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1. WO2010073835 - 制御装置

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明 細 書

発明の名称 制御装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029  

図面の簡単な説明

0030  

発明を実施するための形態

0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096  

産業上の利用可能性

0097  

符号の説明

0098  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 制御装置

技術分野

[0001]
 本発明は、直結クラッチを有する流体継手と変速装置とを備え、エンジン及び回転電機に駆動連結される入力部材の回転を出力部材へ出力する車両用駆動装置の制御を行なうための制御装置に関する。

背景技術

[0002]
 近年、駆動力源としてエンジンと回転電機とを併用することにより、エンジンの燃費向上及び排出ガスの低減を図ることのできるハイブリッド車両が実用化されている。このようなハイブリッド車両に用いる車両用駆動装置の一例として、例えば、下記の特許文献1には、直結クラッチを有する流体継手と変速装置とを備え、エンジン及び回転電機に駆動連結される入力部材の回転を、流体継手と変速装置とを介して出力部材へ出力する車両用駆動装置が記載されている。
[0003]
 この特許文献1に記載された車両用駆動装置では、車両の運転者の意図によりアクセル開度が全閉の状態とされると、制御装置により、直結クラッチの状態が係合状態であるか解放状態であるかに関わらず直結クラッチが係合状態に制御される。同時に、エンジンの回転数を下げてエンジンブレーキで消費されるエネルギーを低く抑え、回生効率の向上を図るため、変速装置の変速段のアップシフトが行なわれる。このように、変速段のアップシフト動作と直結クラッチの係合動作とが、略等しいタイミングで要求されるような状況が生じ得る。
[0004]
 このような状況下において、特許文献1に記載された車両用駆動装置では、変速段のアップシフト動作が行なわれている間は直結クラッチは開放状態に制御され、アップシフト動作の終了後に直結クラッチが係合するように制御される。これにより、車両に変速による衝撃(変速ショック)が生じることが抑制されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2003-278910号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 一般に車両の運転者の意図によりアクセル開度が減少させられた場合には、その後車両の制動のためにブレーキ操作等がなされる可能性がある。このような場合、駆動力源としてエンジン及び回転電機を備えたハイブリッド車両では、車両の減速に伴って回生動作が行なわれることになる。このとき、回生効率を向上させるためには、できるだけ長く、回転電機に大きなトルクが伝達される状態を確保することが有効であると言える。この点、特許文献1に記載された制御装置による制御では、アップシフト動作が終了するまでは直結クラッチが係合されないので、直結クラッチが完全係合状態となるまでには一定の時間が必要となってしまい、その結果回生効率が低下してしまうという問題があった。
[0007]
 本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、変速段のアップシフト動作と直結クラッチの係合状態への移行とが実行される場合に、回生効率を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 この目的を達成するための、本発明に係る直結クラッチを有する流体継手と変速装置とを備え、エンジン及び回転電機に駆動連結される入力部材の回転を出力部材へ出力する車両用駆動装置の制御を行なう制御装置の特徴構成は、前記流体継手の前記入力部材に駆動連結される入力側と前記変速装置に駆動連結される出力側との回転速度の差である差回転速度を取得する差回転取得手段と、車両のアクセル開度及び車速に基づいて、前記変速装置における変速段及び前記直結クラッチの作動状態を決定する状態決定手段と、前記アクセル開度が減少する状態で、前記状態決定手段が前記変速段のアップシフト及び前記直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定した場合において、前記差回転速度が所定の係合許可閾値以下の場合には、前記変速段のアップシフト動作とは無関係に前記直結クラッチを係合させる直結制御手段と、を備えた点にある。
[0009]
 上記の特徴構成によれば、状態決定手段が変速段のアップシフト及び直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定した場合において、アクセル開度が減少している状態では、直結制御手段は変速段のアップシフト動作とは無関係に直結クラッチを係合させるので、変速動作が終了する前に直結クラッチを係合させることができる。これにより、出力部材からのトルクが直結クラッチを介してそのまま回転電機に伝達される(回転電機が出力する負トルクが直結クラッチを介してそのまま出力部材に伝達される)状態を早期に実現することができる。したがって、変速段のアップシフト動作と直結クラッチの係合状態への移行とが実行される場合に、高い効率で回生を行なうことができる状態を早期に実現することができ、回生効率を向上させることができる。
[0010]
 ここで、一般に直結クラッチを係合させた場合には、係合による衝撃(係合ショック)が生じてしまう場合がある。しかし、上記の特徴構成によれば、直結制御手段は、差回転速度が所定の係合許可閾値以下である場合にのみ直結クラッチを係合させるので、変速段のアップシフト動作の終了とは無関係に直結クラッチを係合させたとしても、車両に直結クラッチの係合による衝撃が生じるのを抑制することができる。
[0011]
 したがって、本発明によれば、変速段のアップシフト動作と直結クラッチの係合状態への移行とが実行される場合に、車両に直結クラッチの係合による衝撃が生じることを抑制しつつ、回生効率を向上させることができる。
[0012]
 ここで、前記アクセル開度が一定又は増加する状態で、前記状態決定手段が前記変速段のアップシフト及び前記直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定した場合には、前記直結制御手段は、前記変速段のアップシフト動作が終了した後で前記直結クラッチを係合させる構成とすると好適である。
[0013]
 アクセル開度が一定又は増加する状態では、その後車両の制動のために運転者によりブレーキ操作等がなされる可能性が低いと考えられるので、高い効率で回生を行なうことができる状態を早期に実現する必要性は少ない。したがって、上記の構成を採用することにより、そのような場合には、変速動作中は変速段のアップシフト動作に伴うトルク変動が流体継手を介して入力部材に伝達されるようにして、車両に変速による衝撃が生じるのを抑制することができる。
[0014]
 また、前記直結制御手段は、前記直結クラッチを係合可能な状態とする予備動作と、当該予備動作後に前記直結クラッチを係合させる係合動作と、を実行させる構成とすると好適である。
[0015]
 この構成によれば、直結クラッチを係合させる係合動作に先立って直結クラッチを係合可能な状態とする予備動作を実行させることで、必要なときには迅速に直結クラッチを係合させることができる。
[0016]
 また、前記アクセル開度が減少する状態で、前記状態決定手段が前記変速段のアップシフト及び前記直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定した場合において、前記差回転速度が所定の係合許可閾値以下の場合には、前記直結制御手段は、前記状態決定手段が前記直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定するのとほぼ同時に、前記予備動作を実行させる構成とすると好適である。
[0017]
 この構成によれば、直結クラッチを係合可能な状態をより早期に実現することができる。その結果、直結クラッチを早期に係合することが可能となり、高い効率で回生を行なうことができる状態をより早期に実現することが可能となる。
[0018]
 また、前記係合許可閾値は、前記直結クラッチを係合させた際に、前記アクセル開度を減少させることにより車両に生じる衝撃より小さい衝撃を生じさせるような差回転速度の大きさに設定される構成とすると好適である。
[0019]
 この構成によれば、状態決定手段が変速段のアップシフト及び直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定した場合において、アクセル開度が減少している状態で変速動作の終了とは無関係に直結クラッチを係合させたとしても、当該直結クラッチを係合させることにより車両に生じる衝撃を、アクセル開度を減少させることにより車両に生じる衝撃に紛れさせることができる。
[0020]
 また、前記直結制御手段は、前記直結クラッチを係合させるための直結制御指令信号を出力し、前記直結制御指令信号は、前記直結クラッチの係合側油室内に作動油を充填するための予備充填相と前記作動油の油圧を増圧して前記直結クラッチを係合させるための増圧係合相とを有する予め設定された基準波形が、一又は二以上の変数により規定されたものである構成とすると好適である。
[0021]
 この構成によれば、直結制御指令信号の予備充填相に応じて直結クラッチの予備動作を実行させ、増圧係合相に応じて係合動作を実行させることで、直結クラッチを適切に係合させることができる。その際、予め設定された基準波形を一又は二以上の変数で規定することにより直結制御指令信号が生成されるので、車両の状況等に応じて直結制御指令信号の波形を適宜最適な形状として、直結クラッチをより適切に係合させることができる。
[0022]
 また、前記直結制御手段は、前記変速段のアップシフト動作が終了していない状態で前記直結クラッチを係合させる際に、前記直結制御指令信号における前記増圧係合相の増圧変化率を、前記アクセル開度が一定又は増加する状態時における増圧変化率よりも大きくする構成とすると好適である。
[0023]
 この構成によれば、直結クラッチの係合圧を完全係合圧にまで上昇させるまでの時間を短縮して、出力部材からのトルクが直結クラッチを介してそのまま回転電機に伝達される(回転電機が出力する負トルクが直結クラッチを介してそのまま出力部材に伝達される)状態をより早期に実現することができる。したがって、高い効率で回生を行なうことができる状態をより早期に実現することができる。
[0024]
 また、前記変速装置は各変速段を実現するための複数の摩擦係合要素を有し、前記複数の摩擦係合要素の係合及び解放は、それぞれ係合側制御指令信号及び解放側制御指令信号に応じて制御され、前記係合側制御指令信号は、係合側の摩擦係合要素の油室内に作動油を充填するための予備充填相と前記作動油の油圧を増圧して前記摩擦係合要素を係合させるための増圧係合相とを有する予め設定された基準波形が、一又は二以上の変数により規定される構成で、前記状態決定手段が前記変速段の切り替えを決定し、前記変速段の切り替えが行なれた場合に、前記一又は二以上の変数の設定値と、当該設定値に従って前記変速段の切り替えがなされた際の実際の車両の挙動とに基づいて、以降の前記係合側制御指令信号の各変数の設定値を補正する学習制御手段を更に備えた構成とすると好適である。
[0025]
 この構成によれば、係合側制御指令信号及び解放側制御指令信号の一又は二以上の変数の設定値を車両の状況等に応じて適宜変更して、変速装置における各変速段を実現するための複数の摩擦係合要素を適切に係合させ、或いは解放させることができる。また、学習制御手段が、前記変数の設定値と、当該設定値に従って変速段の切り替えがなされた際の実際の車両の挙動とに基づいて、それ以降の係合側制御指令信号の各変数の設定値を補正することで、エンジンや変速装置に製造上のばらつきや経時劣化等があった場合にも、出力トルクの低下を抑制しつつ、車両用駆動装置に迅速かつ円滑に変速動作を行なわせることができる。
[0026]
 また、前記アクセル開度が減少する状態で、前記変速段のアップシフト動作及び前記直結クラッチの係合が行なれた場合には、前記学習制御手段は前記係合側制御指令信号の各変数の設定値をそのまま維持する構成とすると好適である。
[0027]
 本発明では、アクセル開度が減少する状態で変速段のアップシフト動作及び直結クラッチの係合が行なれる場合には、回生効率を向上させることを最優先し、変速動作に伴って多少の衝撃が生じることを当初から許容して、変速段のアップシフト動作とは無関係に直結クラッチを係合させる。したがって、上記の構成を採用して、そのような場合には学習制御手段は係合側制御指令信号の各変数の設定値を補正しない構成とすることで、係合側制御指令信号の各変数の設定値が不適切な値に補正されることを防止することができる。
[0028]
 また、前記変数は、前記係合側制御指令信号の前記予備充填相における充填圧及び充填時間、並びに前記増圧係合相における目標係合圧、の少なくとも一つ以上を含む構成とすると好適である。
[0029]
 この構成によれば、予備充填相における充填圧及び充填時間の一方又は双方を適宜補正することにより、係合側摩擦係合要素の油室内に適切な量の作動油を予め充填して、変速時に出力トルクが低下することを抑制することができる。また、増圧係合相における目標係合圧を適宜補正することにより、伝達トルク容量を適切な大きさとして、迅速かつ円滑に変速動作を行なわせることができる。

