処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2011067861 - 車両の制御装置

Document

明 細 書

発明の名称 車両の制御装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021  

図面の簡単な説明

0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098  

符号の説明

0099  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

明 細 書

発明の名称 : 車両の制御装置

技術分野

[0001]
 本発明は、サーモワックスを加熱する加熱部を有するとともに、サーモワックスの融解、凝固により開閉するサーモワックスタイプの切替弁を備える車両の制御装置に関するものである。

背景技術

[0002]
 水冷式エンジンの冷却水回路等には、流体回路の流体の流れを切り替える弁として、サーモワックスタイプの切替弁が採用されることがある。サーモワックスタイプの切替弁は、そのケースの内部に封入されたサーモワックスの融解、凝固に伴う膨張、収縮により開閉されるようになっている。そしてこうしたサーモワックスタイプの切替弁を必要に応じて強制的に開弁させるため、サーモワックスを加熱するヒーターを設けることがある。
[0003]
 従来、こうしたヒーター付きサーモワックスタイプの切替弁を備える車両の制御装置として、特許文献1に記載のものが知られている。同文献1に記載の車両は、エンジンの油圧回路に上記のようなサーモワックスタイプの切替弁と、同切替弁のサーモワックスを加熱するPTCヒーターとを備えたものとなっている。
[0004]
 また同文献1に記載の車両の制御装置では、油圧回路内の油温を検知する油温センサーを備え、その油温センサーの検知した油温からサーモワックスの温度を推定するようにしている。そして切替弁の開弁時には、油温センサーのセンサー値がサーモワックスの融解温度よりも高くなるまでPTCヒーターへの通電を継続するようにしている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2009-115075号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 このように従来の車両の制御装置では、切替弁の周囲を流れる流体の温度を検知する温度センサーを備え、その温度センサーのセンサー値からサーモワックスの温度を推定するようにしている。しかしながら、特に温度センサーと切替弁とが離間した位置に配置されている場合には、温度センサーのセンサー値とサーモワックスの温度とが乖離してしまうことがある。そしてサーモワックスの温度を低く見積り過ぎてしまった場合には、サーモワックスが必要以上に加熱されてしまい、切替弁内部のゴムシールやグリースが炭化して劣化する虞がある。
[0007]
 本発明の目的は、サーモワックスを加熱することによって作動する切替弁の制御を好適に行うことのできる車両の制御装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008]
 上記目的を達成するため、本発明に従う車両の制御装置は、サーモワックスを加熱する加熱部を有するとともに、前記サーモワックスの融解、凝固により開閉するサーモワックスタイプの切替弁を備える車両の制御装置において、前記サーモワックスの相転移に伴う熱容量の変化を加味して前記加熱部の加熱状態を制御する制御部と、を備えている。
[0009]
 上記のような加熱部を有したサーモワックスタイプの切替弁では、その開度とサーモワックスの温度との間に相関がある。そこでサーモワックスの温度を推定し、その温度に基づいて加熱部の加熱状態を制御するようにすれば、過不足なくサーモワックスを加熱することが可能となる。サーモワックスの温度の推定は、サーモワックスの熱モデルに基づいて行うことが可能であるが、そのためには、サーモワックスの熱容量を正確に知る必要がある。
[0010]
 一方、上記のようなサーモワックスタイプの切替弁の動作には、サーモワックスの相転移を伴い、そしてその相転移には、サーモワックスの熱容量の変化を伴う。よって、上記のような熱モデルを用いてサーモワックスの温度推定を行い、その結果に基づいて加熱部の加熱状態を制御するのであれば、サーモワックスの相転移に伴う熱容量の変化を考慮する必要がある。その点、上記構成では、サーモワックスの相転移に伴う熱容量の変化を加味して加熱部の加熱状態を制御するようにしており、サーモワックスの温度を正確に把握して加熱部の加熱制御を行うことが可能である。したがって上記構成によれば、サーモワックスを加熱することによって作動する切替弁の制御を好適に行うことができるようになる。
[0011]
 上記目的を達成するため、本発明に従うもう一つの車両の制御装置は、サーモワックスを加熱する加熱部を有するとともに、前記サーモワックスの融解、凝固により開閉するサーモワックスタイプの切替弁を備える車両の制御装置において、前記サーモワックスの温度の目標値を設定する目標値設定部と、前記加熱部から前記サーモワックスに伝えられる熱量と、前記サーモワックスから前記切替弁の周囲の流体に放熱される熱量とに基づいて前記サーモワックスの受熱量を算出し、その受熱量と前記サーモワックスの熱容量とに基づいて前記サーモワックスの温度を推定するワックス温度推定部と、その推定した前記サーモワックスの温度が前記目標値となるように前記加熱部を制御する制御部と、前記ワックス温度推定部が、前記サーモワックスの相転移点を跨いだ同サーモワックスの推定温度の変化に応じて前記熱容量の値を変更することと、を備えている。
[0012]
 上記のようなサーモワックスタイプの切替弁におけるサーモワックスの受熱量は、加熱部からサーモワックスに伝えられる熱量から、サーモワックスから切替弁の周囲の流体に放熱される熱量を除算した値として求めることができる。こうしたサーモワックスの受熱量をその熱容量で除算すれば、サーモワックスの温度変化量を求めることができ、その結果からサーモワックスの温度を求めることが可能となる。一方、上述したように、サーモワックスタイプの切替弁の開閉には、固体相から固液共存相、液相間のサーモワックスの相転移を伴い、その相転移に応じてサーモワックスの熱容量が変化する。その点、本発明では、サーモワックスの相転移点を跨いだ同サーモワックスの推定温度の変化に応じて熱容量の値を変更するようにしており、サーモワックスの相転移に合せて適切な熱容量を用いてサーモワックスの温度の推定を行うことができる。したがって、本発明の車両の制御装置によれば、サーモワックス温度を正確に把握して、サーモワックスを加熱することによって作動する切替弁の制御を好適に行うことができるようになる。
[0013]
 上記のようなサーモワックスの推定温度に基づく加熱部の制御を行う場合、加熱部によるサーモワックスの過加熱を好適に回避するには、切替弁の開弁要求時のサーモワックス温度の目標値を、同切替弁が全開となるときのサーモワックスの温度以下の温度に、すなわち切替弁が全開となるサーモワックスの温度かそれよりも若干低い温度に設定することが望ましい。
[0014]
 また、切替弁が急峻に開弁されると、切替弁の周囲を流れる流体の温度が急激に変ってしまい、そうした流体の温度に基づく制御に支障を来す虞がある。そうした場合にも、切替弁が微小開度となるサーモワックスの温度にその目標値を一定期間保持した後、切替弁が全開となるときのサーモワックスの温度にその目標値を設定するようにすれば、切替弁が徐々に開弁されるようになり、急激な流体の温度変化を防止することができるようになる。
[0015]
 一方、閉弁から開弁への切替弁の作動の応答性を更に確保するには、閉弁中の切替弁のサーモワックスを予熱しておくことが望ましい。こうした予熱は、切替弁の閉弁時の目標値を、サーモワックスの受熱量が「0」よりも大きくなり、且つ切替弁の開弁開始温度よりも低い値に設定することで行うことができる。
[0016]
 また閉弁から開弁への切替弁の作動の応答性を更に確保するには、閉弁中の切替弁のサーモワックスの温度を、同切替弁の開弁が開始される直前の温度に保持しておくことが望ましい。そのため、切替弁の閉弁時のサーモワックスの温度の目標値を、切替弁の開弁が開始されるときのサーモワックスの温度直前の値に設定するようにしておけば、切替弁の開弁時の応答性を確保することが可能となる。
[0017]
 ところで、サーモワックスの温度に対する切替弁開度の関係に、無視し得ないヒステリシスが存在することがある。すなわち、切替弁開度が開弁側へと変更されつつあるときの所定開度Xの切替弁の開度が得られるサーモワックスの温度と、切替弁開度が閉弁側へと変更されつつあるときの所定開度Xの切替弁の開度が得られるサーモワックスの温度との間に無視し得ない偏差が存在することがある。そうした場合にも、切替弁開度を同一の目標開度とするときにも、切替弁開度を開弁側に変更して目標開度とするときと、切替弁開度を閉弁側に変更して目標開度とするときとでは、サーモワックスの推定温度の目標値を異ならせるようにすれば、切替弁の開度制御を好適に行うことができるようになる。
[0018]
 また切替弁のサーモワックスの熱容量には、経時変化や個体差による個体毎のばらつきが存在することがある。そうした場合には、サーモワックス温度の推定に使用する熱容量が実際のサーモワックスの熱容量と異なってしまい、サーモワックス温度を正確に推定することができなくなる。そうした場合にも、切替弁の開弁の検知を行うことともに、その検知時のサーモワックスの推定温度と、切替弁が実際に開弁するサーモワックスの温度との偏差に応じて熱容量を修正するようにすれば、熱容量の個体毎のばらつきを学習補正して、正確にサーモワックス温度を推定することが可能となる。
[0019]
 なお、サーモワックスの推定温度に基づく加熱部の制御を極簡単に行いたいのであれば、サーモワックスの推定温度が前記目標値よりも低いときに、加熱部によるサーモワックスの加熱を行い、そうでないときには、その加熱を停止するようにすると良い。
[0020]
 ところで上記のようなサーモワックスタイプの切替弁では、サーモワックスの熱容量に対してそのケースの熱容量が無視し得ない程度に大きい場合には、受熱に対するサーモワックスの温度の変化に、ケースの熱容量が与える影響を考慮する必要がある。そうした場合には、上記のようなサーモワックスの温度の変化量の算出に使用する熱容量として、切替弁のケースとサーモワックスとを合せたものの熱容量を用いるようにすると良い。
[0021]
 なお本発明は、エンジンの冷却水を循環する冷却水回路に設けられる切替弁を備える車両に適用することができる。特に、エンジンの内部における冷却水の循環の許容と停止とを切り替えるものとして切替弁が構成された車両への適用が好適である。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 本発明の第1実施形態の適用される車両の冷却水回路の構成を模式的に示すブロック図。
[図2] 同冷却水回路での暖機初期段階における冷却水の循環態様を示すブロック図。
[図3] 同冷却水回路での暖機後期段階における冷却水の循環態様を示すブロック図。
[図4] 同冷却水回路での暖機完了後における冷却水の循環態様を示すブロック図。
[図5] 同実施形態に使用されるサーモワックスの熱モデルを示す略図。
[図6] 同実施形態におけるサーモワックスの受熱量とワックス温度及び切替弁開度との関係を示すグラフ。
[図7] 同実施形態における目標ワックス温度の設定態様を示すグラフ。
[図8] 同実施形態に適用されるワックス温度推定ルーチンのフローチャート。
[図9] 同実施形態に適用されるヒーター通電ルーチンのフローチャート。
[図10] 同実施形態に適用される目標ワックス温度設定ルーチンのフローチャート。
[図11] 本発明の第2実施形態の目標ワックス温度の設定態様を示すグラフ。
[図12] 目標切替弁開度が一定の幅を持って設定されるときの目標ワックス温度の設定態様を示すグラフ。
[図13] 切替弁の開弁前後における水温センサーのセンサー値の推移を示すグラフ。
[図14] 計算上のワックス温度と実際のワックス温度との間にずれが生じたときのサーモワックスの受熱量と両ワックス温度との関係を示すグラフ。

