送装置3の新搬送経路C1と同様に、3次元空間内におけるクロスバー32Aの中心位置の軌跡として定義されている。また、第2典型的実施例では、複製プレスライン1は、既存搬送経路C2に沿って既存搬送装置3Aを用いてワークWを搬送する既存プレスライン1Aの金型と同一の金型(上型22及び下型21)を用いており、既存搬送経路C2とは別の新搬送経路C1に沿って既存搬送装置3Aとは別の新搬送装置3を用いてワークを搬送する。一方、複製プレスライン1の新搬送経路C1(図19参照)は、既存プレスライン1Aと各プレス機間の距離や搬送条件等が互いに異なるので、既存プレスライン1Aの既存搬送経路C2と異なる。
[0118]
 図21は、複製プレスライン制御装置4、モーションデータ演算装置5及び複製プレスラインプレスモーションデータ出力装置6の構成を示すブロック図である。モーションデータ演算装置5は、入力装置51と、記憶装置52と、演算装置53と、を含んで構成される。
[0119]
 入力装置51は、作業者が操作可能なキーボードやマウス等のハードウェアで構成される。この入力装置51を操作することにより入力されたデータや指令は、演算装置53に入力される。記憶装置52は、ハードディスクやCDROM等のハードウェアで構成される。この記憶装置52には、各種データが記憶されており、記憶されたデータは、演算装置53に適宜入力される。
[0120]
 記憶装置52には、既存プレスラインに関する既存プレスラインデータ及び複製プレスラインに関する複製プレスラインデータが記憶される。既存プレスラインデータには、既存搬送装置の形状を示す既存搬送装置データ、既存プレスラインで設定されていた上型と既存搬送装置とのクリアランスを示す既存プレスラインの必要クリアランスデータ、既存プレスラインの仕様として規定された既存ボルスタの幅等を示す既存ボルスタデータ、既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ(既存搬送経路に関するデータ)、既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータ、が含まれる。
[0121]
 複製プレスラインデータには、新搬送装置の形状を示す新搬送装置データ、複製プレスラインで設定される上型と新搬送装置とのクリアランスを示す複製プレスラインの必要クリアランスデータ、複製プレスラインの仕様として規定されたボルスタの幅等を示すボルスタデータ、新搬送経路の搬送条件に関するデータ、が含まれる。新搬送条件に関するデータには、ワークを吸引する際におけるクロスバーの高さ、ワークの下型に対するリフト量及び送り量の初期値、及びワークを搬送する際においてワークを保持する姿勢に関する量等の設定値が含まれる。
[0122]
 記憶装置52に記憶された既存搬送装置データ、既存ボルスタデータは、予め、既存搬送装置及び既存ボルスタの3DCADデータに基づき、これらを既存搬送経路を含む仮想垂直面で切った断面形状を示す2Dデータに変換されている。
[0123]
 また、この断面形状を示す2Dデータは、金型に対して新搬送経路は必ずしも既存搬送経路と同一でない場合が考えられるので、その差を想定して、既存搬送経路から両側へ幅(例えば、既存搬送経路から両側へ各100mm)を持たせて、既存搬送経路を含む仮想垂直面に平行であって、且つこの幅内の複数の仮想垂直面でそれぞれ切った複数の断面形状のうち最も突出した部分を有する断面形状を選択して作成してもよい。さらに、この断面形状を示す2Dデータは、金型の近傍を既存搬送装置が通過する方向に、複数の区間(例えば、10mm)を設け、この複数の区間毎に上記複数の断面形状のうち最も突出した部分を有する断面形状をそれぞれ選択し、このそれぞれ選択した断面形状を合成して作成してもよい。このような事前処理を行うことで、搬送モーション作成の計算にかかる負荷を低減し、演算速度を向上することができる。
[0124]
 演算装置53は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアにより構成される。この演算装置53は、これらハードウェアにより実現される複数の機能ブロックを備える。演算装置53は、既存プレスライン演算部53aと、複製プレスライン演算部53bとを備える。
[0125]
 既存プレスライン演算部53aは、予め既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ及び既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータを記憶装置52に記憶する。具体的には、既存プレスライン演算部53aは、複製エリア定義部530と、既存プレスライン下型干渉曲線切出し部531と、既存プレスライン上型干渉曲線切出し部532と、を含んで構成される。
[0126]
 複製エリア定義部530は、既存搬送経路に関するデータに対して、既存ボルスタの上に設置された下型と上型とを含むエリアである複製エリアを定義する(後述の図23のステップS102、図27のステップS112を参照)。
[0127]
 既存プレスライン下型干渉曲線切出し部531は、既存搬送経路に関するデータを用いて、複製エリア内の既存搬送経路を既存プレスライン下型干渉曲線として切出す(後述の図23のステップS103を参照)。既存プレスライン下型干渉曲線切出し部531は、切出した既存プレスライン下型干渉曲線を既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータとして記憶装置52に記憶する(後述の図23のステップS104を参照)。
[0128]
 既存プレスライン上型干渉曲線切出し部532は、既存搬送経路に関するデータ及び既存搬送装置データを用いて、複製エリア内の上型から視た既存搬送装置の軌跡を既存プレスライン上型干渉曲線として切出す(後述の図27のステップS113を参照)。既存プレスライン上型干渉曲線切出し部532は、切出した既存プレスライン上型干渉曲線を既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータとして記憶装置52に記憶する(後述の図27のステップS114を参照)。
[0129]
 また、複製プレスライン演算部53bは、新搬送経路を作成し、この新搬送経路を用いた搬送モーションデータを作成し、複製プレスライン制御装置4に送信する。具体的には、複製プレスライン演算部53bは、計算用データ読込部540と、新下型干渉曲線初期設定部541と、搬送経路設定部542と、既存プレスライン上型干渉曲線点列化部543と、新上型干渉曲線個別設定部544と、新上型干渉曲線選択部545と、新上型干渉曲線補正部546と、モーションデータ出力部547と、を含んで構成される。