図面の簡単な説明

[0030]
[図1] 本実施形態に係る制御装置を含む車両用駆動装置の構成を示す模式図である。
[図2] 本実施形態に係る制御ユニットの構成を示すブロック図である。
[図3] 本実施形態に係る変速マップの一例を示す図である。
[図4] 本実施形態に係る係合側制御指令信号及び解放側制御指令信号を示す模式図である。
[図5] 本実施形態に係るロックアップ制御指令信号を示す模式図である。
[図6] 本実施形態に係る第一制御処理(アクセルオン時)を説明するためのタイミングチャートである。
[図7] 本実施形態に係る第一制御処理(アクセルオフ時)を説明するためのタイミングチャートである。
[図8] 本実施形態に係る第二制御処理を説明するためのタイミングチャートである。
[図9] 本実施形態に係る第一制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
[図10] 本実施形態に係る第二制御処理の処理手順を示すフローチャートである。

発明を実施するための形態

[0031]
 本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においては、本発明に係る制御装置をハイブリッド車両用の車両用駆動装置1に適用した場合を例として説明する。図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の駆動伝達系及び油圧制御系の構成を示す模式図である。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は電力の供給経路を示している。なお、破線に隣接配置した(P1)又は(P2)は、当該供給経路内における作動油の油圧が第一油圧P1又は第二油圧P2であることを示している。この図に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、概略的には、エンジン11及び回転電機12を駆動力源として備え、これらの駆動力源の駆動力を、トルクコンバータ13及び変速装置14を介して出力し、車輪16へ伝達する構成となっている。また、この車両用駆動装置1は、トルクコンバータ13や変速装置14などの各部に作動油を供給するための油圧制御装置2を備えている。図2は、本実施形態に係る制御ユニット31の構成を示すブロック図である。この図において、実線は信号の伝達経路を示し、白抜き矢印は信号圧の伝達経路を示している。この図に示すように、本実施形態に係る制御ユニット31は、油圧制御装置2を含む車両用駆動装置1の各部の制御を行う構成となっている。本実施形態においては、この制御ユニット31が本発明における「制御装置」に相当する。
[0032]
1.車両用駆動装置の駆動伝達系の構成
 まず、本実施形態に係る車両用駆動装置1の駆動伝達系の構成について説明する。図1に示すように、車両用駆動装置1は、車両駆動用の駆動力源としてエンジン11及び回転電機12を備え、これらのエンジン11と回転電機12とが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置となっている。また、車両用駆動装置1は、トルクコンバータ13と変速装置14とを備えており、駆動力源としてのエンジン11及び回転電機12の回転駆動力を、当該トルクコンバータ13及び変速装置14により変速して出力軸Oに伝達する。
[0033]
 エンジン11は、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、エンジン11のクランクシャフト等の出力回転軸が、伝達クラッチ21を介して入力軸Iに駆動連結されている。これにより、入力軸Iは伝達クラッチ21を介してエンジン11と選択的に駆動連結される。この伝達クラッチ21は、後述する第一油圧P1の作動油の供給を受けて、図示しない油圧制御弁により制御されて動作する。なお、エンジン11の出力回転軸が、入力軸Iと一体的に駆動連結され、或いはダンパ等の他の部材を介して駆動連結された構成としても好適である。
[0034]
 回転電機12は、図示しないケースに固定されたステータ12aと、このステータ12aの径方向内側に回転自在に支持されたロータ12bと、を有している。この回転電機12のロータ12bは、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。すなわち、本実施形態においては、入力軸Iにエンジン11及び回転電機12の双方が駆動連結される構成となっている。したがって、本実施形態においては、この入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当する。回転電機12は、蓄電装置としてのバッテリ26に電気的に接続されている。そして、回転電機12は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機12は、バッテリ26からの電力供給を受けて力行し、或いは車輪から伝達される回転駆動力により発電した電力をバッテリ26に蓄電する。なお、バッテリ26は蓄電装置の一例であり、キャパシタなどの他の蓄電手段を用い、或いは複数種類の蓄電手段を併用することも可能である。
[0035]
 この車両用駆動装置1では、エンジン11及び回転電機12の双方の回転駆動力を車輪16に伝達して車両を走行させる。この際、回転電機12は、バッテリ26の充電状態により、バッテリ26から供給される電力により駆動力を発生する状態と、エンジン11の回転駆動力により発電する状態と、のいずれともなり得る。また、車両の減速時には、伝達クラッチ21が解放されるとともに、エンジン11が停止状態とされ、回転電機12は、車輪16から伝達される回転駆動力により発電する状態となる。回転電機12で発電された電力はバッテリ26に蓄電される。車両の停止状態では、伝達クラッチ21は解放状態とされ、エンジン11及び回転電機12は停止状態とされる。
[0036]
 入力軸Iには、トルクコンバータ13が駆動連結されている。トルクコンバータ13は、駆動力源としてのエンジン11及び回転電機12に駆動連結された入力軸Iの回転駆動力を、中間軸Mを介して変速装置14に伝達する装置である。このトルクコンバータ13は、入力軸Iに駆動連結された入力側回転部材としてのポンプインペラ13aと、中間軸Mに駆動連結された出力側回転部材としてのタービンランナ13bと、これらの間に設けられ、ワンウェイクラッチを備えたステータ13cと、を備えている。そして、トルクコンバータ13は、内部に充填された作動油を介して、駆動側のポンプインペラ13aと従動側のタービンランナ13bとの間で駆動力の伝達を行う。本実施形態においては、このトルクコンバータ13が本発明における「流体継手」に相当する。
[0037]
 ここで、トルクコンバータ13は、ロックアップ用の摩擦係合要素として、ロックアップクラッチ22を備えている。このロックアップクラッチ22は、ポンプインペラ13aとタービンランナ13bとの間の回転差(滑り)を無くして伝達効率を高めるために、ポンプインペラ13aとタービンランナ13bとを一体回転させるように連結するクラッチである。したがって、トルクコンバータ13は、ロックアップクラッチ22の係合状態では、作動油を介さずに、駆動力源(入力軸I)の駆動力を直接変速装置14(中間軸M)に伝達する。本実施形態においては、このロックアップクラッチ22が本発明における「直結クラッチ」に相当する。ロックアップクラッチ22を含むトルクコンバータ13には、後述する第二油圧P2の作動油が供給される。
[0038]
 トルクコンバータ13の出力軸としての中間軸Mには、変速装置14が駆動連結されている。変速装置14は、トルクコンバータ13を介して伝達される入力軸Iからの回転駆動力を、変速して車輪16側の出力軸Oへ伝達する装置である。ここで、変速装置14は、複数の変速段を有する有段の自動変速装置(有段変速装置)である。本実施形態においては、変速装置14は変速比の異なる三つの変速段(第一速、第二速、及び第三速)を備えている(不図示)。変速装置14は、三つの変速段を構成するために、遊星歯車機構等の歯車機構と、この歯車機構の回転要素の係合又は解放を行い、変速段を切り替えるためのクラッチやブレーキ等の複数の摩擦係合要素とを備えている。そして、変速装置14は、各変速段について設定された所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して出力部材としての出力軸Oへ伝達する。そして、変速装置14から出力軸Oへ伝達された回転駆動力は、ディファレンシャル装置15を介して車輪16に伝達される。なお本例では、入力軸I、中間軸M、及び出力軸Oの全てが同軸上に配置された一軸構成とされている。
[0039]
2.油圧制御装置の構成
 次に、上述した車両用駆動装置1の油圧制御系を構成する油圧制御装置2について説明する。この油圧制御装置2は、図示しないオイルパンに蓄えられた作動油を吸引し、車両用駆動装置1の各部に供給するための油圧源として、図1に示すように、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24の二種類のポンプを備えている。ここで、機械式ポンプ23は、入力軸I(駆動力源としてのエンジン11及び回転電機12)の回転駆動力により動作するオイルポンプである。このような機械式ポンプ23としては、例えば、歯車ポンプやベーンポンプ等が好適に用いられる。本例では、機械式ポンプ23は、トルクコンバータ13のポンプインペラ13aを介して入力軸Iに駆動連結され、エンジン11及び回転電機12の一方又は双方の回転駆動力により駆動される。そして、この機械式ポンプ23は、基本的には車両用駆動装置1に必要な作動油の油量を十分に上回る吐出能力を備えている。しかし、機械式ポンプ23は、入力軸Iの停止中(すなわち車両の停止中)には作動油を吐出しない。また、機械式ポンプ23は、入力軸Iの低速回転中(すなわち車両の低速走行中)には作動油を吐出するが、車両用駆動装置1にとって必要な油量を供給することができない場合がある。そこで、この車両用駆動装置1は、機械式ポンプ23を補助するためのポンプとして、電動ポンプ24を備えている。
[0040]
 電動ポンプ24は、入力軸I(駆動力源)の回転駆動力とは無関係に、ポンプ駆動用の電動モータ25の駆動力により動作するオイルポンプである。この電動ポンプ24としても、例えば、歯車ポンプやベーンポンプ等が好適に用いられる。電動ポンプ24を駆動する電動モータ25は、バッテリ26と電気的に接続され、バッテリ26からの電力の供給を受けて駆動力を発生する。この電動ポンプ24は、機械式ポンプ23を補助するためのポンプであって、車両の停止中や低速走行中など、機械式ポンプ23から必要な油量が供給されない状態で動作する。このような補助ポンプとしての性格と、小型軽量化及び電動モータ25の消費電力の低減のために、電動ポンプ24としては、機械式ポンプ23よりも吐出能力が小さいポンプが用いられる。
[0041]
 また、油圧制御装置2は、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための調整弁として、第一調整弁(プライマリ・レギュレータ・バルブ)PVと、第二調整弁(セカンダリ・レギュレータ・バルブ)SVとを備えている。第一調整弁PVは、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給される作動油の油圧を第一油圧P1に調整する調整弁である。第二調整弁SVは、第一調整弁PVからの余剰油の油圧を第二油圧P2に調整する調整弁である。したがって、第二油圧P2は、第一油圧P1よりも低い値に設定される。第一油圧P1は、車両用駆動装置1の基準油圧となるライン圧に相当し、その値は、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧に基づいて決定される。