発明を実施するための形態

[0023]
 (第1の実施の形態)
 以下、本発明の車両の制御装置を具体化した第1の実施の形態を、図1~図10を参照して詳細に説明する。なお本実施の形態は、エンジン冷却水を循環させる冷却水回路に設置され、エンジン内部での冷却水の循環とその停止とを切り替えるサーモワックスタイプの切替弁を備える車両に本発明を適用したものとなっている。
[0024]
 図1は、本実施の形態の適用される車両の冷却水回路の構成を示している。この冷却水回路は、冷却水を循環させるための電動ウォーターポンプ1を備えている。
 同図に示すように、この冷却水回路では、電動ウォーターポンプ1の下流において冷却水通路が、エンジン3を通る第1水路2と、EGRクーラー4及びヒーターコア5を通る第2水路6と、に分岐されている。第1水路2は、エンジン3のシリンダブロック、シリンダヘッドを順に通過するように形成されている。そして第1水路2は、エンジン3の下流において切替弁8に接続されている。
[0025]
 切替弁8は、サーモワックスの融解、凝固により開閉するサーモワックスタイプの水路切替弁として構成されている。また切替弁8は、その内部のサーモワックスを加熱する加熱部としてのヒーター9を備えている。なお第1水路2は、切替弁8の下流において、エンジン冷却水の熱を放熱するラジエーター10を通過した後、サーモスタット7に接続されている。
[0026]
 サーモスタット7は、その内部の感温部の周囲を流れるエンジン冷却水の温度に応じて開閉し、その感温部には、EGRクーラー4及びヒーターコア5を通った第2水路6のエンジン冷却水が流入するようになっている。そしてサーモスタット7は、感温部に流入するエンジン冷却水の温度が低いときには閉弁し、ラジエーター10を通じた冷却水の流れを禁止する。またサーモスタット7は、感温部に流入するエンジン冷却水の温度が高いときには開弁し、ラジエーター10を通じた冷却水の流れを許容する。
[0027]
 更に、この冷却水回路は、第2水路6のEGRクーラー4の下流側と、第1水路2の切替弁8とを繋ぐ第3水路11を備えている。切替弁8は、その開弁を通じて第3水路11を通じた冷却水の流れを許容し、その閉弁を通じて第3水路11を通じた冷却水の流れを禁止する。
[0028]
 こうした切替弁8に設置されたヒーター9の通電は、電子制御ユニット12により制御されている。電子制御ユニット12は、中央演算処理装置(CPU)、読込専用メモリー(ROM)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、入出力ポート(I/O)を備えるコンピューターユニットとして構成されている。こうした電子制御ユニット12において、CPUは、ヒーター9の通電制御に係る演算処理を実施し、ROMは、制御用のプログラムやデータを記憶する。またRAMは、CPUの演算結果やセンサーの検出結果等を一時的に記憶し、I/Oは、外部との信号の授受を媒介する。
[0029]
 こうした電子制御ユニット12の入力ポートには、エンジン冷却水の温度を検知する水温センサー13が接続されている。水温センサー13は、エンジン3のシリンダヘッドの冷却水出口の近傍に設置されている。
[0030]
 以上のように構成された冷却水回路では、エンジン3の始動後、以下の態様でエンジン冷却水の流れを制御するようにしている。
 図2は、暖機初期段階における冷却水回路の状態を示している。同図に示すように、このときの切替弁8は、閉弁されており、第3水路11を通じたエンジン冷却水の流れが遮断されている。またこのときのサーモスタット7は、その感温部に流入するエンジン冷却水の温度が低いことから、閉弁しており、ラジエーター10を通じた冷却水の流れを遮断している。そのため、このときの冷却水回路では、第2水路6を通じてのみエンジン冷却水が循環されている。ちなみに、このときのエンジン3では、その内部のエンジン冷却水の循環が停止されており、その内部においてエンジン冷却水がエンジン3の発生する熱で加温され続ける。そのため、エンジン3内部のエンジン冷却水の昇温が促進され、ひいてはエンジン3の暖機が促進されるようになる。
[0031]
 図3は、暖機後期段階の冷却水回路の状態を示している。同図に示すように、このときの切替弁8は、開弁されており、第3水路11を通じたエンジン冷却水の流れが許容されている。またこのときのサーモスタット7は、未だ閉弁したままであり、ラジエーター10を通じた冷却水の流れが遮断されている。そのため、このときの冷却水回路では、エンジン3を通過したエンジン冷却水が第3水路11を通じて流れるようになり、エンジン3内部の冷却水の循環が開始されるようになる。
[0032]
 図4は、暖機完了後の冷却水回路の状態を示している。同図に示すように、このときの切替弁8は、閉弁されており、第3水路11を通じたエンジン冷却水の流れが遮断されている。一方、感温部を通過するエンジン冷却水の温度が十分に高まったことから、このときのサーモスタット7は、開弁するようになる。そのため、このときの冷却水回路では、エンジン3を通過したエンジン冷却水は、ラジエーター10へと流れ、エンジン冷却水がエンジン3から奪った熱がラジエーター10にて放熱されるようになる。
[0033]
 さて、こうした本実施の形態では、電子制御ユニット12は、切替弁8の開度制御に際して、熱モデルを用いて切替弁8のサーモワックス温度の推定を行うようにしている。そして電子制御ユニット12は、推定したサーモワックス温度が目標ワックス温度となるようにヒーター9の加熱状態を制御することで、切替弁8の開度を制御するようにしている。
[0034]
 図5は、サーモワックス温度の推定に使用する熱モデルを示している。この熱モデルでは、ヒーター9の投入熱量Pと、サーモワックスからエンジン冷却水に移動する熱量P_xwとより、サーモワックスの単位時間当りの受熱量(P-P_xw)が求められるようになっている。またその受熱量をサーモワックスの熱容量で除算することで、サーモワックスの単位時間当りの温度変化量が求められるようになっている。
[0035]
 なお、熱量P_xwは、サーモワックスの推定温度T_xとエンジン冷却水の水温T_wとの差分値(T_x-T_w)にサーモワックスからエンジン冷却水への熱伝達係数K_xwを乗算した値として求められている。また本実施の形態では、熱量P_xwの算出に使用するエンジン冷却水の水温T_wとして、水温センサー13のセンサー値を用いるようにしている。