[0130]
 計算用データ読込部540は、記憶装置52に記憶された複製プレスラインに関する複製プレスラインデータを読み込む(後述の図22のステップS1、図23のステップS101、図27のステップS111を参照)。また、計算用データ読込部540は、入力装置51から入力された搬送条件を読み込む。
[0131]
 新下型干渉曲線初期設定部541は、既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ及び新搬送条件に関するデータを用いて、既存プレスライン下型干渉曲線から上方に十分離れた位置で仮下型干渉曲線を初期設定する(後述の図23のステップS105を参照)。
[0132]
 搬送経路設定部542は、仮下型干渉曲線に所定間隔で複数の制御点を設け、複数の制御点をそれぞれ既存プレスライン下型干渉曲線に向かって、複数の制御点が既存プレスライン下型干渉曲線と所定の最小クリアランスとなるようにそれぞれ移動させることにより新下型干渉曲線を生成する(後述の図23のステップS106を参照)。
[0133]
 既存プレスライン上型干渉曲線点列化部543は、既存プレスライン上型干渉曲線を所定の間隔で分割した複数の分割点によって点列化する(後述の図27のステップS115を参照)。
[0134]
 新上型干渉曲線個別設定部544は、既存プレスライン上型干渉曲線点列化部543で点列化した既存プレスライン上型干渉曲線の複数の分割点に対して、既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータ、新搬送条件に関するデータ及び新搬送装置データを用いて、上型から視た新搬送装置の軌跡により形成される新上型干渉曲線を生成する(後述の図27のステップS116を参照)。
[0135]
 新上型干渉曲線選択部545は、新上型干渉曲線個別設定部544で複数の分割点に対して生成した新上型干渉曲線のうち、これら複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する新上型干渉曲線を選択する(後述の図27のステップS117を参照)。
[0136]
 新上型干渉曲線補正部546は、新上型干渉曲線選択工程によって選択した新上型干渉曲線を、上型から離れる方向に上型と所定のクリアランスを保つように移動させ新上型干渉曲線を生成する(後述の図27のステップS118を参照)。
[0137]
 モーションデータ出力部547は、搬送経路設定部542に作成された新下型干渉曲線及び新上型干渉曲線補正部546により作成された新上型干渉曲線に関するデータを複製プレスライン制御装置4に送信する(後述の図22のステップS9を参照)。
[0138]
 複製プレスラインプレスモーションデータ出力装置6は、複製プレスライン制御装置4に、複製プレスラインのプレスモーションデータを出力する。このように、複製プレスライン制御装置4は、モーションデータ演算装置5より新下型干渉曲線及び新上型干渉曲線を送信され、複製プレスラインプレスモーションデータ出力装置6よりプレスモーションデータを出力される。これにより、複製プレスライン制御装置4は、新下型干渉曲線を新搬送経路として新搬送装置を動作させることができる。また、複製プレスライン制御装置4は、プレスモーションデータによるプレス機の動作及び新下型干渉曲線を新搬送経路とした新搬送装置の動作において、既存プレスライン上型干渉曲線を分割した複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する新上型干渉曲線を選択することで、上型と新搬送装置とが干渉しないように複製プレスラインを運転できる。
[0139]
 次に、図22に示すフローチャートを参照して、モーションデータ演算装置により、新下型干渉曲線及び新上型干渉曲線を作成し、複製プレスライン制御装置4に送信する手順について説明する。この手順は、ステップS1で読み込んだ各種データを用いて、ステップS2~S4の処理を行う新下型干渉曲線の作成手順S100と、ステップS1で読み込んだ各種データを用いて、ステップS5~S8の処理を行う新上型干渉曲線の作成手順S110と、S100及びS110において作成した新下型干渉曲線及び新上型干渉曲線を複製プレスライン制御装置4に送信するステップS9と、から成る。
[0140]
 新下型干渉曲線の作成手順S100は、各種データを読み込み(S1)、既存下型干渉曲線を複製エリアで切出し(S2)、新下型干渉曲線の初期設定を行い(S3)、新搬送経路を設定する(S4)。新下型干渉曲線の作成手順S100の詳細について、図23に示すフローチャートを参照して、説明する。
[0141]
 ステップS101では、下型関係のプレスラインデータを読み込む。このステップでは、既存プレスラインデータに含まれる、既存搬送装置データ、既存ボルスタデータ及び既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ(既存搬送経路に関するデータ)を記憶装置から読み込む。また、このステップでは、複製プレスラインデータに含まれる、新搬送装置データ、ボルスタデータ、新搬送経路の搬送条件に関するデータを記憶装置から読み込む。既存搬送経路に関するデータは、既存搬送経路に沿って移動する既存搬送装置と下型との相対的な位置関係を示すものである。なお、既存搬送装置と下型との相対的な位置関係は、既存搬送装置の任意の点と下型との相対的な位置関係でよいが、第2典型的実施例では、既存搬送装置のクロスバーの中心と下型との相対的な位置関係を示している。
[0142]
 ステップS102では、下型関係の複製エリアを定義する。このステップでは、既存ボルスタの上に設置された下型を含むエリアに設定される複製エリアを定義する。また、このステップでは、定義した複製エリアを複製エリアに関する複製エリアデータとして記憶装置に記憶させる。具体的には、複製エリアは、下型が設置されたボルスタの幅に、例えば搬送機の幅を余裕幅として加えた範囲である。すなわち、複製エリアは、下型と新搬送装置とが干渉する虞のあるエリアである。このように、複製エリアを定義することで、この干渉する虞のあるエリアに限って、新搬送経路を調整することができる。
[0143]
 ステップS103では、既存プレスライン下型干渉曲線を切出す。このステップでは、既存搬送経路に関するデータに基づき、複製エリアによって既存プレスライン下型干渉曲線を予め切出す。すなわち、既存プレスライン下型干渉曲線は、既存プレスラインの既存搬送経路の一部である。また、既存プレスライン下型干渉曲線は、既存プレスラインにおいて、下型と既存搬送装置とが干渉しないように設定された線である。