[0042]
 図2に示すように、第一調整弁PV及び第二調整弁SVには、共通の油圧調整用のリニアソレノイド弁SLTからの信号圧が供給される。そして、図1に示すように、第一調整弁PVは、供給される信号圧に応じて、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給される、第一調整弁PVより上流側(機械式ポンプ23及び電動ポンプ24側)の作動油の油圧を第一油圧P1に調整する。ここでは、第一調整弁PVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧と、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1のフィードバック圧とのバランスに基づいて、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給された作動油を第二調整弁SV側へ排出する量を調整する。すなわち、第一調整弁PVは、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給される作動油の油量が多い場合には、第二調整弁SV側へ排出する作動油の油量を多くする。一方、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給される作動油の油量が少ない場合には、第二調整弁SV側へ排出する作動油の油量を少なくする。これにより、第一調整弁PVより上流側の作動油の油圧を、信号圧に応じた第一油圧P1に調整する。
[0043]
 第二調整弁SVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧に応じて、第一調整弁PVから排出される余剰油の油圧、すなわち、第一調整弁PVより下流側(第二調整弁SV側)であって第二調整弁SVより上流側(第一調整弁PV側)の油圧を所定の第二油圧P2に調整する。ここでは、第二調整弁SVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧と、第二調整弁SVによる調整後の第二油圧P2のフィードバック圧とのバランスに基づいて、第一調整弁PVから排出された余剰の作動油をオイルパンへ排出(ドレン)する量を調整する。すなわち、第二調整弁SVは、第一調整弁PVからの余剰油の油量が多い場合には、オイルパンへ排出する作動油の油量を多くする。一方、第一調整弁PVからの余剰油の油量が少ない場合には、オイルパンへ排出する作動油の油量を少なくする。これにより、第二調整弁SVより上流側の作動油の油圧を、信号圧に応じた第二油圧P2に調整する。
[0044]
 リニアソレノイド弁SLTは、図1に示すように、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1の作動油の供給を受けるとともに、図2に示すように、制御ユニット31から出力されるSLT指令値に応じて弁の開度を調整することにより、当該SLT指令値に応じた信号圧の作動油を出力する。ここで、リニアソレノイド弁SLTから出力される信号圧は、基本的にSLT指令値に比例する値となる。このリニアソレノイド弁SLTから出力される信号圧の作動油は、第一調整弁PV及び第二調整弁SVに供給される。したがって、ここでは、第一調整弁PV及び第二調整弁SVのそれぞれに対して同じ値の信号圧が供給されることになる。これにより、制御ユニット31は、出力するSLT指令値に応じた第一油圧P1及び第二油圧P2に調整するように、第一調整弁PV及び第二調整弁SVの制御を行う構成となっている。リニアソレノイド弁SLTの制御信号となるSLT指令値は、走行負荷やアクセル開度などの各種の車両情報に基づいて、制御ユニット31において決定され、リニアソレノイド弁SLTに対して出力される。ここで制御ユニット31から出力されるSLT指令値は、具体的には、リニアソレノイド弁SLTの開度を決定する電流値である。
[0045]
 第一調整弁PVにより調整された第一油圧P1の作動油は、変速制御弁VBを介して変速装置14の複数の摩擦係合要素に供給される。変速制御弁VBは、変速装置14の複数の摩擦係合要素のそれぞれの係合又は解放を行う動作制御用の弁であり、各摩擦係合要素のそれぞれに対応する複数の制御弁等により構成されている。この変速制御弁VBは、制御ユニット31から出力される制御指令値に応じて複数の制御弁の開閉動作を行うことにより、第一調整弁PVにより調整された第一油圧P1の作動油を各摩擦係合要素の油室に供給し、各摩擦係合要素の係合又は解放の動作を制御する。なお、第一油圧P1の作動油は、伝達クラッチ21等にも供給される。また、第二調整弁SVにより調整された第二油圧P2の作動油は、変速装置14の潤滑油路、トルクコンバータ13、ロックアップクラッチ22の制御用のロックアップ制御弁(ロックアップ・コントロール・バルブ)CV等に供給される。
[0046]
 ロックアップ制御弁CVは、ロックアップクラッチ22の係合又は解放を行う動作制御用の弁である。このロックアップ制御弁CVには、ロックアップ制御用のリニアソレノイド弁SLUからの信号圧が供給される。そして、ロックアップ制御弁CVは、供給される信号圧に応じて弁を開閉することにより、第二調整弁SVにより調整された第二油圧P2の作動油をロックアップクラッチ22の油室に供給し、ロックアップクラッチ22の係合又は解放の動作を制御する。なお、ロックアップ制御用のリニアソレノイド弁SLUは、上記油圧調整用のリニアソレノイド弁SLTと同様に、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1の作動油の供給を受けるとともに、制御ユニット31から出力される制御指令信号に応じて弁の開度を調整することにより、当該制御指令信号に応じた信号圧の作動油を出力する。
[0047]
3.制御ユニットの構成
 次に、本実施形態に係る制御ユニット31の構成について説明する。車両用駆動装置1が備える制御ユニット31は、図2に示すように、車両用駆動装置1の各部の動作制御を行う中核部材としての機能を果たしている。この制御ユニット31は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている(不図示)。そして、ROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御ユニット31の各機能部32~39が構成される。これらの各機能部32~39は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。また、メモリ41は、例えばフラッシュメモリ等のように、情報を記憶及び書き換え可能な記録媒体をハードウェア構成として備え、制御ユニット31との間で互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。このメモリ41は、制御ユニット31が有する記憶装置内に設けられても良い。
[0048]
 また、図1及び図2に示すように、この車両用駆動装置1は、各部に設けられた複数のセンサ、具体的には、入力軸回転速度センサSe1、中間軸回転速度センサSe2、車速センサSe3、アクセル開度検出センサSe4、及びバッテリ状態検出センサSe5を備えている。ここで、入力軸回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。本実施形態においては、入力軸Iはトルクコンバータ13のポンプインペラ13aに駆動連結されている。したがって、この入力軸回転速度センサSe1により検出される回転速度は、トルクコンバータ13の入力側の回転速度となる。中間軸回転速度センサSe2は、中間軸Mの回転速度を検出するセンサである。本実施形態においては、中間軸Mはトルクコンバータ13のタービンランナ13bに駆動連結されている。したがって、この中間軸回転速度センサSe2により検出される回転速度は、トルクコンバータ13の出力側の回転速度となる。車速センサSe3は、車輪16の回転速度すなわち車速を検出するセンサである。アクセル開度検出センサSe4は、図示しないアクセルペダルの操作量を検出することによりアクセル開度を検出するセンサである。バッテリ状態検出センサSe5は、バッテリ26の充電量や電圧値等のバッテリ状態を検出するためのセンサである。これらの各センサSe1~Se5による検出結果を示す情報は、制御ユニット31へ出力される。
[0049]
 図2に示すように、制御ユニット31は、エンジン制御部32、回転電機制御部33、状態決定部34、切替制御部35、差回転取得部36、ロックアップ制御部37、増圧制御部38、及び学習制御部39を備えている。また、制御ユニット31の各機能部32~39が参照するメモリ41には、変速マップ42、ロックアップマップ43、及び指令用パラメータ44が格納されている。以下では、制御ユニット31の各機能部32~39について詳細に説明する。
[0050]
 エンジン制御部32は、エンジン11の動作制御を行なう機能部である。エンジン制御部32は、エンジン動作点を決定し、当該エンジン動作点でエンジン11を動作させるように制御する処理を行う。ここで、エンジン動作点は、エンジン11の制御目標点を表す制御指令値であって、回転速度及びトルクにより定まる。より詳細には、エンジン動作点は、車両要求出力(車両要求トルク及びエンジン回転速度に基づいて定まる)と最適燃費とを考慮して決定されるエンジン11の制御目標点を表す指令値であって、回転速度指令値とトルク指令値により定まる。そして、エンジン制御部32は、エンジン動作点に示されるトルク及び回転速度で動作するようにエンジン11を制御する。
[0051]
 回転電機制御部33は、回転電機12の動作制御を行なう機能部である。回転電機制御部33は、回転電機動作点を決定し、当該回転電機動作点で回転電機12を動作させるように制御する処理を行う。ここで、回転電機動作点は、回転電機12の制御目標点を表す制御指令値であって、回転速度及びトルクにより定まる。より詳細には、回転電機動作点は、車両要求出力とエンジン動作点とを考慮して決定される回転電機12の制御目標点を表す指令値であって、回転速度指令値とトルク指令値により定まる。そして、回転電機制御部33は、回転電機動作点に示されるトルク及び回転速度で動作するように回転電機12を制御する。また、回転電機制御部33は、バッテリ状態検出センサSe5により検出されるバッテリ26の充電量に応じて、バッテリ26から供給される電力により回転電機12に駆動力を発生させる状態と、エンジン11の回転駆動力により回転電機12に発電させる状態とを切り替える制御も行なう。
[0052]
 本実施形態においては、回転電機制御部33は、後述するロックアップ制御部37がロックアップ制御弁CVを制御してロックアップクラッチ22を係合させる際には、回転電機12の出力トルク及び回転速度を制御することによりトルクコンバータ13の入力側回転要素となるポンプインペラ13aと出力側回転要素となるタービンランナ13bとの回転速度の差を減少させることができるようになっている。すなわち、回転電機制御部33は、回転電機12の出力トルク及び回転速度を制御することにより、ロータ12bに駆動連結された入力軸I及びポンプインペラ13aの回転速度を増減させて、ポンプインペラ13aの回転速度をタービンランナ13bの回転速度に近づけるように制御する。なお、回転電機制御部33は、電動ポンプ24を駆動するための電動モータ25の回転速度の制御も行なうように構成されている。