[0036]
 一方、この物理モデルでは、エンジン3の始動開始時におけるサーモワックスの温度(初期ワックス温度T_x0)がそのときのエンジン冷却水の水温(初期水温T_w0)と等しいものと見做すようにしている。そして上記受熱量(P-P_xw)から算出された単位時間当りの温度変化量を初期ワックス温度T_x0に随時積算することで、推定温度T_xが求められるようになっている。
[0037]
 なお、サーモワックスタイプの切替弁8の開閉には、固体相から固液共存相、液相間のサーモワックスの相転移を伴い、その相転移に応じてサーモワックスの熱容量が変化する。そこで、本実施の形態では、上記温度変化量の算出に用いるサーモワックスの熱容量として、固体熱容量M_xs、固液共存熱容量M_xsl及び液体熱容量M_xlの3つの値を用意し、そのときのサーモワックスの状態に応じて切り替えるようにしている。すなわち、本実施の形態では、サーモワックスの相転移点を跨いだ同サーモワックスの推定温度T_xの変化に応じて熱容量の値を変更するようにしている。
[0038]
 また本実施の形態では、上記各熱容量(M_xs、M_xsl、M_xl)は、切替弁8のサーモワックスとそれを収めるケースとを合せたものの熱容量として求められている。すなわち、上記各熱容量は、厳密には、切替弁8のケース及びサーモワックスの熱容量を示している。
[0039]
 ちなみに、これまではサーモスタットの使用は、比較的余裕のある領域で使用されていたため、このようなモデルによって温度推定を行う必要はなかった。しかしながら、水止めをすることで冷却水の温度上昇が急激となり、冷却水の沸騰等を防止するために、上記モデルによる温度推定が必須となっている。
[0040]
 図6は、サーモワックスの受熱量と、切替弁8の開度及びそのサーモワックスの温度との関係を示している。同図に示すように、切替弁8の開度とサーモワックスの温度との間には相関がある。そのため、切替弁8を必要な開度(目標切替弁開度)とするために必要なサーモワックスの温度を求めるとともに、その温度を目標ワックス温度として設定し、上記熱モデルに従って推定されたサーモワックスの温度が目標ワックス温度となるようにヒーター9の加熱状態を制御すれば、切替弁8を必要な開度とすることができる。なお、同図に示すように、切替弁8は、サーモワックスの固体-固液共存境界温度よりも若干高いサーモワックス温度でその開弁を開始し、同サーモワックスの固液共存-液体境界温度よりも若干高いサーモワックス温度で全開となるようになっている。
[0041]
 なお、本実施の形態でのサーモスタット温度に基づく切替弁8の開閉制御は、次の態様で行われる。なお本実施の形態では、下記各状況での目標ワックス温度の設定を、図7に示される態様で行うようにしていれる。
[0042]
 (a)切替弁8の全開時
 上記のようなサーモワックスの推定温度に基づくヒーター9の加熱制御を行う場合、ヒーター9によるサーモワックスの過加熱を好適に回避するため、本実施の形態では、切替弁8の全開要求時の目標ワックス温度を、同切替弁8が全開となるときのサーモワックスの温度か、それよりも若干低い温度に設定するようにしている。
[0043]
 (b)切替弁8の全閉時
 ヒーター9への通電は行わなければ、切替弁8は、全閉状態に維持される。ただし、切替弁8の全閉時にあっても、シリンダヘッド内のエンジン冷却水の沸騰が生じるような場合には、緊急的に切替弁8を開弁して、エンジン内のエンジン冷却水の循環を開始して沸騰を回避する必要がある。そこで本実施の形態では、このような場合の切替弁8の開弁応答性を確保するため、電子制御ユニット12は、切替弁8の全閉時における目標ワックス温度を、切替弁8の開弁が開始されるときのサーモワックスの温度直前の値に設定するようにしている。すなわち、サーモワックスの予熱を行っておくことで、切替弁8を速やかに開弁可能な状態で待機させておくようにしている。なお、程度に拘わらず、サーモワックスの予熱を行っておけば、予熱を全く行わない場合に比して閉弁から開弁への切替弁8の作動の応答性は向上されるようになる。したがって、受熱量が「0」よりも大きくなり、且つ切替弁の開弁開始温度よりも低い値に切替弁の閉弁時の目標値を設定しさえすれば、閉弁から開弁への切替弁8の作動の応答性は向上される。
[0044]
 (c)切替弁8の閉弁から開弁への移行時
 切替弁8が急峻に開弁されると、水温センサー13の周囲のエンジン冷却水の温度が急激に変ってしまい、エンジン水温の検知結果に基づく各種のエンジン制御に支障を来す虞がある。そうした場合にも、切替弁8が微小開度となるサーモワックスの温度に目標ワックス温度を一定期間保持した後、切替弁8が全開となるときのサーモワックスの温度に目標ワックス温度を設定するようにすれば、切替弁8が徐々に開弁されるようになり、急激なエンジン水温センサー値の変化を防止することができるようになる。
[0045]
 なお、シリンダヘッド内のエンジン冷却水の沸騰を回避する場合には、切替弁8を速やかに開弁する必要がある。そこでそうした場合には、切替弁8を微小開度とする期間を置かず、直ちに上記全開要求時の目標ワックス温度を設定するようにしている。
[0046]
 図8は、こうした本実施の形態に適用されるワックス温度推定ルーチンのフローチャートを示している。本ルーチンの処理は、エンジン3の始動開始と共に、電子制御ユニット12により開始されるものとなっている。
[0047]
 さて本ルーチンが開始されると、電子制御ユニット12は、まずステップS100にて始動時水温T_w0を読み込む。そして電子制御ユニット12は、ステップS101において、その始動時水温T_w0を初期ワックス温度T_x0として設定する。
[0048]
 続くステップS102では、電子制御ユニット12は、そのときのサーモワックスが固体相であるか否かを判定する。この判定は、サーモワックスの推定温度T_xがサーモワックスの固体-固液共存境界温度T_x1以下であるか否かで行われる。
[0049]
 ここでサーモワックスが固体であれば(S102:YES)、電子制御ユニット12は、ステップS103において、下式(1)に従ってサーモワックスの推定温度T_xの値を更新する。
[0050]
 