[0144]
 ステップS104では、既存プレスライン下型干渉曲線を記憶する。このステップでは、既存プレスライン下型干渉曲線を複製プレスラインデータに含まれる既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータとして記憶装置に記憶する。なお、既に既存プレスライン下型干渉曲線が切出され、記憶装置に記憶されている場合は、ステップS101で、この既存プレスライン下型干渉曲線を読み込むことで、ステップS102~S104の処理を省略できる。
[0145]
 図24は、既存プレスライン1Aの既存搬送経路C2とこの既存搬送経路C2に沿って移動する既存搬送装置3Aのクロスバー32Aの構成を示す模式図であり、ステップS103で切出される既存プレスライン下型干渉曲線L10を示すものである。図24に示すように、下型21は、既存搬送経路C2において、既存搬送装置3Aまたはこの既存搬送装置3Aにより搬送されるワークWと、干渉しないように所定のクリアランスΔD1またはΔD2が確保できるように製作されている。また、既存搬送経路C2は、既存搬送装置3Aまたはこの既存搬送装置3Aにより搬送されるワークWと、下型21との間のクリアランスΔD1またはΔD2が最小になるように設定されている。
[0146]
 既存搬送経路C2のうち復路CB2では、既存搬送装置3AはワークWを保持せずに空走する。このため、復路CB2は、既存搬送装置3Aの既存バキュームカップ31Aと下型21との間のクリアランスΔD1が確保されている。既存搬送経路C2のうち往路CO2では、既存搬送装置3AはワークWを保持しながら移動する。このため、往路CO2は、既存搬送装置3Aにより保持されたワークWと下型21との間のクリアランスΔD2が確保されている。
[0147]
 また、既存搬送経路C2において、下型21が設置された既存ボルスタ24Aを含む複製エリア25Aが定義されている。そして、この複製エリア25A内の既存搬送経路C2は、既存プレスライン下型干渉曲線L10として切出される。
[0148]
 図23に戻って、ステップS105では、複製プレスラインの新下型干渉曲線を初期設定する。このステップでは、ステップS101で読み込んだ既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータまたはステップS103で切り出した既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ、及び新搬送条件に関するデータを用いて、既存プレスライン下型干渉曲線から上方に十分離れた位置で仮下型干渉曲線を初期設定する。すなわち、既存プレスラインの複製エリア内において、下型と既存搬送装置とが干渉しないように設定されている既存プレスライン下型干渉曲線を、複製プレスラインで下型と既存搬送装置とが干渉しない範囲の最低ラインとして設定し、この最低ラインと初期設定された仮下型干渉曲線を対比する。
[0149]
 ステップS106では、複製プレスラインの新下型干渉曲線を計算する。このステップでは、仮下型干渉曲線に所定間隔で複数の制御点を設け、複数の制御点をそれぞれ既存プレスライン下型干渉曲線に向かって、複数の制御点が既存プレスライン下型干渉曲線と所定の最小クリアランスとなるようにそれぞれ移動させることにより新下型干渉曲線を生成する。このステップで生成された新下型干渉曲線は、下型近傍の新搬送経路として設定される。
[0150]
 複数の制御点は、仮下型干渉曲線上に任意の間隔、例えば、10mm間隔で設けられた点である。この制御点を移動することで、この移動した制御点に仮下型干渉曲線が追随する。また、既存プレスライン下型干渉曲線と所定の最小クリアランスとは、例えば、既存プレスライン下型干渉曲線の上方略5mmの範囲である。
[0151]
 このように、既存プレスラインで下型と既存搬送装置とが干渉しないように設定された既存プレスライン下型干渉曲線と所定の最小クリアランスとなるように新下型干渉曲線を作成することで、複製プレスラインでも下型と新搬送装置とが干渉しない新搬送経路を設定できる。
[0152]
 図25は、複製プレスライン1の新搬送経路C1とこの新搬送経路C1に沿って移動する新搬送装置3のクロスバー32の構成を示す模式図であり、ステップS4で生成される新下型干渉曲線L1を示すものである。図25に示すように、既存プレスライン1Aの既存搬送経路C2から切り出された既存プレスライン下型干渉曲線L10は、ボルスタ24が設置されたエリア25に入力されている。
[0153]
 また、ボルスタ24が設置されたエリア25には、既存プレスライン下型干渉曲線L10から上方に十分離れた位置で仮下型干渉曲線L11が初期設定されている。この仮下型干渉曲線L11には、任意の間隔で、複数の制御点L11aが設けられている。これら複数の制御点L11aを所定の最小クリアランスとなるようにそれぞれ移動させたことにより生成されたのが新下型干渉曲線L1である。この新下型干渉曲線L1は、ボルスタ24が設置されたエリア25内の新搬送経路となっている。
[0154]
 このように、既存プレスライン1Aにおいて、下型21と干渉しない経路である既存プレスライン下型干渉曲線L10に基づき、新下型干渉曲線L1を作成して新搬送経路を設定することで、実際に複製プレスライン1を稼動し、各プレス機及び新搬送装置の動作を最適化する工程を繰り返すことなく、下型21と干渉しない新搬送経路を作成できる。
[0155]
 次に、新搬送装置またはこの新搬送装置に保持されたワークが、上型に干渉する場合について説明する。図26は、昇降する上型22から視た新搬送装置3のクロスバー32の軌跡を示す図である。より具体的には、図26は、上型22を昇降した場合に、設定された新搬送経路に沿って移動するクロスバー32の軌跡を、上型22の静止系から視た図である。
[0156]
 図26中、「×」印で示すように、新搬送装置の軌跡によっては、新搬送装置またはこの新搬送装置に保持されたワークが、上型に干渉する場合がある。そこで、図22に戻って、上型と新搬送装置またはワークとが干渉しないようにする新上型干渉曲線の作成手順S110について説明する。
[0157]
 新上型干渉曲線の作成手順S110は、各種データを読み込み(S1)、既存上型干渉曲線を複製エリアで切出し(S5)、既存上型干渉曲線を複数の分割点によって点列化(S6)し、新上型干渉曲線を生成し、この新上型干渉曲線のうちから複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する新上型干渉曲線を選択し(S7)、選択された新上型干渉曲線を補正する(S8)。新上型干渉曲線の作成手順S110の詳細について、図27に示すフローチャートを参照して、説明する。