[0053]
 状態決定部34は、車両のアクセル開度及び車速に基づいて、変速装置14における変速段及びロックアップクラッチ22の作動状態を決定する機能部である。本実施形態においては、この状態決定部34が本発明における「状態決定手段」に相当する。このような変速段及びロックアップクラッチ22の作動状態を決定するため、状態決定部34は、メモリ41に格納された変速マップ42及びロックアップマップ43を参照する。図3は、本実施形態に係る変速マップ42及びロックアップマップ43の一例を示す図である。ここでは、変速マップ42及びロックアップマップ43は重ね合わされて一つのマップとされている(以下では、当該重ね合わされたマップを「変速マップ42」という場合がある)が、それぞれ個別に格納された構成としてあっても良い。変速マップ42は、アクセル開度及び車速に基づいて変速装置14における変速段のシフトスケジュールを設定したマップである。この図に示すように、概略右上がりの(車速が大きくなるに従い、アクセル開度も大きくなる)直線で表される、複数のアップシフト線と複数のダウンシフト線とが設定されている。ここで、アップシフト線は変速装置14における隣り合う二つの変速段の間での低速段から高速段への移行スケジュールを規定した線であり、ダウンシフト線は高速段から低速段への移行スケジュールを規定した線である。本実施形態においては、変速装置14は三つの変速段を有しているので、第1速から第2速へのアップシフト線、第2速から第3速へのアップシフト線、第2速から第1速へのダウンシフト線、及び第3速から第2速へのダウンシフト線がそれぞれ設定されている。なお、ここでは、アップシフトとは変速比(減速比)の小さい変速段への切り替えを意味するものとし、ダウンシフトとは変速比(減速比)の大きい変速段への切り替えを意味するものとする。
[0054]
 ロックアップマップ43は、アクセル開度及び車速に基づいてロックアップクラッチ22のロックアップスケジュールを設定したマップである。この図に示すように、概略縦軸に平行な(車速が一定の)直線と右上がりの直線との組み合わせで表される、オンロック線とオフロック線とが設定されている。ここで、オンロック線はロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行スケジュールを規定した線であり、オフロック線はロックアップクラッチ22の係合状態から解放状態への移行スケジュールを規定した線である。本実施形態においては、変速段が第1速又は第2速の場合にはロックアップクラッチ22は解放状態に維持される構成となっており、変速段が第3速の場合におけるオンロック線及びオフロック線のみが設定されている。
[0055]
 切替制御部35は、状態決定部34により決定された変速段に応じて、変速制御弁VBの動作を制御することにより、変速装置14の変速段を切り替える制御を行う機能部である。このような制御を実行するため、制御ユニット31には、リニアソレノイド弁SLTが接続されている。そして、切替制御部35はリニアソレノイド弁SLTへ制御信号としてのSLT指令信号を出力する。このSLT指令信号に応じて第一調整弁PV及び第二調整弁SVが制御され、第一油圧P1及び第二油圧P2が調整される。そして、第一油圧P1に調整された作動油が変速制御弁VBに供給されるとともに、切替制御部35から変速制御弁VBへ出力される制御信号としての制御指令値に応じて複数の制御弁の動作が行われ、変速装置14の各摩擦係合要素の係合又は解放の動作制御が行われる。
[0056]
 切替制御部35から変速制御弁VBへ出力される制御信号には、係合される側の摩擦係合要素に対する係合側制御指令信号S1と解放される側の摩擦係合要素に対する解放側制御指令信号S2とが含まれる。図4に示すように、係合側制御指令信号S1は、係合される側の摩擦係合要素の油室内に作動油を充填するための予備充填相f1と、油室内に充填された作動油の油圧を増圧して係合される側の摩擦係合要素の係合圧を上昇させるための増圧係合相f2と、を有する。この係合側制御指令信号S1は、予め設定された基準波形が、一又は二以上の指令用パラメータ44により規定されることにより生成される。本実施形態においては、この指令用パラメータ44が本発明における「変数」に相当する。このような指令用パラメータ44として、本実施形態においては、係合側制御指令信号S1の予備充填相f1における充填圧a1、充填時間a2、維持圧a3及び維持時間a4、並びに、増圧係合相f2における目標係合圧a5~a8及び完全係合圧a9がそれぞれ設定されている。これにより、予め設定された基準波形をベースとしつつ各指令用パラメータ(a1~a9)の設定値に応じた波形の係合側制御指令信号S1が生成する。
[0057]
 解放側制御指令信号S2は、油室内に充填された作動油の油圧を減圧して解放される側の摩擦係合要素の係合圧を低下させる減圧解放相f3を有する。この解放側制御指令信号S2は、予め設定された基準波形が、一又は二以上の指令用パラメータ44により規定されることにより生成される。このような指令用パラメータ44として、本実施形態においては、解放側制御指令信号S2の減圧解放相f3における完全係合圧b1、減圧開始圧b2、及び減圧変化率b3がそれぞれ設定されている。これにより、予め設定された基準波形をベースとしつつ各指令用パラメータ(b1~b3)の設定値に応じた波形の解放側制御指令信号S2が生成する。生成した係合側制御指令信号S1及び解放側制御指令信号S2は変速制御弁VBに出力され、各摩擦係合要素の係合圧を制御する。そして、係合側の摩擦係合要素の係合圧が所定値以上に上昇するとともに解放側の摩擦係合要素の係合圧が所定値以下に低下することにより、いわゆる掛け変え変速が行なわれる。なお、本実施形態においては、係合側制御指令信号S1に応じて、係合側の摩擦係合要素の係合圧が完全係合圧a9となったときに、変速動作(アップシフト動作又はダウンシフト動作)が終了するものとする。
[0058]
 差回転取得部36は、トルクコンバータ13の入力軸Iに駆動連結される入力側と変速装置に駆動連結される出力側との回転速度の差である差回転速度ΔNを取得する機能部である。本実施形態においては、この差回転取得部36が本発明における「差回転取得手段」に相当する。差回転取得部36は、入力軸回転速度検出センサSe1により検出される入力軸Iに駆動連結されたポンプインペラ13aの回転速度と、中間軸回転速度検出センサSe2により検出される中間軸Mに駆動連結されたタービンランナ13bの回転速度とに基づき、これらの間の差回転速度ΔNを演算して取得する。ここでは、差回転速度ΔNはこれらの差の絶対値として取得される。取得された差回転速度ΔNの情報は、回転電機制御部33、ロックアップ制御部37、及び増圧制御部38に出力される。
[0059]
 ロックアップ制御部37は、状態決定部34により決定された作動状態に応じて、ロックアップクラッチ22の作動状態を制御する機能部である。ここで、ロックアップクラッチ22は、その作動状態として「解放状態」、「半係合状態」、及び「完全係合状態」のいずれかの状態を取り得る。「解放状態」は、ロックアップクラッチ22が全く係合していない状態を表す。この解放状態では、入力軸Iの回転がトルクコンバータ13を介して中間軸Mに伝達される。「完全係合状態」は、ロックアップクラッチ22が完全に係合している状態を表す。この完全係合状態では、差回転速度ΔNが零の状態で入力軸Iと中間軸Mとが一体回転する。「半係合状態」は、解放状態と完全係合状態との間の状態であり、ロックアップクラッチ22が不完全に係合している状態を表す。この半係合状態では、入力軸Iと中間軸Mとが所定の差回転速度ΔNを有してスリップしながら一体的に回転する。
[0060]
 そして、ロックアップ制御部37は、ロックアップ制御弁CVの動作を制御することにより、「解放状態」、「半係合状態」、及び「完全係合状態」の間でロックアップクラッチ22の作動状態を切り替える制御を行なう。このような制御を実行するため、制御ユニット31には、ロックアップ制御用のリニアソレノイド弁SLUが接続されている。そして、ロックアップ制御部37は、ロックアップ制御用のリニアソレノイド弁SLUへロックアップ制御指令信号S3を出力する。リニアソレノイド弁SLUは、このロックアップ制御指令信号S3に応じてロックアップ制御弁CVを制御するための信号圧を供給する。そして、当該信号圧に応じてロックアップ制御弁CVが制御され、ロックアップクラッチ22の係合又は解放の動作制御が行われる。
[0061]
 図5に示すように、ロックアップ制御指令信号S3は、ロックアップクラッチ22の係合側油室内に作動油を充填するための予備充填相F1と、係合側油室内に充填された作動油の油圧を増圧してロックアップクラッチ22を係合させるための増圧係合相F2と、を有する。このロックアップ制御指令信号S3は、予め設定された基準波形が、一又は二以上の指令用パラメータ44により規定されることにより生成される。本実施形態においては、この指令用パラメータ44が本発明における「変数」に相当する。このような指令用パラメータ44として、本実施形態においては、ロックアップ制御指令信号S3の予備充填相F1における充填圧c1、充填時間c2、維持圧c3及び維持時間c4、並びに、増圧係合相F2における増圧開始圧c5、増圧変化率(後述する通常増圧変化率)c6、急速増圧変化率c6’及び完全係合圧c7がそれぞれ設定されている。これにより、予め設定された基準波形をベースとしつつ各指令用パラメータ(c1~c7)の設定値に応じた波形のロックアップ制御指令信号S3が生成される。生成されたロックアップ制御指令信号S3は、上記のとおりロックアップ制御用のリニアソレノイド弁SLUに出力され、リニアソレノイド弁SLUによりロックアップ制御弁CVを制御するための信号圧に変換される。したがって、本発明における「直結制御指令信号」には、本実施形態におけるロックアップ制御指令信号S3の他、ロックアップ制御指令信号S3を油圧信号に変換した信号圧が含まれるものとする。
[0062]
 次に、ロックアップ制御指令信号S3及びそれに対応する信号圧(以下では単に「ロックアップ制御指令信号S3」という場合がある)により制御されるロックアップクラッチ22の作動状態について説明する。ロックアップ制御指令信号S3の予備充填相F1では、充填圧c1に制御された作動油が、充填時間c2だけロックアップクラッチ22の係合側油室内に供給される。その後、作動油は維持時間c4だけ維持圧c3に維持される。この状態では、ロックアップクラッチ22は全く係合しておらず、「解放状態」となっている。ただし、ロックアップクラッチ22の係合側油室内には維持圧c3に維持された作動油が充填されているため、作動油の油圧を所定の大きさだけ増圧すれば速やかにロックアップクラッチ22を係合させることができる状態となっている。したがって、ロックアップ制御指令信号S3の予備充填相F1に応じたロックアップクラッチ22の制御により、本発明における「予備動作」が実行される。
[0063]