  T_x=T_x(前回値)+(P-P_xw)/M_xs …(1)
 
なお、式(1)のPは、ヒーター9の投入熱量、P_xwは、サーモワックスからエンジン冷却水への熱の移動量、M_xsは、サーモワックスの固体熱容量となっている。
[0051]
 一方、続くS104では、電子制御ユニット12は、そのときのサーモワックスが固液共存相であるか否かを判定する。この判定は、サーモワックスの推定温度T_xがサーモワックスの固体-固液共存境界温度T_x1よりも大きく、且つ固液共存-液体境界温度T_x2以下であるか否かで行われる。
[0052]
 ここでサーモワックスが固液共存の状態にあれば(S104:YES)、電子制御ユニット12は、ステップS105において、下式(2)に従ってサーモワックスの推定温度T_xの値を更新する。
[0053]
 
  T_x=T_x(前回値)+(P-P_xw)/M_xsl …(2)
 
なお、式(2)のM_xslは、サーモワックスの固液共存熱容量である。
[0054]
 一方、続くステップS106では、電子制御ユニット12は、そのときのサーモワックスが液体相であるか否かを判定する。なお、この判定は、サーモワックスの推定温度T_xが固液共存-液体境界温度T_x2よりも大きいか否かで行われる。
[0055]
 ここでサーモワックスが液体であれば(S106:YES)、電子制御ユニット12は、ステップS107において、下式(3)に従ってサーモワックスの推定温度T_xの値を更新する。
[0056]
 
  T_x=T_x(前回値)+(P-P_xw)/M_xl …(3)
 