[0158]
 ステップS111では、上型関係のプレスラインデータを読み込む。このステップでは、既存プレスラインデータに含まれる、既存搬送装置データ、既存プレスラインの必要クリアランスデータ及び既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータを記憶装置から読み込む。また、このステップでは、複製プレスラインデータに含まれる、新搬送装置データ、複製プレスラインの必要クリアランスデータ、新搬送経路の搬送条件に関するデータを記憶装置から読み込む。
[0159]
 ステップS112では、上型関係の複製エリアを定義する。このステップでは、上型を含むエリアである複製エリアを定義する。また、このステップでは、定義した複製エリアを複製エリアに関する複製エリアデータとして記憶装置に記憶させる。具体的には、複製エリアは、上型の幅に、例えば搬送機の幅を余裕幅として加えた範囲である。すなわち、複製エリアは、上型と新搬送装置とが干渉する虞のあるエリアである。このように、複製エリアを定義することで、この干渉する虞のあるエリアに限って、新搬送経路を調整することができる。
[0160]
 ステップS113では、既存プレスライン上型干渉曲線を切出す。このステップでは、既存搬送経路に関するデータ及び既存搬送装置データを用いて、複製エリアによって上型から視た既存搬送装置の軌跡から既存プレスライン上型干渉曲線を予め切出す。既存プレスライン上型干渉曲線は、既存プレスラインにおいて、上型と既存搬送装置とが干渉しないように設定された線である。すなわち、既存プレスライン上型干渉曲線は、既存プレスラインにおいて、上型と既存搬送装置とが干渉しないことを保証する基準である。既存プレスラインの上型は、この基準を遵守して製作されている。なお、既に既存プレスライン上型干渉曲線が切出され、記憶装置に記憶されている場合は、ステップS111で、この既存プレスライン上型干渉曲線を読み込むことで、ステップS112~S124の処理を省略できる。
[0161]
 ステップS114では、既存プレスライン上型干渉曲線を記憶する。このステップでは、既存プレスライン上型干渉曲線を複製プレスラインデータに含まれる既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータとして記憶装置に記憶する。
[0162]
 図28は、既存プレスライン1Aにおいて、昇降する上型22から視た既存搬送装置3Aのクロスバー32Aの軌跡を示す図である。より具体的には、図28は、既存プレスライン1Aの所定のプレスSPMのもとでプレス機2Aの上型22を降下させるとともに、所定のラインSPMのもとで、プレス機2Aから離れる方向に移動するクロスバー32Aの軌跡L2Aを示す図である。
[0163]
 軌跡L2Aは、クロスバー32Aがプレス機2Aから離れるように移動するのにともない、図28中左側から右側へ延びる。また、軌跡L2Aは、プレス機2Aの上型22が降下するのにともない、図28中下側から上側に変化する。よって、図28では、プレス機2Aの上型22を降下させるとともに、クロスバー32Aをプレス機2Aから離れる方向に移動させているので、軌跡L2Aは、右上がりの曲線となっている。また、軌跡L2Aの形状は、既存プレスライン1Aの所定のプレスSPM及び所定のラインSPMにより定まる。
[0164]
 図28に示すように、上型22は、既存搬送経路C2において、昇降する上型22から視た既存搬送装置3Aのクロスバー32Aと、干渉しないように所定のクリアランスΔU1が確保できるように製作されている。
[0165]
 また、昇降する上型22から視た既存搬送装置3Aのクロスバー32Aの軌跡L2Aにおいて、上型22を含む複製エリア25Aが定義されている。そして、この複製エリア25A内の軌跡L2Aは、既存プレスライン上型干渉曲線L20として切出される。
[0166]
 既存プレスライン上型干渉曲線L20は、所定のルールに基づき設定された下方に上型が突出してはならないラインである。すなわち、上型22は、既存プレスライン上型干渉曲線L20より下方に突出することはない。
[0167]
 図27に戻って、ステップS115では、切出された既存上型干渉曲線を点列化する。このステップでは、既存プレスライン上型干渉曲線を所定の間隔で分割した複数の分割点によって点列化する。このように、既存プレスライン上型干渉曲線を点列化することで、線と線とが干渉しているかを判断するのではなく、点と線が干渉しているかを判断できるため、演算装置53の処理負担を軽減できる。所定の間隔は、狭い方が好ましく、例えば、10mmである。
[0168]
 ステップS116では、新上型干渉曲線を個別設定する。このステップでは、ステップS115で点列化した既存プレスライン上型干渉曲線の複数の分割点に対して、既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータ、新搬送条件に関するデータ及び新搬送装置データを用いて、上型から視た新搬送装置の軌跡により形成される新上型干渉曲線を生成する。複数の分割点に対して生成した新上型干渉曲線は、形状が同一であり、上型から視て、配置される高さがそれぞれ異なる。また、新上型干渉曲線は、昇降する上型から視た新搬送装置の軌跡を示すものである。
[0169]
 このように、既存プレスラインで上型と既存搬送装置とが干渉しないように設定された既存プレスライン上型干渉曲線の分割点に対して、複製プレスラインの新搬送装置の軌跡により形成される新上型干渉曲線を生成することで、複製プレスラインでも上型と新搬送装置とが干渉しない新搬送装置の軌跡を設定できる。
[0170]
 ステップS117では、新上型干渉曲線を選択する。このステップでは、複数の分割点に対して生成した新上型干渉曲線のうち、複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する新上型干渉曲線を選択する。複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する新上型干渉曲線を選択では、例えば、横軸上の値と縦軸上の値の2つの値により特定される各分割点の座標が、これらの横軸及び縦軸により規定される平面上で延びる各新上型干渉曲線上に含まれるか否かを判断する。
[0171]