 ロックアップ制御指令信号S3の増圧係合相F2では、作動油は増圧開始圧c5まで高められた後、増圧変化率c6で徐々に増圧される。このとき、増圧の初期段階ではロックアップクラッチ22は完全には係合しておらず、「半係合状態」となっている。この半係合状態では、差回転取得部36により取得される差回転速度ΔNは所定の値を有している。作動油の油圧(係合圧)が徐々に高くなるにしたがって差回転速度ΔNは徐々に減少して小さくなる。そして、差回転速度ΔNが零となったときにロックアップクラッチ22が完全に係合し、「完全係合状態」となる。したがって、ロックアップ制御指令信号S3の増圧係合相F2に応じて、ロックアップクラッチ22の係合圧を増圧させることにより差回転速度ΔNを減少させ、ロックアップクラッチ22を解放状態から係合状態へ移行させる。これにより、本発明における「係合動作」が実行される。その後、作動油の油圧は完全係合圧c7まで高められ、「完全係合状態」が確実に維持される状態となる。
[0064]
 ところで車両の走行中、変速段のアップシフトとロックアップクラッチの係合とがほぼ同時に要求される場合がある。例えば、図3の変速マップ42上に白抜き矢印や白抜きの破線矢印で示すように、第2速から第3速へのアップシフト線と変速段が第3速の場合におけるオンロック線とをほぼ同時に跨ぐ場合には、状態決定部34は、変速マップ42に基づき、変速装置14の第2速から第3速へのアップシフト及びロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定する。なお、白抜き矢印はアクセル開度が減少する状態で上記したような決定がなされる状況を示しており、白抜き破線矢印はアクセル開度が所定の大きさを有しつつ一定の状態で上記したような決定がなされる状況を示している。このような状況下において、ロックアップ制御部37は、変速段のアップシフト動作とロックアップクラッチ22の係合動作とに関して第一制御処理を実行し、状況に応じては、更に第二制御処理を実行するように構成されている。以下では、これら第一制御処理及び第二制御処理の具体的な処理内容について詳細に説明する。
[0065]
 第一制御処理では、変速段のアップシフト動作とロックアップクラッチ22の係合動作とのそれぞれを実行させるタイミングを調整する制御が実行される。これらの動作のタイミングは、アクセル開度の変化状態や、入力軸Iと中間軸Mとの間の差回転速度ΔN等に応じて調整される。まず、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度が一定又は増加している状態で、状態決定部34が変速段のアップシフト及びロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定した場合には、ロックアップ制御部37は、変速段のアップシフト動作が終了した後でロックアップクラッチ22を係合させる。ただし、アクセル開度が零の状態で一定であった場合には、例外的に、後述するアクセル開度が減少している状態における制御が実行される。
[0066]
 図6は、アクセル開度が一定又は増加している状態での第一制御処理を説明するためのタイミングチャートである。図6においては、上から順にアップシフト要求、ロックアップ要求、入力軸I及び中間軸Mの回転速度、伝達トルク(変速装置14の入力側に伝達されるトルク)、アクセル開度、係合側制御指令信号S1により制御された係合圧及び解放側制御指令信号S2により制御された係合圧、ロックアップ制御指令信号S3により制御された油圧、が示されている。時刻t1において、状態決定部34が変速段のアップシフト及びロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定し、アップシフト要求及びロックアップ要求がオンとなると、時刻t2において係合側摩擦係合要素に対する作動油の予備充填が開始され、変速動作が開始される。その後、変速動作中の時刻t3においてロックアップクラッチ22に対する作動油の予備充填が開始される。時刻t4において係合側摩擦係合要素に対する作動油の係合圧が完全係合圧となり、変速動作が終了する。変速動作の終了に伴い、アップシフト要求もオフとなる。その後、時刻t5からロックアップクラッチ22に対する作動油の油圧が徐々に増圧され、解放状態から半係合状態を経て、時刻t6において作動油の油圧は完全係合圧まで上昇させられることにより完全係合状態へと移行される。
[0067]
 このように、変速動作(ここでは、変速段のアップシフト動作)が終了した後にロックアップクラッチ22を係合させることにより、変速動作に伴う中間軸Mの回転及び伝達トルクの変動がトルクコンバータ13を介して入力軸Iに伝達されることになるため、車両に変速による衝撃(変速ショック)が生じるのを抑制することができる。
[0068]
 一方、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度が減少している状態、或いは、アクセル開度が零かつ一定の状態で、状態決定部34が変速段のアップシフト及びロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定した場合には、差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以下であることを条件に、ロックアップ制御部37は、変速段のアップシフト動作とは無関係にロックアップクラッチ22を係合させる。すなわち、先に説明したアクセル開度が一定又は増加している状態における制御とは異なり、変速動作(ここでは、変速段のアップシフト動作)が終了しているか終了していないかに関わらず、ロックアップクラッチ22を係合させる。本実施形態においては、ロックアップ制御部37は、変速段のアップシフト動作が終了する前にロックアップクラッチ22を係合させる。より具体的には、状態決定部34がロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定するのとほぼ同時に、ロックアップ制御部37はロックアップ制御指令信号S3を出力し、直ちに予備動作を実行させるとともに、変速段のアップシフト動作が終了する前に作動油の油圧を増圧してロックアップクラッチ22を係合させる。
[0069]
 ここで、ロックアップ制御部37が変速段のアップシフト動作とは無関係にロックアップクラッチ22を係合させるための条件の一つの判定基準を規定する係合許可閾値C1は、ロックアップクラッチ22を係合させた際にアクセル開度を減少させることにより車両に生じる衝撃より小さい衝撃を生じさせるような差回転速度ΔNの大きさに設定される。つまり、係合許可閾値C1は、ロックアップクラッチ22を係合させた際に生じる衝撃が、アクセル開度を減少させることにより生じる衝撃よりも小さくなるような差回転速度ΔNの大きさに設定される。
[0070]
 図7は、アクセル開度が減少している(ここでは、アクセル開度が全閉状態に変化している)状態での第一制御処理を説明するためのタイミングチャートである。図7においては、図6と同様に、上から順にアップシフト要求、ロックアップ要求、入力軸I及び中間軸Mの回転速度、伝達トルク(変速装置14の入力側に伝達されるトルク)、アクセル開度、係合側制御指令信号S1により制御された係合圧及び解放側制御指令信号S2により制御された係合圧、ロックアップ制御指令信号S3により制御された油圧、が示されている。なお、差回転速度ΔNは係合許可閾値C1以下であるとする。時刻t11において、状態決定部34が変速段のアップシフト及びロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定し、アップシフト要求及びロックアップ要求がオンとなると、それと同時にロックアップクラッチ22に対する作動油の予備充填が開始される。時刻t12において係合側摩擦係合要素に対する作動油の予備充填が開始され、変速動作が開始される。その後、係合側摩擦係合要素に対する作動油の予備充填中であり、未だ変速段のアップシフト動作が終了する前である時刻t13においてロックアップクラッチ22に対する作動油の油圧が一気に増圧され、完全係合状態とされる。さらに、時刻t14において作動油の油圧は完全係合圧まで上昇させられる。なお、時刻t15において係合側摩擦係合要素に対する作動油の係合圧が完全係合圧となり、変速動作が終了する。変速動作の終了に伴い、アップシフト要求もオフとなる。
[0071]
 ところで、状態決定部34が変速段のアップシフト及びロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定した場合において、アクセル開度が減少している(特にアクセル開度が全閉状態に変化している)状態では、その後車両の制動のために運転者によりブレーキ操作等がなされる可能性がある。このような場合、車両の減速に伴って回生動作が行なわれることになるが、仮に上記で説明したようなアクセル開度が一定又は増加している状態における制御を行なったとすれば、ロックアップクラッチ22が完全係合状態となるまでには一定の時間が必要となる。そうすると、その間、車輪16から伝達されるトルクがトルクコンバータ13を介して回転電機12に伝達されるため、回生効率が低下してしまう。これに対して、本実施形態においては、ロックアップ制御部37は、このような場合には変速動作が終了する前にロックアップクラッチ22を係合させる。これにより、車輪16から伝達されるトルクがロックアップクラッチ22を介してそのまま回転電機12に伝達される状態を早期に実現することができる。したがって、高い効率で回生を行なうことができる状態を早期に実現することができる。図7には、変速段のアップシフト動作が終了する時刻t15よりも前から伝達トルクが負となって、回転電機12による回生が行なわれる様子が示されている。
[0072]
 このとき、ロックアップ制御部37は、差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以下である場合にのみロックアップクラッチ22を係合させるので、変速動作の終了とは無関係にロックアップクラッチ22を係合させたとしても、ロックアップクラッチ22の係合動作に伴って車両に生じる衝撃を、アクセル開度を減少させることにより車両に生じる衝撃に紛れさせることができる。
[0073]
 上記で説明した第一制御処理では、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度が減少している状態で、変速段のアップシフト動作とは無関係にロックアップクラッチ22を係合させることでロックアップクラッチ22を早期に係合させる。ただし、差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以下であることを条件としているため、そのような制御を行なうことができない状況も生じ得る。例えば、アクセル開度が全閉とされたのに伴い、入力軸Iの回転速度が中間軸Mの回転速度よりも大きく低下し、差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以上となってしまった場合には、アクセル開度が減少している状態で状態決定部34が変速段のアップシフト及びロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定したとしても、ロックアップ制御部37は、変速段のアップシフト動作とは無関係にロックアップクラッチ22を係合させることができない。そのため、差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以上である場合に、アクセル開度が一定又は増加している状態での第一制御処理と同様に、変速段のアップシフト動作が終了した後でロックアップクラッチ22の係合圧を増圧させるとすれば、ロックアップクラッチ22を早期に係合させることができなくなってしまう。