なお、式(3)のM_xlは、サーモワックスの液体熱容量である。
[0057]
 以上により、サーモワックスの推定温度T_xの更新を終えると、電子制御ユニット12は、次の制御周期において、再びステップS102に戻り、推定温度T_xの更新を繰り返し実施する。
[0058]
 図9は、本実施の形態に適用されるヒーター通電ルーチンのフローチャートを示している。本ルーチンの処理は、電子制御ユニット12により、所定の制御周期毎に繰り返し実施される。
[0059]
 さて本ルーチンが開始されると、電子制御ユニット12は、ステップS200においてサーモワックスの推定温度T_xが、後述する目標ワックス温度設定ルーチンにて設定された目標ワックス温度よりも低いか否かを判定する。そして電子制御ユニット12は、推定温度T_xが目標ワックス温度よりも低ければ(S201:YES)、ステップS201においてヒーター9への通電をオンとし、そうでなければ(S201:NO)、ステップS202においてヒーター9への通電をオフとして、今回の本ルーチンの処理を終了する。このように本実施の形態では、サーモワックスの推定温度T_xが目標ワックス温度よりも低いときに、ヒーター9によるサーモワックスの加熱を行い、そうでないときには、その加熱を停止するようにしている。
[0060]
 図10は、本実施の形態に適用される目標ワックス温度設定ルーチンのフローチャートを示している。本ルーチンの処理は、電子制御ユニット12により、エンジン3の始動開始直後から開始される。
[0061]
 本ルーチンが開始されると、電子制御ユニット12は、まずステップS300において、切替弁8の開要求があるか否かを確認する。ここで電子制御ユニット12は、開要求がなければ(S300:NO)、ステップS301に移行し、そのステップS301において、予熱のためのワックス温度に目標ワックス温度を設定し、所定の制御周期後に再びステップS300の処理に戻る。
[0062]
 一方、開要求があれば(S300:YES)、電子制御ユニット12は、水温センサー値の急変回避の要求が有るか否かを確認する。すなわち、このときの電子制御ユニット12は、沸騰回避などのための切替弁8の緊急開弁が必要な状況にないか、必要な状況にあるかを判定する。
[0063]
 ここで水温センサー値の急変回避の要求が有れば(S302:YES)、電子制御ユニット12は、ステップS303において、一定時間、微小開度となるワックス温度に目標ワックス温度を設定した後に、ステップS304にて、切替弁8が全開となるワックス温度に目標ワックス温度を設定するようにしている。そして電子制御ユニット12は、所定の制御周期後に再びステップS300の処理に戻る。
[0064]
 一方、電子制御ユニット12は、水温センサー値の急変回避の要求が無ければ(S302:NO)、ステップS304に直ちに移行して、切替弁8が全開となるワックス温度に目標ワックス温度を設定する。そしてその後、電子制御ユニット12は、所定の制御周期後に再びステップS300の処理に戻る。
[0065]
 以上説明した本実施の形態では、ヒーター9が上記加熱部に相当する構成となっている。また本実施の形態では、電子制御ユニット12が、目標値設定部、ワックス温度推定部及び制御部の行う処理を実施する構成となっている。
[0066]
 こうした本実施の形態によれば、次の効果を奏することができる。
 (1)本実施の形態では、サーモワックスを加熱するヒーター9を有するとともに、サーモワックスの融解、凝固により開閉するサーモワックスタイプの切替弁8を備える車両において電子制御ユニット12は、サーモワックスの相転移に伴う熱容量の変化を加味してヒーター9の加熱状態を制御するようにしている。より具体的には、電子制御ユニット12は、
・サーモワックスの温度の目標値である目標ワックス温度を設定すること。
・ヒーター9からサーモワックスに伝えられる熱量(投入熱量P)と、サーモワックスから切替弁8の周囲のエンジン冷却水に放熱される熱量P_xwとに基づいてサーモワックスの受熱量を算出し、その受熱量とサーモワックスの熱容量とに基づいてサーモワックスの温度(推定温度T_x)を推定すること。
・サーモワックスの推定温度T_xが目標ワックス温度となるようにヒーター9を制御すること。
・サーモワックスの相転移点を跨いだ同サーモワックスの推定温度T_xの変化に応じて、推定温度T_xの算出に用いる熱容量の値を変更すること。
を行うようにしている。上記のようなサーモワックスタイプの切替弁8におけるサーモワックスの受熱量は、ヒーター9からサーモワックスに伝えられる熱量(投入熱量P)から、サーモワックスから切替弁の周囲の流体に放熱される熱量(P_xw)を除算した値(P-P_xw)として求めることができる。こうしたサーモワックスの受熱量をその熱容量で除算すれば、サーモワックスの温度変化量を求めることができ、その結果からサーモワックスの温度を求めることが可能となる。一方、サーモワックスタイプの切替弁8の開閉には、固体相から固液共存相、液相間のサーモワックスの相転移を伴い、その相転移に応じてサーモワックスの熱容量が変化する。その点、本実施の形態では、サーモワックスの相転移点を跨いだ同サーモワックスの推定温度T_xの変化に応じて熱容量の値を変更するようにしており、サーモワックスの相転移に合せて適切な熱容量を用いてサーモワックスの温度の推定を行うことができる。したがって、本実施の形態の車両の制御装置によれば、サーモワックス温度を正確に把握して、サーモワックスを加熱することによって作動する切替弁の制御を好適に行うことができるようになる。
[0067]
 (2)本実施の形態では、切替弁8の全開が要求される時の目標ワックス温度を、同切替弁8が全開となるときのサーモワックス温度よりも若干低い温度に設定するようにしている。そのため、ヒーター9によるサーモワックスの過加熱を好適に回避することができるようになる。
[0068]
 (3)本実施の形態では、開弁速度の抑制が要求されるときの切替弁8の開弁時に、切替弁8が微小開度となるサーモワックス温度に目標ワックス温度を一定期間保持した後、切替弁8が全開となるときのサーモワックス温度にその目標値を設定するようにしている。そのため、切替弁8が徐々に開弁されるようになり、急激な流体の温度変化を防止することができるようになる。
[0069]