 そして、分割点を1点のみ含む新上型干渉曲線は、点列化された既存プレスライン上型干渉曲線に接していると判断できる。なお、2点以上含む新上型干渉曲線は、点列化された既存プレスライン上型干渉曲線を上回っていると判断される。このように、既存プレスラインで上型と既存搬送装置とが1点のみが干渉するように設定された既存プレスライン上型干渉曲線を点列化した線を上回らない新上型干渉曲線を選択ことで、複製プレスラインで上型と新搬送装置とが干渉しない新搬送装置の軌跡を設定できる。
[0172]
 ステップS118では、新上型干渉曲線を補正する。このステップでは、新上型干渉曲線選択工程によって選択した新上型干渉曲線を、上型から離れる方向に上型と所定のクリアランスを保つように移動させ新上型干渉曲線を生成する。このステップで生成された新上型干渉曲線は、複製プレスラインの新搬送装置のクロスバーの端部のうち、上型に最も接近する端部の軌跡として設定される。所定のクリアランスは、複製プレスラインにおける上型に対する新搬送装置とが干渉しないように予め決められた値である。具体的には、所定のクリアランスは、既存プレスラインで設定されていた上型と既存搬送装置とのクリアランスと、複製プレスラインにおいて上型と新搬送装置とで必要とされるクリアランスとの差分である。このように、新上型干渉曲線を上型から離れる方向に所定距離移動する補正により、ライン能力に合わせて、クリアランスを最適設定できる。つまりは、クリアランスを必要最小化することで、ラインSPMの値を大きくすることが可能となる。
[0173]
 図29は、複製プレスライン1において、昇降する上型22から視た新搬送装置3のクロスバー32の軌跡を示す図である。より具体的には、図29は、プレス機2の上型22を降下させるとともに、プレス機2Aから離れる方向に移動するクロスバー32Aの軌跡となる新上型干渉曲線L22及び設定新上型干渉曲線L2を示す図である。
[0174]
 新上型干渉曲線L22及び設定新上型干渉曲線L2は、クロスバー32がプレス機2から離れるように移動するのにともない、図29中左側から右側へ延びる。また、新上型干渉曲線L22及び設定新上型干渉曲線L2は、プレス機2の上型22が降下するのにともない、図29中下側から上側に変化する。よって、図29では、プレス機2の上型22を降下させるとともに、クロスバー32をプレス機2から離れる方向に移動させているので、新上型干渉曲線L22及び設定新上型干渉曲線L2は、右上がりの曲線となっている。
[0175]
 図29に示すように、既存プレスライン上型干渉曲線L20の点列化実施ラインL21の複数の分割点に対して新上型干渉曲線L22が生成されている。そして、点列化実施ラインL21の複数の分割点のうちの1点である干渉点Pにのみ干渉する特定新上型干渉曲線L22aが選択されている。この特定新上型干渉曲線L22aは、上型22から離れる方向に所定距離ΔU2を保つように移動され設定新上型干渉曲線L2となっている。そして、設定新上型干渉曲線L2は、複製プレスライン1の新搬送装置3のクロスバー32の端部のうち、上型22に最も接近する端部の軌跡として設定される。所定距離ΔU2は、例えば、既存プレスラインで設定されていた上型と既存搬送装置とのクリアランスが100mmであり、複製プレスラインにおいて上型と新搬送装置とで必要とされるクリアランスが180mmであった場合、これらの差分である80mmとなる。
[0176]
 このように、既存プレスライン1Aにおける所定のルールにより上型22が突出してはならないラインとして設定された既存プレスライン上型干渉曲線L20に基づき、複製プレスライン1の新搬送装置3の軌跡を設定することで、実際に複製プレスライン1を稼動し、各プレス機及び新搬送装置の動作を最適化する工程を繰り返すことなく、上型22と干渉しない新搬送経路を作成できる。
[0177]
 図22に戻って、ステップS9では、モーションデータを制御装置に送信し、この処理を終了する。このステップでは、ステップS106(図23参照)で生成した新下型干渉曲線に関するデータ及びステップS118(図27参照)で生成した新上型干渉曲線に関するデータを複製プレスライン制御装置に送信する。複製プレスライン制御装置は、この新下型干渉曲線を新搬送経路として新搬送装置を動作させる。また、複製プレスライン制御装置は、複製プレスラインプレスモーションデータ出力装置から出力されたプレスモーションデータによるプレス機の動作及び新下型干渉曲線を新搬送経路とした新搬送装置の動作において、新上型干渉曲線を適用し、上型と新搬送装置とが干渉しないように複製プレスラインを運転させる。
[0178]
 第2典型的実施例によれば、以下のような効果がある。既存搬送経路C2に沿って既存搬送装置3Aを用いてワークを搬送する既存プレスライン1Aの金型と同一の金型である上型22を用いており、既存搬送経路C2とは別の新搬送経路C1に沿って新搬送装置3を用いてワークを搬送する複製プレスライン1の新搬送経路C1を作成する。
[0179]
 そして、上型22を含むエリアに設定された複製エリア25Aによって予め切出された既存プレスライン上型干渉曲線L20を所定の間隔で分割した複数の分割点によって点列化実施ラインL21とし、複数の分割点に対して上型22から視た新搬送装置3の軌跡により形成される新上型干渉曲線L22を生成し、複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する特定新上型干渉曲線L22aを選択する。これにより、既存プレスライン上型干渉曲線に最も近接する新搬送装置の新上型干渉曲線を選択できる。
[0180]
 また、この選択した特定新上型干渉曲線L22aを上型22から離れる方向に上型22と所定距離ΔU2を保つように移動させ設定新上型干渉曲線L2を生成するので、複製プレスラインにおいて上型と新搬送装置とが干渉しない新搬送装置の軌跡を設定できる。そして、この新上型干渉曲線に基づき、新搬送経路C1を作成できる。
[0181]
 よって、既存プレスライン1Aの既存搬送装置3Aの軌跡に基づき、複製プレスライン1の新搬送装置3の軌跡を、上型22と干渉しないように設定できるので、複製プレスラインの搬送モーションを作成する際に、実際に複製プレスラインを稼動し、各プレス機及び新搬送装置の動作を最適化する工程を繰り返すことなく、上型と干渉しない新搬送経路を作成できる。したがって、既存プレスラインの金型と同一の金型を用いる複製プレスラインの構築に際し、搬送モーションの作成工数を削減できる。
[0182]
 また、既存プレスライン下型干渉曲線L10から上方に十分離れた位置に初期設定された仮下型干渉曲線L11に所定間隔で複数の制御点L11aを設け、複数の制御点L11aをそれぞれ既存プレスライン下型干渉曲線L10に向かって、複数の制御点L11aが既存プレスライン下型干渉曲線L10と所定の最小クリアランスとなるようにそれぞれ移動させることにより新下型干渉曲線L1を生成するので、この新下型干渉曲線L1により下型21と新搬送装置3とが干渉せず、かつラインSPMの値を大きくできる新搬送経路C1を設定できる。