[0074]
 そこで本実施形態においては、アクセル開度が減少している状態でかつ差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以上である場合には、ロックアップクラッチ22の係合動作に関して、解放状態から完全係合状態へ迅速に移行させるための第二制御処理が実行される。このような制御を行なうため、第二制御処理では、アクセル開度検出センサSe4により検出される車両のアクセル開度が減少する状態で差回転速度ΔNが所定の増圧許可閾値C2以下となったときに、ロックアップ制御部37によるロックアップクラッチ22の係合圧を、アクセル開度が一定又は増加する状態における増圧変化率(これを通常増圧変化率と称する)c6よりも大きい急速増圧変化率c6’に変更する。
[0075]
 ここで、通常増圧変化率c6は車両の走行状態に応じて定まる。本例では、ロックアップクラッチ22の伝達トルク(エンジン11及び回転電機12により出力されるトルク)と通常増圧変化率c6との関係を記憶したマップをメモリ41に備えており、実際の伝達トルクに応じて通常増圧変化率c6が取得される構成となっている。より具体的には、実際の伝達トルクが大きくなるほど大きな値をとるように通常増圧変化率c6が定められる。なお、これ以外にも、実際の伝達トルクに応じて、所定の演算式に基づいて通常増圧変化率c6が導出される構成としても良い。
 また、本実施形態においては、上記のようにして取得された通常増圧変化率c6に、所定値を加算する、或いは所定の係数を乗算する等の演算を行なうことにより急速増圧変化率c6’が導出される。このときの所定値及び所定の係数は、固定値としても良いし、伝達トルクや車両のアクセル開度等に応じた可変値としても良い。本例では、急速増圧変化率c6’は、通常増圧変化率c6に一定値の係数を乗算して導出される構成となっている。なお、通常増圧変化率c6とは別に、急速増圧変化率c6’も車両の走行状態に応じて定まる構成としても良い。この場合、伝達トルクと急速増圧変化率c6’との関係を記憶したマップをメモリ41に備えており、実際の伝達トルクに応じて急速増圧変化率c6’が取得される構成とすると良い。これ以外にも、実際の伝達トルクに応じて、通常増圧変化率c6とは別に所定の演算式に基づいて急速増圧変化率c6’が導出される構成としても良い。
[0076]
 この第二制御処理は、アクセル開度が一定又は増加している状態での第一制御処理と同様に、変速段のアップシフト動作が終了した後で実行される。そして、増圧開始後しばらくはロックアップクラッチ22の係合圧を通常増圧変化率c6で増圧させ、差回転速度ΔNが減少して差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2以下となったときにロックアップクラッチ22の係合圧を通常増圧変化率c6から急速増圧変化率c6’に変更する。それ以降は、ロックアップクラッチ22の係合圧を急速増圧変化率c6’で増圧させる。これにより、ロックアップクラッチ22を比較的早期に係合させる。なお、通常増圧変化率c6から急速増圧変化率c6’への切り替えは、制御ユニット31内に備えられた増圧制御部38により実行される。
[0077]
 本実施形態においては、差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2以上である状態から、ロックアップクラッチ22の係合圧を増圧させることにより差回転速度ΔNを減少させるのに合わせて、回転電機制御部33は、回転電機12の出力トルク及び回転速度を制御することにより差回転速度ΔNを減少させる。つまり、回転電機制御部33は、差回転取得部36により取得される差回転速度ΔNに基づいてフィードバック制御を行なうことにより、差回転速度ΔNを減少させる。したがって、本実施形態においては、回転電機制御部33は「同期制御手段」としても機能している。
[0078]
 ここで、増圧制御部38がロックアップクラッチ22の係合圧を通常増圧変化率c6から急速増圧変化率c6’へ切り替えるための条件の一つの判定基準を規定する増圧許可閾値C2は、ロックアップクラッチ22を係合させた際にアクセル開度を減少させることにより車両に生じる衝撃より小さい衝撃を生じさせるような差回転速度ΔNの大きさに設定される。本実施形態においては、増圧許可閾値C2は、前述の係合許可閾値C1と等しい値に設定されている。つまり、増圧許可閾値C2は、ロックアップクラッチ22を係合させた際に生じる衝撃が、アクセル開度を減少させることにより生じる衝撃よりも小さくなるような差回転速度ΔNの大きさに設定される。
[0079]
 図8は、第二制御処理を説明するためのタイミングチャートである。図8においては、上から順に入力軸I及び中間軸Mの回転速度、ロックアップ制御指令信号S3により制御された油圧、が示されている。なお、初期段階では差回転速度ΔNは係合許可閾値C1及び増圧許可閾値C2以上であるとする。時刻t21において、ロックアップクラッチ22に対する作動油の予備充填が開始される。その後、変速段のアップシフト動作が終了した後(不図示)、時刻t22からロックアップクラッチ22に対する作動油の油圧が通常増圧変化率c6で徐々に増圧される。これに伴い、入力軸Iと中間軸Mとが一体的に回転する割合が徐々に増加して、差回転速度ΔNは徐々に減少する。そして、時刻t23において差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2となったときに、増圧制御部38は、作動油の油圧の増圧変化率を、通常増圧変化率c6から、通常増圧変化率c6よりも大きい値に設定された急速増圧変化率c6’へ切り替える。その後、ロックアップ制御手段37は、差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2となった時点(時刻t23)における係合圧を基準として、急速増圧変化率c6’で所定の圧力Cp分だけ増圧した後、時刻t24においてロックアップクラッチ22の係合圧を完全係合圧c7とすることにより、ロックアップクラッチ22を完全係合状態に移行させる。なお、図8においては、差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2以下となった後もロックアップクラッチ22に対する作動油の油圧を通常増圧変化率c6で増圧した場合の油圧変化の様子を破線で示している。
[0080]
 上述したのと同様に、状態決定部34がロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定した場合において、アクセル開度が減少している(特にアクセル開度が全閉状態に変化している)状態では、その後車両の制動のために運転者によりブレーキ操作等がなされる可能性がある。本実施形態においては、増圧制御部38は、このような場合には、差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2となったときに、作動油の油圧の増圧変化率を通常増圧変化率c6から急速増圧変化率c6’へ切り替える。これにより、ロックアップクラッチ22の係合圧を差回転速度ΔNが零に近い状態となるのに十分な圧にまで上昇させるまでの時間を短縮して、車輪16から伝達されるトルクがロックアップクラッチ22を介してそのまま回転電機12に伝達される状態を早期に実現することができる。したがって、高い効率で回生を行なうことができる状態を早期に実現することができる。このとき、増圧制御部38は、差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2以下となったときに初めて増圧変化率を増大させるので、比較的急激にロックアップクラッチ22を係合させたとしても、ロックアップクラッチ22の係合動作に伴って車両に生じる衝撃を、アクセル開度を減少させることにより車両に生じる衝撃に紛れさせることができる。
[0081]
 学習制御部39は、状態決定部34が変速段の切り替えを決定し、切替制御部35により変速段の切り替えが行なれた場合に、係合側制御指令信号S1における一又は二以上の変数の設定値と、当該設定値に従って変速段の切り替えがなされた際の実際の車両の挙動とに基づいて、以降の係合側制御指令信号S1の各変数の設定値を補正する機能部である。本実施形態においては、この学習制御部39が、本発明における「学習制御手段」に相当する。ここで、学習制御部39が学習制御を行なう対象となる変数には、係合側制御指令信号S1の予備充填相f1における充填圧a1及び充填時間a2、並びに増圧係合相f2における目標係合圧a5、の少なくとも一つ以上が含まれる。本例では、学習制御部39は、各変速段における係合側摩擦係合要素のそれぞれについて、これら全てを学習制御の対象としている。
[0082]
 例えば、係合側制御指令信号S1の予備充填相f1における充填圧a1及び充填時間a2の初期設定値の一方又は双方が、理想的なタイミングで変速動作が行なわれる場合における充填圧及び充填時間と比較して小さかった場合には、係合側摩擦係合要素の油室内に予め充填される作動油が十分量に達していないことになるので、変速時にトルク伝達が遅れてしまい出力トルクが低下する。一方、係合側制御指令信号S1の予備充填相f1における充填圧a1及び充填時間a2の初期設定値の一方又は双方が、理想的なタイミングで変速動作が行なわれる場合における充填圧及び充填時間と比較して大きかった場合には、係合側摩擦係合要素の油室内に予め充填される作動油が過剰となるので、いわゆるバインドアップを招来してしまい出力トルクが低下する。
[0083]
 さらに、例えば、係合側制御指令信号S1の増圧係合相f2における目標係合圧a5の初期設定値が、理想的なタイミングで変速動作が行なわれる場合における目標係合圧と比較して小さかった場合には、トルク容量が不十分となるので変速動作が過度に長期化してしまう。一方、係合側制御指令信号S1の増圧係合相f2における目標係合圧a5の初期設定値が、理想的なタイミングで変速動作が行なわれる場合における目標係合圧と比較して大きかった場合には、トルク容量が過大となるので急激に変速動作が行なわれてショックが生じてしまう。
[0084]
 そこで、学習制御部39は、係合側制御指令信号S1及び解放側制御指令信号S2に応じて変速動作が行なわれた際に、以降の変速動作時に出力トルクが低下するのを抑制し、或いは、迅速かつ円滑に変速動作が行なわれるように、実際の車両の挙動に基づいて充填圧a1及び充填時間a2、並びに目標係合圧a5の初期設定値を補正する。補正された各指令用パラメータ44はメモリ41に記憶され、以降の変速動作時に切替制御部35により参照される。これにより、エンジン11や変速装置14に製造上のばらつきや経時劣化等があった場合にも、出力トルクの低下を抑制しつつ、迅速かつ円滑に変速動作を行なわせることが可能となっている。
[0085]