 (4)本実施の形態では、全閉時における目標ワックス温度を、切替弁8の開弁が開始されるときのサーモワックス温度の直前の値に設定するようにしている。そのため、切替弁8の開弁時の応答性を確保することが可能となる。
[0070]
 (5)本実施の形態では、サーモワックスの推定温度T_xが目標ワックス温度よりも低いときに、ヒーター9によるサーモワックスの加熱を行い、そうでないときには、その加熱を停止するようにしている。そのため、サーモワックスの推定温度に基づくヒーター9の制御を極簡単に行うことができる。
[0071]
 (6)本実施の形態では、サーモワックスの温度の変化量の算出に使用する熱容量として、切替弁8のケースとサーモワックスとを合せたものの熱容量を用いるようにしている。そのため、サーモワックスの熱容量に対してそのケースの熱容量が無視し得ない程度に大きい場合にも、サーモワックスの温度を正確に推定することができるようになる。
[0072]
 (7)本実施の形態では、サーモワックス温度を正確に把握して切替弁8の制御を好適に行うことができるため、過加熱による切替弁8内部のゴムシールやグリースの炭化劣化を好適に防止することができる。
[0073]
 (第2の実施の形態)
 続いて、本発明の車両の制御装置を具体化した第2の実施の形態を、図11及び図12を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態は、目標ワックス温度の設定態様を変更したものであり、他の部分は、第1の実施の形態と共通する。
[0074]
 サーモワックス温度に対する切替弁開度の関係には、無視し得ないヒステリシスが存在することがある。すなわち、切替弁8の開度が開弁側へと変更されつつあるときの所定開度Xの切替弁開度が得られるサーモワックス温度と、切替弁8の開度が閉弁側へと変更されつつあるときの所定開度Xの切替弁開度が得られるサーモワックス温度との間に大きい偏差が存在することがある。そうした場合にも、切替弁開度を開弁側に変更して目標開度とするときと、切替弁開度を閉弁側に変更して目標開度とするときとでは、切替弁8の目標開度が同一であっても、目標ワックス温度を異ならせるようにすれば、切替弁8の開度制御を好適に行うことができるようになる。
[0075]
 具体的には、本実施の形態では、図11に示すように、目標切替弁開度が同じでも、通電オンによる開弁方向への切替弁8の駆動時と、通電オフによる閉弁方向への切替弁8の駆動時とでは、目標ワックス温度を異ならせるようにしている。すなわち、通電オンによる開弁方向への切替弁8の駆動時には、目標切替弁開度と通電オン時の切替弁8の動作線Lonとの交点P1におけるサーモワックス温度を目標ワックス温度として設定し、目標切替弁開度と通電オフ時の切替弁8の動作線Loffとの交点P2におけるサーモワックス温度を目標ワックス温度として設定するようにしている。そのため、サーモワックス温度と切替弁開度との関係にヒステリシスが存在する場合にも、サーモワックス温度に基づく切替弁開度を好適に制御することができるようになる。
[0076]
 なお、図12に示すように目標切替弁開度が一定の幅を持って設定される場合には、通電オンによる開弁方向への切替弁8の駆動時には、目標切替弁開度の上限値と通電オン時の切替弁8の動作線Lonとの交点P3におけるサーモワックス温度を目標ワックス温度として設定する。また通電オンによる開弁方向への切替弁8の駆動時には、目標切替弁開度の下限値と通電オフ時の切替弁8の動作線Loffとの交点P4におけるサーモワックス温度を目標ワックス温度として設定する。
[0077]
 (第3の実施の形態)
 続いて、本発明の車両の制御装置を具体化した第2の実施の形態を、図13及び図14を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態は、サーモワックスの熱容量の修正学習を行う点を除いては、上記実施の形態と共通したものとなっている。
[0078]
 切替弁8のサーモワックスの熱容量には、経時変化や個体差による個体毎のばらつきが存在することがある。そうした場合には、サーモワックス温度の推定に使用する熱容量が実際のサーモワックスの熱容量と異なってしまい、サーモワックス温度を正確に推定することができなくなる。
[0079]
 そこで本実施の形態では、切替弁8の開弁の検知を行うことともに、その検知時のサーモワックスの推定温度と、切替弁が実際に開弁するサーモワックスの温度との偏差に応じて熱容量を修正するようにしている。そしてそれにより、熱容量の個体毎のばらつきを修正学習して、正確にサーモワックス温度を推定するようにしている。
[0080]
 なお、ここでの切替弁8の開弁の検知は、次の態様で行われる。
 上述したように、本実施の形態の適用される車両の冷却水回路の第1水路2は、エンジン3のシリンダブロックと経た後、シリンダヘッドを通過するように形成されている。また水温センサー13は、シリンダヘッドの冷却水出口の近傍に配置されている。こうした場合、全閉状態にあった切替弁8が開かれてエンジン3内のエンジン冷却水の循環が開始されると、水温センサー13の設置位置には、まずシリンダヘッドにあったエンジン冷却水が通過するようになる。そして続いて水温センサー13の設置位置には、シリンダブロックにあったエンジン冷却水が通過するようになる。
[0081]
 エンジン冷却水の循環を停止した状態において、シリンダヘッド内のエンジン冷却水は、シリンダブロック内のエンジン冷却水よりも高温となる。そのため、切替弁8の開弁前後の水温センサー13のセンサー値には、図13に示すように、切替弁8の開弁直後にピークが表れるようになる。こうしたピークは、切替弁8の開弁時以外に表れることがないため、これをもって切替弁8の開弁を検知することができることになる。すなわち、本実施の形態では、電子制御ユニット12は、水温センサー13のセンサー値のピークの発現の確認に応じて切替弁8が開弁したものと判断するようにしている。
[0082]
 図14は、計算上のワックス温度、すなわち推定温度T_xと実際のワックス温度との間にずれが生じたときのサーモワックスの受熱量と両ワックス温度との関係を示している。こうしたずれは、推定温度T_xの算出に使用する各熱容量(M_xs、M_xsl、M_xl)が実際の値から乖離しているときに発生する。
[0083]
 ここで、開弁開始迄のサーモワックスが固体であるとすると、サーモワックスの温度(推定温度T_x)は、下式(4)にて表される。
 