[0183]
 よって、既存プレスライン1Aの既存搬送経路C2に基づき、複製プレスライン1の新搬送経路C1を、下型21と干渉しないように設定できるので、複製プレスラインの搬送モーションを作成する際に、実際に複製プレスラインを稼動し、各プレス機及び新搬送装置の動作を最適化する工程を繰り返すことなく、下型と干渉しない新搬送経路を作成できる。したがって、既存プレスラインと金型が同一の複製プレスラインの構築に際し、搬送モーションの設定工数を削減できる。
[0184]
 本発明の実施例は、下型(例えば、下型121)に対し上型(例えば、上型122)を昇降することでワークをプレス加工する複数のプレス機(例えば、プレス機102)と、これらプレス機の間において、保持部(例えば、バキュームカップ131)により保持したワークを所定の搬送経路(例えば、搬送経路C)に沿って搬送する複数の搬送装置(例えば、搬送装置103)と、各プレス機の周期的な昇降動作、並びに、各搬送装置の搬送経路に沿った周期的な搬送動作を制御する制御装置(例えば、制御装置104)と、を備えたプレスラインの搬送経路設定方法を提供する。搬送経路設定方法は、搬送装置の搬送経路を規定する制御点(例えば、制御点PC)について、この制御点の位置を仮設定する仮設定工程(例えば、図10のステップS241)と、仮設定された制御点の位置情報(例えば、座標(YPC,ZPC))に基づいて搬送装置が当該制御点を通過する搬送経路を算出し、さらに当該搬送経路に沿って搬送装置を移動させた場合における保持部の軌跡(例えば、バキュームカップの代表点の軌跡)を算出する軌跡算出工程(例えば、図10のステップS242,S243)と、算出された保持部の軌跡と下型の形状とを比較するとともに、軌跡を複数の区間(例えば、区間1、区間2、区間3)に分割し、さらに当該軌跡と下型との間隔が区間ごとに設定された目標値に近づくように、制御点の位置を調整する搬送経路決定工程(例えば、図7のステップS244~S249)と、を含む。
[0185]
 上記の方法によれば、先ず、搬送経路を規定する制御点の位置を仮設定し、この制御点の位置情報に基づいて、搬送装置が制御点を通過する搬送経路を算出し、さらにこの搬送経路に沿って搬送装置を移動させた場合における保持部の軌跡を算出する。次に、この保持部の軌跡と下型の形状とを比較し、さらにこの軌跡と下型との間隔が区間ごとに設定された目標値に近づくように、上記仮設定した制御点の位置を調整する。これにより、搬送装置の保持部と下型とが干渉しない最適な搬送経路を、制御点の位置を調整するだけで設定することができる。また、これにより、搬送装置が下型と干渉せずかつ最も低くなるような搬送経路を設定することができるので、結果として、プレスライン全体の生産サイクルを向上することができる。
[0186]
 搬送経路決定工程では、1つの保持部に対し少なくとも4つの代表点を設定し、当該4つの代表点の軌跡を含む各平面に沿った下型の断面形状と、軌跡とを比較してもよい。この場合、3次元データを扱わずに、2次元のデータを扱うことで、保持部の軌跡と下型との形状とを比較し、搬送経路の制御点を調整する。これにより、搬送経路を設定するために必要な下型と保持部との間隔の算出などの計算時間を大幅に短縮することができる。
[0187]
 また、本発明の実施例は、下型(例えば、下型121)に対し上型(例えば、上型122)を昇降することでワークをプレス加工する複数のプレス機(例えば、プレス機102)と、これらプレス機の間で、所定の搬送経路(例えば、搬送経路C)に沿ってワークを搬送する複数の搬送装置(例えば、搬送装置103)と、各プレス機の周期的な昇降動作、並びに、各搬送装置の搬送経路に沿った周期的な搬送動作を制御する制御装置(例えば、制御装置104)と、を備えたプレスラインにおいて、当該プレスラインの運転条件を設定する運転条件設定方法を提供する。運転条件設定方法は、上型の形状データに基づいて、上型の表面のうち搬送装置又はワークと干渉する可能性がある複数の候補点(例えば、搬出時の干渉候補点A1~ANおよび搬入時のB1~BN)を抽出する候補点抽出工程(例えば、図5のステップS232)と、複数の候補点のそれぞれに対し、当該候補点を通過する上型干渉曲線を、仮設定した運転条件のもとで生成する上型干渉曲線生成工程(例えば、図13のステップS262)と、複数の上型干渉曲線のうち上型に対して候補点のみにおいて干渉する上型干渉曲線について、当該上型干渉曲線と対応する候補点との間に隙間が形成されるように、当該上型干渉曲線を生成するために仮設定した運転条件を補正する運転条件決定工程(例えば、図13のステップS266、並びに、図4のステップS211、S212,S213,S214)と、を含む。
[0188]
 この方法によれば、先ず、上型の形状データに基づいて、上型と搬送装置又はワークと干渉する可能性がある複数の候補点を抽出し、さらに仮設定した運転条件のもとで各候補点を通過する上型干渉曲線を生成する。次に、生成した複数の上型干渉曲線のうち、上型に対して候補点のみにおいて干渉する上型干渉曲線とこの曲線に対応する候補点に着目し、これら上型干渉曲線と候補点との間に隙間が形成されるように、この上型干渉曲線を生成するために仮設定した運転条件を補正する。これにより、搬送装置が昇降動作する上型の近傍を通過するような運転条件を効率的に設定することができる。また、このような運転条件を設定することにより、プレスライン全体の生産サイクルを向上することができる。
[0189]
 候補点抽出工程において用いられる上型の形状データは、上型を搬送装置の搬送経路と平行な平面に投影して生成された2次元データであってもよい。この場合、3次元データを用いた場合と比較して計算にかかる時間を短縮することができる。
[0190]
 候補点抽出工程では、任意の方位間隔ごとに延びる方向線に対する垂線と、上型外部とが1点のみで接する点を候補点として抽出してもよい。これにより、簡易な計算で複数の候補点を抽出することができる。
[0191]