 ただし、本実施形態においては、第一制御処理においてアクセル開度が減少する状態で変速段のアップシフト動作及びロックアップクラッチ22の係合が行なれた場合には、学習制御部39は係合側制御指令信号S1の各指令用パラメータ44の設定値をそのまま維持する。すなわち、そのような場合には回生効率を高めることを最優先してロックアップクラッチ22を早期に係合させるのであり、変速動作に伴って車両に多少の衝撃が生じることが予め想定されているので、学習制御の対象から除外するのである。これにより、係合側制御指令信号S1の各指令用パラメータ44の設定値が不適切な値に補正されることを防止することができる。なお、同様の理由で、第二制御処理が実行された際にも学習制御部39は係合側制御指令信号S1の各指令用パラメータ44の設定値をそのまま維持する。
[0086]
4.制御処理の手順
 次に、本実施形態に係る車両用駆動装置1の制御の内容について説明する。図9は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の制御処理(第一制御処理)の処理手順を示すフローチャートである。また、図10は、図9のステップ#10の第二制御処理の処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する車両用駆動装置1の制御処理の手順は、制御ユニット31の各機能部32~39により実行される。制御ユニット31の各機能部32~39がプログラムにより構成される場合には、制御ユニット31が備える演算処理装置は、上記の各機能部32~39を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
[0087]
4-1.第一制御処理の手順
 本実施形態に係る第一制御処理においては、状態決定部34により変速段のアップシフト及びロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行が決定されると(ステップ#01、#02)、ロックアップ制御部37は、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度が減少しているか否かを判定する(ステップ#03)。アクセル開度が減少していると判定された場合には(ステップ#03:Yes)、次にロックアップ制御部37は、差回転取得部36により取得される入力軸Iと中間軸Mとの間の差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以下であるか否かを判定する(ステップ#04)。差回転速度ΔNが係合許可閾値C1より大きいと判定された場合には(ステップ#04:No)、ロックアップ制御部37は第二制御処理を実行する(ステップ#10)。この第二制御処理の詳細な処理手順については後述する。一方、差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以下であると判定された場合には(ステップ#04:Yes)、ロックアップ制御部37はロックアップクラッチ22の係合制御を開始する(ステップ#05)。
[0088]
 その後(又はそれと同時に)、切替制御部35による変速装置14における変速動作が開始される(ステップ#06)。このとき、上述したように変速動作とは無関係にロックアップクラッチ22の係合動作が直ちに開始され、変速装置14における変速動作が終了しているか終了していないかに関わらず、ロックアップクラッチ22が係合される。そして、ロックアップ制御部37は、内蔵タイマーにより一定時間が経過したことを判定したときに(ステップ#07:Yes)ロックアップ係合制御を終了する(ステップ#08)。次に、学習制御部39は、係合側制御指令信号S1の各指令用パラメータ44の設定値をそのまま維持して(ステップ#09)、第一制御処理を終了する。
[0089]
 一方、ステップ#03においてアクセル開度が減少していない、すなわち一定又は増加していると判定された場合には(ステップ#03:No)、まず切替制御部35による変速装置14における変速動作が開始される(ステップ#11)。その後、変速装置14における係合側摩擦要素の係合圧が完全係合圧となって変速動作が終了すると(ステップ#12:Yes)、ロックアップ制御部37はロックアップクラッチ22の係合制御を開始する(ステップ#13)。なお、ここではロックアップクラッチ22の係合制御とは、予備充填後の作動油に対して、油圧を増圧して解放状態から半係合状態を経て最終的に完全係合圧まで上昇させるまでの一連の動作をいう。したがって、予備充填に関しては変速動作が終了する前に行なわれていても何ら差し支えない。そして、ロックアップ制御部37は、内蔵タイマーにより一定時間が経過したことを判定したときに(ステップ#14:Yes)ロックアップ係合制御を終了する(ステップ#15)。次に、学習制御部39は、実際の車両の挙動に基づいて係合側制御指令信号S1の各指令用パラメータ44の設定値を補正して(ステップ#16)、第一制御処理を終了する。
[0090]
4-2.第二制御処理の手順
 次に、ステップ#10の第二制御処理の詳細な処理手順について説明する。本実施形態に係る第二制御処理においては、まずロックアップ制御部37はロックアップクラッチ22の係合制御を開始する(ステップ#21)。ここでは、ロックアップクラッチ22の油室内に作動油が予備充填された後、当該作動油の油圧が通常増圧変化率c6で徐々に増圧される(ステップ#22)。これにより、ロックアップクラッチ22の係合圧が徐々に増圧し、差回転速度ΔNが減少する。本実施形態においては、同時に回転電機制御部33が回転電機12の出力トルク及び回転速度を制御することによっても差回転速度ΔNは減少する。その後、差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2以下となったとき(ステップ#23:Yes)、増圧制御部38は、作動油の油圧の増圧変化率を、通常増圧変化率c6から急速増圧変化率c6’に変更する(ステップ#24)。これにより、作動油の油圧が急速増圧変化率c6’で急速に増圧される。そして、ロックアップ制御部37は、差回転速度ΔNが増圧許可閾値C2となった時点における係合圧を基準として急速増圧変化率c6’で所定の圧力Cp分だけ増圧したときに(ステップ#25:Yes)、ロックアップクラッチ22の係合圧を完全係合圧c7としてロックアップ係合制御を終了する(ステップ#26)。次に、学習制御部39は、係合側制御指令信号S1の各指令用パラメータ44の設定値をそのまま維持して(ステップ#27)、第二制御処理を終了する。
[0091]
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態においては、状態決定部34がロックアップクラッチ22の解放状態から係合状態への移行を決定するのとほぼ同時に、ロックアップ制御部37がロックアップ制御指令信号S3を出力し、直ちに予備動作を実行させる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、少なくとも変速段のアップシフト動作が終了する前に、ロックアップ制御部37が作動油の油圧を増圧してロックアップクラッチ22を係合させる構成とすれば、回転電機12が高い効率で回生を行なうことができる状態を早期に実現することができるので、本発明の目的を達成することができる。
[0092]
(2)上記の実施形態においては、係合側制御指令信号S1、解放側制御指令信号S2、及びロックアップ制御指令信号S3が、それぞれ予め設定された基準波形が複数の指令用パラメータ44(具体的にはa1~a9、b1~b3、c1~c7)により規定されて生成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、上記で説明した指令用パラメータ44により規定されるこれらの制御指令信号S1~S3はあくまで一例であり、指令用パラメータ44の個数を減少させて制御指令信号S1~S3をより単純化させたり、指令用パラメータ44の個数を増加させて制御指令信号S1~S3をより精緻化させたりすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
[0093]
(3)上記の実施形態においては、第一制御処理では、ロックアップクラッチ22を係合させる際には、アクセル開度の状態によらずに(アクセル開度が減少している状態、及びアクセル開度が一定又は増加している状態の双方で)作動油の油圧を等しい増圧変化率で増圧する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、アクセル開度が減少している状態で第一制御処理を実行する場合に、変速段のアップシフト動作が終了していない状態でロックアップクラッチ22を係合させる際に、ロックアップ制御部37が、ロックアップ制御指令信号S3における増圧係合相F2の増圧変化率を、アクセル開度が一定又は増加する状態時における増圧変化率よりも大きくする構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。つまり、変速段のアップシフト動作が終了していない状態でロックアップクラッチ22を係合させる場合には、その前提として、アクセル開度が減少しているとともに差回転速度ΔNが係合許可閾値C1以下となっている。よって、本例のように増圧許可閾値C2が係合許可閾値C1に等しい場合や、増圧許可閾値C2が係合許可閾値C1よりも大きい場合には、第二制限処理においてロックアップクラッチ22の作動油の油圧を急速増圧変化率c6’で増圧するための条件を同時に満たしていることになる。また、増圧許可閾値C2が係合許可閾値C1よりも小さいにしても、その差が非常に小さい場合には、第二制限処理においてロックアップクラッチ22の作動油の油圧を急速増圧変化率c6’で増圧するための条件を同時に満たしている場合が多い。そこで、ロックアップ制御指令信号S3における増圧係合相F2を急速増圧変化率c6’で増圧させることにより、車輪16から伝達されるトルクがロックアップクラッチ22を介してそのまま回転電機12に伝達される状態をより早く実現することができる。したがって、高い効率で回生を行なうことができる状態をより早く実現することができる。
[0094]
(4)上記の実施形態においては、変速装置14が変速比の異なる三つの変速段(第一速、第二速、及び第三速)を備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、有段の変速装置であれば変速段の段数は特に限定されず、二つの変速段、或いは四つ以上の変速段を備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
[0095]
(5)上記の実施形態においては、変速装置14が、一又は二以上の遊星歯車機構で構成される遊星歯車装置と、この遊星歯車装置の各回転要素の係合又は解放を行い、変速段を切り替えるためのクラッチやブレーキ等の複数の摩擦係合要素とを備えて構成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば変速装置14が平行軸に固定された複数の歯車列を備え、互いに噛み合う歯車を切り替えることにより変速段の切り替えを行なう構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
[0096]
(6)上記の実施形態においては、車両用駆動装置1が入力軸I、中間軸M、及び出力軸Oの全てが同軸上に配置された一軸構成とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば入力軸I及び中間軸Mと出力軸Oとが異なる軸上に配置された構成の車両用駆動装置1に適用することも、本発明の好適な実施形態の一つである。