   T_x=T_x0+∫(P-P_xw)dt/M_xs …(4)
 
ここでのT_x0は、サーモワックスの初期温度、Pはヒーター9の投入熱量、P_xwはサーモワックスからエンジン冷却水に移動する熱量、M_xsはサーモワックスの固体熱容量である。
[0084]
 一方、切替弁8の開弁検知時迄のサーモワックスの受熱量は、「∫(P-P_xw)dt/M_xs」で表される。故に、実際のサーモワックスの固体熱容量M_xs’は、次式(5)を満すような値となる。
[0085]
 
 切替弁開弁開始温度=T_x0+∫(P-P_xw)dt/M_xs’ …(5)
 
 そこで、上式(5)を満すような値M_xs’にサーモワックスの固体熱容量を修正すれば、正確なサーモワックス温度の推定が可能となる。
[0086]
 なお、サーモワックスの固体熱容量M_xsは、切替弁8の開弁の見極めに非常に重要であるのに対し、固液共存熱容量M_xslや液体熱容量M_xlの誤差は、切替弁8の開度には影響するものの、その影響は相対的に小さいものとなる。そのため、ここでは、計算負荷を低減するため、固体熱容量M_xsのみの修正学習を行うようにしている。もっとも、必要があれば、M_xslやM_xlに「M_xs’/M_xs」を乗算してその修正を行うようにしても良い。
[0087]
 以上の本実施の形態によれば、サーモワックスの熱容量のばらつきに拘わらず、サーモワックス温度の推定を正確に行うことができるようになる。
 なお、こうした本実施の形態では、電子制御ユニット12が、切替弁8の開弁を検知する検知部と、切替弁8の開弁を検知したときのサーモワックスの推定温度T_xと、切替弁8が実際に開弁するサーモワックスの温度との偏差に応じて熱容量を修正する修正部としての処理を実施する構成となっている。
[0088]
 なお、上記各実施の形態は、次のように変更して実施することもできる。
 ・上記実施の形態では、サーモワックスからエンジン冷却水に移動する熱量P_xwの算出に使用するエンジン冷却水の水温T_wとして、水温センサー13のセンサー値を用いるようにしている。ただし、切替弁8と水温センサー13とが離れた場所に配置され、エンジン3内のエンジン冷却水の循環を停止している場合には、水温センサー13のセンサー値と切替弁8周囲のエンジン冷却水の温度とが乖離していることがある。そうした場合、エンジン3の積算燃料量gaにある係数K1を乗じた値が、エンジン3の熱による切替弁8周囲のエンジン冷却水の温度上昇代として、次式(6)にて切替弁8周囲の水温を算出することができる。
[0089]
 
       T_w=T_w0+K1×∫ga dt …(6)
 
なお式(6)におけるT_w0は、初期水温、すなわちエンジン始動開始時の水温センサー値を示している。また積算燃料量gaにある係数K2を乗じた値が、水温センサー値と切替弁8周囲のエンジン冷却水温度との乖離分に相当するとして、次式(7)にて切替弁8周囲の水温を算出することもできる。
[0090]
 
       T_w=Thw+K2×∫ga dt …(7)
 