 また、本発明の実施例は、既存搬送経路(例えば、既存搬送経路C2)に沿って既存搬送装置(例えば、既存搬送装置3A)を用いてワークを搬送する既存プレスライン(例えば、既存プレスライン1A)の金型と同一の金型(例えば、上型22)を用いており、既存搬送経路とは別の新搬送経路(例えば、新搬送経路C1)に沿って既存搬送装置とは別の新搬送装置(例えば、新搬送装置3)を用いてワークを搬送する複製プレスライン(例えば、複製プレスライン1)の新搬送経路を作成する演算装置(例えば、モーションデータ演算装置5)による搬送モーション作成方法を提供する。この搬送モーション設定方法は、既存搬送経路に関するデータ及び既存搬送装置の形状を示す既存搬送装置データを用いて、上型から視た既存搬送装置の軌跡(例えば、軌跡L2A)から、上型を含むエリアに設定された複製エリアによって予め切出された既存プレスライン上型干渉曲線(例えば、既存プレスライン上型干渉曲線L20)に関するデータ、並びに新搬送経路の搬送条件に関する新搬送条件に関するデータ及び新搬送装置の形状を示す新搬送装置データを読み込むデータ読込工程(例えば、図22のステップS1)と、既存プレスライン上型干渉曲線を所定の間隔で分割した複数の分割点によって点列化(例えば、点列化実施ラインL21)する既存プレスライン上型干渉曲線点列化工程(例えば、図27のステップS115)と、既存プレスライン上型干渉曲線点列化工程で点列化した既存プレスライン上型干渉曲線の複数の分割点に対して、新搬送条件に関するデータ及び新搬送装置データを用いて、上型から視た新搬送装置の軌跡により形成される新上型干渉曲線(例えば、新上型干渉曲線L22)を生成する新上型干渉曲線個別設定工程(例えば、図27のステップS116)と、新上型干渉曲線のうち、複数の分割点のうちの1点(例えば、干渉点P)にのみ干渉する新上型干渉曲線(例えば、特定新上型干渉曲線L22a)を選択する新上型干渉曲線選択工程(例えば、図27のステップS117)と、新上型干渉曲線選択工程によって選択した新上型干渉曲線を、上型から離れる方向に上型と所定のクリアランス(例えば、所定距離ΔU2)を保つように移動させ設定新上型干渉曲線(例えば、設定新上型干渉曲線L2)を生成する新上型干渉曲線補正工程(例えば、図27のステップS118)とを備える。新上型干渉曲線に基づき、新搬送経路を作成する。
[0192]
 この方法によれば、既存搬送経路に沿って既存搬送装置を用いてワークを搬送する既存プレスラインの金型と同一の金型を用いており、既存搬送経路とは別の新搬送経路に沿って新搬送装置を用いてワークを搬送する複製プレスラインの新搬送経路を作成する。ここで、同一の金型とは、同一の金型品である場合及び同一形状に製造した別の金型品である場合の両方を含む。
[0193]
 そして、上型を含むエリアに設定された複製エリアによって予め切出された既存プレスライン上型干渉曲線を所定の間隔で分割した複数の分割点によって点列化し、複数の分割点に対して上型から視た新搬送装置の軌跡により形成される新上型干渉曲線を生成し、複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する新上型干渉曲線を選択する。これにより、既存プレスライン上型干渉曲線に最も近接する新搬送装置の新上型干渉曲線を選択できる。
[0194]
 また、この選択した新上型干渉曲線を上型から離れる方向に上型と所定のクリアランスを保つように移動させ設定新上型干渉曲線を生成するので、複製プレスラインにおいて上型と新搬送装置とが干渉しない新搬送装置の軌跡を設定できる。そして、この新上型干渉曲線に基づき、新搬送経路を作成できる。
[0195]
 よって、既存プレスラインの既存搬送装置の軌跡に基づき、複製プレスラインの新搬送装置の軌跡を、上型と干渉しないように設定できるので、複製プレスラインの搬送モーションを作成する際に、実際に複製プレスラインを稼動し、各プレス機及び新搬送装置の動作を最適化する工程を繰り返すことなく、上型と干渉しない新搬送経路を作成できる。したがって、既存プレスラインと金型が同一の複製プレスラインの構築に際し、搬送モーションの設定工数を削減できる。
[0196]
 また、本発明の実施例は、既存搬送経路(例えば、既存搬送経路C2)に沿って既存搬送装置(例えば、既存搬送装置3A)を用いてワークを搬送する既存プレスライン(例えば、既存プレスライン1A)の金型と同一の金型(例えば、下型21)を用いており、既存搬送経路とは別の新搬送経路(例えば、新搬送経路C1)に沿って既存搬送装置とは別の新搬送装置(例えば、新搬送装置3)を用いてワークを搬送する複製プレスラインの新搬送経路を作成する演算装置(例えば、モーションデータ演算装置5)による搬送モーション作成方法、を提供する。搬送モーション設定方法は、既存搬送経路に関するデータに基づいて、金型の下型を含むエリアに設定された複製エリアによって予め切出された既存プレスライン下型干渉曲線(例えば、既存プレスライン下型干渉曲線L10)に関するデータ、及び新搬送経路の搬送条件に関する新搬送条件データを読み込むデータ読込工程(例えば、図22のステップS1)と、既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ及び新搬送条件データを用いて、既存プレスライン下型干渉曲線から上方に十分離れた位置で仮下型干渉曲線(例えば、仮下型干渉曲線L11)を初期設定する新下型干渉曲線初期設定工程(例えば、図23のステップS105)と、仮下型干渉曲線に所定間隔で複数の制御点(例えば、制御点L11a)を設け、複数の制御点をそれぞれ既存プレスライン下型干渉曲線に向かって、複数の制御点が既存プレスライン下型干渉曲線と所定の最小クリアランスとなるようにそれぞれ移動させることにより新下型干渉曲線(例えば、新下型干渉曲線L1)を生成する搬送経路設定工程(例えば、図23のステップS106)と、を備える。新下型干渉曲線に基づき、新搬送経路を作成する。
[0197]
 この方法によれば、既存プレスライン下型干渉曲線から上方に十分離れた位置に初期設定された仮下型干渉曲線に所定間隔で複数の制御点を設け、複数の制御点をそれぞれ既存プレスライン下型干渉曲線に向かって、複数の制御点が既存プレスライン下型干渉曲線と所定の最小クリアランスとなるようにそれぞれ移動させることにより新下型干渉曲線を生成するので、この新下型干渉曲線により下型と新搬送装置とが干渉せず、かつ複製プレスラインにおけるワークの生産量を増加できる新搬送経路を作成できる。
[0198]
 よって、既存プレスラインの既存搬送経路に基づき、複製プレスラインの新搬送経路を、下型と干渉しないように設定できるので、複製プレスラインの搬送モーションを作成する際に、実際に複製プレスラインを稼動し、各プレス機及び新搬送装置の動作を最適化する工程を繰り返すことなく、下型と干渉しない新搬送経路を作成できる。したがって、既存プレスラインと金型が同一の複製プレスラインの構築に際し、搬送モーションの設定工数を削減できる。
[0199]