産業上の利用可能性

[0097]
 本発明は、直結クラッチを有する流体継手と変速装置とを備え、エンジン及び回転電機に駆動連結される入力部材の回転を出力部材へ出力する車両用駆動装置の制御を行なうための制御装置に好適に利用することができる。

符号の説明

[0098]
1    車両用駆動装置
11   エンジン
12   回転電機
13   トルクコンバータ(流体継手)
14   変速装置
22   ロックアップクラッチ(直結クラッチ)
31   制御ユニット(制御装置)
34   状態決定部(状態決定手段)
36   差回転取得部(差回転取得手段)
37   ロックアップ制御部(直結制御手段)
39   学習制御部(学習制御手段)
44   指令用パラメータ(変数)
I    入力軸(入力部材)
O    出力軸(出力部材)
S1   係合側制御指令信号
S2   解放側制御指令信号
S3   ロックアップ制御指令信号(直結制御指令信号)
f1   予備充填相
f2   増圧係合相
F1   予備充填相
F2   増圧係合相
C1   係合許可閾値

請求の範囲

[請求項1]
 直結クラッチを有する流体継手と変速装置とを備え、エンジン及び回転電機に駆動連結される入力部材の回転を出力部材へ出力する車両用駆動装置の制御を行なう制御装置であって、
 前記流体継手の前記入力部材に駆動連結される入力側と前記変速装置に駆動連結される出力側との回転速度の差である差回転速度を取得する差回転取得手段と、
 車両のアクセル開度及び車速に基づいて、前記変速装置における変速段及び前記直結クラッチの作動状態を決定する状態決定手段と、
 前記アクセル開度が減少する状態で、前記状態決定手段が前記変速段のアップシフト及び前記直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定した場合において、前記差回転速度が所定の係合許可閾値以下の場合には、前記変速段のアップシフト動作とは無関係に前記直結クラッチを係合させる直結制御手段と、
を備えた制御装置。
[請求項2]
 前記アクセル開度が一定又は増加する状態で、前記状態決定手段が前記変速段のアップシフト及び前記直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定した場合には、前記直結制御手段は、前記変速段のアップシフト動作が終了した後で前記直結クラッチを係合させる請求項1に記載の制御装置。
[請求項3]
 前記直結制御手段は、前記直結クラッチを係合可能な状態とする予備動作と、当該予備動作後に前記直結クラッチを係合させる係合動作と、を実行させる請求項1又は2に記載の制御装置。
[請求項4]
 前記アクセル開度が減少する状態で、前記状態決定手段が前記変速段のアップシフト及び前記直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定した場合において、前記差回転速度が所定の係合許可閾値以下の場合には、前記直結制御手段は、前記状態決定手段が前記直結クラッチの解放状態から係合状態への移行を決定するのとほぼ同時に、前記予備動作を実行させる請求項3に記載の制御装置。
[請求項5]
 前記係合許可閾値は、前記直結クラッチを係合させた際に、前記アクセル開度を減少させることにより車両に生じる衝撃より小さい衝撃を生じさせるような差回転速度の大きさに設定される請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
[請求項6]
 前記直結制御手段は、前記直結クラッチを係合させるための直結制御指令信号を出力し、
 前記直結制御指令信号は、前記直結クラッチの係合側油室内に作動油を充填するための予備充填相と前記作動油の油圧を増圧して前記直結クラッチを係合させるための増圧係合相とを有する予め設定された基準波形が、一又は二以上の変数により規定されたものである請求項1から5いずれか一項に記載の制御装置。
[請求項7]
 前記直結制御手段は、前記変速段のアップシフト動作が終了していない状態で前記直結クラッチを係合させる際に、前記直結制御指令信号における前記増圧係合相の増圧変化率を、前記アクセル開度が一定又は増加する状態時における増圧変化率よりも大きくする請求項6に記載の制御装置。
[請求項8]
 前記変速装置は各変速段を実現するための複数の摩擦係合要素を有し、前記複数の摩擦係合要素の係合及び解放は、それぞれ係合側制御指令信号及び解放側制御指令信号に応じて制御され、
 前記係合側制御指令信号は、係合側の摩擦係合要素の油室内に作動油を充填するための予備充填相と前記作動油の油圧を増圧して前記摩擦係合要素を係合させるための増圧係合相とを有する予め設定された基準波形が、一又は二以上の変数により規定される構成で、
 前記状態決定手段が前記変速段の切り替えを決定し、前記変速段の切り替えが行なれた場合に、前記一又は二以上の変数の設定値と、当該設定値に従って前記変速段の切り替えがなされた際の実際の車両の挙動とに基づいて、以降の前記係合側制御指令信号の各変数の設定値を補正する学習制御手段を更に備えた請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
[請求項9]
 前記アクセル開度が減少する状態で、前記変速段のアップシフト動作及び前記直結クラッチの係合が行なれた場合には、前記学習制御手段は前記係合側制御指令信号の各変数の設定値をそのまま維持する請求項8に記載の制御装置。
[請求項10]
 前記変数は、前記係合側制御指令信号の前記予備充填相における充填圧及び充填時間、並びに前記増圧係合相における目標係合圧、の少なくとも一つ以上を含む請求項8又は9に記載の制御装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]