なお式(7)においてThwは、水温センサー値を示している。
[0091]
 ・第3の実施の形態では、水温センサー値のピークの出現により切替弁8の開弁を検知するようにしていたが、それ以外の方法で、切替弁8の開弁を検知するようにしても良い。例えば切替弁8に開度センサーを設置し、そのセンサーの検出結果から切替弁8の開弁を直接検知するようにしたり、第3水路11の水流を検知するセンサーを設け、第3水路11の水流の有無で間接的に切替弁8の開弁を検知したりすることができる。
[0092]
 ・上記実施の形態では、各熱容量(M_xs、M_xsl、M_xl)として切替弁8のケースとサーモワックスとを合せたものの熱容量を使用するようにしていたが、ケースの熱容量が小さくその影響を無視できるのであれば、サーモワックスのみの熱容量を使用するようにしても良い。
[0093]
 ・上記実施の形態では、水温センサー値の急変を回避するため、切替弁8が微小開度となるサーモワックスの温度に目標ワックス温度を一定期間保持した後、切替弁8が全開となるときのサーモワックスの温度に目標ワックス温度を設定するようにしていた。もっとも、水温センサー値の急変が問題とならないような場合や切替弁開弁の応答性が求められる場合などには、最初から切替弁8が全開となるときのサーモワックス温度に目標ワックス温度を設定するようにしても良い。
[0094]
 ・上記実施の形態では、切替弁8の開弁応答性を確保するため、ヒーター9の予熱を行うようにしていたが、高い開弁応答性が求められない場合には、予熱を実施せず、待機時の電力消費を削減するようにしても良い。
[0095]
 ・上記実施の形態では、切替弁8の全開時、全閉時及び閉弁から開弁への移行時の3つの場合に分けて目標ワックス温度の設定を行うようにしていた。もっとも、より緻密な切替弁開度制御が求められる場合などには、より細密な目標ワックス温度の設定を行うようにしても良い。
[0096]
 ・上記実施の形態では、通電のオン・オフ切替のみでヒーター9の加熱状態を制御していたが、緻密な切替弁開度の制御が求められる場合などには、ヒーター9の通電量を細かく制御するようにしても良い。
[0097]
 ・サーモワックスの推定温度の算出に係る熱モデルとして、上記実施の形態とは異なるモデルを採用するようにしても良い。
 ・切替弁8のサーモワックスを加熱する加熱部としては、熱線式ヒーターやPTCヒーター、ヒートポンプなど、任意の加熱装置を用いることができる。
[0098]
 ・上記実施の形態では、エンジン3の通水の有無を切り替える切替弁8を制御対象として本発明を具体化した場合を説明したが、本発明は、車両の冷却水回路の他の切替弁、例えばラジエーターの通水の有無を切り替える弁などを制御対象とすることができる。また本発明は、冷却水回路以外に設けられる切替弁、例えばエンジンの油圧回路に設けられてその油圧回路内でのオイルの流れを切り替える弁などを制御対象として具体化することも可能である。

符号の説明

[0099]
 1…電動ウォーターポンプ、2…第1水路、3…エンジン、4…EGRクーラー、5…ヒーターコア、6…第2水路、7…サーモスタット、8…サーモワックスタイプの切替弁、9…ヒーター(加熱部)、10…ラジエーター、11…第3水路、12…電子制御ユニット(目標値設定部、ワックス温度推定部、制御部)、13…水温センサー。

請求の範囲

[請求項1]
 サーモワックスを加熱する加熱部を有するとともに、前記サーモワックスの融解、凝固により開閉するサーモワックスタイプの切替弁を備える車両の制御装置において、
 前記サーモワックスの相転移に伴う熱容量の変化を加味して前記加熱部の加熱状態を制御する制御部と、
 を備える車両の制御装置。
[請求項2]
 サーモワックスを加熱する加熱部を有するとともに、前記サーモワックスの融解、凝固により開閉するサーモワックスタイプの切替弁を備える車両の制御装置において、
 前記サーモワックスの温度の目標値を設定する目標値設定部と、
 前記加熱部から前記サーモワックスに伝えられる熱量と、前記サーモワックスから前記切替弁の周囲の流体に放熱される熱量とに基づいて前記サーモワックスの受熱量を算出し、その受熱量と前記サーモワックスの熱容量とに基づいて前記サーモワックスの温度を推定するワックス温度推定部と、
 その推定した前記サーモワックスの温度が前記目標値となるように前記加熱部を制御する制御部と、
 前記ワックス温度推定部が、前記サーモワックスの相転移点を跨いだ同サーモワックスの推定温度の変化に応じて前記熱容量の値を変更することと、
を備える車両の制御装置。
[請求項3]
 前記目標値設定部は、前記切替弁の開弁要求時の前記目標値を、同切替弁が全開となるときの前記サーモワックスの温度以下の温度に設定する
 請求項2に記載の車両の制御装置。
[請求項4]
 前記目標値設定部は、開弁速度の抑制が要求されるときの前記切替弁の開弁時には、前記切替弁が微小開度となる前記サーモワックスの温度に前記目標値を一定期間保持した後、前記切替弁が全開となるときの前記サーモワックスの温度に前記目標値を設定する
 請求項2又は3に記載の車両の制御装置。
[請求項5]
 前記目標値設定部は、前記切替弁の閉弁時の前記目標値を、前記サーモワックスの受熱量が「0」よりも大きくなり、且つ前記切替弁の開弁開始温度よりも低い値に設定する
 請求項2~4のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
[請求項6]
 前記目標値設定部は、前記切替弁の閉弁時の前記目標値を、前記切替弁の開弁が開始されるときの前記サーモワックスの温度直前の値に設定する
 請求項2~4のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
[請求項7]
 前記切替弁の開度を同一の目標開度とするときにも、前記切替弁の開度を開弁側に変更して前記目標開度とするときと、同切替弁の開度を閉弁側に変更して前記目標開度とするときとでは、前記目標値を異ならせる
 請求項2~6のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
[請求項8]
 前記切替弁の開弁を検知する検知部と、
 前記切替弁の開弁を検知したときの前記サーモワックスの推定温度と、前記切替弁が実際に開弁する前記サーモワックスの温度との偏差に応じて前記熱容量を修正する修正部と、
を備える請求項2~7のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
[請求項9]
 前記制御部は、前記サーモワックスの推定温度が前記目標値よりも低いときに、前記加熱部による前記サーモワックスの加熱を行い、そうでないときには、その加熱を停止する
 請求項2~8のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
[請求項10]
 前記熱容量は、前記切替弁のケースと前記サーモワックスとを合せたものの熱容量として求められる
 請求項1~9のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
[請求項11]
 前記切替弁は、エンジン冷却水を循環する冷却水回路に設けられる
 請求項1~10のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
[請求項12]
 前記切替弁は、エンジン内部での冷却水の循環とその停止とを切り替える
 請求項11に記載の車両の制御装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]