 なお、本発明は上記の特定の典型的実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。上記の典型的実施例では、4台のプレス機を備えるプレスラインについて説明したが、プレスラインが備えるプレス機の数は、これに限るものではない。

符号の説明

[0200]
1…複製プレスライン
1A…既存プレスライン
21…下型
22…上型
25A…複製エリア
3…新搬送装置
3A…既存搬送装置
5…搬送モーション演算装置
C1…新搬送経路
C2…既存搬送経路
L1…新下型干渉曲線
L10…既存プレスライン下型干渉曲線
L11…仮下型干渉曲線
L11a…制御点
L2…設定新上型干渉曲線
L2A…軌跡
L20…既存プレスライン上型干渉曲線
L21…点列化実施ライン
L22…新上型干渉曲線
L22a…特定新上型干渉曲線
ΔU1…クリアランス
ΔU2…所定距離
P…干渉点
101…プレスライン
102…プレス機
121…下型
122…上型
103…搬送装置
104…制御装置
105…搬送モーション演算装置

請求の範囲

[請求項1]
 下型に対し上型を昇降することでワークをプレス加工する複数のプレス機と、これらプレス機の間において保持部により保持したワークを所定の搬送経路に沿って搬送する複数の搬送装置と、各プレス機の周期的な昇降動作、並びに、各搬送装置の搬送経路に沿った周期的な搬送動作を制御する制御装置と、を備えたプレスラインの搬送経路設定方法であって、
 前記搬送装置の搬送経路を規定する制御点について、この制御点の位置を仮設定する仮設定工程と、
 前記仮設定された制御点の位置情報に基づいて前記搬送装置が当該制御点を通過する搬送経路を算出し、さらに当該搬送経路に沿って搬送装置を移動させた場合における前記保持部の軌跡を算出する軌跡算出工程と、
 前記算出された保持部の軌跡と前記下型の形状とを比較するとともに、前記軌跡を複数の区間に分割し、さらに当該軌跡と前記下型との間隔が区間ごとに設定された目標値に近づくように、前記制御点の位置を調整する搬送経路決定工程と、
 を含む、搬送経路設定方法。
[請求項2]
 前記搬送経路決定工程では、1つの保持部に対し少なくとも4つの代表点を設定し、当該4つの代表点の軌跡を含む各平面に沿った前記下型の断面形状と、前記軌跡とを比較する、請求項1に記載の搬送経路設定方法。
[請求項3]
 下型に対し上型を昇降することでワークをプレス加工する複数のプレス機と、これらプレス機の間で所定の搬送経路に沿ってワークを搬送する複数の搬送装置と、各プレス機の周期的な昇降動作、並びに、各搬送装置の搬送経路に沿った周期的な搬送動作を制御する制御装置と、を備えたプレスラインにおいて、当該プレスラインの運転条件を設定する運転条件設定方法であって、
 前記上型の形状データに基づいて、前記上型の表面のうち前記搬送装置又はワークと干渉する可能性がある複数の候補点を抽出する候補点抽出工程と、
 前記複数の候補点をそれぞれ通過する複数の上型干渉曲線を、仮設定した運転条件のもとで生成する上型干渉曲線生成工程と、
 前記複数の上型干渉曲線のうち前記上型に対して1つの候補点のみにおいて干渉する1つの上型干渉曲線について、当該1つの上型干渉曲線と対応する候補点との間に隙間が形成されるように、仮設定された前記運転条件を補正する運転条件決定工程と、
 を含む、運転条件設定方法。
[請求項4]
 前記候補点抽出工程において用いられる上型の形状データは、前記上型を前記搬送装置の搬送経路と平行な平面に投影して生成された2次元データである、請求項3に記載の運転条件設定方法。
[請求項5]
 前記候補点抽出工程では、任意の方位間隔ごとに延びる方向線に対する垂線と、前記上型外部とが1点のみで接する点を前記候補点として抽出する、請求項4に記載の運転条件設定方法。
[請求項6]
 既存搬送経路に沿って既存搬送装置を用いてワークを搬送する既存プレスラインの金型と同一または同一形状の金型を用いており、前記既存搬送経路とは別の新搬送経路に沿って前記既存搬送装置とは別の新搬送装置を用いてワークを搬送する複製プレスラインにおける前記新搬送経路を作成する搬送モーション作成方法であって、
 前記金型の上型を含むエリアにおける前記上型に対する前記既存搬送装置の軌跡から形成される既存プレスライン上型干渉曲線に関するデータ、並びに、前記新搬送経路の搬送条件に関する新搬送条件に関するデータ及び前記新搬送装置の形状を示す新搬送装置データを読み込むデータ読込工程と、
 前記既存プレスライン上型干渉曲線を所定の間隔で分割した複数の分割点によって点列化する既存プレスライン上型干渉曲線点列化工程と、
 前記新搬送条件に関するデータ及び前記新搬送装置データに基づいて、前記上型に対する前記新搬送装置の軌跡により形成される新上型干渉曲線を、前記複数の分割点についてそれぞれ生成する新上型干渉曲線個別設定工程と、
 前記新上型干渉曲線のうち、前記複数の分割点のうちの1点にのみ干渉する1つの新上型干渉曲線を選択する新上型干渉曲線選択工程と、
 前記新上型干渉曲線選択工程によって選択した前記1つの新上型干渉曲線を、前記上型と所定のクリアランスを保つように前記上型から離れる方向に移動して、設定新上型干渉曲線を生成する新上型干渉曲線補正工程と、
 を備え、
 前記設定新上型干渉曲線に基づき、前記新搬送経路を作成する、
 搬送モーション作成方法。
[請求項7]
 既存搬送経路に沿って既存搬送装置を用いてワークを搬送する既存プレスラインの金型と同一または同一形状の金型を用いており、前記既存搬送経路とは別の新搬送経路に沿って前記既存搬送装置とは別の新搬送装置を用いてワークを搬送する複製プレスラインにおける前記新搬送経路を作成する搬送モーション作成方法であって、
 前記金型の上型を含むエリアにおける前記既存搬送経路から形成される既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ、及び、前記新搬送経路の搬送条件に関する新搬送条件データを読み込むデータ読込工程と、
 前記既存プレスライン下型干渉曲線に関するデータ及び前記新搬送条件データに基づいて、前記既存プレスライン下型干渉曲線から上方に離れた位置に仮下型干渉曲線を初期設定する新下型干渉曲線初期設定工程と、
 前記仮下型干渉曲線に所定間隔で複数の制御点を設け、前記複数の制御点をそれぞれ前記既存プレスライン下型干渉曲線に向かって、前記複数の制御点が前記既存プレスライン下型干渉曲線と所定のクリアランスとなるようにそれぞれ移動させることにより新下型干渉曲線を生成する搬送経路設定工程と、
 を備え、
 前記新下型干渉曲線に基づき、前記新搬送経路を作成する、
 搬送モーション作成方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]

[ 図 29]